MMR(御坂美琴の料理教室) 死闘編 「クマ」
(※かなりグロい内容になっています)
――とある山の麓・ベースキャンプ地
円周「『――よく聞けぇ。いいかぁ、ここを、キャンプ地とする!』」
御坂「いやその水曜どうでしょ○フリークにしか分からないネタ振られても、その、困る」
円周「円盤買ってんだけど、副音声と映像のギャップが凄いから、一度はみんな見てねっ!私との約束だぞっ!」
御坂「や、あの……いきなりキャンプ場に連れ来られたんですけど。アニサキスについてはもう正直お腹いっぱいであって」
円周「『――問題!山歩きをしていたら横道に湧き水を見つけました!どうするのか適切か答えよ!』」
御坂「え!?――っと、飲まない?」
円周「『正解!緊急時以外には不用意に自然のものを口にしない!』」
御坂「いや、まぁ教わったけど」
円周「『では続けて問題!あなたは山の中で遭難しかけている!その時に湧き水を見つけた場合、どんなリスクを考慮しなければいけないのか!?』」
御坂「まず水の透明度。山頂に近くて寒い季節ならば雑菌が繁殖しなくて安全かもしれない」
御坂「これがそこいらの沢だったら鉱物含有量が高く、飲んだらヤバいかも、しれない」
御坂「また喉が渇いてたからといって下手に飲むと、お腹がぴーぴーになって脱水症状が進む可能性がある、と」
御坂「よって緊急時以外に生水の飲用は避けるのが正解である、かな」
円周「『よし正解だポンコツめ!貴様に登山する権利をくれてやろう!』」
御坂「あ、ありがとうございます」
円周「――はい、っていう訳で今日の企画は対クマだねっ!」
御坂「料理一個も関係無いじゃないですかコノヤロー」
円周「前に炊き込みご飯で、『山菜ゲッターはマンハンティング(クマさん用)』って話はしたよねぇ?」
御坂「聞きたくないけどガッツリ聞かせられたわよっ!お陰様でねっ!」
円周「あれやったのが去年の11月頃で、今年になっても残念な人が増えてるみたいだから、もう一回おさらいの意味で取り上げるんだよ!」
御坂「だったらあたしを道連れにしないで!そっちの不愉快な仲間達ですればいいじゃない!?」
円周「配役の関係上、当麻お兄ちゃんがゴニョゴニョ」
御坂「――任せなさいっ!料理もう関係ないけどあたしが倒せない自然生物(※除くゲコ太)はないわっ!」
円周「うん、ゲコ太君は自然じゃないよ?不自然だよ?」
円周「あーあと、大真面目なお話断っておくけど相当グロいしエグい内容になってるし、事故が起きたばかりで不謹慎だって思うかもしれない」
円周「だから、本当にゴメンナサイだけど気分が悪いと思う人は知らない方がいいよ。だって一生知らなくてもいい知識だからね」
円周「基本的に一般人が山へ入ってクマと出くわしてART対決ボーナスへ突入するなんて事は、まず有り得ないから」
御坂「例えをスロットにするな。それだと何か大当たりしたら喰われるって事でしょ!?」
円周「いやだからね、こうやってギャグに紛らわせておかないと、もうこれグロくて語れなくてさ」
御坂「そこまでして取り上げる理由が!意味が理解出来ないんだけど!」
円周「料理もある意味同じでさ?食べて良いもの悪いもの、人類はトライ&エラーで区別してきた」
円周「科学がなかった頃なんかはフグや有毒生物、調理の仕方一つでも試行錯誤してきた訳で」
円周「んで、その過程で亡くなった人がいる。犠牲になった人は、やっぱりいると」
円周「その人達の死を”笑う”のは不謹慎、だけど”理解して次に生かす”のは貴い行為」
円周「少なくとも私はそう思うし、そう思わない人も当然いるねぇ。そこら辺は個人の趣味でどうぞ。知る権利もあるし、知らないままにしておく権利もあるしー?」
御坂「知らない権利なんて聞いたことない、つーかないわっ!」
円周「無知の知を素で行く権利かな?まぁ全体的に気分悪いからオススメは」
円周「しっかりした登山部でも事故を起こし”た”から、知識としては知っておいて損はないんだけどなー」
御坂「まぁクマ、クマ……リラック○……可愛いわよね、ゲコ太には負けるけど」
円周「『うん、だからよその無知が人殺すっつってんだろメンヘラ女』」
御坂「急に口悪くなるなアンタっ!?誰がメンヘラよ、誰がっ!」
円周「えぇと、まずねー、片思いの相手を助けに武力介入するのはどこのガンダ○だって話から始めた方がいいかな?」
御坂「――そんなことよりも早く説明してほしいところよねっ!次の犠牲を出さないためにもっ!」
円周「誤魔化すためには大声張るって芸風は当麻お兄ちゃん譲りだよねぇ。まぁ納得してくれたようで何よりだけど――」
円周「では今回のゲストその一さん、ご登場でーす!」
御坂「ゲスト?」
垣根(40)「どうも、第三位」
御坂「あ、第二位の人。垣根さん、ですよね?」
垣根(40)「そんなにかしこまらなくても。同じ学生なのですから、気楽にいきましょう、ねっ?」
御坂「やだなんか、こうあたしの知ってる知り合いの人に胡散臭さがぴったり」
円周「”知ってる”&”知り合い”と二重意味にするほど関係を離したいのは分かる。ダブルでストーカーの人だよね」
御坂「まぁじゃいいけどね……そのカッコ40カッコトジって何?」
円周「まぁまぁそれはおいおい説明するとして――続いて本日の(ある意味)主役ー、当麻お兄ちゃんの登場ですー」
上条「あ、どうも」
御坂「……オイコラ」
上条「すいませんっゴメンナサイっ俺が悪かったですねっ!」
垣根「挨拶もそこそこに超反射で謝り出しましたね」
円周「当麻お兄ちゃんの魂にまで刻まれた、『取り敢えずは全力で謝っとけば即死コンボを叩き込まれないかも?』って、学習した結果であってさ」
垣根「ここまで卑屈になってすら”かも”は悲しいです」
御坂「アンタじゃなくて、そっちの羊の皮被ったプレデタ○」
円周「心外だなぁ。科学力と身体能力に頼りっきりの相手なんていい養分なのに」
御坂「(……アンタね!企画!この企画の主旨憶えてんの!?)」
円周「(美琴ちゃんのリアクション力と顔芸力をアップさせる?)」
御坂「(人を変顔で食ってるリアクション芸人みたいに言うな!……そうじゃなくて!)」
円周「(なんやかんやで当麻お兄ちゃんに美味しいご飯作ってあげたいんでしょ?わかってるけどさぁ)」
御坂「(なによ)」
円周「(そもそも不定期&気が向いたときにだけの謎のネタ企画になってんだし、いいんじゃないかなって)」
御坂「(よく――はないでしょ!)」
円周「(いやぁだって当麻お兄ちゃんの認識が)――おーい、当麻お兄ちゃん!」
上条「あいよ?」
円周「この企画の主旨ってなんだったっけ?」
上条「これから暑くなって山遊びへ行く機会が増えるから、用心しようぜってことだろ?」
円周「ねっ?」
御坂「……あー……うん、もう進めといて。テンションが追い付いたら……うん」
円周「それじゃスタンバイお願いしまーす。帝督お兄ちゃんは打ち合わせの通りに」
――CASE01 「アラスカのキャンプ」
垣根(40)『あー、キャンプ楽しいです。キャンプは楽しいなー』
御坂「なんか棒読みの小芝居始まったな!」
円周「あ、テンション追い付いた?」
御坂「ツッコまないと!この棒演技をスルーできる勇気はないわよ!」
御坂「てゆうかロッジのすぐ近くで、テント設営してビバークて!」
円周「まぁまぁシミュレーションということで一つ。あ、続きますねー」
垣根(40)『大自然の中で過ごすのは気分がいいですねー。それじゃ用意してきたお弁当でも』
ガサガサ
垣根(40)『おや?外から音が?』
上条『――おっす!』
垣根(40)『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「――はい、って訳でCASE01終了でーす!思ったよりも早かったですね!」
御坂「何だ今の!?あのバカがテント入って来たらお芝居終了ってどういう世界設定よ!?」
円周「では改めて今回のある意味主役をご紹介致します。上条当麻お兄ちゃんこと――」
円周「――”クマ”です」
御坂・上条「「そんな役!?」」
御坂「ってアンタも仕事引き受ける前に知っときなさいよ!」
上条「い、いや台本渡されて『これね!』って言われただけだから、俺にも何が何だか」
上条「垣根は?お前何か知ってたか?」
垣根(39)「いえ、私にも詳しくは。ただ人のためになるからと」
御坂「……うん?数字が一減ってる……?」
円周「残機だよねっ」
御坂「生々しい!つーかSTGかっ!」
上条「いやちょっと待てや!今特に落ち度もなくテントやってただろ、なんでいきなりゲームオーバーになんだっつーの!理不尽だろーが!」
御坂「お弁当……あ、から揚とか生姜焼きとか入れてたから?」
円周「広義じゃあ正解、でも多分本質的な意味では理解してないと思うから不正解」
円周「アラスカの原生林でキャンプするとき、必ず現地ガイドさんに何度も何度も注意されるポイントが――」
円周「――『テントの中へ絶対に食べ物を持ち込まない』こと。食べ物の臭いに惹かれてクマ来ちゃうから」
(※実話です)
御坂「はー、にゃるほ――待って待って。それだけテントの外へ置いといても変わらなくない?」
御坂「むしろテント一枚ない分だけ、臭気拡散して獣呼びそうじゃない?」
円周「発想の違いじゃないかなぁ。より正しくはテントから離れた場所に一括して食料置いておいて、そこへクマが漁りにやって来る」
円周「その間に人間達は銃や逃げる準備したりする訳で」
垣根「……テントの中へいきなり入って来られるよりは、ワンクッション置いた方が心臓にも優しいですね」
円周「最初から『クマが来る前提で迎撃態勢を整える』のと、『クマが来ない”よう”に態勢を整える』の、違いだね」
円周「あ、某国と某国の安全保障に似てるよねっ!さっすがお兄ちゃん!」
上条「待てコラ。俺が言ったみたいにすんなや」
御坂「あの、質問なんだけどいい?そんなにヤバいの?クマって人と出会ったら逃げるって話聞いたんだけど?」
円周「あーうん、それも追々やってくよ。伊達に残機40用意した訳じゃないから」
垣根「虐殺される私の身にもなって頂きたい!金田○シリーズじゃないんですから!」
円周「あくまでもイメージであり、プレイの一環ですので本当の垣根さんは減っていません。まる」
垣根「完璧な言い訳まで用意済みとは!」
御坂「どう考えても杜撰よね」
上条「てかお前なんで捕まってんだよ。残機40用意してる時点で気づけ。最初の一匹捕まった時点で逃げろや」
垣根「……それが卑怯な罠にかかりまして」
上条「具体的には?」
垣根「私が学園都市のイオンモー○で」
上条「ごめん俺が悪かったからそれ以上は遠慮するわ」
円周「ミニスカ履いてったら、こう足下にワラワラと集ってくるんだもん。ねーっ?」
御坂「だから自重しろっつってんでしょ!てかもうレベル5名乗るのやめなさいよ!」
上条「七人どころか、もう全体数を把握するのが困難になってきたよな。だって無秩序に増減してんだもんよ」
円周「お陰で”一人=垣根派”――ハッ!?孤高の御坂派の総勢二名(本人+白井さん)を下回ったよ!?どうしよっか美琴ちゃん……っ!?」
上条「ま、待て!悪気はないんだ!ただ事実を言っただけで!」
御坂「どいてソイツビリビリできないっ!」
垣根「被害者なのに、この蚊帳の外っぷり……」
御坂「てか何よ!?なんでクマ役がコイツなの!?」
上条「もっと言ってやれ、もっと」
御坂「性格的にオラ攻めは合ってないわ!ヘタレ受けに決まってるじゃない!」
上条「違う違う。俺が理不尽に思ってたのは、そこ、違う」
円周「あー……当麻お兄ちゃん×帝督お兄ちゃんになったのは訳があってねー」
円周「最初これはリアルにやろうと思ったら、洒落にならなくて。あ、私はゴアゴアも好きなんだけど」
御坂「一般人は、引く」
円周「だからうメタ的な配役にするとしてぇ……被害者役は当麻お兄ちゃんじゃない?キャラ的にもピッタリなのはさ」
御坂「まぁ、そうね」
垣根「ですね」
上条「泣くぞコノヤロー」
円周「と、すると捕食者側は肉食系女子レッサーちゃん?ぐらいしか候補がなくってさぁ」
御坂「……あたし――あぁいやごめんごめん、なんでもないわ」
円周「うん、それ以外の女の子が似たりよったりの反応だったんでNGと」
上条「打算なんだよ!あの子は体を張って俺をイギリス国籍へしようとしているんだ……ッ!」
円周「まぁ節穴よりも濁って腐って溶ろけてる当麻お兄ちゃんの個人的見解はさておき、次に人役を美琴ちゃん、クマ役を黒子ちゃん――」
御坂「断る。ゼッタイに断る!」
円周「――って言われるのは目に見えてたから、ヒト=ARISAちゃん、クマ=ランシスちゃんって」
上条「いいねっ!今からでもそれでっ!」
御坂「黙ってなさい百合厨疑惑。アリサが可哀想でしょうが!」
円周「個人的にはベッコベコに凹んだARISAちゃんも見たかったんだけど、まぁ自重して現在へ至る、と」
御坂「キャラ多いのに選択肢が少ないなこの業界!」
円周「まぁそんなんでこういう配役となりましたー悪しからずー」
上条「納得させられる材料が皆無だよ」
円周「反論は聞きませーん!CASE02始めるので演者さんは配置について下さーい!」
――CASE02 「アラスカのキャンプ・その二」
垣根(39)『えっと、食べ物は外の離れた所へ置いたし、テント内には無臭のペットボトルぐらいないですよね、と』
垣根(39)『いやー、それにしても蚊が多いなー。原生林の中ですしねー』
垣根(39)『トイレも簡易……だから、蚊避けは欠かせませんし、あぁリップクリームも塗っておかな――』
ガサガサ
垣根(39)『おや?』
上条『呑み込んで!俺の幻想殺し――!』
垣根(39)『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「ありがとうございましたー。今回もゲームオーバーになるまで早かったですねー」
御坂「これだけで終わり!?虫除け?リップクリーム?」
円周「芳香剤入りの虫除けとリップがねー、惜しい人を亡くしました。あ、ヒトじゃないや。虫だった」
上条「……」
御坂「見なさいよ!アクターさんが精神的にダメージ負ってるじゃない!」
上条「虫が……虫除けスプレー……ぷっ」
御坂「ツボに入ってただけだった!?」
円周「はいはい、仲良いのは分かったからあっちでねー――と、これも現地のガイドさんに要注意される項目なんだって」
円周「甘い香りがするからアウトー、リアル人生ゲーム・ゲームセッ!」
上条「そんなに?ここまで徹底しないとヤバいのかよ?」
御坂「アラスカ……あ、グリズリーか!」
円周「生息地域的には大正解だねー、まぁ”一応”は」
上条「知ってる、グリズリー。攻撃力強くて諸刃斬り使ってくるんだ」
御坂「それドラク○」
上条「いやでも強いんだよ!下手な悪魔系モンスターよりも物理攻撃に特化してるし、最大ダメージは物質系越えるんだ!」
上条「バステに弱いけど素早さが高いから強キャラだしな!」
御坂「知らんけど、あーまぁハイイログマね。グリズリーっつった方が有名かもだけど」
上条「そのグリズリーが出るんだ、アラスカ?」
御坂「最大で500kgぐらいになるのよ。そんなのがウロついてる地域だったら、そりゃ危険なのも納得出来るわ」
上条「500!?えっと、軽自動車が1t弱として、その半分か!?」
御坂「大きさじゃシロクマの方が大きいかもだけど、人間の生活圏の近くに居る分だけ危険よねっ!」
上条「おっかねぇなカナダ!」
御坂「アラスカ”州”」
上条「お、おっかないなアメリカ合衆国!俺は行く気がしないねっ!」
円周「や、二人ともワイハー行ってるし――で、ここでとてもとても残念なお知らせがあります」
上条「ごめん聞きたくない。だってお前がめっさ笑顔の時はそれはもう超悪ぃ知らせだって事だからな!」
御坂「……へー?詳しいんだ?」
上条「待ってくれビリビリ!今は仲間同士で争ってる場合じゃない!」
円周「いや別にただちょっと研究用にDNAを欲しがってるだけであって、これといった感情はないなー……じゃなくて」
円周「北海道に生息するエゾヒグマ、アラスカに多いコディアックヒグマ、チベットに生息するチベットヒグマ。それに加えてグリズリー」
円周「これ、ぜーんぶまとめて”ヒグマ亜種”です」
上条「……うん?クマの仲間ってことか?」
御坂「――マジ?ホントに?」
円周「はーい当麻お兄ちゃんは生物学の勉強しなおし、美琴ちゃんは流石だねぇ」
上条「いやだから、同じクマって種類の動物じゃないのかよ?」
御坂「えーっとね、なんて言ったら」
垣根「暇なのでここは私が。まずイネありますよね、ご飯で食べるヤツです」
上条「そんぐらいは知っとるわ」
垣根「イネを生物学的に分類しますと『イネ科イネ属』となります。まぁ分類の話なんですけど」
垣根「で、イネ”科”になりますと、米・小麦・大麦・トウモロコシ。更に竹やサトウキビなどが含まれます」
上条「穀物類は何となく分かるが、竹やサトウキビもイネの仲間なんだ。へー」
垣根「これがイネ科イネ属となりますと、今日私たちが食べているアジアイネ、そしてアフリカイネなど近親種へ派生する訳なんですが……」
垣根「今言ったクマたちは全て『クマ科クマ属ヒグマ”亜種”』なんですよ」
上条「ふー……ん?あれ?」
御坂「あ、気づいた?」
円周「当麻お兄ちゃん、頭はあんま良くないけど直感は冴えてるもんねぇ。そこだけは」
上条「つまりだ。日本のヒグマ、アラスカのヒグマ、チベットのヒグマ、でもって獰猛さに定評のあるグリズリー」
円周「主にmiss you的な意味だけどねー」
上条「これ、全部、ヒグマ……?」
円周「うん、そうだねっ!またちょっと賢くなったねっ!」
上条「いやいやいやいやっ!北海道に住んでんのはグリズリーじゃなくて!?」
円周「えーっとね、アメリカでは内陸に住むクマを『グリズリー』で、沿岸部に住むクマが『ヒグマ』って分けてるんだけどさーぁ?」
円周「これ、同じ種類のヒグマをそう呼んでるってだけで、両方は同じ種類のクマなんだねっ」
上条「アッッッッッバウトな仕事しやがってアメリカ!え、なに!?日本にもそんな危険なクマの近似種居んのかよ!?」
円周「ちなみにシロクマとはちょっと違うんだけど、ヒグマと混血した固体がフツーに自然界で生きていることが判明しています。大体10年前ぐらいだね」
上条「割と最近!」
円周「ま、当麻お兄ちゃんの繁殖力には及ばないけどねっ!」
上条「まぁな――よし、殴るぞっ!さー歯を食いしばれっ!」
御坂「や、それって……生物学的には大問題じゃ?」
円周「やーそれがねぇ、そうでもなくって。国後島に住んでるエゾヒグマ約300頭の内、1割が白いエゾヒグマって観測結果が」
円周「実は自然界でのヒグマ×シロクマ混血は私たちが把握している以上に進んでるんじゃねぇかって」
上条「逞しいな自然、つーか性欲か!この場合は!」
円周「ヒグマとシロクマは亜種じゃないにも関わらず、こうやって子孫を残せる訳で。だったらほぼ同じのヒグマ同士だったらどれだけだ、って話になるよねー」
上条「試される大地とはネタで言われてたもんだとばかり!」
御坂「ネタよ?」
円周「まぁそんなんがブラってて、超危険だよとガイドさんから注意されるアラスカ――」
円周「――に、住んでるのとほぼそんなに生態も変わらないのが、北海道にもいると。ここまで着いて来られてますかー?だいじょーぶー?」
御坂「あたしが想像したよりも、ずっとこう、やられてるわ。脳のダメージ的に」
上条「クマ怖ぇな!テントん中に食いもん持ち込んでるだけで『やぁ☆』って襲ってくる北海道も怖ぇよ!」
垣根「……ちょっと脅かしすぎじゃ?」
円周「あの、勘違いしないでほしいんだけどね。今までのは『グリズリー対策の一環』であって、守らないと100パー喰われるって事じゃないからね?」
御坂「そ、そうよねっ!そこまで物騒な訳――」
円周「でも、そういうマニュアルっつーかテンプレ揃えるまでにはそれなりの犠牲がねー。どのジャンルでもそうなんだけどさ」
御坂「……局地的に物騒?」
円周「とも、言えない。とは、言わない。知識を知識として持ったままなのか、それを活かせるのかは別の話」
御坂「やってやるわよ!こうなったら最後まで付き合うし!」
円周「おー、さっすがだねぇ美琴ちゃん。悪い意味で男前だぜ!」
円周「じゃアクターさん配置よろしく。ほらさっさと準備するする」
上条×垣根「「はーい」」
上条「って今なんか表記に悪意なかったかな?佐天さんばりの作為が見えた気が……!」
――CASE03 「クマの習性・その一」
垣根A『もーえろよ、もえろーよー、なんとか、かんとーかー』
垣根B『いやー、キャンプファイヤーっていいですよねぇ。なんか染みるっていいますか』
垣根C『ですよねー、こう焚き火を囲んで恋の話をしたり』
ガサガサッ
上条『――やらないか?』
垣根A・B・C『『『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』』』
円周「――はい、茶番劇ありがとうございましたっ!」
御坂「そこは、うん。関わってる人たち全員がそうは思っているけども、敢えて触れないところだから、うん――慎もう?頑張ってるんだし!演者さんはね!」
上条「つーかこのシリーズ展開早えーよ!垣根の会話が一巡したら、即ア゛ッ!?だし!」
垣根(35)「残機が地味に減ってるんですが……」
円周「これは、というかこれからはいくつかの事件から判明したクマの習性であり特定のお話ではないからね。そこは前置きしておくね?」
円周「残念というか、ヒグマの習性で分かったんだけど――」
円周「――恐れないんだよねぇ、火」
御坂「嘘……でしょ?」
円周「そう思いたい気分は察するけどね、残念ながら一例二例だけじゃなく報告が上がってるんだよ」
円周「キャンプファイヤー中だったり、民家――当時は電気がなくて囲炉裏を囲んでいたところへ、クマが乱入する事件が」
御坂「クマ相手には意味がない?」
円周「ほぼ確実に。襲撃されて、逃げるときに松明掲げていたのに……ってのもあるね」
御坂「じゃ、じゃあ!クマは人を恐れるってのも!」
円周「それは次のケースで詳しくやるよー。何かもう話が進まないからサクサク進めるね」
――CASE04 「クマの習性・その二」
垣根D『熊除けの鈴をつけて、ラジオも持った』
垣根E『そして一人にならないように、友達と一緒に山へ入りますよ!これでもう怖いものは』
上条『よっ、いらっしゃい!』
垣根D・E『『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』』
御坂「茶番が輪をかけて茶番になってくんだけど……」
円周「本州に住むツキノワグマは人を恐れる”傾向”が、強い。だから数人が声を出しているのは有効”である場合”がある」
円周「同じくクマ除けのガランガラン鳴る鈴、それを聞いて逃げるクマ”も”いる。一応はね」
上条「奥歯にモノが挟みまくった言い方だな」
円周「ただねー。ご愁傷様でしたというか、お気の毒様でしたというかねー。慣れちゃうんだってさ」
御坂「まぁ、相手も生き物だし。学習はす――」
円周「――”人の味”に」
御坂「る、わよ、ね……?」
上条「何となく想像はしてたが、最悪の形で当たりやがったな」
円周「これもまた具体的には控えるんだけどね、昔々ある山間の集落を襲撃したヒグマの話があってさ」
円周「その時には女子供が狙われて、比喩なしの地獄絵図が広がったそうだよ」
御坂「うわぁ……」
円周「だから獣害の多いところでは土葬は避けてきた歴史がある。そっちの話になると山の民俗学の分野へ入るね」
円周「私のメル友が東北某所でマタギさんに取材した範囲で言えば、そうだなー……」
上条「出やがったな謎人脈!フカシにしては一々具体的すぎるんだよっ!」
円周「お兄ちゃんウルサイ。例えばー山へ猟に行く数日前からは五穀断ちをする。特にお肉と発酵食品は口に入れない」
円周「身を清めたり、エッチなことはしないし避ける」
円周「他にも山の神は死穢(しえ)を嫌うから、身内のお葬式があったなら数ヶ月は山へ入れない、みたいなの」
御坂「体臭や死臭を動物に嗅ぎ取られる?」
円周「女人禁制のお山が殆どだったのも、お月のものが捕食獣に、って考えれば理屈は合うよね?」
円周「そんな山師の山へ入り方やタブー色々、数冊本書けるぐらいの量になるよー」
上条「猟師は分かるが、それ以外で山仕事する人なんていたのか?」
円周「昔は木が燃料だったからねぇ。下手すればレジャー目的で入る今よりも、人口比では多かったかも?」
上条「あぁ成程。薪だけじゃなくて炭も木か」
円周「うん。そういう狩人じゃない人たちの文化はまた違って、獣除けのためにタバコを吸ってたりする」
円周「聞いたことないかな?ヘビ除けにニコチンが効くとかなんとかで、今も縁起担いで吸ってる人は居るねぇ」
垣根「質問があります、宜しいですか?」
円周「どーぞー」
垣根「クマはそんなに脅威ですか?勿論人命に関わるのは間違いないですが……なんて言ったらいいんですかね、えっと」
円周「もっと恐ろしい獣がいる?」
垣根「ですか、ね」
円周「言ってる事は分からなくもないよねぇ。ペストを運ぶネズミだったり、集団で狩りをするオオカミ、田畑を荒らすイノシシに比べれば」
円周「海外だとトラにピューマにライオンにカバ、神話に出ちゃうぐらい怖がられてた獣は多いよねぇ」
垣根「動物園とかでも時々『事故』が起きるじゃないですか?なら、クマだけを恐れて危険視するのは良くないのではないかと」
円周「そうだねぇ同意しないでもないんだけどねー……で、お兄ちゃん二人と美琴ちゃんは、どうして動物園の動物さんが人を襲わないのか分かるかな?」
上条「去勢し――」
円周「っていう種もいる。ただ最近動物虐待だって言われてされない傾向が強いんだねぇ」
円周「なので基本的にやってるのは『飼育員さんと信頼関係を作る』が一つ。何年も時間をかけて世話をして人間へ慣れさせる、って意味だよ」
御坂「お、いいじゃない。そういうの憧れる!」
円周「もう一つは『満足するまでエサを食べさせて飼い殺す』かなぁ?」
御坂「言い方!」
上条「もうフリの仕方でそんな身も蓋もない答えが来ると思ってたよ!」
円周「いやいや大真面目なお話なんだよ当麻お兄ちゃん!水族館のサメさんも一緒だし!」
円周「あれ他の回遊魚と一緒の水槽へ入れてても、他を食べ尽くさないのは満足する分のエサを食べさせてるだけだから!」
円周「……ま、それでも時々減ってるらしいけどねっ」
上条「ダメじゃねぇか。減ってんだろ、おやつ代わりにつまんでんじゃねぇか」
円周「大型の草食動物ならともかく、肉食動物はお腹空いたら飼育員さんが狙われる可能性が高い、つーか予防策がそれしかないから」
円周「エサを与えて食欲を満たして襲われるのを防ぐ。これ、基本だね?……人にも使えるけど」 ボソッ
上条「おい小さく何か言ったな?不穏なことを」
円周「だから起きる事故も大抵は飼育員さんへじゃれて致命傷、猛獣側に殺意が無いのに致命傷ってのが殆どなんだよ」
御坂「トラにじゃれつかれたら無傷じゃすまないわよね……」
垣根「殺意のあるなしの判定はどうやって?」
円周「怪我の種類かなー。殺すつもりで噛んだら大抵即死だけど、滅多にそこまでは起きない。あ、ゼロじゃないけどね」
上条「つまり『結果的に死んだ』んであって、猛獣側は『殺すつもりではなかった』と?」
円周「そう。獣は基本的に”殺す=捕食する”だから、殺意があった場合には殺された後にモグモグされてないとおかしい訳。おーけー?」
御坂「エサも足りてるし、待遇も……ま、大自然で生きるか死ぬかの毎日よりは、まだ優遇されるって視点もあるか」
円周「満足するかどうかは別にしてね。実際に気の荒い個体は檻へ入れられる前に弾かれるだけなんだけども」
円周「あと園だけじゃなくって、ペットに子供やお年寄りが噛まれて――みたいなのも、動物側に殺意は多分なかったと思う」
円周「動物が子供を運ぶときなんかはさ、頸の後ろをこう、がぶって噛んで移動させるのね?分かる?」
上条「……人間でそれやられたら致命傷……」
円周「首座ってないときなんかは……だし。あと血が出て動物がパニックになるって説もあるし」
円周「あぁ言っとくけどペットがダメだっていってるんじゃないからね?何事も節度があるってだけだからね?」
円周「大型犬に悪意がなくても子供に怪我をさせるときはあるし、また小型犬でも犬が苦手な人は転んで怪我や事故に遭うケースもある」
円周「管理する人間側に責任や落ち度があった、とは思うんだけど――ヒグマがねー」
円周「何年か前にある動物園で集団脱走してさ?ご飯もきちんと貰ってたはずなのに、飼育員さんにも懐いてたはずなのに」
円周「……食い殺したのか、殺してから喰ったのか。まぁ、そういうこと」
上条「いやーなオチがついたなチクショー!」
円周「背景としては廃園予定の所だったんで、満足の餌を貰ってない可能性もあった。でも、それを差し引いてもって感じかなぁ?」
御坂「凶暴性――あ、いや、食欲が強いだけ……?」
円周「まぁ自然下では、生きるために強いものが弱いものを徹底的に狩るからねぇ。それが唯一にして絶対のルールだから」
円周「問題なのはその大自然の掟に従えば、私たち人間はクマからすれば圧倒的な弱者ってだけでさ」
御坂「実際、クマのスペックはどのぐらいなの?食物連鎖の最上位なんでしょ?」
円周「美琴ちゃんの言う通り、寒い地域では最上位だと思う。トラだって時には捕食されるし」
円周「他にもイノシシ・シカ・オオカミを食べたかと思ったら、木の皮や木の実も食べるし。当麻お兄ちゃんもビックリの雑食っぷりだよねっ」
上条「おっと言葉が過ぎるぞ、こいつめー!」 グリグリ
円周「全力で頬を引っ張るお兄ちゃんは大人げないと思います!……で、スペックは、あーやっとく?折角小芝居の準備したんだし?」
上条「俺としてはもうSAN値下がって帰りたい」
御坂「――待って!クマ危険性を知るためにも!ここはあえてやっとくべきだと思うの!」 チャッ
上条「ケータイ片手に言われても説得力はないかなー」
――CASE05 「クマの習性・その三」
上条『……』
垣根F『クマだ……どうすれば――そうだ!』
垣根F『死んだふりをすれば大丈夫だって、そうしよう!』
上条『――ん?』
垣根F『……』
上条『いただきまーす』
垣根F『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「クマさんは屍肉も食べます。てゆうか他の獣が狩った肉を横取りもします」
――CASE06 「クマの習性・その四」
垣根G『あるひー、もりのなーかー』
上条『……』 ジーッ
垣根G『あ、目が合った!ヤバいですね――必・殺☆垣根ダーーーーーッシュ!』
上条『俺もダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッシュ!!!』
垣根G『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「クマさんは反射的に逃げるものを追いかける習性があります」
――CASE07 「クマの習性・その五」
垣根H『……昨日テントが襲われて食べ物を取られました……』
垣根I『このまま下山するとか――あ、荒らされた荷物も持って行こう――』
上条『あ、ごめん。それ俺んだから』
垣根HI『『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』』
円周「クマは執着心が強いです。一度クマの臭いがついたものは所有物と見なされ、どこまでも追ってきます」
――CASE08 「クマの習性・その六」
垣根J『く、クマは怖いですが!流石に日中は出ませんよね!だって野生動物といったら夜型だって相場は』
上条『――やぁ、いい天気だね』
垣根J『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「クマは時間・天候・気象に関係無く行動します。唯一動きが鈍るのは冬眠時だけです」
――CASE09 「クマの習性・その七」
上条『くまー、くぅぅぅぅまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』
垣根K『いました!クマです!』
垣根L『私たちの兄弟の敵!猟銃でターーーーーーンっ!』
上条『ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
垣根K『や、やったか!?』
上条『はい、やってませーん』
垣根K・L『『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』』
円周「銃弾一発ぐらいでは致命傷になりません。むしろ怪我するとバーサークして襲い掛かってきます」
円周「――と、以上で終わりかな?」
御坂「深刻なんだけど、深刻さの微塵も伝わってこないっ……っ!」
垣根(26)「減ってますよ?私の残機がご機嫌な勢いで」
上条「おい年齢みたいになってんぞ」
円周「(26)を高速で殴り書きするとある言葉が浮かび上がってくる……ッ!」→→→
上条「リトバ○のネタだろ。ってかもうこのオチを見込んでたのバレバレじゃねーか!」
円周「てへっ」
上条「てかこれ逆に聞きたいんだけど、どうすればいいんだよ?ゲームオーバー回避する方法なんてあんのか?」
御坂「火は効かないわ、逃げ出せば追いかけるて来るわ、ランダムで遭遇するわ、猟銃一発程度じゃ仕留められないわ、隙がない仕様になってんじゃない!」
円周「一応……うんまぁまぁまぁまぁ、対ヒグマ用に武器持っていくんだったら、痴漢撃退用スプレーが効果的だって話があって」
御坂「痴漢撃退……あぁトウガラシスプレーとか、酢よりもキッツイ匂いの液体を噴霧させるのだっけ?」
円周「そう、それ。野生動物だから効果はある、はず」
上条「あ、効くの?だったら――」
円周「ただし!あれって有効範囲が精々数メートルぐらい?だから、そこまで近寄れるか、近寄ったら逆に詰む恐れがあってさ」
円周「今見た前例の中で『ライフル一発ぐらいだったら怯みもしないで襲ってくる』相手に、少しぐらい臭いスプレーはちょっと頼りないかなぁと」
御坂「遠くから、こうシュッシュッって撒き散らせば?」
円周「それは有効だと思うよ。まぁそっちはそっちで問題があってさ」
円周「格ゲーじゃあないんだから、こう、両者一定の距離から『試合、始め!』ってならないよね?」
円周「相手がヤル気だったらば不意打ちを確実に仕掛けてくる訳でさ」
上条「終ってんな」
円周「ただねー、向こうにしても人間との遭遇は基本的に偶然であって、積極的に襲ってくるのは”まず”ないんだよ」
円周「例えば……ある登山パーティがヒグマと接触して襲われた事件も、最初に遭遇してから死人が出るまで3日かかってるんだ」
御坂「即、じゃなくて?」
円周「キャンプしたらヒグマが近寄ってきて様子を見てたら荷物を漁ってきたんで、音を立てて追い払った。これが初日」
円周「二日目の未明にもクマが現れてテントに穴をあけ、倒してしまった。なので数時間かけてテントを直したが、今度はそこへ居座った」
円周「三日目は他のテントへ合流するため出発して――で、まぁうん、初めての怪我人兼死傷者が出たと」
御坂「最初の日に逃げなさいよっ!?」
円周「日本に住むクマの中で一番凶暴なのはヒグマ、それにしたって初っ端から襲撃されることは”まず”ない。繰り返すけどね」
円周「仮に本気で襲撃しに来てるんだったら、その時点で詰んでるけど、”それ”は滅多にない……なくはなかったけどね」
円周「大抵出くわすのはお互いにとって予期せぬ遭遇であり、パニックになるのは人もクマも同じ」
円周「よって対処を間違わなければ、まず死にはしないんだよ」
垣根「今の例、というか山歩きや山菜採りで不意に出会ってしまったら、どうすれば正解なんでしょうか?」
円周「最初のアラスカの話でも出たように、荷物を漁っている間に視線を逸らさないようにしながら、そーっと逃げる」
円周「できれば食べ物をパックや入れ物から出して、その場へ一括して置いて何も持たずに、が理想かなぁ」
上条「童謡であったように、森の中で出くわした場合には?」
円周「基本は同じ。視線を逸らさないように、ゆーっくり後ずさりしながら食べ物と荷物をその場へ置いていく」
御坂「山菜採りでバッタリは?」
円周「あーうんそれねー、てか名前は伏せるけど群生地見つければ数万円の山菜があるんだよ。具体的には言いたくないから言わないけどさ」
上条「ちょっと興味あるな。美味しいのか?」
円周「テンプラにすると絶品、らしい。アク抜きしなくても食べられる野草だから相当美味しいんだと思うよ」
上条「へー、だったら」
円周「まぁ、基本的に人間が美味しいって思うものはクマも同じだよね、って話なんだな、これが!」
御坂「業が深いわー……」
円周「人間にしてみれば国有林(という名目で)へ入ったところで山菜摘むのは、まぁ違法ではない。詳しく調べた訳じゃないんだけどね」
円周「ただ野生動物側からしてみれば、自分達の縄張りでなにしとんじゃい、って攻撃的になるのは仕方がないんだと思う」
御坂「動物視点で見れば自分達のテリトリーなのよね。山であっても」
円周「採る権利――が、あるかどうかは私は知らない。現行法じゃ国有林でどうこうするのは不可能だし、全部を監視するのもムリだよね」
円周「ただ、そこまでリスクを負ってハイキングの延長線で行くような所じゃないよね」
上条「去年だかDEATH山菜採りでバッタリ!っつーのがあったじゃんか?」
円周「秋田の獣害事件だね。死者4人に重傷者2名で今年も現在進行中」
上条「あぁそれそれ。一年にどれだけの人間が被害に遭ってんだよ?俺達が知らないだけで結構多いのか?」
円周「死者は5人ぐらい?カウントされない人を含めても10人前後だと思う」
御坂「カウントされないのにカウントするの?」
円周「山の中で行方不明になって――って、ことかな。入山許可証を出さない人は今も多いし、山菜摘みはグレーなところがあるからねぇ。私有林とか」
円周「美琴ちゃんには前も言ったけど、『他の山菜ゲッターに秘密にするため、わざと熊除け鈴を持たない』人も少なからず。人の欲って怖いよね−」
御坂「それでも思ってよりか少なくて安心した、かな」
円周「あー安心しないで。怪我人は100人前後だから重軽傷者合わせても」
上条「とすると遭遇した人間はもっと多いっつー話か」
円周「散々脅かしておいてなんだけども、今までのシミュは『過去の事例の最悪の最悪パターン』を取り上げてみましたー」
円周「またツキノワグマはヒグマと違い、人間を恐れる傾向が強くて熊除け鈴が一定の効果を上げていまーす――が」
円周「秋田での獣害事件、最新の被害者は鈴二つ着けてたらしいので、まぁ、うん」
御坂「……憶えちゃった?」
円周「ん、ではないかと。つーかそれ以外に考えようがないけどねぇ。あそこは例外だと思うけど――まぁとにかく!」
円周「クマに出会ったら相手の興味を惹かないようにして逃げる、これ、鉄則!ただし決して走って逃げないように!」
円周「クマは数十キロで走るし、四輪駆動かつ相手のホームなので悪路関係無しにツッコんできます!」
円周「ボルトが全力ダッシュしても捕まる上、山中から麓まで同じペースで完走できる訳がない!だから優先すべきなのは『興味を持たれない』ように!」
円周「食べ物を放り出して気を取られてる間に静かに逃げる!これが鉄則!」
円周「あとツキノワグマはヒトを恐れる性質が強いですが、怖がるからって攻撃をしないのはイコールでは結ばれませんっ!」
円周「『なんだよー、お前ここはボクの縄張りなんだからあっちいけよー』と、同種だったら軽いツッコミでも、人間だったら致命傷!」
円周「山菜ゲッターも小銭欲しさで不用意に山へ入ったりしない!どこかのタケノコ王()みたいに、基本”あーゆー”人なんだから!」
上条「お前それタケノコ王()がアホっつってんのと同じじゃねぇか」
円周「うん、逆に聞くけどさ。稼ぎがいいって事はそれ相応のリスクを負うって事でもあるからね?何も問題がないのに荒稼ぎできる訳がない」
円周「モニタ越しでもアリアリと分かる、あの人の、えーっと、うん、人並み外れた?オーラ?」
上条「コイツが言葉を選ぶ、だと!?」
円周「良い意味でも普通の人とは違ってて、真似するのはムリです」
円周「――てゆうか長々とクマの危険性を語ってきましたが、一番怖いのはクマやイノシシなどの動物じゃありません。それは”無知”です!」
円周「どんな怖い動物も環境も、たった数分の知識と精々一時間ぐらいの事前準備で避けられる場合が殆どです!いやマジで!」
御坂「まとめに入ってる?」
円周「とは言うもののっ!事前にトウガラシスプレーを用意し、いざ実際にクマと遭遇したとしても、放心状態で体が動かないって状況もありえます!」
円周「コンビニに突っ込んでくるブレーキとアクセル踏み間違えた車と一緒!危機的状況へ放り込まれて体がとっさに反応できるかは、分かりません!」
円周「普通に登山やハイキングを楽しむ分には問題ないでしょうが、無茶なことはしない!させてもいけません!」
御坂「あぁうん、ありがとう?絵面だけを見ればBLにしか見えなかったけど、まぁタメにはなる――かな?なるといいわよねっ!」
上条「実数見るに気休めレベルだと思うんだが……」
円周「まぁヒグマにしたってクマ牧場できちんと飼育されている個体も居るんだし、杞憂――だと、いいよねぇ」
闇咲逢魔「――では、続いて山怪と民族学的な視点からの比較を始めようか」
御坂「うっさいわよ!つーかアンタ誰よ!?」
闇咲「前述されているトウガラシスプレーが猛獣に有効という説に関し、私は疑問を呈する」
闇咲「というのもだ。刺激臭のある酢酸溶液は古来から使われ、特に木炭からは木酢液、竹炭から竹酢液が採られていた」
闇咲「これは主にその強烈な臭気のため、害虫・害獣除けに使用したと伝わっており、割と東西に関わらず広い分布相を見せている」
闇咲「当然山師たちにも、特に森で伐採した木をそのまま石炭へ加工する人間は周知でなければおかしい」
闇咲「だがしかし猟師達が山へ酢酸水を持って入った記述はなく、本当に有効であったのかは怪しいところであるな」
上条「すいません。長い、そして意味が分からん」
闇咲「またクマが『人の内臓を好む』のが俗説と言われている。しかしながら古来より”内蔵を持って行かれた”という山怪の話があり」
闇咲「また骨食い沢、骨食み沢といった、目には見えないが重要器官だけを好む怪異の存在を否定するのは難しいと言える」
御坂「……ねぇ、この話聞かなきゃダメ?本格的にグロい話になりそうなのに、オブラート使う気配すら見えない……!」
円周「私は大好物だけど、立場的にオカルトはちょっとなぁ。加群おじちゃん(元・小学校教師)は別にして」
上条「おい意味ありげに余計な情報伝えるな!また先輩の妹さんにシバかれるぞ!」
上条「つーか……あれ?俺コイツと旅してたような……?」
−終−
――とある山の麓・ベースキャンプ地
円周「『――よく聞けぇ。いいかぁ、ここを、キャンプ地とする!』」
御坂「いやその水曜どうでしょ○フリークにしか分からないネタ振られても、その、困る」
円周「円盤買ってんだけど、副音声と映像のギャップが凄いから、一度はみんな見てねっ!私との約束だぞっ!」
御坂「や、あの……いきなりキャンプ場に連れ来られたんですけど。アニサキスについてはもう正直お腹いっぱいであって」
円周「『――問題!山歩きをしていたら横道に湧き水を見つけました!どうするのか適切か答えよ!』」
御坂「え!?――っと、飲まない?」
円周「『正解!緊急時以外には不用意に自然のものを口にしない!』」
御坂「いや、まぁ教わったけど」
円周「『では続けて問題!あなたは山の中で遭難しかけている!その時に湧き水を見つけた場合、どんなリスクを考慮しなければいけないのか!?』」
御坂「まず水の透明度。山頂に近くて寒い季節ならば雑菌が繁殖しなくて安全かもしれない」
御坂「これがそこいらの沢だったら鉱物含有量が高く、飲んだらヤバいかも、しれない」
御坂「また喉が渇いてたからといって下手に飲むと、お腹がぴーぴーになって脱水症状が進む可能性がある、と」
御坂「よって緊急時以外に生水の飲用は避けるのが正解である、かな」
円周「『よし正解だポンコツめ!貴様に登山する権利をくれてやろう!』」
御坂「あ、ありがとうございます」
円周「――はい、っていう訳で今日の企画は対クマだねっ!」
御坂「料理一個も関係無いじゃないですかコノヤロー」
円周「前に炊き込みご飯で、『山菜ゲッターはマンハンティング(クマさん用)』って話はしたよねぇ?」
御坂「聞きたくないけどガッツリ聞かせられたわよっ!お陰様でねっ!」
円周「あれやったのが去年の11月頃で、今年になっても残念な人が増えてるみたいだから、もう一回おさらいの意味で取り上げるんだよ!」
御坂「だったらあたしを道連れにしないで!そっちの不愉快な仲間達ですればいいじゃない!?」
円周「配役の関係上、当麻お兄ちゃんがゴニョゴニョ」
御坂「――任せなさいっ!料理もう関係ないけどあたしが倒せない自然生物(※除くゲコ太)はないわっ!」
円周「うん、ゲコ太君は自然じゃないよ?不自然だよ?」
円周「あーあと、大真面目なお話断っておくけど相当グロいしエグい内容になってるし、事故が起きたばかりで不謹慎だって思うかもしれない」
円周「だから、本当にゴメンナサイだけど気分が悪いと思う人は知らない方がいいよ。だって一生知らなくてもいい知識だからね」
円周「基本的に一般人が山へ入ってクマと出くわしてART対決ボーナスへ突入するなんて事は、まず有り得ないから」
御坂「例えをスロットにするな。それだと何か大当たりしたら喰われるって事でしょ!?」
円周「いやだからね、こうやってギャグに紛らわせておかないと、もうこれグロくて語れなくてさ」
御坂「そこまでして取り上げる理由が!意味が理解出来ないんだけど!」
円周「料理もある意味同じでさ?食べて良いもの悪いもの、人類はトライ&エラーで区別してきた」
円周「科学がなかった頃なんかはフグや有毒生物、調理の仕方一つでも試行錯誤してきた訳で」
円周「んで、その過程で亡くなった人がいる。犠牲になった人は、やっぱりいると」
円周「その人達の死を”笑う”のは不謹慎、だけど”理解して次に生かす”のは貴い行為」
円周「少なくとも私はそう思うし、そう思わない人も当然いるねぇ。そこら辺は個人の趣味でどうぞ。知る権利もあるし、知らないままにしておく権利もあるしー?」
御坂「知らない権利なんて聞いたことない、つーかないわっ!」
円周「無知の知を素で行く権利かな?まぁ全体的に気分悪いからオススメは」
円周「しっかりした登山部でも事故を起こし”た”から、知識としては知っておいて損はないんだけどなー」
御坂「まぁクマ、クマ……リラック○……可愛いわよね、ゲコ太には負けるけど」
円周「『うん、だからよその無知が人殺すっつってんだろメンヘラ女』」
御坂「急に口悪くなるなアンタっ!?誰がメンヘラよ、誰がっ!」
円周「えぇと、まずねー、片思いの相手を助けに武力介入するのはどこのガンダ○だって話から始めた方がいいかな?」
御坂「――そんなことよりも早く説明してほしいところよねっ!次の犠牲を出さないためにもっ!」
円周「誤魔化すためには大声張るって芸風は当麻お兄ちゃん譲りだよねぇ。まぁ納得してくれたようで何よりだけど――」
円周「では今回のゲストその一さん、ご登場でーす!」
御坂「ゲスト?」
垣根(40)「どうも、第三位」
御坂「あ、第二位の人。垣根さん、ですよね?」
垣根(40)「そんなにかしこまらなくても。同じ学生なのですから、気楽にいきましょう、ねっ?」
御坂「やだなんか、こうあたしの知ってる知り合いの人に胡散臭さがぴったり」
円周「”知ってる”&”知り合い”と二重意味にするほど関係を離したいのは分かる。ダブルでストーカーの人だよね」
御坂「まぁじゃいいけどね……そのカッコ40カッコトジって何?」
円周「まぁまぁそれはおいおい説明するとして――続いて本日の(ある意味)主役ー、当麻お兄ちゃんの登場ですー」
上条「あ、どうも」
御坂「……オイコラ」
上条「すいませんっゴメンナサイっ俺が悪かったですねっ!」
垣根「挨拶もそこそこに超反射で謝り出しましたね」
円周「当麻お兄ちゃんの魂にまで刻まれた、『取り敢えずは全力で謝っとけば即死コンボを叩き込まれないかも?』って、学習した結果であってさ」
垣根「ここまで卑屈になってすら”かも”は悲しいです」
御坂「アンタじゃなくて、そっちの羊の皮被ったプレデタ○」
円周「心外だなぁ。科学力と身体能力に頼りっきりの相手なんていい養分なのに」
御坂「(……アンタね!企画!この企画の主旨憶えてんの!?)」
円周「(美琴ちゃんのリアクション力と顔芸力をアップさせる?)」
御坂「(人を変顔で食ってるリアクション芸人みたいに言うな!……そうじゃなくて!)」
円周「(なんやかんやで当麻お兄ちゃんに美味しいご飯作ってあげたいんでしょ?わかってるけどさぁ)」
御坂「(なによ)」
円周「(そもそも不定期&気が向いたときにだけの謎のネタ企画になってんだし、いいんじゃないかなって)」
御坂「(よく――はないでしょ!)」
円周「(いやぁだって当麻お兄ちゃんの認識が)――おーい、当麻お兄ちゃん!」
上条「あいよ?」
円周「この企画の主旨ってなんだったっけ?」
上条「これから暑くなって山遊びへ行く機会が増えるから、用心しようぜってことだろ?」
円周「ねっ?」
御坂「……あー……うん、もう進めといて。テンションが追い付いたら……うん」
円周「それじゃスタンバイお願いしまーす。帝督お兄ちゃんは打ち合わせの通りに」
――CASE01 「アラスカのキャンプ」
垣根(40)『あー、キャンプ楽しいです。キャンプは楽しいなー』
御坂「なんか棒読みの小芝居始まったな!」
円周「あ、テンション追い付いた?」
御坂「ツッコまないと!この棒演技をスルーできる勇気はないわよ!」
御坂「てゆうかロッジのすぐ近くで、テント設営してビバークて!」
円周「まぁまぁシミュレーションということで一つ。あ、続きますねー」
垣根(40)『大自然の中で過ごすのは気分がいいですねー。それじゃ用意してきたお弁当でも』
ガサガサ
垣根(40)『おや?外から音が?』
上条『――おっす!』
垣根(40)『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「――はい、って訳でCASE01終了でーす!思ったよりも早かったですね!」
御坂「何だ今の!?あのバカがテント入って来たらお芝居終了ってどういう世界設定よ!?」
円周「では改めて今回のある意味主役をご紹介致します。上条当麻お兄ちゃんこと――」
円周「――”クマ”です」
御坂・上条「「そんな役!?」」
御坂「ってアンタも仕事引き受ける前に知っときなさいよ!」
上条「い、いや台本渡されて『これね!』って言われただけだから、俺にも何が何だか」
上条「垣根は?お前何か知ってたか?」
垣根(39)「いえ、私にも詳しくは。ただ人のためになるからと」
御坂「……うん?数字が一減ってる……?」
円周「残機だよねっ」
御坂「生々しい!つーかSTGかっ!」
上条「いやちょっと待てや!今特に落ち度もなくテントやってただろ、なんでいきなりゲームオーバーになんだっつーの!理不尽だろーが!」
御坂「お弁当……あ、から揚とか生姜焼きとか入れてたから?」
円周「広義じゃあ正解、でも多分本質的な意味では理解してないと思うから不正解」
円周「アラスカの原生林でキャンプするとき、必ず現地ガイドさんに何度も何度も注意されるポイントが――」
円周「――『テントの中へ絶対に食べ物を持ち込まない』こと。食べ物の臭いに惹かれてクマ来ちゃうから」
(※実話です)
御坂「はー、にゃるほ――待って待って。それだけテントの外へ置いといても変わらなくない?」
御坂「むしろテント一枚ない分だけ、臭気拡散して獣呼びそうじゃない?」
円周「発想の違いじゃないかなぁ。より正しくはテントから離れた場所に一括して食料置いておいて、そこへクマが漁りにやって来る」
円周「その間に人間達は銃や逃げる準備したりする訳で」
垣根「……テントの中へいきなり入って来られるよりは、ワンクッション置いた方が心臓にも優しいですね」
円周「最初から『クマが来る前提で迎撃態勢を整える』のと、『クマが来ない”よう”に態勢を整える』の、違いだね」
円周「あ、某国と某国の安全保障に似てるよねっ!さっすがお兄ちゃん!」
上条「待てコラ。俺が言ったみたいにすんなや」
御坂「あの、質問なんだけどいい?そんなにヤバいの?クマって人と出会ったら逃げるって話聞いたんだけど?」
円周「あーうん、それも追々やってくよ。伊達に残機40用意した訳じゃないから」
垣根「虐殺される私の身にもなって頂きたい!金田○シリーズじゃないんですから!」
円周「あくまでもイメージであり、プレイの一環ですので本当の垣根さんは減っていません。まる」
垣根「完璧な言い訳まで用意済みとは!」
御坂「どう考えても杜撰よね」
上条「てかお前なんで捕まってんだよ。残機40用意してる時点で気づけ。最初の一匹捕まった時点で逃げろや」
垣根「……それが卑怯な罠にかかりまして」
上条「具体的には?」
垣根「私が学園都市のイオンモー○で」
上条「ごめん俺が悪かったからそれ以上は遠慮するわ」
円周「ミニスカ履いてったら、こう足下にワラワラと集ってくるんだもん。ねーっ?」
御坂「だから自重しろっつってんでしょ!てかもうレベル5名乗るのやめなさいよ!」
上条「七人どころか、もう全体数を把握するのが困難になってきたよな。だって無秩序に増減してんだもんよ」
円周「お陰で”一人=垣根派”――ハッ!?孤高の御坂派の総勢二名(本人+白井さん)を下回ったよ!?どうしよっか美琴ちゃん……っ!?」
上条「ま、待て!悪気はないんだ!ただ事実を言っただけで!」
御坂「どいてソイツビリビリできないっ!」
垣根「被害者なのに、この蚊帳の外っぷり……」
御坂「てか何よ!?なんでクマ役がコイツなの!?」
上条「もっと言ってやれ、もっと」
御坂「性格的にオラ攻めは合ってないわ!ヘタレ受けに決まってるじゃない!」
上条「違う違う。俺が理不尽に思ってたのは、そこ、違う」
円周「あー……当麻お兄ちゃん×帝督お兄ちゃんになったのは訳があってねー」
円周「最初これはリアルにやろうと思ったら、洒落にならなくて。あ、私はゴアゴアも好きなんだけど」
御坂「一般人は、引く」
円周「だからうメタ的な配役にするとしてぇ……被害者役は当麻お兄ちゃんじゃない?キャラ的にもピッタリなのはさ」
御坂「まぁ、そうね」
垣根「ですね」
上条「泣くぞコノヤロー」
円周「と、すると捕食者側は肉食系女子レッサーちゃん?ぐらいしか候補がなくってさぁ」
御坂「……あたし――あぁいやごめんごめん、なんでもないわ」
円周「うん、それ以外の女の子が似たりよったりの反応だったんでNGと」
上条「打算なんだよ!あの子は体を張って俺をイギリス国籍へしようとしているんだ……ッ!」
円周「まぁ節穴よりも濁って腐って溶ろけてる当麻お兄ちゃんの個人的見解はさておき、次に人役を美琴ちゃん、クマ役を黒子ちゃん――」
御坂「断る。ゼッタイに断る!」
円周「――って言われるのは目に見えてたから、ヒト=ARISAちゃん、クマ=ランシスちゃんって」
上条「いいねっ!今からでもそれでっ!」
御坂「黙ってなさい百合厨疑惑。アリサが可哀想でしょうが!」
円周「個人的にはベッコベコに凹んだARISAちゃんも見たかったんだけど、まぁ自重して現在へ至る、と」
御坂「キャラ多いのに選択肢が少ないなこの業界!」
円周「まぁそんなんでこういう配役となりましたー悪しからずー」
上条「納得させられる材料が皆無だよ」
円周「反論は聞きませーん!CASE02始めるので演者さんは配置について下さーい!」
――CASE02 「アラスカのキャンプ・その二」
垣根(39)『えっと、食べ物は外の離れた所へ置いたし、テント内には無臭のペットボトルぐらいないですよね、と』
垣根(39)『いやー、それにしても蚊が多いなー。原生林の中ですしねー』
垣根(39)『トイレも簡易……だから、蚊避けは欠かせませんし、あぁリップクリームも塗っておかな――』
ガサガサ
垣根(39)『おや?』
上条『呑み込んで!俺の幻想殺し――!』
垣根(39)『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「ありがとうございましたー。今回もゲームオーバーになるまで早かったですねー」
御坂「これだけで終わり!?虫除け?リップクリーム?」
円周「芳香剤入りの虫除けとリップがねー、惜しい人を亡くしました。あ、ヒトじゃないや。虫だった」
上条「……」
御坂「見なさいよ!アクターさんが精神的にダメージ負ってるじゃない!」
上条「虫が……虫除けスプレー……ぷっ」
御坂「ツボに入ってただけだった!?」
円周「はいはい、仲良いのは分かったからあっちでねー――と、これも現地のガイドさんに要注意される項目なんだって」
円周「甘い香りがするからアウトー、リアル人生ゲーム・ゲームセッ!」
上条「そんなに?ここまで徹底しないとヤバいのかよ?」
御坂「アラスカ……あ、グリズリーか!」
円周「生息地域的には大正解だねー、まぁ”一応”は」
上条「知ってる、グリズリー。攻撃力強くて諸刃斬り使ってくるんだ」
御坂「それドラク○」
上条「いやでも強いんだよ!下手な悪魔系モンスターよりも物理攻撃に特化してるし、最大ダメージは物質系越えるんだ!」
上条「バステに弱いけど素早さが高いから強キャラだしな!」
御坂「知らんけど、あーまぁハイイログマね。グリズリーっつった方が有名かもだけど」
上条「そのグリズリーが出るんだ、アラスカ?」
御坂「最大で500kgぐらいになるのよ。そんなのがウロついてる地域だったら、そりゃ危険なのも納得出来るわ」
上条「500!?えっと、軽自動車が1t弱として、その半分か!?」
御坂「大きさじゃシロクマの方が大きいかもだけど、人間の生活圏の近くに居る分だけ危険よねっ!」
上条「おっかねぇなカナダ!」
御坂「アラスカ”州”」
上条「お、おっかないなアメリカ合衆国!俺は行く気がしないねっ!」
円周「や、二人ともワイハー行ってるし――で、ここでとてもとても残念なお知らせがあります」
上条「ごめん聞きたくない。だってお前がめっさ笑顔の時はそれはもう超悪ぃ知らせだって事だからな!」
御坂「……へー?詳しいんだ?」
上条「待ってくれビリビリ!今は仲間同士で争ってる場合じゃない!」
円周「いや別にただちょっと研究用にDNAを欲しがってるだけであって、これといった感情はないなー……じゃなくて」
円周「北海道に生息するエゾヒグマ、アラスカに多いコディアックヒグマ、チベットに生息するチベットヒグマ。それに加えてグリズリー」
円周「これ、ぜーんぶまとめて”ヒグマ亜種”です」
上条「……うん?クマの仲間ってことか?」
御坂「――マジ?ホントに?」
円周「はーい当麻お兄ちゃんは生物学の勉強しなおし、美琴ちゃんは流石だねぇ」
上条「いやだから、同じクマって種類の動物じゃないのかよ?」
御坂「えーっとね、なんて言ったら」
垣根「暇なのでここは私が。まずイネありますよね、ご飯で食べるヤツです」
上条「そんぐらいは知っとるわ」
垣根「イネを生物学的に分類しますと『イネ科イネ属』となります。まぁ分類の話なんですけど」
垣根「で、イネ”科”になりますと、米・小麦・大麦・トウモロコシ。更に竹やサトウキビなどが含まれます」
上条「穀物類は何となく分かるが、竹やサトウキビもイネの仲間なんだ。へー」
垣根「これがイネ科イネ属となりますと、今日私たちが食べているアジアイネ、そしてアフリカイネなど近親種へ派生する訳なんですが……」
垣根「今言ったクマたちは全て『クマ科クマ属ヒグマ”亜種”』なんですよ」
上条「ふー……ん?あれ?」
御坂「あ、気づいた?」
円周「当麻お兄ちゃん、頭はあんま良くないけど直感は冴えてるもんねぇ。そこだけは」
上条「つまりだ。日本のヒグマ、アラスカのヒグマ、チベットのヒグマ、でもって獰猛さに定評のあるグリズリー」
円周「主にmiss you的な意味だけどねー」
上条「これ、全部、ヒグマ……?」
円周「うん、そうだねっ!またちょっと賢くなったねっ!」
上条「いやいやいやいやっ!北海道に住んでんのはグリズリーじゃなくて!?」
円周「えーっとね、アメリカでは内陸に住むクマを『グリズリー』で、沿岸部に住むクマが『ヒグマ』って分けてるんだけどさーぁ?」
円周「これ、同じ種類のヒグマをそう呼んでるってだけで、両方は同じ種類のクマなんだねっ」
上条「アッッッッッバウトな仕事しやがってアメリカ!え、なに!?日本にもそんな危険なクマの近似種居んのかよ!?」
円周「ちなみにシロクマとはちょっと違うんだけど、ヒグマと混血した固体がフツーに自然界で生きていることが判明しています。大体10年前ぐらいだね」
上条「割と最近!」
円周「ま、当麻お兄ちゃんの繁殖力には及ばないけどねっ!」
上条「まぁな――よし、殴るぞっ!さー歯を食いしばれっ!」
御坂「や、それって……生物学的には大問題じゃ?」
円周「やーそれがねぇ、そうでもなくって。国後島に住んでるエゾヒグマ約300頭の内、1割が白いエゾヒグマって観測結果が」
円周「実は自然界でのヒグマ×シロクマ混血は私たちが把握している以上に進んでるんじゃねぇかって」
上条「逞しいな自然、つーか性欲か!この場合は!」
円周「ヒグマとシロクマは亜種じゃないにも関わらず、こうやって子孫を残せる訳で。だったらほぼ同じのヒグマ同士だったらどれだけだ、って話になるよねー」
上条「試される大地とはネタで言われてたもんだとばかり!」
御坂「ネタよ?」
円周「まぁそんなんがブラってて、超危険だよとガイドさんから注意されるアラスカ――」
円周「――に、住んでるのとほぼそんなに生態も変わらないのが、北海道にもいると。ここまで着いて来られてますかー?だいじょーぶー?」
御坂「あたしが想像したよりも、ずっとこう、やられてるわ。脳のダメージ的に」
上条「クマ怖ぇな!テントん中に食いもん持ち込んでるだけで『やぁ☆』って襲ってくる北海道も怖ぇよ!」
垣根「……ちょっと脅かしすぎじゃ?」
円周「あの、勘違いしないでほしいんだけどね。今までのは『グリズリー対策の一環』であって、守らないと100パー喰われるって事じゃないからね?」
御坂「そ、そうよねっ!そこまで物騒な訳――」
円周「でも、そういうマニュアルっつーかテンプレ揃えるまでにはそれなりの犠牲がねー。どのジャンルでもそうなんだけどさ」
御坂「……局地的に物騒?」
円周「とも、言えない。とは、言わない。知識を知識として持ったままなのか、それを活かせるのかは別の話」
御坂「やってやるわよ!こうなったら最後まで付き合うし!」
円周「おー、さっすがだねぇ美琴ちゃん。悪い意味で男前だぜ!」
円周「じゃアクターさん配置よろしく。ほらさっさと準備するする」
上条×垣根「「はーい」」
上条「って今なんか表記に悪意なかったかな?佐天さんばりの作為が見えた気が……!」
――CASE03 「クマの習性・その一」
垣根A『もーえろよ、もえろーよー、なんとか、かんとーかー』
垣根B『いやー、キャンプファイヤーっていいですよねぇ。なんか染みるっていいますか』
垣根C『ですよねー、こう焚き火を囲んで恋の話をしたり』
ガサガサッ
上条『――やらないか?』
垣根A・B・C『『『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』』』
円周「――はい、茶番劇ありがとうございましたっ!」
御坂「そこは、うん。関わってる人たち全員がそうは思っているけども、敢えて触れないところだから、うん――慎もう?頑張ってるんだし!演者さんはね!」
上条「つーかこのシリーズ展開早えーよ!垣根の会話が一巡したら、即ア゛ッ!?だし!」
垣根(35)「残機が地味に減ってるんですが……」
円周「これは、というかこれからはいくつかの事件から判明したクマの習性であり特定のお話ではないからね。そこは前置きしておくね?」
円周「残念というか、ヒグマの習性で分かったんだけど――」
円周「――恐れないんだよねぇ、火」
御坂「嘘……でしょ?」
円周「そう思いたい気分は察するけどね、残念ながら一例二例だけじゃなく報告が上がってるんだよ」
円周「キャンプファイヤー中だったり、民家――当時は電気がなくて囲炉裏を囲んでいたところへ、クマが乱入する事件が」
御坂「クマ相手には意味がない?」
円周「ほぼ確実に。襲撃されて、逃げるときに松明掲げていたのに……ってのもあるね」
御坂「じゃ、じゃあ!クマは人を恐れるってのも!」
円周「それは次のケースで詳しくやるよー。何かもう話が進まないからサクサク進めるね」
――CASE04 「クマの習性・その二」
垣根D『熊除けの鈴をつけて、ラジオも持った』
垣根E『そして一人にならないように、友達と一緒に山へ入りますよ!これでもう怖いものは』
上条『よっ、いらっしゃい!』
垣根D・E『『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』』
御坂「茶番が輪をかけて茶番になってくんだけど……」
円周「本州に住むツキノワグマは人を恐れる”傾向”が、強い。だから数人が声を出しているのは有効”である場合”がある」
円周「同じくクマ除けのガランガラン鳴る鈴、それを聞いて逃げるクマ”も”いる。一応はね」
上条「奥歯にモノが挟みまくった言い方だな」
円周「ただねー。ご愁傷様でしたというか、お気の毒様でしたというかねー。慣れちゃうんだってさ」
御坂「まぁ、相手も生き物だし。学習はす――」
円周「――”人の味”に」
御坂「る、わよ、ね……?」
上条「何となく想像はしてたが、最悪の形で当たりやがったな」
円周「これもまた具体的には控えるんだけどね、昔々ある山間の集落を襲撃したヒグマの話があってさ」
円周「その時には女子供が狙われて、比喩なしの地獄絵図が広がったそうだよ」
御坂「うわぁ……」
円周「だから獣害の多いところでは土葬は避けてきた歴史がある。そっちの話になると山の民俗学の分野へ入るね」
円周「私のメル友が東北某所でマタギさんに取材した範囲で言えば、そうだなー……」
上条「出やがったな謎人脈!フカシにしては一々具体的すぎるんだよっ!」
円周「お兄ちゃんウルサイ。例えばー山へ猟に行く数日前からは五穀断ちをする。特にお肉と発酵食品は口に入れない」
円周「身を清めたり、エッチなことはしないし避ける」
円周「他にも山の神は死穢(しえ)を嫌うから、身内のお葬式があったなら数ヶ月は山へ入れない、みたいなの」
御坂「体臭や死臭を動物に嗅ぎ取られる?」
円周「女人禁制のお山が殆どだったのも、お月のものが捕食獣に、って考えれば理屈は合うよね?」
円周「そんな山師の山へ入り方やタブー色々、数冊本書けるぐらいの量になるよー」
上条「猟師は分かるが、それ以外で山仕事する人なんていたのか?」
円周「昔は木が燃料だったからねぇ。下手すればレジャー目的で入る今よりも、人口比では多かったかも?」
上条「あぁ成程。薪だけじゃなくて炭も木か」
円周「うん。そういう狩人じゃない人たちの文化はまた違って、獣除けのためにタバコを吸ってたりする」
円周「聞いたことないかな?ヘビ除けにニコチンが効くとかなんとかで、今も縁起担いで吸ってる人は居るねぇ」
垣根「質問があります、宜しいですか?」
円周「どーぞー」
垣根「クマはそんなに脅威ですか?勿論人命に関わるのは間違いないですが……なんて言ったらいいんですかね、えっと」
円周「もっと恐ろしい獣がいる?」
垣根「ですか、ね」
円周「言ってる事は分からなくもないよねぇ。ペストを運ぶネズミだったり、集団で狩りをするオオカミ、田畑を荒らすイノシシに比べれば」
円周「海外だとトラにピューマにライオンにカバ、神話に出ちゃうぐらい怖がられてた獣は多いよねぇ」
垣根「動物園とかでも時々『事故』が起きるじゃないですか?なら、クマだけを恐れて危険視するのは良くないのではないかと」
円周「そうだねぇ同意しないでもないんだけどねー……で、お兄ちゃん二人と美琴ちゃんは、どうして動物園の動物さんが人を襲わないのか分かるかな?」
上条「去勢し――」
円周「っていう種もいる。ただ最近動物虐待だって言われてされない傾向が強いんだねぇ」
円周「なので基本的にやってるのは『飼育員さんと信頼関係を作る』が一つ。何年も時間をかけて世話をして人間へ慣れさせる、って意味だよ」
御坂「お、いいじゃない。そういうの憧れる!」
円周「もう一つは『満足するまでエサを食べさせて飼い殺す』かなぁ?」
御坂「言い方!」
上条「もうフリの仕方でそんな身も蓋もない答えが来ると思ってたよ!」
円周「いやいや大真面目なお話なんだよ当麻お兄ちゃん!水族館のサメさんも一緒だし!」
円周「あれ他の回遊魚と一緒の水槽へ入れてても、他を食べ尽くさないのは満足する分のエサを食べさせてるだけだから!」
円周「……ま、それでも時々減ってるらしいけどねっ」
上条「ダメじゃねぇか。減ってんだろ、おやつ代わりにつまんでんじゃねぇか」
円周「大型の草食動物ならともかく、肉食動物はお腹空いたら飼育員さんが狙われる可能性が高い、つーか予防策がそれしかないから」
円周「エサを与えて食欲を満たして襲われるのを防ぐ。これ、基本だね?……人にも使えるけど」 ボソッ
上条「おい小さく何か言ったな?不穏なことを」
円周「だから起きる事故も大抵は飼育員さんへじゃれて致命傷、猛獣側に殺意が無いのに致命傷ってのが殆どなんだよ」
御坂「トラにじゃれつかれたら無傷じゃすまないわよね……」
垣根「殺意のあるなしの判定はどうやって?」
円周「怪我の種類かなー。殺すつもりで噛んだら大抵即死だけど、滅多にそこまでは起きない。あ、ゼロじゃないけどね」
上条「つまり『結果的に死んだ』んであって、猛獣側は『殺すつもりではなかった』と?」
円周「そう。獣は基本的に”殺す=捕食する”だから、殺意があった場合には殺された後にモグモグされてないとおかしい訳。おーけー?」
御坂「エサも足りてるし、待遇も……ま、大自然で生きるか死ぬかの毎日よりは、まだ優遇されるって視点もあるか」
円周「満足するかどうかは別にしてね。実際に気の荒い個体は檻へ入れられる前に弾かれるだけなんだけども」
円周「あと園だけじゃなくって、ペットに子供やお年寄りが噛まれて――みたいなのも、動物側に殺意は多分なかったと思う」
円周「動物が子供を運ぶときなんかはさ、頸の後ろをこう、がぶって噛んで移動させるのね?分かる?」
上条「……人間でそれやられたら致命傷……」
円周「首座ってないときなんかは……だし。あと血が出て動物がパニックになるって説もあるし」
円周「あぁ言っとくけどペットがダメだっていってるんじゃないからね?何事も節度があるってだけだからね?」
円周「大型犬に悪意がなくても子供に怪我をさせるときはあるし、また小型犬でも犬が苦手な人は転んで怪我や事故に遭うケースもある」
円周「管理する人間側に責任や落ち度があった、とは思うんだけど――ヒグマがねー」
円周「何年か前にある動物園で集団脱走してさ?ご飯もきちんと貰ってたはずなのに、飼育員さんにも懐いてたはずなのに」
円周「……食い殺したのか、殺してから喰ったのか。まぁ、そういうこと」
上条「いやーなオチがついたなチクショー!」
円周「背景としては廃園予定の所だったんで、満足の餌を貰ってない可能性もあった。でも、それを差し引いてもって感じかなぁ?」
御坂「凶暴性――あ、いや、食欲が強いだけ……?」
円周「まぁ自然下では、生きるために強いものが弱いものを徹底的に狩るからねぇ。それが唯一にして絶対のルールだから」
円周「問題なのはその大自然の掟に従えば、私たち人間はクマからすれば圧倒的な弱者ってだけでさ」
御坂「実際、クマのスペックはどのぐらいなの?食物連鎖の最上位なんでしょ?」
円周「美琴ちゃんの言う通り、寒い地域では最上位だと思う。トラだって時には捕食されるし」
円周「他にもイノシシ・シカ・オオカミを食べたかと思ったら、木の皮や木の実も食べるし。当麻お兄ちゃんもビックリの雑食っぷりだよねっ」
上条「おっと言葉が過ぎるぞ、こいつめー!」 グリグリ
円周「全力で頬を引っ張るお兄ちゃんは大人げないと思います!……で、スペックは、あーやっとく?折角小芝居の準備したんだし?」
上条「俺としてはもうSAN値下がって帰りたい」
御坂「――待って!クマ危険性を知るためにも!ここはあえてやっとくべきだと思うの!」 チャッ
上条「ケータイ片手に言われても説得力はないかなー」
――CASE05 「クマの習性・その三」
上条『……』
垣根F『クマだ……どうすれば――そうだ!』
垣根F『死んだふりをすれば大丈夫だって、そうしよう!』
上条『――ん?』
垣根F『……』
上条『いただきまーす』
垣根F『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「クマさんは屍肉も食べます。てゆうか他の獣が狩った肉を横取りもします」
――CASE06 「クマの習性・その四」
垣根G『あるひー、もりのなーかー』
上条『……』 ジーッ
垣根G『あ、目が合った!ヤバいですね――必・殺☆垣根ダーーーーーッシュ!』
上条『俺もダーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッシュ!!!』
垣根G『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「クマさんは反射的に逃げるものを追いかける習性があります」
――CASE07 「クマの習性・その五」
垣根H『……昨日テントが襲われて食べ物を取られました……』
垣根I『このまま下山するとか――あ、荒らされた荷物も持って行こう――』
上条『あ、ごめん。それ俺んだから』
垣根HI『『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』』
円周「クマは執着心が強いです。一度クマの臭いがついたものは所有物と見なされ、どこまでも追ってきます」
――CASE08 「クマの習性・その六」
垣根J『く、クマは怖いですが!流石に日中は出ませんよね!だって野生動物といったら夜型だって相場は』
上条『――やぁ、いい天気だね』
垣根J『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』
円周「クマは時間・天候・気象に関係無く行動します。唯一動きが鈍るのは冬眠時だけです」
――CASE09 「クマの習性・その七」
上条『くまー、くぅぅぅぅまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ』
垣根K『いました!クマです!』
垣根L『私たちの兄弟の敵!猟銃でターーーーーーンっ!』
上条『ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
垣根K『や、やったか!?』
上条『はい、やってませーん』
垣根K・L『『ア゛ッーーーーーーーーーー┌(┌^o^)┐ーーーーーーーーーー!!!?』』
円周「銃弾一発ぐらいでは致命傷になりません。むしろ怪我するとバーサークして襲い掛かってきます」
円周「――と、以上で終わりかな?」
御坂「深刻なんだけど、深刻さの微塵も伝わってこないっ……っ!」
垣根(26)「減ってますよ?私の残機がご機嫌な勢いで」
上条「おい年齢みたいになってんぞ」
円周「(26)を高速で殴り書きするとある言葉が浮かび上がってくる……ッ!」→→→
上条「リトバ○のネタだろ。ってかもうこのオチを見込んでたのバレバレじゃねーか!」
円周「てへっ」
上条「てかこれ逆に聞きたいんだけど、どうすればいいんだよ?ゲームオーバー回避する方法なんてあんのか?」
御坂「火は効かないわ、逃げ出せば追いかけるて来るわ、ランダムで遭遇するわ、猟銃一発程度じゃ仕留められないわ、隙がない仕様になってんじゃない!」
円周「一応……うんまぁまぁまぁまぁ、対ヒグマ用に武器持っていくんだったら、痴漢撃退用スプレーが効果的だって話があって」
御坂「痴漢撃退……あぁトウガラシスプレーとか、酢よりもキッツイ匂いの液体を噴霧させるのだっけ?」
円周「そう、それ。野生動物だから効果はある、はず」
上条「あ、効くの?だったら――」
円周「ただし!あれって有効範囲が精々数メートルぐらい?だから、そこまで近寄れるか、近寄ったら逆に詰む恐れがあってさ」
円周「今見た前例の中で『ライフル一発ぐらいだったら怯みもしないで襲ってくる』相手に、少しぐらい臭いスプレーはちょっと頼りないかなぁと」
御坂「遠くから、こうシュッシュッって撒き散らせば?」
円周「それは有効だと思うよ。まぁそっちはそっちで問題があってさ」
円周「格ゲーじゃあないんだから、こう、両者一定の距離から『試合、始め!』ってならないよね?」
円周「相手がヤル気だったらば不意打ちを確実に仕掛けてくる訳でさ」
上条「終ってんな」
円周「ただねー、向こうにしても人間との遭遇は基本的に偶然であって、積極的に襲ってくるのは”まず”ないんだよ」
円周「例えば……ある登山パーティがヒグマと接触して襲われた事件も、最初に遭遇してから死人が出るまで3日かかってるんだ」
御坂「即、じゃなくて?」
円周「キャンプしたらヒグマが近寄ってきて様子を見てたら荷物を漁ってきたんで、音を立てて追い払った。これが初日」
円周「二日目の未明にもクマが現れてテントに穴をあけ、倒してしまった。なので数時間かけてテントを直したが、今度はそこへ居座った」
円周「三日目は他のテントへ合流するため出発して――で、まぁうん、初めての怪我人兼死傷者が出たと」
御坂「最初の日に逃げなさいよっ!?」
円周「日本に住むクマの中で一番凶暴なのはヒグマ、それにしたって初っ端から襲撃されることは”まず”ない。繰り返すけどね」
円周「仮に本気で襲撃しに来てるんだったら、その時点で詰んでるけど、”それ”は滅多にない……なくはなかったけどね」
円周「大抵出くわすのはお互いにとって予期せぬ遭遇であり、パニックになるのは人もクマも同じ」
円周「よって対処を間違わなければ、まず死にはしないんだよ」
垣根「今の例、というか山歩きや山菜採りで不意に出会ってしまったら、どうすれば正解なんでしょうか?」
円周「最初のアラスカの話でも出たように、荷物を漁っている間に視線を逸らさないようにしながら、そーっと逃げる」
円周「できれば食べ物をパックや入れ物から出して、その場へ一括して置いて何も持たずに、が理想かなぁ」
上条「童謡であったように、森の中で出くわした場合には?」
円周「基本は同じ。視線を逸らさないように、ゆーっくり後ずさりしながら食べ物と荷物をその場へ置いていく」
御坂「山菜採りでバッタリは?」
円周「あーうんそれねー、てか名前は伏せるけど群生地見つければ数万円の山菜があるんだよ。具体的には言いたくないから言わないけどさ」
上条「ちょっと興味あるな。美味しいのか?」
円周「テンプラにすると絶品、らしい。アク抜きしなくても食べられる野草だから相当美味しいんだと思うよ」
上条「へー、だったら」
円周「まぁ、基本的に人間が美味しいって思うものはクマも同じだよね、って話なんだな、これが!」
御坂「業が深いわー……」
円周「人間にしてみれば国有林(という名目で)へ入ったところで山菜摘むのは、まぁ違法ではない。詳しく調べた訳じゃないんだけどね」
円周「ただ野生動物側からしてみれば、自分達の縄張りでなにしとんじゃい、って攻撃的になるのは仕方がないんだと思う」
御坂「動物視点で見れば自分達のテリトリーなのよね。山であっても」
円周「採る権利――が、あるかどうかは私は知らない。現行法じゃ国有林でどうこうするのは不可能だし、全部を監視するのもムリだよね」
円周「ただ、そこまでリスクを負ってハイキングの延長線で行くような所じゃないよね」
上条「去年だかDEATH山菜採りでバッタリ!っつーのがあったじゃんか?」
円周「秋田の獣害事件だね。死者4人に重傷者2名で今年も現在進行中」
上条「あぁそれそれ。一年にどれだけの人間が被害に遭ってんだよ?俺達が知らないだけで結構多いのか?」
円周「死者は5人ぐらい?カウントされない人を含めても10人前後だと思う」
御坂「カウントされないのにカウントするの?」
円周「山の中で行方不明になって――って、ことかな。入山許可証を出さない人は今も多いし、山菜摘みはグレーなところがあるからねぇ。私有林とか」
円周「美琴ちゃんには前も言ったけど、『他の山菜ゲッターに秘密にするため、わざと熊除け鈴を持たない』人も少なからず。人の欲って怖いよね−」
御坂「それでも思ってよりか少なくて安心した、かな」
円周「あー安心しないで。怪我人は100人前後だから重軽傷者合わせても」
上条「とすると遭遇した人間はもっと多いっつー話か」
円周「散々脅かしておいてなんだけども、今までのシミュは『過去の事例の最悪の最悪パターン』を取り上げてみましたー」
円周「またツキノワグマはヒグマと違い、人間を恐れる傾向が強くて熊除け鈴が一定の効果を上げていまーす――が」
円周「秋田での獣害事件、最新の被害者は鈴二つ着けてたらしいので、まぁ、うん」
御坂「……憶えちゃった?」
円周「ん、ではないかと。つーかそれ以外に考えようがないけどねぇ。あそこは例外だと思うけど――まぁとにかく!」
円周「クマに出会ったら相手の興味を惹かないようにして逃げる、これ、鉄則!ただし決して走って逃げないように!」
円周「クマは数十キロで走るし、四輪駆動かつ相手のホームなので悪路関係無しにツッコんできます!」
円周「ボルトが全力ダッシュしても捕まる上、山中から麓まで同じペースで完走できる訳がない!だから優先すべきなのは『興味を持たれない』ように!」
円周「食べ物を放り出して気を取られてる間に静かに逃げる!これが鉄則!」
円周「あとツキノワグマはヒトを恐れる性質が強いですが、怖がるからって攻撃をしないのはイコールでは結ばれませんっ!」
円周「『なんだよー、お前ここはボクの縄張りなんだからあっちいけよー』と、同種だったら軽いツッコミでも、人間だったら致命傷!」
円周「山菜ゲッターも小銭欲しさで不用意に山へ入ったりしない!どこかのタケノコ王()みたいに、基本”あーゆー”人なんだから!」
上条「お前それタケノコ王()がアホっつってんのと同じじゃねぇか」
円周「うん、逆に聞くけどさ。稼ぎがいいって事はそれ相応のリスクを負うって事でもあるからね?何も問題がないのに荒稼ぎできる訳がない」
円周「モニタ越しでもアリアリと分かる、あの人の、えーっと、うん、人並み外れた?オーラ?」
上条「コイツが言葉を選ぶ、だと!?」
円周「良い意味でも普通の人とは違ってて、真似するのはムリです」
円周「――てゆうか長々とクマの危険性を語ってきましたが、一番怖いのはクマやイノシシなどの動物じゃありません。それは”無知”です!」
円周「どんな怖い動物も環境も、たった数分の知識と精々一時間ぐらいの事前準備で避けられる場合が殆どです!いやマジで!」
御坂「まとめに入ってる?」
円周「とは言うもののっ!事前にトウガラシスプレーを用意し、いざ実際にクマと遭遇したとしても、放心状態で体が動かないって状況もありえます!」
円周「コンビニに突っ込んでくるブレーキとアクセル踏み間違えた車と一緒!危機的状況へ放り込まれて体がとっさに反応できるかは、分かりません!」
円周「普通に登山やハイキングを楽しむ分には問題ないでしょうが、無茶なことはしない!させてもいけません!」
御坂「あぁうん、ありがとう?絵面だけを見ればBLにしか見えなかったけど、まぁタメにはなる――かな?なるといいわよねっ!」
上条「実数見るに気休めレベルだと思うんだが……」
円周「まぁヒグマにしたってクマ牧場できちんと飼育されている個体も居るんだし、杞憂――だと、いいよねぇ」
闇咲逢魔「――では、続いて山怪と民族学的な視点からの比較を始めようか」
御坂「うっさいわよ!つーかアンタ誰よ!?」
闇咲「前述されているトウガラシスプレーが猛獣に有効という説に関し、私は疑問を呈する」
闇咲「というのもだ。刺激臭のある酢酸溶液は古来から使われ、特に木炭からは木酢液、竹炭から竹酢液が採られていた」
闇咲「これは主にその強烈な臭気のため、害虫・害獣除けに使用したと伝わっており、割と東西に関わらず広い分布相を見せている」
闇咲「当然山師たちにも、特に森で伐採した木をそのまま石炭へ加工する人間は周知でなければおかしい」
闇咲「だがしかし猟師達が山へ酢酸水を持って入った記述はなく、本当に有効であったのかは怪しいところであるな」
上条「すいません。長い、そして意味が分からん」
闇咲「またクマが『人の内臓を好む』のが俗説と言われている。しかしながら古来より”内蔵を持って行かれた”という山怪の話があり」
闇咲「また骨食い沢、骨食み沢といった、目には見えないが重要器官だけを好む怪異の存在を否定するのは難しいと言える」
御坂「……ねぇ、この話聞かなきゃダメ?本格的にグロい話になりそうなのに、オブラート使う気配すら見えない……!」
円周「私は大好物だけど、立場的にオカルトはちょっとなぁ。加群おじちゃん(元・小学校教師)は別にして」
上条「おい意味ありげに余計な情報伝えるな!また先輩の妹さんにシバかれるぞ!」
上条「つーか……あれ?俺コイツと旅してたような……?」
−終−