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Clock(trial)

みーちゃんとドリー

 
 ――不動産屋

カランコロンッ

社員「いらっしゃいませー」

ドリー「いらっしゃいました!」

社員「はい?」

警策「ドリー、”こんにちは”」

ドリー「こんにちは!」

社員「はい、こんにちは。本日はどうのような物件をお探しで?」

ドリー「みーちゃんと住むの!あのね、みーちゃんと一緒に住めるんだって!」

警策「……賃貸をお願いします」

社員「かしこまりました。あ、そちらへおかけ下さいませ。ただいまお茶をお持ち致しま――ジュースの方が宜しいでしょうか?それともコーヒーで?」

警策「すいません。コーヒーと」

ドリー「ジュース……?いいの?きょうはおたんじょうびじゃないのにジュース飲んでいいのっ!?」

警策「ちょっドリー!?」

社員「……」

警策「あ、いえこれは、えーっと」

社員「――そういえばケーキもありましたわねっ!賞味期限近いんで是非食べてもらわないと!」

社長「あれ?君それ後で食べるって言ってなか」

社員「持って来い、なっ?」

社長「……はい」

警策「すいません。今”社長”ってカードつけた人がチラッと」

社員「大丈夫です。いつもこんな感じですから」

警策「いえ、既にもう帰りたいんですが」

社長「ジュースとケーキ持ってきたよー」

ドリー「……いいの?」

警策「まぁ、いいんじゃないかな」

社員「あーじゃあ、お客様ゲコ太好きですか?こっちでビデオ見られますけど?」

ドリー「ゲコ太!でぃーえぬえーレベルですきかも!」

警策「あーうん行って来なよ。私はこっちでお話あるから」

ドリー「はーい!」 ダッ

社員「社長、それじゃ後はお願いしますね」

社長「はいはい。担当変わらせて頂きました、ここの社長をやっているものです」

警策「どうも」

社長「本日はどういった物件をお探しでしょうか?それとも他のご用件で?」

警策「賃貸の方はどうなってるかなー、と」

社長「かしこまりました。何か条件がございますか?」 ピッ、カタカタッ

警策「できれば安いところですね」

社長「シェアハウスですけど格安になりますが、いくつかご覧なりますか?」

警策「シェアハウス……って確か、キッチンとかトイレとか、共有部分は他の人とも使うんですよね。うーん」

社長「ですねー。そこら辺は抵抗あるお客様も多いんですが、やはり安くて良い物件となるんでしたらシェアが一番コスパ的にはお得かと」

警策「じゃあ、一応」

社長「はい、かしこまりました。最近はですねー、一軒家をリフォームして共同住宅というのが流行ってまして……あ、こちらの物件がシェアで二番目に安いところとなっております」

警策「なんで二番目。なになに……敷金礼金0、月3,000円……!?」

社長「どうです?破格でしょう」

警策「安いですけど、これ家が古いとか僻地にあるとか、ですか?」

社長「いえいえXX学区の住宅街ですよ。駅からはやや遠くで徒歩20分ですが、家の写真と内観は……こちらですね」 ピッ

警策「……素敵ですね。デザインハウスっぽい」

社長「ただですね。ちょっとした条件がありまして、その一緒に住まわれてるオーナーの方から」

警策「あー、成程。面倒臭いんですね」

社長「あぁいやそんなことは全然!ただちょっとオーナーをお兄ちゃんって呼ぶだけですから!」

警策「『ただちょっと』がヘビーすぎる」

社長「い、いえこれでもマシなんです!こっちを見て下さい!」 ピッ

警策「古いアパートの写真がずらーっと並んでますね。これが?」

社長「これ全部、『両親が失踪して今日からアパートの管理人をしなければいけなくなったハーレム系主人公』の物件です」

警策「多いけども!確かにそういうテンプレ一時流行ったけど!」

社長「まぁこちらに比べたら、まだオーナーが変質者の方がマシじゃないかなって」

警策「事故物件を押しつけるな!マシにしたって比較対象が悪い!」

社長「お安いところとのご希望でしたので……あ、ではこちらはいかがでしょうか?」 ピッ

警策「一軒家、ですかね。若干古めの」

社長「こちら敷金礼金なし、月891円の超お得な」

警策「違うのにして下さい」

社長「い、いやお客様!これは掘り出し物ですって!学園都市ではレアな物件です!」

警策「だから違うのにして下さい。ここは、嫌」

社長「せめて最後までネタを聞いてから!きちんとオトしますから!」

警策「ヒマか?この店ヒマなのか?」

社長「いや本当にいい物件なんですよ!中はキレイですし交通の便も整ってますし!」

警策「じゃあ、なんで安い?」

社長「こちらをご覧頂けますか?あ、窓のところです」

警策「誰かいますね。和服を着た上品なおばさんが手を振って、どなたですか?」

社長「どなたでしょうねぇ」

警策「はい?」

社長「ここ、誰も住んでない筈なんですがねぇ」

警策「ホンモノの事故物件紹介すんなよ!?誰か『あ、じゃあここでお願いします』って言うか普通!?」

社長「でもこのおばさんが掃除しているらしく、いつ行っても中はキレイなんですよ!?」

警策「セールポイントにはならない。むしろ、引く」

社長「あー……この条件でないとすれば、後は私の家ぐらいしかないですかねぇ」

警策「すいません社員のおねーさん、そろそろ訴えたいんですけどいいですかね?」

社員「おいヘンタイ!ジョークにしても危ない時候なんだから自重しろよ!」

社長「――と、いうように!世の中には危険がいっぱいですから注意して下さいね!特に立てた憶えのないフラグ管理とか!」

警策「世間様ではそれを”ストーカー”と呼びます」

社長「女の子の二人暮らしはどうしてもセキュリティがネックになってきましてね。どうしてもお高くなってしまうか、ノーガードになるのか二択なんですよ」

警策「見せてもらったトコガードしてませんよね?警戒色は強いけど」

社長「あー……じゃあまぁこちらの案件はどうですか?敷金礼金なし、月1万円のマンションなんですが」 ピッ

警策「またエラい安くて不安しかないんですが……あ、キレイですね。新しいし」

社長「ここは本当にオススメなんですよ。今さっきご紹介したネタ物件じゃなく、物件そのものに瑕疵は一切ありません」

警策「ネタ?おいお前ネタって言ったか今?」

社長「近くに公園もありますし、アーケードという名のうらぶれた商店街もあり、レトロな雰囲気で一人暮らしの学生さんには大人気です」

警策「さりげなく商店街の悪口言う必要、あった?」

社長「また心配されている事故物件の話もありませんし、そういったことが気になる方にも安心出来るかと」

警策「……ちなみに住んでる人がヤバイとか?」

社長「具体的なことはお話しできませんけど、ここにお住まいの方は皆さん学生さんですよ。社会人の方はいらっしゃいません」

社長「一組はご兄妹で暮らしている方もいますから、治安についても問題があったって話は聞きません」

警策「そうですか――で、今空き部屋はどこですか?」

社長「……えっ?」

警策「いや、ですから。仮に住むなり、お部屋を見に行くとすればどの部屋か、ってなりますよね?どこになるんですか?」

社長「――あぁそうそう!ここのマンションは凄いんですよ!なんかこうですね、言葉の意味は分からないですが」

警策「空き部屋数を、教えろ」

社長「……はい。こことここ、見えますか?」 ピッ

警策「あ、洗濯物干してるところですね。お隣さん同士――ってこれまだ人住んでるじゃないですか。できればすぐ入れるところがいいんですけど」

社長「ここ以外は、はい」

警策「はい?」

社長「ですから、ここ以外はフル空き物件です。あ、ですからこちらの角部屋が料金同じでオススメですよ」

警策「はいぃぃぃっ!?こんな立派なマンションなのに二軒しか住んでないんですかっ!?」

社長「えぇ……それが何故かね、他の入居者の方が続々と転居をされてまして……」

警策「その二軒に超ヤンチャするバカが住んでるとか?」

社長「あぁいえそんなことは全然ありませんよ!私も直接伺いましたが、どちらも真面目な学生さんでしたとも!」

社長「ただちょっと片方が隠れてネコとシスターを飼っていたり、もう片方が金髪グラサンで妹にメイド服着せてにゃーにゃー言ってただけですから!」

警策「だからお前の『ただちょっと』はおかしい。あと両方とも即通報案件だろ」

社長「あっはっはっはー、何仰ってるんですかーこの街にどれだけ同棲してる学生がいると思ってんですか」

警策「いや……同棲っていうか犯罪のニオイが」

社長「まぁそんな訳でお二方とも何か特に問題があるって事じゃないですよ。もう住まれて1年近く経ちますしね」

警策「百歩譲ってそいつらのキャラはスルーするとして、それじゃ一体他にどんなマイナスがあるっていうんですか」

社長「そうですねぇ。あとマイナスと言うんでしたら、たまにマンション上部が爆発したり炎上したり謎の一派に襲撃されるぐらいで」

警策「すいません。帰ります」

社長「待って下さい!?あなたたちを差し置いて誰がここに住むって言うんですか!?」

警策「初対面の相手に期待をかけないで!なんで私そんなに高評価!?」

社長「フラグ管理に失敗させて刺されるまでがワンセットですから!どうか修羅場を見せて下さいよ!」

警策「お断りだバーカ」

社員「なにやってんですか社長……あ、ここですか。例のマンションですね」

警策「すいません。警察呼びたいんですが110番で良かったんでしたっけ?」 ピッ

社員「待って下さいお客様!?このバカなりのジョークですから!外見は種×けおじさんっぽいですけど、割と良い人なんですから!」

社員「てか社長もオーバーなんですよ!ここ、先月他の方入りましたからね!」

警策「よくまぁこんなチョウチンアンコウ物件に入りましたね!」

社員「えぇ若いカップルで、片方がデカいバーコード神父さんで、もう片方が露出度高い日本刀持ってですね」
(※とあるアーカイブス設定、多分準公式?)

警策「ドリー!お暇するから準備してー!」



――どこかのアパート

ガチャッ

ドリー「うわぁ……」

警策「うーん……お家賃お安いしこんなもんかー。うんまぁ、最初だしね、最初の一歩」

ドリー「見てみてみーちゃん!タタミ!タタミ敷いてある!」

警策「それがデフォね――ってなに。私を通せんぼして」

ドリー「おかえりなさい、みーちゃんっ!」

警策「……っ!」

ドリー「いえに帰って来たら、『ただいま』って言うんだよ!」

警策「……」

ドリー「……みーちゃん?」

警策「ただいま、ドリー……!」



――どこかのアパート

警策「――と、いう訳でこれからのことについて話し合いたいと思います!ドリー隊員!」

ドリー「わー、ぱちぱちぱちぱち」

警策「まずは……お金!でもこれは私がバイトするから平気!」

ドリー「……さきちゃん、貸してくれるってゆってたよ?」

警策「困ったら勿論頼るけど……まぁそれまでは、ね。あんま迷惑かけるのも借りを作るのも考えものだし」

ドリー「ともだち、頼るの、よくない?みーちゃん、さきちゃん、苦手?」

警策「ううん。ドリーの次ぐらいには好きよ?」

ドリー「うんっ!わたしもさきちゃん、ゲコ太の次ぐらいに大好きっ!」

警策「……本人聞いたら喜んでいいのか悲しんでいいのか、分かりにくいラインだけど……まぁいいや。あとでメールっとこう」

警策「じゃなくてねー。うーん……頼ってばかりじゃ良くない、よね?分かる?」

ドリー「わからないっ!」

警策「あー……ドリーが病気になったとするよね?そうしたら私は看病するけど、いつもはしない、よね?」

警策「それと同じで、友達が本当に困っているときに助けてあげればいいから、それ以外はいいんじゃないかなって……どう?」

ドリー「ひつようなときに?」

警策「そうそう。私たちだけでどうしようもなくなったら、食蜂さんに頼る、いいよね?」

ドリー「さきちゃんも困ってたら……」

警策「その時は私たちが助けるのよ。助けてもらった恩返しで」

ドリー「うん、わかったよ!」

警策「良かった……で、ドリーはこれから外の生活に慣れるところから始めようと思うの」

ドリー「なれる?」

警策「ここに来るまで駅で切符買って電車に乗ったよね」

ドリー「うん。楽しかった!」

警策「あぁいう、切符の買い方とか、電車の乗り方とか、そういう常識から少しずつ、ね」

ドリー「……」

警策「ドリー?」

ドリー「がっこう……いきたいな」

警策「少しずつやっていこう?焦らないで、少しずつ」

ドリー「みーちゃんもいっしょ?」

警策「あ……うん。そうだね、私も一緒に……学校、行くんだよね」

ドリー「一緒だ!」

警策「それでね、その私たちだけじゃ手続きとか計画を立てるのは難しい、んだよ」

ドリー「みーちゃんでも?」

警策「ドリーの中での私の株価は高すぎると思うけど……だから専門のケースワーカーさんに相談してみようって」

ドリー「けーすわーかーさん?」

警策「事情があって途中から学校へ通えなくなったり、通わなくなった子供たちの復学や就学をお手伝いしてくれるって仕事」

警策「まぁ一応……食蜂さんの紹介だし、まぁ会うだけは会ってみてって感じだけどね」

ドリー「さきちゃんのお友達だったらあんしんだよねっ」

警策「むしろ不安しかないっていうかな、逆に」



――駅前

ドリー「……」

警策「……」

ドリー「けーすわーかーさん、来ないねぇ」

警策「遅れてるのかな。人が多すぎるってのもあるかもだけど」

色物メイド「……」

ドリー「――あ!見て見てみーちゃん!スッゴイ人がいる!」

警策「だめドリー!見て見ぬフリをしないと!」

ドリー「見ちゃだめなの?」

警策「そうよ。あれは多分妖精さんの一種だから特定の人にしか見えない設定なの」

ドリー「へー、ようせいさんなんだ!」

警策「だからほら、女の子ってだけで誰彼構わず集るハエと同じ生態のお兄さん達ですら、近寄っていったりしないよね?」

警策「あれはあの人が見えない妖精さんだから、危険視してるってことなんだよ」

色物メイド「初対面なのに随分人をDisってくるじゃないか」

警策「げっ」

色物メイド「――まぁ結果的に私のメンタルが鍛えられるため、ありがとうはこっちからも言わなくてはいけないんだがね!」

警策「あ、こいつ中身までアレな人だ」

ドリー「ようせいさんっ!こんにちは!」

色物メイド「はい、こんにちは。そちらの君も初めまして」

ドリー「エーっと110番って何番だっけ……?」

色物メイド「うん、まずスマフォから手を離せ?あと事故にありがちなド忘れするぐらい混乱するかな」

警策「すいません妖精さん。私たちこれから人と会う約束があるんで、陽性の国へ帰って下さい」

色物メイド「陽性表記に悪意があるよね?私のメンタルを鍛えてくれることには感謝するけど、謂れのないビッ×扱いには断固抗議をさせてもらうよ」

警策「誰かに強いられた罰ゲームですよね。可哀想」

色物メイド「いいね!その分かってて毒舌吐くセンス!ゴミを見るような目つきも最高だっ!」

ドリー「ばつげーむですよね?」

色物メイド「待ってくれ!穢れのない純真な台詞を吐かれても、そっちの耐性は低めなんだ!刺激が強すぎる!」

警策「どうしよう超メンドクセェ。人待ってんのに足止めされてる」

色物メイド「あぁそちらの心配はしなくていいよ。と、いうのもだ――」

警策「ドリー、行こう?」

色物メイド「おい君!さっきから態度が悪くて私のレベル上げに協力してくれるのは有り難いけどもだ!せめて話は最後まで聞きたまえ!」

色物メイド「というのもだ!君たちが待っている相手はこの私なんだからなっ!」

警策「あ、いえ違います。待っていませんよ?」

色物メイド「え」

警策「ちょっと休んでただけで、そういうのは」

色物メイド「そ、そうなのかい?」

警策「はい。そうことなので人違いか――」

ドリー「あれ?けーすわーかーさん待ってるんだよね?」

警策「……ちっ」

色物メイド「……君、中々いい根性をしているよね。今一瞬私の耐性が限界超えるぐらい恥ずかしなりそうだったよ」

警策「その発想がおかしい。普通人違いよりも気が違ってる服は、着ない」

色物メイド「……くっ!頑張れ私、これもスキルアップを果たすため……!」



――ファミレス

鞠亜(色物メイド)「――では改めましてこんにちは。『落第防止』の見習いみたいな事をやってる雲川鞠亜だ」

ドリー「ドリーです!」

警策「……警策です。てか見習い、ですか?」

鞠亜「うん、見習い。流石に未成年の学生に責任は中々負わせられないらしくてね」

警策「ちょっと不安なんですケドー?」

鞠亜「そこは働きぶりをみて判断してくれたまえ。あ、ちなみに評判はそこそこいい」

警策「というのは?」

鞠亜「年上の人間に話しづらかったり相談しづらいことであっても、歳の近い同性相手には、というやつだね」

警策「あー……警戒色甚だしい服を着ているのも、もしかして?」

鞠亜「いやこれは学校の制服であり正装ですが何か?」

警策「風×科?」

鞠亜「――君、いいね!初対面でここまで私を嬲ってくるのは君が初めてだよ!マリアンですら精神的にはヌルかった!」

ドリー「ふー×く?」

警策「あ、なんでもないなんでもない!ちょっと!この子が変な言葉憶えたらどうするんですかっ!?」

鞠亜「どうするも何も自業自得としか言えないんだが……ま、かくいう私もだね」

鞠亜「今でこそ繚乱トップクラスという評価を受けているものの、昔は不登校になったこともあってさ」

鞠亜「その時に『落第防止』のお世話になったものだから、まぁこうやっているような感じだよ」

警策「ヘェー、昔の自分を助けてくれるって話ですカー、ヘエー?」

鞠亜「そこまでご立派な信念は持っていないさ。私だって私欲、自己満足の範疇と指摘されれば否定は出来ない」

鞠亜「だがまぁ偽善であろうが、それで救われたりチャンスを得られる人間が居れば、それはそれでいいことではないのか、ともね」

警策「まぁ、そうかもですね」

鞠亜「私だけがケースワーカーという話でもないし、ここで変えることもできる。どうする?」

警策「嫌ですけど、あなたでお願いします」

鞠亜「全く人にお願いする態度ではないが、まぁありがとう!」

警策「てか雲川……?」

鞠亜「そう雲川だが?」

警策(雲川って統括理事会のブレーンの中にそんな名前が、ジジイの資料に書いてあったような……?)

警策(確か――『雲川芹亜(巨乳)』……) チラッ

鞠亜 ストーン

警策「なんだ他人か」

鞠亜「異議ありっ!よく分からないが今の確認の仕方には異議を唱えさせてもらうよっ!」

鞠亜「てゆうか”ストーン”はない!”たゆんたゆん”とまでは言わないが、”たゆ”ぐらいはあるつもりだと自負している!」

警策「自称じゃんか」

ドリー「まりあちゃんたゆんたゆんっ!」

鞠亜「おおっとやめてもらおうか!滅多にない純粋な瞳で私の心をズタズタに切り裂くのはな!」

警策「……今からチェンジできないカナー」



――ファミレス

鞠亜「ではただいまから具体的なプランを立てていきたい――が、その前にいくつか質問させてもらおう」

警策「今まで何やってたかとかノーコメントで。メンドイんでエー」

鞠亜「家庭の事情というヤツだね。できれば教えて貰っていた方が、いざというときに動きやすくて助かるんだが」

鞠亜「まぁ無理に話をさせるのも宜しくはない。何よりも学習意欲を失わせるのは――」

ドリー「わたしね、みーちゃんと会うまでずっとずっと”けんきゅうじょ”にいたんだよ!」

ドリー「はくいのせんせいがいーーっぱいいて、苦いおくすり飲まなきゃいけな――ムグッ!?」

鞠亜「……えーっと」

警策「――っていうアニメを!や、やだなぁドリーってば!すーぐ見たアニメの影響を受けるんだから!」

ドリー「んーんんもー、んーっんんー、んんーん?」

鞠亜「なんて?」

警策「『モモ○さんのネーミングセンスは一周回って狙ってるしどこかで聞き覚えがあるよね!』、と」

鞠亜「ちょっと聞こえなくもないけどもね!そんな長々と喋っていたりはしなかったな!」

鞠亜「……まぁ正直なところ、そっちの事情は分からなくもない――って待ちたまえ。まだ話は終わってないよ」

警策「”関係者”に、話すことはない思うケドォー?」

鞠亜「違う違う。取り敢えず落ち着いて話を聞け、私がもし君たちに良からぬ企みがあって近づいたとしてだ」

鞠亜「それを隠そうともせず初っ端から言うかね?言わないだろう?」

警策「マー……ソウデスネ」

鞠亜「私が知っているのは誰かが誰かさんとそっくりだって事だ。あとは、まぁ推測であるが」

警策「だから、なんなんですか?」

鞠亜「そう睨むなよ、興奮する――待て待て!今のはちょっと悪いと思ったから席を立たないでください!」

警策「”ちょっと”?」

鞠亜「まぁアレだ。有名人のそっくりさんというのは存外肩が凝る、と言っている。あちらこちらで間違われるんだからな」

鞠亜「それが嫌ならばイメージを変えればいい。例えばウィッグを付けたり、カラーを入れるだけでも大分違う

警策「……そうか。そういう問題もある訳か……」

鞠亜「まぁ後は時間が解決してくれるだろう。幼い頃はそっくりだったが、成人するころは全く似てない姉妹だなんで腐るほどいる」

鞠亜「”同じ人物が変装しても全く別の人間に変われる”んだ。そう難しいことじゃない」

警策「今は、じゃあ」

鞠亜「ジャンクフードたっぷりと三食マッ○であら不思議!一ヶ月後にはサイズが倍に!」

警策「女の子的に超お断りだ」

ドリー「あなたが……かみかっ……!?」

警策「こらドリー!ネットスラングなんて憶えて!」

鞠亜「と、いうのは冗談としても、化粧の一つでも憶えれば随分変わる。ほら、言うだろう――」

鞠亜「――『女は化ける』って」

警策「いい意味じゃないですよネー、ソレェ」

鞠亜「すまないね。警戒させるつもりはないし、踏み込むつもりもなかったんだが、つい、ね」

警策「……そんなにおかしな格好してますかね?」

鞠亜「あぁ格好自体は別に普通だよ。ティーン誌から外れることもなく同世代に溶け込むような感じで」

鞠亜「ただしドリー君は活発な印象なのに、どうにもこう、目深に被った帽子が”浮く”んだよ」

鞠亜「本気で変えるんだったら、徹底的に。なんだったらそっちのレクチャーも承るけど?……と、これでは姉っぽいな」

警策「……あの人の知り合いだから、って会ってみましたけどなんていうか、”濃い”ですよね」

鞠亜「信頼してくれるとなおありがたいが――さて、前置きが長くなってしまったが、これを」 ピラッ

警策「プリント?」

ドリー「『しょーがっこーてーがくねんよー』?」

鞠亜「まずは基礎的なところからだね。現状どの程度なのかを把握するのが大事というやつさ」

警策「ドリーぐらいだったら、私一人で教えられるんだけど」

鞠亜「市販の試験集や学習キットでも可能は可能だが、君への負担が多すぎる。不可能じゃないが」

警策「負担だなんてっ!」

鞠亜「手を抜けるところは抜きたまえよ。張り切りのは悪い事じゃないが、アレもコレもと気負いすぎてキャパオーバーするのは良くないな」

鞠亜「私のような天才は失敗を怖れず果敢に挑戦するのだけど、凡人が無理をする必要もないだろう?」

警策「パッと見”癖”だと思うんだケドー……?」

鞠亜「シングルマザーにありがちな話なんだよ。全てを自身で完結しようとした挙げ句、最後には無理心中」

警策「例えが悪いわっ!」

鞠亜「というか君も他人にかまけている暇はない思うよ」

警策「ハイ?」

鞠亜「で、こっちがみーちゃん君の分だ」

警策「みーちゃん言うな――つか私も!?」

鞠亜「この私が見逃すとでも?」

警策「いや知らないけど」

鞠亜「君もなんだかんだで遅れているのだろう?ならそれを取り戻すのは必要だと」

警策「マーソーデスネー」

鞠亜「そうだね、想像してくれたまえ――新生活で君はバイト三昧、二人分の生活費+ドリー君の学園費用の足しにしようとする」

警策「それ以外にどうしろと?」

鞠亜「その判断は間違っていないし共感もできる。ただその後が問題だ」

警策「あと?」

鞠亜「10年後、ドリー君は立派に学業を修め、君は母親のような心境で学校の卒業式にでも出るとしよう」

警策「ドリー……立派になって!(´;ω;`)」

鞠亜「今から泣いてどうするんだいお母さん。まぁリクルートか奮発して振り袖でも借りたとしよう」

鞠亜「式が終わってドリー君を待っていると、どこかの知らない男の腕を引いて駆け寄ってくるんだ」

鞠亜(裏声)「『ねね、みーちゃん!わたし、この人と結婚するんだ!』」

警策「その男を殺すな」

鞠亜「うんっ!あぁいや私が欲しかった言葉じゃないな!意外とこれガチだなって分かったけど!」

パシュンッ

鞠亜「うん?」

白井「分かりますわ、その想い痛いほど分かりますの……ッ!!!」

鞠亜「イタイから帰れ、帰ってくれ」



――ファミレス

鞠亜「さて、紆余曲折諸々あったが、君たちの学力は把握できたよ。まずドリー君!」

ドリー「はいっ!」

鞠亜「国語と社会と理科は低学年、算数は6年生レベル」

ドリー「わーい?」

警策「この子の環境からしたら妥当だけど……凄いね、ドリー。いつ勉強したの?」

ドリー「え?きごうのいみさえ知っていればとけるよ?」

警策「Oh,……優等生の台詞だ」

鞠亜「警策君は五教科全て中学二年生レベル。正直、面白くない」

警策「やっぱ趣味じゃないですかコノヤロー」

鞠亜「さて、テストのご褒美というか急遽用意したという体で」

鞠亜「ドリー君には『ドリンクバー』を体験して貰おうじゃないか」

ドリー「どりんくばー……しってる!おかわりじゆうのやつだ!」

警策「いや、そんなに声張るほどじゃ……」

ドリー「わたしね!ずっとやしのみさいだーのこーひーわり試してみたかったの!」

警策「いいドリー?キメラにキメラを足したってキメラになるだけであって」

鞠亜「椰子の実サイダー、あれ結構ファンが多いんだぞ。主に私とか」

鞠亜「好きなドリンクを作るのも良いが、必ず全部責任を持って飲むこと。食べ物で遊んじゃいけないっては」

ドリー「みーちゃんに教わった!」

鞠亜「なら行きたまえドリー君。あ、私はアイスコーヒーを頼む」

ドリ−「みーちゃんは?」

警策「いいよ。私一緒に」

鞠亜「”人に頼るのも練習”だよ。最初から全てを教えず臨機応変に、というやつでね」

警策「……じゃ、ドリーと同じの」

ドリー「りょーかい!行ってきます!」 ダッ

警策「あぁホラ走ると転ぶから!」

鞠亜「――さて、では本題なのだが」

警策「ドリー!そっちは出口!あのそのお姉さんはコスプレしてる人だから店員さんじゃないよ!」

鞠亜「聞こう?君、人の話ぐらいは聞こうよ?」

警策「討伐モンスターっぽく見えるのは歳も考えずに盛ってるだけだから!悪意はないよ!」

鞠亜「君にはあるよね、悪意?だって大声で周囲にタゲ呼びかけてるからね?」

警策「ちょっと隠れて見守ってくる……!」

鞠亜「うんまぁ落ち着け。遮蔽物が無いのに隠れられるのは、ニンジャがそっちの能力者だけだから」

鞠亜「ていうか基本4m弱の距離だから、少し大きめの声で会話すると聞こえるし。わざわざ席を外させたんだから、話を、聞け」

警策「あ、すいませんいいです、結構です」

鞠亜「いいぞ!ドリー君の手前抑えてはいたが、その駅前の自称スカウトマンを追い払う流れ作業は得がたい経験になる!」

警策「……ウッゼこの貧乳」 ボソッ

鞠亜「胸は関係ないだろう胸は!?姉や姉の友達が規格ハズレのモンスターであってだ!」

鞠亜「大体君も――」 チラッ

鞠亜「……」

鞠亜「――二度と言うな!分かったかね!?」

警策「ヤ、私もまさかどんだけ胸元開いた服着せられるんだ思ったけど。あれはないわー」

鞠亜「とにかぁく!これを見たまえ!」 ズッ

警策「近い近い、焦点距離が100mm切って……ってドリーの算数の小テスト」

鞠亜「の、ここだね。この設問を」

警策「『□に当て嵌まる数を求めなさい。ただし途中の式も書くこと』。あー、リンゴを何個買ったとかそういうのか」

鞠亜「うん、式も合ってるは合ってるんだけどね」

警策「じゃあ別に問題はないんじゃ」

鞠亜「教えてないのに連立方程式使っているんだよ、これが」

警策「ヘェェェェェェェ――え?」

鞠亜「他の教科がそれなりにだったことから、ドリー君はほぼ真っ白な状態にあり、算数もまた同じだと推測されるんだが」

警策「……」

鞠亜「あぁいえ、君たちを詮索しようってことじゃないから、話を戻すと――」

鞠亜「――ドリー君、『たった数十分で連立方程式を作りだした』んじゃないかな、と」

警策「……はい?」

鞠亜「いや実はネタで中に高校の等差数列の設問を混ぜていたんだが」

警策「あぁ何か『これ習ったっけ?』ってあったのはやっぱりか!おかしいと思ったのよ!」

鞠亜「それも正解じゃないが、かなり惜しいところにまで解いた形跡があるんだよ」

警策「天才?」

鞠亜「どうかな。まぁ秀才なのは間違いないし、できればきちんとした教育も受けさせて様子を見たい、というのが私の本音だ」

警策「それは……うーん」

鞠亜「まぁ”きちんと”とは言ったものの、今はFREESPOTで世界の学術論文が無料で読める時代だ」

鞠亜「そちらの方向で才能が見え、かつドリー君が望むのであれば伸ばしてやるのも選択肢の一つだ、ぐらいに考えてくれたまえ」

警策「アッチャー……そういうのは、分かんないなー」

鞠亜「今すぐ決めろ、じゃないから追々に。小学校の卒業文集に『おおきなくなったらケーキ屋になりたいです!』程度の話」

警策「ドリー……立派になったんだねっ!」 ブワッ

鞠亜「帰って来い親バカ……?で、当面の課題としてもう一つ、テスト用紙のこことここに注目だ」

警策「名前欄ですよね。『ドリー』って」

鞠亜「それをだね、二枚重ねてお天道様に透かしてみよう」

警策「”おてんとさま”なんて単語使ってる人初めて見た……!てか室内だから照明に……」

鞠亜「真っ赤に流れるなんとか見える――ではなく、どうだね?」

警策「位置は少し違うけど、ピッタリ重なる……?」

鞠亜「そして残り二教科も合体させてみると――」 ピラッ

警策「完全に一致……!?」

鞠亜「まさに判で押したような、というか今なら印刷したような、だね」

警策「ドリー、変な特技が……?」

鞠亜「あーっとだね。私は事前に君たちの情報を得ていないし、姉から頼まれただけだから特に他意はない、と前置きをしておくんだが」

鞠亜「ドリー君、彼女はあまり体が強くないのではないかね?」

警策「……」

鞠亜「あぁ答えなくていい。私が勝手に言うからそっちで聞くなり聞き流すなりしてくれたまえ。大切なのはドリー君がどうってことだ」

鞠亜「例えば病気で胃を切除した患者がいたとする。そうすると胃の代わりに十二指腸が胃の働きを肩代わりするようになる」

鞠亜「また脳の一部が損傷した場合も、他の部位が代わりに活動するケースも多く見られる――よって」

鞠亜「ドリー君の”これ”は恐らく筋力が足りていないのを、能力で補っているのではないか、と私は考える」

警策「能力?」

鞠亜「そう。理屈は分からない――ことにしておく――が、腕の筋肉をこう、ね」

警策「良くない、んですか?」

鞠亜「事情によるかなぁ。先天的にそうやってきたのであれば、本人にとって息を吸うのと同じ行為だし、矯正するのも難しい」

鞠亜「しかし後天的になってしまったのであれば、多少はリハビリもした方が良いと思う」

警策「その違いはどういう?」

鞠亜「能力は”超”能力でもある。はっきり言えば『疲れる』事が多い。そうだね−、なんて言ったものか」

鞠亜「これは知り合いから聞いた話だが、ある身体強化系の能力者が居るんだ。多分その筋じゃ学園都市でも上の方の」

警策「握力400kgのゴリラと殴り合える?」

鞠亜「完勝できるぐらいのだ。企画外だったらしい」

鞠亜「そんな人物が疲労か過労か、はたまたAIMジャマーか何かで能力を使えなくなった、という状況に追い込まれたのか」

鞠亜「とにかく能力が使えない状況下に置かれた際、無能力者にケンカでボッコボコにされたそうだよ」

警策「……なんかなぁ、な、例えですよね」

鞠亜「能力を使えば肉体的な負担は軽減されるかも知れない。しかし能力を使っている以上、脳への負担はそれなりにある訳だ」

鞠亜「あぁ別に能力を否定してる訳じゃないよ?足が不自由な者が車椅子に乗るのは当たり前だ」

鞠亜「ただその車椅子にしたって、わざと車輪を重くして負担をかけ、手の筋力を強くさせるという方針もあるんだ」

警策「重くする意味はあるんですか?軽い方が乗ってて生活しやすいでしょ」

鞠亜「一日中車椅子に乗っている訳ではないよね。ソファやベッドに移るときとか、用を足すときとか」

警策「あー、はい」

鞠亜「自立した生活を望む場合、それなりの負担が必要になってくる。勿論介護士の世話になるのも立派なことであるが」

警策「どうすれば……?」

鞠亜「まずは検査だね。筋肉を使うときに能力を使っているかどうか、その仮説が正しいかをはっきりさせる」

鞠亜「……まぁここまで印刷したように一致するんだったら、それ以外はないと思うんだが」

鞠亜「その後は普通に運動させる。筋力自体が平均値に届いてくれば、能力も使わずにいられるだろう」

鞠亜「自転車の補助輪も気がついたらなくなっているように」

警策「本当に大丈夫なんですか……?」

鞠亜「さっきも言ったが無意識的に能力を使うのがドリー君の”普通”であるならば、それは正しい事だ。無理に矯正するのも良くはない」

鞠亜「しかし逆に自然な状態に”なろう”としているのだったら、それはあまり宜しくはない、というだけの話だ」

鞠亜「一度、私の知り合いに頼んでドリー君の能力を全てキャンセルした状態で、あれこれ試してみるのが最適解ではある」

鞠亜「――が!個人的にはオススメしない」

警策「その知り合いがドリーの教育に良くない、ですか?」

鞠亜「そんなことはない。いたって善良であるし、義があれば世界を敵に回しても味方になってくれる。私の戦友だ」

警策「なんだその超主人公」

鞠亜「ただ一度でも関わったらその後は二度と離れられず、気がついたらラッキースケベ要員にだね」

警策「それ以外でお願いします。つーか関わらせるな!」

警策「てか作為を感じるのよ!アパート選びからずっとこっち!」



(※フローチャート)
ドリーさん退院

├──KMJさんお隣さんルート(罠1)
├──KMJさんリハビリお手伝いルート(罠2)

カエル先生の患者ルート(←今ここ)



――病院

カエル先生「事情は理解したね?それじゃまずこのチョーカーをだね?」

ドリー「りあるげこた……ッ!!!」

カエル先生「僕をそう呼ぶのは君で二人目なんだね?」

警策「胸元にカエルワッペンが貼ってあるあたり、もうこれ寄せて行ってるとしか思えないんですけど」

カエル先生「子供たちは記号化されたデザインを好むようだけど、それだと僕の素顔もアイコン化されているかな?」

警策「同意を求められましても……」

カエル先生「じゃこれを首につけてね?苦しくない程度に巻いてくれればいいね?」

ドリー「べると?」

警策「私が着けるからジッとしてて。これはどういう?」

カエル先生「うん、僕の患者さんが考案した機材だね?こう見えても多機能でね?」

カエル先生「ただ少し『なんでもっと地味なデザインにしたり、弱点バレバレの作り方したの?』とは思いはしたんだけどね?」

警策「中二、だからねですね。多分ヤローが一回は通過する道です」

カエル先生「はいじゃあドリー君、あっちの壁にタッチして戻って来てね?」

カエル先生「僕が手を叩いたら開始の合図だ、いいね?」

ドリー「はいっ!」 ガタッ

カエル先生「それじゃ、さん、にい、いち――はい」 パンッ

ドリー「よっ!」 ピタッ

カエル先生「ふむ」 ピッ

ドリー「もどってきたよ!」

カエル先生「うん、じゃあ次はもっと速くできるかな?これ以上早くは無理です、っていうぐらい?」

ドリー「ぜんりょくで?」

警策「無理しない程度に!」

カエル先生「それでいいね?それじゃ、はい?」 パンッ

ドリー「ほいっと!」 ピタッ

カエル先生「おぉ速いね?……と、戻って来ていいね?うん、外してくれて構わないね?」

警策「先生、ドリーは……」

カエル先生「君の懸念は当たっていた、といえば満足するのかな?」

警策「それじゃ……!」

カエル先生「”それが良いこと悪いこと”――素人が判断するんじゃないね。僕たちの仕事だよ?」

カエル先生「怪我や病魔を心配するのは良いことだけれど、過剰に怯えるのは悪いことだよ?いいね?」

警策「……はい」

カエル先生「結論から言えばね、人は常に全力で筋肉を使っている訳ではないんだよ?」

カエル先生「走るにしても『学校の廊下を小走りで』と、『アスリートが競技会の本番』じゃ違うだろう?それと同じだね?」

警策「はぁ」

カエル先生「なんて言うかね、こう日常生活で使う筋肉は10%ぐらいだと言われているね?あぁ人が本気を出したときであっても30%ぐらいだね?」

警策「リミッター、でしたっけ?」

カエル先生「そうだね?人が常に全力を出していたら体が壊れてしまう、だから力をセーブする……それができなくなる能力の子もいるんだけど、まぁ余談だね?」

カエル先生「異能で救われる子もいるのに、それが重荷になる子も少なくないのね?」

警策「……」

カエル先生「ともあれ、現在のドリー君は補助輪のついた自転車に乗っている感じだね……君が言ったのは当を得ていた訳だ?」

カエル先生「ペダルをゆっくりと踏む分には、まぁあまり問題はないのだけれど、速く漕ごうとすると、ね?」

警策「治るんですかっ!?」

カエル先生「その言い方は正しくないね?”治す”のが僕の仕事なのね?」


(※多分続く)

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