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Clock(trial)

第四章 潜入・妖怪村

 
――学園都市 学園出入り口ゲート

職員「君はなんで外へ?」

生徒A「親族が結婚式を挙げるのでお呼ばれしました」

職員「それはおめでとう。学校からの証明書と荷物検査があるのは分かっているよね?」

生徒A「はい、申請したとき先生から」

職員「証明書は……よし」 ピピッ

職員「荷物も……あ、これ」

生徒A「ここのオモチャ、持ち出すの禁止でしたっけ?」

職員「携帯型ゲームでもデスクトップ並の性能だからね。なんとかしてあげたいんだけど」

生徒A「お願いします!学園都市っぽいのプレゼントしたいんですよ!」

職員「あぁそれじゃ入り口の所にダウングレードのボランティアしている学生がいるから、そこで処理を受ければ大丈夫だと思うよ」

生徒A「ありがとうございます!」

職員「あんまり厳しくやりたくないんだけどね。転売する子もいるからチェック厳しめに」

生徒A「ヤバいのは生体認証かかってる時点で無理くないですか?」

職員「外の技術屋さんには血が騒ぐんじゃないかな?まぁ興味があるんだったら学生かインターンとして来た方が早いから、そんなに心配してないんだけどね」

生徒A「はい、失礼します」

職員「いってらっしゃい、気をつけて――はい、次の方どうぞー」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「あ、ども」

職員「あ、はい、えっと、うんっ、こん、にちは?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「うん?俺何かしました?」

職員「い、いや別に何も!ただちょっと、急に出てきたからビックリしたみたいで!」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「はぁ、お疲れ様です」

職員「では許可証を拝見……観光?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「はい。友達が呼んでくれたんで泊まりに行こうかと」

職員「その友達……身長はどのくらいなのかな?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「えっ?」

職員「いや深い意味はないんだけどね!こう、軽い気持ちの世間話で聞くよね!」

職員「もしこれが『10インチちょっとです』っていうお話だったら、別室で詳しくO-HANASHIするだけだよ!すぐ終るから!」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「身長、俺と同じぐらいですかね。聞いたことないから分かんないですけど」

職員「そ、そうかなっ!だったら良かったけど――その、お友達って、こう、君にだけしか見えないなんて事はないよね?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「まっさか!そんな訳あるはずないじゃないですか!やだなー」

職員「だ、だよねっ!おじさんの考えすぎだよねっ!」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「あ、でもその友達のカノジョは誰にでも見えるって訳じゃないかも?」
(※ザシキワラシです)

職員「イマジナリーフレンドのフレンドっ!?類友だった!?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「あの、許可証いいっすか?」

職員「あ、うん、ごめんね?規則だから、分かるよね?」

職員「あーあと、これも規則なんだけど学園都市の最新技術を外へ持ち出せないって知ってるかな?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「はい。何回か外にて出ますし」

職員「と言っても場合によってはOSダウングレードで済ます場合もあるし、部品交換でなんとか持ち出せるんだけど……」

職員「危険物とか、そういうのも、ないよね?」 チラッ

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「持っていません」

職員「えっと……実はね、気になってんだけどさ」

職員「こっちはやっぱり仕事でやってるからノータッチっていう訳には行かないし、何かあったりやらかしたりしたら被害を受けるのも君であって」

職員「かといってもしかしたらケースにはよっては『信仰上の理由』に引っかかるかもかだから、ぶっちゃけさわりたくはないんだが」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「あー、はい。分かってます、よく聞かれるんですよね」

職員「そ、そうっ!?良かったー、自覚はあったんだね!そっか、きっとアレかな?罰ゲームとかYoutub○にあげるとかするんでしょ?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「そういう訳じゃないんですけど、まぁ少数派ですかねぇ」

職員「だね!君たちが多数派になったら日本は滅亡フラグが立つって事だからね!少子高齢化どころの話じゃないもんね!」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「この髪は整髪料を使ってんじゃなく、地毛です」

職員「そっちじゃねーよ。お前の胸ポケットに入ってる危険物の話してんだよ」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「え?」

職員「げふんげふんっ!いや、今のは違う!」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「あぁこれはファービ○です」

職員「………………はい?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「いやだから、ファー○ーですってば。知りません?」

職員「いや知ってるけどね。おじさんが知ってるファ○ビーと、こう、全体的なシルエットが違うって言うかさ、別人?別物?」

職員「マツコ・デラック×とアレクサンドラ・ダダリ○が『同じ種族です』っつーのと同じぐらい厳しくないかな?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「あぁ最新モデルってヤツで、こう、目の前に手を翳すと」 スッ

眼帯付けた美少女フィギュア「……」

職員「……」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「あ、あれ?電池切れちゃったのかな?ちょっと待って下さいねっ今動きますからっ!」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「ここで動かなかったら怪しまれるから!不審に思われたら出られなくなっちゃうから!」

職員「心配しなくても充分に怪しいよ?おじさんこの仕事長いんだけど、青髪にピアスの子の次ぐらいに不審者だからね?」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「――って呼びかけるとセンサーが反応しやすくなるんですよ!本当ですから信じて下さい!」

職員「信じてるから、うん。君が望む結果とは違うと思うけど」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「さぁっ、張り切ってレェェェェッッツトライ!」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「だから俺を助けて下さいお願いしますよっ!」 スッ

眼帯付けた美少女フィギュア「……」

職員「……」

眼帯付けた美少女フィギュア「……モ、モルスァー、ブルスコァー……」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「ねっ!?俺の言ったとおりフ○ービーだったでしょっ何の変哲もない!」

職員「……あー……っとうん、まぁ○ァービーかな。そうだね、髪の色似ているしね」

眼帯付けた美少女フィギュア「量産型と一緒にして貰いたくないが」

職員「あれ、今喋って」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「『ザ○とは違うのだよ、ザ○とは!』」

職員「ふービックリした。なんだ腹話術か」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「って訳で行ってよろしいでしょうか軍曹殿っ!?」

職員「君あれかな、芸風がこの間同僚が出くわしたレで始まってサーで終わってた子と兄妹かなにかかな?」

職員「行っていいけども……なんだ、こう強く生きてね?できれば親御さんに迷惑かけないレベルで」

胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年「ありっしゃあしたっ!(ありがとうございました)」

生徒A「あの……彼、スルーしていいんですか?」

職員「……うん、こういうのは周囲の理解が必要だと思うよ。こう、温かく見守る的なね」

生徒A「本音は?」

職員「俺の担当時間以外に来てほしい」



――新幹線の中

上条(胸ポケットに美少女フィギュアを入れた少年)「……ふぅ、危うくバレるところだったぜ。ヒヤヒヤした」

オティヌス(眼帯付けた美少女フィギュア)「事故ってたな?数台巻き込んでクラッシュしてたからな?」

オティヌス「中には修学旅行行く子供たちのバスが混ざってぐらい、大事故に発展して大惨事になってたからな?」

オティヌス「というか何故私がファービ○?なんで胸ポケットにファー○ー入れたらスルーされると思ったんだ?」

上条「だったらお前考えてみろよ。ポケットから英国紳士のハンカチーフの如く覗かせてるファービーと美少女フィギュアの二人がいてだ!」

オティヌス「伏せ字は入れとけ。誰も呼んでないような場末のネタだとしても、そこは怖いから隠しとけ」

上条「お前だったらどっちに声かけんだよっ!?どっちがマシかって分かってんだろ!?」

オティヌス「両方無視する。だって怖いから」

上条「うん、俺もそうする」

オティヌス「自分の発言ぐらい自分で責任持て、なっ?」

上条「木を隠すには森の中って言うじゃんか?」

オティヌス「お前がやってたのは木を隠そうとしてビル屋上のヘリポートへ無断移設したんだよ。クリスマスでもあるまいし」

上条「いやでもフィギュアとしてバックん中入るの嫌がってたのはお前だろ?だったら他に方法はねーしさ」

上条「てゆうかもう俺は『美少女フィギュア(※非売品)を胸ポケットへ入れて腹話術するヘンタイ』ってレッテルがな!」

オティヌス「オーケー落ち着け上条当麻。今まさに密室の新幹線の中で騒いでいるお前だからな」

上条「出国――出園?ゲートでダダこねたのはお前だっつってんだよ!手荷物の中だったらこんな辱めを受けなくても済んだのに……!」

オティヌス「何となくお前と引き離されたら万引きJKのようになりそうな感じがだな」

上条「店長の趣味がマニアックすぎる。君自分の身長知ってる?」

オティヌス「お前の一階下に住んでいるオーク族が、時々洒落にならない視線で私を見るのだが?」

上条「あ、その人引っ越ししたってバードウェイ言ってたぞ。急に決まったんだとかなんとか」

オティヌス「ほう、また突然だな」

上条「なんでも『今頃は黒エルフ(つるぺた)がいっぱいいる楽園で楽しくやってる』って」

オティヌス「……オークのあの世はモノクロだな。省エネでいいが、てか実在するのかエルフ」

上条「実は俺の父さんがイギリスで」

オティヌス「お前らアホ親子の話は食傷気味だからいらん。てかお前の母親のメンタルは世界一だと誉めておこう」

上条「ありがとう?……まっ、細かいことは気にすんなよ!こうやって無事にゲートをくぐり抜けられたんだから!」

オティヌス「水を差すようで恐縮だが、インテリビレッジの滞在経験はあるか?」

上条「ないよ。今向かってるところだろ」

オティヌス「あそこも学園都市ほどじゃないものの、ブランド農作物に酪農や畜産関係でも世界的に有名ではあると」

上条「肉、楽しみだよなぁ」

オティヌス「一応『田舎で作ってます』的な演出も兼ねて、過疎の地方のような村らしいが、その実武装警備員が目を光らせているわけで」

上条「学園都市とどう違うの?背後から超電磁砲撃たれたりするの?む

オティヌス「……まぁ、そこまではフレキシブルではないと思うが」

上条「が?」

オティヌス「不審人物は持ち物検査の一つぐらいされるんじゃないか?」

上条「い、イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」



――インテリビレッジの駅

武装警護員「あ、そこの君」

上条「はい?」

武装警備員「その、胸ポケットのは?」

上条「妖精ですけど?」

武装警備員「そうか、分かってるんだったらいいんだ。ようこそインテリビレッジへ」

上条「あっはい、どもです」

オティヌス「意外にフレンドリーなんだな」

武装警備員「客商売だからねぇ。俺たちも『スマイル!』って言われてるしさ」

上条「外見の割にはフレンドリーっすね」

武装警備員「うんまぁ抑止っつーか、危険なことさせないためにいるもんだから」

武装警備員「あ、私服警備員もウロいてるから、俺達のいないところで悪さしても捕まるよ?気をつけてね?」

忍「インテリビレッジの好感度が下がるから、思ってても言うなや!」

上条「よっす!」

武装警備員「陣内さんとこの知り合いだったか。なら安心だな」

忍「あぁキュア一武道会でちょっと、な」

上条「なかった。そんなアホ企画で夢のコラボはしなかった」

オティヌス「というか彼女もちがなんであんな世界一アホ決定戦にエントリーしてたんだ」

忍「彼女を見せびらかしたかったから?」

……ラーン……

上条「……なぁ元魔人さん。ガチこいつ呪殺とかできないかな?かるーい気持ちでいいから」

オティヌス「雑魚の屋敷霊だったら話にもならんが、世界改変が可能な相手には少々分が悪い」

オティヌス「そもそも今の私はティンカーベルと大差ない存在だというのも忘れないでほしいところだが」

上条「……ピーターパンのティンクって結構悪さしてなかったっけ?」

忍「未成年者略取は確定。てかピーターからしてフック船長に土下座して謝った方がいいと思う」

オティヌス「あぁそれは後付けの話で、海賊どもは産まれたてのピーターを虐待していた子供たちが成長した姿という設定がだな」

忍「妖精……なのは分かるが、隻眼で羽根なしって珍しいな」

上条「まぁ多分世界に一つのスーパーレアだから」

オティヌス「人を課金ガチャで表現するのはやめてもらおうじゃないか」

忍「正体……を聞くのは野暮か。まぁ陣内忍だ、ヨロシク」

オティヌス「一身上の都合で本名は名乗れんが、妖精さんだ。崇めろ」

上条「やだこの子、俺の交友関係にこれっぽっちも気を遣おうとしてない」

忍「まーまーまーそう言うなって。てか妖怪って自己中ばっかだからな基本的には」

忍「こう、甲斐甲斐しく世話してくれるヤツもいるとこはいるが、実はそういう属性の妖怪だったりもするし、自由意志のある方か人間味があっていいさ」

上条「……お世話になります」

……シャラーン……

忍「てか急だったけど、あー別にこっちはいつてもウェルカムだけど、どったん?突然こっちに来たいって」

上条「いやー学園都市のアホケーブルテレビのアホ番組でさ。心霊的な取材をすることになって」

忍「あぁ成程。歓迎するが――それ」

オティヌス「人を指さすな」

上条「コイツが?」

忍「わざわざ電車乗り継いでこっちまで来なくても、その子の取材すりゃ良かったんじゃね?」

上条「あ」

オティヌス「言いやがったよコイツ。せっかくノリで誤魔化そうとしているのに」

上条「俺の――俺の取材費……ッ!自腹だった、のに……!」

忍「ま、まぁまぁまぁまぁ!折角だしどうせだったら本場の妖怪を取材した方がいいだろ!なっ!?」

上条「……ボスに前借り……年の差結婚……保険金……」

忍「なぁお前社会的にアウツッ!なこと考えてやしないか?」

オティヌス「安心しろ。誰か一人を選んだ瞬間に後ろから刺されて打ち切りだ。前例が示している」

忍「こっちにまで飛び火しやがった!?俺なんも悪くないのに!」

上条「や、でもあんだけ視覚の暴力持ってる彼女だったら、なぁ?管理人さんとしても一流だろうし」

忍「おうとも!……待て、お前今なんで管理人さんの話出したの?」

オティヌス「お前にとってはザシキワラシみたいなものだ」

忍「そっか!なら分かったよ!」

上条「その反応もどうだろう。てか管理人さん設定生きてたのな、てっきり二度と日の目を見ないものかと」

オティヌス「ま、それでだ人間」

忍「忍っつってんだろ」

オティヌス「コイツ以外の名前を呼ぶと妬くんだ、言わせるなよ」

忍「ひゅーっ」

上条「誤解だ!?お前が他人の名前憶える気ゼロなだけじゃんかよっ!?」

オティヌス「まぁそこいら辺の深層はボカすとして、インテリビレッジには妖怪が沢山といると聞く。ここまではいいか?」

……シャラーン……シャラーン……

忍「ウチにもいっぱいいるぜ!人っぽいのから人っぽくないのまで!」

オティヌス「あぁそれは個人的に興味深い。が、中には非友好的なものが居るだろう。ぶっちゃけ出会った瞬間に即死しそうなの」

忍「致命誘発体な。ウチにもいるよっ!何人かねっ!」

上条「お前バカなの?死ぬの?」

オティヌス「いや待て。それも別に本題とは違う。そんな致命誘発体と同居していても共存は可能、この男の家ではそうだという話だ」

忍「あぁみんないいヤツ――とは口が裂けても言えないが、一緒に生きていける仲間たちだよ」

オティヌス「そうだな。異論は特に持たないし興味もないのだが、問題はだ」

オティヌス「そんな致命誘発体とやらが、この集落ではそこそこの確率でエンカウントするんだよなぁ?」

上条「やだなにそれこわい」

忍「た、たまーにだよ!俺だって彼女もちになってからは遭遇してないしさ!」

オティヌス「もし遭遇していたら、お前の家のザシキワラシは妖怪食っちゃ寝シスターに名前を変えるべきだ。で、ここで問題がある」

忍「お、おう」

オティヌス「お前が”たまに”出会っていた致命誘発体、残念ながらというか大変遺憾というか、お気の毒様な事にとも言うべきか」

オティヌス「ここに世界トップレベルの不幸(※ただし女運は除く)な男がいるんだが、どう思う?」

忍「あー……」

上条「言われてんぞ、忍?ガツンと言ってやれって!」

オティヌス「おいバカ、そこのバカ話を聞け。主語がお前じゃないなんて、なんで思った?」

上条「現実逃避してんだよ悪いかっ!?」

忍「清々しくセコいことを言い切った!?」

オティヌス「という訳でなんとかならないか」

忍「あーそりゃ心配しすぎだってぱ。俺の客人、つーか俺の”家”のお客さんな以上、縁の加護が効いてくれるわけ」

忍「てか妖怪には妖怪の力が有効でさ、そっちの妖精さんは守ってくれないのか?」

オティヌス「私もあと二階変身を残しているのだが、それをすると世界がまた私の敵になるので宜しくはない」

忍「なんだ中二病の妖精か」

上条「そうだったらどんだけ俺の気が楽なことか……ッ!」

オティヌス「ある意味正解だがな」

忍「ま、まぁそんなに心配すんなって!大事になんかそうそうならないから!」

上条「だよ、なぁ?俺の不幸っつったってたかが知れてるし、本職の幸運のザシキワラシにかかったらトータルで大幅に勝ち越すだろ」

オティヌス「だといいんだがな。それで?そのザシキワラシはどこにいるんだ?」

上条「お前ザシキワラシ知らないのかよ。いいか?あの妖怪は取り憑いた家を豊かにするけど、家から出たらその家は没落するんだ」

上条「だから出歩くなんてできないし、家についても姿を見れるかどうか」

忍「電車来るまでコンビニ行ってる」

上条「出てんじゃねぇか!?お前の家潰れないの!?」

忍「縁曰く、『近所みたいなもんだからノーカン』だと」

上条「もうザシキワラシ名乗るの自重しろよ。元々ワラシ成分は皆無だったし、ザシキ属性も家出して行方不明になってんだろ」

忍「色々あるっつーか、あったんだわ。大体9巻分ぐらい――と、噂をすればその本人からメール」 チャーチャンチャンチャン、チャララー

忍「……ん?」

上条「トラブルか?」

忍「だと思うけど、これ」

上条「『ごめん、ムリ』……?」

オティヌス「真っ白くなってゴールしそうなメッセージだな」

忍「やめろテメェら縁起でもねぇわ!人の彼女に向かって!」

上条「落ち着け。コンビニっつっても、あそこだろ?こっから見えるし、手ぇ振ってる和服の美人って彼女さんなんだろ?」

忍「あ、あぁそうだけど……なんで?無事だし」

上条「なんか指さしてる……?」

オティヌス「――で、だ。さっきからずっと気になっていたんだが」

上条・忍「「はい?」」

……シャラーン……シャラーン……

オティヌス「なんかのSEが鳴りっぱなしなんだが、これ、なんだ?」

上条「あぁそういや聞こえんなぁ。金属を擦り合わせるような、小銭をチャラチャラさせるのよりか少し重い感じの」

忍「……あ゛ー……見てみ、あれ」

シャラン、シャラン、シャラン

上条「あ、お遍路さんだ。実物見た初めてだ!」

オティヌス「違うバカ!あれは七人ミサキだ!」

上条「妖怪!?うわ写メしないと!」

忍「致命誘発体だ!視線を合わせるな!」

上条「って思ったんだけど、気のせいだった!そういえばケータイ忘れてきたんだったわー!」

オティヌス「駅舎には入ってこようとしないな……入れないのか?」

忍「四つ辻や海上に出る妖怪だからな。まぁ、運が悪かった、か?逆にレアもの見られてラッキーかも知れないが」

上条「幽霊っぽいのに足がある……?」

忍「成仏できないからだよ。アイツらに出くわすと問答無用で殺されて、アイツらの仲間になって彷徨い続けるハメになるんだ」

上条「うっわぁ……」

忍「でもおかしいぞ。この程度の致命誘発体なら、縁の幸運で出くわす可能性は皆無だってのに」

縁 クイックイッ

オティヌス「またなんかジェスチャーしているな。上?」

上条「建物の上――うおっ!?デカい顔が!?」

忍「……釣瓶落とし!?」

上条「名前はちょっとファンシーだが、どんな妖怪?」

忍「一言で言えば致命誘発体。説明を加えると『木の上からデカい首が落ちてきて食い殺されて終わり』」

上条「もう帰る!おウチ帰って寝るもん!」

オティヌス「キャラは死守しろー」

縁 ピッ

忍「あ、まだなんか――アレはっ!?」

上条「段々格闘マンガの説明キャラ調になってる」

オティヌス「ツッコんで正気を取り戻すのか、お前は」

ベン!ベベンベンッ!

上条「ウクレレ持った人だ!?」

オティヌス「『琵琶』な?妖怪だってションボリするんだから、そこは間違えないでやろう?」

忍「琵琶法師ですね−、はい」

上条「確認するまでもないが!」

忍「うん、出会ったら即死」

上条「でっすよねー、AHAHAHAHAHAHAっ!!!」

オティヌス「なんだろうな……お前のヤケになった顔を見ると、心の奥がときめく――」

オティヌス「――はっ!?まさか、これが、恋……ッ!?」

上条「それはお前がドSなだけだよ?俺の不幸を全力で嘲笑ってるだけだからね?」

上条「テメー俺が無事に帰れたらスフィンクスの刑だからな?忘れんなよ?」

忍「あ、ほらあっちには平家の落ち武者(※行き逢うと即死)に踊り首(※見たら即死)に朱の盆(※遭遇したら即死)だ!」

チャーチャンチャンチャン、チャララー

上条「またメール。きっとこの状況を打開できる方法とか書いてあるんだぜ!」

オティヌス「だからキャラ変えるな。オチ読めてんだから」

忍「……『ムリなものは、ムリ』……」

上条「――ふっ、どうだ見たか忍!俺の不幸ナメんじゃねぇよ!ザシキワラシ如きにどうにかなるとでも思ったか、あぁっ!?」

上条「彼女もちになってタルんでんじゃねぇのか、そんな姿見たくなかったぜ……っ!」

オティヌス「違う違う、テンション違う。どうしてお前『女がデキてふぬけになった主人公を叱咤するライバルキャラ』やっているんだ?」

上条「そうでもしないと泣きそうだからですよコノヤロー?」

オティヌス「……すまない。私が悪かった」

忍「えーっと、うん、ま、まだ電車はあるから!インテリビレッジに妖怪が集中してっから、隣町まで行けば追いかけて来ないって!」

忍「ここは俺に任せて――行け!」

上条「忍……っ!」

オティヌス「勘違いしてるようだが、そいつ『もう帰ってください手に負えません』を薄っぺらく言ってるだけだからな?」

上条「『――こうして、我々はインテリビレッジへ足を踏み入れることなく引き替えざるを得なかった……!』」

オティヌス「唐突にシメにナレーション入った!?」

上条「最後の最後で!現地ついて即Uターンなんて頭悪いオチにも程があんだろーよチクショーがっ!!!」

オティヌス「まぁ概ね同意するが、何となくこんな結果になるような予感はしていた」

上条「――分かった。俺、全員連れて帰るよ!学園都市へお持ち帰りして科学と魔術と妖怪が交差して物語を生んでやっからな!」

上条「さぁ着いて来いお前ら!ロン毛の辛気くさいオッサンに一泡吹かせるために……ッ!!!」











○総合戦績
上条&佐天班――妖怪「サバ缶女」、動画ゲット
バードウェイ班――妖怪「エンゲルさん」、保護に成功
海原班――妖怪「八尺様」、検証・思考実験(喫茶店でダベっただけ)
上条&妖精さん班――妖怪色々、敵前逃亡・目的地直前で引き返す



佐天「――という結果に落ち着いたんですが」

上条「……面目ない。一応致命誘発体に囲まれてる動画は撮って来たんだけど」

佐天「オンエアしたら『素人のCG荒っ!』『特撮乙wwww』という温かいコメントしか頂きませんでしたもんね、えぇ」

上条「最近の子は!ゲームだアニメだで現実よりもリアルな動画ばっか見てるから目が肥えてんだよ!VRも考えもんだな!」

上条「てかマジモン出してんのにこの反応じゃもう打つ手ねぇよ!手詰まりにも程があんだろ!」

佐天「結局まとめとしては『妖怪とか心霊とか都市伝説以前に、近所のスーパーでそこそこ騒いで帰るのがコスパ最高』、というガッカリな結論に」

上条「俺だってガッカリだよ!有名なインテリビレッジ一泊と思ったら隣町のビジネスホテルに泊って帰って来ただけだからな!」

上条「でも妖怪はそこそこ認知されてるから、オティヌス連れてても浮かなかったのは不幸中の幸いだったが!」

佐天「それは、ただ単に上条さんの羞恥心がマヒしてきてる結果じゃないですかね……?」

上条「あ、それでこれお土産です。忍から『せめてこれぐらいは』って翌日貰ってきた」

佐天「お酒、ですかね?一升瓶の」

上条「ご両親に送ってあげれば多分狂喜乱舞すんだってさ。俺もよく知んないけど」
(※コップ1杯5万円)

上条「でもってこっちがザシキワラシが折った幸運の折り鶴!」

佐天「おおっ!?でも、これ普通の鶴じゃ?」

上条「見方を変えれば福の神が自分の手で折った物だし、超レアな縁起物ではあるらしい。俺も貰った……ん、だけど」

佐天「……黒い、ですよね」

上条「俺が素手で掴んだらさ、そっから色が変わって……」

佐天「もう呪われてないですかね。上条さんの人生が」

上条「……ぐすっ」

佐天「ハイカラ!あたし黒好きですよっ、なんかこう、黒いですし!カッコイー、みたいな!」

佐天「なんて言ってもオソロですよあたしとっ!嬉しいですよねっ!やったー!」

上条「まさか君に慰められる日が来るとは思わなかった」

佐天「ウッソでーす!」

上条「一度君のご両親と話させて貰えないか?教育方針について拳で語りたいと思うんだよ」

佐天「ジョークですって!ともあれお疲れっしたー」

上条「疲れたよ、うん本当に……」


−終−







――エピローグ

ピッ

『あー、もしもし?あたしあたし。もー違うでしょー、詐欺じゃないよ』

『で、ついた?お酒送るのなんて初めてだからどーしたもんかと迷ったけど、へーき?割れてなかった?』

『なんかねー、先輩から貰ったんだけど。うん、何か流れでさ』

『――え゛!そんなにすんのっつーか高っ!?ただで貰っちゃったのか−、うっわー』

『他に?えっと――折り鶴、だけど。うん、うん、セットで。よく分かったね』

『……』

『お母さん?どったの?急に静かに――え、何か言ってたかって?うーん……っと?』

『あ、そういえば挨拶がどうって言ってた。うん、お父さんとお母さんに話したいって――』

『――あ、うん。一回会いたい、つーか何が何でも引っ張ってこい?いやぁそれは別に、つーかいきなりだとご迷惑じゃないかなー』

『大事?けじめ?よく分からないけど、まぁ了解しましたっ!それじゃ冬休みにでも連行してくるであります!』

『それじゃ、うん、お母さんも元気で、じゃねー――』

プツッ



――

上条「……あれ?」

インデックス「どうしたの、とうま」

上条「くっ!また何かフラグ管理を間違った予感が……っ!」

インデックス「もうとうまは人間やめてるよね。どんな直感?」



※コラム
最古の折り鶴は井原西鶴の好色一代男に記述あり
当時から『連理の契り』として知られ、ぶっちゃけ二つor連鶴作って恋人同士が持ったり送ったりする習慣があった

縁「超幸運と超不幸が一緒になればプラマイゼロ!ザシキワラシの力を見せてやったぜ!」
忍「お前もう妖怪じゃなくて神様だな」


−完−

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