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都市伝説紀行〜祓い屋・闇咲逢魔シ リーズ Third season〜 「最終話、蛇神」(終)

 
――

『……』

『ねぇ知ってる?……うん、うんそう――”それ”』

『夜中にさ……合わせ鏡――』

『学校の……忘れ物をとりに行ったら――』

『キャンプ中に……テントの中からこっそり覗いて――』

『「足はいらんか?足はいらんか?」って……ダメだよ、答えちゃ――』

『ムラサキ……ハタチまで憶えてたら死んじゃうんだって――』

『ヒヒッ』

『トイレの右から四番目……四回ノックしてから「はーなこさん、あっそびっまっしょー」――』

『はぁーあーいー』

『穴がね……真っ赤な部屋で――』

『封じられた扉を開けたら……クレヨンでビッシリと――』

『フジツボ……いや、ないない。人間の浸透圧考えろや』

『暇を持て余した魔神たちの遊び』

『声をかけられてもね……うん、振り向いちゃってね、連れてか――』

『諦めろ。人に染みついた宿業だよ』

『いま、あなたのうしろにいるよ』

『右を見て、左を見て』

『今も……探してるって――』

『今度は、落さないでね?』

『いや知らないよ!あたしに言われても!だってこれは――』

『――ともだちのともだちからきいたはなし』



――住む者が死に絶えた古い屋敷

……シャラーン、シャラーン、シャラーン……

少年「――先生、鈴の、おとが……?」

闇咲「聞くな!持っていかれるぞ、あれは彼岸からの呼びかける声だ!」

少年「彼岸……向こう側……あぁ、僕は――」

闇咲「蛇の化生だ。カンカンダラ、と言った方が分かりやすいか」

少年「そんなことって!?それは、ただの都市伝説じゃ!?」

闇咲「……あぁ、そうだな。学術的に根拠もなく、また取るに足らない創作怪談の類――」

闇咲「――”だった”」

少年「……だった?」

闇咲「思いは想い、過去全ての神話がそうであったように、大勢の人間が崇め、畏れ、惹かれ、蔑み」

闇咲「それらの強い強い想いが、物語に実体を与える」

少年「それが……?」

闇咲「”よくわからないモノ”はそこら中にいる。神域の中、世界の底、森林の奥。どこにでもだ」

闇咲「それが『物語』を得ると、”あぁ”なるんだ」

カンカンダラ『あぁ……おいで、おいで、私の……ぼうや』

少年「――っ!?」

闇咲「なるべく声を出すな。しかし気にする必要はない。あれにこちらは見えていない」

少年「け、けどっ!すぐにそこにいるんですよ!?」

闇咲「”いる”が”いない”。実体を持たない、もしくは希薄だから繋がりが無きに等しいのだ」

闇咲「故にあれらはこちらと”縁”を結ぶ。境界を開けろ、問を開けと全てを誑かせる」

少年「えん、ですか?」

闇咲「縁、宿命、血縁、悪縁に奇縁という言い方もするな。とにかく繋がればいいんだ――不自然だとは思わなかったか?」

闇咲「件の話、カンカンダラとやらは人を何人も喰った怨霊であり祟り神なのだろう?それが無造作に番人や守り人もなく祀られているのは何故だ?」

闇咲「命からがら生き残った愚かな少年へ、秘伝中の秘をペラペラ吹聴する巫女とは一体どうして?」

少年「……縁を、結ぶ――いや」

少年「――感染する、んですよね……っ?」

闇咲「あぁ”あれ”は感染する。人から人へと語り継がれていく、それは即ち感染して無限に広がるのと同じこと」

闇咲「一言で言ってしまえば、登場人物全員がグルなんだよ。無謀な若者も、怪異も、訳知り顔で事情を説明してくる霊能者も」

闇咲「全員が一つの物語、言ってみればカンカンダラという怪異の一部に等しい」

少年「それじゃ……どうしたら……?」

闇咲「逆手に取ればいい。物語は物語で対処できる」

闇咲「吸血鬼には白木の杭を、狼男には銀の弾丸を。物語が示したように、あれらが創った弱点をなぞればいい」

闇咲「……そして今回の敵は簡単だ。ただ息を潜め声を殺し沈黙を守ればいい。それだけで緩く結わえられた”縁”は解け、君は元の世界へと戻れるだろう」

少年「僕が、帰れる……?」

闇咲「『呼びかけ』行為自体も呪いの一種だ。山姥や魔女が旅人に笑いかけ名を訊ねる」

闇咲「それに応えてしまった者はそのまま喰い殺される。よくある話だ」

少年「でも……!」

闇咲「どうした?」

少年「先生、は……?先生も、帰れるんですよね……?」

闇咲「私は……まだ少しこちら側でするべき事があるからな」

少年「ウソだっ!先生は、先生はっ!こっちに残るつもりでしょ!?」

闇咲「……誰かが滅せねばならぬからな。いいから聞き分け――」

カンカンダラ『……ぼうや……おいで、おいで……?』

闇咲「……ぐ、ぬっ!?」

少年「先生!?」

カンカンダラ『いるんでしょ……?ねぇ、ねぇ、ねぇ、ねぇ――』

闇咲「応えてはならん!……行け!このまま出口まで」

少年「イヤだよ!僕、僕!先生を置いて一人でなんて!」

カンカンダラ『ぼうや……?あぁそこにいたの、おいで、さぁ、さぁ、さぁ、さぁ?』

闇咲「致し方なし――ならば私が呼」

上条「――ヘイヘイヘイ、カンカンダーラーッビビってるーヘイヘイヘイ!」

闇咲・少年「」

インデックス「あれ?とうま見えるの?部外者は全然見えないんじゃなかったっけ?」

上条「いや全く全然これっぽっちも見えないぜ?ただ闇咲への援護射撃をしてるんだ!煽っとけばなんかこうダメージになるよ!」

インデックス「そう、かなぁ……?とうまがいうんだったらそうかもだけど」

上条「どうしたんたいオイっ!顔の上にちっちゃい巫女さん乗せちゃってるのかいオイッ!」

インデックス「あのね、この世界広しといえどもね、最低レベルの煽り方してるって自覚あるかな?」

上条「何言ってんだよ!?俺はただ闇咲が心配で佐天さんから習った煽り方してるんであって!?」

インデックス「……まぁいいんだけど」 ポリポリポリポリポリ

上条「あ、インデックスずるいぞ!何一人でセンベイ食べてんだよ!」

インデックス「ここへ来るときおばちゃんに貰ったんだよ。食べる?」

上条「いえ、お前から奪ったら関係ないトラブルで俺が血まみれになりそうだからいい」

インデックス「一枚ぐらいだったらあげるんだけどな……」 ポリポリポリポリポリ

上条「つーかさ、インデックス知ってたか?」

インデックス「ん、なにが?」

上条「蛇の鼓膜って退化してなくなってるから、音は聞こえないんだって」

インデックス「そうなの?へー、知らなかったんだよ、マジで?」

上条「うんうんマジマジ」

インデックス「でもへびつかいの人って笛を吹いてなかったのかな?れっどすねーく・かもんなんだよ」

上条「それがさー、あれは蛇遣いのオッサンがガンガン足で箱蹴るじゃん?そうすると中の蛇が怒って威嚇モードへ入るだけなんだってさ」

インデックス「ふーん、そうなんだー」

上条「ほとんどの蛇は地面の震動を感じたり、一部の蛇はピット器官っていう熱を感じる能力?があるんだと」

インデックス「あー、耳が聞こえないんだったら別の感覚がはったつしてるんだね」

上条「そうそう。生き物って不思議だよなー。生存競争の果てに取捨選択するっていうかさ」

インデックス「じゃあ、日本のいいつたえの中にさ、『夜中に口笛を吹いたら蛇が来る』っていうのは……?」

上条「うん、蛇は音が聞こえないからね。蛇は来ないんじゃないかな?他は知らんけど」

インデックス「あと、手塚治○先生のマンガで『はとよてんま○』で、へびのお母さんが息子に目をくれるしーんが」

上条「お母さんは蛇の神様だからね!きっと音は聞こえてるんだと思うよ!」

インデックス「て、ゆーかさ。それだったら今回のかんかんだらって人も聞こえてないんじゃないの?」

上条「多分そう。鈴の音とか足音聞いて追いかけて来るとか、全部蛇の生態じゃないよねーって話で」

インデックス「まー、そこはやっぱりかみさま的な補正が入ってるんじゃないのかな?よく分かんないけど」

上条「いやぁ、そういうの良くないと思うんだよなぁ?だって元ネタが人の生き死ぬやら土地の悪い風習取り上げて泥塗ってるってことじゃん?」

上条「なのに『今更全部嘘でしたー!』みたいなのは、ほら?なんつーか無責任っていうか?」

インデックス「だよねぇ。いまのじだい昔話にもこんぷらいあんすが求められるんだよ」

上条「だよなぁ?」

闇咲・少年・カンカンダラ「……」

上条「――あ、ごめんごめん。続けて続けて?俺らは気にしないでいいから!」

闇咲「無理だな!何かこう、ずっとだ!ずっと鈴の音的なものがキーになってる物語で!しかも相手が蛇系の相手で!」

闇咲「でも『実は蛇って耳聞こえないんだぜ?』的な事実を暴露されても、その、困る」

カンカンダラ ウロウロ

闇咲「見ろ!魔物がアイデンティティを見失いつつあるぞ!?どうしてくれる!?」

カンカンダラ『……し、知ってたしぃ!これは人の部分だから!蛇じゃないから!』

闇咲「ほらどうしてくれる!積極的に意思疎通始めてくるんだぞ!?」

上条「はいはいそこでそげぶそげぶ」

カンカンダラ『ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!?』 パキィィンッ……

闇咲・少年「……」

上条「よし帰ろうぜ!今からだったら何個か観光地巡れるだろうし!」

インデックス「てか、とうまさ?わたしいま思ったんだけど――」

インデックス「――今年に入ってから正式な使い方でそげぶするのって初めてじゃない……?」

上条「あ、そうかも!?」

闇咲「私の仕事と尊厳を返せ」


-終-
(※闇咲逢魔の戦いはまだ終わりません。ForthSeasonをお楽しみに)

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