佐天「これが――あたしの新しい能力か……ッ!」
――学校
キーンコーンカーンコーン
クラスメイト「初春さん放課後ヒマー?予定なかったら佐天っち誘ってどっか行こー?」
初春「あ、いいですねぇ。今日は非番ですし、たまにはゆっくりと――」
佐天「ねぇねぇ初春聞いて聞いて!あたし新しい能力に覚醒しちゃったみたい!」
初春「――って思ってたんですが、すいませんたった今ちょっと大切な予定が入りまして」
初春「恐らくいつものフカシが中二病、MSKさんかKMJさん絡みのネタだと思います、だったらいいなぁと思う訳ですが」
初春「場合によっては学園都市を揺るがす大事態へと発展しかねないので、忘れてください、ね?」
クラスメイト「い、いやでも今ありえない台詞を佐天っちから聞いたような――」
初春「なんでも、ありませんよ?」 ニッコリ
クラスメイト「うんっ!何にも聞かなかった!お仕事頑張ってね!」
佐天「え、何々?別に遊びに行きながらでも話せばいいよね?」
初春「良くないです、超良くないですからね」
初春「ダブルスキルは当然のことですし、今まであった能力から一段階進化しちゃった日には学園都市揺るがすレベルの大惨事になるかと」
佐天「前に流行ったドラッグなんかそうだよねぇ」
初春「まぁ、取り敢えず屋上へどうぞ。お話如何によっては白井さん呼んで、詰め所で保護することになりますが」
佐天「ヒドっ?!信用ないな!」
初春「ついこの間も誘拐されかかった人が何言ってるんですか」
――屋上
佐天「あ、あの初春っ!こんなトコに呼び出して何するつもりなのかなっ!」
初春「いいですいいです、小芝居しなくていいですから」
佐天「あ、今のはね『卒業直前になって気になる同性から呼び出された』ってシチュで」
初春「すいません、その設定だと生々しくなりすぎますし、リアリティあり過ぎなんで止めて貰えませんか?」
佐天「愛してるぜ、初春っ」 キリッ
初春「――ま、その話はさておくとして」
ペーペーペーペペー
初春「着信?」
佐天「『――アッハイもしもし佐天涙子でございます――え、なに?”告白するシーンをムービーで撮影”?』」
初春「切って下さい。超感覚で聞きつけた百合厨さんは放って置いて下さい」
初春「で!そんな事よりも今度はどんな地雷踏んだんですかっ!?そんなには怒らないかもしれませんから、素直に話しなさい!」
佐天「えー、それつて怒ってるのとどう違うのかなーっと」
初春「さっさと話さないともっと怒ります。おこ、から激おこになります」
佐天「それちょっと古い――まぁ、大した事じゃないんだけどさ、これほら、見て見て」
初春「ガラス……じゃない、これは何かのレンズですね。裸のままですが」
佐天「メガネのレンズにしてはまん丸過ぎるし、虫眼鏡から外れたって感じだよねぇ」」
初春「なんとなーく想像はつくんですが……それを拾った、と?」
佐天「てへぺろ」
初春「返してきてください!トラブルに巻き込まれる前に大至急で!」
佐天「ま、待ってよ!届けるから!てか拾ったのは登校途中だったら、今から届けるつもりだったんだってば!信じてよ!」
初春「あー……まぁそうだったらいいんですけど――っ、てそれが新しい能力とどう関係が?」
佐天「まぁこれ通して見てみなよ、ねっ?」
初春「いいですけど。度は入ってないみたいですし、特に色がついてる訳でも――」 フィーンッ
初春「――ってなんか文字が浮かんでるっ!?しかもこれ佐天さんの能力じゃ……!?」
佐天「……ね、ヤッバイでしょ?」
初春「いやいやいやいやっ!これ凄いのはこのメガネであって佐天さん能力違いますし!」
佐天「分かってない、分かってないなぁ初春。確かにメガネは凄いけど、拾ったあたしも相当な運があるって思わない?」
初春「否定はしないですけど、それってつまり?」
佐天「『地雷踏み(ゴッドブレス)』!それがあたしの真の能力だったんだよ……ッ!」
初春「はい、まぁ合ってるっちゃあ超合ってると思うんですが、それただの運ですから。能力関係ないですから」
佐天「ま、ネタはともかくとしてスッゴイよねー。こんな技術も実用化済みなんだ−」
初春「……これ、もしかしたら相当な暗部クリティカルしてるかも知れませんよ。学園生徒のデータが漏れて……あれ?」
佐天「ん?なに?」
初春「て、あれ?これ少し違くありません?」
佐天「なんで?どこが?」
初春「英語の意味は何となく理解出来るんですけど、佐天さん能力って『空力使い』ですよね?」
佐天「あぁそうっか。レンズ通して見ると『風使い』ってなってるよね」
初春「ですからデータベースを読み取ってるんじゃないとなると……その場で、解析してる、とか?」
佐天「まっさかぁ!それこそ魔法みたいな話だよぉ!」
初春「です、かねぇ?はは、あはははー……」
佐天「ちなみに初春のも見ていーい?」
初春「個人的には私も知りたいですし、どうぞ」 スチャ
佐天「はいどーも。どれどれー?」
佐天「って感じかな」
初春「なるほど。まぁ合っているような、とは思いますよ」
佐天「英語は能力の大小だとして、収束性とか拡散性ってのはなんなんだろ?」
初春「持続性と瞬発性はそのままで、汎用性は色々なことに使える、みたいな感じではないでしょうか?」
佐天「と、すると特異性はレア能力だぜ!ってトコかなー。初春の方があたしよりも珍しいしね」
初春「拡散性は……能力の精度じゃないですかね、効果範囲的な」
初春「拡散性が効果範囲だとすれば逆に収束性はどれだけ細かな精度が出るか、って感じかな−」
佐天「あ、だから”風”がC評価。でも初春の収束性Eが納得行かない」
初春「私の能力は『触った瞬間の温度を維持』ですから。ある程度変化できないのがネックかと」
佐天「……」
初春「何か?」
佐天「アレだよね?聖杯が戦争するゲームのパクリじゃないんだよね?」
初春「ちょっと何言ってるのか分かんないですけど、多分これは一作目でMSKさんやSRIさんが出ているのに、KMJさんハブられた拡散するアレや収束するアレじゃないかなーと」
初春「あとそっちは別に聖杯争奪戦争であって、聖杯さんが戦うゲームではないですね」
佐天「ちっちっち!違うんだなぁ、実は設定資料集読んだら『サーヴァントもまた聖杯から分かれた聖杯である』って設定があってだね」
初春「あ、すいません。その話長くなるようなので、私はここで」
佐天「あ、はい――じゃないよ!なんで不思議レンズ持って帰ろうとしてんのさ!」
初春「……もうですね、こう、この時点でオーパーツ過ぎて嫌な予感しかしないからですよ!初見の相手の能力表示するなんて、データベースより性質悪いじゃないですか!」
佐天「や、でもなんか面白くない?こう、あたしの中の中二病がうずうずと」
初春「否定はしませんけども」
佐天「これで御坂さん見たらどんな感じなのかなーと、興味無い?」
初春「少しは、まぁ」
佐天「本当は?」
初春「そりゃありますけど!……や、でもどう考えてもトラブルのニオイしかしないんですよ!それも厄介な!」
佐天「あー……じゃあこうしよっか。これは最終的に風紀委員へ預けるよ」
初春「当たり前ですよ。落としものなんですから」
佐天「でも!危ないブツっぽいんで御坂さんと白井さんへ護衛をお願いしたいと思います!」
初春「でしたら今すぐにでも白井さんへ連絡取れば、恐らく最速で回収してくださるかと」
佐天「えーそれじゃつまんないしー、どうせだったら御坂さんに見せてピックリさせたくね?」
初春「……つまり御坂さんへ『こんなん拾ったんですけど』、と相談するフリをしてその前後に遊び倒そうかと」
佐天「……ダメ?ムリ?」
初春「……今ここで連絡入れてアポ取りますよ?それでいいんだったら」
佐天「やたっありがとー初春愛してるっ!」
初春「あーはいはい、愛してます愛してます。良かったですねー」
ペーペーペーペペー
初春「また着信?」
佐天「『もしも――え?動画が駄目なら写メだけでも?』」
初春「引っ込んでろ百合厨。長距離から狙撃してこないでください」
佐天「あ、でも個人的には上条さんにも興味ある。呼ぼうっか?」
初春「風紀的には戦力が多いに越したことはないんで、いいんじゃないですかね……白井さんの機嫌が急降下する以外は」
佐天「『で、今面白いブツ拾ったんで見に来ません?あ、御坂さんや白井さんも呼んで――』」
佐天「『――はい?敵の魔術師の攻撃が?いやそういうのいいですから場所だけSMSで住所送りますねー』」
初春「……悪い人じゃないんですけどね。御坂さん的にどこを好きなったのか、納得は出来ないんですけど」
佐天「うん、てか多分納得行ったらヒロイン昇格するし!」 ピッ
初春「いやあのラノベ脳は治した方がいい思うんですよ。治るかどうか分からないですが」
――学園都市××学区 大通り
佐天「って訳で道行く人を鑑定したいと思います!そういう企画です!」
初春「いやいや違います、主旨違いますからって鑑定ってなんですか!?」
佐天「え、だからチート系異世界転生主人公がオレTUEEEE!のために、わざと格上の冒険者へ突っかかるための前フリで鑑定するでしょ?」
初春「佐天さん長い。そして誰も得をしません、余所様にケンカ売るのだけは!それだけは!」
佐天「要は文章で説明できないから、数値化させて叙情描写すっ飛ばすって省エネ文章なんだよね?」
初春「誰かっ!?この中に佐天さんに有効なツッコミスキルをお持ちの方はいませんかっ!?具体的には御坂さんか上条さんクラス!」
佐天「で、ショートカット&安易にステータス化してるもんだから、最終的に『なんでそんなシステムあんの?』ってツッコミ入ってSFオチかゲームオチにしか派生できないみたいなwwwwwww」
佐天「最初の時点で世界設定の作り込みが足りず、見切り発車でやってるから、自然と似たり寄ったりのアレになってしまうっていうかね」
初春「わ、わー!そんなことより!そ・ん・な・こ・と・よ・り・もっ!私は不思議レンズの性能が知りたいですねっ!そんな不毛なツッコミよりも!」
佐天「いやぁそこまで熱烈に言われるとなぁ」
初春「あ、じゃああの人で!なんか白くて目つきの鋭いシマシマ人が!」
白いシマシマ人の「……」
佐天「よーし――デュワッ!」
初春「佐天さんそれウルトラア○装着してセブ○に変身する時の効果音ですから。誰も、知らないと、思いますよ?年代的に」
佐天「どらどらー、シマシマの人はーっと」
佐天「強っ!?そして能力尖ってるな!」
初春「ちょっと貸してください……おぉ、確かにこれはRPGで終盤辺りに加入する火力特化系のニオイがしますね」
佐天「途中参加だから『プレイヤーに育てて貰うためにはこんぐらいかな?』ってイジってて、結局バランスブレイカーになっちゃう系の?」
初春「いざパーティへ入れると低レベルでレギュラーキャラ並の火力を発揮し、フツーに育てればボスを瞬殺すると……」
白いシマシマの人「……なァに見てンだよ、あァ?」
佐天「あぁすいませんすいませんっ!なんか珍しいお洋服だったんでつい見てしまいました!てかどこで売ってんですか?しまむ○?」
初春「佐天さんそれ遠回しにケンカ売ってるのと同じですからね?」
白いシマシマの人「……いいじゃねェかよしまむ○!しまむ○バカにすンなよ!季節の変わり目には安ィンだからなァ!」
初春「それどこも一緒です。しまむ○以外でもやってますよ?」
アホ毛の子「何やってるの?もしかしてナンパ、ナンパなのかなってミサカはミサカは聞いてみたり!」
初春「あ、いつぞやのアホ毛ちゃん」
佐天「いやアホ毛って。あ、一応見ておこう」
佐天「またなんか極端な子だな!」
初春「てか能力の名称が……なんでしょうね、これ」
白いシマシマの人「……分かンねェが、あんまはしゃいでンじゃねェぞ」
アホ毛の子「じゃあね、ってミサカはミサカは手を振ってみるの!」
初春「はーい、お気をつけて−」
佐天「白い人、アホ毛ちゃんが懐いてるって事は悪い人じゃないのかなぁ?」
初春「私の体験談からいいますと、まともそうな人は大抵アレな裏側を持っていますよ。えぇホントに」
佐天「じゃアレっぽい人は?」
初春「の、方がまだ警戒色出してる分だけマシって感じもかもしれませんしねぇ。何とも言えませんが」
佐天「……あれ?」
初春「どうしましたか?」
佐天「今って……まだ春じゃないよね。初春?」
初春「そこで最後、私の名前をつけたのかは分からないですが、まぁまだ寒いですね。先週は雪降りましたからね」
佐天「……じゃ、アレってなに?」
初春「アレ?」
白いカブトムシ「……」 コソコソ
初春「大っきいですね!?しかも違和感がハンパ無いですよ!」
佐天「や、まぁ都市伝説の一つの『四季を通じて見かける謎の白いカブトムシ』ってのがあってね」
初春「いやですから大きいですってばアレ!?お掃除ロボットぐらいの貫禄ありますし!」
佐天「んー、だからさ?あたしも何回か『ウチ来ない?』みたいに餌づけしようとしてんだけどさぁ」
初春「人類が昆虫と対話を試みないでください」
佐天「そしたら『流石に中学生は犯罪だから』って断られてね」
初春「通じるんですか会話っ!?」
佐天「なんかねー、あたしの本能が『バットで潰しとけ!』みたいに囁くんだけど、なんだろなーアレ?」
初春「……私は知りませんが――って、これレンスに能力が映ってます、よ?」
佐天「尖ってるのキターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーツ!?」
初春「なんですかこのチート。てかカブトムシに負けてる私達を含む、学生達って一体……!」
佐天「あー、いやアレじゃないかな?今はカブトムシの姿になっちゃっているけど、昔は人の姿をしてたとか?」
初春「人生終るぐらいの超展開ですが、まぁここは一つ見なかったことにしま――しょう?」
金髪の女の子「――にゃあ?」
佐天「おっ、可愛いな−。どしたのー?」
金髪の女の子「大体この子のこと、悪く言ったらダメなのだ、にゃあ!」
初春「この子、カブトムシさんをですか?」
金髪の女の子「そう!悪い事してないし!」
初春「えぇそうですね。悪い事をしていないんだったら、悪く言うのはダメですよね。ごめんなさい」
佐天「や、言ってたっけ……?」
初春「ちなみに話は変わりますが、あなたぐらいの女の子を捕まえて人質にしようとするのって、どう思いますか?」
佐天「う、初春さん?」
初春「その子を保護しようとした中学生を殴り飛ばしたり、無関係な人を平気で巻き込むような人が悪くないんでしたら、誰が悪いんですかねぇ?」
白いカブトムシ ダラダラダラダラ
佐天「初春さんっそのぐらいに!カブトムシさんの汗が尋常じゃないぐらいに流れてるから!」
佐天「キャラを保って!あたしの好きな初春は第三の壁を軽々とぶち壊すようなマネはしなかったぞ☆」
初春「佐天さん記号間違ってます。そんなウキウキなツッコミ入れるところじゃないですからね、ここ」
佐天「ちなみに金髪ちゃんのステータスは……」
佐天「またなんか、うーん……?」
白いカブトムシ「そ、それじゃ失礼しますねっ!何の事かは分かりませんでしたが、お大事にっ!」
初春「入院費やリハビリにも相当時間を掛けたんですが、まぁ知らないんでしたらさようならー」
佐天「カブトムシがだく足走行で逃げていったよ。あ、レアなんで撮っておこう」 ジーッ
初春「女の子を乗せて飛ぶ昆虫……アニメとか見ると、実にファンシーな絵面でしょうけど、リアルで見るとグロいですかねぇ……」
佐天「昔さぁ、男の子が夏休み明けにカブトムシ獲ってきて見せてくれたんだけどね。ぶっちゃけそれ『Gじゃん!』みたいな?」
御坂「佐天さんそれ以上はダメ。倫理的にもカブトムシにも失礼だからね!」
初春「あ、お疲れ様です。早かったですね」
御坂「そりゃまぁ、ね。なんか危険そうなブツの話聞いてたらゆっくりしてられないじゃない?」
佐天「んー……?んんー……?」 クンクン
御坂「な、何よっ!?級にどうしたの!?」
佐天「いやその割にはしっかりシャワー浴びてますし、うっすらと化粧しているような……?」
御坂「こ、これは別に深い意味なんてないんだからね!ただちょっとそういう気分だけだったんだから!」
佐天「これは、ですよねぇ?」
初春「ですかねぇ、やっぱり。口頭で佐天さんが『あ、一応ツッコミの人も呼びましたんで!』なんて言うからですよー」
御坂「な、なに!?悪いのっ!?」
佐天「五時限目、実習だったんですよね。いや分かります、よくありますもんね」
初春「佐天さん確実に分かってないですよね?てか私たちの授業にシャワー浴びて化粧して、男の人を超意識した授業なんてありましたっけ?」
佐天「え!?でも確実に反対するであろう白井さんはどこに!?」
初春「そう言えばいませんねぇ」
御坂「黒子はねぇ――遠いところ、かな」
佐天「あぁついに一線を越えて山の中へ」
御坂「してないわっ!ただ少しだけ大人しくなって貰っただけなんだからねっ!」
佐天「……なんだろーなぁね。ツンデレ風に言われれば、傷害もそこそこ許されそうな雰囲気に」
初春「犯罪、だめです、ゼッタイ」
御坂「で、それが大問題になりそうにレンズって訳か。見せて見せて」
佐天「あ、御坂さんつける時は『デュワッ』って言わないと!」
御坂「セブ○じゃない。しかも片側だけだしメガネ違うし」
初春「ツッコミが……これで負担が減った……!」
御坂「うー……ん。これはちょっと……ヤバいんじゃ?」
初春「ですよねっ!?ほら言ったじゃないですか!」
御坂「どういう理屈かは分からないけどさ。何となく数値化されるのって、色んな問題に発展しそうだわ」
佐天「アッハイ、それはまぁさておくとして御坂さんのステータス見せて貰っていいですかね?」
御坂「ね?本題から既に脱線しまくってたり」
初春「……まぁ佐天さんは佐天さんなので、好きにしてあげてください」
佐天「では改めて――ダイター○カムヒヤー!」
初春「かけ声がスーパーロボット呼ぶ声になってますよね?」
佐天「あー、これまた嫉妬以前に突き抜けて優秀ですなぁ」
御坂「……どんな感じ?興味はあったりしちゃうんだけど」
初春「これ、鏡に映せば自分のも見られるんですよ。ほら」
御坂「へー便利ねー……んー……む?」
佐天「ご不満な点でも?」
御坂「特異性Cって何よ、Cって」
初春「電気使いは割と人口が多いから、ではないでしょうか?御坂さんのはスタンダードな能力がベースですからねぇ」
御坂「ある意味一芸特化ではあるんだけどなー――ってこのレンズ分析力高いわね!」
初春「だから困ってんですよねぇ。ジョークグッズだったら良かったんですけど」
佐天「困る?困るって何が?」
初春「こんなものが出回ってたらたださえ能力至上主義なのに、その中でも優劣争いが起きるに決まってるじゃないですか」
佐天「かーらーの?」
初春「いや違います。ボケてるんじゃないですからね?話聞いてましたか?」
上条「今のは初春さんもボケ振ってたような……」
初春「あ、お疲れ様です」
佐天「ですです」
上条「はい、お疲れ様ー、ってこれ学生の挨拶で使わなくないかな?なんか仕事じゃね?」
佐天「え、上条さんのお仕事ってツッコミじゃ?」
上条「違う、断じて違うッ!『なんかこの感覚久しぶりだな?』とか思わないでもないが、そんな仕事はしてない!」
初春「それでまぁ佐天さんがいつものよーに地雷踏んじゃったみたいで、ね?御坂さん、そうですよね?」
御坂「……」
上条「おいっすビリビリ――って、何?俺の顔になんかついてる?」
佐天「御坂さん――って顔色悪いですよ!?気分でも悪いんですかっ!?」
御坂「う、ううん!大丈夫、よ……!うん、大丈夫!何も問題なんてないんだからっ!ヘーキだってば!」
初春「もしかし――」
御坂「――初春さんっ!」
初春「は、はひっ!」
御坂「その話は、ここじゃちょっと」
初春「え、でも既にしちゃってたり……」
御坂「……そう」
上条「でさー、そのレンズってどこにあんの?相手の能力見えるっての」
佐天「えぇ今御坂さんがつけてる感じですね」
上条「俺見てるって事は俺の能力……でもなぁ、無能力者だし全部のステータス最低値じゃねぇのかなー」
佐天「まぁそれはそれで笑いが取れますしいいんじゃないですかね−」
上条「はっはっはーそうだよねー――ってテメー可愛ければ何言ったって許されると思ってんじゃないですよコノヤロー」
佐天「途中から敬語になって弱くなるところが素敵ですっ」
御坂「た、ターーーーイムっ!!!」
上条「どういうルール!?タイム使うとなんかあんのっ!?」」
――路上 〜タイム〜
佐天「……や、あのですね。タイムってなんですかタイムって」
佐天「てゆうかさっきから上条さん登場してから様子おかしいですよ、御坂さん」
初春「乙女()を拗らせた、って風にはちょっと見えないですよねぇ。これは」
御坂「……今から言うこと、注意して聞いて欲しいのよ。お願いだから!」
佐天「まったまたー。分かってますよー、どうせアレでしょ?『上条さんのステータスが全部ペ×だった!』的なカンジなんですよね?」
初春「佐天さん、”ドベ”です。×ドだと全く別の意味になるから注意して下さい」
佐天「てかご本人もネタにするぐらいアッサリしてましたし、そんなに気を遣う必要はないと思いますよ?」
初春「ですよ。御坂さんがどう考えるのかは分かりませんが、我々普通の人はそんなには――」
御坂「違う……ッ!そんな、そんなことじゃないのっ!」 ギリッ
佐天「御坂、さん……?」
御坂「あたし達とは、レベルが――次元そのものが違うのよ!?分からないのっ!?」
佐天「な、なに言ってんですか御坂さん!相手はアレですよ、上条さんですよ?」
初春「……まぁ、”誰かさん”の話は私達風紀委員でも耳にしますし、ただのレベル0ではないな、とは思っていましたけど」
佐天「初春も、なに言ってんだか、あ、あははー!」
御坂・初春「「……」」
佐天「……凄いんですか?御坂さんが、言うほど?」
御坂「……見てみなさい、現実を」
御坂「あたしが、あたしが対面した現実の厳しさを!」 グッ
初春「御坂さん、何もそんな言い方しなくっても」
佐天「……分かった、見ます」
初春「佐天さんも、無理しない方が」
佐天「無理、しない方が無理、かな?御坂さんが様子おかしくなるぐらいの現実だったら、あたしも見たいっていうかさ」
佐天「……何の役にも立たないだろうけど、共感したいじゃない?友達とはさ」
初春「だったら私も、一緒に」
佐天「うん、それじゃ――って狭いな!」
初春「あぁじゃ腕を伸ばして貰って、そこを二人で――そうそう、そんな感じで」
佐天「じゃ、行くよ?さん、にい、いち――」
初春「――ゼロ……ッ!!!」
佐天・初春「「……」」
御坂「――ね、言ったじゃない次元が違うって」
御坂「あたし達は根本的なとこから違うのよ!なによこれ!どういことなのよ……ッ!?」
初春「すいません御坂さん、今から暴言吐きますけどスルーして下さいね?――ツッコミ所違うだろバーカ」
佐天「……うん、まぁ、あたしも初春と感想同じだけど……なにこれ?どういうこと?」
御坂「完璧じゃない!文句の付けようのないぐらいに正確な分析だわ!」
佐天「えぇまぁ、あたしも同じっちゃ同じですけど――いやいや、そうでなくって」
佐天「なんで他の人たちは超能力ステータスが見えるのに、上条さんだけお笑いステータスになってんですか?」
初春「数字的には納得ですし、しかし名前が『昭和風芸人』って一体……」
御坂「……こんな酷い現実を、突きつけるなんてあたしには出来ないわ……!」
初春「いや喜ぶんじゃないんですかね。根っからのツッコミ体質だって」
佐天「初春、面倒臭くなったからって対応雑になるのよくないよ?」
上条 ジーッ
佐天「あ、こっち見てる」
初春「私達のロスタイムが長いんで不安になってきたんでしょうか」
御坂「どうしよう……!なんて話せば!」
初春「芸人かコメディアンに就職されては如何でしょうか、って」
佐天「初春?」
上条『……クッ!右手が!』
初春「なんで右手抑えながら小芝居やってんですか、あの方は」
佐天「あー、あれじゃないかなー。スカウター見てた御坂さんのリアクションが良かったんで」
佐天「『あー分かっちゃったかー、無能力者なのに実は○○の俺能力見切られちゃったかー、折角隠したのにーつれーわー』的なリアクションでは?」
初春「それもう完全に中二病の発作としか、ねぇ御坂さん?」
御坂「……やだ、超格好いい……!」 パシャッ
佐天「それもう乙女を通り越して病んでますよ!戻って来てください!」
御坂「ち、違うんだからね!この写真は『この写真もっとカッコよくしてくれ』って匿名掲示板でスレッド立てるのに撮ったんだから!」
佐天「落ち着いて!そんなことしたら『もう既にカッコいいだろ』ってレスで埋まりますから!」
初春「てか佐天さんと二人でツッコんでる時点で非常事態ですね……」
上条「いやーゴメンゴメン、驚かせちゃったみたいでさ?」 キリッ
佐天「まぁ驚いたは驚いたんですが、多分方向性が違うような」
初春「特殊な運がEX(天元突破)だけの事はありますね」
上条「……でもアレだ。あんま人には言わないでくれると、助かる、かな?」 キリリッ
佐天「上条さんそれ以上言うと後で辛くなりますから!そんなチート能力がバレたヤレヤレ系主人公みたいなリアクションはやめといた方が!」
初春「さっきから特定のジャンルに恨みでもあるんですか?」
佐天「あれもさぁ……ブーム終ったらどこまでも黒歴史になりそうな……」
御坂「……見なさい」
上条「あぁいや、俺は分かってるから。いいって」
御坂「見なさい!そして自分で確認しないよ!」
御坂「アンタが今どんな状況に置かれてるかって!あたし達とは違うのかって自覚、しなさいよっ!」
上条「ビリビリ……」
佐天「いやいやなんかそれっぽい事言ってますけど!」
初春「まぁ……直接ご本人が見る以外にこのgdgdを打開する方は無いかなーと」
御坂「――でも、忘れないで欲しいの」
上条「うん?」
御坂「あんたがどんな人間だって――どんな能力だとしても」
御坂「あたしは、あたしだけはあんたの味方だってことをね」
上条「……うん、ありがとうな」
佐天「待って下さい!なんで馬鹿話からそれっぽい雰囲気になってんですか!?」
初春「むしろ御坂さんの方が上条さんを追い込んでる節がありますよね、これ」
上条「……」
佐天「あ、見たね」
初春「見ましたね、鏡使って」
上条「――俺、将来はお笑い芸人になるんだ……」
御坂「そ、そうよっ!前向きに!」
上条「――ってなんねぇよ!なんだよこのステータスはっ!?実に的確に分析してるじゃねぇかアリガトウっ!」
初春「納得してんじゃないですか」
佐天「流石『ツッコミ:A』能力者()……!」
上条「やめろ!そんな目で見るなよぉっ!?さっきはつい『あ、俺の右手がバレたか』みたいなリアクションしちまったじゃねぇか!」
佐天「やーい中二!」
上条「うっさいわ!つーか誰だってあんなリアクション取られたら勘違いするわ!」
上条「てかなんだよこれ!?誰がなんのために作りやがったチクショー!?」
佐天「てゆうか初春と御坂さん的には大事らしいので、それを確かめに行こうかと」
上条「俺も行くわ、てか是非ついて行かせてくれ。制作者に一言言ってやらないと気が済まない!」
佐天「あー、分かります分かります」
上条「だよなぁ?」
佐天「上条さんの大喜利はCですもんねっ!もっと上手くサバけるんでしょうし!」
上条「佐天さん、ツッコむところ違う」
初春「……いやぁ、こんなんでいいんでしょうかねぇ。かなーり大問題な気が」
御坂「……」
初春「御坂さん?」
御坂「……あたしの、初の学園SS共演が……!」
初春「あ、これダメなヤツですね」
(※参考)
収束性:異能の精度。どれだけ精密なコントロール出来るのか
拡散性:効果範囲
持続性:効果時間
瞬発性:とっさに発動したり、発動してから出力最大になるまでの時間
特異性:レア度(例えば第三位の電気系であれば結構いるので高くならない)
汎用性:能力を様々な分野で応用できるかどうか
EX:歴史的に名を残す
A:人類屈指
B:そのジャンル上位、平均よりもかなり上
C:同系統の中では標準値
D:使いどころを間違えなければ有用
E:ペド(○ドベ)
ツッコミ:ボケを見逃さず的確にツッコム精度
ボケ:笑いを取るために必須
リアクション:ドッキリや熱湯風呂でどれだけ面白おかしく出来るか
大喜利:同業他社を出し抜く発想を得る
司会進行:このスキルが高いか、事務所がテレビ局の大株主だとキャスターへ転職できる
お笑い運:神様に愛されているかどうか
EX:ドリフターズ(全てのジャンルで)
A:若い頃のダウンタウン(ボケとツッコミ)・ウッチャンナンチャンの白い方(ボケと大喜利)
B:ダチョウ倶楽部(リアクション)
C:サンドウィッチマン・ノンスタイルの白い方
D:品川庄司の裸の方
E:有象無象
――学園都市 路上
上条「てゆうかお笑いってなんだよ、お笑いって!ここまで頑張ってきたのにこの扱いかチクショー!」
佐天「見事に上条さんがorzになってます」
初春「しっ佐天さん!指さしたらいけませんよ!」
御坂 パシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッパシャッ
初春「はいそこ、連続撮影している御坂さんも自重しましょうね。一応落ち込んでるんですから、えぇ多分」
初春「ていうかツッコミが三人揃ったんですから、皆さん仕事して下さいよぉ!もっと真面目に!」
上条「どんな仕事?俺別にツッコミと学生の二足のわらじ履いてる訳じゃないんだからな?」
佐天「というか素に戻ってツッコみますけど、上条さんの(お笑い)能力は今までの積み重ねの結果、なるべくしてなったんではないかと」
初春「連綿とツッコミ続けた結果、今の巻き込まれ型主人公を形作っている訳ですからねぇ」
上条「待ってくれないか。その言い方だと俺がツッコミ以外に働いてないような――ハッ!?」
初春「たった今ツッコんだばかりですから、まぁ大切ですしね」
御坂「そ、そうよっ!ツッコミ無いと困るじゃない!」
上条「……どんな時に?」
御坂「……えっ?」
上条「魔術と科学が交差する世界で、どんな時に大切なんだろうか……?」
御坂「えー……っとね、ほら、そのアレよ?あー、っと、ホラ!佐天さん、ねっ!?」
初春「そんな無茶振りされましても」
佐天「んー、じゃあ、お付き合いされた時とか?」
御坂「そうよねっ!確かに付き合った時にツッコミ無かったら困るわよね、特に夜――ってシモじゃない!?何言わせてんのよ!」
初春「いえ、今のは御坂さんの方がフリをしていた感が」
上条「え、どういうこと?俺よく分からないなぁ、分からないから具体的に詳しく言って貰わないとビリビリ」
佐天「あまりのショックでキャラが崩壊――でもないですよね、微妙にラッキースケベとセクハラの間を行ったり来たりしてましたもんね」
初春「あと上条さんが謎の語尾キャラになっている件について。ロボットですかね、それともピカチュ○の擬人化?」
御坂「なんだろう、この、ツッコミとボケが目まぐるしく変わる状況って……」
佐天「というか最初の主旨が『なんかスカウターっぽいの拾ったんで遊ぼうぜ!』だったんですが、たまには思い出してあげてください」
上条「っていうか良くない、良くないよ!プライバシーだしさ!」
佐天「大丈夫ですよ上条さんっ!さっきの中二映像は既につ○へアップロード済みですから!」 グッ
上条「相変わらずキミは余計なところだけフットワーク早いな!もっと慎重になりなさいよ!」
初春「あ、でもさっきの一世一代のドヤ顔はちょっと面白いですねぇ。アドレスくださいよ」
上条「初春さん?俺が知ってる初春さんはそんな子じゃなかったはずだ!人の痛みを理解していくれる良い子だったよ!」
御坂「別アングルでいいんだったら、あたしのケータイにも動画あるわよ」
上条「ピリビリは……まぁ、前からそんな感じだったな。知ってた」
御坂「あたしの評価が低いのが納得行かないんだけど……」
上条「てか話を戻してだ」
佐天「えぇはい、あたし結構思うんですけど、上条さん時々”そーゆーの”出ますよね?」
上条「俺の中二病ピンポイントで遡ってないよ!もっと前段階へ!」
佐天「てか御坂さんならともかく、あたしや上条さんのようなパンピー組はいい加減にしといた方がいいんではないかと」
初春「えっ!?佐天さん……ご自分を一般人のカテゴリ分けしてるんですか!?」
御坂「うん、アンタ達鏡見なさいよって感じかな、うん」
御坂「うん、でもさ?やっぱりツッコミっていいのと思うよ!ギャグマンガには必ず一人いるし!」
上条「ビリビリにまでフォローしてくるって、どんだけ気ぃ遣われてんだよ。てかボケがボケっぱなしの世界は滅ぶわ」
御坂「………………あれ?もしかして、あれぇ……?」
上条「ビリビリが回想シーン入りそうだから、今の内に班決めしておこうか。そうだなー、それじゃJCチームと俺チーム、二班で頑張っていきたいと思う!解散!」
初春「待って下さい。一抜けしようとしたってそうは行きませんからね?折角お会いしたんですから、ツッコミの負担が増えますし!」
佐天「というか両手に花どろこか、両手背中に花なのに何撤退しようとしてんだぜ、っちゅー話ですよ」
上条「両手に花()」
佐天「鼻で笑われたよ!花だけに!」
上条「オイやめろ!俺が上手い事言おうとして事故ったみたいに言うな!」
佐天「初春も花……」
初春「違います。これは学園都市七不思議の一つでしてね」
上条「てかその髪飾り、花粉症の人にとっては悪魔のシンボルのような……」
御坂「――って無視しないでよ!何勝手に話進めてんの!?」
上条「してない。一歩すら動いてない」
御坂「そうじゃなくてさ、ふと思ったっていうかね。えっと前に言われたのよ」
御坂「『上条当麻が関わったから死人が出なかった』みたいな話を」
上条「……ど、どこの話?」
御坂「まぁ時系列的なのはさておくとして、ふと思ったのよ――」
御坂「――『ツッコミが世界を救ったんじゃないか』ってね!」
上条「いやそんなドヤ顔で言われても、違うものは違うと思うな−」
初春「あの、御坂さん?……熱はないですね」 ピトッ
御坂「ちょっと待て商機を疑われてんのかっ!?」
佐天「どれ、じゃあたしの失敬して……うーん、ないかなー?」 ピトッ
上条「どういう絵だよ。つーか二人してデコピタする意味ねぇだろう」 パシャッ、ピロリロリーン
初春「と、言いつつしっかり写メする百合厨が素敵ですね−」
佐天「――って訳で!はい上条さんもっ!」 チラッ
御坂「アシスト露骨だな!?あぁイヤ別にイヤじゃないけどねっ!流れだから!そう流れだから仕方が無いけどさっ!」
初春「すいません。佐天さんのボケと御坂さんのツンデレ乙女で、イチイチツッコむのが困難になって来たんですが」
上条「てか既に二人から『平熱じゃん』と言われたのに、俺が確認する意味が分からん」
初春「あぁそこはそれですね、男性と女性では基礎体温の違いってのがありまして」
上条「うんだからさ、違うって結論出てんのにすんおかしくね?って話をだな」
佐天「ごーごーれっつごーれっつごーミサカっ!ミサカ・ミサカ・ミサカっ!ごーごーごーごー、ミ・サ・カっ!」
上条「なんでチア風?しかも応援されんがビリビリの方っておかしくね?」
初春「いやまぁ、応援の仕方はともかく、合ってるは合ってますよ?むしろ空気読んでないのは上条さんの方で」
佐天「あたしと初春もやったんですから、上条さんもやらないと!ホラ、勇気を出して!ファィッ!」
御坂「人のデコピタを勇気ないとできないみたいに言われてもな……!」
初春「じゃあ聞きしますけど、御坂さん逆の立場だったらできます?」
御坂「でっ、出来る訳ないでしょ!?何言ってんのよ!」
上条「一秒前の台詞を思い出しやがれ――って本当に忙しいな!ボケ二人にツッコミ二人でも拾うの精一杯だよ!」
初春「佐天さんと御坂さんが伸び伸びとしているったら、えぇホントに」
佐天「さぁっ上条さん!御坂さんの準備は整いましたっ!張り切ってデコピタやって貰いましょうか!」
上条「いやそんな大イベントにされても……つーかこれアレだよね?知ってるデコピタなんだよな?」
上条「特に考えもしないで額と額くっつけるヤツで、そんなに盛り上がるようなもんじゃねぇと思うんだが」
佐天「ねーねー初春、上条さんも相当フラグへし折ってるよね?」
初春「えぇはい、ですのである意味ボケもこなす万能型プレイヤーと言えるのではないかと」
上条「やめて。サッカー選手で特に誉めるような長所がなくて、困った時によく使われる万能型プレイヤー呼ばわりはやめて!」
初春「流れるような説明ツッコミでしたが……あ、御坂さんの方準備整ったので、どうぞ」
御坂「……」
上条「いや違う、これ違う、俺の知ってるデコピタと違くね?」
上条「両手を胸の前で握って目ぇつぶって軽く顎出して気持ちつま先立ちになってるのって、違うよね?これもっとエロいシーンの導入部で使うヤツじゃね?」
上条「なんかこう寸止めラブコメでは、口に来ると思ってたのにデコへ来て、『もうっ!』みたいに言われるけどまんざらでもないみたいな」
佐天「分かってないな−。これはですね、最近のJCでは当たり前ですってば。ねぇ?」
初春「で、すねぇ。佐天さんが言うんでしたら、まぁ正しいかも知れません」
上条「そ、そうなの?未来に生きてるなJC」
佐天「そこでチョロく騙されるのもイイ感じですが、さぁっ!どうぞっ!」
上条「あ、うん、何かもうデコピッタンするような雰囲気でもねぇし、ビリビリがオーバーヒートするぐらい顔真っ赤でする意味があんのか分からないが」
上条「じゃあまぁ、ちょっくら――」
白井「――ヲォェォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇさぁあぁぁぁまもぉぉぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
上条「あぁうんそんな気はしてそげぶっ!?」 ゲシッ
佐天「ナイスツッコミです白井さん!」
初春「流石は(笑いの)神様に愛された男ですねぇ」
白井「おんねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ様っ!わたくしとあろう者がいながら類人猿如きに懸想なんて酷いですわよ!」
御坂「黒子!?アンタどうやって抜け出して来たのよ!?」
初春「やっぱり埋めて来たんじゃないですか、山的なものに」
御坂「ち、違うわよ!ただちょっと黒子に『即身仏ゴッコてみない?』って言っただけなんだからね!」
佐天「むしろガチに来ていると見ましたっ!」
白井「ふっ、あの程度の障害でわたくしの愛は消えませんなのよ!」
初春「キャラ守りましょう、ねっ?それREから始まる精霊さんになってますんで」
佐天「あれ……えぇまぁ、可能性って言葉素敵ですよね、としか」
御坂「頑張ろう!フリーになっても私達は友達だからねっ!」
白井「……なんで腫れ物を扱うみたいななってますの?」
佐天「て、ゆうかですねぇ。すっ転んでいった上条さんもいい加減戻って――あれ?」
初春「どうしまし――た?」
佐天「あ、あのさ。上条さんが吹っ飛んでった先にね、えっとね、たまたま開いてた台車があってさ」
佐天「その台車にぶつかったかと思ったら、そのまま偶然開いていたトラックの荷台へ、すぽーんって」
佐天「その後は、まぁ運転手が扉閉めて発進、みたいな?」
御坂「あーうん、『お笑い運:EX』の呪いよね−」
初春「まぁなんだかんだで打たれ強い方なので、自力で帰って来てくれるとは思いますけど。一応ナンバー控えっと」 ピッ
白井「何のお話ですの……?」
御坂「なんて言ったらいいのかなー、まぁ……リアンション芸?」
佐天「違います大分違います。謎レンズをあたしが拾ったところから始まったみたい、つーか誰が持ってんでしたっけ?」
初春「私じゃないですよ。御坂さんでは?」
御坂「え、あたしも違う――ってことは!?」
初春「……どうましょう、これ……?」
――路上
上条「――く、もう少しで大惨事だったが、なんとか生き延びたぜ!」
上条「てか白井!お前はきっと俺を蹴り飛ばして駆ったつもりになっているだろう、あぁ確か!一面だけを見ればお前は勝ったかもしれない!」
上条「んがしかぁし!ある意味で言えば俺も一矢報いてやったぜ!何故ならば――」
上条「……」
上条「……中学生、中学生なんだよなぁ、白井さん。つーか歳、うーん?」
上条「つい見ちゃったおパンツ面積狭くね?つーかあんなエロエロしいの穿いてんの?スッゲーな常盤台!」
海原「――JCのパンツと聞いて!」
上条「オイ自重しろJC変態。噂では妹さんと再会しやがったくせに」
海原「ほぼ身内に等しい後輩に今更どうしろと?」
上条「むしろアレじゃね、常盤台の制服着せろよるデカルチャーになってかもしんねぇしさ」
海原「……」
上条「本気で悩むなよぉっ!?今、『あ、それもアリっちゃあアリかな』みたいな顔してた!」
海原「イヤだなぁ上条さん、自分はそういうつもりは全然」
上条「お前の爛れた人間関係に首突っ込むつもりはねぇが程々にしとけよ」
海原「いえいえ、上条さんに比べればまだまだ」
上条「あれ?その言葉って謙遜する時に使うんだよね?人小バカにする時には使わなかったよな?」
海原「そんな事よりも上条さん、自分をお呼びかと思いまして」
上条「あぁ、そうだな。丁度良かったよ」
海原「常盤台のパンツ調査は流石に、自分には荷が重いかと」
上条「用事違う。あとその調査で荷が重くないヤツを、俺は、知らない」
海原「先程のツインテの子でしたら、それなりに行けるのではないかと」
上条「退学食らうと思うなぁ。流石に――ってじゃなくて、これだ、これ」
海原「大体の事情は察しています。と言いますか、上条さんよりも詳しいかと」
上条「おぉ流石だ――な?」
海原「何故に疑問系で?」
上条「いやなんでお前知って……あぁ、いつものアレしてたのな」
海原「自分をストーキングキャラにしないで頂きたいのですが!」
上条「自覚あるじゃねぇか。てかお前ホント海原君オリジナルに謝った方がいいと思うよ?」
上条「お前がビリビリ追い回す度に酷い風評被害を受けるのは彼なんだからな?ただですらビリビリ的好感度低めなのに……はっ!?」
上条「お前まさか、ビリビリにちょっかいかけてるオリジナルの評判下げるのが目的で海原スキン装着してんじゃ……?」
海原「いえですからそんな目的ではありますん」
上条「誤魔化すの下手クソか!」
海原「――で、件のレンズなのですが、やはりこちら側のものである可能性が高いかと」
上条「無理だもの。お前の黒い一面見た後に、こっからシリアス入ろうとしても無理があるもの」
海原「まぁそこは努力して貰うとして――先程のツインテの子、どうでした?」
上条「超エロいパンツ穿いてた、もう紐」
海原「違います、興味無い――ことも、まぁないですけど、ステータスの方です」
上条「お前も興味あんのかよ。てかプライバシーじゃ?」
海原「風紀委員で能力使いまくってる方に、それは適応されないのでは、と」
上条「まぁ隠してないからなー。チラッと見て憶えてる範囲で言えば」
上条「――かな?大体このぐらいだった感じ」
海原「下世話な話ですが、流石は学園都市屈指のテレポーターですね」
上条「え!?白井さんって一番じゃねぇの!?」
海原「あー……っとですね、まぁはい、なんて言いましょうか。自分の同僚に一人いまして」
海原「能力的にも犯罪的な意味でもレベルは上かと」
上条「そうなんだー?……って今犯罪って言ったか?」
海原「では見に行ってみます?」
上条「あぁその前に、よかったらお前も見ていいかな?俺の評価が納得行かなくてねっ!」
海原「科学サイドの物でしたら、自分を見ても反映されないかと思いますが、まぁどうぞ」
上条「あざーす。デュワッ!」
海原「あぁでも自分がどんなお笑いステータスなのかは少し興味がありますよね。やはりボケなんでしょうか?」
上条「……」
海原「上条さん?どうされました?」
上条「――なぁ海原?」
海原「はい?」
上条「じゃあなっ!俺は友達だと思ってたよ!」 ダッ
海原「はぁいっ!?」
――
上条「……」
佐天「おっ、お帰りなさい上条さん。いやぁ探しちゃいましたよー」
初春「いえあの、両手にクレープ抱えてたら流石に説得力はないんじゃないかなと」
佐天「てか上条さんの分もありますよ−、どうぞー?」
上条「……いや、いいんだ俺なんて。俺なんか、もう将来は芸人を踏み台にして最終的には政界へ打っててればいいんだ……!」
初春「それ大成してますよね?人生ゲームでも上位職ですもんね?」
上条「なんかこう、旅に出ようと思うから、これ返しておくな?」
佐天「あ、はい。どうもです」
上条「ビリビリ達は――ってまぁ白井さんが追いかけてビリビリが逃げる感じか」
初春「まぁテンプレ的なアレかねぇ。ご本人達も楽しそうですからいいんじゃないかと」
上条「……まぁうん、疲れたから今日は帰って振り出しに戻ろうと思う。それじゃ、また」
佐天「お疲れ様です――って、謎のヤサグレ方をしてたよね。何があったのかな?」
初春「ツッコミ疲れが出たんじゃないですかね。日頃の疲れもあるでしょうし」
佐天「そっかぁ、それじゃしょうがないよねー――ってツッコミ疲れ?」
初春「ま、御坂さんたちが戻ってくるの待ちましょう。メールは入れましたしもう少しかと」
佐天「あー、いよいよ回収されちゃうのかぁ。寂しいなー、もう少しだけ使いたいなー」
初春「……ちょっとだけですよ?ここから見える範囲で、ですからね?」
佐天「やたっ!それじゃ早速――」
佐天「……あれ?これ、なんか、うん、あれ?」
初春「どうしました?また御坂さん級の方がいましたか?」
佐天「あぁいやそうじゃなくってさ、そうじゃないんだけど。ちょっと見てくれるかな、これ」
初春「どなたをですか?」
佐天「あの、ほら、学生服を羽織ってウインドショッピングしている赤い髪の人」
初春「どこかで見た憶えが――まぁいいです、でゅわっ?」
佐天「――ね?」
初春「またなんか、こう濃いぃステータスですねっ!業が深いって言いますか!」
佐天「また見た感じがフツーに綺麗なお姉さんなのが、うーん?」
初春「てかあれ、よく見ればディスプレイ見てるんじゃなくて、反射で映りこんだ小学○の列に焦点があってるっぽい……!」
佐天「色んな人がいるよねー、この界隈は」
初春「あ、誰が近付いて行き――あれ?」
佐天「また凄いの来やがったな!何だあの青髪ピアスの人!?」
初春「これはもう、このスカウタ○モドキが間違ってるのを、切に祈るしかないですかねぇ」
佐天「青髪の人、金髪の人と合流したね」
初春「……しましたねぇ」
佐天「み、見ないの?」
初春「個人的にはもうお腹いっぱいです。てかもうて外見は普通っぽいのに、人間不信になりそうですよ!」
佐天「まぁ、ねぇ。能力もある意味そうかも知れないよねぇ。あたしらが隠そうとしてるのを、無理矢理引き出す、みたいな?」
初春「あー聞いたことはありますよ。能力の系統によって心理分析がどうって」
佐天「血液型性格診断と同じじゃねぇかな、って思うけどさ」
初老の男「――もし、宜しいですかな?」
佐天「はい?」
初春「――あ」
初老の男「如何なさいましたかな、私の顔に何か?」
初春「い、いえなんでも!」
佐天「初春……?」
初老の男「お声をかけたのでのはですね、お嬢さんがお持ちの”それ”、私が落としたメガネですので返して頂ければなと」
佐天「メガネ、ですか?それにしてはちょっと大きいような」
初老の男「ステージ用の小道具でしてな。この、単眼鏡のフレームに嵌まれば証拠になるでしょうか?」
佐天「わー、素敵なデザインですね−。翼っぽい」
初老の男「『ヘルメスの目』、ですな。お嬢さん方とはジャンルが違いますが――ほら、この通り」
佐天「入りました、ね」
初老の男「そりゃそうですよ。元々私の物なのですから」
初春「あのっ!……ですね、その」
初老の男「あぁ見ましたな、これ」
初春「……すいません。見るつもりはなかったんですけど」
初老の男「これは特注品でしてね、デタラメな文字が浮かぶ仕様になっているんですよ」
佐天「デタラメ?いやいや、なんかきちんとそれっぽい感じでしたよ」
初老の男「そうでしょうとも――だってそういう風に造られた物ですから」
佐天「はい?」
初老の男「ある詐欺師の手口にですね、こう、解釈が幾らでも取れるというものがあります。ノストラダムス、ご存じで?」
佐天「来ませんでしたけどね」
初老の男「彼の手法ので、一つの言葉でも複数の意味を持たせたり、曖昧にしていかようにでも解釈できるようにするんですよ。例えば」
初老の男「『あなたは酷く疲れている。その原因があなたを死へと追いやっているのは明白であり、彼の影を踏むな』、という風に」
佐天「そこだけ聞くと予言ぽいですけど」
初老の男「まぁぶっちゃけてしまいますと、誰でも疲れてるものですし原意に心当たりはあります」
初老の男「そして大抵はその疲れは対人関係から来るものであり、”彼”と人が原因だとしています――と、いうように」
初老の男「聞き手が自分にとって当て嵌まるよう、勝手に解釈してしまうんですね。”これ”はただそれと同じで」
初老の男「ここが学園都市であれば、能力の大小に不可思議な名前を組み合わせ、ランダムで現れるようにしました」
佐天「成程……って言うことは、わざわざ担ぐためにやったってことですか?」
初老の男「まぁ、個人的な復讐もありましたが――と、そうそう手を出してください。こう、広げるようにして」
佐天「はい?」
初老の男「私の手には何も持っていませんね?もう片方も同じ。宜しいですか?」
初老の男「ではあら不思議!ここで手を叩けば空中より大粒のダイヤを取りだして見せましょう!はい、三、二、一――」
パンッ
佐天「うわぁ綺麗――って重っ!?」
初老の男「それはお礼に進呈致します」
佐天「いや手品は凄いですけど!こんなのは!」
初老の男「大した価値などありませんよ。私にとってはガラス玉と大差ありません」
佐天「はぁ。まぁそう仰るならありがたく」
初老の男「いやいや、こちらこそ感謝しておりますぞ。これでまた仕事を続けられる」
佐天「お仕事は?」
初老の男「詐欺師です」
佐天「ですよねぇ――ってン訳ないじゃないですか!」
初老の男「まぁ親戚みたいなものですかねぇ。では、これで失礼を」
佐天「あぁはい。次からは注意して下さいね」
初老の男「――はい、”また”是非いつかお目にかかりましょう」 スゥッ
佐天「はーい――って初春、さっきから静かだったけど、どったんの?」
初春「……佐天さん、”あれ”はダメです」
佐天「どれ?」
初春「今の人、次見かけたらダッシュでその場を離れて下さい。お願いですから」
佐天「なんで?」
初春「いいですね?分かりましたね?」
佐天「う、うん……分かった、けど」
−終−