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Clock(trial)

鳴護「地獄の闇咲ちゃんねる……『落ち武者の霊』!」

 
――

佐天「――はい、っていう訳で始まりましたね闇咲ちゃんねること闇ちゃんねる!今日もタブーに踏み込みますよ!」

鳴護「闇っていうか病みっていう……事故になるよね?電波に内容がついて行けなくて、ネット配信できたのはあたしたちがダベってるところだけだったよね?」

佐天「ガチでムチですからね!空気も読まずに怪異を潰すという!」

鳴護「うん、なんていうかこうね、もっとこう他にやり方ってあるよね?オカルト的な対処方法っていうかさ」

鳴護「なんかこう『ほん○』ぐらいの子供騙しでいいのに、どうして本当に潰そうとするの?」

佐天「そうですね五○さん!それで五○さんはどうしてテレビから急に干されたのですか?」

鳴護「事務所から退所したからだよ?そして恩を知らない方から数えて二人の方がチヤホヤされてるよね?」

佐天「ミャンマ○は民主化したのに○○○○○はしないのかな?」

鳴護「慎もう?ピー音でヒアリングできなかったけど誰もが薄々思っているけど、口に出せないことがあるんからね?」

佐天「それはつまり――霊的な現象ってことですよねっ!?」

鳴護「涙子ちゃんは人生が楽しそうだなー」

闇咲「確か彼は目の前で自殺未遂の女性が」

鳴護「――はーい!っていう訳で始まりましたね闇ちゃんねる!前回は二人でしたが、間が待たない&数字が悪いということで涙子ちゃんもゲスト出演をお願いしております!」

佐天「あざーっす!回想編なのでスケジュールに余裕がありますっ!お仕事他にあればメールしてください!」

鳴護「そして忌まわしい企画の持ち込みをされたご本人!そろそろ動画配信をやめて本業に戻ってほしいですこの人です!」

闇咲「彼曰く、『まさか本当に飛び降りるとは思――』」

鳴護「はいありがどうございました!もっと空気を読んでくださいね!じゃないとLin○で奥様に抗議しますからね!?」

佐天「りぴーとあふたーみーぷりーず、『――ふっ、親子ともどもツメが甘いようだな……ッ!』」

鳴護「誰に何を言わせようとしているの?だからファンの人から怒られるよ?」

闇咲「『――幻解・超常ファイ○』……ッ!」

鳴護「アドリブ効きませんよね?意外でもないですけど、だからといってギャグ放り込めって誰か言いました?スタッフですか?」

上条(カンペ)【もっかいテンドン☆】

鳴護「だから当麻君は最近お仕事すれば!?自由な立場は失うものだって大きいんだよ!?」

上条【ライバル(HAMADURA)が減った。残りはあとたった二人……!】

鳴護「生々しいよね?人としての器の小ささが全面に出てるよ?」

佐天「そして白い人以外にもう一人誰なのかが気になります。もしも御坂さんだったらあたしは敵に回りますけど」

上条【世界で一番俺の気持ちを分かってくれるのは蘭ねーちゃ○さん!】

鳴護「○ねーちゃんさんはそんなこと言わない!ただその『灰原○セット上下巻ってどういうこと?』って思ってるだけだよ!」

佐天「あれ怖いよね。特に映画公開に合わせたとかの必然性も理由もなく、ただ売れるからってだけで発刊されるっていうさ」

闇咲「――と、いうように誰しもが心に闇を持つ時代だ。妬み、恨み、嫉み、それは往々にして人外の入り込む隙間を作ってしまう」

鳴護「闇っていうかただの病みですよね?」

闇咲「そう、我々はそんな闇の住人へ対抗するための手段を持たなくてはならない」

佐天「対抗っていうか手段っていうか、前回の七人ミサキは『あぁそれ七人ミサキじゃねーからwwww』って最低のオチじゃないでしたっけ?」

鳴護「つ、作る方には参考になったと思うよ!最近はこう怪談で一発当てようってタレントさんも多いし!都市伝説とか!」

闇咲「あれはあれで危険だがな。嘘は嘘でもいい、それを言ってしまったら古今東西の物語なり能なり落語に至るまで数多く怪異は存在する」

闇咲「しかし娯楽は娯楽として割り切るものであり、その一線だけは守られねばならぬのだ」

佐天「えー、いいじゃないですか実話系怪談。あからさまに『あ、これ作りだな!』って手作り感ぞれがいい!」

鳴護「楽しみ方おかしくないかな?某ダメ映画マニアもそうだけど、『そこ!?』っていう楽しみ方探してまでするかな?」

闇咲「……まぁ、ネットのお陰か、前は絶対に誰も触れなかったものも語られてきているからな。ベクトルこそ違えども件の事務所への不満や批判だったり」

佐天「あれも時間が経ったら都市伝説化しそうですよねぇ。10年後には『ウッソだぁ!そんなパワハラできっこないよ!』みたいに」

鳴護「あの、ご歓談中恐縮なんですが、撮影中だってことを忘れないでほしいなー、なんて」

佐天「ではAパートはいつものように『怪異・滅殺☆』といきましょう!怪談に難癖つけるアレです!」

鳴護「もう何か別の番組にしません?浮かんでは消えていくダメ企画群の中でも生産性のなさでは上位に入りますよね?」



――Aパート

佐天「っていうわけでAパート!本日のお題はなんでしょうかヤミせんせー!」

鳴護「コ○せんせーにみたいに言わない」

上条【あれもう開き直って特定の読者層のみを意識してるよねー】

鳴護「れ、歴史物だから!偶然少年にスポットが当たってるだけだから!」

佐天「そして今日のお題に少し関係がないわけでもない……ッ!」

鳴護「だから無茶振りやめよう、ねっ?他人様が跳ぶハードルを上げるのよくないよ?」

闇咲「いや実は関係ないとはいえない」

鳴護「なんでですか。つーかジャン○読みます?世代的に?」

佐天「つまり今回のお題とは――まさか!?」

闇咲「君が考えているものとは確実に違うだろうが、まぁ落ち武者だな」

佐天「まぁそうですけど!落ち武者ですか!いいですよ!そういうの待ってました!」

鳴護「テンション上がる要素あったかな?」

上条【超分かる!怪談とかもう『カシャーンカシャーン』って鎧の音がするだけで笑うもの!】

鳴護「二人とも酷いよ!?本当にいるかもしれないじゃない落ち武者さんの霊が!」

佐天「あぁいえ最近の流行りからはかなり逸れていますね。今はよく分からない新キャラ妖怪を造ろう造ろうってのが主流で」

鳴護「あ、解説はいいです。今日は基本流していくつもりですから」

闇咲「流行り廃りは本当に存在する。大体大正から昭和ぐらいにまでは多かった」

鳴護「明治維新直後ですからね。時代的にまぁ近いっちゃ近いですし」

闇咲「そこで質問だ。君たちは落ち武者と聞いてどういう印象を抱くだろうか?」

鳴護「まぁ『落ち』ってつくぐらいですし。なんか矢が刺さってボロボロの鎧着た感じでしょうか」

佐天「あたしはコントでよく見るイメージが。某ワンナ○のアーカイバで」

上条【俺は学校の先生を思い出す。頭頂部がハゲてて両サイドが長いっていう】

鳴護「当麻君も入ってくるの?別にダメとは言わないからカンペじゃなくて普通に喋っていいんだよ?」

闇咲「外見が特徴的だからな。ただ具体的な背景はあまり一般的ではないのだが」

佐天「いえ、知ってます!平家の落人が村を作ったり町を作って隠れ住んだりしてるんですよね!」

闇咲「という伝説も全国各地に残っているな。平家の落人伝説だな」

鳴護「そういうジャンルがあるんですね?」

闇咲「岩手から沖縄まで数え切れないぐらいにあるな」

佐天「なんでですか。ジオ○の残党と超兵器が次々出てくる感じじゃないですか」

闇咲「大体は創作か捏造、そもそも証拠が少ない上にあったとしても木地師の捏造という話が広がった可能性すらある」

鳴護「あの、”きじし”ってなんですか?」

闇咲「樹木の木、地面の地、師匠の師で『木地師(きじし)』という。木材の伐採・加工をしながら移動していた集団だ」

鳴護「木材は分かりますけど……移動?」

闇咲「昔は、というか明治よりも前は植林する文化がなかった。今の熊野古道もほぼ禿げ山状態と、都市圏の周辺は酷い事になっていた」

闇咲「当然職人たちも例外ではなく、ある場所に腰を下ろして木を切り倒して加工。周囲を取り尽くすと別の場所へ移動して、というサイクルを行っていた一団だな」

佐天「そこだけ聞くと面倒ですよね」

闇咲「戦乱の時代もそここそ長かったからな。彼らの強みは技術を財産にある程度自由に移動できたからだ」

闇咲「そして彼らが定住をせずに移動していたからこそ、全国各地へ技術が伝播したとも言われている」

佐天「あれ?それじゃ山の中に済んでいた天狗とかって?」

闇咲「その正体が彼らだという説がある。個人的には山伏説を推したいが、しかしこの木地師はある程度無法というか、無頼的な側面があった」

闇咲「彼らの行動の一つに『この山で木を切る権利は御上から頂いたものだ』、と数代に渡って勅を勝手に吹聴していた、という話があってな」

上条【ちょく?】

闇咲「天皇であったり特の権力者であったり、その時代によって変るのだが、今と違って確認一つに年単位だ。よって無理難題ではない限りは放置される場合が多かったと」

闇咲「そしてその中の一つに『平家のやんごとなき御方から頂いた』というパターンがあり……」

佐天「あー……そっから派生していっちゃったかー。信じちゃったかー」

闇咲「平家の落人に限っては武者だけではなく、その他の奉公人や関係者、更には落人らしき人間と血が混じった子孫も自称している」

闇咲「なので収集がつかない。否定するだけの根拠に乏しく、かといって認めるだけの証拠もない」

鳴護「あー、その木地師って人たちも実は平氏の末裔だったりします?」

闇咲「そういうのも実際にいただろうな」

佐天「でもアレですよね。木地師って人たちも無茶言う割には乱暴なことはしなかったんですね」

上条【何か盗賊みたいにヒャッハーしそうだよな。そこまでフリーダムだと】

闇咲「それには理由がある、というか落ち武者の話にもなるのだが」

鳴護「あ、すいません。スタッフさんが再現動画が先ですって……再現?なんの?」

佐天「ではご覧ください!あたしは内容を知りませんが!」

ピッ

上条『いやー暗いわー、バイトの遅番へ入っちゃったら予想外に遅くなっちまったわー』

鳴護「あぁ頑なに喋らなかったのってこれ!?別に動画は動画だけで流せばいいのに!」

佐天「しーっARISAさん。面白いのでこのままで」

上条『早く帰ってスフィンクストとインデックスとオティヌスにご飯あげないと……あ、そうだ。公園を突っ切ればかなり時短できるんだよなー』

上条『でも暗くて怖いしぃ……』

上条『まぁいいや!痴漢が出たら大声出せばいいよな!』

鳴護「女子かな?そして台本誰が書いたか知らないけどミスキャストだよね?当麻君は言っちゃなんだけど、世界屈指でそういうの気にしないで突っ込むよね?」

佐天「そしてこれ完全にトラブるパターンですよね。別の言い方をすればオイシイ」

上条『怖いなー、でも時間が惜しいしもう入っちゃったしなー!折角だからこのままで!』

鳴護「タクシー使えば?もしくは人気のある所まで引き返せば?」

上条『うん……?何か聞こえる……ッ!?』

佐天「下手ではない、決して下手ではないんですけど全力過ぎて聞いてる方が辛いです」

上条『この、音は……金属?金属を擦り合わせるような音が、聞こえて――』

落ち武者『……』

上条『――あ、あそこにいるのは落ち武者の霊……ッ!!!?』

ピッ

鳴護「これ本当にオンエアするんですか?当麻君の好感度か下がるよ?」

佐天「あたし的には面白いんでオッケーだと思います。てかこれ別に普通の落ち武者ですよね?」

闇咲「流行りだったんだ。江戸時代には大抵源平の乱で亡くなった霊が出て来ていた」

鳴護「戦国時代は?てゆうか織田信長の霊とかは?」

闇咲「それが”何故か”殆ど出て来ない。精々亡くなった町人の霊ぐらいだが……媒体の問題がまずあってだ」

闇咲「基本的には幕府や公の管理下に置かれている以上、瓦版や歌舞伎に能に狂言、そして読本全てが特定のジャンルに限って書けなくなった」

闇咲「当時のコンプラに大きく反するようなことは避けられ、結果として源平の話が一番題材として用いられていた、というのが一点」

鳴護「できないんですか?」

闇咲「娯楽はどこまでいっても娯楽だからな。取り締まれるようなものは避けられる。無理にリソースを割いても意味がない」

佐天「江戸時代から完全に商業主義……!」

闇咲「そして次に、動画の中の武者の霊は東日本某所で目撃例が多発した”らしい”ものを再現している。どことはいえないが観光地でよく映り込んでいる”らしい”んだ」

鳴護「また言い方が微妙に言い辛そうに……!」

佐天「まぁ大体自己申告ですからね」

闇咲「最近よく聞かれるのがどこそこの合戦の古戦場跡、戦国時代のものが多い。さて、では動画に映った武者姿を見てくれ」 ピッ

鳴護「再現ですよね?これ本当にあったんじゃないですよね?」

闇咲「目撃証言”らしい”ものや心霊写真”っぽいもの”を正確に再現してある。それで?見覚えは?」

鳴護「サムライさんには縁がないので正直分からないです。あ、五月人形でしたっけ?あれで飾られるっぽいのかなー、みたいな」

佐天「あ、知ってます!武者ガンダ○の着てるの!」

鳴護「逆、かな?うん逆逆、着てるけど、ってゆうか着させられてるけど」

闇咲「正式名称を大鎧(おおよろい)といって、平安時代に主流だった徒歩での戦いに向いた作りになっている。一言でいえばだが」

佐天「あー、鉄砲とか伝わる前ですもんね」

闇咲「その通り。胴丸という胴鎧を軸とし、想定される敵側の兵装に合わせて具足を変えるというスタイルへ切り替わる」

闇咲「鉄砲の伝来であったり、長槍を用いた集団戦術であったり、兵科が専門家かつ複雑化することによってできた鎧を当世具足(とうせいぐそく)なのだが」

闇咲「……ここで、非常に不思議な、いや怪奇ともいっていい現象が起っているのだ……ッ!」

佐天「おっ、いいですねー!とは一体!?」

鳴護「食いつきが良すぎる」

闇咲「なんと、戦国時代の古戦場跡で目撃されたり、撮った写真に写り込んだ武者の霊が大鎧を着ているのだ……!」
(※実話っちゃあ実話です)

鳴護「……はい?」

佐天「えぇと、それはつまり?」

闇咲「『そこで討ち死にしたのは室町時代の武者なのに、どういう訳か出現するのが平安時代の武者の亡霊』」
(※よくあります)

鳴護「それは、うん、あの、ほらっ!なんだがね、当麻君も言ってあげてよ!」

上条【作り手が歴史を知らず、ノリで”武者?あぁこんなんだろ!”って雑にコラったり話を盛ったりしている】

鳴護「もうちょっと言葉は選ぼうか!あたしも実はその結論へと達しているんだけど、もう少しフワっとした言い方をね!」

佐天「ガンダ○に例えれば、地球にあるザ○の残骸を撮ったら、映っていたのがネオジオ○の兵士の幽霊、というところでしょうか」

鳴護「分かりやすいかな?それただジオ○言いたかっただけだよね?」

闇咲「他にも平○にいなかったはずの当世具足を着た武者の霊の姿も」

鳴護「あれこれ心霊の話してます?イタイ話ですよねただの?」

闇咲「本来そこにいるはずのない存在が時空を超えて登場してしまっている……これは何かの前兆ではないだろうか……ッ!」

鳴護「雑なだけですよね?怪談作るに安易な道を選んで暇な人にツッコまれてるだけですよね?」

佐天「待ってください!もしかしたら落ち武者の霊ではなくスタン○能力かペルソ○能力が発現したって可能性も!」

鳴護「どっちも目には見えないよ?少なくとも一般人には」

上条【あぁいや正しくはジョセ○さんの写真は念写であってそれ自体がスタン○能力だし吉○親父も写真に写った人間をっていう】

鳴護「長文でカブせてくるのもやめてくれないかな!?それもう完全にカンペの長さじゃないからね!」

闇咲「とまぁ注意喚起はそこそこにしてだ。落ち武者に関してはもっと酷い話がある」

鳴護「……自称が殆どって時点で救いはなくないですか」

闇咲「ではなく。平家の落人伝説……は聞いたことがないか」

佐天「都落ちして来た人が隠れ里的なものを作るんじゃ?」

闇咲「と、いうものもあれば、逆に村人が落ち武者を殺害し装備を強奪、その後祟られるという話が」

佐天「八つ墓○ですね。横溝正○の」

鳴護「フィクションだよ?落ち武者さんっていっても戦闘力持った人なんだから」

闇咲「いや、実際よくあったそうだ。落ち武者狩りが」
(※マジです)

鳴護「ちょっと何言ってるのか分からないんですけど」

佐天「戦わなきゃ!現実と!」

鳴護「落ち武者は別にフィクションでもいいよ!だって使う機会が絶対に無いから!」

闇咲「いやいや冗談ではなく事実だ。当時の風潮として『負けた側の兵士はおどるほうせ○』ぐらいの感覚で狩られていた」

鳴護「いや知りませんよ!?そんな殺伐としてたんですか村人が!?」

闇咲「事実そうだったのだから何とも。まず当時は戦争は度々あったし、農民の反乱もしばしば起きていたし、行政も不完全で隣村などとのトラブルも自己解決が基本」

闇咲「また逃げ延びてきた武装した集団、この場合は落ち武者なり残党なりが『もしも宜しければ食べ物を頂けませんか?』などと、平和的に交渉すると思うか?」

佐天「まー、ないですよねー。『ハイクをよめ!カイシャクしてやる!』の世界です」

鳴護「自衛だったら、まぁ……」

闇咲「『実盛(さねもり)送り』という、まぁ虫送りの一種、といっても分からないだろうから……あぁ農村部では夏になると『虫送り』という害虫を払う祭りを行うんだ」

闇咲「こう、藁の人形を作り、それを夜に焼くことで害虫を退散しようという信仰の一種なのだが」

鳴護「実際に効果はあるんですか?」

闇咲「あくまでも信仰の一種だ。古い藁を処分することで、虫の寝床にならない程度の効果はあるかもしれないが」

闇咲「ともあれその中に『実盛送り』と呼ばれるものがある。これは『斎藤実盛(さいとうさねもり)』、まぁ平氏の武将だな。彼か死んだ際、乗っていた馬が稲の切り株に躓き、それを怨んで害虫になって祟っている」

闇咲「だから虫へと転じた実盛を弔うことでその祟りを和らげよう、という思想で行われている」

佐天「あれそれっておかしくないです?確かにコケで死んだのは無念だと思いますし恨みもするでしょうけど、一番おこなのは源氏へでしょうに」

闇咲「実際に転倒したかどうかも含めて真偽は怪しいのだが、そのぐらい受け入れられる土壌があったと」

闇咲「つまり『平氏の落ち武者である実盛が祟りがあったとしてもおかしくないぐらい農民が怨まれる』という背景が」

鳴護「どんだけ狩ってたんですか落ち武者さん。そして狩られてたんですか」

闇咲「まぁそれは祟りのメカニズムは長くなるので省くとして落ち武者がだ」

闇咲「果たして何百年後にまで化けて出た上、その恨みを狩った側へぶつけたり時の為政者の子孫へぶつけるでもなく、徘徊するか?という疑問が」

闇咲「しかも手慣れた感じで農民が武装していたため、そこそこの頻度で狩られては無惨に捨てられていた」

鳴護「すいません、なんで農民が強かったんですかその時代」

佐天「そりゃ秀吉も刀狩りますよねぇ」

闇咲「身分形態が非常に曖昧だからな。地方豪族でも力があれば名家と称しても問題はない……というよりも」

闇咲「鎌倉幕府が拓かれた時点で政治の主導が朝廷から豪族へと移っている。位の上下や格式が通用しなくなったというか」

闇咲「蜂須賀氏だったか?織田氏の配下から始まって秀吉の直臣の大名にまで登り上がった例もある」

佐天「去年の大河も主人公も、結構出生がワヤだっていってましたっけ」

鳴護「……いいんだ?そんな雑で?」

闇咲「さて、落ち武者に関しての話は以上になる。遭遇した場合を簡単にまとめると、だ」

闇咲「まず相手の装備をよく確認し、戦国時代の戦場跡に源平時代の幽霊じゃないかどうかを確認する」

鳴護「違ってたらどうするんですかそれ」

佐天「決まってますよ。『出る場所間違えてますよ☆』って優しく伝えてあげないと!」

鳴護「煽ってるよね?全力でケンカ売りにいってるよね?」

闇咲「次に『あなたの死因はなんですか?武士なのに農民に狩られたんでしょうか?』と、こうソフトに訊ねてみるんだ」

鳴護「ですから煽ってますよね?そこでケンカ売られた方もどうしていいかリアクションに困ると思うんですよ、かなりマジで」

闇咲「『斎藤実盛は数百年に渡って全国の農家を苦しめましたが、あなたは一体どのような特殊能力を持っていますか?』」

鳴護「キャラ大丈夫ですか?てか台本書いているの涙子ちゃんだよね?闇咲さんこんな面白キャラじゃなかったよね?」

佐天「失敬な!?あたしだったら『まさか素人相手に姿見せてビビられて満足するような、ショッボイ自己顕示欲とか言いませんよね!?』」って煽りますから!」

鳴護「あ、これレッサーちゃんだな。きっとどこで隠れて伺ってると思う」

闇咲「そして最後に、こう、言う――」

闇咲「『――例え創作でも実話系怪談を名乗るんだったら、しっかり設定を作ろう』と」

鳴護「だから誰にケンカ売っているんですかって!?明らかに途中から別の、しかも特定の団体さんへ言ってますよねぇそれ!?」

鳴護「あとすいません!今回のオンエアを体験したあと、素人のあたしでも『カシャーンカシャーン』と鎧の音が響いてきたら、その時点で笑っちゃうしせゃないですか!?」

佐天「やったね!怪談に耐性が出来たよ!」

鳴護「やってないよ!?多分ドッキリでそういうお仕事できても死んだ魚の目をして『わーこわーい』って棒読みするよ!?」



――Bパート

佐天「――はい、って訳でBパートです!番組も後半になりましたけど、いやー怖かったですね前半は!」

鳴護「怖い要素あったかな?全体的に『なにそれヒッドい』じゃなかった?」

佐天「えぇと番組のテコ入れということでここからはあたしとARISAさんがメインで、ヤミせんせーはアドバイザーとしてお送りします!」

闇咲「闇咲だ」

鳴護「前半もそんな感じだったよ?そして大丈夫かな?来週ぐらいからあたしと涙子ちゃんがメインパーソナリティでお送りしてない?」

闇咲「それもまた時代の流れ。逆らうには歳を取りすぎた」

鳴護「前から気になってたんですけど、闇咲さんっておいくつなんですか?神裂さんみたいに超年上っぽく見えるのに、実は一人でカミカゼしてくるぐらいには若いですよね?」

佐天「では後半第一発目の『ふつおた』!」

鳴護「方向性考えようか?ちょっとアレな感じだけど、基本真面目に絡んでいこうって番組でやってるんだよね?」

上条【この手慣れてる感】

鳴護「ねっ!?涙子ちゃんはそういうとこがあるんだよねっ!?」

佐天「もう既に応募してあるのでやめるのはちょっと」

鳴護「あぁもう手遅れなんだ?てゆうかどういう主旨で募集したの?」

佐天「【社会的に消してほしい都市伝説募集☆】」

鳴護「ちょっと何言ってるのか分からないかな。ふつおたですらないし、社会的に消すって都市伝説を?」

闇咲「話に矛盾があれば指摘したり、本当に拙いと思ったものは私が直接介入する」

鳴護「ガチすぎませんか?アフターケアまでバッチリすぎて、そのえーと、プロが素人さんに介入すると逆に拗れません?」

闇咲「そうなった時の場合の保険として、賑やかしが三人ほどいれば『ネタでした』と事なきを得られると判断した」

上条【俺が勘定に入ってんですがコノヤロー】

鳴護「特に問題はないよ?今じゃ当麻君もすっかりネタ要員だからね?」

佐天「あぁスピンオフでもします?『とある放課後の都市伝説』みたいな?」

鳴護「うんあのね、傷つけないようにやんわりと釘を刺しておくけど、この世界の住人全てがオカルト好きなわけではないからね?苦手な人だっているんだよ、涙子ちゃんのすぐ近くに一人」

佐天「ちょっと待ってください――目に見えない人が一人ブースの中にっ!?」

鳴護「本気で言ってるのか分かるからこれ以上強くは言い出せない……ッ!」

上条【レッサーたちとの最大の違いは邪気の有る無しだからな。余計にタチ悪いとも言うが】

佐天「はいでは最初のお便り!えーっと、ハンドルネーム『べ、別にあんたのためじゃないんだからね!』さんです!」

鳴護「初っ端からする身内臭が。まぁ狭い範囲で回しているんだけど」

佐天「『ふしぎ研究部のみなさんこんちには!』、はいどうもこんにちは!」

鳴護「違う番組かな?そんな可愛らしい名前じゃあ、ない」

佐天「『いつも楽しく拝見しておりますが、ゲコ太をマスコットキャラクターに起用されては如何でしょうか?』」

鳴護「せめて内容に触れよう?もう何か色々諦めてはいるけれども!せめて一回でも真面目に聞いてからメールしてね!」

佐天「『日本酒を心霊スポットへ置いておくと味や風味が変るって聞きますが、本当ですか?』あー、あたし聞いたことありますね」

鳴護「そうなの?」

上条【俺も映画とマンガで見た。呪○と見える子ちゃ○】

鳴護「と、いうことなんですが、闇咲さんのご見解は?」

闇咲「場合による」

上条【大体そうだろ。てかそれ言い出したらなんでもそうだわ!】

佐天「やだ、カンペでツッコんでる人って……」

鳴護「事前に用意してあったってことだよね」

闇咲「いや、言い方が悪かった。飲酒自体が禁止されている宗教も少なくはない。イスラム教だったり十字教でも聖職にあるものとかは」

鳴護「日本でもお坊さんはダメでしたっけ」

闇咲「ダメと言う事になっている――の、だが。僧坊酒(そうぼうしゅ)というものがあってだな。寺院で長らく醸造されていた歴史もある」

鳴護「お寺なのにですか?」

闇咲「海外でも特定の修道院がワインやビールを造っている。そもそも十字教では儀式の一環でパンとブドウ酒を使う訳であり」

闇咲「また発酵させたワインやビールは水と違って腐りにくく、保存用の飲料水としても重宝されていた」

佐天「日本じゃそんなことないですけど……」

闇咲「日本に稲作文化が根付いたのは大量にかつ永続的に水を使用でき、温暖な環境が必要」

闇咲「今でこそEU屈指の農業国になっているフランスだが、十字軍以前では麦がまともに育たず、ソバを持ち帰るまでは食料事情が大変だったそうだ」

闇咲「従って『酒=神聖なもの』という地域が俯瞰した場合には多い。ケルト神話の冥府の女王、蜂蜜酒の女王の二つ名を持つ……まぁ死神か」

上条【あ、俺知ってる。子供にハチミツをあげてる習慣があって、そこそこ亡くなるから、みたいな?】

マーリン『かなんなぁ、エッライ風評被害やん』

闇咲「だが逆に生き残った子供はより大きくより強く成長する、らしいが。そういう時代もあったということだ」

佐天「今誰かいなかった?」

鳴護「――はい!じゃあこの噂は本当ってことでいいですかねっ!?」

闇咲「いや、多分デマか勘違いだと思う」

鳴護「え、でも今お酒は神聖なものだって」

闇咲「という概念はある。しかしだからといって、捧げた酒をまた口にして何かを測る、という話は聞いたことがない。私の知識の中では」

闇咲「むしろ逆だな。個人的には絶対にやめておけ、とだけ言っておく」

佐天「なんでですか?お酒、まぁ未成年がするのはダメでしょうけど、それ以外だったら問題なくないですか?」

鳴護「ですね。神様や仏様にお酒、てかおみき?って捧げたりしますよね?」

闇咲「そうだな、”それ”が最大の問題だな」

佐天「どれ?」

闇咲「類感呪術――まぁ形代と同じだな。憎い相手に似せた人形を作って針を刺せば、その相手へ不幸が訪れるという”信仰”だ」

闇咲「不特定の場所ヘ酒を置き、何か霊的な判別を”してもらう”という行為は何かに似てはいないだろうか?」

佐天「あー……まさに神様へお神酒を捧げる行為っぽいですよねぇ」

鳴護「いやいや、神様ってそんなにポコポコいるようなもんじゃないですよ!?」

闇咲「実際はそうなんだろうが、人間は大抵見たいものを見たい通りに幻視る。落ち武者の話では笑い話にしたが、あれも実は感受性の強い人間が存在しないモノを勝手に見ている可能性がある」

闇咲「『ここは昔大勢の人が合戦で死んだ、今も怨んでいるに違いない、ならきっと落ち武者の霊が現れる』――」

闇咲「――と”思い込”んで、その人間の頭の中にあった武者姿を取り、それで時系列や史実を無視して現れる」

闇咲「……まぁノイローゼになってしまう、ということだな。原因を勝手に作ってしまう」

上条【オカルトが”アリ”の世界観だと?】

闇咲「正直”なに”が来るかも分からないんだぞ?雑霊ならまだしも、大昔にここで崇められていた神が、とかだったら目も当てられない」

闇咲「……いや、本当に大変なんだからな?まず先方が”なに”かをきちんと識った上、対処方法はそれぞれの専門家に依頼してどうにかだ」

闇咲「どこかでのデタラメな『右手』で触ったら全て祓えるとかデタラメもいいところだ」

上条【何かサーセンwwwwwwww】

鳴護「当麻君、草が邪悪です」

闇咲「現実的な話、日本酒の特に冷酒は風味がとびやすい。なので温度管理は徹底されていて出荷してからずっと冷蔵庫に入れるのが当り前」

闇咲「それを常温へ放置した日には、味も変るわ風味はなくなるわ、というだけだったとも考えられる」

佐天「まぁ大体の食べ物・飲み物は開封した時点から痛みますからねぇ」

鳴護「……何とも締まりのないオチで恐縮ですが、美琴ちゃん、もとい『べ、別にあんたのためじゃないんだからね!』さん、ありがとうございましたー」

佐天「さて次が最後のお手紙になります!」

鳴護「少なっ!?そして消去法から言って当麻君関係の人脈だね!」

佐天「ハンドル、『翼がほしい』さん!いつも応援ありがとうー!」

鳴護「いつも……?二回ぐらいしか放送なかったのにいつもって……?」

佐天「『はじめましてこんにちは。最近私が悩んでいることがあり、どうしても聞いて頂きたいのでお手紙差し上げました』」

鳴護「悩み?これでオカルト全然関係無かったらおこ案件なんだけど……」

佐天「『あれはつい先日の話です。私は夕方に鍵のかかった音楽室へコッソリ忍び込んで、ピアノの練習をしていました』」

鳴護「あー、コッソリはよくないですよ。テスト期間中とか部活禁止だったら、先生の指示には従わないと」

佐天「『暫くすると人の足音が聞こえます。あ、これ見つかっちゃったなーと私は隠れることにしました』」

鳴護「いやだから、そういうのはダメっていうかね。正直にゴメンナサイした方がまだ心証も悪くないんじゃないかな?」

佐天「『ガチャリ、とドアの鍵を開けて警備員さんが入って来ました。彼は蒼白になった顔でこう言いました――』」

佐天「『――”だ、誰が弾いていたんだよこのピアノ!?”』と!」

鳴護「タチわっる!?相談内容はまだ分からないけど、いいことじゃないよそれ!能力使って隠れてるんでしょ!?」

佐天「『また別の日のことです。夕方に屋上の給水タンクの上で、合唱コンクールの歌の練習していたとき』」

鳴護「なんでこの子基本ソロ活動なの?もっとちょっと前面に出てもいいんじゃないかな?出現時間は夕方って」

佐天「『喉が渇いたのでジュースでも買おうかとタンクから降りると、またガチャリと屋上のドアのカギを開ける音がしました』」

鳴護「二回目だよね?だかにどうして鍵のかかった場所で……イジメ?」

佐天「『また警備員さんです。彼は屋上をくまなく丁寧に見回りをし、誰もいないのを確認したあと――』」

佐天「『――”き、気のせいだよな!歌なんてしなかった!幽霊なんていない!”』と言って、帰っていきました』」

鳴護「……」

佐天「ありゃ?ツッコミはしないんですか?」

鳴護「えーっとねー、なんかこう不自然っていうか、微妙にボタンを掛け違えたような気持ち悪さっていうか、うん……?」

佐天「『更に別の日にはこんな事が起きました。私が深夜に学校でシャワーを借りていると、入り口の方から、コンコン、コンコンコンとノックする音がします』」

鳴護「ねぇもうふつおたのコーナー締めに入らない?あたしの予想通りだったらひじょーにこう、ダメな感じに」

佐天「『私はとっさに姿を透明化させて逃げました』」

鳴護「やっぱりこれ幽霊さんからのお手紙だよぉ!?当麻君の交友半径どんだけ広いの!?」

佐天「『それで最近悩んでいることなのですが、とても雰囲気のある黒髪ロングの美人な女の子に懐かれました』」

鳴護「あ、あれ?それってまさか」

佐天「『”大丈夫。あなたは死んでいるの気づかないだけ。私があっちへ行く時。手を引いてあげるから”と、妙に理解を示してくれるのですが』」

鳴護「何やってんの秋沙ちゃん?もうそれ秋沙ちゃんしかいないのね?幽霊相手に淡々と話すのって秋沙ちゃんぐらいしかいないよね?」

佐天「『気持ちは非常にありがたいですし、個人的には新しいお友達ができて嬉しいのですが。私は幽霊でもお化けでも妖怪でもありません』」

佐天「『私は彼女の気持ちにどう答えればいいでしょうか?何度も”自我を持った拡散力場です”と言っているのに信じてもらえません』」

鳴護「もう幽霊でいいんじゃないかな?自己申告だけど、行動パターンを聞いた限りでは寄せに行ってるよね?全部昼間やればいいことだよね?」

佐天「最後に最大の難問が来ちゃいましたねー!本人は幽霊であるのを否定する幽霊ってパターンですよ!」

鳴護「しかも幽霊が悩んでるんじゃなくって、ストーカーしてる秋沙ちゃんをどう説得すればって案件だしね!」

闇咲「まずは様子を見てみないことは何とも言えない。死後数百年経ってすっかり人畜無害になった落ち武者レベルの危険度なら、まぁ放置してもいいのだが」

風斬「――基準が落ち武者なんですかっ!?」 ヒュンッ

佐天「おおーっとここでまさかのご本人降臨だーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!しかもおっぱい大きくて可愛いぞ!」

佐天「さぁどんな特殊能力を見せてくれるのでしょーか!ハイハイハイハイ、ひょーいひょーいひょーいひょーい!」

鳴護「ごめん涙子ちゃんちょっと黙って貰ってていいかな?緊張感の欠片もなくなるし、テンションの上がり方がおかしいからね?」

鳴護「あと個人的になんだけどどうして涙子ちゃんの前に幽霊がでないのか分かったよ。だって困るから。全力でウェルカムされても陰キャラには厳しいものがあるよ」

闇咲「闇咲逢魔だ」

風斬「か、風斬氷華ですっ!すいません急に来ちゃって!」

闇咲「生前の記憶で憶えていることを、できるだけ時系列順に言ってほしい。死因は辛いかもしれないが

鳴護「すっごいマイペースに事態を進めますよね?もっとこうリアクション、うん」

風斬「いやだから違いますってば!ほらこの通り物も持てますし普通に握手してもできます!」 ギュッ

佐天「ぐっ!?ぐぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ……!?」

鳴護「ややこしくなるからエナジードレインされてる風の演技しないの」

風斬「ごめんなさいごめんなさいっ!そんな力があるとは分かんなくって!」

鳴護「助けて当麻君!?録画スタジオの中には基本ボケの人しかいないよ!?」

上条「あの、ごめんなさい。風斬は人間です」

鳴護「そんな、『あの子は人間だぞ』みたいに言われても」

闇咲「少年。君が庇い立てするのは心情的に理解出来なくもない。一見精神は落ち着いているように見えるし、霊障らしい霊障を撒き散らしている訳でもない」

闇咲「しかしながらずっと闇を彷徨い、何度も出会いと別れを繰り返していくうちに心が磨耗し、いつしか狂う」

闇咲「そして行き着く先が心霊スポットを彷徨い、実話系怪談のネタとして取り上げられて著作権を主張されるようになるぞ……!」

佐天「な、なんて怖いっ!?」

鳴護「二人ともいい加減にしなさい、めっ!当麻君も何か言ってあげてよ!」

上条「あ、すいませんスタッフの方。今の動画を16Kでケータイに送信してください」

鳴護「違う、そうじゃない」

上条「いや盛り上がってるところ悪いんだけど、風斬はインデックスも『ゆうれいじゃないんだよ』って言ってるから」

闇咲「あぁじゃあ違うな。能力者なんだろう。色々言ってしまって悪かった」

鳴護「インデックスちゃんの信頼力が……!」

佐天「ではプロの方が幽霊っぽいけど幽霊じゃないよ、という結論になったので話を進めますが、えっとお友達を説得したい?んでしたっけ?」

風斬「はい……何度言っても信じてもらえなくて。いい子なんですよ?あ、これこの間一緒に撮った写真です!」

鳴護「あ、拝見します……うんまぁ予想通りだったけど、やっぱ秋沙ちゃんだね。表情筋が一ミリも動いてないのにピースサインってシュールな図が」

佐天「あの、すいません。これいいのかなー、言っちゃっていいのかなー」

鳴護「……うん。多分あたしも同じこと思ったんだと思うよ。言わないけどね」

上条「何が?」

佐天「これぶっちゃけ、ビジュアル的に風斬さんじゃない方の方が幽霊っぽくないですか?」

上条「どストレートに言ってやるなよ!?もっとこう雰囲気あるとかラスボスっぽいとか絶叫教○に出てるとかオブラートに包んだ言い方しなよ!?」

鳴護「――はい!という訳でサヨウナラのお時間となりました闇ちゃんねる!いやー、世の中には不思議なことって多いですよねっ!」

鳴護「どうしてか闇咲さんっ!?本日を通してのご感想は!?」

闇咲「生きていたのか――姫神の一族が……ッ!?」

鳴護「『本日は有意義な時間でした』だ、そうです!それでは皆さんさよーならー!また会う日まで!」

鳴護「あと事務所へのクレームのメール募集してまーす!ジャンジャン送ってくださいねーっ!」



――オービット・ポータル芸能事務所 数日後

マネージャー「お疲れさまでしたARISAさん。動画再生回数はそこそこ伸びているそうです」

鳴護「あたしは見てないっていうか、見る気も皆無なんですけど」

マネージャー「えーっと、ふつおたよかったですよねー。まさかお酒にそういう意味があったとは」

鳴護「素人が余計なことしちゃいけない、というのが全体的なテーマでしたよね」

マネージャー「他にも身内でローテションを組む感じで、はい」

鳴護「もっと他にありませんか?落ち武者とかまさかの幽霊さんモドキ降臨とか、他に取り上げるべきところありましたよね?」

マネージャー「あぁそれカットされました」

鳴護「……あの、今なんて?」

マネージャー「ですから放送的にNGを喰らったため、実質的にオンエアされたのはふつおたの前半のみです」

鳴護「なんでですかっ!?幽霊でも映っちゃったんですか!?あぁまぁ確かに風斬さんはそれっぽかったですけど!」

マネージャー「落ち武者の話ですね。村人が落ち武者狩りをして祟りが−、みたいな下りあったでしょう?」

鳴護「驚愕でしたけどね」

マネージャー「いやそれがですね、落ち武者の祟りの話が伝わる場所がそこそこあり、その恨みの原因が『村人が武者狩ったから』ってのがダメだそうで」
(※って言われてボツったことがあります)

鳴護「なんでですか。当事者は全員お亡くなりになってるのに」

マネージャー「そうしますとその、『祟りを受けてる側のご先祖が殺人者』というのがまぁ。はい、アレですよねーとのことです」

鳴護「すいません元特殊部隊のクロウ9さん。前の選挙に日本史上の殺戮数&弾圧数&支配年間をレコードしている徳○幕府の子孫の方出ていませんでしたっけ?」

マネージャー「そう思う人もいればそう思わない方もいらっしゃいます。残念ですが今回はご縁がなかったことで」

鳴護「闇咲さんが頑張って喋ってたのに……あ、じゃあ風斬さんの方はどうしてダメなんですか?」

マネージャー「えーっと……あぁARISAさんのご存じの中で一番偉い方はどなたですか?学園都市の中で」

鳴護「はい?」

マネージャー「いいですから。どなたです?」

鳴護「あぁはい、あたしがお世話になっていた院の院長先生が偉くて。その先生はいつも支援してくださる親船さん?って方のお話をよくされていました」

マネージャー「意外にビッグネームが来ましたね。その方は学園都市の中では国会議員に当たる方です。統括理事のお一人ですね」

鳴護「へー、そんなに偉い方だったんですか−。お目にかかったことはないですけど」

マネージャー−「――で、その親船さんよりも更に偉い方から『あぁこれは公開しちゃダ・メ・だ・ぞ☆ミ』と」

鳴護「………………はい?」

マネージャー「自分も驚きましたよ。まさか本当に存在してたんですね、アレイス――」

鳴護「聞きたくないです!?また何か厄介事に巻き込まれそうだから!」

マネージャー「といった事情につき、今回流せるのはふつおたの一部分だけです」

鳴護「……大丈夫なんですかそれ?啓発運動目的なのに収支的なものがダメになったりしません?」

マネージャー「問題ありません。喪服を着たオッサンが一人語りするよりも、女子二人が喋ってるだけで数字取れますから」

鳴護「別の意味で問題ありますよね?この世界の行く末を考えるところですよね?」

鳴護「あとすいません。労災を申請したいんですけど」

マネージャー「それは……大変じゃないですか。如何されました?」

鳴護「『カシャーンカシャーン』と鎧音SEが響いてきたら、その時点で笑いがこみ上げるんです」



-終-

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