虚数海の女王 BADEND1 「進撃の小人」
――学園都市
上条「――だがお断りだ!俺にはレポートを書くって使命があるんだから女子寮でキャッキャウフフしてる余裕はない!!」
神裂「誰もそんな話は一言もしていませんでしたよね?」
上条「つーか君たちも関わってるんだから少しぐらい気配りがあったっていいと思うな!『上条君をヨロシク!』みたいな!」
ステイル「君、もう露骨に利益供与を求めてきてるよね?色々と資格を失うけど、いいのかい?」
インデックス「むしろ目を付けられると思うんだよ。こっち側から強く言ったら」
上条「俺だって行きてぇよロンドン!『ここがシャーロックの歩いてた道か……』的な感慨に浸かりたいさ!」
神裂「感慨はふけるものです。灌漑ならば浸れるでしょうが」
ステイル「灌漑に浸ったら泥まみれになるだけだよね。涼しそうだ」
上条「ウルセェな外国人!日本語には日本語の良さがあるんだよ!」
神裂「あの……私は今も日本人のつもりですが」
上条「いいから帰れ帰れ!俺今からレポート作成のために溜った洗濯物と部屋の片付けと大掃除をしてから、積みゲーを処理する仕事があるんだ!」
ステイル「凄いよね。勢いで言い切ればなんだってそれっぽく聞こえるんだから」
インデックス「そしててすと前に始めてだめになるパターンまっしぐらかも」
神裂「そして休み中思う存分ゲームをして、落第ですか。頑張ってください」
上条「いいから帰れよ!故郷でたまにはゆっくりしてくればいいだろ!」
インデックス「謎のつんでれ感」
ステイル「デレ……てるかな?ただ反射的に思ったことを言ってるだけだと。本物見せてやりなよ神裂」
神裂「えぇと……あ、あなたのために里帰りするんじゃないんですからねっ?」
上条「事実だろ。俺一人をぼっちにして帰郷するんだから、それ自分のためだろ」
神裂「……なんでしたら私、残りましょうか?あなたを一人にすると首を吊りそうな雰囲気が……」
――上条の住むアパート 廊下
神裂「まぁ仕方がありませんね。今回はインデックスの一時的な里帰りということで」
ステイル「日頃の恩を返したかったんだけどねー、いやー仕方がない仕方がない」
神裂「私の目には毎日が親の葬式のような仏頂面デフォの神父が、満面の笑みを浮かべているように見えるのですが」
ステイル「そんなことないよ。ただちょっと大嫌いな人間と一緒しなくていいと思ったら、まぁ気楽でね」
神裂「仲良くしろとは言いませんが……まぁいいでしょう。借りはそのうち機会を見て返すということで」
ステイル「っていうかね、計画そのものが杜撰だよね。なんでロンドンで寮母されるのが借りを返したことになるんだい?」
神裂「管理人さんが大好きだから、とあなたが教えてくれたではないですか」
ステイル「……あぁそう設定になってるんだっけ。じゃ仕方がないね、次何かあったらまた誘うって事で」
神裂「というかステイル?あなた分かっているのですか?」
ステイル「うん?何をだい?」
神裂「彼が来られない以上、女子寮の寮監役はあなたですからね?」
ステイル「まぁそこら辺は大丈夫だと思うよ。なんやかんやでウヤムヤになると思うから、主に運命的な意味で」
神裂「……言っている意味は分かりませんが、説得力はありますね」
インデックス「……」
神裂「どうしましたかインデックス?やはり彼も一緒が良かった――と、聞くのは愚問ですかね」
インデックス「ううん。そういうことじゃなくてね、というか思ったんだけど」
インデックス「とうまがロンドンに行けないのはレポートやらなきゃなんだよね?」
ステイル「そうだね。僕だったらロンドンですりゃいいのに、とは思うんだが」
神裂「まぁ……そこは巻き込まれ体質ですし、ご迷惑をおかけしかねないため、こちらに残って勉学に集中していただくのが最善でしょう」
インデックス「それは、うん。わたしも思わなくはないかもなんだけど……」
ステイル「けど?」
インデックス「ロンドンへ来ようが、ここに残ろうが、とうまのアレな体質は同じじゃないかな?」
神裂・ステイル「あー……」
――長期休暇明け 放課後の教室
上条「……」
小萌「上条ちゃん、先生お休み入る前になんて言いましたっけ?憶えてたら言うだけ言ってみるといいのですよ?」
上条「『レポートさえ仕上げれば、まぁなんとか進級できる』……でしたっけ?」
小萌「言ってないです。正解なのは『レポート』の単語ぐらいですかねぇ」
上条「……『死ぬほど頑張れば、まぁもしかしたら可能性はゼロじゃない』……?」
小萌「正解ですねぇ。まぁ詳細はともかく主旨はその通りなのですよ」
上条「まぁそう、ですけど。書いてきましたよ?頑張りました!休みの期間中殆ど遣ってなんとか仕上げてみましたよ!」
小萌「……その、努力はね。まぁ先生も先生なのですから認めざるを得ないのですよ。どーんなしょーーーーもない代物であっても」
上条「しょーもない?先生いま生徒が一生懸命作ってきたレポートにしょーもないって言いました?」
小萌「……ほう、上条ちゃんはこれが立派なレポートである、と言い張るのですね?」
上条「言い張るだなんてそんな。事実立派ですし」
小萌「レポートの名前は?」
上条「『上条当麻と終末の七魔剣』」
小萌「タイトルが!タイトルからして狂っているのですよ!なんですかっこのググったら確実にヒットしそうなありがちなネームは!?」
小萌「編集は!?編集さんがついていながらKONOZAMAですかっ!?」
上条「ですよね。全三巻ぐらいで打ち切りになったっぽいタイトルですよね」
小萌「ラノベですか!?なろ○系で当てようとしているのですかっ!先生も嫌いじゃないですけど!中二マインドに琴線に触れるのは!」
上条「違うんですよ先生!一見ラノベっぽく偽装はしてありますけど、全部実話なんですって!」
上条「マリアンの暴食魔剣 !ウレアパディーのブラフマーアストラ、トールのミョルニルにインデックスのアスカロン!」
上条「こっち側からビリビリと御坂妹の超電磁砲 !姫神の吸血殺し !」
上条「敵味方で乱戦になったのに、俺は生き延びて来たんですから!」
小萌「上条ちゃんの妄想に姫神ちゃんを巻き込まないであげてください。彼女は人の子です」
小萌「というかチョイスに異論がありますよ!なんでロンギヌスは入ってないんですか!?」
上条「先生、割と好きですよね?こういう話?あと結論から言えば前に出たからです」
小萌「このラノベもどきをレポートとして提出した勇気は買うのですけど……も!これをハゲに提出して『留年回避ヨロ☆』って頼む先生の身にもなってください!」
上条「爆笑間違いなしですね!」
小萌「自分の進退を賭けて笑いを取りに来るとは、上条ちゃん何か呪いでもかかっているのですか?科学の街で笑いを取らないと死んじゃうような?」
上条「俺だってですね!エピローグ書いているときには思ったんですよ!『あ、これ七人は多すぎやしないかな』ってね!」
小萌「反省する段階も場所も見当外れが過ぎるのですよ。はっきり言って、ムダ」
上条「やっぱりヒロインは一人に絞った方がいいですよね!俺も実は前からそう思っていました!」
小萌「逆に今のハーレム系主人公全盛かつ、陰りも見せずに編集がノリノリで」
小萌「『え、君の筆力じゃハーレム系じゃないと読者着いて来ないよ?』と、しょーもないプロットを手も入れず売り出すのが世の中なのですよ!」
上条「先生先生、一体さっきからどの立ち位置で喋っているんですか?」
小萌「……本当に上条ちゃんは進級したい気があるのですか?もう何年か居残ろうとしてるって訳じゃないんですよね?」
上条「お言葉ですが先生。俺ぐらい『皆と一緒に卒業したい』って思ってる生徒はいないと思いますが!」
小萌「まぁ……先生も、上条ちゃんが良い子ちゃんなのは、大統領をぶん殴ってでも証言するつもりですけども」
小萌「流石に、この、ラノベもどきっていうかスタンダードすぎて一次選考すら怪しいブツで進級を勝ち取る自信はないのですよ!」
小萌「後なんですか主人公が無能力者のハーレム野郎ってのは!散々流行って流行りすぎて一周回ってありがちなのです!」
上条「おぉっとそれ以上俺へのヘイトはやめてもらいましょうか!今の精神状態だったら泣きながらストレスで吐く自信がある……ッ!」
小萌「崖っぷちでタップダンスしてる自覚はあるのですね。一応とはいえ」
上条「なんとかしてくださいよ小萌先生ぇ!そりゃ確かに俺は素行が良くない!出席日数が絶望的に足りてない上、成績だって良くないですよ!」
上条「与えられた課題はすぐロストしますし!土御門と青ピ巻き込んで他の生徒を煽ったりもします!」
上条「他にもゴリラには何故か嫌われていますし!親船先生から殴られるのもしょっちゅうですが!」
小萌「あの、上条ちゃん?卑下する体で事実をそれ以上言うと、先生の中にいる悪い子ちゃんの先生が『もうこの生徒見捨てても良くね?』って囁くので……」
上条「お願いします先生!俺だって真面目に生きたいんですよ!」
上条「でも仕方がないじゃないですか!目の前で困ってる人がいたり、ダチが面倒臭そうなことに首突っ込んでるんだったら手伝いますよそりゃ!」
小萌「……はぁ。もう本当に上条ちゃんは手のかかる子なのですよ」
上条「先生!」
小萌「担任たるもの生徒を救うのに全力を尽すもの!昇進が絶望的になったとしても、まぁそれはそれで一教師として現場一筋で!」
上条「ありがとうございますっ、ありがとうございますっ!」
小萌「救われぬ生徒に救いの手を!こないだ道で布教していたアフロの人も言っていました!」
上条「ダメですよ?それパチモンですからね?」
――XX学区教育委員会 定期会合
教育委員「――以上が定期報告になります」
教育委員長「学区全体の非行率がやや上昇傾向、補導の数も増加しているか」
教育委員「長期休暇の影響を鑑みれば妥当かと」
教育委員長「続くようであれば対策が必要だな。『落第防止』の人員も少しずつ増えているとはいえ、隅々にまで目は届かない」
教育委員「はい、ではそのように」
教育委員長「不足分は風紀委員に任せるしかないが……校外では活動禁止だというのに、嘆かわしいものだ」
教育委員「学生の本分は勉学――という時代でもないかと。キャリアを積めば積むだけ差を付けられるのであれば余計に」
教育委員長「嘆いているのは大人の方だよ。学業に専念できる環境を整えるのは誰の仕事だと思って――」
小萌「たのもーう!なのですよっ!」 バタンッ
教育委員長「――いる?ふむ?」
教育委員「誰ですか?今は会議中ですよ!」
私設警備員「す、すいませんっ!小さくて当り判定が狭いもんで!」
教育委員長「子供は外で遊びなさい。おじさん達はそこそこ大事なお話をしているんだ」
小萌「そうくると思ったので免許証と教員免許なのです!これがないと飲み屋さんへ入れませんから!」
教育委員長「う、ん……?」
教育委員「……え?この外見で私より上っ!?」
小萌「歳の話をするな?分かったか小童!」
教育委員「は、はいっ!」
小萌「教育委員の皆様にはアポイントメントもなく、突然お邪魔したことを心から謝罪するのですよ」
小萌「ですが!本日はとある生徒の処遇について、委員の皆様に聞いて頂きたく――」
教育委員長「――すまない。子供と見誤ったことを謝罪しよう、月詠小萌先生。レディへ対するそれではなかったな」
小萌「い、いえそれは別に」
教育委員長「月詠先生。まず君はこの会議の参加者ではなく、資格もない。会議へ割って入って持論を突きつけるのはナンセンスだ」
教育委員長「もしもそんな横紙破りがまかり通ってしまったら、法が法と通用しなくなってしまう」
教育委員長「よって君には、君の所属する学校には抗議を入れる。然るべき処分はそちらで決まるだろう」
小萌「……」
教育委員「で、ですよね!
教育委員長「分かったかね?」
小萌「……はい
教育委員長「結構。ならば用件を伝えたまえ、こちらも暇ではない」
教育委員「委員長っ!?」
教育委員長「なんだね騒々しい」
教育委員「こ、こんなっ相手をされるのですかっ!?事前連絡もなしに乗り込んで来た無礼な相手を!」
教育委員長「何故しないのかね?」
教育委員「な、何故って!今処分を下すと言ったじゃないですか!」
教育委員長「処分を下すのと彼女の意見を聞かないのは別の話だ。触りしか聞いていないが、どうやら生徒に関することらしい。ですよね?」
小萌「はいっ!」
教育委員「あ、あなたはっ親船派だから!そんな甘いことを!」
教育委員長「だから、なんだ?私の個人的な思想信条が問題あると?」
教育委員長「学生の自治権と裁量権を増やすように求める親船女史と、教育委員会へ直訴に来た教師の話を聞くのと、具体的に何が、どのような因果関係が認められると?」
教育委員「そ、れはっ!」
教育委員長「仮に百歩譲って、君の言うとおりの人間だったとしよう。特定の理事へ共感を抱いているという、犯罪性の欠片もない思想をだ」
教育委員長「だがそれが、叱責覚悟で上申してきた教師の話を聞かずに追い出す理由になるのかな?」
教育委員「ですけど!」
教育委員長「……あぁ君は私にこう言わせたいのかね――」
教育委員長「――教育委員会とは学生のためにあるのだ馬鹿者め、と」
教育委員「ひっ!?」
教育委員長「失礼した月詠先生。今も言ったが、君がどのような思いでここへ来たからは知らない。手続きは手続きだ」
教育委員長「君へのペナルティを減免させるよう働きかけるのは、私の方からは無理だ」
小萌「はい」
教育委員長「しかしながら話を聞かない理由にはならない。訴えがあるのであれば、言ってみるといい」
小萌「ありがとうございます委員長。えぇと、私の担当している生徒について、委員会で取り扱って下さるようお願いしたいのです」
教育委員長「生徒。何か問題でも?」
小萌「はい。その生徒が進級の単位が足りないという……」
教育委員長「データは?」
小萌「こちらに。ご覧ください」
教育委員長「どうも……」 カチッ、ブウウーンッ
小萌「……」
教育委員長「成績は下、授業態度も悪く、素行も良くはない」
小萌「はい」
教育委員長「そして何よりも問題なのが出席率、か。一応長期休暇を利用してレポートを仕上げてきたようだが……」
教育委員長「……何とも言えない、こう、ユニークな仕上がりになっているようだ。価値を付けるのが難しいほどに」
小萌「ありがとうございます。ゴミと言い切らない委員長の優しさを感じますのですよ」
教育委員長「そして部外活動もなし、か。月詠先生、通常の手続きであればこの学生がどんな判断を下されるかな?」
小萌「……進級は、無理です」
教育委員長「そうだ。だが君はその待遇が相応しくないと感じ、ここへ乗り込んで来たと。その理由は何かな?」
小萌「数字だけでは伝わらないと思ったのです」
教育委員長「数字?」
小萌「はい。上条ちゃん――この生徒がどんな人間なのか、どんな考え方をしたり、行動をしたり。数字には、出ないからです」
教育委員長「成程。内申点で加点すれば充分に進級はできる、と?」
小萌「そう、ですね。大覇星祭で事故に巻き込まれた女の子がいました。あ、その子も私の生徒なんですけど」
小萌「彼女の命を助けたのは彼と、そのお友達でした。もしもいなかったら、その生徒は……」
教育委員長「それは誉められるべき点だ。それだけかね?」
小萌「他にももっとあるのですよ!先生のためクラス全員に活を入れてくれたり!他にも、幾らだってあるのです!」
小萌「良い子なのですよ!本当に!」
教育委員長「そうか。人命救助、それは確かに考慮されなければおかしいか」
教育委員「委員長!」
教育委員長「人命は点数に換えられない――そう言って特例としてゴリ押しするのは可能だ」
小萌「ありがとうございますっ!」
教育委員長「とはいえこの奇跡は一度しか起きない。来年、再来年と続く幸運は訪れないだろう」
小萌「それは……当人が一番よく分かっているかと思うのです」
教育委員長「温情を与えたつもりが、ここでもう一周させていた方が彼のためになるかも知れないが?」
小萌「そういう考えもあると思いのですよ……でも!本人がそう望んでいるのだから、先生としては叶えてあげないと!」
教育委員長「特定の生徒ばかり贔屓するのは許されざることだ。できればそちらの方で再会したくはないな」
小萌「ありがとうございましたっ!失礼するのですよっ!」
パタンッ
教育委員「……宜しいのですか?」
教育委員長「宜しいとも。善行には善果が必要だ」 カチッ
教育委員「教育委員長、どちらへ?」
教育委員長「そして悪行には悪果が相応しい。同窓の友人がね、こういう話を酷く気に入っている」
教育委員「その……学生が授業中暇潰しに書いた、的な小説を、ですか?」
教育委員長「気にしないでくれたまえ。当事者視点のレポートは何よりも貴重なだけなのだ」
――月詠家 実家
小萌「――と、いう訳で大変だったのですよ」
小萌母「アンタねぇ……生徒がいくら可愛いからって、そこまでしなくても良かったんじゃないの?」
小萌「ま、まぁちょっとやり過ぎたかなー、と思わなくもないのですが……こうやって謹慎中に実家へ帰れましたし、それはそれで結果オーライなのです」
小萌父「おー、小萌帰ってたのかー」
テレビ『○○商業おおぉ、二年んん、一番ライトおおぉ、佐藤君んんんー』
小萌「ただいまなのです。ってかたまの娘の帰郷に季節外れの高校野球てなんですか」
小萌父「だって地元が出てるんだから!郷土の人間の活躍を!」
小萌「いや、いいんですけどねー……」
小萌母「それでどうなったの?」
小萌「まぁ、なんとかなったのです。後日、教員委員会から正式な書類が送られて来まして」
小萌「『部外活動にて多大な貢献を遂げた生徒』により、と妙にグレードアップしているのが気になりましたが、まぁはい」
小萌母「じゃなくてラノベはどうなったのよ?」
小萌「そっちに食いついてたんですか!?娘の出世がかかった案件置いてきぼりで!?」
小萌母「いやでも大丈夫でしょ?その年までヒラやってんだから、出世ルートからは外れてるし?」
小萌「ぶん殴りますよ?」
小萌母「第一あんた、『超能力の研究がしたいのです!』つって学園都市乗り込んだんでしょ?別に教師続ける必要なくない?」
小萌「まぁ、そうなんですけどね。教師という人を育てる仕事にもやりがいがあるっていうか」
テレビ『佐藤君振り抜いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!入る!入るかホォォォォォォォォォォォォムランンンッ!!!』
小萌父「入れ!○○野郎なんてぶっ飛ばせ!」
小萌「聞きましょう?娘が研究者じゃなく人としての喜びを説いているんですから、親としては喜ぶところではないのですか?」
小萌母「まぁねぇ人の親としては喜ばしいかもだけど、できれば女としての喜びも聞きたいってとこかしらねー」 ドサッ
小萌「……なんですか?この、大量の、えーっと無駄に質の高い荘重の紙束は……?」
小萌母「お見合い写真よ」
小萌「――あ、ごめんなさい!そういえばあっちで大事な用事をやり残して――ぐふっ!?」 グイッ
小萌母「逃がさないわよー!あんたもいい歳なんだから観念しなさい!」
小萌「イヤなのですよ!?私には向こうで腐ったミカンをできるだけ綺麗な箱へパッケージする仕事が残っているんですから!」
小萌母「腐ったミカン言ったわよね?誰しもが薄々気づいてはいたけど、言わないように気をつけてたのぶっちゃけたわね?」
小萌「何事も管理・分別・保存が必要なのですよ!腐ったミカンが誰と誰と誰かは言いませんが、愛好家だっているのですから!」
小萌母「母さん心配だわー。小萌が趣味を拗らせて変な方向へ行かないのかスッゴく心配だわー」
小萌「だからって家庭を持つのが抑止にはならないでしょ!?あなたはただ孫の顔が早くみたいだけなのです!きっと!」
小萌母「あぁ見たいわよ!見たいに決まってるじゃない!」
小萌「開き直りましたね!?確かに私も家庭へ入って若奥様に旦那様をお迎えするのはニマニマしますけど!」
小萌父「あーほらほら母さん。小萌も嫌がってるじゃないか、泥仕合は止めなさい。泥仕合は」
小萌「ですけど!」
小萌父「でもなぁ、母さんも決して小萌が憎くてやってるんじゃないんだ。将来が心配で」
小萌「……分かりますけど」
小萌父「写真だけでも、なっ?見るだけでいいから?」
小萌「……見るだけですよ?」
小萌父「いい子だ!」
小萌母「(ナイス父さん!打ち合わせ通りね!)」
小萌父「(チョロいんだよね。我が娘ながら情に弱い)」
小萌「しつかり聞こえてますからね?てかこの狭い実家で登場人物三人で秘密の会話できるわけないじゃないですか」
小萌母「まぁまぁこれが一人目ね」
小萌「あー……はい、一”人”?単位間違っていませんか?」
小萌母「なに?どういうこと?」
小萌「端的に言えば、スーツを着たオークにしか見えないのです……」
小萌母「ちょっとね、ちょっとだけぽっちゃりして見えるけど、これはきっと写真映りが悪い人だから!」
小萌母「多分実物は綾野○君ぐらいシュッとしてるわよ!多分!」
小萌「謝りなさい!今すぐにオークと綾野○君を同じレベルで語ったのを謝ってください!」
小萌母「いーい?こういうのはね、あまり期待をしないで行くといいの」
小萌「なんですかそのハードル理論」
小萌母「だから最初は期待値を下げておけば、実物を見てもガッカリ感が少なくてすむってワケ。分かる?」
小萌「ガッカリするんじゃないですか。てゆうか嫌ですよ!?」
小萌「パッと見て『何類?』って迷うタイプのは!異世界行ったらエロ要員として役立っている相手だなんて!」
小萌父「でも繁殖力は強そうだぞ?」
小萌「これ弱かったらいいとこないじゃないですか!外見詐欺ですよ!」
小萌母「それ全国のオークさんへ対する暴言のような……」
小萌父「中にはエロゲ×を作りながら真面目に生きてるオークだっているかも知れないじゃないか!」
小萌「エロ業界に身を置いている時点で不真面目なのです」
小萌母「とにかく!会ってみなさいよオークと!会ったら気が合うかも知れないじゃない!」
小萌「オークと意気投合したら、それはもう人類じゃないと思うのですよ」
小萌母「何言ってるのよ!?ロ×が好きなオーク探すのにどれだけ母さん苦労したか分かってるの!?」
小萌「娘をダシに超楽しんでやがるってことだけは理解出来る。ていうか探すなよオーク」
小萌母「こうでもしないと結婚なんてしないでしょアンタ!少しぐらい強引に行かないと!」
小萌「そ、そうですけど!私にだって好みのタイプがあるのです!」
小萌母「言うわね小娘が!言ってご覧なさいよ、母さんが連れてきてあげるから!」
小萌「母さんには……無理だと思うのです」
小萌母「どうして?」
小萌「どうしてって、それはちょっと……」
小萌母「あ、まさかあんた生徒を――ってそんなベタな展開はないわね」
小萌「……」
小萌母「……マジで?」
小萌「い、言えないのです!」
スガバンッ!!!
上条「――――――――た、頼もーーーーうっ!!!」
小萌「か、上条ちゃんっ!?」
上条「大丈夫が小萌先生っ!?無事かっ!?」
小萌母「……へぇ」
小萌父「……ほぉ」
小萌「無事、ですけど。実家へ帰るだけですし」
上条「いや――信頼出来る筋からの情報たと、小萌先生がオーク族に嫁入りだって!?」
小萌「その目論見なら現在進行形ですけど、一応ぶち壊した形になりますね」
上条「俺、知ってるんだ!先生が俺を助けてくれる条件として体を張ったって!」
小萌「異世界の定番ですよね?取り敢えず困ったらエロい領主とその息子出して倒しとけ、みたいな?」
小萌「父さん母さんからも言ってくださいよ。謹慎はまぁその通りですけど、それ以外は別に何もないって」
小萌母「娘を!このままでは娘が領主の愛人にされてしまいますっ!」
小萌「乗るにしたって設定に無理がある過ぎるのですよっ!?なんで教育委員会から領主の話へ直結するのですかっ!?」
小萌父「こ、こんなワシらを助けるくれる方が、どこかにおらんもんじゃろうか……」 チラッ
小萌母「バカ言わないでくださいよあなた。そんな都合良く助けて入れる人なんて……」 チラチラッ
小萌「テンプレ?テンプレ善人系ヒロインの両親なんてなんで二人は知っているのですか?」
上条「任せて下さい!俺が小萌先生を助け――」
小萌父(※小さい)「……」
小萌母(※小さい)「……」
小萌(※とても小さい)「……」
上条「ホビッ○族の方ですか?」
小萌「おぉっと月詠家のDNAへケンカ売ってきたのですね?買いますよー、内申書0のフルセットにできるんですからねー」
小萌母「ホビッ○はね、著作権的にマズいから。リッ○みたいなハイエナがいる訳で」
上条「あぁじゃあ足の裏に毛が生えている種族で?」
小萌父「グラスがランナーするのも違うにゅう」
小萌「というかどうやって先生の実家まで来たのですか?」
上条「愚問だな、先生!俺には頼もしい仲間が二人も居るんだ!」
小萌「三バカの二人ですね」
上条「ただちょっと徳○駅に着いた途端!アイツらは俺をここへ来させるために、あえて!敵を引きつけてくれるって!」
小萌「観光へ行ったんですね。あと先生のゴーストが徳○県出身であって、先生は別にこう、正しいとも間違っているとも立場的には……」
小萌母「えーっと整理しよう。まず君は、つーか君がうちの大事な一人娘が体を賭けてまで守ろうとした学生さんなの?」
小萌「いやそんな事実はなかった」
小萌父「……成程。君がいなければこんな事態にはならなかったと?君さえいなければ!」
小萌「腐ったミカンに売れ残りを抱き合わせ販売しようとしていません?それって多分違法なのですよ?」
上条「――よし、分かった!責任とるぜ、小萌先生!」
小萌「は、はいっ!」
上条「一生っ、俺の担任になって下さい……ッ!!!」
小萌「上手い事言った的な感じになってますけど、上手くはないですよ?スベってるっいうか」
小萌父「まぁまぁ上条君も照れているだけだから。というか君、今晩泊るところは決まっているのかね?」
上条「あ、すいません。こっち来る事となんか上手い事言おうとしか考えませんでした」
小萌「いえですから上手い事は何も言えてな――」
小萌母「でしたら今日は泊っていってくださいな。古い家なので部屋は沢山ありますから」
小萌父「あぁそれがいいね。折角遠いところを来てくれたんだから」
上条「でも急に悪いですよ!押しかけた側ですし、なんて言っても迷惑かけた側ですから!」
小萌母「そうなんだけどねぇ。今日はねぇ、あなた?」
小萌父「そうなんだよ。今日はちょっと僕たち夕方から明日の昼まで出かける用事があってね」
小萌母「明日のお昼までね!」
小萌父「娘一人を置いていくのも少し心配だったんだが、君がいてくれれば安心だなっ!」
小萌「既成事実を!両親が率先して流れるように既成事実を作ろうとしないでくださいっ!?なんですかその手際の良さは!?」
小萌父「さ、こっちの部屋へ来たまえ!今日は宴会だ!丁度美味い酒が」
小萌「待つのですよ!?だからそうやってなし崩しで――」
……
テレビ『――スペース高校野球の途中ですが、ただいま入ったニュースをお知らせします!番組を変更して臨時ニュースをお知らせします!』
テレビ『これはフェイクではありません!誰かが面白可笑しく作ったムービーでもありません!複数のニュースサイトと個人の動画をソースにしています!』
テレビ『地中海が氷で覆われました!繰り替えします!ヨーロッパの地中海が一面凍結してしまいました!』
テレビ『多数の航行中の漁船、タンカー、クルーズ船全てが呑み込まれています!』
テレビ『あくまでも未確認情報ですが、中には多数の……中継?』
テレビ『中継の……あっはい、分かりました!中継クルーが現地の、どうやらヴェネツィアにヘリが到着したようです!』
テレビ『建物が……あぁクソッタレ、なんてこった……!生存者はいないのかよ……!』
テレビ『待て!そこだ!そこの屋上に人が――』
少年?『――頭が高い。弁えよ』
ブツッ
−終−
上条「――だがお断りだ!俺にはレポートを書くって使命があるんだから女子寮でキャッキャウフフしてる余裕はない!!」
神裂「誰もそんな話は一言もしていませんでしたよね?」
上条「つーか君たちも関わってるんだから少しぐらい気配りがあったっていいと思うな!『上条君をヨロシク!』みたいな!」
ステイル「君、もう露骨に利益供与を求めてきてるよね?色々と資格を失うけど、いいのかい?」
インデックス「むしろ目を付けられると思うんだよ。こっち側から強く言ったら」
上条「俺だって行きてぇよロンドン!『ここがシャーロックの歩いてた道か……』的な感慨に浸かりたいさ!」
神裂「感慨はふけるものです。灌漑ならば浸れるでしょうが」
ステイル「灌漑に浸ったら泥まみれになるだけだよね。涼しそうだ」
上条「ウルセェな外国人!日本語には日本語の良さがあるんだよ!」
神裂「あの……私は今も日本人のつもりですが」
上条「いいから帰れ帰れ!俺今からレポート作成のために溜った洗濯物と部屋の片付けと大掃除をしてから、積みゲーを処理する仕事があるんだ!」
ステイル「凄いよね。勢いで言い切ればなんだってそれっぽく聞こえるんだから」
インデックス「そしててすと前に始めてだめになるパターンまっしぐらかも」
神裂「そして休み中思う存分ゲームをして、落第ですか。頑張ってください」
上条「いいから帰れよ!故郷でたまにはゆっくりしてくればいいだろ!」
インデックス「謎のつんでれ感」
ステイル「デレ……てるかな?ただ反射的に思ったことを言ってるだけだと。本物見せてやりなよ神裂」
神裂「えぇと……あ、あなたのために里帰りするんじゃないんですからねっ?」
上条「事実だろ。俺一人をぼっちにして帰郷するんだから、それ自分のためだろ」
神裂「……なんでしたら私、残りましょうか?あなたを一人にすると首を吊りそうな雰囲気が……」
――上条の住むアパート 廊下
神裂「まぁ仕方がありませんね。今回はインデックスの一時的な里帰りということで」
ステイル「日頃の恩を返したかったんだけどねー、いやー仕方がない仕方がない」
神裂「私の目には毎日が親の葬式のような仏頂面デフォの神父が、満面の笑みを浮かべているように見えるのですが」
ステイル「そんなことないよ。ただちょっと大嫌いな人間と一緒しなくていいと思ったら、まぁ気楽でね」
神裂「仲良くしろとは言いませんが……まぁいいでしょう。借りはそのうち機会を見て返すということで」
ステイル「っていうかね、計画そのものが杜撰だよね。なんでロンドンで寮母されるのが借りを返したことになるんだい?」
神裂「管理人さんが大好きだから、とあなたが教えてくれたではないですか」
ステイル「……あぁそう設定になってるんだっけ。じゃ仕方がないね、次何かあったらまた誘うって事で」
神裂「というかステイル?あなた分かっているのですか?」
ステイル「うん?何をだい?」
神裂「彼が来られない以上、女子寮の寮監役はあなたですからね?」
ステイル「まぁそこら辺は大丈夫だと思うよ。なんやかんやでウヤムヤになると思うから、主に運命的な意味で」
神裂「……言っている意味は分かりませんが、説得力はありますね」
インデックス「……」
神裂「どうしましたかインデックス?やはり彼も一緒が良かった――と、聞くのは愚問ですかね」
インデックス「ううん。そういうことじゃなくてね、というか思ったんだけど」
インデックス「とうまがロンドンに行けないのはレポートやらなきゃなんだよね?」
ステイル「そうだね。僕だったらロンドンですりゃいいのに、とは思うんだが」
神裂「まぁ……そこは巻き込まれ体質ですし、ご迷惑をおかけしかねないため、こちらに残って勉学に集中していただくのが最善でしょう」
インデックス「それは、うん。わたしも思わなくはないかもなんだけど……」
ステイル「けど?」
インデックス「ロンドンへ来ようが、ここに残ろうが、とうまのアレな体質は同じじゃないかな?」
神裂・ステイル「あー……」
――長期休暇明け 放課後の教室
上条「……」
小萌「上条ちゃん、先生お休み入る前になんて言いましたっけ?憶えてたら言うだけ言ってみるといいのですよ?」
上条「『レポートさえ仕上げれば、まぁなんとか進級できる』……でしたっけ?」
小萌「言ってないです。正解なのは『レポート』の単語ぐらいですかねぇ」
上条「……『死ぬほど頑張れば、まぁもしかしたら可能性はゼロじゃない』……?」
小萌「正解ですねぇ。まぁ詳細はともかく主旨はその通りなのですよ」
上条「まぁそう、ですけど。書いてきましたよ?頑張りました!休みの期間中殆ど遣ってなんとか仕上げてみましたよ!」
小萌「……その、努力はね。まぁ先生も先生なのですから認めざるを得ないのですよ。どーんなしょーーーーもない代物であっても」
上条「しょーもない?先生いま生徒が一生懸命作ってきたレポートにしょーもないって言いました?」
小萌「……ほう、上条ちゃんはこれが立派なレポートである、と言い張るのですね?」
上条「言い張るだなんてそんな。事実立派ですし」
小萌「レポートの名前は?」
上条「『上条当麻と終末の七魔剣』」
小萌「タイトルが!タイトルからして狂っているのですよ!なんですかっこのググったら確実にヒットしそうなありがちなネームは!?」
小萌「編集は!?編集さんがついていながらKONOZAMAですかっ!?」
上条「ですよね。全三巻ぐらいで打ち切りになったっぽいタイトルですよね」
小萌「ラノベですか!?なろ○系で当てようとしているのですかっ!先生も嫌いじゃないですけど!中二マインドに琴線に触れるのは!」
上条「違うんですよ先生!一見ラノベっぽく偽装はしてありますけど、全部実話なんですって!」
上条「マリアンの
上条「こっち側からビリビリと御坂妹の
上条「敵味方で乱戦になったのに、俺は生き延びて来たんですから!」
小萌「上条ちゃんの妄想に姫神ちゃんを巻き込まないであげてください。彼女は人の子です」
小萌「というかチョイスに異論がありますよ!なんでロンギヌスは入ってないんですか!?」
上条「先生、割と好きですよね?こういう話?あと結論から言えば前に出たからです」
小萌「このラノベもどきをレポートとして提出した勇気は買うのですけど……も!これをハゲに提出して『留年回避ヨロ☆』って頼む先生の身にもなってください!」
上条「爆笑間違いなしですね!」
小萌「自分の進退を賭けて笑いを取りに来るとは、上条ちゃん何か呪いでもかかっているのですか?科学の街で笑いを取らないと死んじゃうような?」
上条「俺だってですね!エピローグ書いているときには思ったんですよ!『あ、これ七人は多すぎやしないかな』ってね!」
小萌「反省する段階も場所も見当外れが過ぎるのですよ。はっきり言って、ムダ」
上条「やっぱりヒロインは一人に絞った方がいいですよね!俺も実は前からそう思っていました!」
小萌「逆に今のハーレム系主人公全盛かつ、陰りも見せずに編集がノリノリで」
小萌「『え、君の筆力じゃハーレム系じゃないと読者着いて来ないよ?』と、しょーもないプロットを手も入れず売り出すのが世の中なのですよ!」
上条「先生先生、一体さっきからどの立ち位置で喋っているんですか?」
小萌「……本当に上条ちゃんは進級したい気があるのですか?もう何年か居残ろうとしてるって訳じゃないんですよね?」
上条「お言葉ですが先生。俺ぐらい『皆と一緒に卒業したい』って思ってる生徒はいないと思いますが!」
小萌「まぁ……先生も、上条ちゃんが良い子ちゃんなのは、大統領をぶん殴ってでも証言するつもりですけども」
小萌「流石に、この、ラノベもどきっていうかスタンダードすぎて一次選考すら怪しいブツで進級を勝ち取る自信はないのですよ!」
小萌「後なんですか主人公が無能力者のハーレム野郎ってのは!散々流行って流行りすぎて一周回ってありがちなのです!」
上条「おぉっとそれ以上俺へのヘイトはやめてもらいましょうか!今の精神状態だったら泣きながらストレスで吐く自信がある……ッ!」
小萌「崖っぷちでタップダンスしてる自覚はあるのですね。一応とはいえ」
上条「なんとかしてくださいよ小萌先生ぇ!そりゃ確かに俺は素行が良くない!出席日数が絶望的に足りてない上、成績だって良くないですよ!」
上条「与えられた課題はすぐロストしますし!土御門と青ピ巻き込んで他の生徒を煽ったりもします!」
上条「他にもゴリラには何故か嫌われていますし!親船先生から殴られるのもしょっちゅうですが!」
小萌「あの、上条ちゃん?卑下する体で事実をそれ以上言うと、先生の中にいる悪い子ちゃんの先生が『もうこの生徒見捨てても良くね?』って囁くので……」
上条「お願いします先生!俺だって真面目に生きたいんですよ!」
上条「でも仕方がないじゃないですか!目の前で困ってる人がいたり、ダチが面倒臭そうなことに首突っ込んでるんだったら手伝いますよそりゃ!」
小萌「……はぁ。もう本当に上条ちゃんは手のかかる子なのですよ」
上条「先生!」
小萌「担任たるもの生徒を救うのに全力を尽すもの!昇進が絶望的になったとしても、まぁそれはそれで一教師として現場一筋で!」
上条「ありがとうございますっ、ありがとうございますっ!」
小萌「救われぬ生徒に救いの手を!こないだ道で布教していたアフロの人も言っていました!」
上条「ダメですよ?それパチモンですからね?」
――XX学区教育委員会 定期会合
教育委員「――以上が定期報告になります」
教育委員長「学区全体の非行率がやや上昇傾向、補導の数も増加しているか」
教育委員「長期休暇の影響を鑑みれば妥当かと」
教育委員長「続くようであれば対策が必要だな。『落第防止』の人員も少しずつ増えているとはいえ、隅々にまで目は届かない」
教育委員「はい、ではそのように」
教育委員長「不足分は風紀委員に任せるしかないが……校外では活動禁止だというのに、嘆かわしいものだ」
教育委員「学生の本分は勉学――という時代でもないかと。キャリアを積めば積むだけ差を付けられるのであれば余計に」
教育委員長「嘆いているのは大人の方だよ。学業に専念できる環境を整えるのは誰の仕事だと思って――」
小萌「たのもーう!なのですよっ!」 バタンッ
教育委員長「――いる?ふむ?」
教育委員「誰ですか?今は会議中ですよ!」
私設警備員「す、すいませんっ!小さくて当り判定が狭いもんで!」
教育委員長「子供は外で遊びなさい。おじさん達はそこそこ大事なお話をしているんだ」
小萌「そうくると思ったので免許証と教員免許なのです!これがないと飲み屋さんへ入れませんから!」
教育委員長「う、ん……?」
教育委員「……え?この外見で私より上っ!?」
小萌「歳の話をするな?分かったか小童!」
教育委員「は、はいっ!」
小萌「教育委員の皆様にはアポイントメントもなく、突然お邪魔したことを心から謝罪するのですよ」
小萌「ですが!本日はとある生徒の処遇について、委員の皆様に聞いて頂きたく――」
教育委員長「――すまない。子供と見誤ったことを謝罪しよう、月詠小萌先生。レディへ対するそれではなかったな」
小萌「い、いえそれは別に」
教育委員長「月詠先生。まず君はこの会議の参加者ではなく、資格もない。会議へ割って入って持論を突きつけるのはナンセンスだ」
教育委員長「もしもそんな横紙破りがまかり通ってしまったら、法が法と通用しなくなってしまう」
教育委員長「よって君には、君の所属する学校には抗議を入れる。然るべき処分はそちらで決まるだろう」
小萌「……」
教育委員「で、ですよね!
教育委員長「分かったかね?」
小萌「……はい
教育委員長「結構。ならば用件を伝えたまえ、こちらも暇ではない」
教育委員「委員長っ!?」
教育委員長「なんだね騒々しい」
教育委員「こ、こんなっ相手をされるのですかっ!?事前連絡もなしに乗り込んで来た無礼な相手を!」
教育委員長「何故しないのかね?」
教育委員「な、何故って!今処分を下すと言ったじゃないですか!」
教育委員長「処分を下すのと彼女の意見を聞かないのは別の話だ。触りしか聞いていないが、どうやら生徒に関することらしい。ですよね?」
小萌「はいっ!」
教育委員「あ、あなたはっ親船派だから!そんな甘いことを!」
教育委員長「だから、なんだ?私の個人的な思想信条が問題あると?」
教育委員長「学生の自治権と裁量権を増やすように求める親船女史と、教育委員会へ直訴に来た教師の話を聞くのと、具体的に何が、どのような因果関係が認められると?」
教育委員「そ、れはっ!」
教育委員長「仮に百歩譲って、君の言うとおりの人間だったとしよう。特定の理事へ共感を抱いているという、犯罪性の欠片もない思想をだ」
教育委員長「だがそれが、叱責覚悟で上申してきた教師の話を聞かずに追い出す理由になるのかな?」
教育委員「ですけど!」
教育委員長「……あぁ君は私にこう言わせたいのかね――」
教育委員長「――教育委員会とは学生のためにあるのだ馬鹿者め、と」
教育委員「ひっ!?」
教育委員長「失礼した月詠先生。今も言ったが、君がどのような思いでここへ来たからは知らない。手続きは手続きだ」
教育委員長「君へのペナルティを減免させるよう働きかけるのは、私の方からは無理だ」
小萌「はい」
教育委員長「しかしながら話を聞かない理由にはならない。訴えがあるのであれば、言ってみるといい」
小萌「ありがとうございます委員長。えぇと、私の担当している生徒について、委員会で取り扱って下さるようお願いしたいのです」
教育委員長「生徒。何か問題でも?」
小萌「はい。その生徒が進級の単位が足りないという……」
教育委員長「データは?」
小萌「こちらに。ご覧ください」
教育委員長「どうも……」 カチッ、ブウウーンッ
小萌「……」
教育委員長「成績は下、授業態度も悪く、素行も良くはない」
小萌「はい」
教育委員長「そして何よりも問題なのが出席率、か。一応長期休暇を利用してレポートを仕上げてきたようだが……」
教育委員長「……何とも言えない、こう、ユニークな仕上がりになっているようだ。価値を付けるのが難しいほどに」
小萌「ありがとうございます。ゴミと言い切らない委員長の優しさを感じますのですよ」
教育委員長「そして部外活動もなし、か。月詠先生、通常の手続きであればこの学生がどんな判断を下されるかな?」
小萌「……進級は、無理です」
教育委員長「そうだ。だが君はその待遇が相応しくないと感じ、ここへ乗り込んで来たと。その理由は何かな?」
小萌「数字だけでは伝わらないと思ったのです」
教育委員長「数字?」
小萌「はい。上条ちゃん――この生徒がどんな人間なのか、どんな考え方をしたり、行動をしたり。数字には、出ないからです」
教育委員長「成程。内申点で加点すれば充分に進級はできる、と?」
小萌「そう、ですね。大覇星祭で事故に巻き込まれた女の子がいました。あ、その子も私の生徒なんですけど」
小萌「彼女の命を助けたのは彼と、そのお友達でした。もしもいなかったら、その生徒は……」
教育委員長「それは誉められるべき点だ。それだけかね?」
小萌「他にももっとあるのですよ!先生のためクラス全員に活を入れてくれたり!他にも、幾らだってあるのです!」
小萌「良い子なのですよ!本当に!」
教育委員長「そうか。人命救助、それは確かに考慮されなければおかしいか」
教育委員「委員長!」
教育委員長「人命は点数に換えられない――そう言って特例としてゴリ押しするのは可能だ」
小萌「ありがとうございますっ!」
教育委員長「とはいえこの奇跡は一度しか起きない。来年、再来年と続く幸運は訪れないだろう」
小萌「それは……当人が一番よく分かっているかと思うのです」
教育委員長「温情を与えたつもりが、ここでもう一周させていた方が彼のためになるかも知れないが?」
小萌「そういう考えもあると思いのですよ……でも!本人がそう望んでいるのだから、先生としては叶えてあげないと!」
教育委員長「特定の生徒ばかり贔屓するのは許されざることだ。できればそちらの方で再会したくはないな」
小萌「ありがとうございましたっ!失礼するのですよっ!」
パタンッ
教育委員「……宜しいのですか?」
教育委員長「宜しいとも。善行には善果が必要だ」 カチッ
教育委員「教育委員長、どちらへ?」
教育委員長「そして悪行には悪果が相応しい。同窓の友人がね、こういう話を酷く気に入っている」
教育委員「その……学生が授業中暇潰しに書いた、的な小説を、ですか?」
教育委員長「気にしないでくれたまえ。当事者視点のレポートは何よりも貴重なだけなのだ」
――月詠家 実家
小萌「――と、いう訳で大変だったのですよ」
小萌母「アンタねぇ……生徒がいくら可愛いからって、そこまでしなくても良かったんじゃないの?」
小萌「ま、まぁちょっとやり過ぎたかなー、と思わなくもないのですが……こうやって謹慎中に実家へ帰れましたし、それはそれで結果オーライなのです」
小萌父「おー、小萌帰ってたのかー」
テレビ『○○商業おおぉ、二年んん、一番ライトおおぉ、佐藤君んんんー』
小萌「ただいまなのです。ってかたまの娘の帰郷に季節外れの高校野球てなんですか」
小萌父「だって地元が出てるんだから!郷土の人間の活躍を!」
小萌「いや、いいんですけどねー……」
小萌母「それでどうなったの?」
小萌「まぁ、なんとかなったのです。後日、教員委員会から正式な書類が送られて来まして」
小萌「『部外活動にて多大な貢献を遂げた生徒』により、と妙にグレードアップしているのが気になりましたが、まぁはい」
小萌母「じゃなくてラノベはどうなったのよ?」
小萌「そっちに食いついてたんですか!?娘の出世がかかった案件置いてきぼりで!?」
小萌母「いやでも大丈夫でしょ?その年までヒラやってんだから、出世ルートからは外れてるし?」
小萌「ぶん殴りますよ?」
小萌母「第一あんた、『超能力の研究がしたいのです!』つって学園都市乗り込んだんでしょ?別に教師続ける必要なくない?」
小萌「まぁ、そうなんですけどね。教師という人を育てる仕事にもやりがいがあるっていうか」
テレビ『佐藤君振り抜いたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!入る!入るかホォォォォォォォォォォォォムランンンッ!!!』
小萌父「入れ!○○野郎なんてぶっ飛ばせ!」
小萌「聞きましょう?娘が研究者じゃなく人としての喜びを説いているんですから、親としては喜ぶところではないのですか?」
小萌母「まぁねぇ人の親としては喜ばしいかもだけど、できれば女としての喜びも聞きたいってとこかしらねー」 ドサッ
小萌「……なんですか?この、大量の、えーっと無駄に質の高い荘重の紙束は……?」
小萌母「お見合い写真よ」
小萌「――あ、ごめんなさい!そういえばあっちで大事な用事をやり残して――ぐふっ!?」 グイッ
小萌母「逃がさないわよー!あんたもいい歳なんだから観念しなさい!」
小萌「イヤなのですよ!?私には向こうで腐ったミカンをできるだけ綺麗な箱へパッケージする仕事が残っているんですから!」
小萌母「腐ったミカン言ったわよね?誰しもが薄々気づいてはいたけど、言わないように気をつけてたのぶっちゃけたわね?」
小萌「何事も管理・分別・保存が必要なのですよ!腐ったミカンが誰と誰と誰かは言いませんが、愛好家だっているのですから!」
小萌母「母さん心配だわー。小萌が趣味を拗らせて変な方向へ行かないのかスッゴく心配だわー」
小萌「だからって家庭を持つのが抑止にはならないでしょ!?あなたはただ孫の顔が早くみたいだけなのです!きっと!」
小萌母「あぁ見たいわよ!見たいに決まってるじゃない!」
小萌「開き直りましたね!?確かに私も家庭へ入って若奥様に旦那様をお迎えするのはニマニマしますけど!」
小萌父「あーほらほら母さん。小萌も嫌がってるじゃないか、泥仕合は止めなさい。泥仕合は」
小萌「ですけど!」
小萌父「でもなぁ、母さんも決して小萌が憎くてやってるんじゃないんだ。将来が心配で」
小萌「……分かりますけど」
小萌父「写真だけでも、なっ?見るだけでいいから?」
小萌「……見るだけですよ?」
小萌父「いい子だ!」
小萌母「(ナイス父さん!打ち合わせ通りね!)」
小萌父「(チョロいんだよね。我が娘ながら情に弱い)」
小萌「しつかり聞こえてますからね?てかこの狭い実家で登場人物三人で秘密の会話できるわけないじゃないですか」
小萌母「まぁまぁこれが一人目ね」
小萌「あー……はい、一”人”?単位間違っていませんか?」
小萌母「なに?どういうこと?」
小萌「端的に言えば、スーツを着たオークにしか見えないのです……」
小萌母「ちょっとね、ちょっとだけぽっちゃりして見えるけど、これはきっと写真映りが悪い人だから!」
小萌母「多分実物は綾野○君ぐらいシュッとしてるわよ!多分!」
小萌「謝りなさい!今すぐにオークと綾野○君を同じレベルで語ったのを謝ってください!」
小萌母「いーい?こういうのはね、あまり期待をしないで行くといいの」
小萌「なんですかそのハードル理論」
小萌母「だから最初は期待値を下げておけば、実物を見てもガッカリ感が少なくてすむってワケ。分かる?」
小萌「ガッカリするんじゃないですか。てゆうか嫌ですよ!?」
小萌「パッと見て『何類?』って迷うタイプのは!異世界行ったらエロ要員として役立っている相手だなんて!」
小萌父「でも繁殖力は強そうだぞ?」
小萌「これ弱かったらいいとこないじゃないですか!外見詐欺ですよ!」
小萌母「それ全国のオークさんへ対する暴言のような……」
小萌父「中にはエロゲ×を作りながら真面目に生きてるオークだっているかも知れないじゃないか!」
小萌「エロ業界に身を置いている時点で不真面目なのです」
小萌母「とにかく!会ってみなさいよオークと!会ったら気が合うかも知れないじゃない!」
小萌「オークと意気投合したら、それはもう人類じゃないと思うのですよ」
小萌母「何言ってるのよ!?ロ×が好きなオーク探すのにどれだけ母さん苦労したか分かってるの!?」
小萌「娘をダシに超楽しんでやがるってことだけは理解出来る。ていうか探すなよオーク」
小萌母「こうでもしないと結婚なんてしないでしょアンタ!少しぐらい強引に行かないと!」
小萌「そ、そうですけど!私にだって好みのタイプがあるのです!」
小萌母「言うわね小娘が!言ってご覧なさいよ、母さんが連れてきてあげるから!」
小萌「母さんには……無理だと思うのです」
小萌母「どうして?」
小萌「どうしてって、それはちょっと……」
小萌母「あ、まさかあんた生徒を――ってそんなベタな展開はないわね」
小萌「……」
小萌母「……マジで?」
小萌「い、言えないのです!」
スガバンッ!!!
上条「――――――――た、頼もーーーーうっ!!!」
小萌「か、上条ちゃんっ!?」
上条「大丈夫が小萌先生っ!?無事かっ!?」
小萌母「……へぇ」
小萌父「……ほぉ」
小萌「無事、ですけど。実家へ帰るだけですし」
上条「いや――信頼出来る筋からの情報たと、小萌先生がオーク族に嫁入りだって!?」
小萌「その目論見なら現在進行形ですけど、一応ぶち壊した形になりますね」
上条「俺、知ってるんだ!先生が俺を助けてくれる条件として体を張ったって!」
小萌「異世界の定番ですよね?取り敢えず困ったらエロい領主とその息子出して倒しとけ、みたいな?」
小萌「父さん母さんからも言ってくださいよ。謹慎はまぁその通りですけど、それ以外は別に何もないって」
小萌母「娘を!このままでは娘が領主の愛人にされてしまいますっ!」
小萌「乗るにしたって設定に無理がある過ぎるのですよっ!?なんで教育委員会から領主の話へ直結するのですかっ!?」
小萌父「こ、こんなワシらを助けるくれる方が、どこかにおらんもんじゃろうか……」 チラッ
小萌母「バカ言わないでくださいよあなた。そんな都合良く助けて入れる人なんて……」 チラチラッ
小萌「テンプレ?テンプレ善人系ヒロインの両親なんてなんで二人は知っているのですか?」
上条「任せて下さい!俺が小萌先生を助け――」
小萌父(※小さい)「……」
小萌母(※小さい)「……」
小萌(※とても小さい)「……」
上条「ホビッ○族の方ですか?」
小萌「おぉっと月詠家のDNAへケンカ売ってきたのですね?買いますよー、内申書0のフルセットにできるんですからねー」
小萌母「ホビッ○はね、著作権的にマズいから。リッ○みたいなハイエナがいる訳で」
上条「あぁじゃあ足の裏に毛が生えている種族で?」
小萌父「グラスがランナーするのも違うにゅう」
小萌「というかどうやって先生の実家まで来たのですか?」
上条「愚問だな、先生!俺には頼もしい仲間が二人も居るんだ!」
小萌「三バカの二人ですね」
上条「ただちょっと徳○駅に着いた途端!アイツらは俺をここへ来させるために、あえて!敵を引きつけてくれるって!」
小萌「観光へ行ったんですね。あと先生のゴーストが徳○県出身であって、先生は別にこう、正しいとも間違っているとも立場的には……」
小萌母「えーっと整理しよう。まず君は、つーか君がうちの大事な一人娘が体を賭けてまで守ろうとした学生さんなの?」
小萌「いやそんな事実はなかった」
小萌父「……成程。君がいなければこんな事態にはならなかったと?君さえいなければ!」
小萌「腐ったミカンに売れ残りを抱き合わせ販売しようとしていません?それって多分違法なのですよ?」
上条「――よし、分かった!責任とるぜ、小萌先生!」
小萌「は、はいっ!」
上条「一生っ、俺の担任になって下さい……ッ!!!」
小萌「上手い事言った的な感じになってますけど、上手くはないですよ?スベってるっいうか」
小萌父「まぁまぁ上条君も照れているだけだから。というか君、今晩泊るところは決まっているのかね?」
上条「あ、すいません。こっち来る事となんか上手い事言おうとしか考えませんでした」
小萌「いえですから上手い事は何も言えてな――」
小萌母「でしたら今日は泊っていってくださいな。古い家なので部屋は沢山ありますから」
小萌父「あぁそれがいいね。折角遠いところを来てくれたんだから」
上条「でも急に悪いですよ!押しかけた側ですし、なんて言っても迷惑かけた側ですから!」
小萌母「そうなんだけどねぇ。今日はねぇ、あなた?」
小萌父「そうなんだよ。今日はちょっと僕たち夕方から明日の昼まで出かける用事があってね」
小萌母「明日のお昼までね!」
小萌父「娘一人を置いていくのも少し心配だったんだが、君がいてくれれば安心だなっ!」
小萌「既成事実を!両親が率先して流れるように既成事実を作ろうとしないでくださいっ!?なんですかその手際の良さは!?」
小萌父「さ、こっちの部屋へ来たまえ!今日は宴会だ!丁度美味い酒が」
小萌「待つのですよ!?だからそうやってなし崩しで――」
……
テレビ『――スペース高校野球の途中ですが、ただいま入ったニュースをお知らせします!番組を変更して臨時ニュースをお知らせします!』
テレビ『これはフェイクではありません!誰かが面白可笑しく作ったムービーでもありません!複数のニュースサイトと個人の動画をソースにしています!』
テレビ『地中海が氷で覆われました!繰り替えします!ヨーロッパの地中海が一面凍結してしまいました!』
テレビ『多数の航行中の漁船、タンカー、クルーズ船全てが呑み込まれています!』
テレビ『あくまでも未確認情報ですが、中には多数の……中継?』
テレビ『中継の……あっはい、分かりました!中継クルーが現地の、どうやらヴェネツィアにヘリが到着したようです!』
テレビ『建物が……あぁクソッタレ、なんてこった……!生存者はいないのかよ……!』
テレビ『待て!そこだ!そこの屋上に人が――』
少年?『――頭が高い。弁えよ』
ブツッ
−終−