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MMR(御坂美琴の料理教室)第02話 「料理の基本」


――某所クッキングスタジオ

御坂「――ハイっ!って言う訳でねっ!今日は今日でお料理の勉強をしたいと思うんですけども!」

御坂「いやー色々あったんだけどねっ!やっぱりここはプロを!プロの人のスキルをお借りしたいなーなんて思っちゃったりするんですけどねっ!」

御坂「という訳で本日のゲストは雲川鞠亜さんですー!拍手ー!」

鞠亜「どうも。たった今ご紹介に預かった雲川鞠亜だ――が、その、ちょっと良いかな?」

御坂「はい?」

鞠亜「なんで私なんだ?そりゃまぁどんな無能なご主人様に仕えても良いよう、家事スキルは繚乱家政でもほぼ主席クラスと言っても過言ではない私だが」

鞠亜「そしてまた未来のご主人様が『俺、飯作ろうと思うんだよ』とフラグ目当てで出来もしない料理を作ろうとするのも、対応して見せよう」

御坂「フラグって何?つーかそんなシチュ想定しなくない?」

鞠亜「アレだね。こう普段はアレで素行もアレなご主人様が、ふと思い付いてツンデレメイドが熱を出した時に看病したりするだろう?」

御坂「その例え、めっちゃレアケースじゃないかな?少なくとも三次元じゃ見た事ないんだけど……」

鞠亜「そんな事もあろうかと!無能なご主人様だってきちんとフォローしてみせようじゃないか!」

御坂「いやあの、登場人物がご主人様とツンデレメイドとあなただったら、あなたが最初から料理作れば解決するんじゃ……?」

鞠亜「あぁ勿論そうするのがいい――の、だけれども最善では決して無い」

鞠亜「ここは敢えて!ご主人様に一働きして貰って好感度を上げようというのが思いやりではないかねっ!?」

御坂「それメイド必要かな?ただのやり手の、陰で『お見合いババア』とか呼ばれてる人のする事よね?」

御坂「ていうかまた人選ミスったかー……?」

鞠亜「待ちたまえ。人をさも失敗策みたいに言わないで貰おうか――と、まだ私の話は終っていないのだが」

御坂「……うん、何よ」

鞠亜「君は土御門――舞夏の友人じゃなかったのか?彼女から何度か君の話を聞いているんだが」

御坂「まぁ、友達よね」

鞠亜「加えて舞夏も家政の実技はトップクラス。私も後背を拝む立場にあり、彼女から教わった方が良いのではないのか?」

御坂「あー……うん、考えたわよ。それはね、やっぱこの企画立ち上げた時には」

鞠亜「ふむ。正しい選択だな」

御坂「一回だけ、そう最初に一回だけ『簡単に上手になるコツはないの?』って聞いたら――」

御坂「『みさかー……簡単なんだぞー。こうまず鍋に水をドチャって入れてだなー』」

御坂「『次にコトコトと煮込ま――ないで、ゴトゴトってなるまで煮込むんだよー』」

御坂「『あ、火を見ながら隠し味を入れるのを忘れるなー?大切だからなー?なんだったら入れなくてもいいしー?』」

御坂「『そうやって最後にピシッ!となった所で、ガッツリあぁすれば完成だー!どうだー?簡単だろー?』」

鞠亜「アレかな。それは遠回しに嫌がらせか何かされているのかな……?」

御坂「違うと思うわ……つーかあの子、感覚で掴んでるから人に教えるのがものっそい抽象的、っていうか下手」

御坂「教わる立場で何なんだけど、具体的な単語が何一つ出て来ないのよ……!」

鞠亜「野球でも現役時代には天才と呼ばれたが、監督になれば疫病神と罵られるのもたまに居るらしいが」

御坂「という訳でお願いしますっ!」

鞠亜「事情は理解した。まぁ承ろう――で?」

御坂「お料理は茶碗蒸しとプリンが作れますっ!頑張れば!」

鞠亜「ふむ、蒸し料理も意外とハードルは低いからね。そっちから始めたというのも間違いではない……他には?」

御坂「……め、目玉焼き?」

鞠亜「……つまりほぼ初心者か……」

御坂「ダメ、かな?」

鞠亜「……いいや、悪くない。悪くないぞ!」

鞠亜「料理もからっきしの相手を指導出来るだなんて!今日の私も最高にツいてると言ってもいいなっ!」

御坂「……あー……土御門の友達なのね、あんたも」

鞠亜「おっとその軽蔑した表情も悪くない!経験値を積ませてくれる上に、私のメンタルの強靱化を計るだなんて悪くないぞ!」

御坂「……どうしよう……!今からでも佐天さんにチェンジした方が無難に終りそう……!」

鞠亜「取り敢えず携帯を離したまえ。真面目にやるから、真面目に」

御坂「ていうかアンタの着てる秋葉原でしか見かけないような毒々しいメイド服が気になるんだけど!」

鞠亜「土御門にもよく言われるが、まぁそこはそれ計算も兼ねていてだね」

鞠亜「『色物と見せかけて実はメッチャ強い!』的な、憧れるだろう?」

御坂「……いや、あるけど。格闘漫画真っ盛りの時にそういう展開はベタだったけど!」

御坂「でもアンタの場合自己主張が強すぎて、仮に実力があったとしても『能力が高いイロモノ』枠に収まるって言うか」

鞠亜「……そ、それはそれで私の打たれ強さが上がるな!」

御坂「一瞬ドモった時点で、あんたにもまだ良心が残っているのが嬉しいわ。悪い意味で」

鞠亜「――さて雑談は良いとして!早速料理の基本から入るかっ!」

御坂「大声出してもカバーしきれないアレコレが……っていうか繚乱家政大丈夫かしら……?」

鞠亜「外見で判断するな、とはよく言うがあれはあれで正しい面もあるのさ」

鞠亜「まずは外見情報から他人を推し量るのは当たり前、それ以外に判断材料が無いのだから仕方がない」

鞠亜「とは言え外見”だけ”を重視した挙げ句、それ以上相手を理解もせず理解も出来ない相手であれば、その程度と切って捨てるだけの話だね」

御坂「……ま、分からないでもないけどさ」

鞠亜「うん、だから『魔法つかいプリキュ○』はだね」

御坂「どんな流れでその話になったのよ!?」

鞠亜「というか今まで散々『魔法の国』や『陽性ランド』とか言ってるのに、今更魔法つかい言われても……」

御坂「誤字よね?フェアリー的な意味合いの妖精じゃなかったわよね?」

鞠亜「なので君にはまず料理の基本から始めたい。というかそれが妥当だろう」

御坂「あっはい。信用は今までの流れで大分失ったけど、お願いします」

鞠亜「肉や魚……ではなく、まずは野菜の下処理から勉強しようか」

御坂「……は?……あのさ、幾らあたしでもサラダぐらいは作れるんだけど?」

鞠亜「ではやってみたまえ」

御坂「そうねー……キャベツの千切りは定番よね」

鞠亜「レタスの盛り付けと同じぐらいのレベル、ぶっちゃけ小学生だな」

御坂「えっとまずキャベツキャベツ……あった。これを3分の1ぐらいに切り落とします」 トンッ

御坂「んで千切りにしてから……」 トントントントンッ

御坂「ザルへ入れて、流水でよく洗って――」 ジャー

御坂「後はお皿へ盛り付けて――はい、完成!」

鞠亜「――はい、不合格!」

御坂「なんでよっ!?ダメなとこなかったじゃないっ!?」

鞠亜「――はい、では御坂さん――さ、ん?……御坂君に問題」

御坂「君呼ばわり……いやまぁ大体タメな気がするけど」 チラッ

鞠亜「おや?顔から視線が一段階下がった気がする?――が、さておき問題だ」

鞠亜「日本の農産物が、農家からご家庭へ着くまでどんな行程を辿るだろうか?」

御坂「何の関係があるのよ、それに!」

鞠亜「まぁまぁ答えてみたまえ。小学校の社会レベルだから」

御坂「逆にそれ難しいと思うわ……えっと、まず農家さんが種から育てます?」

鞠亜「御坂君、そこはカットで。出来れば巻きで行こう」

御坂「JA?だかに出荷して、卸売りへ出して、小売りの人が買ってー、店頭へ並ぶ?」

鞠亜「はい大体正解だな。ネットを使っての消費者へ直接売る直売や、小売りが直接買い付けるケースも最近は増えている」

御坂「ネットと連動して、余計な」

鞠亜「そちらの方がお安いんだが……問題も無くは無い訳だ」

鞠亜「先の東日本大震災直後、被災地どころか東京以北の流通関係が壊滅状態に陥った」

鞠亜「流通インフラである道路や鉄道があちこちで寸断されのが理由の一つ。そしてまた政府の徹底した無策がもう一つ」

鞠亜「『お金を出せば物が買える』のは幸運な事だと、多くの人間は思い知った」

御坂「あの時はねー……」

鞠亜「民間の土建会社によるライフラインの復旧が済み、自衛隊や在日米軍による物資の移送が行われるようになり、次に民間の商社が物資を運んだ」

鞠亜「その時に間に入って流通を仕切ったのは、まさにその”余計な”卸売業者だったのもまた事実であると知って欲しい」

御坂「必要悪、とまでは言わない……てか言っちゃダメなのか。大規模な輸送と卸売ルートを持ってる人達だし」

鞠亜「まぁ”そっち”の話は姉の管轄なので、私はこれ以上触れないでおこう」

御坂「それで?わざわざあたしに流通を確認させた理由は?」

鞠亜「うむ、そう難しい事ではないのだが――」

鞠亜「――その過程の”どこ”で野菜を洗浄しているのかな?」

御坂「どこ……?」

鞠亜「はっきり言って洗い方が不十分だ、御坂君。もっとしっかり洗った方がいい」

御坂「その台詞だけ聞くと銭湯のマナー違反を咎めるっぽい……」

鞠亜「一応野菜は”大体”は落としているんだ。土だけでなく農薬との兼ね合いもあり、逆に言えば『土が付いていると売れない』面もある」

鞠亜「スーパーに並んでいる野菜を見てみるといい。特に葉物の根元なんかにはよく残っているから」

御坂「……あんまり神経質になるのも良くないんじゃ?」

鞠亜「うん、まぁそれもまた正しくはある。この世の中で無添加・化学肥料一切摂取せずに生きていく――のは、無理とは言わないが、難しいだろう」

鞠亜「また『有機農業』、あるだろう?オーガニックがナンチャラで、自然の生き方がドートラの」

御坂「それ、何年か前に詐欺で問題起こしてたんじゃ……?」

鞠亜「あぁいや有機農業自体は良い事なんだよ。あまりにも化学肥料――無機物の農薬ばかりを使っていると、土の中の微生物が駆逐される」

鞠亜「微生物は有機物を分解している反面、嫌気性細菌が繁殖して植物が病気にかかりやすくなるデメリットもある」

鞠亜「他にも”有機”肥料である以上、牛糞や鶏糞を使って堆肥を作るのは当たり前」

御坂「うえー」

鞠亜「あぁこらそこ嫌そうな顔をしない。きちんと発酵させてあるから匂いは殆どしないよ」

鞠亜「というか園芸店で普通に売ってるから……まぁ気持ちは分かる」

鞠亜「私も嫁入り前の乙女だし、有機肥料に肥料系には少々抵抗を覚えなくもないが、それでも有史以来人類”を”食べさせてきた訳で」

鞠亜「少なくとも『きちんと洗浄さえすれば何一つリスクを負う事無く口に出来る』のは検証済みだからな」

御坂「……その、さ?贅沢かもしれないけど、もっと他の有機肥料はないの?」

鞠亜「干鰯――干した鰯は伝統的に使われてきた。また悪名高い牛骨粉も一時期はかなり使われてはいたよ」

御坂「BSEで問題になったんだっけ」

鞠亜「ただしコストの問題だな」

御坂「……だよねー」

鞠亜「何回でも言うが――『農家ほどしっかりと洗浄してから食べている』のを頭に叩き込んで欲しい」

御坂「いやでも待ってよ。最近じゃ『皮の方に栄養分が詰まっている』って研究もあ――」

鞠亜「少なくともこの日本に於いて、『江戸時代は野菜を生で食べる習慣がなかった』んだ。瓜とスイカを除いて」

鞠亜「有機農法”しかなかった”時代、寄生虫のリスクが高かったため、基本何でも火を通すor発酵させて食べていた」

鞠亜「江戸時代と現代を比べ、現代もまた危険だ――と言うのは間違っている。危険度は比較にならないほど低く抑えられている」

鞠亜「それは『農』に携わる人達の努力、そして人類の科学の発展が食の分野へ多大な貢献をしてきた結果であると言える……!」

御坂「ねぇ?なんでそんなに気合い入ってんの?」」

鞠亜「……こほん。なので『スーパー等で売られている野菜等に限って』は生のまま食べても、問題は無い。まず無い」

鞠亜「また食品添加物を筆頭に、その種の化学調味料へ必要以上に警戒心を抱くのもまた違う。それはな」

鞠亜「ただ!農家も流通も生産者も!そのまま洗わずに食する事は想定していない!それを念頭に置いて欲しい!」

御坂「ねぇどうしてそんなに生産の肩を持つの?」

鞠亜「『ノーパソを凶器にして殺人が行われた場合、製造者はその責任を負うか』と、いう問題だね」

御坂「……あぁうん。食の安全には気を遣っているものの、全てに全賠償をするのは無理なのね……」

鞠亜「後は海外の場合だな。だが――」

鞠亜「――続きは後半で!」

御坂「後半ってなんだ!?ていうかこれ需要あるのっ!?」

〜中略〜

鞠亜「――と、いう訳で後半だねっ!」

御坂「いやあの後半って何?つーか需要が……」

御坂「そして何よりも今日はどんなお料理を作るか、まだ確定してすらないな!不安だわ!」

鞠亜「待ちたまえ。ノルマがある訳でなし、徐々にやっていければいいだけだから」

鞠亜「そもそも基本を疎かにしては良く”は”ない――とはいえ」

鞠亜「究極的にはどこまで行っても自己責任だからね。君は私を参考にするのもいいし、しなくてもいい」

御坂「世界○風……」

鞠亜「極端すぎる例を挙げれば、現代日本であっても野菜すら煮沸して食べるご家庭もある」

御坂「江戸時代ではそれが普通だったし、間違いとは言えないんだっけ?」

鞠亜「その延長前回出来なかった話になるが、外国のケースだね」

御坂「外国……そう言えば、あんまヨーロッパとアメリカ以外でサラダは出て来なかったような……?」

鞠亜「というか生水そのものが飲めないか、飲めたとしてもコスト的に高いからだよ」

鞠亜「場所によっては米を研ぐ際、まず”海水で洗って”というのがデフォの国もある(※実話です)」

御坂「……マジで!?なんていうか……うん」

鞠亜「それに衛生概念も日本とはかけ離れているからねー。トイレへ行って手を洗うのが『常識』でない国も珍しくはない」

鞠亜「まぁその中には砂漠地帯で年中乾燥しており、必要性が”それほど”無いだけであったりもするが」

鞠亜「更にプラスして国民性や民族性も加わり……これは私の友人の弟のメル友から聞いた話だが」

御坂「出たわね謎の人脈繋がり!」

鞠亜「彼が海外留学した際、レストランでは必ずスパークリングウォーター、つまり炭酸水を頼んだそうだ」

鞠亜「ミネラルウォーターを頼むとほぼ100%水道水を出されるので、直前に封を切ったのが分かるようにだね」

御坂「それ、行ってるレストランの柄が悪いんじゃ……?」

鞠亜「ちなみに彼曰く、『異文化交流で役に立ったのは語学力よりもオクラホマスタンピード(※暴力)だった』」

御坂「ねぇ?その人何しに海外行ったの?プロレスの興行?」

鞠亜「それぞれの国の文化や歴史に含めて、運用しているのが人間である以上はハズレもある」

御坂「そう考えると、日本だったらスーパーで売ってる生野菜をそのまま食べても大丈夫じゃ?」

御坂「基本的に平均値が高い、っては言われてるんだし」

鞠亜「そうだね。”ほぼ”大丈夫だ――し、君がさっき言ったような『御坂美琴君が常用するような施設』であれば、心配は皆無と言っていい」

鞠亜「ただ、なんだがそれは結局の所、”君”の都合だろう?」

御坂「なんかさっきから、奥歯にものが挟まったような言い方するわね」

鞠亜「ではストレートに言わせて貰えれば、”独り”ではなく”二人”なのだよ」

御坂「うん?」

鞠亜「ではちょっとシミュレートしてみようか――と、君は彼氏役で」

御坂「やっぱすんの!?無いと思って安心してたのに!」

鞠亜(※御坂役)「『――あ、おかえりー。待ってたわよー』」

御坂(※上条役)「『あ、うん、ただいまー』」

鞠亜「『野菜無かったから買って来といたから感謝しなさいよねっ!』」

御坂「なんでみんな、あたしの演技入るとツンデレを目指すんだろう……?」

鞠亜「『あ、勿論○○で買った無添加・無農薬のだからねっ!ちょっと高かったけど!』」

鞠亜「『あと――近所の人からお野菜貰ったけど、どこのか分からないから捨てちゃったからね』」

御坂「ちょっと待った!?どこの最低女だっあたしはっ!?」

鞠亜「――と、ここまでは酷くはないだろうが、まぁ例えだよ、例え」

御坂「幾ら例えにしたって、あんなキャラはない。ないったらない」

鞠亜「なんていうかな、こう彼氏彼女、もしくはその先の関係になったとすれば、やっぱり同棲するよね?」

御坂「ど、同棲……っ!?」

鞠亜「あぁこらそこ照れない。君の桃色脳内ビジョンは一度捨てて、こっち帰って来たまえ」

御坂「べ、べつにそんなんじゃないし!」

鞠亜「君達がどれだけ爛れた生活を送ろうが、まぁゆくゆくは一緒に生活するのが目的となり、それが自然になる事だってあると思うよ」

鞠亜「その時、君の価値観と彼の価値観が一致するとは限らない――むしろ、有り得ない」

御坂「それは……そう、よ。誰だって」

鞠亜「どちらがどちらかへ合わせるのか、それとも中間点を探るのかは君達の自由だ、それは」

鞠亜「その時、ギャップに苦しむのはどっちかな、と言うだけの話さ。分かるかい?」

御坂「……あたしの”常識”とあいつの”常識”が一致しない、って?」

鞠亜「いいかな?ギャップは必ずある。それは当たり前の話だ」

鞠亜「親兄弟や肉親、親友に友達に知り合い。どれも誰も意見や趣向が違うのは当然」

鞠亜「仮に自分であっても10年前と現在、また未来においてずっと同じであるのはまずないだろう」

御坂「……あたしの方に合わせる、ってのはダメなのかな?」

鞠亜「それは私が決めるべきではない。ないが――」

御坂「が?」

鞠亜「――男は、チョロイ」

御坂「……………………はい?」

鞠亜「そこはアレだね。君はツンデレキャラで通っているが、それはそれで需要が高いとは思う」

御坂「いやなんの話だ!?急に!?」

鞠亜「孤高の御坂派、別名ボッチでお人様ってファミレスで聞き返される派(by食蜂操折)と呼ばれており、同性すらも魅力的に思われると」

御坂「取り敢えずその別名をつけてくれたヤローを教えてくれないかな?今から……そう、話し合いに行くから!」

鞠亜「だがしかし!そんな彼女が!人前ではツンツンしてる彼女が!」

鞠亜「――デレれば、どうだ……っ!?」

御坂「ごめん、何言ってるのか全然分からない」

御坂「そしてそんなバカ話をするためにあなたを呼んだんじゃ決して、ない」

鞠亜「大事な話をしているんだ!茶化さないでくれ!」

御坂「……二回かー、二回目も人選間違えたかー……」

鞠亜「我が強い彼女が家では従順に!これはある意味男のロマンの言えるだろうかっ!」

御坂「言いたい事は分からないでもないんだけど、要約したらスケールがちっさくなったわねー……」

鞠亜「――という冗談はさておき、知識とはそういうものだ。知っていれば選択肢の幅が広がるし、知らなければ選択肢すら出て来ない」

鞠亜「君がどんな相手と付き合おうとも、常識を知っておくだけでスムーズな人間関係を構築出来る」

御坂「色々と理解出来る話だけじゃなかったけど、まぁ納得する内容もあったわ」

御坂「あたしにとっての常識であっても、それが他では通用しない場合もある。そして」

御坂「……男女関係において、それが致命的な齟齬を生みかねない、と」

鞠亜「俗に『100年の恋も冷めるような』という言い回しがあるように、人の縁とは繋がりやすくて切れやすい」

鞠亜「これが切れても良いようなものであるならば、大して考慮する必要もなかろうが、事によっては半生を共にするかも知れない訳だ」

鞠亜「君の価値観、そして社会常識を一方的に消せとは言わないが、最低でも相手の事を理解する姿勢がなければな」

御坂「……なんで料理の話でこんな深い話になってんだろ……?」

鞠亜「食は大事だからだね。それこそ一生を左右してしまう程に」

鞠亜「同じように特別で豪華な料理を勉強する。それは間違いではないし、正しい行為だ」

鞠亜「が、いつもいつもその”特別”な料理を用意出来ない……まぁ手間暇時間にコストの問題、何よりも飽きられるだろうし」

鞠亜「なので最終的に問われるのは『日常』的な献立に他ならないよ」

御坂「それぞれのご家庭の味って訳か。なるほどなー」

鞠亜「これで相手がどこぞのお大尽や上流階級であれば、料理そのものの概念からして違うんだが、君は違うだろう?」

鞠亜「独りよがりでもなく、ただ相手と同じ目線に立って行動すればいいと思うよ」

御坂「……」

鞠亜「どうしたね、頭を抱えたりして?」

御坂「……この間ね、服が汚れちゃったから着替えようと思ってさ」

鞠亜「ふむ?」

御坂「んで近くのホテルに部屋借りて着替えたら――『それ、何か違う』って!」

鞠亜「あー……」

御坂「他にもいつも食べてるホットドッグが『お高いんでしょ?』みたいに言われたり!」

御坂「このままだと収入の面で価値観の相違が!?」

鞠亜「ま、まぁ自覚があるのは悪くない事だよ!問題点がハッキリしたって事は!」

鞠亜「これからどう善処すべきか、ある程度の指針になるって事だからさ!」

御坂「……だ、大丈夫?離婚、されない……?」

鞠亜「その問いには答えにくいんだが、面倒なので『そうだね』と言っておくよ」

御坂「てか今回は殆ど料理関係ないし……」

鞠亜「ま、まぁまぁ。次回からすればいいさ、ねっ?」

御坂「あーでもホント鞠亜さんが居てくれた良かったわー」

鞠亜「それはどうも」

御坂「てかアイツにフラグ立ってない子を探すのって一苦労でねー」

鞠亜「え?」

御坂「えっ?」


−終−

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