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Clock(trial)

絹旗「『第一回、ペア対抗・新築トンネル内見超心霊ツアー』」

 
――とある新築のトンネル前

絹旗「――はい、という訳では我々は幽霊が出るかもしれないし出ないかもしれないトンネルの前に超やってきました」

鳴護「設定もっと盛りませんか?見切り発車なのはいつものことですけど、それに慣れるのは良くないと思うんですよ」

絹旗「嘘を吐くのは良くないですよ?『可能性としてはゼロではないですね』と超提示しているのですから」

鳴護「まさか先々週のネタ企画が本当に撮影という暴挙は見過ごせないんですけど……」

絹旗「来週が落成式を超えておりまして、スケジュール的には今しかありませんでした。超乗らないと!このムーブメントに!」

鳴護「乗っていません。そしてそもそも学園都市の外れの方のトンネルに一体どんな付加価値があると?」

絹旗「トンネルの存在意義は渋滞の超緩和とこの先の宅地開発がメインですね。交通の便を良くした上で将来的には工業団地の招致も視野に入れているそうです」

鳴護「市民広報に書いてありそうな説明されてもな……!いやまぁ行政はそうなんだろうけど!」

絹旗「ですが実際にその通り事が進むかどうか、その超双肩が我々にかかっていると言っても超過言ではありません」

鳴護「そんな期待を一介のシンガーに背負わせないで」

絹旗「まぁそれらの計画がポシャったときのため用に、最悪観光名所としての伏線を超張っておこうと。今回はスポンサーさん超公認です」

鳴護「なんで?曲がりなりにも心霊スポットだなんて噂立ったら逆に人集まらなくない?」

絹旗「そこはそれ『話題性が出ればワンチャンある!』と勘違いした上の方の超判断ですので。責任を取るのも炎上するのもケーブルテレビさんの方です」

鳴護「あたしは炎上ノーサンキューなんですが……」

絹旗「なお、事前に怪談おじさん二号を超召喚して『幽霊の類はいない』と事前に確認済みでもあります」

鳴護「じゃあ安心だよねっ!でも企画の主旨を運営側が全否定しているけども!」

絹旗「ですが……『幽霊はいないが……まぁ、何かあったら連絡を』と」

鳴護「やめて伏線張らないで!?どうせ『幽霊はいないと言ったけど、妖怪がいないとは言ってない』ってパターンなんだから!」

絹旗「いざというときには超召喚しますので、ご心配なく」

鳴護「じゃあ最初から呼ぼうよ?街中で会うと他の人の視線が限りなく痛いけど、こういうときに呼ばなくていつ使うの?」

絹旗「『今でしょ?』」

鳴護「違う、そうじゃない。そうだけど」

絹旗「ですからそこら辺は超クリアしていますとも。何せこちらは完成したばかりのトンネル、その前は超山の中ですので幽霊もなにもいる筈もなく」

鳴護「今までパターンだと、山の中得体のしれない神様が……」

絹旗「――はい、っていう訳で本日の企画を超進めたいと思います」

鳴護「最愛ちゃんの全てがパワープレイ。ハル○の変身中だってもっと理知的」

絹旗「この世界の超本質は暴力なんですよね。『口頭で済むんだったら変身必要ねぇだろ』的な」

鳴護「ヒーローの存在意義に関わるよ。だってバットマ○が合法的に悪人討伐を始めたら、『戦うってそういう意味で?』ってなるもん」

絹旗「あの人が超クレバーなら、国政に出てヴイラン退治の新規立法+国軍結成で割と早く決着できるんですけどね」

絹旗「『深淵を覗く者は深淵からも』の、超例えのように彼もまた正義マニア版のジョーカ○と何が違うのかと」

鳴護「やめて!?みんな薄々思ってるけどスルーしてるんだから!」

絹旗「さて、ARISAさんには諦めて頂くとしまして、本日はこの呪われた新トンネルで心霊体験ツアーを超行ってもらいます」

鳴護「ハリボテなのに?いやまぁ大体中身なんてないけど!もしは地雷を華麗に踏み抜くだけで!」

絹旗「予定ではお三方をお呼びしてありますんで、その中から超ベストなリアクションをしたペアが優勝です」

鳴護「幽霊は?せめて『心霊写真撮ったら勝ち!』ぐらいは尊重してあげた方がいいよ?」

絹旗「番組内で撮った写真は希望者に超プレゼントします。えーと宛先は番組HPの広告を視聴したら出てきます、多分」

鳴護「欲しい人はいないんじゃ……?最初っから真面目な心霊番組だって期待して見てる人がどれだけいるかだけど」

絹旗「それではルール無用時間無制限、ペア対抗新築トンネル心霊体験中継、一組目、超どうぞ……!」

鳴護「この企画に参加する時点でもうおかしいと思うな」



――一組目

上条「――ここが噂になってるトンネルか……」

佐天「見てください上条さん!あそこの暗がりが人の影に見えませんか!?」

上条「見事にねぇよ影が。しかも最新式のLEDライトだから死角で陰が出来ないし、あと新築だから壁に染みになんかある筈もない」

佐天「ふっ、そう思うのが素人ですよ!このアプリを使うと見えるんですよ!」

上条「おぉ!確かにスマートフォンの画面を通じて見れば人影が!」

佐天「あれですよね?赤外線はカメラを通じて見ると分かるよ的な感じなんです!」

上条「一応聞くけど、このアプリの名前は?」

佐天「『恐怖!どこでも心霊写真!』ですけど」

上条「じゃあ違うヤツだわ。デジタルの世界にしか存在しないデータだわ」

佐天「『本当に写ってしまっても責任は取れかねます!』って注意書きが書いてあるのに!?」

上条「フレーバーテキストだからかな。ゴブリンの王様のように」

佐天「有料版になれば数種類の幽霊を合成させて登場させることだって可能性ですって!」

上条「もしかしてステマしてる?確実に逆効果間違いなしだけど」

佐天「それが無課金でも写メを投稿すればポイントが溜まるシステムに!」

上条「『――あ、もしもし初春さん?うん今反社っぽいアプリを、あぁそうそう佐天さんが持ってるやつで』」

佐天「即通報案件!?」

上条「残念だけど世の中にはJK好きなHENTAIかJC好きなHENTAIの二種類しかいないんだわ」

佐天「滅びますよね?そんな国あったら確実に」

上条「念には念をというか、まぁ大抵はろくでもない着地点に落下するから」

佐天「あとあたしのケータイの中身を初春が知ってるのが納得いきません。お母さんか」

上条「君の場合はあの子がついてても一抹どころじゃない不安が残るんだよ。だって実際に暴発した過去がチラホラあるんだから」

佐天「あ、ちょっと待っててください。教室からパチってきたチョークでオバケっぽいものを描いちゃいますんで」

上条「だからそういうとこだぞ!?躊躇なくパワープレイへ走るところが!」

佐天「画力の問題で『すみっこぐら○』ぐらいしか……!」

上条「そんなん出たら通うわ。しろく○がトンネルで出迎えてくれるんだったら、日常生活に疲れた人達が大挙して押し寄せるわ」

佐天「棒が一本あったとさ〜♪」

上条「それかわいいコックさん。あれ?でも都市伝説でなかったっけ?」

佐天「『廃墟に描かれている落書きが人を襲う』ってのはありますよ――はっ!?つまりそのぐらいはやれ、と?」

上条「器物破損の現行犯で炎上必至だよ。だってメモリアルしているのだから!」

佐天「何かこう全体的にパンチが足りないですよね。新しいLEDライトで風情もありまんせし、換気扇が回ってるお陰でトンネル内特有の『じとおぉっ』としたしっとり感もないですし」

上条「あったらマズいだろ。幽霊がいる、んだよね?」

佐天「それとは全くの無関係ですね。大抵のトンネルは元々あった水脈とかをぶった切ってるんで、内部に大小様々な水が入り込んでくるんですよ」

佐天「それが気化して温度が下がって湿度が上がり、それをMMRフィルターで見ると――」

佐天「『――気をつけろ何かがおかしい!外とは全く空気感が違う!』と、大盛り上がりになります」

上条「ねぇ君それ知っててわーきゃー言ってんの?」

佐天「――いいですか上条さん?祟りが怖くて心霊マニアはやっていけないんですよ?」

上条「心霊現象を否定する心霊マニアって矛盾してね?『神様を否定するシスター』みたいに」

佐天「それでこれからどうします?内装に手を入れるのもダメで、アプリでもダメ……」

上条「てかそもそも無理筋なんだよ!できたばっかのトンネルに出るって何がだよって話に!」

佐天「上条さんの背後に水子の霊が……!」

上条「おう憑いてみろよゴラアァッ!どこの世界に童×にも憑く水子がいるっていうんだったらな!」

佐天「『あ、お仲間じゃんか!じゃあちょっと失礼して!』」

上条「じゃあいいわ別に!そこまでフレンドリーだったら俺が脱童×を果たすまで憑いてきてもいいわ!」

佐天「だがしかし彼らのせいでいい雰囲気にはなれず……!」

上条「ちょっと闇咲に頼んでくる!じゃまた後で!」

佐天「どうもー、ありがとーございましたー!」



――

絹旗「一組目は超定番の心霊スポット漫談でしたね。相変わらず安定したボケとツッコミで、安心して見ていられます」

鳴護「企画の主旨は?コントやるって話ではないよね?」

絹旗「ただ超欲を言いますともっと踏み込んでほしかったですね。このままですとただのトンネル漫談で終わりですから」

絹旗「心霊スポットである利点を生かしつつ、結局童×ネタで落とすのもやや超ワンパターンと言えなくもなく。それを反省すればもっといいものになるかと」

鳴護「誰目線なのかな?いやまぁ本部の前で陣取ってるからP気取りなんだろうけど!」

絹旗「そして私以外、ぶっちゃけ番組を超視聴されている方々も同じ感想を抱かれたでしょう――」

絹旗「――『魔術師とか超能力者とか、INT高めの職業なのにどいつもこいつも脳筋』というこの世界の超本質に……ッ!!!」

鳴護「どこも同じじゃないかな?『賢者の〜』って題名で、実際に賢者が出てくるのって『賢者の贈り物 』ぐらいじゃ……」
(※夫婦がクリスマスに髪留めと時計の鎖を贈りあう話)

絹旗「あれは『ホウレンソウを超忘れずに』というだけの話のような」

鳴護「感動が鈍るよね?『次のクリスマス髪留めを贈るけど切る予定ないよね?』って確認する?しないよ?」

絹旗「ちなみに細かい話をしておきますと、当時の時代背景で髪をベリーショートにするのは春を売られる方が多かったんですね」

絹旗「というのも彼女達は金銭的に困窮している場合が多く、少しでも伸びた端から超売ってしまいますので、基本短いままです」

絹旗「ですので『女性側の髪は伸びるだろうから得』と解釈するのは超微妙です。少なくとも何ヶ月間は周囲からあまりいい目では見られないんですよねぇ」

鳴護「……そこまで詳しく調べておきながら、どうして論点がおかしいんだろう……?」

絹旗「普通の方は現代の価値観で超読みますから。昔の映画とか見てるとそういうのがままあります」

絹旗「――さて!それは超さておきまして『クレオパト○』の話でもしましょうか!」

鳴護「話題になったからってそれ取り上げるの?スタッフさんから『次の組の準備できましたよ』ってカンペ見えてますよ?」

絹旗「私あれチラッと見たんですが、超それほど悪い感じじゃなかったですよ?」

鳴護「監督は視点が邪悪すぎます。名作とダメ映画を同じテーブルに載せるからです」



――二組目

姫神「そんな訳で我々は例のトンネルにまで来たのだった――」

姫神「――霊だけに例……!」 クワッ

吹寄「どうしよう。同行者のテンションがマックスで手に負えない……!」

姫神「本日は付き合ってもらってありがとう。感謝している」

吹寄「どこへ行くかは聞いてなかったけどね!『上条君たちと一緒だから』って行ってたからもっと穏当な場所だと!」

姫神「軽い感じのアルバイト。完成直後の新築のトンネルを見学できる」

吹寄「幽霊……いないのは分かるけど、雰囲気は、うん。雰囲気はあるのよね」

姫神「しかしここには幽霊が出るような事故もなければ事件もなかった」

吹寄「山だからよね。工事やったんだったら、そっちで……」

姫神「手持ちの資料によりますと。完全遠隔工法で重機をコントロールしてたそう」

吹寄「頑なに人の手が入ってない……!そしてシステマチックになりすぎて心霊の付け入.隙がないわね!」

姫神「事故がなかったのは良い事――とはいえ。折角雰囲気があるので。それっぽいことはしたいと思う」

吹寄「あー、なんか『ここスッゴイ寒い!?』みたいな?」

姫神「吹寄さんは意外とイケる口?」

吹寄「どっちかって言えば苦手寄りの普通かな?ただちょっとね、一身上の都合でオカルト番組を観ないわけでもなく」

姫神「うん?どういう?」

吹寄「深夜の通販番組の前って、昼間はできないような心霊番組がそこそこあるのよ。内容はチャチなんだけど」

吹寄「『あ、そろそろ始まるかなー』ってチャンネルつけたら、そういう番組の終わりだけ見ちゃって……つい、次の週からは見ちゃう的な」

姫神「見るんだから好きなんじゃ」

吹寄「続き物は気になるのよ!怖いからって見たくないわけでもないし!」

姫神「了解した。では何か盛り上げたいと思う。アイディアプリーズ」

吹寄「定番は写真だけど前の組でやってたわよね。そしてトンネルの中、空調がしっかりしてて寒くもなければ湿気もないし」

姫神「歌ネタは?『あめあめふれふれ』なんかは定番」

吹寄「ほ、ホントに出たら怖いでしょう!?」

姫神「吹寄さん。主旨を思い出して。いやまぁ。安全地帯でやっているのは今更だけど」

吹寄「あと……あーこれ言っちゃっていいのかな?友達にこういうのは良くないのよ?良くないのは分かってるんだけどね?」

姫神「バッチコイ。『後ろに幽霊が』でも受け止めてみせる」

吹寄「姫神さんがただ立っているだけで、結構怖い。なんていうか雰囲気が」

姫神「そこそこの頻度で言われる。バス停で『来月のほっともっ○の新作ってなんだろう』ってボーッとしてるだけなのに。何故か遠巻きに見られている案件が」

吹寄「中身は意外とひょうきんなのよね。普通っていうか」

姫神「ふっ。私は所詮普通の呪いから逃れられない女……!」

吹寄「外見と中身のギャップが激しいだけよ!」

姫神「問題ない。実はもう一人友達を呼んである」

吹寄「友達?ロケバスには乗ってなかったわよね?」

風斬「――ど、どうも」 スゥッ

吹寄「……」

姫神「こちらは風斬さん。よく音楽室でピアノを弾いている」

吹寄「――ホンモノ連れてきちゃダメでしょうが!?」

風斬「いや違いますよぉ!?そういうことができるって能力者なだけで私は!?」

姫神「と思い込んでいる幽霊。大丈夫。私が逝くときには一緒に逝ってあげる」

風斬「お気持ちはありがたいんですけど……」

吹寄「上条ーーーーーーーーーーーーっ!こっちに来て何とかしなさいよ!」



――

絹旗「もう超途中から心霊も何もなくなって来ましたよね」

鳴護「全員お友達ですが、まぁうん。なんていうか、えっと……幽霊ではない、よ?実体はあるしね?」

絹旗「HENTAI科学者が超大挙してデータ採りそうなもんですね。ある意味幽霊よりも人間の方が怖い、通称ヒトコワならまぁその通りでしょうが」

鳴護「秋沙ちゃんも……黙ってトンネルの中に立っていれば『あれ?これ人生詰んでる?』ってぐらいの逸材なんだけど。喋らせたら、うん」

絹旗「まさか超ウィスパーボイスで『霊だけに例』の開幕ぶっぱが出てくるとは。この海の絹旗の目をもってしても見抜けませんでした」

鳴護「その称号は初耳だな……なんかこういらんことしぃで落とし穴ばっか掘ってそうだよね」

絹旗「全体的な超評価と致しましては及第点に届かず、といったところでしょうかね。盛り上がりに欠けつつ、フォローも特になしでしたから」

鳴護「大体そうなんだけどほぼほぼ身内ネタだからね」

絹旗「ただJK×2なので全体的な点数は一組目よりも超上です」

鳴護「採点基準が雑!?そんないかがわしい視点で!?」

絹旗「残念ながらJCが一人いたのは高評価なんですけど、番組的にはDKを入れると超下がりまして」

鳴護「コンプラ的に大丈夫?」

絹旗「問題ありませんとも。この間Tve○で番組検索をしていたら、なんと『演者が水着でeスポーツ』という爛れた番組があったぐらいですからね」
(※ありました。そして全てが正視に耐えない室の低さ)

鳴護「本当に怒られそうだなソレ!?」

絹旗「地方ローカル局の超マイナーな番組も見られるため、私的にはそこそこオススメです。勿論たまに混ざるノイズも含めて」

鳴護「それむしろノイズが本体じゃ……?」

絹旗「最近はダメ映画が超豊作でして、本音を言えばテレビまで手を伸ばす余裕が中々……」

鳴護「怖くて詳細を聞きたくないよね。豊作は豊作だけど、それ鈴なりに実っているのがザックームでしょ?」
(※イスラム教の地獄に生える樹木。果実が悪魔の顔をしていて猛毒だが、それ以外に食べるものがないため……)

絹旗「私はただ人々の努力の結晶が超見たいだけです。誤解されがちですが、花火は燃え尽きる前の一瞬こそが美しいとも」

鳴護「人命を花火感覚で浪費してる時点でおかしいと思うよ。あと仮に映画が大コケしても、演者さんとスタッフさんの人生はそこで終わらないからね?」

絹旗「ある種のスティグマ、別名デジタルタトゥーが超一生残るんですがね。誰とは言いませんが、『血まみれスケバンチェーンソ○』に悪役として出た『あ○』さんとか」
(※アイドル時代の汚れ仕事の一つ。チェンソー繋がりでここまで人生変るかと)

鳴護「シンガーとして名を上げたんだから結果的にはプラスだよねっ!そういう辛い下積みがあったからこそ今があるんであって!」

絹旗「これはただの一映画ファンとして、忌憚ない感想として超言わせてもらいますと、『役者さんは下積み時代が一番楽しそう』とは思います。個人の好みですが」

鳴護「あー……若い役者さんが集団で出ている青春映画とかドラマだよね。『この時代はみんな横一列だったのに……』っていう」
(※ウォーターボーイ○)

絹旗「結局誰も彼も今が超大切なのは同じですけどね。さて、三組目の準備が終わったようですので」

鳴護「あぁじゃあ」

絹旗「――で、クレオパトラの話に超戻るんですが」

鳴護「終わったじゃんさっき!?そもそもちゃんと見てないんだから!?」



――三組目

フレンダ「――なっがい訳だわー。ここまでスタンバッてる時間が超長い訳だわー」

滝壺「……」

フレンダ「もっとこうテンポよくやりなさいよ!?一組一組の準備時間が長い割に中身スッカスカって訳だしね!?」

滝壺「……」

フレンダ「てゆうか『幽霊なんて出るはずのない新築のトンネル』って出オチ案件なのに三番目っておかしくない!?既に前の組の人達ができる事はやってる訳だし!?」

フレンダ「てか滝壺からもなんか言う訳よ!散々待ってたでしょ!?」

滝壺「なんか……ふれんだ、ひさしぶり感が……?」

フレンダ「いや違うわそうじゃない訳だわ!まぁ何か絹旗に呼ばれるのもひっさびさでテンションか上がってはいる訳だけども!そこはそれスルーしてほしい訳で!」

滝壺「地雷を踏みに行ってその感想……わたしはふれんだを応援しているかもしれない……」

フレンダ「あぁもう滝壺もA-Foの影響でより天然に!」

滝壺「だがしかし仕事は仕事……何かしないと」

フレンダ「てかもう無理な訳じゃない?さっきも言ったけど、前の人らがそれっぽいことはやってたでしょ?」

滝壺「うん、だから……みて。ここに小さな手型がある……!」 キュッキュッ

フレンダ「いやあの、落成式前のトンネルで落書きは……あぁまぁチョークだしいい訳か。どうせ消すのはあたしじゃないし」

滝壺「……りあくしょん、ぷりーず?」

フレンダ「――マッッッッッッッッッッッッッッッッッッッジで!?やだ怖い訳!?オバケ!?ねぇ幽霊ってがいるって訳!?」

滝壺「ないす・りあくしょん……」 グッ

フレンダ「まぁね!それで喰ってるってとこがない訳ではないからね!」

滝壺「……あ……でもこれ、違う……別のだった」

フレンダ「何よ滝壺−!驚かせないでよー!」

滝壺「これはきっと……ごぶりんの手形……きっと近くにすがある……!」

フレンダ「なんっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっでよ!?どこの世界の新築トンネルにそんなんある訳だ!?」

フレンダ「百歩譲って異世界だったらあるかもだけど!よりにもよって学園都市の外れの山ん中に生息してない訳よ!」

フレンダ「てゆうかある意味ゴブリンの方がオバケよりか遙かに怖い訳だし!?だって尊厳を踏みにじられるか最低でも喰われるって訳だから!」

フレンダ「「『不安の○』読んでたら『フランケン☆ふら○』になってた程度の恐怖よ!あぁまぁ自分で言って分かりづらい訳だけども!」

フレンダ「ねぇ聞いてんの滝壺!?あんたホントに彼氏は選びなさいよ!?あんなアホ、選ん、だ……?」

……

フレンダ「……えっ?滝壺、どこ行った訳?うっわやめてほしい訳、あんまそういうのって良くない訳よ?身内ドッキリなんてねー、不和感を呼ぶっていうかさ?」

フレンダ「ねー、聞いてる訳ー?いい加減にしないと結局あたしも怒るって訳なんだけどー」

ガタッ

フレンダ「……滝壺?あれ?もしかして緊急事態――」

佐天「『――ゴブー!』」

フレンダ「話ややこしくなるからアドリブで参加してこないで!?てか制服着た女子に無理だなその配役は!?」

フレンダ「いや、あたしも『前の組の人らなんでロケバス戻らない訳?』って疑問に思ってたけど、メイクもなしにゴブリンは!?」

上条「『た、助けてくれ……!あ、アイツら集団で、人を襲ってくるんだ……!』」

フレンダ「あんたも入ってこないでよ!?もう何か世界観グッチャグチャになってる訳だなこれ!?」

姫神「『――案ずることはありません勇者よ。あなたはこの世界を救うべく召喚されたのです』」

フレンダ「いやそれ多分人違い。ずっとこの世界にインしてますけど何か?」

滝壺「『てーけてけー、てーけてけー』」

フレンダ「なんで?なんで滝壺はあたしにテケテケコールをするの?分離してオールレンジ攻撃するとか思ってる訳?」

佐天「『い、今の魔法は何ですか!?まさか失われた最上級魔法!?』」』

上条「『あれは――伝説の大魔法、フレ系最強のフレンダじゃないか……!?』」

フレンダ「人の名前で遊ばないでほしい訳。フレ・フレイラ・フレイガ・フレンダ?使い勝手悪そう」

佐天・上条・滝壺・姫神「……」 ジーッ

フレンダ「――ってボケなさいよ!?ここで終わったらなんか中途半端になる訳だしね!?」

フレンダ「てかボケ四人にツッコミ一人ってバランス悪い訳だな!?せめて一人ぐらいこっち来なさいよ!」

絹旗「超いい仕事、してますね?」 ポンッ

フレンダ「お陰様って訳でね!誰かさんにほぼ強要されてますけど!ノドが!ノドがやられる訳!」



――

絹旗「――はい、という訳で最後はゴブリンが超出ました」

鳴護「投げっぱなしの現場が楽しそうで癪。あのまま放置してたら、どんな結末を迎えたのか知りたいです」

絹旗「映画で『ニンジャが突然出てくるのはダメ』という格言が超あるのですが、ゴブリンも段々とそうなっていくのではないかと」

鳴護「いや、正直面白くない?どんなつまらない映画でも、最終的にニンジャさん出てきた方がまだマシってなるよね?」

絹旗「映画でも一時期『実は主人公死んでるんだぜ!』というオチが超流行りました。ついでに制作費が安めのオカルトものでは未だに多いです」

鳴護「なんで嫌な業界なんだろう……!だったらまだニンジャオチの方がいいかな!」

絹旗「ジャンプスケアものの超種とも言えますしね。ともあれARISAさん、三組が終わった訳ですが、どの組が良かったですか?」

鳴護「全員が等しく屏風の虎相手にして果敢に攻めていたと思います。なんでできればバイド代を弾んで頂ければ……」

絹旗「超了解しました。ではボーナスの関係上、どれかお一つに絞ってください」

鳴護「あー……三番目かなぁ。後発組になればなるほど不利なのにも関わらず、頑張って、た?よね?」

絹旗「ではフレンダ・滝壺組にはちょい多めに払っておきましょう。いやー、本当に全員が超良かったんですけどねー、仕方がないですねー」

鳴護「露骨なシメのコメントに入ってるんだけど……あぁまぁお疲れまでした。第二回はないと思うけど、あっても呼ばないでください」

絹旗「『――何故ならば演者の方として参加したいからです』との超前向きなコメントを頂きました!ARISAさん、ありがとうございました!」

鳴護「あとでここの動画貰えますか?いざって言うときには裁判の証拠にするんで、編集する前のを事務所に送ってください」



――ロケ終了後

上条「はい、ARISAさんお帰りになりまーす!ありがとうございましたー!」

鳴護「――お疲れさまでしたー。あと当麻君ははスタッフさんじゃないんだから、そこまでへりくだらなくても」

上条「いやなんか立ち位置的に今日も誰かのバーターだからですね!」

鳴護「だったらせめてもっと番組を選んでほしい。最愛ちゃんプレゼンツの時点で魔王に睨まれたのと同じではあるけど」

闇咲『……』 スッ

上条「――気をつけろアリサ!何か敵のスタン○使いっぽいのがいるぜ!」

鳴護「超失礼だよ?『あれ?お葬式かな?』っていつも思うっちゃ思うけど」

闇咲「だからこれは正装だといつも言っている。撮影は終わったのだから帰りたまえ」

鳴護「はい、帰りますけど。闇咲さんも来てたんですね。てっきり最初にお祓いだけしたって聞きましたけど」

闇咲「いや、祓ってはいない。祓えるものでもないからな」

鳴護「……はい?」

闇咲「ともあれ残業だ――が、二人ともこの後時間はあるかね?暇だったら付き合ってほしいのだが」

鳴護「あたしは大丈夫ですけど。当麻君は?」

上条「俺も特に予定は。つーか二人ともマネージャーさんの車で送ってもらう筈だったしな」

闇咲「ふむ、ならば同道願おうか。後で対処するのも面倒だしな」

鳴護「面倒って……何がです?」

闇咲「歩きながら話そう。日付が変る前に仕事を終えたい」



――トンネル前

鳴護「実物見ると結構怖いよねぇ、ここ。よくみんなあれだけはしゃげたよ」

上条「そりゃまぁ俺はテンションを最大に上げてっからな!そうでもないとここまで寂しい場所で楽しそうにはできないっていうか!」

鳴護「本当にオバケとかいそうだよねぇ。あ、チョークの跡」

闇咲「触らない方がいい。『六根清浄六根清浄――』」 ポキッ

鳴護「何かの木の棒ですか?折って捨ててる?」

闇咲「藤の枝だな」

上条「あ、俺知ってる!鬼が刃で滅っするやつだな!」

鳴護「ややヲワコン気味だけどね。劇場版が一番面白かったかなぁ」

闇咲「――よく知っていたな」

鳴護・上条「……はい?」

闇咲「ここが弱かったか。後はまぁ等間隔でいいか」

鳴護「……当麻君?これ、どっちだと思う?聞いた方がいいやつかな?それとも聞かない方がいいのかな?」

上条「できればスルーしたい所だが……俺らがここに居る時点でヤベェだろ!?どっちみち巻き込まれてんだから!」

闇咲「ん、どうした?」

上条「説明を要求する!可能な限り俺にも分かりやすくかつ怖くない言い方で頼むぜ!」

鳴護「リクエストがおかしい」

闇咲「あー……まぁ、藤の枝自体は目印だな。これ自体に邪を祓ったりする力はないというか、この場合は求められてはいないというか」

闇咲「私がやっているのは東北某所の祭りの下準備と同じだ」

鳴護「お祭り、ですか?」

闇咲「そうだ。花祭りの一種でな、社から商店街の通りへしめ縄を張り、山から採ってきた藤の枝をあちらこちらへ差す」
(※実在する風習です)

上条「神様の通り道?」

闇咲「かもしれないな――しかしそうでもないかもしれない」

上条「どっちだよ」

闇咲「君が壁に囲まれた家に住んでいるとしよう。その家の壁は外からの侵入者を防ぐためにある……だが、それは本当にそうか?」

闇咲「壁は君を守っているのではなく、君が外へ出ないようにしている――そう、考えることも出来るのではないかね?」

上条「哲学的な話か?刑務所じゃねぇんだからそんな話――」

鳴護「い、いやでもオバケはいないって言ってましたよね!?」

闇咲「幽霊の類”””は”””いない、だな」

上条「ちょっと待てやゴラアァッ!?じゃあ今何やってんだよ!?」

闇咲「得体の知れないモノが来たら面倒だから、まぁ面倒ではないようにしていると。ただそれだけだ――と、ここで最後だな」

闇咲「付き合わせて悪かった。これでもう大丈夫だろう」

鳴護「あのー……もしかして、今回の企画自体に何か意味があったり……?」

闇咲「落成式に地鎮祭、どちらも宗教的な意味を持つ。社会的な意義としてはやや欠け、最近では住民監査のやり玉に挙がる事も多い」

上条「何の話だよ?」

闇咲「政治の話だな。特に地鎮祭は『特定の宗教との癒着』と誹られる。まぁ無神論者から見ればそうなのだろうし、実際に御利益があるかと問われれば証明のしようがない」

闇咲「よって今では私費で行いつつあるのが現状だ」

鳴護「するのはするんですね。それでも」

闇咲「地鎮祭――『お祭り』の主体は神だな。神を降ろしてもてなし、実りと祈りを持って奉じ、また元の場所へお帰り頂くまでがセットだ」

闇咲「だが、まぁ?仮の話だが、長い間に儀式は失伝し、もしくは過大解釈されて、祭りの一部分しか伝わらない。伝わってこないということがままある」

闇咲「神を喚び、奉り、無聊を慰め、そこで終わってしまうような、どうにも締まらない――”閉らない”話もあるにはある」

上条「……それってヤバくないか?」

闇咲「いいや?ヤバくはない。決してない。何故ならば神や仏は存在しないのだから、居もしないモノであれば帰す必要すらない」

闇咲「だがまぁ、たまには戸締まりをする人間も必要ではある。それだけだな」

鳴護「えーっと……オカルト的にはマズい、って理解であっていますか?」

闇咲「気にする必要はない。ただの気休めのようなものだ」

鳴護「……どう思う?」

上条「ネタだと信じたいけどな……!怪談おじさんがやってんだから何かの意味はあるんだろうが!」


-終-

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