鳴護「地獄の闇咲ちゃんねる……『七人ミサキモドキ』!」
――
闇咲「闇咲だ」
鳴護「どうも!最近ヨゴレ仕事がめっきり板についてきましたが、レッサーちゃんの呪いだと思いますARISAですっ!ヨロシクねっ!」
闇咲「『幻解!超常ファイ○!』」
鳴護「キャラと仕事が一致してないですよ?いえあの、誰に吹き込まれたは分からないですけど、あまりボケを多用するのはどうかなって」
闇咲「早いもので今年も師走だ」
鳴護「ですねー」
闇咲「では本題なのだが」
鳴護「ただの感想!?話を膨らまそうって発想自体がない!?」
鳴護「いやですからね!?あたしワンクッション入れましたよね!?ですねって相づち打ってから何か小さな話題を取り上げるとかしますよね!?」
闇咲「時候の挨拶、では?」
鳴護「『師走だけどクリスマスにこの企画!?』とか!『なんで思い出したように始まるの!?』とか!」
上条(カンペ)【それアリサが思ってても口に出さなかった事じゃ?】
鳴護「裏方の人は黙ってて!事務所へ『誰か暇でギャラの安い人いないですか?』って企画持ち込んできた人は!」
(※オービット・ポータル芸能事務所、所属タレント;ARISA、TorM@の計二名)
闇咲「君はアイドルをしているのだったか?」
鳴護「そんなフワッとした認識で!?……えぇはい、学園都市ご当地アイドルみたいな感じで、シンガーですけど」
闇咲「さて今日は」
鳴護「本当に振っただけ!?会話のキャッチボールが成立してないよ!?ピッチングマシーンの相手してるのかな!?」
上条(カンペ)【ツッコミは簡潔にした方が初心者向け。長台詞は状況次第】
鳴護「だから裏方の人うるさいよ!誰が悪いのかな?」
闇咲「アイドルというのはどういう仕事を?」
鳴護「基本的には歌を歌ったり、最近では映画っぽいことをしながらヘイトを溜める感じで」
闇咲「まぁ昨今の事情を鑑みれば仕方がないのことだ。エンターテイナーとしての仕事へ対し、卑下する必要はないが娯楽は余裕があってこそのものだ」
闇咲「ともすれば昨今の心霊怪談ブームも平和を象徴したのは間違いないものの、あまりこう誉められたものでは」
鳴護「いやそこボケる所じゃないの!?テンドンは三回目までがルールなんだからね!?」
上条【ナイス・ツッコミ☆】
鳴護「今年を振り返ってみると当麻君が生き生きとボケている件についてもおかしいと思ってるからね?誰かの負担があたしへ回ってきてるってことだからね?」
上条【本来であればここは一回闇咲にノッておきながら、『――って違うじゃん!?』ってノリツッコミをするのがベストなんだけどなぁ】
鳴護「要求が厳しいな!?当麻君が言ってるのはアイドルに農家やらせるようなもんだよ!」
上条【おいおいTOKI○パイセンディスってんのか?】
鳴護「あたしはね?でも当麻君は素人さんだから先輩って訳でもないよ?これ以上ないぐらいに他人だよ?」
闇咲「では再現ドラマを見るといい」
鳴護「説明が圧倒的に足りてないですよね!?せめてあたしの存在価値を!なんで呼ばれたのかだけでも教えて!?」
――アパート
上条「いやー今日も疲れたなー。時給32円(手取り)のバイトは辛いぜ……」
上条「学生時代は女の子も取っ替え引っ替えだったんだが、いつまにこうなっちまったんだろう……」
上条「あぁそうか。俺がビリビリの手を取らなかったから――」
上条「――ってこの台本おかしくないか?てゆうか時給32円ってどんなバイト?普通の清掃業でももっと貰えね?」
上条「まぁいいや、えーっと、メシも食ったしもう寝るぜ!折角だからこの赤いフトンでな!」 バタッカチッ
上条「……」
………………
上条「…………うん?音?」
……シャラーン……シャラーン……シャラーン
上条「鈴……じゃないな……?でもなんか、軽い金属を鳴らしてるような感じ……?」
……シャラーン……シャラーン……シャラーン
上条「……」
……シャラーン………………
上条「…………消えたな。何だったんだ今の――ってあれ、確か……」
上条「錫杖(しゃくじょう)だっけ……?お坊さんが持ってる杖、あれについてる輪っかの音じゃねぇのか……?」
上条「……」
上条「――まさかっ!?今のが七人ミサキ……ッ!?」
――
闇咲「――以上。WEB上の某動画配信サービスにあった怪談だ」
鳴護「えー、あまりにもソースが胡散臭いような」
闇咲「名前は出さないが、とあるヒーロー系ご当地キャラだと言っておく」
(※そたいく○)
鳴護「なんでしょう、スッゴイ気になるんですけどその背景情報が」
闇咲「ちなみに彼だけではなく、似たような体験談が最近増えてきたので警鐘を兼ねて今回取り上げてみた」
鳴護「じゃまとめてみますね。テロップはこちらと、ででん」
1.自宅で眠る(昼夜問わず。昼間のパターンもあり)
2.鉄の輪っかが鳴る音がする→
3.姿は見えないか、足袋を履いた足首だけ見える(場合もある)
4.あれ今のって七人ミサキじゃね?
鳴護「思ったよりもザックリですけど。あの、質問いいでしょうか?七人ミサキって幽霊か何かなんですかね?」
闇咲「現代の分類的には幽霊だが、昔は魑魅魍魎の類。どちらかといえば妖怪に近い」
鳴護「すいません。質問しといてなんなんですけど、サッパリ分かりません」
闇咲「幽霊だ。七人組の行者か六部(りくぶ・聖地を廻って祈りを捧げる人)の格好をしており、道で人に出くわすと持って行かれる」
鳴護「持って行かれる……?誘拐的な?」
闇咲「いや、魂をだ」
鳴護「タチ悪いな!?」
闇咲「そうして七人の中で最古参が成仏し、憑き殺したものが七人ミサキとして列に加わる」
鳴護「ホンットにタチ悪いですよね!?」
闇咲「オカルトでの知名度は高い。彼らについての考察もあるが、まぁ今回はまず違う」
鳴護「と、断言できる根拠は?」
闇咲「基本的に七人ミサキは『道』に出る怪異だ。人が住んでいる家屋へ入り込んだりはしない」
鳴護「そのおうちや部屋割りが道に近かったとか?」
闇咲「なら単純に人だろう。四国遍路ほどではないものの、各地を回って巡礼を続けている人間も少ないながら存在するからな」
(※お遍路さんみたいな格好で歩いている人はたまにいます)
鳴護「何も絶対にオバケが正体です、ってこともないですよね、って話ですよね」
闇咲「そして今回の最大のオチ、というか矛盾なんだが――まぁ、錫杖というのは仏具や神具として存在はする」
闇咲「修行僧から修験者まで広く使われているし、私も若い頃山へ入って荒行する際に使った」
鳴護「ちなみにどのようなことを?」
闇咲「基本的には山中で肉体と精神を鍛える、ようなものだが。さて疑問に思わないか?『杖があったら楽をしているのではないか』と」
鳴護「あー……まぁそうかも知れませんよね。箱みたいなの背負うのは分かりますけど、なんで杖?って」
闇咲「流派によって、また解釈も異なるので絶対とまでは言わないが、あの錫杖の鉄輪を鳴らすことが一種の業(ぎょう)だと言われている」
鳴護「あたし的にはノイローゼになりそうな……」
闇咲「それも含めて心を強くすると言われている――と、同時に山中でシャランシャラン鳴らしていれば、獣除けの効果もある」
鳴護「熊除け鈴代わり!?」
闇咲「いや、昔は今よりも格段に獣の脅威は高かった。それら全てが鬼だの天狗だののせいにされていただけで」
鳴護「あー……そう考えると恐怖ですよね」
闇咲「それがいつの間にか時代が経つと『錫杖の輪を鳴らせば退魔の効果がある』と解釈されていき、最後には『怪異は金音を嫌う』となる」
鳴護「かなおと、ですか?」
闇咲「主に侍が狐か狸に騙されそうになった際、持っている刀を少し抜き、カチリと音を立てて元へ戻す。それだけで術が破られると」
鳴護「実際に効果は?」
闇咲「あった、とされている。鐘(かね)を鳴らしたり叩いたりする宗教行為は数え切れないぐらいあるからな」
闇咲「そして何よりも、というか日本で最も多い神仏像はなんだと思う?」
鳴護「え、えーっと……なんでしょうか?」
闇咲「私も知らない」
鳴護「オイ――じゃなかった!なんでですか!」
闇咲「調べた訳ではないので地蔵菩薩だと思う。所謂お地蔵様だな」
鳴護「色々なところにありますよね」
闇咲「それでその地蔵菩薩が右手に必ずと言っていいほど持っているのが、その錫杖だ」
闇咲「それだけ一般的にも認知度が高く、かつ信仰も厚い存在が手にしている持物(じぶつ)を手に幽霊がいたとする」
闇咲「勿論仮の話だが、全ての設定を”正しく”して再現動画を作ればこうなる」
鳴護「あ、また当麻君の出番が」
――アパート
上条「今日も以下略、よし寝ようぜ!明日も一パチに並ぶのだがら!」
上条「完全に海物○に喰われた感じがするが、俺は折角だからあの蒼っぽい台に全部突き込むぜ!」
上条「……おや?謎の音が?」
……シャラーン……シャラーン……シャラーン
上条「コワイ!タスケテー!?」
幽霊『ぐぬあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…………!?』
上条「……」
上条「――え!?自分の持ってる杖の音で成仏すんの!?」
――
闇咲「という具合にだな」
鳴護「なにこの存在をかけたノリツッコミ」
闇咲「まぁ長々と引っ張っておいて恐縮なのだが、『幽霊が幽霊自体を滅する音と持物を装備しながら練り歩く』という冗談のような話になるのだ」
鳴護「経験あります。呪われた装備が外せなくて一歩一歩HPが減りまくる勇者パーティで」
鳴護「えーっと……なんでこんなことに?」
闇咲「多分創作主が『非日常的な音がしたらコワイだろう』と、適当に盛ったと思われる」
鳴護「また身も蓋もなくフォローできるような話でもないですよね!?」
闇咲「一応、まぁ一応錫杖の音が関連する怪異として、『手杵(てきね・てぎね)返し』と『夜行さん』がいる」
鳴護「あれ?それじゃあ普通に成立しません?」
闇咲「前者は『コロバシ』と呼ばれる人間を転倒させる妖怪なのだが、夜の河原に出現して錫杖の音を立てる、とされている」
闇咲「後者に関しては様々な妖怪のミックスで、その中の一つに『夜中に錫杖の音を立てて山中を走って行く』そうだ」
鳴護「それって要は……修行しているお坊さんを一般人が見て『なにあれこわい!』って妖怪化しただけじゃ……」
闇咲「と、思われるため除外した」
鳴護「なんて、なんて残念すぎるお話に……!」
闇咲「一応フォローというか、目撃例というか聞いた人間が嘘でもないし盛ってもおらず、ただ事実だけを述べ」
闇咲「かつ神仏や魑魅魍魎が実在した場合、という前提の上で話をするのであれば」
鳴護「どんだけ予防線張ってんですか」
闇咲「笠地蔵……知っているだろうか?」
鳴護「道徳のアニメで見た、とお姉ちゃんの記憶が。おじいさんが道端の六地蔵に傘をかけてあげたら、夜になって恩返しに来たと」
闇咲「そのパターンの一つに錫杖の音も響かせているのがある。というのも昔は普通に錫杖といえば地蔵菩薩というイメージがあったからだ」
闇咲「しかし今の時代、錫杖の音を聞いてもそれが地蔵の持っているものだとは思いつかず、別のものとして解釈してしまい――」
闇咲「……それが幽霊だの七人ミサキだの、という話にこじれてしまう」
鳴護「オカルト的な展開ありって前提で、専門家としてはどのような結論になりますか?」
闇咲「『遊環を鳴らして行脚しているのは地蔵菩薩自らであり、多分守ってくれたか祓ってくれた』と、いうのが正解であると思う」
鳴護「正直、お地蔵さんが歩いているのもそれはそれで恐怖ですけどね……」
闇咲「価値観の違いだな。まぁ何にしろ実体と出くわしてないため、想像でしか物が言えないのだが」
鳴護「では今回のまとめをどうぞ」
闇咲「もう少し勉強しよう。話を作るのも盛るのも結構だが、できれば既存の宗教書をある程度知識として頭へ入れていた方がいい」
闇咲「何も難しく考える必要もない。ただ仏教系の新書一つでも読めば充分なので、そこら辺の努力を惜しまないのが大成への一歩となる」
闇咲「決して、ビニール傘と盛り塩で立ち向かおうと思わないように」
鳴護「あぁ……最愛ちゃんが喜んでた某映画ですね」
闇咲「効くかどうかは私も知らないが、先人が使ってないため多分効果はない……か?」
闇咲「まぁ古い傘であればよく化け傘へ転じる上、昔はゴキブリ退治に使われていたため、幽霊が『属性;ゴキブリ』だった場合は特効だった可能性も」
鳴護「傘を使って!?盛ってませんかそれ!」
闇咲「いや本当の話だ。和傘の内側へゴキブリの好む油を塗っておき、傘は頭を下にして立てておく」
闇咲「一晩経ったらそれをゆっくりと水路にまで持っていき、水に沈めて退治したあと傘を回収して終わりだ」
(※という話があります)
鳴護「それで駆除できるんですか?」
闇咲「実際に試した事はないから不明だ。しかし一応伝わっているため効果はあったと思われる。現代と違って駆除剤はないからな」
闇咲「さて、では今回の教訓は?」
鳴護「え、あたしですか?えっと……『幽霊にコンビニ傘と塩は効かない』?」
闇咲「ではまたどこかでトンデモ怪談を潰すときに会おう」
鳴護「できればアシスタントは専門の人が良いと思いますっ!誰とは言いませんが、オカルト大好きJCさんいましたからねっ!」
-終-
闇咲「闇咲だ」
鳴護「どうも!最近ヨゴレ仕事がめっきり板についてきましたが、レッサーちゃんの呪いだと思いますARISAですっ!ヨロシクねっ!」
闇咲「『幻解!超常ファイ○!』」
鳴護「キャラと仕事が一致してないですよ?いえあの、誰に吹き込まれたは分からないですけど、あまりボケを多用するのはどうかなって」
闇咲「早いもので今年も師走だ」
鳴護「ですねー」
闇咲「では本題なのだが」
鳴護「ただの感想!?話を膨らまそうって発想自体がない!?」
鳴護「いやですからね!?あたしワンクッション入れましたよね!?ですねって相づち打ってから何か小さな話題を取り上げるとかしますよね!?」
闇咲「時候の挨拶、では?」
鳴護「『師走だけどクリスマスにこの企画!?』とか!『なんで思い出したように始まるの!?』とか!」
上条(カンペ)【それアリサが思ってても口に出さなかった事じゃ?】
鳴護「裏方の人は黙ってて!事務所へ『誰か暇でギャラの安い人いないですか?』って企画持ち込んできた人は!」
(※オービット・ポータル芸能事務所、所属タレント;ARISA、TorM@の計二名)
闇咲「君はアイドルをしているのだったか?」
鳴護「そんなフワッとした認識で!?……えぇはい、学園都市ご当地アイドルみたいな感じで、シンガーですけど」
闇咲「さて今日は」
鳴護「本当に振っただけ!?会話のキャッチボールが成立してないよ!?ピッチングマシーンの相手してるのかな!?」
上条(カンペ)【ツッコミは簡潔にした方が初心者向け。長台詞は状況次第】
鳴護「だから裏方の人うるさいよ!誰が悪いのかな?」
闇咲「アイドルというのはどういう仕事を?」
鳴護「基本的には歌を歌ったり、最近では映画っぽいことをしながらヘイトを溜める感じで」
闇咲「まぁ昨今の事情を鑑みれば仕方がないのことだ。エンターテイナーとしての仕事へ対し、卑下する必要はないが娯楽は余裕があってこそのものだ」
闇咲「ともすれば昨今の心霊怪談ブームも平和を象徴したのは間違いないものの、あまりこう誉められたものでは」
鳴護「いやそこボケる所じゃないの!?テンドンは三回目までがルールなんだからね!?」
上条【ナイス・ツッコミ☆】
鳴護「今年を振り返ってみると当麻君が生き生きとボケている件についてもおかしいと思ってるからね?誰かの負担があたしへ回ってきてるってことだからね?」
上条【本来であればここは一回闇咲にノッておきながら、『――って違うじゃん!?』ってノリツッコミをするのがベストなんだけどなぁ】
鳴護「要求が厳しいな!?当麻君が言ってるのはアイドルに農家やらせるようなもんだよ!」
上条【おいおいTOKI○パイセンディスってんのか?】
鳴護「あたしはね?でも当麻君は素人さんだから先輩って訳でもないよ?これ以上ないぐらいに他人だよ?」
闇咲「では再現ドラマを見るといい」
鳴護「説明が圧倒的に足りてないですよね!?せめてあたしの存在価値を!なんで呼ばれたのかだけでも教えて!?」
――アパート
上条「いやー今日も疲れたなー。時給32円(手取り)のバイトは辛いぜ……」
上条「学生時代は女の子も取っ替え引っ替えだったんだが、いつまにこうなっちまったんだろう……」
上条「あぁそうか。俺がビリビリの手を取らなかったから――」
上条「――ってこの台本おかしくないか?てゆうか時給32円ってどんなバイト?普通の清掃業でももっと貰えね?」
上条「まぁいいや、えーっと、メシも食ったしもう寝るぜ!折角だからこの赤いフトンでな!」 バタッカチッ
上条「……」
………………
上条「…………うん?音?」
……シャラーン……シャラーン……シャラーン
上条「鈴……じゃないな……?でもなんか、軽い金属を鳴らしてるような感じ……?」
……シャラーン……シャラーン……シャラーン
上条「……」
……シャラーン………………
上条「…………消えたな。何だったんだ今の――ってあれ、確か……」
上条「錫杖(しゃくじょう)だっけ……?お坊さんが持ってる杖、あれについてる輪っかの音じゃねぇのか……?」
上条「……」
上条「――まさかっ!?今のが七人ミサキ……ッ!?」
――
闇咲「――以上。WEB上の某動画配信サービスにあった怪談だ」
鳴護「えー、あまりにもソースが胡散臭いような」
闇咲「名前は出さないが、とあるヒーロー系ご当地キャラだと言っておく」
(※そたいく○)
鳴護「なんでしょう、スッゴイ気になるんですけどその背景情報が」
闇咲「ちなみに彼だけではなく、似たような体験談が最近増えてきたので警鐘を兼ねて今回取り上げてみた」
鳴護「じゃまとめてみますね。テロップはこちらと、ででん」
1.自宅で眠る(昼夜問わず。昼間のパターンもあり)
2.鉄の輪っかが鳴る音がする→
3.姿は見えないか、足袋を履いた足首だけ見える(場合もある)
4.あれ今のって七人ミサキじゃね?
鳴護「思ったよりもザックリですけど。あの、質問いいでしょうか?七人ミサキって幽霊か何かなんですかね?」
闇咲「現代の分類的には幽霊だが、昔は魑魅魍魎の類。どちらかといえば妖怪に近い」
鳴護「すいません。質問しといてなんなんですけど、サッパリ分かりません」
闇咲「幽霊だ。七人組の行者か六部(りくぶ・聖地を廻って祈りを捧げる人)の格好をしており、道で人に出くわすと持って行かれる」
鳴護「持って行かれる……?誘拐的な?」
闇咲「いや、魂をだ」
鳴護「タチ悪いな!?」
闇咲「そうして七人の中で最古参が成仏し、憑き殺したものが七人ミサキとして列に加わる」
鳴護「ホンットにタチ悪いですよね!?」
闇咲「オカルトでの知名度は高い。彼らについての考察もあるが、まぁ今回はまず違う」
鳴護「と、断言できる根拠は?」
闇咲「基本的に七人ミサキは『道』に出る怪異だ。人が住んでいる家屋へ入り込んだりはしない」
鳴護「そのおうちや部屋割りが道に近かったとか?」
闇咲「なら単純に人だろう。四国遍路ほどではないものの、各地を回って巡礼を続けている人間も少ないながら存在するからな」
(※お遍路さんみたいな格好で歩いている人はたまにいます)
鳴護「何も絶対にオバケが正体です、ってこともないですよね、って話ですよね」
闇咲「そして今回の最大のオチ、というか矛盾なんだが――まぁ、錫杖というのは仏具や神具として存在はする」
闇咲「修行僧から修験者まで広く使われているし、私も若い頃山へ入って荒行する際に使った」
鳴護「ちなみにどのようなことを?」
闇咲「基本的には山中で肉体と精神を鍛える、ようなものだが。さて疑問に思わないか?『杖があったら楽をしているのではないか』と」
鳴護「あー……まぁそうかも知れませんよね。箱みたいなの背負うのは分かりますけど、なんで杖?って」
闇咲「流派によって、また解釈も異なるので絶対とまでは言わないが、あの錫杖の鉄輪を鳴らすことが一種の業(ぎょう)だと言われている」
鳴護「あたし的にはノイローゼになりそうな……」
闇咲「それも含めて心を強くすると言われている――と、同時に山中でシャランシャラン鳴らしていれば、獣除けの効果もある」
鳴護「熊除け鈴代わり!?」
闇咲「いや、昔は今よりも格段に獣の脅威は高かった。それら全てが鬼だの天狗だののせいにされていただけで」
鳴護「あー……そう考えると恐怖ですよね」
闇咲「それがいつの間にか時代が経つと『錫杖の輪を鳴らせば退魔の効果がある』と解釈されていき、最後には『怪異は金音を嫌う』となる」
鳴護「かなおと、ですか?」
闇咲「主に侍が狐か狸に騙されそうになった際、持っている刀を少し抜き、カチリと音を立てて元へ戻す。それだけで術が破られると」
鳴護「実際に効果は?」
闇咲「あった、とされている。鐘(かね)を鳴らしたり叩いたりする宗教行為は数え切れないぐらいあるからな」
闇咲「そして何よりも、というか日本で最も多い神仏像はなんだと思う?」
鳴護「え、えーっと……なんでしょうか?」
闇咲「私も知らない」
鳴護「オイ――じゃなかった!なんでですか!」
闇咲「調べた訳ではないので地蔵菩薩だと思う。所謂お地蔵様だな」
鳴護「色々なところにありますよね」
闇咲「それでその地蔵菩薩が右手に必ずと言っていいほど持っているのが、その錫杖だ」
闇咲「それだけ一般的にも認知度が高く、かつ信仰も厚い存在が手にしている持物(じぶつ)を手に幽霊がいたとする」
闇咲「勿論仮の話だが、全ての設定を”正しく”して再現動画を作ればこうなる」
鳴護「あ、また当麻君の出番が」
――アパート
上条「今日も以下略、よし寝ようぜ!明日も一パチに並ぶのだがら!」
上条「完全に海物○に喰われた感じがするが、俺は折角だからあの蒼っぽい台に全部突き込むぜ!」
上条「……おや?謎の音が?」
……シャラーン……シャラーン……シャラーン
上条「コワイ!タスケテー!?」
幽霊『ぐぬあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ…………!?』
上条「……」
上条「――え!?自分の持ってる杖の音で成仏すんの!?」
――
闇咲「という具合にだな」
鳴護「なにこの存在をかけたノリツッコミ」
闇咲「まぁ長々と引っ張っておいて恐縮なのだが、『幽霊が幽霊自体を滅する音と持物を装備しながら練り歩く』という冗談のような話になるのだ」
鳴護「経験あります。呪われた装備が外せなくて一歩一歩HPが減りまくる勇者パーティで」
鳴護「えーっと……なんでこんなことに?」
闇咲「多分創作主が『非日常的な音がしたらコワイだろう』と、適当に盛ったと思われる」
鳴護「また身も蓋もなくフォローできるような話でもないですよね!?」
闇咲「一応、まぁ一応錫杖の音が関連する怪異として、『手杵(てきね・てぎね)返し』と『夜行さん』がいる」
鳴護「あれ?それじゃあ普通に成立しません?」
闇咲「前者は『コロバシ』と呼ばれる人間を転倒させる妖怪なのだが、夜の河原に出現して錫杖の音を立てる、とされている」
闇咲「後者に関しては様々な妖怪のミックスで、その中の一つに『夜中に錫杖の音を立てて山中を走って行く』そうだ」
鳴護「それって要は……修行しているお坊さんを一般人が見て『なにあれこわい!』って妖怪化しただけじゃ……」
闇咲「と、思われるため除外した」
鳴護「なんて、なんて残念すぎるお話に……!」
闇咲「一応フォローというか、目撃例というか聞いた人間が嘘でもないし盛ってもおらず、ただ事実だけを述べ」
闇咲「かつ神仏や魑魅魍魎が実在した場合、という前提の上で話をするのであれば」
鳴護「どんだけ予防線張ってんですか」
闇咲「笠地蔵……知っているだろうか?」
鳴護「道徳のアニメで見た、とお姉ちゃんの記憶が。おじいさんが道端の六地蔵に傘をかけてあげたら、夜になって恩返しに来たと」
闇咲「そのパターンの一つに錫杖の音も響かせているのがある。というのも昔は普通に錫杖といえば地蔵菩薩というイメージがあったからだ」
闇咲「しかし今の時代、錫杖の音を聞いてもそれが地蔵の持っているものだとは思いつかず、別のものとして解釈してしまい――」
闇咲「……それが幽霊だの七人ミサキだの、という話にこじれてしまう」
鳴護「オカルト的な展開ありって前提で、専門家としてはどのような結論になりますか?」
闇咲「『遊環を鳴らして行脚しているのは地蔵菩薩自らであり、多分守ってくれたか祓ってくれた』と、いうのが正解であると思う」
鳴護「正直、お地蔵さんが歩いているのもそれはそれで恐怖ですけどね……」
闇咲「価値観の違いだな。まぁ何にしろ実体と出くわしてないため、想像でしか物が言えないのだが」
鳴護「では今回のまとめをどうぞ」
闇咲「もう少し勉強しよう。話を作るのも盛るのも結構だが、できれば既存の宗教書をある程度知識として頭へ入れていた方がいい」
闇咲「何も難しく考える必要もない。ただ仏教系の新書一つでも読めば充分なので、そこら辺の努力を惜しまないのが大成への一歩となる」
闇咲「決して、ビニール傘と盛り塩で立ち向かおうと思わないように」
鳴護「あぁ……最愛ちゃんが喜んでた某映画ですね」
闇咲「効くかどうかは私も知らないが、先人が使ってないため多分効果はない……か?」
闇咲「まぁ古い傘であればよく化け傘へ転じる上、昔はゴキブリ退治に使われていたため、幽霊が『属性;ゴキブリ』だった場合は特効だった可能性も」
鳴護「傘を使って!?盛ってませんかそれ!」
闇咲「いや本当の話だ。和傘の内側へゴキブリの好む油を塗っておき、傘は頭を下にして立てておく」
闇咲「一晩経ったらそれをゆっくりと水路にまで持っていき、水に沈めて退治したあと傘を回収して終わりだ」
(※という話があります)
鳴護「それで駆除できるんですか?」
闇咲「実際に試した事はないから不明だ。しかし一応伝わっているため効果はあったと思われる。現代と違って駆除剤はないからな」
闇咲「さて、では今回の教訓は?」
鳴護「え、あたしですか?えっと……『幽霊にコンビニ傘と塩は効かない』?」
闇咲「ではまたどこかでトンデモ怪談を潰すときに会おう」
鳴護「できればアシスタントは専門の人が良いと思いますっ!誰とは言いませんが、オカルト大好きJCさんいましたからねっ!」
-終-