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Clock(trial)

MMR(御坂美琴の料理教室) 煉獄編 第04話 「カレンスキンク」


――某国某所某魔術結社のアジト

ベイロープ「――帰ったわよー」

フロリス「たっだいまー、つーか寒っ!外スッケー寒いっーの!」

フロリス「てか誰だよ!?『誰がアイス買いに行くかジャンケンで決めましょうねっ!』とか言ったの!」

フロリス「男運は最悪なのにレッサーなんでジャンケン強いんだって!」

ベイロープ「否定しなかったくせにグチグチ言わないの」

ベイロープ「『暖かい部屋で食べるアイスってウマいよねー』って乗ったの誰?」

フロリス「言ったけどさー?こう、あぁゆうのは他人にババ引かせて笑うのが楽しいんであって?」

ベイロープ「気持ちは分からないでもないけど、趣味が悪いわよ」

フロリス「マ、そーなんだけど、そーなんですけどー……ってゆうか寒いなっここ!?外とそんなに変わんねーし!」

ベイロープ「そうね、暖房も消えてるし、レッサーの姿も見えな――」

御坂「……」

ベイロープ「……えっと」

フロリス「……アレ?オカシイナー?ワタシの目には妖精さんが見えるぞー?」

ベイロープ「妖精にしては、ちょっとトウが立ってるっていうか、その」

ベイロープ「この間『TIME』に載ったばっかりの人の姿が見えるような……?」

御坂「……るーるるー、るるる、るーるー……」

フロリス「大岡越○のテーマ曲をハミングしている、だと!?」

ベイロープ「――レッサー!アホの子のレッサーはどこよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!?」

レッサー「あい?どうしましたかベイロープ?」

ベイロープ「アンタって子は!?また!一体!何を!拾ってきているのだわっ!?」 ギュッギュッギュッギュッ

レッサー「のーのーのーのー!?ただいまを言う前に攻撃って何ですかっ!?アイアンクルォオゥ(巻き舌)嫌いじゃないですけどっ!」

フロリス「たった10数分でトラブル起こせるレッサースゲーな」

レッサー「あなたの全力でおっぱいをアイアンクローするのは止めてくださいなっ!?腫れますからっ!」

レッサー「あ、でもそしたらまたカップ上がっちゃいますねー、まいったなー、ただでさえ大きくなってるのにー」 チラッ

フロリス「こっち見ながら言うんじゃネーヨ。てか余裕あるな」

ベイロープ「あれほど!ほいほい落ちてるモノを拾ってくるな!言った!のにっ!」

レッサー「待ってつかーさい!確かに拾ったきたは拾ってきたみたいですけど私がやったんじゃないですって!」

ベイロープ「アンタしかいないでしょうが!『学芸都市』で仲良くなったのって!」

レッサー「いやあの、本当に違くてですね……」

ランシス「……いえーい」

ベイロープ「……ランシスー?あなた仲良かったっけ……?」

ランシス「学芸都市の路地裏で……全裸になった……仲っ!」

フロリス「なんでそんな気合い入ってんだ」

レッサー「てかベイロープあなた良くないですよっ、何かあったらすーぐ私だって決めつけるのは!」

レッサー「謝ってください!私のおっぱいに謝ってくださいな!」

ベイロープ「ごめんね……レッサーの体に生えてきたばかりに苦労かけてるわね」

レッサー「あれあれ方向性が違うぞー?私じゃなくておっぱいさんへの謝罪になってませんか?」

レッサー「『宿主がアレだから大変ね』って遠回しにケンカ売ってますよね?」

フロリス「ウチの子になればもっと楽させてあげるんだけどねー」

ランシス「……ん」

レッサー「おや?その言い方だと私が不憫な生き方をしているように聞こえますよ?」

ベイロープ「はいはい、そのぐらいに!拾った所へ返してきなさい!」

ランシス「いやぁ……それは流石にちょっと」

ベイロープ「どうしてよ」

レッサー「見て下さい、あれ」

御坂「『あんなーに一緒だったーのにー、ゆーぐれーは、もう違ーういー○』」

ベイロープ「……歌ってるわね。『あんなに一緒だったの○』」

ランシス「路上で膝抱えてあぁしてるの見たら、まぁ拾うよね……?」

ベイロープ「気持ちは分からないでもない、けど」

御坂「『ガンダーラ、ガンダーラー、びーしーふぉーび……ふーんふふーん』」

ランシス「あ、『ガンダー○』」

ベイロープ「しかもサビがうろ覚えだから鼻歌で誤魔化したわよね」

御坂「『見たことーのないばーしょへ、連れて行ってあげるー』」

レッサー「メディック!メディーーーークっ!ピンチですよベイロープ!」

レッサー「御坂さんがハッピーじゃないのに『ハッピーマテリア○ 』歌い出しました!」

レッサー「もしこれが一人カラオケ時に、隣から大勢での声で聞こえてきたら泣く自信がありますね!」

フロリス「一人オケの時点で泣いとけよ、そこは」

御坂「『けいけーんちー、じょーうしょーちゅー』」

レッサー「おっと!『経験値上昇○』ですなっ!」

フロリス「もうこれただの持ち歌メドレーになってねーか?」

レッサー「フロリス……あーたなんてヒドい事を!」

フロリス「んーっだよ」

レッサー「出してるCDの半分がBLと神様関係(※鎌池先生作品)だけしかないって!なんて暴言を吐くんですかっ!?」

フロリス「ソレ阿○敦さんじゃネ?中の人狙い撃ちにしてのはそっちだろ」

ベイロープ「……もあーもう分かったわ。話は聞くから、取り敢えず話だけは」

御坂「で、でもっ……気軽に話すようなことじゃないし……!」

フロリス「アッハイ、じゃ解散でー――ランシスーラムレーズンととチョコチップ、どっがいい?」

ランシス「私、ラムレーズン」

レッサー「ズルいですよっ。そのアイスは私が前世から目をつけてたというのに!」

御坂「あれは――そう、前回のお料理教室の話なんだけど……ッ!!!」

ベイロープ「話す気満々よね?回想入る前置きだし」

ベイロープ「……あと拾ってきたのは私じゃないのに、どうして相手をするのが……?」



――回想

円周『――美琴ちゃん、本当に当麻お兄ちゃんが好きなの?』

御坂『なっ!?……す、好きって!』

円周『どーお?』

御坂『べ、つに――あんたには関係無い話じゃない!あたしが誰を好きだって!』

円周『ま、そーだねぇ。当事者以外が首突っ込むヤボだし、馬に蹴られて死んじゃえーつては思うよ』

円周『だから”これ”はただの私の感想であって、独り言。ただの外野の悪意にまみれた意見』

円周『当事者”じゃない”第三者のお節介な、それでいて果てしない果てない罪果――』

円周『だから答えは要らない。ただ、私が、喋っているだけだから』

御坂『……』

円周『まーずー、小さな所から言えば――美琴ちゃんは当麻お兄ちゃんの好きなものって知ってるのかな?知らないでしょ?』

円周『ゲーノージンやクラスメイト辺りだって知ってるような、簡単で、有り触れた情報。それすら、知らないよね?』

御坂『し、知ってるわよ!そのぐらい!』

円周『……へぇ?すっごーい、ほんとーにぃ?』

御坂『誰だって分かるわよ!バカにして!』

円周『ちなみに聞いてもいいかな?私に教えて?ねぇ?』

御坂『お、おっぱい?』

円周『私の欲しかった答えと違う。や、うんまぁそうっちゃそうなんだけどね。それ言ったら終わりってゆうかさ』

円周『そんなザックリとした斬り方、最近の石川五右衛○でもしないよ?ぶっちゃけすぎじゃないかな?』

円周『今の流れからすれば「好物は何ですか?」みたいな感じなのに、なんで美琴ちゃんやっちゃったの?』

円周『てか話の流れではもうシリアスパートへ入ってたよね?空気台無しだよね?』

円周『まぁ……それはそうなんだけども――そうだね、例えば美琴ちゃんのお母さん辺りがね』

円周『「あのねーママ、あたし彼氏――みたいなの、出来ちゃったんだけど」』

御坂『入るの?シリアスなのにショートコント入るの?』

円周『台無しにしたのは美琴ちゃんだし、私もまぁいいかなって』

御坂(御坂ママ)『「そ、そうなの!?ねぇねぇお話聞かせてよ!」』

円周『「べ、べつに本当の彼氏って訳じゃないんだからねっ!」』

円周『「ただちょっとゆくゆくは籍を入れて一軒家買って、死ぬまで一緒にいたいってだけなんだから!」』

御坂『その仮想あたしが例外なく頭の悪いツンデレになってるのはなんで?』

円周『そうだねっ!こんな時「佐天涙子」ならこう言うんだよね……っ!』

円周『「いやいや御坂さん、かなり本腰でエミュレートしてますけど?」』

円周『「むしろ使い古されたツンデレ像でも”あ、まだまだ需要はあるな”って思わせる御坂△」』

御坂『間に一本入れる分だけテンポ悪いわー……』

円周『素に戻って言うけど、病んだ将来設定にツッコまない美琴ちゃんもどうかしてると思うよ?スルーせずに割と本気で』

御坂『「――で、美琴ちゃんの彼氏の好きなものはなぁに?」』

円周『「――うん、おっぱいだって!おっぱいが大好きだって言ってたわ!」』

御坂『……ごめん、やっぱ全面的にあたしが悪いわ。どう考えても弁護の余地ないし』

御坂『ウチのハハだったら父さんと連携して潰しにいきそう……!』

円周『……まぁ生まれ持った性別とリビドーを否定するつもりはないんだけど、もっとこう、ヒロインなんだから言って良い事と悪い事があるからね?』

御坂『――それで?それが何だって言うのよ!あたしがあいつの好物一つ知らないのが、どう関係するって!?』

円周『や、もうこの空気からシリアスに持って行くのは無理なんじゃないかなー……?』

御坂『知ってたけど!』

円周『うんじゃあ……好きなタイプは?好みの音楽は?ゲームは?本は?アニメは?』

円周『好きじゃなかったら嫌いなのでもいーよ?こんなタイプは無理だとか、誰々が嫌いだとかそーゆーのでもさ』

御坂『……』

円周『美琴ちゃん、知らないよね、それを。当麻お兄ちゃんが何が好きで何が嫌いなのかって、そんな当たり前の事を』

円周『なんで?ねぇなんで美琴ちゃんは知ろうとしなかったの?』

御坂『そりゃ――勝手に、調べるのってのは』

円周『違うよね、”興味無い”んだよね?』

御坂『興味……?』

円周『美琴ちゃんが好きなのは――「偶像のとしての上条当麻」なんでしょ?』

御坂『違うっ!』

円周『たまたま”そこ”に都合の良い相手がいて、たまたま条件に合致したからって好きになった――や』

円周『”木原”的には「好きになったフリをした」って話だぜ。なぁ?』

御坂『アンタに――アンタにあたしの何が分かるって言うのよ!?』

円周『あぁあぁ知らねぇよ俺には、何もな第三位。人の好意なんてもんにはクソ食らえだし、正直興味なんざねぇ』

円周『だがな”観察者”としての俺にはちぃっとばっかしお前さんには貸しもある。白モヤシの件だが』

御坂『……誰よ』

円周『それも今は本題と関係無い。そして言ってやる義理もなく、だが言ってやる俺はただの根性悪ぃオッサンなんだがね』

円周『「好きな相手のことを知りたい」――これを突き詰めればストーカーだし、独りよがりになっちまう。それは、分かる』

円周『ただ、お前さんのもいいに感じに狂ってる。白モヤシが霞むぐらいに』

御坂『なにを、いって』

円周『人一人を助けるっつって、命のやりとりしてる間に首突っ込んで引っかき回す。それは、分からない』

円周『命は大事、生命は大事、地球よりも重い――とは言ったところで、平和のために他人の横っ面殴りに行くのは少数派になっちまってる』

円周『それでお前、まともな人間が打算も無しに他人様のためにそこまでするかねぇ、ってのが本題だわな』

御坂『するに決まってるでしょうよ!私じゃなくても!その――力があれば!』

御坂『困ってる人が居るんだったら助ける!それのどこが悪いって言うのよ!?』

円周『バカ言ってんじゃねぇよ。”力のある人間にとってみれば”当たり前の話だ』

円周『深夜にコンビニ行くのも、その裏でたむろってるチンピラ片すのも同じ感覚なんだろう』

円周『だが、どっちも無きゃ出来る事じゃねぇだろう、なぁ?』

御坂『……』

円周『お前さんの善性とやらもそうだぜ。”たまたま力があるからできる”だけ』

円周『だから誰かを好きになったりしてんのもどうよ?それこそさっさと手頃なところで済ませて良いようなモンじゃなくね?』

円周『たまたま、そこに、その場所に、降って湧いたような不幸を、どうにかしてくれた王子様』

円周『そいつを好きだと思い込んでるだけなんだろーな。どーよ?』

御坂『……』



――学園都市 雨の降りしきる街角

ザー…………

御坂『……』 トボトボ

男『あー不幸だー、今日も不幸だわー』

男『なんかこう道歩いてたら職質にあって長時間拘束された挙げ句、留置所で爆破テロに巻き込まれて』

男『そっちから足抜けした元工作員の女の子(ロ×)と一緒に組織壊滅させたけど、結局何もリターンなかったわー』

男『何か女の子に「お前は私が殺す!……だから、それまで死なないで」って言われたけど、あれなんだったんだろうなー?』

男『あー、不幸だー。今日も不幸だわー』

御坂『……』 トボトボ

男『あれ?あそこに居るのって』

御坂『……』

男『……』

御坂『……』

男『……あー、不幸だわー』

御坂『おいスルーするんじゃない』

男『知ってた!目が合ったしな!』

男『でもなんか面倒臭いことになりそうだから、つい?』

御坂『ぶっ飛ばすわよこの男』

上条(男)『や、やだなー御坂さん。ジョーダンに決まってるでしょーが、ジョーダンに』

上条『ただちょっと「この雨の中で勝負挑まれたらスタン率高くね?」なんて考えてただけで』

御坂『……人のことなんて思ってんのよ、あんたは』

上条『カミナリ通り魔?』

御坂『なんだその愉快な殺人鬼みたいな矛盾した表現は』

上条『てかなんで傘も差さずに濡れてんの?罰ゲーム?』

御坂『その発想が分からな……』

上条『御坂?』

御坂『――い』

トサッ

上条『御坂っ!?おいどうし――』



――上条の部屋

御坂『……ここは?』

上条『あぁ目が覚めたんだ。良かった』

御坂『――って裸!?なんでベッドにシーツ一枚で転がされてんのよ!?』

上条『風邪引くだろ。濡れたまんまじゃ』

御坂『そっか、ありが――ってイヤイヤイヤイヤっ!言わないわよ!なんでフツーに見てんのよ!』

上条『いや綺麗だったぞ』

御坂『綺麗って――何言ってるのか分かってんのか!アンタはっ!?』

上条『……それは、そっちの台詞だと思うぜ?』 グッ

御坂『な、なによっ!そんなに詰め寄ったって、怖くなんてないんだから!』

御坂『あんたなんて、全然っ!』

上条『俺に掴まれたら能力使えないのに?』 パシッ

御坂『くっ……す、好きにしないよ!でも――』

上条『でも?』

御坂『その、初めて、だから。乱暴には……』

上条『……ふふっ』

御坂『……な、何よ』

上条『ごめん。ちょっと強くするかも知れない』

御坂『このヘンタイっ!』

上条『けど、俺がお前を好きにするのは――』

上条『――俺がお前を好きだからだよ』

御坂『……このヘンタイっ……!』

上条『御坂――好きだ』

御坂『……うん、あたしも』



――回想終り

レッサー・フロリス・ベイロープ「「「……」」」

ランシス「一言一句違わずに憶えてるなんて……どんな記憶力」

ベイロープ「ツッコむところそこじゃないでしょ?ってゆうかもっと根本的な所がね」

フロリス「……マーそうだよねぇ。明らかに矛盾してるような」

レッサー「てか、あれ?時系列的におかしくないですかね」

御坂「な、なにがよ」

レッサー「この流れだったら、今頃上条さんのお部屋でセから始まるフレンド関係になってる筈では?」

レッサー「レディコミ的な展開、つーかあのヘタレ元童貞の意外な行動力に驚きを禁じ得ないんですけども……」

御坂「あ、ごめん。途中から私の妄想入ってたわ」

フロリス「意外と余裕あるじゃねぇかこのアマ」

レッサー「や、まぁそんな気はしてたんですが。どこら辺から?」

御坂「や……ちょっとだけ、ちょっとだけよ?ほんの少し盛ったかなー?ぐらい?」

ベイロープ「具体的には?」

御坂「路上で雨に濡れた所から?」

レッサー「まさかの上条さんのターン全てが想像だった!?……ぐぬぬ……!やりますねぇアナタっ!」

フロリス「芸人目線で張り合うな」

ランシス「……あぁ”ビリビリ”って呼んでなかったしね……」

御坂「てゆうか雨に濡れる必要なくない?傘差せばいいんだし?」

レッサー「そりゃまぁそうでしょうけども!ちょっと『あ、意外と肉食系だったのか!?』とビビった私に謝って下さい!」

レッサー「相手が弱ってるところへつけ込んだなんてハンターとしての資質は高いだとか感心したり!」

レッサー「あとATO○は『かささせばいいんだし』を『課ささせ売淫だし(さ抜き表現)』に予測変換させるのはどうか思いますよっ!」

ランシス「ちょっと何言ってるのかわからない」

ベイロープ「……いやもう、解散しても良くない?普通に判断力あるみたいだし」

御坂「『かみさまーがーくーれーたーおーくーりーもーのーは、不幸だっ○ー』」

レッサー「また歌い出しましたよ。二期OPを」

フロリス「面倒クセーな!」

ランシス「……料理のりょの字も出てないけど、また続く……」



――イギリス 新たなる光・某アジト

レッサー「ってゆーかーですね、お話聞いてて思ったんですけどちょっといいですかね?」

レッサー「引っかかる、ってゆうか少しばかり気になりましてね。あ、いや大した事じゃないんですが」

御坂「何よ」

レッサー「フロリスから”フ”と”ス”を取ると、”ロリ”になりますよね?」

御坂「本当に大した事じゃないわねっ!?話に擦りもしてないっ!?」

レッサー「いやだから言ったじゃないですが、大した事じゃないんですが、って」

御坂「つまりあたしの話を全然聞いてなかった、と?」

フロリス「とユーカ、ワタシをロ×のカテゴリへ入れんなし。とばっちりだろ」

ランシス「薄い方同盟……いえーい」

ベイロープ「あっても邪魔なだけなんだけど……」

レッサー「まぁ事情は概ね理解はしました。あなたさんは本当にかみ――いぃっと、じゃない」

レッサー「私の知らない学園都市在住の誰かさんか、彼を好きかどうか不安になった、と」

御坂「そういう訳じゃ……」

レッサー「お嫌いですか?」

御坂「嫌い!……じゃないってゆうかな!嫌いじゃないわよっ!」

御坂「ただちょっと、急に言われて頭ん中こんがらがっちゃった、みたいで」

レッサー「ぐぬぬ……!天然モノのツンデレが憎い……っ!!!」

フロリス「張り合うな恋愛ゲームでイロモノ担当、もしくは隠しキャラ」

レッサー「誰がバッドエンドの時に出てくるってゆうんですかっ!?最近は容量の都合でモブキャラにも立ち絵ないんですよっ!?」

ランシス「昨今のエロ×ー事情を言われても……」

御坂「あんた達、真面目に話聞く気はないわよね?これっぽっちもね?」

ベイロープ「無い事は無いし、前にウチのおバカ達が世話になってるから相談ぐらいは吝かじゃ無いんだけどね」

ベイロープ「……ただ、アジトに拾ってきて面倒見る程度の縁は無かったわよね、って話で」

ランシス「面倒看るから、お散歩にも行くし?」

御坂「拾ってきた子犬みたいな扱いなの?や、まぁ似たような感じだけど」

レッサー「あっはーい!はいはーい!提案がありまーす!」

御坂「はいどうぞ、えっと――」

レッサー「レッサーちゃんです!」

御坂「レッサー……さん?」

レッサー「そのツンツン頭じゃなくたって男はいっぱい居ると思いますよっ!具体的には34億弱!」

レッサー「何も一人だけを追いかけるんじゃなく、そっちの方へシフトするのもいいんじゃないですかねっ!」

ランシス「……あ、悪レッサー出てる」

ベイロープ「元々正義の子は居なかった思うわ……」

フロリス「そして”レッサー調子に乗る=大失敗”のフラグだし」

御坂「まぁ、そうね。理屈だけを言っちゃえば」

レッサー「ですよねっ!この世はラォブアンッピイェェェスッ!シモにユルくてナンボだって話ですよ!」」

御坂「でもなー、今更ってゆうか、機種変じゃあるまいしホイホイ変えるってのはちょっと」

レッサー「でっすねー分かりますっ!やっぱり一途なヒロインこそがメインヒロイン差し置いて人気投票一意へ輝く秘訣ですからねっ!」

御坂「えっと……?なにこの適当なナマモノは?」

ベイロープ「あぁ仕様だから気にしないであげて?」

レッサー「人が折角傷心のミサーカさんを慰めようとしてたのに!?」

御坂「てかあんた、真面目に話聞くつもりないわよね?」

レッサー「やっだなぁそんな訳ないですってば。誤解も誤解、濡れ衣を着せられたジャン・バルジャンじゃないんですから」

御坂「あれ、出所後は銀の燭台パチってるわよね?最初のは冤罪だけど」

レッサー「人の不幸ほど楽しいものなんてあるものでしょうか!いやっ、ありませんともっ!!!」

御坂「……イギリスの殺人罪って重いのかな……?いや、証拠が残らなければ無罪か……」

レッサー「御坂さんったらスマフォで検索だなんてまるでマジじゃ無いですかーやだー」

ベイロープ「はいはい、そこまでにして。レッサーもいい加減しなさい……とは言っても」

ベイロープ「アジトへ拾ってきた異能者……うーん、悪いフラグとしか」

ランシス「面倒看るから……っ!」

ベイロープ「預かって数日経ったらサイボーク兵が制圧しに来そうで怖いのよね……」

御坂「それは流石に無い――と、いいなぁって思いますねっ!」

フロリス「第一位だっけ?”一人核兵器”とか呼ばれてんの?」

フロリス「アンタも戦力で言えば聖人並なんだから、自重しろよー」

レッサー「待って下さいなっ!皆さんでよってたかって!」

レッサー「この人は傷ついてるんですよ!困ってる人を見過ごすって人として良くないと思いますっ!」

御坂「あんた……」

レッサー「ましてや女の子にとって恋愛は一大事!それを凹んでわざわざイギリスくんだりまで来てるんですから、ここは親身になってあげるのが得策じゃ無いでしょうかねっ!?」

御坂「いやいや、そこまで一大事じゃないけどなっ!」

フロリス「珍しーな。どんな風の吹き回しなんだぜ?」

ランシス「……多分、あれ。出番」

ベイロープ「出番?」

ランシス「……ん。『このままここに居ればSSでワンチャンあるぜ!』みたい、な?」

レッサー「OH!ナニイッテンデスカーランシスサーン?ワタシニハリカイデキマセーン!」

レッサー「決して!そう決して『このままこの女確保すれば”とある科学と魔術の超電磁砲と魔術結社”なんて外伝が始まり!」

レッサー「御坂さんに並んで主役へ踊り出てアニメへスピンオフなんて!そんな打算はありません事よっ!」

御坂「妄想ただ漏れだろ。てゆうかスピンオフってなんだ、人の人生でエンターテイメントしないでよ!」

レッサー「『科学と魔術が交差する時、物語は始まる――』」

御坂「うっさいわね!最近交差してないけどちょっと片思いぐらいの方が恋愛って楽しいのよ!」

ベイロープ「片思いの時点で、ただの恋じゃ……?」

フロリス「ちょっと名言っぽーい」

レッサー「Hの後にIがあるんですねっ!そういうの大好きですっ!」

御坂「待て。ゲスな、話は、してない」

フロリス「さっきまでレディコミの話してなかったっけ?」

ランシス「……乙女より百合のほうが似合ってたり」

御坂「まてやめてあたしに変なキャラつけないで!」

レッサー「ついてるっていいますか、御坂さんには憑いてるって言った方が適切でしょうが。オプション的なものが」

御坂「黒子はね……良い子なのよ、うん、あたしが絡まなければ。すっごく」

レッサー「クロコさんとやらがどんな方か存じませんが、大能力者にありがちな選民思想をお持ちでないですし」

ベイロープ「だからさっきから話が脱線してるわよ。この子をどうするかって話でしょーが」

レッサー「ありゃ?私達の結社に加入する方向で決まったんじゃないでしたっけ?」

御坂「そんな話は一言もしてない。なによその結社って、サークルのマイナーな呼び方かなんか?」

ランシス「今日だけ、ねっ?今日だけだから」

ベイロープ「……人助けなら、まぁ仕方がないわね」

フロリス「(物理的にも魔術的にも排除できないしなー)」 ボソッ

ベイロープ「(というかこのアジト廃棄決定じゃない。もったいない)」 ボソボソッ

レッサー「さーて御坂さんっ!お疲れでしょう、そうお疲れでしょーねっ!」

御坂「あ、いや別にお気遣いなく」

レッサー「まったまた日本からはるばるブリテンまで長時間のフライト大変だったでしょ?」

レッサー「あれビジネスクラスだとスッチーの態度悪いし何言ってるのか分かんないし、えぇもう疲れる疲れる」

御坂「ファーストクラスで来たから、ホントに疲れないのよ」

レッサー「かーっ!これだからブルジョアは言う事が違いますよねっ!何なんですかっ!?」

御坂「……この子、ホンっっっっトに大丈夫?放置してていいの?」

ランシス「大体いつもこんな感じだから……うん、相手面倒になったら『フランスの悪口100個聞かせて』って言えば、罵ってる間は大人しくなる」

御坂「それはそれで不安極まりないわねっ!」

レッサー「え?100じゃ足りないですけど?255個はよゆーですけど何か?」

御坂「仲悪いのねー」

レッサー「むしろお聞きしますが隣国同士仲の良い所ってあります?」

ランシス「地球とガミラ○……」

レッサー「やっぱり遠く離れていても理解なんて出来ないですよねっ!人類なんて37564文化ですからっ!」

御坂「半世紀ちょい前までそればっかやってた欧米に言う資格は無いと思うわ……」

レッサー「ままともあれ!折角なんでゆっくりしていって下さいなっ!何もないところですが!」

御坂「あ、はい。素直にありがとう」

レッサー「ここまで来るのはエッラい寒かったでしょうし、ここは一つ私の家庭料理なんかをお見舞いしてやりますよっ」

御坂「本当にどう……も?」

レッサー「ちょっと固まった意味が分からないんですけど、イギリスの家庭料理が何かご不満でもおありで?」

御坂「う、んんっ!そんなんじゃないわっ、お世話になる立場なのにそんな贅沢は!」

御坂「ただちょっと前評判ってゆうかな、こう、事前に良い情報がない、みたいな感じで?」

レッサー「分かります分かります。そりゃまぁ悪名高いブリテン料理ぐらい、現地の人間だって自覚はね」

フロリス・ランシス・ベイロープ「「「一緒にしないで」」」

レッサー「ねっ?」 キラッ

御坂「なんでお友達から全否定されているのに、歯茎輝くいい笑顔なの?」

レッサー「てかこんな経験ありません?例えばネットで新商品がボロックソに評価を受けてて」

レッサー「あなたがたまたま立ち寄ったコンビニの片隅、安い値段を貼られてるそのブツを見て」

レッサー「『ま、美味しくなくてもネタになるしいっかなー』とつい買ってしまい」

レッサー「いざ食べたらそこまで不味くなかった時のガッカリ感!」

御坂「ねぇ、期待する方向性間違ってない?ガッカリしなくてもいいわよね?」

レッサー「百聞は一見にしかずって言うじゃないですが!――そう、私の手料理を以前にもヤポンの方へ作って差し上げた事があるんですよ」

レッサー「以前ってゆうか、もしかしたらこれからなのかも知れませんが」

御坂「うん?」

レッサー「その時は『不味い』とは一言も」

御坂「だったら美味しいの?」

レッサー「いえ、『焼いてねぇじゃねぇか!?なんでベイクド名乗ってんの!?』と」

御坂「ごめん。それもしかしてあたしの知り合いかな?どっか聞き覚えのある、ベーシックなツッコミなんだけど……」

レッサー「なので今日はカレンスキンクを。温まるシチューですよー」

御坂「カレンス・キンク?」

レッサー「のーのーのー。”Cullen Skink”ですね――ではちょっくら作っちゃいますんで」

御坂「あ、良かったら作り方教えてほしいんだけど、いいかな?」

レッサー「どーぞどーぞ。イギリス料理の真髄をとくとご覧あれ!」



――キッチン

レッサー「――ちゃかちゃっちゃちゃちゃちゃちゃん、ちゃかちゃっちゃちゃちゃちゃかちゃんちゃん♪」

御坂「なんでキューピ○三分クッキングの曲知ってんの?」

レッサー「ブッブーーーーっ!キュー○ーじゃないですー!これはキャベツ野郎レオン=イェッセルの『鉛の兵隊の行進』ですー!」

御坂「原曲なんだろうけど、へー海外の曲だったのねー」

レッサー「ちなみにイェッセル氏はナチスに取っ捕まって死にました」

御坂「オマケのエピソードが暗いなっ!?明るい曲のイメージだったのに!」

レッサー「これ以降あなたはキ○ーピーの曲が流れる度、『あ、この作曲した人は友愛されてんだよな……』とテンションが低くなる……!」

御坂「呪いをかけるな」

レッサー「今日のゲストは学園都市から傷心旅行中のミサカ=ミサーカさんですっ」

御坂「人の苗字を盛るな」

レッサー「さって今日のお料理はカレンスキンクですねー、あーパチパチパチ」

御坂「わ、わー、楽しみだなー」

レッサー「ちなみに御坂さんはお料理とかなさる方で?」

御坂「修行中、かな?」

レッサー「それは性的な意味で?」

御坂「どこをどうやったら料理がエロい意味になるのか?むしろ知りたいわ!」

レッサー「では、ご用意するものを――メモの準備はいいですかー」

御坂「一応あたしもしとこうか。メモアプリだけど」

レッサー「まずはジャガイモ2〜4切れ程、タマネギ一個にグリーンピース二つまみぐらい」

御坂「ふむふむ」

レッサー「牛乳……そうですね、300mlぐらいですか。あ、ペットボトルで売ってますから」

御坂「あ、そうか。こっちだとあるのよね」

レッサー「後はバターや塩コショウ、後は小麦粉――出来れば薄力粉を用意して下さい」

御坂「材料からするとホワイトシチューかー。いいわねー、本場っぽいし」

レッサー「そしてメイン!タラですっ!」 ドンッ

御坂「うおっ!?……あれ?」

レッサー「どーしました?何か質問でもあれば?」

御坂「タラ……鱈、よね?魚の?一匹の?丸まんまの?」

レッサー「えぇですから鱈(タラ)ですよ。魚の、一匹の、丸まんま」

御坂「思ったよりもハードル高くてね、えっとさ、こう死んだ魚の目ってゆうかさ」

御坂「一匹?そのまんまで?活け作りでも作んの?」

レッサー「あぁ日本じゃスーパーで切り身が売ってんでしょうが、基本一匹そのまんまです」

レッサー「マーケット行って魚屋さんに捌いて貰うかダイレクトに買うのが一般的でしょうかねぇ」

御坂「コスト○はっ!?アメリカンで大雑把なスーパーはないのっ!?」

レッサー「いやそれメリカンッッッッ(巻き舌)の話ですし。なくはないですけど地方行ってまではあんまり」

レッサー「小さな町だと雑貨屋さんだけが細々と営業してて、そもそも肉魚を売ってる所が無いってゆうね、えぇえぇ」

御坂「……どうやって暮らしてんのよ。日本の限界集落じゃないんだから」

レッサー「よくブリテン――我らがイギリスを賛美する方はこう仰います」

レッサー「『イギリスは素晴らしい!古い街並、広い花壇、教会や遺跡に草原が広がっているからだ!』と」

レッサー「ちなみにこの台詞の後には長々と日本の悪口を重ねる大学教授(日本人)を私は知ってますが」

御坂「旅行で何回か来ただけだけど、まぁイメージは間違ってなくない?」

御坂「街を歩けば古くて綺麗な石畳や建物、ちょっと郊外行けば広い庭にキッレーなガーデニングしたお家なんて結構あるでしょ?」

レッサー「やー……間違っちゃない、間違っちゃないんですけどねぇ、”それ”」

レッサー「ただ”それ”は物事の側面の一つであって本質全てでは決してないってゆうか」

御坂「なにそれ」

レッサー「結論からぶっちゃけますと『経済的リソースが足りない』んですね」

御坂「リソース?」

レッサー「例えば10ポンドのお小遣いがあり、それでどこかへ遊びへ行くとしましょう。お菓子に4ポンド、ご飯に5ポンド、切符代に1ポンド遣ったと」

御坂「お菓子の配分間違えない?てか切符もっと高いんじゃ?」

レッサー「では切符を2ポンドにすると――1ポンド足りなくなりますよね?だからお菓子かご飯代を削る必要があります」

レッサー「――と、いうような話を『国家レベルで語る』と大航海時代の植民地の話になります」

御坂「なんか……話跳んでない?」

レッサー「悪名も貰ってます大英帝国ですが……これ別に植民地から搾取しまくった”だけ”ではないんですよね」

レッサー「勿論その面もありますし、てか基本領地拡大&経済圏拡大のためにやっており、その中に倫理や道徳は欠片もありませんでした」

御坂「まぁねー」

レッサー「ただその”稼いだお金も結構な額を植民地経営にぶっ込んでいた”ってのも事実な訳ですよ、えぇ」

御坂「……ちょっとごめん。話が見えてこないんだけど?」

レッサー「いやですから。街並が古い・昔の石畳が残っている、ってのは『古いインフラ(社会資本)をそのまま使わざるを得ない』と言い換えられますよね?」

御坂「使えるんだったら……使った方がいいんじゃないの?」

レッサー「それは道理ですけど、同時に『公共事業というのは社会基盤への先行投資であり、地域の経済活性化』でもあるって事です」

レッサー「1億ポンド政府が遣えば民間に1億ポンドの経済効果が現れる。理解出来ますよね?」

御坂「それをしてない、ってのは――あ!」

レッサー「そうです。確かに植民地は多額の富を生みましたが、同時に多くの投資もしてます」

レッサー「橋がなければ橋を作り、港がなければ港を作り、道路がなければ道路を作り、半世紀前の施設が今日まで残ってるのも多々あります」

レッサー「……それこそ国内放って置いて、ですが」

御坂「だからか……なんかこう、イギリスって言っても所々寂しい感じがするのは」

レッサー「てか日本でも似たような感じですよ。トーホクのインフラへ予算をあまり割かず、植民地へ突っ込んだのと同じで」

レッサー「ただ地政学的に対ロシア的な意味合いからすれば正しい、とは思いますとも言っておきましょう」

レッサー「ま、別にコンクリと鉄筋の建物で固めれば近代化!……ってのも極論ですが、まぁどっちみち似たようなもので」

レッサー「『好きに遣う金があったら国内投資してるわ!』と、一言で言えばそんな感じですなぁ」

御坂「植民地経営の裏を見た……っ!」

レッサー「てか正式名称、イギリス”連邦”ですからね。何年か前にポンドに喧嘩売った魔術師さんも居ましたが……私が殺りたかったなー」

御坂「感覚してあたし達と違うのね。植民地=悪かと思ってた」

レッサー「いえ事実その通りですからね?『あくまでも経済的な面から見た』だけで、道義も道徳もへったくれもないですし」

レッサー「あー……どこかは言いませんがポア○×ヘイスティン○しか有名じゃない国、ありますよね?」

御坂「やめて!私の中の名探偵ポ○ロを穢さないで!」

レッサー「てかあれアガサ=クリスティ原作なんで、ある意味ブリテンなんですが……まぁベルギーチョコって食べた事あります?」

御坂「レオニなんとかの有名なのがあったような」

レッサー「他の欧州でもそうですけど、ベルギーはクソ寒い上に一年の半分ぐらい曇りが多いんで、どうやってカカオ豆育ててんだ、と」

レッサー「それこそ植民地からの苛烈なアレコレの上に成立した、それもまた事実でして」

御坂「うっわー……」

レッサー「またに我々が植民地から引き上げる時には、その国へ対して『インフラでこれこれ投資したから払ってね(はぁと)』って請求しましたし?」

御坂「凄いわねイギリスっ!その面の厚さに憧れないし痺れもしないけど!」

レッサー「ちなみに余談ですが、ミャンマーのアウンサンスーチー女史いらっしゃいますよね?」

御坂「この間大統領の上にポスト作って、そこに就任した人よね。ミャンマー独立の英雄の娘さん」

レッサー「同国内のロヒンギャ族もご存じで?」

御坂「あー……ムスリムだったかの、少数民族だったっけ?孤立してんのよね」

レッサー「孤立した理由は?」

御坂「宗教的な対立、かな?」

レッサー「……歴史的な流れを言えば、スーチー女子のお父様、アウンサン将軍は日本とともにミャンマー独立戦争に参加」

レッサー「しかし日本の劣勢が明らかになるにつれ、見限り、我らがイギリスを友に独立聖戦を戦ったのでありますっ!」

御坂「ねぇ?ボカしたつもりなんだろうけど、ミャンマー支配してたのもイギリスよね?」

御坂「そこへ日本が進駐してきて日本側へついて、劣勢になったらまたイギリス側って……」

レッサー「当時は”それ”が正しいですからねぇ。アウンサン将軍の人格はどうあれ、少なくともミャンマーのために命を賭けて戦ったのは間違いなく」

レッサー「ただ勿論イギリス&ミャンマー解放軍が悪っしき日帝から独立を果たした後、イギリスが再植民地にしちゃいましたテヘペロ」

御坂「お前ら最低だな」

レッサー「この後は植民地政策を維持できなくなった欧米列強の離脱により、ミャンマーは独立しました――が、ロヒンギャ族です」

レッサー「これは日本がミャンマー解放軍兼ブディスト(仏教徒)へ武装支援したのに対し、イギリス軍がムスリムであるロヒンギャ族へ支援したんですね」

御坂「ほんっっっっっっっっっっっっっっっっとに最低だな!」

レッサー「てかブディスト側が戦争終ったらあっさり武装解放してるのに対し、今日まで尾を引くような殺しっぷりが禍根を残す残す」

レッサー「またある意味ブリテンのために戦ったため、スーチー女子とカブってるっちゃあカブってまして。ロヒンギャも彼女を支持していたんですが」

レッサー「しかし女史が偉くなった途端に見向きもしなくなったり、政府側の虐待の証拠(政権交代以後も含め)がボロボロ出てくるわ出てくるわと」

御坂「うわぁ……」

レッサー「ちなみに旦那さんはイギリス人です☆」

御坂「あれかな?イギリス人に関わったら根性悪くなる呪いでも罹ってんの?」



――

レッサー「と、まぁ我らが関わった国々がヘコんでいくのは超楽しいですが、それはそれと致しましてっ!張り切って料理しましょうかねっ!」

御坂「素敵な感じにブーメラン刺さってると思うわ」

レッサー「つってもですねぇ、料理なんてぇのは案ずるより産むが易しと言いますし、取り合えばやってみればいいんですよ。やってみれば」

御坂「何事も経験を積むのが大事って話か」

レッサー「だというのにブリテン=メシマズ国の構図が一向に解消できないのは何故……orz」

御坂「や、まぁ、個人的に旅行で来た時にはそんなにマズいとは思わなかったわよ?割と本気で言うけど」

レッサー「あなたが神か……っ!?」

御坂「朝食で食べたミートパイも美味しかったし、おやつで買ったアップルパイ?も甘さ抑えめで、日本にあったら行こうって思うぐらいの」

レッサー「アップルパイ?……あれ?」

御坂「あれってなによ、あれって」

レッサー「どんな感じの?」

御坂「しっとりしてて……ドライフルーツを使ってたかな?」

レッサー「ありましたっけ、そんなの――」

フロリス「ボイルドアップル”ケーキ”だぜ」

御坂「はい?」

フロリス「パイじゃなくって厳密にはケーキ。生地を作る前にドライフルーツを鍋でバターと一緒に煮てんだよ」

フロリス「一手間かけてるからオーブンで焼いた後もしっとり感が残んだ」

御坂「へー」

レッサー「……あれ?」

フロリス「あと上に乗ってるリンゴは酸味の強いブラムリって品種。大きくて料理にも使う」

御坂「そうなんだ」

フロリス「あ、ジュース取って」

御坂「あぁゴメンね。はい」

フロリス「サンク。そいじゃー頑張ってねー」

御坂「ありがとー……っておい」

レッサー「……いや、今なんか、えっと……あれ?」

御坂「何よ」

レッサー「何か不自然な展開が間にあったような。ま、まぁいいとしましょう!それでっ!?他にはっ!?」

御坂「あっとは……あ、ジャガイモを十字に切って、上へツナマヨやエビを乗せたのも美味しかった」

レッサー「ですよねーっ!オイシイですよねっあれ!」

御坂「あれ名前なんて言うの?」

レッサー「えっ?」

御坂「えっ?」

レッサー「い、いや知ってます!知ってますよ!知ってますってばHAHAHAヤダナー」

御坂「後半見事なまでに棒読みになってんだけど」

レッサー「大体アレですな、ブリテンと言えばジャガイモ!ジャガイモと言えばカルビ○!」

御坂「等号が非対称になってるわね」

レッサー「いやぁちょっとど忘れしちゃってるみたいですなー!ほら、ありませんっ!?そういうの!?」

レッサー「道でバッタリ昔のクラスメイトと会ってもとっさに名前が出て来なかったり!」

御坂「まぁ、あるっちゃあるけど」

レッサー「ですよねー!私も時々国の名前忘れますし、ほら『EUに加盟してる国全部言ってみろ』って言われてもパッと出て来ないような」

御坂「都道府県全部アカペラで、とか言われても困るのと一緒か」

レッサー「ですよ、私もこないだですね――」

レッサー「――ガリア戦争で負けて、百年戦争でどうにか引き分けて、イタリア戦争で負けて、ユグノー戦争で負けて、三十年戦争で同盟国に潜り込んで、ネーデルラント継承戦争で引き分けて、オランダ侵略戦争で引き分けて、アウクスブルク同盟戦争で負けて、スペイン継承戦争で負けて、ナポレオン戦争で負けて、普仏戦争で負けて、第一次・二次世界大戦で同盟国に潜り込んで、第一次インドシナ戦争で負けて」

レッサー「ファシスト野郎に首都が占領されて思いっきりナチスへ荷担していたのに、同盟国に取り戻されてからあっさり掌返して」

レッサー「戦後「あ、これじゃ流石にマズくね?」つってレジスタンスを持ち上げたのいいけど」

レッサー「実際には『軍人以外の戦争行為』かつ『戦闘地域以外でのテロ行為』であって、明らかな戦争犯罪で」

レッサー「しかも一部のフランス人が『レジスタンスする俺超カッコいい!』と勘違いしちゃったせいで民間への圧力が強化されちゃって」

レッサー「対テロ戦争で敵前逃亡したSurrenderMonkeysと呼ばれてドイツとイタリアとスペインに囲まれた」

レッサー「カエル喰い国家の名前って何だったっけ?――とか!考え込みますもんねっ!」

御坂「ほぼ正解だし、それ正解知ってて追い詰めてるだけよね?」

御坂「てか途中で『一部のフランス人が』つってるしな!フランス扱き下ろしたいだけでしょうが!」

レッサー「え、そうですけどそれが何か?」

御坂「……や、そんなに『何言ってんだろこの人』みたいな、不思議そうな目で見られても……」

レッサー「大体ですねっ、こうブリテン人に聞いてご覧なさいよっ!『あなたの嫌いなものなんですか!?』って!」

レッサー「そしたら確実にベスト3に入るのがフランスですから!間違いないですから!」
(※この物語はフィクションです)

御坂「ちなみにトップ一位と二位は?」

レッサー「イギリス料理と職場の上司、ですかね」

御坂「ちょっと上手い事言ってんじゃないわよ!流石はブラックジョークに定評がある国は違うわねっ!」

レッサー「だ、もんでですねっ!こう、イチイチ自分んとこの料理なんか憶えてられな――」

フロリス「ジャケットポテト」

レッサー「……い?」

御坂「jacket?」

フロリス「ソーソー、皮をジャケットに見立ててんだわ。ベイクドポテトの親戚で、皮ごとオリーブオイル塗ってからホイルで包んでオーブンで焼くと」

フロリス「中まで火が通ったら十字に切り込み入れて、塩コショウ振ってから具材を乗せる」

レッサー「いやあの……フロリスさん?」

フロリス「悪い。冷蔵庫にプリン入ってるから食べたくて」

御坂「あ、はい。どうぞ?」

フロリス「ありー」

御坂・レッサー「「……」」

御坂「あのさ」

レッサー「言わないでください!何となく分かってますから!」

御坂「どう考えてもあっちの子の方が女子力高くない?」

レッサー「あのアマ興味無いフリしやがりましてチクショー!なに陰で隠れて料理なんてしてんですかっ!?」

御坂「別に申告義務はないんじゃないかと……」

レッサー「そりゃまぁ女性的アピールに欠ける体では仕方がないですかねっ!分かりますっ!」

御坂「何言ってるか分かんないから胸を突き出すな!何言ってるのか分かんない事にしてあげるから!」

レッサー「てかフロリス!フゥゥゥゥロォォォォリィィィィス!!!他人事のようにハーゲン喰ってんじゃないですよ!てか私にもくださいラムレーズン味!」

フロリス「ヤンネーヨ。あとワタシが料理作れたっていーだろ」

レッサー「あなたって子はどこでどうしつけされたら一人で料理を作れるようになったって言うんですかっ!?」

御坂「……なんだろう。出来て誉められる事なのになんで責める方向で話が進んでいるんだろう……」

フロリス「てか料理できますメシ作れますって常識ジャン?」

フロリス「お前も『自転車乗れます俺スゲー』って言いふらさないだろ?」

レッサー「言いますけど?」

フロリス「ゴメン、ワタシが悪かった」

レッサー「ねっ?!どうですかミサかんっ!」

御坂「ミカる○みたいに略すな。あと今のは空気読んでくれてるだけだし」

レッサー「ではまぁそういう訳で!お料理の続きですね!」

御坂「あの、講師の方チェンジさせて貰う訳には……」

レッサー「心配ないですっ!その気になればニンゲン何でも食べられますっ!」



――

レッサー「ではまずジャガイモを茹でます。ブリテンじゃ主食に近い感じです」

御坂「ジャガイモは何となくドイツってイメージがあるわ」

レッサー「茹でたジャガイモは穀物よりも太りにくい(らしい)ので、健康食と言ってもいいかもしれませんねっ!」

レッサー「よっ!流石は植物っ!」

御坂「稲や小麦も植物よね?」

レッサー「ではジャガイモですがっ!茹でる前に皮を剥いてもいいし、剥かなくても構いません!」

御坂「どっちだよ。世界○か」

レッサー「や、ご家庭によって変わるんで、まぁここはあえて皮を剥きましょう」

御坂「あ、それじゃあたし剥くの手伝います」

レッサー「あ、すいません。今なんて?リピートプリーズ?」 スチャッ

レッサー「出来れば上目遣いでジャガイモを両手で握りしめるような具合で!」

御坂「ケータイのムービーレコオンにしたままこっちへ向けないで」

レッサー「次はジャガイモを適当な大きさへ切り分け、まぁ一口大にしてから鍋へ入れて水を張り茹でます」

御坂「水から茹でるの?」

レッサー「水じゃなくてもいいしお湯からでもご自由にどうぞ」

御坂「フリーダムだな!?……根菜は水からって言うし、ここは水で」 カチッ、ジジジッ

レッサー「次にタマネギを剥きまして細切りにし、フライパンへ入れてバターで炒める。あ、やってて貰っていいですかね?」

御坂「おけ。どのくらい?」

レッサー「軽く茶色になるぐらいまでお願いします――ではメインのタラ(鱈)を取り出しますっ!」

御坂「うわぁ……」

レッサー「これを――」 グッチャグッチャグッチャ

御坂「……おぉふ……」

レッサー「――して、切り身にした後!血を洗って一口大にしますねっ!」

御坂「魚捌けるだけで、もう、なんかスゴいわ」

レッサー「ジャガイモに火が通って……はい、通ったみたいなので鍋から取り出します」

レッサー「炒め物には薄力粉を入れて更に炒め、グリーンピース入れます!」

御坂「こ、こんな感じ?」

レッサー「そしてっ!ここからが大事ですからよく聞いてくださいねっ!?」

御坂「はいっ!」

レッサー「残りの材料を全部ぶっ込みタラに火が通るまで煮ます!これで終わりっ!」

御坂「雑だし早いなっ!?」

レッサー「これで完成ですっ!どーですかっ!?料理なんて簡単なもんでしょうっ!?」

御坂「そ、そうですね」



――実食

レッサー「ささっ!ブリテン(※スコットランド)の郷土料理、カレンスキングの完成です!おかわりもありますから召し上がってくださいな!」

御坂「……」

レッサー「温かく優しく包み込むスープは冬にもピッタリ!そして夏場にも冷やして楽しめる!これぞ万能スープと言えるでしょう!」

御坂「……い、頂きます」 ズスッ

レッサー「どうですか御坂さん!本場のイギリス料理は一味違うでしょうっ?」

御坂「えっとね、なんてったらいいのかな、うん、あーっと」

レッサー ワクワク

御坂「口に入れた瞬間に広がる魚の生臭さ、そしてミルキーな牛乳の乳臭さ」

御坂「ジャガイモを噛みしめる度に歯と歯の間を流れていく、謎のもそもそとした食感」

御坂「ほぐれてバラバラになったタラの切り身……うん、まぁ、うん……」

レッサー「で、ご感想は如何にっ!?」

御坂「えっと……目に、力があったわね。目に」

レッサー「誉めようのない演技をする役者へ対する表現がここでっ!?」

御坂「や、まぁ……文化っていうか、カルチャーギャップ!そうよっ価値観の相違ってヤツなのよ!」

レッサー「そ、そうでしょうかねぇー……?」

御坂「その証拠に!レッサーさんのお友達へ食べさせてみればいいじゃない!そうすれば地元特有の反応が返ってくるに違いないわっ!」

レッサー「で、ですよねっ!流石は電撃ヒロイン人気投票一位の人っ!」

御坂「食文化はその国その国で独特の発展を遂げてるんだし、日本の発酵食品が海外で敬遠されるのと一緒でさ!」

レッサー「そうですねっ!イギリス飯がクサヤや納豆と同レベルにまで扱き下ろされてる感がしないでもないですけど、理屈は分かりますっ!」

レッサー「――と、言う流れで、さぁさっ我らが輩(ともがら)よっ!イギリスが誇る伝統料理をお見舞いしてあげますよっ!」

レッサー「私達が誇る死んだ舌を誇る時が来ましたっ!共に立てよ兄妹達よっ!」

フロリス「アーゴメンなー、ワタシさっきメシ食べちゃってるしー」 モグモグ

ランシス「右に同じ……」 モグモグ

レッサー「そっかーそれじゃあしょうがないですねー、さっきメシ食べちゃったんじゃしょうがないですねー、食べちゃったらねー」

レッサー「でもまず一個聞いていいですか?今食べてるのは何ですかねー?」

ランシス「出前で取ったピザだけど……?」

レッサー「食ってんじゃねぇか!?てか食べてんじゃないですかっ現在進行形で!ナォォァァァウ!!!(※巻き舌)」

レッサー「折角人が作ったのに!私が拙いながらも一生懸命作ったのに!なァにさっさと見限って別のもン食ってンですかァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!?」

御坂「それ第一位のマネ?」

ベイロープ「あ、はいはい。可哀想だからそこまでにしなさい、可哀想なレッサーが可哀想でしょ?」 モグモグ

レッサー「流石はベイロープっ!貴族気取りのアマのクセしやがって優しいですよねっ!」

御坂「待って?今のは”可哀想な”が変な風に修飾してるところをツッコむ所じゃ……?」

ベイロープ「という訳であなた達、食べたげるのも優しさだと思うのよ」 モグモグ

レッサー「てゆうかですねベイロープさん、ちょっと聞いていいですか?」

ベイロープ「どうぞ?」 モグモグ

レッサー「あなたはなに食ってんですか?」

ベイロープ「さっき買って来といたバケット」 モグモグ

レッサー「あーたも食ってんじゃないですかねっ!?私の作ったメシじゃ無いブツを!?」

ベイロープ「そうだけど、それが何?」

フロリス「……Hey(オイ)、この女『自分はゴメンだがお前らは食ってやれよ』ってナチュラルに言い切ってんぞー?」

ランシス「さすが、裏切りの騎士……」

ベイロープ「あなたが言うな」

レッサー「――はい、って言う訳ですね!私達の無双の友情が無事確認されましたし、ここら辺でお開きにしたいかと!」

御坂「ねぇ、友情成分あったかな?そういう主旨の企画だっけ?」

御坂「まぁデリバリー美味しいけど……うん、手料理だって素敵よ!きっと!」

御坂「だ、第一!……えぇーっと……そう、将来困るじゃない!結婚する時とか!お料理できないとねっ!」

レッサー「良い事言った!いま御坂さんが良い事言いやがりましたよっ!……美琴だけに!良い事を!」

御坂「やめろ。あたしが狙って外したみたいにしないで」

レッサー「もし将来ブリテンへ引き込むため既成事実を作る時、『え、君料理出来ないの?』って言われたら困りますもんねっ!」

御坂「その発想が怖い」

ベイロープ「その特殊すぎる状況に陥るのはこの中ですらあなただけなのだわ」

御坂「……彼氏に言われたら?」

フロリス「『お前が作れよ。人に期待してんじゃねーよ』」

御坂「どんな上から目線!?」

ランシス「『デリバリー、美味しいよ……?』」

御坂「このダメ人間ども!」

レッサー「ベイロープっ!『新たなる光』で見事につく側間違ったベイロープさんだったら見事なオチを言ってくれる筈!」

ベイロープ「ハードル上げないで」

レッサー「その心は如何ァァァァァァァァにっ!?」

ベイロープ「メイドを雇えば、ね。うん」

レッサー「出やがりましたよブルジョアジーめ!この労働者の敵がっ!」

御坂「マクロ経済の視点から言えば、一人分の雇用を生むんだからむしろ歓迎すべき事じゃないかな」

レッサー「まさかの裏切りが――御坂だけに!まさかのミサカ!」

御坂「やめろ。スベったギャグをひたすら押しつけないで」

レッサー「まぁ作っちまったもんはしょーがないので、気合い入れて食べましょう!ファイッ!」

御坂「や、まぁ……美味しくないだけで、フツーに食べられるは食べられるけどね。致命的に美味しくないだけで」

レッサー「そこは嘘でも『オイシイネっ!』って言っとくと、後で私のルートへ入ります」

御坂「エロゲ脳はやめなさい。人生フイにするから――っていうか、さっきから引っかかってたんだけど」

レッサー「はいな?」

御坂「あなた、味見はおろか完成しても一口も食べてないわよね?どうして?」

レッサー「あーっと、ですねぇ」

御坂「レッサーさん?」

レッサー「すいません。私、この料理魚臭くて好きじゃないんですよ」

御坂「じゃあなんでコレにしたっ!?わざわざ嫌いな料理作るってどんな意図かっ!?」

レッサー「いやぁアレだけイギリス飯のフラグが立っていながら、これを無視しては芸人としてのプライドがですね」

御坂「どうだっていいわよそんなん!いいから手伝いなさい!」

レッサー「……あーい」



――『新たなる光』のアジト

御坂「カレンスキンク……うーん、これ他の人が作ってもこんな感じなの?」

御坂「言っちゃあなんなんだけど、もうちょっと精錬されててもいい様な気がするんだけど……」

レッサー「精錬、ですか?」

御坂「少なくとも地元の人がノーサンキューするぐらいの出来なんでしょ?」

レッサー「異議あり!それは間違ってますよ!」

御坂「じゃ、この味でも好きな人はいるのね?」

レッサー「あいえそうではなく”No Thank you(メンゴメンゴ)”というよりかは、今の若者は”No way(ないわー)”を使います」

御坂「心っっっっ底、どーでもいいわっ!その言い方も今使ってるかどうか怪しいし!」

レッサー「てか文法的にアレなカンジでも使っちまったもん勝ちな所がありまして、こないだ色に”a”を付けているインタビュー読みました」

御坂「……幾つかある色の中で一つを選んだ、みたいな?」

レッサー「いやぁ……でもそれよく読むとウチのクイーンズのスラングで『冷凍牛肉』じゃねぇかなって解釈もですね」

御坂「面倒臭いな英語!スラング分かってないと読めないし!」

レッサー「それ言うんだったら中世から近代にかけては聖書の一節に被せる技法が多く使われてきたので、丸暗記しないと意味が通らない事がしばしばあります」(ドヤァ

レッサー「ま!つまりアレですな!何が言いたいかって言えば――」

御坂「言えば?」

レッサー「……何の話してたんでしたっけ?」

御坂「ねぇこの国では人を小バカにするルールでもあるのかしら?ブラックユーモア世界一だけじゃまだ足りないっていうの?」

フロリス「ヤ、レッサーだしなー」

ランシス「レッサー、だから」

ベイロープ「レッサーは諦めるしかないわよ?」

御坂「なにこの全員が諦められてんの」

レッサー「それほどでも!」

御坂「威張るな!どう考えても査定はマイナスでしょうが!」

レッサー「で、料理のお話なんですが」

御坂「この唐突な話題のハンドリング!学園都市にいるSTNさんを思い出すわねっ!」

レッサー「カレンスキンクが精錬されてない――というのは、我ら混沌メシを好む住人ですら、『ちょっとアレかな?』ってのが間違いだと?」

御坂「や、うんそんな大げさな話じゃなくってね、作り方合ってんのかなーと。あと混沌メシ言うな」

レッサー「どっちかっつーとスコットランド主体のお料理ですんで……」 チラッ

ベイロープ「残念。料理を作る趣味はない」

御坂「……向こうは、食べるのね?これを?」

ベイロープ「劇物にみたいに言わないで……てかまぁ、私も思うところはあるのだわ」

ベイロープ「実家で作ってもらっているのは、もっと美味しいのよ。普通に」

御坂「そっか……うーん?」

レッサー「ちなみに私はきちんと家庭料理として学びました!なので行程を間違ってるのはありえませんなっ!」

御坂「地元の人も『アレかな?』なんだから、何かは間違ってる……でも、それが何かは分からない、か」

レッサー「――あ!」

御坂「なに?」

レッサー「『皇帝を間違ってる』ってラノベありそう!」

御坂「うん、まずジャンケンしよう?ジャンケンして負けた人に”レッサーさん係”になってもらおう?」

レッサー「そんな遠回しにウザがらなくてもいじゃないですか!」

御坂「てゆうかもう、悪意があって引っかき回してるとしか……引っかく?」

ランシス「?」

御坂「……これさ、思ったんだけど料理の肯定は正しいかもなのよ。作り方”は”合ってると」

御坂「でも、具材を間違ってる――ってのはどう?」

ベイロープ「合ってる、とは思うわ。私も食べた感じ、実家と入ってるものは違わないし」

ベイロープ「それとも隠し味の事?そのぐらいで大きく味が変わるとも思えないけど」

御坂「んー……そうじゃなくてね、気になってたのよ。なんでこの具材なんだろーって」

フロリス「つーのは?」

御坂「――タラ(鱈)」



――

レッサー「やー、幾らなんでもカレンスキンクのメイン食材が違うっちゅーのは、ないですよ、ナイナイ」

御坂「違和感はあったのよ。地理的な話ってゆうかさ?」

御坂「日本だとタラは冬の食材で、しかも北海道や青森の北の漁場でしか獲れなくてさ?」

御坂「まぁ緯度的にはヨーロッパの上が高くて、だっらたメインになるのかなーとも思うんだけど」

レッサー「歯切れ悪いですな」

御坂「昔は冷凍技術も大した事なかったし、かといって北部だからってそのまま置ける訳もなくて、てかない筈で」

御坂「んで大イギリス島の内部まで移送しなきゃいけなかった――なら、塩漬けにするのが一般的よね?」

フロリス「……ア、なーる」

レッサー「イヤらしい!もっと言いなさない!」

ベイロープ「黙ってろヘンタイ。どういう意味?」

御坂「うん、だからね。この料理は元々郷土料理なんでしょ、寒い国の?」

ランシス「……その寒い国の、更に北側のスコットランドで」

御坂「まぁ幾ら寒いって言われても獲れる時期や量、あとやっぱ内地まで運んで行くにはそのままじゃ厳しいじゃない?」

御坂「今と違って漁船に冷凍庫が完備されてる訳じゃなし、フリーザー付きの輸送トラックだってないしね」

レッサー「ですなぁ。ウチらはあまり食には拘りませんでしたし?」

フロリス・ランシス・ベイロープ「「「一緒にするのはやめてもらおうか」」」

レッサー「まさかの裏切りが!?しかも声を揃えてハモるほどにイヤだっつーんですかねっ!?」

御坂「……日本からすればスコットランド以外は、まぁ誤差のレベルだけど……で、まぁ昔は輸送網も貧弱だったのよ!」

御坂「だからタラはタラでも、そして寒い国でも傷むものは傷むって事だから――」

レッサー「だから?」

御坂「郷土料理でよく使われるようなタラってさ、タラはタラでも切り身じゃなくて塩漬けのタラだったんじゃないの?」

御坂「アンチョビみたいに、徹底的に塩漬けにしたあと内地へ運んだと」

ランシス・ベイロープ「「あー……」」

フロリス「ン、だねー」

レッサー「え?」

御坂「おい一人分かってないな!」

レッサー「タラはタラ、ですよね?塩漬けも焼けば美味いですけど」

御坂「え!?その程度の認識なの!?」

ベイロープ「ごめんなさい。私も同意」

ランシス「おなじくー……」

御坂「イヤイヤイヤイヤっ!そんな『お腹の中へ入れば一緒!』みたいな暴論を!」

御坂「えっと……そっちの人!あたしよりちょっとだけ胸が大きくてスラッとした足がムカつく人はどう思うのよ!?」

フロリス「ケンカ売ってんのカヨ。ワタシは……ンー……?なんとなーく、理解はできる」

フロリス「お菓子を作るにしても、最初から生地へ混ぜ込むのと最後に表面にまぶすんじゃ、ゼンッゼン違うし?」

御坂「よ、ねぇ……あれ?おかしいのは、あたし?間違えてた?」

レッサー「あ、いえいえマサカさんのまさかの推論!は、合ってると思いますよ、推論はね」

御坂「だからヒトをスベってるみたいに弄るな」

レッサー「ただそのですね、切り身のタラと塩漬けにしたタラ、別にどっちでも変わんなくね?みたいなのが、こっち三人の総意かと思われますが」

レッサー「てゆーかー、私も作る時に塩振って下味付けましたけど、それだけじゃ足りないんですか?」

御坂「……にゃるほど、根本的なとっから違うのか。勉強になるなー」

レッサー「や、一人で納得してないでくださいな」

御坂「んー……まぁ、じゃ実証した方が早いと思うから、塩漬けのタラあるかな?」

レッサー「既にご用意したものがこちらに!」

御坂「ご都合主義っ!……まぁいいけど、あんだったらこっち使いなさいよって思うわ……こっちも切り身か」

御坂「あ、じゃお台所借りるわね」



――キッチン

御坂「――はい、という訳で改めましてカレンスキンクを作ろうと思います」

レッサー「――ちゃかちゃっちゃちゃちゃちゃちゃん、ちゃかちゃっちゃちゃちゃちゃかちゃんちゃん♪」

御坂「やめろ!ナチスに友愛されたヒトのテーマソングを流すな!」

レッサー「よしゃアァっす!(よろしくおねがいします)先生!」

御坂「つっても行程は同じだし……そうね、まずはジャガイモの皮剥きか」

レッサー「茹でるのと平行してやりますんで、御坂さんはタラをやっつけてくださいなっ!」

御坂「やっつける……?まぁ、言わんとする事は分かるけど、うん」

御坂「じゃあまず、塩漬けのタラ――は、切り身よね。一応は確認しとくけど!」

レッサー「むしろまんまを塩漬けにしたら内臓から腐ってエラい騒ぎになるかと」

御坂「な、ならいいんだけど!別にお魚を捌けない訳じゃないんだからねっ!」

レッサー「もうなんかツンデレネタを自分からぶっ込むようになりましたねっ!」

御坂「まぁ冗談はともかく、皮と身を剥がします」 トン、トン、トン

レッサー「皮、外しちゃうんですか?」

御坂「タラの皮は火を通すと縮むし固くなるの。あと身自体はほぐれやすいから、鍋料理とかへ入れる時は必ず皮付きのまんまなんだけどね」

御坂「でも今回はスープで、小さくしたジャガイモと一緒に食べるんでしょ?だったら細かくなってもいいかなーと」

レッサー「へー」

御坂「……あと私にお料理教えてくれた人曰く、『脂は旨味、だけど取り過ぎると逆に不味い』って」

レッサー「待って下さいな。いくらブリテン人だとしても、古い油ギットギトのフィッシュ&チップスはそんなには食べませんよ!」

御坂「”そんなには”って所にそこはかとなくお国柄が凝縮されてるけど……ま、まぁそれはいいとして!」

レッサー「てか魚ですよ?和食ブームでヘルスィ!な、魚の価値が見直されてるのに、油、ですか?」

御坂「魚にだって脂はあるし、それが臭味でもあるのよ。まぁ適度に載っていれば美味しいんだけどねー」

御坂「特に魚は皮の部分に脂が集まって、てか生物学的には内臓温度を水温変化から守るため、脂を集めてるのよ」

レッサー「我ら女性の大敵である皮下脂肪と同じって事でしょーかねっ!?」

御坂「哺乳類だけど、まぁ理屈はあってる。だから他の動物も皮と肉の間に脂肪が集まるらしくて」 ギッギッギッギッ

御坂「勿論皮ごと食べる料理も一杯あるんだけど、今回のは魚の臭味をどう消すか?ってテーマだから、外しちゃうわね」 ギッギッギッギッ

レッサー「てんてー質問でーす!私は皮ごと身を入れろって教わったんですが!」

御坂「んー……郷土料理って言っても色々あって、特に――あ、これあたしの予想ね?――季節のものはあるじゃない?」

御坂「果物だったり野菜だったり、魚も旬のものが」

レッサー「その季節季節で取れるものが、やっぱり美味しいですよねぇ」

御坂「まぁそれもあるんだけど、日本語には『脂が乗ってる』って表現があるのよ」

レッサー「知ってます!」

御坂「お、マシで?」

レッサー「主に”オヤジ”を修飾する時に使う言葉で、こないだDLsit○.comで見ました!」

御坂「忘れて?比較的速やかに忘れて?それ広まっちゃいけないやつだから」

御坂「……まぁ本来の使われ方は、『旬のものは他のシーズンよりも脂が多くて美味しい』って意味ね」

レッサー「でしたら脂があった方がいいんではないかと?」

御坂「いや今関係無いわよね?基本沿岸だろうが遠洋だろうが、魚がいればトロール船で乗り込むし」

御坂「冷凍技術も発達して獲れたら獲れるだけ保存して売ろうっつー感じでさ?」

レッサー「ちょっと意味が分かりかねるんですけども……」

御坂「まぁ、つまり何が言いたいのかって言えば、魚にもコンディションがあるのよ。獲れる方のね」

御坂「回遊魚である以上、季節によって体力を残していたりいなかったり、って……そうだなー……」

御坂「例えばサケが川遡って産卵に来るじゃない?まぁ分からなくはないと思うけど」

レッサー「ネイチャーでよく再放送してまさぁ。子供の頃イヤっていうぐらい見せられます」

御坂「あれもサケを捕まえて卵獲ろうって漁法があるんだけど、サケ本体自体はそんなに美味しくないらしいのよ」

御坂「卵を作るのと川を遡るのでに体力使って、肉がガリッガリなんだって」

レッサー「あー、確かに。メインがイクラーなのであまり重要視しないと思っていたら、そういう理屈があったんですね」

御坂「なのでタラも同じじゃないかなと。昔は近海で獲れたのを直ぐ食べたり、塩漬けにしたりしてた」

御坂「獲れる時期は毎年同じぐらいだろうし、タラのコンディション――脂の乗り具合も同じ、ぐらい?」

御坂「でも近年はいつでもどこでも手に入るようになって、当然一匹一匹の」

御坂「――それを昔ながらのやり方でお料理しようとしても、昔と同じ味は出せなくなった、みたいな?」

レッサー「……」

御坂「どう、かな?」

レッサー「――素晴らすぃいっ!流石ですよ御坂さん!」

レッサー「確かに!そう言われれば産業革命後にメシマズ国としての確固たる地位を築いてのは間違いない……!」

レッサー「そんなところに原因があったとは!とはっ!!!」

御坂「(……まぁでも普通の感覚だったら、あたしが今してるように適度に微調整して味を調えるんだけど)」 ボソッ

御坂「(ていうか日本の流通事情&スーパーだとスタッフが限りなく均一に捌いてくれるから、わざわざ選別眼を持つ意味もないわね)」

御坂「(あと-60℃の急速冷凍で、刺身が一年経ってもやや色がくすむ以外は問題なく食べられるHEAN-TAIの御業って言うか、うん)」

レッサー「よく言いました!そんなあなたにはレッサーちゃん特製の『ブリテン特別ビザ』を差し上げましょう!」

御坂「いらないです」

レッサー「これがあればあーら不思議!ブリテンに何年いたって不法滞在し続けられる謎の効果がですね!」

御坂「いやほんっとにいらないから。押しつけないで」

御坂「――で、まぁ皮と身を切り離した所で、ザルにあけ湯引きをします」

レッサー「ゆびきり?」

御坂「いやいやげんまんの方じゃなく。熱湯を切り身にかけるのよ」

レッサー「WHY?今からこれ鍋へぶっ込んで煮るんですけど?二度手間じゃないですかね?」

御坂「『……料理は、愛情……ッ!!!』」

レッサー「Oh!?」

御坂「『テメー一人のために作るんだったらともかく!大切な人のために作るのであれば手間暇惜しんでどうするんですか!』――」

御坂「by、佐天涙子……ッ!!!」

レッサー「何ともまぁ……」

御坂「手間を惜しまない。てか手間暇でもないしね、そんなには」

御坂「さて、ではボウルへ水を入れて、その上へザルを持ってきて熱湯で湯引きします」 サァーーーッ

レッサー「……それには、どういう意味がおありで?」

御坂「まず一番の目的は脂成分をお湯で温めて軽く取ること。ほら、ボウルの下の水が脂で光ってるでしょ?」

レッサー「です、ねぇ。うわ、こんなに脂出るんですか」

御坂「まぁ悪い事じゃないんだけどね。もっと発酵食品を絡めた、それこそお味噌にお醤油を入れた鍋とかだったら気にしなくていいのよ」

御坂「ただ今回は牛乳ベースのスープだから、シンプルな味に脂多すぎると雑味になっちゃう訳で」

レッサー「ZATSUMI?」

御坂「元々はね、日本酒に醸造過程で付いた余計な風味をそう呼んでたのよ。えっと、なんて言えばいいのかな……?」

御坂「ワインもさ、木のタルの匂いがお酒へ移っちゃったら、葡萄の風味が薄れるわよね?」

レッサー「言いたい事とは、なんとなく分からないでもないですが……」

御坂「でも別の場合、高級な日本酒を造る時には、香りの高い吉野杉種の中には香りのいい杉を使う事もあるの」

御坂「シンプルに言えば時と場合による、かな?」

御坂「普通に焼き魚として食べてる分には気にならなかった動物性の脂肪も、スープへ入れると自己主張が強すぎる」

御坂「だから灰汁を取ったり湯引きをして、脂分を制限するの。分かる?」

レッサー「……なんつーか、あれですな。ヤポン人がキレるのはメシと嘘吐かれた時だってのが、よく分かるようなお話で」

御坂「つーかこれもまだまだなのよ?中には鯛飯って言って、一度充分に焼いて脂を落とした魚を、御飯と一緒に炊く料理もあるんだからね?」

レッサー「Hentaiだ……Hentaiの国の所業です……!」

御坂「かと思えば……ドブ汁って知ってる――訳ないか、えっとアンコウは分かる?Anglerfish, OK?」

レッサー「それもナショジオで見ました!巨大なメスにオスが合体するKMJさん(仮名)のような生態を持つ魚だなって!」

御坂「ちょっとそのKMJさん(仮名)の事は後で詳しく念入りに聞くとして、まぁそうね。あのグロい魚ね」

御坂「その魚を丸ごと一匹、しかも水や調味料を一切入れずにできる料理で”ドブ鍋”って代物もあるの……!」
(※おいでませ北関東〜南東北)

レッサー「……作る料理によってここまで違うとは……」

御坂「化学実験やってんじゃないんだから、食べる人の好みに合わせるのは当たり前」

御坂「味の濃い薄いに始まって、醤油の薄口濃い口を使い分けてお煮染めに色を変えたり、天麩羅の衣も以下同文」

御坂「お年寄りに塩分はダメって言われてるんだったら、薄い味付けじゃなくて出汁を取って風味を効かせる!」

御坂「引き算をしたんだったら必ず何か足す!失敗してもまた良し!次の反省に生かすこと!」

レッサー「あの、テンションがおかしいですよ?キャラもなんか違いますし?」



――

御坂「――タラの湯引きが終って、少し硬くなったのを一口大に切る。そっちの用意は?」

レッサー「サー!ジャガイモの下ゆで済みでありますサー!」

御坂「ジャガイモは粗めに潰しておいて?あたしはお鍋にバターを入れて溶かしてっと」

御坂「刻んだタマネギを入れてよく炒め、色が変わったら薄力粉を入れて……よーく炒めるっと」

レッサー「こっちの牛乳は温めておきましょうか?」

御坂「タラには湯引きである程度熱が通ってる状態だから、まぁ時短メニュー目指すんだったらやってもいいかも?」

御坂「今回はテストも兼ねてるのでオーソドックスに冷たいままから温めましょう?」

レッサー「了解でありますサー!」

御坂「お鍋に牛乳、タラの身を加えてゆっくり火を通す。あんまり温めすぎると膜張るから程々にね?」

レッサー「すいません今の台詞の後半を一言一言区切ってリピートプリーズ!」

御坂「所々にシモネタ入れるな――、と今のウチにグリーンピースを電子レンジでチンして」

レッサー ワクワク

御坂「……やらないわよ?どんな噂が流れてるのか大体見当はつくんだけど、あたしが生身で電子レンジごっこはやらないからね?」

レッサー「”できない”のではなく”やらない”辺りに夢を感じます……!」

御坂「まぁ、どうも……と、タラに火が大体通ったら、残りの食材を入れて温めて――」

御坂「つけ合わせが足りない気がするわね。こう、具体的には穀物成分が足りてない」

レッサー「我々の食事ではジャガイモが主食を兼ねるんで、カレンスキンクプラスサラダとかが一般的ですけど」

御坂「パンないかな?軽く作っちゃおう」

レッサー「今ちょっと冷蔵庫漁ってー――と、あったっちゃありましたが、少し硬くなってますなぁ」

御坂「あーんじゃそれでいいや。軽く霧吹き……は、ないから、濡らしたキッチンタオルで軽く表面を湿らせて、っと」

御坂「パンをトーストで焼ける大きさに人数分切って、真ん中バッテンの切り込みを包丁で入れて、表面に軽くバターを塗ります」

御坂「切り込みの上へチーズを置いて、クッキングシートの上に並べてからオーブンで3〜5分温めて……」

御坂「チーズが溶けるぐらいか、少し焦げるぐらいかはお好みでどーぞ、と」

御坂「待ってる間にスープは……ん、いい感じね。味見してみる?」

レッサー「はい、是非頂きます――と、これはっ!?」

レッサー「魚の臭味がほぼない上に、塩も胡椒も入れてないのに塩味が利いてる、だと!?」

御坂「”元々の”カレンスキンクはこんな味だったんだと思うわ。塩漬けのタラで作ればこうなりますよ、ってね」

御坂「……あぁ本当はスコットランド料理だったんだっけ?まぁ向こうも地理的にはより厳しいだろうけど」

レッサー「あのアバズ×どもに食べさせてやってもいいですかね?」

御坂「友達をビッ×言わない」



――『新たなる光』のアジト

ランシス「……うーん」

フロリス「見た目は、悪くないぜ、ってゆーかさっきから美味しそうなニオイはしてたんだが」

ベイロープ「これでもか!って言うぐらいに自己主張するタラが、入ってるのかどうか分からないぐらいよね、これ」

レッサー「くっくっく!見ましたか!これがブリテンの実力なんですよ!」

御坂「おいアシスタントその一、パン運んできて貰えるかな?」

レッサー「アッハイお任せをっ!」

ランシス「立場、弱っ……」

ベイロープ「ごめん、なさいね?なんかこうレッサーに付き合って貰って、大変だったでしょ?」

御坂「あぁいえ大変――だったけど!イギリスの郷土料理教えて貰ったし、楽しかったわよ!」

レッサー「ヘイお待ち!焼きたての――なんでしたっけ、これ?」

御坂「いや別に古いパンにチーズ乗せて温めただけで名前なんてないから」

レッサー「ではミサカ焼きで」

御坂「やめて。ウチの家名をお手軽簡単誰でもできる、料理と呼べないような料理につけないで!」

ランシス「……これも、ご家庭によってはできないのが、ブリテンクオリティ……!」

フロリス「一緒にスンナ……いや、しないでくださいお願いします」

ベイロープ「まぁ折角作ってもらったんだし、頂きましょう」

全員「いただきます」

レッサー・フロリス・ランシス・ベイロープ「「「「……」」」」

御坂「……ど、どうかな?食べられる?」

レッサー「――私の」

御坂「はい?」

レッサー「私のママンよりも美味い……orz」

御坂「待って!?そんな大層な事じゃないから!」

レッサー「てか今まで食ってたのはタニシかってぐらい、タラが!タラがしっかりといいお仕事しやがっててまぁ!」

フロリス「だ、ネー。最初にスープへ口付けたら『ちょっと薄いカー?』って思ったけどもだ。タラの塩味がイー感じに」

御坂「これも、多分、なんだけど昔はお塩もそんなに使えないだろうし、タラの塩味を生かすのがこの料理の本質だと思うのよ」

ランシス「さっき……覗いてたら、脂?神経質にとってるなー、て……でも、パサパサしてない」

御坂「魚の脂を牛乳でカバーしてるしね。つけ合わせのパンで脂肪分も充分に補給できるわ」

ベイロープ「最初のこのおバカと化学反応起こしてどんな惨事になるのかと思ったけどね」

御坂「お疲れ様です。いやほんっっっっっとに、心の底からそう思います」

ベイロープ「このぐらいの腕だったら、その、好きな相手も喜んでくれると思うわよ?」

御坂「そんなっ好きだなんて!……え、腕?」

ベイロープ「うん?」

御坂「……そっか。そう、よね――」

御坂「――あたし、お料理上手くなってるんだ……!」

フロリス「何を今更、嫌味かっつーの」

ランシス「……ここだと、充分に平均より上のレベル……」

御坂「ほぼ駆け出しのあたしにその評価も、イギリスの業が見え隠れして怖いんだけど……」

レッサー「てか御坂さんも私達と一緒にレボリューションしましょうよ!楽しい職場です!」

御坂「レボリューション?あー、なんか小さくて歌うまいオジサンがいたっけ――て、あんたら歌手やってんのかっ!?」

レッサー「今ならこのラクロス衣装が、ラ・ク・ロ・ス!衣装がっ!」

レッサー「クリケットの本場なのにラクロスのユニフォームを!今なら無償で御坂さんの分のご用意しますよっ!」

御坂「本気でやめて?それ決してこの世界ではツッコんでいけない謎の一つだと思うから!」

レッサー「しかしマジな話、御坂さん。悩んでらしたのが嘘のように晴れ晴れとして何よりです」

御坂「ありがとう。こっちも、なんか、方向性みたいなのが見えた気がするわ」

レッサー「あー、いえいえ!お礼を言わなきゃなのはこっちですって!私もお陰様で私も混沌メシから脱却できそうな予感がしないでもないです!」

御坂「う、うん、別にいいのよ――てかここまでやって予感しかしないだなんて、イギリス人の業は深いのね!」

レッサー「これでね、私もようやく大手を振って上条さんを婿入りさせられるってぇもんですな!」

御坂「よし、ちょっと表出よっか?」



MMR(御坂美琴の料理教室) 煉獄編 第04話 −終−






――次回予告

御坂「――あれは、今から思えば、そう、今から思えばって話なのよ。要はね」

御坂「あるじゃない?昔はよく分かってなかったことが、成長すると全体像が見えてくる、みたいな話よ」

御坂「好きな歌にね、『大人になって空は近付いたのに、その青さが見えなくなった』――あ、ごめん、この例えはダメか、あーっと」

御坂「知らないって事で大失敗する……ん、だったらまだ許せる、許されるかもだけど」

御坂「大きすぎる相手を前に、少しばかり思い上がってたあたしは」

御坂「その、実力の違いを。経験では埋められない天賦の差を!まざまざと見せつけられる……ッ!!!」

オルソラ「それはさておき御坂さん、私も実は和食大好きでございまして」

御坂「ちょォォォォォォォォォォォォォォォォッと待ってくれないかなぁ!?今丁度予告やってるトコだから!あたしの分のノルマを!」

御坂「あなたの正体をボカして『だ、誰が出てくるんだろう(`・ω・´)』って含みを持たせてる最中だから!出て来られると困るって言うか撮り直しなのよ!」

御坂「第一まだネタ振ったばかりで『後悔したのは何?』って疑問すら解消されてないの!にも関わらずネタバレってどう!?」

オルソラ「あらまぁ、最近の学生さんは難しい言葉ばかりをお使いになるのでございますね」

御坂「流暢で丁寧な日本語でそれ言われても説得力ないわね!てか何かの話だっけ!?何の話してたっけ!?」

オルソラ「そういえば昨日の『団塊スタイ○』では、殿方の手料理が流行っているとかで」

オルソラ「やっぱり家事ができる素敵な旦那様を持つというのは、女性にとっては嬉しいものでございますよ」

御坂「ツッコミが!?あたしだけじゃツッコミ要員が足りな――」

プツッ



次回予告 −終−
(※イタリア飯+巨乳+お姉さん+天然=winner)
(※ただしKMJさん(仮名)の性癖次第では革命あり(UNO的な意味で))

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