レッサー「闇ちゃんねるブラックハート――『最古のなにか』……ッ!」
――とある高校 放課後
姫神「――このあいだUFOキャッチャーをしていた。すると『頑張れ』とたくさんのオーディエンスに励まされた。あれは一体なんだったんだろう」
上条「姫神がUFOキャッチャーするのも驚愕だが、なんかの撮影だったんじゃ?迷惑系動画配信者の人とか」
姫神「ではないと思う。明らかに子供やサラリーマンっぽい人も居たし。なお狙っていたゲコ太くんは通りすがりの人が譲ってくれた」
上条「地道にゲンラー養殖計画してやがんのな。あとこれは決して文句ではないし批判なんかでもないんだが、フィギュア化させるんだったらまずマスコット、うん……」
姫神「上条君。それ以上はいけない。薄々みんな気づいている」 フルフル
青ピ「あー……カミやんに姫神、そやったら噂があるんやけど……」
上条「噂?ゲーセンに?」
姫神「場所は違う。スーパーの休憩コーナーに設置してあったところ」
上条「あぁアレプレイしてたの姫神だったのか!?『なんでこんなとこに……』ってずっと思ってたわ!?」
姫神「意外と小学生とバッティングする。そして対抗する私」
青ピ「どう考えても初恋ドロボウですやん――で、なくて。何かあそこら界隈に噂流れとったから、多分それやないかと」
上条「スーパーの休憩コーナーに流れる噂ってどんなんだよ。レアな人形が入ってる的な?」
青ピ「や、そうやなくて、『友人をぬいぐるみのに変えられた少女が、彼らを助けようと出没してる』って」
姫神「――いい話。応援したい」
上条「お前だろ、つーか姫神さん以外の何者でもねぇよ」
姫神「上条君は既にぬいぐるみ?」
上条「でもなくてだ!何か雰囲気ある子が必死でUFOキャッチャーしてっからまた都市伝説が生まれたんだろ!?」
姫神「解せぬ。とてもウキウキしながらボタンを押していたというのに」
青ピ「おぉ……!本屋でジャン○立ち読みしとっただけやのに、『ここもしかしてアガシックレコードに繋がった異界の本屋?』的な雰囲気になった女や……!」
上条「中身はごく普通なんだけどな」
姫神「二人とも味わってみるといい。たまにお肉が食べたくて吉野○入ったら。『あれこれ俺以外にも見えてるよね?』と店員にタメ口された切なさを」
上条「えっと……ほら!じゃあ皆で行こうぜ!明るい雰囲気だったらきっと、なっ青ピっ!?」
青ピ「ぐぬぬぬぬぬ……ッ!芸人としてなんとオイシイ……!」
上条「オイシくはねぇだろ。人間不信になるわ」
吹寄「髪を切る、とか?勿体ないけど雰囲気は軽くなるんじゃない?」
姫神「子供自体のあだ名――『ザシキワラシ』」
青ピ「あぁ……あぁ今のは納得したんちゃうよ!子供でそんな髪型やったら誰でも言われるっちゅー意味で!」
吹寄「カットの仕方に問題があるわ。ベリーショートにしろってんじゃなくて、ちょうどいいぐらいでいいでしょ」
上条「姫神さんはどこ踏み出しても地雷が埋まっているな!」
姫神「ふっ。私の名は姫神秋沙。『意外と普通』と失望され続ける運命の持ち主」
吹寄「そこまで卑屈にならなくても――って、なに?」
ピーンポーンパーンポーン
レッサー(校内放送)『――あー、テストテストー。フランス人の平地は主にバス○サイズー』
レッサー『はい、っていう訳で始まりました闇ちゃんねる改めアオハルちゃんねる!パーソナリティがオッサン&世界で一番商品価値に欠けるDKでしたからね!リニューアルってことで!』
レッサー『さて、では早速お便りが届いております!えーハンドルネーム「今のはメラゾー○ではない、バ○だ」さんからですね!』
レッサー『「レッサーちゃんさんこんにちは。私は学園都市在住のJCですが相談があります」』
レッサー『「私には好きな相手がいるのですが、全くこちらの気持ちに気づいていません。どころか女子として認識されているのかも怪しいです」』
レッサー『「本当にどうしたらいいのか分かりませんどうしたらどうしたらどうしたらどうしたらどうしたらどうしたらどうしたらどうしたら……ッ!!!」』
レッサー『……湿度高めのお便りでしたね!なんかハガキ一枚なのに裏真っ黒っていう独特の使い方をしてくれた方でした!』
レッサー『いやまぁ分かりますよ、つーかありますよねぇこの手のお話。やっぱり需要と供給が合ってないって言いますか、タイミングも大事でしょうし』
レッサー『ですが大切なのは相手を思いやる心です!誰かに大事にされたいのであれば誰かを大事にしなければいけません!よってここの答えは――』
レッサー『――拉×って×せばいいんじゃないですかね!浮気もされませんし、最後の最後まであなただけを愛してくれるだから助けてって言いますよきっと!』
レッサー『何事も諦めない強い心、そして実行力!ドス黒い太陽のHENTAIフェイスレ○司令を見習いなさいな!』
レッサー『ってあれ?なんです?――プースの窓に窓に!ゴリラがゴリラがうわやめ離せぼすけて上条さ――』
プツッ
全員「……」
姫神「上条君」
上条「――いや知らない人だよ?俺はオールウェイズ無実だよ?信じて?」
吹寄「日本人が英語を無理矢理入れるときって大抵嘘かハッタリなのよね」
姫神「吹寄さんいけない。Jpopでは入ってない曲探すのがないってぐらいの話」
レッサー(校内放送)『――いやー危ないところでしたねー!まさか急に人っぽいゴリラが乱入するとは、日本のハイスクールもやりますね!』
レッサー『しかしこの人に似せたゴリラってどうやって作ったんです?魔術の臭いはしませんし、やはりDNA的なのをイジったんでしょうかね』
災誤『か、かみじょう……!』
レッサー『聞きましたか上条さん!?ゴリラが言葉喋りましたよ!空○先生以来の快挙じゃないですかーやーだー!』
レッサー『どら、ちょっくら頭開いて中身を拝見っと☆』
上条「あのアホがアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
――とある留置場 檻の中
レッサー「――きっと、来てくれると思っていました……!」 (ニチャアァッ
上条「やめろよそのドロのような笑顔。デスゲームで主人公ハメる側の顔してんぞ」
レッサー「だってしょうがないじゃないですか!呼ばれて来たのに上条さんがどこにいるのか分かりませんし!」
上条「お前がやったのは放送室ジャックとゴリラ人間への殺人未遂だよ。お前ホンッッッッッッッッッッッッッッッッット何なの?俺の社会的地位を下げて楽しいか?」
レッサー「メッチャ楽しいですけど?」
上条「こいつ……!?なんて澄み切った眼で言いやがるんだ……!?」
レッサー「しかし中々やりますねあのゴリラ!ゴリゴリの実を食べた名のあるゴリラとみましたが!」
上条「それゴリラ成分100%じゃねぇかな。飽和状態になったからってゴリラが溢れ出したりしねぇよ」
レッサー「悪○の実シリーズは外見で見分けがつかない(場合が多い)ため、トナカイの人が動物系シカシカの実を食べた可能性も……!」
上条「今よりももっと面白動物になるだろ。超見てぇわそのフォルム。見分けがつかなくなるだろうが」
レッサー「――はい、っていう訳で闇ちゃんねるは留置場から配信しているわけですが!」
上条「なにそれ超楽しそう。過去一番の再生数になるだろうけど、翌週からはBANされるわ。跡形もなくなるわ」
レッサー「あれ、ちゅーか話通ってないんですか?逃げやがりましたねあのオッサン!結構修験者的にも因縁があるテーマなのに!」
上条「サーヴァント・ヨゴレであるお前か喚ばれてきた以上、どうせまたしょーもない話は確定してんだわ。非常に残念なことに」
レッサー「あぁいやお言葉ですが、人類最古なんですわ。今回のご依頼が」
上条「最古……って言ったらメソポタミア文明か?某英雄王さんがイキってた時代」
レッサー「よりも更に古いです。人類が文明を築くよりももっと以前の話」
上条「へー、それはちょっと楽しそう。テーマは何?」
レッサー「――チ×チ×です……ッ!!!」
上条「……」
レッサー「チ☆ン☆チ――」
上条「いや違う違う違う、聞こえなかったんじゃない。聞きたくなかったんだ、そのワードを」
レッサー「お便りに寄りますと、某極東の島国で以前頂いたお土産がアレの形状を模していたらしいんですな。で、久しぶりに発掘したら『よくよく考えたらなんぞこれ?』と」
上条「なんて体験だよ。つーかそんな邪なブツをやりとりする風習あんのが驚きだわ!」
レッサー「なので我々チーム・ヨゴレッサー班が真相に迫るべく結成されました!チ×チ×の謎を追いましょうよ!」
上条「連呼すんや!せめてこう、もっと恥じらいを持てや!人類として恥じ入れ!」
レッサー「くっくっくっく……!前はケモナー&ショタっつーかブリジッ○きゅんの話をして、これ以上っつーかこれより下はねぇんじゃねぇかと思っていましたがありましたね!みんな大好きプーチ×チ×ですよ!」
上条「プーチ×を巻き込むや。いや俺としてはどうだっていいが」
レッサー「えー……じゃあ毎回チ×チ×連呼してると見づらいんで、ここはエリンギ様とお呼びするってことで一つ!」
上条「笑うわー。次スーパーに行ったときエリンギ見たら微妙な気分になるわー」
上条「てか完全にヨゴレだろ?当然の流れでお前が派遣されてたんだろ?」
レッサー「幼女B(※パードウェイ)に語らせようとかちょい迷いましたが、なけなしの良心が働きました!ガッテム・マイハーッ!」
上条「ありがとうレッサーの良心。今世紀に入って初めて仕事したな。そして次のミレニアムまで死して夢見てんだろうが」
レッサー「また逆に妻子持ちのオッサンが男子高校生へ蕩々とエリンギ様を語るのも、はい、なんかこう辛いんで……」
上条「恥だよ。俺は映らないけど、ツッコミが動画としてきちんと残るんだからな」
レッサー「なんでですか!?エリンギ様だってきちんとした文化人類学のジャンルなんですからねっ!?」
(※いや、本当に)
上条「あぁまぁ、じゃあ言うだけ言ってみろや。本当の事だけ言えよ?さっきみたいに有史以前からとかフカすなよ?」
レッサー「いえ、それがマジな話でして。エリンギ様は昔っから呪物に用いられていたらしいんですよ。それも人が文明を持つ以前から」
上条「……嘘だろ?」
レッサー「ですらかマジな話ですってば。具体的にはファルス(性器)像って言いましてね、あー……ドイツのホーレ・フェレスって旧石器時代の遺跡がありましてね」
上条「旧石器時代……何年前?」
レッサー「人類が打製石器やキバやツノを加工して生きていた頃です。ぶっちゃけ類人猿からやや抜け出した程度の文明レベルです」
レッサー「そこの遺跡の年代的には3万5千前以上前だと言われていますね。ただし現在では、ですが」
上条「超古いじゃん」
レッサー「そこら辺の文化をオーリニャック文化と言いまして……多分上条さんでも分かる例えですと、『古代のヴィーナス像』って分かります?」
レッサー「非常にふくよかな女性像が作られた、まぁ正直現代の価値観からすれば病的な肥満としか言いようのない小像を差します」
上条「でっぷり太ったヤツな、メガテ○のイラストで見たことあるわ」
レッサー「それらはかなーり広範囲に渡って出土しているんですが、その中でも最古のものが『ホーレ・フィリスのヴィーナス』という像です」
上条「宗教的な意味は?」
レッサー「残念ですか未解明のままです。ただ墓に副葬品として入っていたり、竈(かまど)の跡から見つかったりしているため、確実に某かの意味はあったようです」
(※副葬品=遺体と一緒に埋葬する品々)
レッサー「んでここでそんなヴィーナス像と一緒に見つかったのがエリンギ様の像、ぶっちゃけファルス像なんですわこれが」
(※実話です)
上条「マジで!?超古いじゃん!」
レッサー「まぁつまり我々人類が文字を持つ以前から、エリンギ様は信仰されていたっぽいんですよね。豊穣のシンボルとして」
上条「……チ×チ×なのに?」
レッサー「だからこそでしょう?だって男女がニャンニャンしないと生命は産まれないわけですからね」
レッサー「よって、今よりも遙かに出産リスクが高い上、人類がまだ霊長でなく外敵が多々あった際、死と同様に生命もまた神聖なものだと崇められていたようです」
レッサー「そうでなければ埋葬するとき一緒に、とはならないですからね」
上条「おぉ……!テーマがアレだからヤベェとは思っていたがちゃんとした所に落ち着いたな!いやー良かった!」
レッサー「何〆に入ってんですか。本番はまだここからですよ!」
上条「え、でも俺聞いた事ないし。神様関係ではいないんだろ?」
レッサー「とある宗教の話です。ある宗教では三柱の神様がシノギを削っておりまして、聖仙たちは『誰が最も優れた神だ?』という論争をしていました」
レッサー「でまぁ話してても仕方がないんで、『よーしそれじゃ一柱一柱、訊ねて行ってみよう!』ということになり、某神の家にまで行ったそうです」
レッサー「しかぁし!そこではなんと某神が奥さんとニャンニャンしているではないですか!」
上条「なんでだよ。アポなしで押しかけた方にも問題あんだろ」
レッサー「が、神も然る者!某神は客が来ているのにニャンニャンしているのを隠そうともしませんしやめる気配もありません!」
上条「あ、ごめん!やっぱ神様の方もどうかしてんな!」
レッサー「聖仙は呆れ果て、某神へ向って『それではお前の象徴はエリンギ様だな!』と言い捨ててその場を後にしたそうです!」
(※っていう逸話が本当にあります。いやネタじゃなくて本当に)
上条「エリンギ様大活躍じゃねぇか。つーかその可哀想な神様って誰よ?」
レッサー「シヴァです」
(※実話です)
上条「はぁ!?シヴァってアレか!?メガテ○で最高レベルの破壊神の!?」
レッサー「ですです。そのシヴァなんですが、こういう逸話を持っているため、彼の象徴は『シヴァ・リンガ』と言いまして。見た目は100%エリンギ様です」
(※いや本当に。現代でも信仰を集めています)
上条「嘘だろ……そんなアホみたいなのシンボルにしてんのかよ!」
レッサー「まぁ……アカデミックな観点からはともかく、あまりこうエリンギ様を前面には出せない文化もありますので。つーか猥褻物だと現代の法律によって取り締まられるからね、場所によっては」
(※まぁ流石にそのものではなく、純粋な円柱形です)
レッサー「ちなみに某学派では『このリンガは性器信仰とは無関係である』と主張されているんですよ。理由は『そんな猥褻物はありえない』的な話なんですが」
上条「俺も実はちょっとそう思わないでもない。だって超有名だぜ?」
レッサー「何故です?」
上条「何故、って何が?」
レッサー「超有名なのとエリンギ様信仰が同居していけない理由ってなんですか?メジャーであるが故にどうして?」
上条「そりゃまぁ……なんでだろうな」
レッサー「つーか私だってエリンギ様の像を出されたら『なんだこいつ』的な反応をするでしょうが、歴史は歴史なんですよね」
レッサー「その当時当時の信仰を、後世の倫理観で裁いてはいけないんです。分かります?」
上条「つまり?」
レッサー「もう一回言いますけど、人生において子を設けたり育てたりするのは大イベントじゃないですか?今よりもずっと医療水準が低く、かつ倫理観もない世界で」
レッサー「そんな世界において豊穣を望み、叶えられるシンボルを持つ――これ、まさに主神としての役割に相応しいのではないかと」
上条「あー……十字教から見れば『何やってんのこれ』だけど、普通に信仰している人達からすれば『いやこっちじゃ普通ですけど?』か」
レッサー「ヒンドゥー教人口は20億近いんで、少なくとも数億人はエリンギ様を信仰している訳ですな!やりましたね!」
(※派閥によります。ヒンドゥーの中じゃ最大宗派がシヴァ派ですが)
上条「ちょっと何言ってるのか分からないかな」
レッサー「んでまぁ、上条さんがお好きなメガテ○ですが、エリンギ様っぽいキャラいましたよねぇ?ご立派な例の方」
上条「あぁまぁ……存在自体がほぼ放送禁止のマーラ様だな。あれ確か魔王だっけか」
レッサー「あの方の原典がブディズム、まぁ仏教ですね」
上条「てかなんなのアイツ?仏教でもあんな変な格好してんの?」
レッサー「んー、まぁそれは是であり否でもあるのですが……ブッダが悟りを啓こうとするのを防ぐため、魔王マーラが邪魔をしたってエピソードがあります」
レッサー「この場合も『魔王』はメガテ○的な魔王を意味するのではなく、『天魔』を差す言葉だというのに注意してくださいな。あとでここテストに出ます」
上条「お前は俺のなんなんだよ。てか天魔?」
レッサー「まず仏教には『六欲天(ろくよくてん)』って世界があるんですよ。あー、元々は『六道輪廻(ろくどうりんね)』って分かります?」
上条「名前だけは何とか……中身は知らない」
レッサー「人類は永遠に生まれ変わりつつ、いつか悟りを拓ければ輪廻の輪から解脱して仏になれますよ、ってのが仏教の奥義です。要は悟りを啓くまではずーっと生まれ変わりを続けなきゃいけません」
レッサー「そのグルグル転生している世界を『地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界』でして。我々が住んでいるという設定は人間界ですな」
上条「地獄も一つの世界なのか?」
レッサー「ですな。生前に悪い事した方はそちらへゴー、そうでなければ天上界へって話なんですが」
上条「ぶっちゃけ天国、だよな?」
レッサー「に、近いですな。神通力を使えたり苦しみがなく長寿を誇る素晴らしい世界です――が、実はここもまたアガリではありません」
レッサー「この天上界でも死にますし、その場合は生前の罪の重さによっては別の世界へ転生させられます」
上条「どういうシステムだよ」
レッサー「しかも天界といっても悪さをする連中はおり、六欲天という六つの天界では欲望に囚われた天魔が住むとされていまして」
レッサー「その中でも最も悪い天魔も住処があり、織田信長は『六欲天の魔王』と自身を称したんですが……」
上条「あぁノッブのあれの元ネタか!『第六・天魔王』だと思ってたけど、『第六天・魔王』が正しいのか!」
レッサー「まぁそこに住む天魔がブッダを邪魔をすると」
レッサー「ちなみに漢字圏で使われている『魔』という言葉はサンスクリット語の『マーラ』の短縮形です。なのでマーラ自体も正しくは『魔羅』なんですな」
上条「いや、あんまこう、そのワードを連呼したくないっていうか」
レッサー「そう言われると私も流石に恥ずかしいのですが。ただ初期仏教では『魔』でありまして、性的なイメージは付随していなかったと。そこは抑えておいてください」
レッサー「話を戻します。魔王マーラはあの手この手でブッダを誘惑します。食べ物であったり、女性に化けて肉欲を煽ったり、肉親に化けてみたり」
レッサー「まぁ結局ブッダは悟りを啓き、マーラは敗北するのです――が、しかし!魔の手はここで潰えた訳ではなかったのです!」
上条「どした急に?なんでテンション上げちゃった?」
レッサー「なんと魔王はブッダだけに留まらず、他の修行僧たちをも誘惑し始めたではないですか!なんと卑怯なニンジャコワイ!」
上条「スレイヤ○さんは放っとけよ。今なんか革命編っぽい事やってっから」
レッサー「それが後世になって、特に日本界隈へ入って来た際、『おのれ修行を妨げるエリンギ様め!』ということでエリンギ様を魔羅と呼ぶようになったんです」
上条「思春期か。そりゃまぁ煩悩捨てようって人達には邪魔だろうけども」
レッサー「――ただ、ですね。これには異説がありまして……『魔王マーラの原型とはなんぞや?』っちゅーことですな」
上条「天魔だっけ?よく分からないけど、魔っぽい人?」
レッサー「あー、ブッダの出身地ってインドじゃないですか?まぁ正しくはその前段階ですけど、つーか実家のシャカ族はきちんと滅びましたが」
上条「そりゃあな。跡取りが出家したらな」
レッサー「ただですなー、そんときにブイブイ言わしてた既存の宗教があるんですわ。だもんでそこの最高神捕まえて『こいつは魔王ですよ!』ってやからしたんじゃねぇか説が」
上条「いや、別に珍しくなくね?闇ちゃんねるでその説聞いたときには驚愕したけど、今じゃ――」
上条「……」
上条「……ちょっと、待て。シヴァさんの話したよな?つーことはつまり……」
レッサー「丁度良い時代に、丁度良い場所に、丁度良いエリンギ様信仰があった訳で……って事ですな」
レッサー「ちなみにシヴァさんも大自在天、という”””天魔の一人”””として仏教に取り込まれています。そして当然その宗派ではシヴァリンガを神体とする所もあります」
(※正確には六欲天に住まう天魔とは別の存在ですが)
上条「待て待て。それっておかしくねぇか?だってブッダさんはマーラに対して『お前修行の邪魔なんだからあっち行けや!』って言ってんだろ?」
レッサー「えぇ、ですから初期仏教と派生した仏教の違いですなぁ。天魔の中には『改心して仏に帰依した』って連中がいるんで、他宗教の取り込みに掛かったんですわ」
上条「おぉなんて生臭い。あぁまぁ対立するよりかはマシか」
レッサー「魔王マーラさんがシヴァと混同されていったのはほぼ確実ですし、シヴァが仏教に取り込まれたのも事実です」
レッサー「ただエリンギ様=魔王マーラという認識は曖昧ですし、主にエリンギ様の異称としてのマーラはほぼ日本限定ですから」
レッサー「しかしながら、その当時あった二大宗教がぶつかるのは自明ですし、その対象として禁欲を是とするブディズムからすれば悪の権化であるシヴァリンガが目の敵にされるのも想像がつきます」
レッサー「補足するのなら魔王マーラが騎乗しているゾウはギリメカラってのがいます。某ゲームでも有名ですな」
上条「物理反射だからな。ほぼ初見殺しなのに、いざ仲魔として使ったらハマ系で即死するっていう」
レッサー「ヒンドゥー教ではガネーシャにアイラーヴェタなど象は聖なる生き物なんですよね。それを大した意味もなく悪役にしているところを見ると、って話です」
レッサー「まぁ、裏取りは確実でないのですが……ブディズムの方の魔王マーラの原型はシヴァでまず確定じゃないですかね」
(※8割ぐらいは)
レッサー「ただシヴァ自体がバラモン・ギリシャ・ゾロアスターなどの神や英雄のミックスですんで、更に古い何かの影響があったのかも、という疑念は拭えません」
(※細かく言えば権威を失う前のヴァルナ信仰)
上条「意外と深い話でビックリしたわ。あ、でもシヴァさん以外で信仰は」
レッサー「されてます。で、ここから民間信仰やローカルな信仰でのエリンギ様へと移行するのですが」
レッサー「えーっと、一番有名な例で言えば『ロード・エルメロイII世の事件○』ってご存じですか?」
上条「別に伏せ字なしでもいいと思うが、まぁ知ってるわ。義妹がドSの」
レッサー「あの作品の『魔眼蒐集列車』編にて『やだこの人卑猥な何か持ってる……!』的な描写があったんですな」
上条「あー、お弟子さんが言ってたっけな。なんだそれって思ったけど」
レッサー「あれ実はエリンギ様なんですよ。邪視防止のための呪物です」
(※マジです)
上条「マジで!?エリンギ様ってそんな効果あんの!?」
レッサー「邪視とは『視線を触媒にする魔術』なんで、一応エリンギ様のような直視が憚れるものが効果があるとされています」
(※前に書いた『ファティマの手』なども含まれます。事情を知らない人が見たらただ怖いだけ)
レッサー「ここら辺は『邪視』編がもしあるのならばそちらで取り扱われるでしょうが、上条さんが思う邪視ってなんでしょうか?」
上条「急に言われてもな。金縛り的な?」
レッサー「それのほぼ最上位がギリシャのメドゥーサですかね。『視線が合っただけ石になる!』ってチート能力です」
上条「チート言うなや。紀元前からだろ」
レッサー「メドゥーサは怖れられているのですが――しかし同時に邪視避けとしても用いられいるんですよね」
上条「なんで?つーかどうやって?」
レッサー「それも神話由来の呪物になります。英雄ペルセウスがメドゥーサの首を切り落しまして、それを所持していざって時に振りかざす的な行為をしていました」
(※ハートレ○さんが生首電池をしていたのは、恐らくそれをモチーフにして術式を組んだと思われます)
レッサー「なので我々民間人も『魔除けにメドゥーサ使えるんじゃね?』と、建築物にメドゥーサの首を刻んでいます」
上条「へー……あ、ガーゴイルとか同じか!怖いのを掘ってみたいな!」
レッサー「その認識で正しいかと。ちなみに私が知ってる中ではトルコの地下貯水池にある石柱、その柱の土台にメドゥーサの首が横や逆さになって押さえつけられていましたかね」
レッサー「また『瞳』自体も魔除けになると言われ、水晶や宝石で眼球状にしたお守りが今も人気ですな」
上条「おぉ……!今日入って最初の真面目な話!」
レッサー「エリンギ様も真面目ですよ!ただフォルムが卑猥なだけで!」
上条「理由としちゃ充分だろ。これ以上ねぇよ」
レッサー「民間信仰では『邪悪なものへ対して、より邪悪なもので遠ざける』という思想がありましてね。メドゥーサ然りエリンギ様然りと」
レッサー「またフランス王アンリ4世を暗殺したフランソワ=ダミアンなんかが有名ですが、彼は八つ裂きの刑っていう、馬を用いた酷い殺され方をしました」
レッサー「彼のご遺体はバラバラにされ、民衆が持ち帰ったり、魔除けとして都市部の周囲に飾られたりっていう」
(※悪人ほど良い魔除けになる)
上条「嘘だろ。何やってんだお前ら」
レッサー「特に魔術関係で死刑になったご遺体は人気だったそうです」
(※これも本当の話。そりゃペスト流行るわという)
上条「冗談のような追い込まれ方してんだろ」
レッサー「で、まぁまぁ日本産エリンギ様の話に戻ります。時代から順に言いますと『石棒』ってのが出土されています」
上条「出土っていうからにはかなり古い?」
レッサー「えぇ、縄文時代の遺跡から度々発掘されていますな。形は1mぐらいの棒から数十cmぐらいのそれっぽい形のやつまで」
上条「ヨーロッパのファルス信仰だっけ?それと同じ?」
レッサー「まず間違いなくそうなんじゃないかと。本邦でも『縄文のヴィーナス』と称される、ふくよかな女神を象った土偶が発掘されていますし、対になるものも当然と」
レッサー「ただ勿論中には否定される方もおりますし、別の意味を持つ呪物だと唱える方もいます。まぁそれはどこでも同じなんですが――さて」
レッサー「ここで上条さんに問題です。ヨーロッパと日本の宗教史の違いってなんでしょうか?軽い気持ちで答えてください」
上条「メインが十字教か仏教の違い、とか?」
レッサー「私もそう思います。ベース自体はケルト、神道って原始・精霊信仰がありました。ここまではどちらも同じですね」
レッサー「しかしこの後に複数国を跨いだ十字教の苛烈な干渉があったヨーロッパへ対し、日本は精々仏教が分派して騒動になった、という違いが」
レッサー「まぁぶっちゃけ十字教圏では過去の宗教の全否定を徹底したのに対し、日本ではある程度なぁなぁで済ませてきました」
(※例外あり、そして日本だけじゃなく融合した国も多”かった”)
上条「言い方」
レッサー「カトリック教会がプロテスタントを、そしてまたプロテスタント教会をカトリックがぶっ壊すっていう無間地獄ですからね」
レッサー「どっちでもない古い宗教だったらお察しください、ですな」
(※同性愛者ですら焼かれる時代)
上条「に、日本ではそんな事無かった、よな?」
レッサー「えぇそれほどは。精々一向一揆が民衆捕まえて斬首して竹に差して飾ったり、蓮如が多くの信徒を唆して大虐殺したりされたりその程度です」
(※その程度です)
レッサー「ともあれヤポンではそんなお国柄の元、石棒ルーツと思われるファルス信仰がかなり発達しました。大きく分けますと『豊穣神』と『道祖神』です」
上条「豊穣神は、まぁ分かるわな。エリンギ様そのまんまだし」
レッサー「他にも性病や子孫繁栄など色々ですな。一番有名なのが神奈川の金山神社、『かなまら様』と言った方が有名です」
上条「俺から見たらふざけてんかな、と思わなくもないが……」
レッサー「あれはあれできちんとした信仰ですからねぇ。他人へ押しつけるのは論外ですが、きちんと活動されている方を批判するのはお門違いです」
レッサー「で、他にも『陰陽石(いんようせき)』というものが全国各地で崇められていました」
上条「陰陽……陰陽師的な?」
レッサー「ではありません。正しくは陰石と陽石と言いまして、それぞれ女性のアレと男性のアレを象った自然石などが信仰の対象になっていました」
上条「エリンギ様だけじゃなくて?」
レッサー「えぇ女性のアレもです。あー、では以後は雌(め)ライオン様と称しましょうか」
上条「お前のネーミングセンスが怖い」
レッサー「これはエリンギ様よりも更に無名なんですが、雌ライオン様も信仰の対象になっています。ただしこちらはエリンギ様ではなく、出産やその行為自体がですが」
レッサー「中でも一番メジャーなのが『胞衣(えな)』信仰です。胞衣ってご存じですか?」
上条「えな……さぁ?単語自体知らない」
レッサー「漢字では『胞衣(ほうい)』と書きまして『えな』と読みます。まぁこれは出産の際に出てくる、赤ちゃんを包む膜や剥がれた胎盤の一部も一緒に排出されるんですな」
レッサー「それを塚に供えて祀ったり、壺に入れて家の出入り口に埋めたりします。かなり原始信仰に近いですな」
上条「そんな話聞いたことない……有名なのか?」
レッサー「ヤポンですと家康の子だったり、水戸光圀や天皇などの胞衣塚が現代まで残っています」
(※京都の孝明天皇の胞衣塚が最も有名)
レッサー「また海の近くなど『E-na』という呼び名の地名も多く、恐らく胞衣を海岸に埋めるという信仰があちこちに残っていたと推測されます」
(※奈良時代には記載あり)
レッサー「ここら辺は興味深いものがあり、魂とかが海の向こうから来ている、って発想だったんでしょうな。なので少しでも近い場所ヘとお返しする的な」
レッサー「……まぁ今では医療廃棄物扱いですからねぇ。廃れて当然っちゃ当然ですが」
上条「ヤバいのか?」
レッサー「どう、でしょうね。胞衣から災いに遭ったって話は皆無で、むしろ慶事として大事に扱われていますから。それほどは、じゃないかと」
レッサー「他には雌岡山の裸石神社と姫石神社ですね。それぞれ夫婦神として信仰されており、ダイレクトにエリンギ様と雌ライオン様の形状をされています」
レッサー「なおここではアワビの貝殻を奉納する習慣が……ッ!」
(※主に女性が参拝。勿論お産が軽くなりますように、という信仰)
上条「発想自体が中二か。ほぼ今と変ってねぇな昔の俺らも!」
レッサー「と、いう風にファルス信仰は男女どっちも根付いていきましたとさ、というお話です。メール頂いた方のは栃木・群馬にまたがって存在する金精神の神社由来のもんですな」
レッサー「なので豊穣やら商売繁盛のシンボルでありまして、数奇ではあるもののおかしなもんではないと思われます。私だったら捨てますが」
上条「否定すんのかよ」
レッサー「まぁ少なくとも仏教の一部だったり神道の一部だったり、ファルス信仰はきちんと残っていると理解して頂ければ。共感するかは別にして、ですが」
レッサー「さて、では『豊穣神』の方は以上としまして、次は『道祖神』の方のエリンギ様ですね」
レッサー「えーとまぁ昔は村や町の外ってのは異界だったんですよ。どんなバケモノや病魔が来るかもしれない、怖ろしい場所です」
レッサー「よって『外の危険なものを持ち込ませない』という思想の元に発達したのが、『道祖神』という神性です。一言で言えば『道と境界の神』です」
上条「前にすこしやったっけかな。お地蔵様とか?」
レッサー「ですです。まぁあれはブディズムですけど、余所から変なものが来ないように見張るという役割を担っています。その一つです」
レッサー「他にも石塔であったり、真言を刻んだ仏塔であったり、はたまた夫婦神が掘られた像であったり、普通に菩薩が掘られたのとかも多いです――が、しかぁし!」
レッサー「そんな道祖神の中に入り込んだのが我らがエリンギ様だったんですよ……ッ!!!」
上条「なぁレッサーさん?エリンギ様って強くね?あっちこっちに顔出してっけど、結構影響力強くね?」
レッサー「それだけアニミズムが強かったってことでしょうなぁ。中にはどっちも兼ねていた、町外れに置かれた石棒形のエリンギ様って結構ありましたし」
レッサー「シモの悩みも余所から来る災いも厄介だったんで、とにかく守るために信仰されていたのも事実です」
レッサー「ですが――上条さんはエリンギ様と雌ライオン様の風習って知りませんでしたよね?」
上条「部分だけは知ってた。『吸血鬼すぐ死○』で出てきたエリンギ様神社はチラッと。あと道の神様のエリンギ様は見たことすらなかったわー」
レッサー「えぇ寂れるんですよね、どのエリンギ様も。なんちゅーか明治へ入って『淫祠邪宗はやめろ!』って通達入りまして」
上条「あぁ……まぁ、そうだよなぁ」
レッサー「廃仏毀釈とは別に『こんなん今の時代にどうなん?』的な風潮になりましてね。壊されたり撤去されたりしたエリンギ様や雌ライオン様が多々ありました」
レッサー「しかし国家が主導して撤去したのではないため、地域差がかなーりあって残っている所は残っています。別に邪魔でなければそのまま放置って話です」
レッサー「崇める人がいなくなれば存在自体も忘れ去られ、いつしか朽ちていく――上条さんのエリンギ様と同じ運命とを辿るわけですな」
上条「やかましいわ。俺はほら、アイドルとしての立場ってもんがだな」
レッサー「アリサさんだったらともかく、上条さんが脱DTしても『やったね上条さん!でも芸人的にはどうかな!』とファン兼ストーカーが大喜びするだけだと」
上条「敵だよあいつらは。だってファン投票の時、『上位に来ない方がオイシイ』って投票見送ったんだから」
レッサー「ともかく古代から現代までのファルス信仰はザッとやりました。かなり大雑把ですし、省いたところがこれでも結構あります」
上条「意外に奥が深いのな。エリンギ様信仰」
レッサー「えぇまぁ、陰陽信仰、要は『男女一対になった神的存在』というのが多いんですよ。夫婦岩だったり夫婦山だったりとか」
レッサー「ここで大切なのは『男女ともに信仰の対象になっていた』んであり、決して男性優位orオンリーではなかったんですがね」
レッサー「特にブディズムでは阿弥陀如来の一説に『女性は仏になれないので、男へ変成させる』ってのがありまして」
上条「なにそれそんな事言ってんの?」
レッサー「『五障』ってやつですな。それが元になって『女性は必ず地獄に堕ちる』的な宗派もそこそこの数ありました」
(※血の池地獄)
レッサー「そこら辺の解釈は恐らく変ってないと思われますので、当代の僧侶がなんと言おうと使ってる教典自体は五障が明記されているってケースもあります」
レッサー「それを考えれば形は異形ですけど、男女ともに神性を得られたエリンギ様と雌ライオン様のファルス信仰の方がまだ”平等”ってのも皮肉な話ですよねぇ」
上条「てゆうかカトリックってそもそも女性はアレなんだよな?聖職者にはなれないっていう」
レッサー「えぇですので、どこかのバラン・コンゴ共和ギロチン宗主国、もといベルギー王国が男女平等ランキングで一位ってのは何の冗談かと思います」
(※カトリックが70%以上。男女平等に社会システムだけをあげ、犯罪率や宗教では評価しない。したら負けるから)
レッサー「まぁ誰も彼も形を変えた差別が大好きだって話はさておきまして、エリンギ様の辿った進化の中には面白い神様がいます」
上条「そろそろエリンギ様っていうのやめね?なんだか他の場所でも使い回しそう気がするんだよな」
レッサー「名前は『ミシャグジ様』。メガテ○でお馴染みの祟り神ですな」
上条「祟ってねぇだろ。アトラ○は何回が潰れってけど、去年ハッカーズの続編出したし」
レッサー「いやぁでも祟り神として信仰されていたのもマジなんですよ?それがゲームの影響で認知度が上がってしまって、一部の人達は困惑したそうで」
上条「てかミシャグジ様って何なの?エリンギ様ヘッドの、確か種族が邪神だったけどなにした神様なんだ?」
レッサー「諏訪大社の祀神だと言われています。御柱祭(おんばしらさい)で有名なアレです」
上条「あぁあのクレイジーな祭りな。『もう危ないから重機使って!人命尊重してあげて!』ってニュースでやるたびに思うわ」
レッサー「長野県諏訪地方を中心に、石棒をミシャグジ様に見立てる信仰が結構大規模にあった、らしいんですよ」
レッサー「曰く、石の神であったり、蛇神であったり、風の神であったり水の神であったり、あまりにも数が多すぎて正体不明なんですな」
上条「有名なのにか?」
レッサー「研究者がやたら多い上に自説が正しいとケンカばっかりしているので……まぁ蛇神なのかなぁ、と私は思いますが」
上条「蛇の神様」
レッサー「はい。蛇時代は脱皮するんで死と再生の象徴であり、かつ水辺にも生息するため水神も兼ねています」
レッサー「加えてネズミも捕りますから農耕神や蚕神としてもない話ではない、らしいんですよ」
レッサー「またその形状から石棒として崇められ、かつ多産なのでエリンギ様としても崇められると」
上条「なんかフワッとしてないか?」
レッサー「してますねぇ。別の論ではミシャグジ様、ミシャグジ様と称する神、その他の雑多な神など、最低でも三つぐらいの神的存在が習合したって説があります」
上条「こう言っちゃ失礼かもだが……地元の人に聞くのってダメなのかな?あなたの所の神様はどんな人と?」
レッサー「そりゃ聞いてますよ?諏訪大社は古事記にも詳しく記載されている由緒正しい神社ですし、主神はタケミナカタですな」
上条「それもメガテ○で知ってる。両腕のない神様――」
レッサー「まるで蛇のようですな?」
(※という説)
上条「……あぁ!そういう!」
レッサー「なんちゅーかまぁこのタケミナカタもまた複雑な神でして……国津神の一柱で国譲りに反対したものの建御雷との戦いで負け、諏訪の地にまで投げ飛ばされ、以降そこに住んだ――」
レッサー「というのがまぁ古事記に書かれています。これを聞いてどう思われますか?」
上条「とばっちりだよなぁ、とか」
レッサー「えぇまぁそれはそうなんでしょうが。では逆に、タケミナカタの飛ばされた先に先住民族がいたらどうです?」
上条「それって……結局タケミナカタとやってること同じじゃね?支配する側とされる側って構図が同じで」
レッサー「まさにそれだったっぽいんですよ。まず諏訪郡には洩矢(もれや)神を崇める守矢(もりや)氏が支配していました」
レッサー「そこに中央との権力争いに敗れて流れてきた諏訪氏がやってきて侵略し」
レッサー「結果としては守矢氏が信仰していた神様が廃れ、タケミナカタが諏訪に座するようなった。さて――」
レッサー「――では『その守矢氏が崇めていた土着の神とはなんぞや?』、ですな」
上条「あー……それで祟り神かー。恨んでんのかなぁ」
レッサー「あるなしで言えばそうだと思います。しかしながらこの諏訪氏と守矢氏、なんだかんだで今日まで共存・同一化されているんで、そこまでの遺恨はないかと」
上条「でもそうしたらその謎の神様はどこ行ったんだ?」
レッサー「その正体がミシャグジ様では、ですな。存在自体を曖昧にしてたまーに影がチラつくような感じで祀ろってる感じで」
レッサー「なお余談ですが、東○だと神奈○様が諏訪氏側でケロちゃ○さんが守矢氏側って設定ですな!」
(※非公式で早○さんがケロちゃ○さんの子孫説。多分正解)
上条「その説明で分かるか?『あぁやっぱり幼女は祟るんだ……』とか思わなくもねぇが」
レッサー「とまぁ以上がエリンギ様と雌ライオン様の過去と変遷と現在ですな。まぁ最低限度をやや下回るレベルです」
上条「マジかよ。これだけでも最低限じゃないって?」
レッサー「これ以上踏み込むと猪八戒にまで話が絡みます。あぁケルヌンノスも含めた有角神全般とも言えますかね」
上条「マジかよ」
レッサー「ただそれをしてしまうとHAMADURAモテモテセミナー後編がまた別の日に……!」
(※字数の関係上)
上条「いいよ別に。どうせアレあとはセミナーに出てアリサがツッコむだけだから」
レッサー「あれ私も出ているんですが……あぁまぁでは最低限度としまして、ある時期を境にエリンギ様は姿を消したんですな」
上条「それは十字教の影響?」
レッサー「実はもう少し前にです。だってギリシャ神話やケルト、ローマも含めてエリンギ様の文化財なんて見たことないでしょう?」
上条「それ以外でもねぇよ。つーかここまでエリンギ様が大活躍していたのすら知らんわ」
レッサー「まぁ普通は教えませんしねぇ……ですが、エリンギ様も雌ライオン様も姿を変えて残存してたんですな」
上条「へー」
レッサー「雌ライオン様は大地母神に統合されました。古代のグロテスクな姿から、世界と生命を産んだ偉大な女神へと転じたと」
レッサー「まぁこれもある意味発明みたいなものですな。人類が感じていた概念へ対し、人格と神格を与えて神格化したと。魔術的には正しい行為です」
上条「それって珍しいのか?」
レッサー「全世界どこの国でもやっています。例えばそうですな、あーテュポーンってあるんですよ、女神ヘラが産んだ台風の神格化に成功したわけです」
レッサー「同じように太陽の神格化、月の神格化、星の神格化、風の神格化、暦の神格化――と、様々なものを崇めていきました。もしくは畏れたのかもですが」
レッサー「よってエリンギ様がファルス象から離された一方、次にたどり着いたのが『ツノ』だったんですな」
上条「ツノって……ケルヌンノスのときに」
レッサー「鉱物や鉱床、鍛冶や製鉄のモチーフとして使われてますよね、って話をしました。私がいたのかは忘れましたが」
レッサー「なんつーかまぁエリンギ様を堂々と描写するのは宜しくないとでも考えたのか、はたまた別の考えがあったのかは分かりませんが」
レッサー「ここで大切なのは霊長としての萌芽が出始めてきたのですな。『我らは獣に非ず人である』と」
レッサー「故に神は人の姿をし、優れた振る舞いをして一線を画す。獣とは違っててるいと」
レッサー「ですが処々の悩み――豊穣や実りに多産、それらの祝福や権能は欲しい、と。何とも矛盾していますが、人類なんてそんなもんです」
上条「いやでもギリシャやローマって侵略ばっかだったような……」
レッサー「そこはそれ『王権神授説』っていう錦の旗が。凄いですよね!あれ発明したヤツには誉めてあげたいですよ!」
上条「多分お前みたいな人だと思う」
レッサー「んでまぁまぁまぁまぁ、そんな訳で人が造り出したのが『半神半獣』、もしくは獣性を孕んだ神的存在ですな」
レッサー「人よりも上でかつ獣に近い。よって豊穣の印を持ちエリンギ様の代役に相応しい神を発明したのです」
レッサー「しかし彼らは人とは違い、獣性を宿した存在であり、致命的に人とは違う。そのシンボルとして描かれたのが”””ツノ”””です」
レッサー「これ以降有角神は獣に近く、故に友情の象徴であると入れ替わりました。まぁエリンギ様がツノへと転化したと言えなくもないです?」
上条「信仰の対象がエリンギ様そのものじゃなく、エリンギ様を持った存在へ変った、って理解であってるか?」
レッサー「ですな。ただしその神様は不可分でありますが」
上条「でもツノってツノだよな?ホーンっていうかアントラーっていうかさ」
レッサー「発音はどうかと思いますが、まぁツノはツノですな」
上条「それと鍛冶ってどう結びつくんだ?まさか動物が鉄叩いたりはしてないだろ?」
レッサー「え、だからそれ最初に言ったじゃないですか?」
上条「何をだよ」
レッサー「最初期のエリンギ様は墓か竈の側で見つかったんですよ」
上条「あー……だから?」
レッサー「つまり”””火の神様も兼ねていた”””ってだけです。それこそ有史以前の段階で」
上条「はい?」
レッサー「はい?」
上条「待て待て待て待て、ますせ整理しようぜ?最初期の、つーか石器時代のエリンギ様は竈とか、火の側にもあったっつーか埋まってた?」
レッサー「ですな」
上条「それは分かったし事実なんだろうが、その話と製鉄なりがどう結びつく?」
レッサー「これもまたイメージの話でしてね。『なんでエリンギ様が竈で?』というには諸説ありまして」
レッサー「中には『熱で大きくなったり小さくなったりするから』なんかが有力でしょうが」
(※いや本当に)
上条「だからシモかよ。他にもっとこう、説明のしようってもんがあんだろ」
レッサー「まぁその頃の人類なんて動物と大差無いんで……でまぁ解釈はさておき、その頃にはニカワ使ってたんじゃねぇかと」
上条「ニカワ?」
レッサ−「動物のパーツを煮込んで煮込んで煮込んで抽出するゼラチンの一種です。血止めの薬や革同士を接着する接着剤として使われていたそうで」
レッサー「よって初期人類の思考には『鍛冶全般=エリンギ様』というイメージが刻み込まれていたんじゃねぇかと」
上条「鍛冶と動物煮込むのって……あぁまぁどっちも火の側の仕事か。革製品も鍛冶のジャンルっちゃジャンルだしな」
レッサー「また有名なツノとしましては金属製のツノが発掘されているんですわ。作成時期は青銅器時代の角笛が」
上条「青銅器っていったら製鉄始まった直後からかよ!?しかも角笛って!」
レッサー「戦争に使ったと思われます。動物の角よりも使いやすく長持ちする、といいますか実際に残っていますからね」
上条「実用品じゃねぇか。あぁまぁサイレンが無い時代だから」
レッサー「他にもデンマークで黄金のツノが発掘されています。こちらは5世紀ぐらいですが、少なくとも黄金で作る程度には文明があり、価値観というものもあった訳ですな」
レッサー「そのような経緯があり恐らくツノもまた製鉄のシンボルさされていた時期があったのでしょうが……」
レッサー「やはりどこかで失伝するんですな。当時の人間達にとっては当り前だったのが、ストンと消える。そして文化が隔絶する」
レッサー「後に残されたのが謎の神々だったり悪魔だったり。文化の残り香、と言っては不謹慎でしょうが」
レッサー「エリンギ様や雌ライオン様などもまたそうした類でしょうな。まだ残っている方ですが」
上条「価値観も変ってるからなぁ。俺だってどっか旅行行ってだ?『観光協会で聞いたパワースポット行ってみよう!』ってなって、ついたその先にエリンギ様がいたら回れ右して帰るわ」
レッサー「現代的な価値観だったらそうなるのもおかしくはないですな。もしくはどっかのフェミニスト団体へ通報が入って、社会的な吊し上げに掛かる可能性すらあります」
レッサー「言葉狩りならぬ異端狩りですな。邪悪な容貌だから排除する、不健全だから遠ざけると。クルセイドから一歩も前進していません」
レッサー「ただそれも以前よりは多少マシになったようで、ゲイの方々がエリンギ様信仰に多少噛むようになってきました。ぶっちゃけ寄進してくれるようになりました」
上条「またエライ繋がりだな。どっから出てきたその人ら」
レッサー「彼ら彼女らもまたエリンギ様と雌ライオン様で悩んでいる人達なので、救いを求めているのかもしれません」
レッサー「ともあれ人が多様性を持つように、神や悪魔もまた多面性を持つんですな。指さしてバカにするのは論外です」
レッサー「ただ現代の価値観では当り前ですが、性的な嫌悪感を催したり、他人を不快にさせるような言動は訴訟の対象となりうるのでご注意を」
レッサー「『こういう信仰がありましたよ!』と、学術的な一面を掲げて他人へ強制したりするのは、普通にハラスメントです」
上条「てかエリンギ様関係で絶対に悪ふざけしてる奴らも混ざってるよな?」
レッサー「今の時代でも各種性病に前立腺癌など、神頼みしたい方は潜在的に結構おられると思いますがねぇ」
レッサー「ともあれ今回の闇ちゃんねるは以上となります!留置場からお届けしましたが、次は裁判所ですな!」
上条「一人で行ってこいよ。俺は傍聴席からプラカード持って『やったねレッサーさんこれはこれでオイシイね☆』って応援してやっから」
レッサー「なおこれは余談になりますが――今回の話、『恥ずかしがるライナ○さんに解説させる』という邪悪なプランがありました……ッ!」
上条「喜ぶんじゃねぇかな。だってあいつHENTAIだもの。ボスの家庭環境悪くしたらあぁなるだろ」
レッサー「逆に考えてください!我のバードウェイさんはロ×だから周囲も離反しなかった、と……ッ!!!」
上条「解釈の違いかな。『育ちすぎたからアウトー』とか、魔術師ですら辿り着けないペ×の極地だろ
-終-
(※一切盛っていません)
――
レッサー「『――違う!クラリネットはこう吹くんだよ!』」 ニチャアァッ
上条「お前そのネットニュースの見出しから入ってくんのやめろや。世の中には想像を絶するHENTAIが居るなって感心するんだよ」
レッサー「くっくっくっく……!エリンギ様で一喜一憂していた先週に引き続き、ぶっちゃけ補足事項と訂正があったんでまさかの二回目と相成りましたよ……!」
上条「お前もう帰れよ。俺の知らないどっか遠いところでエリンギ様と雌(め)ライオン様を信仰して静かに暮らせよ」
レッサー「てゆうか『ロード・エルメロ○の資料あります?アニメ版の設定資料集でもあれば』と軽い気持ちで上司に打診したら、翌週特典ドラマCD付きの箱が来ましたよっと……!」
(※観賞用)
上条「ガチ勢じゃねぇか。むしろニワカ知識で語った分を恥じろ」
レッサー「いや流石に放送コード引っかかったようで、てかまぁ訂正の方からしたいと思いますが、『ロード・エルメロイII世の事件○』、略して『ロII』、もっと略せば『ロ×』の話なんですが」
上条「そんな三段用法ってあるか?辛うじて二番目はまぁ分からなくもないが」
レッサー「まさかアニメ版オリジナル展開で義妹とヤラナイカする場面があるとは……!」
(※未遂)
上条「弱ってんだよ。弱ってる相手に仕掛けたらその場で水銀みまれにされるわ」
レッサー「まぁともかく訂正から入ります。同作品の某戦闘シーンで『邪視(邪眼)を持つ相手を一瞬だけ無力化させるため、エリンギ様の呪物を投げつける』って行為があるんですな」
上条「言ってたな。もっとこう、他に何か無かったのかと思わなくもねぇが」
レッサー「原作小説ではエリンギ様のファルス像だったんですけど、アニメ版では描写が許されず別のものへ差し替えられてた事実が判明しました!」
上条「そりゃそうだろ。だって俺がエリンギ様の呪物見たらまずそいつの正気を疑うもの」
レッサー「まぁ詳しくは円盤買って確かめて頂きたいところですが。未見の方にご説明いたしますと、差し替え後もどう見ても対面座×のキーホルダーです本当にありがとうございました」
上条「エリンギ様よりある意味酷いわ。レベル的には上がってるだろそれ」
レッサー「あぁいえいえ、そこは決して原作がアレという訳ではなく、あの座像はチベット仏教の『ヤブユム』ですな。もしく『立川流(仮)』と言った方がお馴染みかもですが」
上条「すまんが全くお馴染みじゃねぇよ。つーかあの卑猥な像ってよりにもよって仏教由来なのか!?」
レッサー「マジです。別名『歓喜仏(かんぎぶつ)』と言いまして、普通に信仰の対象になっています――が、同時にカルト系の結社の本尊としても多々使われていますな」
上条「てゆうか仏教だろ?エ×いことダメって宗教でなんであんなハレンチ()な本尊が出来上がるんだよ!?」
レッサー「由来といたしましてはヨーガと言われていますね。よくあの組体操みたいなヨーガが動画サイトとかに上がってるのあるじゃないですか?その中の一つ」
上条「確かに変なポーズ多かったけど……『フュージョ○!』とか言いそうなの」
レッサー「勿論今では『歓喜仏は和合(わごう)の精神を体現しているんです』が公式見解になっています。そりゃまぁ×面座位の仏様なんか出せませんからね」
レッサー「またこの歓喜仏のルーツとされていますのは、えーとシヴァ神でやりましたよね?」
上条「お客さんが訊ねてきたにも関わらず、ハッスルしてて史上最低のシンボルを貰った邪神な」
レッサー「その際、ハッスルしていた体位がこれだそうで」
(※マシです)
上条「もうやめてあげて!?俺の中でのシヴァ神がストップ安になりそう!次からゲームでも作りにくくなっちゃうから!」
(※インドのゼウスみたいなもんですし)
レッサー「私もどうかと思わないでもないんですが……ちなみに上条さんはこの歓喜仏が日本に入って来たのを一回やってます。闇ちゃんねるでですが」
上条「かんぎ……もしかして男女が抱き合うゾウヘッドの?」
レッサー「ですな。所謂『歓喜天(かんぎてん)』と称される、ガネーシャが性愛の神として仏教へ取り入れられた姿とも言われています」
(※詳しくは『ケルヌンノス追憶編』で)
上条「つーか変な所で変な風に繋がるのな。遠いインドで生まれたHENTAIの像が日本にまで……!」
レッサー「えーとまぁ……エリンギ様特集なんでぶっちゃけ言っちまいますが、ヤポンにも『立川流』という仏教がありまして、その本尊に歓喜仏が使われていた、って証言もあります」
上条「落語しか知らんわ。立川流?」
レッサー「曰く、『荼枳尼天(だきにてん)を崇め、髑髏(どくろ)を本尊とし、男女の絶え間ないチョメチョメにより悟りを啓く!』……だそうで」
上条「ただのエ×人だよ。つーか引くわドクロってなんだよ!?あと確かダーキニーって悪魔だろ!?」
レッサー「それもまたインド由来でカーリーの化身、もしくは眷族ですなぁ。人喰いの鬼です」
レッサー「ちなみにこれは文献にも明記されているのですが……実在するかは微妙説が近年に入って強くなってきました」
上条「なんで?昔の本に書いてあったんだろ?」
レッサー「そうなんですが、立川流は南北朝の時代に南朝側についてそのまま滅んでいたり、江戸になってからは正式に禁書になってますんで」
レッサー「まぁ?勝利した側の視点で書かれたものしか参考文献がないため、立川流そのものが権力闘争に負けたとばっちりだって説もあります」
上条「悟りからは一番遠いところにあるそうだが……」
レッサー「一応擁護しておきますと、立川流(仮称)自体は男女共に悟りを啓けますし、かつ僧籍に当る役職に女性でもなれますので、ある意味進歩的っちゃ進歩的でした」
レッサー「また当時の性に関して、特に江戸まではかなーり大らかだったため、どこまで後世の視点で書かれたのかを留意する必要もあります」
(※当時は女性というだけで地獄落ちが確定していた、という宗派が大半だった)
レッサー「なお当時の価値観としましては『猪熊事件(いのくまじけん)』って、まぁ事件っていいますか騒動が起きましてね。大体17世紀の頭ぐらい」
レッサー「よりにもよって宮中で公家が不義密通どころか乱交やってたらしく、帝ブチキレ、関係者一同死罪の一歩手前にまで行った事件です」
(※しかし当時の公家の法では死罪にできなかったため、「まぁまぁまぁまぁ」と止められるのを前提に仰った説あり。つまり「そんだけ怒ってんだよこっちは」との意思表示)
上条「意外と肉食系か公家。イメージ変るわ」
レッサー「裏を返せばその当時のトップ及び周囲のモラルはその程度にはあった、ということですな。あくまでも周辺はですが」
レッサー「――さて、訂正は以上としまして以下は補足事項です。あー、まぁ説明の仕方が悪かったので、改めてですが」
レッサー「まぁぶっちゃけ『エリンギ様が派生していて混沌としている』って話なんですが、それも仕方がないんですよ。実際に混沌としてますから」
上条「カマドの神だったり豊穣の神だったり、日本に来たらミシャグジ様になったり忙しいのな」
レッサー「ですな。そこら辺をもっとザックリお話ししたいと思います――」
レッサー「――で、結論から言いますと『混乱して当り前』なんですよ。だって研究者ですら解明されてないor諸説ありなんですから」
上条「投げんなや!?面倒臭いからってお前!?」
レッサー「いやいやマジな話です。えーっと例えばですね、こちらのホワイトボードをご覧ください」
○トール神の持つ属性(権能)
【雷神】
【戦神】
【鍛冶神】
【農耕神】
【豊穣神】
【全能神】
【道行神】
上条「上二つぐらいは『あぁ』だが、そこから下は知らない」
レッサー「RPGでパッシブスキルに近いですな。レベルが上がれば自動的に様々な属性を付加されていく感じで」
上条「神様はレベルねぇよ。メガテ○か」
レッサー「レベルに近しいモノはあるんですな。それは『多面化と習合』です」
上条「手広くやって失敗する企業じゃねぇんだから」
レッサー「ダメ企業と一緒にされるのは心外ですが……まずは初期トール神の原型はある部族で崇められていた神だという説があります」
レッサー「その部族は外敵と戦い、時には略奪にも勤しんでいたので雷のように侵略し、戦いにも強いってことで雷神・戦神として崇められてきました」
(※典型的なヴァイキングの生活様式です)
上条「ヴァイキング怖い。いやまぁ当時の価値観としちゃやったもん勝ちなんだろうが!」
レッサー「でまぁ蛮族が使う武器、青銅器なり鉄器なりが重視されるようになってきました。武器の強さはそのまま興亡に直結しますからね」
上条「そんなに違うのか?」
レッサー「あくまでも私が読んだ本の中では、青銅器の剣は鉄剣と打ち合うと10合程度で折れるそうです」
上条「だったら段違いだな」
レッサー「ここである神官が言います――『トール神は鍛冶をも司る!だって鎚(つち)持ってるじゃないか!』と」
(※金属を鍛える的な)
上条「雑か」
レッサー「いやマジな話ですよ?初期トール神は時代からするとオノか剣なんでしょうが、ここで鎚を装備した姿になります」
レッサー「てかここら辺は、ヘラクレスやベオウルフなんかそうでしょうが、『複数の武器を使いこなす英雄』って出てきますよね?それと同じで」
レッサー「信仰している間に神格へ求められている役割が変ったり、また他の英雄と統合されたりしている名残、みたいなもんです」
上条「アーサー王がスッゲー聖剣持ってんのに槍使ったりすんのも?」
レッサー「他の神話と習合したり、影響を受けたりですな。実在して数種類の霊装を使い分けていた可能性も否定はしませんけども」
レッサー「そしてまたある程度時代が進むと、狩猟&略奪だけじゃ生きられなくなってくるんですよね」
上条「なんで?」
レッサー「単純にコミュニティの人口が増えたからです。略奪メインであれば弱い人間は命を落し、適度に人数調整はされるでしょうが、それがなくなると」
レッサー「こうなってくると完全に定住して農耕を営む生活スタイルへと移行し、ここで立場がなくなるのはトール神です」
上条「あー……戦闘と鍛冶の神様」
レッサー「なので信仰している人はこう考えます――『トール神は鎚を持っているから脱穀をも司っているんだ!』と」
上条「雑か」
レッサー「そしてまたこうをも――『トール神は雷神、つまり天候を操って雨をもたらしてくれる豊穣の神なんだ!』と」
上条「だから雑だわ!?いいのかそんなんで!?」
レッサー「なおここら辺の名残から、『赤ちゃんの枕元に斧か鎚を置いて魔除けにする』って習慣もありまして――」
レッサー「これが時代が進むと『安全と子宝の神』って属性も付加されます」
上条「あー……なんかありそうな話だよな」
レッサー「んでまたトール神信仰が最盛期になりますと、『やっぱ俺ら最高!ならトール神は全能神だ!』って言われるように」
上条「まぁ、うん。狩猟民族から農耕民族になればまぁ……アガリっちゃアガリだし」
レッサー「が、順調に見えたのもここまでです。ある日突然異民族なり敵対する部族なりに戦争を仕掛けられます。もしかしたら仕掛けた側かもしれませんが」
レッサー「結果としてトール神崇拝一族は負けます。この段階でトール神はもう全能神としての立場を失うんですが」
上条「トールさんに謝れよ。散々助けてもらってきただろ」
レッサー「しかしながら占領政策と言いますか、もしくは戦いの健闘を讃えるためか、トール神も侵略者の神話に加わります」
レッサー「主神オーディンができないような豪放磊落なエピソードを付け加えられ、他の神話や民話と統合されつつ」
レッサー「新しいトールは巨人に盗まれた神具を取り戻すために旅をしたという話が加わり、以後『道行神』としても崇められるようになります」
レッサー「そしてできたのが現代に語り継がれているトール神の属性と権能と神格。やや単純だが気が佳くて強いって英雄神ですな」
上条「スタート地点からゴールまで一体何百年掛かったんだろう……」
レッサー「あくまでも『っていう説がある』んであって、これが絶対ではないですからね?あくまでもおおよその流れと思ってください」
(※順番や前後はかなりデタラメ。そして検証する資料もエッダと周辺地域の神話しかなく、検証が極めて困難)
レッサー「ただ少なくとも絶対なのは、神や悪魔などの神的存在は必要によって属性を付加されたり、統合されて他の属性を持つという、ある意味悪魔合体を繰り返してきました」
上条「まさかのメガテ○っぽい世界観は実話だった説……!」
レッサー「――と、このような属性の統合や習合が起きた結果、神や悪魔は多面化していきます」
レッサー「シヴァなんかほぼ全ての属性、宗派によっては維持神ブラフマーと創造神ヴィシュヌですら彼の化身であると謳っています」
(※そして勿論その逆も)
上条「ベルゼブブなんか酷いんだっけ?」
レッサー「超長くなります。あれはあれで『ベル』の系譜と言いますか、ハエ悪魔から英雄神まで長編一本作れるぐらいには」
上条「てかずっと疑問に思ってたんだが、なんぼ悪魔化されたとはいえハエの神様って本当にいるのか?」
レッサー「あるなしで言えばある方ですな」
上条「マジで!?何をどうやったらそんなもん崇める気になんの?」
レッサー「エジプトだとハエは勇気や勇敢のシンボルなんですな。何度追い払ってもまとわりついてくるので」
上条「あーなんか顔に来るよな」
レッサー「よって今でもお土産物屋さんでハエのレリーフが売っています。信仰というより縁起物扱いでしょうか。日本の郷土玩具的な」
上条「本当に場所が変ればだよなぁ」
レッサー「さて――前置きが超長くなってしまいましたが、ここからが本題です。みんな大好きエリンギ様と雌ライオン様ですな」
上条「発想が小学生か」
レッサー「原始信仰でエリンギ様と雌ライオン様が主力な崇拝対象だったのは絶対なんですよね。広範囲から出土された歴史的な呪物が証明しています」
レッサー「まぁ、スタート地点がそこだと思ってくださいな。所謂アグモ○です」
上条「デジモ○に例えるんじゃない!今まで頑張ってそれっぽい話してきたのに台無しだろうが!」
レッサー「てか語ってきてなんですけど、デジモ○に例えた方が分かりやすかったかもしれませんね!だって進化先が多々あるんですから!」
上条「あの世界も実は壮大な神話世界と言えなくもないっちゃないが」
レッサー「まぁなんて言いますか、人類はまず太陽や星、月など言葉を用いるようになりました。そしてそこから信仰が生まれます」
レッサー「その最も最初期に安産や豊穣、子孫繁栄を願ってエリンギ様と雌ライオン様の像が造られました。石器で武装した時代ですな」
レッサー「それから恒常的な火や青銅器などを利用できるようになり、鍛冶や火という概念が加わり、それに応じた神格が誕生します」
レッサー「そうしている間に多少生活が豊かになるとこう考える訳です――『我々はどこから来てどこへ行んだろう?』と」
上条「なんかそれっぽくて格好いい……!」
レッサー「宗教の変遷自体がグレイトジャーニーと言って差し支えないですからね」
レッサー「ここで国産み神話や終末神話が作成され、人類は『世界』というものを認識できるようになります――が、ここでファルス信仰も形を変えていきます」
レッサー「ともあれ長くなるため後回しにしますが、雌ライオン様から説明しますね。こっちはかなり早々と巨人になります」
上条「巨人?」
レッサー「えぇ巨人です。原初の巨人と言いまして、創世神話の一番先には巨人がおり、彼らを殺したり産んだりして世界がまず創られるんですな」
レッサー「ギリシャのガイアにシュメールのイナンナなど。旧い女神へと雌ライオン様は統合されていきました」
上条「それはその、そのまんまの姿じゃなくって意味で?」
レッサー「なんといっても主さんのシンボルですからねぇ。体裁的にも女神の方がいいでしょうし、なんといっても名を与えて神格を与えられた方が人類にとっても分かりやすい」
○雌ライオン様→巨人→女神(地母神)
レッサー「個人的にも謎のファルス像を崇めるよりは、オリンポスのアルテミス像へ祈った方が霊験あらたかな気もしますしねぇ」
上条「あぁ、まぁな。それはな」
レッサー「まぁ女性の方はそれで済んだとして、厄介なのはエリンギ様の方です。まずこっちは蛇神や龍神に統合されるケースが多いですな」
上条「またスゲー場所に飛ぶのな!お前嘘吐いてないだろうなコラ?」
レッサー「いや、ですから今とは価値観が違うんですよ。生と死はもっと身近でしたし、それに伴う信仰もまた然り」
レッサー「そして人類の初期といえば武力の多寡で一族郎党皆殺しになるのがデフォでしたんで。子を産み兵なり農なりで生産力を上げなきゃと必死でしたから、文字通り死にます」
上条「地獄のシムシテ○か」
レッサー「どっかって言いますと『信長の野○・ベリーハード版(皆殺しあり)版』かと。まぁこれも生活が楽になってくると、話は変ってくるんですが」
レッサー「話を戻しますが、蛇神は死と再生のシンボルとして古代から崇められていました。脱皮するという生態を見て、『一度死んでもまた生まれ変わる』そうで」
レッサー「また見た目がエリンギ様に酷似しているため、『豊穣の象徴』として統合されていきます――が、しかし!」
レッサー「同時にまた蛇は地母神やその使いであるとも見なされています。要は男女どっちも蛇神属性が入ってんですよねぇ」
上条「ヨルムンガンドだっけ?世界を被っているデッカイ蛇やウロボロス」
レッサー「竜も究極的には蛇の一種と言いますか、蛇をより神性に近づけた存在が竜であるとも言えますしー?」
レッサー「ですがエリンギ様の進化先はそれだけではありません!メタルグレイモ○だけではなくウォーグレイモ○にだってなれるのです!」
上条「例えが悪い。ちょいちょいネタを挟むな」
レッサー「次に統合されたのが『鍛冶と農耕』ですな。鉄が膨張したり鍛鉄する際に叩いたりするのがアレっぽいと思われたのか」
レッサー「他にも『鎚』などの農耕機具は命を育て育む……というかまぁ、農業自体が『種を蒔く』行為ですので、エリンギ様もまた属性が雑に加わっていったのです」
上条「雑にとか言うなや」
レッサー「またここで統合された『蛇』属性が干渉しまして、えぇと蛇って穀物を狙うネズミを捕りますでしょ?なのでそっちの意味でも加護を与えると信仰されました」
上条「習合された側からまた習合されっちまうのか……!」
レッサー「えぇ、これが非常にカオスになってる原因ですな。悪魔合体の元素材両方の性質を受け継ぐもんで、どっちからも引っ張られるっていうね」
レッサー「んでこの後に出てくるのが『有角神』ですな。所謂『ツノ』を旗頭とする象徴群」
レッサー「これは単純にツノ自体が獣性の表れ、つまり多産や安全のシンボルである信仰です。処女神アルテミスなんかの分野です」
上条「はい、質問です!アルテミスって確か……『エッチなんかしないもん!』って女神じゃなかったんですか!」
レッサー「言い方が気持ち悪いですが、これもまた習合の影響かと思われます」
レッサー「元々アルテミスはアマゾーンなどの狩猟系民族に崇められていた神だと思われますが、後にギリシャ神話に編入、つーか統合されます」
レッサー「この際、『獣の神』という側面が強調され、『獣……だったら安産や豊穣も兼ねるんじゃね?』となりました」
上条「怖ろしくザルいです先生」
レッサー「また複数の神格が統合された説もありますんで、まぁお好きなのを選んでください!私は知りません!」
(※狩猟神・処女神・豊穣神、この三つの神が統合された説あり。多分これが正解)
レッサー「で、まぁ獣系の神様は全般的に獣性をどこかへ残すんですな。例えばウロコがあったり羽があったりとか」
レッサー「その中で多いのが『ツノ』でありまして、やはり本質的には獣ですんで多産だったり安産だったりって特徴が有り――」
(※多産はともかくそんなに安産でもないんですが)
レッサー「――こうして『ツノを持った獣性神』がエリンギ様とまた習合するに至ったのですな……ッ!!!」
○エリンギ様
→蛇神→龍神(竜)
→鍛冶神
→農耕神(豊穣)
→有角神
上条「すいません、レッサーちゃんさん。カオス過ぎてもう何が何だか分からないです」
レッサー「いやまぁ『そういうもん』だと思ってください。属性が習合してしっちゃかめっちゃかになっていますし」
レッサー「この後すぐにキリスト教が席巻して旧い信仰がポロックソにされます」
上条「あー……エリンギ様なんて邪神の象徴そのまんまだからなぁ」
レッサー「決してユダヤ教もアレな感じでしたけど、キリスト教もまたクッソ排他的なやり方しましてね」
レッサー「ローマ帝国の方針としては習合政策取っていたんですよ。支配地域の神を組み込んだり、まぁギリシャに倣ってでしょうが」
レッサー「そもそも『聖書の蛇』は原罪を意味するため、キリスト教の中でも大罪中の大罪として扱われますからね」
レッサー「今まではそれなりに、一応ながらもそれなりには他民族や他宗教との住み分けをしてきたのに。裏返ったって感じで狩り出すようになりました」
レッサー「すると今度は習合を繰り返していたのが仇になります。『あの神も蛇!あの神も蛇!全て悪魔だ!』と激しい狩られ方をします」
レッサー「神殿の焼き討ちは日常茶飯事、異教の信徒に至っては言うに及ばす――まぁそれでも深淵を覗きたい方は”ヒュパティアの悲劇”でググってみてください」
レッサー「『女性を裸に剥いた上、カキの貝殻で彼女の肉を骨から削ぎ落として処刑』という冗談のような殺し方をしています」
(※実話です)
上条「うん、やっぱりお前らって文明人名乗る資格なくね?スーツ来た蛮族って名乗れよ」
レッサー「なおこの虐殺を主導したキュリロスは聖人認定されており、2023年3月12日時点(今日)では認定は解除されていませんし」
レッサー「同宗教の分派でもあるルター派でも彼は聖人に指定されている始末です。なお男女平等ランキング堂々一位のベルギーではカトリック+プロテスタントで国民の95%を占めるそうです」
上条「だから文明人名乗るなよ」
レッサー「更に余談ではありますが、このクソ話には蛇足があり、聖女認定されている『アレクサンドリアのカタリナ』がいましてね」
レッサー「まぁ色々あってローマ皇帝をキリスト教に改宗しようとし、50人の賢者相手にも怯まず論破し、皇帝に言い寄られたも断ったので処刑されたんだそうですが」
レッサー「存在自体がヒュパティアのパクリであり、今日に至るまで実在を証明するものが皆無、つまり対プロパガンダとして捏造した上、ヒュパティアさんを上書きしやがったんじゃっていうね……!」
上条「十字教徒さんのゲスさ加減は留まるところを知らないな!」
レッサー「ぶっちゃけその後の持ち上げ方や、事実認定する教会のやり方なんか、連中がどれだけクソだったかって証左になっています。私も自分で言ってて悲しいですが」
レッサー「なおこのカタリア(笑)さんは『どうしましょう!神様に見初められちゃったわ!』とか、『キリスト教を迫害するローマ皇帝を改心させないといけないの!』とか」
レッサー「他にも『私が論破しちゃった学者先生が処刑されたの!なんて、なんて酷い事を!』等々、ネジの外れた乙女ゲームの主人公そのままの性格をしています」
(※更に付け足すと「皇帝陛下から求婚されちゃったの!」もある)
上条「なにそれ逆に楽しくなってきた……!」
レッサー「なお聖女の中ではマリアに並んで有名且つネタにされ、ほぼ常時薄い本で肌色度が高いジャンヌ=ダルクさんですが」
上条「そんな前置きは要らん。そしてその主犯はきっと俺らだ」
レッサー「彼女に『あなたは神に選ばれたのよ!』とお告げにしに来たのは三人。大天使ミカエル、アレクサンドリアのカタリナ、あとアンティオキアのマルガリタだったって設定が」
上条「お前いい加減にしろよ?乙女ゲーの方のカタリ○さんに迷惑かかるんだからな!」
レッサー「とまぁこんな感じでキリスト教が権力を握ると、ギリシャ文明からずーっと積み上げたものが灰燼に帰します」
レッサー「そして科学的な研究が異端だったり難癖をつけられて全然捗らず、衛生概念や各種伝染病に悩まされて何度か滅びかけます。それもまた自業自得ですが」
レッサー「ここら辺の教理を詳しくやっちまいますと原罪がどーたらとクソ長い話になるんで割愛します。こうしてエリンギ様と雌ライオン様は姿を消しました」
上条「てかキリスト教には習合とかしなかったの?」
レッサー「当然したに決まってるじゃないですか?今言ったアンティオキアのマルガリタなんぞそのものでしてね」
レッサー「彼女もまた聖人認定されていながら、実在はしなかったろうと言われています。そんなマルガリタのエピソードはこんな感じです」
レッサー「『私マルガリッタ!キリスト教なんだけど父や母は異教の神官なの!だから暮らしは貧しいわ!』」
レッサー「『そんなある日”キリスト教を捨てれば結婚してやるよ!”って言い寄ってくるんだから!当然お断りよね!』」
レッサー「『でもそうしたらドラゴンの姿をした悪魔に一口で食べられちゃった☆絶体絶命大ビッ×☆』」
上条「ピンチな?テンションがアレで辛いのは理解できるから、最後までボケ通せ。それが礼儀だよ」
レッサー「『けど大丈夫!たまたま持っていた十字架がドラゴンの体内を傷つけ、吐き出されちゃった☆』」
レッサー「――っていう逸話をお持ちの方です」
上条「嘘だろ?そんな嘘エピソード持ってんのがジャンヌさんとこ行ったの?」
(※よりにもよって非存在アホ聖女の二人が選ばれました。恐らく作為的、つーか教会がフランス王へ対して懐疑的だった思われ)
レッサー「で、まぁエリンギ様の話でも散々しましたが、邪教の神々と信仰をぬっ殺している教会も実は習合やってましてね」
レッサー「例えばこの聖人マルガリタは『妊婦・安産の聖人』に認定されています」
上条「お前、それって――いつだ?いつ頃の話なんだ?」
レッサー「マルガリタが亡くなったのは304年、カタリナは305年ですな」
上条「ふーん……?随分近いんだな、つーか似たような時期に聖人ってホイホイ現れるっていうか」
レッサー「ちなみにローマ帝国ですが、途中皇帝が何人も立ってそれぞれの地域を支配していた時期がありましてね。それを統一したのがコンスタンティヌス1世ですが」
レッサー「彼が副帝に選ばれて辣腕を振るいだしたのは306年、ローマ統一皇帝にまで登り詰めたのが337年」
レッサー「また彼は熱心なキリスト教の擁護者であり、聖人として認定されているローマ皇帝の一人でもあります」
上条「やったなお前ら?今まで他の神様がやってた習合を、自分らのとこの聖人だけでやったのな?」
レッサー「っていう見解が多いですな。ともあれキリスト教圏ではエリンギ様を筆頭に”大体”の神様は姿を消します」
上条「少しは残ったって話か?聖人として?」
レッサー「えぇ聖人としてですが残りましたとも。サマインだったりイースターだったり、主要な信仰はキリスト教に取り込まれつつも何とか残った、と言えなくもないです」
レッサー「ただまぁこれが原義とは外れたり、今となっては正体不明になったローカルな神様とか結構居ましてね。妖精と言われていても昔は、ってパターンが非常に多いです」
上条「魔法使いの○さんだな。もうすぐ新巻だっけ」
レッサー「こうしてキリスト教は今まで多くの人間が重ねてきた習合と属性付加を自分達の欲しいままにします……まー、その結果が飽くなき内部闘争や全ての学問の衰退に繋がってんですが」
レッサー「そしてまた実に皮肉な話なんですが、キリスト教の他宗教狩りには当然ユダヤ教とユダヤ人が含まれましてね」
レッサー「あのままローマ帝政が続き、多神教の大学で同様の研究が続いていれば、千年ぐらい早く自然科学が発達したかもしれませんし。たらればの話ですがね」
レッサー「こうしてエリンギ様と雌ライオン様はヨーロッパからは姿を消しました。まぁアジアではシヴァ・リンガとしてきっちり残りましたし、シルクロードを伝ってヤポンにまで流れ着きましたからね」
上条「エリンギ様が駆逐されたのは別にどうでもいいんだが、改めて聞くとやり放題しやがってんだなキリスト教」
レッサー「今もそう大差ないっちゃないですからねぇ。地域によって批判すると洗礼を受けられなくなるんですわ」
(※主にカトリック。ルーテル教会は教区次第)
レッサー「ちなみにメガテ○のご立派なマーラ様をエリンギ様と同一視してるのは、主に日本独自の信仰です。前にも言いましたが、『エリンギ様があるから悟り啓けないんじゃ!』的な」
上条「性欲の本体をエリンギ様一人に集約させるのはどうかと……まぁ、巷に溢れるアホ犯罪の多くの動機はエ×根性だろうが」
レッサー「んでもってミシャグジ様は……原型がファルス信仰だったんでしょうな。御柱なんかそのままですし、そこから豊穣や陰陽石などが習合されまして」
レッサー「そこへ神話で逃れたタケミナカタが逃げてきて居座り、元々いた神様が追い出される。普通であれば新しい神が鎮座して、古い神は忘れ去られる――ん、ですが」
レッサー「きっと『何か』があったんでしょうな。だから祟り神として残された……可能性としては残したんではなく、消せなかったのかも?」
レッサー「そうしている間に祟り神としての属性が入ってまた習合する。蛇神がまた加わって訳が分からなくなったとかそういうんでしょうねぇ」
レッサー「まぁ多分闇咲さん辺りがお詳しいんでしょうが、出せる情報と出せない情報があるでしょうから、ねっ?」
(※人身御供関係)
上条「それって大丈夫な話か?地雷に聞こえるんだけど……」
レッサー「あぁこの場合の人身御供ってのは後付けが多いんですよ。例えば不慮の事故とかで亡くなった方がいたら『○○さんは喚ばれたんじゃ……?』的な噂しますよね?ぶっちゃけ不謹慎極まりないですけども」
レッサー「特に諏訪の地は台風が直撃して災害が頻発するんですよね。なのでその現象を見た人たちが『祟り神の障りかも!』と解釈したんではないかと」
上条「そうすると……最初から祟りなんか存在しない、かもと?」
レッサー「ですなぁ。まぁ昔のことなんで、当代のご当主レベルでしか真実は明らかにならないでしょうし。そもそも信仰とは信じる事であって知る事ではないですからね」
レッサー「以上で補足事項及び訂正を終わりにしたいと思います。次はヨゴレ仕事以外でお目に掛かりたいもんですが!」
上条「じゃなかったら呼ばれねぇから心配すんな。俺もこれ以上エリンギ様の話が膨らむとも思えないし」
レッサー「今回キリスト教の話が出たので、オマケで以前聞いた面白い話をしましょうか。あ、これは鈴木一也先生っていうゲームデザイナーの方の著書にあった話です」
上条「オカルトじゃなくてゲーム?」
レッサー「オカルト系のTRPG作成をされている方です。その筋では超有名――先生曰く、とある場所に黒い竜がいたんですよ。その竜はとても醜かった」
レッサー「しかしあるとき空を見上げたら、そこにはとても美しく輝く天があった。竜はそれをとても妬ましく思いました」
レッサー「すると竜は自らの尻尾に噛みつき、噛み千切ってしまったそうです――と、その尻尾はたちまち『蛇』になりました」
レッサー「竜自体はその色を白へと変え、重い尻尾がなくなった竜は空高く飛び上がったそうです。そう、どこまでも――」
(※原文はもっと美しいです)
上条「なんか詩的だな。象徴的でもある」
レッサー「まぁつまりですね、キリスト教の”あいつ”が『元々竜神だったんじゃねぇか』って説なんですな」
上条「はぁ!?お前それ!」
レッサー「自分の中の神格を『悪』として切り離し、そいつに悪さをさせて人類が堕落したら”あいつ”は助ける、って壮大なマッチポンプをやってんじゃね?と」
レッサー「あくまでもフィクションの話ですけども……イースターってご存じですか?意訳すると復活祭で神の子が甦ったよおめでとう、ってお祭りです」
上条「聞いた事はある。それが?」
レッサー「その儀式で中核になるのがイースターエッグっていう卵でありまして、復活と再生のシンボルなんですよね」
上条「あれ?でもお前復活と再生って――」
上条「……」
上条「――蛇、じゃねぇの?」
レッサー「宗教学的にはそうですよねぇ」
レッサー「で、こっから真面目な話になりますが、どこの神でもどんな神でも習合と多面化の影響を逃れられないんですよ。人類がそうである以上は」
レッサー「つーことは裏を返せば”あいつ”もまたどこからか来て、何かから影響を受けたってのは絶対なんです――で、こっからが私の妄想なんですが」
レッサー「――”あいつ”ってただの祟り神っぽくないですか?権能はゴミなのに嘘や欺瞞に偽善、そして異端殺しと同族殺しばっかり助長してますし」
レッサー「そもそも自分の神殿に半裸のオッサンを吊った神像って、どう見てもあれ供物としか」
上条「――はい、っていう訳で今回もお時間となりましたが!如何だったでしょうか!」
上条「エリンギ様から色々なところへ踏み込みましたが、それが本になったら発禁喰らう国もあるんで注意してくれよなっ!俺との約束だぜ!」
上条「つーか怪談おじさん二号機戻って来てー!?せめて言って良いこと悪いことの分別がつく人にしてー!!!」
-終-
(※多面性って怖いですよね、という話です。キリスト教の公的見解だと「神・聖霊・神の子」の三位一体が唯一かつ絶対であり、他の神的存在とは一切関係ないそうですが)
(※そして最後の「あいつ=蛇神」説はフィクションですが、ベースになってんのがユダヤの神でありそっちには”神”か絶対であり、聖霊・神の子は位階的に別)
姫神「――このあいだUFOキャッチャーをしていた。すると『頑張れ』とたくさんのオーディエンスに励まされた。あれは一体なんだったんだろう」
上条「姫神がUFOキャッチャーするのも驚愕だが、なんかの撮影だったんじゃ?迷惑系動画配信者の人とか」
姫神「ではないと思う。明らかに子供やサラリーマンっぽい人も居たし。なお狙っていたゲコ太くんは通りすがりの人が譲ってくれた」
上条「地道にゲンラー養殖計画してやがんのな。あとこれは決して文句ではないし批判なんかでもないんだが、フィギュア化させるんだったらまずマスコット、うん……」
姫神「上条君。それ以上はいけない。薄々みんな気づいている」 フルフル
青ピ「あー……カミやんに姫神、そやったら噂があるんやけど……」
上条「噂?ゲーセンに?」
姫神「場所は違う。スーパーの休憩コーナーに設置してあったところ」
上条「あぁアレプレイしてたの姫神だったのか!?『なんでこんなとこに……』ってずっと思ってたわ!?」
姫神「意外と小学生とバッティングする。そして対抗する私」
青ピ「どう考えても初恋ドロボウですやん――で、なくて。何かあそこら界隈に噂流れとったから、多分それやないかと」
上条「スーパーの休憩コーナーに流れる噂ってどんなんだよ。レアな人形が入ってる的な?」
青ピ「や、そうやなくて、『友人をぬいぐるみのに変えられた少女が、彼らを助けようと出没してる』って」
姫神「――いい話。応援したい」
上条「お前だろ、つーか姫神さん以外の何者でもねぇよ」
姫神「上条君は既にぬいぐるみ?」
上条「でもなくてだ!何か雰囲気ある子が必死でUFOキャッチャーしてっからまた都市伝説が生まれたんだろ!?」
姫神「解せぬ。とてもウキウキしながらボタンを押していたというのに」
青ピ「おぉ……!本屋でジャン○立ち読みしとっただけやのに、『ここもしかしてアガシックレコードに繋がった異界の本屋?』的な雰囲気になった女や……!」
上条「中身はごく普通なんだけどな」
姫神「二人とも味わってみるといい。たまにお肉が食べたくて吉野○入ったら。『あれこれ俺以外にも見えてるよね?』と店員にタメ口された切なさを」
上条「えっと……ほら!じゃあ皆で行こうぜ!明るい雰囲気だったらきっと、なっ青ピっ!?」
青ピ「ぐぬぬぬぬぬ……ッ!芸人としてなんとオイシイ……!」
上条「オイシくはねぇだろ。人間不信になるわ」
吹寄「髪を切る、とか?勿体ないけど雰囲気は軽くなるんじゃない?」
姫神「子供自体のあだ名――『ザシキワラシ』」
青ピ「あぁ……あぁ今のは納得したんちゃうよ!子供でそんな髪型やったら誰でも言われるっちゅー意味で!」
吹寄「カットの仕方に問題があるわ。ベリーショートにしろってんじゃなくて、ちょうどいいぐらいでいいでしょ」
上条「姫神さんはどこ踏み出しても地雷が埋まっているな!」
姫神「ふっ。私の名は姫神秋沙。『意外と普通』と失望され続ける運命の持ち主」
吹寄「そこまで卑屈にならなくても――って、なに?」
ピーンポーンパーンポーン
レッサー(校内放送)『――あー、テストテストー。フランス人の平地は主にバス○サイズー』
レッサー『はい、っていう訳で始まりました闇ちゃんねる改めアオハルちゃんねる!パーソナリティがオッサン&世界で一番商品価値に欠けるDKでしたからね!リニューアルってことで!』
レッサー『さて、では早速お便りが届いております!えーハンドルネーム「今のはメラゾー○ではない、バ○だ」さんからですね!』
レッサー『「レッサーちゃんさんこんにちは。私は学園都市在住のJCですが相談があります」』
レッサー『「私には好きな相手がいるのですが、全くこちらの気持ちに気づいていません。どころか女子として認識されているのかも怪しいです」』
レッサー『「本当にどうしたらいいのか分かりませんどうしたらどうしたらどうしたらどうしたらどうしたらどうしたらどうしたらどうしたら……ッ!!!」』
レッサー『……湿度高めのお便りでしたね!なんかハガキ一枚なのに裏真っ黒っていう独特の使い方をしてくれた方でした!』
レッサー『いやまぁ分かりますよ、つーかありますよねぇこの手のお話。やっぱり需要と供給が合ってないって言いますか、タイミングも大事でしょうし』
レッサー『ですが大切なのは相手を思いやる心です!誰かに大事にされたいのであれば誰かを大事にしなければいけません!よってここの答えは――』
レッサー『――拉×って×せばいいんじゃないですかね!浮気もされませんし、最後の最後まであなただけを愛してくれるだから助けてって言いますよきっと!』
レッサー『何事も諦めない強い心、そして実行力!ドス黒い太陽のHENTAIフェイスレ○司令を見習いなさいな!』
レッサー『ってあれ?なんです?――プースの窓に窓に!ゴリラがゴリラがうわやめ離せぼすけて上条さ――』
プツッ
全員「……」
姫神「上条君」
上条「――いや知らない人だよ?俺はオールウェイズ無実だよ?信じて?」
吹寄「日本人が英語を無理矢理入れるときって大抵嘘かハッタリなのよね」
姫神「吹寄さんいけない。Jpopでは入ってない曲探すのがないってぐらいの話」
レッサー(校内放送)『――いやー危ないところでしたねー!まさか急に人っぽいゴリラが乱入するとは、日本のハイスクールもやりますね!』
レッサー『しかしこの人に似せたゴリラってどうやって作ったんです?魔術の臭いはしませんし、やはりDNA的なのをイジったんでしょうかね』
災誤『か、かみじょう……!』
レッサー『聞きましたか上条さん!?ゴリラが言葉喋りましたよ!空○先生以来の快挙じゃないですかーやーだー!』
レッサー『どら、ちょっくら頭開いて中身を拝見っと☆』
上条「あのアホがアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
――とある留置場 檻の中
レッサー「――きっと、来てくれると思っていました……!」 (ニチャアァッ
上条「やめろよそのドロのような笑顔。デスゲームで主人公ハメる側の顔してんぞ」
レッサー「だってしょうがないじゃないですか!呼ばれて来たのに上条さんがどこにいるのか分かりませんし!」
上条「お前がやったのは放送室ジャックとゴリラ人間への殺人未遂だよ。お前ホンッッッッッッッッッッッッッッッッット何なの?俺の社会的地位を下げて楽しいか?」
レッサー「メッチャ楽しいですけど?」
上条「こいつ……!?なんて澄み切った眼で言いやがるんだ……!?」
レッサー「しかし中々やりますねあのゴリラ!ゴリゴリの実を食べた名のあるゴリラとみましたが!」
上条「それゴリラ成分100%じゃねぇかな。飽和状態になったからってゴリラが溢れ出したりしねぇよ」
レッサー「悪○の実シリーズは外見で見分けがつかない(場合が多い)ため、トナカイの人が動物系シカシカの実を食べた可能性も……!」
上条「今よりももっと面白動物になるだろ。超見てぇわそのフォルム。見分けがつかなくなるだろうが」
レッサー「――はい、っていう訳で闇ちゃんねるは留置場から配信しているわけですが!」
上条「なにそれ超楽しそう。過去一番の再生数になるだろうけど、翌週からはBANされるわ。跡形もなくなるわ」
レッサー「あれ、ちゅーか話通ってないんですか?逃げやがりましたねあのオッサン!結構修験者的にも因縁があるテーマなのに!」
上条「サーヴァント・ヨゴレであるお前か喚ばれてきた以上、どうせまたしょーもない話は確定してんだわ。非常に残念なことに」
レッサー「あぁいやお言葉ですが、人類最古なんですわ。今回のご依頼が」
上条「最古……って言ったらメソポタミア文明か?某英雄王さんがイキってた時代」
レッサー「よりも更に古いです。人類が文明を築くよりももっと以前の話」
上条「へー、それはちょっと楽しそう。テーマは何?」
レッサー「――チ×チ×です……ッ!!!」
上条「……」
レッサー「チ☆ン☆チ――」
上条「いや違う違う違う、聞こえなかったんじゃない。聞きたくなかったんだ、そのワードを」
レッサー「お便りに寄りますと、某極東の島国で以前頂いたお土産がアレの形状を模していたらしいんですな。で、久しぶりに発掘したら『よくよく考えたらなんぞこれ?』と」
上条「なんて体験だよ。つーかそんな邪なブツをやりとりする風習あんのが驚きだわ!」
レッサー「なので我々チーム・ヨゴレッサー班が真相に迫るべく結成されました!チ×チ×の謎を追いましょうよ!」
上条「連呼すんや!せめてこう、もっと恥じらいを持てや!人類として恥じ入れ!」
レッサー「くっくっくっく……!前はケモナー&ショタっつーかブリジッ○きゅんの話をして、これ以上っつーかこれより下はねぇんじゃねぇかと思っていましたがありましたね!みんな大好きプーチ×チ×ですよ!」
上条「プーチ×を巻き込むや。いや俺としてはどうだっていいが」
レッサー「えー……じゃあ毎回チ×チ×連呼してると見づらいんで、ここはエリンギ様とお呼びするってことで一つ!」
上条「笑うわー。次スーパーに行ったときエリンギ見たら微妙な気分になるわー」
上条「てか完全にヨゴレだろ?当然の流れでお前が派遣されてたんだろ?」
レッサー「幼女B(※パードウェイ)に語らせようとかちょい迷いましたが、なけなしの良心が働きました!ガッテム・マイハーッ!」
上条「ありがとうレッサーの良心。今世紀に入って初めて仕事したな。そして次のミレニアムまで死して夢見てんだろうが」
レッサー「また逆に妻子持ちのオッサンが男子高校生へ蕩々とエリンギ様を語るのも、はい、なんかこう辛いんで……」
上条「恥だよ。俺は映らないけど、ツッコミが動画としてきちんと残るんだからな」
レッサー「なんでですか!?エリンギ様だってきちんとした文化人類学のジャンルなんですからねっ!?」
(※いや、本当に)
上条「あぁまぁ、じゃあ言うだけ言ってみろや。本当の事だけ言えよ?さっきみたいに有史以前からとかフカすなよ?」
レッサー「いえ、それがマジな話でして。エリンギ様は昔っから呪物に用いられていたらしいんですよ。それも人が文明を持つ以前から」
上条「……嘘だろ?」
レッサー「ですらかマジな話ですってば。具体的にはファルス(性器)像って言いましてね、あー……ドイツのホーレ・フェレスって旧石器時代の遺跡がありましてね」
上条「旧石器時代……何年前?」
レッサー「人類が打製石器やキバやツノを加工して生きていた頃です。ぶっちゃけ類人猿からやや抜け出した程度の文明レベルです」
レッサー「そこの遺跡の年代的には3万5千前以上前だと言われていますね。ただし現在では、ですが」
上条「超古いじゃん」
レッサー「そこら辺の文化をオーリニャック文化と言いまして……多分上条さんでも分かる例えですと、『古代のヴィーナス像』って分かります?」
レッサー「非常にふくよかな女性像が作られた、まぁ正直現代の価値観からすれば病的な肥満としか言いようのない小像を差します」
上条「でっぷり太ったヤツな、メガテ○のイラストで見たことあるわ」
レッサー「それらはかなーり広範囲に渡って出土しているんですが、その中でも最古のものが『ホーレ・フィリスのヴィーナス』という像です」
上条「宗教的な意味は?」
レッサー「残念ですか未解明のままです。ただ墓に副葬品として入っていたり、竈(かまど)の跡から見つかったりしているため、確実に某かの意味はあったようです」
(※副葬品=遺体と一緒に埋葬する品々)
レッサー「んでここでそんなヴィーナス像と一緒に見つかったのがエリンギ様の像、ぶっちゃけファルス像なんですわこれが」
(※実話です)
上条「マジで!?超古いじゃん!」
レッサー「まぁつまり我々人類が文字を持つ以前から、エリンギ様は信仰されていたっぽいんですよね。豊穣のシンボルとして」
上条「……チ×チ×なのに?」
レッサー「だからこそでしょう?だって男女がニャンニャンしないと生命は産まれないわけですからね」
レッサー「よって、今よりも遙かに出産リスクが高い上、人類がまだ霊長でなく外敵が多々あった際、死と同様に生命もまた神聖なものだと崇められていたようです」
レッサー「そうでなければ埋葬するとき一緒に、とはならないですからね」
上条「おぉ……!テーマがアレだからヤベェとは思っていたがちゃんとした所に落ち着いたな!いやー良かった!」
レッサー「何〆に入ってんですか。本番はまだここからですよ!」
上条「え、でも俺聞いた事ないし。神様関係ではいないんだろ?」
レッサー「とある宗教の話です。ある宗教では三柱の神様がシノギを削っておりまして、聖仙たちは『誰が最も優れた神だ?』という論争をしていました」
レッサー「でまぁ話してても仕方がないんで、『よーしそれじゃ一柱一柱、訊ねて行ってみよう!』ということになり、某神の家にまで行ったそうです」
レッサー「しかぁし!そこではなんと某神が奥さんとニャンニャンしているではないですか!」
上条「なんでだよ。アポなしで押しかけた方にも問題あんだろ」
レッサー「が、神も然る者!某神は客が来ているのにニャンニャンしているのを隠そうともしませんしやめる気配もありません!」
上条「あ、ごめん!やっぱ神様の方もどうかしてんな!」
レッサー「聖仙は呆れ果て、某神へ向って『それではお前の象徴はエリンギ様だな!』と言い捨ててその場を後にしたそうです!」
(※っていう逸話が本当にあります。いやネタじゃなくて本当に)
上条「エリンギ様大活躍じゃねぇか。つーかその可哀想な神様って誰よ?」
レッサー「シヴァです」
(※実話です)
上条「はぁ!?シヴァってアレか!?メガテ○で最高レベルの破壊神の!?」
レッサー「ですです。そのシヴァなんですが、こういう逸話を持っているため、彼の象徴は『シヴァ・リンガ』と言いまして。見た目は100%エリンギ様です」
(※いや本当に。現代でも信仰を集めています)
上条「嘘だろ……そんなアホみたいなのシンボルにしてんのかよ!」
レッサー「まぁ……アカデミックな観点からはともかく、あまりこうエリンギ様を前面には出せない文化もありますので。つーか猥褻物だと現代の法律によって取り締まられるからね、場所によっては」
(※まぁ流石にそのものではなく、純粋な円柱形です)
レッサー「ちなみに某学派では『このリンガは性器信仰とは無関係である』と主張されているんですよ。理由は『そんな猥褻物はありえない』的な話なんですが」
上条「俺も実はちょっとそう思わないでもない。だって超有名だぜ?」
レッサー「何故です?」
上条「何故、って何が?」
レッサー「超有名なのとエリンギ様信仰が同居していけない理由ってなんですか?メジャーであるが故にどうして?」
上条「そりゃまぁ……なんでだろうな」
レッサー「つーか私だってエリンギ様の像を出されたら『なんだこいつ』的な反応をするでしょうが、歴史は歴史なんですよね」
レッサー「その当時当時の信仰を、後世の倫理観で裁いてはいけないんです。分かります?」
上条「つまり?」
レッサー「もう一回言いますけど、人生において子を設けたり育てたりするのは大イベントじゃないですか?今よりもずっと医療水準が低く、かつ倫理観もない世界で」
レッサー「そんな世界において豊穣を望み、叶えられるシンボルを持つ――これ、まさに主神としての役割に相応しいのではないかと」
上条「あー……十字教から見れば『何やってんのこれ』だけど、普通に信仰している人達からすれば『いやこっちじゃ普通ですけど?』か」
レッサー「ヒンドゥー教人口は20億近いんで、少なくとも数億人はエリンギ様を信仰している訳ですな!やりましたね!」
(※派閥によります。ヒンドゥーの中じゃ最大宗派がシヴァ派ですが)
上条「ちょっと何言ってるのか分からないかな」
レッサー「んでまぁ、上条さんがお好きなメガテ○ですが、エリンギ様っぽいキャラいましたよねぇ?ご立派な例の方」
上条「あぁまぁ……存在自体がほぼ放送禁止のマーラ様だな。あれ確か魔王だっけか」
レッサー「あの方の原典がブディズム、まぁ仏教ですね」
上条「てかなんなのアイツ?仏教でもあんな変な格好してんの?」
レッサー「んー、まぁそれは是であり否でもあるのですが……ブッダが悟りを啓こうとするのを防ぐため、魔王マーラが邪魔をしたってエピソードがあります」
レッサー「この場合も『魔王』はメガテ○的な魔王を意味するのではなく、『天魔』を差す言葉だというのに注意してくださいな。あとでここテストに出ます」
上条「お前は俺のなんなんだよ。てか天魔?」
レッサー「まず仏教には『六欲天(ろくよくてん)』って世界があるんですよ。あー、元々は『六道輪廻(ろくどうりんね)』って分かります?」
上条「名前だけは何とか……中身は知らない」
レッサー「人類は永遠に生まれ変わりつつ、いつか悟りを拓ければ輪廻の輪から解脱して仏になれますよ、ってのが仏教の奥義です。要は悟りを啓くまではずーっと生まれ変わりを続けなきゃいけません」
レッサー「そのグルグル転生している世界を『地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界』でして。我々が住んでいるという設定は人間界ですな」
上条「地獄も一つの世界なのか?」
レッサー「ですな。生前に悪い事した方はそちらへゴー、そうでなければ天上界へって話なんですが」
上条「ぶっちゃけ天国、だよな?」
レッサー「に、近いですな。神通力を使えたり苦しみがなく長寿を誇る素晴らしい世界です――が、実はここもまたアガリではありません」
レッサー「この天上界でも死にますし、その場合は生前の罪の重さによっては別の世界へ転生させられます」
上条「どういうシステムだよ」
レッサー「しかも天界といっても悪さをする連中はおり、六欲天という六つの天界では欲望に囚われた天魔が住むとされていまして」
レッサー「その中でも最も悪い天魔も住処があり、織田信長は『六欲天の魔王』と自身を称したんですが……」
上条「あぁノッブのあれの元ネタか!『第六・天魔王』だと思ってたけど、『第六天・魔王』が正しいのか!」
レッサー「まぁそこに住む天魔がブッダを邪魔をすると」
レッサー「ちなみに漢字圏で使われている『魔』という言葉はサンスクリット語の『マーラ』の短縮形です。なのでマーラ自体も正しくは『魔羅』なんですな」
上条「いや、あんまこう、そのワードを連呼したくないっていうか」
レッサー「そう言われると私も流石に恥ずかしいのですが。ただ初期仏教では『魔』でありまして、性的なイメージは付随していなかったと。そこは抑えておいてください」
レッサー「話を戻します。魔王マーラはあの手この手でブッダを誘惑します。食べ物であったり、女性に化けて肉欲を煽ったり、肉親に化けてみたり」
レッサー「まぁ結局ブッダは悟りを啓き、マーラは敗北するのです――が、しかし!魔の手はここで潰えた訳ではなかったのです!」
上条「どした急に?なんでテンション上げちゃった?」
レッサー「なんと魔王はブッダだけに留まらず、他の修行僧たちをも誘惑し始めたではないですか!なんと卑怯なニンジャコワイ!」
上条「スレイヤ○さんは放っとけよ。今なんか革命編っぽい事やってっから」
レッサー「それが後世になって、特に日本界隈へ入って来た際、『おのれ修行を妨げるエリンギ様め!』ということでエリンギ様を魔羅と呼ぶようになったんです」
上条「思春期か。そりゃまぁ煩悩捨てようって人達には邪魔だろうけども」
レッサー「――ただ、ですね。これには異説がありまして……『魔王マーラの原型とはなんぞや?』っちゅーことですな」
上条「天魔だっけ?よく分からないけど、魔っぽい人?」
レッサー「あー、ブッダの出身地ってインドじゃないですか?まぁ正しくはその前段階ですけど、つーか実家のシャカ族はきちんと滅びましたが」
上条「そりゃあな。跡取りが出家したらな」
レッサー「ただですなー、そんときにブイブイ言わしてた既存の宗教があるんですわ。だもんでそこの最高神捕まえて『こいつは魔王ですよ!』ってやからしたんじゃねぇか説が」
上条「いや、別に珍しくなくね?闇ちゃんねるでその説聞いたときには驚愕したけど、今じゃ――」
上条「……」
上条「……ちょっと、待て。シヴァさんの話したよな?つーことはつまり……」
レッサー「丁度良い時代に、丁度良い場所に、丁度良いエリンギ様信仰があった訳で……って事ですな」
レッサー「ちなみにシヴァさんも大自在天、という”””天魔の一人”””として仏教に取り込まれています。そして当然その宗派ではシヴァリンガを神体とする所もあります」
(※正確には六欲天に住まう天魔とは別の存在ですが)
上条「待て待て。それっておかしくねぇか?だってブッダさんはマーラに対して『お前修行の邪魔なんだからあっち行けや!』って言ってんだろ?」
レッサー「えぇ、ですから初期仏教と派生した仏教の違いですなぁ。天魔の中には『改心して仏に帰依した』って連中がいるんで、他宗教の取り込みに掛かったんですわ」
上条「おぉなんて生臭い。あぁまぁ対立するよりかはマシか」
レッサー「魔王マーラさんがシヴァと混同されていったのはほぼ確実ですし、シヴァが仏教に取り込まれたのも事実です」
レッサー「ただエリンギ様=魔王マーラという認識は曖昧ですし、主にエリンギ様の異称としてのマーラはほぼ日本限定ですから」
レッサー「しかしながら、その当時あった二大宗教がぶつかるのは自明ですし、その対象として禁欲を是とするブディズムからすれば悪の権化であるシヴァリンガが目の敵にされるのも想像がつきます」
レッサー「補足するのなら魔王マーラが騎乗しているゾウはギリメカラってのがいます。某ゲームでも有名ですな」
上条「物理反射だからな。ほぼ初見殺しなのに、いざ仲魔として使ったらハマ系で即死するっていう」
レッサー「ヒンドゥー教ではガネーシャにアイラーヴェタなど象は聖なる生き物なんですよね。それを大した意味もなく悪役にしているところを見ると、って話です」
レッサー「まぁ、裏取りは確実でないのですが……ブディズムの方の魔王マーラの原型はシヴァでまず確定じゃないですかね」
(※8割ぐらいは)
レッサー「ただシヴァ自体がバラモン・ギリシャ・ゾロアスターなどの神や英雄のミックスですんで、更に古い何かの影響があったのかも、という疑念は拭えません」
(※細かく言えば権威を失う前のヴァルナ信仰)
上条「意外と深い話でビックリしたわ。あ、でもシヴァさん以外で信仰は」
レッサー「されてます。で、ここから民間信仰やローカルな信仰でのエリンギ様へと移行するのですが」
レッサー「えーっと、一番有名な例で言えば『ロード・エルメロイII世の事件○』ってご存じですか?」
上条「別に伏せ字なしでもいいと思うが、まぁ知ってるわ。義妹がドSの」
レッサー「あの作品の『魔眼蒐集列車』編にて『やだこの人卑猥な何か持ってる……!』的な描写があったんですな」
上条「あー、お弟子さんが言ってたっけな。なんだそれって思ったけど」
レッサー「あれ実はエリンギ様なんですよ。邪視防止のための呪物です」
(※マジです)
上条「マジで!?エリンギ様ってそんな効果あんの!?」
レッサー「邪視とは『視線を触媒にする魔術』なんで、一応エリンギ様のような直視が憚れるものが効果があるとされています」
(※前に書いた『ファティマの手』なども含まれます。事情を知らない人が見たらただ怖いだけ)
レッサー「ここら辺は『邪視』編がもしあるのならばそちらで取り扱われるでしょうが、上条さんが思う邪視ってなんでしょうか?」
上条「急に言われてもな。金縛り的な?」
レッサー「それのほぼ最上位がギリシャのメドゥーサですかね。『視線が合っただけ石になる!』ってチート能力です」
上条「チート言うなや。紀元前からだろ」
レッサー「メドゥーサは怖れられているのですが――しかし同時に邪視避けとしても用いられいるんですよね」
上条「なんで?つーかどうやって?」
レッサー「それも神話由来の呪物になります。英雄ペルセウスがメドゥーサの首を切り落しまして、それを所持していざって時に振りかざす的な行為をしていました」
(※ハートレ○さんが生首電池をしていたのは、恐らくそれをモチーフにして術式を組んだと思われます)
レッサー「なので我々民間人も『魔除けにメドゥーサ使えるんじゃね?』と、建築物にメドゥーサの首を刻んでいます」
上条「へー……あ、ガーゴイルとか同じか!怖いのを掘ってみたいな!」
レッサー「その認識で正しいかと。ちなみに私が知ってる中ではトルコの地下貯水池にある石柱、その柱の土台にメドゥーサの首が横や逆さになって押さえつけられていましたかね」
レッサー「また『瞳』自体も魔除けになると言われ、水晶や宝石で眼球状にしたお守りが今も人気ですな」
上条「おぉ……!今日入って最初の真面目な話!」
レッサー「エリンギ様も真面目ですよ!ただフォルムが卑猥なだけで!」
上条「理由としちゃ充分だろ。これ以上ねぇよ」
レッサー「民間信仰では『邪悪なものへ対して、より邪悪なもので遠ざける』という思想がありましてね。メドゥーサ然りエリンギ様然りと」
レッサー「またフランス王アンリ4世を暗殺したフランソワ=ダミアンなんかが有名ですが、彼は八つ裂きの刑っていう、馬を用いた酷い殺され方をしました」
レッサー「彼のご遺体はバラバラにされ、民衆が持ち帰ったり、魔除けとして都市部の周囲に飾られたりっていう」
(※悪人ほど良い魔除けになる)
上条「嘘だろ。何やってんだお前ら」
レッサー「特に魔術関係で死刑になったご遺体は人気だったそうです」
(※これも本当の話。そりゃペスト流行るわという)
上条「冗談のような追い込まれ方してんだろ」
レッサー「で、まぁまぁ日本産エリンギ様の話に戻ります。時代から順に言いますと『石棒』ってのが出土されています」
上条「出土っていうからにはかなり古い?」
レッサー「えぇ、縄文時代の遺跡から度々発掘されていますな。形は1mぐらいの棒から数十cmぐらいのそれっぽい形のやつまで」
上条「ヨーロッパのファルス信仰だっけ?それと同じ?」
レッサー「まず間違いなくそうなんじゃないかと。本邦でも『縄文のヴィーナス』と称される、ふくよかな女神を象った土偶が発掘されていますし、対になるものも当然と」
レッサー「ただ勿論中には否定される方もおりますし、別の意味を持つ呪物だと唱える方もいます。まぁそれはどこでも同じなんですが――さて」
レッサー「ここで上条さんに問題です。ヨーロッパと日本の宗教史の違いってなんでしょうか?軽い気持ちで答えてください」
上条「メインが十字教か仏教の違い、とか?」
レッサー「私もそう思います。ベース自体はケルト、神道って原始・精霊信仰がありました。ここまではどちらも同じですね」
レッサー「しかしこの後に複数国を跨いだ十字教の苛烈な干渉があったヨーロッパへ対し、日本は精々仏教が分派して騒動になった、という違いが」
レッサー「まぁぶっちゃけ十字教圏では過去の宗教の全否定を徹底したのに対し、日本ではある程度なぁなぁで済ませてきました」
(※例外あり、そして日本だけじゃなく融合した国も多”かった”)
上条「言い方」
レッサー「カトリック教会がプロテスタントを、そしてまたプロテスタント教会をカトリックがぶっ壊すっていう無間地獄ですからね」
レッサー「どっちでもない古い宗教だったらお察しください、ですな」
(※同性愛者ですら焼かれる時代)
上条「に、日本ではそんな事無かった、よな?」
レッサー「えぇそれほどは。精々一向一揆が民衆捕まえて斬首して竹に差して飾ったり、蓮如が多くの信徒を唆して大虐殺したりされたりその程度です」
(※その程度です)
レッサー「ともあれヤポンではそんなお国柄の元、石棒ルーツと思われるファルス信仰がかなり発達しました。大きく分けますと『豊穣神』と『道祖神』です」
上条「豊穣神は、まぁ分かるわな。エリンギ様そのまんまだし」
レッサー「他にも性病や子孫繁栄など色々ですな。一番有名なのが神奈川の金山神社、『かなまら様』と言った方が有名です」
上条「俺から見たらふざけてんかな、と思わなくもないが……」
レッサー「あれはあれできちんとした信仰ですからねぇ。他人へ押しつけるのは論外ですが、きちんと活動されている方を批判するのはお門違いです」
レッサー「で、他にも『陰陽石(いんようせき)』というものが全国各地で崇められていました」
上条「陰陽……陰陽師的な?」
レッサー「ではありません。正しくは陰石と陽石と言いまして、それぞれ女性のアレと男性のアレを象った自然石などが信仰の対象になっていました」
上条「エリンギ様だけじゃなくて?」
レッサー「えぇ女性のアレもです。あー、では以後は雌(め)ライオン様と称しましょうか」
上条「お前のネーミングセンスが怖い」
レッサー「これはエリンギ様よりも更に無名なんですが、雌ライオン様も信仰の対象になっています。ただしこちらはエリンギ様ではなく、出産やその行為自体がですが」
レッサー「中でも一番メジャーなのが『胞衣(えな)』信仰です。胞衣ってご存じですか?」
上条「えな……さぁ?単語自体知らない」
レッサー「漢字では『胞衣(ほうい)』と書きまして『えな』と読みます。まぁこれは出産の際に出てくる、赤ちゃんを包む膜や剥がれた胎盤の一部も一緒に排出されるんですな」
レッサー「それを塚に供えて祀ったり、壺に入れて家の出入り口に埋めたりします。かなり原始信仰に近いですな」
上条「そんな話聞いたことない……有名なのか?」
レッサー「ヤポンですと家康の子だったり、水戸光圀や天皇などの胞衣塚が現代まで残っています」
(※京都の孝明天皇の胞衣塚が最も有名)
レッサー「また海の近くなど『E-na』という呼び名の地名も多く、恐らく胞衣を海岸に埋めるという信仰があちこちに残っていたと推測されます」
(※奈良時代には記載あり)
レッサー「ここら辺は興味深いものがあり、魂とかが海の向こうから来ている、って発想だったんでしょうな。なので少しでも近い場所ヘとお返しする的な」
レッサー「……まぁ今では医療廃棄物扱いですからねぇ。廃れて当然っちゃ当然ですが」
上条「ヤバいのか?」
レッサー「どう、でしょうね。胞衣から災いに遭ったって話は皆無で、むしろ慶事として大事に扱われていますから。それほどは、じゃないかと」
レッサー「他には雌岡山の裸石神社と姫石神社ですね。それぞれ夫婦神として信仰されており、ダイレクトにエリンギ様と雌ライオン様の形状をされています」
レッサー「なおここではアワビの貝殻を奉納する習慣が……ッ!」
(※主に女性が参拝。勿論お産が軽くなりますように、という信仰)
上条「発想自体が中二か。ほぼ今と変ってねぇな昔の俺らも!」
レッサー「と、いう風にファルス信仰は男女どっちも根付いていきましたとさ、というお話です。メール頂いた方のは栃木・群馬にまたがって存在する金精神の神社由来のもんですな」
レッサー「なので豊穣やら商売繁盛のシンボルでありまして、数奇ではあるもののおかしなもんではないと思われます。私だったら捨てますが」
上条「否定すんのかよ」
レッサー「まぁ少なくとも仏教の一部だったり神道の一部だったり、ファルス信仰はきちんと残っていると理解して頂ければ。共感するかは別にして、ですが」
レッサー「さて、では『豊穣神』の方は以上としまして、次は『道祖神』の方のエリンギ様ですね」
レッサー「えーとまぁ昔は村や町の外ってのは異界だったんですよ。どんなバケモノや病魔が来るかもしれない、怖ろしい場所です」
レッサー「よって『外の危険なものを持ち込ませない』という思想の元に発達したのが、『道祖神』という神性です。一言で言えば『道と境界の神』です」
上条「前にすこしやったっけかな。お地蔵様とか?」
レッサー「ですです。まぁあれはブディズムですけど、余所から変なものが来ないように見張るという役割を担っています。その一つです」
レッサー「他にも石塔であったり、真言を刻んだ仏塔であったり、はたまた夫婦神が掘られた像であったり、普通に菩薩が掘られたのとかも多いです――が、しかぁし!」
レッサー「そんな道祖神の中に入り込んだのが我らがエリンギ様だったんですよ……ッ!!!」
上条「なぁレッサーさん?エリンギ様って強くね?あっちこっちに顔出してっけど、結構影響力強くね?」
レッサー「それだけアニミズムが強かったってことでしょうなぁ。中にはどっちも兼ねていた、町外れに置かれた石棒形のエリンギ様って結構ありましたし」
レッサー「シモの悩みも余所から来る災いも厄介だったんで、とにかく守るために信仰されていたのも事実です」
レッサー「ですが――上条さんはエリンギ様と雌ライオン様の風習って知りませんでしたよね?」
上条「部分だけは知ってた。『吸血鬼すぐ死○』で出てきたエリンギ様神社はチラッと。あと道の神様のエリンギ様は見たことすらなかったわー」
レッサー「えぇ寂れるんですよね、どのエリンギ様も。なんちゅーか明治へ入って『淫祠邪宗はやめろ!』って通達入りまして」
上条「あぁ……まぁ、そうだよなぁ」
レッサー「廃仏毀釈とは別に『こんなん今の時代にどうなん?』的な風潮になりましてね。壊されたり撤去されたりしたエリンギ様や雌ライオン様が多々ありました」
レッサー「しかし国家が主導して撤去したのではないため、地域差がかなーりあって残っている所は残っています。別に邪魔でなければそのまま放置って話です」
レッサー「崇める人がいなくなれば存在自体も忘れ去られ、いつしか朽ちていく――上条さんのエリンギ様と同じ運命とを辿るわけですな」
上条「やかましいわ。俺はほら、アイドルとしての立場ってもんがだな」
レッサー「アリサさんだったらともかく、上条さんが脱DTしても『やったね上条さん!でも芸人的にはどうかな!』とファン兼ストーカーが大喜びするだけだと」
上条「敵だよあいつらは。だってファン投票の時、『上位に来ない方がオイシイ』って投票見送ったんだから」
レッサー「ともかく古代から現代までのファルス信仰はザッとやりました。かなり大雑把ですし、省いたところがこれでも結構あります」
上条「意外に奥が深いのな。エリンギ様信仰」
レッサー「えぇまぁ、陰陽信仰、要は『男女一対になった神的存在』というのが多いんですよ。夫婦岩だったり夫婦山だったりとか」
レッサー「ここで大切なのは『男女ともに信仰の対象になっていた』んであり、決して男性優位orオンリーではなかったんですがね」
レッサー「特にブディズムでは阿弥陀如来の一説に『女性は仏になれないので、男へ変成させる』ってのがありまして」
上条「なにそれそんな事言ってんの?」
レッサー「『五障』ってやつですな。それが元になって『女性は必ず地獄に堕ちる』的な宗派もそこそこの数ありました」
(※血の池地獄)
レッサー「そこら辺の解釈は恐らく変ってないと思われますので、当代の僧侶がなんと言おうと使ってる教典自体は五障が明記されているってケースもあります」
レッサー「それを考えれば形は異形ですけど、男女ともに神性を得られたエリンギ様と雌ライオン様のファルス信仰の方がまだ”平等”ってのも皮肉な話ですよねぇ」
上条「てゆうかカトリックってそもそも女性はアレなんだよな?聖職者にはなれないっていう」
レッサー「えぇですので、どこかのバラン・コンゴ共和ギロチン宗主国、もといベルギー王国が男女平等ランキングで一位ってのは何の冗談かと思います」
(※カトリックが70%以上。男女平等に社会システムだけをあげ、犯罪率や宗教では評価しない。したら負けるから)
レッサー「まぁ誰も彼も形を変えた差別が大好きだって話はさておきまして、エリンギ様の辿った進化の中には面白い神様がいます」
上条「そろそろエリンギ様っていうのやめね?なんだか他の場所でも使い回しそう気がするんだよな」
レッサー「名前は『ミシャグジ様』。メガテ○でお馴染みの祟り神ですな」
上条「祟ってねぇだろ。アトラ○は何回が潰れってけど、去年ハッカーズの続編出したし」
レッサー「いやぁでも祟り神として信仰されていたのもマジなんですよ?それがゲームの影響で認知度が上がってしまって、一部の人達は困惑したそうで」
上条「てかミシャグジ様って何なの?エリンギ様ヘッドの、確か種族が邪神だったけどなにした神様なんだ?」
レッサー「諏訪大社の祀神だと言われています。御柱祭(おんばしらさい)で有名なアレです」
上条「あぁあのクレイジーな祭りな。『もう危ないから重機使って!人命尊重してあげて!』ってニュースでやるたびに思うわ」
レッサー「長野県諏訪地方を中心に、石棒をミシャグジ様に見立てる信仰が結構大規模にあった、らしいんですよ」
レッサー「曰く、石の神であったり、蛇神であったり、風の神であったり水の神であったり、あまりにも数が多すぎて正体不明なんですな」
上条「有名なのにか?」
レッサー「研究者がやたら多い上に自説が正しいとケンカばっかりしているので……まぁ蛇神なのかなぁ、と私は思いますが」
上条「蛇の神様」
レッサー「はい。蛇時代は脱皮するんで死と再生の象徴であり、かつ水辺にも生息するため水神も兼ねています」
レッサー「加えてネズミも捕りますから農耕神や蚕神としてもない話ではない、らしいんですよ」
レッサー「またその形状から石棒として崇められ、かつ多産なのでエリンギ様としても崇められると」
上条「なんかフワッとしてないか?」
レッサー「してますねぇ。別の論ではミシャグジ様、ミシャグジ様と称する神、その他の雑多な神など、最低でも三つぐらいの神的存在が習合したって説があります」
上条「こう言っちゃ失礼かもだが……地元の人に聞くのってダメなのかな?あなたの所の神様はどんな人と?」
レッサー「そりゃ聞いてますよ?諏訪大社は古事記にも詳しく記載されている由緒正しい神社ですし、主神はタケミナカタですな」
上条「それもメガテ○で知ってる。両腕のない神様――」
レッサー「まるで蛇のようですな?」
(※という説)
上条「……あぁ!そういう!」
レッサー「なんちゅーかまぁこのタケミナカタもまた複雑な神でして……国津神の一柱で国譲りに反対したものの建御雷との戦いで負け、諏訪の地にまで投げ飛ばされ、以降そこに住んだ――」
レッサー「というのがまぁ古事記に書かれています。これを聞いてどう思われますか?」
上条「とばっちりだよなぁ、とか」
レッサー「えぇまぁそれはそうなんでしょうが。では逆に、タケミナカタの飛ばされた先に先住民族がいたらどうです?」
上条「それって……結局タケミナカタとやってること同じじゃね?支配する側とされる側って構図が同じで」
レッサー「まさにそれだったっぽいんですよ。まず諏訪郡には洩矢(もれや)神を崇める守矢(もりや)氏が支配していました」
レッサー「そこに中央との権力争いに敗れて流れてきた諏訪氏がやってきて侵略し」
レッサー「結果としては守矢氏が信仰していた神様が廃れ、タケミナカタが諏訪に座するようなった。さて――」
レッサー「――では『その守矢氏が崇めていた土着の神とはなんぞや?』、ですな」
上条「あー……それで祟り神かー。恨んでんのかなぁ」
レッサー「あるなしで言えばそうだと思います。しかしながらこの諏訪氏と守矢氏、なんだかんだで今日まで共存・同一化されているんで、そこまでの遺恨はないかと」
上条「でもそうしたらその謎の神様はどこ行ったんだ?」
レッサー「その正体がミシャグジ様では、ですな。存在自体を曖昧にしてたまーに影がチラつくような感じで祀ろってる感じで」
レッサー「なお余談ですが、東○だと神奈○様が諏訪氏側でケロちゃ○さんが守矢氏側って設定ですな!」
(※非公式で早○さんがケロちゃ○さんの子孫説。多分正解)
上条「その説明で分かるか?『あぁやっぱり幼女は祟るんだ……』とか思わなくもねぇが」
レッサー「とまぁ以上がエリンギ様と雌ライオン様の過去と変遷と現在ですな。まぁ最低限度をやや下回るレベルです」
上条「マジかよ。これだけでも最低限じゃないって?」
レッサー「これ以上踏み込むと猪八戒にまで話が絡みます。あぁケルヌンノスも含めた有角神全般とも言えますかね」
上条「マジかよ」
レッサー「ただそれをしてしまうとHAMADURAモテモテセミナー後編がまた別の日に……!」
(※字数の関係上)
上条「いいよ別に。どうせアレあとはセミナーに出てアリサがツッコむだけだから」
レッサー「あれ私も出ているんですが……あぁまぁでは最低限度としまして、ある時期を境にエリンギ様は姿を消したんですな」
上条「それは十字教の影響?」
レッサー「実はもう少し前にです。だってギリシャ神話やケルト、ローマも含めてエリンギ様の文化財なんて見たことないでしょう?」
上条「それ以外でもねぇよ。つーかここまでエリンギ様が大活躍していたのすら知らんわ」
レッサー「まぁ普通は教えませんしねぇ……ですが、エリンギ様も雌ライオン様も姿を変えて残存してたんですな」
上条「へー」
レッサー「雌ライオン様は大地母神に統合されました。古代のグロテスクな姿から、世界と生命を産んだ偉大な女神へと転じたと」
レッサー「まぁこれもある意味発明みたいなものですな。人類が感じていた概念へ対し、人格と神格を与えて神格化したと。魔術的には正しい行為です」
上条「それって珍しいのか?」
レッサー「全世界どこの国でもやっています。例えばそうですな、あーテュポーンってあるんですよ、女神ヘラが産んだ台風の神格化に成功したわけです」
レッサー「同じように太陽の神格化、月の神格化、星の神格化、風の神格化、暦の神格化――と、様々なものを崇めていきました。もしくは畏れたのかもですが」
レッサー「よってエリンギ様がファルス象から離された一方、次にたどり着いたのが『ツノ』だったんですな」
上条「ツノって……ケルヌンノスのときに」
レッサー「鉱物や鉱床、鍛冶や製鉄のモチーフとして使われてますよね、って話をしました。私がいたのかは忘れましたが」
レッサー「なんつーかまぁエリンギ様を堂々と描写するのは宜しくないとでも考えたのか、はたまた別の考えがあったのかは分かりませんが」
レッサー「ここで大切なのは霊長としての萌芽が出始めてきたのですな。『我らは獣に非ず人である』と」
レッサー「故に神は人の姿をし、優れた振る舞いをして一線を画す。獣とは違っててるいと」
レッサー「ですが処々の悩み――豊穣や実りに多産、それらの祝福や権能は欲しい、と。何とも矛盾していますが、人類なんてそんなもんです」
上条「いやでもギリシャやローマって侵略ばっかだったような……」
レッサー「そこはそれ『王権神授説』っていう錦の旗が。凄いですよね!あれ発明したヤツには誉めてあげたいですよ!」
上条「多分お前みたいな人だと思う」
レッサー「んでまぁまぁまぁまぁ、そんな訳で人が造り出したのが『半神半獣』、もしくは獣性を孕んだ神的存在ですな」
レッサー「人よりも上でかつ獣に近い。よって豊穣の印を持ちエリンギ様の代役に相応しい神を発明したのです」
レッサー「しかし彼らは人とは違い、獣性を宿した存在であり、致命的に人とは違う。そのシンボルとして描かれたのが”””ツノ”””です」
レッサー「これ以降有角神は獣に近く、故に友情の象徴であると入れ替わりました。まぁエリンギ様がツノへと転化したと言えなくもないです?」
上条「信仰の対象がエリンギ様そのものじゃなく、エリンギ様を持った存在へ変った、って理解であってるか?」
レッサー「ですな。ただしその神様は不可分でありますが」
上条「でもツノってツノだよな?ホーンっていうかアントラーっていうかさ」
レッサー「発音はどうかと思いますが、まぁツノはツノですな」
上条「それと鍛冶ってどう結びつくんだ?まさか動物が鉄叩いたりはしてないだろ?」
レッサー「え、だからそれ最初に言ったじゃないですか?」
上条「何をだよ」
レッサー「最初期のエリンギ様は墓か竈の側で見つかったんですよ」
上条「あー……だから?」
レッサー「つまり”””火の神様も兼ねていた”””ってだけです。それこそ有史以前の段階で」
上条「はい?」
レッサー「はい?」
上条「待て待て待て待て、ますせ整理しようぜ?最初期の、つーか石器時代のエリンギ様は竈とか、火の側にもあったっつーか埋まってた?」
レッサー「ですな」
上条「それは分かったし事実なんだろうが、その話と製鉄なりがどう結びつく?」
レッサー「これもまたイメージの話でしてね。『なんでエリンギ様が竈で?』というには諸説ありまして」
レッサー「中には『熱で大きくなったり小さくなったりするから』なんかが有力でしょうが」
(※いや本当に)
上条「だからシモかよ。他にもっとこう、説明のしようってもんがあんだろ」
レッサー「まぁその頃の人類なんて動物と大差無いんで……でまぁ解釈はさておき、その頃にはニカワ使ってたんじゃねぇかと」
上条「ニカワ?」
レッサ−「動物のパーツを煮込んで煮込んで煮込んで抽出するゼラチンの一種です。血止めの薬や革同士を接着する接着剤として使われていたそうで」
レッサー「よって初期人類の思考には『鍛冶全般=エリンギ様』というイメージが刻み込まれていたんじゃねぇかと」
上条「鍛冶と動物煮込むのって……あぁまぁどっちも火の側の仕事か。革製品も鍛冶のジャンルっちゃジャンルだしな」
レッサー「また有名なツノとしましては金属製のツノが発掘されているんですわ。作成時期は青銅器時代の角笛が」
上条「青銅器っていったら製鉄始まった直後からかよ!?しかも角笛って!」
レッサー「戦争に使ったと思われます。動物の角よりも使いやすく長持ちする、といいますか実際に残っていますからね」
上条「実用品じゃねぇか。あぁまぁサイレンが無い時代だから」
レッサー「他にもデンマークで黄金のツノが発掘されています。こちらは5世紀ぐらいですが、少なくとも黄金で作る程度には文明があり、価値観というものもあった訳ですな」
レッサー「そのような経緯があり恐らくツノもまた製鉄のシンボルさされていた時期があったのでしょうが……」
レッサー「やはりどこかで失伝するんですな。当時の人間達にとっては当り前だったのが、ストンと消える。そして文化が隔絶する」
レッサー「後に残されたのが謎の神々だったり悪魔だったり。文化の残り香、と言っては不謹慎でしょうが」
レッサー「エリンギ様や雌ライオン様などもまたそうした類でしょうな。まだ残っている方ですが」
上条「価値観も変ってるからなぁ。俺だってどっか旅行行ってだ?『観光協会で聞いたパワースポット行ってみよう!』ってなって、ついたその先にエリンギ様がいたら回れ右して帰るわ」
レッサー「現代的な価値観だったらそうなるのもおかしくはないですな。もしくはどっかのフェミニスト団体へ通報が入って、社会的な吊し上げに掛かる可能性すらあります」
レッサー「言葉狩りならぬ異端狩りですな。邪悪な容貌だから排除する、不健全だから遠ざけると。クルセイドから一歩も前進していません」
レッサー「ただそれも以前よりは多少マシになったようで、ゲイの方々がエリンギ様信仰に多少噛むようになってきました。ぶっちゃけ寄進してくれるようになりました」
上条「またエライ繋がりだな。どっから出てきたその人ら」
レッサー「彼ら彼女らもまたエリンギ様と雌ライオン様で悩んでいる人達なので、救いを求めているのかもしれません」
レッサー「ともあれ人が多様性を持つように、神や悪魔もまた多面性を持つんですな。指さしてバカにするのは論外です」
レッサー「ただ現代の価値観では当り前ですが、性的な嫌悪感を催したり、他人を不快にさせるような言動は訴訟の対象となりうるのでご注意を」
レッサー「『こういう信仰がありましたよ!』と、学術的な一面を掲げて他人へ強制したりするのは、普通にハラスメントです」
上条「てかエリンギ様関係で絶対に悪ふざけしてる奴らも混ざってるよな?」
レッサー「今の時代でも各種性病に前立腺癌など、神頼みしたい方は潜在的に結構おられると思いますがねぇ」
レッサー「ともあれ今回の闇ちゃんねるは以上となります!留置場からお届けしましたが、次は裁判所ですな!」
上条「一人で行ってこいよ。俺は傍聴席からプラカード持って『やったねレッサーさんこれはこれでオイシイね☆』って応援してやっから」
レッサー「なおこれは余談になりますが――今回の話、『恥ずかしがるライナ○さんに解説させる』という邪悪なプランがありました……ッ!」
上条「喜ぶんじゃねぇかな。だってあいつHENTAIだもの。ボスの家庭環境悪くしたらあぁなるだろ」
レッサー「逆に考えてください!我のバードウェイさんはロ×だから周囲も離反しなかった、と……ッ!!!」
上条「解釈の違いかな。『育ちすぎたからアウトー』とか、魔術師ですら辿り着けないペ×の極地だろ
-終-
(※一切盛っていません)
――
レッサー「『――違う!クラリネットはこう吹くんだよ!』」 ニチャアァッ
上条「お前そのネットニュースの見出しから入ってくんのやめろや。世の中には想像を絶するHENTAIが居るなって感心するんだよ」
レッサー「くっくっくっく……!エリンギ様で一喜一憂していた先週に引き続き、ぶっちゃけ補足事項と訂正があったんでまさかの二回目と相成りましたよ……!」
上条「お前もう帰れよ。俺の知らないどっか遠いところでエリンギ様と雌(め)ライオン様を信仰して静かに暮らせよ」
レッサー「てゆうか『ロード・エルメロ○の資料あります?アニメ版の設定資料集でもあれば』と軽い気持ちで上司に打診したら、翌週特典ドラマCD付きの箱が来ましたよっと……!」
(※観賞用)
上条「ガチ勢じゃねぇか。むしろニワカ知識で語った分を恥じろ」
レッサー「いや流石に放送コード引っかかったようで、てかまぁ訂正の方からしたいと思いますが、『ロード・エルメロイII世の事件○』、略して『ロII』、もっと略せば『ロ×』の話なんですが」
上条「そんな三段用法ってあるか?辛うじて二番目はまぁ分からなくもないが」
レッサー「まさかアニメ版オリジナル展開で義妹とヤラナイカする場面があるとは……!」
(※未遂)
上条「弱ってんだよ。弱ってる相手に仕掛けたらその場で水銀みまれにされるわ」
レッサー「まぁともかく訂正から入ります。同作品の某戦闘シーンで『邪視(邪眼)を持つ相手を一瞬だけ無力化させるため、エリンギ様の呪物を投げつける』って行為があるんですな」
上条「言ってたな。もっとこう、他に何か無かったのかと思わなくもねぇが」
レッサー「原作小説ではエリンギ様のファルス像だったんですけど、アニメ版では描写が許されず別のものへ差し替えられてた事実が判明しました!」
上条「そりゃそうだろ。だって俺がエリンギ様の呪物見たらまずそいつの正気を疑うもの」
レッサー「まぁ詳しくは円盤買って確かめて頂きたいところですが。未見の方にご説明いたしますと、差し替え後もどう見ても対面座×のキーホルダーです本当にありがとうございました」
上条「エリンギ様よりある意味酷いわ。レベル的には上がってるだろそれ」
レッサー「あぁいえいえ、そこは決して原作がアレという訳ではなく、あの座像はチベット仏教の『ヤブユム』ですな。もしく『立川流(仮)』と言った方がお馴染みかもですが」
上条「すまんが全くお馴染みじゃねぇよ。つーかあの卑猥な像ってよりにもよって仏教由来なのか!?」
レッサー「マジです。別名『歓喜仏(かんぎぶつ)』と言いまして、普通に信仰の対象になっています――が、同時にカルト系の結社の本尊としても多々使われていますな」
上条「てゆうか仏教だろ?エ×いことダメって宗教でなんであんなハレンチ()な本尊が出来上がるんだよ!?」
レッサー「由来といたしましてはヨーガと言われていますね。よくあの組体操みたいなヨーガが動画サイトとかに上がってるのあるじゃないですか?その中の一つ」
上条「確かに変なポーズ多かったけど……『フュージョ○!』とか言いそうなの」
レッサー「勿論今では『歓喜仏は和合(わごう)の精神を体現しているんです』が公式見解になっています。そりゃまぁ×面座位の仏様なんか出せませんからね」
レッサー「またこの歓喜仏のルーツとされていますのは、えーとシヴァ神でやりましたよね?」
上条「お客さんが訊ねてきたにも関わらず、ハッスルしてて史上最低のシンボルを貰った邪神な」
レッサー「その際、ハッスルしていた体位がこれだそうで」
(※マシです)
上条「もうやめてあげて!?俺の中でのシヴァ神がストップ安になりそう!次からゲームでも作りにくくなっちゃうから!」
(※インドのゼウスみたいなもんですし)
レッサー「私もどうかと思わないでもないんですが……ちなみに上条さんはこの歓喜仏が日本に入って来たのを一回やってます。闇ちゃんねるでですが」
上条「かんぎ……もしかして男女が抱き合うゾウヘッドの?」
レッサー「ですな。所謂『歓喜天(かんぎてん)』と称される、ガネーシャが性愛の神として仏教へ取り入れられた姿とも言われています」
(※詳しくは『ケルヌンノス追憶編』で)
上条「つーか変な所で変な風に繋がるのな。遠いインドで生まれたHENTAIの像が日本にまで……!」
レッサー「えーとまぁ……エリンギ様特集なんでぶっちゃけ言っちまいますが、ヤポンにも『立川流』という仏教がありまして、その本尊に歓喜仏が使われていた、って証言もあります」
上条「落語しか知らんわ。立川流?」
レッサー「曰く、『荼枳尼天(だきにてん)を崇め、髑髏(どくろ)を本尊とし、男女の絶え間ないチョメチョメにより悟りを啓く!』……だそうで」
上条「ただのエ×人だよ。つーか引くわドクロってなんだよ!?あと確かダーキニーって悪魔だろ!?」
レッサー「それもまたインド由来でカーリーの化身、もしくは眷族ですなぁ。人喰いの鬼です」
レッサー「ちなみにこれは文献にも明記されているのですが……実在するかは微妙説が近年に入って強くなってきました」
上条「なんで?昔の本に書いてあったんだろ?」
レッサー「そうなんですが、立川流は南北朝の時代に南朝側についてそのまま滅んでいたり、江戸になってからは正式に禁書になってますんで」
レッサー「まぁ?勝利した側の視点で書かれたものしか参考文献がないため、立川流そのものが権力闘争に負けたとばっちりだって説もあります」
上条「悟りからは一番遠いところにあるそうだが……」
レッサー「一応擁護しておきますと、立川流(仮称)自体は男女共に悟りを啓けますし、かつ僧籍に当る役職に女性でもなれますので、ある意味進歩的っちゃ進歩的でした」
レッサー「また当時の性に関して、特に江戸まではかなーり大らかだったため、どこまで後世の視点で書かれたのかを留意する必要もあります」
(※当時は女性というだけで地獄落ちが確定していた、という宗派が大半だった)
レッサー「なお当時の価値観としましては『猪熊事件(いのくまじけん)』って、まぁ事件っていいますか騒動が起きましてね。大体17世紀の頭ぐらい」
レッサー「よりにもよって宮中で公家が不義密通どころか乱交やってたらしく、帝ブチキレ、関係者一同死罪の一歩手前にまで行った事件です」
(※しかし当時の公家の法では死罪にできなかったため、「まぁまぁまぁまぁ」と止められるのを前提に仰った説あり。つまり「そんだけ怒ってんだよこっちは」との意思表示)
上条「意外と肉食系か公家。イメージ変るわ」
レッサー「裏を返せばその当時のトップ及び周囲のモラルはその程度にはあった、ということですな。あくまでも周辺はですが」
レッサー「――さて、訂正は以上としまして以下は補足事項です。あー、まぁ説明の仕方が悪かったので、改めてですが」
レッサー「まぁぶっちゃけ『エリンギ様が派生していて混沌としている』って話なんですが、それも仕方がないんですよ。実際に混沌としてますから」
上条「カマドの神だったり豊穣の神だったり、日本に来たらミシャグジ様になったり忙しいのな」
レッサー「ですな。そこら辺をもっとザックリお話ししたいと思います――」
レッサー「――で、結論から言いますと『混乱して当り前』なんですよ。だって研究者ですら解明されてないor諸説ありなんですから」
上条「投げんなや!?面倒臭いからってお前!?」
レッサー「いやいやマジな話です。えーっと例えばですね、こちらのホワイトボードをご覧ください」
○トール神の持つ属性(権能)
【雷神】
【戦神】
【鍛冶神】
【農耕神】
【豊穣神】
【全能神】
【道行神】
上条「上二つぐらいは『あぁ』だが、そこから下は知らない」
レッサー「RPGでパッシブスキルに近いですな。レベルが上がれば自動的に様々な属性を付加されていく感じで」
上条「神様はレベルねぇよ。メガテ○か」
レッサー「レベルに近しいモノはあるんですな。それは『多面化と習合』です」
上条「手広くやって失敗する企業じゃねぇんだから」
レッサー「ダメ企業と一緒にされるのは心外ですが……まずは初期トール神の原型はある部族で崇められていた神だという説があります」
レッサー「その部族は外敵と戦い、時には略奪にも勤しんでいたので雷のように侵略し、戦いにも強いってことで雷神・戦神として崇められてきました」
(※典型的なヴァイキングの生活様式です)
上条「ヴァイキング怖い。いやまぁ当時の価値観としちゃやったもん勝ちなんだろうが!」
レッサー「でまぁ蛮族が使う武器、青銅器なり鉄器なりが重視されるようになってきました。武器の強さはそのまま興亡に直結しますからね」
上条「そんなに違うのか?」
レッサー「あくまでも私が読んだ本の中では、青銅器の剣は鉄剣と打ち合うと10合程度で折れるそうです」
上条「だったら段違いだな」
レッサー「ここである神官が言います――『トール神は鍛冶をも司る!だって鎚(つち)持ってるじゃないか!』と」
(※金属を鍛える的な)
上条「雑か」
レッサー「いやマジな話ですよ?初期トール神は時代からするとオノか剣なんでしょうが、ここで鎚を装備した姿になります」
レッサー「てかここら辺は、ヘラクレスやベオウルフなんかそうでしょうが、『複数の武器を使いこなす英雄』って出てきますよね?それと同じで」
レッサー「信仰している間に神格へ求められている役割が変ったり、また他の英雄と統合されたりしている名残、みたいなもんです」
上条「アーサー王がスッゲー聖剣持ってんのに槍使ったりすんのも?」
レッサー「他の神話と習合したり、影響を受けたりですな。実在して数種類の霊装を使い分けていた可能性も否定はしませんけども」
レッサー「そしてまたある程度時代が進むと、狩猟&略奪だけじゃ生きられなくなってくるんですよね」
上条「なんで?」
レッサー「単純にコミュニティの人口が増えたからです。略奪メインであれば弱い人間は命を落し、適度に人数調整はされるでしょうが、それがなくなると」
レッサー「こうなってくると完全に定住して農耕を営む生活スタイルへと移行し、ここで立場がなくなるのはトール神です」
上条「あー……戦闘と鍛冶の神様」
レッサー「なので信仰している人はこう考えます――『トール神は鎚を持っているから脱穀をも司っているんだ!』と」
上条「雑か」
レッサー「そしてまたこうをも――『トール神は雷神、つまり天候を操って雨をもたらしてくれる豊穣の神なんだ!』と」
上条「だから雑だわ!?いいのかそんなんで!?」
レッサー「なおここら辺の名残から、『赤ちゃんの枕元に斧か鎚を置いて魔除けにする』って習慣もありまして――」
レッサー「これが時代が進むと『安全と子宝の神』って属性も付加されます」
上条「あー……なんかありそうな話だよな」
レッサー「んでまたトール神信仰が最盛期になりますと、『やっぱ俺ら最高!ならトール神は全能神だ!』って言われるように」
上条「まぁ、うん。狩猟民族から農耕民族になればまぁ……アガリっちゃアガリだし」
レッサー「が、順調に見えたのもここまでです。ある日突然異民族なり敵対する部族なりに戦争を仕掛けられます。もしかしたら仕掛けた側かもしれませんが」
レッサー「結果としてトール神崇拝一族は負けます。この段階でトール神はもう全能神としての立場を失うんですが」
上条「トールさんに謝れよ。散々助けてもらってきただろ」
レッサー「しかしながら占領政策と言いますか、もしくは戦いの健闘を讃えるためか、トール神も侵略者の神話に加わります」
レッサー「主神オーディンができないような豪放磊落なエピソードを付け加えられ、他の神話や民話と統合されつつ」
レッサー「新しいトールは巨人に盗まれた神具を取り戻すために旅をしたという話が加わり、以後『道行神』としても崇められるようになります」
レッサー「そしてできたのが現代に語り継がれているトール神の属性と権能と神格。やや単純だが気が佳くて強いって英雄神ですな」
上条「スタート地点からゴールまで一体何百年掛かったんだろう……」
レッサー「あくまでも『っていう説がある』んであって、これが絶対ではないですからね?あくまでもおおよその流れと思ってください」
(※順番や前後はかなりデタラメ。そして検証する資料もエッダと周辺地域の神話しかなく、検証が極めて困難)
レッサー「ただ少なくとも絶対なのは、神や悪魔などの神的存在は必要によって属性を付加されたり、統合されて他の属性を持つという、ある意味悪魔合体を繰り返してきました」
上条「まさかのメガテ○っぽい世界観は実話だった説……!」
レッサー「――と、このような属性の統合や習合が起きた結果、神や悪魔は多面化していきます」
レッサー「シヴァなんかほぼ全ての属性、宗派によっては維持神ブラフマーと創造神ヴィシュヌですら彼の化身であると謳っています」
(※そして勿論その逆も)
上条「ベルゼブブなんか酷いんだっけ?」
レッサー「超長くなります。あれはあれで『ベル』の系譜と言いますか、ハエ悪魔から英雄神まで長編一本作れるぐらいには」
上条「てかずっと疑問に思ってたんだが、なんぼ悪魔化されたとはいえハエの神様って本当にいるのか?」
レッサー「あるなしで言えばある方ですな」
上条「マジで!?何をどうやったらそんなもん崇める気になんの?」
レッサー「エジプトだとハエは勇気や勇敢のシンボルなんですな。何度追い払ってもまとわりついてくるので」
上条「あーなんか顔に来るよな」
レッサー「よって今でもお土産物屋さんでハエのレリーフが売っています。信仰というより縁起物扱いでしょうか。日本の郷土玩具的な」
上条「本当に場所が変ればだよなぁ」
レッサー「さて――前置きが超長くなってしまいましたが、ここからが本題です。みんな大好きエリンギ様と雌ライオン様ですな」
上条「発想が小学生か」
レッサー「原始信仰でエリンギ様と雌ライオン様が主力な崇拝対象だったのは絶対なんですよね。広範囲から出土された歴史的な呪物が証明しています」
レッサー「まぁ、スタート地点がそこだと思ってくださいな。所謂アグモ○です」
上条「デジモ○に例えるんじゃない!今まで頑張ってそれっぽい話してきたのに台無しだろうが!」
レッサー「てか語ってきてなんですけど、デジモ○に例えた方が分かりやすかったかもしれませんね!だって進化先が多々あるんですから!」
上条「あの世界も実は壮大な神話世界と言えなくもないっちゃないが」
レッサー「まぁなんて言いますか、人類はまず太陽や星、月など言葉を用いるようになりました。そしてそこから信仰が生まれます」
レッサー「その最も最初期に安産や豊穣、子孫繁栄を願ってエリンギ様と雌ライオン様の像が造られました。石器で武装した時代ですな」
レッサー「それから恒常的な火や青銅器などを利用できるようになり、鍛冶や火という概念が加わり、それに応じた神格が誕生します」
レッサー「そうしている間に多少生活が豊かになるとこう考える訳です――『我々はどこから来てどこへ行んだろう?』と」
上条「なんかそれっぽくて格好いい……!」
レッサー「宗教の変遷自体がグレイトジャーニーと言って差し支えないですからね」
レッサー「ここで国産み神話や終末神話が作成され、人類は『世界』というものを認識できるようになります――が、ここでファルス信仰も形を変えていきます」
レッサー「ともあれ長くなるため後回しにしますが、雌ライオン様から説明しますね。こっちはかなり早々と巨人になります」
上条「巨人?」
レッサー「えぇ巨人です。原初の巨人と言いまして、創世神話の一番先には巨人がおり、彼らを殺したり産んだりして世界がまず創られるんですな」
レッサー「ギリシャのガイアにシュメールのイナンナなど。旧い女神へと雌ライオン様は統合されていきました」
上条「それはその、そのまんまの姿じゃなくって意味で?」
レッサー「なんといっても主さんのシンボルですからねぇ。体裁的にも女神の方がいいでしょうし、なんといっても名を与えて神格を与えられた方が人類にとっても分かりやすい」
○雌ライオン様→巨人→女神(地母神)
レッサー「個人的にも謎のファルス像を崇めるよりは、オリンポスのアルテミス像へ祈った方が霊験あらたかな気もしますしねぇ」
上条「あぁ、まぁな。それはな」
レッサー「まぁ女性の方はそれで済んだとして、厄介なのはエリンギ様の方です。まずこっちは蛇神や龍神に統合されるケースが多いですな」
上条「またスゲー場所に飛ぶのな!お前嘘吐いてないだろうなコラ?」
レッサー「いや、ですから今とは価値観が違うんですよ。生と死はもっと身近でしたし、それに伴う信仰もまた然り」
レッサー「そして人類の初期といえば武力の多寡で一族郎党皆殺しになるのがデフォでしたんで。子を産み兵なり農なりで生産力を上げなきゃと必死でしたから、文字通り死にます」
上条「地獄のシムシテ○か」
レッサー「どっかって言いますと『信長の野○・ベリーハード版(皆殺しあり)版』かと。まぁこれも生活が楽になってくると、話は変ってくるんですが」
レッサー「話を戻しますが、蛇神は死と再生のシンボルとして古代から崇められていました。脱皮するという生態を見て、『一度死んでもまた生まれ変わる』そうで」
レッサー「また見た目がエリンギ様に酷似しているため、『豊穣の象徴』として統合されていきます――が、しかし!」
レッサー「同時にまた蛇は地母神やその使いであるとも見なされています。要は男女どっちも蛇神属性が入ってんですよねぇ」
上条「ヨルムンガンドだっけ?世界を被っているデッカイ蛇やウロボロス」
レッサー「竜も究極的には蛇の一種と言いますか、蛇をより神性に近づけた存在が竜であるとも言えますしー?」
レッサー「ですがエリンギ様の進化先はそれだけではありません!メタルグレイモ○だけではなくウォーグレイモ○にだってなれるのです!」
上条「例えが悪い。ちょいちょいネタを挟むな」
レッサー「次に統合されたのが『鍛冶と農耕』ですな。鉄が膨張したり鍛鉄する際に叩いたりするのがアレっぽいと思われたのか」
レッサー「他にも『鎚』などの農耕機具は命を育て育む……というかまぁ、農業自体が『種を蒔く』行為ですので、エリンギ様もまた属性が雑に加わっていったのです」
上条「雑にとか言うなや」
レッサー「またここで統合された『蛇』属性が干渉しまして、えぇと蛇って穀物を狙うネズミを捕りますでしょ?なのでそっちの意味でも加護を与えると信仰されました」
上条「習合された側からまた習合されっちまうのか……!」
レッサー「えぇ、これが非常にカオスになってる原因ですな。悪魔合体の元素材両方の性質を受け継ぐもんで、どっちからも引っ張られるっていうね」
レッサー「んでこの後に出てくるのが『有角神』ですな。所謂『ツノ』を旗頭とする象徴群」
レッサー「これは単純にツノ自体が獣性の表れ、つまり多産や安全のシンボルである信仰です。処女神アルテミスなんかの分野です」
上条「はい、質問です!アルテミスって確か……『エッチなんかしないもん!』って女神じゃなかったんですか!」
レッサー「言い方が気持ち悪いですが、これもまた習合の影響かと思われます」
レッサー「元々アルテミスはアマゾーンなどの狩猟系民族に崇められていた神だと思われますが、後にギリシャ神話に編入、つーか統合されます」
レッサー「この際、『獣の神』という側面が強調され、『獣……だったら安産や豊穣も兼ねるんじゃね?』となりました」
上条「怖ろしくザルいです先生」
レッサー「また複数の神格が統合された説もありますんで、まぁお好きなのを選んでください!私は知りません!」
(※狩猟神・処女神・豊穣神、この三つの神が統合された説あり。多分これが正解)
レッサー「で、まぁ獣系の神様は全般的に獣性をどこかへ残すんですな。例えばウロコがあったり羽があったりとか」
レッサー「その中で多いのが『ツノ』でありまして、やはり本質的には獣ですんで多産だったり安産だったりって特徴が有り――」
(※多産はともかくそんなに安産でもないんですが)
レッサー「――こうして『ツノを持った獣性神』がエリンギ様とまた習合するに至ったのですな……ッ!!!」
○エリンギ様
→蛇神→龍神(竜)
→鍛冶神
→農耕神(豊穣)
→有角神
上条「すいません、レッサーちゃんさん。カオス過ぎてもう何が何だか分からないです」
レッサー「いやまぁ『そういうもん』だと思ってください。属性が習合してしっちゃかめっちゃかになっていますし」
レッサー「この後すぐにキリスト教が席巻して旧い信仰がポロックソにされます」
上条「あー……エリンギ様なんて邪神の象徴そのまんまだからなぁ」
レッサー「決してユダヤ教もアレな感じでしたけど、キリスト教もまたクッソ排他的なやり方しましてね」
レッサー「ローマ帝国の方針としては習合政策取っていたんですよ。支配地域の神を組み込んだり、まぁギリシャに倣ってでしょうが」
レッサー「そもそも『聖書の蛇』は原罪を意味するため、キリスト教の中でも大罪中の大罪として扱われますからね」
レッサー「今まではそれなりに、一応ながらもそれなりには他民族や他宗教との住み分けをしてきたのに。裏返ったって感じで狩り出すようになりました」
レッサー「すると今度は習合を繰り返していたのが仇になります。『あの神も蛇!あの神も蛇!全て悪魔だ!』と激しい狩られ方をします」
レッサー「神殿の焼き討ちは日常茶飯事、異教の信徒に至っては言うに及ばす――まぁそれでも深淵を覗きたい方は”ヒュパティアの悲劇”でググってみてください」
レッサー「『女性を裸に剥いた上、カキの貝殻で彼女の肉を骨から削ぎ落として処刑』という冗談のような殺し方をしています」
(※実話です)
上条「うん、やっぱりお前らって文明人名乗る資格なくね?スーツ来た蛮族って名乗れよ」
レッサー「なおこの虐殺を主導したキュリロスは聖人認定されており、2023年3月12日時点(今日)では認定は解除されていませんし」
レッサー「同宗教の分派でもあるルター派でも彼は聖人に指定されている始末です。なお男女平等ランキング堂々一位のベルギーではカトリック+プロテスタントで国民の95%を占めるそうです」
上条「だから文明人名乗るなよ」
レッサー「更に余談ではありますが、このクソ話には蛇足があり、聖女認定されている『アレクサンドリアのカタリナ』がいましてね」
レッサー「まぁ色々あってローマ皇帝をキリスト教に改宗しようとし、50人の賢者相手にも怯まず論破し、皇帝に言い寄られたも断ったので処刑されたんだそうですが」
レッサー「存在自体がヒュパティアのパクリであり、今日に至るまで実在を証明するものが皆無、つまり対プロパガンダとして捏造した上、ヒュパティアさんを上書きしやがったんじゃっていうね……!」
上条「十字教徒さんのゲスさ加減は留まるところを知らないな!」
レッサー「ぶっちゃけその後の持ち上げ方や、事実認定する教会のやり方なんか、連中がどれだけクソだったかって証左になっています。私も自分で言ってて悲しいですが」
レッサー「なおこのカタリア(笑)さんは『どうしましょう!神様に見初められちゃったわ!』とか、『キリスト教を迫害するローマ皇帝を改心させないといけないの!』とか」
レッサー「他にも『私が論破しちゃった学者先生が処刑されたの!なんて、なんて酷い事を!』等々、ネジの外れた乙女ゲームの主人公そのままの性格をしています」
(※更に付け足すと「皇帝陛下から求婚されちゃったの!」もある)
上条「なにそれ逆に楽しくなってきた……!」
レッサー「なお聖女の中ではマリアに並んで有名且つネタにされ、ほぼ常時薄い本で肌色度が高いジャンヌ=ダルクさんですが」
上条「そんな前置きは要らん。そしてその主犯はきっと俺らだ」
レッサー「彼女に『あなたは神に選ばれたのよ!』とお告げにしに来たのは三人。大天使ミカエル、アレクサンドリアのカタリナ、あとアンティオキアのマルガリタだったって設定が」
上条「お前いい加減にしろよ?乙女ゲーの方のカタリ○さんに迷惑かかるんだからな!」
レッサー「とまぁこんな感じでキリスト教が権力を握ると、ギリシャ文明からずーっと積み上げたものが灰燼に帰します」
レッサー「そして科学的な研究が異端だったり難癖をつけられて全然捗らず、衛生概念や各種伝染病に悩まされて何度か滅びかけます。それもまた自業自得ですが」
レッサー「ここら辺の教理を詳しくやっちまいますと原罪がどーたらとクソ長い話になるんで割愛します。こうしてエリンギ様と雌ライオン様は姿を消しました」
上条「てかキリスト教には習合とかしなかったの?」
レッサー「当然したに決まってるじゃないですか?今言ったアンティオキアのマルガリタなんぞそのものでしてね」
レッサー「彼女もまた聖人認定されていながら、実在はしなかったろうと言われています。そんなマルガリタのエピソードはこんな感じです」
レッサー「『私マルガリッタ!キリスト教なんだけど父や母は異教の神官なの!だから暮らしは貧しいわ!』」
レッサー「『そんなある日”キリスト教を捨てれば結婚してやるよ!”って言い寄ってくるんだから!当然お断りよね!』」
レッサー「『でもそうしたらドラゴンの姿をした悪魔に一口で食べられちゃった☆絶体絶命大ビッ×☆』」
上条「ピンチな?テンションがアレで辛いのは理解できるから、最後までボケ通せ。それが礼儀だよ」
レッサー「『けど大丈夫!たまたま持っていた十字架がドラゴンの体内を傷つけ、吐き出されちゃった☆』」
レッサー「――っていう逸話をお持ちの方です」
上条「嘘だろ?そんな嘘エピソード持ってんのがジャンヌさんとこ行ったの?」
(※よりにもよって非存在アホ聖女の二人が選ばれました。恐らく作為的、つーか教会がフランス王へ対して懐疑的だった思われ)
レッサー「で、まぁエリンギ様の話でも散々しましたが、邪教の神々と信仰をぬっ殺している教会も実は習合やってましてね」
レッサー「例えばこの聖人マルガリタは『妊婦・安産の聖人』に認定されています」
上条「お前、それって――いつだ?いつ頃の話なんだ?」
レッサー「マルガリタが亡くなったのは304年、カタリナは305年ですな」
上条「ふーん……?随分近いんだな、つーか似たような時期に聖人ってホイホイ現れるっていうか」
レッサー「ちなみにローマ帝国ですが、途中皇帝が何人も立ってそれぞれの地域を支配していた時期がありましてね。それを統一したのがコンスタンティヌス1世ですが」
レッサー「彼が副帝に選ばれて辣腕を振るいだしたのは306年、ローマ統一皇帝にまで登り詰めたのが337年」
レッサー「また彼は熱心なキリスト教の擁護者であり、聖人として認定されているローマ皇帝の一人でもあります」
上条「やったなお前ら?今まで他の神様がやってた習合を、自分らのとこの聖人だけでやったのな?」
レッサー「っていう見解が多いですな。ともあれキリスト教圏ではエリンギ様を筆頭に”大体”の神様は姿を消します」
上条「少しは残ったって話か?聖人として?」
レッサー「えぇ聖人としてですが残りましたとも。サマインだったりイースターだったり、主要な信仰はキリスト教に取り込まれつつも何とか残った、と言えなくもないです」
レッサー「ただまぁこれが原義とは外れたり、今となっては正体不明になったローカルな神様とか結構居ましてね。妖精と言われていても昔は、ってパターンが非常に多いです」
上条「魔法使いの○さんだな。もうすぐ新巻だっけ」
レッサー「こうしてキリスト教は今まで多くの人間が重ねてきた習合と属性付加を自分達の欲しいままにします……まー、その結果が飽くなき内部闘争や全ての学問の衰退に繋がってんですが」
レッサー「そしてまた実に皮肉な話なんですが、キリスト教の他宗教狩りには当然ユダヤ教とユダヤ人が含まれましてね」
レッサー「あのままローマ帝政が続き、多神教の大学で同様の研究が続いていれば、千年ぐらい早く自然科学が発達したかもしれませんし。たらればの話ですがね」
レッサー「こうしてエリンギ様と雌ライオン様はヨーロッパからは姿を消しました。まぁアジアではシヴァ・リンガとしてきっちり残りましたし、シルクロードを伝ってヤポンにまで流れ着きましたからね」
上条「エリンギ様が駆逐されたのは別にどうでもいいんだが、改めて聞くとやり放題しやがってんだなキリスト教」
レッサー「今もそう大差ないっちゃないですからねぇ。地域によって批判すると洗礼を受けられなくなるんですわ」
(※主にカトリック。ルーテル教会は教区次第)
レッサー「ちなみにメガテ○のご立派なマーラ様をエリンギ様と同一視してるのは、主に日本独自の信仰です。前にも言いましたが、『エリンギ様があるから悟り啓けないんじゃ!』的な」
上条「性欲の本体をエリンギ様一人に集約させるのはどうかと……まぁ、巷に溢れるアホ犯罪の多くの動機はエ×根性だろうが」
レッサー「んでもってミシャグジ様は……原型がファルス信仰だったんでしょうな。御柱なんかそのままですし、そこから豊穣や陰陽石などが習合されまして」
レッサー「そこへ神話で逃れたタケミナカタが逃げてきて居座り、元々いた神様が追い出される。普通であれば新しい神が鎮座して、古い神は忘れ去られる――ん、ですが」
レッサー「きっと『何か』があったんでしょうな。だから祟り神として残された……可能性としては残したんではなく、消せなかったのかも?」
レッサー「そうしている間に祟り神としての属性が入ってまた習合する。蛇神がまた加わって訳が分からなくなったとかそういうんでしょうねぇ」
レッサー「まぁ多分闇咲さん辺りがお詳しいんでしょうが、出せる情報と出せない情報があるでしょうから、ねっ?」
(※人身御供関係)
上条「それって大丈夫な話か?地雷に聞こえるんだけど……」
レッサー「あぁこの場合の人身御供ってのは後付けが多いんですよ。例えば不慮の事故とかで亡くなった方がいたら『○○さんは喚ばれたんじゃ……?』的な噂しますよね?ぶっちゃけ不謹慎極まりないですけども」
レッサー「特に諏訪の地は台風が直撃して災害が頻発するんですよね。なのでその現象を見た人たちが『祟り神の障りかも!』と解釈したんではないかと」
上条「そうすると……最初から祟りなんか存在しない、かもと?」
レッサー「ですなぁ。まぁ昔のことなんで、当代のご当主レベルでしか真実は明らかにならないでしょうし。そもそも信仰とは信じる事であって知る事ではないですからね」
レッサー「以上で補足事項及び訂正を終わりにしたいと思います。次はヨゴレ仕事以外でお目に掛かりたいもんですが!」
上条「じゃなかったら呼ばれねぇから心配すんな。俺もこれ以上エリンギ様の話が膨らむとも思えないし」
レッサー「今回キリスト教の話が出たので、オマケで以前聞いた面白い話をしましょうか。あ、これは鈴木一也先生っていうゲームデザイナーの方の著書にあった話です」
上条「オカルトじゃなくてゲーム?」
レッサー「オカルト系のTRPG作成をされている方です。その筋では超有名――先生曰く、とある場所に黒い竜がいたんですよ。その竜はとても醜かった」
レッサー「しかしあるとき空を見上げたら、そこにはとても美しく輝く天があった。竜はそれをとても妬ましく思いました」
レッサー「すると竜は自らの尻尾に噛みつき、噛み千切ってしまったそうです――と、その尻尾はたちまち『蛇』になりました」
レッサー「竜自体はその色を白へと変え、重い尻尾がなくなった竜は空高く飛び上がったそうです。そう、どこまでも――」
(※原文はもっと美しいです)
上条「なんか詩的だな。象徴的でもある」
レッサー「まぁつまりですね、キリスト教の”あいつ”が『元々竜神だったんじゃねぇか』って説なんですな」
上条「はぁ!?お前それ!」
レッサー「自分の中の神格を『悪』として切り離し、そいつに悪さをさせて人類が堕落したら”あいつ”は助ける、って壮大なマッチポンプをやってんじゃね?と」
レッサー「あくまでもフィクションの話ですけども……イースターってご存じですか?意訳すると復活祭で神の子が甦ったよおめでとう、ってお祭りです」
上条「聞いた事はある。それが?」
レッサー「その儀式で中核になるのがイースターエッグっていう卵でありまして、復活と再生のシンボルなんですよね」
上条「あれ?でもお前復活と再生って――」
上条「……」
上条「――蛇、じゃねぇの?」
レッサー「宗教学的にはそうですよねぇ」
レッサー「で、こっから真面目な話になりますが、どこの神でもどんな神でも習合と多面化の影響を逃れられないんですよ。人類がそうである以上は」
レッサー「つーことは裏を返せば”あいつ”もまたどこからか来て、何かから影響を受けたってのは絶対なんです――で、こっからが私の妄想なんですが」
レッサー「――”あいつ”ってただの祟り神っぽくないですか?権能はゴミなのに嘘や欺瞞に偽善、そして異端殺しと同族殺しばっかり助長してますし」
レッサー「そもそも自分の神殿に半裸のオッサンを吊った神像って、どう見てもあれ供物としか」
上条「――はい、っていう訳で今回もお時間となりましたが!如何だったでしょうか!」
上条「エリンギ様から色々なところへ踏み込みましたが、それが本になったら発禁喰らう国もあるんで注意してくれよなっ!俺との約束だぜ!」
上条「つーか怪談おじさん二号機戻って来てー!?せめて言って良いこと悪いことの分別がつく人にしてー!!!」
-終-
(※多面性って怖いですよね、という話です。キリスト教の公的見解だと「神・聖霊・神の子」の三位一体が唯一かつ絶対であり、他の神的存在とは一切関係ないそうですが)
(※そして最後の「あいつ=蛇神」説はフィクションですが、ベースになってんのがユダヤの神でありそっちには”神”か絶対であり、聖霊・神の子は位階的に別)