『そして静かに幕を開ける。ある反撃の烽火』
――???
「……ふむ。とあるゲームでな」
「例えば攻撃する際には六面ダイスを振り、その出目に攻撃に使った武器の威力を足し、それが最終的なダメージとなる」
「カッター程度であれば2、ナイフで7・8?真剣で15ぐらい。銃器では20前後だった気がする」
「対して人間の体力は10程度。カッターが2、ダイスの期待値が3.5として足して5.5。二回も当たれば瀕死だ」
「まぁ主人公達はレベルが上がったり覚醒したり、二桁後半は当たり前。前衛ともなれば三桁体力は必須のインフレ世界」
「敵も同様。取り残されていくのは哀れな一般人だけとなるんだが」
「だがそのゲームには追加ルールがあってね。『ダイスの出目が6である限り、もう一度振り足せる』と」
「これをクリティカル――と、呼んでいたかは忘れたが、まぁそう呼ぶとしよう」
「当たり所が悪かったのか、それとも上手く急所を突いたのか。デザイナー側はそう演出したかったと思うよ?」
「このルールのお陰で『誰であってもどんな相手に対しても一矢報いる』可能性が出来たと」
「理論上は悪魔王ルシファー――最も強いラスボス辺りですら、小学生が投げた石ころで撲殺できる“可能性”はある」
「だが実際の所――大真面目に計算してみたら、その世界で大ボスを倒すにはだ」
「『世界中の人間全員にダイスを振らせ、一回起こるかどうか』の、確率でしかない」
「逆に言えば『世界中の人間に石を投げつけられる』必要があるんだが。普通の相手であれば黙ってはいないだろうね?」
「同様に、だ。君は今、『上条当麻と同じ事をするのであれば、誰だって代わりえた』という仮説を立てたが……ふむ?」
「目の前の家出シスター相手に右手を振い」
「一万人殺した世界最強の能力者に立ち向かい」
「変質的な錬金術師に死にかけ、十字教一派と苦楽を共にしたり――」
「時にはイギリスを敵に回し、それでも飽きたらず第三次世界大戦中のロシアにまで乗り込んだな」
「そんな大馬鹿者が。常人どころか聖人や英雄ですらも匙を投げるような事態に対しても、だ」
「何度も何度も死にかけ、挫けて、何の見返りも求めない大馬鹿者が!」
「世界中のどこを探しても『上条当麻』以外の馬鹿なんて、いないに決まっているだろう!」
「可能性はあるかも知れない。もしかしたらもっと上手く、もっと楽に、誰かが何かを助けてくれた“可能性”だ」
「だが!それはあくまでもしもの話だ!現実には起こりえなかった仮定の話、所詮は言葉遊びに過ぎない!」
「あの日、あの時、あの場所で!」
「現実に押し潰されそうになる少女を!」
「妹のために死に場所を見つけた少女を!」
「姉に命を説いた少女を!」
「助けたのは、誰だっ!?」
「名も知れぬ英雄か!?万能の能力者か!?それとも偉大な魔術師にして騎士王か!?」
「誰でもない!どれでもない!」
「少しばかり変わった右手を持つ少年――馬鹿で馬鹿な馬鹿の……」
「――馬鹿なんだよ」
「……くく、浅い。浅いなぁ、魔神オティヌス」
「所詮はその程度か。全知にして全能の存在の名を持ちながら、そんな簡単な事にすら気づけないのか」
「……あぁそれじゃ無理だろうな。タロットを使うまでもなく、私には幻視るよ」
「君が魔神になんか、どれだけ時を費やしたとしてもなれやしないさ」
「空しく、そしてただ、虚しく。永劫を一人寂しく彷徨うのが精々だろうね」
「……」
「……と、言うかだな、貴様。君じゃない、頭が悪い方のだ」
「なんだかんだで、まだ生きてるんだろう?どうせ悪あがきをして、死に損なっているんだろ?」
「既に終わった世界で、閉じた世界の終末を突き抜けた先で、私の声が響いているのが証拠だよ」
「理解しろとは言わないけれど、その悪い頭と学生としては色々と致命的な演算能力を総動員して聞きたまえ」
「“誰が”とか、“もっと上手く”とか、そういうのは良いんだよ。何をどうやった所で結果論に過ぎない」
「例えば世界を造り直したとして、最初から英雄を設置としていたとしても、それは、ただの、偽物だ」
「悲劇を食い止められて私達は笑うかも知れない。幸福に浸るかも知れない――あくまでも、外面だけだがな?」
「例えばそこがどんなに満たされた世界でも、そして自分の思いのままに出来たとしても、それは夢だ」
「仮に全ての悲劇が回避されたとしよう。元の世界で起きた筈の悲劇が、無かった世界が出来たとする」
「だがそれじゃ『新たに起きる悲劇』は誰が食い止める?」
「学園最強の能力者が最強のままであっても、それはいつか訪れる魔術師には容易に敗れ」
「『必要悪の教会』がほのぼのハッピーな組織になったとすれば、凶悪な魔術犯罪者は誰が審判を下す?」
「グレムリンがグリーンピース程度にまでスケールダウンしたとして、他の人間は邪な考えを抱かないか?」
「それでも――『全人類の思考方向を探知し、特定方向へ誘導させる魔術』なんて方法であれば、悲劇は避けられる」
「だが、しかし、それではだ」
「去勢された家畜の生き方と何が違う?それをまさか“平和だ”などと言うつもりはないだろうな?」
「そもそも論で言うのであれば――まぁ私が言うのも少々棚に上げる気もするがね?」
「『たった一人で地球上全ての命を軽々しく消し飛ばした人格破綻者』が」
「『そんな絵本に出て来そうなヒューマニズムに悪酔いしたゴッコ遊びに付き合う保障』とやらも示して欲しい所だ」
「オカシイと言うのであれば、それは全てだ。最初からだよ」
「全知全能の力を持ちながら、そして世界を壊し、新たに構築する力がありながら」
「元の世界の矯正はせず、只々癇癪を起こした子供のように叩き潰した」
「そんな相手の善性に縋るのであれば、それは自殺と何が違う?」
「……」
「……なんだね。まだ目が覚めないのかい?」
「まぁ……貴様という大馬鹿者もなんだかんだで言わせたがり――もとい、悪趣味極まりないからなぁ」
「だからもう一度だけ言おう。いいか?普通は有り得ないんだぞ?光栄に思えよ?」
「……いやでも最近思うようになってきたんだが、こう言うのは言ったもん勝ちな気もするな。結局恥ずかしい思いをするのはそっちなんだし?」
「だから別に私は別に何とも思わないぞ?勘違いするなよ?」
「……」
「……ウルサイな佐天涙子!『惚れた弱み』とか言うんじゃない!デレた憶えなんてないし!“別に”もワザと噛んだんだ!計算だよ!」
「あと概念しか存在しないのにカメラを回そうとするな淫乱ゴールド!お前が持ってるそれはアガシックレコードだ!」
「星の記憶へ私のデレを刻んでどうする!?二周目では創世神話が御坂美琴の日記みたいになるだろう!……いや、デレた憶えはないが!」
「だからオルソラと鳴護アリサは勝手に頭を撫でようと――お前ら、いつか然るべき報いを受けさせるからな?憶えておけよ?」
「……あぁこっちの話だ。オリジンとパラレルが混ざり合った世界で、どーにも下らない事になっている」
「果たしてどの世界の基軸になるのやら。最悪全部入り交じったら悲惨――いや、笑えるだろうがね。私達以外は」
「……」
「――私は、お前“で”いい」
「……いや、違うな。そうじゃないな」
「――お前じゃ無ければ、嫌だろ。お前の居ない世界など、つまらんよ」
「私は、お前“が”いい」
――??? −続−
「……ふむ。とあるゲームでな」
「例えば攻撃する際には六面ダイスを振り、その出目に攻撃に使った武器の威力を足し、それが最終的なダメージとなる」
「カッター程度であれば2、ナイフで7・8?真剣で15ぐらい。銃器では20前後だった気がする」
「対して人間の体力は10程度。カッターが2、ダイスの期待値が3.5として足して5.5。二回も当たれば瀕死だ」
「まぁ主人公達はレベルが上がったり覚醒したり、二桁後半は当たり前。前衛ともなれば三桁体力は必須のインフレ世界」
「敵も同様。取り残されていくのは哀れな一般人だけとなるんだが」
「だがそのゲームには追加ルールがあってね。『ダイスの出目が6である限り、もう一度振り足せる』と」
「これをクリティカル――と、呼んでいたかは忘れたが、まぁそう呼ぶとしよう」
「当たり所が悪かったのか、それとも上手く急所を突いたのか。デザイナー側はそう演出したかったと思うよ?」
「このルールのお陰で『誰であってもどんな相手に対しても一矢報いる』可能性が出来たと」
「理論上は悪魔王ルシファー――最も強いラスボス辺りですら、小学生が投げた石ころで撲殺できる“可能性”はある」
「だが実際の所――大真面目に計算してみたら、その世界で大ボスを倒すにはだ」
「『世界中の人間全員にダイスを振らせ、一回起こるかどうか』の、確率でしかない」
「逆に言えば『世界中の人間に石を投げつけられる』必要があるんだが。普通の相手であれば黙ってはいないだろうね?」
「同様に、だ。君は今、『上条当麻と同じ事をするのであれば、誰だって代わりえた』という仮説を立てたが……ふむ?」
「目の前の家出シスター相手に右手を振い」
「一万人殺した世界最強の能力者に立ち向かい」
「変質的な錬金術師に死にかけ、十字教一派と苦楽を共にしたり――」
「時にはイギリスを敵に回し、それでも飽きたらず第三次世界大戦中のロシアにまで乗り込んだな」
「そんな大馬鹿者が。常人どころか聖人や英雄ですらも匙を投げるような事態に対しても、だ」
「何度も何度も死にかけ、挫けて、何の見返りも求めない大馬鹿者が!」
「世界中のどこを探しても『上条当麻』以外の馬鹿なんて、いないに決まっているだろう!」
「可能性はあるかも知れない。もしかしたらもっと上手く、もっと楽に、誰かが何かを助けてくれた“可能性”だ」
「だが!それはあくまでもしもの話だ!現実には起こりえなかった仮定の話、所詮は言葉遊びに過ぎない!」
「あの日、あの時、あの場所で!」
「現実に押し潰されそうになる少女を!」
「妹のために死に場所を見つけた少女を!」
「姉に命を説いた少女を!」
「助けたのは、誰だっ!?」
「名も知れぬ英雄か!?万能の能力者か!?それとも偉大な魔術師にして騎士王か!?」
「誰でもない!どれでもない!」
「少しばかり変わった右手を持つ少年――馬鹿で馬鹿な馬鹿の……」
「――馬鹿なんだよ」
「……くく、浅い。浅いなぁ、魔神オティヌス」
「所詮はその程度か。全知にして全能の存在の名を持ちながら、そんな簡単な事にすら気づけないのか」
「……あぁそれじゃ無理だろうな。タロットを使うまでもなく、私には幻視るよ」
「君が魔神になんか、どれだけ時を費やしたとしてもなれやしないさ」
「空しく、そしてただ、虚しく。永劫を一人寂しく彷徨うのが精々だろうね」
「……」
「……と、言うかだな、貴様。君じゃない、頭が悪い方のだ」
「なんだかんだで、まだ生きてるんだろう?どうせ悪あがきをして、死に損なっているんだろ?」
「既に終わった世界で、閉じた世界の終末を突き抜けた先で、私の声が響いているのが証拠だよ」
「理解しろとは言わないけれど、その悪い頭と学生としては色々と致命的な演算能力を総動員して聞きたまえ」
「“誰が”とか、“もっと上手く”とか、そういうのは良いんだよ。何をどうやった所で結果論に過ぎない」
「例えば世界を造り直したとして、最初から英雄を設置としていたとしても、それは、ただの、偽物だ」
「悲劇を食い止められて私達は笑うかも知れない。幸福に浸るかも知れない――あくまでも、外面だけだがな?」
「例えばそこがどんなに満たされた世界でも、そして自分の思いのままに出来たとしても、それは夢だ」
「仮に全ての悲劇が回避されたとしよう。元の世界で起きた筈の悲劇が、無かった世界が出来たとする」
「だがそれじゃ『新たに起きる悲劇』は誰が食い止める?」
「学園最強の能力者が最強のままであっても、それはいつか訪れる魔術師には容易に敗れ」
「『必要悪の教会』がほのぼのハッピーな組織になったとすれば、凶悪な魔術犯罪者は誰が審判を下す?」
「グレムリンがグリーンピース程度にまでスケールダウンしたとして、他の人間は邪な考えを抱かないか?」
「それでも――『全人類の思考方向を探知し、特定方向へ誘導させる魔術』なんて方法であれば、悲劇は避けられる」
「だが、しかし、それではだ」
「去勢された家畜の生き方と何が違う?それをまさか“平和だ”などと言うつもりはないだろうな?」
「そもそも論で言うのであれば――まぁ私が言うのも少々棚に上げる気もするがね?」
「『たった一人で地球上全ての命を軽々しく消し飛ばした人格破綻者』が」
「『そんな絵本に出て来そうなヒューマニズムに悪酔いしたゴッコ遊びに付き合う保障』とやらも示して欲しい所だ」
「オカシイと言うのであれば、それは全てだ。最初からだよ」
「全知全能の力を持ちながら、そして世界を壊し、新たに構築する力がありながら」
「元の世界の矯正はせず、只々癇癪を起こした子供のように叩き潰した」
「そんな相手の善性に縋るのであれば、それは自殺と何が違う?」
「……」
「……なんだね。まだ目が覚めないのかい?」
「まぁ……貴様という大馬鹿者もなんだかんだで言わせたがり――もとい、悪趣味極まりないからなぁ」
「だからもう一度だけ言おう。いいか?普通は有り得ないんだぞ?光栄に思えよ?」
「……いやでも最近思うようになってきたんだが、こう言うのは言ったもん勝ちな気もするな。結局恥ずかしい思いをするのはそっちなんだし?」
「だから別に私は別に何とも思わないぞ?勘違いするなよ?」
「……」
「……ウルサイな佐天涙子!『惚れた弱み』とか言うんじゃない!デレた憶えなんてないし!“別に”もワザと噛んだんだ!計算だよ!」
「あと概念しか存在しないのにカメラを回そうとするな淫乱ゴールド!お前が持ってるそれはアガシックレコードだ!」
「星の記憶へ私のデレを刻んでどうする!?二周目では創世神話が御坂美琴の日記みたいになるだろう!……いや、デレた憶えはないが!」
「だからオルソラと鳴護アリサは勝手に頭を撫でようと――お前ら、いつか然るべき報いを受けさせるからな?憶えておけよ?」
「……あぁこっちの話だ。オリジンとパラレルが混ざり合った世界で、どーにも下らない事になっている」
「果たしてどの世界の基軸になるのやら。最悪全部入り交じったら悲惨――いや、笑えるだろうがね。私達以外は」
「……」
「――私は、お前“で”いい」
「……いや、違うな。そうじゃないな」
「――お前じゃ無ければ、嫌だろ。お前の居ない世界など、つまらんよ」
「私は、お前“が”いい」
――??? −続−