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Clock(trial)
バレンタインの日

――学園都市 とても暗い場所

オリアナ・トムソン「……」

オリアナ(依頼がある、ってわざわざ学園都市まで来てみたけれど)

オリアナ(使われていない廃プラント……これはちょっと早まったかしらね)

リドヴィア「いいえ、私達の前にどんな困難が立ちはだかろうとも、そこに助けを求める人が居る限りは」

リドヴィア「むしろ困難を伴うことであれば、より苦難であるが故に燃え――励みになりますが!」

オリアナ「えっと……リドヴィア?」

リドヴィア「約束の時間までまだ少しありますが。あ、サンドイッチを作ってきましたので」

リドヴィア「貴女の故郷の紅茶も、イギリスを出る時に買っておきましたが」

オリアナ「いや食べるけど。どうしたの?ロンドン塔は?つーかなんでここに居るの?」

リドヴィア「あなたと一緒に仕事をしてこい、そうイギリス清教に取引をしましたので」

オリアナ「そ、そう……?てかこれ私がこっそり受けた依頼なんだけど」

リドヴィア「ヤサグレ神父の方が――」

リドヴィア「『うん、まぁ色々やったんだけどさ。ぶっちゃけ面倒じゃない?』」

リドヴィア「『拷問しようにもバッチ来いだし、かといってキツい尋問もキツくすればする程喜ぶし』」

リドヴィア「『一番良いのは“病死”して貰う事なんだけど、一応は和平結んだ後で下手打つのもアレだしねー』」

リドヴィア「『って訳でさ、もう面倒臭いからそっちで面倒看てくれないかな?面倒臭いからさ』」

リドヴィア「『出来れば格子のついた快適な別荘で一生祈らせておいた方が、お互いwin-winの関係になれると思うけど』」

リドヴィア「『まぁそんな感じで宜しく』」

リドヴィア「――そう、この私の強固な信仰の前にイギリス清教も白旗を揚げた訳で!」

オリアナ「完っっっっ全に対処に困って押しつけられた感がするんだけど。っていうか何回『面倒』って言われたの?」

オリアナ「おねーさん色々な所が痛くなっちゃうわー」

リドヴィア「散々ロンドン塔で『美人なだけに痛々しい』と言われ続けた私に比べればどうという事もなく」

オリアナ「意味が違うわよ!?っていうかどんな環境にあったの?結構こっちはマジで心配してたんだけど」

リドヴィア「どこに居ようがいと高きあの方に祈りを捧げる事に変わりは」

オリアナ「……うん、まぁ良かったんだけどね」

リドヴィア「貴女の友情には感謝しておりますれば」

オリアナ「……うーん、って事はこの依頼、イギリス清教も一枚噛んでいるって事よね。だとしたら真っ当な話なのかしら……?」

リドヴィア「困ってる方へ手を差し伸べる――それが例え異教の徒であろうとも関係は」

オリアナ「そーゆー所は、まぁお嬢ちゃんの良い所だと思うんだけどねぇ」

オリアナ「『使徒十字』以外にも方法はあったのに、わざわざアレ持ち出してまでする必要もなかったんだし」

リドヴィア「聞けばあの右手の少年もグレムリンを幾度か退けたとか。今にして思えばあの時は必然的に成功しなかったのでしょう!」

オリアナ「グレムリンそのものはパワーバランスが崩れるのを待っていた訳だしね。無い事はない、かな?」

リドヴィア「たかだか一度や二度の失敗で改心出来なかった相手こそ、私達によって正されなければいけませんが!」

オリアナ「いっやー?どう、かな?悪い意味でフラグ立ってるような気もするのよねぇ」

オリアナ「『え?久しぶりに出番?おねぇいさん頑張るねっ!』とか思ったら、よりにもよって幹部の中でも激しくワルイド過ぎる相手だし?」

リドヴィア「ともあれ私達は迷える子を導くのが良いかと」

オリアナ「……そーなんだけどねぇ。でも『運び屋』の私がなんで呼ばれてんの、って考えたらさ」

オリアナ「ちょっときな臭い、かな?……ま、火遊びも嫌いじゃないけど、ね」

リドヴィア「――おや、誰か……?」

オリアナ「依頼人さんみたいね。ってか、女の子……?」

女の子「……えっと、指定された場所はここよね――それで」

女の子「そっちの柱の影に隠れている二人が、『運び屋』さんって事で良い訳かしら?」

リドヴィア「(魔術も使わずに気配を探知したので?ニンジュツの達人クラスが?)」

オリアナ「(能力でしょ?あっちの気配は一人しか感じられないから、同業者にハメられた、って訳じゃないみたいだけど)」

女の子「違うの?」

オリアナ「うん、合ってるわよ。あなたがクライアントさん?」

女の子「そう。それじゃ早速運んで欲しいんだけど――」

オリアナ「――の、前に禁止事項とかあるんだけど、そこら辺は聞いているの?」

女の子「『合法・非合法問わない。ただし事前に内容と目的を明確にした上、それが守られなければ破棄する』、のよね?」

女の子「……よくまぁこれで商売になるわね」

リドヴィア「同じ行き先であれば同じバスにも乗りますので」

オリアナ「まぁそんな感じで。『お嬢ちゃん』に心配される筋合いはないから、安心してね?」

女の子「……言い方がムカつくけど、まぁ――いいわ。大事の前の小事に拘っていられないもの」

女の子「あなた達に運んで欲しいものは――これよ」

リドヴィア「可愛らしい包み紙……何かの箱で?」

オリアナ「中身を確認させて貰っても?あ、ダメならダメで良いけど、その時はお嬢ちゃんが持って行ってね?」

女の子「好きにしなさいよ!べ、別に見られて困るってもんじゃないんだからねっ!」

リドヴィア「これが“ジャバニーズ・ツンデレ”……」

オリアナ「アマテラスの頃からの古式床しい伝統芸能よ――って、これはっ!?」

リドヴィア「チョコレート、ですが?」

女の子「……言わないでよっ!」

リドヴィア「あとメッセージカードも……読んでも宜しいので?」

女の子「け、契約なんでしょ?ただし、絶対に!ぜっ・た・い・にっ!声には出さないでよねっ!」

オリアナ「何々……『ずっと前からあなたが好きでした』」

女の子「だからっ!?」

リドヴィア「どう考えても読めと言うフリとしか思えませんが」

オリアナ「あー、ごめんね?何かほのぼのとしちゃって、ね」

リドヴィア「これをもしかして、貴女の意中の男性へ運ぶのが?」

オリアナ「そっか、明日はバレンタインだっけ」

女の子「……そ、そうよっ!悪いっ!?」

オリアナ「思ってたよりずっと健全で良かったんだけど。けどさ、どうして自分でやらないのよ」

リドヴィア「立場的にNGでは?同性とか兄妹――ダメですよ?それは神がお許しになりませんので」

女の子「そんなんじゃないわっ!相手は……その、写真、見る?」 ピッ

リドヴィア「……おや?どこかで見たツンツン頭の殿方で」

オリアナ「あー……うん、お姉さん分かっちゃったわー、ってかさーぁあ?」

リドヴィア「私は直接お会いしては居ませんが、あの時の」

オリアナ「更にその後ブリテンでランデブー的なものもしたのよー、ってお嬢ちゃん?耳を塞いでどうしたの?」

女の子「あーーーーっ!あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁっ!!何を言っているのか聞こえないなーーーーーーっ!!!」

リドヴィア「……可哀想に。誰がこの子をここまで追い込んだので」

オリアナ「主に私達だと思うけど。まぁ世間は狭いわー」

女の子「……って、ここまで恥を晒してるんだからやってくれるんでしょうね!?まさか今更『やっぱダメですー』なんて言わないわよねっ!?」

オリアナ「んー……ここまでは問題ないんだけど、このとう――ツンツン頭の子にどうして自分では渡さない理由も知りたいわね」

リドヴィア「この方が遠く――例えば、一般人では込めないような施設に幽閉されている、とか?」

オリアナ「あぁ成程ね。だっからこの私の出番って訳か」

女の子「……いやぁ、そう言う理由じゃないんだけど」

リドヴィア「では既に決まった婚約者が居るとか――いけませんいけません。神は不純な愛をお許しになりませんので」

女の子「それも、ない、けど」

オリアナ「だったらどうして?別に法外って額じゃないけど、お嬢ちゃんにはお高いわよ?」

女の子「……逆フラグなのよ」

リドヴィア「それは、どういう意味で?」

女の子「何か、こうっ!見えない神の手に介入されているのよっ!」

リドヴィア「これはまた……」

オリアナ「電波?どっかから受信してんの?」

女の子「だったらまだ良いわよっ!障害なんて無いんだったら、それは別に!」

女の子「でもねっ!?学校で道端で外国でっ!あのバカは息を吸うようにフラグを立てまくるのっ!」

リドヴィア「と、言いますと?」

オリアナ「あー……確かにブリテンでも『新たなる光』の子と」

オリアナ「果ては最後の方、バカが妨害しなかったらキャーリサ第二王女に――」

女の子「聞こえないきこえないキコエナイ……!!!」

オリアナ「何となく事情は分かったわ。要は『チョコ渡して、出来れば告白までしたいんだけど――』」

リドヴィア「『――確実にグダグダになるだろうから、運び屋さんに代行して欲しい』ですか?」

女の子「お願いしますっ!!!」

オリアナ「……いやぁ、流石にこれはちょっとムリよ」

女の子「そこをなんとかっ!」

オリアナ「だって――」

リドヴィア「――分かりました。オリアナ、受けましょうこのお仕事を!」

女の子「ホントにっ!?」

オリアナ「あなた勝手に――」

リドヴィア「ただし、一つだけ条件があります。それを――」

女の子「しますっ!」

リドヴィア「――呑むのでしたら、と言いたかったのですが、まぁ喰われましたので」

オリアナ「いやだから勝手に決めて貰っちゃ困るんだけどー?」

リドヴイア「貴女から報酬は頂きません」

女の子「え、けど海外からわざわざ来て貰ったのに、それじゃ悪い――」

リドヴイア「悪くなど、何も。だってそうでしょう?恋の悩みを救うために、主は私を遣わせたので」

リドヴィア「道に迷う子に救いの手を差し伸べる事。それは決して見返りを求めてはいけませんが!」

女の子「シスターさん……っ!」

オリアナ「せめて移動費ぐらいは出して欲しいなー、みたいな」

リドヴィア「いけません!いけませんよオリアナ=トムソン!か弱い少女に対価を求めるなどと!」

オリアナ「まぁそうだけどさ。でもか弱い少女は『運び屋』を呼びつけたりはしない訳で」

リドヴィア「――でもしかし、少女よ。この出会いは必然ではないでしょうか?」

女の子「え、えぇ、はい、まぁ?」

リドヴィア「もしも――もしこのチョコレートがご縁で、お二人がお付き合いする可能性もあるかと」

女の子「つ、付き合うっ!?あたしとあのバカがっ!?」

リドヴィア「と、なれば当然式も挙げねばならないでしょう――責任的な意味でっ!」

オリアナ「いやいや、その発想の飛び方はオカシイわ?」

オリアナ「今のご時世、下手すれば数付き合って数時間で別れるとか珍しくもないんだけどね?」

女の子「ですよねっ!付き合ったら結婚ですもんねっ!」

オリアナ「あれ?間違ってるのは私の方?」

リドヴィア「その際には是非『ローマ正教』の教会で式を挙げられては如何でしょうか?」

リドヴィア「実は私、バチカンに籍を置く修道女で御座いまして」

リドヴィア「これも何かのご縁。何でしたら式を執り行うのも教皇猊下――と、まではいきませんが、枢機卿か大司教様にお願い出来ますので」

オリアナ「あんさ、あんま軽々しく約束しない方が良いんじゃない?」

オリアナ「『こォの異教徒のサルがァァァァァ!!(巻き舌)』とか言い出す未来が見えるんだけど」

女の子「マジでっ!?……あ、でもお高いんでしょう?」

リドヴィア「まさかっ!そんな訳はありませんともっ!」

オリアナ「……そろそろ止めた方が良いのかな?つーか誰かたすけてー。二人の幻想ころしてあげてー」

リドヴィア「愛する二人を祝福する事こそ私達の勤め!いやむしろ喜びとすら言えるかと!」

女の子「シスターさん……!」

リドヴィア「……あぁでも、流石に異教徒の式を執り行うのは少し問題が」

リドヴィア「ですのでお二人とも、ローマ正教に入信して頂くのが条件かと」

女の子「入信?それってどういう?」

リドヴィア「あぁそれは別にご心配はなく。世界中では約20億の信徒がおりますし、歴史だって2000余年を誇りますので」

女の子「まぁそりゃ、下手な新興宗教よりかは全然信用出来るけどね」

女の子「でも急に言われてね、ちょっと即断は出来ないって言うか」

リドヴィア「何も今すぐ決断せよ、とは言っておりませんが。勿論仲が成就した後に断って下さったとしても、私達は決して貴女を責めたりはしません」

リドヴィア「それが例え異教徒であろうが、思いを叶えられた少女に祝福あれと祈るだけですので」

リドヴィア「ですが、今まで進展の無かった関係が、もしもここで進んでしまったとすれば――」

女の子「す、すれば?」

リドヴィア「それはきっと、貴女と私達の出会いが会ったからに他なりませんか?そう、まさにお導き的な意味でっ!」

オリアナ「いやその結論はおかしい」

女の子「……そっかぁ、居たのね、神様って」

オリアナ「あー、うん。リドヴィアってこうやって信徒増やしてたのね」

オリアナ「そりゃまぁ『幻想殺し』がローマ正教に転べば、一気にパワーバランス変わるでしょうけど」

リドヴィア「では、これはお預かり致しますので」

女の子「お願いしますっ!」

オリアナ「……うん、もう頑張ってね?私は今日の便で帰るから」

リドヴィア「行きますよオリアナ=トムソン!少女の幸福とローマ正教のために!」 ガシッ

オリアナ「……あぁもう面倒臭い……」


――翌日 某アパートの前 朝

オリアナ「って事でターゲットの家の前まで来てみたんだけど」

リドヴィア「……なんでしょうか。視線を感じますので」

オリアナ「そりゃ学園都市に『どこのお店?』的なシスターさんがいれば目立つでしょうね」

リドヴィア「いえ、貴女だけには言われたくない台詞ですが」

オリアナ「私はいいのよ。これも趣味と実益を兼ねた服装なんだし――って、出て来た出て来た」

上条「……不幸だ」

リドヴィア「朝から顔に歯形が……はっ!?これはDVの可能性が!」

オリアナ「まぁそこはスルーしておいて、ギャグの一環だし」

リドヴィア「それでは私が参りますので」

オリアナ「そもそもここまで引っ張るような企画じゃないんだけど――リドヴィア?」

リドヴィア「……」

オリアナ「どうしたの?やっぱりおねーさんと替わる?」

リドヴィア「いえ、それは私がやりますが。あれは」

オリアナ「セーラー服の……先客?」

……

佐天「おっはっよーごっざいまーすっ!どぉも!いやいやっ!」

初春「お、おはようございますっ!」

上条「うっす。二人揃って――は、珍しくないけど、どったの?こっちまで?」

佐天「やっだもうっ!上条さんったら今日は何の日か分かってるくせにっ」

上条「……いやぁ?」

佐天「バ・ン・ア・レ・ン・タ・イですよおぉっ」

上条「違うよね?それ確か地球の周りにある放射線の帯じゃなかったかな?」

佐天「今日は朝一でバレンタインの義理チョコ届けに参りましたっ!いぇーい義理だよっ!やったねっ!」

上条「……うん、嬉しいんだけど。そんなものっそい良い笑顔で『義理ですっ!』みたいに言われてもな」

上条「毒男が近くのコンビニ寄ったら、ものっそい流れ作業で店員さんからチロル貰う的な敗北感を憶えるけどねっ!」

初春「まぁまぁこう見えて照れてるだけだと思いますよー?」

佐天「あ、こらっ初春だって緊張してたじゃんか!」

初春「そりゃしますけど!」

上条「ま、まぁまぁそこら辺に。義理でも何でも凄く嬉しいよ、二人とも有り難うな?」

佐天「いやいやっ!そこはそれ持ちつ持たれつな的なアレでして」

上条「やっぱ何かあんの?出来る限りは付き合うけど」

佐天「XX学区に新しくできた商業施設、何か高校生以上同伴じゃないと入れないらしくって、はいっ」

上条「あんまり怪しい所は嫌だよ、つーか君らの保護者さん達にぶっ飛ばされるんだからな?」

初春「目玉が夕方に行われるイベントなんですけど、原則中学生だけだとダメなんですよねー」

上条「あぁゲーセンとかにも一応時間制限があんだっけか?そっち関係ならまぁ、付き合っても良いけど」

佐天「よっしゃ!」

上条「ってか別に義理チョコくれなくたって良いのに。そんくらいなら言えば付き合うって」

佐天「あ、本命の方が良いですか?だったら――初春っ!ゴーっ!」

初春「どうして私に行かせるんですかっ!?って言うかド修羅場になりますからぁぁっ!」

上条「修羅場?つーか初春さんに無茶ブリするのは止めなさい」

佐天「女の友情って儚いですもんねぇ、えぇ」

上条「中一にして悟ったような事を言うんじゃねぇっ!」

佐天「だがしかし魔神さんのエロいコスにコロっと騙され、世界を敵に回した知り合いが?」

上条「だってしょうがないじゃん!?あれ『野郎だったら助けてた?』とか言わないであげて!?」

佐天「ま、そんな感じでよろしくでーすっ。あぁ後これが約束のブツですんでどぞー」

初春「ど、どうぞっ」

上条「……嬉しいんだけど、ほぼ100%打算の産物だと思うと、どっか納得行かねぇよなぁ……」

佐天「まぁまぁ。ちなみに当日、御坂さんと白井さんも合流するかもですんで」

上条「ん、それもいいけど。ってか今日の御坂って大変そうじゃね?」

初春「あー、先輩後輩に限らず囲まれてそうですもんねー」

初春「近づく取り巻きをちぎっては投げちぎっては投げてる白井さんの姿も浮かびます」

上条「俺から見ても男前だしなぁ」

佐天「それはちょっと……あたしの方からはコメントを差し控えるって言いますか、はい」

上条「まぁ了解。予定決まったらメールくれよ」

佐天「はーいっ!それでは、でわでわっ!またいつかっ!」

初春「失礼しまーす」

……

オリアナ「……分かってたけどねぇ。

リドヴィア「……成程。これは確かにあのか弱い少女であれば気後れしてしまうでしょうか」

オリアナ「んー?べっつに珍しくはないと思うけどねー――ってか、さっさと渡してきなさいよ」

リドヴィア「えぇ、ですがまた――新手が」

オリアナ「うえっ?……って、あれ、男の子じゃない」

リドヴィア「お友達にしては少し毛色が違うかと」

……

マーク「『いやぁこまったなぁ、どーしよー、こまったなー』」(※超棒読み)

上条「……」

マーク「『このままかえったらボスにハピネスちゅうにゅうされちゃうなー、あーたいへんだー』」

上条「突っ込まないぞ?目の前に地雷があるって分かってたら、流石に突っ込むほど自虐的じゃねぇからな?」

マーク「『ボスのひんそーなまな板には無反応でー、魔神さんの下乳に過剰反応した人は居ないかなー?』」

上条「黙れ、ぶっ殺すぞ?別に乳で対応変えた憶えはねぇよぉぉぉぉっ!」

マーク「おやぁ?上条さんではないですかっ!奇遇ですなぁ」

上条「待て!これは敵の魔術師の攻撃だ!」

マーク「いい加減そのネタも古いかと。それよりおはようございます、良い朝ですねー」

上条「たった今良くなくなったけどねっ!ちょい前まではJCと接点あったんだけれども!」

マーク「まぁまぁそう仰らずに。ってか偶然って怖いですね」

上条「待ってたよね?タイミング的にも佐天さん達よりも早くスタンバってたんじゃねぇかな?」

マーク「いやぁそこら辺はあんま突っ込まないで下さいよ。こっちだって好きでやってる訳じゃないんで」

上条「……そりゃそうかも知れないけどさ。アレでしょ?お前らんトコのボスの傍若無人っぷりが暴走してんだろ、なぁ?」

マーク「唐突ですが、今日の何の日でしょうかっ!?」

上条「いやぁそのネタやったばっかだし。アレでしょ?何かこう、お菓子を送って騒ごう的な」

マーク「答えは――聖ウァレンティヌスが結婚禁止のローマ施政下で結婚式を執り行い、逮捕された日ですねー」

上条「え!?十字教そんな血生臭い日を記念日にしたんかっ!?」

マーク「えぇまぁ?『ローマ帝政下で受難したけど折れなかった俺超カッコいい』的な話です」

マーク「暴君として名高いネロ帝も為政者としての手腕はまぁまぁだったそうですし、ぶっちゃけ話盛った方がウケが良い的な?」

マーク「ネロ自体は『中二病を煩った皇帝』であって、そこそこ評価されています。普遍史からはボロックソですけど」

上条「……そりゃなぁ?“666”とか獣の数字とかって、そっち関係に病んでなきゃムリだもの」

マーク「まぁそんな訳で、ウチのボスもなんやかんやで七転八倒、雪が降ってサイレントヒ○ゴッコをしたら、風邪を引いて死にかけています」

上条「後半、誰?バードウェイはそこまでアホやらかさないと思うけど」

マーク「そんな訳でこれどうぞ。あ、手作りですよー」

上条「……うん?どういう流れ?」

マーク「ちょい待って下さい。伝言がですね――こほん」

マーク「『なんかこう色々に世話になってるっていうか、まぁまぁぶっちゃけ面倒見てるのは私の方なんだけどな?』」

マーク「『だが常日頃の感謝というか、礼儀的な意味合いでチョコレートを用意してみたんだよ』」

マーク「『……ま、感謝したまえ上条当麻君?君のボスが寛大で慈悲深い事についてだ』」

マーク「『特に深い意味はないからな?いいか?勘違いするんじゃないぞ馬鹿者が!』」

マーク「――以上、ボスからの言付けでした」

上条「それなんてツンデレ?つかもっとシンプルにまとめられたよね?」

上条「『チョコあげるけど義理だから』で、説明出来たんじゃねぇかな?」

マーク「でっすよねぇ?だから俺も『ボス、その属性は最近飽和気味っていうか、ぶっちゃけ飽きられてます』って忠告したんですけど」

上条「論点が違うなっ!?……いやいや、有り難いとは思うけどさ」

マーク「まぁまぁなんだかんだ言って12歳のガキですし?次遊んで貰う時にでも、過剰にリアクションして貰えれば」

上条「マーク、もしかしてこんだけのためにわざわざ学園都市まで来たのか?だったら悪いな」

マーク「そこら辺も査定対象に加えて貰えると助かります。ボスが機嫌良いと、私達も影響を受けますんで」

上条「幼女の機嫌で左右される謎の組織だぜ……『明け色の陽射し』」

マーク「じゃあまた。学校頑張って下さいねー」

上条「あぁ。またなー」

……

オリアナ「……なんか大変みたいねー。ってかあのボウヤ、いつかその内女の子から代わる代わる刺されるんじゃない?」

リドヴィア「……」

オリアナ「リドヴィア?早くしないと行っちゃ――あぁ、もう遅いか」

オリアナ「後は学校だろうし、取り敢えずどっかヒマ潰すしかないわねー」

リドヴィア「……いけません、オリアナ!これは非常に由々しき事ですので!」

オリアナ「何が?いい歳した二人が高校生ストーキングしてる事?それともどこのファミレスで時間潰そうかって葛藤?」

リドヴィア「あのような殿方が無垢な少女達を騙しているなどと……!見過ごす訳には行きませんが!」

オリアナ「直訳すると『なんか見てるの楽しくなってきたから、もうちょっと後を付けよう?』でオッケー?」

リドヴィア「さぁさぁっ!急ぎますよっ!」

オリアナ「ってかもう『運び屋』じゃないわよね?家政婦さんが見てる、みたいになってるんだけど」


――学校

青ピ「……おっはよーさぁぁぁぁん、カミやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ」

上条「やだテンションおかしいっ!?……いやいや、どったのお前?朝からローギアに入ってるみたいだけど」

土御門「いやな?イベントの日だゃー?」

上条「土御門もおはよー」

土御門「うーっす。んで、『ボクも日頃からバカやってますけど、まぁまぁそこはそれネタですやんボケですやんか?』」

土御門「『自分を落として笑いを取る芸人みたいに、私生活では結構モテるみたいな?』

上条「あー……」

青ピ「それがっ!それがどぉしてチョコの一個も貰えませんのんっ!?常日頃お笑いを提供していたのにっ!?」

上条「お前の場合、ネタが濃すぎるせいだと思うよ?クラスのムードメイカーなのは間違いないけど、それ以上はどうだろう?」

土御門「実際に芸能人やってても、蛇蝎の如く嫌われてる奴も居るんだにゃー。知名度と好感度は別問題ですたい」

青ピ「何かボク何にもしてないのに『うわぁ薄情者』みたいな引かれ方してますしっ!?一体何をやったって言いますんっ!?」

上条「文字通り神様の気まぐれだと思うけど……ま、まぁまぁ?まだ朝だし!なっ?」

青ピ「そういうカミやんの鞄からはチョコの匂いが……!?」

上条「ラッピングされてんのにする訳ねぇだろうが!」

土御門「――だが、マヌケは見つかったようだな……!」

上条「――え?」

青ピ「よーしぃカミやん?おいちゃん怒らんから、ちょっと鞄貸してご覧?なぁ?」

上条「違うんだ!?これはきっと熱膨張がホニャララしてブリテンが愛国心なんだっ!?」

土御門「イギリス――正式名称『グレートブリテンおよび北アイルランド“連合”王国』で愛国心どうこうぶった神様批判は良くないにゃー」

土御門「『スコットランド出身のトニー・ブレア元首相が、スコットランド議会を復活させて実質上の一国二制度に戻した』とか言うのも良くないんだにゃー」

姫神「土御門君もいい加減にしないと。誰も得をしないと思う」

上条「よーしっ姫神さん!このバカどもを止めてくれないかなっ!」

青ピ「……くっくっく!女を盾にするなど、もののふにあるまじき失態!恥を知れぃっ!」

上条「どういうキャラ設定?RPGの中ボスにあるような『正々堂々がモットーなのに、何故か悪の帝国の幹部やってる将軍』ぽいリアクションだよな?」

土御門「あるある。ってかそういうキャラは『武人だけど悪人に利用されてる俺超カッコいい!』とか思ってそうだぜぃ」

姫神「それで途中で倒すんだけど。実は生きていて後半に仲間になるパターン」

吹寄「何の話をしているのよ、朝っぱらから。あとそこ勝手にプライバシーを侵害するのはやめなさい!」

青ピ「……気になりません?」

吹寄「送った子達が良い思いはしないでしょ」

土御門「お前も自重するぜぃ」

青ピ「お前まで敵に回るんかっ!?」

上条「……すまん。助かったよ」

吹寄「いくら不幸でも、貰ったものを粗末にしちゃダメだからね?」

上条「それは俺の責任じゃないと思うけど……頑張る!」



――校舎が見えるビルの屋上

リドヴィア「いけません、これはいけませんよオリアナ!」

オリアナ「多分また人間関係を誤解していると思うんだけど、何?」

オリアナ「っていうか私は望遠用の霊装使ってるんだけど、どうしてお嬢ちゃんは裸眼で会話内容が分かるの?」

リドヴィア「あの少女はきっと――」

リドヴィア「『朝一で学校に来て下駄箱にチョコ入れる筈だったのに』」

リドヴィア「『あれでもやっぱり衛生的によくないかな?と思い留まり、結局チョコは渡せずじまい』」

リドヴィア「『少年が既に他の子から貰っているのを知って出遅れたと悟り、フォローしてみるものの』」

リドヴィア「『ポジション的にそれ以上庇うと不自然なので、結局近寄れずにチョコは自宅へお持ち帰り――』」

リドヴィア「――するパターンではありませんか!」

オリアナ「見てきたかのように言うけど、それ全部貴女の妄想よね?」

オリアナ「ってかそこまで悩んでいるのが分かってるんだったら、もう介入しちゃった方が早くない?人助けでしょ?」

リドヴィア「……私達の本来の目的を忘れたので?」

オリアナ「チョコのデリバリーよね?予想よりもハードだけど」

リドヴィア「『救いを求めない者にも神の慈悲』ではないですか!?」

オリアナ「いやだからそれタダのタチの悪い善意の押しつけだって言ってるでしょ」

リドヴィア「仕方がありません、こうなったら……」

オリアナ「ねぇオリアナ?一体何が貴女をそこまでテンション振り切らせるの?」

オリアナ「神様は『救えるんだったら救っとけ』みたいな事は言ったかもだけど、見境なしにやっとけとまでは言ってないわよね?」

リドヴィア「……オリアナ」 ガッシャガッシャ

オリアナ「ど、どうしたのよ、飛び降り防止フェンスよじ登るのは危ないんだからね?お嬢ちゃん、良い子だからこっち来なさい?ね?」

リドヴィア「――とおっ!!!」 ダッ

オリアナ「リドヴィアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっ!?」

オリアナ「ちょっここビルの六階だし!?普通にダイブ出来る高さじゃ――」

リドヴィア「おっほほほほほほほほほほほーーーーーーっ!神の奇跡の前に出来ぬ事など何もぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

オリアナ「あぁ……シ○暗黒卿みたいに、ドップラー効果を起こしながら落下していくっ!?」

リドヴィア『へあっ!!!』 シュタッ

オリアナ「華麗に着地したっ!?」

リドヴィア『……神の加護があればこの程度……ッ!』 ダッ

オリアナ「リドヴィアーーーーーっ!?……あ、学校に正面から突入してい……」

リドヴィア『……』

オリアナ「警備員の男の子達も、あまりにも堂々としてるから声をかけられない……」

オリアナ「……」

オリアナ「あの子、リドヴィア、なのよね……?学園都市製のサイボーグじゃないの……?」

オリアナ「つーかどんな霊装使えば……?」


――学校 女子トイレ

吹寄「……はぁ」

吹寄(んー……まぁ、その作って来ちゃったんだけど。チョコ的なものを)

吹寄(どうせ三バカはあぶれるだろうから、まぁ少しでもエサを与えて大人しくさせて……って思ったんだけど)

吹寄(他の子から貰ってるんだったら、うん。わざわざくれてやる義理もないしねっ!)

吹寄「……」

吹寄「……はぁ」

声『恋に悩むいたいけな少女よ……その頭を上げるので……!』

吹寄「……?」

吹寄(なに?急に声が……?)

吹寄(誰か携帯で話して――って、そんな悪趣味な子は居ないだろうし)

声『私は貴女の側にいます……!さぁ、勇気を出して告解なさい……!』

吹寄「……?」

吹寄(何かイタイ人?その割には年上っぽい感じがするけど)

吹寄(関わり合いにならないのがいいわね。それじゃ教室に戻ろっと)

声『ってかそろそろキツくなってきたので、無視しないで欲しいのですが』

吹寄(無視?キツい?何言ってるのよ?)

声『さぁ、その扉を開いて私の手を取るのです……!』

吹寄 ガチャ

吹寄 キョロキョロ

声『さぁ早く!出来る限り巻きで!』

吹寄「誰も居ない……?けど声はするし」

声『そ、そろそろ限界ですので……!』

吹寄「音がするのは……窓の方?」

リドヴィア「あ、こんにちは。迷える子羊よ!」

吹寄「どこのスパイダーマ○っ!?窓枠に指の力だけで張り付いているなんて!?」

リドヴィア「さぁその手を差し伸べるのです!……具体的には私が限界ですので!」

吹寄「ちょ、ちょっと待ってね!」

……

リドヴィア「……ふう、助かりました。貴女に主のご加護があらん事を」

吹寄「いやあの、現在進行形で私が困ってる感じなんですけど」

吹寄「明らかに部外者っぽいシスターさん?が、女子トイレの窓から突貫してくるなんて、これはもうアンチスキルか、新しい都市伝説ですよね?」

リドヴィア「世の中には不思議なことなど何も。全ては神のお導きですので」

吹寄「えっと、つまりあなたの神様が『高校三階の女子トイレに窓から侵入しろ』って命令したんですか?そーですかー」

吹寄「今ちょっと保険の先生呼んでくるので、そのまま待ってて下さいね?」

リドヴィア「ご心配には及びませんが?」

吹寄「出来れば一秒でも早くこのキチガ――変わった人から逃げたいんですけど」

リドヴィア「何も心配はいりませんがっ!」 クワッ

吹寄「キャッ!?暴れな――」

リドヴィア「貴女の事は主がお守りになって下さ――」

オリアナ「はいちょっとごめんねー?」 ペチコーンッ!

リドヴィア「……おふっ……?」 パタッ

吹寄「ま、また窓から恥女がっ!?」

オリアナ「……一応助けたのにその反応は心外よねぇ。ま、悪いのはこっちだけど」

上条『どうした吹寄っ!?』

吹寄「上条当麻っ!?誰か先生を呼んできてくれ!」

オリアナ「――って、相変わらずタイミングだけは良いんだから。それじゃ、ね?お嬢ちゃん」

オリアナ「このキチガ――ローマ正教原理主義者が何を言ったのかは知らないけど、まぁ結局自分の道は自分で歩かないとね」

オリアナ「そうじゃなきゃ前には進まないんだから――よいしょっと!」

吹寄「え、あのっ!?」

上条「――吹寄っ!……って、あるぇ?」

吹寄「あ、あぁ上条当麻。どうしたんだ?」

上条「そりゃこっちの台詞だよ!なんか不審者が校内に入ったらしくてさ」

上条「土御門達と手分けして見回ってたらお前の声が聞こえたんだ」

吹寄「……そうか。私の声が、ね」

上条「大丈夫か?つーか何があった?個室に誰か隠れてんのか?」

吹寄「いや窓から出て行ったんだけど」

上条「三階だぞっ!?……あぁ能力者かよ。んなしょーもない事に能力の無駄使いやがって」

吹寄「そんな風には見えなかったが……その、ありがとう」

上条「あぁいーよ別に。いつも世話になってるしさ、俺らも非常時ぐらいは役に立たないとな」

吹寄「……その、ね?」

上条「うん?」

吹寄「お礼、って言うのも何なんだけど」

吹寄「実はチョコ、作ってきてあるのよ。今日」

上条「俺に?マジでっ!?」

吹寄「お、驚く所っ!?」

上条「いやだからいっつも迷惑かけてるから、嫌われてるもんだとばかり」

吹寄「うーん?どうだろうな」

上条「……そこは否定する所じゃないのっ!?」

吹寄「言われてみれば、『なんで私、こいつにチョコなんて作ってきたんだろ?』って疑問が」

吹寄「よくよく考えると持って帰った方が良いんじゃないかな、って今更ながらに思ったり?」

上条「そこをなんとか!?これからは迷惑かけないようにしますんで!」

吹寄「そこまで言うんだったら、上げなくもないけど。本当に?」

上条「当たり前だって!女の子からチョコ貰って嬉しくない男なんていねぇよ!」

吹寄「そ、そう?それじゃ、教室戻ったらね?」

上条「よっしゃ!」

吹寄「通販で資格取ったのは良かったんだけど、実験台になってくれて助かったわー」

上条「待とうか?出来れば今の話、詳しく頼む」


――校舎が見えるビルの屋上

リドヴィア「……」

オリアナ「……」

リドヴィア「解・決っ☆」(横ピース)

オリアナ「してねーぞ?あと、完全に本末転倒になってるし!」

オリアナ「そもそも受けた依頼をこなしてすらいないでしょーがっ!」

リドヴィア「オリアナ・トムソン」

オリアナ「……何よ」

リドヴィア「神はこう仰いました――」

オリアナ「あぁやめてやめて。おねーさんそういうの嫌いだから」

リドヴィア「――『相手が子羊でもしとめるときは全力で狩れ!』と」

オリアナ「誰?どこの神様言ったの?ローマ正教の神様はそこまでアグレッシブじゃないわよね?」

オリアナ「ってか神様、子羊を導くのかしとめるのか、どっちかに絞った方が良いんじゃ」

オリアナ「お嬢ちゃんの言い方だと、『誘導した後に全力で狩る』っていう、熟練のハンターみたいになってるわよ?」

リドヴィア「結果的に困難な想いですら、易々と伝えてしまった……主よ!あなたはなんと偉大なのでしょうかっ!」

オリアナ「……大変よねー、こんなキチガ×に信仰される方って。そりゃストレス溜まって海割ろうって気になるし」

オリアナ「なんかこう嫌気がさして、自分トコの子孫が頑張って作ってる塔とかぶち壊したくなる気も分かるわー」

オリアナ「私だったら頭かち割ってるだろうけど、自分の」

リドヴィア「さぁっ!こんな感じで次々と恋に悩める少女を導くのですが!私達の戦いはこれからなので!」

オリアナ「これだったら処刑塔で尋問されてた方が楽だったかも……」


――放課後

上条「掃除も終わったしー、そろそろ帰るか」

青ピ「か、カミやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」

上条「どうした?授業中にどんだけダメージ受けてんだよ」

青ピ「な、なんかボクの描く未来予定図と違ってましてんっ!」

上条「具体的には?」

青ピ「今頃ご両親にご挨拶してる筈が!」

上条「妄想にしても飛躍しすぎじゃねぇかな?つーか展開急すぎじゃんか」

青ピ「カミえもーん!ひみつ道具を出してよぉぉぉぉぉおおおおおぉっ!」

上条「どうにかしろっつわれてもなぁ」

土御門「『てれれてっれれー』」

土御門「『いまずぃんぶれぇかぁ』」

上条「関係なくね?取り敢えず俺の能力で落としとけ、みたいなのはどうかと思うんだ、うん」

土御門「『説明しよう!このひみつ道具があれば……えっと』」

上条「ボケるならボケるで最後まで考えてからにしなさい!なんか『幻想殺し』が滑ったみたいになるから!」

青ピ「……二人とも、この後どう?ナンパでもしません?」

土御門「どーせ街中はカップルカップル、バカップルで一杯ですたい。雰囲気で流されて付き合ってみたものの、ホワイトデーまで保つの?みたいな」

上条「あー……何となくで付き合ったは良いけど、そんに好きでもなかった、みたいなの?」

青ピ「カップルなんてみんな死ねばいいと思いますぅ」

上条「概ねその意見には賛同するけど、くれぐれも実行に移すのだけは止めろよ?全国数十万の俺らに迷惑がかかるからな?」

土御門「てな訳で今日はさっさと解散しといた方が良いと思うぜぃ」

土御門「(カミやんのgdgdに巻き込まれるのも骨が折れるし)」 ボソッ

上条「あれ?つーか土御門、確か妹さんと約束あるって言ってなかったっけ?」

土御門「カミやん!?それ禁句!」

青ピ「……つぅちぃみぃかぁぁぁぁどぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ……?」

土御門「――んじゃまた明日!」 タッ

青ピ「待んたかいボケえぇっ!今日という今日はお前らの関係聞き出したるわっ!」 タタッ

上条「お疲れー。あんま余所様に迷惑かけるなよー?」

姫神「……お疲れ」

上条「おー、姫神も」

姫神「チョコ。渡しそびれるかと思った」

上条「俺に?ありがとうな」

姫神「ツンデレとヤンデレ。どっちのバージョンが良い?」

上条「出来れば普通のでお願いします」

姫神「おかしい。2chリサーチでは鉄板の二択の筈なのに……!?」

上条「アンケート取った人達が無茶過ぎるわ!場所によるだろうけど」

姫神「ちなみに」

上条「うん?」

姫神「上条君が特殊?」

上条「……うんまぁ、その人らに比べればそうなるのかな?」

姫神「『上条君はロ×ではない』……メモメモ」

上条「お前ホントにどこでアンケート取ってきたのっ!?尋常な所じゃねぇよなぁ!?」


――校舎が見えるビルの屋上

リドヴィア「――さて、オリアナ。実は大変な事に気づいてしまいましたが!」

オリアナ「お嬢ちゃんのノーブラ修道服が迷える子羊を量産してるって事?シスター・オルソラにも同じ事は言いたいけど」

リドヴィア「彼女とは袂を分かちましたが、主の教えを伝える立場に変わりはなく」

オリアナ「あー……師弟みたいなもんなのかー。納得納得」

リドヴィア「それよりも私達の教導が、最初の少女の依頼を阻害する件につきまして」

オリアナ「分かってた事よねぇっ!?つーか私警告したと思うんだけど!」

オリアナ「……このまま無尽蔵にフラグを建築するよりはマシ、かしら?途中で気づいただけ良かったの?」

リドヴィア「ですがよく考えてご覧なさい、オリアナ=トムソン!」

オリアナ「その言葉をお嬢ちゃんに送りたいんだけど、お届け先を教えてくれないかな?」

リドヴィア「依頼が困難になればなる程、より私の信仰心が試されますので!」

オリアナ「その性癖もねぇ……プラスに働けばこの上なく頼もしいんだけど、どう考えても今は足引っ張ってるし」

オリアナ「つーかね。この依頼そもそもがあのお嬢ちゃんの代理配達な訳でしょ?」

リドヴィア「当然ですが?」

オリアナ「だから別にあの男の子が誰と付き合おうと、私達は届ければ任務達成だからね?」

リドヴィア「あぁ主よお許し下さい!我が友がここまで堕落してしまうなんて!」

オリアナ「なに?私間違った事言った?」

リドヴィア「確かに私達が請け負ったのはチョコレートで。手作りとはいえ、価値にすればそう大したものではないでしょうが」

オリアナ「ま、それは意見が分かれると思うけど。あの女の子、人気ありそうだけどねー」

リドヴィア「しかしこうも考えられませんか――『届けるのはチョコであっても、伝えるのは“想い”』だと!」

オリアナ「え!?ここで正論言うの!?またボケ倒すんじゃんないの!?」

リドヴィア「従って私達も出来る限り真摯に、しかもその想いがきちんと伝わるようにしなければいけませんので」

オリアナ「……その割にはライバルを召喚しまくってたような……?」

リドヴィア「障害があればある程燃える!ロミオとジュリエットをご存じで?」

オリアナ「あれってタダのDQNのお話よね?彼女のために家捨てて親友殺して親兄弟裏切るって」

リドヴィア「ですからっ!今ここでっ!」

オリアナ「聞いて?一回で良いから私の話を聞いてくれない?」

リドヴィア「……」

オリアナ「……なに?どったの?」

リドヴィア「……どうしましょう、この始末?」

オリアナ「だーかーらっ!あれだけテンションで突っ込むなっていつも言ってるでしょ!?」

オリアナ「『使徒十字』の時だってそうだし!アレだって事前にパンフ見てれば花火の打ち上げぐらい分かってたじゃない!?」

オリアナ「……いやもう、さっさと渡す他にどうしようもな――」

リドヴィア「オリアナ、あれを」

オリアナ「何?また女の子来たの?誘蛾灯みたいね」

リドヴィア「ではなく。あの方は」


――校門前

上条刀夜「おー、当麻。久しぶりー」

上条「父さん……だよね?」

刀夜「おいおいとぉまぁー、父さんなんて他にいないだろ?」

上条「学園都市にほいほい顔出すのはどうだろう?」

刀夜「仕事のついでだよ……はい、これ母さんから」

上条「……母さんからバレンタイン?いい歳なのに?」

刀夜「お前は父さん似だからなー、あんまモテないだろ?」

上条「似ているのは似ているけど、その歳で自覚ないのはどうかと思うぜ」

刀夜「でもってこれが乙姫ちゃんからも」

上条「あぁ従妹の、だよな」

刀夜「あと料理が入ったタッパー。肉じゃがとカレーとこんにゃくの酢味噌漬け」

上条「完全に昨日の献立が分かるんだけど、父さん」

刀夜「んー?なんか出張決まったのが昨日の夜でなー、取り敢えず『母さんの手料理なら喜ぶよ』って事で」

上条「嬉しいけどさ。ん?だったら何で従妹の子のバレンタインまであんの?」

刀夜「元々詩菜さんと一緒に作って、こっちへ送るつもりだったんっだって」

上条「あの子、色々な意味で入り込みすぎじゃねぇかな?外堀的なモノが埋められてる感じが。てかそっちは大丈夫?刃傷沙汰にはなってない?」

刀夜「えっと……?うんまぁ、それなりに上手くやってるかな?」

上条「少し考えたよね?何を考えたのか不安なんだけど」

刀夜「いや仲が良いのは本当だよ?ただ、そうじゃなくてもしかしたら――」

上条「な、なんだよ?」

刀夜「――当麻。お前弟と妹、どっちがいい?」

上条「両親のその質問は答えたくねぇな!?特に意味が分かってからは!」

刀夜「夏休みにはガールフレンドの一人でも作って帰って来なさい。詳しい話はそっちでしよう」

上条「……それがマジならお祝い事だけどなぁ。いや別に?家族が増えるのは大いに結構だけど」

刀夜「お前も早く――は、ダメか。せめて結婚出来る歳になるまでは。じゃないと産まれてくる子供が不幸になるからね」

上条「分かってるけど相手がいねぇよ」

刀夜「父さんも若い頃はロ×だペ×だ島×だと言われて苦労したさぁ」

上条「艦こ○?明らかに時系列間違ってるよ?」

刀夜「だが今では勝ち組!時代を先取りしたと言えるなっ!」

上条「惚気はいい。さっさと帰れ」

刀夜「はいはい、分かったよ。当麻は照れ屋なんだから――そうそう!」

上条「何?」

刀夜「母さんはいいかもだけど、乙姫ちゃんにはホワイトデー忘れないであげてな?」

上条「りょーかい。赤べこでいいかな?」

刀夜「いいんじゃないかな?この間もおみやげ渡したら、一瞬固まった後」

刀夜「『あ、あーうん!か、可愛いなーーっ!』って吉×の滑ったリアクション芸人みたいに喜んでくれたよ?」

上条「そっか。じゃ頑張って探してみるよ」


――近くの電柱の影

オリアナ「――それは『え?別にそんなに嬉しくはないんだけど、まぁまぁ喜んでるリアクションとしといた方がいいかなー?』って気を遣われただけだし!」

リドヴィア「ボケが所々スルーされていますので」

オリアナ「ビックリするぐらい似たもの親子……仲が良いのは結構だけどね」

リドヴィア「影で泣いている少女がたくさん居る予感が!」

オリアナ「はい、張り切らないのそこ。折角ここまで近づいたんだから、後はさっさと渡せばいいだけでしょ?」

オリアナ「ってか学園都市って電柱あったっけ?というか妙にレトロなのよね、この一帯」

リドヴィア「ライフラインが露出していれば、災害時の復旧がしやすいという判断では?」

オリアナ「ある種のポリスで地域格差、ってかやっつけにしか見えない気がするけど」

オリアナ「そうじゃなくて、ホラさっさと行きなさいな?これ以上事態ワケ分からない方向へ向かわせる前にねっ!」

リドヴィア「と言うより、オリアナ」

オリアナ「何よ」

リドヴィア「あの殿方に見覚えがあるのですが」

オリアナ「まぁた変な所で接点が。どっかの教導団関係?布教先で知り合った人?」

リドヴィア「憶えているでしょうか?ほら、急遽『使徒十字』へと変更した際の事を」

オリアナ「またエラい勢いで体当たりされたのはよく憶えてるけどね!」

リドヴィア「私が悩みを聞いた子羊――つまり“不幸すぎる息子を助けてやりたいと願う父親”が」

オリアナ「あー……言ってた、っけ?言ってたような?」

オリアナ「お嬢ちゃんの台詞は基本寝言かノイズだから、一々憶えてられないんだけど」

刀夜「おや?どこかで見た事があるような、チャーミングなお嬢さん達ですな」

オリアナ「親が親なら子も子よね……」

リドヴィア「イタリアでの事憶えてらっしゃいますか?」

刀夜「えぇたくさんのお土産を選んで頂いた事、感謝していますよ……まぁ息子には叱られてしまいましたが」

オリアナ「そりゃいつ暴走するか分かったもんじゃない霊装モドキ持って帰れば、ね」

刀夜「お二人は日本まで観光ですか?」

オリアナ「うーんまぁ、そんな所かしらね?」

リドヴィア「いえ、実はお宅の息子さんへお届け物がありまして」

刀夜「はい?」

オリアナ「リドヴィアーーーーーーーーーっ!?何で言うのっ!?言ったって意味ないでしょおぉっ!」

リドヴィア「いけません!いけませんよオリアナ!」

リドヴィア「異教徒とは言え、他人へ嘘を吐くなどあってはならない事なのですが!」

オリアナ「アンタはねっ!私は仕事なんだけど!守秘義務とかあるの、分かるっ!?」

刀夜「ま、まぁまぁお嬢さん達。何か都合が悪いのでしたら、私は聞かなかった事にしますし?」

刀夜「というか、息子?もしかして当麻が何かご迷惑でも?」

リドヴィア「私はローマ正教会で人々の悩みを聞く仕事をしておりますので」

刀夜「イタリアでもそうでしたな、確か」

リドヴィア「その仕事の関係上、とある悩める少女の依頼を受けました。ただそれだけの話ですので」

刀夜「もしかして――当麻宛の?バレンタイン的な?」

リドヴィア「ですから朝から渡す機会を伺っているので」

オルソラ「(嘘……じゃないけど、『聞いた相手が確実に誤解する表現』ってのは、嘘とどう違うのかしらね?さてさて)」

刀夜「そうですかぁ……そっかぁ、当麻に。良かった……」

リドヴィア「良かった、とは?」

刀夜「地元じゃ仲の良い女の子なんて、それこそ親戚の子ぐらいしか居ませんでした」

刀夜「当麻が親元を離れてやっていけるのか、最初は心配で心配で、いつ連れ戻そうか夫婦で話し合っていたぐらいなのですが……」

刀夜「それが今や、人様からも好かれるなんて……!」

リドヴィア「……まっすぐに育ったのは、ご両親の教育の賜物かと」

刀夜「そう言って頂けると多少は……ですが、これは神様に感謝しなくてはいけませんな」

リドヴィア「……!」

オリアナ「あ、マズっ!?」

刀夜「そういう事でしたら、今すぐ当麻に連絡入れますので!まだそんなに遠くには行ってないでしょうし!」 ピッ

リドヴィア「……」

オリアナ「――って、暴走すると思ったのに。意外と平気ね?アッパーしすぎでイッちゃったの?」

リドヴィア「……あぁオリアナ!何と言う事でしょうか!私達はずっと勘違いをしてきたのですのでっ!」

オリアナ「うん、知ってた。ってか多分それ、気づいてないのリドヴィアちゃんだけだと思うよ?」

リドヴィア「これはきっと――“運・命(デスティニー)”なのですが!!!」

オリアナ「そこはイタリア語で良くない?」



――10分後 学校近くの公園

上条「――とうさ、ん?あれ?」

オリアナ「どもー」 ヒラヒラ

上条「オリアナ?イギリスぶりだけど、何?父さんと知り合いだったの?」

上条「それともアレかな?今すぐ母さんにチクっちゃった方が良い展開なのかな?」

刀夜「早まるな当麻!きっとそれは取引先の頭取が倍返しで不渡りだ!」

オリアナ「……似てるのね、やっぱり」

リドヴィア「初めまして。上条当麻さん」

上条「あぁはい、どうも?」

オリアナ「お嬢ちゃんは『使徒十字』の時のおねーさんの相方ね」

刀夜「お前と知り合いだったなんて、父さん驚いたぞー?どこで知り合ったんだ、このこのっ!」

上条「そりゃ大覇星祭の時――」

オリアナ「――に!落とし物を一緒に捜してくれたのよね?」

上条「……お陰で競技は殆ど出られなかったけどなっ!」

刀夜「いやいや当麻。人助けはしておくもんだよ?悪意は確実に帰って来るけど、善意は時々お友達を連れてくるからね?」

上条「ヤな例えだな!真理ではあるけど!」

リドヴィア「それで今日の用件なのですが――オリアナ?」

オリアナ「え!?ここまで来て私に任せるのっ!?」

リドヴィア「その……ちょっと」

オリアナ「……何よ。今度はどんだけしょーもない理由があるって言うの?」

リドヴィア「と、殿方へこういう贈り物をするのは、よくよく考えたら初めて、ですので……」

オリアナ「あぁもう面倒臭いっ!そのリアクションも今更だし!つーか引き受ける時に気づくしねっ!」

リドヴィア「では、はりきってどうぞ」

オリアナ「やればいいんでしょ、やればっ!……うわなんか緊張する……!」

上条「……何やってんの?ネタ見せかなんか?」

刀夜「おいおい当麻。こういう時ね、男は黙って待つのがポリシーだよ」

上条「それだったら世の中にツッコミ役は全員無職になるけど……」

オリアナ「えぇっと、その、ね?これ、受け取って貰えない、かな?」

上条「また可愛らしい包み紙……あぁ、うんありがとう?」

上条「……?」

上条「ってお前からかっ!?」

オリアナ「いや違――」

リドヴィア「――これは、ある少女の話なのですが!!!」

オリアナ「なに?なんでまた急にプラズマフィール○展開してんのよ!?」

上条・刀夜「?」

リドヴィア「少女は言いました――『ずっと募っていた想いを、ここできちんと打ち明けたい』と!」

オリアナ「いや、言ってたけどねー?」

リドヴィア「中を開けてご覧下さい?」

上条「カード……告白かっ!?」

リドヴィア「どうです?如何思われましたか?」

上条「いや急じゃないか!?……いやいやっ!嫌いとか、そういうんじゃないけども!」

オリアナ(あ、結構脈はあるみたいね。良かったー、散々引っ張ってダメでしたーってのは、流石にちょっと悪いし)

上条「急……うん、そうだな。何か、うん、突然すぎて、ちょっと戸惑ってる、的な?」

オリアナ(まぁマジ告白されて、早々オッケー出すのは前から好きだった証拠みたいなモノだし?)

オリアナ(そういった意味であのお嬢ちゃんとは両思いだったってワケ――)

オリアナ「……?」

オリアナ「ちょ、ちょっとリドヴィア?」

リドヴィア「待って下さい。今大事な話をしていますので」

オリアナ「そうじゃなくて!その、メッセージカードさ?」

オリアナ「差出人、って書いてあっ――」

リドヴィア「――上条当麻さん、これは私の親友の話なのですが!」

リドヴィア「その子はとても慎ましい修道女なのですが、仕事の関係上どうしてもある程度人目を引かねばなりませんので」

刀夜「分かります分かります。広告も今や企業の命運を左右しかねますからね」

リドヴィア「……えぇ、本来とても女性らしい方なのですが、その、仕方がなしに恥女的な格好を」

オリアナ「誰が恥女よ!?恥女じゃないけどねっ!……いやいや」

リドヴィア「先日の大覇星祭の時も、貴男に乳房を見られたとか、非常に病んでおりまして」

刀夜「……当麻?」

上条「見てないし!つーかテンパっててそんな余裕ねーし!」

オリアナ「あれ?何か話の流れが……」

リドヴィア「――さぁっ!以上を踏まえて、是非お返事を!!!」

上条「……あー、うん。ビックリしたのはビックリしたけど、まぁまぁ?」

上条「でもなんか、それ以上に嬉しかった、って言うか、うん」

オリアナ「何で私に言うの?――って、これもしかして勘違――」

上条「俺で良かったら、付き合って貰えないかな?」

オリアナ「違うって!?いやだからそれ完全に間違って――」

リドヴィア「暫しお待ちを。少し混乱しているようですので」

オリアナ「だか――」

リドヴィア「……オリアナ。実は私は貴女を心配していたのですよ?」

オリアナ「何よ急に!?だからって、こんなくっつけ方しなくっても!」

リドヴィア「どう考えても恥女丸出しの格好なのに、浮いた噂の人も聞かず。あぁこれはもしかして――」

リドヴィア「『口だけの丘恥女では?』と!」

オリアナ「使い方には間違ってないけど、親友相手に恥女連呼するのはどうかな?」

オリアナ「多分『丘サーファー』を検索したと思うんだけど、出来れば『親友』でもググってくれない?」

リドヴィア「なので私も、少年のような荒削りではありますが、志の真っ直ぐなお相手を、とは考えていたので」

オリアナ「心配してくれるのは嬉しいけど、それはこれとは話が別じゃない?」

リドヴィア「ではお嫌いなので?不満があると?」

オリアナ「そりゃ……あれ?」

オリアナ「性格は好きだし、外見もそこそこ」

オリアナ「年下の方が、何となく好みだってのも条件満たしてるし……?」

リドヴィア「……オリアナ、そろそろ」

オリアナ「ん?あ、ごめんまだちょっと悩んでる」

リドヴィア「そうではなく。貴女の生き方についてですよ」

オリアナ「リドヴィア?」

リドヴィア「貴女は変人と呼ばれ、身内からも胡乱な目で見られる私に良くしてくれましたが」

リドヴィア「そして魔術名に恥じぬ、多くの方を救ってきましたので」

オリアナ「……何よ、急に」

リドヴィア「けれど時々心配にもなるのですが。私は神にお仕えする身ですので、生涯を捧げる事に悔いはありません」

リドヴィア「ですが貴女は――そろそろ、ご自分の幸せを求めても良いのではないかと」

オリアナ「……ちょっと!そんな、そんな大切な事っ!勝手に!」

リドヴィア「勿論、私は貴女との仕事を続けたいのですが。どちらか片方だけと言う訳でもないので」

オリアナ「……うん」

上条「……どした?」

リドヴィア「……いえ仕事の件に関して、少し」

オリアナ「……嘘吐き」

リドヴィア「親友のためであれば、別に地獄など怖くもなく」

オリアナ「……分かったわよ、もうっ!」

上条「うん?」

オリアナ「えっと、その、おねーさんこんな格好しているけど、ね?」

オリアナ「その、付き合った人とか居なくて、だから!色々迷惑かけちゃうかも知れないけど!」

オリアナ「……私と」

上条「こっちも同じだし?それは、迷惑なんかじゃないよ」

上条「もしもどっちかが何かヘマしても、それはフォローし合えば良いだけだから」

上条「それが“付き合う”って事なんだと思う、はい」

オリアナ「……宜しくね」

上条「こちらこそ!」

リドヴィア「神はお二人を祝福されるでしょう。願わくは長いお付き合いにならん事を……」

刀夜「……母さん、当麻はいつ間にか立派になって!動画撮ったからねっ!」

上条「自制しろよっ!?なんで母親に告白のシーン見せる必要があるっ!?」

リドヴィア「――こほん!上手くまとまった所で、これは提案なのですが」

リドヴィア「――今日良き日の良縁に、私達が立ち会ったのもまた某かのご縁!つきましては是非!」

リドヴィア「ローマ正教でご成婚されては如何でしょうか?」


−完−

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