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Clock(trial)

コラム・楽しい世界史〜天空の城とガリバー旅行記(清教徒革命と名誉革命編)〜

レッサー「さてさてなっがーいイングランド国教会の設立よもやまがやっと終りました……」

上条「あの、一言言っていいかな?」

レッサー「イヤです」

上条「断られても言うが、”信仰<<<性欲”だよな?」

上条「しかもカトリックが一掃されたのってその後の結果論、つーか外交政策で失敗し続けた結果だったしな?」

レッサー「パトリオットとしては否定したくありますが、そうも行かないでしょうなぁ」

レッサー「まぁですがね、今でこそ当時の社会・国際状況を俯瞰しながらテキスト片手に語れる訳です」

レッサー「西暦何年には○○国の○○さんが決起しましたー、と歴史年表を見れば事実のみが正確に書かれています」

レッサー「しかし当時は伝書鳩か早馬が精々の時代、情報伝達の手段が乏しく信用にも乏しい」

レッサー「その中から情報の真偽を見極め、我が国に有利な方へ常に導ける――全てにおいて成功する国家や政治家は有り得ないと言っておきましょう」

上条「今だって地球の裏側のニュースがLIVEで見られるのに、間違うときは間違うか」

レッサー「今から二週間ぐらい前にアメリカ大統領がCNN記者をぶん殴るGIFアニメをツイードしました。ご存じで?」

上条「ニュースでやってたわ。顔のところにCNNってロゴ入れただけの荒いコラ画像」

上条「『トランプは暴力を振るうのを肯定するのかっ!?』つってたけどさ、あれネタだろ?本人が作ったんじゃないだろうし」

レッサー「日本ではここまでしか放送されなかったんですけど、これには後日談がありまして」

レッサー「激おこぷんぷん丸(死語)のCNN、なんとクソコラ作った本人を特定しましてこう言いました」

レッサー「『謝罪してもう二度とやらないと約束しないと、お前の顔写真・名前をCNNで報道するぞ!』と」

上条「テロじゃん。それ完全にテロリストの考えだろ」

レッサー「他にも元大統領候補がパナマ地震への寄付金の大部分ガメてたのを暴露しようとした人が、第三国で自殺していたり」

レッサー「フロッグイーターメンズステーツの新大統領、就任式にフランス国家を流すのが慣例なのにクラシック流して大不評買ったり」

レッサー「ロンドンテロの直後、多くの人間がゲカ人の手当をしようとしたに、シャリフ被った人間達は足早に立ち去った映像が公開されるなど」

レッサー「正しい情報が正しい情報として流れているとは限りませんからねぇ。こちらさんも、そして我々も」

レッサー「ともあれともあれ。国教会への転換で政治と社会の一新を計り、それがある程度は成功した、というのがスチュアート朝以前の流れです」

上条「ある程度?」

レッサー「えぇまぁ良かれ悪しかれは物事の裏表ですからね。そりゃもー当然のように成功100%の改革なんてありっこない訳でさぁ、へっへっへっ!」

上条「キャラ変わってる」

レッサー「修道院……日本語に訳せば何でしょうかな。えーっと」

上条「日本にも一応あるし、本とかで見たから俺も知ってる」

レッサー「あ、でしたら」

上条「百合の花が咲き乱れてお姉さまと妹がキャッキャウフフしてる天国のような施設だろ!?俺は知ってんだよ!俺知ってんだって!」

レッサー「残念。私の知ってる修道院とは違いますね」

上条「あぁ外部に漏れると大変だもんなっ!分かってる分かってる!」

レッサー「絶対に分かってないですもんね?てかキャラ守れよ百合厨」

レッサー「……ともあれ修道院ってぇのは、本来人里離れた場所で修行、というか神へ使える信徒のための施設です」

レッサー「なので信仰的に薄い外地へ布教のために、もしくは人里離れた場所へ建てていました」

レッサー「前者はリンディスファーン修道院、後者はメテオラ空中修道院やアルメニアのゲガルド洞窟修道院などが有名です」

上条「あ、世界遺産で見たのがある」

レッサー「最初は『ワイらの信仰見せとぉわ!』と、スッゲー僻地に建ててたんです”が”」

上条「出たよ。”が”」

レッサー「段々教会が力をつけて行くにつれて一種の荘園化しちゃいましたテヘペロ」

上条「ウン知ってた。最初っからそんなんだろうと思ってた」

レッサー「ヒト・モノ・カネ、そして当時の最新技術が集まって来て結構ヤンチャではありましたなー、あっはっはっはー!」

上条「お前らだよ!お前らの歴史ってこんなんばっかだよ!」

レッサー「というのはジョーク風に紛らわせるとして、イングランド国教会以前のイギリス修道院は、まぁ色々な複合施設だったりしますよ」

レッサー「勿論司祭服を着た養豚場を経営していたのも事実でしょうが、それと平行して事業もいくつかやっていました」

レッサー「水車・風車を使った製粉業、大規模な農場を興しての集団農法」

レッサー「他にも英語で病院のことをホスピタルと言いますが、あれは元々『老人・孤児・貧困者などを収容した慈善施設』を指したものです」

レッサー「ホテルの語源とも同じで”主人が接待する”ですか」

上条「つまり修道院は病院のの役割もしてたって?」

レッサー「ですな。教会は文字の読み書きができていた機関ですので、当然医療のノウハウは蓄積されていきます」

上条「文字の読み書き、昔は識字率も低かったんだっけか」

レッサー「はい。ですので代筆・代読屋さんがいました。てかそれも教会がやってたんですけどね」

レッサー「つかそもそも聖書自体がラテンorギリシャ語で書かれていたので、そこを独占していたと言えなくもないんですが……」

上条「あー……よくさ、物語とかで教会が孤児院やってたりするよな」

レッサー「ありますなぁ。大抵一人でイジめられるのがいるまでがテンプレで」

上条「あれ逆か!教会”が”孤児院やってんじゃなくって、教会”は”孤児院だったのかよ?」

レッサー「正確には修道院ですがね、まぁそうですね」

レッサー「まぁそんなこんなで教会は社会的弱者のセーフティネットも兼ねていました。この当時としてはそれなりに、です」

レッサ−「が、プロテスタント化すると教会が形を保てなくなり、その結果医療のみを専門とす病院が登場する訳ですな」

上条「なんつったらいいのか、こう、教科書で習わない文化スゲェ!」

レッサー「ですんで未確認情報ですが、第三次世界大戦中に某修道女チームが敵味方分け隔てなく治療をしました」

レッサー「あの行為の伏線には『元々修道士・修道女が医療行為を司っていた』という、実に細かく精密な伏線があったのですな……ッ!!!」
(※神様(鎌池先生)超スゲェ)

上条「ナ、ナンダッテー」

レッサー「そして我がブリテン!絶対王政のイングランド国教会化によりカトリックの修道院は全てなくなりました!」

上条「あぁ国教会へ宗旨替えしたのな」

レッサー「ぶーーーっ!大ハズレ!ヘンリー8世の小修道院解散法・大修道院解散法により建物を接収!家臣へ下賜しましたとさっ!」

上条「ブラッディメアリーさんは怒っていいと思うよ?てかしょーもないなっなんだよこのオチは!」

上条「や、まぁなんかこう薄い本みたいな修道院だったとしても!それ接収したぶん投げるって何だよ、あぁっ!?」

レッサー「俗に言うレコンキスタ的解決法(※日本名;明治維新的解決法)ですなっ!素晴らしいっ!」

上条「16世紀……まぁは室町と安土桃山の間だか」

レッサー「血で血を洗うSENGOKU時代ちょい前ですよね、素敵ですっ!」

上条「お前らだってヘンリー7世が内戦やってんじゃねぇか。ヒトのこと強くは言えないだろ」

レッサー「で、修道院跡地はどうなったかと言えば……カントリーハウスとして使われた場合が多いですね。あくまでも傾向がですが」

上条「また知らない単語が出てきたよ。田舎のお家?」

レッサー「日本語で表すならば『荘園根拠邸』が妥当でしょうかね。えーっとこれもまた文化的なアレから説明しなきゃですが」

上条「荘園?貴族の家だったら別にただの”邸宅”で良くね?」

レッサー「……何言ってんですか。貴族が領地にずっといる訳ないでしょうが」

上条「違うの!?日本の戦国大名ってそんな感じだぜ!?」

レッサー「いえですから、宮殿に出入りなくちゃいけませんし、そもそも荘園っつーか領地が飛び地だったりもしますし」

レッサー「その領地ごとに管轄する基盤になった邸宅をマナー(荘園)ハウスと呼び、その流れを汲んだモノになりますね」

上条「あー……海外のドラマでやってたよ。家族で田舎行って避暑するの」

上条「でもなんか父親の貴族の人が仕事忙しい忙しいって子供を相手にしなくて、『休みに来たのになにやってんだコイツ?』って思った!」

レッサー「まぁ純粋な避暑目的の別荘もありましたから、全てが全てカントリーハウスとは言いませんけどね」

レッサー「有名なカントリーハウス、上条さんの知識でもご存じだと思うのは――」

レッサー「――ホグワーツ、見たことありますよね?」

上条「やっだなぁレッサーさん。ポッターってフィクションじゃないですかー、魔法使いなんていないんですよ−」

レッサー「我々の存在否定してくれやがってありがとうございますよコノヤロー」

レッサー「いやそうではなく。建物の方です、魔法学院の方」

上条「セット――じゃ、ないのか!?この話の流れだと!?」

レッサー「あれが”アニック・カースル”というハルン修道院跡地兼・カントリーハウスになります」

上条「あるんだホグワーツ……!」

レッサー「つっても外見の一つであってそのものではないですが、まぁそんな感じに修道院は潰されたり、別建物として使用されました」

レッサー「カトリック潰した際にも寺院を宮殿に改修したりしてますんで、今更ですよねっ!」

上条「……嘆きのマーテル……合法ロリ……」

レッサー「すいません上条さん、あなたのそのグローバルな性癖はいいですから。てかお腹いっぱいですから」

レッサー「最近ではネコミミ人妻やTS理事長にまで触手を伸ばし、少子高齢化が進むヤポンではかくあるべしというところなのでしょうが」

上条「食指な?一般的な日本人男性にはついてないから、触手」

上条「カントリーハウスが雨後竹のようにポコポコできたのは分かったけどさ、具体的に何やってたとこ?地方の役所?」

レッサー「町役場兼・地方裁判所兼・社交場ですかねぇ。当時はバラ戦争でイギリスの貴族同士で散々殺し合った結果、有用な人材にも事欠く有様で」

上条「自業自得だ」

レッサー「なのでエリザベス1世は避暑で色々な貴族の領地を飛び回ったりして。そのおもてなしって側面も強いですな」

上条「話跳んだ?避暑と貴族が少なくなった因果関係――」

レッサー「だからその補充にですよ。色々な領地を訪れては人漁り。あ、人材的な意味であり漁色的なことじゃないですからね?」

レッサー「……というかあの、上条さん?まさかと思いますが、為政者が『避暑』つったら、本当に避暑目的だって思ってるクチで?」

上条「避暑なんだから休暇だろ」

レッサー「んなわきゃないでしょうが、何言ってんですか。現代でもクソ忙しい企業戦士で溢れているのに、その当時の絶対権力がンな暇ねーですよ」

上条「人がいなくなったから、補充?」

レッサー「これもまたエリザベス1世が能力主義を認めた結果!……と、なっていますが、えぇまぁ人材が減ったんで」

上条「セルフ内戦で減らしといてあんまりじゃね?」

レッサー「ま、まぁ結果的には!下級貴族を重用することなんかなかったんですから!風穴を開けた訳ですよ!」

上条「その人ら、下級貴族を引き立てる、つーかリクルートするステージがカントリーハウス?」

レッサー「イエスです」

上条「合同企業説明会か」

レッサー「あー、なんて言うんですかね。これも怪我の功名っちゅーか『結果的に成功してしまった!』理由が二つ」

レッサー「一つは薔薇戦争で貴族の絶対数が激減していたこと」

レッサー「二つめは宗教改革で没収した荘園を下級貴族へ売ったこと」

レッサー「以上により『才覚はあって金を貯める才能もあったけど、土地がないから下級貴族に甘んじてた層』が成り上がるきっかけになり」

レッサー「そんな彼らと旧貴族が親交を図る社交界の場でもありました」

上条「はい、先生!質問です!」

レッサー「本名年齢不詳Dのレッサーちゃんですが何かっ!」

上条「そんな事は聞いてない。興味無いこともないが!」

上条「……じゃなくてだ。これ、どこまで計算したんだよ?」

上条「ヘンリー7世の戴冠のときの薔薇戦争で貴族粛正、その息子ん時のイングランド国教会化」

上条「エリザベス1世の、えーっと実力主義?てか身分にそんなには関わらず登用する――」

上条「――ってこれ、全部偶然だよな?たまたま上手く行っただけであって、全部後々を見越して政策やってたんじゃないよな?」

レッサー「……えぇまぁその答えには、昔の偉い方が仰った言葉を送りたいと思います――」

レッサー「――『勝てば、官軍』……ッ!!!」

上条「いいのか大英帝国!?そんな結果オーライ的な国家に俺達は恐怖していたのか!?」

レッサー「なお、修道院撤廃により弱者救済処置が成されなくなった――かに、思われましたが」

レッサー「カントリーハウスの維持・運営に膨大な人手や物資を必要としたため、結果的に雇用が生まれ経済は若干上向きました、やりましたねっ!」

上条「そんなに雇用者多いのか?」

レッサー「一つの荘園で数百人ですね。ギャラは低かったらしいですが」

レッサー「てか私は最初の二回ぐらいで見るのやめましたが、ダウントン・アビーの舞台がまさにカントリーハウスです」

レッサー「貴族はカントリーハウスで地方政治とコネ作り、庶民はキャリアとコネ作りに邁進します」

レッサー「本格的に興味がある方はアビーではなく、”ゴスフォード・パーク ”という映画をどうぞ。かなり気合い入れて作られていますんで」

上条「へー――ってでも、俺がイギリスでお前ら追いかけてるとき、そんな建物見なかったぜ?」

上条「代わりにデッカイ庭園ばっかあってさ、『おぉこれが本場のイギリス庭園か!』って建宮達と盛り上がってた」

レッサー「……いえあの、言わなかったんですが天草式の人。てか根性悪りーですな」

上条「なんで?」

レッサー「その”英国庭園”の多くが経済的に維持できなくなったカントリーハウスの成れの果てでございます……」

上条「なんで!?同じ台詞使い回して恐縮だけどなんでだよ!?」

レッサー「これはスウィフト全く関係ないんですけどね」

上条「俺もその言葉聞くまで『あ、これガリバー旅行記の解説だったんだな』って忘れてたもの」

レッサー「産業革命で労働者の、えっと価値が上がるんですよ。ぶっちゃけカントリーハウス以外に職があり賃金が良いんです」

レッサー「そうなると職離れしますし、貴族の方は労働者の賃金を上げる必要に迫られまして……」

上条「ポシャったと。不景気んときにブラック企業が調子ぶっこいてたのに、好景気になると従業員辞めてってガンガン赤字垂れ流すみたいな」

レッサー「経済学としては妥当ですねぇ。資本主義の開花はまだまだ先ですが」

レッサー「ここまでの流れで『イングランドでどれだけカトリックが敬遠されるか』をやってきました。続いて名誉革命と清教徒革命です」

上条「その前にちょいいいか?エリザベスさんの次はスコットランド系の王様がなったんだろ?」

レッサー「ジェームズ1世ですな。勿論そこも拾いますよ」

上条「スコットランド独立運動って一時期話題になったが、実際どんくらいスコットランドって迫害されてんの?」

レッサー「過去には結構戦争してますからねぇ。勿論殴ったらこっちが弱ったときに殴り返されもしていますが」

上条「いやいや、でもスコットランドの王様をイングランドで戴冠て。それ、仲良い国同士だって無理な話だぞ?」

レッサー「ですねぇ。私もそう思いますが――トニー・プレア首相って憶えてます?」

上条「アフガニスタン戦争のときのイギリスの首相だっけか」

レッサー「あの方はスコットランド出身です」

上条「なってんじゃん首相!?差別されてんじゃねーの!?」

レッサー「私個人の立場は反独立派なので差し引いて考えてほしいんですけども、少なくともここ半世紀で不当に扱われた例は極めて少ないかと」

レッサー「で、なければ二大政党制の議会でスコットランド系の議員が首相になれる筈がないですからね」

上条「この間の選挙では与党が過半数切ったって」

レッサー「それでも第一党ですし、加えてスコットランドの選挙区では議席を伸ばしています。北アイルランドの政党と連立組んで与党やってますけど?」

上条「それ、フツーに信任受けてるよな?」

レッサー「と、私は思いますけどね。解釈の違いで勝ち負けリバースさせて脳内満足感を得られるんだったら、まぁ放置しときゃいいんじゃないですかね?」

レッサー「では清教徒革命と名誉革命の話へ移りたいと思います――が、上条さんは教科書でなんて習いました?」

上条「まだ習ってない、かな?うんきっと、憶えてないし習ってないんだよ、多分多分?」

レッサー「……まぁどーでもいい話ですからね。大抵は単語と概要だけで終りですし」

上条「真面目に思い出すと、クロムウェルって人が革命起こして失敗したのがピューリタン革命」

上条「議会が音頭取って平和的に革命したのが名誉革命、そのときに議会の独立を定めた憲法が権利章典、だっけか」

レッサー「はい、はーいセンセー!センセーに質問でーす!」

上条「はいどうぞレッサー君。保健体育以外で受け付けるよっ!」

レッサー「清教徒革命のときは失敗したんですよねー?武力鎮圧されてー?」

上条「成功したんじゃなかったっけ、一時的には。確かその後に王様戻ってきて失敗したけど」

レッサー「じゃーじゃー名誉革命の時はどーしたんですかー?王様は武力なしで逃げていったんですかー?」

上条「……おかしいよな」

レッサー「――はっきり言います、この二つはどちらもただの武力による権力闘争です」

上条「オォイっ!やっぱそうかい!」

レッサー「ちなみにこの間、つーか清教徒革命の際にはイングランド王国が”イングランド共和国へジョブチェンジ”という、未曾有のワッケ分からん出来事が!」
(※本当です)

レッサー「しかも僅か11年という超短いネタのようなアホらしい話ですよ!えぇもう笑ったらいいじゃないですか!」
(※イングランド共和国・1649建国〜1660年亡国)

上条「初めて聞いたぞそんな話!?お前ら『ずっと前から君主制でしたけど何か?』っつー顔しながら、何ギャグカマしてんだよ!?」

レッサー「超々黒歴史ですからね。アヘン戦争と同じく、一部の教科書には載せてませんが何かっ!」

上条「清々しいまでの腹黒っぷりだな。全然羨ましくも何ともない」

レッサー「てか薔薇戦争(ヘンリー7世の戴冠)は1455〜85年に起きた内戦で、清教徒革命は1642〜1649年に起きた内戦です!」

上条「なんだそのリアル蟲毒。お前ら身内で殺し合ってマズい飯究めようって頑張ってんの?」

レッサー「年代順に清教徒革命、日本ではピューリタン革命の方から手をつけていきたいと思います」

レッサー「ではまずここでいう清教徒、ピューリタンってなんじゃらほい、とお思いですか?」

上条「前世紀にカトリックからイングランド国教会から転換して、んでもって革命起こしたっていうんだったら元カトリックの人?」

レッサー「外れ、と切って捨てるほどの間違いでもないですが、彼らはイングランド国教会の一派です」

上条「名前からすると”厳格に聖書を守ろう会”?」

レッサー「いいえぇ、”神様はこう主張しているに違いないから俺に従え会”」

上条「うわぁ……」

レッサー「まぁ詳しい中身は後へ回すとして、スチュアート朝ジェームズ1世の治世から時を進めましょうか」

レッサー「彼が戴冠したのは1603年、在位は22年で息子のチャールズ1世が王位を継承しています」

レッサー「ちなみに先程の上条さんのご指摘、『この王朝にイングランドの血、一滴も入ってなくね?』は違います。入っています」

レッサー「ヘンリー8世のお姉さんがジェームズ1世の息子だったため、桃園ではありますが、王位継承権はあります」

上条「複雑だなー。図でも書いた方がいいかも」

レッサー「彼自体が何をやったかといえば清教徒・カトリックへの締め付けと放漫財政」

レッサー「彼の時代に何があったかといえば『ガンパウダー・プロット』ですか」

上条「火薬計画?」

レッサー「別名ジェームズ1世爆殺未遂事件wwwwwwwwww」

上条「草生やすなよ」

レッサー「というのもですね、ジェームズ1世を評価は概ね一致しており――『自分が無能だと弁えた無能』」

上条「そりゃまぁ……まだマシじゃね?」

レッサー「エリザベス1世の重臣をそのまま遣い政策も大体は習い、そこそこ無難にこなした方ではあります」

レッサー「まっ、スコットランド王なので権力基盤が薄弱であり、味方作りのために恩賜しまくりで財政を傾かせた、ぐらいですかねっ!」

上条「”ぐらい”が重い。それは”ぐらい”の範疇に留まらない」

レッサー「その財政の穴を議会へかけずに関税決めて議会から超反発されました」

上条「まぁ個人的な支出だし、流石に議会も怒ってはいいと思うんだが」

上条「ただヘンリー8世の時に『強い王様の戴冠を望む辺り男性に拘った』のか、王様が国内安定のために基盤作るのは矛盾してるような気もするが」

レッサー「そこそこ平穏に彼の御世は終わり、次男のチャールズ1世が戴冠します。あ、ついでにフランス王の娘さんと結婚してね」

上条「この人もカトリック?」

レッサー「あいな。かつフランスもカトリックガチの人で、国教会での戴冠式を拒んでいます」

上条「ってことはイングランド国教会がハブられたんか?」

レッサー「のも、違いますね。カンタベリー大司教の甘言に釣られて国教統一――つーか、スコットランド遠征を試みて二度失敗かつ戦争」
(※主教戦争)

レッサー「時系列は逆になりますが、自身の政策に反対した議会を解散させたり、清教徒を弾圧したり手広くやってます」

上条「もう何がしたいのか分かんわ。カトリック教国のスコットランド攻めてどーすんだよ」

レッサー「最初に言いましたでしょ――単なる権力抗争だ、と」

レッサー「宗派が違ってもイングランド国教会に手厚くしてみたり、ルーツで信仰も同じなのに何故?」

レッサー「そりゃあ権力闘争に決まってるでしょう。他に何があるって言うんですか?信仰?道徳?それとも狂気?」

上条「もっと平穏に統治する方法だって――」

レッサー「ないですよ?あくまでも結果に過ぎませんが、なかったから”こそ”この後に清教徒革命が起きたんじゃないですか?」

レッサー「ここでもし、チャールズ1世にジェームズ1世、両王の支持基盤がしっかりとしていれば革命なんて起きない。それだけの話ですよ」

上条「革命ってのも、ただの内乱?」

レッサー「”ただの”がつかなかった内乱がどれだけあるのが存じませんが、とどのつまりは、ですな」

レッサー「ここでイングランド内戦勃発!清教徒革命BAN-ZAI!!!」

上条「俺らの戦国時代もアレだし、戦闘マッスィーン・サッツーマ人も大概アレだが、お前らもっとアレだよ」

レッサー「騎士派の王側、円頂派の議会側が対立――した、結果!チャールズ1世は捕らえられ首を刎ねられる!」

レッサー「清教徒大勝利!これで清教徒の千年王国が樹立されたのです!」

上条「それ俺の知ってるイギリスの歴史と違げぇ」

レッサー「清教徒革命で勝利した清教徒、つーかピューリタン達はイングランド国教会から長老派(穏健派)を追放。実権を握ります」

レッサー「議会は議会で勝った側がハバを効かせますが、今度は立役者であるクロムウェルを危険視」

レッサー「軍を縮小しようとしました。ですが失敗、逆に議会の重鎮が追放されます」

レッサー「まっ、偉そーに言ってはいますが、革命時に大勝ちした軍人クロムウェルが護国卿として独裁政権を建てましたよ!」

レッサー「一応名目は『共和国』ですがねっ!こんな感じで昔っから独裁国家ほど共和国を名乗るって伝統が!」

上条「またお前らか!悪しき伝統打ち立てた影には必ずいっちょ噛みしてんな!」

レッサー「ちなみに清教徒革命、クロムウェルの死後に三男が継ぎましたがお話にならずさっさと退散」

上条「”共和国”つったよね?せめて看板に書いてある程度の常識は守ろう?名目だけでいいから、なっ?」

レッサー「この後はジョージ・マンクら清教徒革命で勲功を上げた軍人貴族達の働きがあり、長老派が議会へ復帰」

レッサー「フランスへ亡命していたチャールズ2世、1世の息子、つーか王妃はフランスの王女でしたんでその縁で」

レッサー「同様に亡命していた騎士派と共に帰国し、王政復古を果たします」

レッサー「……蛙食い野郎のヒモつきで」

上条「言葉を選べ。せめて少しは努力したように見せろ」

レッサー「枝付きで、ねっ!」

上条「攻殻が機動隊するアレっぽく言ってもダメだ!実写映画は俺の知り合いが『超グッジョです!』って親指立てるような出来だったけどもだ!」
(※原作知ってる方は例外なく中指立てると思います)

レッサー「まー……カトリックだけならまだ文句もないんですけど、国教会の大臣を罷免したり税制改革の独立失敗」

レッサー「他にもネーデルランド独立戦争で敵側のフランスと密約交わしてたのがバレやがるわ。フランス女の愛人貰ってウッハウハ」

上条「ヘンリー8世の宗教改革も性欲だしな。そういう意味では血統だよ」

レッサー「密約に従ってオランダ侵攻したら返り討ちに遭って負け。戦後フランスがまともにやり合ってなかったのがバレて更に反感」

レッサー「ほんでもって姪のメアリーをオランダ総督へ嫁がせて外交の安定を図ったのです……」

上条「オランダ”総督”?」

レッサー「当時ネーデルラント連邦共和国は地方の有力者が選抜して代表を決めていました。実質的な君主に近いです」

レッサー「――と、フランス野郎はこうも悪逆な罠を我らへ仕掛けてきたのですよ……ッ!文字通りオランダ野郎のワイフになったメアリー王女に敬礼っ!」

上条「主旨違う。あと下品禁止」

レッサー「ま、それでもですね。清教徒革命のグダグダに比べればマシだってんで、議会派も結構忍耐強く付き合ってはいました」

レッサー「実際に国内も疲弊しており、積極的なパージができなかったんでしょうが、まぁ楽観的だったんですな」

上条「お前らがシビアなのかポジティブなのか分からん」

レッサー「このグッダグダな政治的状況から新たな政党が立ち上がります。これが『ホイッグ党』と『トーリー党』ですな」

レッサー「ここから20世紀まで続く二大政党制の始まりとなります。はくしゅー」

上条「ソレハヨカッタネー」(棒読み)

レッサー「王政復古はしたもののグダグダは止まらず、しかしチャールズに子供はいっぱいいましたが男子はいませんでした」

レッサー「よって後継者は彼の弟のジェームズ2世が目されていたんですが。コイツもまーたカトリックでしてね」

上条「その人らの政治手腕はともかく、信仰に関しては議会派にも責任があるんじゃねぇのか?追い出された先のフランスがカトリックなら、それに習うだろ」

レッサー「現代の価値観で言えば情状酌量の余地あり。が、当時は待ったなし。政策一つ間違えれば数万人死に、外交一つ間違えると国が滅びます」

レッサー「不確かな君主を戴くのは議会としてもありがたくない反面、かといってこれ以上国内で血を流すのもノーサンキュー」

レッサー「そこでできた派閥が二つ」

レッサー「『チャールズ2世&ジェームズ2世をさっさと排除しよう』ってのがホイッグ党。後の自由党になります」

レッサー「『ま、まぁ二代ぐらいなら!このぐらいだったら我慢しようよ!俺達の王様なんだから!』がトーリー党。後の保守党です」

レッサー「てかもう国教会が国教になってから150年近く経ってんですよ!今更何なんですかあぁ鬱陶しい!」

上条「庶民からすりゃ『何やってんのお前ら?』だよなぁ」

レッサー「しかしチャールズはトーリー派を切り崩し味方につけ、ホイッグ派を追い落とします。ついでに彼の死後もジェームズ2世が戴冠」

レッサー「流石フランス野郎の紐付き、彼のとった政策カトリック優遇が多いものでした」

レッサー「――で、致命的になったのはジェームズ2世に王子が産まれたことでした」

レッサー「ホイッグ・トーリーの垣根を越えて議会は一致、全力でジェームズ2世を追い出すことになります。それが名誉革命へと至る前フリですな」

上条「クーデターだよね?てかそれ清教徒革命んときに一回通った道だよね?」

レッサー「何を仰いますか上条さん!名誉革命は別名無血革命と呼ばれるぐらい、血の流れないスムーズな革命だったんですからね!」

上条「具体的には?」

レッサー「議会が音頭取ってオランダ嫁いだメアリー王女と旦那のオランダ総督ウィレム3世へこう言ったのサ!」

レッサー「『イングランド王室継いじゃいなよユー!』ってねっ!」

上条「コロンブスの卵的発想が酷すぎる!コロンブスもポルナレフも過労死するから程々にしてあげて!」

レッサー「こう言うのは甚だ遺憾であり慚愧の念にたえないどころが一周回って耐性がつくんですが」

上条「言葉も意味も分からないが、多分それは誤用だ」

レッサー「ナポレオンがフランス最強であるならば、フランス内外に最も恐れられた王であるルイ14世がいたんですよ」

レッサー「当時のフランスは重商主義と帝国主義の体現者であり、例えば――アウクスブルク同盟戦争、別名ファルツ戦争・9年戦争・オルレアン戦争です」

レッサー「フランス対神聖ローマ帝国・バイエルン・ザクセンなどドイツ諸侯,・スペイン・オランダ・スウェーデン諸王」

レッサー「これに王を追い出したイギリスが参戦しています」

上条「フルボッコだな」

レッサー「しかしながらレイスウェイク条約締結によって戦争は終了。条件はフランスにやや有利でした」

上条「超強いなフランス!」

レッサー「この後もスペイン継承戦争へ首を突っ込んだり、フランスへ亡命していたジェームズ2世の長男を推してイングランド王を名乗らせてみたりもしました」

上条「やり放題だな」
(※この後のナポレオン戴冠までフランスが最強だった時代です)

レッサー「まぁ?”度重なる戦争→戦費調達のための税金→戦争→”……の無限コンボでフランス国民のHPは0でした」

レッサー「その息子も似たようなことしてたんで財政的にはボロッボロ。反感喰ってひ孫のルイ16世は断頭台の露と消えます」

レッサー「(もっとやっとけっつーんですよ、けっ)」

上条「小声で言えばスルーすると思うなよ」

レッサー「さて話は戻ってイングランドですが、議会は『今度アホな君主が出たらどうしよう?』という命題に頭を悩ませていました」

上条「外国の王様引っ張り込むような議会が言っていい台詞じゃねえよな、それ」

レッサー「そこで君主へ対する議会の優越を決めようと制定したのが『権利章典』。あぁアメリカでもやってますから間違えないくださいね」

上条「憲法だよな」

レッサー「その内容は憲法好きな方に譲るとしまして――の、最後には『王位継承者からカトリックを外す』とありまして」

上条「え、人権は?信仰の自由ないの?」

レッサー「まぁここまでのグダグダ引き摺ったんですから、仕方がないかと。以来ウチの王様は大体イングランド国教会です」

レッサー「解釈次第ではムスリムが王位を継げてもカトリックは不可能――と、いうのは悪質な嘘です。イングランド国教会に属するのは必須ですんで」

レッサー「ですんで!東洋のツンツン頭のDTがキャーリサ王女を墜としたとしても!あなたに王位継承権はありませんからっ残念っ!」

上条「そんな大それた野望は持ってない。むしろお前らの歴史を知れば知るほどウンザリだよ」

レッサー「ですがよく考えてみてくださいよ――キャーリサさんが寮の管理人をしていたら、どうっ!?」

上条「お前オレにそう振ったら何でもノッかってくると思うなよコノヤロー。管理人さんにだって向くタイプ向かないタイプがあるだろ!」

上条「第一なぁキャーリサが管理人さんになったって、寮の管理なんかできっこないよ!全部俺に回ってくるよ!」

上条「挙げ句全部俺が管理さんの仕事やっちまって、どうせキャーリサはエロ担当しか残ってないんだ!」

上条「俺が一人で深夜、寮の風呂場で掃除してるとだな!きっとこう酔い覚ましにタオル一枚で入ってきたり!」

上条「他にも管理人さんの汚部屋へ行ったら下着一枚でウロついてて『何やってんだお前っ!?』みたいなみたいなっ!」

上条「いい加減に俺が見かねて言うんだよ!『お前、こんなんじゃ嫁の貰い手ねーよ』って!」

上条「そしてたら管理人さんは『いいさ、お前貰ってくれんだろ?』ってな……ッ!!!」

レッサー「上条さん気持ち悪いです。あ、すいません言い過ぎました、とっても気持ちが悪いです」

レッサー「あなたのゴールポストはゴールライン端から端までありますよね?ゴールキックの余地がないほどに幅広いですもんね?」

レッサー「あと実際問題として10歳の壁は意外に分厚いんじゃないかな、って」

上条「管理人さん、プライレスっ!」

レッサー「その万能調味料みたいな扱いは管理人さんも怒ると思いますよ。異世界転生したら取り敢えずカレーとマヨ作っとけみたいな風潮は」

レッサー「まぁ長くなりましたが以上がガリバー旅行記に繋がる一連の流れとなります。いやー疲れた」

レッサー「一応年表を乗せておきますとぉ……」


1640年 市民革命勃発
1649年 イングランド共和国成立
1660年 市民革命失敗・王政復古へ
1667年 スウィフト、ダブリンにて誕生(本人はイングランド系アイルランド人)
1688〜89年 名誉革命
1702年 アン女王(メアリー2世の妹)戴冠・グレートブリテン王国成立
1726年 ガリバー旅行記を匿名で発表


上条「イギリス動乱期真っ只中だな。てかグレートブリテンって?」

レッサー「史上初のイングランド+スコットランドの合同王国ですね」

上条「どっちかっつーと、スウィフトは安定した時代に生まれてないか?内戦にならなかった分だけ、かなーりマシじゃね?」

レッサー「いえそのがジャコバイトって名誉革命へ対抗する反乱軍がスコットランド・アイルランドで何度も何度も反乱起こしてます」

レッサー「そしてスウィフトの出身地であるアイルランドでは少数の国教会が多数のカトリックを支配する地域であり」

レッサー「その摩擦が後の第九次十字軍へと繋がる布石なのですな……ッ!」

上条「ヘルシン○禁止。お前らサイ○人のように内戦ばっかしてんな!」

レッサー「旧弊までの体制の一新!歪みが溜まりに溜まる蓄積!混沌を通り越してルナティックな国際情勢!」

レッサー「国教会とカトリックの争いに加えて、ホイッグ党とトーリー党の諍いが国を揺るがす事態に!」

レッサー「続きは次回、『やっと始まるガリバー旅行記!』で会おうぜ!」

上条「やっとだよ!やっと本題へ入れそうだよ!」



−続−

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