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Clock(trial)

五和「参上『宮ちゃんねる』!イッポンダタラの謎を追えっ!」

 
――学校 翌日

上条「あーあ、今日も青ピは休みだけど以下略!」

青ピ「おるよ?ボクも毎回毎回休んどらんよ?『面倒だしこいついいだろ』って端折られてへんからね?」

上条「そんなことよりもゴキブリムエンダ○が思ったよりも効果ある話をだな」

青ピ「Gの方が大事!?ソウルフレェェェンッ!(巻き舌)よりも!?」

吹寄「何言ってるのよ!?G退治の方が大事に決まってるじゃない!仕留め損ねたらどこ行くか分かんないのよアレ!?」

土御門「『……それでね、わたしね、すーっとこう、お菓子箱を開けたんですよね。怖いなー怖いなーって思いながらね。するとそこには――』」

土御門「『――前に仕留め損ねたGの死体があるじゃないですか……ッ!!!』」

吹寄「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 ベシッ!!!

土御門「モトハルッ!?」

上条「ナイス吹寄!そして意外……でもない反応だな」

姫神「きゃー。いやー。こわーい」

上条「嘘でもいいからもっと声張らね?あぁまぁリアルな反応だったらそうかもしれないが」

姫神「実は嘘。特に別に好きな訳ではないけれど。田舎育ちでウデム○の大群を見慣れた身としてはインパクトに欠ける」
(※グロい虫)

上条「姫神は虫好き女子としてキャラ立ててみるとか?」

姫神「ただ耐えられるというだけなので好きという訳ではない。というか虫が好きな女子は女子力がマイナス時点からスタートしてそう」

青ピ「男子の虫好きも異性からは基本引かれるし、だからっつって同性からも『えぇ……』みたいに決して好意的ではないんや……ッ!」

姫神「そう?男子は無条件で好きなのと思ってた」

上条「虫好きでも不快害虫は対象外じゃね?あえて茨の道に進む猛者もいるにはいるだろうが」

五和「えー、ハチノコとか美味しいんですよー?食べず嫌いは良くないと思います」

土御門「例外を言ってたらキリがない……です、たい……」

青ピ「しっかりしぃやツッチミー!?傷は浅いで!?」

吹寄「――本当に、効くのね?騙してるんじゃなくて?」

上条「と、俺は思う。あのー、バルサ○みたいな煙でプホーよりか落ちるけど、普通の殺虫剤よりは強くて長めの効果な気がする」

五和「あ、そうなんですか!じゃあ買って帰ろうかな−。アー○とキンチョ○両方を!」

上条・青ピ・土御門・吹寄・姫神「……」

五和「はい?」

姫神「『――この中に一人。学生じゃない人がいる説……ッ!!!』」

五和「確かに!そこの金髪グラサンの人こわーい!」

上条「そうだけどそうじゃねぇよ。そして致命的に違和感があんな五和のセーラー服!」

五和「きょ、教皇代理にも『完璧だな五和!誰がどう見てもプッ!17・8の娘さんにしか見えないよなププッ!』って太鼓判を押されていたのに!?」

上条「笑ってるだろアフロ。その時点で気づいてないとおかしいだろ」

五和「おのれ腐れアフロ……!帰ったら生え際を20cm後退させておかないと……!」

上条「それもうアフロじゃなくない?一見すると後光に見えなくもない何かを背負った人だよね?」

姫神「前後あしゅら男○」

土御門「やっべぇ超見てみたい!カミやんゴーだ!けしかけろ!」

上条「フッ、俺を見くびるなよ土御門!そんな悪事に荷担するような男に見えるかっ!?」

上条「だから五和絶対にするなよ?!建宮が可哀相だから絶対にするんじゃないぞ!?絶対だからなっ!?」

吹寄「ほんの一秒で裏切る男の人って」

青ピ「流石はカミやん……ボクやったらこうフられたらやってまうわ!」

上条「だろう!?俺だったら――」

五和「あ、スキありです☆」 ボスッ

上条「そげぶっ!?」

姫神「超重いボディブロー入りました。上条名人……あぁ。ギブですね」

上条「た、助け……て……」



――公民館 多目的ルーム

上条「――うっ、お腹が正拳で誰かに打ち抜かれたかのように痛い……?」

五和「なんて酷い!?誰が上条さんにそんな酷い事を……!?」

上条「俺が痛みで悶絶する前、エッライ綺麗な姿勢の残心の構えをしたお前が見たんだけど」

五和「気をしっかり持って下さい!私がそんなことするはずないじゃないですか!」

上条「段々芸風がレッサーに似てきたよね?世界がレッサー化してきたの?人類の進化の先にはあのアホが居るの?」

五和「そんなことよりも、ここは一体どこなんでしょう……?」

上条「『○○公民館多目的ルール』って書いてあっけど?あぁこれもしかして俺にしか見えねぇ設定なの?」

五和「私が目を覚ましたときには、この書き置きが」

上条「なんて?」

五和「『エッチなことをするまで出られないダンジョン』……ッ!」

上条「なんで?つーか出られるよね?窓の外、学校帰りの小学生が歩いてるよね?」

五和「心配はありませんよ!ほらここに結婚届と実印が丁度二つ!」

上条「ルアー超大っきい。俺が餓死寸前のピラニアでも『あ、これ喰ったら食われるな』って警戒するわ」

上条「俺だってまぁ健全な男子だしエ×ことにも興味がないと言えば嘘になるけど、ルアーに付属してる釣り針がデカ過ぎて呑み込めねぇんだわ!」

五和「責任を取るのは正しいと思いますけど?」

上条「まぁそうだけども!そしてこの超ザルいシチュエーションでも『なら仕方がないな!』っていうアホはそこそこの数いると思うけどもだ!」

上条「少なくとも公民館でどーたらするのはアホの所業だ!まずそっから考え直せ!」

五和「安かったんです。借りるところが」

上条「……てか五和さん、俺は一発ネタのために呼び出されたの?そのためだけにHP減らされたの?」

五和「そうだ聞いてください!教皇代理が大変なことになっているんです!」

上条「へー建宮が?」

五和「……戦闘で大ケガをして入院してしまって……」

上条「連れてけよ。そんな大事になってるんだったらまず俺を見舞いに行かせろよ」

五和「多分来週には退院できるんで大丈夫ですよ!」

上条「じぁ大ケガじゃないだろ、軽傷だわ。つーか建宮が大ケガって何したんだ?相手が強かったとか?」

五和「詳しくは教えて貰えなかったんですが、喪服のようなスーツを着た魔術師だそうです」

上条「絶対に闇咲だろ」

五和「そして『聖杯がどうの』って」

上条「やっぱ違ったな!似てるけど全然別の人だわゴメンナサイねっ!」

五和「それで上条さんには教皇代理からお願いがありまして、本日足をお運びいただいたと」

上条「自分の意志で移動した覚えはないが、まぁ事情は分かった。出来る範囲のことだったら考えるけど、建宮はなんて?」

五和「『宮ちゃんねるを代理配信してほしいのよ』、と」

上条「オイオイ唐突にバカワードがぶっ込んで来やがったな!大体その頭悪そうな響きで理解できたけどもだ!」

上条「つーかテメーあれか?同業者妬んで襲撃かましたんかコラ?」

五和「『3万人は脅威なのよな!』と」

上条「違う違う。その人たちは闇咲に興味なくて、その、えっと大量消費社会の生んだ闇っつーか歪みっつーか」

五和「という訳ですので上条さんにはご助力を是非に頂きたくと申しましょうか、アフロのウィッグ差し上げますんで」

上条「超欲しくない。丑三つ時に逆さになってワッシャワッシャ歩きそう」

五和「撮れたら超視聴者数ゲットですねっ!」

上条「アレアレ?ツッコミ側の五和さんは今日はそっちなの?そりゃまぁツッコミ二人がそろってんだからポジ的にはそうかもだけど」

五和「これだけは上条さんに伝えないでくれ、秘密にしておいてくれ、そう教皇代理が仰っていたのですが……」

上条「あんだよ。本当に具合悪いんだったらカエル先生を紹介すっけど」

五和「『あの、木の葉の最後のひとひらが舞い落ちたとき、俺はこの世にいないのよな……』と」

上条「気の持ちようじゃね?あの話は良い話っちゃ良い話だけど、現代だと『承認欲求の強いドアホが老人に無理させて寿命縮めた』ってだけだし」

五和「あの女の人、『あれこれあたしが無理言ったせいで間接的にヤってる?』と当時ですら落ち込むかと」

上条「んで俺はどうすればいいの?チェーンソー持ってオシャレなレザーフェイス着けてコンニチワすればいいの?」

五和「今どんな映画にハマってるのか隠す気すらないようですけど……ではなく、宮チャンネルで取り上げるはずだったのを私と上条さんでやれと」

上条「まぁそんぐらいだったら別にいいよ。闇ちゃんねる以外に出んなって言われてもねぇし」

五和「ギャランティの方はきちんと色をつけてお支払いしますけど、普段はどのぐらいですか?」

上条「――あ!?そういやバイト代貰ったことねぇわ!?」

五和「じゃあなんでやってんですかあの番組。ご趣味ですか?」

上条「せめて俺ぐらいは味方でいてあげたいから。あと俺がいっちょ噛みしなくなったら確実にAIRSAに負担が」

五和「女の子思いなんですね。複雑な気分です」

上条「ARISAさんには来たるサメマラソン・リベンジに向けて英気を養って欲しいんですよね!ほら、ノーダメでボス戦行くような!」

五和「思った以上に非情な理由で安心しました!それでは張り切っていきましょう宮ちゃんねる!今日のお題は――」

五和「――『イッポンダタラ』ですっ!」

上条「待て。それ確かこの前ヤマチチんときに闇咲が『一々全部やってたらクソ長くなる』って言ってんかったか?」

五和「あっはい見てました見てました。山の神シリーズはねー、えぇとまぁ、ちょっと長いですね。素人さんお断りというか」

上条「素人さん言いだしたら基本的に全部無理だろ。『そろそろこれ新書として別に切り売りした方が金になんじゃね?』って運営は思ってんだぞ!?」
(※出し惜しみ一切無し)

五和「あぁいえオッサンの金の話ではなくてですね。単純に多いんです」

上条「多い?」

五和「はい。恐らく日本で最も有名な山の神様は浅間(せんげん)大社にお住まいの木花開耶姫命(このはなのさくやびめ)」

五和「そしてそのお姉様の岩長姫(いわながひめ)。この二柱が最も信仰を集めています」

上条「浅間山?」

五和「も、含めた富士山の神様です。そしてそのお父様の大山祇神(おおやまつみ)」

五和「それに加えて金山彦神(かなやまひこ)と金山姫神(かなやまびめ)。派生する形で金屋子神(かなやごがみ)」

五和「更に密教系の山岳信仰が加わると更に数は増えまして、蔵王権現(ざおうごんげん)に熊野信仰。あとは貴人漂流憚で蜂子皇子(はちのこおうじ)」

上条「ごめんなさい俺が悪かったです許してください!」

五和「それぞれが独立したり習合したりしていますので超カオスですし、神格級だけではなく役小角や空海などの行者もまた山の神としての側面もありますし」

五和「そしてまたご当地ローカルな神様もそこそこいます。日本武尊を殺した伊吹山のイノシシ神と鉄や銅の産地、要は鉱物神だと同一視されたりも」

上条「本当にすいませんでした!俺が悪かったからそれぐらいにしてつかぁさい!」

五和「本日取り上げるのは『イッポンダタラ』のごく狭い部分だけだと思ってください。字数が足りません……では上条さんはイッポンダタラについて知識はどの程度お持ちですか?」

上条「あー……携帯用ゲーム機の敵キャラにいた、か?ソウルがハッカーズするアレでザコキャラとして出てきてた筈」

五和「外見は?」

上条「何かハサミとトンカチ持ってたような?解像度低いからそこまで詳しくは分からない」

五和「そうですか。ではまずイッポンダタラのイメージ画像をご覧いたたぎましょうか、ドン!」

上条「……ゲコ太……?」

五和「をクリックしてみてください。ややグロいので自重してあります

(※本当に注意!)

上条「正直見たくないんだけど……怖ぁ!?グロいっていうよりもメンタルなダメージを負うなこれ!?」

五和「これが最もポピュラーなイッポンダタラ像です。一つ目で一本足の大男という感じで」

上条「……いや、確かにタッパはあるんだろうが……大きい小さい以前に性別は……?」

五和「なお山姥の一種もこんな感じだと言い伝えられてるのがいますので、まぁとにかく男性ということで納得しておいて下さい」

上条「てかこれ洋ゲーにいなかったか?デッドなスペースでバッドエンド直行の」

五和「いや残念ながらイッポンダタラにも原型がありましてね。えーと、多分上条さんはご存じなんじゃないかなー。きっとなー」

上条「――まさか、ウチの居候その三が……ッ!?」

五和「オーディンは関係ない――って事もないですけど、今回はスルーして下さい。長編SSのネタに引っかかります」

上条「スルーしてぇけど聞き捨てならないこと言ったよな今?……まぁいいぜ!いつか苦労するのはいつかであって今日じゃないからな!」

五和「本当に来るかどうかは怪しいですけど、ではなくゲームやってる人でしたら絶対に知っています。特にファンタジー系」

上条「イッポンダタラは和風だろう。ファンタジーに出るんだったら、アレだ。サイクロプスでもないと……」

五和「上条さん、正解です!」

上条「お、オイオイ待てよ!?確かに目が一つでプラクラ要員だが、共通点ってのはそこぐらい、しか……?」

五和「なんと、西洋でサイクロプスと呼ばれていた存在が、日本ではイッポンダタラたっだのですよ……ッ!!!」

上条「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

五和「――と、いうのは嘘なんですけど」

上条「嘘かよ!?また大きくフカシたな!」

五和「厳密に言えば”ルーツは違うけど本質的には同じもの”ですね」

上条「ナゾナゾかよ」

五和「えぇとまずですね。サイクロプスはギリシャ神話に登場する巨人です。何人か兄弟がいたのですが、全員タルタロスへ幽閉されていました」

五和「しかしゼウス達が巨人達と戦争になった際、所謂『ギガントマキア』が勃発した際、ゼウスはガイアの助言に従いサイクロプス兄弟を解放しました」

五和「サイクロプス達はこれに感謝するとともに、ゼウスたちへ武具を作り、それを以て彼らは戦争に勝利したのです」

上条「へー、外見グロいけど鍛冶の神様なんだな?神様って言っていいか分かんないけど」

五和「はい、ここで上条さんに質問です!どうして彼らは鍛冶の神様だと言われてたんでしょうかっ!」

上条「急に言われても。急じゃなくても分からないが」

五和「えぇとこういう時はですね、一つ一つ属性を分けて考えるんですよ。あれは何々、これは何々って風に」

上条「それは闇咲から教わってた。でも分けるにしたってサイクロプスだろ?目が一つなのとデカいぐらいしか思いつかないぜ?」

五和「あー、惜しいですね!流石上条さん!」

上条「嬉しいんだけど、判定緩くねぇかな?誉められると伸びるタイプだが、誉められすぎてもダメになると思うんだ」

五和「ヒントは『ミケーネ文明』です」

上条「みけーね?」

五和「ギリシャ文明よりも更に古い文化でミノタウロスの逸話が有名ですね」

上条「うん?あれってギリシャ神話の一つじゃないのか?」

五和「ギリシャ神話”にも”あるので間違いではありません。しかしサイクロプスはギリシャ神話ですね」

上条「ミケーネ文明にサイクロプスは?」

五和「いなかった、と現時点での研究では」

上条「つーことはアレか。ギリシャ人がミケーネ人だか文化の人たちを見て、サイクロプスを想像した、とか?」

五和「正解です!ミケーネ文明には巨石文明があったんですよ!」

上条「あぁストーンヘンジみたいな?」

五和「一応ヘンジもミケーネ文明説を唱える方もいます」
(※ただし地域的には微妙)

上条「ギリシャの近くにもそんな文明があったんだー……って待て待て。なんで巨石を積み上げる文化とサイクロプスが繋がんだよ」

五和「えぇですからギリシャ人はこう思ったんですよ――『あぁこの神殿は人の手で造られるものではない!サイクロプスが積み上げたのだ!』って」

上条「あぁそういう話な!自分達じゃデカい石を積み上げるのは無理だから、きっとデカい人がやったんだろうって――」

上条「……」

上条「……百歩譲ってだ。デカい石を巨人がってのは分かる。俺だって重機知らなかったらそう思わなくもないから」

上条「ただ、それと”一つ目”ってのはどう繋がるんだ?別に両目がある巨人だって構わないのにどうしてサイクロプス限定?」

五和「そちらは文化的な理由ですね。まぁ、イッポンダタラが一つ目なのも同じ理由です」

上条「五和先生意味が分かりません!超妖怪ビギナーにもどうか分かりやすくお願いします!」

五和「……」

上条「……五和さん?」

五和「……実は私、子供の頃二番目になりたかった職業って先生なんですよ……」

上条「合ってると思う。面倒見も良さそうだし」

五和「そして一番は上条さんのお・よ・め・さ・ん☆キャッ!言っちゃった!」

上条「計算どっか間違ってないか?それともアレかな、五和さんって実年齢が13ぐらいなの?」

五和「あ、大体そのぐらいです」

上条「超嘘吐くなや!?建宮から聞いたのはもっと」

五和「――もっと、なんです?」

上条「いやー、この世界も多様化は凄まじいですね!年下のお姉さんなんかホラよくあるじゃないですか!」

五和「ご納得頂けたところで話を進めたいと思いますがー、イッポンダタラの”タタラ”って言葉に覚えはありませんか?」

上条「サイクロプスどーなった?……順序なんだろうが、あるようなないような?」

五和「ことわざ、『たたらを踏む』」

上条「あ、知ってる。何か転びそうになって片足でケンケンす――……るな!片足で移動っていうか!」

五和「まさにイッポンダタラの移動方法ですよね。だって足が足一本しかないんですから」

上条「つまり、昔の人はイッポンダタラがケンケンで移動してるのを見て、『あぁあれが”たたらを踏む”』って感じなのかって……っ!?」

五和「盛大に間違えていますよ?因果が逆です」

上条「え?いやいやそんな訳ないだろ、だってケンケンしながら移動する人を見て、『あ、あれがイッポンダタラだ!』とは――」

上条「……ってなったのか?」

五和「ですね。恐らくそれが始まりかと思います。えーとまずですね、日本最古の直接製鉄法は『蹈鞴吹き(たたらぶき)』っていうんですよ」

上条「またタタラかよ……」

五和「詳しくは専門的過ぎて対馬さんしか分からないのですけど、こう、鞴(ふいご)を使って炉に風を送り込む製鉄方法らしいです」

上条「フイゴ?」

五和「尖ったアコーディオン?本体が蛇腹になっていまして、そこを押すと風がプシューッと出ます」

上条「へー」

五和「ちなみに蹈鞴吹き(たたらぶき)の”鞴(ら)”って単語の訓読みが”ふいご”です。まぁフイゴを使う製鉄法だからと考えてください」

五和「というのも昔は現在よりも技術から素材に至るまで全てが段違いにランクが低いのです。よって人力のフイゴで大量に風を送って燃焼させるのもまた必須だと」

上条「でもそれだけだったら『たたらを踏む』が『タタラ吹きから来た説』にならなくね?片足でどうって話でもないんだろ?」

五和「当時のフイゴは足踏み式でした。個人で携帯できるものから、巨大なフイゴまで全て足で踏んで稼働させていたそうです」

五和「当然両足では力加減が出来ないため、片足でこうググっと。その重労働を毎日毎日ですね」

上条「……」

五和「すると当然片足だけが筋トレを集中しているのと同じようになり、筋肉が肥大してバランスが悪くなっていきまして――」

上条「いや、繋がらないよ?だってどんだけ片足鍛えても一本には見えないからな!?」

五和「では少し視点を変えましょうか。製鉄が終わったあとはその鉄をまた溶かして形にする必要があります。日本刀なんかそうですよね?熱く焼けた鉄をハンマーで叩いて整えます」

五和「それを毎日やっていれば、これもまた腕だけが異常な大きさに……!」

上条「……腕、太かったよな――や、でもまだ納得しないぞ俺は!」

五和「では昔、といいますか今も場所によってはそうなのですが、炉の温度や鉄の温度ってどうやって計測しているか分かります?」

上条「する必要ある、んだろうな」

五和「それぞれの伝統でベストなものが、文字通り一子相伝で伝わっていたんでしょうね」

上条「そっかー……んー、肌じゃないわな。天気や季節で大分変るし」

五和「答えは”色”です。炎の色だったり焼けた鉄の色だったり」

上条「あーそれ焼き物のニュースで聞いたことあるかも。窯元の人が何日か付きっきりで火の番するときなんか、炉の温度を見ながらするとか」

五和「すると当然視力は落ちて来ますよね?強い光を直視しなければいけないんですから」

上条「だなぁ。サングラスもないし」

五和「そしてあくまでも色を見ればいいんであって、必ずしも両目で見る必要はないですよね?本人も視力が落ちるのは感じているはずですし」

五和「こう、片目で、睨み付けるように」

上条「……出て来ちまったなぁ、片目が」

五和「以上の特徴からイッポンダタラは『蹈鞴師(たたらし)』、まぁつまりタタラ吹きを生業にしてきた集団を差していた物だと――」

上条「異議あり!騙されないぞ!たったそれだけの情報で妖怪化するもんか!」

五和「はい?どういう異議ですか?」

上条「情報の伝言ゲームで歪むのはまぁ分かるわ!山爺や山父が山地乳になってり、アマビコがアマビエになんのもそういうこともあるかなーとは思うが!」

上条「でもなんでバケモン化してんだよ!?誤解だったら直ぐ解けるだろ!」

五和「はい、誤解というのは何を差していますか?」

上条「いやだからさ、『一つ目一本足のバケモノがいるよ、って言う人もいるけど、実は普通の鉄関係の職人さん達だよ』って!」

五和「どなたが?」

上条「誰ってそりゃまぁ……先生、はいないから村のじーちゃんばーちゃんとか、母親だって自分の子供がそんな事言ってたら、普通に注意――」

上条「……」

上条「――出来なかったのか、もしかして?」

五和「まずタタラ師の性質なんですが、初期は定住せずに一定の期間を置いて移動するような生活様式だったらしいんですよ」

上条「ますますなんで?旅芸人じゃあるまいし、炉とかの設備考えたら絶対に定住した方が有利じゃねぇのか?」

五和「勿論それはそうです。移動すれば移動先で軋轢を生みますし、移動するそれ自体に様々なリソースを割かねばならないですからね」

上条「でもどうしても移動しなきゃいけない理由があった?」

五和「じゃあ上条さんだったらどうします?定住してタタラ師として暮らすとすれば?」

上条「そうだなー、まず守りを万全にしてから周囲とも交流するな。集団で暮らすのにも限界があるし、鉄の材料はどっかから仕入れる必要が……?」

上条「流通してねぇのか、鉄!?」

五和「はい、ついでに言えば燃料である炭もです。更に言えば日本で貨幣が定着するのは宋銭で平安時代、しかも都市部中心のみです」

五和「当時の鉄は川の砂鉄から採る方法しかなく、また採れば採るだけ枯渇するので次の場所ヘ次の場所ヘと移動する生活スタイルでした」

五和「ちなみにここでご近所の一般人の方が彼らを目撃し、『何か山の中に変な連中が居るよ!鬼かもしない!』と」

上条「そりゃ怖いだろ。引っ越しの挨拶もせずと突然住み着いてカンカン鉄打ってんだから」

五和「そうしている間に――権力者に目をつけられるんですよ。一つ目なのに」

上条「やかましいわ。上手くはねぇしやかましいわ」

五和「当時の鉄器、特に鉄の武器といったらたったそれだけで超重要なアドバンテージを得られます」

上条「あれ?結構前に青銅から鉄に移行しなかったっけ?」

五和「古代の間にやっていますね。ただ武器は遣えば折れたり曲がったり威力が落ちたり、錆びる宿命もありますから」

五和「また人数が増えればそれだけの武器や鎧を揃えねばいけません。数を征した者が世界を征します」

五和「よって”保護”なのか”強制”なのかはさておくとしまして、様々な地方の豪族や有力者が彼らの力を求めて庇護下に置きました」

上条「先生質問です。刀鍛冶で有名な人らはどうなの?堺とかでいなかったっけ?」

五和「銃で有名ですね。えっとそういう方たちは、豪族ではなく”大都市”に囲われた感じです。下手に突けば彼らを使って稼いでいる商人や流通全般を敵に回しますので」

五和「そもそも周囲から襲われる心配が無ければ、むしろ目立った方が徳ですからね。『○○に行けば鉄製品が手に入るぞ!』的な宣伝にもなりますし」

上条「そんなもんか」

五和「そんなもんです。まぁそんな感じでタタラ師は軍事産業として囲われます。といっても規模は一つの郷(くに)で家族も合わせて精々数十人でしょう」

上条「やっぱり扱いは酷かったのか?」

五和「そこら辺は資料に残っていないので何とも。ですが職人のモチベーションもありますし、また囲われている側は庇護者も兼ねていたため」

五和「主人が滅ぼされると運命を共にする場合もあったので、まぁ手は抜けなかったと思います」

上条「マッポーの世界だぜ……ッ!」

五和「ですのである程度の山奥、かつ他の集落ともある程度距離を取ったような場所に蹈鞴場(たたらば)を構えていたようです」

上条「なんで人里の近く?隠したいんだったら超山奥とかに方がいいんじゃ?」

五和「ここは推測になりますが、恐らく交通の便が理由の一つです。超山奥だったら連絡が付かないですし」

五和「そして大事なのが人は人だけで生きていないからです。自分達の集落だけで完全に自給自足生活するのではなく、近くの集落から物資をやりとりした方が楽ですから」

五和「そしてまぁ、えっと……物もそうですけど、人なんか混血ばかりしていると詰みますから。遺伝的に」

上条「あぁ、そういう。昔は寿命も短いから一代のサイクルが早いんだよな」

五和「そしてここから宮ちゃんねる改めらぶらぶちゃんねるの本日のキモなのですが」

上条「そんなファンシーな名前だったっけ?命名が昭和感覚」

五和「蹈鞴場ではない近くの普通の村では、子供が親へこう聞く訳ですね」

レッサー「『ねーママン、あのマウンテンインザ鬱蒼には誰か住んでいるんです?何かたまに人っぽい音がするんですけど』」

五和「『えぇ住んでいますよ。ただあそこには――イッポンダタラって鬼ですけど』」

レッサー「『O-ni!?どんな!?』」

五和「『一つ目一本足のバケモノで人なんか喰べちゃいますからね!だから山に入って遊んだらいけませんよ!』――と」

上条「オイ今誰かいなかったか?安いフィッシュアンドチップスの香りがしてたぞ?」

レッサー「そこは『宇宙船レッド・ドワーフ○のリスタ○の体臭』と言って頂けないと」

上条「国へ帰れ帰れ!俺の安置がなくなるから!」

五和「と、今のような小芝居があった”””のではないかな”””と。100%推測ですが」
(※推測です。そういう資料があった訳ではありません)

上条「ありそう、ではあるか。子供が気軽に遊びに行ったら危ないし、大人になったら詳しく教えりゃいいしな」

五和「私もそう思います、いつしか成人と共に事実を知るのですが……ここで転換点と言いますか、その諸行無常の流れと言いますか、マッポーです」

五和「蹈鞴師は有力者や豪族の都合によって左右される運命ですので、ある日突然移住させられたり、秘密を守るために、みたいなことがあったと思うんですよ」

五和「戦で負けたあとに和睦の条件に『お前らの職人を寄越せ』なんてのもあったでしょうし、また山の中の資源が枯渇すれば移動を迫られます」

五和「するとどうでしょうか。山の中の蹈鞴師の集団は消え、残ったのは――」

五和「――『イッポンダタラってバケモノがいる』って認識だけが……ッ!!!」

上条「そういう話なのか!?待ってくれ!話せば分かるきっと!」

上条「初期の、そう一番始めぐらいのタタラし?はそうかもしれないぜ?正体不明だし不明のまま消えちまえば妖怪だねー怖いねーって処理されたのもさ?」

上条「でも鍛冶とか鍛冶士ってそのあと全国に伝わったよなぁ?大人気の刀剣が乱舞するアレでも、全国規模で有名な刀匠っているだろ!?」

五和「全く以て仰る通りです。有名な刀工はともかく、ちょっとした鍛冶士ぐらいだったらやや大きめの村に一人ぐらいはいる程度にメジャーになっていきました」

五和「ただですねー、ここで一人歩きしたようなんですよ。足一本だけに」

上条「ウルセぇわ。だから上手くねぇんだよウルセぇな」

五和「ではとある村での日常会話(推測)をご覧に入れましょう――『あのー、すいませーん。研ぎお願いしたいんですけどー?』」

レッサー「『へいらっしゃい!おっ、上条さんトコの若奥さんだね!ついに旦那を解体ですか?』」

上条「やかましいわ!つーかお前こんなしょーもないコントで来日してんなよ!?」

五和「『いやですよぉ解体だなんで、ま・だ☆……じゃなく、そういえば聞きました?何かオバケが出たそうなんですって』」

レッサー「『へー、オバケですか?どんな感じなので?』」

五和「『なんでも一つ目一つ足でピョンピョン移動してるんですって』」

レッサー「『なにそれ超見てーです』」

五和「『ですねー。それじゃよろしくお願いしますねー』」

レッサー「『はいなー。午後には出来てますんでー』」

上条「茶番だよな。そしてレッサーが鍛冶士側なんだろうが、スルーしてんだろ」

五和「蹈鞴師の情報が開示され、人々の誤解も消え失せるとですね、イッポンダタラが謎の妖怪の概念として独立してしまい、

五和「中には『元々は鍛冶士だったんだ』って事実を知る方も学者の方などにおられたでしょうが、別に事実だろうがフィクションだろうが、誰が困っている訳でもないので放置されてですね」

上条「そんなノリで!?」

五和「というか昔は今と違ってネットもなければラジオもなく、政府が広報を出すような話でもないですからね」

五和「そして江戸自体になりますと、暇を持てました文化人の中で妖怪ブームが起き、あっちこっちの妖怪やら創作と思われるものがチャンポンする始末で……!」

五和「……まぁ、紆余曲折ありまして、こうやってイッポンダタラは日本全国へ概念が伝わりました。そして既存の民間信仰や都市伝説に組み込まれて、様々なバリエーションが創られていきます」

五和「『山人(さんじん)』と一体化したモノは『山爺』、『山の神』と一体化すれば『山男』などですね」

五和「まぁ、あくまでも怪異が”いない”という前提で話ですので、もしかしたらそういう妖怪がいた可能性もゼロではないのかもしれませんけど」

上条「そこは魔術サイドとしてどうなんだ?」

五和「超自然的な呪いや祟りを祓うことはたまにあります。そこに神仏が絡んでいるかは……まぁ、何とも」

上条「術式がある世界だったら、あってもおかしくはないかなぁと思わなくもないが」

五和「そもそも『卵が先か?鶏が先か?』って話もありまして。一本足で大きな足をしてますよね?」

上条「体を支えるんだったらバランス的にはそんなもんだと思うけど」

五和「山に入った人間が雪の上に残る大きな足跡を見て『これは妖怪の足跡だ!』と盛り上がる話もあるんですが、それはただのカンジキではないかと」

上条「カンジキ?」

五和「猟師さんが使う道具で、ブーツの下に大きなオーバーブーツを着けるような感じです。雪との接地面積を広げ、足が雪に取られないようにする仕組みで」

上条「それを素人さんが見ちまって、って話か」

五和「以上でイッポンタタラのお話は大体終わりになるんですが、闇ちゃんねるさんの話の補足を少しだけ」

五和「前回された『ヒョウトク様』、まぁひょっとこですけど、上条さんは 『鬼滅の○』はご覧になりました?」

上条「煉○さんが好きなんだけど、なんか喋ると浜面を思い出す」

五和「正しい反応で何よりです。ジャン○紙面での代表作に『浜面仕上です!』と言わなかった男ですからね」

上条「集○社のインタビューに角○持って来たら勇者だよ。編集の方で消すわ」

五和「それであの作品に刀鍛冶の一族が出て来ますよね?お面を着けた」

上条「いたなぁ。全員ひょっとこのお面を……着けてたな」

五和「ヒョウトク様の加護を得る方法に、お面をカマドに掛けておくってあるんですよね。つまりヒョウトク様は火の神様でもあるんです」

五和「それが”どこ”から来たと思いますか?」

上条「話の流れからしてタタラ師なんだよなぁ?なんでまたそんなことに?」

五和「ひょっとこのお面の奇妙な表情、片目を大きく開けてもう片方はつぶるように小さく、そして口はキュッとすぼめています」

五和「これはタタラ師をモチーフに造られているからだ、という説があります。私も同感です」

上条「火を日常的に使う人たちだから、火事にならないための神様になった、ってか?」

五和「また逸話の一つに『ヘソをいじったら金の粒が出て来た』というのにも違和感がありませんか?」

上条「違和感のあるなしだったらまず出ねぇよ、だろ」

五和「ではなく、どうして”金の粒”なんでしょうね?当時の貨幣であってもおかしくないはずですし、そもそも両替しないと使えないですよね?」

上条「――あ」

五和「そしてまた”逆に”考えますと、ヒョウトク様のお面ははっきり言って異形であり、見てて気分のいいものではありません。私は個人的にそう思います」

五和「しかしながら、その面が効果のあるものとして信仰され、かつ祭りの日などにも用いられたのもちょっとおかしくないですか?違和感、といいますか、すんなりと受け入れられすぎていると言いますか」

五和「よってヒョウトク様が信仰として受け入れられた背景には、それ以前に似たような”何か”がベースに存在し、それを上書きするような感じで落ち着いたのではと」

上条「人が信じる以上、何かの説得力は必要だよな。昔の人だからこそ余計に」

五和「そしてまたイッポンダタラの原型になったタタラ師ですが、”たたら”って言葉がどこから来たのかが分かっていないんですよね」

上条「どこからって?」

五和「タタラを漢字で書くと『蹈鞴(たたら)』となります。”鞴”は訓読みでフイゴ、音読みだとビになり”ラ”とは読みません」

五和「同じく”蹈”も”踏む・トウ”であり、大分遠いですよね?」

上条「訛った感じでもないよな?直で読むと『トウビ』だし」

五和「恐らく唐宋音(とうそうおん)じゃないかなと」

上条「とーそーおん?」

五和「大体鎌倉時代ぐらいから日本に伝わった中国での読み方です。ではここでクイズです、『行灯』はなんて読むでしょう?」

上条「『あんどん』だ。昔の照明器具」

五和「正解です。でも”行”を”あん”とは言いませんし、”灯”を”どん”とも言いませんよね?」

上条「言われてみれば!?行灯って読み方以外じゃ使わねぇな!」

五和「他にも『鈴(リン)』や『瓶(ビン)』なんかがそうですね。日本に輸入されてきた際、現地の発音がそのまま定着した感じの」

上条「ってことは”タタラ”ってのも輸入された当時の、中国での呼び名がそうだった?」

五和「いえそれが不明なんですよ。梵字説やタタール族説、大和言葉から変ったという説も」

上条「千年以上前の話だからな」

五和「そして、えーっとまぁその、日本の鍛冶神の最古といえば『天目一箇神(あめのまひとつのかみ)』という方がいらっしゃいます。日本書紀にも登場される方です」

上条「漢字見ると思いっきり”目一”って書いてあるな!」

五和「ただしくは”まひとつ”です。意味は同じで『目が一つ』って意味で、やっぱり鍛冶士が長時間火を見続けていると視力が落ちたり、失明したりするそうです」

上条「関連性はあるっぽいよな」

五和「当時は共通認識としてと言いますか、”常識”としてあったのかも知れませんね。『目一つ?あぁ鍛冶士のことだな』ぐらいの気安さで」

五和「ですが人が多く、また関わる人や規模、時代が経過するにつれてそういう共通認識が薄れ、神様や妖怪という形で定着してしまった感じでしょうかね」

上条「神様?」

五和「はい、山の神様がイッポンタダラと同じ容姿だという伝承があり、人々から怖れられていますね」

上条「外見グロいしな」

五和「ともあり以上をもちましてイッポンダタラの説明を終わります。教皇代理の代理の五和でした」

上条「お疲れさまでした――って待て待て!サイクロプス忘れてる!」

五和「……えーっと、ですね。『沼』って言葉ご存じですか?最近こう『ハマってる』的な感じで使われていますが」

上条「あぁ気がついたらだな。『秒』と同じで」

五和「日本にも巨人伝説、ダイダラボッチや手長・足長のような伝説は伝わっているんですよ。主に山にしか出ませんが」

上条「まぁ巨人だしなぁ――って山?つーことは、まさか……」

五和「……はい、巨人もまた山の神の一種ということに……!」
(※なります)

上条「マジかスゲーな山の神!?なんでもアリっつーか!」

五和「サイクロプスは初めに言った”ルーツは違うけど本質的には同じもの”でして、鉄を扱う職人さんが向こうにもいて、彼らを見て想像したものが日本の似通ってしまった結果だと思われます」

上条「ヨーロッパから中国まで陸続きなんだし、正倉院にはシルクロードを渡ってきた品物があるぜ!」

五和「確率を0と見なしていいぐらいに低い、と思います。何故ならば大陸の影響を受けているものは、それこそ数多あるのにサイクロプスだけが残るとは考えにくいですから」

上条「中国の鍛冶の神様っているのか?」

五和「牛頭人体の蚩尤(しゆう)という神というか妖怪というのが。武器を開発した最初の人物だと言い伝えられています」

上条「へー牛なぁ?……ん?牛って最近聞いたな?ギリシャ文化よりも古い、ミケーネのミノタウロス――」

レッサー「――そう、あの伝説はただのビーフヘッドメンをぬっ殺す話ではなく、鉱物の神を倒して鉄器を得るというメタファーなのですよ……ッ!!!」

上条「な、なんだってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

上条・五和・レッサー「……」

上条「ってマジかよ!?ネタじゃなくて!?」

五和「悪い事は言いません上条さん!山の神をこれ以上追っていったらエッラい数の魑魅魍魎の話を聞くことになりますよ!」

レッサー「そして歴史的には全然連続していないのに、妙に出てくる怪異が似通う現象にあなたは耐えられるでしょうか……っ!」

上条「――はいお疲れさまでしたー。あ、ギャラは今度ステイルにでも持たせて下さい。失礼しまーす」

パタンッ

五和「あれ……?そんなに興味無いんでしょうか?ここまで引っ張れば普通は『じゃあ聞きたいな!』ってなると思ったんですが……」

レッサー「疑似餌がデカかったのかもしれませんね−。もっとこうコンパクトかつ興味を引く感じで!」

五和「まさかとは思いますけど――普通の方は妖怪とかに知らねぇよ的な?」

レッサー「まさかそんなことはない筈ですよ!じゃなかったらあっちを見ればロ×仙狐、こっちを見ればロ×邪竜とか量産されませんもん!」

五和「そ、そうですよねっ!怪異とか一切興味無いのにロ×でウケるとかあり得ませんもんね!」

レッサー「さっ、私たちの戦いはまだ始まったばかりですよ……ッ!!!」


-終-

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