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Clock(trial)

初春「『ハッピーハロウィン・リベンジ、戦慄の三沢塾』」


――とふる風紀委員 詰め所

佐天「ちゃーっす、どもー」 ガチャッ

少年「こんにちは」

佐天「あ、どもー――ってあれ?間違えた?」

少年「風紀委員に用事があるんだったら間違いじゃないよ。迷子かな」

佐天「人の顔見て失礼だなこのお子様は。関係者の子?初春の同僚さんにしては若――」

佐天「……」

佐天「――示談金は御坂さんが弾んでくれるから!どうか今日あったことは他言無用で……!」

白井「なんでですのよ」 ガラッ

佐天「何言ってんですか!?白井さんの名前に相応しくないホワイトな経歴に傷がつかないようにって頑張ってるのに!」

白井「……金銭を握らせるのとどういった関係が?」

佐天「白井さんの性癖が高じてついに誘拐に至る。なお犯人は『面影がお姉様に似ていて』と意味不明の供述を」

白井「断じて違いますの。わたくしは好きな方以外に懸想などしませんわ」

初春「性的な少数派が必ずしも犯罪者ではないですからねー。その言い方は失礼かと」 ガラガラッッ

佐天「いやでもゲ×とペ×をこじらせて小学校教師になったオッサンが定期的に捕まってるんだけど……」

白井「風物詩ですわね。あれもう適性検査の一環で癖を調べた方がいいですのに」

初春「思想の自由は保障されるべきですが、だからといってガチペ×やガチショ×が特定の職に就くのは、ですね」

佐天「いやでも中には世を儚んで薄い本を量産している善良な人だっているはず!きっとね!」

白井「それはそれで創作物が他人様の性癖をこじ開けるっていう二次被害もありますわよね」

初春「フィクションとノンフィクションを混同するのはダメですよー」

佐天「うんまぁ、とにかくそういう訳だから、今日ここであったことを他言しないのであればお家に帰れるよ?どうかな?」

白井「……まず佐天さんを逮捕した方がいいのかしら……?」

初春「白井さんはこう見えて善良ですからねぇ。御坂さんに関わる事以外はまぁそれなりに」

少年「盛り上がってるところ悪いけれど、君の本題はもういいのかい?」

佐天「本題っちゅーか、あたしは呼ばれてノコノコ来た訳ですが。てかあなたは?」

美山(少年)「僕は美山写影。松梅小学校の四年生だよ」

佐天「あ、どうもご丁寧に。カステラ一番、電話は二番、三時のおやつにダイター○3の佐天涙子と申します」

美山「ちょっとなに言ってるか分からないかな。何もかかっていないよね?」

初春「そして元ネタを複合するのやめません?どちらも数十年前のネタで誰が知ってんですか、アーカイバで見るぐらいですよ」

白井「自己紹介で10歳児に負けるって一体……」

佐天「ほんでその美山君がどうしてこちらに?風紀委員になりました、って格好じゃないよね?」

白井「風紀委員の活動が許されるのは中学からでしてよ。それまでは研修研修で実地とは行きません――の、ですけど」

美山「僕が勝手に黒子たちに協力しているだけさ」

佐天「おぉ……!なんか格好良い事言ってるよ!」

白井「美山とは以前に多少協力頂いたのですけれどね」

美山「大丈夫だよ。普段は使ってないから」

初春「ダメですよ。能力が体にかかる負担を考えると、できれば使わない方がいいぐらいなんですからね?」

佐天「能力……未来予知、的な?」

美山「断片的だけどね」

佐天「おぉっと騙されないでください!たまたま持ち合わせていたESPカードで真贋を付けないと!」

初春「常にその手のグッズを持ち合わせている方が怖いです。てかよく持ってましたね」

白井「超能力の街ならと誤解されていますけれどね」

美山「小学生のカリキュラムでまずするやつだよね。低学年の頃にした覚えがあるよ」

佐天「いえ、こう見えてもあたしの当て感はなかなかのもんですよ。チートしなくても30%で当たります!」

美山「してもいいけど僕には意味がないと思うな。もっと別の感じで予知する能力だから」

初春「美山君、話しても?」

美山「初春と黒子が良いと思うんだったら大丈夫なんじゃないかな?」

佐天「このガキ……!?クラスの男子どもが全員テレて呼び捨てにできない初春を呼び捨てに……!?」

白井「子供相手に対抗しない。何年かすれば黒歴史として記憶されますわね」

初春「私は別に変な呼び方されなかったらいいんですけど」

白井「能力の詳しく説明は省きますわ。前にわたくし達に協力してくれたせいで、体調を崩してしまいましたの」

美山「黒子はそう言うけどね。二人を信じ切れなかったせいで能力を使いすぎたのが悪いんだ」

佐天「(……将来女泣かせになりそうですよねぇ。この子)」

初春「(既に元クラスメイトのいじめっ子ちゃんのフラグが立ってます)」

佐天「(なにそれ超知りたい!)」

美山「彼女はそういうんじゃないよ。何でもかんでも男女の仲に結びつけるのはやめてくれないかな」

佐天「……なんでしょうかね。あたしらがどんだけ爛れた思想してんのか反省したくなりますよね」

初春「正論ど真ん中だと思いますが、あと4年も経てば中二拗らせたアフォになるかと」

美山「それはそれで僕の選択だけどね。まぁそんな訳で能力の多様はお医者さんからも禁じられていたんだけど、逆にしないわけにもいかなくてさ」

白井「授業で使いますわね」

美山「前の……”強い”使い方じゃなくて、負担がかからない方でやっていた――これ、分かるかな?」

佐天「えっと、見てもいいの?」

初春「どうぞどうぞ。解析済みですから」

佐天「じゃあ遠慮なく……アルファベットの羅列と数字だね。何かのアナグラム――あ、これって!」

初春「はい、ネットのアドレスだと思います。それも某動画投稿サイトの」

佐天「劇場型犯罪だね!間違いない!」

白井「はいそこテンション上がらない。予知って言ったでしょ、予知って」

美山「僕も最初は分からなくてね。サイトは特定できてもどの動画かまでは分からないから」

佐天「あー、あれか。ドメイン名の後はランダムにできるアドレスだから、並べ替えると幾つも候補ができるって話?」

美山「それに動画ってことは”終わった”話だ。僕の能力は確定していない事象を観察するのであって、起った出来事に干渉はできない」

佐天「そうだよね――って違う違う。ここのサイトはライブ配信もできるって!」

美山「らしいね。僕も調べるまで分からなかった……だから、最初の犯行は止められなかったんだ。それで佐天、君に覚悟はあるかい?」

佐天「年下のjsに呼び捨てにされても耐える覚悟?」

初春「特定の層にはご褒美ですね。あと美山君はせめて”さん”を付けましょう」

美山「あぁごめんよ。能力のせいで中々親しい人ができなくってね、距離感がよく分からないんだ」

美山「気に障ったかい?僕はこの二人の知り合いなら信用に値すると思ったのだけれど」

佐天「(ねぇこの子、このまま育ったら将来中東のスルタン系にありがちな、独特の生態系を構築しそうじゃないかな?)」

初春「(まぁ……我々には関係無い話ですし、その時は後ろから刺されてから介入するってことで)」

佐天「(――そうだ!今のウチからガチホ×に教育すれば修羅場らないよ!)」

初春「(修羅場る対象が屈強なメンズに変わるだけだと思います)」

白井「真面目に」

佐天・初春「ごめんなさい」

美山「適度な脱線でも時には必要だと思うよ。適度に緩みは必要だしね。これから動画を見るに当たっては特に」

佐天「そんなにヤバイの?」

美山「危険だと言えば危険なモノだし、いつもと言えばいつもだとも言えるし。まぁとにかく」

美山「――この街は、危機に瀕しているんだ」



――ライブ配信だった動画(アーカイバ配信中)

男子『……ここか。なんか、うん、やっぱこえーわ』

女子『ちょっと。アンタでしょ「心霊スポット行こうぜ」って言い出したのって。ビビってどうすんのよ』

男子『そうだけど。ここ探すのも苦労したんだぜ?学園都市にオバケが出るなんて珍しいからな』

女子『都市伝説だったらたっくさんあんだけどね。てかオバケも花子さんも同じじゃないの?』

男子『花子さんはオバケだろ。違ってたら怖い』

女子『もしくは変質者だけどね。深夜のトイレに生身の女の子がいたら恐怖だわー』

男子『……お前怖がってる?なんか超余裕って感じに見える』

女子『キャーイヤーこわーいー。よく知りもしない男子と二人っきりなんて怖いわー』

男子『そっちかよ!……あぁまぁ人気の無い場所だから、そういうアホもいるんだろうが』

女子『能力って便利よね。スクールカーストの上位版っていうか、そうでもなきゃ下心疑うでしょうフツー』

男子『……いつか刺されても知らないからな』

女子『んーで?ここで何があったんだっけ?花子さん収監実験?』

男子『もしいたら捕まえそうだけど……そうじゃなくてここは「三沢塾」って塾だった。知ってるか?』

女子『あー、なんか流行ったんだっけ?一時期塾へ通えば成績も能力も上がる、みたいな?』

男子『って売り込みだったんだけどな。俺、同級生が通ってたから話は聞いてたんだよ』

男子『最初のウチは嫌々行ってたのに、途中から寮にも戻らなくなって……』

女子『……なんか危なそうな話よねぇ。最後は集団ヒステリーで強制解散だっけ?』

男子『……』

女子『なによ』

男子『俺も、つーか俺のダチだったからさ。心配になって一回忍び込んだんだよ、ここに』

女子『よくもまぁ、よね。センサーに引っかかって一発レッドカード喰らうのに』

男子『でも、なかったんだよ』

女子『そうなの?……あぁそうか、もしそんなバカやって捕まったんだったら、停学の一週間か二週間はもらってた筈よね』

男子『入り込んだんだけど警備はザルでさ。セキュリティかかってんのか?みたい感じで。実際になかったんだと思う』

男子『中入っちまったら後は簡単で、生徒のフリして探し回ったんだけど……ダチ探すレベルの話じゃなくなってさ』

女子『ふーん?怪しげな儀式でもしてたって』

男子『あぁ。黒魔術ってやつなんだと思う』

女子『……待って。あんたについてきたのを本格的に後悔し始めたんだけど、大丈夫?受験ノイローゼじゃないの?』

男子 ピッ

女子『この画像は――黄金練成(アルス=マグナ)の写印……!?』

男子『ある、なんだって?』

女子『……ううん。私の知ってる”能力”の一つよ』

男子『ダチは帰って来たんだけど、何にも憶えてないって言うしさ。だからってこのまま分からないのも気分が悪くて』

女子『それであんたの狭ーい交友関係の中から、一番頼りになる私を選んだって事か。成程成程』

男子『わ、悪かったよ!騙したみたいで!』

女子『いいのよ。根本的に騙してるのはこっちだしね』

男子『お前――男だったのか!?』

女子『それ以外に引っかかるところはないのかねキミは。いやまぁそれでいいんだったらいいけど』

女子『まぁ私の所に話を持ってきたのは正解ね。科学と能力で分析しようったって無理なモノは無理だし』

女子『……ただなー。こんなことなら前もって教皇代理に相談したかったよね、って話』

男子『京子?』

女子『まぁいいからいいから。それで他には何か見なかったの?』

男子『……教室を覗いたらさ。なんかグッタリした生徒が何人か』

女子『教室?休憩室じゃなくて?』

男子『文化祭で泊まり込みの後に雑魚寝したような感じ。男も女も雑に転がってたよ』

女子『……服は着てたのよね?』

男子『着てなかったらただのエロい話だろ!?なんでそんな場所を探索するんだよ!』

女子『”そういうの”もあるんだけど……分かったわ。それじゃ見て回りましょう。あなたはあっちを』

男子『よし分かった!――って待てよ!?一人だと怖いだろ!俺が!』

女子『いや私だって怖いけども。つーか今日の本題って肝試しと「あの事件なんだったの?」でしょ?』

男子『だ、だから心霊的なアレかも知れないし!噂じゃ何人か死んだっていうぜ!』

女子『だったら大問題になってるし噂は噂だっ――噂?』

男子『あぁ!毎晩この建物には成仏できない学生達が――』

ガタッ

男子『――さまよって、る……?』

女子『……したわね、音』

男子『したよな。つーか聞こえた』

女子『常識的に考えれば不法侵入したバカを捕まえに来た警備会社の人、少しアレンジすれば似たような主旨で忍び込んだ学生、かな?』

男子『……警備員は嫌だなぁ。DQNはもっと嫌だ』

女子『まぁどっちにしろ隠れてるのはバレてるわよね。つーか大声で喋ってんだから』

男子『取り敢えず挨拶して、大人だったらゴメンナサ――』

カボチャ頭の殺人鬼?『………………』

男子・女子『……』

血まみれのカボチャ頭『……ミ、見ツケタ……!』

ドゥルンッ!ドッドッドッドッドッドッ!!!

男子『ちぇ、チェーンソー!?』

女子『――逃げるわよ!』



――

男子『なんだアレなんだアレなーーーーんだっアレっ!?』

女子『ウッサイ怒鳴るな聞こえてる!アタシだって知りたいわ!なんでこんなとこにカボチャマスク被ったヤツがいんの!?』

男子『あぁアレはカボチャマスクなんだけど、ハロウィ○って映画シリーズに出てくるブギーマ○ってキャラをリスペクトしたんであって』

女子『いいわそんな細かい設定は!ダッシュでチェーンソー持って追いかけてくるアホになんか有効な手があんの!?』

男子『なんかこうフワッとした超能力で退治される傾向が強い!あと妹に弱い!』

女子『よーしそれじゃやってきなさいよ!アンタのご家族には「勇敢に戦って死んだ」って泣くフリしながら最期を伝えてやるから!』

男子『ふざけんなバカヤロー!?そこはせめて泣けよ!頑張ったんだから泣けばいいと思うよ!』

女子『葬式に顔出すだけでもありがとう思いなさ――痛っ!?』 ズサッ

男子『お、おいっ!?』

女子『いっつつつつ……足、捻っちゃったみたいり。ついてないわー、ホントに』

男子『……掴まれよ。早く!』

女子『いや無理でしょ常識的に考えて。足手まとい連れて逃げ切れないから』

男子『け、けどよ!』

女子『アンタが今しなきゃいけないのはダッシュで外出て警備員呼んでくること!いいっ!?』

男子『……』

血まみれのカボチャ頭『……ガ、アアァァァァァァァァァァ』 ドルゥンッ!!!

女子『――行って!レベル1のアンタが残ったって何にも出来ないんだから邪魔なの――』

男子『ウルサイ!』

女子『え、う、ウルサイって何よ!?』

男子『見捨てられる訳ねぇ、お前一人残してくようなダサい真似できる訳いなだろうが!』

男子『ンなことしたら一生どころか何回生まれ変わったって後悔するわ!決まってんだろ!?』

女子『ちょ、ちょっと!?何言ってるのか分かんな――』

男子『――好きな女の子、一人で置いていける訳ないって言ってんだよ!そんぐらい分かれよ!』

女子『アンタ……』

男子『見てろよ、今から俺の能力が目覚めてこいつを退治するところを――何故ならば!』

男子『好きな子の一人や二人、守ってやれなくて何が能力だって話だ……ッ!!!』

血まみれのカボチャ頭『グ、グアァァァァァァァァァァァァァッ……っ!?』

女子『嘘!?本当に効いた!?』

男子『いやまだ俺もなんもしてねぇし。なんでこいつ苦しんで――』

血まみれのカボチャ頭『――ニゲ、ロ……!』

男子『ニゲ――逃げろ!?おいお前!何言ってんだよ!?』

血まみれのカボチャ頭『ア、アイツガ来ル……!トリカエシ、ツカナ、……イ』

男子『アイツ?アイツって誰だよ!?そんなチェンソー振り回すようなヤツより怖ろしいのは――』

金髪グラサン『――ハーイお疲れ様だったにゃー!』

血まみれのカボチャ頭『――そこの男子!ナイスガッツ!その意気や良し、やんな!』

男子・女子『………………はい?』

金髪グラサン『はい、っていう訳で中々の侠気を見せてくれたんだぜぃ!視聴者数も上がって10万ヒット!ありがとう少年少女!』

血まみれのカボチャ頭『ホンマやねぇ!力及ばないながらも女の子を守ろうとするその姿勢!ボクも追いかけながら泣きそうになったわ!いやマジで!』

女子『こ、これって……どういう?』

金髪グラサン『ねぇ君今どんな気持ち?勢いでコクったら実はドッキリでしたーってどんな気持ちか言ってみるがいいさ!』

血まみれのカボチャ頭『その光景はライブで絶賛配信中!全米は泣かないけど学園都市は泣きはった!』

金髪グラサン『さぁそっちの女の子もカメラに向って一緒に言おうぜぃ!』

血まみれのカボチャ頭『ナイスな男子もご一緒に!さん、にー、いち、せーのっ!』

金髪グラサン・血まみれのカボチャ頭『――ハッピー・ハロウィーーーーンッ!!!』

男子『お前らぶち殺したらああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』

プツッ



――風紀委員詰め所

佐天「――タチがワッッッッッッッッッッッッッルっ!?後味から何から全方位的に始末が悪いよ!」

佐天「なんかこうモヤっとする!この男女この後どうなるんだろうとか!恥ずかしい台詞言った男子はクラスでイジられまくるだろうし!」

初春「……という悲しい事件がですね。去年に引き続き起きてしまいまして」

佐天「え?去年って確かハッピー何とか団ってアフォがいたような……?」

初春「面子を見るにそのお二人ですね」

佐天「もうヤッちゃっていいんじゃないでしょうか。誰が許さなくてもあたしが許しますよ、動画の男子があんまりです!」

白井「……そうしたいところなのですけど、やってることがしょーもないので強権発動できないのですわ。被害者も勝手に不法侵入して盛り上がってたという引け目も」

初春「去年も言いましたが風紀委員や警備員の中にも同調者がいるらしくて、中々尻尾を掴ませないんですよ」

白井「そうですわよね。何故かガサ入れ直前に逃走を許したり、内部に敵がいますわね」

佐天「なんちゅーかアホ相手にお疲れ様です……ん?それじゃ美山君とあたしがここにいるってことは?」

美山「黒子と初春は自由に動けないし、僕一人でも潜入調査してみたい、って掛け合っているんだよ」

白井「それはダメですわ。相手がいくら愉快犯といえども”一人”でなんてとんでもありませんの!」

初春「そうですよー。美山君”一人”で行かせるだなんて、私たちにはとてもとても」

佐天「あれ?これダチョウ的などうぞどうぞの流れなのかな?」

美山「お願いだよ、佐天。僕と一緒に来てくれないかな」

佐天「あたしは構わないんですけど、つーか去年に引き続き潜入調査ですし。ただちょっと……」

初春「なんですか?」

佐天「男女カップルとしてはちょっと身長差があるからなぁ、と」

美山「佐天は中三?」

佐天「ううん、中一。去年までランドセル背負ってた。急に背が伸びちゃって」

初春「クラスの中でも高い方ですからね、佐天さんは」

白井「まぁ確かに問題点ではありますが、そこはそれ年上のお姉さんが可愛くてしょうがない後輩を無理矢理連れ回す、というシチュで」

佐天「おいおい事前に話し合いが終わってるような感じたぜ!こいつぁ逃げられないな!」

初春「はい、という訳で覚悟してインカムとカメラ付けて下さいね。いつものバレッタと同系のにしておきましたから」

佐天「それ明らかにあたし専用の装備だよね?風紀委員に入ってないのにどうしてもう用意されてるの?」

白井「首を突っ込むな、と言えば必ず突っ込むあなたが言う権利はありませんわよ。何かあったらわたくし達が突入しますから」

美山「というよりも。そっちの方がメインかもしれないよね。僕たちを送り込んでおいて別件逮捕するのが」

佐天「美山君はいい性格をしているよねぇ。あとその考えは10歳児が持っちゃダメだよ」

白井「連中はあくまでも愉快犯ですが、決して能力が低いわけではありませんの。そこは注意して下さいましね」

初春「少なくとも毎年毎年有り余る時間と暇と労力をかけて準備をし、実行に移すだけの残念な人たちとはいえ、ですからね」

佐天「初春……もしかして怒ってる?」

美山「青春の時間をプラスに遣っているのが風紀委員で、マイナスに遣っているのが彼らだからね。結局相殺しているのかな」



――三沢塾だった建物の前 夕方

佐天「――と、乗せられてきたわけだけど。思ったよりも”廃墟”って感じはないよね」

美山「取り壊しが決まっているから厳重なセキュリティは用意されていない、って初春が言っていたよ。それをつけ込まれたんだって」

佐天「……本当に無駄な労力だよね。ハッキングしてまで建物用意するんだったら、そんな事しなきゃ良いのに」

美山「まぁカップルへ対するやっかみは二の次なんじゃないかな。何か騒ぎたい気分で口実が欲しいだけとか」

佐天「うんまぁ、うん。君よりか年上の立場としては『そうだよね』って同意しなきゃいけないんだけど」

佐天「この世の中には得体の知れないHENTAIが山のように存在するんだよ。悲しいことに」

美山「いや、そんなにはいないでしょ」

佐天「分かんないよー?君のすぐ近くにも嫌がられても嫌がられてもアタックし続けるHANTAIとか、極小水着を躊躇いなく着るHENTAIとか」

佐天「同室の相手の個人情報をガッツリ調べるHENTAIとか、学園都市の闇は意外にも深い……!」

美山「……佐天はストーカーされてるの?だったら黒子に頼めば解決してくれるよ。人格も能力もこれ以上なく信じられるからね」

初春(通信)『すいませーん。こっちで白井さんが陸揚げされたカツオのように、床でビッタンビッタン跳ねてますんでそのぐらいに』

美山「何があったんだろうね」

佐天「何って言えば良心かな。まぁいいや、さっさと中入って一網打尽に――」

???「アアァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあっ!!!?」

佐天「うおっビックリした!?誰ですか急に大声出して!?」

???「あ、あ、あなた!何やってるのよ!?」

佐天「あたしの知り合いじゃないです、よね?美山君の?」

美山「うん、久しぶりランドセルが好きなおねーさん」

???「待ってくれないかしら?外でその呼び方をするのはいけないと思うの。ほら、あっちで警備員がチラチラこっち見てるから」

佐天「そりゃ大声出せば見ますよ。てかランドセル?」

美山「前にね。バスターミナルで『ランドセルはこんなに良いモノだ』って教えてくれたり。服を濡らしてしまった僕に親切にしてくれた人だね」

佐天「……へー、ほー、ふーん……?」

???「見ないで!?そんな穢れのない純粋な目で私を見ないで!」

佐天「あ、これアレか。メンドくさいヤツだ」

???「そんなことよりも!二人はどういう関係なのかしら!?疚しい所が無いというのであれば私に言ってみなさい!」

白井(通信)『そのクソアマは結標淡希。以前わたくし散々攻撃しやがった上、取っ捕まって奉仕活動中の犯罪者ですわ』

佐天「って言ってますけど。あ、ちなみにあたしらに手を出したら近くに控えている人らにフルボッコですから」

結標(???)「相変わらず白井さんは酷いわよね!折角今は(ある意味)正しいことをやってるって言うのに!」

美山「……ランドセルおねーさん、略してランねーさん悪い人だったんだ?」

結標「その略し方には悪意があるわね!作品のヘイトを一身に浴びている罪のない超カラテ・ガールみたいでね!」

佐天「てか潜入対象の前で騒ぐのはマズいです。結標さんすいません、ちょっとあたし達用事があるんで失礼しますね」

美山「ごめんよ結標。ランドセルの話はまた今度」

結標「用事って……まさかあなた達、ここに?」

佐天「あぁ噂はご存じでしたか。あまりにもタチ悪いんで捜査というか、そんな感じで」

結標「そ、そっちの少年も?」

美山「僕も関係がない訳じゃないんだ。予兆はあったのに止められなかった責任がね」

結標「じゃ、じゃあ私が手伝ってあげるわよ!二人だけじゃ心配だし!」

佐天「……って言ってますけど、どうですか?」

初春(通信)『結標さんはレベル4のテレポーター。ぶっちゃけ……あぁこれいいのかな言っちゃって』

白井(通信)『ぶっちゃけわたくしよりもより力の強い方ですわね。ただ少し問題が、というか疵(きず)が』

結標「だ、大丈夫よ!前は無理だったけど今は克服したし!それにダメだったとしてもこの子だけを逃がす分には問題はないわ!」

美山「結標もこう言ってることだし、信じてくれないかな」

結標「写影きゅん……!」

佐天「オイなんで名前知ってんだ」

結標「知り合いの金髪グラサンに頼んだのよ!ハッピー何とか団を手伝う見返りにね!悪いっ!?」

佐天「あ、すいまーん。構成員の一人を確保したんで誰か捕まえに来てください」

結標「おれは、しょうきに、もどった」

美山「人の婚約者を特に理由も無く誘拐しつつ、殺すつもりで攻撃しかけた人の台詞だね。それ」

初春(通信)『そして流石にリメイク版では「これはちょっと」と洗脳電波を喰らったことにしたんですよね』

佐天「そんな便利な能力があるんだったらピンポイントじゃなく全員に使うよね。明らかに『コイツ超裏切りそう』ってタゲ絞られてるもんね」

白井(通信)『まぁ――そこまで言うのであれば分かりましたの。結標さんを信じることにしましょう』

結標「ありがとう白井さんっ!種類は違うけど癖(へき)をこじらせた仲間よねっ!私たち!」

初春(通信)『今度暇なときに「時空系能力者はこじらせてる」って論文書いてみようかな。サンプル数二つだけど、100%だし』

佐天「まぁでもレベル4の人が二人もいるのは心強いよね。それじゃ行きましょうか」

結標「任せなさい!」

美山「そうだね。二人とも気をつけて」

結標「ありがとう写影きゅん!頑張ってくるわ――」

結標「――ってなんでよ!?どうしてこっちの女と一緒に行かなくちゃいけないのよ!?」

佐天「常識考えろ、なっ?小学生オトリ捜査に使うのもアレなんですけど、普通外すとしたらそっちでしょうが」

佐天「てかツッコミ多いな今回のあたし!上条さん帰って来て!ニートやめてツッコミ役がいないと負担がかかる!」

結標「あ、じゃあ頑張ってきて?」

佐天「分かりましたー、それじゃ一人でカップルの振りして来まーす――ってなんでですか!?一人で心霊スポット吶喊する人がいるとでも!?」

佐天「あぁまぁあたしは行きますけども!初春の都合が合わないときは単身で!」

初春(通信)『ノリツッコミが二重三重になってますね。あー、これKMJさん(仮名)が帰って来たときに席はあるかなー。残ってるかなー』

美山「まぁ結標がそこまで言うんだったら僕が行くよ」

佐天「美山君……」

美山「正直、佐天を巻き込むのは気が引けてはいたんだ。自衛能力が無い女の子を巻き込むのはどうかってね」

結標 ドヤァ

佐天「いや別にここでドヤ顔披露されましても」

美山「ただ約束して欲しい。君がどんな力があろうとも女の子だ。僕は君を守るつもりだけど、力が及ばないときには逃げてくれ」

初春(通信)『あの……ごめんね美山君?君の主人公力が高すぎて、そのポジにいる人が出づらくなっちゃうからそのぐらいに、ねっ?』

美山「初春の言っていることは分からないけど、誰だって自分という物語の主人公だよ。それは絶対に」

佐天「やめてあげて!?本当の意味で来週辺り何事もなく出て来そうなのにハードル上げるのはやめてあげて!」

白井(通信)『まぁ類人猿はどうでもいいですのよ。ちゃっちゃと乗り込んで適当に合図してくださいまし』



――旧三沢塾 塾内

結標「――こ、怖くない写影きゅん?大丈夫?」

美山「僕は大丈夫――でも、ないかな。正直オバケも怖いけど、結標がいるからなんとか」

結標「き、奇遇よねっ!私も自分が怖いわ!」

美山「……なんで?」

結標「そ、それよりも手を繋いで良いかしらねっ!?おねーさん怖くって!」

美山「僕にはテンションがダダ上がりしてるよにう見えるけど……あぁ、僕を気遣ってくれたのか。ありがとう」

結標 パシャッ、ピロリロリリーン

美山「なんで撮ったの?」

結標「誰かいた気がするのよ!尊い証拠としてね!」

初春(通信)『おいヘンタイいい加減にしろ』

美山「怖くて錯乱しているだけだと思うよ。誰だって怖いものぐらいはある」

結標「心が……!気高い純粋さに心が痛い……!」

佐天(通信)『だったらネタに走るのやめましょうよ。スマートに解決すればメル友ぐらいにはなれるかも知れませんし』

美山「僕と?話が合うとは思わないけど」

結標「大丈夫!寝る前の格好を写メしてくれるだけでお腹いっぱいだから!」

白井(通信)『もうホンッッッッッッッッッットにいい加減してしやがれこのクソテレポーター!あなた一人のお陰でどれだけ他の方が肩身の狭い思いを!』

初春(通信)『本当にやめましょうね?最近ガチで子供のフリをしてSNSに出没する性犯罪者が多いので』

美山「結標はそんなことしないよ。この間だって『ウチに来てシャワー貸すわよ?』って親切に言ってくれたもの」

白井(通信)『……終わったらお話がありますからね?逃げても世界の果てまで追いかけますわよ?』

結標「――くっ!普段の行いがまさかこんな所で出るなんて!?」

佐天(通信)『そりゃ出るんじゃないですかね。悪いことしやがってれば回り回って』

初春(通信)『別名自業自得とも言いますが』

美山「よく分からないけど今のところ異常は見当たらない。ただ少し暗くて怖い――あっ」 カチッ

白井(通信)『どうしたんですの?』

美山「僕の懐中電灯が消えたみたいだ。予備を持ってきて正解だったね」

結標「がるるるるるるるるるるる……!」

美山「――何か獣の鳴き声がする……?気をつけて!」

結標「だ、大丈夫よ?ウールだから触ってみて?」

佐天(通信)『すいません、待機してる風紀委員と警備員の方、どなたが金属バットがバールのようなものお持ちでしょうか?なんだったら斧でも良いですけど』

初春(通信)『気持ちは良ーく分かりますが自制してくださいね。流石にこの状況下でするほどHENTAIではないかと』

美山「――あ、点いた。なんだろうね、接触かな?」

結標「幽霊かもしれないわね!危険だから私から離れないで!」

佐天・初春・白井(通信)『いや、お前が危険だよ』

美山「壊れた方に刺さってるのは……折り鶴?」

白井(通信)『はい?なんでそんなものが――』

金髪グラサン「あれ結標?お前の担当はまだ早――」

ヒュンッ

美山「いま、誰かが」

結標「気のせい気のせい!暗闇だったし目の錯覚じゃないかしらねっ!?」

青髪ピアス「おっ、今日も少年連れ込んで気合い入っ――」

ヒュヒュンッ

美山「会話が。今、確かに成立していたよね」

結標「そ、そう?私は見えなかった――写影きゅんには霊感があるのよ!そうに違いないわ!」

佐天(通信)『いいからダッシュで戻って来い、なっ?』

初春(モノローグ風に)『――こうして、今年もハッピーハロウィン団の被害は最小限に留められました。つーか一階の壁にめり込んでいました』

初春(モノローグ風に)『だが!忘れてはいけない!人の心に闇がある限り、第二第三のハロウィン団が現れるであろう、ということを……!』

青ピ「つ、次はクリスマスやで!絶対にカップル共を不幸せにしたるさかいな!」

美山「いや、彼女を作ればいいじゃないか」

青ピ「え」

美山「イベントが多くなる年末はシングルが寂しいって人も多いだろう。男女関わらずどっちもだ」

美山「そりゃあ理想の彼女、彼氏というのは難しいだろうけど、おにーさんぐらい活動的で容姿が整っている男性であれば、一緒に遊ぶぐらいはできるだろう?」

美山「まずはこういう非生産的な活動をやめにして、出会いの機会を作る。そうして他人と分かりあえるようにするの以外に方法はない、とも言えるね」

結標・青ピ「……写影きゅん……!」

土御門「逃げてー!?どっちもいける人にロックオンされた美山君は逃げてー!?」



−終−



【※告知】
ハロウィン緊急企画なので今年も懲りずにSSのシチュエーションを募集しています

【誰】が【誰】へ【どんなドッキリをする】のかを明記すると、そのSSが出来るかも知れません
また「普通のハロウィンがいいなー」という方は、【誰】が【誰の家】へお菓子を貰いに行くと書いて頂ければそれなりに

なお基本的な制限は以下の通りとなっております

・とある魔術の禁書目録・超電磁砲のキャラクターのみ。含む新約・劇場版
・トリック・オア・トリートの場合は地球圏内(火星バクテリアは対象外、不明な人物はこっちで適当に設定)
・多くてもトータルで10人(話)ぐらいなので、まぁ早い者勝ちでどうぞ
・募集期間は9月中ぐらいまで?

基本的に分かればオッケーです。例として、

【神裂さん】が【上条さん】へ【主役交代ドッキリ】をする
【麦野さん】が【HAMADURA】へ【「できちゃったの……」ドッキリを敢行する】
【フレンダさん】が【フレメアさん】へお菓子を貰いに行く


みたいな感じで↓に書いておくとその内容がSS化するかもしれません
なお、あまり人が多かったら無作為に抽選となりますが、残念ながらそんな事態は一度もなく (´・ω・`)

そしてアレですね。勇者の話をしておいて勇者(性的な意味で)を出すのは心が痛い



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