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Clock(trial)

上条「疾風怒濤の闇ちゃんねる後編!『魔法使いの○に出て来た女神』!」

 
――

レッサー「『――はい、っていう訳でやってきました第1011回チキチキ異世界転生中継ちゃんねるのお時間ですよ!』」

レッサー「『今日の中継は異世界転生した元モブ顔のモブ田モブ男さんです!ご家族の皆さん、そしてクラスメイトの皆さんと温かく見守っております!』」

レッサー「『それでは早速モブ男さんの異世界生活をご覧頂きましょう――こ、これはっ!?これはまさかの日本人名だ!?初対面でクッソ怪しい漢字名を名乗っているぞ!』」

レッサー「『そして道で絡まれている女の子を助けたーーーーーーーーーーーーーっ!いいですねぇ、二秒前の”やれやれ、目立ちなくないんだけどな”の言葉は忘れてしまったのかーーーーっ!』」

レッサー「『かと思えばド素人が街道沿いでわざわざ野宿した上に、盗賊の襲撃を受けている!法治主義国家で育ったとは思えないヌッ殺し方をしているぞーーーっ!』」

レッサー「『あれあれー?おかしいですなー?ネコを助けてトラック転生を果たしたモブ男君が、異世界行ったらサットゥーマ人のごとき所業を!』」

レッサー「『あ、ここで中継がご両親と繋がっています!あ、もしもし?モブ男さんのお母様でいらっしゃいますか?』」

レッサー「『何か彼、異世界行ったらタガが外れたかのようにジェノサイドしてますけど、これはやっぱり教育が悪かったせいですか?それとも生まれつき?』」

レッサー「『あと何か奴隷買ってベッドインもしてますけど、お父様は一体如何お考えで?』」

レッサー「『――あ、はい!ここで大変な事実が分かったようです!モブ男さんの造った人型フィギュアには幼馴染みの方の名前をつけているそうです!』」

レッサー「『会場には……いる?中学生の頃から疎遠になり、高校は別々でスクールカースト最上位のその方はコメントは……あ、ない?興味がない?』」

レッサー「『見てください!モブ男さんが焼け野原にした帝国の下町で暴動が起きています!』」

レッサー「『あー、マズいですね。”政略結婚の道具になんかなりたくない”とかヌカしたDQN王女の台詞を鵜呑みにしたのがアレでしたねー。てか騎士団長とデキてんですけど』」

レッサー「『ではそろそろ、こちらとあちらを中継を繋げてサプライズといきましょうかね!では皆さん段取りをお忘れなく”ずっと見てたよ!月曜から学校で待ってるね!”ですよ!』」

ランシス「……とうっ」

メキョッ

レッサー「――モルスァ!?」 パタッ

ランシス「――混線していたみたい……何か、ポルターガイスト的なものが……」

上条「全力でスイングしたよね?バールのようなものっていうか、そのまんまバールだけど。レッサーが倒れてピクピクしてんだけど、これ殺人……いやまぁ大丈夫かレッサーだし」

ランシス「レッサーは心身共に強靱……クラスで『レッサー尾○』のヨゴレネームをつけられても、涙一つ流さなかった豪傑……」

上条「パンサー尾○さんに失礼じゃね?面白くないのに一生懸命なんだぞ!面白くないのに!」

ランシス「まぁ、ここは私が担当……でも、大した話はない……」

上条「それいうんだったら全部が全部そうだわ。サメ映画で三週粘ったこともあったんだからな、それ比べれば大体有意義だよ」

ランシス「ではまず……エインズワー○さんのおウチは、大体イングランドかスコットランド南部……」

上条「へー……」

ランシス「……」

上条「いや説明してくれよ!?それだけじゃ分からんわ!?」

ランシス「作中に出てくる植物……あるよね。あれで大体、何となくは……?」

上条「生えてる木や草の植生で分かるって話か?」

ランシス「じゃなくてね。えーっと、その、信仰は生活の一部……分かる?」

上条「分からん」

ランシス「えー……あ、レッサー。通訳して……」 ユサユサ

レッサー「……」

上条「『返事がない。いいのをもらってしまったようだ』」

ランシス「んー……どうしよう。喋るの、苦手……」

オルソラ?『はいどーもー、でございますよ!喚ばれて飛び出て……なんでしたっけ?』

上条「可愛いから許す!絶対にだ!……てかオルソラ?」

オルソラ?『はい、そのようなものでございますね!一神上の都合によりスペッシャルなゲストなのでございまして!』

オルソラ?『おひいさまが謎の人見知りを発動されたので、わたくしが今回のピッチヒッターならぬ永遠のバント王として馳せ参じました次第です!』

上条「テンションが妙に高いが……レッサーのバステ効果かな?近くにいる人がおかしくなるって、今度学会で発表しないと」

ランシス「言い換えればカリスマ……まぁ、誰しも人は、信じたい者を信じる……」

オルソラ?『含蓄のあるお言葉でございますね!では呪い(まじない)は生活の一部であるということですけれど、まずは日本ローカルな妖物除けの呪いにはこんなものが』

オルソラ?『旧の2月7日には長い竿に目籠(めかご)を立てかけておきまして、「眼(まなこ)千に口一つ」と唱えますと、悪鬼はそれを怖れて退散する効果がございます』
(※目籠=目の粗い籠。北関東で収集した話)

ランシス「すごいローカル……効果も家の周りとか、身近にあるモノですぐにできる……」

オルソラ?『これが呪的な要素や効果が広範になればなるほど、より大掛かりのものになるのでございます。我が国であったり我が民族であったり』

オルソラ?『そしてそれを請い願う神的存在もまた比例してスケールが大きくなるのでございますよ』

ランシス「……ゴミ出しのマナー改正だったら市役所へ……分別だったら条例、資源ゴミのリサイクルは国とか……?」

上条「例えが分かりやすいような分かりなくいような……!まぁ、何となくは分かったが、エリア○さんちの特定とどう関係すんの?」

オルソラ?『はい、そこでなのでございますが。やはり信仰というものは普通に生活している文化に根付いたものでございまして』

オルソラ?『何かお呪いをかけるとして……日本で桜の樹に願いしてもバオバブには致しませんよね?』

上条「バオバブの存在知ったのが明治以降だと思う。なんだっけか?星の王子様では悪役扱いされてたっけか」

オルソラ?『はい、現地でも”悪魔が引っこ抜いて逆さに植え直した”という話もあれば、同時に”中をくり貫いて死者を安置した”という文化もございまして』
(※他も食用にしたり住居にしたり)

オルソラ?『よって”バオバフを用いた霊装・術式(文化)”を持つ方があれば、「ユーはもしかしてアフリカかマダガスカル、オーストラリアから?」ということに』

上条「持ってる文化で出身が分かる訳か。ってことはエインズワー○さんちも?」

ランシス「……あそこで使ってた植物とか、呪文とか……憶えてる?」

上条「一番印象的だったのはヤドリギだよな。なんかよく分からない神様とセットだったし、ロ×大勝利の女神も出て来たし。他の呪文は何となくしか憶えてない」

ランシス「イチイの樹は幹が弓の材料になって、種子が毒になる……実を食べて、木は工芸品に使うナナカマド……」

ランシス「あと大事なのは……ヘーゼルナッツ……知ってる?」

上条「たまにチョコかアイスに入ってる」

ランシス「そう……そのヘーゼルナッツってハシバミの実……ケルト人が脂質やビタミンBとEを補充するのに食べてた……」
(※石器時代からの人類の友)

上条「あぁそう!?よく『ハシバミってなんだろう?』とか思ってたけど、俺らもそこそこ食ってんのなハシバミ!?」

ランシス「この時点で……魔術師と文化人類学者は『ケルトかな』って分かるんだけど……キーポイントはヤドリギ……」

上条「ドルイドが崇めるとかなんとか」

ランシス「間違いではない、正しいのは正しい……ん、だけども。よく誤解される――」

ラシンス「――アイルランドのケルトは、ヤドリギをそれほど神聖視しない……」

上条「同じケルトなのに?」

ランシス「文化の違い、というか……」

オルソラ?『主に生活様式での違いでございますね。ケルトに関して最大の資料である「ガリア戦記」ではガリア地方、つまり現在のフランスのドルイドの文化が記されております』
(※カエサル=クレオパトラの旦那が書いた本)

オルソラ?『そこではオーク、まぁ楢の木に生えたヤドリギを呪術的なものとして崇め、利用致しました――が』

オルソラ?『これはケトルにとっての船の材料もまたオークであり、航海や貿易を支える木への信仰という側面があるのでございます』

オルソラ?『しかしながらアイルランド地方では、言ってしまえばそこから北へ足を伸ばすということもなく。ケルト人は定住したのでございまして』

オルソラ?『するとより実生活にとって大事な、日常的に必要となるイチイ・ナナカマド・ハシバミ等が信仰の対象として大きなウェイトを占めるようになったと』

ランシス「……元々が同じ民族でも、住む地域によっては全然違う……というか多分、そこまで同胞意識はなかった……」

上条「でも作中でヤドリギ取りに行ってたよな?」

ランシス「うん……だから、『ガリア戦記』にはそう書かれていたんだけど……フランスに近いケルト人は”そう”なんだと思う」

ランシス「海の近くであれば漁もするし航海もする……だから『イングランドかスコットランド南部』、じゃないかなって……」

オルソラ?『当然ガリア側にもヤドリギを神聖視しないケルト人もいらっしゃったかと。国境線で一律線を引けるのではないのでございますよ』

上条「最初のトピックなのにエッラい時間かかったけどありがとう!てかマニアって怖いな!そんな細かいところから分かんのかよ!」

ランシス「それがマニアのマニアたるところ……それじゃ、改めて女神の解説、というか……なんだろ?因縁付け?」

上条「そんなのばっかだな!」

ランシス「えぇと……冬に鹿ケンタウロスに乗った女神、あと春にロ×ペ×大歓喜のクマを連れた女神……これが同じのだって、分かる……?」

上条「三相女神だっけ?同じ神様でも季節や加齢によって姿が変る。セレーネのとき散々やったよな」

ランシス「うん、そう……根本的には同じモノが、姿と役割を変えて……っていうか信仰、というか、まぁ概念……」

ランシス「それでね、順番にいえば……鹿ケンタウロスの女神は『サイヴ』……ティル・ナ・ノーグの女神」

上条「てぃるなのーぐ?」

オルソラ?『主にアイルランドを中心に語られているケルト神話群でございますよ。クー・フーリン卿が有名なので』

上条「あー、はいはい。ヌァダとかそういうのか。聞いた事はないが」

ランシス「実はそこそこ有名……フィン・マックールの伝説でフィンと絡むし……」

オルソラ?『フィン=マックールは一連の騎士英雄譚なのでございますが、その中で騎士団長だったマックール卿が森で狩りをしていると猟犬が狩ろうとしない牝鹿を発見するのでございます」

オルソラ?『訝しく思ったマックール卿は鹿を騎士団寮まで連れ帰るとアラ不思議!鹿は見目麗しい女神へと姿を変えたのでございますよ!』

上条「『もしかして;女連れ込んだだけ』」

ランシス「そこ……ロマンのないことを言わない……1,200年ぐらい同じツッコミされてるだろうけど……」

オルソラ?『マックール卿が詳しい事情を尋ねてみたところ、「闇のドルイドの求婚を断ったがため、鹿にされるという呪いをかけられた」と』

オルソラ?『マックール卿は彼女に惹かれ求婚しましたが、サイヴは「人間とは流れる時間が違う」と最初は断られました』

オルソラ?『ですが何回も求婚を受けていくにつれ、「まぁこれはこれで」と思うようになりついに二人は結ばれるのでございますよ……ッ!』

上条「超主観入ってね?神話なのにザルいの?」

ランシス「よくある話……多少アレな感じでも、見た目が可愛いからいっかな、的な……?」

上条「そういった意味で人類は果たして前へ進んでいると言えるんだろうか……ッ!?」

オルソラ?『難しい話は後世の研究者へ托すと致しまして、マックール卿とサイヴはめでたく結ばれるのでございます――が、しかし!』

オルソラ?『あるときマックール卿が城を開ける際、闇のドルイドがマックール卿の姿になりすましてサイヴを連れ出そうとするのでございます!あぁ魔の手がそこまで!』

オルソラ?『サイヴが逃れようと城から一歩出た途端、その姿はまた牝鹿へ代わり、森の中へ逃げ出したのございますよ……ッ!』

上条「想像してたよりもマイルドな展開で良かった。薄い本にならなくて」

オルソラ?『その悲劇から数年後……マックール卿は何年も何年もサイヴを探すのでございます。一年が過ぎ二年が過ぎ……そして七年ほど経ったある日、森の中で野生児を拾うのでございます』

オルソラ?『その少年へ言葉を教えると、少年は「僕の母親は牝鹿だった、黒いドルイドが連れて行ってしまった」と語り、マックール卿は息子との対面を果たすのでした……!』

ランシス「と……いうのが女神サイヴの話」

上条「んー……微妙に違くね?鹿ケンタウロスは……あぁ、息子か!かーちゃんと一緒にいるのな!」

ランシス「実物を見てないから、どうとは言えないけど……眷族と夫を兼ねている、ってことも珍しくはない」

オルソラ?『ケルトでは鹿が異界の神の使いであるとされておりまして。アーサー王やガラハッド卿を導くのは”鹿”の役割でございますよ』

オルソラ?『また”マビノキオン”で王が妖精界へ導いたのも鹿でございますね』

上条「なんか釈然としないな」

ランシス「ぶっちゃければ……牝鹿になった落ち女神なのだから、牡鹿の伴侶を持つのは当然っちゃ当然……」

オルソラ?『あくまでも一解釈ではございますが、サマインの日は魔力に満ち溢れており、偶然人型に戻ったのを目撃した、という可能性も』

ランシス「鹿ケンタウロスは獣と血が混ざっている……だから部分的に、ってゆう」

上条「納得したくはねぇけど、矛盾点はそんなにないよな。少なくとも俺がツッコめるようなのは」

オルソラ?『サイヴは神話の中で出産もしておりますし、人と獣を繋ぐ豊穣のシンボルでもあると存じますのですよ』

ランシス「逆に考えると……牡鹿を人として神に捧げる贄になっていたとも……」

上条「嫌な話すんなや!?昔ってそんなんばっかか!?」

ランシス・オルソラ「『そんなんばっか(で、ございますね)』」

上条「君たちは、もっとこう人を思いやる心を持った方が良いと思うな?」

ランシス「……覚悟が足りない……人類史がガチで闇な時代は長いし、直視できないんだったらやめるべき……」

オルソラ?『某大陸では「アルビノが体に良い」という迷信が罷り通っておりまして、東京パラリンピックに出場された某選手は』

上条「ごめん、その話いいわ。流石に俺の人生に関係しないと思うしさ」

ランシス「……普通に考えればそうだけど、油断はできない……白い人の最終回」

上条「一方通行が引くぐらいの悪役を重ねていった結果、色々と厳しいことになったよね!放送できないっていうか!」

オルソラ?『そして最終的には「屍喰部隊可愛かった」で全てが締めくくられるのでございますよ』

上条「まぁそうだけどもな!KAWAIIは正義みたいな業界だけどさ!」

ランシス「ではロ×神繋がりで、クマと一緒に出て来た女神を……『アルティオ』かな」

オルソラ?『ケルト語で「クマ」という名前の女神でございます』

上条「思った以上にそのまんまだな。こっちも有名なのか?」

ランシス「ある意味では……そうかもしれない」

オルソラ?『今から190年ほど前、スイスのベルンで発掘された像がございます。その像の解釈をめぐって学会が真っ二つに割れてしまいましたので』

上条「学者さんの中で色々な説が出るのは当り前じゃ?」

オルソラ?『それはそうなのですけれど……まぁ取り敢えず画像をご覧くださいなのですよ』

上条「パッと見てクマの自己主張強いな!半分ぐらいがクマがガオーってやってて、女の人が喰われそうになってる」

上条「あ、でも怖がってはないのか。女の人は椅子に座ってなんかコップ持ってるし、むしろ寛いでる……?」

オルソラ?『より正確にはクマさんの背後には樫の木が創られておりまして。全ブロンズ製であり、台座には「女神アルティオに捧げる」と彫られてございます』

上条「つーことはこの女の人がアルティオなんだよな。『クマー』の方じゃなくて」

ランシス「……議論になっているのは、”それ”」

上条「……クマが女神?」

ランシス「うん……『女神アルティオの化身であるクマへ、女性を捧げている』……っていう解釈」

上条「あー………………そりゃクマだもんな。今でも時々喰われっけど、大昔じゃ比較にならないぐらい脅威だったんだろうが」

ランシス「だからまぁ、”そういうの”を神格化したっていうか、自然の驚異を表したような……って説が一つ」

オルソラ?『もう一つが、こちらの女性そのものが女神アルティオだというものでございます』

上条「ふーん?それじゃこのクマは何?」

オルソラ?『それは力ある神であり、女神アルティオと契りを結びに来た、ということではないかと』

ランシス「つまり……エ×いことだ……ッ!」

上条「知ってるわ!オルソラがボカしてくれたんだからツッコむなよ!」

オルソラ?『ゼウスやロキが姿を変えて、という話は古くからございますので。その例に習い女神アルティオへ祝福をもたらすクマーと』

上条「それクマはクマでも別のクマーじゃね?一部ペ×ペアーで有名な」
(※海外でロ×画像リンクと一緒に多用されたAA。クマ=人喰い=性的犯罪者)

ランシス「よって春に出るロ×の周りにクマがいるのは必然とも言える……『魔法使いの○』は後者だと解釈してるっぽい」

オルソラ?『加えて申し上げますと、春の女神が少女アルティオ、冬の女神が妊婦サイヴ。同じ存在が季節ごとに循環しているのを表しておられるようで』

上条「はーい、質問でーす!骨先生が『旧い神ってワッケ分からんから危険』って言ってたけど、そこら辺はどうだったんですかー?」

オルソラ?『えぇとでございますね、あくまでも既存の伝説を元に回答致しますと、ちょっとした「行逢い神(ゆきあいがみ)」の性質も持っておられまして』

ランシス「春の少女と遭遇したらクマに喰われ……冬の妊婦に出会うと冥界の使いである鹿ケンタウロスに病気をもらう……かな?耐性や信仰次第……」

オルソラ?『なお、こちらの女神アルティオに関しての余談でございますが、件の遺物が発掘された場所はスイスのベルン。首都でございますよ』

オルソラ?『その名前と地名の由来が”クマ”を表す”「ベルン」というのも奇妙な偶然といえばその通りなのでありまして』

上条「古語でクマって名前の街からクマの遺物かー。ちなみに由来は?」

ランシス「そこを拓いた君主のツェーリンゲン大公が殺したクマ……が、いたらしい。つまり……まぁ隠喩。異教の神を弑して十字教大勝利的な……」

上条「あぁまぁ、それについては今更どうとは言わないが……大体分かった。つーか『魔法使いの○』スゲーな!結構伝承や伝統を元にして作ってる!」

ランシス「んー………………と、多分だけど、物語の都合上、改正を食らったであろうキャラクターがいない、ってこともないんじゃないかなぁと……」

オルソラ?『日本語版&英語版ウィキで「○○年度版まで存在するのに、××年度版以降は姿を消す」というお話もない訳ではなく』

上条「一体何の話をしてるんだろうな!その謎は長編SS『虚数海の女王』で明らかになるぜきっと!」
(※新型コロナが落ち着かないことには。カルタさん関係)

ランシス「まぁ、私たちからはこのぐらい……あ、そうそう。”あいつ”って、まだ……興味ある?」

上条「どいつ?」

ランシス「あの……角を持ったの」

上条「ケルヌンノスな。ないことはないけど、闇咲も『どんな神様なのか分かってないんだから下手に拝んだりすんのはやめとけ』って言われてんだよな」

ランシス「うん、それが賢明……最悪”ベル”だから、近寄らない方がいい、よ?危ない……」

上条「べる?鈴の?」

オルソラ?『イギリスで発見されております「ウェルベイア」という女神がございますよ。石碑に名とお姿が残されてあったのでありまして』

オルソラ?『その姿は頭に大きな三角の帽子を被り、両手に一匹ずつ蛇を持っておりました』

上条「随分とインパクトがある感じだな。怖いっつーか」

オルソラ?『同銘文には二世紀頃に派兵されたガリア人兵士の名もあり、その方の故郷近辺でも似たお姿の遺物が発掘されているのでございますね』

上条「二世紀!どっかのテロリストが聞いたら爆破しそうだよな!」

オルソラ?『そして「この像はケルヌンノス」と言われていたレリーフが、本当は「ウェルベイアじゃないのか?」というお話が』

上条「おぉ、何か違うのか?」

ランシス「フランスで見つかったケルヌノスの遺物……『鍋』では、”あいつ”が片手に蛇を持ったポーズ……だから最初はウェルベイアも、って言われてたんだけど……」

オルソラ?『その両手に持つ蛇が”バーベナ”の花模様でありまして、「あぁこれは女神ウェルベイアに相違ない!」と。議論は分かれておりますが』

上条「……闇咲とインデックスが言ってたな。『似たような何かが合一された』って……」

ランシス「なので……”あいつ”にもウェルベイアが混ざっている、もしくは正体の一つである可能性が高い……実際にイギリスとフランスで見つかっている、し……?」

オルソラ?『それだけであれば、まぁまぁそうこともあるだろうで終わる話なのでございますけれど……この女神、近くのヨークシャーのワーフ川の精霊だという説もございまして』

上条「いいじゃないそういうの好き。昔は神様だったのが、今は精霊だって残ってるとかロマンがある!」

ランシ「……元々はワーフ川が、二つの川の交わるところで……蛇を二匹持っているのは、その象徴だって話で……」

上条「あー、日本のヤマタノオロチもそうじゃなかったっけ?たくさんの川が合流するところが氾濫して、よく人が亡くなってるから神格化したっていう」

オルソラ?『まぁそういう解釈が一般的なのですよ。ただそうするとイギリスの発祥の神がどのようにして輸出したか、という疑問も残りますけど』

上条「そのフランス人兵士さんも近くに川があったとか?まぁ、大体のところにはありそうだけど」

ランシス「……まぁ、それでね。その川っていうか、精霊信仰のお奉りっていうか……捧げ物がちょっと問題が、ね……」

上条「お、なんだよ?人でも捧げるっていうのか?まさかなー、HAHAHAHAHA!」

ランシス・オルソラ?「『……』」

上条「笑ってくれよ!?俺も自分で話してて『地雷踏み抜いたらどうしよう?』って軽くホラーなんだから、ねえぇっ!?」

ランシス「……そーゆーこっちゃない。多分そうだったらもっとマシだったし、他でもたまに聞くし……?」

上条「人じゃないんだったらよくね?人身御供アホみたいに捧げて、最期の頃は戦争してぶんどってた海原エツァリさんのご実家に比べれば」

ランシス「んー……まぁいいか。精霊ウェルベイアは美しい石や鉱物などの無機物を半分、美しい花を必ず入れた骨などの有機物で残り半分……

上条「……はい?川の精霊さんにしては、なんかこう、きな臭いっていうか、クセが強くね?無機物と有機物って、そんな概念昔からあったのかよ」

上条「あと骨って……なんで骨?どうして骨?カルシウム不足かなんか?」

オルソラ?『これは最も原初の殺人の話でございますが、ある兄弟が神へと捧げ物をしました。しかし神は弟である牧者の供物を喜び、兄である農夫は無視したと』

オルソラ?『嫉妬に狂った兄は弟を殺し、神から罰を受けるのでございますよ。ねっ?』

上条「俺が聞いたことがあるレベルに有名な話だが……似てるか?」

ランシス「均等に別のものを供える……のが、微妙に?肉親殺しはそこそこある――」

ランシス「ただなー……『蛇』がちょっと」

上条「蛇?」

ランシス「フランス側のレリーフだと……左手で蛇を二匹持ってる……これが大変、『伝令の杖』……」

上条「……どちらさん?」

オルソラ?『伝令神メルクリウスり持つ杖でございます。二匹の蛇が絡みついた杖、別名「ケーリュケイオン」とも申しますのですよ』

ランシス「その原型か、初期型になった可能性が……なくは、ない」

上条「それが何か――」

ランシス「名前……ウェルベイアは”VERBEIA”って書く……」

上条「唐突な話題転換で困惑してるんだが……『べーべいあ』じゃねぇの?なんでウェル?」

オルソラ?『ここからは語学の話になるのでございますが、元々はケルト人は文字を使わず、口伝によって神話を語り継いできたのでございます』

オルソラ?『ですが、時代が経つにつれ処々の問題、主に異教からの圧に耐えかね文字にして書き起こしたのでございますが――それが大体11世紀頃でした』

ランシス「まぁ……そこまでは良かったんだけどね……問題はアイルランドで使っていた『ゲール語』には共通語がないっていう……」

上条「共通語がない?」

ランシス「同じクーフーリンの名前でも……ク・フーリン、キュクレイン、クー・ハラン、クー・クラン……とにかく、すっごい色々な読み方がある……」

上条「沖縄と青森で方言合戦でもしてんのか」

ランシス「そしてタチの悪い事に、時にはスペルすら変化する……!」

オルソラ?『聖剣正拳伝説で有名な”Avalon(アヴァロン)”が”Awarnach(アワルナッハ)”と……えぇまぁ、前後の韻を踏んで、ぶっちゃけノリで変えてございます』

上条「ラッパーか!後々読む人考えろや!?」

ランシス「一応……うん、似たような作りのにはマヤ文字とヒエログリフがあって……『同じ意味の単語でも二回重ねるときは見た目重視で変える』みたいな……」
(※マジです。特にマヤのは酷い)

オルソラ?『えぇ……もうそれはそれは多くの考古学者を苦しめてまいりましたとも』

ランシス「そしてまた、今度はラテン語へ翻訳するにあたり……Pケルト語とQケルト語でしっちゃかめっちゃかに……ッ!」

上条「涙拭けよ、なっ?いつか誰かが解き明かしてくれるから、俺じゃない誰かがいつかさ?」

ランシス「……そんな訳でウェルベイアも”あれ”のルーツになってるかもしれないから、まぁ気をつけるといい……」

上条「ケルヌンノスのか?何かまぁ今更だし、こっちだと色んな宗教があっからいいと思うぜ?」

ランシス「……そう?ならまぁいいか……ベルゼブブ信仰なんて、よく受け入れるよね……」

上条「そうそうベルゼブブベルゼブブ!メガテンで一番か二番目に強い魔王でマハジオン○からの即死コンボ使ってくるから耐電装備は忘れずに、なっ?」

上条「――って言うかぁっ!?いくら日本の懐が(ムダに)広いっつっても限度があるわ!?ベルゼブ○嬢を崇めるオッサンはそこそこいっけど、オリジナルまではねぇよ!?」

上条「え!?つーかベルゼブブ!?イギリスの川の妖精さんが!?」

オルソラ?『ではスペルをもう一度、”VER-BEIA”』

上条「ドイツ語読みにしたらそれっぽいけど!?ベル・ベイアって読めなくもないけど!?」

ランシス「まず……”あいつ”――ベルゼブブそのものもいくつかの異教の神々のキメラ……文字通りの悪魔合体ではあるんだけど……」

ランシス「その中核になったのがバアル……フェニキアの嵐と雨の神にして主神……」

上条「ウェルベイアとは水繋がり……?」

ランシス「当時のガリア……まぁフランスも、航海か貿易の神様として信仰されていた神はいて……統合したのが女神ウェルベイア、かもしれない……」

オルソラ?『バアル神の神像は「ケーリュケイオン」をお持ちのもございますし、悪魔ベルゼブブは日本の有角で描かれておりますので』

オルソラ?『女神ウェルベイアが系譜である可能性は僅かながらあるかと存じます』

ランシス「そして当然ケルヌンノスと相通じるってことは……まぁ、現代であの神を拝んだら、ね……?分かるよ、ね……?」

上条「本当に業が深いな新興宗教の人ら!正体不明だからって奉り上げたらそのザマかよ!」

オルソラ?『某関西ローカルタレントで、実話怪談を長く続けながらご本人は全くの無傷。唯一の瑕疵は○○○○へ公共の電波を使ってケンカを売って干されたぐらいの方がおられるのですが』

上条「北野○さんだよね?もしくは旧芸名MOKOT○?」

オルソラ『その方曰く、「そこら辺に転がっているようなお社を無闇矢鱈に拝んではいけない、何が奉られているのか分かったものではないのだから」と』

上条「怪談ビジネスやってる人が言うのはどうかと思うが……てか本当に祟りとかバチとかあるんだったら、その人は今のポジにいないし」

ランシス「――だが、しかし……それには反証が……ッ!!!」

上条「おぉ!言ってやれプロの方!」

ランシス「……趣味と職業柄、そんなワッケ分からん社や祠の写真や動画を死ぬほど撮りまくっている上……腐るほど祈ったりしても普通に生きてる人間がいる……ッ!!!」
(※『もしかして;私』)

上条「ネタにしていいのかそれ?『何もなくて良かったね!』の間違いだろ?」

オルソラ?『まぁ当り前の話でございますが、神様仏様もそれほどお暇ではなかろうかと存じますので、影響は皆無かと』

ランシス「毎日祈りを捧げてる人の背中を押すことはあっても……たまーに来るような人を助けるかどうかは……うんまぁ、逆もそういうことだよね……」

オルソラ?『信仰が薄いのもそれはそれで生き方でございますよ』

ランシス「まぁ……『魔法使いの○』に関してはそのぐらいかな……?概ね歴史や史実に関しては忠実……」

オルソラ?『そして違っていたと致しましても、所詮聖書も預言書も人の書いたものでございますので。私たちには預かり知らぬ事なのでございますね』

上条「あぁどうもありがとう。終盤で疲れがドッと来やがったけど、なんかこうケルトの神様が少しだけ理解できた感じで」

ランシス「どういたしまして……あ、そろそろ時間が』

オルソラ?『お耳汚しでございましたよ――――――きひっ』

バタンッ!!!

闇咲「――どうした!?大丈夫か!?」

上条「大丈夫って、なんだよ急に?なんかそっちであったのか?」

闇咲「いや、こちらから腐った水の魔力が……」

上条「魔力?あぁ、丁度今俺の友達が来て話聞いてたから、きっと持ってる霊装かなんかだよ」

闇咲「……友達?」

上条「多分初対面だな。えっとこちらがランシ――えっ?」

闇咲「誰も、いないのだが?」

上条「え、待て!今の今までずっと、あれ!?」

闇咲「……疲れているな。確かに君を連れ回した私も悪かったのだろう

上条「いや違う違う違う!ほらその証拠にこれが!」

闇咲「……バール、だが?しくはバールのようなモノと称される工具だ」

上条「違う!これはバールじゃなくて――」

上条「――バアルのようなモノだったんだ……ッ!!!」

闇咲「ちょっと何言ってるのか分からない」


-終-

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