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Clock(trial)

地獄の闇ちゃんねる 〜正しいレジャーの仕方・雪中山岳編〜

 
――上条のアパート 夕方

上条「――インデックスー?ゴハンできたからテーブル片しておいてー!」

インテックス「――簡単に言う、んだよ……ッ!」

上条「コラッ!教育に悪すぎるあのアニメ見ちゃダメだって言っただろ!?もっとこうKJ(怪獣)が出るのとかそういうにしなさい!」

インデックス「あだむ(♂)からいぶ(♂)が誕生するのは……うん、ちょっとO-HANASHIしないといけないんだよね」

上条「言ってもアレ全世界で数百万人がプレイしたゲームだから今更騒いだって」

インデックス「作ってる人が一番邪悪なんだよ。わたしがお祈りしたらすたっふさんが浄化されるんじゃないかな」

上条「だったらまずアホの前統括理事長と前『最大主教』がニフラ○で消し飛ぶだろ」

インデックス「科学の街に魔術師がいて、教会に悪魔がいるんだよね。まっぽぅなんだよ」
(※まっぽぅ=末法)

上条「十字教徒がまっぽーってお前」

インデックス「わたし達風に言えばみれにあむなんだけどね」

上条「千年王国だっけ?悪魔く○で見た」

インデックス「日本のあにめはどこまでもわたし達をコケにしてくれるよね?水○先生の悪魔像がかなり正確であれどうかしてるんだけど」

インデックス「そうじゃなくてね、みれにあむってのは世紀末のことなんだよ。『終末後には千年王国が築かれる』のが元ネタなんだよ」

インデックス「でもその前にサタンによる混乱があるじゃない?だから昔から世が荒れると『終末が来るのかも!』って終末論が流行るんだね」

上条「ノストラダムスか」

インデックス「よりも古いんだよ?最初はそれこそ世紀千年ぐらいで『終末が来るよ』って盛り上がったんだけど……」

上条「ど?」

インデックス「来なかったんだよ。それも二回も」

上条「あー……まぁなぁ」

インデックス「だからこうおかると的には期限がないまっぽぅの方が使いやすいのかなって」

上条「そんな配慮はいらん。いいから手ぇ洗ってきなさい!ご飯にしますよ!」

インデックス「はーい、なんだよ。あ、とうまー。言うの忘れてたんだけど、さっきねーまいかが来てたのかも」 ジャーッ

上条「お菓子でも焼いてくれたのか?」

インデックス「とうま、わたし関係が全て食べ物っていうのは……否定できないけど。そうじゃなくてね、最近ふしんしゃが出るんだって」 キュッ

上条「『もしかして;金髪アロハグラサン』」

インデックス「うんまぁそれもまた強くは否定できないんだけど。よく分からないけど注意しなさいって」

上条「『もしかして;結標』」

インデックス「ちょっと何言ってるのか分かんないかな。その人はがち勢だから……」

上条「『もしかして;海原(皮)』」

インデックス「話が進まないから総当たりで決め打ちするのやめてくんないかな!?絶対にしょくしつ対象なんだろうけども!」

上条「まぁいつの時代もどこにだってHENTAIはいるからな。インデックスも外出るときはケータイと防犯ブザーを忘れんなよ?」

インデックス「はーい、なんだよ」

上条「スフィンクスも頼むぞ?何かあったらお前が頼りなんだからな?」

インデックス「逆じゃないかな?なんでわたしの保護者がねこさんになってるの?」



――翌日

上条「それじゃー行ってくるわ。あと出かけたら念のため鍵かけてな、変な人いるもそこそこいるから」

インデックス「はいはーい、なんだよ。くるまには気をつけてねー」

上条「はいよ、行ってきまーす」 パタン

……リィーン……

上条「ん……?」

土御門「おっはーだにゃーカミやん」 ガチャッ

上条「あぁおはよう元春あにあに」

土御門「二度と言うなその地獄の呼び方」

上条「いや、好きかなと」

土御門「……いいかカミやん?ココイ○行ったらオッサンが作ったカレーが出てくる、それは分かるよな?」

上条「オッサンとは限らないだろ。まぁ率が高いのは分かるが」

土御門「でも店頭でカレー盛ってくれんのはバイトのおねーちゃんなんだ!だから分かるだろ、なっ?」

上条「誰が作っても美味しいだろココイ○。むしろ何となくオッサンが作った方が美味いとすら感じる」

土御門「冗談B○だけにしとけよ、なっ?」

上条「うるせーテメーやんのかコラ表出ろやゴラアァッ!?」

土御門「やだ、すぐ怒る男の人って……」

上条「え、てゆうかお前だって」

土御門「――ハイ終わりこの話!いやー今日はこのぐらいにしておいてやるぜぃ!一昨日来やがれってんだにゃー!」

上条「お互いに刺し合うだけだからな。ただ損だけをする」

土御門「そんでどうしたいカミやん?朝っぱらから俺に幼児にゃー?」

上条「用事↑な?幼児↓だと、ちょっとこう警察が来ちゃうから」

上条「いや何かあるって訳じゃないけど、今なんか変な音しなかった?」

土御門「『おおおぉぉぉぉぉぉ……ッ!あと一万あれば確変きたのにいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……!』」

上条「朝一で大喜利やってんじゃねぇんだわ。時間的には今その人ら(含む浜面)は希望を胸に列つくって並んでる最中だ」

土御門「気のせいだろ?禁書目録と俺がいんのに幽霊騒ぎなんて起きる訳ねーにゃー」

上条「そう、だよな。お前はともかくインデックスはシスターさんなんだから退治するよな」

土御門「存在意義に近いっちゃー近いんだにゃー。さっ、変な事言ってないで学校行くぜぃ」

上条「だな」

……

――シャリーン……シャリイィン――



――とある学校 放課後

上条「――間に合った!」 ガラッ

姫神「てはない。こんな超重役出勤お疲れさまです」

吹寄「所々煤けてけるけど、一体何が……?」

上条「聞いてくれよ!俺が乗ったバスがバスジャックされて高尾山まで行って来たんだ!」

青ピ「あぁあれカミやん乗っとぉてたん?何やいないと思ぉたら」

上条「『あ、誰もいないラッキー』って乗ったバスがジャック中だったとは……!」

姫神「寄せに行ってない?通学ラッシュ中におかしいって気づかないのかな?」

上条「道理でおかしいと思った!いつの間にか土御門消えてたからな!」

吹寄「鉱山のインコが消えた時点で気づきなさいよ。学校には来てないけど」

小萌「あの……上条ちゃん?職員室まで来やがれっていうか、流石に全ブッチは擁護しきれねぇぞっていいますか」

小萌「今さっき職員室にやたら態度がヘヴィなロ×がご指名なんですけど、もう我が校の対応能力を超えているのですよ!?」

上条「あぁ、警備員からの事情聴取から逃げ」

小萌「――はい、先生は何も聞いてないのですよ!それでは皆さんさよーならー!明日は上条ちゃんが登校するといいですねっ!」

上条「あれ俺もしかして死んでる?それとも能力の暴走で透明人間になってる?」

青ピ「――おっ!?なんでこんなところにカミやんの制服だけ浮いとぉん!?」

上条「無理だよ!?流石にどんなオイシイパスもらってもクラスメイトの前で全裸は厳しいわ!?」

姫神「厳しい。つまりやってやれなくはない。と?」

上条「状況次第、かな?」

小萌「はいそこの腐ったミカンちゃんは先生と一緒に職員室まで来るのですよ!一緒に謝れば日付を跨がずに帰れるかも知れないですし!」

上条「逆に考えよう――俺たちはもう既に幽霊である、と……!」

姫神「ナイスアイディア。皆で固まれば怖くない」

小萌「だから現実に帰ってくるのです!特に姫神ちゃんは絶叫学○に出てきそうで怖いのです!」



――とある通学路 夜

キキーッ

上条「……すいませんでした黄泉川先生。わざわざ送ってもらっちゃって」

黄泉川゜ああいいじゃんいいじゃんよ。どうせ今から出勤だしついでじゃん?」

黄泉川「つーかお前さんもよかったじゃん?助けた女の子が某国のプリンセスだって話じゃんし、あのままついていけば玉の輿じゃん?」

上条「ペ×じゃねぇんだよ。あ、すいませんそうじゃなくて、俺は見返りが欲しくてやったんじゃないですから」

黄泉川「大分疲れてるじゃん?絶対に出しちゃいけない本音が前面に展開してるじゃんよ?」

上条「人助けしたんですから単位ぐらいくれたっていいと思いませんか!?」

黄泉川「否定はしないじゃんけども、お前は学生なんだから身の程を知るじゃん。どっかの格好つけ美白バカみたいにはなってほしくないじゃん」

上条「あのヤロウなんだかんだで美人のお姉様二人とキャッキャウフフの同棲してやがった……ッ!!!」

黄泉川「人を淫×教師みたいに言わないでほしいじゃん?あと別に楽しくはあったけど、エ×さは欠片もなかったじゃん」

上条「嘘だっ……ッ!オネショ×好きが二人揃って何も起きない訳がない!」

黄泉川「あたしらの癖(へき)を勝手に決めるなじゃん?つーか上条、あんた疲れてるじゃんねやっぱり」

上条「……そうっすね。帰って寝ますわ」

黄泉川「まー、人助けしたんだから胸を張るじゃん?それじゃまた学校で」 プーッ

上条「あっはい、お疲れさまでしたー……と、疲れたわー。俺何も悪い事してなかったのに」

……

上条「第一あの土御門も土御門だよな!俺を置いてどっかに逃げやがって!まぁいつものことではあるが!」

……リィィンッ……

上条「ていうかもう真っ暗だなー!人通りなんかないなー!何か不自然だけどきっと気のせいだよ!だって俺知ってるもん!こういうのってフラグって言うんだって!」

――シャ、リィン……シャリィンッ……

上条「ほーらやっぱり鈴の音するしぃ!こう予定調和だと嫌になるよなチクショー!あははははははははははははははっ!」

シャリンッ、シャリンッ

上条「あぁもうこうなったら延長戦やったらぁ!かかって来いテメー!」 クルッ

闇咲(※山伏スタイル)「――いや、こちらに戦闘の意志はないのだが」

上条「ってやっぱりお前かよ!?前一回この導入やったのに懲りずに繰り返しやがって!?」

闇咲(※山伏スタイル)「だからこれは錫杖の鐶(かん)の音だと言っている。どちらかといえば煩悩や妖魔を調伏する効果がある」

上条「てか何やってんのお前?俺をドッキリさせるためだけにまたスゲー格好しやがって!」

闇咲(※山伏スタイル)「だからこれは正装であるし、誰に憚ることない仕事着だ……まぁ今回は野暮用も兼ねてはいたが」

上条「野暮用?」

闇咲(※山伏スタイル)「いや、警官からな?『最近ここら辺に不審者が出るのですが』と注意喚起されたので、それらしい人物を探していた」

上条「それ意味違う。『不審者が出るんですが、つまりお前』って意味だから」

闇咲(※山伏スタイル)「――気をつけろ!日本の魔術師界の大家、土御門家の神童が近くに住んでいるぞ!」

上条「前からそうだわ!つーかさっきまで職員室で二人並んで説教喰らってたわ!」

闇咲(※山伏スタイル)「……違う!それだけではない!信じてもらえないかもしれないが、もっと怖ろしい相手がいる!」

上条「おー、どした?カキクケコ言う白いのでもいたか?」

闇咲(※山伏スタイル)「人の皮を被った異国の魔術師も徘徊していた……ッ!」

上条「あぁまぁ海原(皮)はそうな!よくよく考えたらあのアホはオールウェイズ皮被って生活してんだよな引くわ!」

闇咲(※山伏スタイル)「そして熱心に登下校中の少年を監視している女も」

上条「その地獄絵図見てみたいわ。『小学生←結標←闇咲』って超面白そう。画像投稿したら『うしろうしろー』って総ツッコミされる」

上条「てゆうか朝の俺の小ボケが全部返ってきたな!伏線回収するためにボケたつもりはなかったんだが!」

闇咲(※山伏スタイル)「まぁそういう訳で新年一発目の闇ちゃんねる・実践編だ」

上条「『――あ、もしもし警備委員ですか?えっと目の前に不審者がですね』」

闇咲(※山伏スタイル)「取り敢えず電話を切れ。あと私にとってはこれがある意味正装だと何度言えば」

上条「……嫌な予感すんだけど、お前が正装で来るってことは超ヤヴァイ事故物件or地方巡業?」

闇咲(※山伏スタイル)「雪山だな」

上条「アポ入れろやゴラアアアアァァァァァァァァァッ!?社会人としての常識でしょーが!?」

闇咲(※山伏スタイル)「いや、入れておいたが?」

上条「え、誰に?」

闇咲(※山伏スタイル)「インデックス先生に……『○○日にお伺い致します』と。インターホンだが」

上条「何かの業者と間違ったんじゃねぇかな?先週アパートのどっかで水道管破裂してたから」

闇咲(※山伏スタイル)「――よし、それでは行こうか。今から向えば朝ぐらいには着くからな」 グッ

上条「やめて離してー!?ハイエー○に乗せられるー!?」

闇咲(※山伏スタイル)「人聞きの悪い事を言うな。都合が悪ければ日を改めるぐらいの常識はある」

上条「し、信じないぞ!そうやった無理矢理言う事聞かせるんでしょ!?エ×同人みたいな!」

闇咲(※山伏スタイル)「する意味がない。というか君がここまで遅くならなければ、今頃温泉宿に着いていたはずなのだが」

上条「……もっと詳しく。温泉宿?」

闇咲(※山伏スタイル)「あぁ週末を挟むとはいえ地方だからな。去年の慰労も兼ねて少しばかり奮発したのだが」

上条「――何やってんだ闇咲!俺はスフィンクス達を回収してくるからお前は車を回しといてくれ!」

闇咲(※山伏スタイル)「話が早くて非常に助かる。時間も押しているしな」



――某温泉街 朝

闇咲(※山伏スタイル)「という訳で今年も懲りずに闇ちゃんねるをしたいと思うのだが」

上条「すいません闇咲さん。あと10mぐらい離れてもらえませんか?視線が厳しいっていうか」

闇咲「その分だけ私の声が大きくなって迷惑になる。それとインデックス先生は?」

上条「先生はお加減が悪いっていうか、昨日ディナーバイキングでの孤軍奮闘が祟ってダウンされていらっしゃるので……」

闇咲「まさか定宿で出入禁止にされる日が来るとはな。まぁ別の宿に泊まればだけの話だが」

上条「できれば訴訟以外の手段で穏便に収めて頂けると……」

闇咲「以後注意すればいいのではないかな。私もバイキングがないところにするから」

上条「こ、今回は俺も頑張るから!」

闇咲「感謝する。それでは登山道の入り口に移動しようか」

上条「ういっす」

……

上条「って訳で登山道にやってきたんだが……メッチャ雪積もってんじゃん」

闇咲「今日の企画は『雪山登山』だ」

上条「え、俺ここ入んの?装備もなしで?」

闇咲「自殺行為だな。普通の状態の山へ入ってすらそこそこの頻度で死ぬのだからな」

上条「じゃあなんで俺はここにいるの?賑やかし?」

闇咲「大体いつもそれだが。まぁ順にやっていこう。許可は取ってあるので、雪山で遭難したときの現実的なしのぎ方から行こうか」

上条「あ、そういうの嫌いじゃない。極限状態のサバイバルって憧れるよな」

闇咲「ではやってみたまえ」

上条「どうやってだよ。どこの段階から……あぁまぁやるだけやってみるか。まず登山計画書を出します、あと知り合いに言っておく」

上条「リュックには念のためアルミ毛布に水と食べ物を少し入れておく、ぐらいか?」

闇咲「妥当ではある。まぁ個人レベルであればそのぐらいだろう――が、絶対に遭難しない方法もある」

上条「マジで!?」

闇咲「――そもそも山に行かない、だ」

上条「ザッケンなテメー。企画の主旨全否定だろ」

闇咲「そちらの説明は後に回すとして、まず何事にも優先順位がある。それを怠ってはいけない」

闇咲「最初に確認するのが『自分が遭難した、という事実を受け入れること』だな」

上条「当り前だろ。そのために話してんだから」

闇咲「いや、これが意外に難しいんだ。人には認知性バイアスというものがあってだな」

上条「バイアスは聞いた事がある。偏見だっけか?」

闇咲「それに近い感じだな。一言でいえば『俺が死ぬ訳ない』という錯覚だ」

上条「戸愚○か。最近またなんか流行り始めて嬉しいけども」

闇咲「何というかな、衝撃が強すぎて危機認識機能がぶっ壊れるとでも言おうか」

上条「そんなことってあんの?」

闇咲「有名な所では某火山火口の噴火か。当時登山客が大勢いたのだが、その内何割かは噴火後も退避行動を取らず、中には噴火の様子を撮影し続けた人もいた」

上条「それは……」

闇咲「もう少しミニマムな話になると3.11の大地震の際、海を見に行ってそのまま帰ってこなかった人間もいる」
(※実話。親戚筋に一人)

上条「それってさ、事故とかでもさ?急に車が来て動けなくなるのと一緒じゃないの?想定外過ぎてどう反応したらいいのか分からなくなるっていう」

闇咲「かもしれない。結果的には数秒の後れが命の危険に関わる現場でなく、安全な場所で俯瞰してコメントをつけるのでは訳が違う」

闇咲「……だが残念ながら登山でも似たような事は起きる。仮に君が迷ったとして『お、俺は迷ってない!もう少ししたら大きな道に戻れる!』とかありそうだろう?」

上条「あー、言うわー。もう完璧に迷うまで歩き回る気がする」

闇咲「まぁその行動も間違いではない。ちゃんとした山道へ戻れる場合もあるだろうから」

闇咲「しかし山中でどうしようもなくなった場合には是非思い出して実践してほしい。何もしないよりはマシかもしれない」

上条「信頼度が低いです」

闇咲「で、まず自身が遭難していると自覚したら、状態を確認しよう。ここで最も大切なのは衣服が濡れているかどうかだ」

上条「冬とかだったらヤバイよな。即凍死しそう」

闇咲「いや、正しくは夏でもヤバいんだ。濡れた衣服をそのままにしていたら数時間で低体温症、そして凍死する場合がある」

上条「そんなに危ないの?」

闇咲「気化熱の影響だな。だから乾くまで脱ぐのを推奨する」

上条「てか服も乾かないのに全裸じゃ即死しそうなんですが……」

闇咲「そこは草と木の皮を使う。まず適当に尖った石を探し、それで枯れ草を刈って束にする。それを身につける」 

上条「そんな妖怪いただろ。藁の束を被った水○先生の」

闇咲「まさにそれだ。できれば木の皮を剥がして外側から包んでほしい。内側に綿を内包するようなイメージだな」

上条「超チクチクしそう。背に腹は替えられないが」

闇咲「服がある程度整ったら落ち葉を集める。窪地か木の根元など、ベッド兼防寒具を作るつもりで」

闇咲「そこまでしたら後は体力の消耗を避けるために極力動かない、ぐらいだろうな。そこら辺にある食べ物を口にして中毒になった場合、致命傷にもなり得るし」

上条「火は?焚き火したらいいんじゃね?」

闇咲「乾いた木の餞別に維持するための薪の量が問題だな。マッチやライターでも持っていくのであればともかく、摩擦熱で火を起こすのは未経験者には困難だ」

闇咲「しかし火はあるに越したことはないし、水源が近くにあれば煮沸して温かい水も飲め、濡れた衣服もすぐに乾く。生存度が格段に上がるのもまた事実ではある」

上条「あぁじゃあ登山セットにライターとマッチも入れておこうぜ。そんな嵩張るもんでもないんだし」

闇咲「それが賢明だな。火を維持できれば一週間ぐらいは余裕でもつだろう――が、しかし冬の、しかも雪山であれば以上のサバイバル法が役に立たなくなる」

上条「あー……雪の上に座ってるだけで厳しいよな」

闇咲「一応雪を固めてイグルーというかまくらを作れば多少は凌げる、凌げるものの……」

上条「そこまで知識と技術もってんだったら、テントと寝袋持ってった方が早くね?」

闇咲「と、いうことになる。そもそも遭難前提で登山するのもどうかと思うしな」

上条「そして最強の衛星通信用携帯電話?個人で持てるヤツがあるかどうか不明だが」

闇咲「私も知らない。ただ仮にあったとしても安価ではないだろうな。であれば普及が進んでいる筈」

上条「山キャンプとか流行ってっけど、あぁいう装備持っていったら遭難しても大丈夫なんじゃ?」

闇咲「山”の麓の拓けた場所”キャンプだな。一通り使いこなせればかなり生存率も上がるし有効なのは間違いない」

闇咲「しかしそうすると『そんな重装備で登山するのか?』という原初的な命題に行き着く訳で」

上条「あぁ……だから『山に行かない』ってのが最善の方法ではあるのか」

闇咲「そもそもプロの登山家ですら命を落とすのに、素人は絶対に無理をするんじゃない、というのが結論だと思ってほしい」

上条「しかし実際にはどんなもんなんだ?亡くなる人って結構多かったり?」

闇咲「聞いた話では年間3,000弱が遭難して一割程度が帰らぬ人となる。楽観視していい数字ではない」

上条「セルフで片道登山する人も含めると確率はもっと高いような……」

闇咲「登山ではないからな。そういう人たちも留まってほしいものだが、こればかりは如何ともしがたい」

上条「最近流行りの山スキーもあれ厳しいよな。事故起こせば何もない山ん中で取り残される」

闇咲「本当に深い山というのは人の手が入っておらず非常に危険だ。人の手が入った山というのは、木を伐採するときには適度な間隔を空ける。それが木々の生長に丁度いいからな」

闇咲「だが人が寄りつかぬ、というか自然のままに育っていれば大小様々な木々が生い茂る。そもそもの植生が海外とは違う」

上条「先週の異常寒波とか、人里が酷いようだったら山の中なんか地獄だろうしなぁ」

闇咲「最初に言ったように、まずパニックにならないことだな。何事もそうだが、特に命に関わることに関しては慎重に慎重を重ねることだ」

上条「――と、結論が出たところで今日の闇ちゃんねるは終わりだな!チャンネルの前のみんなも山には行くなよ!俺は絶対に行かないから!絶対にだ!」

闇咲「〆に入っているところで恐縮だがまだ尺がある。私がこんな格好をしている理由を汲んでほしいものだ」

上条「……山伏のコスプレ?」

闇咲「本業だな。そしてそんなコスプレあるのかね」

上条「陰陽師があるんだから可能性は!」

闇咲「別に門戸を閉ざしている訳ではないのだから、普通に入ってくればコスプレではない本物の装束が着られるのだが……」

上条「鉄腕ダッシ○で年明け特番やってたわ。リーダ○とエドワードさんが山伏服着てた」

闇咲「そのネタを誰が知ってるのかね。そして名前が、違う」

上条「あ、そろそろ俺塾の時間だから帰る――離せっ!こんな所にいられるか!」 グッ

闇咲「諦めたまえよ。別に山頂にまで登ろうとか尾根伝いに制覇しようとか、無謀なことをされるつもりはない。流石にな」

上条「てかマジ話、山でやっちゃいけないことって一通りやったじゃん?まだなんかあるんか?」

闇咲「補足授業のようなものだ。まぁ聞いておいて損はない、と思う。使う機会があるかどうかは別にして」

上条「やめろ、俺に対してフラグを立てるな!」



――某山中 ケルン前

上条「そんな訳で我々取材班は問題のブツの前にまでやってきたのだった……ッ!」

闇咲「ナレーションは要らない。というか登山道入ってすぐ側の積石塚、もしくはケルンの前に来ただけだ」

上条「あーっとまぁ説明するまでもないとは思うが、積み石だな。大体人の背丈の半分ぐらいまで大きな石が積まれて、その上に小さい石が不規則にって感じの」

闇咲「これがなんだか分かるか?」

上条「改めて聞かれると……分かんないよな。山の上に固まってあったり。かと思えば登山ルートをちょっと離れた場所にあったりするし。なんなんだこれ?」

闇咲「正確には私にも判断がつかない」

上条「なんでだよ。聞いてきただろ今」

闇咲「積み石自体には色々な意味があるんだ。頂上を示すケルン、これは当然ある。旗を立てる代わりに」

闇咲「そしてまた目印としてのケルンもまたある。登山道を示すため、地図などに表記されているものもある」

闇咲「と、同時に遭難して亡くなった者を悼む遭難碑としてのケルンもまた存在する。この三つは見分けができない、というのが現状だ」

上条「はい、質問。頂上と目印は看板立てれば良くね?あと遺族の人はお墓とかでいいんじゃ?」

闇咲「まずは景観の問題がある。自然を自然のまま残したい以上、下手な人工物を置く訳にも行かずなので積み石で代用したり、看板の代わりにする」

闇咲「というか下手に何か置いたら引っこ抜かれるからな。具体的には誰とは言わないが、山の上での犯罪立証は面倒臭い上に微罪なので検挙しにくい」

上条「登山マニアの人?」

闇咲「かもしれないし、そうでないかもしれない。案内板ですら不快に思う人間が一定数おり、勝手に撤去している。見たことはないか?」

上条「あるかも。気持ちは分からなくもないが……」

闇咲「場所的には国有地か私有地であるため、管理者が管理のために手段を用いるのは当然のことなのだがな。まぁ是非はさておき、墓の代わりに遭難碑というのもそれが影響している」

上条「『勝手に人の敷地へ墓立てんじゃねー』的な?」

闇咲「なので妥協の産物としてケルンを、という話になっている。他にもただのイタズラで始めたのが大きく成長したり、まぁルーツ自体が様々なんだよ」

闇咲「つまり現状として、ケルンは『頂上・目印・墓石・暇潰し』と最低でも四つの役割を持っている。もしかしたらもっとあるかもしれないが」

闇咲「その一つに『死者を弔う』という目的がある以上、あまりこう、軽々に積み石を置くのは如何なものかなと思わなくもない、かも、しれない」

上条「やだ超奥歯に物が挟まってる感じ……!」

闇咲「私は全く気にしないが、犬猫の死体へ手を合わせるなとか、事故死した人間には心の中ですら不用意に祈るな、という通俗がある。曰く、『憑いてくるから』とのことだが」

闇咲「それが多数派なのかはさておき、ある程度の市民権と認知度を得ている訳だが――」

闇咲「――登山中に得体の知れないケルンへ対し、石なり物を捧げるという行為は、死者へ対して弔う行為を知らず知らずにしているのと同義だ、という話だな」

上条「それ……結構ヤバくね?憑いてくるって言ってる人達からすりゃトリハダもんだろ」

闇咲「繰り返すが私は別に気にしない。そもそも”憑いてくる”のはほぼ俗信であって、言うほどの脅威度はないからな。気にするもしないも個人の自由ではあるが」

闇咲「よってあまり知らずにケルンへ石積みをするのは宜しくないのではないか、と」

上条「お墓なり慰霊碑がちゃんとあって、そこに手を合わせるんだったら祈る方も祈られる方も分かるんだけど……」

上条「なんなんだよそのケルントラップ。軽い気持ちで石置いただけなのに」

闇咲「前にも言ったが『綺麗な水だから安全だとは限らない』という話だな。そして腹を壊すぐらいで済めば笑い話だが」

上条「それでもハイキングコース歩いてるときだったらの話だよな。遭難中に体調崩したらヤバイなんてもんじゃない」

闇咲「それでも”識る”ことで多少は難を逃れることができる。多少はだが」



――某山 登山道

上条「あれ……?」

闇咲「どうした?」

上条「あぁいやあっちの方に人影が見えたから。スキー板背負って歩いてた」

闇咲「山スキーだろう。あのまま奥地へ入って滑るつもりだろうが……オカルト的には自殺に等しい暴挙だな」

上条「なんでまた?『山スキーすると呪われるぞ!』とか言い伝えられてんの?」

闇咲「そこまでピンポイントの呪いは多分ない。というか山スキーの概念自体が近年だからな」

上条「神様って神社にいるもんだとばかり」

闇咲「人の信心を多く受ける神はそうだろうな。だが違うモノも当然いるし、中には時代を経て変質したと思われるモノもいる」

闇咲「その中の一柱が『山の神』だ。正体は色々あるらしく、木々の神、豊穣の神、金属の神、境界の神など非常に種類が多い」

闇咲「中には名前すらなく、たた『山の神』としか呼ばれていないモノも多い。そして、あー前に『果ての二十日』の話をしただろう?」

闇咲「年の瀬のある日は集落全体で物忌みして一歩も外に出ない、何故ならばその日は田の神が山へ帰る日であり、出くわすと死ぬか呪われると」

上条「理不尽だなって覚えてるわ」

闇咲「まぁ冬山というのは”そういうの”がいるんだ。だから農民であれば絶対に、プロの猟師であっても余程食料に困ったときでもない限りは冬山には絶対に入らない」

上条「マジで居るの?そういうのって?」

闇咲「さぁ?私には何とも言えない。先人たちが冬の山中での厳しさを伝えるために、擬人化したのが山の神である、という説もあるしな」

闇咲「それとも山中で蠢く何かを目撃した結果、という可能性もない訳ではないが」

闇咲「今までオカルト的にスルーしていたのは、冬の山でしかも道なき道を分け入ってスキーするような人間が皆無だったからな」

上条「そこだけ聞いてると自殺行為だよな。実際にはもっとスキー場の近くでやるっぽいんだが」

闇咲「”自分だけは大丈夫”って認知バイアスも厄介だ。この世界に特別な人間などまずいない。しくじれば均等に死が訪れるだけだ」

闇咲「流行りの心霊スポット巡りや各種の廃墟巡りも同様。現実的な問題ではちょっとアタマがアレな人たちが放火していたり、出くわしたら碌な事にならない」

闇咲「オカルト的な側面からいえば弾数の分からないロシアンルーレットをしているのと同義だ。最初から弾が入ってないのかも知れないし、次に引き金を引けば当たるのかも知れない」

上条「いやぁ、そこはやっぱ一攫千金求めて入るんじゃないの?」

闇咲「CGで作った方が早い」
(※というか今は全部そう)

上条「ぶっちゃけすぎだろ!かもしんねぇけどもだ!」

闇咲「というか逆にだ。あてどもなく廃墟へ不法侵入して逮捕されるリスクを負うのであれば、CGをみっちり一年ほど独学で学んで作った方が効率もいい」

上条「あれ?お前って科学サイドの人だっけ?いいの?立場的に?」

闇咲「若人が無駄なリスクを負うぐらいであればなんだってする」

上条「ちなみにお前ら、っていうか山伏も冬は山に入らないの?」

闇咲「冬は普通に死ぬから拠点にしている寺院で修行をしている場合が多かったらしい。流石に一年ずっと荒行を架しているのではなく、そもそも食べていくためには色々と先立つものが必要になる」

闇咲「私が聞いた流派の験者は宿坊を営みつつ、冬には出稼ぎして加持祈祷を請け負っている。旧正月近くには馴染みの家を巡って祝詞を捧げて回ると」
(※出羽三山の修験者は今もやっています。12月初頭から北関東〜東北にかけて北上するそうで)

闇咲「……まぁ、奇しくもだ。山と共に生きてきた人間からすれば、山スキーなんて正気の沙汰ではないのだが……時代だな」

上条「あのー……闇咲さん?俺思ったんですけど、山で遭難したり行方不明になっている人ってまさか――」

闇咲「ただの事故だ。少なくとも医学的にそうなんだから、そうなんだろう。きっとな」

闇咲「まぁ、昔と違って今は迷信や俗信が淘汰されつつある。神だの仏だのという意義が薄れているのは確かだが」

闇咲「同時に先人達の経験や体験から来た解釈をおざなりにして地雷を踏むのは、何とも文字通り畏れ知らずといえるだろうか」

上条「俺、この企画やってて思ったんだけど。人間の”怖い”ってのは無意識的なブレーキなんかなって思うわ」

闇咲「そうだな。蛮勇は勇気ではない」

闇咲「ともあれ新年一発目の闇ちゃんねるは以上となる。何かあれば応募フォームからなんでもしたまえ」

上条「てゆうか別に山まで来なくても良かったんじゃ……?あぁまぁ旅館に泊まれてラッキーだったけども」

闇咲「――そういえば廃旅館にまつわる怪談なのだが」

上条「やめろ話拡げんな!?旅館戻ったらもう一回温泉入ってリラックスするつもりだったんだから!?」


-終-

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