バレンタインの日 終盤戦(ver2016)
――姫神→上条
姫神「……と。言う訳でお友達の吹寄さんに来て貰いました」
吹寄「あ、はい。呼ばれました」
姫神「……」
吹寄「どうしたの?」
姫神「お友達って言って否定されなかった……!」
吹寄「当たり前の事に感動されても」
姫神「三沢塾じゃギスギスしてて居場所がなかった」
吹寄「あーあの評判が悪い進学塾か。能力開発ばっかりでイヤになったら子達が行き着く先の」
吹寄「能力自体は才能だと諦めるとして、フツーに勉強すればいいのにね」
姫神「ん。奇抜な能力を持っていたって。嬉しくはない。と思う」
吹寄「それで用事って――あぁまぁバレンタインだと思うけど」
姫神「上条君……と。お世話になってる小萌先生にあげたい」
姫神「あ。勿論吹寄さんも」
吹寄「ありがとう、嬉しいわ」
姫神「……でも。吹寄さんに頼むのは少し気が引けた」
吹寄「どうしてよ?」
姫神「常日頃ダイエットグッズの体験レビューを聞かされている身としては……」
吹寄「あー……はは。ねー?」
姫神「っていうかいつまで経っても痩せないのは胸のせいじゃ……?」
吹寄「胸は関係ないでしょ!」
姫神「個人的にはその個性が羨ましい……けど。個性とは『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』……!」
吹寄「いやあの、学園都市パンフに書いてそうな事言われても……」
姫神「普通は。だめ。ぜったい」
吹寄「いいと思うけど……」
姫神「金髪ロリ姉キャラボス系陰では努力家。SP版の実質上のヒロインで実はお兄ちゃん大好きっ子って属性盛り過ぎだよね」
吹寄「姫神さん?それはうん、その、都合ってモノがあると思うよ」
姫神「そう……それはまるでメーカー板を覗いてみたら。『何回パッチ当ててもヒロイン好きになれないんですがどうすれば』。みたいな!」
吹寄「本気で何の話なのかな?報われない話なのはなんとなく分かるけど」
姫神「それはさておき凍京ネク○ってゲームがあって」
吹寄「――そ・れ・で!?わたしを呼んだ用件って何かなっ!?かなっ!?」
姫神「吹寄さんには私の作ったお菓子を食べて欲しい。それで感想を」
吹寄「お菓子は好きだから有り難いぐらいだけど……何か嫌な予感が」
吹寄「調理実習でも姫神さんのは普通に美味しかったし、一体何だろ……?」
姫神「――はい。ではまずシフォンケーキをどうぞ」
吹寄「わー、美味しそう−――ん?”まず”?」
姫神「テレビで増えつつある。簡単カップケーキ風……でも。本当にしっかり作ると大変」
姫神「チョコシフォンにするんだったら。中へ入れるチョコに一苦労」
姫神「ふんわり食感を楽しむんだったら牛乳を多めに。硬めのパリパリ感が欲しかったらチョコチップを」
姫神「どっちも入れると必ず失敗するから注意……!」
吹寄「見た目は綺麗で、崩れている所もない――いやだから”次”?今”次”って言った?」
姫神「あ。うん。次はチョコケーキとナッツ入りのフレークとクッキーと」
吹寄「ごめん。無理」
――当日
姫神「――と。いう聞くも涙。語るも涙。涙涙の物語が」
上条「うん、女子的には厳しい話だっつーのはわかったけどもこの小咄の加害者は君だよね?」
姫神「あれはきっと。事故。誰も悪くない」
姫神「『お友達に手作りお菓子を振舞うっていうイベントで。ついついテンションが上がってしまっただけ」
上条「ヤベェテンション上がった姫神超見てみたい!」
吹寄「勝手な……事を言う、な……!」
姫神「と。そんな理由で見事にチョコまみれの刑を受けた。吹寄さんが」
上条「まみれて。どんだけ食ったんだ」
姫神「一体誰が……!誰が通販のダイエット器具を買うのが趣味の吹寄さんにチョコ三昧という仕打ちを……!」
上条「姫神さんですよね、それ?」
姫神「……あぁでも。ハロウィンの時に上条君へ相談していた事は。解決した。と思う」
上条「それは良かった!でも俺は友人をチョコまみれの刑にしろと言った憶えはねぇな!」
姫神「それで。なんだけど」
上条「はい?」
姫神「私。作ったチョコ。あげます」
上条「……よく頑張ったな」
姫神「……うん。ありがとう」
上条「こちらこそ」
吹寄「――と、ちょっといいかな上条当麻?」 ガシッ
上条「あ、はい?」
吹寄「さっきから聞いてるとまるで――チョコ三昧の刑に遭ったのは、あんたのせいみたいに聞こえるのよね?」
上条「あ、いや!違うですよ吹寄さん!?これはきっと誤解が積み重なった結果であって!」
姫神「上条君のご指導の賜物です」
上条「まさかの姫神が裏切った!?」
――某所
ウレアパディー「――で、あなた借りは返したのでしょうね?」
ソーズティ「……はい?」
ウレアパディー「だから、借りを。あなたが。返すの」
ソーズティ「すいません姉さん。単語が聞き取れなかったんじゃなくて」
ウレアパディー「待ってね」 カキカキ
ソーズティ「単語が分からないんじゃないんだ姉さん。むしろ分からないのはあなたの方で」
ウレアパディー「学園都市で、あの男の子に」
ソーズティ「あぁなんだ。借り、というか貸しというか微妙な線だと思うけど」
ソーズティ「この間の『ブラフマーアストラ』で充分以上に果たしたような――」
ウレアパディー「それは、私。残っているのは、あなた」
ソーズティ「……姉妹で一つでいいんじゃ?」
ウレアパディー「駄目ね。私は私、あなたはあなた」
ソーズティ「お姉ちゃん厳しいよ……」
ウレアパディー「甘えても駄目。貸し借りはしっかりしないといけないわ」
ソーズティ「と、言われても……学園都市までは遠いですし、この間もお礼する前に日本へ帰ってしまいましたし」
ウレアパディー「距離は関係ないでしょ。会いに行けばいいんだから」
ソーズティ「いやでも!こう、勘違いされたらイヤだなー、とか」
ウレアパディー「勘違い?何?」
ソーズティ「礼をするのはいいんだけど、そのためだけに会いに行くってのは、ちょっと」
ウレアパディー「誤解、って?」
ソーズティ「それはっ!……その、わたしがあいつを好きだとか」
ウレアパディー「そうね。分かるわ」
ソーズティ「だよねっ」
ウレアパディー「あの年頃はとにかく勘違いしやすい年頃だし、年上の仮面キャラに騙されたりもするわね」
ソーズティ「ごめん。何言ってるのか分からないよ!サボテンも花を付けたぐらいに!」
ウレアパディー「あー、だったら別の用件のついで、というのはどうかしら?」
ウレアパディー「たまたま立ち寄るついでに挨拶を、だったら怪しまれずに済むわよね?」
ソーズティ「……まぁ、それでしたら」
ウレアパディー「じゃ決まりね」
ソーズティ「ちなみにあの別件ってどんな風に?」
ウレアパディー「そうね……あなたが告白しに行くついで、というのはどう?」
ソーズティ「お姉ちゃんそれ全然別件じゃないから!あと告白するんだったらついでじゃなくてメインの要件になるし!」
ソーズティ「『え?名案じゃない?』みたいなドヤ顔で言われても!どこからその自信が来るのかなっ!?」
ウレアパディー「答えは天空から来るブラフマーの道標に刻まれているわ」
ソーズティ「そのフワっとした返しは何?改造されてからそのネタ引っ張るようになったよね?」
ウレアパディー「……ソーズティ、いい?よく聞きなさいね?」
ソーズティ「……は、はい?」
ウレアパディー「その少年は強かった……物理的に、でもなく、魔術的にでもなく」
ウレアパディー「それはあなたも認めるし、私もそうね。認めざるを得ないわ」
ソーズティ「はい」
ウレアパディー「私が戦っている間、少年はずっと見ていたわ――」
ウレアパディー「――私の揺れる胸を」
ソーズティ「……はい?」
ウレアパディー「つまり何が言いたかったのかと言えば……彼は年上のお姉さんに弱いという事、分かるよね?」
ソーズティ「すいません、本当にあっちこっちへ飛び火して意味不明なんだけど……」
ソーズティ「でもそう言われるとそんな気がする……!」
ウレアパディー「だからあなたも頑張って?何年かすればお姉さんよ?」 チラッ
ソーズティ「あの、年下はいつまで経っても年下……」
ソーズティ「あと今何気にわたしの胸を見ませんでしたか?っていうか戦争したいのかコノヤロー?」
ウレアパディー「やっぱりここはバレンタインを頼るべきだと思うのよ」
ソーズティ「……はぁ」
ウレアパディー「……」
ソーズティ「や、あのバレンタインって?」
ウレアパディー「知らないわ。十字教のお祭りなのでしょ?」
ソーズティ「国では……あったのかな?やった事無いか」
ウレアパディー「確かローマ帝政時代に殉教した聖人バレンタインがどう、って小耳に挟んだ記憶があるわね」
ソーズティ「彼の死を悼む日……極東の島国にまで十字教の影響がある、という事でしょうか」
ウレアパディー「えぇ。その時に贈り物をするらしいの」
ソーズティ「成程……で?わたしはどうすれば?」
ウレアパディー「もう面倒臭いから、体にチョコ塗って『プ、プレゼントだからな!』ってすればいいじゃない」
ソーズティ「いい所一個もありませんよ!ていうか贈り物からどうしてアフリカ奥地の奇祭へランクアップしてませんか!?」
ソーズティ「てか何となくですけど姉さん知っていませんかっ!?バレンタインを!?」
ウレアパディー「別に暇だから妹をイジって楽しもうとか、そういう気持ちは」
ソーズティ「……本当ですよね?信じていいんですよね?」
ウレアパディー「……くっ!『結社』で改造された後遺症が……!」
ソーズティ「お姉ちゃんっ!?」
ウレアパディー「――大丈夫、私を信じて、ね?」
ソーズティ「……本当に?」
ウレアパディー「ファルナルアンサ×?」
ソーズティ「お姉ちゃんどんな改造されればネタキャラになるの?その答えにもう不安しか感じない!」
ウレアパディー「ヒント」
ソーズティ「信頼させる体裁すら整えようとしない!?」
――バレンタイン当日 夜
上条「……ただいまー」
上条「……あー疲れたー。今日はいつもよりもハードスケジュールだったよ……!」
上条「チョコは意外と貰えるモノなんだが……どいつもこいつも『義理』って必ず付けるのは……!」
上条「いや別に恨んではないよ!そういうものんだからねっ!世の中には貰えない人だって居るんだしさ!」
上条「そんな人達に比べれば恵まれすぎてるってのは分かってる!あぁ分かってるさ!」
上条「……」
上条「……あれ?これもしかして……ホワイトデーに返す必要があんだよな……?」
上条「この数だったらそーとーキッツイバイトしないと、俺の手持ちだけじゃ無理……」
上条「……」
上条「――うんっ!いいよねっ今はっ!考えないようにしよ――」 ムニッ
上条「むに……?……なんだろう、この、俺が、俺達が求めて止まぬむにむには――」
ソーズティ(裸リボン)「……」
上条「……」
ソーズティ「……」
上条「……疲れているんだな、俺。幻覚が見える」
ソーズティ「違うと思うぞ。わたしが言うのもなんなんだが」
上条「帰って!?ねぇ帰ってよもうっ!?」
上条「どうせアレだろ!?体を張ったボケか体を張った美人局か体を張った嫌がらせのどれかなんだろっ!?なぁっ!?」
ソーズティ「その三択はどんな修羅場をくぐって来たらそうなるんだ」
上条「だって知ってるもの!どうせこの後の展開はビリビリかバリバリかドッキリだーいせーいこーか、あヤダボスそんな所には入らないです!だもの!」
ソーズティ「ひ、人が覚悟を決めてやってるのになんて言い草だ!?」
上条「うん、っていうかあんまカラダ動かないでくれるかな?なんて言うか、こう、うんっ!青少年的には見せられないモノがねっ!」
ソーズティ「お姉ちゃ――姉は、これかが正しきバレンタインの礼服だと言っていたが……?」
上条「スゲーなインド!そりゃ昔々三蔵もお経を取りに行くわ!だってそんな国だったら俺も行きたいよ!」
ソーズティ「……そして姉はこう言った――『もしこれがバレンタインの衣装から外れていても、何ら恥じる所はない』」
上条「恥じろや。まずそのピンク色のリボンを服と呼んでる時点で」
ソーズティ「『大切なのは”誰かに感謝の意を示したい”事が肝要であって、あくまでもプレゼントは手段に過ぎない』」
ソーズティ「『物を送るのが重要ではなく、送る気持ちこそが本物よ』――と」
上条「ヤベェぐらいにいい話だが同じレベルで説得力は無ぇな!」
ソーズティ「わたしの格好が問題ではない。つまりはそういうことだ!」
上条「……あぁうん、まぁ男としちゃぶっちゃけ嬉しすぎてDOGEZAしてもいいぐらいだが」
上条「そう、だよな。的外れではあるけど、お前も恥ずかしいの我慢してやってんだよ……な?」
ソーズティ「その疑問系が気にはなるが、まぁその通りだ」
上条「あー、まぁやっちまったもんはしょーがないから、取り敢えず服着てメシでも喰お――」
ソーズティ「そして姉はこうも言った」
上条「何?まだなんかあんの?」
ソーズティ「――『認知してね』と」
上条「確信犯(※故意犯)じゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?むしろピンポイントで狙ってやがるしタチ悪ぃわ!」
ソーズティ「意味が分からないが……?うん?」
上条「ハメられてって事だよ!あ、意味合い的には逆かも知れないですけどねっ!」
上条「ていうかだな!この手のエロオチをしようとするとお約束ってのが――」
インデックス「――とうま?」
上条「イヤアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」
インデックス「人がせっかくまいかにチョコを作って貰――もとい、教わってたのに、とうまと来たら……!」
上条「いや違うんですよインデックスさん!これには理由があってですね!」
インデックス「うんもう、罰ゲームは決定しているけど言うだけ言ってみればいいガブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
上条「言わせて!?せめてお約束の展開になる間にお約束のネタを挟ませて欲しかったかな!?」
姫神「……と。言う訳でお友達の吹寄さんに来て貰いました」
吹寄「あ、はい。呼ばれました」
姫神「……」
吹寄「どうしたの?」
姫神「お友達って言って否定されなかった……!」
吹寄「当たり前の事に感動されても」
姫神「三沢塾じゃギスギスしてて居場所がなかった」
吹寄「あーあの評判が悪い進学塾か。能力開発ばっかりでイヤになったら子達が行き着く先の」
吹寄「能力自体は才能だと諦めるとして、フツーに勉強すればいいのにね」
姫神「ん。奇抜な能力を持っていたって。嬉しくはない。と思う」
吹寄「それで用事って――あぁまぁバレンタインだと思うけど」
姫神「上条君……と。お世話になってる小萌先生にあげたい」
姫神「あ。勿論吹寄さんも」
吹寄「ありがとう、嬉しいわ」
姫神「……でも。吹寄さんに頼むのは少し気が引けた」
吹寄「どうしてよ?」
姫神「常日頃ダイエットグッズの体験レビューを聞かされている身としては……」
吹寄「あー……はは。ねー?」
姫神「っていうかいつまで経っても痩せないのは胸のせいじゃ……?」
吹寄「胸は関係ないでしょ!」
姫神「個人的にはその個性が羨ましい……けど。個性とは『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』……!」
吹寄「いやあの、学園都市パンフに書いてそうな事言われても……」
姫神「普通は。だめ。ぜったい」
吹寄「いいと思うけど……」
姫神「金髪ロリ姉キャラボス系陰では努力家。SP版の実質上のヒロインで実はお兄ちゃん大好きっ子って属性盛り過ぎだよね」
吹寄「姫神さん?それはうん、その、都合ってモノがあると思うよ」
姫神「そう……それはまるでメーカー板を覗いてみたら。『何回パッチ当ててもヒロイン好きになれないんですがどうすれば』。みたいな!」
吹寄「本気で何の話なのかな?報われない話なのはなんとなく分かるけど」
姫神「それはさておき凍京ネク○ってゲームがあって」
吹寄「――そ・れ・で!?わたしを呼んだ用件って何かなっ!?かなっ!?」
姫神「吹寄さんには私の作ったお菓子を食べて欲しい。それで感想を」
吹寄「お菓子は好きだから有り難いぐらいだけど……何か嫌な予感が」
吹寄「調理実習でも姫神さんのは普通に美味しかったし、一体何だろ……?」
姫神「――はい。ではまずシフォンケーキをどうぞ」
吹寄「わー、美味しそう−――ん?”まず”?」
姫神「テレビで増えつつある。簡単カップケーキ風……でも。本当にしっかり作ると大変」
姫神「チョコシフォンにするんだったら。中へ入れるチョコに一苦労」
姫神「ふんわり食感を楽しむんだったら牛乳を多めに。硬めのパリパリ感が欲しかったらチョコチップを」
姫神「どっちも入れると必ず失敗するから注意……!」
吹寄「見た目は綺麗で、崩れている所もない――いやだから”次”?今”次”って言った?」
姫神「あ。うん。次はチョコケーキとナッツ入りのフレークとクッキーと」
吹寄「ごめん。無理」
――当日
姫神「――と。いう聞くも涙。語るも涙。涙涙の物語が」
上条「うん、女子的には厳しい話だっつーのはわかったけどもこの小咄の加害者は君だよね?」
姫神「あれはきっと。事故。誰も悪くない」
姫神「『お友達に手作りお菓子を振舞うっていうイベントで。ついついテンションが上がってしまっただけ」
上条「ヤベェテンション上がった姫神超見てみたい!」
吹寄「勝手な……事を言う、な……!」
姫神「と。そんな理由で見事にチョコまみれの刑を受けた。吹寄さんが」
上条「まみれて。どんだけ食ったんだ」
姫神「一体誰が……!誰が通販のダイエット器具を買うのが趣味の吹寄さんにチョコ三昧という仕打ちを……!」
上条「姫神さんですよね、それ?」
姫神「……あぁでも。ハロウィンの時に上条君へ相談していた事は。解決した。と思う」
上条「それは良かった!でも俺は友人をチョコまみれの刑にしろと言った憶えはねぇな!」
姫神「それで。なんだけど」
上条「はい?」
姫神「私。作ったチョコ。あげます」
上条「……よく頑張ったな」
姫神「……うん。ありがとう」
上条「こちらこそ」
吹寄「――と、ちょっといいかな上条当麻?」 ガシッ
上条「あ、はい?」
吹寄「さっきから聞いてるとまるで――チョコ三昧の刑に遭ったのは、あんたのせいみたいに聞こえるのよね?」
上条「あ、いや!違うですよ吹寄さん!?これはきっと誤解が積み重なった結果であって!」
姫神「上条君のご指導の賜物です」
上条「まさかの姫神が裏切った!?」
――某所
ウレアパディー「――で、あなた借りは返したのでしょうね?」
ソーズティ「……はい?」
ウレアパディー「だから、借りを。あなたが。返すの」
ソーズティ「すいません姉さん。単語が聞き取れなかったんじゃなくて」
ウレアパディー「待ってね」 カキカキ
ソーズティ「単語が分からないんじゃないんだ姉さん。むしろ分からないのはあなたの方で」
ウレアパディー「学園都市で、あの男の子に」
ソーズティ「あぁなんだ。借り、というか貸しというか微妙な線だと思うけど」
ソーズティ「この間の『ブラフマーアストラ』で充分以上に果たしたような――」
ウレアパディー「それは、私。残っているのは、あなた」
ソーズティ「……姉妹で一つでいいんじゃ?」
ウレアパディー「駄目ね。私は私、あなたはあなた」
ソーズティ「お姉ちゃん厳しいよ……」
ウレアパディー「甘えても駄目。貸し借りはしっかりしないといけないわ」
ソーズティ「と、言われても……学園都市までは遠いですし、この間もお礼する前に日本へ帰ってしまいましたし」
ウレアパディー「距離は関係ないでしょ。会いに行けばいいんだから」
ソーズティ「いやでも!こう、勘違いされたらイヤだなー、とか」
ウレアパディー「勘違い?何?」
ソーズティ「礼をするのはいいんだけど、そのためだけに会いに行くってのは、ちょっと」
ウレアパディー「誤解、って?」
ソーズティ「それはっ!……その、わたしがあいつを好きだとか」
ウレアパディー「そうね。分かるわ」
ソーズティ「だよねっ」
ウレアパディー「あの年頃はとにかく勘違いしやすい年頃だし、年上の仮面キャラに騙されたりもするわね」
ソーズティ「ごめん。何言ってるのか分からないよ!サボテンも花を付けたぐらいに!」
ウレアパディー「あー、だったら別の用件のついで、というのはどうかしら?」
ウレアパディー「たまたま立ち寄るついでに挨拶を、だったら怪しまれずに済むわよね?」
ソーズティ「……まぁ、それでしたら」
ウレアパディー「じゃ決まりね」
ソーズティ「ちなみにあの別件ってどんな風に?」
ウレアパディー「そうね……あなたが告白しに行くついで、というのはどう?」
ソーズティ「お姉ちゃんそれ全然別件じゃないから!あと告白するんだったらついでじゃなくてメインの要件になるし!」
ソーズティ「『え?名案じゃない?』みたいなドヤ顔で言われても!どこからその自信が来るのかなっ!?」
ウレアパディー「答えは天空から来るブラフマーの道標に刻まれているわ」
ソーズティ「そのフワっとした返しは何?改造されてからそのネタ引っ張るようになったよね?」
ウレアパディー「……ソーズティ、いい?よく聞きなさいね?」
ソーズティ「……は、はい?」
ウレアパディー「その少年は強かった……物理的に、でもなく、魔術的にでもなく」
ウレアパディー「それはあなたも認めるし、私もそうね。認めざるを得ないわ」
ソーズティ「はい」
ウレアパディー「私が戦っている間、少年はずっと見ていたわ――」
ウレアパディー「――私の揺れる胸を」
ソーズティ「……はい?」
ウレアパディー「つまり何が言いたかったのかと言えば……彼は年上のお姉さんに弱いという事、分かるよね?」
ソーズティ「すいません、本当にあっちこっちへ飛び火して意味不明なんだけど……」
ソーズティ「でもそう言われるとそんな気がする……!」
ウレアパディー「だからあなたも頑張って?何年かすればお姉さんよ?」 チラッ
ソーズティ「あの、年下はいつまで経っても年下……」
ソーズティ「あと今何気にわたしの胸を見ませんでしたか?っていうか戦争したいのかコノヤロー?」
ウレアパディー「やっぱりここはバレンタインを頼るべきだと思うのよ」
ソーズティ「……はぁ」
ウレアパディー「……」
ソーズティ「や、あのバレンタインって?」
ウレアパディー「知らないわ。十字教のお祭りなのでしょ?」
ソーズティ「国では……あったのかな?やった事無いか」
ウレアパディー「確かローマ帝政時代に殉教した聖人バレンタインがどう、って小耳に挟んだ記憶があるわね」
ソーズティ「彼の死を悼む日……極東の島国にまで十字教の影響がある、という事でしょうか」
ウレアパディー「えぇ。その時に贈り物をするらしいの」
ソーズティ「成程……で?わたしはどうすれば?」
ウレアパディー「もう面倒臭いから、体にチョコ塗って『プ、プレゼントだからな!』ってすればいいじゃない」
ソーズティ「いい所一個もありませんよ!ていうか贈り物からどうしてアフリカ奥地の奇祭へランクアップしてませんか!?」
ソーズティ「てか何となくですけど姉さん知っていませんかっ!?バレンタインを!?」
ウレアパディー「別に暇だから妹をイジって楽しもうとか、そういう気持ちは」
ソーズティ「……本当ですよね?信じていいんですよね?」
ウレアパディー「……くっ!『結社』で改造された後遺症が……!」
ソーズティ「お姉ちゃんっ!?」
ウレアパディー「――大丈夫、私を信じて、ね?」
ソーズティ「……本当に?」
ウレアパディー「ファルナルアンサ×?」
ソーズティ「お姉ちゃんどんな改造されればネタキャラになるの?その答えにもう不安しか感じない!」
ウレアパディー「ヒント」
ソーズティ「信頼させる体裁すら整えようとしない!?」
――バレンタイン当日 夜
上条「……ただいまー」
上条「……あー疲れたー。今日はいつもよりもハードスケジュールだったよ……!」
上条「チョコは意外と貰えるモノなんだが……どいつもこいつも『義理』って必ず付けるのは……!」
上条「いや別に恨んではないよ!そういうものんだからねっ!世の中には貰えない人だって居るんだしさ!」
上条「そんな人達に比べれば恵まれすぎてるってのは分かってる!あぁ分かってるさ!」
上条「……」
上条「……あれ?これもしかして……ホワイトデーに返す必要があんだよな……?」
上条「この数だったらそーとーキッツイバイトしないと、俺の手持ちだけじゃ無理……」
上条「……」
上条「――うんっ!いいよねっ今はっ!考えないようにしよ――」 ムニッ
上条「むに……?……なんだろう、この、俺が、俺達が求めて止まぬむにむには――」
ソーズティ(裸リボン)「……」
上条「……」
ソーズティ「……」
上条「……疲れているんだな、俺。幻覚が見える」
ソーズティ「違うと思うぞ。わたしが言うのもなんなんだが」
上条「帰って!?ねぇ帰ってよもうっ!?」
上条「どうせアレだろ!?体を張ったボケか体を張った美人局か体を張った嫌がらせのどれかなんだろっ!?なぁっ!?」
ソーズティ「その三択はどんな修羅場をくぐって来たらそうなるんだ」
上条「だって知ってるもの!どうせこの後の展開はビリビリかバリバリかドッキリだーいせーいこーか、あヤダボスそんな所には入らないです!だもの!」
ソーズティ「ひ、人が覚悟を決めてやってるのになんて言い草だ!?」
上条「うん、っていうかあんまカラダ動かないでくれるかな?なんて言うか、こう、うんっ!青少年的には見せられないモノがねっ!」
ソーズティ「お姉ちゃ――姉は、これかが正しきバレンタインの礼服だと言っていたが……?」
上条「スゲーなインド!そりゃ昔々三蔵もお経を取りに行くわ!だってそんな国だったら俺も行きたいよ!」
ソーズティ「……そして姉はこう言った――『もしこれがバレンタインの衣装から外れていても、何ら恥じる所はない』」
上条「恥じろや。まずそのピンク色のリボンを服と呼んでる時点で」
ソーズティ「『大切なのは”誰かに感謝の意を示したい”事が肝要であって、あくまでもプレゼントは手段に過ぎない』」
ソーズティ「『物を送るのが重要ではなく、送る気持ちこそが本物よ』――と」
上条「ヤベェぐらいにいい話だが同じレベルで説得力は無ぇな!」
ソーズティ「わたしの格好が問題ではない。つまりはそういうことだ!」
上条「……あぁうん、まぁ男としちゃぶっちゃけ嬉しすぎてDOGEZAしてもいいぐらいだが」
上条「そう、だよな。的外れではあるけど、お前も恥ずかしいの我慢してやってんだよ……な?」
ソーズティ「その疑問系が気にはなるが、まぁその通りだ」
上条「あー、まぁやっちまったもんはしょーがないから、取り敢えず服着てメシでも喰お――」
ソーズティ「そして姉はこうも言った」
上条「何?まだなんかあんの?」
ソーズティ「――『認知してね』と」
上条「確信犯(※故意犯)じゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?むしろピンポイントで狙ってやがるしタチ悪ぃわ!」
ソーズティ「意味が分からないが……?うん?」
上条「ハメられてって事だよ!あ、意味合い的には逆かも知れないですけどねっ!」
上条「ていうかだな!この手のエロオチをしようとするとお約束ってのが――」
インデックス「――とうま?」
上条「イヤアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」
インデックス「人がせっかくまいかにチョコを作って貰――もとい、教わってたのに、とうまと来たら……!」
上条「いや違うんですよインデックスさん!これには理由があってですね!」
インデックス「うんもう、罰ゲームは決定しているけど言うだけ言ってみればいいガブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
上条「言わせて!?せめてお約束の展開になる間にお約束のネタを挟ませて欲しかったかな!?」