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Clock(trial)

鳴護「当麻君が異世界から帰ってこない」

 
――夢の中?

鳴護「――うん……?」

ネフテュス『――目を覚ますのですARISA。何かこう最近伸び悩みつつ、後輩の圧に苦しむものよ……』

鳴護「後半いるかな?てか後続からのプレッシャーは誰にでもあると思うんだけど、今ここで言う必要はないよね?ねっ?」

娘々『目を覚ますんだぜ……えっと、前にエルデンリン○っぽい世界観のSS応募来たと思ったら、最近ファ○通は連載始まったの読んで』

娘々『――「あぁこういうギャグ世界だったら良かったのか」と誤った認識をしている一般人よ……』

鳴護「それあたしに呼びかけてすらいないよね?別の人だよね?」

娘々『よりにもよって「邪剣さ○」の作者だからな!逆にセンスはある、ただ原作ファンには公式がケンカを売りまくってる形に落ち着いてるっちゃ落ち着いてるが!』

ネフテュス『起きなさいARISAよ……最近何かこう扱いが雑になりつつも、仕事を一度断ったら二度目がないような気がして断れない少女よ……』

鳴護「多分あたしのことですね。もしくは中堅に入った声優さんのどっちかだと思います」

娘々『腰の痛みをロキソニ○で誤魔化しているものの、痛みが中々治らないのは寒さのせいだと誤魔化しているオッサンよ……!』

鳴護「あれココあたし以外にも誰かいちゃったりします?具体的にどっかの運営さんとか?」

ネフテュス『どうせ整形外科行っても処方されるのはロキソニ○かロキソニ○の飲み薬、と割り切っているらしいわよ。それが正しい選択かは別にして』

娘々『むしろ逆に「耐えられない激痛じゃないからまだ大丈夫」と言い聞かせてるらしいだにゃーん。それが正しい選択かは別だぜ』

鳴護「いや、そんな話はどうでもいいんですが……あの、どちら様で?」

ネフテュス『私が神です』

娘々『いいえ私が神だぜ』

ネフテュス・娘々『……』 ジーッ

鳴護「いやムリムリムリムリ!ここでどうぞどうぞの流れになっても!世界中で乗るのは当麻君と涙子ちゃんとレッサーちゃんし最愛ちゃんぐらいってそこそこ居たね!」

ネフテュス『ナイス・ツッコミ……神様ポイントを10ポイント進呈する……』

娘々『マックスになると残機が一つ増える。具体的にはトラック転生を一回だけ回避できる』

鳴護「いえ、いらないです。てゆうかそれ結果的に成り上がりの芽を摘んでいませんか……?」

ネフテュス『「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(※フルネーム)」違反で、人生を踏み外すトラッカーを救おうとするのはいけないことかしら?』
(※62点、欠格期間8年。しかもトラックなどの貨物車は毎年車検があり、過失が認められたら保険次第で人生詰む)

娘々『ダメ人間を救う神がいるんだ!だったらトラック野郎を助ける神がいてもおかしくないだろ!?』

鳴護「ちょっと興味ないですね。それよりもコスプレが神に入ってる感じのお二人は、当麻君のお友達関係ですよね?」

ネフテュス『そうね。そのチンピラ友達のハマーに憑いてる福の神です。崇めなさい』

娘々『交通安全には一家言あるぜ。よろしくな』

鳴護「はぁ、まぁそれでその神様が何かご用でしょうか?」

ネフテュス『前にね。ハマーが遊びに行きたいっていうから、行かせてあげたのよ。でも帰って来なくて、異世界から』

娘々『向こうでチートパワー使ってハーレム構築してやがんの。超楽しかったー』

鳴護「ま、まぁ誰もいないところではっちゃけるのは分からないでもないですよ!旅行先でテンション上がるみたいなね!」

娘々『そのノリで大勢の人間の運命をねじ曲げてる件について』

ネフテュス『もう災害なのよね。もっとやれ』

鳴護「神様にしては妙に黒い発言が目立つような……?」

ネフテュス『それで上条少年に連れ戻しに行ってもらったの。知り合いに見られて正気を取り戻したらしく、帰ってきたのだけれど』

鳴護「あ、じゃ良かったじゃないですか。やらかした先の国が気になりますけど」

娘々『順調に周辺国へ侵攻を始めてるじゃんね。勇者様が残してくれた技術と魔導があるから』

鳴護「え」

ネフテュス『残っていても用済みになって暗殺されるだけだったわ。まぁ結果的にはオーライよね』

鳴護「世知辛いですよねぇ。魔王を倒した後の勇者さんほど危険物はない筈ですし」

ネフテュス『そうね。だからダイの大冒○ではハニト×を仕掛けてるでしょ?』

鳴護「レオ○ちゃんが腹黒みたいに言わないでください!あれは小さい頃からの積み重ねであって!」

娘々『「父さんは人間を裏切ったんじゃなかった、人間が父さんを裏切ったんだ……ッ!!!」』

鳴護「ダ○君はそんなこと言わない。あとそれ台詞から考えて親子共々ダメなルートに入ってるってことですよね?」

ネフテュス『と、まぁハマー帰還したのはいいのだけれど……一つ問題が残ってしまったの。マジで』

娘々『それでその解決をARISAにゃんにお願いしよーかなーと。ガチで』

鳴護「……あたしにその混沌とした世界へ行って何をしろと……?」

ネフテュス『帰ってこない人を連れ戻してほしいのね?』

娘々『具体的には上条当麻さん(17歳ぐらい)じゃんよ』

上条「ミイラ取りがミイラになってる!?比較的リテラシーの高い当麻君ですら!?」

ネフテュス『で、どうしようかなーと思っていたら――あ、こんなところにサルベージ要員が』

娘々『ちゅー訳で行って来てくんない?神様ポイント1億点をあげっからさ?』

鳴護「その謎のインフレポイントは結構です。行くのもまぁ……あたしじゃ腕力的に無理じゃないですかね?」

ネフテュス『大丈夫、神様を信じて?』

娘々『信じる者は足元掬われる――名言だよなっ!』

鳴護「段々お二人が”邪”とか”悪”とか頭に付く神様だって分かってきました。最初から聞く気ないですもんね」

ネフテュス『安心してほしい。常に面白おかしくモニターしているから、最悪の場合は助けるという口実で武力行使する』

娘々『頑張れカナリア二号!一号はお前の助けを待っているぜ!』

鳴護「あ、これ何言ってもダメなヤツだ。お姉ちゃんが『塔』の上でテンパってたときの瞳と一緒だ」



――異世界 森の中

鳴護「――って歩いて即来ちゃったけど……」

絹旗「がおー。超フェンリルです」

鳴護「……」

絹旗「……何か?」

鳴護「ちょっと可愛かったです」

絹旗「えぇまぁ、私の自分でやっていて超迫力に欠けるなぁとは思っていたんですよ」

鳴護「ここにいるってことはサルベージ班の方で?」

絹旗「ですね。ウチの浜面がご迷惑をおかけしたため、超珍しく私が志願してきましたよーしぶっ殺すぞー」

鳴護「既に人格崩壊の兆しが見て取れる!?」

絹旗「――くっ!私の中の悪魔が『異世界で目撃者も居ないし消すのには超バッチコイですね』と囁く……!」

鳴護「随分冷静な判断力を持ってるよね、悪魔さん?たった一瞬でそこまで考えるのは計画的犯行じゃないかな?」

絹旗「まぁそれは流石に超冗談ですけど。私は護衛獣にありがちなフェンリルとしてついていきますから」

鳴護「フェンリル用意が皆無なのに?格好から何から普段と変らないよ?」

絹旗「てか現地の人間がフェンリルどーたらと種族名で語り継いでる辺り、昔から地球の汚染が超続いていたという証拠……!」

鳴護「賭けてもいいけどそこまで誰も考えてないよ。きっと『オオカミ格好いいな!フェンリルでいいか!』ぐらいの安直な考えで」

絹旗「ではちょっと怪我をするので超癒してください」

鳴護「無理です。あたしは基本何の武器も持たず、着の身着のままこっちへ放り込まれたんで」

絹旗「『能力』、使えましたけど?」

鳴護「歌を通じて効果を発揮できるタイプの能力なので……きっと怪我が治る速度が上がるとか、そういう効果になると思う」

絹旗「『あなたが――我々の探していた聖女か!だとすれば追放した先の聖女は超一体……!?』」

鳴護「嫌だよ面倒臭い!?政治的なアレコレに巻き込まれた挙げ句、トロフィー代わりに軟禁されるだけでしょ!?」

絹旗「聖女モノも見方を超変えれば戦略物資ですからねぇ。次々とヒロインに恋する王国なり皇国の重要人物達は、果たして純粋な恋心なのか疑いたくもなるってもんです」

鳴護「てか、さっさと当麻君見つけて帰ろうよ。最愛ちゃんの腕っ節と容赦が全くない暴力脳は信じてるけど、モンスターや魔法のある世界だから危ないし」

絹旗「元の世界にも超あったっぽいですけどね、モンスターと魔法。ともあれ移動するのは超賛成です」

鳴護「じゃ行こうか。街道沿いに歩いてれば街に着くかな、てか当麻君がどこにいるのかも……!」

絹旗「浜面と同じで超バカなことやってんじゃないですかね?てかこの世界がどうなったかって聞きました?」

鳴護「前の、ハマヅラさん?って当麻君のお友達が勇者やってたってことぐらいかな」

絹旗「現在戦争、超真っ只中です」

鳴護「……どういうこと?ちょっと前までは多分世界一の国だったんでしょ?チートっていうか、現在知識とか超魔法とかで嵩上げしてるから」

絹旗「私も神様お二人から聞いた範囲なのですが……まぁ、奥さんが大量にいたんですよ。こんな世界ですし」

鳴護「地球の価値観を持ち出して倫理で殴りかかる割には、そういう所だけは現地式を採用しがちだよね」

絹旗「所詮は男ですしね。んでまぁ奥さんが、えーと……王族、ネコミミ、イヌミミ、ヴァンパイア、あとエルフだのドワーフだの魔族だのと一通り揃えたのですが」

鳴護「なんて端的な説明なのに分かってしまう自分が嫌だな……ッ!」

絹旗「全員が血で血を洗う超内戦だそうです」

鳴護「……家族、なんだよね?不謹慎だけど、まぁ、その、全員が奥さんって感じで?」

絹旗「内面はそれぞれの種族を代表して超虎視眈々だったそうですよ?そもそも王族は王族としての超勤めで嫁いだ訳ですし」

鳴護「だったら獣人の女の子は!?」

絹旗「ドブへ突き落とされた後、手を引っ張って助けてくれても超恩義を感じるかは別では?また個人と種族はまた別ですし」

絹旗「他の種族はただ単に生存競争だそうです。超ヤレヤレですよ」

絹旗「なお、どこから誰かさんが超持ち込んだ技術により、獣人は魔法耐性を獲得、ヴァンパイアは弱点を克服、エルフはセラミック製の防具と合性弓を装備」

絹旗「ドワーフはパーツ毎に換装できるゴーレムの群れを操り、魔族は邪神の支配から抜けて自由意志の元に超攻め込んでいるとか。意外と頑張ったんですね、浜面」

鳴護「……当麻君、生きてると思う?」

絹旗「本人の運次第では?」

鳴護「じゃあ死んでるよ!?どうしよう!灰の状態からでも魔法キャンセルって効果あるのかなっ!?」

絹旗「超落ち着いてくださいよARISAさん。流石にあの二人がそこまで性悪ではないですヤッベェ超テンション上がる」

鳴護「最愛ちゃんはもっと上手に嘘を吐こう?いつかきっと暴力だけでは勝てない相手が出たとき困るよ?」

絹旗「まぁそういう訳で人類は基本超ケチョンケチョンだそうです。ローファンタジーがある意味ハイファンタジーへと転生を果たしたとも言えますか」

鳴護「誰にとっても裏ルートなんだよね。めでたしめでたしで終われなかった残酷な世界」



――街

鳴護「意外とすんなり入れたね。通行料どうしようかって思ったんだけど」

絹旗「良い服を着ているので貴族か商人と子供と勘違いしたみたいです。まぁ何かあっても超突破しますけど」

鳴護「見境なく暴力を振るうのはやめよう?信頼してないってことはないんだけど、異世界だから犯罪者は切り捨て御免とか仏にされそうだしさ?」

絹旗「『――ステータスオープン……ッ!!!』」

鳴護「最愛ちゃんの年相応なとこが出てる!どう考えても人選ミスだなこれ!」

絹旗「ではここで二手に分かれて超情報収集をしましょう。ARISAさんは治安のいい表通り担当で」

鳴護「えぇ……最愛ちゃんも一緒に行こうよ?」

絹旗「私はちょっと超潜入して情報を探ってきます。はっきり言って危険ですから」

鳴護「潜入って、どこに?」

絹旗「取り敢えず冒険者ギルドが超怪しいので、冒険者登録してきますね」 ワクワク

鳴護「二次遭難って言葉知ってるかな?要は今の最愛ちゃんがまさになってる」

絹旗「超知ってますよ。軽い気持ちで買ったアニメに一目惚れして、現実の異性or同性に興味を持たなくなったアレですよね?」

鳴護「それ二次元遭難。当の本人は得てして満足してるからまだ社会問題にはなってないだけ」

絹旗「深く静かに超進行しているパトゥーンですよね。ではここらで解散しましょうか!」

鳴護「あの……暴力装置さんがいないと、あたしは即行でオークションにかけられそうで……!」

オーク『――おっ、野良の歌姫ブヒか?今から勇者にやられるブヒが、一緒に来るブヒ?』

鳴護「お願いします来年もサメマラソンさせて頂くためにも一緒にいてください!あと軽挙妄動も謹んで!」

絹旗「それは超盲点でしたね!確かに私が異世界で建国するよりも、サメ映画を見る方が優先順位は高いです!」
(※また今年もいい感じに最低なサメ映画が公開しやがりました)

鳴護「あとオークさんが自らやられに行くのって世界観がバグっているとしか……」

オーク『あれ知らないブヒ?勇者は別名オーク・ヒーローっていって、ブヒ達の英雄が転生した姿ブヒよ?』

鳴護「あぁうん……転生組はそんな不名誉な認識をされてるのかな」

絹旗「外見が超シュッとしたオークですからね。やってることは『お前それどうなの?郷土のお父さんお母さんみたらどう思う?』と」

オーク『「――息子よ、どうせだったらフルコンプリートを目指しなさい……!」』

鳴護「隣のお母さんが鈍器の様なものでツッコミ入れるよね?」

オーク『ドンペ○の存在意義についてブヒ』

鳴護「それ鈍器↓じゃなくてドン○↑」

絹旗「恐らく海外でのアイコンとして超展開していると思います。効果のほどは分かりませんが」

鳴護「ここで話しててもしょうがないからさ、取り敢えず宿とろうよ?もしかしたら長丁場になるかも知れないし」

オーク『あ、だったらブヒの泊まってる所をオススメするブヒ。入る客と出てくる客の人数が合わないって評判の』

鳴護「うん、それは分かりましたからあっち行っててくれませんか?知り合いだと思われたくないんで」

オーク『オークだけに?』

鳴護「何もかもかかってないよ!?何かこう異世界にもいるんだね面倒なヒトが!」



――宿

上条「――ヘイいらっしゃい!お食事ですかお泊まりですか、お泊まりでしたらこちらにお名前を記帳してくださいね!」

絹旗「超宿泊でお願いします。食事はついてくるんですか?」

上条「夕食と朝食付、二人部屋だと銀貨5枚ですね!あ、食事なしだと4枚になりますが!」

絹旗「では付いてる方でお願いします。でいいですよね?」

鳴護「良くないかな?全然何一つとしてスルーできるところがないからね?」

上条「や、お客さんね?ウチは三階から上全部女性用になってますんで、ちょいと高いとは思いますが安全ですぜ?」

鳴護「そういう事じゃないんだなぁ、そういう話をしてるんじゃないんだよねぇ」

絹旗「ですよ。お金をケチって危険を呼び込むのは超アホのすることですし」

絹旗「もしかしたら我々の探索の旅は一週間、いやせめて二・三日はかかると私の勘が超言っています、なのでここは焦らずじっくりと観光を」

鳴護「あれ最愛ちゃん?もしかして『折角だから何日か遊んでから』とか言ってるよね?同意しなくもないけど、その前に白黒つけた方がいいことが」

上条「仕事中なのでご宿泊にはお名前の記帳をお願いしますコノヤロー!」

鳴護「真面目か」

絹旗「既にこの状態が超不真面目だと思います」

……

鳴護「……異世界で食べるのがサンマ定食ってどうなのかな……?」

絹旗「個人的にも超どうかと思いますが、下手に現地のローカル食を口にするよりは安全かと」

鳴護「謎の食材を知らないまま口にするよりはマシかな。あ、でも味付けが当麻君なんだよ」

絹旗「『これ――当麻君の味がする……!』」

鳴護「そんな事言った覚えはないよ」

オーク『「これ――当麻君の味がするブヒ……!」』 ニチャアァッ

絹旗「ウミガメのスープですね。一説によると超美味しくないらしいですが」

鳴護「すいません最愛ちゃん。あたし達の前に不審人物がまさにいるんですが」

上条「あぁまぁそのオークは気にしなくていい。悪さは基本的にしないから」 ガチャッ

鳴護「現実世界でのイメージの悪さが先行して全然信用できないんだけど……」

オーク『ぷるぷる、ブヒは悪いオークではないブヒよ?ちなみに好物は黒エルフ(ロ×)ブヒ!』

鳴護「それってダークエルフさんの天敵ってことですよね?」

上条「あー今は人間とエルフは戦争状態だから、うんまぁ、取り締まる法律がないんだ。一応こんなんでも戦力としてカウントされてるらしくてさ」

鳴護「この世界が様々な意味で終わってるのは理解したよ。それで?当麻君はこんな所で何をしているのかな?」

上条「――俺、この宿を街一番にするって決めたんだ……ッ!!!」

鳴護「もうすぐ滅びるよ?」

絹旗「決めたっていうよりキメてんじゃねぇのかってぐらい超澄んだ瞳ですよね」

上条「いいか?アメリカでゴールドラッシュが起きたとき、金で稼いだ労働者よりも、その奥さんがやってた宿屋の方が何倍も貯金したって話があるんだよ!」

鳴護「それは採掘で働く人たちが刹那的な生き方をしてるだけでは……」

絹旗「アホが飲む・打つ・買うだけを超リピートしていた結果だと思われますが。ある意味浜面的に」

上条「だから俺はこの世界で一旗上げてやるんだ!幸いにも地球の料理の知識はあるし、世界を跨いだから著作権的にはきっとセーフだし!」

鳴護「そうなの?」

絹旗「日本の法律ですと料理レシピに著作権は超認められていません。なので信玄○やひよ○、萩の○など、有名な和菓子は類似商品が数多くありますね」

絹旗「ただ『他人様のレシピ本をデザインから内容まで丸まんまパクって出版した』のは、流石に超負けた判例があります」

鳴護「……というかね、当麻君ね。不満があるわけじゃないんだけどさ?もっとこう別の方法で頑張ろうって気はなかったのかな?例えば冒険者とか男の子、好きなんだよね?」

上条「――アレは、フィクションだからな?」

鳴護「その台詞、当麻君だけは言っちゃいけない台詞だと思うな」

上条「あぁいや俺だってチートに憧れはあったし、そういう力が無くてもソードワール○的な世界観に心引かれるのはその通りだ」

鳴護「だよね。あぁいややれって言ってるんじゃなくて、ただ不思議なだけで」

上条「ただなんつーかな……あー、ホラ。壁んとこにデッカイ剣が立てかけてんのは分かるか?」

鳴護「剣……?扉が立てかけてあるなーとは思ったんだけど、あれオブジェか何かかな?」

上条「あれの持ち主が」

オーク『どうも、オークブビ』

鳴護「それは知ってた。角煮の油の匂いが最初っからしてたから」

上条「……あれ、片手で振り回す相手がゴロゴロしてる世界で、俺にどうしろって?」

鳴護「あ゛ー……いやいや!でもなんかこのオークさんが特別なとかあるかも!」

上条「素の力で振り回せるんだってよ。成人したオークだったら病気とか体質でもない限りは」

鳴護「……よく人間が殲滅されずに生きてきたよね?」

上条「だから俺は早々に諦めてメシ屋に転身した!適材適所って所だな!」

絹旗「(――で、実際のところは超どうなんです?)」

オーク「(ブヒはオーク種の中でも戦闘特化の一族ブヒね。軽いジョークで言ったブヒが反省はしてないブヒ)」

絹旗「(でしょうね。どう考えても弱そうな人間の冒険者とか超ゴロッゴロしてますし、それだけ戦力差があるんでしたら滅びてます)」

鳴護「現実が分かってくれたようで何よりだけど――じゃあ、そろそろ帰ろっか当麻君?帰るべき場所があるってことだからね」

上条「い、いやでも店を譲ってくれるって話が来てるんだよ!ここで頑張れば店のオーナーに俺がなれるんだ!」

絹旗「バイト店員に持ちかけるだなんて超絶妙に胡散臭いですよね。ホントの所はどうなんです?」

オーク『この店の内部の話は知らないブヒ、なので少年が評価されてるって可能性もなくはないブヒ。ただ……』

鳴護「ただ?」

オーク『もうすぐ魔族が攻め込んでくるって噂があるブヒ。だからその前に適当な誰かに押しつけて逃げるとか、ブヒ?』

鳴護「だ、そうなんだけど……残る?一緒に帰る?」

上条「そうだ、俺には帰るべき所があったんだ――具体的には冷暖房完備で電気代ゼロの家が!」

鳴護「事務所からは出てってね?毎日美琴ちゃんからの”圧”が凄い事になってるから?」



――街 翌朝

絹旗「――という訳で冒険者ギルトに超行く訳ですが」

鳴護「どういう訳で?目的はこっちついて早々に済ませたよね?もう帰る以外のイベントはなくない?」

上条「俺一人じゃ厳しいが――三人だったらワンチャンあるかも!」

絹旗「あー、超いいですね。物理的な攻撃は私が全部超捌けますし、それ以外はあなた担当で」

鳴護「いい加減にしないとそろそろ本気で怒るよ?美琴ちゃんにあることないことチクるからね?」

上条「――っていうのはまぁ冗談としてだ!冒険者ギルトなんて行ったっていいことないぜ?依頼出す訳でもなく冒険者登録する訳でもないんだろ?」

鳴護「同じ観光するんだったら街中を見たいかなーとか、インデックスちゃんにお土産買っていきたいなーとか、そういう穏健なのはダメなのかな?」

絹旗「ある意味スタート地点なのです!アリハア○行ったらルイー○さんの顔を拝みに行くでしょう!?」

鳴護「レベルが違いすぎるかな。『外国行ったらどこでもいいから本場の教会見たい』ってレベルだよ」

上条「まぁまぁいいじゃねぇか。街観光の一環で寄ってもそんなに時間かかるわけじゃないし」

鳴護「最愛ちゃんの場合、別の危険性があるだけで……」

上条「別?」

鳴護「絡んでくるオジサンさん達を血の海に沈めるとか」

上条「あー……」

絹旗「人を超コミュ障みたいに言わないでくれませんか。私だって我慢すべきときはしますよ」

上条「一応、うん一応何のために行くのか聞きたいんだが」

絹旗「いえ、普通に好奇心興味からですよ。リアルな冒険者って超興味あるじゃないですか」

上条「あー……俺は止めたからな?一応夢を壊さない配慮はしたぞ?」

鳴護「珍しいね。当麻君が逃げ打ってる」

上条「俺も正直、冒険者を諦めた一因なんだが――」



――冒険者ギルド前

冒険者A『どけよお前ら!今日は俺がいい依頼を貰うんだからな!』

冒険者B『いいや俺だ!俺こそが人生一発逆転の割のいい仕事を受けるんだ!』

冒険者C『抜け駆けなんてさせねぇぞテメェら!俺だってここまで下積みやってきたんだぞチキショー!』

鳴護・絹旗「……」

上条「って感じです。何か質問でも?」

鳴護「なんか、何かこうデジャブを覚えるよね……?異世界なんだけども、現実世界でも見たことあるような……?」

絹旗「私は超思い当たりました。パチン×の新台入荷の日、開店待って列をなすオッサンどもの超醜い争いってこんな感じでしたよ」

鳴護「あぁそうだね!人生に切羽詰まった感じだったよ!」

上条「よく、さ?『依頼張り出し所の前に新人に絡むプロ』って構図あるじゃんか?」

鳴護「あるよねぇ。定番っていうかテンプレというか」

上条「ぶっちゃけいい依頼は早い者勝ちになるから、たむろってる余裕すらないんだ……!」

鳴護「あー……」

絹旗「今分かりました。あそこの冒険者達から感じる負け犬オーラはHAMADURAと超瓜二つでしたね」

上条「パチン×と違ってこっちはきちんとした労働だけど、まぁ一般の人から見れば、そんな感じかな?」

鳴護「想像以上に夢がなかったね……ってあれ?あそこに居る人は何?職員さん?」

絹旗「あぁいますね。格好からすると超帯剣してますし一般の冒険者っぽいですよ?」

上条「いや俺も知らん。たまにこっちと視線が合うわ」

オーク『おっ、少年達も依頼争奪に来たブヒか?』

絹旗「いえ、故郷にいる友人を超思いだしていたところです」

オーク『ホームシックブヒか。そういうときは飲めば忘れるブヒ!』

上条「オークの生態を人類に適応させんなよ。あ、丁度いい。お前あそこに居る人なんだか知ってるか?柱の陰で様子うかがってる人」

オーク『あぁアレはナンパブヒよ』

絹旗「ナンパ?ギルドでてすか?」

オーク『「おいおい、お嬢ちゃんがこんな所になんの用だぁヘッヘッヘ!」的な話はよくあるブヒ』

鳴護「よくあるんだ……怖いね異世界」

オーク『そこへ颯爽と入って名乗らず助ける剣士!女の子は「今の人は一体……?」となるブヒ』

上条「ならねぇよ。『ありがとうございました、いつかお礼はするかもじゃあこの辺で!』でキャッチもされずにリリースされるんだよ!俺知ってんだからな!」

絹旗「経験者は超語りますね」

オーク『実際はそうブヒが、勘違いしたアホがああやって絡まれ待ちをしているブヒ。悲しいブヒな』

鳴護「で、でも!助けて上げるのは良い事じゃ?」

オーク『それはそうブヒが……冒険者がギルド内でもめ事なんぞ起こしたら、即ギルマスにしばかれるブヒ。物理的にボッコボコブヒ』

オーク『なんつってもギルトは一般人が依頼持ってくる場所なのに、そこでヤカラがいたら評判が落ちるブヒし』

鳴護「安心したけど素敵な出会いはないんだね!『元王族だった冒険者』さんとかの出会いとか!」

オーク『多分ブヒが、そっちの女の子が「何か特別な力を持ってチョロそう」ってタゲられてるブヒ。注意するブヒ』

鳴護「あ、はい、嫌な情報ありがとうごさいます?」

オーク『ちなみにあっちの柱の陰見えるブヒか?おっぱ×半分見えつつ顔面ノーガードのアホ装備をつけたおねーちゃんがいるブヒよ』

冒険者女『……』 ジーッ

上条「お、ヒロインっぽいぞ!」

鳴護「あの人は何を?」

オーク『元英雄とか最前線から都落ちしてきた世間知らずを騙そうとステイしてるブヒ。ぶっちゃけ寄生待ちブヒ』

絹旗「騙すとは?超どのように?」

オーク『まず初期装備か逆にアホみたいな上級装備の男が入って来たら、さりげなくカウンターの方へ向うブヒ』

オーク『そうすると雇ってある男どもが声をかけて乱闘騒ぎを起こすから、ターゲットが仲裁に入るように仕向けるブヒ』

オーク『あとはズルズルとパーティ組むなり何なり、まぁ本人の頑張り次第ブヒな。ただの初心者だったら適当な時期で解散して終わりブヒ』

上条「なんておっかねぇ世界観なんだ……!」

鳴護「美人局と何が違うのかと」

絹旗「――ここが、私の本来あるべき世界かもしれません……!」

鳴護「正気に戻って最愛ちゃん。この世界にサメはいないから帰らないとダメだよ」

オーク『まぁこの世界、腐るほどヒュームの国が滅んでいから元貴族元王族がゴロゴロしてるブヒ。そいつらが成り上がろうと超必死だってのも理解してやってほしいブヒ』

上条「お前に俺たちの何が分かるんだよ」

オーク『え?定期的に調子ぶっこいたり滅んだりする面白種族ブヒよ?』

鳴護「なんだろう……心にくるものがあるよね」

絹旗「――超分かりました。要するに『冒険者=浜面』だったんですね」

鳴護「正気に戻って最愛ちゃん!?生態は似てるかもだけど無辜はイケボって特徴があるし!」

上条「てか人類に上から目線のオークさんは、こんな所で何やってんだよ?依頼争い?」

オーク『いいやブヒ。強そうなのに世間ズレしまくってるヤツが入って来たら、絡んで騒ぎを起こすお仕事ブヒ』

上条「お前もやってんじゃねぇか美人局!?」

オーク『ギルマスから直で雇われているブヒ。ギルトが仲裁するフリをしながら、青田買いしようって腹ブヒな』

鳴護「てゆうか、その……内情をペラペラ喋るのってどうなのかな?警告してくれてありがたいんだけど」

オーク『教導も仕事ブヒ。スラムの子供が棒きれ一本で入って来たら、叩き出すか基礎教えるかブヒ』

上条「俺たちは初心者扱いすらされてなかった……!」

黒髪黒目の少年『ここがギルトかあ……スローライフがしたいだけなんだけどなあ』 ニチャアァッ

オーク『――マズいブヒっ少年達は早く帰るブヒ!ホンモノにロックオンされたらどこまでもつけ回されるブヒよ!?』

鳴護「あ、はい、お疲れさまでした。もう二度と来ません」

絹旗「ダメ人間ウォッチャーとしては超心引かれるものがありますが、ミイラ取りの末路になりたくないので帰りますね」



――学園都市

鳴護「――っていうことがあったんだよ」

インデックス「ありさー、あなた疲れてるのかもなんだよ。いっかいとうまにそげぶしてリセットしてもらったらどうかな?」

鳴護「インデックスちゃんだって他人事じゃなかったでしょ?当麻君がしばらく居なかったんだよ?」

インデックス「ううん別に?まいかのお家でご飯もらってたし、かんざきがほぼ泊まりに来てくれたんだよ」

鳴護「インデックスちゃんの放置も年季が入ってるからね……」

インデックス「えすえふとかである”へーこーせかい”なんて存在しないんだよ?わたし達はおんりーわんでなんばーわんなんだから」

鳴護「何言ってるのか分からないけど適当なことを言っているのは分かるよ。あと次があったら一緒に行こうか?他人様の世界の粗探しっていうヨゴレ仕事になるけど」

インデックス「何言ってるのか分からないけど、遠慮するんだよ。えっと……人には適材適所ってのがあってね?」

鳴護「てゆうかいつのまにかポッと出のゲストがここまで大きな顔するのってどうかと思うな!?もっとこう賑やかしに最適な面子っていたと思うし!」

インデックス「それよりありさの事務所のわたし達の部屋はまだ修理中なのかな?そろそろ寒くなってきたから、暖かいお部屋ですごしたいんだよ……」

鳴護「卑怯だよ当麻君!インデックスちゃんに泣き脅しさせるんだなんて!」

インデックス「なんだったらとうまはしゃわー室でいいから!わたしだけでも!」

鳴護「うん、あのね?曲がりなりにも会社が未成年男子をそんな場所で押し込んだらマズいんだよね?いらない嫌疑をかけられるっていうか」

インデックス「とうまはあぁ見えて意外と生命力強いんだよ?ほっきょくかいに落ちても死ななかったし?」
(※低体温症で2分ぐらいがボーダーらしい)

鳴護「そんな極限下での生死で当麻君の命を弄ばないでほしい。多分、どこに行ったってそれなりに順応してそれなりに楽しく生きていきそうだけど」

街頭スクリーン【――えーただいま緊急速報が入りました、緊急速報が入りました】

オーク【――離すブヒ!?ブヒはただうしおとと○をやりに来ただけブヒよ!?】

浜面【やめろ!俺はオークじゃねぇよ!?どう見てもタダの人間だろうが!】

街頭スクリーン【本日朝8時にパチンコ屋の前に並んでいたと思われるオークが捕獲されたそうです。くり返しお伝えします――】

鳴護「……」

インデックス「……おーく?なにかのすらんぐなのかも?」

鳴護「あー………………うんっ!浜面さんって人じゃないかな!生態は大体同じだっていってたから!」


-終-
(※「冒険者=浜面」説)

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