上条「闇咲逢魔もし戦わば!vsウレアパディー!」
――とあるビジネスホテル
闇咲「戻った」
フロントマン「お帰りなさいませ坂本様。お車のキーをお預かりいたします」
闇咲「あぁお疲れさまです」
フロントマン「こちらがお部屋の鍵になりますが……坂本様にお客様がおみえになっておりまして」
闇咲「……客?誰とも約束はしていないが?」
フロントマン「いえそれが、あちらでずっと」
闇咲「あちら?このホテルにはラウンジがなかった筈だが――」
上条(※家出セット装備)「……」 ジーッ
闇咲「バックパッカー地縛霊かな」
上条「来ちゃった☆」
闇咲「やかましいわ。いや、来るなとは言わないが連絡をしろ連絡を」
上条「坂、本……あれ?闇咲?なんで偽名で泊まってんの闇咲?つーか泊まっていいの闇咲?」
闇咲「ホテルで氏名を書く際に偽名を書くと、よくテロリストの別件逮捕に使われるのだが」
(※旅館業法違反もしくは私文書偽造罪)
闇咲「私は幾つか本物の戸籍があるから構わない上、君だってロシアでそうしていただろう?」
(※地歩の特定の自治体へ一括申請→放置→戸籍年齢が一定を越えたら使い始める)
上条「――そっか!フィアンマに速攻で補足されたのってレッサーが俺を売ってたんじゃなかったのか!ごめんなレッサー!100%お前がやらかしたんだと思ってた!」
闇咲「頭が悪いのかな。まぁ外国で身分詐称をしたら大変なことになるからお勧めしない」
上条「そうだ闇咲大変なんだよ!結標案件だ!」
闇咲「どうし……誰?ムスジメ?」
上条「世○さんがコナ○君に『雨で濡れたからシャワー一緒に浴びる?』って事案発生しちまったんだ……ッ!!!」
(※先々週のサンデ○)
闇咲「関係ないな?結構大きめの事案ではあるが、こう、うん。我々の法で裁くべき案件では」
上条「幸いコナ○君さんはガチホ×だから事なきを得たが!もし俺だったら危ないところだったぜ!」
闇咲「コナ○君さんにガチとか言うんじゃない。あと罠が大きすぎて腹を空かせた野生動物も食いつかない」
上条「そんなことないぜ!父さんは俺にこう言った!」
上条「『――いいか当麻?男にはそれが嘘だと分かっていても、信じなきゃいけない。何故ならばそれが男だから』」
闇咲「侠気としてならば、まぁ分からなくもないが……」
上条「『だから”あなたの子よ!”と昔の恋人に言われたら養育費を振り込まなきゃいけないときもある!それが嘘だって分かっていたとしてもだ!』」
闇咲「センシティブな話題過ぎる。というかそれ、『心当たりがない訳ではないが、取り敢えず金出す体裁を整えよう』という話だな」
上条「てかコナ○君って○ねーちゃんさんと風呂入ろうって言われたら、その回で終わるよな?」
闇咲「コンプラ的にそろそろ遺憾だから止めてくれないか?ここのホテル、割と気に入っているんだよ。朝食が美味しいんだ」
上条「そっか。じゃあ話の続きは部屋でしようぜ!」 グッ
闇咲「自然に肩を組もうとするな。あとシングルだからホテル側に叱られる」
フロントマン「デリバリー的な方もいますし、お連れ様の詮索まではいたしませんが?」
闇咲「余計に嫌だ。繰り返すがコンプラ的に同性だろうが厳しい」
上条「一泊泊めてくれ!大丈夫だ!何にもしないから!」
闇咲「そこは全く疑っていないし払うのも何でもないが、部屋はあるか?」
フロントマン「ダブルですね」
闇咲「シングルを二つだな?話聞いてだろ?」
フロントマン「すいません、たった今シングルは満室に」
闇咲「連泊の契約していたよな?というか部屋に荷物が置いてあるんだが」
上条「じゃあツインで」
フロントマン「分かりました。あとでルームサービスをお持ちしますね」 ピッ
闇咲「そんなサービスなかっただろ?ただ暇だからイジって遊びたいだけだろ、なぁ?俺の目を見て言ってみろ?」
上条「――いいか闇咲?世の中はスーツ着て予約なしでチェックインしようとしたら、『お部屋がいっぱいでして……』と四件連続で断られる人だっているんだぞ!」
(※『もしかして;ここの運営』。あんまり外見的にアレだと、自動的に満室になるシステムがある。ラブホテル泊まったわ。ラブ一個もないのに)
闇咲「遠回しにヤク×丸出しだって言っているのか?反社という意味でならば、強くは否定出来ないと言えなくも」
――ビジネスホテル
上条「『――撮影は初めて?』」
闇咲「どうしたいんだ?ノリツッコミ的なリアクションを求められても、その困るというか無茶だ」
上条「こう、悪いなと思いつつも小粋なジョークで警戒心を無くそうって俺の心遣いが!」
闇咲「全部裏目だな。今からでもホテルを変えようかと割と本気で考えている」
上条「『――あ、もしもしインデックス?うん今闇咲が取ってくれた部屋でだな、向こう持ちでルームサービス食べ放題ってプランが!』」 ピッ
闇咲「そろそろいい加減にしておけよ?殴り合いだったら勝つ自信はあるからな?」
上条「俺の経験上、そうなったらなった瞬間にさっきのフロントの人来そう。『やっぱりオジサマと少年の恋はあったんだ……!』的な」
闇咲「大抵そういうのは最悪の中でも最悪を行くな。バターを塗ったパンがほぼ確実にバター側を下にして落ちるのと一緒だ」
闇咲「だから急にどうした?家出、というか大荷物を担いでいるようだが」
上条「……それがさ?急に住んでる所を追い出されちまってさ?」
闇咲「穏やかではないな」
上条「コッソリARISAの事務所に住んでたのが見つかって、強制退去させられちまったんだ……!」
闇咲「穏やかだったな。予想を通り越して至極真っ当な理由だったな」
上条「だって、だってあそこは光熱費タダだったんだぜ!?あんないい物件なんて他にはないんだ!」
闇咲「タダではない。確実に誰かが負担している……というか、退去させられたのは仕方がないとして、どうしてババが私の所へ?友人には声をかけなかったのかね?」
上条「土御門は妄想の中のカノジョとイチャコラするっていうし、青ピは二次元とイチャコラするからダメだって!」
闇咲「その彼らは今頃きっと一人だと思う。確証はないが確信はしている」
上条「――そう、俺はこんな扱いを受けていたんだ……ッ!」
闇咲「いや、回想はいらない。口頭の説明で充分だ」
……
鳴護(回想)『――もー今日という今日は出ていってもらうからね!覚悟してよ当麻君!』
上条(回想)『と、言ーいーつーつーもー?』
鳴護「またそうやってレッサーちゃんの悪いところばかり真似して!お友達は選ばなきゃっていつも言ってるよね!?』
上条『……俺を追い出した程度で調子に乗るんじゃない……!きっと第二、第三の俺が現れて勝手に事務所へ住み着く運命が……!』
鳴護『全部当麻君だよね?第二も第三も当麻君って他にいないよね?』
上条『――いや分からないぞ!エ×に積極的だったら俺ソックリの誰かかもしれないぜ!俺がドラゴンに変身できてちょっと嬉しかったのを横目にな! 』
鳴護「ねぇなんで世界は当麻君に厳しいの?なんだかんだで公式が一番厳しい現実を突きつけてるよね?「誰も気づかなかった」っていう悲しすぎる話を』
上条『ここをキャンプ地とするんだ!俺は決めたんだからな!』
鳴護『いやあの、泊めてあげたい気持ちはあるし、別に何が困るって訳でもないんだけど……』
鳴護『ただその、当麻君がいると一日一回のノルマで襲撃か爆撃か謎のヒロインが登場して、お姉ちゃんがラッキースケベのエジキになるのは、ねっ?人道的にさ?』
鳴護『他に、そう他にお友達はいないのかな!?ババを押し付け合いになってるのは否めないけど!』
上条『一方通行は塀の中だし、海原は義理の妹さんが二人もいるし……』
鳴護『前半は物理的に厳しいけど、後半は特に問題はなくない?家庭環境が厳しいなぁとは思うけど』
上条『浜面に至っては女の子四人と虫一匹に囲まれた同棲生活……!』
鳴護『それフェイクニュースじゃない?だって監督入ってるんだよ?最愛ちゃんがデレる日って来るの?』
鳴護『あとペットの申告はどうでもいいかな』
上条『垣根だって生きているんだぞ……ッ!?』
鳴護『なんで苗字?垣根さんちの虫さんなの?』
上条『あ、ごめん。やっぱり生きてるかどうかは微妙?だってあいつ体が「未元物質」だから、俺らの生物の定義とは違うっていうか』
鳴護『ごめん、興味ない。最愛ちゃんのご家族の方はどんななのかなー?っていうのもはなくもないけど』
上条『浜面曰く――「服を着たパワードスーツ」』
鳴護『なんて?』
上条『あと「服を着たハル○」と「ぼいんぼいん」と「家なき子」』
鳴護『お友達は選ぼうよ!きっとそれカラダしか見てないんだよ!』
上条『ぶっちゃけ男子はそういうとこあるんだが……』
鳴護『あー……当麻君、さ?ここを追い出されても他に行くところない感じです?』
上条『最悪帰ればいいんだけど……帰りたくないんだ!俺が勝負に勝つその日までは!』
鳴護『自分でハードルゴリゴリ上げてるってそろそろ気づかないかな……じゃあ、ウチ、来ちゃう?』
上条『ウチってアリサの部屋?』
鳴護『どうしても!どうしてもっていうんだったら!他に行くところがないんだったら!人命救助だし仕方がないかなぁって思うしさ!』
上条『いや別にどうしてもじゃないからいいわ。男友達のツテ辿ってみるぜ!ごめんな!ダメ元で聞いてみたけどやっぱりダメだよな!』
鳴護『当麻君良くないよ!そういうところだよ!途中から「あ、これフってるな」って手応えはしてけどね!』
……
上条「それで流れ流され今ここになう」
闇咲「微妙に、そう微妙に”分かって”やってる疑惑が……」
上条「え、なんだって!?よく聞こえなかった!」
闇咲「なんた小○か」
上条「あと実は怒ってるアリサ可愛いからわざとやってると言えないこともない」
闇咲「私の口からはあまり不用意な事は言いたくないし、藪を突いて超電磁砲が飛んでくる可能性もない訳ではないため、あまり強くも言えないが、その直接言ってやった方が……」
闇咲「というかどうして彷徨っているのかの説明が皆無だったな。回想シーン入れる必要もなく」
上条「……実はちょっと私生活で嫌なことがあってさ?それでやさぐれてたんだけど」
闇咲「私生活、と言われても困る。私は一般的な生活とは縁遠い上、学生へアドバイスできるようなこともない」
上条「闇咲――そうか、闇咲がいたな!闇咲だったら俺のささやかなお願いを叶えてくれるかも!つーかむしろ他に人材がいない!」
闇咲「魔術絡みか?ならば多少は力になれる」
上条「やー、でもなー。多分ギャラ的なものが発生しちまうだろうし、あんま安易に頼むのもなー」
闇咲「気にしなくて構わない。君には一生分の借りが二人分ある状態だからな。『明日までに数億貸して』でもない限りは」
上条「そっか!じゃあ言うけど――」
上条「――オティヌスと神裂と五和、全員の呪×っておいくら万円ほど?」
(※魔術サイド人気投票・中間発表暫定一位〜三位)
闇咲「大丈夫か?人気投票のダークサイドに堕ちているぞ?」
上条「こうなったら俺がスキャンダルを起こすしか……ッ!!!」
闇咲「不祥事にも程がある。というかそろそろ神様(※鎌池先生)に怒られるからそのぐらいにしておけ」
上条「こうなったら魔術でいい!なんとかしてくださいお願いします!」
闇咲「可不可でいえばほぼ無理だ。キャリアも格も上過ぎる相手ばかりだ」
上条「え、キャリア?」
闇咲「天草式の斬り込み隊長の話は割と有名だ。身の丈2mを越えるアフロを持った女傑とか」
上条「色々混ざってる。あとキャリア……」
闇咲「”聖人”相手に呪殺して効いた話が……なくはない。ないが、まぁ大抵返り討ちで終わるな。効いたとしても呪的防御が高いため、『ちょっと風邪気味かも?』で終わる話とか」
上条「検証しろよ。雑なんだよ」
闇咲「そもそも聖人相手に喧嘩を売ったりはしない。『魔術界の核弾頭』と呼ばれるのは伊達じゃないんだ」
上条「あー、確かにそんな言い方もあったっけか」
闇咲「そして”妖精”?興味がないわけではないが……」
上条「あ、お前も妖精さんスキー?いるよな一部に根強いファンが!」
闇咲「そっちのじゃない。魔術的に希有な、という意味でもある」
上条「魔術サイドにはいないの?」
闇咲「私は知らない。少なくともどこかに存在してると分かれば、どちら側からも争奪戦が始まる」
上条「なんてヤな世界だ……元気にしてるかなぁ、火星カビ君」
闇咲「それで『妖精』……女神が転生するゲームでは最序盤に出てくるだろう?羽の生えたタイプの」
上条「レベルが大体3でジ○とディ○使えるんだよな。最初の回復役」
闇咲「しかし電撃属性は無効化か吸収。それと同じではないか、という懸念がある」
上条「どれ?」
闇咲「妖精は”外見が人によく似てるだけの何か”であり、中身は全く別の何かが詰まっていたり、別の理屈で動いているだろうという話だ」
上条「オティヌスは元人間だろ?」
闇咲「そうだな。これは科学サイドの話になるが、昔SFで小さくなる的な話に憧れはしなかったか?ドラえも○のガリバー某かスモール某という道具で」
上条「あー、あったなぁなんか!映画でも見たわ!」
闇咲「人類が小さくなるのはロマンがあるが――あれ、現実にしたら低体温症にかかりやすくなるらしい」
上条「なんて?」
闇咲「体積と熱の奪われやすさが比例するため、酷く寒いそうだ。同じ熱湯を入れるにしてもペットボトルとドラム缶じゃ、冷める速度が格段に違う」
上条「それいうんだったらネズミとかすぐ死ぬんじゃ?」
闇咲「だから毛皮を着ているし、起きている時間はずっと何かを食べてエネルギーを蓄えているな」
上条「なんてロマンのねぇ話――いやでもオティヌスって、ほぼチチバントしか着てないぞ?魔改造された痴女フィギュアだぞ?」
闇咲「だから我々とは別の理を生きているのは間違いない。しかしそれが何かが分からない以上、私の術式が効くかは未知数だ」
上条「話振っといてなんだけど三人とも駄目なのかよ……!」
闇咲「聖人は論外、妖精は殴った方が早い。天草式の魔術師ならば勝ち目はある、ただし組織に感知されたらフクロにされて詰む」
上条「あれ……?闇咲って意外とショボイ……?」
闇咲「過大評価してくれるな。私はどこにでもいる魔術師に過ぎない」
上条「いやいや、こないだインデックスと話したけど結構高評価だったぜ?『一芸特化した万能たいぷ』と」
闇咲「素直に嬉しいな」
上条「『魔術師としての技術は一流に間違いないけど、魔術師として大成するかどうかは微妙』って」
闇咲「魔術として大成するのは英雄か大罪人のどちらかだからな?褒め言葉ではないんだ」
上条「『――という訳で始まりました闇ちゃんねる!今週のお題は”闇咲さんの術式開示”でーす!』」
闇咲「私が一方的に損をするな?そして仮に放送できたとして『魔術師とかスゲーwwwwwwwww』と伝説回になる」
上条「そりゃそうな。怪談語ってた人が突然『実は俺霊能力者だったんだ……!』って言い始めてからが本番だと思ってる!」
闇咲「何度でも言うが霊障に関わるだけ関わって、あまつさえ商売にしておきながら無傷という時点で嘘だからな。信じたければ自由だが」
上条「『祟りがあればホンモノ!』って判別方法おかしくないか?フグ食って毒に当たったら、みたいな判定方式だろ」
闇咲「免許制ではないため騙りが殆どだからな。君もなんだったら今日から退魔士を名乗れる」
上条「ちょっと憧れないわけではないぜその響き!」
闇咲「君の場合はイカサマもいいところだぞ?霊から術式まで『右手』で触っていければ大体解決できるんだからな」
上条「じゃあこないだやったぬーべ○先生も?」
闇咲「『鬼の手』に触れた瞬間、あるべきものはあるべきとろこへ行くだろう。鬼は地獄へ恩師はあの世へ」
上条「『フラグ先生・上条当麻!』」
闇咲「一回目辺りで不祥事起こして退職だろうな」
上条「俺にそんな甲斐性があるとでも?」
闇咲「君自身は善性なのは間違いないか、その身に刻まれたラッキースケベという名の呪いが、な?」
上条「助けて下さい先生!俺にかけられた呪いを払ってください!」
闇咲「人の居ない所で住め」
上条「俺はサトラ○か。でもあれそんなに意味無いんだよな」
闇咲「とは?」
上条「男は大体大概エ×いことかメシのことしか考えてない……ッ!!!」
闇咲「高校生だけだな。大人になると、ほら、えぇと……色々考えるんだよ。大人だからな」
上条「俺の話はどうでもいい!闇ちゃんねるなんだからお前の話を聞かせろよ!」
闇咲「だから放送したら頭イタイ人間だと思われるだろう?」
上条「大真面目に妖怪や心霊の検証してる時点で思われてんぞ?」
闇咲「仕事だからな。魔術が変な形で現実へ広まってしまっている以上、迷信を打ち払うのも将来的には意義がある」
上条「つーか真面目に聞くけど闇咲って魔術師の中でどのレベルなんだ?上位狙えるかも、ってインデックスは言ってたぜ?」
闇咲「色々な誤解をしているようだが、まず『普通の魔術師』という概念はほぼ存在しない。何故ならば”平均値”というものがないからだ」
上条「なんで?魔術使えれば魔術師じゃねぇの?」
闇咲「ゲームの魔術師のように『呪文の○○を取得すれば中級冒険者といえる』的な指針が存在しない」
闇咲「それぞれがそれぞれの分野に特化している。攻撃に長けている者、防御に長けている者、他にも情報処理や研究分野と戦いに縁がない者も多い」
上条「……むしろ、俺が戦ってきた戦闘特化ってどっちかっていえば少数派だったのか……?」
闇咲「恐らくは。対人戦に特化した魔術師の方が少数、というか君の場合、『必要悪の教会』が一番距離的に近いからな。誤解するのも仕方がないといえる」
闇咲「逆にシスター・オルソラだったか?魔術師よりも研究者として名高い者もいる。また逆に神童と呼ばれる戦闘特化のステイル牧師もいる」
闇咲「要は人それぞれだな。比べようがない」
上条「それでそれで!?闇咲ってどのぐらいなんだ!?」
闇咲「私の話を聞いていたか?人が折角気を遣ってボカそうとしているのに無視するな」
上条「気?なんかあったっけか?」
闇咲「禁書目録女史は言わなかった、というよりは私を慮ってくれたのだろうが。『抱朴子(ほうぼくし)』の件だ、ほら魔道書の『原典』」
上条「パワーアップイベントだな!」
闇咲「逆だよ、逆。『原典』とは人にとって”猛毒”だ。脳内に刻み込んだ『抱朴子』を制御するのに多くのリソースを割り振っている」
闇咲「よって以前と比べて大規模な術式も霊装も使えなくなってしまった。まぁ今まで困ったことはないがな」
上条「インデックスにとっては制御できるのが当り前だから、思いやりとかじゃなくて普通に気づいてないんじゃ……?」
上条「でも反対に魔道書使えたりとかはしないのか?だったら『強力な宝具ゲットだぜ!』みたいに!」
闇咲「いつ完結するんだろうなあの世界。私も他人とは思えないが」
闇咲「……私もまぁ魔術師の端くれであり、悪い意味で”魔”に魅入られた人間ではある。興味はあるのだが」
上条「が?」
闇咲「如何せん、使い道に困る」
上条「なんでだよ。しょーもないことでも書いてあったんか魔道書」
闇咲「ある意味においてはそうだと言える」
上条「だからなんでだよ!?だっらた危険でもねぇしインデックスが記憶してない!」
闇咲「病気を治す、というよりも不老不死になる方法が書かれていた。端的に言えば仙人になれる」
上条「あぁだから嫁さんの病気治すのに選んだのな」
闇咲「そうだ。第一の候補だった――が、”ハズレ”な上、強すぎる毒に汚染され、私はそれ以上の閲覧ができずに負けた訳だ」
上条「そげぶタッチした俺が言うのもなんだが、別にハズレじゃなくね?」
闇咲「上手く使えば死ねない体になる」
上条「だったら良く――は、ねぇな?死”ね”ない?死”な”ないじゃなくて?」
闇咲「『抱朴子』の『金丹』の章、その内容をざっと解説するとこうだ」
闇咲「『人間の体は食べ物でつくられている。良い食べ物を食せば体にも反映される。逆もまた然り』」
上条「いい事言った!実践できれば最高だけどな!」
闇咲「『しかしこれは自然の理の中での話だ。もしも不老不死を目指すとすればどうする?』」
上条「お、おう……?雲行きが怪しく……?」
闇咲「『有限の動植物を口にすればそれ即ち有限の体となる。これでは寿命に限りあり』」
闇咲「『ならば無限に存在する鉱物を口にすれば――』」
上条「石でも喰えっていうんですかねコノヤロー」
闇咲「そういう解釈が多い。『”金”丹を作って服用すれば寿命に縛られなくなる』だな」
上条「そんなもん実践してどうすんだよ……」
闇咲「現代風に、かつ公的に解釈するならば『ビタミンや鉄分を取るようにしなさいよ』と言えなくもない。しかし四世紀頃に書かれた話なので……」
闇咲「また魔術師の中には不老の存在もいないことはない、らしい。ローマ正教とロシア正教に一人ずつという噂を聞いたことがある」
闇咲「まぁ寿命がなくなれば研究し放題だからな。それが幸せだと思う人間もいるだろう」
上条「呪い解いても死ななくなるんじゃ困るわな」
闇咲「時間をかけて研究すればマシな不老不死もできるかも知れない。付け焼き刃などたかが知れているという教訓だな」
上条「魔道書ガチャハズレwwwwwwwww」
闇咲「他に手段がなかったからな。禁書目録女史へ相談すれば……いやしかしそれをすれば次から次へと忙殺される恐れが」
上条「本人はおこでしたよ?『なんでわたしを頼ってきたのにとうまがかっさらうんだよ!』って」
闇咲「まぁともあれ私の実力などこの程度だ。戦闘特化に搦め手で仕掛け、相性次第でどうにか勝ち目がゼロではない、ぐらいの」
上条「そう考えるとステイルとか神裂が異常なのかな」
闇咲「戦闘特化だから相手を選ばない。しかし他の技能は疎かになりやすいが……『組織』として動いているため、役割分担すれば脅威でしかない」
上条「つーかさ闇咲、割とぶっちゃけた疑問があるんだけど聞いていいか?」
闇咲「答えられる範囲であれば。プライバシーは除くが」
上条「お前ってもしかして、とは思うんだが祓い屋っていうよりも祟り屋的なお仕事だったんじゃねぇの……?」
闇咲「――他に何か聞きたいことがあれば、なんでも?」
上条「まぁ分かってたけどな!最初っから祓い屋やってたら自分達で祓えてたはずだもんな!」
闇咲「……色々とあるんだ。家業なりしがらみというのが」
上条「前向きに生きようぜ、なっ?何かあったら俺がそげぶすっからさ?」
闇咲「そちらからのトラブルは起きないことになっている。話し合いはもう終わったからな」
上条「嘘だ……ッ!絶対に何人か沈めてる目をしている……ッ!」
闇咲「まぁ、元々が碌でもなかったのでな。いい機会だ」
上条「否定しなさいよそこは!俺の立場上許せるのと許せないのがあるんだからねっ!?」
闇咲「しかし君、『天上より来たる神々の門』の魔術師はなぁなぁで済ませなかったか?」
上条「天上より……?」
闇咲「エンデュミオンの塔でやり合ったと聞いたぞ?」
上条「あぁウレアパディーか!怖ろしい相手だったぜ……だってフワッフワしててちょっと何言ってるのか分からなかったからな!」
闇咲「恐怖の着眼点が違うな。禁書目録女史から聞いたが、あれほど最悪の魔術師を私は知らない」
上条「……そんなにヤベー相手だったのか?」
闇咲「正直『なんで勝てたんだろう?』だな。相手も混乱していたのか、それとも最初から勝つつもりがなかったのか」
上条「おいおい言ってくれるじゃねぇか闇咲!俺は正々堂々と戦ったっていうのに!」
闇咲「聞いた限りでは身内に手の内を生中継して、暴露させていた筈だが。それも含めておかしいんだ」
上条「おかしい?誰か別の人が仕掛けてたとか?」
闇咲「という話ではなく。『天上より来たる神々の門』、面倒なので『結社』と呼ぶが、彼らは『アストラ』という霊装群を使っていた。覚えているか?」
上条「流石に俺、戦った張本人なんですけど……」
闇咲「その珍しい特徴は?」
上条「なんか、なんかこ凄かったぜ!」
闇咲「感想ありがとう。私の方で補足すると『アストラ』とはインド神話の神々が用いた武具を霊装にしたものだったか」
上条「それだけだったら珍しくもなくね?」
闇咲「普通だな。しかし普通ではないのは『結社』内でローカライズ化し、共同で使っていたことか」
上条「共同?」
闇咲「所属する魔術師の『素養』を調べ、それに適した『アストラ』を促成する。そして同じ『素養』があれば別の人物も同じ『アストラ』を使えると」
闇咲「超個人主義ばかりの魔術師の中で、術式の均一化を計るという思想は面白い。むしろ合理的で科学サイドに近い」
上条「そんな規格が一般化しちまうと、さっき話してた『普通の魔術師』って話になるよな。『メ○とヒャ○とギ○の素養があるから初級魔術師な!』みたいな」
闇咲「実際にはそれぞれが持った特質、のようなものだろうな。本来魔術師とは縁遠いものの筈なのに」
上条「そうなのか?魔術って才能とか血統とか重視しそうだけど?」
闇咲「誰かが既に言っていると思うが、『魔術とは力なき者が最後に流れ着く終着点』なんだよ。だから素質の有る無しで魔術は学ばない。”それ以外に何もない”んだ」
上条「DNA調べて適性探しみたいなのか。あんまそういうの好きじゃねぇんだけどなぁ」
闇咲「だから、という訳ではないのだろうが、当然のようにやらかした訳だ――『この”素養”をイジれば、もっと強い魔術師が出来るんじゃないか!』と」
上条「そんなんばっかりだよな。それで生まれたのがウレアパディーだったと、十……何人かの『素養』を均一化どーたら言ってたっけか」
闇咲「被験者15名中14名が死亡、残った一人も不安定で計画凍結。裏切るのも、まぁ必然と言えなくもないが」
上条「14人とゴッチャになってあんなんなったのか……!」
闇咲「まぁ、そこが最も怖ろしい点なのだが」
上条「フワッとした性格が?」
闇咲「対面したことがないので性格までは知らん。というか別に興味もない。フワッとしてても誰も困らないだろう」
上条「妹さんのソーズティの胃壁がマッハで削られる」
闇咲「身内なんだから慣れろという以外に解決方法はないな。というかやはり”変わった”のか。家族でも戸惑うほどに」
上条「変って意味で?」
闇咲「ではなく……15人の『素養』を平均化させようとした。つまり一人に14人の『素養』が引っ張られた?」
闇咲「『素養』を取り出して再注入……そうなるとこれはやはり」
上条「何かウレアパディーが悪いみたいに聞こえんだけど」
闇咲「……最初から『結社』は15人の『素養』の均一化なんて望んでいただろうか?」
上条「いや、しようとしてたんだろ?じゃなきゃ『ブラフマーアストラ』って超強い霊装が使えなく、な――」
上条「……」
上条「――これ、おかしくないか?なんてウレアパディーんとこの連中、自分達では使えもしない霊装なんか拵えたんだ?」
上条「あと被験者15人っていう数もおかしい!大切な実験だったら一人か二人で試していくだろうが普通は!?」
闇咲「実験は成功していたんだろうな。”15人分の『素養』を一人にまとめる”という実験が」
上条「いや流石にそれは!」
闇咲「インド神話にはアヴァターラという『化身』の概念がある。アバターという名称で映画になったり、SNSのユーザーコーデにも使われているが」
闇咲「そしてブラフマーの秘技が書かれた古ウパニシャッドは全15巻。まぁ外れてはいないと思う」
上条「やりやがったなクソ!幹部連中生きてれば殴ってたのに!」
闇咲「補足しておくと『ウパニシャッド哲学』というものがある。『最高原理』と『自我』、それらが同一のものであると認知すれば解脱できる、という思考だ。紀元前の話だが」
上条「あぁ……そっから引っ張って来たのか、『素養』とかそういうの」
闇咲「現地の言葉を使えば『自我』は『アートマン』、『最高原理』が『ブラフマー』となる。そのままだな」
上条「ウレアパディーが予想以上にヤッバイのが分かった。少し、いやかなり緩いぐらいで丁度だわ」
闇咲「いいや、私が問題視しているのはそこではない。もっと短期的な見方だな」
闇咲「『素養』があればそれに見合った霊装なり術式が使える。それが『結社』の方針だったな?」
上条「そこだけ聞くとRPGのジョブっぽい。専用武器に専用呪文」
闇咲「そして『平均化』する以上、15人は全然別の『素養』を持った人選であり、全員が被験体になるぐらいのエリート。多分ここまでは合っていると思う」
上条「最初から同じや近かったらしないだろ」
闇咲「と、いうことはつまり、ウレアパディー女史は本人を含めて15人分の術式や霊装なりを使用可能だった、と」
上条「――あっぶな!?よく勝てたな俺!?」
闇咲「禁書目録女史曰く、『慣れている自分の術式だけ使ってたから、どうにか妹さんにも見切れたと思う。もう少し慣れてたら手がつけられなかったかも』と」
上条「ありがとうソーズティさんっ!今度会ったらハグするからな!」
闇咲「とはいっても体は一つしかないため、異常に多芸の魔術師と対戦しただけの話だ。そして『ブラフマーアストラ』は失われたが、その力は健在」
闇咲「全員が対人戦闘特化かは別にして、寿命ある人間の魔術師の中で最も多芸である可能性がある。ただ問題は……」
上条「統括している人格がフワッとしている」
闇咲「と、君は判断しているようだが。実際にはエンデュミオンを叩き落とす直前にまで迫り、『結社』の幹部は皆殺しで壊滅状態」
闇咲「無計画な人間が”偶然”やったにしては出来すぎている。ある程度計算していたとはいえだ」
上条「妹さんを瀕死にしてるんだが?」
闇咲「トドメを刺さず、足手まといを抱える君たちへ追撃しなかった時点で、だな。あまり言うのも野暮かも知れないが」
闇咲「まぁ総括としては……示威行為ではないのかね?『私と私の家族に手を出したらこうなるぞ』という意味の」
闇咲「負けたとはいえ相手は『必要悪の教会』と能力者たち、場所は科学サイドのお膝元。善戦した上、何よりも本人達は脱出できているからな」
上条「そういや『ブラフマーアストラ』の標準ってどうなったんだろ……?あれ今も使えるんだったら超危険人物を野放しになってるんじゃ……?」
闇咲「君が壊したんだろう?予備の霊装があったのかもしれないが、そこまでは責任を持てまい」
上条「ほぼ常に俺を責めるステイルや神裂よりも優しい……!」
闇咲「欠点も当然ある訳だがな。『素養』が平均化され、術式なり霊装の使用できる幅が広がった。それは利点だ、対処の幅が広がったのだから」
闇咲「しかしいくら選択肢が広がろうとも、有事の際には銃を取り出すよりも床に伏せる方が効果的である場合がある」
上条「一瞬の判断が命取りになんのな。それが急に後付けされた力だから慣れてない」
闇咲「その”フワッとしている”原因があるとすれば、そこら辺に原因があるのではないかと」
上条「そっか……なぁ一つ聞いていいか?」
闇咲「なんだ」
上条「好きな人っている?」
闇咲「修学旅行の男子部屋か。飽きたんだな?私も話していて『これ誰が喜ぶんだろう?』とか思わなくもない」
上条「それじゃいっせーのせーで言おうぜ!」
闇咲「そういうノリはいらない。妻がいるな」
上条「マジかよ!?それって俺の知ってる女子!?」
闇咲「会っただろう。呪いを解くときに。『は、初めて会った人と握手するのは……』と微妙に人見知り発揮しただろ君」
上条「撮れ高が!今までの話ほぼ使えねぇからもっとこうきちんとしたトークを要求してんだよ!」
闇咲「だからオッサンど男子高校生という、二大ノットレアリティだけでは数字を稼げない。流行りの怪談トークをしてもイマイチだというのに」
上条「お前がガチで検証してっからだよ?『カンカンダ○』相手に『神話も歴史も郷土学も知らない学のない人間が作った創作』とか斬り捨てるから!」
闇咲「フィクションをフィクションとして楽しむのは自由だ。ただ問題は現実に迷惑をかけている人間が多々居るというだけで」
上条「――よし、脱ぐか!」
闇咲「需要が皆無だな。喜ぶ人間が全世界で数人だと思う」
上条「そんな事無いぜ!俺が人気投票で二位圏内へ入って目出度く水着コスになれば!『やったね上条さん!これはこれで(※芸人として)オイシイね!』ってファンのみんなは言ってくれるんだ!」
闇咲「一度話し合ったらどうだね?出来れば拳で」
闇咲「と、いうかだな。先程妖精の話でもふと思ったのだが――」
闇咲「――君、魔人オティヌスに負け――」
プツッ、ザザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ――……
闇咲「……」
インデックス「い、いいの!?こんなほてるでるーむさーびす食べ放題だなんて、ほんとうにいいんだね!?夢じゃないんだね!?」
インデックス「実はこれは全部ゆめで!こんびにから黙ってもらってきたスティックシュガーしかないあの部屋とかっておちはないんだよね!?」
上条「大丈夫インデックス!たとえ夢だとしても夢の中で腹一杯喰えば問題ない!思い出さえあれば辛い現実を乗り切れるんだからな!」
インデックス「じゃ、じゃあまずはここからここまで全部!いちれつお願いするんだよ!」
上条「任せておけ!今日のサイフはデカいからな!」
闇咲「――そうか……『原典』の改竄は不可能……私の記憶と混雑……侵食は止められていないが……些事だな」
闇咲「私が……と、すれば……の他に……アステカの『原典』……」
上条「どうした闇咲!?折角今日はお前のオゴリなんだから頼まないと損だぞ!」
闇咲「私が出資して私が払うのだから何をどうしても私しか損をしないシステムだな。地獄ともいうが」
インデックス「は、払ってもらえるん、だよね……?」
闇咲「そのぐらいは別に構わないが。という初期設定はどうなった?家出したという話は?」
上条「食べられるときに食べる!それ以外何があるか!?」
闇咲「いや、特に興味はない。それにまぁ?収穫がないわけではなかった」
上条「何食べる!?俺はこの食パン一斤使った王様プリントーストが!」
闇咲「話を、聞け。いや聞いたら拙いのか」
-終-
闇咲「戻った」
フロントマン「お帰りなさいませ坂本様。お車のキーをお預かりいたします」
闇咲「あぁお疲れさまです」
フロントマン「こちらがお部屋の鍵になりますが……坂本様にお客様がおみえになっておりまして」
闇咲「……客?誰とも約束はしていないが?」
フロントマン「いえそれが、あちらでずっと」
闇咲「あちら?このホテルにはラウンジがなかった筈だが――」
上条(※家出セット装備)「……」 ジーッ
闇咲「バックパッカー地縛霊かな」
上条「来ちゃった☆」
闇咲「やかましいわ。いや、来るなとは言わないが連絡をしろ連絡を」
上条「坂、本……あれ?闇咲?なんで偽名で泊まってんの闇咲?つーか泊まっていいの闇咲?」
闇咲「ホテルで氏名を書く際に偽名を書くと、よくテロリストの別件逮捕に使われるのだが」
(※旅館業法違反もしくは私文書偽造罪)
闇咲「私は幾つか本物の戸籍があるから構わない上、君だってロシアでそうしていただろう?」
(※地歩の特定の自治体へ一括申請→放置→戸籍年齢が一定を越えたら使い始める)
上条「――そっか!フィアンマに速攻で補足されたのってレッサーが俺を売ってたんじゃなかったのか!ごめんなレッサー!100%お前がやらかしたんだと思ってた!」
闇咲「頭が悪いのかな。まぁ外国で身分詐称をしたら大変なことになるからお勧めしない」
上条「そうだ闇咲大変なんだよ!結標案件だ!」
闇咲「どうし……誰?ムスジメ?」
上条「世○さんがコナ○君に『雨で濡れたからシャワー一緒に浴びる?』って事案発生しちまったんだ……ッ!!!」
(※先々週のサンデ○)
闇咲「関係ないな?結構大きめの事案ではあるが、こう、うん。我々の法で裁くべき案件では」
上条「幸いコナ○君さんはガチホ×だから事なきを得たが!もし俺だったら危ないところだったぜ!」
闇咲「コナ○君さんにガチとか言うんじゃない。あと罠が大きすぎて腹を空かせた野生動物も食いつかない」
上条「そんなことないぜ!父さんは俺にこう言った!」
上条「『――いいか当麻?男にはそれが嘘だと分かっていても、信じなきゃいけない。何故ならばそれが男だから』」
闇咲「侠気としてならば、まぁ分からなくもないが……」
上条「『だから”あなたの子よ!”と昔の恋人に言われたら養育費を振り込まなきゃいけないときもある!それが嘘だって分かっていたとしてもだ!』」
闇咲「センシティブな話題過ぎる。というかそれ、『心当たりがない訳ではないが、取り敢えず金出す体裁を整えよう』という話だな」
上条「てかコナ○君って○ねーちゃんさんと風呂入ろうって言われたら、その回で終わるよな?」
闇咲「コンプラ的にそろそろ遺憾だから止めてくれないか?ここのホテル、割と気に入っているんだよ。朝食が美味しいんだ」
上条「そっか。じゃあ話の続きは部屋でしようぜ!」 グッ
闇咲「自然に肩を組もうとするな。あとシングルだからホテル側に叱られる」
フロントマン「デリバリー的な方もいますし、お連れ様の詮索まではいたしませんが?」
闇咲「余計に嫌だ。繰り返すがコンプラ的に同性だろうが厳しい」
上条「一泊泊めてくれ!大丈夫だ!何にもしないから!」
闇咲「そこは全く疑っていないし払うのも何でもないが、部屋はあるか?」
フロントマン「ダブルですね」
闇咲「シングルを二つだな?話聞いてだろ?」
フロントマン「すいません、たった今シングルは満室に」
闇咲「連泊の契約していたよな?というか部屋に荷物が置いてあるんだが」
上条「じゃあツインで」
フロントマン「分かりました。あとでルームサービスをお持ちしますね」 ピッ
闇咲「そんなサービスなかっただろ?ただ暇だからイジって遊びたいだけだろ、なぁ?俺の目を見て言ってみろ?」
上条「――いいか闇咲?世の中はスーツ着て予約なしでチェックインしようとしたら、『お部屋がいっぱいでして……』と四件連続で断られる人だっているんだぞ!」
(※『もしかして;ここの運営』。あんまり外見的にアレだと、自動的に満室になるシステムがある。ラブホテル泊まったわ。ラブ一個もないのに)
闇咲「遠回しにヤク×丸出しだって言っているのか?反社という意味でならば、強くは否定出来ないと言えなくも」
――ビジネスホテル
上条「『――撮影は初めて?』」
闇咲「どうしたいんだ?ノリツッコミ的なリアクションを求められても、その困るというか無茶だ」
上条「こう、悪いなと思いつつも小粋なジョークで警戒心を無くそうって俺の心遣いが!」
闇咲「全部裏目だな。今からでもホテルを変えようかと割と本気で考えている」
上条「『――あ、もしもしインデックス?うん今闇咲が取ってくれた部屋でだな、向こう持ちでルームサービス食べ放題ってプランが!』」 ピッ
闇咲「そろそろいい加減にしておけよ?殴り合いだったら勝つ自信はあるからな?」
上条「俺の経験上、そうなったらなった瞬間にさっきのフロントの人来そう。『やっぱりオジサマと少年の恋はあったんだ……!』的な」
闇咲「大抵そういうのは最悪の中でも最悪を行くな。バターを塗ったパンがほぼ確実にバター側を下にして落ちるのと一緒だ」
闇咲「だから急にどうした?家出、というか大荷物を担いでいるようだが」
上条「……それがさ?急に住んでる所を追い出されちまってさ?」
闇咲「穏やかではないな」
上条「コッソリARISAの事務所に住んでたのが見つかって、強制退去させられちまったんだ……!」
闇咲「穏やかだったな。予想を通り越して至極真っ当な理由だったな」
上条「だって、だってあそこは光熱費タダだったんだぜ!?あんないい物件なんて他にはないんだ!」
闇咲「タダではない。確実に誰かが負担している……というか、退去させられたのは仕方がないとして、どうしてババが私の所へ?友人には声をかけなかったのかね?」
上条「土御門は妄想の中のカノジョとイチャコラするっていうし、青ピは二次元とイチャコラするからダメだって!」
闇咲「その彼らは今頃きっと一人だと思う。確証はないが確信はしている」
上条「――そう、俺はこんな扱いを受けていたんだ……ッ!」
闇咲「いや、回想はいらない。口頭の説明で充分だ」
……
鳴護(回想)『――もー今日という今日は出ていってもらうからね!覚悟してよ当麻君!』
上条(回想)『と、言ーいーつーつーもー?』
鳴護「またそうやってレッサーちゃんの悪いところばかり真似して!お友達は選ばなきゃっていつも言ってるよね!?』
上条『……俺を追い出した程度で調子に乗るんじゃない……!きっと第二、第三の俺が現れて勝手に事務所へ住み着く運命が……!』
鳴護『全部当麻君だよね?第二も第三も当麻君って他にいないよね?』
上条『――いや分からないぞ!エ×に積極的だったら俺ソックリの誰かかもしれないぜ!俺がドラゴンに変身できてちょっと嬉しかったのを横目にな! 』
鳴護「ねぇなんで世界は当麻君に厳しいの?なんだかんだで公式が一番厳しい現実を突きつけてるよね?「誰も気づかなかった」っていう悲しすぎる話を』
上条『ここをキャンプ地とするんだ!俺は決めたんだからな!』
鳴護『いやあの、泊めてあげたい気持ちはあるし、別に何が困るって訳でもないんだけど……』
鳴護『ただその、当麻君がいると一日一回のノルマで襲撃か爆撃か謎のヒロインが登場して、お姉ちゃんがラッキースケベのエジキになるのは、ねっ?人道的にさ?』
鳴護『他に、そう他にお友達はいないのかな!?ババを押し付け合いになってるのは否めないけど!』
上条『一方通行は塀の中だし、海原は義理の妹さんが二人もいるし……』
鳴護『前半は物理的に厳しいけど、後半は特に問題はなくない?家庭環境が厳しいなぁとは思うけど』
上条『浜面に至っては女の子四人と虫一匹に囲まれた同棲生活……!』
鳴護『それフェイクニュースじゃない?だって監督入ってるんだよ?最愛ちゃんがデレる日って来るの?』
鳴護『あとペットの申告はどうでもいいかな』
上条『垣根だって生きているんだぞ……ッ!?』
鳴護『なんで苗字?垣根さんちの虫さんなの?』
上条『あ、ごめん。やっぱり生きてるかどうかは微妙?だってあいつ体が「未元物質」だから、俺らの生物の定義とは違うっていうか』
鳴護『ごめん、興味ない。最愛ちゃんのご家族の方はどんななのかなー?っていうのもはなくもないけど』
上条『浜面曰く――「服を着たパワードスーツ」』
鳴護『なんて?』
上条『あと「服を着たハル○」と「ぼいんぼいん」と「家なき子」』
鳴護『お友達は選ぼうよ!きっとそれカラダしか見てないんだよ!』
上条『ぶっちゃけ男子はそういうとこあるんだが……』
鳴護『あー……当麻君、さ?ここを追い出されても他に行くところない感じです?』
上条『最悪帰ればいいんだけど……帰りたくないんだ!俺が勝負に勝つその日までは!』
鳴護『自分でハードルゴリゴリ上げてるってそろそろ気づかないかな……じゃあ、ウチ、来ちゃう?』
上条『ウチってアリサの部屋?』
鳴護『どうしても!どうしてもっていうんだったら!他に行くところがないんだったら!人命救助だし仕方がないかなぁって思うしさ!』
上条『いや別にどうしてもじゃないからいいわ。男友達のツテ辿ってみるぜ!ごめんな!ダメ元で聞いてみたけどやっぱりダメだよな!』
鳴護『当麻君良くないよ!そういうところだよ!途中から「あ、これフってるな」って手応えはしてけどね!』
……
上条「それで流れ流され今ここになう」
闇咲「微妙に、そう微妙に”分かって”やってる疑惑が……」
上条「え、なんだって!?よく聞こえなかった!」
闇咲「なんた小○か」
上条「あと実は怒ってるアリサ可愛いからわざとやってると言えないこともない」
闇咲「私の口からはあまり不用意な事は言いたくないし、藪を突いて超電磁砲が飛んでくる可能性もない訳ではないため、あまり強くも言えないが、その直接言ってやった方が……」
闇咲「というかどうして彷徨っているのかの説明が皆無だったな。回想シーン入れる必要もなく」
上条「……実はちょっと私生活で嫌なことがあってさ?それでやさぐれてたんだけど」
闇咲「私生活、と言われても困る。私は一般的な生活とは縁遠い上、学生へアドバイスできるようなこともない」
上条「闇咲――そうか、闇咲がいたな!闇咲だったら俺のささやかなお願いを叶えてくれるかも!つーかむしろ他に人材がいない!」
闇咲「魔術絡みか?ならば多少は力になれる」
上条「やー、でもなー。多分ギャラ的なものが発生しちまうだろうし、あんま安易に頼むのもなー」
闇咲「気にしなくて構わない。君には一生分の借りが二人分ある状態だからな。『明日までに数億貸して』でもない限りは」
上条「そっか!じゃあ言うけど――」
上条「――オティヌスと神裂と五和、全員の呪×っておいくら万円ほど?」
(※魔術サイド人気投票・中間発表暫定一位〜三位)
闇咲「大丈夫か?人気投票のダークサイドに堕ちているぞ?」
上条「こうなったら俺がスキャンダルを起こすしか……ッ!!!」
闇咲「不祥事にも程がある。というかそろそろ神様(※鎌池先生)に怒られるからそのぐらいにしておけ」
上条「こうなったら魔術でいい!なんとかしてくださいお願いします!」
闇咲「可不可でいえばほぼ無理だ。キャリアも格も上過ぎる相手ばかりだ」
上条「え、キャリア?」
闇咲「天草式の斬り込み隊長の話は割と有名だ。身の丈2mを越えるアフロを持った女傑とか」
上条「色々混ざってる。あとキャリア……」
闇咲「”聖人”相手に呪殺して効いた話が……なくはない。ないが、まぁ大抵返り討ちで終わるな。効いたとしても呪的防御が高いため、『ちょっと風邪気味かも?』で終わる話とか」
上条「検証しろよ。雑なんだよ」
闇咲「そもそも聖人相手に喧嘩を売ったりはしない。『魔術界の核弾頭』と呼ばれるのは伊達じゃないんだ」
上条「あー、確かにそんな言い方もあったっけか」
闇咲「そして”妖精”?興味がないわけではないが……」
上条「あ、お前も妖精さんスキー?いるよな一部に根強いファンが!」
闇咲「そっちのじゃない。魔術的に希有な、という意味でもある」
上条「魔術サイドにはいないの?」
闇咲「私は知らない。少なくともどこかに存在してると分かれば、どちら側からも争奪戦が始まる」
上条「なんてヤな世界だ……元気にしてるかなぁ、火星カビ君」
闇咲「それで『妖精』……女神が転生するゲームでは最序盤に出てくるだろう?羽の生えたタイプの」
上条「レベルが大体3でジ○とディ○使えるんだよな。最初の回復役」
闇咲「しかし電撃属性は無効化か吸収。それと同じではないか、という懸念がある」
上条「どれ?」
闇咲「妖精は”外見が人によく似てるだけの何か”であり、中身は全く別の何かが詰まっていたり、別の理屈で動いているだろうという話だ」
上条「オティヌスは元人間だろ?」
闇咲「そうだな。これは科学サイドの話になるが、昔SFで小さくなる的な話に憧れはしなかったか?ドラえも○のガリバー某かスモール某という道具で」
上条「あー、あったなぁなんか!映画でも見たわ!」
闇咲「人類が小さくなるのはロマンがあるが――あれ、現実にしたら低体温症にかかりやすくなるらしい」
上条「なんて?」
闇咲「体積と熱の奪われやすさが比例するため、酷く寒いそうだ。同じ熱湯を入れるにしてもペットボトルとドラム缶じゃ、冷める速度が格段に違う」
上条「それいうんだったらネズミとかすぐ死ぬんじゃ?」
闇咲「だから毛皮を着ているし、起きている時間はずっと何かを食べてエネルギーを蓄えているな」
上条「なんてロマンのねぇ話――いやでもオティヌスって、ほぼチチバントしか着てないぞ?魔改造された痴女フィギュアだぞ?」
闇咲「だから我々とは別の理を生きているのは間違いない。しかしそれが何かが分からない以上、私の術式が効くかは未知数だ」
上条「話振っといてなんだけど三人とも駄目なのかよ……!」
闇咲「聖人は論外、妖精は殴った方が早い。天草式の魔術師ならば勝ち目はある、ただし組織に感知されたらフクロにされて詰む」
上条「あれ……?闇咲って意外とショボイ……?」
闇咲「過大評価してくれるな。私はどこにでもいる魔術師に過ぎない」
上条「いやいや、こないだインデックスと話したけど結構高評価だったぜ?『一芸特化した万能たいぷ』と」
闇咲「素直に嬉しいな」
上条「『魔術師としての技術は一流に間違いないけど、魔術師として大成するかどうかは微妙』って」
闇咲「魔術として大成するのは英雄か大罪人のどちらかだからな?褒め言葉ではないんだ」
上条「『――という訳で始まりました闇ちゃんねる!今週のお題は”闇咲さんの術式開示”でーす!』」
闇咲「私が一方的に損をするな?そして仮に放送できたとして『魔術師とかスゲーwwwwwwwww』と伝説回になる」
上条「そりゃそうな。怪談語ってた人が突然『実は俺霊能力者だったんだ……!』って言い始めてからが本番だと思ってる!」
闇咲「何度でも言うが霊障に関わるだけ関わって、あまつさえ商売にしておきながら無傷という時点で嘘だからな。信じたければ自由だが」
上条「『祟りがあればホンモノ!』って判別方法おかしくないか?フグ食って毒に当たったら、みたいな判定方式だろ」
闇咲「免許制ではないため騙りが殆どだからな。君もなんだったら今日から退魔士を名乗れる」
上条「ちょっと憧れないわけではないぜその響き!」
闇咲「君の場合はイカサマもいいところだぞ?霊から術式まで『右手』で触っていければ大体解決できるんだからな」
上条「じゃあこないだやったぬーべ○先生も?」
闇咲「『鬼の手』に触れた瞬間、あるべきものはあるべきとろこへ行くだろう。鬼は地獄へ恩師はあの世へ」
上条「『フラグ先生・上条当麻!』」
闇咲「一回目辺りで不祥事起こして退職だろうな」
上条「俺にそんな甲斐性があるとでも?」
闇咲「君自身は善性なのは間違いないか、その身に刻まれたラッキースケベという名の呪いが、な?」
上条「助けて下さい先生!俺にかけられた呪いを払ってください!」
闇咲「人の居ない所で住め」
上条「俺はサトラ○か。でもあれそんなに意味無いんだよな」
闇咲「とは?」
上条「男は大体大概エ×いことかメシのことしか考えてない……ッ!!!」
闇咲「高校生だけだな。大人になると、ほら、えぇと……色々考えるんだよ。大人だからな」
上条「俺の話はどうでもいい!闇ちゃんねるなんだからお前の話を聞かせろよ!」
闇咲「だから放送したら頭イタイ人間だと思われるだろう?」
上条「大真面目に妖怪や心霊の検証してる時点で思われてんぞ?」
闇咲「仕事だからな。魔術が変な形で現実へ広まってしまっている以上、迷信を打ち払うのも将来的には意義がある」
上条「つーか真面目に聞くけど闇咲って魔術師の中でどのレベルなんだ?上位狙えるかも、ってインデックスは言ってたぜ?」
闇咲「色々な誤解をしているようだが、まず『普通の魔術師』という概念はほぼ存在しない。何故ならば”平均値”というものがないからだ」
上条「なんで?魔術使えれば魔術師じゃねぇの?」
闇咲「ゲームの魔術師のように『呪文の○○を取得すれば中級冒険者といえる』的な指針が存在しない」
闇咲「それぞれがそれぞれの分野に特化している。攻撃に長けている者、防御に長けている者、他にも情報処理や研究分野と戦いに縁がない者も多い」
上条「……むしろ、俺が戦ってきた戦闘特化ってどっちかっていえば少数派だったのか……?」
闇咲「恐らくは。対人戦に特化した魔術師の方が少数、というか君の場合、『必要悪の教会』が一番距離的に近いからな。誤解するのも仕方がないといえる」
闇咲「逆にシスター・オルソラだったか?魔術師よりも研究者として名高い者もいる。また逆に神童と呼ばれる戦闘特化のステイル牧師もいる」
闇咲「要は人それぞれだな。比べようがない」
上条「それでそれで!?闇咲ってどのぐらいなんだ!?」
闇咲「私の話を聞いていたか?人が折角気を遣ってボカそうとしているのに無視するな」
上条「気?なんかあったっけか?」
闇咲「禁書目録女史は言わなかった、というよりは私を慮ってくれたのだろうが。『抱朴子(ほうぼくし)』の件だ、ほら魔道書の『原典』」
上条「パワーアップイベントだな!」
闇咲「逆だよ、逆。『原典』とは人にとって”猛毒”だ。脳内に刻み込んだ『抱朴子』を制御するのに多くのリソースを割り振っている」
闇咲「よって以前と比べて大規模な術式も霊装も使えなくなってしまった。まぁ今まで困ったことはないがな」
上条「インデックスにとっては制御できるのが当り前だから、思いやりとかじゃなくて普通に気づいてないんじゃ……?」
上条「でも反対に魔道書使えたりとかはしないのか?だったら『強力な宝具ゲットだぜ!』みたいに!」
闇咲「いつ完結するんだろうなあの世界。私も他人とは思えないが」
闇咲「……私もまぁ魔術師の端くれであり、悪い意味で”魔”に魅入られた人間ではある。興味はあるのだが」
上条「が?」
闇咲「如何せん、使い道に困る」
上条「なんでだよ。しょーもないことでも書いてあったんか魔道書」
闇咲「ある意味においてはそうだと言える」
上条「だからなんでだよ!?だっらた危険でもねぇしインデックスが記憶してない!」
闇咲「病気を治す、というよりも不老不死になる方法が書かれていた。端的に言えば仙人になれる」
上条「あぁだから嫁さんの病気治すのに選んだのな」
闇咲「そうだ。第一の候補だった――が、”ハズレ”な上、強すぎる毒に汚染され、私はそれ以上の閲覧ができずに負けた訳だ」
上条「そげぶタッチした俺が言うのもなんだが、別にハズレじゃなくね?」
闇咲「上手く使えば死ねない体になる」
上条「だったら良く――は、ねぇな?死”ね”ない?死”な”ないじゃなくて?」
闇咲「『抱朴子』の『金丹』の章、その内容をざっと解説するとこうだ」
闇咲「『人間の体は食べ物でつくられている。良い食べ物を食せば体にも反映される。逆もまた然り』」
上条「いい事言った!実践できれば最高だけどな!」
闇咲「『しかしこれは自然の理の中での話だ。もしも不老不死を目指すとすればどうする?』」
上条「お、おう……?雲行きが怪しく……?」
闇咲「『有限の動植物を口にすればそれ即ち有限の体となる。これでは寿命に限りあり』」
闇咲「『ならば無限に存在する鉱物を口にすれば――』」
上条「石でも喰えっていうんですかねコノヤロー」
闇咲「そういう解釈が多い。『”金”丹を作って服用すれば寿命に縛られなくなる』だな」
上条「そんなもん実践してどうすんだよ……」
闇咲「現代風に、かつ公的に解釈するならば『ビタミンや鉄分を取るようにしなさいよ』と言えなくもない。しかし四世紀頃に書かれた話なので……」
闇咲「また魔術師の中には不老の存在もいないことはない、らしい。ローマ正教とロシア正教に一人ずつという噂を聞いたことがある」
闇咲「まぁ寿命がなくなれば研究し放題だからな。それが幸せだと思う人間もいるだろう」
上条「呪い解いても死ななくなるんじゃ困るわな」
闇咲「時間をかけて研究すればマシな不老不死もできるかも知れない。付け焼き刃などたかが知れているという教訓だな」
上条「魔道書ガチャハズレwwwwwwwww」
闇咲「他に手段がなかったからな。禁書目録女史へ相談すれば……いやしかしそれをすれば次から次へと忙殺される恐れが」
上条「本人はおこでしたよ?『なんでわたしを頼ってきたのにとうまがかっさらうんだよ!』って」
闇咲「まぁともあれ私の実力などこの程度だ。戦闘特化に搦め手で仕掛け、相性次第でどうにか勝ち目がゼロではない、ぐらいの」
上条「そう考えるとステイルとか神裂が異常なのかな」
闇咲「戦闘特化だから相手を選ばない。しかし他の技能は疎かになりやすいが……『組織』として動いているため、役割分担すれば脅威でしかない」
上条「つーかさ闇咲、割とぶっちゃけた疑問があるんだけど聞いていいか?」
闇咲「答えられる範囲であれば。プライバシーは除くが」
上条「お前ってもしかして、とは思うんだが祓い屋っていうよりも祟り屋的なお仕事だったんじゃねぇの……?」
闇咲「――他に何か聞きたいことがあれば、なんでも?」
上条「まぁ分かってたけどな!最初っから祓い屋やってたら自分達で祓えてたはずだもんな!」
闇咲「……色々とあるんだ。家業なりしがらみというのが」
上条「前向きに生きようぜ、なっ?何かあったら俺がそげぶすっからさ?」
闇咲「そちらからのトラブルは起きないことになっている。話し合いはもう終わったからな」
上条「嘘だ……ッ!絶対に何人か沈めてる目をしている……ッ!」
闇咲「まぁ、元々が碌でもなかったのでな。いい機会だ」
上条「否定しなさいよそこは!俺の立場上許せるのと許せないのがあるんだからねっ!?」
闇咲「しかし君、『天上より来たる神々の門』の魔術師はなぁなぁで済ませなかったか?」
上条「天上より……?」
闇咲「エンデュミオンの塔でやり合ったと聞いたぞ?」
上条「あぁウレアパディーか!怖ろしい相手だったぜ……だってフワッフワしててちょっと何言ってるのか分からなかったからな!」
闇咲「恐怖の着眼点が違うな。禁書目録女史から聞いたが、あれほど最悪の魔術師を私は知らない」
上条「……そんなにヤベー相手だったのか?」
闇咲「正直『なんで勝てたんだろう?』だな。相手も混乱していたのか、それとも最初から勝つつもりがなかったのか」
上条「おいおい言ってくれるじゃねぇか闇咲!俺は正々堂々と戦ったっていうのに!」
闇咲「聞いた限りでは身内に手の内を生中継して、暴露させていた筈だが。それも含めておかしいんだ」
上条「おかしい?誰か別の人が仕掛けてたとか?」
闇咲「という話ではなく。『天上より来たる神々の門』、面倒なので『結社』と呼ぶが、彼らは『アストラ』という霊装群を使っていた。覚えているか?」
上条「流石に俺、戦った張本人なんですけど……」
闇咲「その珍しい特徴は?」
上条「なんか、なんかこ凄かったぜ!」
闇咲「感想ありがとう。私の方で補足すると『アストラ』とはインド神話の神々が用いた武具を霊装にしたものだったか」
上条「それだけだったら珍しくもなくね?」
闇咲「普通だな。しかし普通ではないのは『結社』内でローカライズ化し、共同で使っていたことか」
上条「共同?」
闇咲「所属する魔術師の『素養』を調べ、それに適した『アストラ』を促成する。そして同じ『素養』があれば別の人物も同じ『アストラ』を使えると」
闇咲「超個人主義ばかりの魔術師の中で、術式の均一化を計るという思想は面白い。むしろ合理的で科学サイドに近い」
上条「そんな規格が一般化しちまうと、さっき話してた『普通の魔術師』って話になるよな。『メ○とヒャ○とギ○の素養があるから初級魔術師な!』みたいな」
闇咲「実際にはそれぞれが持った特質、のようなものだろうな。本来魔術師とは縁遠いものの筈なのに」
上条「そうなのか?魔術って才能とか血統とか重視しそうだけど?」
闇咲「誰かが既に言っていると思うが、『魔術とは力なき者が最後に流れ着く終着点』なんだよ。だから素質の有る無しで魔術は学ばない。”それ以外に何もない”んだ」
上条「DNA調べて適性探しみたいなのか。あんまそういうの好きじゃねぇんだけどなぁ」
闇咲「だから、という訳ではないのだろうが、当然のようにやらかした訳だ――『この”素養”をイジれば、もっと強い魔術師が出来るんじゃないか!』と」
上条「そんなんばっかりだよな。それで生まれたのがウレアパディーだったと、十……何人かの『素養』を均一化どーたら言ってたっけか」
闇咲「被験者15名中14名が死亡、残った一人も不安定で計画凍結。裏切るのも、まぁ必然と言えなくもないが」
上条「14人とゴッチャになってあんなんなったのか……!」
闇咲「まぁ、そこが最も怖ろしい点なのだが」
上条「フワッとした性格が?」
闇咲「対面したことがないので性格までは知らん。というか別に興味もない。フワッとしてても誰も困らないだろう」
上条「妹さんのソーズティの胃壁がマッハで削られる」
闇咲「身内なんだから慣れろという以外に解決方法はないな。というかやはり”変わった”のか。家族でも戸惑うほどに」
上条「変って意味で?」
闇咲「ではなく……15人の『素養』を平均化させようとした。つまり一人に14人の『素養』が引っ張られた?」
闇咲「『素養』を取り出して再注入……そうなるとこれはやはり」
上条「何かウレアパディーが悪いみたいに聞こえんだけど」
闇咲「……最初から『結社』は15人の『素養』の均一化なんて望んでいただろうか?」
上条「いや、しようとしてたんだろ?じゃなきゃ『ブラフマーアストラ』って超強い霊装が使えなく、な――」
上条「……」
上条「――これ、おかしくないか?なんてウレアパディーんとこの連中、自分達では使えもしない霊装なんか拵えたんだ?」
上条「あと被験者15人っていう数もおかしい!大切な実験だったら一人か二人で試していくだろうが普通は!?」
闇咲「実験は成功していたんだろうな。”15人分の『素養』を一人にまとめる”という実験が」
上条「いや流石にそれは!」
闇咲「インド神話にはアヴァターラという『化身』の概念がある。アバターという名称で映画になったり、SNSのユーザーコーデにも使われているが」
闇咲「そしてブラフマーの秘技が書かれた古ウパニシャッドは全15巻。まぁ外れてはいないと思う」
上条「やりやがったなクソ!幹部連中生きてれば殴ってたのに!」
闇咲「補足しておくと『ウパニシャッド哲学』というものがある。『最高原理』と『自我』、それらが同一のものであると認知すれば解脱できる、という思考だ。紀元前の話だが」
上条「あぁ……そっから引っ張って来たのか、『素養』とかそういうの」
闇咲「現地の言葉を使えば『自我』は『アートマン』、『最高原理』が『ブラフマー』となる。そのままだな」
上条「ウレアパディーが予想以上にヤッバイのが分かった。少し、いやかなり緩いぐらいで丁度だわ」
闇咲「いいや、私が問題視しているのはそこではない。もっと短期的な見方だな」
闇咲「『素養』があればそれに見合った霊装なり術式が使える。それが『結社』の方針だったな?」
上条「そこだけ聞くとRPGのジョブっぽい。専用武器に専用呪文」
闇咲「そして『平均化』する以上、15人は全然別の『素養』を持った人選であり、全員が被験体になるぐらいのエリート。多分ここまでは合っていると思う」
上条「最初から同じや近かったらしないだろ」
闇咲「と、いうことはつまり、ウレアパディー女史は本人を含めて15人分の術式や霊装なりを使用可能だった、と」
上条「――あっぶな!?よく勝てたな俺!?」
闇咲「禁書目録女史曰く、『慣れている自分の術式だけ使ってたから、どうにか妹さんにも見切れたと思う。もう少し慣れてたら手がつけられなかったかも』と」
上条「ありがとうソーズティさんっ!今度会ったらハグするからな!」
闇咲「とはいっても体は一つしかないため、異常に多芸の魔術師と対戦しただけの話だ。そして『ブラフマーアストラ』は失われたが、その力は健在」
闇咲「全員が対人戦闘特化かは別にして、寿命ある人間の魔術師の中で最も多芸である可能性がある。ただ問題は……」
上条「統括している人格がフワッとしている」
闇咲「と、君は判断しているようだが。実際にはエンデュミオンを叩き落とす直前にまで迫り、『結社』の幹部は皆殺しで壊滅状態」
闇咲「無計画な人間が”偶然”やったにしては出来すぎている。ある程度計算していたとはいえだ」
上条「妹さんを瀕死にしてるんだが?」
闇咲「トドメを刺さず、足手まといを抱える君たちへ追撃しなかった時点で、だな。あまり言うのも野暮かも知れないが」
闇咲「まぁ総括としては……示威行為ではないのかね?『私と私の家族に手を出したらこうなるぞ』という意味の」
闇咲「負けたとはいえ相手は『必要悪の教会』と能力者たち、場所は科学サイドのお膝元。善戦した上、何よりも本人達は脱出できているからな」
上条「そういや『ブラフマーアストラ』の標準ってどうなったんだろ……?あれ今も使えるんだったら超危険人物を野放しになってるんじゃ……?」
闇咲「君が壊したんだろう?予備の霊装があったのかもしれないが、そこまでは責任を持てまい」
上条「ほぼ常に俺を責めるステイルや神裂よりも優しい……!」
闇咲「欠点も当然ある訳だがな。『素養』が平均化され、術式なり霊装の使用できる幅が広がった。それは利点だ、対処の幅が広がったのだから」
闇咲「しかしいくら選択肢が広がろうとも、有事の際には銃を取り出すよりも床に伏せる方が効果的である場合がある」
上条「一瞬の判断が命取りになんのな。それが急に後付けされた力だから慣れてない」
闇咲「その”フワッとしている”原因があるとすれば、そこら辺に原因があるのではないかと」
上条「そっか……なぁ一つ聞いていいか?」
闇咲「なんだ」
上条「好きな人っている?」
闇咲「修学旅行の男子部屋か。飽きたんだな?私も話していて『これ誰が喜ぶんだろう?』とか思わなくもない」
上条「それじゃいっせーのせーで言おうぜ!」
闇咲「そういうノリはいらない。妻がいるな」
上条「マジかよ!?それって俺の知ってる女子!?」
闇咲「会っただろう。呪いを解くときに。『は、初めて会った人と握手するのは……』と微妙に人見知り発揮しただろ君」
上条「撮れ高が!今までの話ほぼ使えねぇからもっとこうきちんとしたトークを要求してんだよ!」
闇咲「だからオッサンど男子高校生という、二大ノットレアリティだけでは数字を稼げない。流行りの怪談トークをしてもイマイチだというのに」
上条「お前がガチで検証してっからだよ?『カンカンダ○』相手に『神話も歴史も郷土学も知らない学のない人間が作った創作』とか斬り捨てるから!」
闇咲「フィクションをフィクションとして楽しむのは自由だ。ただ問題は現実に迷惑をかけている人間が多々居るというだけで」
上条「――よし、脱ぐか!」
闇咲「需要が皆無だな。喜ぶ人間が全世界で数人だと思う」
上条「そんな事無いぜ!俺が人気投票で二位圏内へ入って目出度く水着コスになれば!『やったね上条さん!これはこれで(※芸人として)オイシイね!』ってファンのみんなは言ってくれるんだ!」
闇咲「一度話し合ったらどうだね?出来れば拳で」
闇咲「と、いうかだな。先程妖精の話でもふと思ったのだが――」
闇咲「――君、魔人オティヌスに負け――」
プツッ、ザザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ――……
闇咲「……」
インデックス「い、いいの!?こんなほてるでるーむさーびす食べ放題だなんて、ほんとうにいいんだね!?夢じゃないんだね!?」
インデックス「実はこれは全部ゆめで!こんびにから黙ってもらってきたスティックシュガーしかないあの部屋とかっておちはないんだよね!?」
上条「大丈夫インデックス!たとえ夢だとしても夢の中で腹一杯喰えば問題ない!思い出さえあれば辛い現実を乗り切れるんだからな!」
インデックス「じゃ、じゃあまずはここからここまで全部!いちれつお願いするんだよ!」
上条「任せておけ!今日のサイフはデカいからな!」
闇咲「――そうか……『原典』の改竄は不可能……私の記憶と混雑……侵食は止められていないが……些事だな」
闇咲「私が……と、すれば……の他に……アステカの『原典』……」
上条「どうした闇咲!?折角今日はお前のオゴリなんだから頼まないと損だぞ!」
闇咲「私が出資して私が払うのだから何をどうしても私しか損をしないシステムだな。地獄ともいうが」
インデックス「は、払ってもらえるん、だよね……?」
闇咲「そのぐらいは別に構わないが。という初期設定はどうなった?家出したという話は?」
上条「食べられるときに食べる!それ以外何があるか!?」
闇咲「いや、特に興味はない。それにまぁ?収穫がないわけではなかった」
上条「何食べる!?俺はこの食パン一斤使った王様プリントーストが!」
闇咲「話を、聞け。いや聞いたら拙いのか」
-終-