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Clock(trial)

とある魔術の禁書目録SS −胎魔のオラトリオ(仮)−


――先行試作版――


(※設定は予告無く変更される事が、事が事が事が――)


「いぁいぁ、『Only Teasing』だからだよ。言わせんな恥ずかしい」


――某音楽番組

ヅラ「はい、次は初登場ARISAちゃんです」

ヅラ「えっと、ライブ会場のARISAちゃーん?繋がってますかー?」

鳴護『はい、こんばんはー……え?違う?おはようございます?』

ヅラ「髪切った?」

鳴護『あ、いや特には切ってないです』

ヅラ「シングルでミリオン達成だって?すごいんだねー」

鳴護『ありがとうございます。応援してくれた皆さんのおかげです』

ヅラ「髪切った?」

鳴護『切ってないです』

ヅラ「まだ学生さんなんだよね。どう、勉強もしてる?」

鳴護『ボチボチですかねー。選択問題は強いんですけど、筆記問題は得意じゃなくて』

ヅラ「髪切った?」

鳴護『切ってないです。っていうか「似合ってない」って言われてるんですか、あたし?』

アナウンサー「――はい、曲の準備が出来ました。ARISAさんどうぞー」

鳴護『あの、基本髪切った話しかしてないんですけど……』

ヅラ「はい、という訳でARISAさんの新曲――」

ヅラ「――『髪切った?』」

鳴護『切ってないです。あと曲の名前と違いますし、順番間違えてるんじゃ?』

桂「ヅラじゃない桂だ」

ヅラ「おい今の声なんだ?どうやって潜り込んだの?」


――クリスマス LIVE会場

チャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンッ

鳴護『――世界が一つであった時代、私達は何を考えただろう?』

鳴護『世界が二つ出会った時代、私達は何を求めるのだろう?』

鳴護『神様が意地悪をして、私とあなたを引き離したけれど――問題はない』

鳴護『だってもう心を伝える方法は知っているから』

ワァァァァァァァァッ……

鳴護『私達が子供の頃、もどかしく考えてなかった?』

鳴護『うん、それはきっと今では答えを見つけている――その手に』

鳴護『――世界が一つであった時代、私達は何を考えただろう?』

鳴護『世界が二つ出会った時代、私達は何を求めるのだろう?』

鳴護『言葉は要らない。手を伸ばせば届くよ』

鳴護『この世界にまだ言葉が無かった時代にも愛はあった』

鳴護『――そう、そのまま抱きしめるだけで……』

ジャジャァァンッ………………

ワアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!

鳴護『――はい、って言う訳でテレビ中継は切れちゃったみたいです。電波が悪いのかな?』

鳴護『けどライブはまだまだ終わらないから、安心してねー?』

ウォォォォォォォォォォォォォッ!!!

鳴護『――みんなーーっ、あたしのライブに来てくれてありがとーーーーーーーっ!』

鳴護『「クリスマスぐらい大事な人といようぜ」、ってあたしの大先輩は言ってたけど』

鳴護『あたしも大切なファンのみんなと一緒で幸せだよーーっ!』

ファン『おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

浜面「あっりっさ!あっりっさ!」あっりっさ!」

ファン『あっりっさっ!あっりっさっ!あっりっさ!』

鳴護『でも来年ぐらいは好きな人と一緒にいたいかなー、なんて?』

鳴護『どう?ダメ?アイドルが恋しちゃうのはNG?』

浜面「上条もげろ!」

ファン『もっげっろ!もっげっろ!もっげっろ!』

鳴護『えっと、個人名を出すのはちょっとアレだよね。うんっ』

鳴護『みんなー、恋はいいよ?好きな人に好きだって言えるんだし』

鳴護『こんなに良い事って他にないよ。うん、ほんとにっ』

浜面「好きだーっ!結婚してくれーっ!」

鳴護『……さっきから彼女持ちさんの声がする気がするけど、メイスクリーン見て?』

浜面「おぅ?」

鳴護『MC中のアレコレがカメラで抜かれて、世界にLIVE発信されてるんだけど。いいのかな?』

浜面「やだ撮らないでっ!?」

鳴護『それじゃ、次の曲行くよーーーーっ!』

オオォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!

鳴護『曲名は――』


――あるファミレス

滝壺 ガクガクガク

絹旗「なにやってんですか、超何やってんですか浜面。滝壺さん置いて一人でライブなんて超有り得ないでしょう」

麦野「ま、常識的に考えりゃペアチケット取る筈が一枚しか当たらなくてさ。それでコッソリ行ったとかじゃないの?」

絹旗「……むぅ。確かに鳴護アリサのクリスマスコンサートは超プレミアですけど」

麦野「だからって彼女置いて行くかよ?あのクソったれ、帰ってきたら顔面無くすまでぶっ飛ばす」

滝壺「……かめらに抜かれているのに、必死に百面相してごまかそうとしている」

絹旗「これはこれで超面白そうですね。あ、超録画してツベにアップロードしましょう」

麦野「つかこれ学園都市の……どっかの学区からの生中継なんでしょ?」

絹旗「ですね。タ○さんの音楽番組中継は超途中でキレてしまいましたが」

麦野「電波障害、か?変な声も入ってたみたいだし」

絹旗「ま、学園都市の有線の超強度と比べるのは酷でしょう……って、滝壺さん?」

滝壺「……これ、なに……?」

麦野「どうしたのよ、凄い汗――滝壺?滝壺っ!?」

滝壺「暗い暗い海が見える……その淵には最果てが無く、ただただ赤黒い白い緑の葉っぱが敷き詰められて――」

滝壺「――海から押し寄せるのは――違う!あれは、あれは――っ!」

絹旗「超落ち着いてく――い!」

滝壺「押し寄せるんじゃ、ない!違う、違、血が、地が、智が!」

麦野「救急車を――早く――!」

滝壺「――海より帰り来たる。慟哭と怨嗟と、赤子の泣き声、それは――」

滝壺「――凱旋、だ」


――同時刻 XX学区 コンサート会場 来賓用駐車場

 完全防音を謳うコンサートホールにして野外音楽堂でもあるライブ会場。
 しかし鳴護アリサの歌声は、人工的に調整された音の流れを無視し、僅かながら会場周辺にも漏れ聞こえていた。
 時として多数のクレームで回線がパンクする程、ホールの苦情係は激務であるのだが、今日に限っては楽なものだった。

 プレミアチケットとなった招待券がないのに、微かにではあるがおこぼれにありつけた。感謝こそすれ、クレームが入る気配すらなかった。
 野球やサッカーの試合が行われているのであれば、適度に“市民の声”を捌く必要があったのに、随分と現金なものだと軽く思っていた。

 しかし、それは暫くすると一つの疑念に思い当たる――「静か“すぎる”のではないか」と。
 ホールの外を通る車の影も、出待ちかチケットを手に入れられず、未練がましくたむろしている人影も。
 普段、普通にしていれば嫌でも目にする影が、当たり前のように存在する雑踏や人の生活音が、何故かポッカリと欠けていた。

 今日はクリスマスイブ。冬至も過ぎたばかりだと言うに、得体の知れない恐怖が背筋を這い上がり、暑くないのに汗がぐっしょりシャツを濡らす。
 気のせいだと言い聞かせても、どうにも不安で不安で溜らなくなってくる。

『――あー、コーヒーでも買って来るわ』

 そう言って出て行った同僚の姿は、未だにあるべき所に帰ってきてない。
 所か、休憩時間を大幅に過ぎ、これ以上ないほどに怠慢――。

 いや――怠慢なのか?もしかして、得体の知れない何か、よりにもよって鳴護アリサのコンサートの日にたまたま当番になったため、巻き込まれたのではないか?
 人影が誰一人と見えず、また同僚も某かのトラブルに襲われてどこかへ消えてしまったとか?

 そう思って、警備員か誰か、とにかく人の居る所まで出ようと思い、部屋を後に――。

「……ァ」

 バタン。

「あっ、す、すいませんっ!」

 部屋のすぐ前に誰かが突っ立っていたらしい。思いのほか勢いよくドアを開けたせいで、相手を転倒させてしまったようだ。
 その証拠に半分開いたドアから上半身と下半身が見える。

 あぁなんだ、その制服は同じ従業員の同僚のもの。丁度帰って来ていた所に、たまたまぶつけてしまったのか。間が悪い。

「え、っと。どうし、た――」

 上半身と下半身?……どうして、それが、別々にあるのだろうか?
 普通は、一般的には、それは別セットで数えられるものじゃない。必ず二人で一つ――と言うか、分けては存在しない。出来ない。

 けれど、ここから見えるパーツ達は明らかに別の方向を向いていて。
 上半身は壁にぶつかり、下半身は床に転がり――あぁ、これはそうか。

 同僚の体は、上下に引き千切られていた。

「ひっ!?」

「……ぁっ、ぁっ」

 まだ生きているのだろう。壁に寄りかかったまま言葉にならない言葉を紡いでいる。
 血の痕が水溜まりを徐々に作り、そこかしこに考えたくもない赤黒い何かが飛び散っていた。生理的にとても受け付けない血臭に胃液が上がってくる。

「く、ぷっ……!?」

 ダメだ、まだ、ダメだ。吐くのは後からでも出来る。今は少しでも早くこの状況を伝えなければいけない!
 警備員でもアンチスキルでも良い!通報が早ければ同僚の命も助かるかも知れない!
 だから、ただ、早く……!

 慌てて部屋に駆け込み、内線用のアナログな電話を取り――音が、しない。
 カチャカチャと適当にボタンを押しても、受話器からは何の反応も返っては来なかった。

 次に私物の系帯電を取り出して、耳に当て――やはり音はしなかった。これは、どういう。

 ふと、思いつく。“そういえば”と。
 少し前に行われてたテレビ中継がぶつ切りになった。それは外部の何かが原因だと思っていた。
 けれど、それは、違う。
 “あの時から既に、ここで何かが起きていた”のではないだろうか?
 大規模なテロとか、暴走した能力者だとか、反学園都市の組織とか。

 だとすれば、ここにいるだけで、危険だ。これ以上踏み留まるべきではない――そうだ!自分には異常を外部に知らせに行かなければいけない!

 そう自分に言い聞かせながら、変わり果てた同僚の側を通――。

「――オイ、そこで何をやってんだ!?」

 第三者の声にビクリとしながら、“そういえば”と再び思う。

 どうして同僚が殺されてる必要があったのか?
 どうして自分は殺されなかったのか?

 血溜まりが“広がりつつあった”のを察するに、同僚が部屋のドアを一枚隔てた外で殺されたのは間違いない。
 ならつまり、そこまで犯人は来ている。

 この、目の前にいる少年の所までは。


上条「――聞いてんのかよ!?こっちに人が倒れてんだ!アンチスキルを呼んでくれって!」

上条(こっちの……あぁ、手遅れか。息をしてない以前に、この血溜まりじゃ)

社員「あ、う……ぁぁっ!」

上条「アンタ、おいっ!?待てよっ!」

社員「お、お前は何なんだよっ!?ソイツみたいに殺すのか、なあぁっ!?」

上条「あぁ!?」

社員「お前がやったんだろ!?お前以外に誰もっ!」

上条(錯乱してやがる……無理もないけど)

上条(バゲージでの経験がなかったら、俺も似たようなもんか)

上条「落ち着いて考えろよっ!俺がもしお前の同僚?かなんかを殺してたとして、わざわざお前に話をする意味がないだろ!」

上条「第一俺はお前みたいに汚れてないし!返り血を浴びずに、どうこう出来るってのか、あぁ!?」

上条(……人体切断なんて、能力か魔術で簡単に出来るとは思うけど、まぁそれ言ったらどうしようもないしな)

社員「あ、あぁ」

上条「だったらそのまま聞いてくれ!俺はこっちから近寄らない、良いかっ!?」

上条「取り敢えず何があったんだよ?コイツは誰に殺されたんだ!?」

社員「わ、分からない!ソイツがコーヒー買いに行って、戻ってこないから探しに行こうと思ったんだ……」

社員「そ、そうしたら、ドアの前で!」

上条「アンチスキルに通報は?」

社員「出来なかったんだよ!有線がダメ!携帯もダメ!一体何がどうなってるんだ!?」

上条「落ち着けって!俺もよく分かってないんだから」

社員「お前は、誰なんだ……?」

上条「俺はバイトで観客誘導してたんだけど、コンサート始まって休憩室――ロビーの脇んトコでテレビ見てたら、急に電源が落ちてな」

上条「何かホールは無事なんだけど、こっち側の施設がダメになったみたいで。手分けして見回ってる最中だよ」

社員「明かりが?気づかなかった……」

上条「……何?」

社員「こっちはずっと電気は点いてるぞ……?」

上条「点いてる、って……?お前、そりゃおかしいだろ」

社員「な、何が?」

上条「――こっち“も”真っ暗じゃねぇか」

社員「……はい?」

上条「俺がマグライト持ってくるまで、照明なんて無かったんだぞ?今だって、ホラ」

社員「……」

上条「つーかお前、電気が完全に消えて、真っ暗闇になってんのにさ」

上条「何をどうやったら、お前の相方が死んでいたって事が分かるんだ?」

社員「見え、るだろう?ほらっ!電気なんか消えてない!」

社員「そこに壁に持たれているのは上半身で!床に転がっているのは足でっ!」

社員「お、俺は外へ出ようとしたら、ぶつかって!それで驚いて!」

上条「……そうか。それじゃもう一つだけ聞いても良いかな?」

社員「な、なんだよっ!?」

上条「今の話から察するに、アンタはこっちの人に指一本触れてないようだが――」

上条「――だったらどうして、アンタの体は返り血で真っ赤に染まっているんだ?」

社員「……」

上条「内線が通じないのは当然だ。だってさっきからずっと停電してるんだからな」

上条「非常灯の明かりもここには届かないのに、どうやってアンタは俺を“視て”るんだよ!」


 少年の指摘に息が詰まる。欠損していた記憶が甦る。
 同僚は確か気の良いヤツで、喉が渇いたと呟いたのを聞いて自販機へ向かったんだった。

 けれど自分はその行為を無碍に踏みにじり、蹂躙し、ハラワタに顔を埋め。
 香しい血の臭い。恍惚とした一時を過ごしたのではなかっ
たのか?

 “そういえば”と三度思う。
 忘れていた大事な事。それは。

「帰らなきゃいけないんだった――海へ」


上条「お前――クソッ!」

上条(皮膚が――鱗?急に緑色になりやがった!)

社員「ゲゴゴゴゴゴゴゴゴゴっ!」

上条「よく分からねぇが――ぶん殴れば!」

パキイィンッ!

上条「ふう、これで元に戻る――ら、ない!?」 ガッ

社員「――ッ!アーァァァァァァァっ!?」

上条「何でだよっ!?どうして元に戻らな――」

少女「――はい、ちょっと失礼しますよっと」

サ゚ンッ!

上条(俺に飛びかかろうとした男は、その勢いを逆に利用されて、カウンターで突き出された“槍”に頭を貫かれる)

上条(人間の頭蓋骨よりも、もっと歪で鋭角が目立つ骨格を突き破り、槍は深々と突き刺さった)

社員「……あ、ギ……ゲゲ……」

上条(ほぼ即死だったのか、数度体を痙攣させると社員――だったモノは地面へ倒れる)

上条(乱入してきた第三者にライトを向けると、こっちが頼んでもいないのに自己紹介を始めやがった)

少女「いつもニコニコあなたのお側に這い寄――」

グリグリグリグリグリッ

少女「痛いイタイ痛いいたいっ!?ちょっ、ジョークじゃないですか、ジョーク!」

少女「場を和ませるためにとっておきの持ちネタをですね」

上条「……何やってんのレッサーさん?つーかお前ここ学園都市なんだけど」

レッサー(少女)「折角ネタを決めようとしたのに、ばっさり切られた!?……あ、すいません真面目にやるんで、マグライトでグリグリはちょっと」

レッサー「まぁオシオキ(性的な意味で)ならバッチ来い!……あ、でも最初は流石に道具はプレイはまだちょっと」

上条「非常事態だっつーのに!つーか何だよコイツ!?」

上条「真っ暗な所でも平気でウロウロしてるわ!急にウロコだらけの姿になるわ!何なんだっ!?」

レッサー「はぁ、『深きものども(ディープ・ワンズ)』ですねぇ。いやー、まさか実在するとは」

上条「いやだから簡潔に頼むっ!」

レッサー「まぁアレですなー。ぶっちゃけ今度の敵は――」

レッサー「――『クトゥルー』なんだぜ?」


――とある魔術の禁書目録SS −胎魔のオラトリオ(仮)− −現在構想中−

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