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Clock(trial)

レッサー「『転生した先でのパンツはどうなっているのか?』」

 
――オービット・ポータル芸能警備会社 事務所

上条「――ちわーす。あけましておめでとうございまーす」

闇咲「あぁ、今年もよろしく頼む」

上条「葬式かな?」

闇咲「普通に失礼だな」

上条「思ったらその私服なんとかしやがれ。お前と姫神一緒に歩いてみろ、『なんだ俺死ぬじゃんお迎え来たじゃん』って騒動になるわ」

闇咲「だからこれは簡易化された霊装の一種であってだ。逆にアロハシャツ着ている魔術師がいるか?」

上条「隣に住んでますけど。さっきまで一緒にいて『もっとアイガモにグイグイ来た方がよかったんだにゃー』って反省してましたよ?」

マネージャー「お疲れさまです上条さん。先週のアイガモ農法番組、微妙に評判良かったですよ」

上条「オッサン率が高くねこの部屋?アイドル事務所であるまじきスキャンダル」

マネージャー 「アイドルの曲を作るのも歌詞を作るのもプロモーションするのも全部オッサン率が高いです」

マネージャー「そして消費・購買層も結局オッサンですので……」

上条「アイドル部分以外オッサンだけか。ウロボロスの円環の如くオッサンがサイクルしてんだろ」

マネージャー「そして大抵アイドルは実業家かお笑い芸人に持っていかれるので、おはようからおやすみまでオッサンで始まりオッサンで完結すると言えるかと」

上条「まぁそうだけど!堕とすオッサンの格でアイドルのレベルが問われるところだけどもだ!」

マネージャー「ちなみに当社は職場恋愛は禁止ですので。サンシャインさんもどうかご了承ください」

上条「あ、うん分かってる。ARISAにとっても大事な時期だからな。変なスキャンダル起こさないようにしないと」

マネージャー「……分かってますか?絶対にダメですからね?絶対にですよ?」

上条「任せてくれ!俺の知ってる限りでは一番親しい異性は俺ぐらいだし、何が起きてもアイドル生命は守ってみせるぜ……ッ!!!」

マネージャー「違う、そうじゃないです」

闇咲「君の正気には戦慄を覚える」

上条「常識的な話だろ!?自分のとこの同僚の足引っ張るアホはいねぇよ!?」

マネージャー「実に……実にお手本的な回答ではあるんですが、その、ARISAさんも恋愛の一つでもした方が垢抜けると思うんですよ?」

上条「あれ?『ファンが恋人です☆』みたいなスローガンじゃなかったっけ?」

マネージャー「いいですか上条さん?人は刺されば死にますが、刺した側が良心の呵責で死ぬケースはないんですよ?」

上条「何言ってるのかホントに分からんわ」

闇咲「本音と建前は別だということだな」

マネージャー「サンシャインさんの今年の抱負はもう少し機微を知ろうですかね。ともあれこちらが事務所有志一堂からのお年玉です」

上条「あざっす!」

マネージャー「ARISのCDと円盤と写真集の詰め合わせです。あ、サイン付きで」

上条「欲し――いややっぱいらんわ!?一瞬『転売?』って単語が頭ん中一杯になったが!」

闇咲「献本としてもらえるのでは?」

上条「CDと円盤はまぁともかくとして……お前、男友達が自分の写真集買ってたらどうと思う?」

闇咲「ゲ○だと思う」

上条「目的語がバグってんな。あれ闇咲ってそんなにアホだったっけ?レッサーなの?レッサーに汚染されるとそうなるの?」

マネージャー「いや別にいいんじゃないですかね?ARISAさんを騙す際には『みんなやってますから!アイドルとしてのお仕事ですから!』と言っていますし」

上条「もしかしてオービットって俺の敵か?なんだったら俺と一緒にどっか移籍する覚悟があんだけど」

上条「てかこの事務所もおかしいわ。どこの有志が自分のところのグッズをバイトに配るんだよ」

マネージャー「『――第一問、ARISAの最新の曲名はなに?』」

上条「……『祝福』?」
(※yoasob○)

マネージャー「『第二問、ARISAのネットラジオのタイトルは?』」

上条「『ほめられてのびるかもしれないらじお』?」

マネージャー「サービス問題です。『第三問、ARISAの写真集の最新版で一番気に入ったシーンは?』」

上条「ひ、ヒントください!」

マネージャー「ロケ地はオーストリアです」

上条「グランドキャニオンで風になったARISAの勇士……ッ!」

マネージャー「目出度く全問不正解ですね。あとグランドキャニオンはアメリカですので、多分オーストラリアと間違ったんでしょうが、どっちみち不正解です」

闇咲「オーストラリアの何と間違ったのか逆に興味があるな」

マネージャー「何となくですがエアーズロックかと」

上条「――ふっ、アメリカは行ったがオーストラリアはまだ行ってなかったからな!」

マネージャー「どっちみち不正解です。ですのでその、もう少しだけでいいからARISAさんに興味を持って頂けると……モチベーションが上がると言いますか」

上条「あぁまぁ写真集は封印すっけどそれ以外はありがたく……ん?なんだ?コピー用紙が挟まって」

メモ【逃げて】

上条「――アリサをどこへやった!?何をさせられてるんだっ!?」

マネージャー「いえ、特に今日は何も。タチの悪いイタズラでしょうかね」

闇咲「――貸せ。魔力の痕跡があれば跡を追えるかもしれない」

マネージャー「はいそこ伝奇物語に突入しないでください。今の時間だったら塾ですよ。あとARISAさんには魔力はない……ん、ですよね?」

上条「あぁそれ俺も気になってた。どうなん?」

闇咲「人だな」

マネージャー「何ともまぁ灰色の回答ありがとうございます。まぁ、頼もしいお友達もできましたし自分が心配するような事でもないのですが」

上条「微妙に三者面談になってるようななってないような……てか、俺はともかくとして闇咲はなんでここに?今から収録が?」

闇咲「少し相談をな」

上条「おっ、なんだよ水臭いな。俺に言ってくれれば愚痴ぐらい聞くのに」

マネージャー「聞いたところで……あぁいえ上条さんの視点も伺った方がいいかも知れません」

上条「任せろ!性的な問題以外だった何でも!」

闇咲「――ふたな×とケモナーとアメコミの質問は来るのに、どうして私の出番ないんだろうな、と」

上条「明らかに俺には余る内容だったわー。残念ながら俺にはどうしようもないわー」

闇咲「まぁ確かに怪談士という自称作家が大量発生して訳が分からなくなってきているが、こう少しは出番が、なっ?」

上条「犬神やっただろ。『これ大丈夫か?BANされないか?』って結構ビビりながらやったのに」

闇咲「もっと広範囲に手を広げた方がいいのか?フェニキア人に崇められていた頃のベルゼブブの話するとか」

上条「担当違くね?お前は地元密着っていうか、地味な感じだったろ」

闇咲「白山信仰と山岳信仰の話とか、密教の話をしても困るだけだからな」

上条「担当は大事だよな。闇咲に『聖杯』とかの話をされても、その、困るっていうか逆にピッタリっていうか」

闇咲「鐘状ビーカー文化群は……専門外だ」

上条「……一応、うん一応念のために聞いておくけど、年末年始どうしてた?ちゃんと家族サービスしてた?」

闇咲「いや、山に籠もって荒行をしていたが?」

上条「そういうとこだぞ?もっと人生に幅を持たせろよ!誰かを助ける前に自分とこの家庭を助けろ!」

闇咲「魔術師としてコンディション維持は死活問題なのだが」

マネージャー「元民間軍事会社も同じく」

上条「カタギのふりぐらいはしろ、なっ?例えそれが見せかけだけであってもだ」

闇咲「まぁ私は挨拶に来ただけだが。君はいいのか?」

上条「俺も挨拶だけ、っていいのかって何が?」

闇咲「『明け色の』の魔術師が路上で署名活動をしていた」

上条『新たなる』、な?多分本人も忘れてっけど、あのアホの所属はテロ組織――」

上条「……」

上条「署名?なんで?つーか何の?まさかと思うけど『フランス人は息するの禁止!』とか?」

闇咲「話しかけたら厄介事になりそうだったので、般若心経を唱えながらその場を立ち去った」

上条「なんて正しい対応!次からは俺もそうするわ!」

マネージャー「あの……レッサーちゃんさんの対応係は上条さんですので、比較的速やかに回収して頂けると」

上条「誰がいつ地雷撤去班に就任したんたゴラアアッ!?」

マネージャー「えぇと上条さんの午後のご予定の中に、『転生した先でのパンツはどうなっているのか?』と。そちらの講師役の方が」

上条「もっと人選なかったのか?パンツの歴史について深く語れるヤツってあぁゴメン確かにレッサーへ案件だぜ!これ以上ないってぐらいな!」

闇咲「車出すからまぁ……諦めようか」

上条「闇咲……?闇咲だったらパンツの歴史に詳しいはず……!?」

闇咲「どんな目で私を見てる?」



――学園都市 路上

上条「そんな訳で今日もノコノコやってきたのだった……!」

闇咲「いつものことだな。先程はこの辺りで……あぁ、いたな」

レッサー『――署名お願いしまーす!恵まれない子のためにもどうかお願いしまーす!』

上条「……真に遺憾ながらいたな」

闇咲「署名を求めながらビラ配りか」

上条「これでもし募金箱持って『恵まれない子のために募金お願いしまーす!(※ただし渡すとはいってない)』だったら、即ラリアットからのそげぶ案件なんだが……」

闇咲「強引なやり方はしていないし、そもそも現金の授受は見られないな。問題はビラの中身次第だろうな」

上条「実は本当に困ってる人がいるとか?」

闇咲「可能性はあるだろうな」

レッサー『あ、あのっ!これ読んでくださいっ!それでもし良かったらこちらの署名にご協力を!』

通行人A『……』 ビリビリッ

レッサー『なんてことを!?ここまで書いてもらった署名が……!?』

上条「――悪い、ちょっと用事思い出したから行ってくるわ」

闇咲「気持ちは分からないでもないが、まぁ待て。あそこにいるのは警察、じゃなかった自警団か?」

白井『――「風紀委員」ですの!』

上条「自己主張が強めだが、まぁそうだな。自警団、うんまぁ」

初春『どーもー、お疲れさまですー。ちょっとお話聞かせてもらってもー?』

レッサー『な、なんですかっあなた達!?私が何か法に触れることでも!?』

初春『っていう通報はないんですけどねー。ただこう珍しいことをされていると思いまして』

レッサー『私はただ恵まれない子のために署名を募っているだけですよ!天に誓ってイギリスに誓って疚しい所なんてありませんとも!』

初春『へーそうなんですか?では一枚頂いても?』

レッサー『どうぞどうぞ!あ、もし良かったら署名もカマンッです!』

初春『そうです……ね?』

レッサー『どうです!?完璧なまでに他人のためでしょう!?』

初春『あぁまぁそうっちゃそうですけども……どうしましょうねこれ。白井さん?さっきから黙ってますけど、何か言ってくださいよ?』

白井『――帰りましょう、初春。わたくし達はここで何も見なかった、いいですわね?』

初春『え!?これ放置しちゃうんですか!?』

白井『わたくしは署名致しましたわよ?あなたも如何?』

初春『普通に嫌ですけど?』

白井『――精進なさい。それで救われる誰かがいる限りは、ですわ』

レッサー『ありがとうございますありがとうございますっ!』

闇咲「ふむ……自警団の許可は得られるぐらいに穏当だと。なら放置でも――と、どうした?」

上条「――騙されるな闇咲!敵の能力者の攻撃を受けている……ッ!」

闇咲「本当にどうした?」

上条「白井さんとレッサーが意気投合するだなんてありえない!きっとこれは俺へ対する攻撃だ!」

闇咲「被害妄想がやや強めだな。疲れているんだろう」

上条「いいから行くぞ!どうせみんな俺の事ネタにして笑ってるんだ!」

闇咲「……まぁ、それで気が済むんだったら。場合によっては連れて行くが」

上条「――テメコラ何やってんだアァンッ!?」

レッサー「第一声がヤカラ!?せめて新年のご挨拶からしましょうよ!?」

上条「どうせネタに走ってんのは分かってんだよ!キリキリ証拠を出せ!」

闇咲「魔女裁判だな」

レッサー「そんな心外ですよ!?私はただ良かれと思ってこの活動をしているだけでありまして!」

上条「へー、どんな風に?」

レッサー「可哀想な子を!不憫な子をこれ以上作らないためにも!悲劇を回避できるように署名を集って世の中を変えようっていう行動です!」

レッサー「一銭たりとも!一ペンスたりとも私の懐には入っていませんよ!どっかの少女を食い物にしてる社団法人とは違います!」

上条「その話はセンシティブだからすんなって言われたよね?なんで言うの?ねぇなんで?」

レッサー「一ヶ国の元総理が闇の組織()と癒着している疑惑()はバンバン流すのに、たかが一介の社団法人はシャットアウトとかジャーナリストすげーっすねwwwwwwww」

上条「――闇咲さん!?闇咲さんはどう思いますかねっ!?」

闇咲「よくある話だろう。NPOや社団法人の名誉職は特定の業種からの天下り先だからな」

上条「そっちじゃねぇよ!露骨に話題変えようとしてるんだから汲めよ!俺の意図を!」

レッサー「レプリカン○のアンドロイドはどうしてあんなにエ×い衣装を着ているんでしょうか?」

上条「癖(へき)だからだよ。初見の相手を引かせるためにやってんだよ、いや多分間違いなく」

レッサー「っていう訳でパンツの話はもうちょっと待っててください!用紙があと少しで埋まるんでキリのいいところまで!」

上条「あぁだったら俺が署名するよ。どれかして――」 ピッ

レッサー「あ、ちょっと」


【緊急!阿部○さん、『異世界のんびり農○』・降板請求の署名についてのお願い!】


上条「……」

レッサー「あーっと……」

上条「……なんで?俺の中にあるのはただ『なんで』だよ」

上条「なんで阿部○さん?しかも別の局っていうかあぁまぁ面倒臭ぇな今期のアニメだよ!」

レッサー「あー、ではでは純を射ってご説明致しますと」

上条「『順を追う』な?高田純○さんでもスナイプすんのか」

レッサー「順を追ってご説明致しますと!阿部○さんってご存じですか?中堅の上のぐらいポジにいらっしゃる声優の方なんですが」

上条「まぁ知ってるわ!一身上の都合により世界で一番似たモノマネできるわ!」

レッサー「ちなみに代表作は『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらし○』です」

上条「それ代表作にしてねぇ。あぁいや多分であってそんな気がするだけだが!」

レッサー「その阿部○さんなんですが、今期のアニメで『異世界のんびり農○』の主人公をされることになりましてね」

上条「良い事じゃねぇか。立派なことだよ」

レッサー「えぇまぁ私も好きな声優さんですから――が、しかし!ここで問題が発生しました!声優さんとキャラクターのイメージが合致しないのです!」

上条「そう、か?俺あの原作読んだことあっけど、村長さんの一般人っぽいところと阿○さんの自然体な演技ってマッチしてると思うが?」

レッサー「そこは否定しませんし私も同意なんですが……ただ、阿部○さんの二つ名ってご存じですか?」

上条「二つ名?そんなんあったんだ」

レッサー「その名も――『日本一の童×(の、演技が上手い)!』です……ッ!!!」

上条「なぁ、()で区切る必要あるか?ないよな?そこも含めて読めばいいだけの話だよな?」

レッサー「おっと失礼!ですがこれは大事なことなのですよ!『阿部○さんの演じるキャラ=童×』ってイメージが定着しているんですからね!」

上条「反論したいことが腐るほどあるが、それで?」

レッサー「今回の『異世界のんびり農○』の主人公はハーレム王――そんなキャラを演じてしまったら『日本一の童×(の、演技が上手い)』って勲章がスポイルしてしまうじゃないですかっ!!!」

上条「お前英語で意味ボカそうたって効果無いからな?悪口言ってるのは確定してんだわ、悲しいことに」

レッサー「何を仰いますか!?これを放置していては他のDTキャラが『やだ……童×じゃない上条○んなんて上○さんじゃない!』って見限られるんですからねっ!?」

上条「そこに価値はねぇよ。ある種の呪われた装備がいつまで経っても外れねぇのと同じ感覚だよ。俺としては」

レッサー「これは彼らの可能性を守る戦いなのです!今ここで私が声を上げなければ、阿部○さんを含めた多くのDTキャラが!『お前ら非DTでしょ?』と白眼視されるんですからねっ!?」

上条「もういいわ、お前の言いたい事は理解した。その上で言うが――」

上条「――もう面倒臭いからかかって来いやゴラ!悪魔の子め!」

レッサー「おっ、言いましたね量産型主人公の分際で!パクリ主人公が結構多くて能力無効化なんてありふれてんですよ!」

上条「量産してねぇよ!むしろ被害者の方だわ!」

上条「てか何回も何回も言ってっけど!俺はイジってもいいから中の人はイジんなや!万が一でも迷惑かかってたらどうすんだよ!?」

レッサー「え、超オイシイじゃないですか?何言ってんですか」

上条「まぁそれは俺も思わなくもないが!」

初春「あの……どうしましょうか?」

白井「取り敢えず逮捕いたしましょうか。そちらの葬儀屋さんに異論は?」

闇咲「頭を冷やせるのだったらどこでも」



――風紀委員 詰め所

レッサー「――あぁいっ!っていう訳でしてね!本日は趣向を変えてブタバコからお送りしてる訳ですが!」

上条「お前のせいだよ。お前が長尺使って壮大なボケをしたがために俺まで巻き込まれたんだよ」

レッサー「でもこれで今期のノルマは果たしたと言えなくも?」

上条「チェンソーマ○も結構な勢いで燃え広がってるわ」

レッサー「なんでこう業界って大した仕事も出来ないくせに、プライドだけが天元突○したアフォばっかなんでしょうね」

上条「真面目にやってる人らはそういう連中に関わる時間も惜しんでっからだよ。誰も指摘してやんねぇからどこまでも勘違いしていくっていう負の連鎖」

初春「まー仲のいい同僚ぐらい゛たったら多少は苦言を呈するかもしれませんけど、それ以外だったら逆恨みされんのも嫌だし、基本放置ですよねぇ」

上条「俺は無実なんだ!犯人はこの女です!」

レッサー「けっけっけっけ……お頭ぁ、ここまで付き合ったんだから死刑台に上がるときまで一緒でさぁ……!」 ニチャアァッ

初春「そんな権限は私たちは持っていません。あと今事務所の方に連絡したんで、引き取りに来るまで待っててくださいな」

レッサー「本日のゲストは……えーとお名前何でしたっけ?西葛西さん?」

上条「悪意があるわ。新年早々イジリ方に悪意しかねぇわ」

初春「ちょっと何言ってるのか分からないですけど、次は我が身ですからね?絶頂期に大抵来ますから覚えておいてくださいよ?」

レッサー「――くっ!経験者は語る!」

上条「やめなさいよ。もうなんか幸せな家庭気づいてんだから」

レッサー「まぁいいっすわ。そんで今日は何で呼ばれたんでしたっけ?パンツの歴史?」

上条「正確には……あぁそれもパンツか。何か某先生がツイッターで『転生先が中世なのに現代パンツなんであんだよ』的な事を言ったらしくてな」

レッサー「宜しい!ならば受けて立ちましょう!本日は下着の世界史を!」

上条「だからなんでお前パンツ知識までカバーしてんの?好きなのパンツ?俺は……嫌いではないけど」

レッサー「私と上条さんじゃ意味合いが違いますな。まぁその服飾の歴史は色々ありましてね」

上条「ほう、色々ってのは?」

レッサー「簡単に言えば服飾を大まかにでも知っていると、相手の背景を知る事が出来ます。例えば着てる物一つとっても、大体どこのどちらさんですねぇ的な」

上条「騙したりはできないんだっけか」

レッサー「存在の根幹に関わりますからねぇ。相手を誤解させるために似たような何かを被せることをあっても、本質的な部分は変えようがないです」

レッサー「新しい仮面ライダ○に『ウルトラマ○!』と命名はできないって感じでしょうか」

初春「本当に何を言っているのか分からないです」

上条「大丈夫!この子はその場のノリで話すから適当に話合わせてやって!」

レッサー「それがあながち間違いじゃねーのも何かムカツきますけど……さておきまして。お二方、人生最初の下着ってどんなんだと思います?有史レベルでの最初」

上条「まぁ普通に考えれば……毛皮?動物からはぎ取って加工した感じの」

初春「文化的にはそうでしょうねぇ」

レッサー「私もそう思います。てゆうか一々下着と普段着の境なんてなかったでしょうからね」

上条「あぁまぁそういう時代もあるか」

レッサー「一応最古の下着”とされている”のは古代ギリシャの壁画に描かれてあったチュープトップ風ブラとショーパン風ショーツでしょうか」

初春「ダブルミーニングですけど」

上条「つーかあったじゃん下着。てことは下手すりゃ紀元前からあったのかー、へー」

レッサー「ただこれ、『マジで下着か?』って疑問符が付いていまして、現在の研究に寄れば確定はしていないそうです」

上条「なんでまた?」

レッサー「単純に途絶えたからです。この手の下着はついぞ20世紀になるまでは発明されていませんから」

初春「ローマ以前でしたら文明が単純に途絶えたんじゃないですか?結構建築物でありますし」

上条「知ってるのか初春さん!」

初春「そこそこ有名な逸話です。イタリアのローマなどの上下水道、原理が全く不明で修理できなかったんですよ」

レッサー「水道橋とかもそうですな。『これどうやって作った――あ、もしかして悪魔じゃね!?』って責任転嫁もされていましたし」
(※いや本当に)

上条「ネタかよ。あるんだから誰かが作ってんだろ」

レッサー「まぁ社会インフラはそうでしょうが、下着に関しては恐らく違うかと思われます。だってパンツもブラも形状だけならば布切って巻けばいいですからね」

レッサー「ローマの時に一般的、であるのならば後世にも伝わっておかしくないのに、それがなかったということは下着ではなかった、という説を私は推しています」

レッサー「現代人の視点からすれば、そのチュープ&ショーパンが現代下着として見えるのであり、実際には沐浴用の衣服ではないかなと。あくまでも個人の説ですが」

上条「現代にも通じるデザインなのに、なんで廃れたんだろう。つーかその後の下着ってなんだよ?」

レッサー「んー……?まぁ男女ともに『肌着』って感じですかねぇ。下着というよりか」

上条「肌着?」

レッサー「まぁ、文明レベルが低下したっていうのもありますし、生きるのに精一杯でわざわざお洒落なんかできなかった時代が長く続きましたので……」

レッサー「絵画なんかで男性がタイツっぽいズボン履いてるの見たことありません?あれが下着とズボンを兼ねていたりします」

レッサー「女性も似たようなもんで貫頭衣っぽいチュニックそのままだったり。てか『服を重ねる』って概念に乏しいだったようです」

上条「え、じゃあ寒くなったりしても?」

レッサー「それは流石に重ね着したりはしてたでしょうが、少なくともアンダー+アウターがベースの現代とは全く事情から何からまで違いますからね」

レッサー「ちなみにローマ帝国崩壊直前、公衆浴場を通した感染症が大流行したため、『フロに入る=危ない』という認識が広まり、17世紀頃まで浴場はまずなかったようです」

レッサー「なので当時の人類にとって、下着も肌着もなんなら一張羅も大差なかったようです」

初春「あー……まぁ現代でもジーパン直履きする外人女性さんっていますからね」
(※たまにいます。某女優さんが留学先で「良かったらこのジーパンあげるね!」と下着なし直履きジーパンをもらって戦慄した)

上条「それもう恐怖だよ」

レッサー「んでまぁ多少文明が改善されていきますと、女性は『ブライズ』っていうハーフパンツを裾で縛ったりしていました。所謂カボチャパンツに似ていなくはないです」

上条「てことは俺が異世界転生した場合、ラッキースケベで拝むのはそのタイプってことになるのか」

初春「平然と言うのも怖いですよ?」

レッサー「いや、それはまぁそうではあるんですが。現代のロリータファッションのカボチャパンツとは違い、ただの実用ですから」

レッサー「よってラインを膨らませることもなく、ただそこら辺の布を適当に穴空けて縛った的な感じであり、色気の欠片もないようなブツになっとるでしょうな」

初春「まぁ日本女性も長らくは腰巻きでしたからねぇ」

レッサー「んでこれが改善されるのが15世紀頃ですか。シュミーズが一般的になります」

上条「シュミーズ?」

レッサー「とはいっても現代のとはまるきりデザインも違いまして……あぁ例えるならば『無地のドレス一式』ですかね。体のラインにあったワンピースのような、何とも無骨な物です」

レッサー「その上に普通の衣服を重ね着する、いうのが流行りと言いますかセオリーになりました」

レッサー「この下着は庶民に長く使われ、あー舞台設定が19世紀の某小公女がとーちゃんの事業失敗で没落令嬢に落ちた際、その姿に剥かれるのは温情ではありません」
(※それ以上剥くのがなかった)

上条「まぁフィクションだから」

初春「あのお話って現実だったらどうなんですか?奴隷落ち一択ですか?」

レッサー「一般的には修道院行きなんですけど、舞台が宗教革命以後のイギリスでして、旧カトリック関係者の土地・財産を全部没収しています」

レッサー「なのでセーフティネットは機能せず、まぁ……悪くてストリートチルドレン、良くて国教会系で見習い修道女、でしょうか。セー○さんご本人は聡明な方なので、後者の可能性が高いかと」

上条「意外と人道的、か?売られると思った」

レッサー「一応、まぁ当時の公式な見解として『人間”””は”””売買しちゃダメ・だ・ゾ☆』って空気になっていました」
(※いつものアレ)

上条「マジかよコーカソイド。お前ら裁きの日に全員報いを受けろや」

レッサー「んでまぁ庶民の最底辺レベルはずーっとそんな感じだっんですが、15世紀ぐらいになると世紀の発明!コルセットが登場します!」

上条「コルセットって、骨組みみたいなもんだろ?あれも下着の一種なのか?」

レッサー「あーむしろ逆っすわ。コルセットって金属などで形を崩さないよう調えた、まぁ言ってみりゃビルの鉄骨みたいもんじゃないですか?」

初春「鉄骨……まぁ今も誰かさんはブラで頑張って盛ってる方もいますが」
(※もしかして;第三位)

レッサー「なので『人には見せられない下に着る衣装=下着』という概念がこの頃から根付き始めます。時代的にはゴシック後期〜ルネサンス初期辺りです」

レッサー「ちなみにこの時代のコルセットは上半身補正+下半身ふんわりっていう強化外骨格的なアレです」

上条「すいません先生。コルセットってウエスト絞るのに使うだけじゃないんですか?」

レッサー「この時代はちゃいますな。上条さんの言った目的もありますが、スカート整形って目的も兼ねていました。なので重いわ嵩張るわ」

レッサー「よってこの後200年ぐらい経ったロココ時代になりますと、上半身はコルセット、下半身はパニエっていう骨組みを入れ始めました」

レッサー「この頃になると『重い』ってんで、骨やクジラの髭などが使われ始め、多くのクジラさんが婦女子のパンツに転じていったのです……!」
(※実話です)

上条「本当にクジラさんに謝れや」

レッサー「で、これが19世紀に突入しますとコルセットもパニエも姿を消し、ブラシエールというブラジャーが登場します」

レッサー「形状は今のブラと同じで素材も柔らかい布製で、今つけても『ちょっと野暮ったいけど普通の下着だな』ぐらいのレベルですかね」

初春「下はどうなんですか?というか劇的に変った理由は?」

レッサー「下はプライズに逆戻りです。実用的かつ簡易に作れるからです――で、まぁなんでそんな下着になったかっちゅーと恐らくナポレオン戦争じゃないでしょうか」

レッサー「どっかのフロッグイーター共和国が1803年から10年以上戦争やりやがっていましたし。まぁ……なんつーか”ここ”がある種の転換期なんですな」

上条「転換期?」

レッサー「はいな。というのもそれまでの戦争は主に騎士、もしくは職業軍人が担っていました。事情は色々ありまして、練度の問題や訓練にかかる費用、あとは財政とかも関連し」

レッサー「プロの仕事はプロとして任せるのが一般的であり、一般国民を兵士に導入するってーのはあまり例がなかったんです」
(※ぶっちゃけ足手まといだから。肉盾ぐらいにはなりましたが、それをすると戦争後に農民が減って生産力がガタ落ちになる)

レッサー「しかしとある国でやりやがったフランス革命、あの内戦とその後の粛清の嵐で騎士階級と貴族階級、なんだったら兵士も含めて殺し殺されまくったんですよ」

レッサー「そしてフランス革命で周囲の国からは『なにやってんじゃボケ!』と戦争の口実を与えてヘイトを大人買いしてたので、ナポレオンが国民を募集して戦争するって形にしました」

レッサー「『悪しき王制を打倒()』として結果的には『国民が戦争へ参加()』に繋がったんですから、なにやってんだバーカバーカバーカって感じですよね」

初春「フランスへ対する毒が強すぎませんか?」

上条「フランスに関しては脳波が乱れるらしくて。君の職場の上司さんと一緒っていうか」

レッサー「んでまぁ他の国も『だったらこっちも国民導入してやらぁ!』と、同じように国民の命をベットして戦いました。まぁ結果としてはナポレオンが当初は勝ったんですが」

レッサー「しかし問題になったのは兵士を取られた側ですな。特に農村部は人手不足に苦しみ、生産力が落ちる落ちる」

レッサー「よって『コルセット?パニエ?ウルセェこっちは男の分まで働かなきゃいけねーんだよボケ!』、と生産力を高める方向へと舵を切ったのだと思われます」

上条「そんなしょーもない理由か……!」

初春「経緯はアレですけど、ブラシエールのデザインって結構可愛いじゃないですか。このまま現代になったんですよね?」

レッサー「ちゃいますわ。実はまたすぐに復活したんですよコルセットとパニエ。しかも今度は『スリーブパッド』って袖飾りが大流行しましてね」

レッサー「イメージとしちゃ、白雪姫の腕部分?『ファンネ○でも搭載してんのか』ってぐらいに膨らんでますでしょ?」

初春「時代的にはナポレオンが亡くなって落ち着いた、という所でしょうかね」

レッサー「まぁその理解で合っていると思います。戦争時には人を殺す技術革新以外は中々出来ないですからね」

レッサー「――では!ナポレオンが残した功罪についてですが!」

上条「先生、話が思いっきり脱線しています。別の日にしろや」

レッサー「いや結構面白いんですよ?あのアホがカマしてくれたお陰で、現代のナショナリズムの萌芽らしきものを生んだ張本人ですし」

初春「個人的にはちょっと聞きたいですね」

レッサー「んではお言葉に甘えて数行で説明しますと、今までは戦争と言っても職業軍人や騎士階級が死ぬだけで”それほど”は庶民に関係ない話だったんですよ」

レッサー「しかしナッポーが動員することにより他国もそれに習い徴兵に近い形で募集、戦場で殺す殺されを繰り返してため、お互いにヘイトが溜まる溜まる」

レッサー「隣国の脅威やら自国の同胞の命やら、様々なものが入り乱れて『国を守らなきゃ!』って思想が一般人にも強く浸透していったって話ですな」

レッサー「また国民が命をかけて戦ったため、人々の間に『主権って俺らじゃね?』と政治参画の気運が高まったのもこの時代です」

上条「良かったんだか悪かったんだか分からないよな」

レッサー「でまぁそんなこんなしている間にも下着の進化は続き、ついにコルセットにカップのようなものがつけられることになります。所謂谷間的なアレです」

レッサー「そして同時にパニエは廃れ、『バッスル』ってスカートが流行り始めます」

レッサー「イメージとしましては、アメリカ開拓時代の女性の格好でしょうか。ダチョウのように後ろが膨らんだ形になる感じのヤツです」

レッサー「『大平原の小さな胸』のご婦人方や女医さんが登場するアレなんかが代表例ですかね」

上条「『大草原の小さな○』な?それだとビリビリになんぞ?」

初春「問題発言ですね。大量に草(w)が生えるって意味では合っているような……」

レッサー「そして時代は変りまして19世紀末から20世紀初頭です。コルセットが全盛期になりまして、ほぼ現代の形になりました」

レッサー「胸・腰・お尻半分ぐらいまでを被う感じのヤツでかつおっぱ○を支える形に。大分動きやすくなりましたね」

上条「上はいいだろうが、下がダチョウじゃ誤差の範疇じゃ?」

レッサー「あぁこの時代、下はなくなりました。コルセットのラインが臀部まで届いていたので、その上にスカート履きゃ自然にラインが出るって形で最終決着しています」

レッサー「そいでもってようやく20世紀初頭!現在でも使われてる形のブラとショーツが開発され、女性達に『あぁこれ楽だわー』って感じで受け入れられてました!」

レッサー「ブラはともかく、下はショーパンやや長めって感じでしたが。まぁ現代でも残存しているスタイルですので、下着の歴史は以上となります」

上条「お疲れさまでした。つーことは結論として異世界転生した場合の下着っていうのは」

レッサー「20世紀レベルにまで到達していれば現代に近い形の下着になりますね。していなければ色気も何もないカボチャパンツとコルセットだけ」

レッサー「しかも田舎の方ではそれすら履かず、単純にワンピースまがいので済ませていたっていう形になるでしょうな」

初春「流行の最先端がどれだけ浸透するのかも分からないですしねぇ」

レッサー「あと歴史的に重要なファクターとなるのは色です。服の色」

レッサー「派手な衣装は色が濃く、かつ落ちやすく移りやすいために、庶民は自然素材由来の草木染めの淡い色しか着られませんでいた」

レッサー「なので豪華な服を着るいうのは社会的ステータスでありまして、女性のドレスなんかは華美で豪華であればあるだけ経済力を示しています」

初春「それも男女別では?男性はフォーマルな場で黒い色を着るのが定番みたいな形になっていますし」

レッサー「それにも理由があります。上記の理由から『簡単な色=貧しい』ってイメージが定着していました。定着っていいますか、ただの事実なんですが」

レッサー「それが修道院など清貧を尊ぶ層が自らの衣装に着始めて、『謙虚・道徳的』って認識が広まっていきました」

レッサー「んでそこへ産業革命以後、技術の発達により庶民も含めて比較的自由に色をつけられる時代になりましたが、やはり黒は謙虚のイメージとして男性に人気」

レッサー「まぁ『私は立派な労働者ですよ!』なので、逆に公の場で変な格好もできませんし、結果として黒色が多用されて数百年。フォーマルな場では黒色が常識になりましたとさ」

上条「真面目か。もっとおふざけ路線で行くもんだと思っていたら意外に真面目か」

レッサー「よってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!ゴブリンorオークor盗賊に滅ぼされて無双ナメプする動機となる蹂躙される村娘はシャレオツなパンツなんか履いてないのですな!」

上条「急に真面目じゃなくなった。あ、最初からか」

レッサー「ちなみに完全な余談になりますが、ヤポン萌え業界の『ぱんつはいてない』のパイオニアは駒都えー○先生だとも主張しておきましょうか!」

上条「レッサーさんレッサーさん、人違い人違い。こつえ○先生であって駒○先生は関係ねぇから」

初春「どう見ても別名義です本当にありがとうございました」

レッサー「なので上条さんはこの論が正しいのかどうかを試すためにもレッツ☆転生!さぁトラックが多く行き交う道路はリサーチしてあります!パパッと行ってきてくださいな!」

上条「よーしそれじゃ俺トラック転生しちゃうぞー!――あ、でも帰れなくね?基本的には一方通行じゃね?」

レッサー「えぇ、ですので墓標にでもこう刻んでおいてください――『我が友レッサーへ、パンツの夢は世界を越えてフォーエバー』ってね……ッ!」

上条「それただのパンツが好きすぎる人だろ。子孫が永遠にイジられるわ可哀想に」

レッサー「あと他に聞きたいことあります?パンツの歴史であれば?」

上条「そこまでパンツに拘りはねぇよ。ただラノベとか読んでると『このチチもアシも出てる衣装で戦うって正気かな?』とか思うが」

初春「ゲストなんですが、私からいいですか?」

レッサー「もちろんですとも!どっかのレギュラーなのに向上心皆無は方と違っていいですよねっ!」

上条「だから予備知識がないから何聞いていいかのすら分かんねぇんだよ!」

初春「中世から近世にかけてのドレスって特定の人たち、ぶっちゃけジェンダー関係の人たちのやり玉のに上がりがちなんですが、それは事実で?」

レッサー「えぇそれは正しいですね。経済力のシンボルとして女性のドレスやファッションでマウント取っていたのは間違いない事実です」

レッサー「ただ逆説とも聞こえるでしょうが、ドレスなりアクセなりでどれだけ武装したところで、結局女性を見せるのは”外”なんですよ。言ってみれば社交の場ですな」

レッサー「つまり重要な場においても女性の役割はある程度あった上、彼女たちの仕事はそれだけでなく家中をまとめるという役割もありました。亭主が不在の中で、ですね」

レッサー「決してトロフィー代わりに飾られていたのではなく、伴侶と共に運命共同体として生きていた、という点を無視しないで頂きたいものです」

レッサー「そりゃ不便も多かったでしょうし、今からすれば差別も多々あったでしょうが、別に敵対関係ではなかったというのもまた事実の一面ではあります――し」

レッサー「ナポレオン戦争で国民が従軍してお陰で彼らの発言権が高まり、民主主義の萌芽となった、っていう話をしましたが、これはジェンダーの面でもある程度言えましてね」

レッサー「例えば農村なんかだと夫婦の発言権なんてのは大差なかったんですよ。それはやってる仕事量がどちらもほぼ同じだったからです。仕事の義務を負っているだけ権利もあったと」

レッサー「その顕著な例としまして……あー、『大草原の小さな家』の作者の方ってご存じですか?」

上条「さっき言ってた昔のドラマだよな。何回か再放送で見たけど、作者までは」

初春「私は知っています。『ローラ=インガルス=ワイルダー』さんですよね」

上条「ローラさん?あれ確か主人公のちっこい女の子もローラさんじゃなかったっけ?」

初春「役名は『ローラ=エリザベス=インガルス』さんですね」

上条「ほぼ同じ!?てかあれって自伝だったのっ!?」

レッサー「ではないですね。ご本人曰く、『私が語ったのは真実だが、そのまま全ての真実ではない』とのことで。リアルな描写などはそうだったんでしょうが」

レッサー「ともあれ。ワイルダー女史は作家として大成されました。それは間違いないんですが……」

レッサー「文明最先端()のヨーロッパから未開の蛮地と蔑まれていたアメリカで、女性が活躍して受け入れられるのは何とも皮肉な話でもありました」

レッサー「そのバックボーンとして、開拓民は男女問わずに同じだけの仕事をしたり役割分担をしていたため、ジェンダーで頭を打たれるって感じでもなかったんではないかと」

レッサー「しかもワイルダー女史自体は裕福な家庭に生まれたのではなく、どちらかとと言えば失敗しがちな家の子として育てられたのにと」

レッサー「まぁヨーロッパもアガサ=クリスティやシドニー=ガブリエル、マリー=ダグーのように成功した女性作家もいますから、一概に劣ってはいませんけどもね」

初春「成程。労働量基準でいえば発言力も同じだと」

レッサー「第二次世界大戦後にフランスで女性参政権が出来たのも、戦争中にご婦人方が工場で働いたからという説もありますし。私もそうだと思います」

レッサー「まとめとしちゃドレスと思いっきり自由な下着を抑圧の歴史だと掲げる方もいます。否定はしません。それは実際にあった事ですからね」

レッサー「ただ当時の女性達をさも奴隷だったり迫害の対象だったかの如く言わないで頂きたい。少なくとも当時は彼女たちなりに家族や家を守るために戦ったのも事実です。そこを忘れて欲しくはないですかね」

上条「どうしよう……!真面目な事言ってるからツッコめない……!」

初春「だからって無理矢理ボケるのもどうかと思います。分かりました、質問に答えてくださってありがとうございました」

レッサー「お気になさらず!報酬は今あなたが装着しているパンツでいいですよ!」

初春「『――あなたには黙秘権があります。今から逮捕される訳ですが、これからの証言が裁判で不利に働く場合があり』」

レッサー「あ、これ思った以上にガチなヤツですね!?私が何か悪い事しましたかっ!?」

上条「問題、最近お気に入りの台詞は?」

レッサー「『こんなにされたら女の子みたいになっちゃう』?」

上条「もう社会復帰できないレベルじゃねぇか。てかその面白台詞使うチャンスってあるか?」

レッサー「私はないですけど上条さんだったら、阿部○さんだったらそこそこ高い確率で?」

上条「だから阿部○イジんなや!俺はどうなっていもいいから!」


-終-


――とある風紀委員詰め所 檻の中

レッサー「あぁすいません。説明をし忘れたんで補足したいんですが」

上条「出してー!?もしくは事務所からマネージャーさん呼んでー!?俺は何もしてないんだよ!」

レッサー「いや、諦めましょうよ。いざとなったら私がアリサさんを脅迫してでも身元引受人を呼びますから!」

上条「お前それシャットアウラに言ったらそのまま埋められるからな?」

レッサー「くっくっくっく……!私手元には炎上必至の『アリサさんが事務所を辞めたいって愚痴ってる動画』が……!」

上条「みんな知ってるわそれ。何なら最近ラジオでも言うようになったって姫神から聞いた」

レッサー「もう少し興味持ちましょうよ」

上条「事務所でも言ったが、友達って写真集買ったり円盤買ったりする仲でいいのか?」

レッサー「それはまぁレアケースなので何とも言えないですが……」

上条「あと仮に俺がラジオかなんかの公録行ったら『あ、当麻君だ!――ってゴメン!?話しかけちゃダメなんだよね!』とか絶対にするだろ?」

レッサー「悪い意味でぶっぱしますよね。ヤッベェ超見てみてぇっすわその地獄」

上条「んで?なんだって?」

レッサー「『あなたの前には古びた宝箱がある。あなたは開けなくてもいいし開けてもいい――』」

上条「テーブルトークRPGしてねぇよ。だってマンツーマンでするようなこっちゃないからな」

レッサー「『おぉっと!?宝箱はきゃたつラ○だったようだ!?』」

上条「世界観をポンチャンしすぎじゃね?メタルマック○は好きなんだけど、あと宝箱とユニークモンスターって間違えようがないよね?

レッサー「雑談はこれから時間はあるでしょうしそっちするとしまして、下着の話で補足があったのを忘れていました」

上条「初春さんいないけど。何?また歴史?」

レッサー「いや、今思いついただけなんですが、昔の下着がやたら重装備だったのって臭いが原因じゃねぇかって」

上条「臭い……体臭がか?そんなに変るようなもんじゃない、と思うけど……」

レッサー「そりゃ私もそうは思いますが、今と違って衛生概念がダンチじゃないですか?今は一家に一代シャワーなりバスが常識ですけど」

レッサー「黒死病を筆頭に感染症がエッラい被害を出してたんで、300年ぐらいはフロなしの時代があったんですよね」

上条「そっちの方が病気になりそうだよな」

レッサー「それに関しても同感ですな。んで、そんな衛生状態の人間が服着たら臭いが服に移りますよね?それこそお高いドレスであったりしても?」

上条「想像したくねぇが、移らない訳がないよなぁ」

レッサー「だから昔の下着が妙に分厚かったり重装備になってんのって、可能な限り肌を普段着と接触しないようにしてるって意味があるんじゃないかなーと」

上条「あー……確かにな。素肌にスーツ着るよりもシャツ挟んだ方が汚れないよな」

レッサー「それを踏まえて異世界ですが――『な、なんだお風呂って!?こんなに気持ちのいいものがあったのか!?』って世界観ですよね?」

上条「妙にフロが神聖視されてんだよな。シャワーでもいいじゃねぇか」

レッサー「つまり人々の衛生概念が中世レベルの酷さなのに、こっちの世界での現代スタイルの下着つけてたら……」

上条「あ、うんそれ以上は言わなくていいわ」

レッサー「あまりリアルすぎる世界観も考えものですよねぇ。かといってゴブリンスレイヤ○さんのようなガチ過ぎる世界も、まぁ、引くと言いますか」

上条「やっぱ俺はファンタジーはファンタジーのままがいいと思うんだよ。困ったことがあったら取り敢えず魔法で解決出来る優しい世界」

レッサー「えぇやはり私もエルフの乳はツルペタの方が合っているんではないかと」

上条「そんな話してねぇ。同意しなくもないが」


-終-
(※多分これが正解)

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