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Clock(trial)

上条「『ちょっとだけ闇ちゃんねる 〜日本住血吸虫〜』」

 
――とある高校 朝

姫神「――などと『俺たちは常日頃しょーもないことさせられてんのに。どうしてエイプリルフールではよりにもよって別作品の小説なのか』と。意味不明の供述を繰り返しているようです」

土御門「あれカミやん捕まったんだにゃー?ついにどっかの運営にカチコミかけて」

姫神「私がヒロインの長編はいつになったら。そして公式での伏線回収は」

土御門「マンガ版ではバッサリ切られて……あぁまぁ気にすんなにゃー!その分だけ酷い目に遭わないと思うんだぜぃ!」

姫神「まぁこれはこれでオイシイと思わなくもない。こうなったら都市伝説方面で真価を発揮するしか」

上条「雰囲気だけは凄いんだよな。あ、おはよう姫神と春なのにアロハシャツマン」

姫神「おはよう上条君」

土御門「これは俺のポリシーであってアロハではないんだにゃー。あとおはようだぜぃ」

上条「姫神はどうか大人しくしやがっててください。お前が動くと無限に都市伝説が広がるんだよ」

姫神「ふっ。この間は放課後音楽室でアニソンの練習をしていたら。『詐欺か!』と見知らぬ女生徒にツッコまれた」

土御門「『世にも奇妙○』のテーマソングとか弾いてそうだにゃー。あとななんか上手そう」

姫神「申し訳ないけど。アニソンとポップにしか興味がない」

上条「それでも弾けるだけスゲーとは思うが」

土御門「そして『音楽室で物悲しくキン○の大冒険を弾く幽霊』が爆誕するぜぃ……!!!」

上条「面白いわー。キン○さんが一枚噛んでる時点でどんな怪談でもギャグになるわー」

姫神「なんだったら屋上で口笛を吹いたっていい。マイブームは『チキップダンサー○』のOP」

上条「寄せに行くなよ。楽しくなってきた!」

土御門「あぁそういや幽霊で思い出したんだにゃー。カミやんさー、俺らの通学路のとある団地前のカーブって知ってるかにゃー?」

上条「カーブ……?あぁなんかあったな、バスが妙に速度落とすカーブ」

土御門「あそこに幽霊出るって噂あんの知ってるかにゃー?」

上条「え、出るの?知らなかった」

土御門「カミやんは放課後すぐ帰っちまうから知らないだろうけど、なんかバスの最終便乗ったヤツが見たんだっちゅー話だぜぃ」

姫神「幽霊かな?」

土御門「曰く。部活終わりでメッチャ疲れたわー、ってバス乗ってたら、カープんとこに人がいるのが見えたんだそうだにゃー」

土御門「なんで生徒があんなとこに突っ立ってんだろ?と思いながらバスの手すりに掴まったんだと。揺れっからにゃー」

土御門「んで視線をまたカーブの方に戻したら、あれ誰もいない、ちゅー感じなんだって」

上条「シンプルでいい話だな!下手に盛らないところが好感触だ!」

姫神「怪談の過剰摂取で挙動不審になっている。どうか気をしっかり」

土御門「まぁカミやんは悪い意味で場数を踏みすぎてるんだぜぃ」

上条「どうせアレだろ?そのカーブで事故が多くて実は前に亡くなった人がー的な話なんだろ?」

土御門「まぁ、そうだにゃー。オチを先に言うのはどうかと思うにゃー」

上条「てか土御門さ。俺思ったんだけど」

土御門「なんだぜぃ?なんでも言ってみ?」

上条「『学園都市は学業優先だから、バスも電車も夜6時頃が最終便』って話じゃなかったっけ?」
(※確か公式設定)

土御門「――っていう話もあるんだぜぃ!都市伝説って怖いにゃー!」

上条「話逸らすなや。あと神様(※鎌池先生)ですらその設定忘れてんじゃねぇかと思わなくもないが」

土御門「そして実は――幽霊を見たってやつがこの世には存在してなかったんだよ……ッ!!!」

姫神「それただのフィクション。まぁ一般的な怪談とも言える」

上条「ほぼ100%そうだろ。もしくはただの勘違いか……一応聞くけど、姫神さんは無関係なんだよね?」

姫神「上条君は失礼」

上条「だったなごめんごめん」

姫神「もし私が仕込みをしているんだったら私から率先して話を振る」

上条「キャラは守れ、なっ?そんな面白キャラじゃなかったろ?」

土御門「やだ、またカミやん君さんの悪い影響が……!」

上条「お前もだよ。どこの世界にグラサンアロハの見るからにガラ悪い高校生がいんだよ」

土御門「おぉっとこれは俺の魂の霊装なんだぜぃ!具体的には☆2レベルのやつ!」

上条「レア度低めじゃね?今のソシャゲーって☆5が天井って訳でもないんだから

姫神「そして土御門君が注意されない時点で。この学校のレベルがしれる。かもしれない」

土御門「まぁ、信じようが信じまいが気をつけるんだにゃー。事故が多発してんのは確かなんだすぃ?」

上条「えっと……(あっち案件だったり?)」

土御門「(不明だぜぃ。ただマジで注意しとけって俺の勘が言ってる)」

姫神「男子同士がイチャイチャするのは悪くない」

上条「腐った眼で俺たちを見るな!?これはただ純粋に魔術サイド案件かどうかって話だよ!」

姫神「多分誰も気にしてないと思う。堂々と喋っても『なんだラノベか』で納得する」

土御門「おい言ってやれよ岸○!」

上条「『令呪をもって命ずる――ネ○、全裸になれ……ッ!!!』」

青ピ「お−、おはようさん。何々?Fat○/cccのリメイク版の話しとぉ?」

姫神「と。簡単このように」

上条「偶然俺のモノマネが迫真の演技だったお陰だな!まるでご本人のような!」
(※cv:阿部○さん)

土御門「なんだかんだでアニメにもなってるんだにゃー」

小萌「――はいはーい、正常なミカンと腐ったミカンどもー、席に着くのですよー」

上条「おいおい、言われてるぞ青ピ?」

青ピ「やってなぁ、つちみー?」

土御門「お前らのことなんだにゃー、このダメ人間どもが!」

小萌「その三バカなのですよ?ゴリ、もとい災誤先生と黄泉川先生と親船先生から連名でクレームが来たので、全員放課後乗りやがれ、なのですよ?」

上条・土御門・青ピ「……あーい……」

……

上条「……ホントすいませんでした先生。あのアホどもには俺からよく言い聞かせますんで、退学だけはご勘弁を……!」

小萌「よりにもよってぶっちしやがったのですよ……!相変わらずナメた真似をしくさるのです……!」

上条「あ、あれっすよ先生!きっと二人はカーブで起きる事故の原因を解決に行ったんですよ!」

小萌「あー……上条ちゃんも気をつけるのですよ」

上条「え、マジなんですかあの噂!?」

小萌「マジなのは事故が多いって話だけなのですよ。歩道を歩いてても車が曲がりきれずに、みたいな痛ましい事故はそこそこあるのですよ」

上条「歩行者が車に勝てるわけが……能力者だったら別、ですか?」

小萌「んー、どうなのですかね?確かに港か系移動系の生徒ちゃんだったらワンチャンあるかもですけど、とっさの状況に能力が発現するどうか怪しいのですよ」

上条「ですよね!能力があったって使えなきゃ!」

小萌「上条ちゃんは慎むのですよ?事故は事故なんですからね?」

小萌「てゆうか流暢に喋ってる時間はあるのですか?そろそろバスも最終便になるのですよ」

上条「あ、もうこんな時間か!すいません先生っそれじゃまた明日!失礼しますっ!」 ダッ

小萌「はーい、気をつけて帰るのですよー!知らない人とフラグを立ててもついて行かないのですー!」

……

上条「……」

上条「(まぁそんな訳で俺は一人でバスに揺られているんだが)

上条(あまりにも遅くて他の生徒やサラリーマンの姿はない。酔っ払ったオッサンが乗っててもおかしくないぐらいの時間なんだけどな)

上条(もうすぐ例のカーブだが……特に前後の車も対向車も通ってておかしくはない、と思う)

上条(ただ……朝とは違って妙に車の流れが早いっていうか。車の総量自体が減っている感じがする)

上条(それに理由を付けるとすれば……そうだな。事故が多い道であれば、消防や警察が入って大渋滞になるのは間違いないわけで)

上条(だから混んでしまうような道路は避けられる傾向にあり、絶対数自体が少なくなる)

上条(とするとスピードを出しやすい環境が更に整ってしまい、アホが調子に乗ってアクセル吹かして事故が起きる、かもしれない)

上条「……」

上条(そんな、そんなどうでもいいことを考えていたら、もうすぐ例のカーブだなって所にまでバスは来ていた)

上条(俺以外に乗る人もなく、そして降りる人もなく。この上ない贅沢っちゃ贅沢だが、まぁ何となく喜べる雰囲気でもない)

上条(考えても、気にしてもしょーがないだろうし、俺はスマートフォンのアプリを起動、し、た……?)

上条「なんだ――――――あれは……ッ!?」

上条(そこに”そいつ”はいた)

上条(この世の闇を凝縮したような、黒を極限にまで煮込んで更に純度を高めような闇が)

上条(魔のカーブで俺たちをジッと見つめていたんだ……ッ!!!)

闇咲『……!』 ジーッ

上条「まぁだろうな!そんなこったろうとは思っていたが!はいはいどうせいつものHENTAIどもの所業だと知ってたわ!」

上条「運転手さんすいません次で降りまーす!停めてくださーい!」

……

闇咲「――と、いうわけで闇ちゃんねるなのだが」

上条「テメー何事もなかったように進めんなよ話を!?どう見てもお前が都市伝説みたいな格好しやがって!?」

闇咲「私がか?今日はフォーマルなスーツを着ているが?」

上条「ダークスーツだよな?葬儀屋かマンガかラノベかアニメかゲームぐらいでしか見たことないわ!」

闇咲「結構見ているようだが」

上条「ファンタジーって意味では!姫神と並んだら超面白そう!」

闇咲「誉められてはいないのだろうが、まぁ、ありがとうと言っておく。ここではなんだし、君のアパートまで送ろうか?」

上条「あれ?お前って車で来てたんだ?」

闇咲「レンタルだがね――では帰りながら、補足事項を少し」

上条「それ止めない?曲がりなりにも事故現場から直帰すんのにオカルトの話って」

闇咲「なんというか色々あったのだ。前回と前々回が脱線しまくってアブラハムの三宗教の話にまで飛んでしまっただろう?」

上条「あぁまぁ……あのアホが各方面へケンカ売ってましたよね。グラム75円ぐらいで」

闇咲「牛と豚の回答挽肉並の安さだな」

上条「なんで知ってんだよ相場を。初めて会ったときは打って変わって所帯じみてきやがって!お幸せにな!」

闇咲「ありがとう、というか私のプライベートの話はどうでもいい」

上条「それ言い出したら全部プライベートだろ。ほぼ100%趣味で放送やってんだから」

闇咲「地道な啓蒙活動のつもりなんだがな――そうだな。運行系の怪談をしようか」

上条「フラグ立ててんじゃねぇよ!?車で移動中になんか幽霊とか現れたらどうするつもりだ!?」

闇咲「『邪魔だから祓っておこう』、だな」

上条「レベルが違いすぎる。幽霊でギヤーギャー騒いでいる俺らをどう見てんだお前らは」

闇咲「私は特に何も。で、だ。これはある駅員の話だ。そう、それはこんな夜遅くの話」

闇咲「その駅員は鉄道の運営管理をしていてね、その日は最終電車が整備用のドッグへ入ったのを確認して、建物の方へと向おうとしたそうだ」

闇咲「するとどうだろう。遠くの線路からライトでこちらを照らされていた。電車が一本、駅へと入って来たんだ」

闇咲「『何かトラブルでもあったんだろうか』。そう駅員は思い、停まるであろう電車の運転手から話を聞こうと思い、駅のホームで暫く待っていたら」

闇咲「フッ、と。ロウソクの火を消したように、電車自体が消えてしまっていたそうだ」

上条「へー……電車がなぁ?きさらぎ駅の亜種かなんか?」

闇咲「翌日、出勤してきた駅員は線路の上でタヌキが死んでいたのを見つけたそうだ。つまり昨日の怪異はタヌキの仕業だったんだ、と」

上条「オチ、タヌキでいいのか!?なんかこう急に怖くなくなったぞ!?」

闇咲「今のは一応実在する昭和初期の怪談だな。さて、タヌキはどこへ行ったのか、という話になる」
(※本当にあった怪談。鉄道黎明時には類似の怪異がよく起きた)

上条「妖魔夜○だったらロ×系マスコットキャラとして活躍している……!」

闇咲「こう、あれだね。何でもかんでもサブカルで解決するのは悪い癖だと思うが――ともあれ、昭和時代からそのような怪談があったのだから、今更何がどうという訳でもない」

上条「幽霊列車とかあんじゃないの?」

闇咲「『車輪』――というものには因果かあってな。聖書にケルビムという天使が出てくる。彼の姿は車輪に翼が生えた天使なんだ」

上条「なんてシュールな……!」

闇咲「神学者曰く、『神の叡智を遍く万所へ満たすための車輪』だそうだ。少なくとも車輪自体がその当時ですら神格化されているという事実でもある」

闇咲「と、なれば当然?列車や車もある程度はオカルト要素に首を突っ込む余地がある、と言うことだな」

上条「ネットロアが飛び交ってるからな。今この瞬間も誰かが書いて誰かが読んでるんだろうが」

闇咲「そういうのを潰せればいいと思ってはいるが……さて、ではレッサー君の補足をしよう。諏訪の神、祟り神としての側面だが」

闇咲「彼が『祟り神としては強烈すぎる』という点なんだが。これはケチの話でもしたように『起きた事象で原因を解釈した』という結果だな」

上条「なんだっけ、えっと『芝居興行が失敗しちまったし、なんかあそこ呪われてんじゃね?』ってのが時系列的なのに。『呪われてたから失敗した』って逆転すんだっけか?」

闇咲「あそこのカーブの話もそうなんだよ。元々曲がりづらい、というかその前の直線が長いだけあって加速してしまうドライバーが多い」

闇咲「結果カーブを減速できずに突っ込んで事故を起こす。それも一人ではなく続くと――」

上条「『あのカーブは事故が多い、きっと幽霊の仕業だ!』になるんだよな」

闇咲「そういう話だな。事実をオカルトで解釈するんだ。それ自体は好きにすればいいと私は思うが」

上条「いいのか?事実とは違うんだろ?」

闇咲「別に幽霊だろうがなんだろうが、カーブ自体を注意するようになれば事故は減るからな。除霊とか祟りとか言い出さない限りは、まぁ」

闇咲「こういった交通事故に多い原因として脇見運転もまた多いため、一概に良いとも言い切れないが」

闇咲「――で、レッサー君が説明し損なった事案なのだが、何故にあそこまで諏訪の神は祟り神としての側面が強くなってしまったのか、という点だ」

上条「災害とかじゃなかったっけ?台風がよく来るとか」

闇咲「それも正解だとは思う。ミシャグジ神は蛇神であったとも言われ、蛇は水の近くにいるため水神としての性質を強く持つ」

闇咲「日本で最も有名なのはヤマタノオロチだな。アレは激しく増水して氾濫する川の象徴であったいう説が有力ではある。あるが……」

闇咲「ミシャグジ神がここまで大なり小なり悪名が高いだけにそれだけでは不充分だと考える。何も台風は諏訪地方だけに来るわけでもなく、被害も1箇所だけではないのだから」

上条「っていうと、一体何が?病気?」

闇咲「風土病だな。ただし山梨の方だが、地域的にも近い。周囲へ飛び火もしているだろうし、個人的には確定だろうと思う」

闇咲「ただし”””現在の日本では撲滅済み”””であるため、それをもって他人や地域を区別するのは差別に等しい行為だとも言っておく」
(※海外ではメコン川を中心に今も被害者が出ていますが)

闇咲「まぁ答えを言ってしまうと『日本住血吸虫』だ。淡水に住む巻き貝を宿主とする寄生虫の一種で」

闇咲「人類を含む哺乳類全般にも感染し、まぁ……致死率が高く、非常に苦しい死に方をするような疾患であった」
(※肝臓に溜まって肝硬変、脳へ向って脳炎)

上条「今はもうないんだろ?」

闇咲「日本国内では数十年以上患者は確認されていない。それは決して偶然ではなく、現地の人間や行政の弛まぬ努力の結果だと言っておく」

上条「原因不明の病気か……それが祟りだって言われてたのか?」

闇咲「歴史的にも武田信玄の『甲陽軍鑑(大体1575年ぐらい)』にそれらしき症状が記録されている。なのでそれ以前からもあった筈だが……」

闇咲「媒介するのが巻き貝なんだ。つまり水田へ入れば入るだけ感染率が高くなってしまうリスクが高まる」

上条「……分からなかったのか?」

闇咲「ある程度は感覚的には分かっていた。というのも感染する主体となっていたのがほぼ全て農民だからな」

闇咲「”水”に何かがあるというのは理解していただろうが、その当時の農民が職を選べるわけもなく、という話だな」

上条「なんつーか嫌な話だが……!」

闇咲「事実だからな。そして過去の迷信となったから言える話でもある――で、これがきっと祟りの大元なんだろうが、山梨というか甲府地方には怖ろしい病があった」

闇咲「さて、これを当時の人々はどのように理解しただろうか?」

上条「……祟り、か?」

闇咲「悲しいかな、それ以上の理解は不可能だったと推測される。現代だから、そして多くの犠牲者が出たからこそ賢しげに過去を振り返って、後出しジャンケンのようなこともできようが」

闇咲「当時そこに住んでいた人間にとっては恐怖以外の何物でもなく、しかし何か適当な概念をつけて”””理解しようとした”””んだ」

闇咲「その行き着く先が……」

上条「祟り、なんだな」

闇咲「当時は全てを人知の及ばぬ現象を神や悪魔で解釈して理解しなければいけなかった。風土病が原因で、感染した人間が亡くなるのは結果。それが事実だが」

闇咲「しかしその原因が不明、とにかく田んぼで作業する人間ばかりが体調を崩す。これは水辺に何かがあると、そこまでは分かったのだが」

闇咲「ならば『水辺の某が呪いではないか?』という思いが強まり、その水辺を支配しているのは蛇神だと」

上条「あー……また嫌な感じに繋がった……!」

闇咲「という推測だからな?当時は全てを人知の及ばぬ現象を神や悪魔で解釈して理解する以外に選択肢がなかった」

闇咲「よってミシャグジ神が妙に強い祟り神として、実体に欠けながらも謎の部分を残しながら現代にまで伝わっているのは、”それ”ではないかと私は考える訳だ」

上条「あんまりサブカルのキャラクターとして出していい話じゃなくないか?これが事実だったらばの話だが」
(※差別とかも加わるから関連づけては普通話さない)

闇咲「神を語るのは不謹慎ではないし、また風土病の知識を正しく知る事こそが正しいとは思う。問題なのはキャラクターとして、そっち方面を強調して売る事だろうな」

闇咲「例えるならば新型コロナを擬神化してゲームに出すようなものだ。私だったら確実に運営とスポンサーを訴えるか不買運動を起こす」

上条「不謹慎すぎるわ!」

闇咲「……オカルトは科学の時代へ入って切り離されたんだよ。昔は病気も災害も全ては荒ぶる神や悪魔の仕業とされてきた。それ以外に理解の仕様がなかった」

闇咲「しかし『原因』を科学的に判明すれば、神や悪魔の出番はなくなる。今までの常識が迷信に変わり、神や悪魔は居場所を失った訳だ」

闇咲「神が担当していた概念とは切り離され、『この神は一体何だったんだろう?』的なものが数多く増える。時代の流れだな」

闇咲「少なくとも現代ではミシャグジ神は祟り神としての役割を終え、後は消えるだけでもいい。『水辺を畏れさせる』という役割を全うしたとも言えるからな」

闇咲「祟り神であっても、ましてや憎まれるだけの神なんていない方がいい……まぁオカルト的には、どこぞの神と習合・同一化されて、今もこっそり信仰を集めているかもしれないが」
(※なのでミシャグジ神も諏訪神の側面として解釈されています)

上条「そういう神って多かったのか?」

闇咲「相当数いる。由来が分からなくなったのも含めて、というむしろそっちの方が圧倒的に多数派だな」

闇咲「あー……君は『水天宮(すいてんぐう)』という神を知っているか?正確には仏の一人であり天部だが」

上条「すいてんぐう……東京になかったっけ?」

闇咲「それが有名だな。元々は福岡にある社の水神なんだが――」

闇咲「――実はこの水天、シヴァやヴィシュヌよりも古い神なんだ」

上条「………………はい?いや待てよ!その二人もスッゲー古いよってこないだやったろ!?」

闇咲「水天はーの正式名称はヴァルナで仏教に取り入れられて12天の一人になった。が、しかしそのヴァルナという名前そのものがヒッタイトの碑文に残っていてな。紀元前14世紀ぐらいの」

上条「時代が古すぎて何が何だか……!」

闇咲「ツタンカーメン王が即位する約20年ぐらい前」
(※大体。ツタンカーメンの父親が宗教改革を始めた頃)

上条「マジで!?そういわれるとスッゲー古いって分かる!」

闇咲「しかも当時は最高神の一つだったが、まぁ人気がなくなって、彼の役割をシヴァなりヴィシュヌなりが継いでいったんだが」

闇咲「だがまだヴァルナ神はいい方だ。来歴もしっかり残っているし、変遷していった経過もある程度は分かる。つまり『居た』という証拠があるんだ」

闇咲「だが多くの神や悪魔は唐突に断絶したり名前が変っていたり……前に牽牛の話をしたろう?彼も恐らく遊牧系民族の英雄神だったかもしれないが……検証ができない」

闇咲「そういう話ばかりだからな。どこで何が繋がっているのか、研究者にすら分からないし、先人が正しいとも限らない上、有力な学説が正しいとも限らない」

上条「某女神が転生するあのゲームではほぼレギュラー悪魔になってんだけど、いいのかミシャグジ様?」

闇咲「変な負の連鎖を起こさなければ許容範囲だろう。今の時代に祟り神を使って呪いをかける、的なのはフイクションだから――」

闇咲「――と、断言できないのもまた確かで。『冥婚』という死後結婚の風習があり、それがオカルト系ライターが取り上げたため、呪いの儀式として悪名が広がったからな」

上条「どこにでもアホはいるっちゃーいるが……」

闇咲「それに比べればキャラクターとして登場するのも悪くはない。研究者からみれば業腹に過ぎるが、一般に広まって呪いや祟りが薄まるのもまたいいだろう」

上条「しかしなんだな。原因と結果が入れ替わるのって大変じゃね?」

闇咲「18世紀、時は大航海時代であり、身も蓋もない言い方をすればカトリックとプロテスタントが植民地の取り合いで覇権を争っていた頃の話だが」

闇咲「カトリックが抗プロテスタントの一大勢力を失う事件があった、その名はリスボン大地震」

上条「ポルトガルの地名だっけ?そんなクラブチーム聞いたような気がする」

闇咲「そうだな、そこで地震が起き、多くの人間が命を落とした。また施設の被害に遭った」

上条「現代だったら近くの国から援助したり、少し落ち着いたらプレートがどうって専門家が入るんだろうけど……」

闇咲「しかし当時の学者たちはこぞって頭を抱えた――『どうして多くの教会を擁し、海外植民地を得て宣教してきた、敬虔なカトリック教国が被害に遭うのだ?』と」
(※実話です)

上条「また外国スケーな!祟り神とかそういうレベルでもねぇのか!?」

闇咲「あちらは万物が神の名の元にあったからな。善君が善き為政をすれば祝福され、その逆になれば災害が起きるといった感じで」

闇咲「当時の彼らは『そう解釈して理解するしかなかった』んだ。それが愚かと思うのは傲慢だとも言っておく」

闇咲「……まぁ、この結果としてだ。カトリックは神のご威光なしとプロテスタントが増えたのも事実ではある。大概だがな」
(※そういう時代です)

上条「現代人としてツッコませて貰えれば『お前らそれ植民地やり過ぎたから神様おこじゃねぇの?』とは言っとくわ」

闇咲「精神性の在り方を議論するつもりはない。世界遍く十字の光を届かせるべき、が当時の正義だったからな。少なくとも建前上は曖昧模糊な外人どもを教化して救ってやろう、が主流」

闇咲「今も大差無い気もしないではないがな。逆立ちしても勝てない相手には『道義的に正しい』ぐらいのイカサマを使うしかない

上条「マウントの方向性が変っただけのような……」

闇咲「ともあれミシャグジ神の在り方は以上で終わりだな。他に何か残っているとすれば憑き物筋として若干なくはないが」

闇咲「特定の地域に住んでいる人間は特定の病気に罹患しやすい、それは何故か――と考え、祟りだの呪いだのという話だ。『ミシャグジ様が憑いている』といった感じに」

闇咲「山の話で散々やったが、『訳の分からないものは絶対に口にするな』、というのはそういう話も内包している」

闇咲「ほんの少しの水温の違いで寄生虫の幼体が生存できる・できないを分けており、澄んだ水だから安全とは程遠い」
(※遭難時に接種するのは選択肢としてあり、しかし登山やハイキングの最中に軽い気持ちで飲むのは、自分の命でギャンブルしてるようなもの)

上条「なんておっかねぇんだ大自然……!」

闇咲「一応根絶された、とはなっているが、他の地方や地域で類似かそれ以上に悪い寄生虫もいる。エキノコックスとかだな」

闇咲「よって不用意な真似は絶対にしないように。非常時は流石に別だが」

上条「ヨモツヘグイってあったよな。あの世の食べ物を食べたらあの世でしか生活できない的な」

闇咲「昔は深山の奥も霊界扱いだったからな。感覚として人類は理解していたと言うことだ」

闇咲「と、そろそろ着いたようだ。あぁこれ、禁書目録先生へお菓子の詰め合わせセットだが」

上条「本当にありがとうございます。多分俺の口には入らないと思うが、美味しくいただきます」

闇咲「では次の企画で――あぁそうそう。『冥婚』が行われていた地域なのだがね」

闇咲「主に東北北部なのだが、その際に用いられる呪具にムカサリ絵馬というものがある。そこに故人と架空の夫や妻を描かれるのだが」

闇咲「この語源になった『ムサーカル』、『嫁入り』という意味なのだが、主に長野・静岡、そして宮崎で使われているそうだよ」

上条「また随分離れて……ん?長野?静岡?」

闇咲「よい夜を」 パタンッ


-終-
(※地域特有の仄暗い話は外国の魔術師には荷が重く。そして堂々と書けることと書けないことがあるようなないような)

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