アレイスター『闇ちゃんねる――詐欺師と降霊術』
――とある廃校舎
上条「……」 コンコン
???『キツネダンスかね?いや、流行りに乗ろうとする積極性は認めるけれども、あまりこうブームに飛びつくのもいかがなものかと』
上条「ノックしたボケでそこまで話を膨らませんなよ。あとどこの誰がわざわざドアの前からキツネのモノマネすんだ。暇か」
???『というかアレ、何がどうやって流行っているのか分かるかい?「あぁ強いられてるな女の子」とは思うんだが』
上条「大勢の人が集まってる中で言い切れば、まぁうん流行っていると言えなくもないっていうか。希望的な観測というか」
???『大概において”流行っている”ものは自然にと耳に入ってくるからね。それが不自然な時点で否という証左ともいえる訳だよ』
上条「てかそろそろ帰っていいか?先週一回付き合ったし、バイト代の分だけはきちんとツッコんだからな俺?」
???『まぁまぁそう言わずに入りたまえよ。ドア越しで話をするのもなんだしね』
上条「そんなエクストリームな場面だったのか!?まぁ別にどうでもいいんだがな!」
アレイスター(???)『お茶の一杯でも出す……あぁ丁度切れていてね。チェリ○の謎味でいいかな?』 プシュッ
上条「あぁどうも。あの大量に売れ残ってた真っ黒なヤツな。流石の俺でも『55円出してギャンブルする気には……』って敬遠したの」
アレイスター『ちなみに私が飲んでも結構謎だったよ。開発コンセプトがバグっているよね』 プシュップシュップシュッ
上条「ここぞどばかりに何本も開けんなよ!?在庫処分するつもりか!?」
アレイスター『ネタで箱買いするのは良くないということだね――それでだね。前回のVRゲームを学園都市の統括理事長殿の持っていったんだが』
上条「あれ一応建前はテーマパークじゃなかったけか?出来自体はイヤっつーぐらいのクオリティだったが」
アレイスター『いつ行っても居ないんだよ。全く、拘留中の身の上なのにね?』
上条「『もしかして;居留守』」
アレイスター『流石にそれはないね。私が一方通行のお母さんと偽って面会を求めても対応は同じだったし』
上条「原因が……うん、そんなことばっかやってっから面会拒絶されるんだよ。俺だったらするわ」
アレイスター『きちんと女性ボディになったし、メイクも寄せてみたのだが?』
上条「どんなかーちゃん想定してんの?いや一方通行のカーチャン知らないけども!息子さんに寄せていってどうすんだよ!ヴィジュアル系か!」
アレイスター『照れているという可能性もあるね?』
上条「お前ってホンッッッッッッッッッッッッッッッッットに人の心がないよな!多分実家との関係は拗れっちまってんだから、センシティブな問題なんだよ!」
アレイスター『そこは心配ご無用だとも。私もね?今では流浪の無職の身となってしまったが、こう見えて社会人としての経験は豊富なのだよ』
上条「ナメてんのかな?この世界屈指の非常識の代名詞が!ハマーに寄生してる魔神の方がまだ人間的で人道的だわ!『しょうがないにゃあ』って言ってくれるんだぞ!」
アレイスター『あの暇人ともと一緒にされるのは心外だね。私はちゃんと手土産を持っていったのだから、差し入れかも知れないが』
上条「あー……今、塀の中なんだよな。缶コーヒーでも持ってったの?」
アレイスター『いいや?”一方通行が妹達以外にヤッちゃった「暗部」職員をリスト”だね』
上条「それ脅迫じゃねぇの?今は法的なアレコレで裁判止まってっけど、その人らは普通に人権のあるアンタッチャブルな人らだろ?」
アイレスター『今にも言ったと思うのだが、命に貴賤はないのだよ?それが可憐な少女でも汚い汚っさんであっても、法的には同じだしね?』
上条「てかどこの世界の母親が、自分の息子の罪重くしようと追い打ちかけんだよ。むしろそれで会ってもらえると思ったな?」
アレイスター『その、段々楽しくなってきてね?いつキレて攻撃してくるかって』
上条「悪魔かな?あぁいや一方通行んとこにいたなそういや!」
アレイスター『まぁそんな訳で面会はまだしていないのだよ。よって我々の素晴らしい企画はまだ公開もしていない』
上条「話だけ聞いてると、お前が一方通行を脅迫してるようにしか……」
アレイスター『まさかそんなことはないよ?ただ結果的に一方通行の過去の行いを記録している媒体を偶然所持している人間が、新しい企画立案に出資してほしいと言っているだけで?』
上条「まず、お前が捕まるべきだったと思う」
アレイスター『くっくっくっく……!いいのかね?私が逮捕されてしまったら「半世紀前からある少年のために作った学園です!」と公的な場で証言するのだよ?』
上条「うん、『あ、この人は責任能力がない人ですね』って思われるだけだぞ?俺は別にどうでもいい」
アレイスター『お陰様で最近は厳しくなってきてね?心神喪失状態の認定自体が厳しくなり、かつ措置入院がほぼ必須になってだね』
上条「計画的にしようとすんなよ。お前一応世界レベルの魔術師なんだから、逮捕されるような下手打つなや」
上条「つーかさ、前回も思ったんだけどお前無一文なんだよな?」
アレイスター『当座の生活費が少しだけだね。分散した資産があるにはあったのだが……』
上条「じゃあそれ遣えよ。何か知らないけど、小銭稼ぎするよりは持ってんだろ」
アレイスター『名義が統括理事長だったものだから、ねっ?分かるだろ?』
上条「あー……」
アレイスター『その場とノリと勢いでイスを譲ったら、ほぼ無一文というね』
上条「天才とアレは紙一重っていうけど、お前はアレな方だからな?アレの天才っていうか」
アレイスター『だがまぁ新しい金策は考えてあるのだよ?私も伊達に魔法名「Beast666」を名乗っては居ないのだからね?』
上条「ケモノだっけか?」
アレイスター『なお、魔術名に使うラテン語で獣はbestia(動物)であり、何かこうノリでやっちゃったのかなと思わなくもない』
上条「そこはこう科学サイドに来るようなアレな人だから、掟破り的な意味が込められているよ、ボカしておこうぜ」
アレイスター『そんな私にとって稼ぐなど造作も無いことだよ』 プシュッ
上条「だからチェリ○(※謎味)開封すんなよ!?不味い美味い以前にカロリーオーバーも甚だしいわ!」
上条「……で、今度は何すんだ?オレオレ的なアレでもすんの?今更感があるが」
アレイスター『私はこう見えても時流に乗るのは得意な方でね?』
上条「キツネに文句言ってた人間が言っていい台詞ではないが」
アレイスター『――よし、パ×活しようってね』
上条「超待てやお前それ、なんつーかそれコンプラ違反にも程があるわボケ!?」
アレイスター『あれだろ?アイカ○みたいなものだろう?』
上条「全世界のアイカ○ファンにDOGEZAして謝れ!」
アレイスター『いやでも薄い本ではだね』
上条「いつもいつも言ってっけど薄い本だからだよ?公式じゃない人たちが好き勝手やってるだけだからな?」
アレイスター『お金も貰えて気持ちが良くなるって意味では共通してないかい?』
上条「ちょっと何言ってるのか分からないですけど、それ以上言ったらぶん殴るぞこのアホ?」
アレイスター『……カッ○をネタにした翌週にカッ○寿司の社長が捕まるとか、これはもう運命を感じるよね?』
上条「話変えるの下手か。『あぁ可哀想なカッパさんはいなかったんだな』って多くの人は思ったと思うよ」
アレイスター『フィギュアを作る、というのはどうかね?幸いにも人気投票があったばかりだし、タイミング的にはジャストじゃないかな』
上条「それもう公式でやってんぞ。なんつーか、こう……公開処刑フィギュア」
アレイスター『あれは絶対に御坂君が騙されているよね。きっと「やー実はですねー?ここだけの話、同時フィギュアっていうかペアフィギュアって企画になっておりましてね!」』
アレイスター『「御坂さんお一人だけではなくもう一人!大人気のあの方も一緒に――おぉっとこれ以上は言えないですな!ただまぁ二人はライバルでありながら強い絆で結ばれてる誰かさんですが!」』
アレイスター『とかなんとか言ったんだけど思うがね』
上条「脳内でレッサー飼ってんのかよおっかねぇ。『レッサーを覗くものは、またレッサーからも覗かれているのだ』って格言があんのに」
アレイスター『いつの間にあの子がコズミックホラーにまで昇華したんだい?まぁ幸いにも私の今のボディは少女型だ。フィギュアでもきっと需要があると思う』
アレイスター『しかしながらフィギュアを作成するのにも初期投資が必要でね?幸い君は10万人の中から当選で選ばれた、投資をする権利がある!』
上条「久々に聞いたわその詐欺フレーズ。一時期どこのサイト覗いても出てきたのに、気がついたら何年も見てないかも」
――
アレイスター『――と、いう訳で闇ちゃんねるだ。アルバイトも兼ねているが』
上条「どういう訳?つーかお前って魔術師の中でもダントツじゃなかったっけ?」
アレイスター『ダントツなんて言葉は久々に聞いたが……まぁ、そうだね。近代魔術師の中ではトップクラスの実力と知名度だと自負している』
アレイスター『だがそれはあくまでも”裏”の話であり、”表”に伝わってる部分はまた違う』
上条「超詐欺師なんだっけ?裏もある意味そうっちゃそうな」
アレイスター『魔術にはとにかくお金がかかるものなんだよ?貴重な鉱物や媒体等、実験にも場所や施設が求められる』
アレイスター『あと出来れば人のストックもほしいところだよね。何かあった場合、私の身代わりになってくれるような忠誠心の高い子とかね』
上条「おまわりさん、この人です」
アレイスター『魔術結社の長なんてそんなものだよ?だから今日はそんな”一般的に行われていた”方の魔術の話をしよう。年代的に私が適任だからね』
上条「……聞こうと思えば大戦二つの話も聞けるんだっけか。超おじいちゃん」
アレイスター『戦争は嫌いだね。誰も彼もサイフのヒモが硬くなって困るよ』
アレイスター『まぁ近代のオカルトの話を体験した、というかやっていた側から話してほしいという依頼だね。闇咲君もいい人選をしたものだよ』
上条「俺的には一番任せてダメな人にしやがった感がある。まだレッサーに語らせた方が……」
アレイスター『詐欺師にしちゃ彼女はまだまだだね。自分で吐いた嘘を心の底から信じ込んでからが一流のボーダー――さて』
アレイスター『まぁアレだね。全部全部詐欺なんだよね、要は』
上条「ありがとう元統括理事長先生!お前の言葉で心から共感したのは初めてだよ!多分最期になるうだろうがな!」
アレイスター『あくまでも”一般的に知られているような”のは、だね。もしかしたら中にはホンモノもあったかも知れないがね』
アレイスター『どこからがスタートなのか今となっては非常に面倒なのだが。あー、まずはヘルメス主義からスタートさせようか』
上条「ヘルメスは聞いた事がある。何か速さのステータスが高くて純○の初期ペルソ○」
アレイスター『サブカルまみれの現代を、古代人が見たら卒倒しそうだけどね。まぁそのヘルメスであっているよ、ゼウスとマイアの子で叡智を司ってもいる』
アレイスター『まぁ彼の力、というか導きを受けて生まれたのが神秘主義。ただしルーツは一つはじゃなく、カバラにエジプト……まぁユダヤとエジプトの方の思想もミックスされているかな』
上条「いつ頃の話だ?」
アレイスター『まぁ紀元前からずっとだね。分類的にはインド哲学のウシャニパッドも含めるとしたら、有史以来ほぼずっととも言える。由緒正しいオカルトだよね』
上条「えーっと……目的は何?」
アレイスター『神的存在との合一化だね。そうすれば無限の叡智を得たり、肉体も強化されたりといいことばかりだよ』
アレイスター『ただ、まぁ?物理的に結果らしい結果が皆無なだけでありも何ともまぁ世知辛いよね』
上条「詐欺、とは違うのか?」
アレイスター『っていうか人たちも当然居ただろう。しかしながら当時は最新の”学問”として成立し、哲学に対して深く影響を与えたのも事実だ』
アレイスター『そしてまた否定はするだろうが、”神や超自然的な何かと一体化する”という発想は世界中の様々な宗教で使われているモチーフだからね。正直珍しくもない』
アレイスター『しかしこの流れがプツッとある日激減するんだよ。なんだと思う?』
上条「戦争かなんか?ゲルマン人の大移動だっけ?」
アレイスター『微妙に惜しい。答えは十字教の普及だ』
上条「あー……またお前コメントしづらいな!」
アレイスター『宗教としてはよく出来ていると思うよ?当時主流だったユダヤ教パリサイ派も大分ガタついてたからねぇ。タイミング的には良かったかも知れない』
上条「あんま良いイメージないんだが、本当に……?」
アレイスター『意外かも知れないけれど、十字教じゃ「魔術=悪魔の技」って定義があってね。だから奇跡以外は全部禁止ね、っていうことに』
上条「その奇跡もどうせ魔術じゃ……?」
アレイスター『――昔の話はどうでもいいとしてね!そんな訳で一度オカルトは大分減ってしまうんだよ。聖書に記された文言だけが正しく、それ以外は異端という厳しく取り締まったから』
アレイスター『まぁでもそのお陰で文明レベルが低下したのは皮肉な話だよね?』
上条「低下?どういう話だ?」
アレイスター『一番有名なのはローマ帝政時代に作られた上下水道が修復不可能になった、という話かな。”十字教的に正しい”って価値観が広まった結果、技術が失伝した』
アレイスター『そうして数百年か。イスラムの襲撃に怯えたり、逆にクルセイドして脅かしたりと一進一退を続けつつ、多少文化が豊かになると今度はこういう人間が出てくる』
アレイスター『――「そうだ!金も卑金属から作れるんじゃね!?」、と』
上条「呪われてんだろヨーロッパ。もしくは暇人しかいねぇのかのどっちかだわ」
アレイスター『研究自体は遅々としながらも前へ前へと進んでいったのだよ?現代の科学は全てこの時にベースが作られているし、決して無駄ではなかった』
アレイスター『……ただねー。研究をすればするほどある事実に突き当たってしまってだね?』
上条「どんな?」
アレイスター「『あれこれどんなに頑張っても卑金属から金を錬成するのって無理じゃね?」って』
上条「立派だろ!出来ないって分かっただけ良しとしようぜ!むしろ誉めてあげないと!」
アレイスター『すればするほど聖書からの記述とはかけ離れていくし、むしろ聖人の起こした奇跡ってアレ?――みたいな空気になっていったのだよ。非常に微妙な雰囲気に』
上条「科学さんが魔術をそげぶしたのか。いつの時代もそんなもんかなぁ」
アレイスター『えぇと順番的には17世紀の自然科学、18世紀の啓蒙思想ブームが来てね……もう神だ悪魔だのと言ってる下地が残さず剥がされてしまった、とでも言えばいいのか』
上条「悪魔を否定すれば同時に神様も否定しちまうか」
アレイスター『そこでわき上がった、というか原点回帰したのが「心霊主義」というオカルトだね。「肉体は滅んでも精神は魂として残る」という』
アレイスター『……』
上条「どした?」
アレイスター『狼と香辛○のホ○君ネタでギャグを飛ばそうかと思ったのだけれど、ファンに怒られそうな下ネタしか思いつかなかったよ』
上条「永遠に封印しといてくれ。どうせクオリティも低いんだから」
上条「てか心霊主義?やってることは前のオカルトと大差なくね?」
アレイスター『スケールが違うんだよ。前は神の存在を自分に降ろそうって思想だったのに対し、心霊主義は故人、大抵は家族や近所の人間と対話しようというレベルだ』
アレイスター『そしてそもそも「肉体は滅んでも魂は不滅」というのは十字教の大切なモチーフだからね。受け入れやすかったとも推測される』
上条「そんのが流行ったのかよヨーロッパ」
アレイスター『ではないね。心霊主義の発祥はアメリカだと言われている。それこそ社会現象になるほど広がってしまった』
上条「アメリカ?そんなイメージねぇけど」
アレイスター『とにかく社会不安が続いてね。南北戦争やそれに伴う社会的不安、それらを払拭するために必要だった、という説もある』
上条「……亡くなった人を呼んでどうすんだよ?会いたい気持ちは分かるけども……」
アレイスター『安心したかったのだろうね。死んでも無ではないし、何らかの形で続いていくという安心感を得たいと。よって降霊会なるものがよく開かれた』
アレイスター『そしてその時に使われたのがヴィジャ盤。後に日本へ持ち込まれてコックリさんと呼ばれるよ』
上条「ただのネタだと思ってたのに意外と歴史も闇も深かったんだな!」
アレイスター『他にも守護霊や地縛霊、あと心霊写真が撮り始められたのもこの頃が最初。というかブームに乗っかったのだろうと思われる』
アレイスター『しかしこの心霊主義ブームも詐欺として使われ始め、段々と衰退して行き形を変える――』
アレイスター『それが私の時代には最盛期を誇ることになる、神智学の始まりとなる訳だね』
上条「懲りないっつーか、何度でも繰り返すんだな!」
アレイスター『ちなみに神智学というのは「神とかの力をゲットしようぜ!」だね。超簡単に言えば』
上条「やだ、人類ってミレニアム二回やってもなんも成長してねぇ……!」
アレイスター『身も蓋もないことを言えばその通りなのだがね。一応補足をしておくと、神智学が流行ったのは自然科学への反発だとも言われている』
上条「反発?科学と信仰って別に方向性違くね?」
アレイスター『でもない。自然科学はそのどこにも神や神的存在があると証明していないだろう?』
上条「あー……鬱憤が溜まっていたのかなぁ」
アレイスター『まぁ信仰だからね。その証拠という訳でもないが、近代神智学は「我々は科学である」とすら名乗って活動していたからね』
アレイスター『そして”黄金”や私も影響を受けている。アンチの方であり「我々こそが秘技を受け継いだ存在なのだ」という立場だったが』
上条「実際……どうなんだ?何かこう、ホンモノとかそういうのはあったの?」
アレイスター『神智学に関しては途中からグッダグタになったとも。主要メンバーが「私はブッダやキリストと手紙で交信している」とか言い出してね』
上条「あー、ダメなパターンだわー。『UFO呼べるよ!』とか言い出して引っ込みが付かなくなっちゃう人だわー」
アレイスター『後は自然科学分野の研究が徹底的に進んで、ますます神とか悪魔とか言い出しにくくなってきている、かな』
上条「ちょっと待てコラ。それじゃ、今の世界で妙にオバケだけが語られてんのって……?」
アレイスター『神様が居ない時代に残ったのは何故か幽霊というのも皮肉な話だ』
○超簡単なオカルト変遷
BC――ギリシャ哲学とオカルトが合体したヘルメス主義の誕生
AD1〜4――政治体系がユダヤ中心からキリストへと移行。胡散臭いものは禁止
AD9〜12――欧州とイスラム(と正確にはオリエント)の文化流合が進む。錬金術が盛んになる
AD13〜16――教会の腐敗とプロテスタント勃興で倫理観グッチャグチャ
AD17――自然科学でオカルト的なものを否定
AD18――啓蒙思想で以下略
AD19――オカルト、今度は「俺たちが科学だ!」と言い始めて流行る
(※ここら辺で神や悪魔の概念が外され、霊や超能力などもっと身近なものに置き換わる)
AD20――もう完全にオカルトが現実的だという余地が失せたため、ウィッカを筆頭に魂の救済とか昔の神の復活とか言い出す
アレイスター『というか千年前の聖職者達も、神や悪魔の実存は完璧に否定されているのに、まさか幽霊だけが生き残っているとは夢にも思わないだろうね』
上条「ある意味、神様の広報担当と言えなくも……」
アレイスター『そして科学は科学で優生学、ひいては「科学的に優れている」という”””信仰”””にまで昇華される訳だ。植民地時代の話だがね』
アレイスター『ただまぁ誤解のなきように言っておくがヘルメス主義にしろ心霊主義にしろ、真面目に研究していた人間も多かったのだよ。というか殆どの側はそうだとも』
上条「なんか根拠は?」
アレイスター『そうでなければあそこまで流行らない。信じたのか、信じたかったのかは別にして』
上条「社会不安で縋りたくなる気持ちも分からないではない、か」
アレイスター『また結果的にではあるが、オカルトから派生した技術によって科学や哲学が進んだのも事実ではある。だから一概に愚かといって切り捨てるのは止めてくれたまえ』
アレイスター『魔術や幽霊などのオカルトもまた人類史の一つであり、手本にするのはともかく過去の事例として学ぶべき教訓もまたなくはない、と詐欺師側からは言っておこう』
上条「オカルトっていうと全般的に胡散臭いけども、結果的には歴史の話なのな?どっちかっていえば黒い方の」
アレイスター『まぁ何にせよ詐欺師は手を変え品を変えて来るので注意しよう、ということでもあるよ。そして詐欺師は自分を詐欺師だとは名乗らず救世主を名乗るよ』
上条「おいバカやめろ!またケンカ売るつもりか!」
アレイスター『なんというか非常に生臭い話になってしまったね。ヨゴレ担当としては鼻が高いよ』
上条「人類って意外とアホ……いやまぁ後世を振り返って評価するのは卑怯か?」
アレイスター『その時代時代に生きている人間はほぼ全てにおいて背背一杯生きているからねぇ。それこそ教会の権威がここまで落ちるとは、誰も考えていなかったろう』
アレイスター『――まぁそれはさておき少年?君にはタチの悪い守護霊が憑いてるのだが、パ×活一回で祓って上げられるよ?』
上条「『じゃ、じゃあ……!』っていうヤツいるか?あからさまなトラバサミ見えてんのに足突っ込むかコノヤロー!」
アレイスター『――閃いた!そういう文言で募集しておいて、アホがヒットしたら怖いオジサンが待っている、という商売はどうだろうか!』
上条「それ昔っからあるわ。そして詐欺の手法としちゃテッパンっていうか」
アレイスター『いつの時代も宗教”的”狂奔はあるものだね。そしてそこにつけ込むのがオカルトさ』
-終-
上条「……」 コンコン
???『キツネダンスかね?いや、流行りに乗ろうとする積極性は認めるけれども、あまりこうブームに飛びつくのもいかがなものかと』
上条「ノックしたボケでそこまで話を膨らませんなよ。あとどこの誰がわざわざドアの前からキツネのモノマネすんだ。暇か」
???『というかアレ、何がどうやって流行っているのか分かるかい?「あぁ強いられてるな女の子」とは思うんだが』
上条「大勢の人が集まってる中で言い切れば、まぁうん流行っていると言えなくもないっていうか。希望的な観測というか」
???『大概において”流行っている”ものは自然にと耳に入ってくるからね。それが不自然な時点で否という証左ともいえる訳だよ』
上条「てかそろそろ帰っていいか?先週一回付き合ったし、バイト代の分だけはきちんとツッコんだからな俺?」
???『まぁまぁそう言わずに入りたまえよ。ドア越しで話をするのもなんだしね』
上条「そんなエクストリームな場面だったのか!?まぁ別にどうでもいいんだがな!」
アレイスター(???)『お茶の一杯でも出す……あぁ丁度切れていてね。チェリ○の謎味でいいかな?』 プシュッ
上条「あぁどうも。あの大量に売れ残ってた真っ黒なヤツな。流石の俺でも『55円出してギャンブルする気には……』って敬遠したの」
アレイスター『ちなみに私が飲んでも結構謎だったよ。開発コンセプトがバグっているよね』 プシュップシュップシュッ
上条「ここぞどばかりに何本も開けんなよ!?在庫処分するつもりか!?」
アレイスター『ネタで箱買いするのは良くないということだね――それでだね。前回のVRゲームを学園都市の統括理事長殿の持っていったんだが』
上条「あれ一応建前はテーマパークじゃなかったけか?出来自体はイヤっつーぐらいのクオリティだったが」
アレイスター『いつ行っても居ないんだよ。全く、拘留中の身の上なのにね?』
上条「『もしかして;居留守』」
アレイスター『流石にそれはないね。私が一方通行のお母さんと偽って面会を求めても対応は同じだったし』
上条「原因が……うん、そんなことばっかやってっから面会拒絶されるんだよ。俺だったらするわ」
アレイスター『きちんと女性ボディになったし、メイクも寄せてみたのだが?』
上条「どんなかーちゃん想定してんの?いや一方通行のカーチャン知らないけども!息子さんに寄せていってどうすんだよ!ヴィジュアル系か!」
アレイスター『照れているという可能性もあるね?』
上条「お前ってホンッッッッッッッッッッッッッッッッットに人の心がないよな!多分実家との関係は拗れっちまってんだから、センシティブな問題なんだよ!」
アレイスター『そこは心配ご無用だとも。私もね?今では流浪の無職の身となってしまったが、こう見えて社会人としての経験は豊富なのだよ』
上条「ナメてんのかな?この世界屈指の非常識の代名詞が!ハマーに寄生してる魔神の方がまだ人間的で人道的だわ!『しょうがないにゃあ』って言ってくれるんだぞ!」
アレイスター『あの暇人ともと一緒にされるのは心外だね。私はちゃんと手土産を持っていったのだから、差し入れかも知れないが』
上条「あー……今、塀の中なんだよな。缶コーヒーでも持ってったの?」
アレイスター『いいや?”一方通行が妹達以外にヤッちゃった「暗部」職員をリスト”だね』
上条「それ脅迫じゃねぇの?今は法的なアレコレで裁判止まってっけど、その人らは普通に人権のあるアンタッチャブルな人らだろ?」
アイレスター『今にも言ったと思うのだが、命に貴賤はないのだよ?それが可憐な少女でも汚い汚っさんであっても、法的には同じだしね?』
上条「てかどこの世界の母親が、自分の息子の罪重くしようと追い打ちかけんだよ。むしろそれで会ってもらえると思ったな?」
アレイスター『その、段々楽しくなってきてね?いつキレて攻撃してくるかって』
上条「悪魔かな?あぁいや一方通行んとこにいたなそういや!」
アレイスター『まぁそんな訳で面会はまだしていないのだよ。よって我々の素晴らしい企画はまだ公開もしていない』
上条「話だけ聞いてると、お前が一方通行を脅迫してるようにしか……」
アレイスター『まさかそんなことはないよ?ただ結果的に一方通行の過去の行いを記録している媒体を偶然所持している人間が、新しい企画立案に出資してほしいと言っているだけで?』
上条「まず、お前が捕まるべきだったと思う」
アレイスター『くっくっくっく……!いいのかね?私が逮捕されてしまったら「半世紀前からある少年のために作った学園です!」と公的な場で証言するのだよ?』
上条「うん、『あ、この人は責任能力がない人ですね』って思われるだけだぞ?俺は別にどうでもいい」
アレイスター『お陰様で最近は厳しくなってきてね?心神喪失状態の認定自体が厳しくなり、かつ措置入院がほぼ必須になってだね』
上条「計画的にしようとすんなよ。お前一応世界レベルの魔術師なんだから、逮捕されるような下手打つなや」
上条「つーかさ、前回も思ったんだけどお前無一文なんだよな?」
アレイスター『当座の生活費が少しだけだね。分散した資産があるにはあったのだが……』
上条「じゃあそれ遣えよ。何か知らないけど、小銭稼ぎするよりは持ってんだろ」
アレイスター『名義が統括理事長だったものだから、ねっ?分かるだろ?』
上条「あー……」
アレイスター『その場とノリと勢いでイスを譲ったら、ほぼ無一文というね』
上条「天才とアレは紙一重っていうけど、お前はアレな方だからな?アレの天才っていうか」
アレイスター『だがまぁ新しい金策は考えてあるのだよ?私も伊達に魔法名「Beast666」を名乗っては居ないのだからね?』
上条「ケモノだっけか?」
アレイスター『なお、魔術名に使うラテン語で獣はbestia(動物)であり、何かこうノリでやっちゃったのかなと思わなくもない』
上条「そこはこう科学サイドに来るようなアレな人だから、掟破り的な意味が込められているよ、ボカしておこうぜ」
アレイスター『そんな私にとって稼ぐなど造作も無いことだよ』 プシュッ
上条「だからチェリ○(※謎味)開封すんなよ!?不味い美味い以前にカロリーオーバーも甚だしいわ!」
上条「……で、今度は何すんだ?オレオレ的なアレでもすんの?今更感があるが」
アレイスター『私はこう見えても時流に乗るのは得意な方でね?』
上条「キツネに文句言ってた人間が言っていい台詞ではないが」
アレイスター『――よし、パ×活しようってね』
上条「超待てやお前それ、なんつーかそれコンプラ違反にも程があるわボケ!?」
アレイスター『あれだろ?アイカ○みたいなものだろう?』
上条「全世界のアイカ○ファンにDOGEZAして謝れ!」
アレイスター『いやでも薄い本ではだね』
上条「いつもいつも言ってっけど薄い本だからだよ?公式じゃない人たちが好き勝手やってるだけだからな?」
アレイスター『お金も貰えて気持ちが良くなるって意味では共通してないかい?』
上条「ちょっと何言ってるのか分からないですけど、それ以上言ったらぶん殴るぞこのアホ?」
アレイスター『……カッ○をネタにした翌週にカッ○寿司の社長が捕まるとか、これはもう運命を感じるよね?』
上条「話変えるの下手か。『あぁ可哀想なカッパさんはいなかったんだな』って多くの人は思ったと思うよ」
アレイスター『フィギュアを作る、というのはどうかね?幸いにも人気投票があったばかりだし、タイミング的にはジャストじゃないかな』
上条「それもう公式でやってんぞ。なんつーか、こう……公開処刑フィギュア」
アレイスター『あれは絶対に御坂君が騙されているよね。きっと「やー実はですねー?ここだけの話、同時フィギュアっていうかペアフィギュアって企画になっておりましてね!」』
アレイスター『「御坂さんお一人だけではなくもう一人!大人気のあの方も一緒に――おぉっとこれ以上は言えないですな!ただまぁ二人はライバルでありながら強い絆で結ばれてる誰かさんですが!」』
アレイスター『とかなんとか言ったんだけど思うがね』
上条「脳内でレッサー飼ってんのかよおっかねぇ。『レッサーを覗くものは、またレッサーからも覗かれているのだ』って格言があんのに」
アレイスター『いつの間にあの子がコズミックホラーにまで昇華したんだい?まぁ幸いにも私の今のボディは少女型だ。フィギュアでもきっと需要があると思う』
アレイスター『しかしながらフィギュアを作成するのにも初期投資が必要でね?幸い君は10万人の中から当選で選ばれた、投資をする権利がある!』
上条「久々に聞いたわその詐欺フレーズ。一時期どこのサイト覗いても出てきたのに、気がついたら何年も見てないかも」
――
アレイスター『――と、いう訳で闇ちゃんねるだ。アルバイトも兼ねているが』
上条「どういう訳?つーかお前って魔術師の中でもダントツじゃなかったっけ?」
アレイスター『ダントツなんて言葉は久々に聞いたが……まぁ、そうだね。近代魔術師の中ではトップクラスの実力と知名度だと自負している』
アレイスター『だがそれはあくまでも”裏”の話であり、”表”に伝わってる部分はまた違う』
上条「超詐欺師なんだっけ?裏もある意味そうっちゃそうな」
アレイスター『魔術にはとにかくお金がかかるものなんだよ?貴重な鉱物や媒体等、実験にも場所や施設が求められる』
アレイスター『あと出来れば人のストックもほしいところだよね。何かあった場合、私の身代わりになってくれるような忠誠心の高い子とかね』
上条「おまわりさん、この人です」
アレイスター『魔術結社の長なんてそんなものだよ?だから今日はそんな”一般的に行われていた”方の魔術の話をしよう。年代的に私が適任だからね』
上条「……聞こうと思えば大戦二つの話も聞けるんだっけか。超おじいちゃん」
アレイスター『戦争は嫌いだね。誰も彼もサイフのヒモが硬くなって困るよ』
アレイスター『まぁ近代のオカルトの話を体験した、というかやっていた側から話してほしいという依頼だね。闇咲君もいい人選をしたものだよ』
上条「俺的には一番任せてダメな人にしやがった感がある。まだレッサーに語らせた方が……」
アレイスター『詐欺師にしちゃ彼女はまだまだだね。自分で吐いた嘘を心の底から信じ込んでからが一流のボーダー――さて』
アレイスター『まぁアレだね。全部全部詐欺なんだよね、要は』
上条「ありがとう元統括理事長先生!お前の言葉で心から共感したのは初めてだよ!多分最期になるうだろうがな!」
アレイスター『あくまでも”一般的に知られているような”のは、だね。もしかしたら中にはホンモノもあったかも知れないがね』
アレイスター『どこからがスタートなのか今となっては非常に面倒なのだが。あー、まずはヘルメス主義からスタートさせようか』
上条「ヘルメスは聞いた事がある。何か速さのステータスが高くて純○の初期ペルソ○」
アレイスター『サブカルまみれの現代を、古代人が見たら卒倒しそうだけどね。まぁそのヘルメスであっているよ、ゼウスとマイアの子で叡智を司ってもいる』
アレイスター『まぁ彼の力、というか導きを受けて生まれたのが神秘主義。ただしルーツは一つはじゃなく、カバラにエジプト……まぁユダヤとエジプトの方の思想もミックスされているかな』
上条「いつ頃の話だ?」
アレイスター『まぁ紀元前からずっとだね。分類的にはインド哲学のウシャニパッドも含めるとしたら、有史以来ほぼずっととも言える。由緒正しいオカルトだよね』
上条「えーっと……目的は何?」
アレイスター『神的存在との合一化だね。そうすれば無限の叡智を得たり、肉体も強化されたりといいことばかりだよ』
アレイスター『ただ、まぁ?物理的に結果らしい結果が皆無なだけでありも何ともまぁ世知辛いよね』
上条「詐欺、とは違うのか?」
アレイスター『っていうか人たちも当然居ただろう。しかしながら当時は最新の”学問”として成立し、哲学に対して深く影響を与えたのも事実だ』
アレイスター『そしてまた否定はするだろうが、”神や超自然的な何かと一体化する”という発想は世界中の様々な宗教で使われているモチーフだからね。正直珍しくもない』
アレイスター『しかしこの流れがプツッとある日激減するんだよ。なんだと思う?』
上条「戦争かなんか?ゲルマン人の大移動だっけ?」
アレイスター『微妙に惜しい。答えは十字教の普及だ』
上条「あー……またお前コメントしづらいな!」
アレイスター『宗教としてはよく出来ていると思うよ?当時主流だったユダヤ教パリサイ派も大分ガタついてたからねぇ。タイミング的には良かったかも知れない』
上条「あんま良いイメージないんだが、本当に……?」
アレイスター『意外かも知れないけれど、十字教じゃ「魔術=悪魔の技」って定義があってね。だから奇跡以外は全部禁止ね、っていうことに』
上条「その奇跡もどうせ魔術じゃ……?」
アレイスター『――昔の話はどうでもいいとしてね!そんな訳で一度オカルトは大分減ってしまうんだよ。聖書に記された文言だけが正しく、それ以外は異端という厳しく取り締まったから』
アレイスター『まぁでもそのお陰で文明レベルが低下したのは皮肉な話だよね?』
上条「低下?どういう話だ?」
アレイスター『一番有名なのはローマ帝政時代に作られた上下水道が修復不可能になった、という話かな。”十字教的に正しい”って価値観が広まった結果、技術が失伝した』
アレイスター『そうして数百年か。イスラムの襲撃に怯えたり、逆にクルセイドして脅かしたりと一進一退を続けつつ、多少文化が豊かになると今度はこういう人間が出てくる』
アレイスター『――「そうだ!金も卑金属から作れるんじゃね!?」、と』
上条「呪われてんだろヨーロッパ。もしくは暇人しかいねぇのかのどっちかだわ」
アレイスター『研究自体は遅々としながらも前へ前へと進んでいったのだよ?現代の科学は全てこの時にベースが作られているし、決して無駄ではなかった』
アレイスター『……ただねー。研究をすればするほどある事実に突き当たってしまってだね?』
上条「どんな?」
アレイスター「『あれこれどんなに頑張っても卑金属から金を錬成するのって無理じゃね?」って』
上条「立派だろ!出来ないって分かっただけ良しとしようぜ!むしろ誉めてあげないと!」
アレイスター『すればするほど聖書からの記述とはかけ離れていくし、むしろ聖人の起こした奇跡ってアレ?――みたいな空気になっていったのだよ。非常に微妙な雰囲気に』
上条「科学さんが魔術をそげぶしたのか。いつの時代もそんなもんかなぁ」
アレイスター『えぇと順番的には17世紀の自然科学、18世紀の啓蒙思想ブームが来てね……もう神だ悪魔だのと言ってる下地が残さず剥がされてしまった、とでも言えばいいのか』
上条「悪魔を否定すれば同時に神様も否定しちまうか」
アレイスター『そこでわき上がった、というか原点回帰したのが「心霊主義」というオカルトだね。「肉体は滅んでも精神は魂として残る」という』
アレイスター『……』
上条「どした?」
アレイスター『狼と香辛○のホ○君ネタでギャグを飛ばそうかと思ったのだけれど、ファンに怒られそうな下ネタしか思いつかなかったよ』
上条「永遠に封印しといてくれ。どうせクオリティも低いんだから」
上条「てか心霊主義?やってることは前のオカルトと大差なくね?」
アレイスター『スケールが違うんだよ。前は神の存在を自分に降ろそうって思想だったのに対し、心霊主義は故人、大抵は家族や近所の人間と対話しようというレベルだ』
アレイスター『そしてそもそも「肉体は滅んでも魂は不滅」というのは十字教の大切なモチーフだからね。受け入れやすかったとも推測される』
上条「そんのが流行ったのかよヨーロッパ」
アレイスター『ではないね。心霊主義の発祥はアメリカだと言われている。それこそ社会現象になるほど広がってしまった』
上条「アメリカ?そんなイメージねぇけど」
アレイスター『とにかく社会不安が続いてね。南北戦争やそれに伴う社会的不安、それらを払拭するために必要だった、という説もある』
上条「……亡くなった人を呼んでどうすんだよ?会いたい気持ちは分かるけども……」
アレイスター『安心したかったのだろうね。死んでも無ではないし、何らかの形で続いていくという安心感を得たいと。よって降霊会なるものがよく開かれた』
アレイスター『そしてその時に使われたのがヴィジャ盤。後に日本へ持ち込まれてコックリさんと呼ばれるよ』
上条「ただのネタだと思ってたのに意外と歴史も闇も深かったんだな!」
アレイスター『他にも守護霊や地縛霊、あと心霊写真が撮り始められたのもこの頃が最初。というかブームに乗っかったのだろうと思われる』
アレイスター『しかしこの心霊主義ブームも詐欺として使われ始め、段々と衰退して行き形を変える――』
アレイスター『それが私の時代には最盛期を誇ることになる、神智学の始まりとなる訳だね』
上条「懲りないっつーか、何度でも繰り返すんだな!」
アレイスター『ちなみに神智学というのは「神とかの力をゲットしようぜ!」だね。超簡単に言えば』
上条「やだ、人類ってミレニアム二回やってもなんも成長してねぇ……!」
アレイスター『身も蓋もないことを言えばその通りなのだがね。一応補足をしておくと、神智学が流行ったのは自然科学への反発だとも言われている』
上条「反発?科学と信仰って別に方向性違くね?」
アレイスター『でもない。自然科学はそのどこにも神や神的存在があると証明していないだろう?』
上条「あー……鬱憤が溜まっていたのかなぁ」
アレイスター『まぁ信仰だからね。その証拠という訳でもないが、近代神智学は「我々は科学である」とすら名乗って活動していたからね』
アレイスター『そして”黄金”や私も影響を受けている。アンチの方であり「我々こそが秘技を受け継いだ存在なのだ」という立場だったが』
上条「実際……どうなんだ?何かこう、ホンモノとかそういうのはあったの?」
アレイスター『神智学に関しては途中からグッダグタになったとも。主要メンバーが「私はブッダやキリストと手紙で交信している」とか言い出してね』
上条「あー、ダメなパターンだわー。『UFO呼べるよ!』とか言い出して引っ込みが付かなくなっちゃう人だわー」
アレイスター『後は自然科学分野の研究が徹底的に進んで、ますます神とか悪魔とか言い出しにくくなってきている、かな』
上条「ちょっと待てコラ。それじゃ、今の世界で妙にオバケだけが語られてんのって……?」
アレイスター『神様が居ない時代に残ったのは何故か幽霊というのも皮肉な話だ』
○超簡単なオカルト変遷
BC――ギリシャ哲学とオカルトが合体したヘルメス主義の誕生
AD1〜4――政治体系がユダヤ中心からキリストへと移行。胡散臭いものは禁止
AD9〜12――欧州とイスラム(と正確にはオリエント)の文化流合が進む。錬金術が盛んになる
AD13〜16――教会の腐敗とプロテスタント勃興で倫理観グッチャグチャ
AD17――自然科学でオカルト的なものを否定
AD18――啓蒙思想で以下略
AD19――オカルト、今度は「俺たちが科学だ!」と言い始めて流行る
(※ここら辺で神や悪魔の概念が外され、霊や超能力などもっと身近なものに置き換わる)
AD20――もう完全にオカルトが現実的だという余地が失せたため、ウィッカを筆頭に魂の救済とか昔の神の復活とか言い出す
アレイスター『というか千年前の聖職者達も、神や悪魔の実存は完璧に否定されているのに、まさか幽霊だけが生き残っているとは夢にも思わないだろうね』
上条「ある意味、神様の広報担当と言えなくも……」
アレイスター『そして科学は科学で優生学、ひいては「科学的に優れている」という”””信仰”””にまで昇華される訳だ。植民地時代の話だがね』
アレイスター『ただまぁ誤解のなきように言っておくがヘルメス主義にしろ心霊主義にしろ、真面目に研究していた人間も多かったのだよ。というか殆どの側はそうだとも』
上条「なんか根拠は?」
アレイスター『そうでなければあそこまで流行らない。信じたのか、信じたかったのかは別にして』
上条「社会不安で縋りたくなる気持ちも分からないではない、か」
アレイスター『また結果的にではあるが、オカルトから派生した技術によって科学や哲学が進んだのも事実ではある。だから一概に愚かといって切り捨てるのは止めてくれたまえ』
アレイスター『魔術や幽霊などのオカルトもまた人類史の一つであり、手本にするのはともかく過去の事例として学ぶべき教訓もまたなくはない、と詐欺師側からは言っておこう』
上条「オカルトっていうと全般的に胡散臭いけども、結果的には歴史の話なのな?どっちかっていえば黒い方の」
アレイスター『まぁ何にせよ詐欺師は手を変え品を変えて来るので注意しよう、ということでもあるよ。そして詐欺師は自分を詐欺師だとは名乗らず救世主を名乗るよ』
上条「おいバカやめろ!またケンカ売るつもりか!」
アレイスター『なんというか非常に生臭い話になってしまったね。ヨゴレ担当としては鼻が高いよ』
上条「人類って意外とアホ……いやまぁ後世を振り返って評価するのは卑怯か?」
アレイスター『その時代時代に生きている人間はほぼ全てにおいて背背一杯生きているからねぇ。それこそ教会の権威がここまで落ちるとは、誰も考えていなかったろう』
アレイスター『――まぁそれはさておき少年?君にはタチの悪い守護霊が憑いてるのだが、パ×活一回で祓って上げられるよ?』
上条「『じゃ、じゃあ……!』っていうヤツいるか?あからさまなトラバサミ見えてんのに足突っ込むかコノヤロー!」
アレイスター『――閃いた!そういう文言で募集しておいて、アホがヒットしたら怖いオジサンが待っている、という商売はどうだろうか!』
上条「それ昔っからあるわ。そして詐欺の手法としちゃテッパンっていうか」
アレイスター『いつの時代も宗教”的”狂奔はあるものだね。そしてそこにつけ込むのがオカルトさ』
-終-