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(新)都市伝説紀行〜祓い屋・闇咲逢魔シリーズ second season〜 「最終回、闇を祓うもの」(終)

 
――

『……』

『ねぇ知ってる?……うん、うんそう――”それ”』

『夜中にさ……合わせ鏡――』

『学校の……忘れ物をとりに行ったら――』

『キャンプ中に……テントの中からこっそり覗いて――』

『「足はいらんか?足はいらんか?」って……ダメだよ、答えちゃ――』

『ムラサキ……ハタチまで憶えてたら死んじゃうんだって――』

『ヒヒッ』

『トイレの右から四番目……四回ノックしてから「はーなこさん、あっそびまっしょ」――』

『はぁーあーい』

『穴がね……真っ赤な部屋で――』

『封じられた扉を開けたら……クレヨンでビックリと――』

『フジツボ……いや、ないない。人間の浸透圧考えろや』

『暇を持て余した魔神たちの遊び』

『声をかけられてもね……うん、振り向いちゃってね、連れてか――』

『諦めろ。人に染みついた宿業だよ』

『いま、あなたのうしろにいるよ』

『右を見て、左を見て』

『今も……探してるって――』

『今度は、落さないでね?』

『いや知らないよ!あたしに言われても!だってこれは――』

『――ともだちのともだちからきいたはなし』



――廃線になった地下街 封印の間

少女「くっ……いやぁ、来ないで!力が、抑え、きれない……ッ!!!」

闇咲「で、あるならば私の仕事だ。今からその力を祓う、ゆっくりと深呼吸をし――ぐあっ!?」 ガシッ

ネズミの王(少女)『……くくくっ!油断したな祓い屋、我はまだ滅びてはおらなんだ!』

闇咲「……死に損ない――いや、とうの昔に死んだモノが、みっともなく縋り付くな。世界を築いていくのは生者のみ!」

ネズミの王『貴様らには分かるまいよ!ただ人間に病魔を運ぶだけで駆逐された我らの哀しみを!』

闇咲「駆逐されて当然だな。貴様が千度甦るのであれば千回祓うだけの話だ」

ネズミの王『おっと、祓い屋よ。それ以上はやめよ』

闇咲「命乞いか?それは冥府で貴様が害した者どもへ言え」

ネズミの王『そうではない。我の力は人間との戦いで大きく減じておる。まともにやりあったところで勝ち目はない』

ネズミの王『――、小娘一人を縊り殺すのが精々だ、なぁ?』

闇咲「……外道が!」

ネズミの王『この我を祓うのであればこの器も道連れだ。死出の道行きに一人旅では寂しかろう?』

闇咲「……」

少女「……おじちゃん、わたしはいいから……!ここでこいつを祓わないと、もっとたくさんの人が――」

闇咲「――諦めるな。運命を怨んでもいい、八つ当たりで怒りに燃えるのもいい」

闇咲「だが諦めるのだけはダメだ。一度何かを諦めてしまったら、二度三度と繰り返す」 ガッ

少女「――ダメっ!?」

闇咲「があぁっ!?」

少女「おじ、ちゃん……?」

ネズミの王(闇咲)『くくくく……!甘い、甘いことよな祓い屋よ!たった一人の娘を見殺しにできず、体を受け渡すとは!』

ネズミの王『人間は、弱い!我らを殺すときには躊躇わないのに、情や愛だの見えないものに引き摺られ、迷う!』

ネズミの王『何が霊長か!その甘さ故にこの星の支配者が入れ替わるのよ!』

少女『……』

ネズミの王『む、まだ居ったのか。どこへなりとも消えるがよい、前の宿主よ。我らが完全に復活するまでまやかしの平和を謳歌せよ』

少女「……おじちゃんを、返せ」

ネズミの王『返せ?……くくく、何とも無体なことを言うのだな。娘よ、お前を解放するために愚かな男は体を受け渡したのだぞ?』

少女「返せ、返してよぉ……ッ!!!」

ネズミの王『と、言われてもなぁ?”封呪”の巫女ならまだし、ただの祓い屋風情が我の呪に耐えられる筈もなし』

闇咲「――と、貴様であれば思うであろうな。畜生風情が」

少女「おじちゃんっ!?」

ネズミの王『ど、どういうことだ!?』

闇咲「確かに私は呪的な素養を持ち合わせてはいない。少しばかり呪われた血筋に生まれついているがな」

闇咲「だが、少しばかり前に劇毒よりも更に怖ろしい、原書に近い魔道書を読む必要性があったのでな。耐性はそれなりに」

ネズミの王『じょ、常人ならば発狂する呪いだぞ……ッ!?』

闇咲「一身上の都合により少々。結果は飛んでくる砲弾を紙一枚で守るようなものだったが、まぁ?」

闇咲「死に損ないの畜生風情には過ぎた代物だったようだが!」

少女「おじちゃん!」

ネズミの王『ま、負け惜しみを言うな!現に指一本動かせぬ有様で何を勝ち誇っておる!?』

闇咲「負け惜しみ……あぁまぁそうだろうな。貴様程度の頭ではそう思うのだろうな、可哀想に」

ネズミの王『なんだと?」 

闇咲「貴様が復活する度に祓い、封じ、人の世界を守り続けてきた人間がそこまで愚かだと?本当にそう思うのか?」

ネズミの王『事実ではないか!』

闇咲「そうだな。文字通り手も足も出ない、オマケに脳を攪拌されているぐらいに激痛が走る」

ネズミの王『そ、そうだとも!我が取り憑いているのだから』

闇咲「一つの器に二つの魂、共有しているのだから矛盾が起きて当然――で、あるが故に、だ」

闇咲「先程から貴様の思考が私に読まれているとは、思いつきもしないようだな?」

ネズミの王『……なに?』

少女「おじちゃん……?」

闇咲「封印の規模に対して貴様は矮小すぎる。弱い、とも言っていい」

ネズミの王『……』

闇咲「現代と古代、どちらが術式が優れているかは知らんが、今では私程度の腕に祓われるレベルなのにどうして――と」

闇咲「――理由は至極単純明快、貴様は”先触れ”なのだ」

少女「……さき、ぶれ?」

闇咲「神や貴人が遠方へ赴く際、家人を先行させて伝える習わしだ。この場合、通るのは厄災だがな」

闇咲「この悪霊と同じ12体、それぞれが十二支を模した連中が眠っていて、このネズミはそのトップバッターという話だ」

少女「……大変……!」

闇咲「必ず封印は解ける、だが同時に必ず順番も守られる。だから最初に貴様が姿を現した、違うか?」

ネズミの王『……見たな?』

闇咲「私は体を乗っ取られたのではない。乗っ取らせたのだ」

ネズミの王『……ここまで来て邪魔が……ッ!』

闇咲「とはいえだ。外へ出て誰か呼んで来てくれ、アロハを着た陰陽師が待っている」

少女「……おじちゃんは?」

闇咲「直ぐに向う。少しばかり血を流しすぎた」

少女「――ウソっ!おじちゃん動けないんでしょ!?」

闇咲「だからそうだと先程から言って」

少女「そうじゃなくて!このままだと……おじちゃん、死んじゃう、よね……?」

闇咲「まさか」

ネズミの王『――その通りだ、と思っているな』

闇咲「余計な口を挟むな!」

ネズミの王『私がこのまま死ねば悪霊も滅する。最善でもないし次善ですらない愚策だが、だそうだ』

少女「おじちゃん……」

ネズミの王『お互いに意志が繋がっているのは不便なものよ、なぁ?』

闇咲「……他に方法が無い。理解しろとも言わん、だがこれ以外で無事に収める方法もないのだ」

ネズミの王『嘘は言っていない……残念なことに、な』

少女『……分かった。だったら、わたしも――!」 ボゥッ

闇咲「なん、だと……?この光は……ッ!?」

少女「わたしがどうしてこの悪霊に狙われたのか、おじちゃんには話したよね?」

闇咲「あぁ。君が封印の”鍵”であり、然るべき手順を踏めば解放してしまう、という……」

闇咲「……”鍵”?まさか!?」

少女「そう、鍵は開けることもできるし閉めることもできる――」

少女「……本当にオバケがいて、子供の頃から教わってきたことが役に立つとは、思いもしなかったけど……」

闇咲「止せ!下らないことを考えるな!」

少女「下らなくなんてない!これはわたしにしかできないことだよ!」

闇咲「そうかもしれないが……いや、そうじゃない。君が犠牲になる必要はないんだ!」

少女「そうだよ、わたしだって犠牲になんかなりたくない……けど、他に方法なんて、ない。違わないよね、おじちゃん?」

ネズミの王『そうだ、と思っているな』

闇咲「貴様は黙っていろ!」

ネズミの王『封じられるか心中するかの瀬戸際なのだ。黙っていろというのは酷であろうに?』

少女「……ありがとう、おじちゃん。わたしを助けてくれて、わたしを守ってくれて――」

闇咲「守ってなど――!現にこうして君を危険に晒しているではないか!」

少女「和服を着た偉い人はこう言ってた――始末しろって。でもおじちゃんは殴り飛ばして聞こうともしなかった、でしょ?」

少女「……わたしがこうしているのも、おじちゃんがかばってくれたお陰だから――」

闇咲「……私はまた、間違おうというのか……ッ!!!?」

ネズミの王『……そうだ、”それ”だ。我――いや、我らが全てを滅ぼそうと企む契機となったのも”それ”だ』

ネズミの王『主のために式として生き長らえ、主を失い怨霊に転じ、全てを滅ぼさんとし封じられた』

ネズミの王『我が嘘を吐いているどうか、今のお前にも分かるだろう?』

闇咲「……あぁ。だからか、ただ滅されるのを哀れに思い、貴様ら十二柱の悪霊を封印するに留めていた理由。それは」

ネズミの王『ただの温情だ、いつの日が我らの心が平かになる日が来れば、とな』

ネズミの王『……だがしかしそんな日は来なかった!誰も彼も悪霊としての我らしか見ない!邪悪として振舞うのを良しとされたのだ!』

闇咲「そして狂う……いや、狂おうとした、のか」

ネズミの王『狂う、で合っている』

闇咲「嘘だがな」

少女「だったら……あなた達をここで終わらせるわけにはいかないよ。いつかきっと、理解してくれる人が現われるから」

少女「その日のために少しだけ、眠ろう?ねっ?」

ネズミの王『断る、といってのも我に選択肢はないのだな』

少女「ごめんね?」

ネズミの王『まぁ……よいわ。この日の屈辱はいつしか必ず来る未来、そこで存分に晴らしてくれようぞ――おい、祓い屋』

闇咲「……なんだ」

ネズミの王『祓い屋よ。我がまた目覚めた先では、真っ先にお前の子孫のハラワタを喰らってやろう』

ネズミの王『そのために名乗るがよい。そのためだけに子をなすがよい』

闇咲「貴様が望みは叶わない――私の子孫が何度でも貴様らを滅すると心せよ、封印の中の微睡みこそが唯一安寧と知れ」

闇咲「だからその魂に刻みつけろ!私の名は祓い屋、闇さ」

上条「――あれ闇咲、肩にゴミついてんぞ?」

パキイィンッ

ネズミの王『ぐおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……ッ!!!?』

闇咲・少女「……」

上条「おー、とれたとれた。黒いスーツ着てっから目立つんだよなー、お洒落さんか。いや逆か、嫁さん貰ったんだったらもっとこう明るいの着ろよ」

上条「と思ったら、何か違う?つーかごめん、取り込み中だった?」

闇咲「い、いや、違うのだが」

インデックス「あー、封印封印。とうま、ここもそげぶするんだよ」

上条「おけおけ、ここな」 パキイィンッ

少女「封印解いた!?鍵でもないのに!?」

ウシの王『――くっくっく!我はウシの王、悪りょ』

上条「はいはい、そげぶそげぶ」 パキイィンッ

ウシの王『げほうっ!?』

インデックス「次こっちね」

トラの王『ふっふっふ、我はトラの』

上条「ハイタッチ、いえーい!」

トラの王『あ、はい、タッチ――ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』 パキイィンッ

少女「な、流れ作業で問題が解決していく」

闇咲「あ、あの……封印というものは、封じるべきものであって。大抵は手に負えないか、意図的に後世へ残そうとする意図がだな」

インデックス「まぁねー、そうなんだげとね−、昔は『あ、これ後で使えるかも!』って何でもかんでも封印しちゃいがちなんだよねー」

インデックス「例えるならゴミ屋敷?使えるかもって溜め込んだけど、実際には何の役にも立たないんだよ」

インデックス「でも今の術式って洗練されてすたいりっしゅだから、うん、出力が高い割りに細かい絞りができないからあんま意味がないんだよ」

インデックス「プロの格闘家でもナイフで刺されたら致命傷になるんだし、術式に規模の大小や格の上下はあるけどそれだけが絶対的な優位とは限らないんだよ」

闇咲「その例えは、ちょっとどうかと……」

インデックス「てゆうか、正座」

闇咲「え?」

インデックス「正座するんだよ!ほら早くここに!ハリーハリー!」

闇咲「……あ、はい」

インデクッス「どういうことなのかな?怒らないんで正直に話して欲しいんだよ」

闇咲「何を?」

インデックス「パクったよね?私の中の一万二千冊の魔道書のうち、『抱朴子』見ちゃったんだよね?」

闇咲「ま、まぁ少しだけだが?」

インデックス「だったら楽勝じゃないかな?なんでこんなザコ怨霊程度に後れをとっているのかな?」

インデックス「それともこれから本気出すつもりだったの?もう少しで手遅れになるところだったんだよ?」

闇咲「その手遅れになるところだった人を、君は正座させているのだが……」

インデックス「ごちゃごちゃいわないんだよ!聞かれたことにははっきり答える!」

闇咲「……いや、そうではなく。私が見たのは部分的なものであって、また完全に把握しているとはとてもとても」

インデックス「いいわけはいいんだよ!あなたがショッボイ負け勝たしたら『あぁ魔道書なんて大したことないのかな。ってことはインデックスさんも……』って言われるんだから!」

インデックス「『てゆうか魔神出て来て世界終わった後に敵のスケールが小さくて超ウケるんですけどwwwwww』ってもねっ!」

闇咲「それは私関係ない」

インデックス「奥さんができたからって守りに入ってるのかな!?それでいいと思ってるんだよ!?」

上条「すいませんインデックスさん。雰囲気ぶっ殺した俺に言う資格はないと思うんですが、家庭ができて守りに入らない男はただのクズだと思います」

インデクッス「魔道を極めようとするんだったらね!昔は妻や子供を悪魔に差し出すぐらいが普通にあったんだからね!?」

上条「何度もすいませんインデックスさん。とあるコンプラに引っかかりそうなので、あなたの口からデビルサマナーあるあるをそれ以上は、ちょっと」

インデックス「次から気をつけるんだよっ!?あと分かんないことがあったら、まず、聞きに来ること!ほうれんそうって大切だよね!」

インデックス「私だって最近ちょっとフリーターに転職したもんだから、時間はあるんだし!あどばいざーぐらいはしてあげるんだよ!」

上条「たびたびすいませんインデックスさん。インデックスさんのジョブは『とある世界のアーティファクト(基本飾り、たまに大惨事)』って意味で16年不動だと思います」

インデックス「まぁ今日は怪我してるみたいだし、このぐらいにしてあげるけど!次からは気をつけるんだよ!いーい!?」

闇咲「………………はい」

少女「封印は!?わたしの一族の役割は!?」

上条「って言ってますけどインデックスさん」

インデックス「んー、あなたの場合は鍵に特化してあるけど鍵穴が違えばあっても意味がないんだよね。つまりお役御免?」

少女「……」

上条「あーっと、その、なんだ?えーっと、な?――」

上条「――お疲れ!これからは自由に生きてよし!」

少女「っだゴラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


-完-
(※「都市伝説紀行〜祓い屋・闇咲逢魔シリーズ second season〜」は本号にて終了となります、闇咲先生の次回作にご期待ください)

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