Category

Counter
Access Counter

On-line Counter



Clock(trial)

ハロウィンの日2016


――ウェールズ某所 夕方

コンコンコンコン

フロリス「あーい」 ガチャッ

子供達「「「ハッピーハロウィーン!!!」」」

フロリス「ハイハイハロウィンハロウィン。性懲りもなくまた来やがったなクソガキどもめ」

フロリス「今年はクッキーとチョコ用意してやったぜ。どっちがいいんだ言ってみやがれ」

子供A「おねーちゃん、クッキーはまたジンジャー入ってるやつ?」

フロリス「おー、甘さ控えめだし健康にもいーんだぞ」

子供B「あーあれ、ばーちゃんチ行った時に作ってもらった……でもあんま好きじゃない」

フロリス「バッカアンタ何言ってんだぜ。折角作ったんだからウソでもいいから美味いって食べなよ」

フロリス「手間暇寿命かけたバーチャンのなんだから、生きてるウチに甘えとけ」

子供C「だっておねーちゃんのクッキーの方が美味しいんだもん!」

フロリス「まぁ当然だケド。負ける気がしないぜ……ってアンタら、なんだかんだ言ってチョコの包み持ってんジャンか」

子供A「だって、なぁ?」

子供B「ばーちゃんのよりは美味しいけど……ねぇ?」

フロリス「マ、イーケドさ。つーかアンタらで最後だから、ジンガークッキーも持ってけよ」

子供A「なんでー?おねーちゃん食べればいいのに」

フロリス「味見してて食い飽きた。テカ、つべこべ言わずに持ってけ、な?」

子供C「はぁい……ねぇおねーちゃん、こっちの、大きい包みは?」

フロリス「アー……イヤ別に?深い意味はナイヨ?ウン?」

子供C「――あ、分かった!ねーちゃんの彼氏――」

フロリス「殺すぞ?」

子供C「――じゃないよね、うんっ!そんな気はしてたよっ!」

子供A「(……この反応……なぁ?)」

子供B「(ねぇ?)」

フロリス「ツーカアンタら、ワタシんトコで終わりか?まだどっか貰いに行くの?」

子供B「町外れのばーちゃんち行くんだぜ!去年もいっぱいお菓子くれるんだって!」

フロリス「マジか!?ハッグの婆さま乗り気じゃねーか!」

子供A「ハッ、グ?」

フロリス「……ンデ?どんなお菓子貰えるって?」

子供C「ジンガーブレッドハウス、だっけ?だよね?」

子供A「うんっ!僕たちが入れるようなおっきなの作ろうかって言ってたよ!」

フロリス「……アンタらそれヘンゼルとグレーテルの鬼ババアそのまま……クソったれ、何やってんだかなぁ」

子供B「おねーちゃん?」

フロリス「助けるのは面倒クセーけど、見捨てて喰われたらもっと面倒クセーし……しゃーない、アンタらこっちに寄りな」

子供A「うん」

フロリス「あー……『炭と煙、消炎と赤、サンドリヨンの護人よ来たれ』」

フロリス「『汝は声高らかに謳うは円卓の騎士が請い願う』」

フロリス「『我が懐にジンガークッキー、彼の善良なる対価を糧に勤め上げんと欲す』」

フロリス「『いざその目で竈を冷やせ――”灰の目”よ』」

シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ……

フロリス チュッ、チュッ、チュッ

パシャッ、ピロリロリーン

子供達「……」

フロリス「――ハーイこれでまぁ、何とかなんじゃね?」

フロリス「つーかもう知らん。婆さまに攫われてもワタシ関知しないからな、ゼッタイだゾ!」

子供A「なんか分かんないけど、ありがとう?」

フロリス「あーもういけいけ。つーか来年は来るな、用意すんのも大変だからな」

子供B「ありがとうおねーちゃん!また来年ね!」

フロリス「いや、だから」

子供C「またねーーっ!」

フロリス「……はぁ、いっか。追い返すのも面倒クセーし――」

上条「……」

フロリス「――ってなにやってんだジャパニーズ!?居るんだったら声かけろよ!」

上条「……」

フロリス「アン?何か喋れよ」

上条「……なぁ、フロリス。俺達って友達だよな?」

フロリス「ンー……マァ、そう、かな?そうだな」

上条「うん、だからえっと……言いふらすつもりはないから!安心してくれよなっ!」

フロリス「Hey(オイ)アンタ、これっぽっちも安心出来ない流れになって来やがったな?ナンダコレ?ナニ言ってんの?」

上条「分かる!ある意味男のロマンだとは思うから!薄い本でも結構あるし!」

フロリス「更にカオスになって来やがったな、つまり?」

上条「おねショ×って憧れるよね?」

フロリス「よし、戦争だぜ」

上条「待ってくれよっ!?だから玄関脇の壺振り上げようとしないでっ!?てか去年もこんな感じだったな!」

フロリス「てか誰がシ×タ好きだって話になった!?ワタシはノーマルだし!」

上条「いやでもキスしてなかった?」

フロリス「ほっぺたにだ!つーかワタシらの文化圏では挨拶だし!そもそも音だけ!基本は!」

上条「え、そうなの?」

フロリス「いちいちヤッてたら口紅で大変な事になんだろ!?だから基本、親愛のキスはほっぺにつけて、音出すだけなんだよ!」

上条「な、なんだ。てっきり俺はフロリスさんがそっちの趣味を持ってるもんだとばかり」

フロリス「人を恥女扱いすんじゃねー」

上条「っていうか、ここじゃないどこかで俺にキスしてなかったっけ?」

フロリス「……」

上条「……」

フロリス「し、親愛的な意味だし!ッテイウカ男女間でも良くある事だしぃ!」

上条「説明食い違ってんぞ」

フロリス「あと今さっきケータイの写メ音しなかったか?動揺してる訳に撮ってなかったカ?あ?」

上条「――ま、それはともかくハッピーハロウィーーーーン!お菓子下さい!」

フロリス「……なんでアンタは毎年毎年タカり来てんだか……」

上条「勢い、かな?」

フロリス「死ね、取り敢えず死ね――ホラよ」 ヒョイッ

上条「って危なっ!?投げるなよ!」

フロリス「最後に一個だけ余ってた残りだぜ。良かったな」

上条「あぁありがとう……うん?」

フロリス「な、なんだよ」

上条「これ、今さっきの子供達へ配ってた包みより、一回りぐらい大きくないか?」

フロリス「あぁもうコイツはショーモナイ事に拘るかと思えば、気づいてほしくない所に気づきやがって……!」

上条「あ、じゃ一枚もらって……もぐもぐ」

フロリス「ど、ドーヨ?美味しいか?」

上条「やっぱ俺の方が美味く作れるわ」

フロリス「J×p, Go Home!!!」



――静止衛星上

天埜「……」

天埜「……天網恢々にして漏らさず、とは言うけど、そんな便利なシステムあったら良かったんだが」

天埜「こうやって”天”から全てを見ていると思ってはいるが、実際に何も見えちゃいないのと大差ないわけで」

天埜「電子の網がもう少しだけ人寄りになってくれたら、楽しくもありそうだ。だが――」

天埜「――今日は定期シャトルの日か。いや最新の雑誌は電子版でリアルタイムで読めるがね」

天埜「流石に服と食べ物ばかりはそう言ってもいられないし」

天埜「2016年秋の最新モード十二単!雲川に無理言って良かった!」

天埜「あの少年に貸しを作っておいて良かった……まぁ、不幸を喜ぶのはどうかと思うが――」

天埜「さて、コンテナをメインフレームへ移動して、開ける――」

上条「――ハッピーハロウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

天埜「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

上条「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ☆」

天埜「ななななななななななななななんで!?ナンデ上条当麻がここに!?」

上条「あぁいや無茶振り来たから、うん」

天埜「無理だって!?人工衛星へ!生身の人間が!物資用コンテナに入ってくる意味が分からない!」

上条「そんな事よりもお菓子くれよ。出来れば暖かい飲み物も」

天埜「コンテナ内は氷点下になってる筈だし、そのレベルで乗り切れる訳がないんだけど……はっ!?」

上条「どしたん?」

天埜「これはもしや――貞操の危機っ!?」

上条「人を発情期の犬みたいに言うなや」

天埜「密室で!若い男女が二人っきりだし!」

上条「だったら先進国は人口減少で困ってねぇよ。男女が二人っきりになるシチュがどんだけあると思ってんだ」

天埜「ここには法も何もないんだぞ!?」

上条「地球外だから……そうなんかな?」

天埜「私のの身を守るものと言ったら、いざという時の自決用の薬しか……!」

上条「覚悟が重いよ!?俺はただ雲川先輩に言われて来ただけだからな!」

天埜「な、なんで?」

上条「『あのアマにカマして来い☆』って」

天埜「やっぱり!」

上条「違うつってんだろ。俺がそこまでアクティブだったら、既に誰かのルート決定してるわ!自分で言っててどうかと思うが!」



――

天埜「お菓子……あげたら何もしない?帰ってくれる……?」

上条「あからさまに警戒してるが……しないしない、なにもしないから」

天埜「私、ずっともう生身の人と会ってないし……」

上条「筋金入りのニートか。ご両親が泣いているぞ!」

天埜「いやそんな楽しい話じゃないが……お菓子というか、宇宙食でいいかな?」

上条「……マジでっ!?宇宙食あるのっ!?」

天埜「だから宇宙だ、ここは」

上条「なんかアレだろ!?ビニールパックに入ったカッチカチにヤツだったり、歯磨き粉チューブみたいの啜るんだよなぁっ!?」

上条「昔見た知育マンガで憧れたアレが!ついに!」

天埜「たこ焼きとせんべい、どっちがいい?」

上条「絶望した!便利になりすぎてる宇宙食に絶望したっ!」

天埜「そんな前時代的なイメージの宇宙食を期待されても、困るんだが」

上条「てかマジで?ラーメンあるの?せんべいも?」

天埜「ある。フリーズドライの米や缶詰が基本だけど、それだけだとメンタルが保たないから」

天埜「レトルトパウチで食べられるお好み焼きとかカレー、カップヌードルもあったりする」

上条「ヘー……まぁ大変だからなぁ」

天埜「粉が飛び散ったら大惨事になりかねないから、あまり飛び散る系のお菓子はダメだけど」

上条「苦労してんな」

天埜「まぁ仕事だし――で、何食べたい?」

上条「出来れば『宇宙食!』って感じがするのがいいな!」

天埜「いや、ないかな」

上条「……ないの?」

天埜「例えばカップラーメンはだな、こう、透明なレトルトパウチにチューブでお湯を注ぐ」 ジューッ

上条「ていうか言うか少なくね、特にスープ」

天埜「飛び散るからな。このまま三分待って……袋を破り」

天埜「この塊を、フォークでくるくる巻いて――あーん」

上条「俺?」

天埜「アンタ以外に誰も居ないだろう」

上条「いやホラ、ここの隙間とか」

天埜「やめてくれよそういうホラーは!?私はこここここここに残るんだからなっ!?」

上条「動揺しすぎだろ……あーん」

天埜「はい、っと」 ポイッ

上条「熱っ!?……くもねぇな、普通だ」

天埜「最初の段階で70度だからな。それにスープも殆ど無い」

上条「美味しいは美味しいし、味が辛目なのも分かるが……普通、だな?」

天埜「ていうかJAXA系の博物館で売ってるし、通販でも買えるは買える」

上条「……」

天埜「な、なんだね」

上条「やっぱイタズラしかないかー……」

天埜「おっとそれ以上近寄ってみろ!ていうか少しでも乱暴したら大変な事になるんだからな!」

上条「いやだからしないって」

天埜「私はもう忘れるぐらい前からここにいるんだ!乱暴したらポキポキって折れるんだぞ!」

上条「それもう大丈夫じゃねぇな!?」

天埜「心配は要らない!地上になんか帰るつもりはないから!」 キリッ

上条「……あぁうん、お前も雲川先輩の知り合いなんだもんな、知ってた……!」

上条「……ていうかさ、一つ聞いていい?」

天埜「い、いたずらしないんだったら!」

上条「しないしない。ふと思ったんだけども、俺どうやって帰るの?」

天埜「来たシャトルがあるだろう?」

上条「俺一人で運転して?」

天埜「……来る前に、自動操縦の仕方とか教わった、だ、ろ……?」

上条「……」

天埜「……」

上条「――なぁ」

天埜「なんだよ」

上条「たまには里帰り、必要じゃね?」

天埜「私を巻き込む!?勝手に来たくせに無茶を言いすぎるだろっ!?」

上条「あ、ほら先輩も『会って落とし前つけたい』って言ってたし」

天埜「それ絶対好意的な話じゃないからな!」




――学園都市 某スタジオ

〜♪〜

鳴護「――はいっ、三澤紗千香ちゃんのニューシングル『Endless Nightmare』でしたー」

鳴護「いやぁいい曲でしたねー、心が洗われるような感じで」

鳴護「最近ラジオ多めですが、紗千香ちゃんには声優のお仕事でも頑張ってほしいですねっ!」

鳴護「さて『ARISAのネットレイディオを聴くじゃんね!』はまだまだ続きますよー、引き続きチャンネルはそのままで」

鳴護「お便りとメールもじゃんじゃん送って下さ――えっとブースの外から連絡が入りましたよ、っと?」

鳴護「えーとなになに、『もうすぐハロウィンなので特別ゲストです』だ、そうです。へーゲストさん――」

鳴護「って今!?今日来てるんですか!?あたし聞いてない――あ、サプライズ?」

鳴護「知ってる人……うーん誰かな?最近お仕事でご一緒させて頂いた――違うの?」

鳴護「レコード会社の担当さん?新しい企画やりますよーみたいな?……のも、違う?」

鳴護「あー……ちょっと分かんないかな。降参です、わかりませんっ」

鳴護「……イジワルなのはそっちだと思うけど……ブースに?入ってきて回答?」

鳴護「それじゃサプライズゲストさんの登場でーすっ!どうぞーパチパチパチパチっ!」

上条「――ハッピーハロウィーーーン!トリックオアトリートっ!」

上条「お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞっ☆」

鳴護「誰っ!?ねぇ誰当麻君呼んだのっ!?」

上条「いやなんか家行こうと思ったらジャーマネさんに見つかって、『あぁ今アリサさんネットラジオのオンエア中で』」

鳴護「そう、だよね。そこはそう言うよ」

上条「『せっかくなんで出ます?』ってノリで?」

鳴護「当麻君当麻君、あたし的にはパッチ来いなんだけども、あたしんち向かってるって生放送で言うのは、うんっ!」

鳴護「ていうか”私”のアイドル的な立場もあるから!言って良い事と悪い事があると思うよっ!」

上条「え?去年のハロウィンん時にも会いに行ったよな?」

鳴護「それ以上言うと明日の学内芸能ゴシップ紙の一面を飾っちゃうから!当麻君もそのぐらいに!」

上条「あ、今マネージャーの人からカンペ出てる。『これはハロウィンのドッキリ企画です』だって」

鳴護「なので実際に存在するARISAとはなんの関係もありません!フィクションです!」

上条「てか俺もマネージャーみたいな事やってたし、イベントの手伝いもしてたから別に隠すような事は何も」

鳴護「……うん、それはそれであたしのプライドってゆうか、女子力がね。傷つくって言うかな」

上条「――はいっ、て言う訳で『ARISAのネットレイディオを聴くじゃんね!』はまだまだ続きまーす」

上条「メール宛先は”arisa-kiyase@gakuentoshi.com”までお寄せ下さい!」

鳴護「当麻君その台詞あたしの」

上条「今日のテーマは『ハロウィン』!リスナーの皆さんからのハロウインにまつわる体験談や思い出話」

上条「あとは今年のハロウィンの予定なんかも募集してます」

鳴護「たまーに当麻君は無駄な才能を発揮するよね?飛び込みのラジオを仕切り出すのってどうなのかな?ねぇ?」



――某スタジオ

上条「引き続き『阿部○の声優百貨店』をお送りしておりまーす」

鳴護「当麻君、あたしそろそろ怒っていいんだよね?殴ってでも止めた方がいいんだよね?」

上条「今日のテーマはハロウィンって事なんですけど、ARISAさんは何かあります?」

鳴護「また取っつきづらい質問が来たけど……うーん、そうだなぁ」

上条「つーか数年前までは都市部で仮装してる人なんてなかったよな?」

鳴護「私はイベントでね、うん。かぼちゃドレスを着せられたりはしてたよ。グラビアも」

上条「アイドルスゲーなぁ。そんな所からハロウィンの認知度上げてったんかなぁ」

鳴護「後は……そうだなぁ、アイドル仲間から聞いたお話で良かったら」

上条「お、聞きたい聞きたい。業界の悪い話ってヤツですねっ!」

鳴護「悪――く、はないかな?ちょっと凹むってだけで」

上条「凹む?」

鳴護「えっとね、ハロウィンってタイトルなのにハロウィンの時期には絶対出ないパチス×シリーズ、知ってるかな?」

上条「出せよ!?ハロウィンって名前着いてんだったらハロウィンに出せばいいじゃない!?」」

鳴護「私もよく知んないんだけど、”もえすろ”?とかって言って、大きなお友達に大人気なんだって」

上条「あるらしいなぁ。俺も知らんけど」

鳴護「それで中の人は……ま、まぁ置いておくとして!新作発表のイベントを開いたんだよ!」

上条「資金あんなー、っていうかそのイベント開けるのも俺らのお布施のお陰じゃ……?」

鳴護「で、その時にキャラクターの中の人――の、都合がつかなかったらしくってね、こうアイドルへお声がかかったのね」

上条「オチ読めちゃったんですけど、やーだー」

鳴護「……まぁ、それでね、ファンの人が見たのは『誰この人?』って声優さんでもなく、かといってコスプレが似合うでもないアイドルさんってね……」

鳴護「しかもね、事前にね『サプライズゲストがあります!』って聞かされて『○っちゃん来ちゃう!?来ちゃうの!?』って思ってたファンさん達が」

鳴護「目に見えて萎れるぐらいにテンションだだ下がりっていう……」
(※ほぼ実話です)

上条「いつの間にか俺達がご迷惑をすいまっせんでしたっ……!」

鳴護「ていうかコスプレが似合う人は似合うけど!急遽セッティングされたペラい衣装渡されても困るよっ!」

上条「メーカー側も誰得だって話だよなー……いや、俺は知らないが。未成年だしさ」

鳴護「二次元半で活躍してる人と三次元で頑張ってる人を一緒にしちゃいけないと思うなー、うん」

上条「それ言ったらARISAも前者に含まれると思う――あぁそうだ、悪い。ちょっと顔上げてくれるか?」

鳴護「うん、なに――」

チュッ

鳴護「」

上条「お菓子をくれなきゃイタズラしたぞ!っていうかオンエア中にごめんな、なんかすっかり忘れててさ」

上条「……アリサ?」

鳴護「ひゃいっ!?」

上条「どったん?」

鳴護「ふつつか者ですか今後とも宜しくお願いしますっ!」

上条「話が飛躍しすぎじゃないですかコノヤロー。っていうかほっぺくっつけて音鳴らしただけだよ!イギリス的な挨拶だ!」

鳴護「わたし家は小さくてもいいから一戸建てがいいなっ!お庭に白い犬が飼えるような!」

上条「それ都会じゃ結構キツくないか?ローン考えて頭金が2,000として、残りが6,000ぐらい?」

鳴護「大丈夫!私が稼ぐから当麻君は主夫してもらえたら戦えるよっ!」

上条「個人的にはちょっと考え――」

シャットアウラ「――よし、殺す!」

上条「いや違うんですよ!これはきっと謎の力が働いてフロリスが俺をハメたとしか考えられない、そう――」

上条「――敵のまじゅ――べふっ!?」 バスッ

シャットアウラ「取り敢えず、死ね。なっ?」

鳴護「待ってお姉ちゃん!当麻君は悪くないの!」

シャットアウラ「なんだと!?」

上条「ていうかARISAさんそれ多分フラグだから!悪い方の!」

鳴護「悪いのはあたしだから!当麻君を責めるんだったらあたしを!」

――プツッ

マネージャー「『ARISAのネットレイディオを聴くじゃんね!』はTATARAコーポレーションの提供でお伝えしました」

マネージャー「なお、今回の放送はドラマCDの宣伝としてドッキリ仕立てでお送り致しました。どうか製品版もご購入ください」
(※上条さん一回休み)



――ロンドン某所 騎士派独身寮 夜

騎士団長「……ふう、今日も疲れた」

騎士団長「朝一で叩き起こされてキャーリサ様の後始末……」

騎士団長「午前中に書類仕事をしていたらキャーリサ様がセクハラしようとした外国の大使をぶん殴って呼び出され……」

騎士団長「ランチを食べていたらキャーリサ様が『和食が食べたい』と連れ出され……」

騎士団長「午後は午後で大使の始末――もとい、心神喪失で本国へ帰還した案件で、訓練が出来なかった……」

騎士団長「夕方はババアに呼ばれ、『お前は一体キャーリサにどんな教育をしているんだ?』と延々説教……」

騎士団長「……」

騎士団長「……おや?私はキャーリサ様の責任者ではなかったはずだが?」

騎士団長「というよりもクーデター未遂にも関わらず、軟禁してニート生活をエンジョイされているキャーリサ様と違い」

騎士団長「私には部下の世話やら他の派閥の折衝、本来の任務である護衛が出来ない……!」

騎士団長「……大山鳴動してババを引いたのは私、と、あぁもう一人居たか」

騎士団長「一人だけ格好つけて、結局は逃げ出して取っ捕まったバカが……」

騎士団長「……まぁ、ヴィリアン様は降家、というかどちらかの家の養子へ入るとして、オルウェルは騎士位か……」

騎士団長「そう考えるとザマーミロ的な反面、置いていかれた感がしないでもない……」

騎士団長「……」

騎士団長「……愛が欲しい……」

ドンドン、ドンドンドンドンッ!!!

騎士団長「――どうした騒がしい!」

騎士「ハッ!お休みのところ申し訳ありません騎士団長!」

騎士団長「……まぁ、急ぎなのも分かるし、大体何の用なのかも分かるが」

騎士「あ、いえキャーリサ王女殿下ではなく、もっとですね……」

騎士団長「なんだ?歯切れが悪いな」

騎士「寮の入り口の方にですね、騎士団長を訪ねてこられた方がいらっしゃいまして!」

騎士団長「私に?こんな遅く――とは、言えないが、酔っ払いが出歩く自体なのに客だと?」

騎士「はぁ、確かにそうではありますし、レディが出歩くには少々遅いかと」

騎士団長「……なんだと?」

騎士「ですので寮の中へお通しするのも憚られましたので、応接間へとご案内いたしましたっ!」

騎士団長「待て、レディ?それは広義のレディという意味ではないのだな?」

騎士団長「具体的にはババアと呼ぶのが面倒になって、レディで一括りにしているわけでないと?」

騎士「騎士団長の仰る意味はサッパリ分かりませんが!狭義のレディで合ってるかと存じますっ!サーッ!」

騎士団長「やや夜も更けているのに……誰だ?」

騎士「黒髪の少女でした!堕天使的なコスプレした!」

騎士団長「Oh......堕天使エロメイドが……ッ!!!」

騎士「……団長?」

騎士団長「それは――ミス神裂かっ!?」

騎士「どちらで?」

騎士団長「いや君には関係無い。今から私が行くと――あぁいやそれも結構だ、直接行こう!」

騎士「あ、ではお茶でも」

騎士団長「それも結構だ!というかムサい男共を近づけないように頼む!」

騎士「いや、ですが真摯たる者が」

騎士団長「私の命がきけないのか!」

騎士「賜りましたっ、サーっ!では実行に移します!」

パタンッ

騎士団長「……」

騎士団長「――春が、来た……ッ!!!」

騎士団長「ダメたと思っていたのに!この私にも春が!!!」

騎士団長「オリエンタリズム溢れる恋人が……ッ!!!



――ロンドン某所 騎士派独身寮 応接間

神裂?「かんざきさんじゅうはっさいだと思った?――」

レッサー(神裂?)「――残念っ!エロ可愛いレッサーちゃんでしたっ!」

騎士団長「おい誰か!私の部屋からロングソードを持ってきてくれ!」

レッサー「どうどうどうどう、待ちましょうかジェントル。私の知ってる紳士は婦女子に剣を向けませんが!」

騎士団長「……分かってはいた……!あの騎士がニヤニヤ笑いしやがったから、何となくこんな展開になるとは分かっていたさ!」

騎士団長「――が、しかしものは考えようだと言える」

レッサー「その心は?」

騎士団長「慎み深いミス神裂はこのような夜更けに出歩かないのだよ!」

レッサー「教会派、『必要悪の教会』の聖人でヨゴレ中のヨゴレ仕事する相手に何言ってんですかアンタ」

レッサー「そりゃあ正しい意味での汚れはないでしょうが、ヨゴレ仕事は通常業務課と思いますよ」

レッサー「あとあのエロい格好した聖人さんは同じ恥女としては中々どうしてヤな相手かと」

騎士団長「……いや君も堕天使だか。それも扇情的な」

レッサー「にゃっはっはっはっー。やですよぉ私みたいなレデイそうそういないじゃないですかー」

騎士団長「ミス神裂……嫌われてはいないと思うんだがなぁ」

レッサー「LikeだけどLoveじゃない。よくあるっちゃありますけどねぇ」

騎士団長「ミス神裂は極東の島国の少年に懸想しているらしいのだが……」

レッサー「主人公補正ですねっ!流石はK条さん(仮性)!」

騎士団長「彼の名誉のために言っておくが、そこは仮名ではないのかな?」

レッサー「ちなみに差し支えなければ、どんなアプローチしたのか伺っても?」

騎士団長「そんな人に軽々しく話すような事じゃ」

レッサー「あ、じゃあいいです。そんなに興味ないですから」

騎士団長「――まずは、アレだな。足繁く彼女の住む寮に通ったな」

レッサー「言たくてしょうがなかったんですね分かります」

レッサー「でもまぁマメなのはいいと思いますよ?なんだかんだ言って『あ、私のために時間を割いてくれる!』は悪くないかと

騎士団長「次にバラの花束をプレゼントしてみたり」

レッサー「重いっ!愛が重すぎますよっ!?」

騎士団長「いや……好意が伝わってなかったのかな、と」

レッサー「露骨すぎますってば!てか引くぐらい伝わりすぎますっ!」

レッサー「大体バラの花言葉って知ってんですか?イヤらしいっ!」

騎士団長「確か赤いバラは『愛情』、黄色いバラは『相思相愛』だった気がするが?」

レッサー「それはあくまでもイングランド限定でしょ?日本だと意味合いが違うんですな」

騎士団長「そうなのかっ!?なら私が送ったバラの花言葉とはなんだったんだ!?」

レッサー「『お×××くぱぁ』です」

騎士団長「オーイ誰か!この際鈍器のようなものでもいいから早く持ってきてくれ!」

レッサー「信じてもらえないなんて!?」

騎士団長「……じゃあ聞くが、一体あのバラのどこをどうやったらその卑猥な花言葉になるんだ……?」

レッサー「待って下さい!これにはちゃんとした謂れがあるんですから!名は体を表すといいましょう!?

騎士団長「ふむ」

レッサー「バラにはですね、こう、美しいツボミが大輪の花を咲かせますよね?つまり!」

騎士団長「つまり?」

レッサー「つまりこれは『花弁が開いたように、くぱぁしたいですね』って花言葉なんですよ!日本では!」

騎士団長「それ、大抵の被子植物の生態に見られるんだが……?」

レッサー「黙らっしゃい!そんな事だからプリンス・オブ・ウェールズが墜とされたんですよ!現実見ないと!」

騎士団長「否定は出来ないが……そうかな?」

レッサー「私に任せて下さい!天使的なレッサーちゃんに任せてもらえればかんざきさんじゅうはっさいさんとの間を取り持って見せましょうや!」

騎士団長「今君は天使ではなく堕天使のコスプレをしているんだが……」

レッサー「サーと呼びなさいサーと!」

騎士団長「イエッサー!」

レッサー「ではまずアドバイスを始める前に一つ聞きたい!」

騎士団長「サーイエッサー!」

レッサー「……なんで私騎士派の寮にいるんです?」

騎士団長「うん、私もそう思う。っていうかお菓子上げるから帰ってくれないか?」



――イングランド某所

ウレアパディー「――思ったのだけど」

ソーズティ「……なに、姉さん?」 ジューッ

ウレアパディー「オチのない話をする人って居るわよね?」

ソーズティ「居るね」 カッカッカッカッ

ウレアパディー「……」

ソーズティ「……」

ウレアパディー「いえ、特にオチはないのだけど」

ソーズティ「姉さん、ごめんね?今ちょっと料理しているところだから、黙ってて貰っていいかな?」

ソーズティ「今まさに私の手の届くところに刃物があって、手が滑りそうになるんだ。色々と」

ウレアパディー「それはそれとして」

ソーズティ「うん」 ザクザクザクザクッ

ウレアパディー「街を歩いていたら、こう、カボチャがあったのよ」

ソーズティ「カボチャ……あぁハロウィンの?」

ウレアパディー「他にもゴーストの格好したお人形があったり、クワガタアフロの男の人が居たり」

ソーズティ「ハロウィンだね。アフロは違う」

ウレアパディー「ハロウィン?」

ソーズティ「十字教圏の……えっと、秋祭り、でしょうか?」

ウレアパディー「ふぅん?」

ソーズティ「子供達が仮装して、他の家へお菓子を貰いに行ったり、みたいな?」

ソーズティ「ローマ正教では禁止されているのですけど、イギリス清教ではしたい人は勝手にするようで――」

ウレアパディー「オチは?」

ソーズティ「えっ?」

ウレアパディー「その話の、オチは?」

ソーズティ「あの、姉さん?もしかしてさっきのオチのない話の件、怒ってたのかな?」

ソーズティ「いつもと同じ死んだ魚っぽい目をしていて、私には気付けなかっただけで」

ウレアパディー「答えは天空から来るブラフマーの道標に刻まれているわ」

ソーズティ「だからそのフワっとした返しは何っ!?都合悪くなったらネタ引っ張るようになったよねっ!?」

ウレアパディー「つまり――ハロウィンを一言で表せば」

ソーズティ「うん」

ウレアパディー「『オチのなくてつまらない話』って事になるわね」

ソーズティ「お姉ちゃんそれはちょっと、うん全世界のハロウィンを楽しみにしている子供達に謝った方がいいかなって思うよ」

ウレアパディー「じゃあ――ハロウィンを、しましょう」

ソーズティ「な、なんで?」

ウレアパディー「えっと、Halloweenって正確にはね」

ソーズティ「そんな綺麗な発音されても!そして知ってるじゃないかハロウィン!パレンタインとの時で同じで!」

ウレアパディー「つまり私が何を言いたかったかと言えば、そうね……」

ウレアパディー「声優雑誌を見たらセーラー服着て映ってるのは、本業と離れていると思うのよ」

ソーズティ「姉さんあっちこっちへ飛び火させるのはやめてくれないかな?言いたい事は理解出来るけど」

ソーズティ「そこらホラ!オチの無い話をもう一回振ってくる所じゃないの!?回数的に!?」

ウレアパディー「ねぇ、ソーズティ」

ソーズティ「な、なに」

ウレアパディー「私、お腹が空いたのだけど」

ソーズティ「お姉ちゃん段々ボケ老人みたいになってるよ?ボケ方がフリーダムすぎるからね?」

ウレアパディー「『柵中のブラックバーン・バッカニア(艦上攻撃機)』と呼ばれている人に会ってみたいのだけど」

ソーズディ「例えが、分からない……!」

ウレアパディー「……ごめんね、ソーズティ。私は駄目な姉だと分かっているの」

ソーズティ「……お姉ちゃん」

ウレアパディー「こう、結社によって改造された私は満足に家事も出来ない体に……」

ソーズティ「それ、姉さんがやらないだけだけよね?やろうとしないだけだよね?」

ウレアパディー「だから――そう、だから!せめてたった一人の妹であるあなたの幸せを願っているの……!」

ソーズティ「……ありがとう、お姉ちゃん」

ウレアパディー「という訳でね、ハロウィンをしようと思うの」

ソーズティ「文脈がgdgdだよね姉さん?私の幸せとハロウィンがしたいのって決してイコールではないよね?繋げていいもんでもないよね?」

ウレアパディー「そう?私はきちんと考えているのよ」

ソーズティ「えっと……どう?」

ウレアパディー「確かに、『褐色キャラで信念がいい』クロムウェルさんも分かるけど、どうせだったら私も同じじゃないかしら?」

ソーズティ「姉さん人気投票のコメントを持ってきてネタにするのは良くないと思うんだ、うん。ていうか私達は対象外だから!」

ウレアパディー「でも最初からいるのにコメント数ゼロとか、管理人以外に誰もコメントを残さないキャラって複雑よね……」

ソーズティ「姉さんメタネタもいい加減にしないと」

ウレアパディー「あなたも、ね。同じ褐色系でキャラ立ててる以上、目立たなくてはダメよ?」

ソーズティ「よく分からないけど分かったよ姉さん。ハロウィンはやる事にするから」

ソーズティ「だからこれ以上私のSAN値を下げるような発言は慎んで?割と本気で」



――数日後

上条「えーっと、ここがイギリスへ逃走中のソーズティん家かー」

上条「招待状貰ったのはいいんだが、つーか今年はイギリス回るの多いな!いいんだけども!」

上条「さて――」

ピンポーン

ウレアパディー『――はーい、どうぞ』

ソーズティ『ちょっと待て姉さん!これは流石に――』

上条「ハッピーハロウィーーーーーーーーー………………ン?」

ソーズティ モジモジ

ウレアパディー「いらっしゃい少年。歓迎するわ」

上条「おぉ!珍しく歓迎してもらえ……た?」

ウレアパディー「さっきからどうしたのかしら?疑問系になっているのだけど」

上条「あーっと……だな、ハロウィンだよね?」

ウレアパディー「そうね、私達はハロウィンの仮装をしているわ」

上条「察するにソーズティがドラキュラ?んでお前がジャックランタン?」

ウレアパディー「そうね」

上条「まぁ可愛らしいっちゃ可愛らしいんだけど……ちょっとな、疑問に思った事が」

ウレアパディー「言ってみて」

上条「二人ともマント……外套?装備してるのは分かる。ドン○で売ってそうな、ペラい感じのコスプレグッズだから」

ウレアパディー「ハン○よ?」

ソーズティ「姉さん世界設定は守って!ここイギリスだからな!」

上条「ただその……マントの下からだな、こう――」

上条「肌色っつーか、褐色色?の何かが見えるのは、なんで?」

ウレアパディー「全裸だからよ?」

上条「おいテメーいい笑顔で言い切りやがったなっありがとうございますっ!!!」

ソーズティ「そのツッコミもおかしい」

上条「てかなんだ!?ドッキリさせるつもりがこっちがドッキリだよ!?」

ウレアパディー「私、考えたのよ」

上条「お、おう」

ウレアパディー「オチの無い話って必要かしら、って」

上条「意味が分からない!文脈も繋がってない!間も独特だよ!」

ソーズティ「……ごめん。何かもう、お姉ちゃんが、うん」

ウレアパディー「え?ハロウィンってこういう行事じゃないの?」

ウレアパディー「クリスマスと同じでカップルが何かにつけて性行為をする日じゃ?」

上条「言葉を選べ、なっ?もう少しでいいから、もう少しだけでいいから!」

ウレアパディー「例の術式の後遺症で、私は満足に家事も出来ない体になったわ……」

上条「え、マジ話なの!?ネタじゃなくて!?」

ソーズティ「そんな事実は、ない」

ウレアパディー「だからこう、一生養ってくれる旦那様が居れば楽に生きていけると思うの」

上条「お前され全力で『駄目人間です』つってんてのと同じだからな?」

ウレアパディー「あら、こういうの嫌い?」

上条「超好きです」

ソーズティ「おい貴様」

ウレアパディー「つまり……そうね、なんて言えばいいのかしら」

ウレアパディー「そう――」

上条・ソーズティ「……」

ウレアパディー「特にオチはないわね」

上条「……なぁ、お前のねーちゃん大丈夫か?改造されてから大分変になってんぞ?」

ソーズティ「……心配はいらない。前からこんな風だった……!」



――スコットランド某所 とある一室

ベイロープ「……第二回のブリテン離脱投票をする、と?」

男1「あぁそうだ。今度は負けない、今度こそ負けはしない!」

男2「仰る通りですな!イングランドがEU離脱すると決まった今、我々が残留すれば独立派が指示されるでしょうぞ!」

ベイロープ「またそのような下らない事を……」

男2「下らない、だと!?我らの悲願へ対してあまりな仰りようですぞ!」

ベイロープ「下らないと言わざるを得ないでしよう?一度否定されたものを二年も経っていないに持ち出すなどと」

ベイロープ「自分達の提案が採用されるまで泣き喚くなど、あまりにも下らない真似は止して頂きたいのですが」

男2「この……小娘がっ!」

ベイロープ「立場上年増扱いが多いのですが、叔父上にそう言って貰えるならば嬉しいだけですけど?」

男3「お待ちを。どうかお二人とも落ち着き召されよ」

ベイロープ「私は最初から落ち着いております」

男2「落ち着いてなといられるか!この女は母国などどうなってもいいと思っているのだぞ!」

ベイロープ「わたしが言ってもいない事を察するなど、叔父上は素晴らしい慧眼をもってらっしゃる」

ベイロープ「ですが小娘相手に使うのではなく、実家へ戻っている叔母上を察された方が宜しかろうと」

男2「……!」

男3「ですからお待ちを!お二人とも口が過ぎますぞ!」

ベイロープ「スコットランドを愛しているから独立を支持する――それはいいでしょう。否定はしません」

ベイロープ「しかしながら独立に反対だから母国を愛していない、などと決めつけないで頂きたい」

男3「そうでしょうともそうでしょうとも!お嬢様も、そしてここに集う皆様も母国を愛してらっしゃる!その思いは同じの筈!」

ベイロープ「……そうかしら?あなた方とは違う気がしますけれどね」

男3「ですが分かって頂きたい!我が母国スコットランドの虐げられた歴史を!」

男3「何百年とイングランドのメシマズ野郎共に搾取されてきた歴史を!お嬢様はお忘れになったのでしょうかっ!?」

ベイロープ「搾取ねぇ?」

男3「その悲願を果たすため!我らの代で宿願が叶うかという所なのですよ!」

ベイロープ「ですからそれは!」

男2「そのためにであれば!余所者からはどんなに笑われようが独立運動を――」

ガチャッ

上条「――ハッピーハロウィーーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!」

ベイロープ・男1・2・3「」

上条「トリック・オア・トリート!お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞっ!あ、エッタな意味じゃないよ!レッサーさんの出番は無いからな!」

ベイロープ「帰りなさい、ていうか帰って」

上条「おっ、ベイロープさん今年もドレス着てんの?つーかお前んとこのハロウィン気合い入ってんなー」

ベイロープ「ていうか!どうやって入った来たのよ!?誰が通したのっ!?」

上条「いやセバスチャンさんがだな」

ベイロープ「そんな執事いないわよ?ていうかなんで日本人は老家令を見るとセバス系の名前を期待する?」

上条「『お嬢様とずるずるべたべたナメクジ野郎共は二階におりますよ』って言ってたけど?」

ベイロープ「私の知ってる執事ですらなかったわ!ていうか誰!?本当に我が家にそんな人居たか!?」

上条「『では暫しお待ちを!私がただ今ちょっくら襲撃かけてあの姫騎士()気取り攫ってきちゃいまゲフッ!?』」

ベイロープ「レッサーも居るのね?そして暴走する前に止めたのね?良くやった!」

男3「あの、そちらは……?」

ベイロープ「えぇっとね、通りすがりみたいな?」

上条「おい失礼だろ!オッサン可哀想じゃないか!」

男2「いや俺違うだろ。どう見てもお前の目を言ってただろ」

ベイロープ「……だから、帰って、ねっ?表のブレーキ未登載のタンクローリーを回収してからどっか行って!」

上条「――はい、では今から面接を始めたいと思います」

ベイロープ「Mensetsu?」

上条「あなたがたがスコットランドへ望む事は何ですか――はい、まずはそちらの方」

男1「な、なに?」

上条「――はい、ありがとうございました。では次の方どうぞ」

男2「独立だ!先祖の悲願を果たすのが我々の使命――」

上条「成程。ではどのようなプランをお持ちですか?」

男2「……はい?」

上条「はい、ありがとうございました。では最後の方どうぞ」

男3「独立を……させたいのです!」

上条「はい、ではあなたが考えるプランとはどのようなものでしょうか?」

男3「け、経済的に!イングランドから独立すれば、今まで搾取されるだけの関係から脱却できれば豊かになれます!」

上条「成程。では搾取されていたのは具体的にどのぐらいですか?」

男3「……え?」

上条「具体的にどの程度の金額をどのぐらいの期間で搾取されていたのですか?」

男3「いや、それは……」

上条「はい、ありがとうございました。以上で面接は終了となりますが、今回も独立とは縁がなかったと言う事で」

男2「待て!」

上条「はい?」

男2「この茶番は何だ!?」

上条「独立する事によるメリット、スコットランド人の経済はどうなるのか?今と同じ規模を保つのか、それとも変化するのか?」

上条「ロンドンへ支店を置く企業が多い中、スコットランドで産業を保ち続けるメリット何か?」

上条「また安全保障はどうするのか――EUに加盟して『他国が攻め込んできたときには守ってもらおう』と開き直るのか?」

上条「……俺が知ってるハイランダーさんだったら、そんな情けない事は言わないと思うんだがなぁ」

男1「……」

上条「そもそもEU圏内には独立したがってる地方が山のようにある訳で、スコットランドの……あーっと、『安全保障タダ乗り政策』?」

上条「それを突き詰めたらどこの国も重たい軍事予算削って、ドイツ・フランスにおんぶで抱っこ――」

上条「言い方変えれば有事にはキンタ×握られるのと同じなんだが、お前らそんなんでいいの?マジで?」

男3「……この、余所者が!」

上条「ていうかお前ら、イギリスのユーロ離脱は承認されてスコットランド独立が否決された理由とか考えたんか?なぁ?」

上条「是非は横に置いておく――っていうか余所者の俺が言うこっちゃないからいいとして、少なくともイギリス政府は一回決まった事を翻してねぇぞ?」

上条「それに対してお前らはどうよ。たった二年、その期間も待てずにもう一回やろうぜ!ってどういう話?てか正気か?」

上条「余所者の俺ですら上げられるデメリットに答えられず、黙りって何なんだよ、なぁ?」

男2「それはっ!」

上条「つーかさ、つーかな『搾取される』だっけ?まぁそういう見方がしたいんだったらいいけど、つーか止めないけど」

上条「でも裏を返せば、国家の基本的な命題である『富の再配分』だよね?それはただの?」

上条「スコットランドで景気がいいから、他の地方――特に産業に乏しい地方へ配分しようって話なんだけど」

上条「片っぽの口で『EUに加盟して国と国との垣根を無くそう!』って言っておきながら、もう一方じゃ『俺達の税金が俺達以外に遣われるのイヤだから!』って、なんだ?」

上条「スコットランド貴族さんはそんな事ししたくないってか?あぁ?」

ベイロープ「……もういいわ。それぐらいにしてあげて」

上条「オイ、言われてんぞオッサン!」

ベイロープ「あなたに言ったのだわ、割と真理突いて凹ませてるあなたに」



――屋敷 バルコニー

上条「……なんか悪かったな」

ベイロープ「悪く悪くないで言えば、まぁ最悪だけど」

ベイロープ「……ていうかあのぐらい翻意させられるんだったら、私は苦労してないわ」

上条「いやでもレッサーが『今頃ベイロープは”くっ!殺せ!”って嬉々として言ってる頃ですよ』って」

ベイロープ「家族内の話し合いなんだけど?ていうかお見合い話は去年潰してくれやがったわよね?」

上条「……俺は悪くないと思うんだよ、どっちみちレッサーさん達がカチコチかけようとしてやがったから」

ベイロープ「あのおバカは今どこに?」

上条「『ちょっくら騎士派へカチコミかけてきます!なぁに威力偵察ですからお気になさらず!』って」

ベイロープ「ハロウィンに男臭い騎士団寮へ行くのはある意味ご褒美のような気も……」

上条「まぁ何かあったら自己責任で!イギリスは紳士の国だよねっ!」

ベイロープ「バッカニア発祥の国で……まぁ、うん、ジェントルって名乗る連中に限ってジェントルじゃないって現実が、ね」

上条「1000年経ってもスーツ着た蛮族……げふんげふん、いやなんでもない」

ベイロープ「それで?」

上条「あ、お菓子頂戴?」

ベイロープ「場を引っかき回しておいて更に要求するのっ!?ねぇっ!?」

上条「だって今日ハロウィンじゃね?」

ベイロープ「そう……よ、ね?」

上条「――あぁそうだ、ベイロープ」

ベイロープ「何よ」

上条「やっぱそのドレス似合ってな――」

ベイロープ「死ね」

上条「待って!?この後にはちゃんとオトすから!まだ落ちて――」



――屋敷 中庭

フロリス「……なぁ?」

レッサー「はいな?」

フロリス「あのアホはなんて続けようとしたんジャン?」

レッサー「推測ですがね。『ドレスよりもNLのユニフォームの方が(性的な意味で)似合ってるよ』でしょうかねぇ」

フロリス「ウン、()以外はワタシも同意なんだケドも」

レッサー「取り敢えずくっころやってないんで帰りますかー。軽ーくハロウィンしながら」

フロリス「お菓子を強奪するのはハロウィンとは言わねー……ケド、一つ、いいかな?」

レッサー「あい?」

フロリス「……ランシスは?」

レッサー「あー……」

フロリス「……喚んでない?」

レッサー「私は誰も、つーか自主的に集まっただけですし」

フロリス「ワタシもなんだよねぇ……アー……」

レッサー「か、帰りましょっか!我らがアジトへ!」

フロリス「ソ、ソーダネっ!帰ろうかっ!」

レッサー「その途中!コンビニでお高めのスイーツ買っても問題ないですよねっ!ねっ!」

フロリス「ソ――ウダヨネ、ランシスの好きなプティングも買っていこうぜ!念のために!」



――イングランド某宮殿 大通りに面したバルコニー

従者『ただ今よりリメリア殿下、キャーリサ殿下、ヴィリアン殿下がお出でになります――』

国民 ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーッ

リメリア・キャーリサ・ヴィリアン「……」

国民A『リメリア様ーーーーーーーーっ!ハッピハロウィーーーン!』

国民B『キャーリサ様もお美しいぞ!キャーリサ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』

国民C『ヴィリアン様愛してるーーーーーーーーーっ!!!』

キャーリサ「おーおー、元気そうで大義なの愛すべき愚民ども」

リメリア「キャーリサ」

キャーリサ「だいじょーふなのよ姉上。この距離では唇を読むも読まないもないの」

キャーリサ「どうせ歓声で声が届く訳もないし……しかし、アレだな」

ヴィリアン「な、なんでしょうか?」

キャーリサ「三姉妹、年増のリメリア姉様も恥を忍んでハロウィンドレスを着ているのに、だ」

キャーリサ「お前の歓声は随分毛色が痔買うよーだけど、なぁ?」

ヴィリアン「そんな事は、ない筈ですけど……」

国民C『ヴィリアン様愛してるーーーーーーーーーーーーーっ!嫁に――げふっ!?』

キャーリサ「……なんだ?何か今不思議なことが起きなかったか?」

リメリア「微かに魔力的な何かが投げられたような……?」

ヴィリアン「き、気のせいですわお姉様がたっ!決してオルウェルが何かした訳では!」

キャーリサ「あのコロヅキ反逆者が宮殿にいるとゆーのか?はっ、世も末なの」

リメリア「何か仰いましたか、クーデター実行犯の我が妹よ」

キャーリサ「必要だと思ったからやった。悪いとは思っていない」

ヴィリアン「……キャーリサお姉様?私の首を刎ねかけておいてそれですか……?」

キャーリサ「そうすれば王権はリメリアお姉様か私の二択になる。それだけの価値はあったはずだが?」

ヴィリアン「価値、ですか?」

キャーリサ「そーとも愚妹よ。お前の価値は”血”だ。それ以外には何もない、私もお前も」

キャーリサ「お前は……このまま降嫁してオルウェルへ嫁ぐだろうが、その血はどーなるんだ?あぁ?」

キャーリサ「その子が男児で、かつオルウェルの数万分の一でも”才能”を受け継いでしまったら、また戦争だ」

ヴィリアン「……」

キャーリサ「だからあそこで死んでおけ、それが私の姉心だ――なんて、戯けた事をいうつもりはないだけれどな」

キャーリサ「まぁ闘争の世界は終わりなどしてやらないのも、王族の勤めだぞ?」

ヴィリアン「――私と」

キャーリサ「あ?」

ヴィリアン「私とオルウェルの子だなんてっ!お姉様のえっち!」

キャーリサ「おいリメリア、こいつ狂ったぞ?それともクーデター騒ぎが後を引いてるのか?」

リメリア「せめてお姉様ぐらいはつけなさいキャーリサ……ま、無理もないと言ってしまって良いものか」

リメリア「我らが王女陛下の不肖の娘三人、そのうち最年少の嫁ぎ先が見つかったのよ。良い事じゃない」

キャーリサ「……とゆーかだな姉様。こいつは王族の勤めを理解していたのか?」

リメリア「前提は問題じゃないわね、過程もこの際どうだっていいの」

リメリア「結果としてブリテンの王室派に強い騎士の血が入るのだから、それは結構な事ね」

キャーリサ「歳の順で言えばリメリア姉様か……いやすまんなんでもない、なんでもないから短剣を抜こうとするな!」

リメリア「私としてはオルウェルが介入してヴィリアンを攫っていく、まではあなたの計画かと思ってたのよ?」

キャーリサ「おー相変わらず疑い深いな姉上様よ。私はそんな善意の人だと思われていたとはな」

リメリア「だってあなた、カーテナ使ってたのだからビンタ一発で落とせたわよね、首?」

キャーリサ「それは『ティッシュ一枚あればゴキブリを潰せる理論上は』ってのと、どー違うんだ?」

ヴィリアン「……キャーリサ姉様、害虫扱いはちょっと……」

キャーリサ「そうだぞ、それはきっと正しい」

キャーリサ「ゴキブリは、殺せるの。わかる?」

ヴィリアン「分かりたくないです!」

リメリア「相変わらず、仲が良いんだか悪いんだか――あら?」

キャーリサ「どーしたの姉上。オルウェルでも見つけたか?」

リメリア「衛兵達が騒がしいようですけど……」

衛兵A『オイ止まれっ!それ以上近付くんじゃないっ!』

衛兵B『増員を!騎士達へ援軍を呼ぶんだっ!』

キャーリサ「……ビスクドールの変わりか、出来の悪いマネキンの真似事はウンザリだけど」

キャーリサ「まぁ好みの展開だと言えなくもないの――姉様?」

リメリア「国内へ潜り込んでるテロリストは数百人、魔術師は数十人ぐらいかしらね……というか」

キャーリサ「なに?」

リメリア「あなたの子飼ではなくて?お友達とか?」

キャーリサ「居たな、そう言えば。今の今まで忘れていたの」

ヴィリアン「お姉様がたっ!?テロだったらそんな悠長に構えてる場合では!」

キャーリサ「あーいや、落ち着いてるつもりはないんだが――そうだな」

キャーリサ「日本のミカドの宮殿へライトサーベ○持った全裸のジェダ○が吶喊したって話があってだ」

リメリア「あら怖い。ジェ○イって居たのね」

ヴィリアン「コラです!日本の暇人達が即興でこしらえたモノですから!」

キャーリサ「まぁ待て。こういう時のセオリーは下手に騒がず慌てない」

リメリア「襲撃自体が陽動で、逃げた先でテロリストとこんにちは、なんて事もあるのよ」

キャーリサ「姉上、ユーロトンネルの時に私が使った手なの」

リメリア「キャーリサは賢いわねぇ」

ヴィリアン「……お母様、家族がブラック過ぎます……!」

リメリア「――と、近付いてくるみたいね。衛兵は何やってるのかしら」

キャーリサ「中々根性のあるテロリストだ――ヴィリアン」

ヴィリアン「は、はい?何か嫌な予感が」

キャーリサ「――我々はお前の犠牲を忘れない」

ヴィリアン「死亡フラグを押しつけてきたっ!?」

リメリア「と、遊んでいる内に結構近くまで来ましたね。私はこれで」

キャーリサ「じゃー私も一応避難しておくかー……ヴィリアン、お前も下がってろ。警備の邪魔だ」

ヴィリアン「……」

キャーリサ「オイ?」

リメリア「どうかしましたか?

ヴィリアン「いえ……あの、どこかで聞いたような声が」

キャーリサ「声?誰の――」

上条『ハッピーハロ――げふっ!?』

上条『トリックオアトリ――がふっ!?ぼふっ!?』

上条『てか痛てぇなコノヤロー!!!さっきから人をサンドバッグみたいにポンポン殴りやがって!!!』

上条『父さん母さんに「気軽に人の幻想壊しちゃいけません」って教わらなかったんかっ!?あぁっ!?』

衛兵C『暴れるなコイツ!足を!誰か足を持てっ!』

上条『あっ待って!せめてお約束の台詞を最後まで言わせ――』

リメリア・キャーリサ「「……」」

ヴィリアン「……上条さん、ですよね?」

上条『助けてー!?ハロウィンしに来ただけなのに無実の罪で逮捕されるっ!?』

ヴィリアン「黒です。王族の宮殿へよじ登ろうとするのは、真っ黒です」

ヴィリアン「っていうかお姉様がたも!上条さんと衛兵さんたちを止めてあげて!」

キャーリサ「――いやー、知らないし?」

ヴィリアン「……えっと?」

キャーリサ「あんなオリエンタルな知り合いなんて居ないと言っているの」

キャーリサ「いやこれは別に『女の顔ぶん殴りやがってザマーマロ』とか、そーゆーことでないんだが」

ヴィリアン「私怨ですね?どう聞いても私怨以外の何物でもないですよね?」



――宮殿内 一室

キャーリサ「――で?屈強な男達に可愛がられた感想はどーだ?」

上条「最悪だよ!その言い方も最悪だ!」

キャーリサ「おい誰かー、こいつは我らが大英帝国の王女の顔をグーパンチした男だぞー」

上条「それ遠回しに『始末してこい☆』って言ってませんかね?」

リメリア「ストレートに言ってますね」

ヴィリアン「もうっ!折角訪ねてきて下さったのですからその言い方は失礼ですよ!」

上条「俺の味方は一人だけか……!」

キャーリサ「騙されてるぞ−。そのツンツン頭は誰彼なくフラグを立てるスタンド○使いだー」

上条「……あぁ何かたまに俺もそんな気がするよな。自動タイプで本人も制御できないような感じの」

ヴィリアン「……お帰りは、あちらですよ?」

上条「そしてたった一人の味方ですら居なくなりましたねコノヤロー」

リメリア「お菓子がほしいのでしょ?だったら玄関のところで配っていたのだけど」

上条「あ、いや貰ったのは貰ったんだが、ついでに近くまで来たんで挨拶しておこうかなって」

キャーリサ「愛想を振りまくのが途中で切り上げられたのは感謝しないでもないの」

上条「そりゃどうも。てか幽閉されてたんじゃなかったっけ?」

キャーリサ「公務以外は缶詰だよ。この愚妹次第じゃそれも難しくなるの」

上条「……仲悪いなー、相変わらず――いいかー、日本には『三本の矢』って教えがあってだな」

キャーリサ「強度の足りない矢の話か。折れるぐらいならば三本どころじゃなく用意しておけばいーの」

上条「やめろ!それを突き詰めた先が拡散性でミリオンなアーサーさん達がいる世界だから!」

リメリア「アーサー多すぎですね」

上条「あー……じゃあ、あるところに三匹の子豚さんが居ました」

上条「三匹はそれぞれ自分の家を建てました」

リメリア「私は姉妹達も知られない隠れ家をこっそり建てますね」

キャーリサ「私は武装した兵士が常駐するような要塞の家を」

上条「えーっと……あのな?」

キャーリサ「ほらほらオオカミ役、順番通りに姉上の所から行ってみろ」

上条「た、食べちゃうぞー?」

リメリア「残念。オオカミは長女の家を見つけられませんでした」

上条「あれ?俺の知ってる三匹の子豚と違うな?イギリス版だとこうなるの?」

ヴィリアン「ありまんせ。イギリス版ありませんから」

キャーリサ「次にオオカミは毛皮を剥がれに私の所までノコノコとやって来るの」

上条「――は、キャンセルでっ!」

リメリア「ヴィリアンはどんな家を?」

ヴィリアン「え、私ですか!?」

キャーリサ「ホレホレ、早くしないと悪いオオカミさんに喰われてしまうの――な、オオカミさん?」

上条「が、がおー?」

キャーリサ「――セクシャル意味で」

上条「おいそれフラ――」

アックア「――せいっ!」

上条「ひでぶっ!?」

ヴィリアン「……あぁ私の建てる家は」

アックア「騎士の居る家であるな」

ヴィリアン「きゃっ」

上条「お、オチてな、い……!あとイチャイチャしやがって!悔しくなんかないんだからねっ!」

キャーリサ「だいじょーぶだ。私達も、もうなんか意味も無く殺したくなるぐらいにフラストレーションは溜まってるの」

リメリア「一緒にしないで」



――ある家族の家

バードウェイ「――なぁ恋多き女パトリシアよ」

パトリシア「やめて貰えません?人を大幅にレベルアップさせるのは良くないですよ?」

バードウェイ「上里勢力のパトリシアさんとお呼びすれば?」

パトリシア「喧嘩売ってますよね?そうですよね?」

バードウェイ「大奥入りおめでとうwwwwwwwww」

パトリシア「あのー……多分お姉さんも薄々気がついてると思うんですけど、一応言っときますね」

パトリシア「確実に、何割か下手すれば10割がお姉さんへのフルカウンター飛んできますからね?レベルの高いサムライのつばめ返しみたいに」

バードウェイ「はて?私は赤髪ロン毛神父とチート主人公の間で、まるで乙女系主人公のように揺れ動いたことはなかったはずだが?」

パトリシア「それ言うんだったら私も100%冤罪ですからね?上里さんが恩人なのは間違いないですけど」

バードウェイ「良い事考えたっ!」

パトリシア「良かったですねー……あ、そこのみかん取って貰えません?」

バードウェイ「上里が女体化すれば万事解決する……ッ!!!」

パトリシア「”!”を三つ重ねてまで強調する意味が分かりません。あとそれ解決してないですよね?」

バードウェイ「あ、だったら最初から女の子だったという設定でだな」

パトリシア「誰得ですか?っていうかそれだと上里さんにドキドキした私の立場がっ!?」

バードウェイ「それはそれで需要があるからいいんじゃないか?」

パトリシア「逆に聞きますけど、なら『需要がない』のはどこら辺でしようか?供給曲線がバグるほど偏ってますよね?」

バードウェイ「あとアナス○やキル○の妹など有名どころにも結構あるし」

パトリシア「そんな……大御所の割に設定が雑な、っていうか後先考えない先生達と一緒くたに語られても……」

バードウェイ「――で、だ。お前の話なんかどうでもいいんだ!」

パトリシア「どうでもいい話だったのには同意しますけど、イジられ方には納得してませんからね?」

バードウェイ「上条当麻はロ×だよなぁ?」

パトリシア「ごめんなさいお姉さん、一言言わせてください――何言ってんだバーカ!」

バードウェイ「バカとなんだっ!?真面目な話をしているんだろっ!?」

パトリシア「真面目なおバカ話ですよね、それ」

バードウェイ「いや、ほら、あれだ。ヤツは私の事が好きだろう?」

パトリシア「好き……まぁ、はい、好きだとは思いますけど」

バードウェイ「なんだ歯切れが悪いな」

パトリシア「あぁいえ、なんて言ったら……それはLoveじゃなくてLikeの方じゃないんですかね?」

バードウェイ「……」

パトリシア「お姉さん?」

バードウェイ「………………ぐすっ」

パトリシア「Loveの方ですねっ!上条さんはどロリコ×ですからきっとLoveで合ってると思いますっ!」

パトリシア「変態ですからっ!マッターホルンよりもグランド・ジョラスが好みの人だって居るんですし!きっとねっ!」

バードウェイ「おいお前未来の兄をペ×呼ばわりは失礼じゃないか!」

パトリシア「お姉さん面倒です。とっっっっっっっっっっっっても素敵に面倒臭いです」

バードウェイ「……ま、私に惚れている!これは確定なんだが!」

パトリシア「その決め打ちは『月が降ってくれば日本経済は壊滅する』ぐらいのトンデモ話だと思いますが……」

バードウェイ「考えてみろ、将来成長して私はボンッ!キュッ!ボン!になったら、と」

パトリシア「んー……お母さんを見ると、まぁ普通ぐらいにはなりそうですが……それのどこか問題でも?」

バードウェイ「ペ×だったら成長したらマズくないか?」

パトリシア「マズいマズくないで言えば、最初からマズいです。会話的に小学生がする話じゃないですから」

バードウェイ「少し不安になってしまってな」

パトリシア「そうですね、私も不安です。主にお姉さんの思考体系について」

バードウェイ「こどものじか○の青○先生もリ○ちゃんが大人になったら捨てるって」

パトリシア「それはbyベイガ○伍長(in KAKERU先生)の心配です。常人はそこでモニョりません」

バードウェイ「なのでこう、ここらでダメ押し的なものをだな」

パトリシア「ダメ押しっていうか、ダメですからね?ダメ、ゼッタイ!」

パトリシア「ていうかロ×前提で話が進められているお兄さんが不憫すぎます……!」

バードウェイ「でだ。Slu――恋多き我が妹にアドバイスを頂きたく」

パトリシア「今”Slut”って言おうとしただろ?なぁオイ?」
(※日本で気軽に使われるのは”ビッチ”ですが、海外は”Slut”の方が多用されます)
(※そして勿論使う時は殴られることを覚悟しましょう)

パトリシア「……ていうか私がアドバイスできるかどうか……うーん……あ、そうだ」

パトリシア「マークさんに聞いてみたんですか?少なくとも私よりはお兄さんの気持ちが分かるんじゃないですかね?」

バードウェイ「え?『お前×リはイケるクチなのか?』って聞けと?」

パトリシア「よしまず離れましょう!その不穏な単語から遠ざかるところから始めましょうっ、ねっ!?」

バードウェイ「やはりこう、不安というかだな」

パトリシア「不安……あぁじゃあ甘えてみるとがどうです?」

バードウェイ「甘える、だと?」

パトリシア「男女の云々はさておき、特殊な性癖も山の中にでも捨ててくるとして、それ以前の問題です」

パトリシア「嫌いな相手から甘えられたら、ちょっと態度に出るでしょうし。そうじゃなくっても、まぁ好感度上げる的な?」

バードウェイ「流石はパトリシアだなっ!」

パトリシア「えへへ、それほどでも」

バードウェイ「私の常日頃の薫陶の賜物とも言える!」

パトリシア「最終的には自分を誉めるところへ持っていった!?」



――翌日

上条(長かった……今年もハロウィンの季節がようやく終わりを告げようとしている……)

上条(なんだかんだでイギリス廻り、つーかほぼ知り合いの所へお邪魔している訳だが)

上条(これ後で問題にならねぇだろうな?明らかにコンプリートはしてないし)

上条(五和さん辺りに刺されたり……うん?)

上条(そういや最近五和見てないよな?最後に会ったのいつだったっけか?)

上条(オティヌスの前、イギリスでキャーリサ達ケンカした時だっけ?神裂パラシュートは……まぁいいや)

上条(それよりも今は!この先生きのこるためにも最後のハロウィンをだな!)

上条(なんかもうハロウィンの主旨とは大分かけ離れてきてる気がするが!それはそれ、これはこれで!)

ピンポーン

バードウェイ「誰だ?」

上条「ハッピーーーーーーーーーーーーーーハロウィーーーーーーーンっ!!!」

上条「トリックオアトリート!お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞっ☆」

バードウェイ「うん、☆が気持ち悪い。あとドラキュラの格好は……うーん?」

上条「なに?何か問題あんの?」

バードウェイ「あー、小説の方のドラキュラはある種イギリス王室との皮肉とする説もあるので、まぁ、ちょっと」

バードウェイ「あと実はカトリック系だとハロウィンを祝わず、『ただの日』と公式発表しているため、去年のヴェントは矛盾してる」

上条「一年溜めたダメ出しありがとうなっ!それ言ったらローマ正教側全部アウトだけど!」

上条「……いやイギリス清教は?プロテスタントじゃなかったよな?」

バードウェイ「『カトリックっぽい何か』だから、まぁ四の五の言わずに楽しむな」

上条「お前らそういうトコあるよね?……まぁいいやお菓子下さい」

バードウェイ「いや……今、家に誰も居ないんだが、上がっていくのか?」

上条「あん?迷惑だったら帰――」

バードウェイ「迷惑じゃない!それは迷惑なんかじゃないんだがなっ!?」

上条「……なんで挙動不審よ?捕まえた敵組織のチンピラの拷問でもしてた?」

バードウェイ「お前の中の私がどんな悪魔なのか知りたいところだが――」

バードウェイ「ま、まぁアレだ!そんなにお前が上がりたいというのであれば!私は渋々通さざるを得ないな!」

上条「あーはい、ありがとう?」



――家

上条「相変わらずコタツのある謎の洋式ハウスだぜ……!」

バードウェイ「座っていろ。お茶を煎れてくれる」 スッ

上条「あ、すいません。おかまいなくー」

上条(何だろうな。前に北極海ダイブかまして世話になった時よりも物が増えている)

上条(扇子にダルマ……起き上がり小法師なんつー変わり種もあるし。何か持ってくれば良かったなー)

PiPiPiPi、PiPiPiPi、PiPiPiPi……

上条(バードウェイの携帯鳴ってるな)

上条「おーいケータイ鳴ってんぞー!」

バードウェイ『すまんが今手を離せない!代わりに聞いておいてくれ!』

上条「いいのかよそんななんで!?……ってマーク?マークからの着信か?」

上条「知り合いだし、まぁ平気か――『もしもし?』」

マーク『あっハイ上条さんいつもお世話になって――上条さん?えっ?』

上条「『今バードウェイんち居るんだが、手を離せないから代わりに聞いといてくれって』」

マーク『あぁいえ大した用事では、はいっ、ないんですが……マジで?上条さんが?』

上条「『何か不都合だったら帰るけど?』」

マーク『あー……いえ、パトリシア嬢、居ませんよね?他の家族も』

上条「『居ないって言ってた』」

マーク『それ、分かってて家へ上がったんですか?』

上条「『いや一応確認したよ?お邪魔じゃなかったらって』」

マーク『……』

上条「『……マークさん?』」

マーク『なんですか若頭?』

上条「『おいまたなんか聞き捨てならない単語出やがったな!?なんだそれ!?』」

マーク『えーっとですね、ガヴァネスって知ってます?レディズ・コンパニオンでもいいですけど』

上条「『コンパニオンは、なんか博覧会で展示品の紹介する女の人?』」

マーク『それの元になった方なんですが……大体18世紀から20世紀半ばぐらいに、イギリスの女性の職業なんですが』

マーク『ガヴァネスは住み込みの家庭教師、コンパニオンも……まぁ住み込みの友人兼お手伝いさんですかね』

上条「『前は分かるが、後ろのフワッとした職業だな!』」

マーク『っていうのもですね。男児平等クソ食らえしかも上流階級じゃ女性は価値ある資産みたいな感じだったんで』

マーク『まぁその中でも社会的に独立できるのが、ガヴァネスとコンパニオンです』

マーク『ちなみにシャーロック=ホームズのワトソン夫人が独身時代ガヴァネスでした』

上条「『へー』」

マーク『尚”Sherlock”では夫人の存在は嫌われまくってます』

上条「『……あぁ海外にも婦女子っているのな。自重しろ海外の俺ら』」

マーク『コンパニオンは独身の女性、もしくは未亡人のお世話をする役割があったんですが……』

マーク『その当時、”お若いご婦人が、男性客の訪問を受け入れる時には親族か年長の女性を伴わないとダメ”ってのがありまして」

上条「『へー……………………うん?』」

マーク『まぁ使用人も当然のようにいたでしょうが、その、名誉的な意味でもある程度の社会的立場を持つ方が必要だと』

上条「『……なぁ、嫌な予感がするんだけど聞いてもいいかな?』」

マーク『喜んで』

上条「『……男性が、他の人が居ないのに、女性の家へ上がり込む、ってのはどういう意味になる……?』」

マーク『合意があれば婚約、なければ×××ですね』

上条「『詰んでるじゃねぇか!?てゆうかそれ昔の……話なんだよなあぁっ!?』」

マーク『はい、ですので古き良き時代の価値観ですね――”一般的”には』

上条「『だよなっ!一般的にはそうだよなっ!』」

マーク『ただその、ボスと上条さん、二人っぎりになった時ってありましたっけ?』

上条「『あったよ!幾らでもあっ――あれ?』」

マーク『――あ、そろそろ電池が切れそうなので失礼します。頑張って下さいねっ!』

上条「『待ってよ!?助けてよ俺を!?』……ちくしょう切りやがった!」

バードウェイ「……何騒いでるんだ、お前は」 コトッ

上条「あ、あぁ。幻想を殺すかマークを殺すか迷っててさ」

バードウェイ「そこは幻想だけにしとけ――って何だ?私の顔に何か?」

上条「あ、あぁちょっと、な」

上条(よくよく考えたらバードウェイって良い子なんだよな。北極海まで俺拾いに来てくれたし)

上条(俺も敵に回して、オティヌス達も敵に回してまで――下手すれば世界からハブられるのに)

上条(デンマークでもインデックスと一緒に、無条件で俺を信じてくれた数少ない人物……だな)

上条(流石に幼女だし、てか体型は好み以前の問題だが――まぁ)

上条「――なぁ、バードウェイ」

バードウェイ「なんだね」

上条「俺と結婚してくれ!」

バードウェイ「――――はい?」



――同じ部屋 クローゼットの中

パトリシア「(うわーっ!うーーわーーーーーーーーーーーっ!お兄さんプロポーズしちゃいましたよっ!)」

マーク「(この物語はフィクションであり、現実・非現実のボスとは一切関係はありません!)」

パトリシア「(何言ってんですかマークさん、っていうか私達も出ていった方がいいんじゃ?)」

マーク「(無理ですよっ!この雰囲気の中『ドッキリ、大成功!』のプラカード持って出て行けるのは勇者だけです!)」

パトリシア「(や、でもオチを言わないとギャグじゃすまねぇぞって言いますか)」

マーク「(この流れで出ていったら俺がボスに殺されます!)」

マーク「(っていうか逃げましょう!このままここに居たら別の意味でも殺されますから!)」

パトリシア「(なんでしょうねぇ……ハロウィンの筈なのに、この展開)」

マーク「(そりゃどなたさんが『逆にいたずらする』って一言付け加えなきゃこのザマには!)」

パトリシア「(あ、お姉さんが抱っこして貰ってる!)」

マーク「(見たくない!ボスがデレるところなんて悪夢以外の何ものでもな――)」

ブゥーン、ブブゥーン

パトリシア「(マナーモードの呼び出しが)」

マーク「(メールですね……あ、ボスからだ)」

――From ボス
わかってるよな?

マーク「(……よし、パトリシア嬢このまま逃げましょう!そうしましょう!)」

マーク「(もし上条さんにバレたら危険がピンチですから!)」

パトリシア「(……なんだろうなぁ、これ)」



ハロウィンの日2016 −終−

(※ご応募ありがとうございました。次の投稿企画はクリスマスを予定しております)

inserted by FC2 system