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Clock(trial)

上条「疾風怒濤の闇ちゃんねる前編!『ウィッカとケルヌンノス』!」

 
――

闇咲「闇咲だ。今回もスペシャルゲストをお呼びしてある」

バードウェイ「噎び泣け全国のロ×どもよ!平伏してクツを舐めるのであればビンタしてやらんでもない!」

上条「英才教育し過ぎっすわボス。それで『ありがとうございます!』っていうヤツは……あぁまぁそこそこいるな!ゼロって訳でもねぇな!」

バードウェイ「『ロ×にトマトのように××××砕かれたい』という癖(へき)もあるそうだな?お前ら大丈夫か?」
(※出典;なつくもゆる○)

上条「なぁ闇咲、今日のゲストってボスでいいの?もっとこう穏当な人っていうか、人選的にフラットなのはなかったのか?体型的にじゃなくて」

闇咲「もう一人いるにはいるのだが、そちらともなるとモロ当事者になる。従って彼女にご足労頂いた。急な招請に応えてもらって感謝の言葉もない」

バードウェイ「まぁ気にするな!愚昧を導くのも立場ある人間のすることだからな!」

上条「超偉そうなんですけど、本日のテーマは一体?」

闇咲「ネオ・ペイガニズムだ。彼女の長編SSでやったような感じではあるが」

上条「昔の神様を崇めようって体裁の新興宗教だっけ?前回が『魔法使いの○』のケルヌンノスだったし」

闇咲「前回はケルヌンノス自体にスポットが当たっていたため、あんなのが生まれた土壌というか、彼らの背景を切り込みたい。今回はかなり真面目な内容になるので心して聞いてほしい」

バードウェイ「笑うところはもうないぞ?あるとすれば渇いた笑いが出るぐらいだぞー?」

上条「ボスが言うんだったら相当っすよね!」

闇咲「まずそのネオ・ペイガニズムといわれている宗教のことだが、一般的には『ウィッカ』や『ウィッチクラフト』などと自称している団体だ。長いので以後『ウィッカ』で統一する」

バードウェイ「その名の通り”ウィッチ”であり、男性も女性も魔女であるというのが彼らの言い分だな」

上条「男も魔女なのか?」

闇咲「そうだな、魔”女”なんだよ。魔法使いではなく」

バードウェイ「そこがポイントとも言えなくもないがね。まぁ憶えておくといい、あとでまた出てくるから」

上条「また特大の地雷になりそうな予感……!」

闇咲「まぁ彼らの話をどこからしたものか迷うのだが……教義から行こうか。まず初期人類は狩猟生活をしていた、ぐらいの歴史は分かるだろうか?」

バードウェイ「槍持って毛皮被ってウホウホ言ってた時代だ。二万年ぐらい前だな」

上条「高校生バカにしてんのコノヤロー。日本史や世界史の初期の初期ぐらいは誰でも知ってるわ!壁画とかに獲物の絵とか描いてたヤツだろ?」

闇咲「その通りだ。『その時代の信仰がウィッカだった』と彼らは主張している」

上条「………………あい?」

バードウェイ「いや、だからな?大昔、まぁ石器時代に文字もなく、洞窟に壁画描いて自己主張してた時代があっただろ?当然その時代にも神が居て多分信仰してたと」

バードウェイ「そのよく分からん神とウィッカが崇める神は同一のものであると言っている訳だよ。バカだよな」

上条「い、いや大昔の俺らが何か崇めてたのはそうだと思うよ?それが太陽だったり海だったり、まぁ狩った獲物だったりするだろうけど」

上条「……それと同じものを信仰している、って証拠だったり根拠はどっから?」

闇咲・バードウェイ「ない。全く」

上条「あれあれ俺バステ喰らってるか?混乱系のさ?」

闇咲「気持ちは分かるが、現実を見たまえ。彼らは見てないのだが、まぁとにかく主張として『私たちの信仰は人類の有史よりも古い時代から続いている』そうだ」

上条「はぁ、あぁいや!はぁじゃねぇよ!根拠は?何かこう歴史書に残っていたとか、そういう感じの?」

バードウェイ「『昔の人は自然や自然を神格化して崇めていた”だろう”、だから私たちも自然や自然を神格化して崇めれば同じ”だろう”』、だ」

上条「そんなフワッとした概念で同じって言ってんのか!?」

闇咲「……一応まぁ主神というか、二柱の神が主体となっている。片方が有角神、角が生えた男の神だな」

バードウェイ「そしてもう一つが女神。地母神であり豊穣の神だよ」

上条「あ、あぁ良かった!きちんと崇めてるんだったらそういうのだよ!そういうのがほしい!ケルヌンノスだよな!」

闇咲「そうでもあり、違うともいえる。何故ならば彼らにとって全てが”それ”だからな」

バードウェイ「なんというかな。ウェールズのウィッカ曰く、『男神はパン、女神はダイアナ』なんだそうだ」

上条「ま、待ってくれよ!このコーナー始まって以来に意味が分からん!」

闇咲「どこの国のどんな神であっても、有角神であればウィッカの男神、地母神であればウィッカの女神――」

闇咲「――それが”自動的”に定義されるんだ」

上条「……はい?」

バードウェイ「ウィッカ曰く、多神教のゴテゴテとした信仰は後付けらしいんだよ。よって始祖の、自然信仰に近い部分のみが真理であり、あとは全て余計なものなんだと」

闇咲「つまり日本人のウイッカがいればケルヌンノスに当たる神がイザナギであり、ダイアナに当たる神がイザナミだと主張するだろう」
 
バードウェイ「それぞれの国で、それぞれの宗教でどのような呼び方をされていても、役割や外見が有角神と地母神であれば、それは彼らの神なんだそうだ」

上条「……バカなの?」

バードウェイ「バカだよ?ちょっとアレな子が引っかかる新興宗教だ」

上条「あー……仏教って神様……まぁ信仰だから仮に神様として、念仏唱えたり、結婚式挙げたり葬式したりするよな?」

闇咲「それが一般的な信仰だな」

上条「十字教も神の子とその父親崇めて、十字架持ったり、これこれこういう逸話があって、祈り方があってってなってんだよな?」

バードウェイ「私も一応十字教徒だな。その認識に間違いはない」

上条「んで多分、他の宗教。ヒンズーだったりイスラムだったり、なんだったらエジプト神話?色々あるけど、別じゃん?歴史的にも文化的にも、成立した過程が違うのに」

闇咲「彼らに言わせれば『ウィッカ』なんだそうだ。オシリスが有角神、ハトホルが地母神」
(※本当にそう主張しています)

バードウェイ「ついで言うとシヴァかどうとも言っていたな。有角だから男神か」
(※マジで言ってます)

上条「……じゃあ、なんだ?ウィッカって人は、世界中の神話とか伝説を捕まえて勝手に『ウチの子ですよ!』認定してんの?」

闇咲「端的に言えばその通りだ」

バードウェイ「私が挙げたウェールズ派のダイアナはローマ神話、パンはギリシャ神話だからな。懐が深いといえばそうなのかもしれんがね」

上条「……カルトなの?」

闇咲「カルトだな。まぁその、なんていうかカルトだ」

バードウェイ「世界各地に神話があり、ある程度の類似性がある訳だ。大地を産んだ神がいたり、狩猟の神がいたり、刀剣や火、器物の神だっている」

闇咲「場所が違っても人間の生活なんて然程差はないからな。登場する神々も似通っているし、共通する特徴もある」

バードウェイ「その中でも原始信仰に近い狩猟神、そして地母神を信仰する行為こそがウィッカなんだそうだ。どうだ?理解出来ないだろ?」

上条「なんか、なんかこう引っかかるわ!果てしなくデカい小骨が喉に刺さってる感!」

闇咲「まぁ百歩譲って昔の神々を信仰するのはいいとしよう。信仰の自由だからな?」

バードウェイ「私も好き好きだから自由だと思うんだがね。ただなー、その方法がなー」

上条「な、なんかマズいのか?方法がおかしいとか?」

闇咲「そうだな。例えば君が仏教徒として信仰を表すのであればどうする?」

上条「俺!?……出家しないんだったら、お経憶えて唱えたり、ありがたいお守り買ったり、お坊さんの話を聞いたり?」

バードウェイ「それを十字教風に言うと『聖句を唱え、ロザリオを掲げ、司祭に導かれる』となる」

上条「やだちょっとハイカラ!……ん?待て待て、こないだやったケルヌンノスさんって全然記録残ってないんだよね?」

闇咲「名前と姿が辛うじてだな。役割も推測だ」

上条「んじゃどうやって信仰してんの?特に何かブツブツ言う事もなく、ただ祈るだけか?」

バードウェイ「バッカお前、そりゃ決まってるだろ?――『俺が考えたきっとこうであろう古い信仰方法』ってオリジナル信仰に!」
(※マジです)

上条「い、イヤアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?中二が!!中二病が窓に窓に!?」

闇咲「……ウィッカのな、何が最も度し難いかといえばだ。歴史的な経緯やら既存の信仰や伝統、更には辛うじて残っている古信仰をマルッと無視するんだ」

バードウェイ「笑うぞー?面白いぞー?だって連中釘ナイフモドキを自作したり、ヴァイキングへルムモドキを勝手に作って飾って信仰にしてるんだぞー?」
(※モノボケしてんかのっていうぐらい杜撰)

闇咲「その一例としてはルーンだな。ウィッカでは自分の名前に近いスペルのルーンで自分の名前を刻んで魔除けとする、らしい」

上条「へー、そんな使い方してたんだ?」

バードウェイ「いや、してないな。というかお前のダチのバーコード神父が知ったら助走をつけて炎剣ぶちこむような使い方だ」

上条「助走関係なくね?物理的な何かじゃねぇんだから」

闇咲「日本語に例えるのならば……バードウェイ女史を『羽亜弩飢位(ばあどうえい)』と日本語で当て字をし、その文字を『これがルーンだ!』として持ち歩く」

上条「茨城のヤンキーか」

闇咲「文明としてのケルトが何故失伝か多くが失われていたのか分かるか?」

上条「民族的な抗争で負けたとか。それこそ十字教との兼ね合いで」

バードウェイ「それも間違いではないのだがね。その最たる原因は識字率、まぁ珍しい話ではないが、彼らの使っていた文字は祭祀用の言葉であり一般人がおいそれと使ってよいものではなかった」

バードウェイ「ケルトを含む古い文字全般そうなんだが、立場的に高位の者しか使えないし、読み書きが出来なかった訳だな」

バードウェイ「部族の上位者であればともかく、個人が個人のために使えるようなシロモノではまずなかったろう」

闇咲「なので廃れた上にかなり失伝している。両聖書も読めたのは神官だけだ。教育や識字率を考えれば当り前だが」
(※旧約聖書はヘブライ語、新約聖書はギリシア語)

バードウェイ「まぁ……基礎を考えたやつがアホだったと思われる。聞きかじりの知識でやったため、粗が多くて粗雑なものが多い」

上条「えっと、どういう?」

闇咲「ウィッカ曰く、『ウィッカは二万年の歴史があり、たかだか数千年の歴史しか持たないキリスト教は人の手によって作られた』だそうだが」

闇咲「しかし新約聖書に使われているギリシア語は紀元前9世紀から使われている言語、ヘブライ語は紀元前10世紀。ルーン文字は1世紀頃か」

闇咲「最古の信仰と謳い、十字教を見下しているにも関わらず、両聖書よりも時代が新しいルーンを主に使っている時点で矛盾が多すぎる」

バードウェイ「最古の信仰であれば、より古い言語での信仰や宗教儀式が残っていなければおかしい。しかし彼らは専門家が鼻で笑うようなルーンの間違った使い方を是としている」

闇咲「仮にそれが正しい使用方法だとして、誰が・どのように・どういった形で・どのぐらい、と考古学を筆頭とした全ての学問へ対する明確な答えが皆無だ」

上条「ルーンだけは何かこう魔術的な意味合いを持つ、とか?」

闇咲「それを言うのであれば大抵の言語がそうだよ。我々が日常的に使っているアルファベットでもΑ(アルファ)は逆さにした牛の頭から来ている」

バードウェイ「ウィッカの秘蹟とやらが正しく古いのであれば、ギリシア・ヘブライ、そして古サンスクリットやヒエログリフ辺りで記述があってもおかしくないのにな」

バードウェイ「『まぁ格好いいものを適当に並べてやれ』、だな。バカの考えそうなことだ」

闇咲「そして彼らは大陸ケルトの神であるケルヌンノスを崇めている。だが致命的な点がだな」

闇咲「勘違いする人間も多いのだが……”””ケルト人とルーンは厳密に言えば別セット”””だからな?」

上条「――――――は?え、でもお前ルーンってケルト人が使ってた的な!?」

バードウェイ「ケルトが使っていたのは『オガム文字』だ。五世紀ぐらいにできた振興の文字」

バードウェイ「よって彼らが自信をケルトの末裔、原始信仰と称するのであればルーンではなくオガム文字を使って祭祀をせねばならないのにな?」

闇咲「その後にルーンも入って来たため、長い目で見えば使っていても不思議ではない。ただそれならば同じ後発組のラテン語を使わないのは不自然になるだけでな」

闇咲「……そしてまぁ、彼ら曰く、十字教に迫害されていたそうなんだよ。彼らの行動により魔女狩りにあった同朋も多いそうなんだが」

闇咲「『では具体的に何のどのような習慣が悪かったのか?』と問われ、学術的な意見が出されたことがない」

バードウェイ「『魔女狩りされたのだから、彼らはウィッカであり悪しき十字教に迫害されたのだ』とね」

上条「聞いてるだけで電波ゆんゆんだな……!」

闇咲「更にトドメを刺すのであれば、彼らの主張するような信仰が続いてたとしよう。十字教の迫害から逃れるようにヒッソリと強い信仰が」

闇咲「そして当然のように文明は興ったり滅んだりを繰り返し、国でも盛者必衰であり、その遺跡だったり遺物だったりが当然残る」

闇咲「だが彼らが信仰の一部として使っているアセイミィナイフや豊穣の角、まぁルーンを刻んだ物品諸々がゲルマン様式の遺跡以外で見つかった例しがない」

上条「あー……長く続いてるのに痕跡が無いのか」

バードウェイ「ある日突然現れたように出始めた。まぁ半世紀ぐらい前なんだし、今も偶に見つかる遺跡や遺物を勝手にウィッカ認定しくさってもいる」

上条「どっかの起源説か」

闇咲「そしてそのイニシエーション、まぁウィッカとしての参入儀式というか、そういうのもあるにはあるのだがね。なんというかな」

バードウェイ「参加者全員全裸かそれに近い格好になってはしゃぎ回る、というエッライバカげたものだ、と言っておこう」

上条「それが魔女の儀式だって可能性は?」

バードウェイ「なくはない、というか中世で一般的に語られているサバトに似た儀式をするのだが……まぁインモラルな性的に奔放なものだと言っておこう」

上条「歳考えろや。まだ早いだろ」

闇咲「それ自体はなくなもない、と同じ言葉を使っておこう。イシュタルに仕える神娼や春をひさぐ魔女も普通にいたし、禁忌でもない」

バードウェイ「赤ずきんも森にの中に住む、旅人を二重の意味で食べてしまうオオカミの話だという解釈もあるしな」

上条「今日もスペシャルゲストの人選間違ってね?子供が……うん、子供が語るのはどうかと思うんだよ」

闇咲「彼ら、ウィッカのスタート地点が逆なのだな。彼らが崇めているのは最古の異形の神ではなく、中世に十字教がプロパガンダとして貶めた悪魔にしか見えない」

バードウェイ「だもんで中世の教会が造り上げた不道徳――性に対して奔放であったり、十字教のタブーを進んで犯すのを”信仰の柱”に据えていると」

闇咲「ただまぁ当り前の話だが、つい近代まで出産は命懸けな上に子供を育て上げるのは極めて厳しい。地域によってはそれがまだ常識な所も少なくはない」

バードウェイ「余剰人口を育てるのには労力がいる。土地も水も、パンのみで生きるのには厳しいのさ」

闇咲「バカみたいに人口を増やしても共同体は崩壊する。そのための節制であり潔癖でもある。それを十字教が説いていた側面もあるんだ」

バードウェイ「それをまぁ取っ払ってしまえば、『汝は獣なり』だよなぁ?」

上条「……な、なんか話聞いてるとエ×目的のカルト集団って聞こえるんだが……?」

闇咲「思春期……まぁ中二ぐらいにハマるのは然程問題はない。ネットやサブカルチャーで軽く調べて、『昔の信仰スゲー!』と」

バードウェイ「大人になれれ”ば”、『何かおかしいな……?』と自然消滅するからな」

闇咲「また信仰の自由があるし、歴史的にも裏付けが皆無の新興宗教を信じるのもまた勝手ではある」

バードウェイ「だが、本格的にハマってしまうと少々拙い。いや、本人か幸せなのかも知れないが、端から見ると『ギャグか?』と戦慄するようなシュールな笑いになる」

上条「笑ってんのは基本お前だけだからね?不特定多数が不幸になるって話だから」

闇咲「彼の本懐は『原点回帰』であり、どこの宗教よりも更に古い時代の信仰を自称してる。その行き着く先が原始農耕や科学を否定した集団生活だ」

バードウェイ「そいつらが増えたらどうやって生活していると思う?いやマジな話で、ちょっと頭がアレな連中が」

上条「昔の生活に回帰する、ってのなら……田舎で野菜作ったり動物育てたり?」

バードウェイ「いいや、メイン収入は生活保護」

上条「超生臭い……!」

バードウェイ「子沢山の上に籍は入れないからシングルなんだよ。否定はしない、というか関わり合いになりたくはない」

闇咲「あとは……まぁ、これを言ったらHPが閉鎖される可能性がなくもないため、事実であっても少々言えないことがだな」

バードウェイ「『ヒント;会員制動画サイト』」

上条「うわぁ……何かの事だか全く全然これっぽっちも見当がつかないが、うわぁ……!」

闇咲「そしてウィッカの祖とされているのはジェラルド=ガードナーだな。一応イギリス人、であっているか?」

バードウェイ「不本意ながらそうだな」

上条「……イギリスでいいのか?魔女ってもっとフランスとかドイツ辺りだと思ってた」

闇咲「魔女狩りの規模を考えればそこら辺が妥当なんだがな。ともあれガードナーは元関税職員で作家だな」

上条「魔女違うんかい!?この流れだったら『由緒正しい魔女の一族……』ってなると思ってたわ!」

バードウェイ「その男が『知り合いの魔女から薫陶を受けて体系化した』そうだ。クッソ胡散臭いよな。どこのバカが自分達の秘技をド素人に開陳するのかと」

闇咲「なお彼の晩年の著作物は文化人類学としては全く価値のないフィクション扱いされているとも付け加えておこう」

上条「いいんだけど、あぁいや良くはないんだけどさ?よくまぁ素人のオッサン一人の本でブームになったよな。読み物として面白いとかそういう感じ?」

バードウェイ「いやまぁ、なんだ。そこら辺は非常に遺憾であるかというか。我々としても出来れば絞め殺してやりたいというかな」

上条「ボス?なんでボスが恐縮してんの?」

闇咲「私個人の一意見としてはガードナーは詐欺師だと思う。どこまで悪意があったのかは分からないが、まぁ本が売れればいいか、的な軽い気持ちでやったと推測している」

闇咲「ガードナー自身が学があり民俗学の徒であったのも事実であり、それを背景にして書いたため真実味を帯びてのも否定出来ない――」

闇咲「――が、微妙にだな。こうイニシエーションなどで、とある特徴が見えるのだよ。とある感じの」

上条「特徴?どんな?」

闇咲「例えば私が適当な宗教を捏造するとしよう。その場合、既存の宗教に乗っかってするのが一番楽で早い。祈りの文言、まぁ仏教などの儀式も取り入れてな?」

闇咲「だがガードナーの提唱した、性的な意味が多分に強い儀式がな。まぁ人前で全裸になって洗礼するような宗教は極めて少数なんだよ」

上条「オッサンがただエ×かっただけなんじゃねぇの?」

闇咲「のも否定しない。だがガードナーと時代とほぼ同じぐらいに活動をしていた詐欺師がいてな。同じく宗教をネタにしていたイギリス人」

上条「またイギリス人かよ――ってもしかしてイギリス人繋がりで交流があった?」

闇咲「あった。ガードナー自体が認めているし、彼が提唱した『影の書(The Book of the Shadow)』はその詐欺師からパクったものだろうと」

闇咲「ちなみにオリジナルは『法の書(The Book of the Law)』と言う」

上条「ふー……ん?あれ俺それどっかで聞いたような……?あれ?」

闇咲「というか君も確実にその詐欺師の名前を知っている」

上条「いやぁ知らないって!そんな新興宗教の人なんて!」

闇咲「……お願いします」

バードウェイ「非常に不本意極まりないのだが、ガードナーにアドバイスしてたと思われる、交流があった詐欺師というのはだ――」

バードウェイ「――『黄金』系のアレイスター=クロウリーなんだよあのクソッタレ……ッ!!!」
(※実話です)

上条「まっっっっっっっっっっっっっっっっじで!?あのアホそんなところにも絡んでんかよ!?」
(※絡んでます。フィクションではなく現実に存在したアホが)

闇咲「あの理事長と同一人物かどうかは知らないが、まぁ一般に知られているクロウリーはガードナーと交流があり、彼がしていたようなアホ儀式を取り入れているな」

バードウェイ「『法の書』自体がなぁ……ブッダやムハンマドを引用したりしなかったり、とにかくバカが勢いでまとめたようなシロモノだからなぁ」

闇咲「……まぁ、このぐらいであれば、な。何とか好きでやっている事だからと、生暖かい目で見ればいいだけの話だ。このぐらいであれば」

上条「また何かやらかした、んだよな?」

バードウェイ「細々と、私たちもバカじゃないからな。教会を気にしつつも、ある程度の信仰を残してきたんだよ?それが妖精伝説だったり、変な風習になったり」

バードウェイ「生活の一部として存在を続け、中には正しい意味で魔女の伝統を受け継いでいた者がいた――が」

バードウェイ「『こんなアホどもと同一視されたくない、と一斉に姿を消した』んだ。気持ちは良く分かるが」

上条「あー……」

闇咲「これは魔術ではなく、純粋に民俗学的な観点からの話だが、『一夜妻』というものがある。微妙にいかがわしい本のタイトルっぽいが」

上条「ビージャ○で連載してそう」

闇咲「中身もそのようなものだ。ある旅人が訪れた先で大層なもてなしを受ける、旅人は訝しく思ったが歓待を受けてその日は床についた」

闇咲「するとその晩、その家の妻だったり娘だったりが忍んできて――という」

上条「なにそのエ×同人。あとボスの前ですんなや!考えろ相手を!」

闇咲「真面目な話だ。これは昔の山村などの共同体ではどうしても血が濃くなってしまうため、外部から取り入れていたというだけだ」
(※本当にあります。そして子はその家の子として普通に育て、旅人は場合によってはそのまま失踪する羽目に)

バードウェイ「似たような話はこちらにも伝わっており、それが女神だったり妖精と解釈されているんだよ」

バードウェイ「まぁ十字教との兼ね合いもあるため、『人ではなかった・夢だった』ことにしているがね」

闇咲「何というかな、外部からの血を取り入れるのも理由があってやったことだ。そこに娯楽的な部分がなかったとは言わないが、”理由”がある」

闇咲「まぁそれが魔術かどうかはさておき、必要に応じてやっていたのだが……ウィッカの場合、全てを取っ払う」

バードウェイ「前後の説明をすれば『まぁそういう時代もあったんだろう』で終わる話だが、バカどもは享楽に耽っている点だけを取り上げた上、そこだけを現代に復活したと」

闇咲「そもそも『享楽に耽る』という部分そのものが十字教のプロパガンダである可能性が非常に高く、砂の楼閣の上へ砂のスカイタワーでも築いているような」

闇咲「そして歴史経過にしても胡散臭いものが全て――仮に、まぁ現代でウイッカと名乗ってる信仰が昔からずっと続いていたとしよう」

闇咲「史実として苛烈な魔女狩りというか異端狩りが行われていた訳だが……人並みの頭があれば隠すだろう?彼らにとっての聖印や儀式も」

バードウェイ「口述証拠だけで有罪になった時代とはいえ、そこまで行かないためにも普通は隠すだろ?もしくは偽造したり」

上条「あー……それやってたやつらが居るよな。建宮んとことか」

バードウェイ「天草式だな。既存の文化の中へ融合させたというか隠蔽したというか」

闇咲「何というかな、そういう”生活臭”が皆無なんだよ。その時代時代に合わせてどう変遷していったとか、どういう風にやり過ごしたかなどがだ」

闇咲「『今私たちが行っているものがずっと古来より続いているオリジンであり、それ以上でもなく以下もない。変ることもなく変えることもなかった』とね」

バードウェイ「そしてルーンを使った魔術儀式がメインであるならば、失われたルーンぐらい知っていてもおかしくないのに、彼らが使うのは既存のルーンのみだしな」

闇咲「なお語学の観点からいえば、というかことウイッカが子孫を自称しているケルト。彼らも後期にはラテン語を使うようになり、アルファベットでケルト諸語を書き始めるようになっていた」

バードウェイ「そこからゲール語(アイルランドと北アイルランド)、スコットランド・ゲール語(スコットランド)、マン島語(マン島)、ウェールズ語(ウェールズ)、コーンウォール語(イングランドのコーンフォール)、ブルトン語(フランスのブルターニュ)に派生する」

バードウェイ「また大別すればケルト語はQケルト語とPケルト語に分かれ、まぁ訳の分からんことになっていると」

闇咲「よって彼らの正当後継者であれば、そこら辺の話を詳しく、もしくは断片的にでもお聞かせ願いたいのだが。残念なことにウイッカの証言が学術的な価値を持つと判断した人間はほぼいない」

バードウェイ「禁書目録とウイッカ指導者を引き合わせたら、泣くまでそこら辺の矛盾を突くだろう。是非見てみたい」

上条「なんか……趣味に走ってる連中なんだよなぁ。端から見れば不幸でも、本人達は幸せか」

バードウェイ「基本的に我々は傲慢でもあるし、まぁ考えが足りなかったことも多々あるが、それでもそれなりであって、バカばかりということもなかったんだよ。多分な」

上条「どゆこと?」

バードウェイ「中世暗黒時代というか、まぁ十字教でギッチギチに固めた厳しい時代はあった。信仰もそうだがね、文化的にも抑圧された時代があり『芸術のモチーフには必ず十字教』のような縛りもあった」

バードウェイ「だがまぁ遺物にはそこそこ寛容だったらしくてな。国を挙げて発掘調査したりはまずしなかったが、出た遺物や遺跡はそれなりに保護されていたんだ」

上条「すいません闇咲さん。ボスが何か言葉選んでんですけど」

闇咲「『十字教を信仰していなかったから滅んだ』と宣伝していた」

上条「やってたんじゃねぇか!?保護はどうしたよ!?」

バードウェイ「そこはそれローマ帝国なりアレクサンドロスの偉業は伝説として存在していたからな?少なくともおおっぴらに歴史的な遺物を破壊して回っていた訳ではない。秘密裏には知らんが」

上条「あー……そういや結構残ってるよな?ギリシャ神話とかの」

闇咲「ルネッサンス前後からは『ギリシャの神話の絵画も解禁』となったり、知名度も高まり抵抗らしい抵抗もそれほどなかった」

バードウェイ「というか国同士の戦争や市民革命に宗教革命とイベント目白押しでな。一々禁止しているのも余裕がなかったとも言える」

闇咲「ポルトガルのカトリックの祭日にリスボン大地震が起き、10万人近くが亡くなったときですら『神がカトリックを見放したのだ』と説いた愚か者どももいたぐらいだ」
(※国内のイエズス会から財産没収&国外追放もやってる)

バードウェイ「そしてまぁ今と違って放射年代測定もなく……あー、その手に有名なのは『羊飼いのレリーフ』という石版がある。十字教が国境になる以前に作成したと今では分かっているのだが」

バードウェイ「レリーフ自体は簡素なんだよ。羊飼いと羊が描かれてる、まぁシンプルなものなんだ――が!」

バードウェイ「――これが数百年後の十字教では崇められることになる」

上条「関係なくね?時代的にアレだし?」

バードウェイ「神の子が『良き羊飼い』だからな。民草を導く光として、その存在が羊飼いに例えられた。だから十字教が浸透する前の羊飼いのレリーフが十字教として信仰の対象となった」

闇咲「補足すればその羊飼いのモデルは旧約聖書のモーセにダビデ、ローマ神話では建国王ロムルスが羊飼いだったので……まぁ、パクったのだろう。神の子の父親は大工だったし」

バードウェイ「まぁよくある『異教の神を自分の神として取り込む』ヤツだが、結果的には十字教の名の元に保護もされていた。それが”分かっていた”かどうかまでは知らないがね」

闇咲「この間、思いっきりケアレスミスをしたが『ヴィーナスの誕生』という絵画がある。貝殻が開き中から女神が、というのが」

上条「あれ思いっきり十字教関係ないよな」

闇咲「同絵画が描かれたのは15世紀、当時としてはかなり反響がありつつも、まぁなんだかんだで受け入れられてはいた」

バードウェイ「なお『ヴィーナスの誕生』のモチーフとなったのは、当時発見されたヴィーナス像を元にしてあったのだが――さて」

バードウェイ「ウィッカの崇める女神であり、祭礼の一つにヴィーナス像や絵画を飾るというものがある。主神の一つだからな、大事にしているんだろうが」

バードウェイ「今まで語って聞かせたように”歴史的な事実として”は、ヴィーナスぐらいであれば普通に像も絵画も飾られてたんだ。少なくともこの500年はだが」

闇咲「現代のポストカードやカレンダーほどではないが、まぁ複製だったり模写だったりはできていたからな」

バードウェイ「にも関わらずウィッカ連中は”飾って信仰するのも出来なかった”そうだ。まぁ何というかバカにしているというか、バカっていうか」

闇咲「以上でウィッカへ対する比較的まともな見解になるが……では、お願いします」

バードウェイ「うむ、任せろ」

上条「嫌な予感しかしねぇなオイ」

バードウェイ「ウィッカがウィッカたる最大の由縁、『我々は迫害されて弾圧されてきた』というのがまぁ売りではある。故に最古である我々こそが正しいのだ、と」

バードウェイ「だがまぁ人類はバカではない。愚かではあるが、お互いに妥協点を探って話し合ったり、なぁなぁで済ますことも出来る」

上条「まぁ、そうだな」

バードウェイ「つまり何が言いたいかと言えば――ケルト信仰は滅びずに姿を変え、連綿と今でも残っている」

上条「……はい?」

バードウェイ「聖ブリギッドという聖女がいる。イギリス、主にアイルランドで信仰される聖女で、初めての修道院を作ったり、永遠に尽きぬエールや牛の乳を与えたり、彼女の歩いた後は草や花が生えたという」
(※カトリック教会の公式見解)

上条「神だよ。そこまで盛るとほぼ神様じゃねぇかよ」

バードウェイ「――が、十字教が来る以前のアイルランドでは女神ブリギッドが信仰されていた。詩聖であり豊穣の神でもある、主神と言っていいほどの」

上条「名前……うん?全く同じ?」

バードウェイ「まぁ十字教側が女神のブリギッドを取り込んだんだよ。女神を聖女にして信仰も同じと、まぁ妥協したんだろうな」

バードウェイ「同様に、かつてあってと思しき信仰が、神だったり女神だったりを十字教は取り込んできた。全てではないし悪魔に落とされた神も多くいた」

バードウェイ「だが?何故か?現代のウィッカどもは”そういう”例外を一つも認めず、十字教が偽の信仰であると喧伝している訳だ」

上条「……変な感じだな。形を変えながら続いて来た信仰を無視して、なんかこうチクハグっていうか」

闇咲「とあるライトノベルでアラディアが登場する。とある作品だが」

上条「知っていますとあるですよねっ!俺も何か覚えがあるわー!」

バードウェイ「聞き覚えはあるか?どっかの神話の女神だったり、サブカルでもなんでもいいから」

上条「ない、かな。一番似てるのは魔法のランプのアラジンぐらい?」

闇咲「結論から言えばアラディアとは19世紀末にイギリスの民俗学者が魔女から教えられた旧い神なんだそうだ。ディアナ、というかダイアナとルシファーの娘で抑圧された魔女達を救うのだと」

上条「世界観バグってないか?ギリシャ神話とルシファーさん合体させんなよ!なんて楽しいだろ!」

バードウェイ「先のイギリス人作家も19世紀から20世紀まで生きてたからな。何というかな、流行ったんだその当時。『おれがかんがえたただしいかみさま』とやらが」

闇咲「そして当然アラディアもウィッカで有名な神として信仰されている」

バードウェイ「コロンゾンもエイワスも元々はアレイスターのアホから生まれた産物だからな。そこら辺のニューカルトが敵になるのかもな」

上条「……創作した宗教、創作した女神、大昔にいたかもしれない神様……ロマンはあるが……」

闇咲「自称本物で他全てが偽物もしくは振興かニワカと断言している時点で、他宗教への寛容や多様性があったものではないが」

バードウェイ「なおウィッカへ対して偏見と悪意を以て描いたホラー映画に『ミッドサマ○』というものがある。勿論フィクションだし悪意があるが、興味があれば見るといい」

上条「『魔法使いの○』さんは大丈夫なの?悪い事にならない?」

闇咲「私は専門外なのであまり軽々に発言するのは……」

バードウェイ「それは――第二部で頼む!あまりにもあまりな内容なので何かこう、このまま終わるのは残念すぎるからあっちの世界の解説も専門家にしてもらおう!」

上条「誰が来るのか怖いぜ魔術師ガチャ……!」


-終-

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