Category

Counter
Access Counter

On-line Counter



Clock(trial)

鳴護「アル――」 バードウェイ「馬鹿が!跪いて許しを請え!」 鳴護「あ、あれ……?」


※メタ多し


――イギリス ロンドン某アジト

バードウェイ「……ふむ、『濁音協会』か。懐かしい名前を聞いたな」

バードウェイ「確かにダンウィッチで彼らとかち合ったのはよく覚えているよ」

マーク「ボス、言っときますけど、連中が暴れたのは先代の頃」

マーク「つーかアンタ生まれてねぇからな?話盛るなよ?」

バードウェイ「あの馬鹿共が未だしぶとく生き残ってる居たのは少々驚きだが、まぁ悪くない!悪くないぞ鳴護アリサさん!」

鳴護「ど、どうも?」

バードウェイ「噂に聞いた『シィ』の残党どもめ!穢らわしい汚泥を父に濁った瘴気を母に産まれた怪物達!」

バードウェイ「滅びを撒き晒す深淵の申し子!莫逆たる系譜に繋がる呪われた黄道宮の護り手!」

バードウェイ「我ら『明け色の陽射し』に牙を立てられると奢ったのかアルテミスの猟犬共め!傲慢にも程があるっ!」

バードウェイ「私は帰ってきたぞ!閉じた世界の終焉では終わらず、終わりきれなかった世界の糸車を回して!」

バードウェイ「見たか『隻眼の魔王』よ!貴様がどれだけ糸を紡ごうが、いばら姫の運命からは逃れられん!」

バードウェイ「一は十!十は百に!百は千へ!10の32乗の綻びがセカイを殺す!」

鳴護「あのぅ、マークさん?」

マーク「現代日本語に訳しますと、『まぁ守ったげるから大船に乗ったつもりでいなさいよ』ですね」

マーク「ちなみに今、ボスが喋っている言語は『厨二語』と言って、あの年頃では誰しも罹患する病気の一種です」

マーク「長引くとオッサンになってまで匿名掲示板にSS作って投稿しますんで、煩った場合には早めにお薬呑んで下さいね」

鳴護「ありがとうございます?……じゃ、なくってですね?」

鳴護「さっきから気になってるっていうか、その、知り合いっぽい人が居るって言いましょうか」

マーク「あ、すいません。これ『ユナイト』のCD、出来ればサインをして頂けると」

マーク「『パトリシアさんへ(はぁと)』って入れて下さると、ベリーハッピーだそうです」

鳴護「わ、懐かしー。オリコンで14位に入ったんですよー、これ」

鳴護「最初のシングルなのに『え!?初回特典にPV入れるんですかっ!?』ってビックリしちゃいまして」

鳴護「……そうじゃなくって。ていいますか、さっきから気になっていたんですけど、バードウェイさん?ちゃん?」

バードウェイ「おっと、『こんな子供がブラック・ロッジのボスなのか?』なんて、有り触れた質問はしてくれるなよ?」

バードウェイ「私はね、君の事はそれなりに知っているつもりだ――それこそ、君よりも知っているかも知れない」

バードウェイ「そんな私へ対して下らない質問はよしてくれよ、なぁ?」

鳴護「えっと、通訳の方?」

マーク「『妹から貸して貰ったアニメとCDでハマったんだけど、中の人が訪ねてきてイッパイイッパイになってるどうしよう』」

鳴護「あー……はい、わかります。私も大御所の先輩とお仕事させて頂く時なんか、結構緊張しますもんね」

バードウェイ「それで?君の知りたい事とは何かね。スリーサイズ以外なら何でも聞いてくれたまえ」

鳴護「いえあの、別に私ロリじゃないんで」

マーク「テメこらさっきから調子に乗ってんじゃねぇぞ?あ?アンタのそれ聞いて誰が得すんだっつーのに」

バードウェイ「……貴様も言うようになったなぁ、マーク?マーク=ギルダー?」

マーク「違いますボス。それGジェネのオリジナルパイロットで、最近ぽっと出て来たコード=フェニックス()にキャラ被られた人です」

マーク「てかそろそろフェニックスガンダムをですね。出来れば変形可能なタイプで」

マーク「ズワースとテスタメントガンダム出たんだから、いい加減」

バードウェイ「確かにな。まぁ私は少々子供っぽい容姿をしているようだが、それはそれでアリだ!」

マーク「黙れ12歳児。国が国ならランドセル背負ってるくせしやがって」

バードウェイ「ふん?ほざけ、駄犬が!幾ら吼えようが貴様の戯れ言など聞こえんなぁ!」

バードウェイ「今や私には最大の理解者を得て小人の小言など痛いものでは無い!」

鳴護「マークさん?」

マーク「『最近リア充だから好き勝手言ってくれても許しっちゃっうっぞっ』」

鳴護「はぁー、魔術結社の方って変わってるんですねぇ」

マーク「違う――と、思います。余所はきっと、もうちょっと真面目じゃないですかね?多分きっと、そうだったらいいなー、と」

マーク「んで鳴護さん?質問ってなんです?」

鳴護「さっきから、てかこの部屋に入った時から気になってたんですけど――」

鳴護「――バードウェイちゃんの座っているイス、それ当麻君ですよね?」

上条「……どうも、相変わらずバードウェイのイスになっている上条です……」

鳴護「しかもそれ、彼氏が彼女をだっこするみたいな、そういう生優しいやつじゃなくって」

鳴護「そっちだったらまぁ?『あ、恋人ごっこなんだぁ』みたいな、ちょっとほっこりした気分になれるんですけど」

鳴護「四つん這いの当麻君に足組んで座ってる、てかガチですよね?」

上条「ガチじゃねぇよ!?つーかやっぱこれおかしいんじゃねぇか!?」

バードウェイ「おや?私のイスに永久就職した上条当麻君、今更どうしたね?」

上条「つーかこれ違うし!明らかに背徳的な感じバリバリだしぃっ!」

バードウェイ「いや、背徳もなにも。君は昨日の夜、何をしたのか憶えていないのかね?」

マーク「あ、すいません鳴護さん。ちょっとこの曲ヘッドフォンで聴いてもらってかまいませんか?かまいませんね?かまいませんよねっ!?」 スポッ

鳴護「なんか”かま”言い過ぎでゲシュタルト崩壊しそ――」

バードウェイ「仕事を終えて疲れて帰ってきたと思ったら、まず私をお姫様抱っこして風呂へ連れ込み」

バードウェイ「『俺だけのお姫様、愛しているよ』とか言いながら、散々オモチャにした上」

バードウェイ「その後マークから電話がかかってきた私を後ろから獣のように激しく求めながら、『大きな声出すと、聞こえちゃうね』と言葉責めをした挙げ句」

バードウェイ「その後乱入してきたクソ忌々しいスプリーキラーと一緒に、前から後ろから開発される身にもなってみろ、あぁ?」

上条「すいませんボス、そろそろ18禁サイトになるから弁えろ、な?」

上条「ぶっちゃけ板の自浄作用も無くなってきたし、HP一本に絞ろうか、支部移るか迷ってんだから!」

バードウェイ「っていうか私も来てるんだからな?デキる時はデキるんだし、まぁ覚悟はしておけよ?」

上条「そりゃ……うん、そこは逃げるつもりはないからな。てか嬉しいぐらいだ」

バードウェイ「ならよし」

上条「ただデキ婚で式開いたとして、参列者のまるで犯罪者を見るかのような目を向けられるのがっ……!」

バードウェイ「諦めたまえ。もう全てにおいて手遅れだ」

上条「――え?マジで?」

バードウェイ「ま、お義父さんとお義母さんアレもだったんだし、戸籍をちょっと弄ればいい」

マーク「ピーンポーンパーンポーンっ!」

マーク「この物語の登場人物は例外なく18歳以上であり、多少幼く見える言動は全て『演技』の内なので、予めご了承下さい」

マーク「あと、昨日国会で児ポ法案(※単純所持を違法に)が通ったけど、誰もなんも騒いでないよね?選挙前と違ってどっこも取り上げなかったよな?」

マーク「オスプレイとかと同じで反政府キャンペーンに使われただけだ。つーかいい加減気づけ、いい歳してんだったら」

マーク「ポルノどうこう以前に、銀魂のカリアゲをカラアゲ事件で何一つ法的根拠もないのに規制した連中が、約束守る訳がねぇからな?」

鳴護「あのぅ……?」

マーク「あ、今取りますよー」 スポッ

鳴護「良い曲だったと思いますけど、これが何か?」

マーク「――はい!そんなこんなで鳴護さんの質問に答えて下さいなっ、ボス!」

マーク「『明け色の陽射し』の首領様に相応しい品格ある答えを!張り切ってどうぞっ!」

バードウェイ「うん、君の言う事は尤もだ。私も”これ”が真っ当な座り方じゃないのも知ってはいる」

鳴護「じゃ、何か問題でも?」

バードウェイ「こう、後ろから抱っこされるとだな。その、反射的に濡――」

マーク「今のは日本語で『ご機嫌いかがですかねっ!?』って言う意味ですから、えぇもうっ!」

鳴護「……いやあの、何となくバードウェイちゃんのデレ顔で想像つくっていいますか、はい」

鳴護「明らかに大人の階段ダッシュで駆け上がった感のする、独特の雰囲気みたいな」

鳴護「そっかぁ、爛れっぱなしなんだなぁ、当麻君」

上条「……まぁ、うん、色々あったんだよ、色々」

バードウェイ「いや、弱ったフリをすれば割と簡単に手を出してきたよ?」

上条「テメこらやっぱアレ演技だったんかあぁぁぁぁぁんっ!?」

マーク「騙されないでくださいよ。つーか勝負下着履いてる時点で気づくだろバーカ」

上条「お前も共犯じゃねぇかよ!」

円周「だっだいっまーーーーーーーっ!」 ギュッ

シェリー「おー……帰ったぞー……」

上条「お帰りー。てか飛びついてくんな、危ないから」

鳴護「もう既に娘が!?」

円周「パパー、お風呂入ろ?円周、イタズラしないから、ねっ?絶対絶対しないから?」

鳴護「……当麻君?人として間違い過ぎてないかな?」

上条「こんなデカい娘持ってる覚えはねぇよ!?……いや、ちっこくても無いけどもだ!」

鳴護「その言葉、信じてあげられれば良かったんだけどねー」

マーク「鳴護さんが遠い目をしてらっしゃいますな。お察しします」

鳴護「マークさんも?……あぁ、身内のそういう話って聞きたくないですもんね」

マーク「業務の負担が減ったのはアリなんですが、それ以上に毎日精神的ブラクラ踏んでる気が……」

シェリー「つーかあなた誰よ?新しい子?」

円周「家族が増えるよっ、やったねお兄ちゃん!」

上条「これ以上増えません!俺だって限界はあるさっ!」

シェリー「え?」

バードウェイ「いやぁ、うん。そう、だな?その通りなんだろう、きっとな」

円周「お兄ちゃん、それはちょっと……」

上条「なんでこの反応なの?俺だって必死なんだよ!」

円周「うん、うん……ッ!そうだよね、数多おじさんっ!『木原』ならこういう時、こう言うんだよねッ!」

円周「『一晩で三人相手に三回ずつって、ちったぁこっちの身にもなりやがれ』」

円周「『――この、遅漏野郎』」

鳴護「ち、なに?」

上条「――と、言う訳で俺達『明け色の陽射し』はアリサの護衛につきたいと思います!」

上条「お相手はよく分かんねクトゥルー教団らしいですけど、張り切っていきましょうンネっ!」

円周「わーい出入りだーっ!皆殺しだね、やったよ!」

シェリー「えー、今ガッコから帰ってきたばっかなのにかぁ?」

上条「いや、シェリーは元必要悪の教会なのに良いのか?」

シェリー「なんだそれ?新しい食いモンか何か?」

上条「気にしてないっつーんならいいけどさ」

バードウェイ「……ま、こんな感じ頼むよ。鳴護アリサさん」

鳴護「こちらこそ、よくしろお願いしますっ!」

バードウェイ「それはさておき、報酬の話なんだがね」

鳴護「私に出来る事でしたら」

バードウェイ「ここにあなたのセカンドシングル、『リンクス』があるのだが――」

バードウェイ「――『レイヴィニアさんへ、親愛を込めて』でサインを頼むよ」



――ユーロスターS 客室

バードウェイ「悪くはない」

バードウェイ「『最新式です』みたいな真新しさ、それはどう主張しても下品な具合に出来上がってしまうのだが、中々どうして”弁えて”いるな」

バードウェイ「下品ではない程度に整った内装、値段にしてみれば相応――とは、言いにくいが」

バードウェイ「……ま、悪くはないさ。懐古調を気取る訳でもないしな?」

バードウェイ「だが気に入らん!どうにも納得がいかないな!」

上条「どしたん?」

鳴護「子供料金だから、バードウェイちゃん」

シェリー「いいじゃねぇか安く上がったんだし。てか、四人部屋に五人で入ろうってんだから、無茶言うな」

バードウェイ「まぁ仕方があるまい――それで、鳴護アリサさん」

鳴護「あ、アリサで結構です」

バードウェイ「ではアリサ。君は今回の件で心当たりは無いのだね?」

鳴護「はい、全くありません」

上条「つーか魔術結社との繋がり自体がないもんなぁ」

シェリー「誰かから恨まれちゃってる、みたいなのはどう?」

鳴護「無い、とは思いますけど……自信は、あんまり」

シェリー「アイドルやってんだっけか。だったら同業者からファンの逆恨みにストーカーまで何でもアリよね」

バードウェイ「『エンデュミオン』でも『必要悪の教会』が動いていたと聞く。ま、十中八九そちらの世界関係だな」

バードウェイ「組織の性質上、話が通じるのは有り得ないが――まぁ?」

バードウェイ「無駄な対話が無い分、楽だと言えるかも知れないな」

上条「またお前はそーゆー」

着メロ『明日あえーるかなー、そらをー見てー』 ピッ

バードウェイ「『――どうした?』」

鳴護「目の前で使われると、うん、なんなか微妙な雰囲気になるよね」

バードウェイ「『後ろの車両を切り離せ。連結器の――そうだ。銃をチラつかせても避難させろ。少々乱暴でも構わん』」

円周「(お仕事だよねぇ、読み通りに)」

上条「(しっ!アクティブにしとけ!バレると面倒だ!)」

シェリー「(だりぃ――あぁ悪い悪い。アンタにゃ不謹慎か)」

シェリー「(ま、クソヤローに落とし前はキッチリつけさせっから、まぁ心配すんな)」

鳴護「(は、はぁ……?)」

バードウェイ「『あぁ――こちらは”狐狩り”を始める』」 ピッ



――ユーロスターS 第8車両

ショゴス『テケ――』

バードウェイ「……つまらんな――『ワンド』」

ゴォォォォォォォォォオゥンッ!

鳴護「……えっと……?」

上条「あんまり前に出ないでくれ。危ないから」

鳴護「そう、なんだけどさ。なんかこう、違うって言うか、違和感が?」

上条「何が?」

鳴護「ホラーアクションゲームあるよね?ゾンビとか撃って、おっきな家の中探し回るの」

上条「バイオがハザードする奴とか?それとも静岡?」

鳴護「どっちでも良いんだけど、あれって最初は逃げ回るじゃない?演出的にも」

上条「演出言うな」

鳴護「バードウェイちゃんの場合、『主人公が最初っから弾数無限のラケットランチャー持ってる』的なチートを感じるんだよっ」

上条「あー……まぁ、気持ちは分かる。凄くよく分かる」

上条「神裂――あー、知り合いに成層圏なのに生身で戦えるやつが居るんだけどさ」

鳴護「それ、人かな?私が言うのもアレなんだけど、私ってフツーだよね?」

上条「その人らとガチで殴り合っても、まぁ互角じゃね?って評価されてるのが、あのちっこいのだ」

鳴護「凄いんだぁ……」

バードウェイ「クロムウェル!新手だ!」

シェリー「おうさ」

シェリー「『My dear dear Ellis(愛しい愛しい私のぼうや)』」

シェリー「『Where have you gone?(あなたはどこへ行ってしまったのかしら?)』」

シェリー「『Is it a house of seven back kids of the forest?Or is it a hideout of three piglets?(森の奥の七匹の子ヤギさん達のお家?それとも三匹の子豚さんの隠れ家?)』」

シェリー「『Before come back, and a day goes down――(戻ってきなさいな、日が暮れる前に――)』」

シェリー「『――Before it is eaten by a man-eating old witch!!!(――人食いバアさんに喰われる前にな……ッ!!!)』」

エリス・ゴーレム『オオォォォォォォォォッ……!』

鳴護「周りの『アレ』が崩れて人型になった……!?」

シェリー「『炭素』は『鉱物』だろーが。だったらエリスの体になるのは当然の帰結だぜ」

シェリー「怖いおちびちゃんにパニクって『進化』したんだろうけど、逆効果だったみたいね?ご愁傷様」

鳴護「……ねぇ、当麻君」

上条「言うな!言いたい事は俺も分かるから!」

バードウェイ「ついでに『瞳』も頼む。これだけデカいんだから、どこかに――しかし、確実に本体が居る筈だ」

シェリー「了解。『散らばれ、エリス』」

バードウェイ「あと、後ろで恋人をチート呼ばわりしたり、ちっこいと言った馬鹿者は後でオシオキだッ!」

上条「イヤアァァァァァァァァァッ!?」

鳴護「絶叫する程に!?ねぇ、当麻君は何をされるのっ!?」

バードウェイ「――と、そろそろ良いタイミングだな。アリサさん?」

鳴護「私、ですか?」

バードウェイ「先程の打ち合わせ通りに。なぁに心配は要らんよ」



――カーゴ1

アル「……ふーむむむむむむ?」

アル(良い感じに混乱している――なんて、言えるような状況じゃねぇなぁ)

アル(思った以上に『明け色』は強ぇか。ま、それだけ分かっただけでも収穫)

アル(何事も引き際が大切だしぃ?俺はまだ死ねな――おんや?)

鳴護「……えっと?」

アル(鳴護アリサ?なんでこんな所に――あぁそうか!『歌』か!)

アル(さっきちっと話し込んだ時、俺がそれっぽい事言ってたからなー)

アル(車内アナウンスで歌って、混乱してる連中を正気付かせる、ってトコか。良いねぇ!ここで運が巡ってきやがったか!)

アル「……」

アル(カミやんや他の魔術師も居ない。罠かと思ったが、まぁいいぜ)

アル(さっさとかっ攫って逃げっちまおうか)

アル「おーい!アンタ!」

鳴護「え、はい?アルフレド、さんでしたっけ?」

アル「そうそう。つーかこの先は行かない方がいい!」

鳴護「何かあったんですか?この先には運転席ぐらいしか、無い筈なんですけど」

アル「いや、その運転手がさ?まぁ、死んじまっててだ」

アル(『戦場槌(バァトラム)』で撃ち抜いたんだけどな、俺が)

アル「つー訳で乗客はパニックでてんやわんやだ。このままだと飛び降りる馬鹿が出るかも知れないな」

アル(さて、どうする鳴護アリサ?出来れば『奇蹟』も一度見ておきたいんだが)

鳴護「――私が、歌います!」

アル「……へぇ?」


宿業のブレイブハート・歌詞


――十分後

アル「……」

アル(『奇蹟』、か。話半分には聞いてたが、予想の範囲を出るようなもんじゃない)

アル(上手いは上手い。けれど人の心へ土足で踏みにじるような、暴力的なもんじゃねぇ)

アル(魔力の類も感じられない……状況が状況だけに、全力で歌えていない、か?)

アル(が、まぁ『胎魔教典(オラトリオ・カノン)』を謳わせるには及第点)

アル(ま、最悪『改造』しちまうのも――あぁそうすっとぶち切れるかもなぁ。それはマズい)

アル(『進化の塔(エンデュミオン)』との再シンクロから試してみんのが、まずすべき事だよなー)

鳴護「アルフレド、さん?どうかしました?」

アル「ん?あぁいやいや別に?スゲェなって思ってさ」

鳴護「……いえ、私なんて全然全然っ!まだ物真似みたいなもんですからっ!」

アル「あんま謙遜すんのも良くねぇと思うぜ?アカペラでそこまで人を引きつけるのは才能だよ」

アル「――つーわけで、あんま抵抗して欲しくはないんだよ、こっちはな」

アル「俺達が欲しいのはアンタの『声』であって、それ以外はどうだって構わない」

アル「だから次に喋ったら、右腕から切り落とす。いいな?」

鳴護「え、えっ!?」

アル「――残念、俺達が『濁音協会』なんだ……よっ!」

鳴護「――うん、知ってたっ」

ザシュッ!!!

アル「かっ、はっ……!?」

アル(なんだ、これは……?)

アル(俺は今、鳴護アリサの腕を切り飛ばした――そう、思った!)

アル(けれど、実際に一撃を食らっていたのは、俺、だ!)

アル「なんだ、これはああぁぁぁぁぁぁぁっっ!?」

アル「どうして!鳴護アリサが!一介の学生如きが!」

アル「魔術師であり『聖別』された俺に刃向かえるんだっ!?」

アル「そんな、そんな貧相なカッターナイフ一本で!」

鳴護?「あはぁ、ごめんねっ?アルフレドおじちゃん、痛かったよねぇ?」

鳴護?「『次』はもっと上手くスるからっ!許して、ねっ?」

鳴護?「でもスッゴいなぁ。流石は魔術師!頸動脈切られてもお喋り出来るんだぁ、わぁーいっ!」

鳴護?「どうやったら倒せるのかなぁ?どこをどうグチュグチュすれば殺せるのかなーぁ?」

鳴護?「ホントはねっ、とってもとっても辛いんだけど仕方が無いよねっ!」

鳴護?「だってこれは『正義の戦い』なんだから!辛いけど、魔術師がどこをどうしたら苦しみ抜いて死ぬのか、確かめなきゃねっ!」

アル「お前は『誰』だっ!?」

鳴護?「うん、うんっ!そうだよねっ!こんな時、『木原』ならこう言うんだよね……ッ!」

円周(鳴護?)「『――今から地獄へ行く奴に、教えるだけ無駄だぜ』」



――駅

バードウェイ「――なぁに大した事はしていないさ」

上条(そう、ボスは駅を降りた瞬間に言う)

上条(既に駅で待っていた、奇妙な三人組へ向けて)

バードウェイ「初歩の初歩、兵法書にすら載らん当たり前の話」

バードウェイ「君達の狙いが最初から陽動だとは気づいていたさ。だから」

バードウェイ「『罠』を仕掛けた」

バードウェイ「クソガキの外見を術式で似せた上、『他者再生(エミュレータ)』で鳴護アリサを”再生”させる」

バードウェイ「仕草や行動パターンだけではなく、『歌』すらも」

バードウェイ「それにあっさり釣られたのが君達だよ。実に下らない結果だ」

バードウェイ「本物の鳴護アリサはどうしている、だと?その質問に意味があるかは知らないが、答えてやろう」

バードウェイ「彼女はずっとイギリスに居るよ。ロンドンを離れてもいない」

バードウェイ「つまり『最初っから鳴護アリサはニセモノだった』訳だ。残念だったね?」

バードウェイ「……とは言え、こちらが万全の状態、しかも魔術と科学両方を敵に回した。それ自体は誉めてやろう」

バードウェイ「そうでも無ければ君達の目論見は読めても、人手不足で対処しきれんだろうしな――さて」

バードウェイ「あぁ、勘違いはてよしてくれ給え」

バードウェイ「これは『対話』などではない。ましてや『降伏勧告』などでは絶対に有り得ない」

バードウェイ「君達は既にこちらとの会話を拒んでいる。問答無用で鳴護アリサを取りに来ているのが、その証拠だ」

バードウェイ「だからこちらも君達とは対話を試みない」

バードウェイ「君達がそうであったように、私も君達を奪い、蹂躙し、殲滅しつくさんと決めているんだ」

バードウェイ「どれだけ許しを請おうとも、人の道から外れようとも、私は君達を許さない」

バードウェイ「……ま、その、なんだ?私はあまり弁が立つ方では無いので、出来る限りスマートに物事を言おうとしているのだが――」

バードウェイ「――殺してやる、かかってこい」



――数時間後 とあるシティホテル

バードウェイ「……いやー、疲れたなぁ」

上条「うん、お疲れ様でした、ボス」

バードウェイ「思っていたよりも普通の相手だったな。面白くも無い」

上条「あー……ま、危なくないんだったら良いけど」

上条「んで結局、アレで終り?」

バードウェイ「絶対、とは言わないが、おそらくは」

上条「意外にあっさり、てーかボスチート過ぎです」

バードウェイ「相性の問題だ。お前は白モヤシに勝てるだろうが、銃には負ける」

バードウェイ「……ま、それだけの事だ」

上条「クトゥルーがどうとか、『C』がどうこうってのは?ブラフ?」

バードウェイ「興味が無い――事も、ないが。まぁそれは私の担当では無いのだろう」

バードウェイ「別の世界軸で誰かが解明してくれるよ、きっとな」

上条「またその話かよ。パラレルワールドがどうのって」

バードウェイ「――お前は『世界五分前誕生説』を知っているか?」

上条「ん、あぁ。確か――」

上条「『この世界は五分前に出来た。五分よりも前の記憶もあるが、実はそれも五分前に発生した嘘の記憶だ』、みたいな?」

上条「でもそれって思考実験?かなんかだったんじゃ?」

バードウェイ「実はな。この世界もそうなんだよ」

上条「マジでっ!?俺もお前もちょい前に誕生したって事か!」

バードウェイ「五分――ではないが、ほんの数日前に派生した世界」

バードウェイ「一度終わった私達が実は終わらず、続けたというIFの話」

バードウェイ「ん、まぁ勿論嘘なんだが」

上条「嘘かよ!知ってたけどもだ!」

バードウェイ「……そうだな、きっとそれも嘘なんだろう」

上条「それ”も”?」

バードウェイ「……いや、今日は少し疲れたのかも知れないな。早めに寝よう」

上条「俺はあんま疲れなかったけど。アリサのフリしてる円周のガードしてだけで」

バードウェイ「ん?ヤツには指一本触れさせなかった筈だろ」

上条「逆だ逆!……アイツ『他者再生』してんのに前へ出たくってウズウズしてやがった!」

上条「つか全然更正してねぇよ!むしろエロい事憶えて猟奇性に磨きが掛かってるし!」

バードウェイ「後半は自業自得だと思うが……ふむ?」

バードウェイ「車内に居た魔術師は『事故死』したんだよな?捕まるぐらいなら、と運転席のガラスを破って飛び降りた」

上条「……あぁ、遺体は酷かった」

バードウェイ「なんだ、きちんと成長してるじゃないか」

バードウェイ「一昔前のクソガキだったら、『死ぬまで拷問かました挙げ句、証拠隠滅のために自殺を装った処理』をしていただろうに」

上条「だよなぁ、そう考えると立派に――あれ?俺騙されてないかな?大丈夫?」

バードウェイ「愛してるよ、トーマ」 チュッ

上条「あぁっ!……あるぇ……?」

バードウェイ「明日からはきっと楽しくなるぞ?なんせアイドルを引き連れ、EUの名所巡りだ」

上条「残党いっかもしんねぇのに……いやまぁ、アリサには気分転換も必要だよなー」

バードウェイ「そうそう。行きたい所は無いのか?たまには付き合ってやっても良い」

上条「付き合うも何もほぼ一緒なんだが。あ、そういやさ」

上条「名前は忘れたんだが、フランスの川に掛かった橋に錠前結びつけるって観光名所あったろ?」

バードウェイ「あー、あるな。由来は忘れたが」

上条「ちょい前に、そこの柵が『重みで壊れた』って」

バードウェイ「縁起悪いんじゃ無いのか、そこ?」

上条「んで、復旧さして補強したってニュースで見た」

バードウェイ「……ま、悪くは無い。そうだな、そこへ行こうか」

バードウェイ「『明日』が来れば、それも良いかもしれないな」

上条「うん?」

バードウェイ「何でも無いよ。そろそろ眠ろう」

上条「おけ……あ、シェリー達もシャワーあがったみたい」

バードウェイ「では、また――次は『ホンモノ』の世界で逢おう」



−終−



※先週投下分、『新たなる光』と『明け色』を間違って書いてしまいました
読んで下さった方、並びにツッコミ下さった方には謝罪と感謝を
”一応”は続編じゃないループ世界ですが、もしかしたら一部の人間は気づいているのかも?――的な感じでお願いします

そういえば『断章』のラスト、上条さんが過去の自分を助けて帰還した際、バードウェイさんが携帯で話していたのは『誰』に、『何』を言っていたのでしょうね?

inserted by FC2 system