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Clock(trial)

上条「――助けてヤミえもん!毎週ちょっとした猟奇事件があるよ!」

 
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上条「――助けてヤミえもん!毎週ちょっとした猟奇事件があるよ!」

闇咲「私も正直驚いている。30年ぐらい前は精々10年に一回あるかな、ぐらいの感覚だった」

闇咲「あと別に私は犯罪の専門家ではないのだが……」

上条「俺もテーマ的にどうかと思わなくもないんだけども。正直『なんでだよ』とツッコミが入らないこともなく」

闇咲「一応『偏見を拡げない』という意味合いでやってる闇ちゃんねるではある。避けては通れない、というかできれば私も避けて通りたい」

上条「え、なに?そんなにヤバイの?」

闇咲「というよりもまずどのような案件だったのかを確認したい。共通認識が正しいかどうかという前提だな」

上条「インストラクターの女性が霊媒師になるためかーちゃんを以下略」
(※グロいので自粛)

闇咲「何というか登場人物全員が救われない事件だな」

上条「さぁ否定してくれよ闇咲!オカルト的には何の意味無いってことを!」

闇咲「あー……誠に遺憾でせはあるのだが」

上条「そこいうとこだぞ!?大抵の事件で『オカルト的にも意味はなくもない』的な話は!?」

闇咲「前も少し触れたが、宗教儀式の一環としてそういうものがある、というのは嘘ではなく」

闇咲「また微妙に職業が職業なので、出身が西日本某所であればない話でもないというかな」

上条「地獄か。お前らの業界は地獄なのか」

闇咲「いや、だからな?ないものをあるというのが問題であるのと同様に、あるものをない、というのもまた決して誠実な態度とは、な?」

上条「嘘を吐きなさいよ嘘を!そこは空気読んで『ないよ!』って堂々と!」

闇咲「何回も繰り返して恐縮だが、割とこうアバウト……まぁ形容のがない程度にはアバウトだった時代もあり」

闇咲「確か先週話した『遊女の指切りで遺体から買って贈ってた』という話も実話だし、某所の葬式の話もまた一応事実だし」

上条「結構なタブーって話はどこいったよ?」

闇咲「地域と場所による、といのうもまた事実であり……あぁ江戸時代、日本は鎖国をしつつも一部で貿易をしていたわけだが」

上条「それ知らないヤツいねぇよ」

闇咲「その輸入品目の一つとしてミイラがあったんだ」
(※実話です)

上条「なんでだよ。心の底からなんでだよ、つーか江戸時代からコレクターばっかか日本人!?」

闇咲「という側面もある。有名な『人魚のミイラ』を筆頭に、その手のミイラを作る職人が結構な数いたという記録も」

上条「だから需要はどこにあんだよ。それとも江戸時代からあったんかフィギュア的なものが」

闇咲「国内で製造された『○○のミイラ』は寄席、まぁ見世物小屋や地方への土産で重宝しており、その一部が”ホンモノ”として神社仏閣に納められるケースも多々あったわけだ」

上条「それはマジモン扱いなのか?」

闇咲「もしそうだったら幕府が取り締まっている。なので都会では作り物の一種、地方ではそこそこ本物だと使い分けていたようだ」

闇咲「で、そんな中に日本へせっせと輸入されていた海外のミイラは一線を画した使い方をされていた」

上条「だったら俺はスーパーひと○くん人形を賭けるぜ!」

闇咲「大きく出たな。で、回答は?」

上条「話の流れからして喰ってたんじゃねぇか海外製ミイラ……ッ!!!」

闇咲「――正解。では次のバイトだけ時給3倍にしよう」

上条「あざっす――じゃ、ねぇわ!?自分で言っといてなんだけど否定しろやそこは!?」

闇咲「私も出来ればそうしたい。だが一応、うんまぁ一応は紛れもない事実なのでな」

闇咲「16世紀末の中国の書物、『本草綱目』には人間の体を原料にした薬の薬効が細かく記されており、という話であり」
(※勿論科学的根拠に乏しい)

闇咲「同時期には西洋でも『ミイラは体に良い!』というブームが巻き起こっていた。むしろそれが本邦へと持ち込まれたんだろうが」
(※実話です)

上条「それでなくなったんじゃねぇのかエジプトのミイラ。盗掘されまくった挙げ句に」

闇咲「という説もある。だが現在ではあまり支持されていない」

上条「違うのか?だったらどっから調達きてたっていうんだよ?」

闇咲「偽物を適当に作ったり、乾燥した地方の墓を勝手に曝いてミイラに改造したりしていたそうだ」

上条「需要もアホだが供給もアホしかしねぇのか」

闇咲「ミイラというか……まぁ日本の場合、仏教のためにミイラになったものは即身仏と呼ばれる。ある意味宗教的なレリックへと化すわけだ」

闇咲「そして同時に、キリスト教の聖遺物は『不朽(ふきゅう)』という特性がある、と、されている」

上条「あぁ確か、劣化しない的な?」

闇咲「もしくは朽ちるスピードか極端に遅いかだな。聖なるものであれば朽ちることなし、逆に言えば聖なるものでなければ朽ちてしまうと」

上条「その超理論で歴史的な文化財がどれだけぶっ壊されていったんだろうな」
(※っていう宗教です)

闇咲「なんだかんだ言いつつ、所詮は宗教だからな。ただ影響と歴史が世界規模なだけで」

上条「逆になかったらどうなってたんだと思わなくもないんだが……」

闇咲「似たような何かが成立していただけだろうな。哺乳類と有袋類のように収斂進化を遂げるというか」

闇咲「……まぁ、その『聖遺物』の中には聖人の遺体やら何やらもあったのだが……」

上条「あー……アホが喰っちまったかー……」

闇咲「宗教的熱狂から、という説が強いが、まぁかなりの量が失われているのも確かではある」

闇咲「ちなみに日本で消費されていたミイラに関しては、件の書物の影響が強かった大名層が、という話だな」

上条「……効果、あったのか?」

闇咲「そこまでは調べてはいない。ただ世界規模で大ブームにならなかったことから、大した効果はなかったと推測される」

闇咲「……まとめるとだ。残念なことに需要があって供給もあった、というのが歴史的な経緯だな。先日の遊女の話だったり、首切り役人の副業もの話も吹くめて」

闇咲「だがしかし、『それが宗教行為に繋がった』という話はかなり眉唾である。そこまで価値がなかったからだな」

上条「価値の有る無しの問題か?」

闇咲「割とそうだ。即物的な物言いになるか、それこそ需要と供給の話に繋がる」

闇咲「入手が難しければ難しいほど比例して価値が上がる。聖遺物もそうだがレアリティが高ければ高いほどありがたがる訳だな」

上条「ポケモ○カードか。全然興味ないのに『そ、それじゃ試しに買ってみようかな!』って俺ですら思うぐらい」

闇咲「君が買ったら暴落するから思い留まってほしい。靴磨きの少年並にジンクスがある」

闇咲「これは私が前に聞きかじった話であって、正確かどうかは分からない。何分裏付け等一切していないため、完全に与太話の可能性がある、と前置きをした上での話だが」

闇咲「君は前衛芸術をどう思う?」

上条「あー……『これ、芸術、か……?』って感じ?美術のプロだったらよく分かるんだろうが、俺にはちょっと難易度が高い」

闇咲「安心してくれ、私も理解は出来ない。それはさておき、『前衛芸術はただの投機商法だ』という話があってだな」

上条「とうき?」

闇咲「利益を狙って売買する行為だ。株やFX、土地転しなどが投機の一ジャンルである」

上条「土地転がしは違うわ。いや多分!」

闇咲「株なんかそうだが、買って売る、それで得をしたり損をする。ここまでは分かるな?」

上条「流石に高校生でそれ知らなかったらヤヴァイだろ」

闇咲「では現役の高校生に聞くが、投機の対象としてどのようなものがある?」

上条「え、あー株に為替に土地……先物取引だっけ?原油とかもか」

闇咲「その一ジャンルに前衛芸術がある、というだけの話だ」

上条「芸術は芸術じゃね?なんで投機の対象になってんだよ」

闇咲「ふむ、そうだな。例えばレシートの裏にサインペンで書いた落書きがあったとしよう。これは前衛芸術だ」

上条「買い手がいなさそうだけど……」

闇咲「ではキャンパスにペンナイフを使って油絵で描く。これは?」

上条「絵の上手さ次第じゃね?もしくは奇抜さとか」

闇咲「ならば前者のレシートがオークションにかけられ、数百万円の価格で落札されれば?」

上条「誰かが価値を認めたって事だったら、まぁ前衛芸術だって――」

上条「……」

上条「――え、それなんか、なんつーかおかしい、よな?値段がついたら芸術って、変じゃね?」

闇咲「『前衛芸術が全て”そう”だという説』がある。”それっぽいもの”に”それっぽい値札をつけ”て”それりっぽい価格で売る”と」

闇咲「売る方も買う方も芸術性など全く理解できておらず、ただ投機の対象としか見ていない、というな」

上条「それ言い出したら美術品なんて全部その場のノリじゃねぇのか?歴史的な価値とか、作者の腕とか……」

闇咲「そもそもからしてそこがおかしい――『プロにしか分からない美的感性』とはなんだ、という話であってな」

闇咲「この説の真偽はさておくとしてだ。私が言いたかったのは『共通認識が整っていれば価値はある程度作れる』事だな」

闇咲「例えミイラや遺体のような材料であっても、それが薬になったり滋養強壮になると分かれば流通に乗る。そして供給が増えればレアリティが低くなる」

闇咲「ここで最初の話に戻るが、ある程度遺体が溢れている世界観で価値が激減する。よって信仰の対象や宗教儀式として成立するのは難しい、という話になる」

上条「理解できたような……できないような……?」

闇咲「人を殺して尊厳を傷つけるような宗教行為は”現代”だからこそある程度価値が出るのであって、昔はそこまでではない、だな」

上条「つーことは完全に病んでたんかな……」

闇咲「フィクションのオカルトでも参考にしたのだろうと推測される。私が言うのもなんなんだが。せめて事前に一言あれば、とは思うが」

上条「命の電話相談室でもやんのかよ」

闇咲「一応偏見と迷信を打破すべくという意味であれば。本当にオカルトが氾濫しすぎている。呪物コレクターとかな」

上条「てかあぁいうのってホンモンなのか?」

闇咲「いい機会なので言っておくが、ミイラが流行ったと言ったろう?観賞用だったり一応医療用であったり」

上条「その発想からして『江戸時代の人間って未来に生きてんな』と思わなくもないが」

闇咲「まぁ実際には見世物用のミイラが職人によって量産されていたり、平和な時代だったと言えなくもない」

上条「カツカツだったら遊んでられないのは分かるが」

闇咲「贋作家が作ったのがミイラしか作ってないと思うか?」

上条「あー……もしかして」

闇咲「何でも作っていたんだ。本人達は軽いアルバイトと経験値稼ぎのつもりだろうが」

闇咲「物珍しいと話題になり、それが好事家の間で売買される――”価値を持った”と投機の対象になる訳だ。前衛芸術のように」

上条「……もしかして多少古くてもそれが本物とは限らない?」

闇咲「人権も何もあったものではない、ブラック極まる徒弟制度の職人の技術で作られているからな。出来は本物よりも精巧、というケースもある」

闇咲「よって謎の正体不明の像やら、曰く付きの某という呪物などと触れ込みで結構贋作が都市部・地方問わず広まっていると」

上条「ネタがいつの間にか『実はウチには呪われた○○が!』ってなっちまったのか」

闇咲「よくあるパターンでは昔の当主が買った贋作、というジョークグッズ?を倉に入れたまま忘れた後に死没。数代後になった発見され『これは!?』と相談されるケースがしばしば」
(※稀に)

上条「誰だってそんなんあったらビビルわ。カッパのミイラやらサルの手やら」

闇咲「そこまでだったら『じゃあ捨てようか』と割り切って捨てればいい。ただ中には『専門家に見てもらおう』と大学の研究室に持ち込む人間もいる。これが少し問題だ」

上条「なんで?専門家から見ればパチモンってわかるんじゃ?」

闇咲「人文系ならな。理工学の方だと『ではこれがいつ作られたのか調べてみましょう』となり」

闇咲「『年代測定の結果、江戸時代に作られたものだと判明しました!』と言われたら、どう思う?」

上条「……『じゃあこれは本物の呪物に違いない』、か?」

闇咲「年代だけ判明したら怖くなってそれ以上は調べず、疑心暗鬼で心を病むパターンが」

上条「みんなも人文系に持ち込んでくれよな!ちゃんとアポ取ってくれれば邪険にしないし、むしろ喜ぶアホばっかりだぜ!」

闇咲「その時には『呪われました☆』ではなく、倉から『珍しいものが出てきました』で吊ること。前者だと普通に引かれる」

闇咲「まぁ最初の霊媒師の話からは大幅にズレてしまったが、呪物っぽいものは意外と世に溢れている。ネタで作ったものも含めて」

闇咲「またそうそう”アタリ”を引くこともないだろうし、変な先入観を持たずに、というのがアドバイスになるか」

上条「あと最後に聞きたいんだけどさ。偽物もあるんだったら本物だってある筈だろ?なんそれっぽい話はないのか?」

闇咲「あー……前にも少し言ったが『現地で仲良くなった子からお守りをもらったが、中身は墓場の土』というケースがなくはない」
(※ほぼ実話です)

上条「だから怖さがおかしいんだよ!?」

闇咲「そしてそれ持ち帰ったゼミの反応が『やったね!実証できるね!』だったという」
(※原文ママ)

上条「本当に呪われてんのってそいつらじゃね?そんなんばっかやってたら早々に死ぬだろ」
(※関係者全員ピンピンしてます)

闇咲「後日知ったのだが、その呪い、いや呪物……まぁお守りか。それは一応向こうが『安全祈願』な意味があるそうだ」

上条「ブツが限りなく物騒なんだが……それだと厚意?それともライクの方の好意?」

闇咲「後者を向けさせるという効果も含まれているだろう、というのが教授の見解なのだが……」

上条「が?」

闇咲「幸い被験者が二次元にしか興味がなかったらしく、呪いの事なきを得たとか」

上条「事ないかそれ?あるだろ事?だって呪われる前段階からお家断絶が宿命づけられてるってことだよな?」

闇咲「まぁ何にせよ早まった真似は止してほしい。あなたが大切なものを差し出したとしても、それが”誰か”にとっても同じとは限らないのだから」

上条「何か不思議なブツがあっても大抵パチモンだから大丈夫だってさ!でも中にはモノホンのあるかもしれないけど気合いで頑張ってくれよな!」

闇咲「まぁその手のオカルティスト、コレクターが堂々と生存している時点でただの商売だからな」

上条「……ちなみにホンモノに出くわしたときは?」

闇咲「大丈夫だろう?どこかの郷土学にどっぷり浸かった暇人がピンピンして――あぁいや違う。今にして思えばアレもきっと呪いだったんだろう」

闇咲「――そう、『二次元にしか興味がない呪い』がな」

上条「そのデバフって最初っからかかってなかったか?そしてそれただの癖(へき)だろ?」


-終-

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