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Clock(trial)

エピローグ


――ローマ コロッセオ

???「――――死んだらどうするっ!?」

???「……」

???「……あぁ怖かったー。死ぬかと思ったー。つーか一回死んだわー」

???「テッラ超つえー。『ククク、ヤツは右席の中でも最弱よ!』的な噛ませ犬かと思ったんだが、相性の問題だわ、あれ」

???「ま、滅ぼしきられる程のもんじゃなかったが、つーか生前にやり合ってたらヤバかったかもしれねぇが、あぁ」

???「あと『万軍英雄(ミリオンアーサー)』か……過去にブリテンで死んだ英雄達を”アーサー”と見なして部分的に召喚」

???「曖昧な定義且つ、様々な物語の英雄を組み込んでいったアーサー王伝説ならではの大技。カッケーな!」

???「……しかもあれ、『アーサー王伝説に組み込まれれば組み込まれる程、剣の本数は増す』ってトンデモ術式か。やってらっんねー」

???「流石は『アーサー王の遺産管理人』ども、ンな隠し球持ってるなんざ、この世界も捨てたもんじゃねぇな」

???「つーかさつーかさ、確かにあん時は連中も龍脈に接続していた――っていうか」

???「セレーネの属性の一つである『死して永遠に夢見る』へ、アーサーの『アヴァロンで永久に横たわる』属性で上書きしてやがったんだけど」

???「もしそれが出来ねぇ状況、ぶっちゃけ何の助けもなしに使えるかっつーと、相当疑問だわなー」

???「あぁっと……連中の術式か、霊装を起動させてた順番はベイロープ、フロリス、ランシス、レッサー……ふむ」

???「名前っつーのは本質をも表しているから、下手なフェイクは入れられねぇ。意味を持たせるとすれば――」

???「ベイロープ、ベイ・ロープ、ベイリン・ロゥ・プール……『Balin row pool(ベイリンは死の淵を渡る)』」

???「フロリス、フローレンス・リス、フローレンス・リスプ――『Florence lisp(フローレンスは震える舌で話す)』」

???「ランシス、ランスロット・シス――『Lancelot cist(ランスロットの石棺)』」

???「レッサー、レス・アーサー――『Less Arthur(未だ満たさぬアーサー)』」

???「――ってトコか」

???「ふーん?あぁそうか、最低でも二人、最悪だと全員死なないと発動しねぇのか!」

???「ベイリンは”災いの一撃”で死ななければいけないし、フローレンスも味方に斬り殺されて、『原型を辿る』必要がある」

???「神話をなぞった術式は強えぇ。だが強い代わりにそれ相応の代償を”持って”行かれっちまう」

???「そして円卓の騎士とは、必ず崩壊して死へ至る運命を持つ、と。イイ感じに狂ってやがるな!」

???「俺的には非常に好みだが、マァブも相変わらず奉仕する人間の魂を欲するか!」

???「今はもう狂ってしまったのか、それとも最初から狂っていたのかは興味深いところだが……さてさて」

???「つーか介入してんじゃねーぞババア。”この”世界はどう考えてもニュートラルなんぞとは縁遠いってぇのに、何考えてやがる」

???「カミやんの『右手』が魔術師のセーフティだってなら、俺達も俺達の……や、違うか?」

???「まさかと思うが……あの売女、テメーらの”子供達”を守るためだけに……?」

???「……」

???「……これだから地母神関係は嫌いなんだよ。ったく、いい加減子離れしねーと」

???「――んが、まぁアレだな。理論通りに”メインプラン”のセレーネ降臨は上々」

???「……つーか最初から分かるだろ?分かっていた話だろ?」

???「”ポラリス”があるおおぐま座は、アルテミスの侍女であるカリストが純潔を破り、天へ上げられた姿だ」

???「それに執着する娘は、母親を慕う子供と何が違う?違わないぜ」

???ギリシャ神話で、セレーネとエンデュミオンとの間に生まれた子は50人を越す。その中には女神もいた」

???「”パンデイア”、神話に登場する露の女神にして別名――」

???「――『エルサ』」

???「日本語読みにしたら面白ぇ事になる。文字通りの『冥護アリサ』だっつー訳だ。だー」

???「……まぁこっちに定着したし、嫌がらせとしても悪くはない。カミやんが大変なだけで俺は知ったこっちゃねぇし」

???「問題は……次は何で遊ぼうかな?私は誰を嘲笑えばいいのだろうか?」

???「……」

???「セレーネ召喚の呼び水に使った、んで使い物にならなかった場合のサブプラン――Κ(カッパー)の三相女神の復活と行くか」

???「たかだかセレーネ如きに一度滅びたんだ。今度は女神三人相手にどこまでやれるか、精々楽しませて貰うとするぜ」

???「『濁音協会』名乗んのも楽しかったがね」

???「……つーかユグドラシルの術式って超使い勝手悪ぃのな。無限再生するだけの躰(からだ)ってドM専用機じゃねぇか」

???「元々戦闘目的じゃなくて、延命目的だからまぁ、しゃーなし的な側面はあんだけど」

???「次はもっとまともな力が欲しいぜ。出来れば痛くないの、遠距離型がいーかなー?」

キラッ☆

???「――ん?流れ星――ハッ!?」

???「津へ津へ津へ!やったねっおにーちゃんこれで津へメテオストライク決定だ!……だ?」

キラキラッ☆

???「まだ、消えねぇな。ていうか昼間に星?どんだけ近くまで落ちて来てんだか」

???「また学園都市の人工衛星じゃねーだろうな……あぁ『エンデュミオン』のスペースデブリから、合法ロリは回収済みなんだっけ」

???「あー……アレだ」

???「探査衛星が地球へ落っこってくる、所謂大気圏突入は大体秒速11kmぐらいになる」

???「時速換算では約時速3万9千6百キロ。キップ何枚切られるか分かったもんじゃねぇわ」

???「ちなみに赤道の長さが4万キロ。超早いと理解出来りゃそれでいい」

???「他にも中距離弾道ミサイルが秒速2km、ICBMこと大陸間弾道ミサイルは7km」

???「ちなみに光速は約30万kmだっけか?大気を越えると減速するらしい」

???「月の地球の距離は約38万キロ、だから大体一秒弱前の光を俺達は見てんだが――って」

???「やっぱりこの”肉の檻”に影響されてやがるな。俺が持ってた冒涜的な知識の殆どが失われてるわー、つれーわー」

キラキラキラッ☆

???「てかどうしちゃったのお星様?シャーロット=ヴェイルでも拗らせた?」

???「……?てか、大きくなってね――」

――――――フッ

???「あるぇ?右目が見えな――」

???「……」

………………ザシュッ!!!

???「あー、成程。音速よりは早かったんだな、だからこう、矢が俺の目に刺さる前に音は聞こえなかったと」

???「そっかー、そうだよ、なんだー、こやつめー!」

???「……」

???「――ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁっはぁぁっ!!!」

???「目が!?俺の目がッ――!?」

???「なんだ――これはっ!?どうして空から矢が降って来やがる!?天気予報には出てなかった筈だぜ!」

………………ザシュッ!!!

???「ァァァァァァアアァァァァァァァァァァァァァガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアァッ!!!?」

???「両目を……クソが!つーか誰だ出て来やがれっ!」

ヴヴゥンッ、ヴヴヴヴヴヴヴヴッ

???「矢がっ!振動し――つーか痛ぇよ!溶けた鉛を脳に突っ込まれるぐらいに痛ぇ!?」

振動?『――あー、ハローハロー?聞こえているか?』

振動?『私の姿を探しているとすれば、それは無駄。私は今ロンドンに居るの」

振動?『君へ声を伝えているのは、この『矢』を振動させ擬似的に話しているだけだから』

???「探すも何もこっちは見えてねぇんだよバカヤローっ!!!」

振動?『ふうん。やはり”この程度”では死ななかったのね』

???「頭イタイんで手短にっ!」

振動?『両目の後ろには大脳があり、大抵の人間はそこを貫かれれば良くて即死』

振動?『悪くて”死に損なった”場合でも、激痛に苛まれてまともな行動出来ない筈。なのに』

???「……テメェは誰だ!?誰が俺の物語へ入って来やがった……ッ!」

???「”ここ”はポッと出のルーキーが余裕かましていい場面じゃねぇぞコラ!」

???「最初から!舞台へ上がって道化を演じ、演じたつもりが本気になったバカ共の立つ場所だ!」

???「――貴様はどんな資格があって私のオペレッタへ足を踏み入れた……ッ?」

振動?『名乗る程の者ではない。私は属すべき結社をこの手で滅ぼしたのだから』

振動?「だ、けれども。声高らかに名乗りを上げられないのは少し寂しいと感じる――なら、ならば』

振動?『今はもうない彼らへの手向けと侮蔑、そして愛情を込めてこう言おう』

振動?『私は”天上より来たる神々の門”の一員だった者、よ』



――ローマ コロッセオ

???「天上の――ウレアパディーてぇ事は――」

???「――『ブラフマーアストラ』か!?」

ウレアパディー(振動?)『あら、私も有名になったものね』

???「……ふ」

ウレアパディー『ふ?』

???「ふざけんなチクショーっ!流れ星なんぞ滅多に流れるもんじゃねぇだろ!」

???「つーか同時に三つの流れ星を確認するなんざ、無茶振りにも程がある!」

ウレアパディー『そう』

???「……」

ウレアパディー『……』

???「……いや、説明は?」

ウレアパディー『君が”龍脈”と接続出来る能力があるのだったら、それを有効に使うべきでしょ?』

???「知らねぇよ!検索するのにだって限度があるわっ!」

ウレアパディー『つい一年前、”エンデュミオンの奇跡”の陰で暗躍していた組織があったわ』

ウレアパディー『それが私達”天上より来たる神々の門”……なんて、言ったものの』

ウレアパディー『”ブラフマーアストラを使ってみたい”なんて、バカな理由で命を賭けた人達だったわ』

???「……話にゃ聞いてる。何でも学園都市のスペースデブリを利用すんだったよなぁ?」

ウレアパディー『そう。空から降って来る残骸を、でしょ?』

???「空――!?」

ウレアパディー『私は見た。邪悪を滅ぼす英雄の剣を』

ウレアパディー『私は見た。魔王に打込む勇者の剣を』

ウレアパディー『私は見た。空から降り注ぐ青冷めた光の柱、そして――』

ウレアパディー『――そこから降り注ぐ、”剣”は流星だった……!』

???「テメェ――『万軍英雄』を流星雨だと解釈しやがったのか……ッ!?」

ウレアパディー『”ブラフマーアストラ”の起動条件は揃ったでしょ』

ウレアパディー『魔術師同士の戦いへ手を出すつもりはないけれど、あなたは私の同朋を傷付けた』

ウレアパディー『だからこれは彼らの怒りを代弁しているに過ぎない……なんて、言ってはみたのだけれど』

ウレアパディー『……結局の所、妹に泣き付かれた、なんて言えやしないわ』

ウレアパディー『あ、皆には内緒よ?』

???「――ッザてんじゃねぇぞ!そんな、そんなご都合主義が通る訳がねぇ!通して良い訳がねぇだろうがよ!」

???「『ブラフマーアストラ』だぁ?ンな大技、流れ星見ましたーハイ使いますー的なテンションでホイホイ撃てる筈ねーだろ!」

ウレアパディー『そうね。流れ星を”確認”するのにだって、数日の儀式魔術を必要とするわね』

ウレアパディー『でも”夜が明ける時には必ず流星雨が降る”のを、予測していたのであれば、前以て準備するのは造作もないでしょ』

???「だからっつって――」

ウレアパディー『ごめんなさい。そうやって”時間稼ぎ”したい気持ちは理解出来るわ』

ウレアパディー『君はきっとこう考えているのよ――”ブラフマーアストラの起動時間はどれぐらいだろう?そう長くはない筈だ”って』

ウレアパディー『そうね、確かにアストラが矢を放てる時間はほんの僅か……ま、アクティブにして、受け付け時間は多少あるけれど』

ウレアパディー『少なくとも既に終わってしまっているのよ』

???『だったら――』

ウレアパディー『けど、ごめんなさいね。あなたの思い通りは行かないわ。何故ならば――』

ウレアパディー『――”私はもう矢を放った”のだから』

???「………………あぁ?」

ウレアパディー『ブラフマーの弓はどこに居ようと何人居ようと、それが狙った相手であれば”全て”射貫く』

ウレアパディー『”そこに居る”君だけじゃなく、”全ての”君を』

ウレアパディー『それはきっと”アガシックレゴート”という魂の記録から、神々が書き給うた書物にも例外ではないでしょうね』

ウレアパディー『そして”龍脈”の記憶からすら抹消されてしまば、何をどうやっても”この”世界へ干渉出来ない』

???「な、なァァァァァァァァァァァァァァァッ――!?」

ウレアパディー『君はもう、この世界から存在ごと消えるの。じゃ――と、最後に一つだけ。妹の新しいお友達から伝言があるわ』

???「そいつか!そいつが俺を殺しやがるのかっ!?」

ウレアパディー『”わたしの辞書にあなたたちの存在はなかったんだよ――つまり”』

ウレアパディー『”――あなたって存在が、ウソ、なんだよね?”』

――――――――――ザシュッ!!!

???「か――――――――はっ……………………」 ドサッ



――学園都市某所

老いた聖堂騎士「――と、無事鳴護アリサは帰還し、悪しき神は退けたようだ」

老いた聖堂騎士「テンプルナイトは全員撤収させた……全員が全員、最新家電を買い込んでいったのが、堕落ではないかと思わないでもないが」

マタイ「佳きかな佳きかな。これで借りは返せた」

老いた聖堂騎士「……」

マタイ「何か問題でも?」

老いた聖堂騎士「いや――なんでもないよ、ヨーゼフ。君がそう言うのであれば、私には何も」

マタイ「不満があるようにしか見えないが?」

老いた聖堂騎士「彼(か)の売女の事は分かる。これからの時代に私達のような老人が出しゃばるのは宜しくないからな」

老いた聖堂騎士「『ゴルゴダの枷』を再び外すのにも問題はあるし、必要最低限の労力で済んだとも評価は出来る」

マタイ「だろう?」

老いた聖堂騎士「だが『ジョン=ボールの首狩り鎌(セイクリッド・デス)』を渡してしまってよかったのか?あれは確か君が――」

マタイ「――佳い、それこそ佳いのだ」

マタイ「あの鎌の出自からすれば、力なき者が振う刃であるべきなのだ。むしろそうでなければいけないのものだ」

マタイ「……今の私”達”は力を持ちすぎた。今更頼るものでもあるまいよ」

老いた聖堂騎士「私はてっきり、あの女狐に渡すものとばかり思っていたが」

マタイ「……この歳になって『色ボケした』と後ろ指を挿されたくもない、私はね」

老いた聖堂騎士「では、帰るとしよう。この街は少々居心地が悪い」

マタイ「ふむ?科学の街は嫌いかね?」

老いた聖堂騎士「そういう訳ではない、ないのだが――」

少女「あ、あのっ!すいませんっ!超すいませんがっ!」

老いた聖堂騎士「……」

マタイ「何かねお嬢さん。年寄り二人が珍しいかな?」

少女「その、ですね、もしかしたら超違うかも知れませんが――」

マタイ「ふむ」

少女「――俳優のイアン=マクダーミ○さんとクリストファー=リ○さんじゃないですかっ!?」

マタイ「……ふむ?」

老いた聖堂騎士「……これだよ、ヨーゼフ」

少女「超よかったらサイン下さいっ!ダメだったら超握手でも構いませんがっ!」

老いた聖堂騎士「……先に戻る」 スッ

少女「あっ!?」

マタイ「……すまないね、お嬢さん。私の相棒は気が短くて困る」

マタイ「お詫びと言ってはなんだが、この老人で佳ければ握手でもしようか」

少女「あ、ありがとうございます!……あの、超聞いてもいいですか?」

マタイ「年齢は秘密だよ。女性関係については『お互いに清い交際だった』とだけ」

少女「あはは、超そうじゃないですよ。そうじゃなくって――」

少女「――クリストファーさん、亡くなった、って超聞いたんですけど?――もしかして!」

マタイ「しーっ!……それ以上言っちゃいけない、どこかでヘルシングが聞いているかも知れないだろう?」

少女「……それじゃ、やっぱり!」

マタイ「あまり長く生きても怪しまれるし、そろそろ頃合いなんじゃないかな?」

少女「そっか……よかった……」

マタイ「……内緒だよ?」

少女「ありがとうございましたっ!わたし、超一生に記念にしますからっ!」

タッタッタッタッタッ……

老いた聖堂騎士「――おい、貴様。何を吹き込んだ?」 スッ

マタイ「佳い佳い。子供に夢を持たせるのも大人の仕事であるな」

老いた聖堂騎士「夢とホラ話は違うだろうに」

マタイ「私は嘘など一つも言っていないよ。何一つ事実を話していないだけだ」

老いた聖堂騎士「……というか、だな。彼はギリシア星教団から目をつけられていなかったか?」

老いた聖堂騎士「ともすれば”本物”として、今もどこかで生きているかも知れないが……」

マタイ「好きだったろう、彼の映画は」

老いた聖堂騎士「……あぁ。もう一度新作を見てみたい所だが……」

マタイ「どう、だろうね。それはきっと彼の気分次第ではあるだろうが……」

マタイ「……例え姿を消したとして、彼は銀幕の中に生き続ける。その魂と共に」

マタイ「……」

マタイ「……そうだな、永遠などこうやって簡単に手に入るものなのだよ」

マタイ「魔術などに頼らなくても、科学などに依存せずとも、な」

幼女A「……」 ジーッ

幼女B「……」 ジーッ

マタイ「おや?どうしたかね、迷子にでも――」

幼女A「にゃあ!シスの暗黒○がどうしてこんに所にいるのだっ!?」

幼女B「しかもドゥークー伯○までセットで豪華だよねってミサカはミサカは戦慄を隠せないし!」

マタイ・老いた聖堂騎士「「……」」

幼女A「が、学園都市では悪い事なんかさせないのだ!だって浜面は強い心を持っ――」

幼女A「……」

幼女A「……わ、わたしが頑張るし!にゃあ!」

幼女B「なにおー!それならあの人だってフォー○の暗黒面になんか捕われ――」

幼女B「……」

幼女B「……ひゅーひゅー、ってミサカはミサカは誤魔化すために口笛を吹いてみたり!」

老いた聖堂騎士「(……どうするんだヨーゼフ。これはプラハの春よりも厳しいぞ!)」

マタイ「(考えるな、感じるんだ!さすれば自ずと道は啓かれよう……!)」

老いた聖堂騎士「(貴様は困った時にはすぐそれだ!『流れで誤魔化そう!』としか言ってないからな!)」

幼女A「――だがしぁかしっ!正義をアイする力は誰にだってあるんだっ!つまり――」

幼女B「――このミサカ達にもフォースの力はある!とミサカはミサカは言ってみたり!」

老いた聖堂騎士「……師よ、如何致しましょうや?」

マタイ「――フゥハハハハハハーッ!笑止!その程度のフォースで我らが暗黒のフォースへ立ち向かうなど片腹痛いわ!」

マタイ「まだまだ力の弱いフォースなど恐るるに足りぬ――だが、しかし!」

マタイ「もしも汝らが毎日毎日早寝早起き、しっかり勉強して友達とも仲良く家族を大切にして好き嫌いなく食事をするようであれば!」

マタイ「何年か後には我が覇道の妨げになる可能性は否めないがな!」

幼女A「にゃあ!?それってホントなのか!?グリーンピース食べればフォースが強くなるのか!?」

幼女B「ミサカの嫌いなセロリにそんな秘密があったとは!ってミサカはミサカは驚愕してみたり!」

マタイ「……くくく、出来るものならばやってみるが佳いわ!」

幼女A「にゃあ!」

幼女B「うんっ!ミサカはミサカはやるぞーって!」

マタイ「それではさらばだ、小さなジェダ○よ!いつしか汝らが敵として相見舞えんのを楽しみしておるぞ!」

マタイ「だがしかしフォ○スの暗黒面はどこにだって口を開けて待っている!」

マタイ「例えば歯磨きしなかったり、お手伝いをしない悪い子とかが落ちるのだ!」

幼女A・B「「――っ!?」」

マタイ「フハハハハハハハハハハーーーーーーーーっ!!!」 ダッ

……

老いた聖堂騎士「……おい、『教会を大切にしよう』を入れておかないと、立場的に拙い気がするんだが……?」

マタイ「……余裕などあるまいよ」

老いた聖堂騎士「まぁいいが――おい!」

マタイ「なんだね。今度は」

小萌「あのー?もしたからなんですけども、そちらにいらっしゃるのは――」

老いた聖堂騎士「……まただ。また幼き少女が、だ」

マタイ「ならばするしかあるまい。道化を演じさせられるのも、演じるのも同じ事――」

マタイ「――それもまた、宿命、か」



――某日 学園都市XX学区 スクランブル交差点

ペーペーペー、ペーペペポー、ペーペペ、ペーペペ、ペペペペポー……

街頭テレビ(レポーター)『――ARISAさん。凱旋記念ライブおめでとう御座いますー!』

街頭テレビ(レポーター)『前売りは一時間で完売、追加席も直ぐになくなる程の人気でしたが、それについては何かありますかねー?』

鳴護『あ、いえ、特には』

街頭テレビ(レポーター)『……』

鳴護『――じゃないです、ありましたっ!』

鳴護『ファンの皆さんにはいつもありがとうございます。わたしの応援に来てくれてる方達から元気を貰っています(※棒読み)』

街灯テレビ(レポーター)『……えーーーっと、はい。ありがとうございます。では次に――』

人工音声『信号が赤に変わります。ご注意下さい』

上条「……相変わらず天然をお見舞いしてやがんなー」

上条(俺は交差点にあるビルのスクリーンに映されてる動画を見ていた。以前のように)

上条(以前、とは言ってもあの日は10月8日。あの異様に長い日からまだ数日しか経ってはいない)

上条(なんかこう、あれだよな?たった一日、時間的には0秒未満の間にどんだけ居たのかって話だ)

上条(まず『常夜(ディストピア)』では体感で2日、コント夢の中もカウントへ入れると更にプラスして2日)

上条(冥界下り……階段下りマラソンは一日だとして……アリサの見た夢は大体一週間ぐらい?)

上条(そうするとトータルで12日前後か……随分頑張った!頑張ったよ俺!)

上条「……」

上条(だがしかし……貰ったのはシャットアウラの素敵なボディブローだけ……!)

上条(ライブを妨害したようにしか見えなかったかもだけど!理不過ぎる!)

上条(確かにまぁ、いつもの『敵の魔術の攻撃なんだ!』とネタが被っていたのは認める。認めるが……)

上条「……」

上条(……あれから、俺達がどうなったのか?世界はどう変わったのか?と、言えば――)

上条(――結論から言えば、何も変わっちゃいない)

上条(アリサがセレーネを説得し、またこの世界は動き始めた。それも以前と寸分の狂いもなく)

上条(停止していた時間を見たのは極々少数。人類でも10人に満たないんじゃないですかー、とはレッサーの弁だが)

上条(地球は相変わらず太陽の周りを回っているし、月もまた同じく)

上条(俺はシャットアウラに殴られて即入院、てか検査入院)

上条(アリサは凱旋ライブを見事に”誤魔化し”、『新たなる光』は見届けた後に姿を消した、らしい)

上条(マタイさんも別れの言葉も一つなく居なくなっちまった)

上条(……ネットで調べたら、前教皇猊下はずっと”ローマで公務中”だったらしく、来日したのも無かった事になっている)

上条(三文小説の夢オチのように、文字通り『夢』だった訳で――)

上条(――俺達以外には”そう”なんだろう)

上条(夢を見ている時には、夢が夢だとは疑わない。疑えば夢は覚めてしまうから)

上条(そして覚めた後に夢を憶えている事も少ない。所詮、夢は夢だ)

上条「……」

上条(繰り返すが世界は何も変わってはいない。変わりようはなかった)

上条(世界のどこかでは誰かが死に、そして生きる)

上条(絶望に希望を見出して立ち上げる人もいれば、希望へ絶望を”期待”して深淵を覗き込む奴も居る……)

上条(『幻想が現実を絞め殺そうとしている』……と、言われれば真っ向からは否定しにくい)

上条(あん時、終わってた方がいいんじゃねぇかなって――あー、いやいや、なんかネガティブになっちまってんな)

上条「……」

上条(……何か、時間を持て余した俺はフラフラと街へ出て来ていた。誰か知り合いと会えねぇかなー、みたいな期待を持って)

上条(……ま、そういう時に限って誰とも会わないのは、ある種のお約束と言えなくもないか)

上条(そんな訳で、俺は止めどなく街頭テレビを眺めていたら、そこへ映ったのはアリサの姿だった)

上条(たった数日とは言え、声を聞いていなかったのは寂しく思う……あぁそれは勿論、レッサー達にも言える事だが)

上条(アホみたいに濃密な時間を過ごした俺達は、なんかもう知り合いとか友達とか、そんな言葉じゃ表現しにくい気もする。まぁ、いいや)

上条(てかアリサ――ARISAのインタビュー生放送なんだろう。アリサさんの天然っぷりが相変わらず炸裂している……!)

上条(タレント的には”素”というのが新鮮らしく、弱小の個人事務所でも結構お仕事があるんだとか)

上条(そのお仕事が食レポだったり、イメージビデオだったり、本人の望むものではないらしいんだが……)

上条(ま、まぁ?前よりは遠慮しない性格になったっぽいし、イヤならイヤだとはっきり言うだろうし)

上条「……」

上条(……てかレッサーが口走ってたっけー……アリサはスポンジ派かー……そうかー……)

上条(そういや夢ん中でおかしいと思ったんだよ!ほら、タオルかける、っつーか干す棒みたいなのあるよな?)

上条(正式名称知んないけどさ、ユニットバスとかで棒吊してあって、そこへタオルやスポンジ掛けて乾燥させるー、みたいなの)

上条(あそこにかかってたのが俺の小汚いタオルとアリサのタオル……なーんか端っこの方に白いスポンジが引っかかってたんだよ)

上条(最初、『あれ?バスタブ洗う時用のスポンジ?』って思ってたんだが、別に聞くような事じゃないし、ボロが出るのもアレだしでスルーしたんだが)

上条(家事手伝うようになったら、『あ、当麻君。バスタブのスポンジはベランダにあるから』って、あぁそれじゃこっちのスポンジ何なの?みたいな)

上条「……」

上条(それがっ!あの白くて柔らかそうなスポンジがっ!より正確にスポンジを絹100%のネットで覆った肌に優しそうなのがだ!)

上条(なんかこう良い匂いがするなー、とかバスタブに浸かりながら毎日毎日思ってたんだよ……それがッ!)

上条(あの、素晴らしいたゆんたゆんをスポンジで……ッ!!!)

上条「……」

上条(……止そう。幾ら何でも知り合いに失礼すぎる。そして俺は頭が残念すぎるわ――と)

上条(つーかまだ数日かぁ。何が長い時間が経ってる気がするんだよなぁ)

上条(あん時は確かバードウェイからの電話がかかってきたんだよ、うん)

チャーチャーチャチャー、チャチャチャー……

上条(そうそう、こんな感じ――)

上条「……」

チャーチャーチャチャー、チャチャチャー……

上条(出たくねぇっ!超々出たくねぇなっ!)

上条(着メロ、ダースベーダ○のテーマに設定しやがったのはどこのどいつだっ!?面白カッコいいけどもだ!)

上条(つーか誰?まさかマジでバードウェイじゃないよね?戻って来たつもりなのに、世にも奇○な世界に帰って来たとかねぇよな?)

上条(あー……液晶に出てる名前は――『上条刀夜』?父さん?なんでまた?)

上条(いや、だったら出るけどさ。だって安全だもの)

上条(つーか父さんの書類、レッサーさんがパチったままで返してねぇよ。そっちの話か……?) ピッ

上条「『――もしもし?上条ですけど?』」

刀夜『あー、もしもし上条で御座います、いつもお世話になっております』

上条「『父さん、営業トークになってんだけど』」

刀夜『当麻か?今、ちょっと時間大丈夫かな、話があるんだけどさ』

上条「『あーダイジョブダイジョブ、俺も今ヒマ持て余して――ん?』」

刀夜『どうかしたかい?忙しいんだったら、後から掛け直すよ?』

上条「『いやぁ――携帯がなんか重いんだよ、スッゲー』」

刀夜『当麻はガラケーだったっけ?折角学園都市に居るんだから、最新式の探せばいいのに』

上条「『……色々あって直ぐ壊すからなぁー……てか、異様に重いな。なんかストラップについてる?』」

上条「『ケータイクリーナー?それにしちゃやたらと重いし、人肌だし――』」

マーリン「……」 チラッ

上条「『……』」

刀夜『とうまー?どうしたんだい、とうまー?もしもーし?』

上条「『あっゴメンっ父さんっ!今ちょっと野暮用が出来たからっ切るなっ!』」

刀夜『ちょま――』 ピッ

上条「――で、何やってんですかマーリンさん?」

マーリン「『ワイはマーリン!ブリテンいちの魔術師やで!』」

上条「ぬいぐるみのフリしてんじゃねぇよ。つーか触ってもないのに勝手に喋るか!」

マーリン「いやんっばかんっ!ワイには心に決めたお人がおるのに触るやなんてっ!」

上条「おっと手が滑った『右手』でタッチ」 モフモフッ

マーリン「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 パキイィィンッ……!

上条「……」

マーリン サラサラサラサラッ……

上条「え、なに?マジで効いたのかっ!?ええぇっ!?」

上条「や、でも『常夜』ん時はもふもふしても効かなかったじゃんかっ!」

マーリン「……」

上条「……」

上条「えっと……ゴミ箱――」

???「待ぃよ?なんぼなんでもその態度は失礼ちゃうのん、んん?」

???「ワイもレッサー達にイジられて大概やけど、まずゴメンナサイすんのが先ちゃうか?あぁん?」

上条「マーリンの声……?どこから――」

上条「――って千切れた方の毛糸の残骸から……?」

マーリン(???)「まいどっ!おおきにっ!」

上条「一回り小さくなった!?つーか死んでねーじゃん!?効いてなかったのかよっ!」

マーリン「や、効いてた効いてた。やけどその程度で『魔術師の中の魔術師』を倒そう
言うんは百年早いわっ!」

上条「じゃ、もう一回」

マーリン「ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉっ!?」

上条「いや、しないけどさ」

マーリン「何で!?こんだけ振っといてテンドン無視するのは鬼の子ぉの仕業やんっ!?」

上条「知らん知らん。いいから、つーか何でお前俺のケータイクリーナーになってんの?」

マーリン「お前やのぉて、ま・あ・り・んっ!って呼んで!」

上条「……まーりん」

マーリン「誰がマーリンやねん!そんなホイホイ女の子の名前呼んだにらアカンよっ!」

上条「……あぁ面倒臭ぇ!今ならレッサー達の気持ちがよぉぉぉぉっく分かる……っ!」

マーリン「や、必要やん?こう、人生にウェットなジョークみたいなんは?」

上条「……路上でぬいぐるみ相手に一人芝居してるイタイ人って思われる前に何とかして欲しかったぜ!賢者名乗るんだったら特にな!」

上条「見て見ろ!既に俺の周りにはニヤニヤしながら笑ってるロリっ子以外には誰も居ないぜ!早足で消えてったから!」

マーリン「まぁまぁ気にせんと。ハゲよるよ?」

上条「どっかにゴミ箱……あ、コンビニでいいか」

マーリン「マーリン捨てるの良くないと思いますぅ!だってほら、分別的にゴミ箱じゃ扱ってへんし!」

上条「あ、それじゃどっかに置き忘れれば良くね?俺ってうっかりさんだからなー、仕方がない仕方がない」

マーリン「ヒドっ!?発想が悪オチしてるやんかっ!」

マーリン「てーか生き物飼うんやったらな、最期まで面倒見ましょうってワイは教えた筈やでっ!恥を知りぃよ――」

マーリン「――ってワイ教えてへんやないかーーーい!ルネッサーーーーーンスッ!」

上条 フキフキ

マーリン「あの……上条はん?なんやツッコんでくれへんと、オチてへんから次のチャプター行けへんのよ?分こぉ?」

マーリン「ちゅーか無言でワイの筐体使ぉてケータイ拭かれると、なんやモヤモヤするっちゅーか、な?」

上条「いいから、要件を、さっさと、言え!」

マーリン「あ、その言い方ベイロープに似とぉわ」

上条「……ベイロープはこんなストレスをいつも抱えていたのか――!」

マーリン「……あの子ぉはレッサー達の指導もせんとアカンし、大変やよね?」

上条「元凶が言うな!つーかあんなポジティブな変態ども育てたのはお前の仕業じゃねーか!?」

マーリン「否定はせんけど……ま、でも、代々の王様ってあんな感じよ?いやマジでマジで」

マーリン「そもそも頭良かったらガリアからの独立とか考えへんし、ランスロットも放置せぇへんやんか?」

上条「……マーリンのオリジナルが言うと説得力かある、のか?」

マーリン「まー、大概の英雄っちゅーんはどっか抜けてへんとアカンのよ。大望があって、立ち上がるだけの意志以外には何も要らんし」

マーリン「力なんてぇのはワイらみたいな、お節介な連中が出しゃばればええんよ」

上条「つーかな、マーリンさん生きてたのか?レッサー達と話した感じじゃ、死んだっぽい扱いになってたけど」

マーリン「あー、あの体は死んだ――ちゅーよりか、内蔵した魔力使い果たして崩れたわ」

マーリン「流石に魔神相手にこの体でどうこうすんのが間違いやっとぉ……ま、でも?レッサー達、残機増やしてたやん?」

上条「残機?」

マーリン「見とったやん。ほら、プチプチィって千切って」

上条「あー……そういえば千切られたら増えるとかなんとか言ってた――」

上条「――ってアレ、ネタじゃなかったのかよ!?」

マーリン「うん、そう――あ、口調忘れてるなー」

上条「うん?何か言ったか?」

マーリン「何も言うてへんよ?――てかレッサー言うて無かったっけ?『マーリンは霊装か龍脈の切れっ端』みたいなの」

上条「それも聞いた気がするが……なんか、モヤッとするな。正体が分からないってのは」

マーリン「んむぅ……ま、上条はんにはウチの可愛いアホの子ぉ達が世話になっとぉし、スジ通さなアカンかぁ」

上条「無理にとは言わない。てか、誰がどこで聞いてるかも分からねぇんだから」

マーリン「あぁそれは心配要らへんよ。さっきから人払いの結界を、ちょっとだけ強くしとぉの張っとぉわ」

上条「いや効いてねぇだろ、ヤブ魔術師。あっちに一人居るっつーの」

マーリン「ちゅーかな、ワイの中の姿知っとぉのて、オリジン・アーサーも含めて誰もおらへん」

上条「はい?」

マーリン「当たり前やんか。誰にどんな魔術かけられるか分からんし、身内やっても裏切れるかも知れんのよ」

マーリン「やったら誰も最初から信用せぇへんと、こうやって使い魔使役させんのがええやんな?」

上条「って事は、”これ”」

マーリン「この筐体は霊装やね。やから無理も利くし、下手な事では滅ぼされへんのよ」

上条「俺が触って、壊れる壊れないのジャッジは?」

マーリン「『常夜』が発動してる時には、ちょいちょいっと魔力盗ませて貰ぉてたわ」

マーリン「この街はちょぉっとマナが薄ぅて、近くに魔術師でも居らんと自立行動は出来んのよ」

上条「あぁ、だからさっきから動かないのな……んー」

マーリン「何よ?言いたい事があったら聞こぉで?」

上条「……お前、それ仲間信用してないって事じゃねぇのかな、ってさ」

マーリン「……あぁ、それ言われると辛いなぁ。ワイも全然気にしてへん訳じゃないんよ」

マーリン「堪忍な?それがワイ――ブリテンを護る魔術師の役目であり、王様と交わした約束でもあるんよ」

マーリン「あの子ぉらは最悪の最悪、ワイが居れば復活出来るけど、ワイはそうはいかへんからな」

上条「……納得行かねぇな、それ」

マーリン「……」

上条「つまりアレだろ?お前はレッサーみたいな子達を戦場へ送って、お前自身はどっか安全な場所から眺めてるだけ」

上条「ゲームで良くある代理戦争じゃあるまいし、そんな事……ッ!」

マーリン「あー、それはちゃうちゃう。ちゃうちゃうちゃうねんよ?ちゃうちゃうやで?」

上条「意味が分からんわ!」

マーリン「んー、そやんなぁ。どう話したもんか……」

マーリン「――あ、エエ事思い付いたっ!」

クタッ

マーリン「……」

上条「……マーリン?どうした?」

上条「もしもし?もしもーし?……切りやがった、のか?」

上条「……」

上条「……よし、それじゃコンビニに捨て、もとい忘れて来よ――」

ギュッ

上条「あん?」

上条(ぐったりしたマーリンの体をどこに捨てようか、と思っていたら)

上条(後から軽い衝撃と、温かい誰かが密着して、俺の胸の前で両手を回してきた)

上条(……その手は小さく、まだ子供のもの――つーかオンブしている格好だが……?)

???「――ワイやってな、ワイの子ぉを戦さ場へ送るぅんは好きとちゃうんよ?」

上条「……マーリン?」

上条(マーリンの声がするのは、クテっとなったぬいぐるみではなく。もっと後――)

上条(俺に背負われているらしい、女の子の口から発せられた)

上条「お前、それが――」

マーリン「あ、振り向いたらアカンよ?そうなったら責任取らんといかなくなるよって」

マーリン「――ね、”おにーさん”?」

上条「この声、どっかで――」

マーリン「落とし物、役に立ちましたか?」

上条「お前……ライブ会場の外で、ケミカルライト渡してくれた女の子かっ!?」

マーリン「みんなにはヒミツやで?」

上条「もしかして――レッサー達に何かあったら、助けられるように、か?」

マーリン「……あぁそれは誤解や、上条はん。ワイは――というか、ワイらにはそないな自由もないんよ」

上条「意味が……分からねぇんだが」

マーリン「あー……そやんなぁ。オティヌス居るやん?下乳魔神の?」

上条「そのオティヌスは知らないが、世界の敵になってる魔神なら知ってる。つーか『右手』切られたばかりだ」

マーリン「そうなん?切られた”ばかり”で合っとぉ?」

上条「合ってる……よ?」

マーリン「……ま、その話は本題と違ぉし触れへんけども、オティヌスの『50%の制約』っておかしいと思わへんかった?」

上条「あぁ、よくは理解出来てねぉんだけど、何やったって50%の確率で失敗する、みたいなのか」

マーリン「それだけやないよ。正しくは『50%で自身へ還ってくる』んよ」

マーリン「もしただ成功確率が50%だけやっとぉ、二回同じ事を繰り返せばエエし、最悪成功するまで何回もやれば済む話や」

マーリン「なのにそれをしない、出来ない言ぅんは、自分に跳ね返って来よぉ」

上条「それじゃ、俺の右手を切り飛ばした時、可能性としてはオティヌスの右手が切り飛ばされるかも知れなかったのか?」

マーリン「やんね。やから即死系の術式は出来ひんし、手ぇ出そうにも中々上手く行かへんのやけどもぉ――」

マーリン「『なんでコイツ、こんな面倒ぉな制約付けとぉ?』みたいなん、思わへん?」

上条「あー……言われてみればそうだよなぁ。その制約があるから、奴は世界を滅ぼしてないんだっけか」

マーリン「そもそも”そんな呪いはオリジナルであるオーディンには無い”のに、おかしな話やなぁ?んん?」

マーリン「……ま、でも難しい話とちゃうんよ。至極単純な話や」

マーリン「時に上条はん、”Ship in a bottle”って知っとぉ?」

上条「知らない、かな」

マーリン「日本語やと……ああっと、ボトルシップ、で合っとぉか?」

上条「そっちは知ってる。ワインみたいな空の酒瓶の中に、船の模型を入れて飾るんだろ?」

マーリン「それや、それそれ。ちなみに作り方は?」

上条「あぁ、『瓶の口よりも大きい船の模型をどうやって入れたんだろう不思議!?』みたいな、リアクションはしねーぞ」

上条「あれ確か、ボトルの口からピンセットで模型の部品を入れて、中で組み立てるんだよな」

マーリン「やんね。要はそれと同じなんよ」

上条「どれと?」

マーリン「『普通に接したらこの世界は壊れてしまう、だから力は50%の確率を負う』って制約がピンセットみたいなもんやね」

マーリン「そうでもせぇへんと、あんだけ大きい力を無尽蔵に振るえとぉたら、世界が幾つあったって足りへんよ」

マーリン「やから『よし!相手殺そぉか!』って力放ったら、半分の確立で自分が死ぬっちゅう”呪い”をな」

上条「……何となくは分かった、気がする。ただその、気になってんのが一つ」

マーリン「何?」

上条「制約制約つってるが、それは”何”なんだ?誰に付けられたんだ?」

上条「学園都市でオッレルスから聞いたんだけどさ。魔術を極めると魔神になるっていうじゃん?」

上条「それは何となく分かるんだよ。中世の錬金術師や、魔術師が求め続けてきたのは『神へと至る手段』だっつーのは」

マーリン「日本人にはよぉ難しい概念やねんけどなー。ほら、大八洲(おおやしま)には神が溢れとぉし?」

上条「……うんまぁ、出雲から電気街まで色んな所に居るな!」

マーリン「そこら辺を注意して『右席』を見よれば、また違ぉ解釈も出来る筈や」

上条「魔術を極めた結果、行くべき道を突っ切って、更に踏み込んだ先――それが『50%の確率』ってのは、おかしい気がする……」

上条「階段を登るように、もしくは奈落へ転げ落ちるように力を付けていくんだったら、そのどこかで妥協したりはしなかったのか?」

マーリン「誰や、っちゅう訳ではないんやけど……まぁ、自然の摂理みたいなもん?」

マーリン「科学サイドでも言うやん?『人間がフルパワーで動いたら、靱帯・筋肉・骨格がバッキバキになるさかい、常に手加減しとぉ』て話」

マーリン「それと同じで、ワイらも望む望まん限らず、どうやっても制約は受けよぉ」

上条「って事は、つまり。”こっち”のもふもふは、お前にとっての”ピンセット”か?」

マーリン「そうやんね。ワイにとってはそれが制約……ま、呪いみたいなもんや」

上条「……昔からな。不思議には思ってたんだよ」

マーリン「ん?何を?」

上条「三国志で諸葛孔明って有名な軍師が居るんだよ」

マーリン「三国志の名前の由来になった、国を三つ立てて拮抗さそぉとしたお人やんね」

上条「『コイツ別に軍師にならなくても、劉備押しのけて君主になっちまった方が話早くね?』」

マーリン「それは……まぁ、うん、なんちゅーかな、ぶち壊し的な発想やけど!」

上条「同じく。アーサー王伝説の魔術師マーリンも、チートに近い能力を持ち、つーか物語によってはアーサー食ってるレベルで」

上条「それがまさかマーリンは活躍しちゃいけなかったのか……?」

マーリン「……あぁ、それは間違ってへん。へんけども……違ぉとぉよ」

マーリン「別にワイは力を出し惜しみしとぉ訳や無いし、どの王様にも全身全霊で仕えとぉ。それはアーサー王の名前にも誓ぉよ」

マーリン「それにオリジンもそうなんやけど……子供の頃から預かっとぅ子を、可愛くないと思わん親はおらへんやろ?」

マーリン「ただの素人を一端の魔術師まで育て上げるのに情が移らへん程、ワイは狂ってへんよ……”まだ”」

上条「……ごめん」

マーリン「それに『マーリンの最期』は”最愛の女性に塔の中へ幽閉されて死ぬ”っちゅー運命がおぅて」

マーリン「”最愛の女性”――つまりワイの娘達に替ぉて、『Reverse Endymion(エンデュミオンの逆さ塔)』へ行く覚悟は出来とぉ」

上条「……」

マーリン「やってレッサー、ベイロープ、フロリス、ランシス……イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド」

マーリン「ワイがこのマーリンを名乗るよりもずっとずっと前、『蜂蜜酒の女王(ミード)』として君臨しとぉてた頃から――」

マーリン「――アルビオンで産まれたんは全員ワイの子ぉや。可愛い可愛い、ワイの娘達やで」

マーリン「それは多分、魔神セレーネが全ての命の”妣(はは)”であったのと同じよぉにな?」

上条「……マーリンと名乗る”前”?」

マーリン「レディの過去の詮索すんのは野暮天焼きやで、上条はん……ただ、ま」

マーリン「ヒントをあげるとすれば、マタイはんも面白い事言っとぉ。確か『世界が滅びた過去は無い』やったっけ?」

上条「あぁ、だから『位相世界』はただの神話に過ぎないし、魔神も降臨した事が無いって」

マーリン「それはな。おるんよ、お節介焼きな連中が」

上条「……何?」

マーリン「この世界を壊そうとする魔神、オティヌス以外にも存在しせぇへんって誰が決めとぉ?そして何を知っとぉ?」

上条「それじゃ――まさか!?」

マーリン「この世界は何度も何度も、悪い神さんの手ぇによって滅ぼされかけとぉわ」

マーリン「三千世界を統べる暴虐の魔神、星辰の彼方から来た邪神、時には自然発生した嵐の神も居ぉたし」

マーリン「ここ大八洲でも……天に天津甕星、地に素戔嗚、海の彼方に名も無き異形の神」

マーリン「どの時代にも魔神や、魔神に近い性質を”持ってしもぉた”連中がな。その性質そのままに悪さしよぉ」

マーリン「……でも、そうなる度に、人間は全て討ち倒して来たんよ」

マーリン「――そう、ワイらの手ぇを借りて、な」

上条「だったらお前――じゃない、あなたは……?」

マーリン「でもワイにはワイの誇りがあるん。この世界、人間だけでよぉ作らなあかん。それに手ぇ出すのはルール違反やで」

マーリン「……残酷なように聞こえるかもやけど、もしワイらが全て解決しとぉたら、それはきっと種としての終わりと同じや」

マーリン「『カーゴ・カルト』の一種に”フィリップ王配信仰”っちゅーんがあるんよ」

上条「カーゴ……?貨物信仰?貨物車信仰――って、レッサーが大分前に言ってたような……?」

マーリン「んー……日本ならマレビト信仰、ワイらで言えばプレスター=ジョンやよ」

マーリン「大体11世紀終わり頃、度重なるクルセイドが失敗に終わり、オスマントルコの脅威が十字教へ迫って来とぉた時や」

マーリン「東方三賢者の末裔にして、極東にあるとされた十字教の王、プレスターがいつか現れ、クルセイドを参戦するよってー、みたいな信仰やね」

上条「よく分からんが……」

マーリン「で、時は下って20世紀。連合軍がとある南の島で基地を作ろう、っちゅー話になって」

マーリン「原住民の助けも借りとぉ、港やら滑走路やらは特に軋轢も起こさず完成しとぉた」

マーリン「ちゅーのも、連合軍は島の原住民へ対し、持ってた物資やらを分けてすんなり了解を得とぉ。ま、これはエエやん」

マーリン「……ただなぁ、問題になっとぉのがこの後。原住民がなぁ……」

上条「話の流れからすると、連合軍へ攻撃した?」

マーリン「いんや逆。崇拝しよった」

上条「……はぁ?」

マーリン「なんや、元々の信仰の下地はあったらしゅうてな?こう『遠い所から我々の神さんが来ぉて繁栄させてくれよぉ』的な?」

マーリン「やから……まぁ、そのな?飛行機のメス作り始めよったんよ。いやマジで」

上条「……はい?」

マーリン「何でも連合軍の使ぉてる飛行機はオスなんやて。やから飛行機のメスを滑走路に置いておけば、また来てくれる――」

マーリン「そして『自分達に物資をもたらしてくれる』っちゅー、な?」

上条「笑えない話だな……」

マーリン「や、まぁその程度なら笑って済ますのもエエんやけど……原住民の人ら、今まで自分らが作ってきた文化を捨て始めよぉた」

マーリン「貨幣代わりだったら獣の歯を捨て、農耕や漁を止め、育ててきたブタやニワトリをさっさと捌いて食いよぉ」

マーリン「過去の文化を全否定して、作り始めたのが藁で作ぉたメスの飛行機モドキ、滑走路モドキ」

マーリン「他にも木で作ぉたヘッドホンやラジオにライフル銃。あ、あと入れ墨で神が作ぉてる名前を刻むのが流行っとぉな」

マーリン「その名前は『USA』」

上条「うわぁ……」

マーリン「今の例は極端やー……ちゅーてもなぁ、もし仮に神さんが居たとして、ホイホイ言う事聞いとぉたら、人類は終わりよぉな」

マーリン「狂ぉたセレーネのように、世界はただ静かに滅ぼぉわ」

上条「……」

マーリン「……ワイに出来る事なんてなんもあらへんよ。こうして、ほんの少ぉし手ぇ貸すぐらいが精々やし、それに……」

マーリン「……ワイの娘がなんぼ可愛い言ぅても、こうやって抱き締める事も出来ひん。側に居て名乗る事すら許されへん」

マーリン「傷ついて、傷ついて、傷つくのを黙って見てるしか……」

マーリン「……母親として失格やん、な」

上条「……」

マーリン「……何も言ぉてくれへんの?なんや、凹んでる女が居ったら慰めんのがマナーやで」

上条「……いや、アリサん時もそうだったんだが、ここで安請け合いするような事は言いたくない」

上条「そもそも俺は何も分かってはないから。世界の事とか、様々な事を」

上条「旅の間中、色々な話を聞いたけれど……それもきっと間違いではないんだろう。現実の一つなのは間違いない」

上条「でも、俺にとってはその殆どが遠い国の遠い話……嫌な言い方をすれば、”他人事”かも、しれない」

マーリン「上条はんは悪ないよ……そぉいうもんやで、人は」

上条「――でも、けれども、だ」

上条「だから自分の目で見る事にする。自分の耳で聞く事にする」

マーリン「……?」

上条「この世界が、幻想が現実を絞め殺しに来ている――そう、俺の知り合いは言ってた。俺も納得はした」

上条「でも、それが本当かどうか、俺はまだ自分の目で見た訳じゃない。事実を確かめたのでもない」

上条「だから――あぁ、だから」

上条「取り敢えずは”知ろう”と思う。何が正しくて、何が間違っていて……どっちも正しいのか、間違ってるかも知れないし」

上条「そうして知った上、もしくは調べながらも、俺は――」

上条「――俺”達”は――」

上条「――自分の歩幅で、歩いて行こう……と思うよ」

マーリン「……そぉかぁ。やっとぉ、上条はんがどんな判断するか、楽しみにしとぉわ」

上条「……つっても、出来る事なんかちっぽけだがな」

マーリン「ええんよ、それで。何もかも自分でやろうとしたら、結局は大抵独りで死んどぉ運命にハマるわ」

マーリン「どっかのホラ吹きのように、世界相手に嘲笑い続ぇ羽目になるよって」

上条「その例えはよく分からないが――イッ!?」 チュッ

上条(背中に張り付いていた重みが消え、その瞬間、頬へ柔らかいものが触れる)

上条(残ったのは濃厚な蜂蜜の香り……?)

マーリン「――ま、上条はんの最初の判断は誰を選ぶかやねっ!」

上条(俺が持っていたもふもふが喋り出し、背後の気配は音もなく消えていくが――俺は振り返らなかった)

上条(それが……礼儀のような気がして)

上条「……うん?誰?誰ってどういう事だ?」

マーリン「イヤイヤっ!?上条はん、以前ここで黄昏れてた時思い出してみぃよ!」

上条「黄昏……あぁ、うん、あん時もブラブラしてたんだっけか」

マーリン「なんで?なんでブラブラしとぉ?ほら、おねえぇさんに言ぉてみぃ?ホレ?」

上条「あー……そういや、なんか悩んでたんだよなー。なんだっけかなー……?」

上条「アリサの様子がおかしかった、とか?」

マーリン「いやいやいやいやいやっ!違うやん、そうじゃないですやんっ!」

上条「……つーか何でお前が俺の悩み知ってんだよ」

マーリン「何を今更……見とぉたからに決まっとぉ」

上条「見てた?どこを?」

マーリン「ウェイトリィ兄弟倒しーの、レッサーとベンチで腰掛けぇーの」

上条「ありましたねー、そんなの」

マーリン「ぶっちゃけそん時にコクられとぉよね?」

上条「……ありましたねー、そんなの」

マーリン「ちなみに逃げよぉ思ぉても無駄やで?堪忍しぃよ?」

上条「そ、その心は?」

マーリン「うん、今日はお疲れ会開こぉちゅー話になっとぉんよ」

上条「……あ、あの?俺そのお話聞いていないんですけど……?」

マーリン「あーうん、心配せぇへんといてよ!そこはバッチリ、このっマーリンさんに手落ちはないんよっ!」

上条「そ、そうか?」

マーリン「全員ここの交差点に集まれっちゅー手配しといたんよ、うん」

上条「よく分かったなー……じゃねぇよ、俺のストラップに変態(生物学的な意味で)してたお陰だろ!」

マーリン「や、さかいっ!ここで一体誰ルートへ入るんかっ!決めて貰おうやないのっ!」

上条「……」

マーリン「お、どぉしたん?顔色悪いで?」

上条「あ、ごめん!俺ちょっと塾の時間だから早く帰らないと!」

マーリン「うぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!みんなーーーっこっちこっちーーーーーーーーーーーっ!」

上条「黙れ変態生物っ!俺から逃げ場を奪うなっ!」

マーリン「……くくく、こないな展開になると思ぉてたわ!片腹痛いでこれしかしっ!」

上条「なぁ、素に戻って聞きたいんだけどさ。俺ってそんなに信用ないの?」

マーリン「や、ワイもね?別にそこまではー、みたいなの言ぉたよ?レッサー達に言ぉたんやけどもね?」

マーリン「上条はん、女性関係に関しては、更正前のジャン=バルジャン並に……うんっ」

上条「微妙に表現をボカしてくれてありがとう!その事実は俺が受け止めるには重すぎるからなっ!」

ラシンス「……あれ、時間的に端折られるんだけど……一回では更正しなかった……」

ベイロープ「……てか、往来で先生と話していると、その……」

上条「……分かってる。あぁ、分かってるさ!」

フロリス「ビョーキ持ちの人みたいに見えるジャン?」

上条「分かってるから言うなよぉ!一応は人払いされてるんだし!」

レッサー「あ、もう切れてますよ。じゃなかったらランシスがアンアン言ってるでしょう」

ランシス「……ふっ」

上条「何で勝ち誇るのか意味が分からない……多分、意味は無いんだろうけど」

上条「……ていうか、皆とも久しぶりだな。元気だった?」

レッサー「お陰様でまぁ何とかやっていますよー。てか怪我らしい怪我はなかったですし」

上条(そう答えるレッサーの髪の色は元へ戻っていた)

上条(……ただ、少しだけ金色のメッシュ部分が広がっているような……?)

レッサー「気になるんだったら、どうぞ手にとって確かめて下さいなっ!さあさあさあっ!おっ気軽っにっ!」

上条「ねぇレッサーさん?今俺ちょっとしんみりしてたよね?ちょっとナイーブな雰囲気出してたじゃんか?」

上条「なんかこう、『この子達は自らを犠牲にしながらも戦っていくんだな』的な余韻に浸るシーンだよね?」

上条「だっつーのにテメェはどーして胸突き出してんだ?あん?」

レッサー「え?おっぱい凝視してませんでしたか?」

上条「残念ながら今日は見てなかった!つーかどんだけおっぱい好きだと思われてんだよ俺っ!?」

全員(-1)「えっ?」

上条「この外道共が!テメェらの血は名前を言ってみろ!」

ベイロープ「色々ミックスされてるみたいだけど……」

ラシンス「予想以上に生態バレしてて混乱してるとみた……」

フロリス「や、でもホラ、さ?ジャパニーズ見るジャン?つーか見てたジャン?ワタシらを?」

上条「見て――ない、けども!ここはオトナだから話を合わせて見て事にしておくけど!オトナだからねっ!」

フロリス「視線に気づかない訳がねーよ、的な。ウン?」

ベイロープ「男と違って――ってのはあんま使いたくないけど、見られ”慣れてる”分だけ、女の方が視線に敏感なのよね」

上条「……待ってくれ!違うんだ!これはきっとアレがあーしてコレがこーしたから、それなんだ!」

マーリン「もはや良い訳も出来ひん時点で詰どぉよ」

レッサー「てかお好きですよね?」

上条「大好きさっ!そりゃ大好きだけどもだ!」

上条「――てかアリサさんは?まだ来てないみたいだけど!」

レッサー「その超絶強引な話題転換で誤魔化されると思ってる所は、”Too too Bad(残念)”ですが……」

レッサー「ま、少しだけ待てば来ると思いますよ」

上条「え?でもホラ、テレビで中継やってるし?」

レッサー「中継、ですか?」

上条「ほら、見てみろって」

街頭テレビ(レポーター)『――成程!流石はディフェンディングチャンピオン、貫禄が伺えますね!』

上条「ちょっと目を離した隙に凄い話が展開されてんな!何となくメシ関係の話だとは分かるが!」

レッサー「あれはあれで必要ですからねぇ。文字通り美味しい商売ですし」

上条「……あぁなんか違和感あるなーっと思ったら、食う量元へ戻ってんのな」

レッサー「何のお話で?」

上条「夢ん中でのアリサの話、つーか設定?家事全般が得意で、料理も上手くて小食っつー感じだった」

フロリス「我に返ったら、『あ゛あああああぁぁぁぁぁっ!!!』ってシャウトする感じじゃネ?」

ランシス「触れないであげる優しさ……」

レッサー「いえっ!むしろここは延々イジッて差し上げるのが芸人的な意味での優しさかと!」

ベイロープ「それ、絶対違う。ていうかあなたとアリサは同じカテゴリじゃなかった」

レッサー「なんと!?エロ可愛いとコンセプトにして来た私がっ!?」

上条「お前はただエロイだけだ……て、まだインタビュー終わってねぇな」

レッサー「いや、ですからね上条さん?さっき頂いたメールに拠れば、それはとっくの――」

街頭テレビ(レポーター)『では最後の質問になりますが――ズバリ!』

街頭テレビ(レポーター)『ARISAさんには気になるお相手とかいらっしゃらないのでしょうかっ!?』

街頭テレビ(レポーター)『ファンも聞きたがってると思いますよ!ぜ。是非っ!お返事を――

マネージャー『――はい、と言う訳で会見は終わりになります。本日はありがとうございま――』

鳴護『……あ、ごめんなさい。その質問待ってました、実は』

街頭テレビ(レポーター)『――はい?』

マネージャー『………………ARISAさん?――っ!?中継停めろ!カメラもだ!』

鳴護『当麻君っ!上条当麻君っ!聞いてますか、聞いてますよねっていうか聞いて下さいっ!』

レッサー・ベイロープ・フロリス・ランシス「「「「……」」」」 ジーーーーーーーーーーッ

上条「………………俺?」

マーリン「あ、堪忍な。ワイちょっとコンビニ行っとぉから、続けて続けて?他意はないんやけど」

上条「自立移動不可能じゃ……あ、ふわふわ飛んでる」

鳴護『えっと……はい、その、色々、考えたんだけどね。その――』

鳴護『上条当麻君大好きですっ!あたしと結婚を前提にお付き合いして下さいッ!!!』

上条「――――――――へ?」

四人「……………………」

マネージャー『言いやがった!?つーか自分がリーダーに殺されますから!?』

鳴護『と、ごめなんさいっ柴崎さんっ!お姉ちゃんには”わたし”から言うからっ大丈夫!……多分!きっと!』

マネージャー『誰が言ったって殺さ――』

プツッ

街頭テレビ(司会者)『――はい、と言う訳ですね。先程の爆弾発言を投下したARISAさんでしたー』

街頭テレビ(司会者)『ARISAさんの言ってた、トーマクンとは一体誰の事なんですか?さぁー続報が待たれま――』

上条「――あー、ごめんな?俺確か父さんから呼び出しがかかって――」 ギュッ

上条「はにをふるんですかへいろーふさん?おれのほっぺがひたいんれすけど?」

ベイロープ「んー……何となく?」

上条「なんとなくなってなんらっ!?なんと――おぅ?」 ギュッ、ギュギュッ

上条「ふろりふはんとらんひすはんも、どおしておれをつねるんですか?つーかむっひゃいたいんれすけど……?」

フロリス「あー……アレだぜ?何となーく?」

ランシス「……右に同じ」

上条「ひや、れすからね――あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃっ!?」 ギュゥゥッ!

上条「れんいんでひっひゃったらいたいわっ!?つーかなにひやがるっ!?」

レッサー「私に理由を問われるのであれば、やはり『何となく』としかお答え出来ませんがね」

上条「――って離せっ!つーか理不尽過ぎんだろーがよおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

鳴護「……あのぅ、何やってるの、かな……?」

上条「アリサえもんっ!?」

鳴護「や、、やあっボクアリサえもん――っていうか語呂が悪いよっ!」

レッサー「一瞬ノッたアリサさんには敬意を表しますが、メッチャ似てませんでした」

上条「てかお前何やってんだよっ!?生放送でやらかしてくれやがなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

上条「つーか中継じゃなかったのかよっ!?……ハッ!?テレポート……ッ!?」

レッサー「テンパって良い感じに錯乱してらっしゃるようなんで、私の方からお伝えします。録画ですよ、あれ」

鳴護「ていうかそうじゃなかったら、お疲れ様会、あたしだけのけ者になると思うんだけど。だけどー?」

上条「そ、そうですよねっ!みんな仲間だもんなっ!よーし、それじゃっ行こうか!」

レッサー「――の、前に”ちょっと”いいでしょうか。ちょっとだけ」

レッサー「直ぐ、終わりますから。えぇホント、”直ぐ”に」

上条「……はい」

レッサー「あー、一応確認しておきますけど……その、私達、告白したじゃないですか?」

鳴護「……うん」

レッサー「アリサさんと私――つーか、関係ない顔してバックレようとしてやがりますけども!他の三人だって同じでしょーに!」

ベイロープ「レッサー……その、モノには言い方ってあるのだわ」

レッサー「違うってんなら、殴り合いましょうか?私はこんな事で嘘を吐かせるような人間じゃありませんよ」

レッサー「――という訳で『どう』でしょうか?」

上条「あー……うん、二人の気持ちは嬉しい。素直にそこはありがとう」

上条「俺なんか――つったら怒られるかもだけど、うん、本当に」

フロリス「あのーワタシらは……?」

上条「忘れてない……し、だ!その、えーっと――」

上条「――はっきり言う。俺は、お前達とは付き合えない」

鳴護「それは……全員フラれた、のかな?それとも他に……?」

上条「って言う事でもなくって……俺は、まだ学生なんだよ。どうやってもさ」

レッサー「……なーんか体良くゴメンナサイされてる気がしますよねぇ、そのフレーズ」

上条「……俺がそんな世渡りが上手いとでも……?」

ベイロープ「これ以上ない説得力……!」

上条「なんていうか、だな。なぁなぁにしたくないって言うか、半端な気持ちで流されたくないって言うかさ?」

上条「『あ、それじゃお試しで付き合ってみようか!』みたいなのもアリだと思うし、俺も実は付き合ってみたい、ってのが本音だ」

ランシス「……じゃ、なんで?」

上条「……例えば、やっぱり付き合っちまったらさ、その、上手く行ったら最終的には、あー……」

上条「結婚を前提に!みたいな、所まで話は進むよな?重いとかキモいとか言われるかもだけど、俺はそう思う」

レッサー「出来ればそれが嬉しいですよね。つーか、しやがってください」

上条「だから、俺が仮にイギリス組と付き合うんだったら、最終的にそっちかこっちで暮らすって覚悟が必要だと思うんだよ」

上条「好きだから、愛してるから、って誤魔化していい問題じゃない。後回しにすんのも論外だ」

ベイロープ「そう、よね。『明日から科学サイドの街で暮らせ』って言われても、直ぐにどうこうは出来ないし」

フロリス「や、ワタシは別にいいケド」

ランシス「だよねー……」

レッサー「空気読みなさいなっそこっ!珍しく上条さんが頭の中身使ってんですからっ!」

上条「一番酷い事を言ってるのはレッサーさんだからな?……ま、それはそっちの理由。次はアリサ」

鳴護「はいっ!学園都市っ、学園都市出身兼在住の鳴護アリサですっ!宜しくお願いしますっ!」

レッサー「……逞しくなりましたよねー、このアマ」

上条「あー……こっちは俺の都合だ。自慢じゃないけど――”バカ”なんだよ」

鳴護「え、知ってるよ?」

上条「『当然だよね?』みたいな邪鬼の無い顔で聞き返されてもな!レッサーとはまた違った嫌がらせだよ!」

上条「あーっと、アレだ。学力じゃなくって、生き方って言うのか?生き様?」

上条「……こっちも例えば、なんだが――目の前でさ、困ってる奴が居たら助けるよな?」

鳴護「それはいい事だと思うけど……?」

上条「その、誰を敵に回しても、なんだ」

鳴護「それが?」

レッサー「……あー、アリサさん。上条さんが言ってる『敵』のレベルがスゲーぜってお話なんですよ」

レッサー「私達がやったように、無償で魔神クラスの相手を出来ますか?」

鳴護「それは……出来るよ、きっと!」

レッサー「それがただの通りすがりの人であっても、命を賭けられますか?」

鳴護「それは……」

レッサー「あぁいえ、失礼。ワタシも意地悪を言ってる訳ではなくてですね、『上条当麻』って人は、”そーゆー”人なんですよ」

レッサー「もし仮に恋人になっても、彼女ほっぽり出して誰かを助けに行く――そして、最悪命を落とす」

レッサー「そんな”クソヤロー”です。要はそんな相手に耐えられますか、ってお話ですよね?」

上条「言い方がヒデぇな。間違ってはないが」

レッサー「ちなみにそのお話を私達へしない理由を聞いても?」

上条「……お前は来やがったじゃねぇか、あのロシアでさ」

上条「なんだかんだで理由付けて……きっと、オティヌス辺りとの最終決戦にも首突っ込んでくるつもりなんだろ?」

レッサー「上条さんのためではありませんよ、自惚れないで下さいな」

フロリス「(――と、言っていますが、解説のフロリスさん、どうでショー?)」

ランシス「(『べ、別に上条さんのためじゃないんだからねっ!』と、ネタに走らなかった……つまり!)」

ランシス「(照れてボケれなかった……なんだと思う)」

ベイロープ「(真面目にしなさい、マ・ジ・メ・にっ!)」

上条「……そか」

鳴護「……むー、レッサーちゃんの方が当麻君を分かってる気がするよっ」

レッサー「それは立ち位置の問題なので、お気になさらず」

上条「……つー事なんだけど、どうかな?」

鳴護「分かった、ていうか分かっちゃった、かな?」

鳴護「わたしが色々なモノを背負ってるように、当麻君も同じなんだよね。それは、理解したよ」

上条「ん」

鳴護「――でも、その上で言わせて貰うよ。当麻君こそ独りなんかじゃないんだから」

上条「と、言うと?」

鳴護「誰かとお付き合いするのは幸せな事だと思うし、逆にしなくちゃ不幸せだって事でもないと思うんだ。それはね?」

鳴護「でもね?当麻君がそうやって犠牲になる必要もないと思うんだよ、わたしは」

上条「俺が、犠牲に……?」

鳴護「……うん。当麻君のお話を聞いてると、『自分は迷惑を掛けるから、誰とも付き合えない』って聞こえる」

鳴護「間違ってはない……けど、納得も出来ないって言うか」

鳴護「『誰かを助けるために戦わないで』、なんて……言えないし、言っちゃダメだし」

上条「……ごめん。本当に、ごめん」

鳴護「だから――だか、ら。わたしは当麻君と一緒に解決したい、って思うよ」

鳴護「……あたしみたいに、一人で悩んでいたら答えの出ない事はあると思う。現に、当麻君になんて言葉を返したらいいのか分からなくて」

鳴護「……けど、そういう時は頼ってもいいんだよ。むしろ、頼ってくれないとやだ、っていうか」

上条「……」

鳴護「……上手く、言えないけれど、あたしは当麻君が好きだよ」

鳴護「だから、ね?一緒に考えたいって思う。解決出来る方法を探したいって」

上条「……ありがとう、アリサ」

レッサー「そう、ですよね。流石は、と言っていいのか分かりませんが、正道だとは思いますよ」

レッサー「一人一人の力なんてたかが知れてますからね、非常にいいお話でしょうなぁ」

上条「それじゃレッサーも――」

レッサー「――――――――いえ、真っ平お断りですよ。はい」

上条・鳴護「「………………はい?」」

レッサー「何言ってるんですかっ!何やってるんですかっそんな甘っちょろい事を!」

上条「ごめんタイム。ねぇレッサーさん俺達の話聞いてた?今ちょっといい話をしてたよな?」

レッサー「えぇ確かに。涙の枯れた私でも思わずもらい泣きしそうになる程でした!」

上条「バカにしてねぇかな、それ?」

レッサー「また上条さんの仰りたい事も分かりましたっ!ぶっちゃけ性的な意味でデキちゃったら困るからって事でしょ?分かりますっ!」

上条「ちょっと何言ってるのか分かんないですね」

鳴護「でも正解ではないけど、大体の主旨はそんな感じじゃ……?」

上条「アリサさんもシーっで、頼む?最近君もイギリス組に悪い影響を受けてるからね?」

レッサー「……まぁ、年頃の女の子の端くれやってる身としては、ですね。そのお気遣いもありがたいですよ?無責任にアレコレされるよりは、ずっと」

上条「良かった……話通じてた」

レッサー「でも――『それは上条さんの都合』ですよね?」

上条「そうだけど……それが?」

レッサー「あー、ウチにはですね。実は恋愛の達人が居まして」

上条「初耳過ぎるが……」

レッサー「そいつはあろう事か1000年以上前に、こう言ってやがりました」

上条「千年?つーか誰?」

ラシンス「『好きなものは好きだからしょうがない……ッ!!』」

上条「それ現代の作品っ!ランスロットは多分そんな事言ってない!行動へは移したけどもだ!」

上条「つーかまた変化球ぶん投げて来やがったな!」

レッサー「上条さんには上条さんなりの理屈がある。それは理解出来ますし、私も少なからず共感を憶えます」 ギュッ

上条「……あのぅ、レッサーさん?ものっそい力で腕を捕まれると痛いんですけど……?」

レッサー「――が、しかぁし!さんなに知ったこっちゃありません!それが魔術師というものですよっ!」

上条「勝手に魔術師を貶めるな!確かに俺が会った連中は全員そんな奴らだったけどな!」

レッサー「むしろ嫌がって下さった方が興奮します」

上条「変態だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

レッサー「と言う訳でレッツ既成事実!来年度からは『上条当麻の奇妙な冒険・イングランド編』が始まりますよっ!」

上条「いい話がぶち壊しじゃねぇかよぉ!なんだこれっ!これなんだっ!?」

上条「つーか何回も言ってるけどっ!お前らなんだかんだでヴァイキングの時代から成長してねぇだろオォィッ!?」

上条「何でも暴力で解決して来やがったくせに、何で21世紀になったら自由だ平和だって物わかりのいいフリしてやがるっ!?」

レッサー「……ふっふっふー!私は知ってますよー、上条さん!あぁ上条さん!」

上条「……何をだよ」

レッサー「嫌いに”なれる”んだったら、とっくに私の手を――私”達”を突き放してるでしょ?違いますか?」

上条「……」

レッサー「つーかむしろ嫌いになれず、ぶっちゃけ大事だからアレコレ条件を付けた――どうです?合ってますでしょ?」

レッサー「諦めて下さい。アリサさんも含めて私達を、今更突き放したり嫌いになったり――」

レッサー「――”その程度の事すら出来ないほど、入れ込んでる”んですよね?ねっ?」

上条「否定はしねぇが……」

レッサー「――と、合意も頂いた所でっ!お疲れ会へ行きましょーかっ!」

上条「……や、だから腕離して欲しい――ってアリサ?」 ギュッ

鳴護「……なーんかレッサーちゃんだけズルいと思うよっ」

上条「いやだから、ズルいとかじゃなくて、この子は残念な子だからな?主に頭と頭と頭とかがね?」

上条「っていうか両側からDに包まれるのは、なんかこう、下条さんが覚醒しそうだからっ!自制して上げて!?」

レッサー「――ね、アリサさん?どうです?生きてて良かったでしょ?」

鳴護「レッサーちゃん?」

レッサー「この下らねー世界であっても、まぁそれなりに楽しめるとは思うんですよ」

レッサー「泣いて笑って、ケンカしてバカやって……それが充分、何かのために戦う理由になったりもしますし」

上条「……」

鳴護「……うん、そうだね」

レッサー「――ってそう言えば、キス一回貸しでしたっけ?」

鳴護「――――――――――え?」

レッサー「よぉっし!行きなさいなランシスっ!そして上条さんはそのまま腕を放さないで下さいよっ!」

鳴護「ちょっ!?ここで!?あたし現役アイドルだし問題がありすぎるよ!?っていうか問題しかないし!」

鳴護「っていうか当麻君?当麻君はわたしの味方――」

上条 ギュッ

鳴護「当麻君がまた裏切ったよ!?」

上条(……と、まぁ路上で、しかもデカい交差点の真ん前で俺達は騒いでる訳だが)

上条(悪ノリするレッサーにラシンス、他人の振りをするフロリスと頭を抱えるベイロープ)

上条(全力で抵抗して失敗するアリサ……まぁ若干一名を除いて、その顔には笑顔が浮かんでいる)

上条(アリサに言われた事も、レッサーに指摘された事も。どっちも正しい事であってだ)

上条(俺が今更、この子達の手を離せるか、って言ったら論外で。つーか考える事すらしたくない訳でさ?)

上条(今さっきまで、街をブラブラしていた時の寂寥感はどっかへ吹き飛んでしまっていた……まぁ、それが証拠っちゃ証拠か)

上条(俺達の関係性は変わるのか、それとも変わらないのか。それはまだ誰にも分からないし、誰かに言われる事でもない)

上条(……ま、いつか離れる時は来るだろう。どんなに形になるのは分からないけど)

上条(寿命が来ればそれでお終い、事故にあってもそれも同じく)

上条(生きていても生活環境や生活圏の違いで、道を分かつ事はあるんだろう。それは当たり前の話で)

上条(でも。それが当然だとしてもだ)

上条「……」

上条(……暇な間、俺はケータイの電子図書館から『ファウスト』って本を読んでみた)

上条(アルフレドの言い回しが気になったのもあってだが……その中で悪魔がこう嘲笑う一節がある)

上条(『”最初から無かった”と”既に失われた”の違いはなんだ?』)

上条(『どちらも無くなっちまうってんなら、結果は押し並べて同じだろう。ならば俺は永遠の虚無が好きだ』――と)

上条(あのアホも似たような事を言ったが――俺は後者を選ぶ)

上条(どんだけ頑張っても無駄になるかも知れないし、突然の悲劇が全部無しにしちまうかも知れない)

上条(でもこうして。俺の手には俺達が積み上げたものがある)

上条(まだ『愛』や『恋』とかじゃないけど、紛れもなく『信頼』には値するだろう)

上条(これは誰にも、壊す事は出来ないんだから――)

ランシス「……そろそろ観念しよ、うん?」

鳴護「ランシスちゃん!?こういう時ばっか早――んんんんんんんんんんんんんんんんんんーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

レッサー「あ、舌入ってますよね!グッジョブ!」

フロリス「どーしたコイツらのノリは……?」

ベイロープ「テンション振り切ってるだけでしょ?後で死ぬ程凹むわよ」

上条(微妙にハブられてる俺だが、はっきり言ってやったよ!そう、胸を張ってな!)

上条「あ、ごめん。誰かっ!俺のケータイで衝撃的ムービーを撮っ――」

上条「――いやだから頼むって!だから今両手が塞がって――」

上条「――違う違う!そう言う事じゃない!これはほら純粋なアレだから――」

上条「だからっ!せめて写メだけでもおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

上条(……まぁ、締まらないのもお約束か)



――エピローグ −終−

――胎魔のオラトリオ −完−

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