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(新)都市伝説紀行〜祓い屋・闇咲逢魔シリーズ Seven season〜 「旧支配者」(終)

 
――オービット・ポータル芸能警備会社

闇咲「――最近、自信がないんだ」

鳴護「待ってください?初手からあたしのキャパをオーバーしてますからねっ!?」

闇咲「『ここへ来れば超なんでも解決してくれますよ?』と言われたのだが……」

鳴護「犯人は即バレしたのに暴力が怖くてクレームを入れられない……!」

闇咲「上条少年にも相談したのだが、やはりここを勧められてな」

鳴護「やってないですよ?いつの間にか風評被害が風評被害を量産している感じですけど」

闇咲「それで――どこから話したものかな」

鳴護「無理ですよ?そんな、こう殺し屋さんの相談を承れるような人生経験はないですから!」

闇咲「誰が殺し屋だ。もう足は洗っている」

鳴護「助けて当麻君!?付き合いがないわけじゃないけど、友達(上条さん)の友達だから間合いが分からないよ!?」

闇咲「まぁ確かに拝み屋として後ろ暗いところがない訳ではないとは言えないが……」

鳴護「すいません、そういう話はウチのマネージャーさんとつめて貰えませんか?あたしには荷が重すぎて卒倒しそうです」

闇咲「直接は名乗りもしていなかったか。祓い屋をやっている闇咲逢魔だ」

鳴護「名前からして邪悪……!鳴護アリサですっ!アイドルっぽいことやってます!」

闇咲「心霊関係の相談があれば24時間受け付けている。何かあったらいつでも連絡を」

鳴護「超胡散臭いですけど、当麻君のお知り合いですからガチ勢なんですよね」

闇咲「何をもってガチと称するのかは不安だが、有り体にいえば魔術師だな」

鳴護「邪悪なマネージャーさんとも何かやってますもんね。『科学と魔術が!』と少年のような眼を時々されていますが」

闇咲「それで相談なんだが」

鳴護「だから無理ですって!?てか公称15歳・実年齢2歳の相手に何を求めるんですか!?」

闇咲「多角的な視点も時には必要では、と」

鳴護「不必要だと思います。だって素人が100人集まっても素人考えが100ストックされるだけですから」

闇咲「……切実なんだ!」

鳴護「そう言われると……まぁ、はい、じゃあ聞きますよ?でも期待しないでくださいね?」

闇咲「この間の話になるが、とある教会の仕事を引き受けたんだ」

鳴護「教会……ジャンル違うんじゃないですかね?」

闇咲「場所が日本なのでね。それに外から入ってくるものもいる、だから協力者を一人連れて行ったのだが……」

……

闇咲『――ここが件の教会か。シスターが連続失踪している噂のある。さて、蛇が出るが鬼が出るか』

マタイ『分類的には蛇だね。ここのレリーフが見えるかな?巧妙に擬態しているつもりだろうが、これは暴砂と蝗害の魔神パズズの聖印なのだよ』

マタイ『どれ、下がっていたまえ。神の火で魂ごと灼してしんぜよう』

闇咲『情緒がない。建物の外見見て秒で解決されても、その困ると言いますか』

闇咲『最速で解決したようだが、これもう私は必要ないな?前教皇猊下さえいれば大抵の心霊現象には対応できるし』

……

闇咲「もうその日の午後にはケリがついて二人で観光地を巡っていた」

鳴護「うわぁ……絵面がキッツイ。ヤク×にヤク×の掛け算したら職質されまくりそう……」

闇咲「あぁ実際にはそうでもないぞ?あからさまなヤク×は警察もスルーするからな?」
(※個人の意見です)

鳴護「まぁ、事情は分かりましたけど。それ助っ人を頼んだ闇咲さんが悪いんじゃないですかね?」

闇咲「人命がかかっている以上、手持ちのカードの中で最も優れたものを切るのは当然だろう」

鳴護「意外に人道派!?外見は葬儀屋さんっぽいのに!?」

闇咲「他にもこう、あるんだ。上条少年とインデックス先生を連れて行くと、秒で解決したり」

鳴護「あー……空気読まないですもんね、あの二人」

闇咲「自らの力不足を痛感する上、私ごときではこれ以上の高みは到底……」

鳴護「比較対象が悪すぎません?マタイさんは元宗教団体のトップですし、インデックスちゃんも何か秘密兵器っぽいアレなんですよね?」

闇咲「だからといって大の大人が移動手段専用スタッフというのも、流石に如何なものかと」

鳴護「あー、じゃあ何か修行イベントってありません?何かパワーアップできる感じのは?」

闇咲「申し訳ないのだが既に頭打ちだな。能力的にはインデックス先生の約10万3千分の一程度といえる」
(※10万3千冊vs『抱朴子』一冊(ただし途中))

鳴護「事情は知りませんが卑屈すぎません?あとその計算だと全ての魔術師の上にインデックスちゃんが立っちゃいません?」

闇咲「将棋のタイトル戦では『相手を殴り飛ばして名人になった』というルールはないのだよ……」

鳴護「それはルールのある将棋だからですよね?皆さんって将棋のコマ飛ばしたり、盤で殴りあうような暴挙に出てませんでしたっけ?」

闇咲「昔のゲームでな。『十字架を投げつけて相手を倒す』という主人公がいたんだが、似たような攻撃方法を取る教会関係者と交戦したという話が」
(※音速○さん)

鳴護「メッチャ罰当たり。そして音○丸さんではないと思います」

闇咲「と、いう訳で。この先私はどうすれば良いだろうか?」

鳴護「思っていたよりもライトな問題でしたが、それこそ素人のあたしにはアドバイスができる訳もなく……!」

闇咲「あと補足しておくが、君とインデックス先生は『最新の魔神』として覚醒する可能性もそこそこある。その際は人類の敵として討伐対象になりかねん」

鳴護「殺虫剤買うのすら躊躇うあたしになんて言いがかりを!?」

闇咲「その時には是非一報を。上条少年の借り程度には働こう」

鳴護「当麻君がなんとかしてくれそうですよね」

鳴護「あー……とまぁご事情は把握しました。闇咲さんの能力的なものが不安だと?」

闇咲「効率を重視、というか安全面に配慮すると暇を持て余した前教皇猊下へ依頼するだろう?」

鳴護「その発想がどうかしています」

闇咲「そしてたまたま金欠で苦しんでいる上条家の面々を誘ったり」

鳴護「人道的配慮ですね。その優しさは大切にしてください。『やったね上条さんある意味オイシイね!』って過激派にはならずに」

闇咲「ふむ」 ジーッ

鳴護「な、なんです?」

闇咲「そういえば君とは一緒に仕事をしたことがなかったな、と」

鳴護「絶対に嫌ですからね?てか素人を巻き込まないで下さい!」

闇咲「いや、君の場合心霊スポットで鎮魂歌歌ったらその瞬間に全滅するな、と思っただけで他意はない」

鳴護「あたしの歌に面白パワーが!?」

闇咲「ローマ正教に『聖人』認定されたら抗争再びだからな。程々に活躍してくれれば」

鳴護「正直憧れなくはないんですが、できればもっと穏便な能力がほしかったです」

闇咲「どこぞの魔神の卵よりはマシだと思うが。あれは『接触したものの温度維持』ではなく、真の意味では『奈落の花』だろうし」

鳴護「飾利ちゃんを許してあげて!?なんか一時期を境に微妙に人気がなくなった飾利ちゃんを!」

闇咲「中々君も酷い刺し方をしていると思うが」

鳴護「ともかくあたしを心霊スポットに突撃させるのは考え直してください」

闇咲「そこまで無謀なことはしないとも。啓発動画の方だ」

鳴護「あぁそっちでしたら別にご一緒しても。ただ確実にそちらへヘイトが向うでしょうが」

闇咲「上条少年のSNSが定期的に炎上するやつだな。生憎炎上するほどの人気もないのだが」

鳴護「あぁ、そういえば闇ちゃんねるの方でちょっと思ったんですけど。あれのアリナシってどう決めてるんですか?」

闇咲「アリナシというのは?」

鳴護「微妙にお茶を濁す的な時もありますし、逆に地名を言うときもありますよね?呪いの強弱とかで?」

闇咲「そういう訳ではないが、そう取られても仕方がない。主に偏見を生むかどうかでアリナシを決めている」

鳴護「逆に偏見しか生まないんじゃ……?今の素人怪談士が雨後のミントテロのように繁務しまくる現状だと」

闇咲「そうだな。例えば某地方でこれこれこういう呪いがあったとしよう。まぁ人身御供でもいいが」

鳴護「そんなサラッと言われても……!」

闇咲「そういう話をする際に具体的な場所はなるべく避けている。それが例え事実であっても、犯罪や忌み嫌う行為をした人間の子孫、という不要な誤解や偏見を招くからな」

闇咲「しかし一方で『冥婚』のような根も葉もなく、というか悪い意味で曲解させるような悪意のあるネットロアも存在する」

闇咲「リアリティを持たせるため”乗っかった”という方がより正確かも知れないが」

闇咲「なのでそういうケースであるならば、『冥婚』自体はただの葬儀の一環だから、と公開されている情報と照らし合わせて語ってはいる」

鳴護「微妙に……奥歯に物が挟まったような言い方なんですけど……」

闇咲「山梨の寄生虫の話もそうだし犬神の話もそうだ。かつてあった事件と偏見、そのルーツとなったであろう事象をただ説明しているだけに過ぎない」

鳴護「それじゃあ公開できないようなお話もあるんですか?」

闇咲「時代と共に多少はなくもない。そうだな、江戸時代の話にこういうものがある」

闇咲「ある所に大変臆病な男がいた。彼は友人の処刑役人の家へ泊まることになった」

鳴護「その時点で設定が矛盾しているような……なんで泊まるのか。よりにもよってそれなのかと」

闇咲「男は夜中に目が覚めてしまった。何やら聞き慣れない、ぽた、ぽた、と雨だれのような音がする」

闇咲「男は訝しみながら音のする方、庭と向った。『いやだなぁ。幽霊だったら怖いなぁ』と震えながら」

鳴護「殆どフラグじゃないですか。これでギャグになる訳が」

闇咲「暗い庭から水の滴るような音はある。しかし灯りがないのでよく見えなかったのだが、その時。さあっと風が吹いて月を被っていた雲が吹き散らされた」

闇咲「すると月明かりに照らし出されたのは、人間の臓器だったのだ……ッ!!!」

鳴護「何それこわい」

闇咲「男は『なんだ、幽霊じゃなかったのか』と戻って眠ったそうだ」
(※っていう小咄。実在します)

鳴護「そっちの方が恐怖ですよ!?なんでここでスルーできる胆力持ってんですか!?」

闇咲「いや、これには江戸時代特有の事情があってだな。詳しくは『首切り役人』で調べてほしいのだが」

闇咲「日本は刀の一大産地、しかしながら試し切りをしようにも殺生が強く禁じられていたんだ。仏教の影響が非常に強かったからな」

鳴護「ギャグですよね?何となくオチ読めましたけどギャグって言ってくださいよさぁ早く!」

闇咲「なので当時余っていた処刑された人間の遺体でこう、ちゃちゃっと」

鳴護「価値観が独特過ぎません?よりにもよってそれを使うのかと!」
(※本当にやっていました)

闇咲「そしてこれもまた事実なのだが、遺体の引き取り手が当時はないというのがよくあった。罪人だというのもそうだが、なんといっても土地不足だからな」

闇咲「よって処刑人に処分が一任されていたのだが」

鳴護「が?」

闇咲「不思議に思わなかったのかね。今の小咄、どうして庭に人の臓器が干されていたのかとか」

鳴護「……『沙耶の○』?」

闇咲「あれは心象風景だからな。バッドエンドで本格的に壊れるが」

闇咲「まぁ、その……売っていたらしいんだよ。薬として」

鳴護「………………はい?なんて?」

闇咲「受け入れがたいだろうが、というかまぁ私もどうかと思わないでもないのだが、薬の材料として人体がだね」

鳴護「ええっと……それはフィクションですよね?HENTAIばかり魔術師さんの話で?」

闇咲「ではなく現実の話だな。中身を知っていたかは別にして、かなり売れていたそうだ」

鳴護「嘘でしょ」
(※結構な利権だったようです)

闇咲「また当時の日本はミイラの一大消費国でもあった訳で」

鳴護「あのー……消費っていうのは」

闇咲「漢方だな。薬として飲んでいたそうだ」

鳴護「正気なのかな?」

闇咲「――と、いう程度にはコンプライアンスも緩かった時代もあり。そのぐらい大らか、というかアバウト過ぎる時代があったのもまた事実だ、ということだ」

鳴護「あんまり話をそういう聞かないんですけど……」

闇咲「それこそ聞いていて楽しい話ではないからな。別の問題が存在するとも言えるし」

闇咲「江戸ぐらいの大都市ならばともかく、それ以外で『ウミガメのスープ(※ウミガメ抜き)』があったりしたら、それはそれで嫌な風評被害を出しかねない」

闇咲「よってそういうものには手を出さないか、逆に注意喚起をしているというのが現状だな。『伝承的には全く価値がないからその怪談は偽物だ』と、いうような」

鳴護「一体誰の得になっているのは微妙ですよね、それ」

闇咲「これもとあるオカルトの大御所が描かれたショートショートの話なのだが、ある男が息子に気味の悪い道路の話をする」

闇咲「何かこう誰かに付けてこられているようで気味が悪い、と言うと息子が解決策を提示する」

闇咲「確か『三つ辻の真ん中で振り返ると気配が消える』というような内容だったが、男は息子のアドバイスを聞かずに振り向かなかった」

闇咲「すると家まで霊が憑いてきてしまって――という話だな」

鳴護「あれ?でもそのお話って」

闇咲「君も、というか下手をすれば君の方がよく知っているかもしないが、『見るなのタブー』の一つだな」

闇咲「オルフェウスが妻を冥界へ迎えに行ったが、『決して振り向いてはいならない』という禁忌を破り、妻を救い出すことができなかった、という逸話」

鳴護「ですよね。日本神話でもあったように」

闇咲「神話だけであればまだいいのだが……実はな。某所の葬式のしきたりで、ご遺体を拭いた布と絞った水をタライで川へ捨てに行くという風習がある」

鳴護「そこら辺じゃなくて川ですか?」

闇咲「呪術的には死の穢れを払い、科学的には生活圏内へ不浄を停滞させないという行いだな。そしてその話には『帰ってくる最中、絶対に振り向いてはならない』という禁忌がある」
(※本当にある風習です)

鳴護「あー……帰って来ちゃうんですね」

闇咲「と言われているな。そして某マンガの行いは逆なんだ、祓うのではなく憑いてくる方の」

鳴護「……悪意がある、とかじゃ?もしくは炎上目的とか?」

闇咲「ではないと思われる。作者がそのSSを描かれた時点でのキャリアが45年なので、悪意を込めたり炎上させて注目を浴びる必然性がない」
(※諸星大二○先生)

闇咲「よって創作で描かれた事柄が、偶然にも真逆になったと推測されるのだが……まぁ、良くないんだよ」

鳴護「もし仮に真似しちゃってた子がいて、何年か後に知ったらショックですよね」

闇咲「変に幅を効かせているからなオカルトが。中には意図的だろうが、わざと降霊術の真似事をさせる話もあるにはある」

鳴護「あー、『おつかれさま』でしたっけ?都市伝説でありますよね……あれ、マズいんですか?」

闇咲「あのレベルを素人がやったところで何も起きはしない。そこは確実に」

闇咲「もしも何か起きたらそれは素人ではないし、”以前から続いていた何かが、そのときたまたま目に見えるようになっただけ”だな」

鳴護「すいません闇咲さん。そろそろお腹がいっぱいなんですが……」

闇咲「あぁすまなかったな――よし、では行こうか」

鳴護「待って?いやちょっと本気で待ってくださいよ!?なんであたしがこの後ご一緒する流れになってんですか!?」

闇咲「口頭よりも実地での証明の方がいいと思ったのだが。何か不都合でも?」

鳴護「遊ぶんだったら当麻君かレッサーちゃんをどうぞ?あたしはただの一般人ですから、着いていってもリアクション要員以外は無理ですからね?」

闇咲「普段の仕事ぶりを見て適切なアドバイスを是非」

鳴護「……当麻君との怪談漫才以外にはどのような業務内容で?」

闇咲「その業務をやっているつもりはない。まぁ基本的には祓ったり祓われたりという内容だが」

鳴護「本当にあるんですか?」

闇咲「どうだろうな?少なくとも一般的ではないが、一番近いところで片道一時間だ」

鳴護「だったらちょっと行ってみたい、ですかね?」

闇咲「分かった。では少し待ってくれ、マタイ猊下へ連絡を入れる」

鳴護「それダメですよね?誘った瞬間、『いいよ』って言われた瞬間にもう話の主旨というか主役が変りますよね?」

鳴護「具体的には『お忍びで来てるメッチャ偉い人とコワモテのSP、そして近くにいた一般人』って構図になりますよ?いいんですかそれで?」

闇咲「学生を危険な目に遭わせる以上、万全の体制でだな」

鳴護「あれもしかして今からラスボス倒しに行く話してません?だってレベルカンストした仲間をパーティに入れるってそのぐらいの大事ですよね?」

闇咲「事前調査では魔術案件ではない、筈、だからな。しかし念には念を入れて」

鳴護「そういう姿勢が自分を追い込んでいるんだと思います。レッサーちゃんを見習ってください!」

闇咲「一発ギャグに命を賭けられるほど剛胆でもない――では概要を簡単に説明するとだな」

鳴護「守秘義務って知っていますか?」

闇咲「ここの事務所に依頼した内容だから、スタッフが耳にする分には構わないはずだ」

鳴護「依頼って……ウチでお手伝い出来るようなことってあります?」

闇咲「成分分析だな。どこから話したものか……刀剣が乱舞するゲームは?」

鳴護「この業界で知らない方がどうかしてますよ。あたしも名前だけは何とか」

闇咲「刀剣を擬人化する……?私もよくは分からないのだが、昔の名刀や妖刀が取り上げられている」

鳴護「何周後れか分からないぐらいに遅れてますけど、まぁそうですね。博物館や美術館が賑わっているそうです」

闇咲「その話の一環なんだが、某所にある某神社では刀が奉納されていたんだ。江戸時代の名工の作とされているそうなのだが」

鳴護「あー、それがホンモノかって事ですね。それで科学の方に」

闇咲「この街にある伝手はここぐらいしかないからな。上条少年へ頼む訳にも行くまいし」

鳴護「当麻君だったら謎の人脈でこなしそうだけど……」

闇咲「神社のご家族に中学生の女子が」

鳴護「英断でしたね!頼まなくて正解だったよ!」

闇咲「教育にも人生にも悪いからな。本人は極めて善性なのだが……まぁ、そんな訳でオービット・ポータル社を通じて刀の鑑定をしてもらった」

鳴護「へー、でも鑑定なんですか?科学だったら成分分析とかじゃ?」

闇咲「一応鑑定で合っている。だが、幾つか分析をしていたらだな、その、古い血液が付着していると……」

鳴護「だから急にジャンル変えるのやめません?怖いは怖いですけどそれ別の意味でって注釈付きますよね?」

闇咲「だからその、試し切りの話をしただろう?何本か造って一本だけ試し切りをして切れ味を見た、という」

鳴護「その説明自体は初耳ですけど、なんでその話が?」

闇咲「普通の刀が人を殺せる限界は大体三人という説がある」

鳴護「……いやあの、そういう説明を求めるんじゃなくて」

闇咲「そういう説明しかないんだ。真剣とはいえ人体もまたそれなりに強靱な上、人の脂や血液が付けば切れ味はゼロになるし、骨に当れば刃こぼれするし折れる」

闇咲「その限界が斬って、突いて、殴って、という点でまぁ三人だろう、という話なんだが」

鳴護「はぁ。でもそれって神様に捧げた物とは関係なくないですか?普通そういうのって一番良いヤツを――ってまさか!?」

闇咲「そうだな。奉納した人間が意図的にやったかは分からないが、まぁよりにもよって試し切りをした方の刀を納めたようで」

闇咲「僅かに刃先が潰れている以上、少なくとも何かを斬っているのは確定だそうだ。血液の方は何のものまでかと鑑定できなかった」

鳴護「なんでよりにもよってそんなの贈っちゃった……!?」

闇咲「恐らく渋ったんだろう。商人辺りに売る手前な」

闇咲「――で、『新品の新刀だとそこそこ大切に扱っていた刀が実は人斬っていた』で大問題に……」
(※っていう騒ぎがちょいちょい)

鳴護「何か問題なんですか?」

闇咲「宗教的に問題がだな。いや、実戦経験のある刀であればそれ相応の役割というか使われ方があるのだが、それをしなかったのだから」

鳴護「でも武器は武器じゃ?」

闇咲「君の家で保護した猫が実は人喰い虎だったらどうする?」

鳴護「円周ちゃんに比べれば、まぁ大人しいかなぁって」

闇咲「君も良い感じで倫理観壊れているからな?誰かの交友関係がバグっているとも言うが」

闇咲「その神社へこれから鑑定結果を持っていき、非常に頭の痛い話し合いをする訳だが――どうだ、一緒に?」

鳴護「超行きたくないです。心霊スポットへ行くのも真っ平ゴメンですが、っていうか予想以上に地味なお仕事なんですね!」

闇咲「最近祓い屋と自称するのも少し恥ずかしくなってきた所だ。と、愚痴に付き合って貰って済まなかった。礼はそのうち」

鳴護「あぁいえいえお役に立てずに、ってでもさっきマタイさんも連れて行くって」

闇咲「……暇、らしいんだよ」

鳴護「あー………………あたしからこれ以上は何も、はい」

闇咲「事務所の企画でどうだろうか。ご当地アイドルと商店街をブラつく前教皇」

鳴護「超色が付くから嫌です。そして人類史に名を刻むようなネタを残したくもないです」



――数日後

鳴護「――っていうようなことがあってね」

インデックス「おかわりください!あ、次はかんとりーがまーむするのをもっと多めに!ちょこみまれでもいいんだよ!」

鳴護「うん、聞こうか話を?あとおもてなし用のおやつはバランスってのがあってね?」

インデックス「うん、聞いてたんだよ?ちょこまみれは偉大な発明だよねって」

鳴護「美味しいけどね?一応ペースはこっちなんだから、話を聞いて貰えると……」

インデックス「あー、なんかやみさかが悩んでるんだっけ?あの人はべつにじこかんけつするからいいんだよ」

鳴護「シスター……悩める子を導くシスター」

インデックス「あーっと……やみさかはねー、まじゅつしとしては微妙なんだよね。これ以上伸びしろはないって意味なんだけど」

インデックス「ただそれは裏を返せば完成してるって意味でもあるんだし、あんていせいだってあるし、なやむことはないんだよ?」

鳴護「そういう話だっけ?インデックスちゃんと当麻君の容赦ないそげハラとマタイさんのオーバーキルに心を病んだだけでは?」
(※そげハラ=そげぶハラスメント)

インデックス「……いやあの、何回かこーさつしてるんだけど、やみさかってああ見えてあっくあの下位互換なんだよね。特化系の万能型っていうか」

インデックス「なんかショボそうに聞こえるけど、ローマ正教のほぼ最強のせんりょくのだうんぐれーど版って、そうとうじゃないと言われないんだよ?」

鳴護「その例えが理解できないんだよ?あたしにとってはガンダ○もゾイ○も同じにしか見えない……!」

インデックス「あー……普通の魔術結社だったらえーす級なのかも。実際そうだったみたいだし、まえにしょぞくしてたろっじも全め……させてるし」

鳴護「あの人もまた虎なんだよね。比較対象がドラゴンとかティラノサウルスだから、分が悪いだけで」

上条「――ゾイ○と言われて俺、参上!!!」 シュタッ

鳴護「呼んでないです。あと長々と語られてもどれがどれだか分からないんで」

上条「なんかワイルドするんだ!」

鳴護「予想以上に知識が浅い!?どっちかって言えば凄い最近の話の気がする!」

上条「夜中に電気消してゴジュラ○で遊んでたらインデックスに叱られた件」

鳴護「それは怒ってもいいと思う。男子特有の『嘘でしょあるある』だよね」

インデックス「家帰ったらまっくらな中、『しゃー!』言いながら眼をチカチカさせる謎の物体があったら誰でも驚くんだからね……?」

上条「た、タイミングが悪かっただけだろ!節分の時にやれば鬼も逃げていくよきっと!」

鳴護「血迷ったメーカーが出しそう。【節分ライガ○キットセット!オーガザウラー専用ブースターアイテムも同封!】とか」

上条「いやこれ意外と行けるんじゃないかな?単品で売るのは厳しいかもだが、オプションパーツだけを完全受注生産だったらペイはとれる筈……!」

鳴護「誰目線なの?あと闇咲さんのお話は?」

上条「闇咲は……いやまぁ魔術師と能力者でヤベーやつはたくさんいたんだけど。つーか殆どが大なり小なりヤベーんだけど」

上条「闇咲は魔術師っぽくないのな。躊躇いなく損切りしてくるタイプ」

鳴護「損切り?投資のお話だっけ?」

上条「そっちの話は俺も知らない。でなくて大体の連中ってアホみたいな魔術や能力持ってんのな。『なにそれ無理じゃん』的な?」

鳴護「そういうHENTAIさん相手にして生き残ってるのもどうかと思うんだけど……」

上条「俺はいいんだよ!基本的にカプセル怪○さんが優秀だから!」
(※ゲスト)

上条「そうじゃなくて、その強い相手ってのはやっぱり能力と同じぐらいには自信もプライドもあるんだ。まぁ誰だって調子ぶっこくのは当然なんだけども」

上条「勝ってるときにはいいんだけど……多少不利になってきても、負けを認めて撤退したり、一回引いて体勢整えたりとかしないんだよ」

鳴護「あー……逆境に弱い感じ?」

上条「なまじっか今までの成功体験が邪魔するっていうか、変に自信過剰でメンタル的には脆いっていうか」

上条「『ここで逃げられたら、体勢整えられて全滅するな!』ってことが何回かあったし。一方通行とか」

鳴護「あたしとしては友達がそんな殺伐とした戦いに身を投じているのが衝撃なんだけど……」

上条「言わないで!?俺だって正月に勝った日記帳読み返してたら『ラノベの構想かな?』って思わなくもないんだからねっ!」

インデックス「ぜんぶ真実のどきゅめんたりーなんだから怖いんだよね」

上条「で、闇咲なんだが。多分あいつが不利になったら全力で逃げそうなんだよ。他の人の命とかかかってなければ」

鳴護「それは別にお互いにとっていいことなんじゃ?」

上条「一番厄介だろ。こっちが忘れた頃に『来ちゃった☆』とか言って襲撃かけるタイプだから」

鳴護「いやそんなストーカーじゃないんだから」

インデックス「突出したつよさって訳じゃないし、魔術師界では所属していたろっじ、というか家名の方が有名だったんだけど……」

上条「個人的な性格だと思うわ。良い意味で根気強いって感じの」

上条「そして怖ろしい事実が一つ――『闇咲は俺らを本気でトリに来てなかった』って事か」

インデックス「なのでじつりょくじたいが未知数なんだよね……かくしだまは確実にあるんだけど、その全容は、なんだよね」

上条「最悪、凹んでる姿すらブラフかもしんねぇんだよなぁ。あ、俺達じゃなくて俺達を観察してる勢力へ対して」

インデックス「だよねぇ。こういうとき、一番くみしやすし、って人がまず狙われるだろうから、それも狙いなのかも」

鳴護「二人の殺伐としたところが怖いよ!?戻って来てインデックスちゃんだけでも!」

インデックス「そして何よりもおっかないのは……あの人、がちでさばいばーなんだよね」

鳴護「生き残るって意味で?」

インデックス「そっちじゃなくてね、山伏だから森の中で自給自足できるっていう」

鳴護「それは別に重キャンパーと同じじゃないのかな……」

インデックス「都市だったらときのせいけんとか、ゆうりょくしゃとかが探したらいつか見つかるんだよね?むらでもそうだけど、普通は生きられないから何もないところだと」

インデックス「でもやみさかは隠れようと思えばどこでも隠れられるし、年単位で地雷が移動しているような……」

鳴護「そこまで邪悪な人じゃない……よね?」

――PiPiPiPiPi

上条「あ、俺宛、つーか闇咲だな。『もしもし上条ですが?』」

鳴護「人の噂をしたらっていうけど……」

上条「『――え?チャイナ着た神様と包帯巻いた神様が?いや他人じゃないかな?俺は知らないよ?いやホント嘘なんて吐いてないですよ嫌だなあはははははは!』」

上条「『で、でも浜面なら知ってるかも知れないっていうかアイツの担当だから良かったらそっちの番号教えるね!』」

鳴護「堂々と嘘を!?そして闇咲さんの戦う相手がついにどうしようもないステージにまで!?」


-終-



(新)都市伝説紀行〜祓い屋・闇咲逢魔シリーズ Seven season〜 「旧支配者」(終)

闇咲「――気をつけろ!ここには古の魔神、名状しがたい旧支配者どもが封じられている!」
娘々『う、誰だよお前?勝手に人んち入ってくんじゃねーよ。えっち』
娘々『あ、おっつー☆あれなんだっけお前、ハマヅラのピラ友の更にダチじゃん?』
ネフテュス『おぉ、ゆうしゃやみさかよ。たまに打ち込み間違いで「闇御坂」になって、ここの運営の乾いた笑いを誘うものよ……』
娘々『部分的には合ってじゃんよーねー』

闇咲「パワーインフレにつけていけない。かといってエメロ○家の当主代行殿のような心の強さも持ち合わせていない」

-完-

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