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Clock(trial)

誰も居ない廃校舎でなされた会話


――XX学区 廃校舎
 
少女「……うっわー、すっごい埃だよねぇ」
 
青年「マジか?……あー、まぁ新しいカビとかいそう!うわなんかめっちゃテンション上がってきた!」
 
女性「こらこら、だめですよ円周ちゃんに乱数クン、私達は遊びで来たんじゃないんですからねー」
 
女性「お遊びは諦めてお仕事しませんと」
 
木原円周(少女)「うん、うんっ!そうだよね……ッ!木原だったらお仕事を優先しなきゃいけないんだよねっ!」
 
木原乱数(青年)「えー、良いじゃねぇの別に?少しぐらいハメ外したって。なぁ、病理姉?」
 
木原病理(女性)「とはいっても現状待機ですからねぇ。乱数クンが本気でサンプル収集し始めたら、ウルサイでしょー?」
 
円周「お仕事なんだっけ?騒いじゃダメなの?」
 
乱数「『都市伝説を意図的に生み出す』……だっけか?」
 
病理「違いますよー。『恐怖を煽る怪物達に責任を問うべき時期に来ている』ですから」
 
円周「むー?」
 
病理「ぶっちゃけ、『意図的に都市伝説を生み出して遊ぼうぜ』って悪趣味な実験でーす」
 
乱数「そんなん別にネット掲示板でホラ話書けば良くね?」
 
病理「乱数クン不正解。それだけじゃ『木原』は足りませんよ」
 
円周「うん、うんっ!……そうだね、もしも『木原』ならこんな時、こんな風にするんだよね……ッ!」
 
円周「火のない所に煙は立たないから、何か事件を起こして、噂の元になる足組を立てるんじゃないかなぁ?」
 
病理「円周ちゃん正解でーす。あなたも中々『木原』が分かってきましたねー」 ナデナデ
 
円周「わーいっ!」
 
乱数「いやいや、つーかそれリソースの無駄遣いじゃねーの?別に俺らがここでしなくても、誰か適当な連中にさせればいーじゃんか」
 
円周「あ、それわたしも思った。適当に選んじゃった方が効率的じゃないかなぁ?」
 
病理「それでは信憑性に欠けるのでーす。哀れな犠牲者は自発的にこういった廃校へ来るような、頭イタタな方が相応しいんです」
 
乱数「都市伝説にリアリティって何だよ。相変わらずシジイの癖に未来に生きてんな」
 
円周「まぁそれが方針なら仕方がないよねー」
 
乱数「つーかヒマなんだけどサンプル取ってていいか?直ぐ終わるし」
 
円周「あ、じゃ乱数おじちゃんも電波浴びれば?」
 
乱数「そういうのはツイッターで浴び慣れてるからノーサンキューだ」
 
円周「それば電波違いだと思うけどなぁ」
 
病理「本質的にはどっちも似たようなものでーす……あ、だったら」
 
円周「なぁに?」
 
病理「以前お話しした『世間話』の続きでもしましょうか?前と比べて、多少また時世が変わってきたので」
 
乱数「いんじゃね?俺もよく分からない所とかあったし」
 
円周「池沼さんのよくわからないよくわかるニュースだねっ!」
 
病理「あのハゲはタダの賑やかしさんですから。そーですねー、地球儀を手にとって――」
 
病理「『丸いんです!』」
 
乱数「まじでー?そーなんでーすかー?いやー知らなかったわー、初耳だわー、スッゲーな地球儀!」
 
病理「『しかもそれだけじゃないんですよ。実はですね、これには秘密がありまして――』」
 
円周「続きはCMの後でっ!」

乱数「『ちゃんちゃーらららー、イオンのトップバリューは品質に責任を持ちますぅ!』」」

乱数「『国産米と偽って中国毒米を売っていたにも関わらず、お詫びの広告一つ打たないなんて絶対にありませんっ!絶対だぞ!絶対にないからな!』」

乱数「『全国各地に誘致してシャッター商店街を量産するのが皆様のイオン!外国産の品物を優先的に販売して日本の生産業を壊滅に追い込みまぁす』」

乱数「『震災直後、風評被害で苦しむ被災地へ入って地元住民から、「岡田さんのイオンで取り扱ってくださいよ!」と懇願した市民をぉぉっ!』」

乱数「『「いや、それとこれとは別の話だから」とバッサリ切っておいて、その三年後自力で復興し始めた矢先に、掌返して新店舗を建設しようとするイオン!』」

乱数「『どうにか立ち直ってきた小売りと地元の生産業者にケンカ売ってるイオン!どーか、これからもシナ様のイオンをヨロシクおねがいしまーすっ!』」

円周「あ、CM開けまーす」

病理「『しかもそれだけじゃないんですよ。実はですね、これには秘密がありまして――』」

乱数「『――え!?えぇっ!?どういうことですかいっけっぬっまっさーん?』」
 
病理「『なんとこれは――地球を模しているんですよっ!!!』」
 
乱数「な、なんだっとぅえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
 
病理「――としか解説していませんからねー?あ、乱数クンナイスリアクションでーす」
 
病理「ぶっちゃけ政治・経済・国際・金融・外交・民族。どのジャンルをとっても2chの専門板に劣ります」
 
乱数「暇人の集まりと比べるのは色々と間違ってねぇかな」
 
円周「はいっ!先生っ質問です!」
 
病理「いいですねー、良いリアクションですよー」
 
円周「ウクライナのグダグダは一体どういう事なんでしょーかっ!」
 
病理「あー、はいはい。基本的な所から来ましたねー。ではまず現在の状況を」
 
乱数「何か大統領が逃げちまって、南部にロシア軍が入り込んでんだよな?」
 
病理「大体合っていますね。正確には南部と言っても『クリミア半島』って所でーす」
 
病理「そこは正確には『クリミア自治共和国』という自治区になっていまし“た”」
 
円周「過去形なんだね?」
 
病理「完全にロシア軍が進駐していますからねー。彼らが居る以上、最低でもクリミアの独立までは撤退しないでしょうし?」
 
乱数「事実上の属国だよなー、つーかさ。ウクライナってそんなにデカい国じゃないよな?」
 
円周「46位だねぇ。フランスの下スペインより上。ちなみに日本は62位かなっ」 ジジッ
 
乱数「だっつーのにどーして内部に自治区なんてあるんだ?」
 
病理「元々は第二次世界大戦中、ソビエトとドイツがぶつかり合った激戦区だったのですよ。つまり冷戦当時は『壁』の一枚だったわけですね」
 
病理「ソビエト連邦崩壊の際、ウクライナは独立を果たす――ん、ですけど、クリミア半島にはロシア人が数多く居たんですね」
 
病理「現在のクリミア共和国の人口は230万程度、約半数がロシア系だと言われています」
 
円周「その人達がロシアに帰属したがっている、って事かなぁ?」
 
病理「とも、言い切れないんですねー。ヴイクトル・ヤヌコーヴィチ大統領――元、ですかね。今は暫定政権に委譲していますし」
 
病理「ちなみに氏は強盗・強×で有罪になっていましたが、ソビエト連邦の議会議員の政治的な働きにより、両方とも『無かった事』にされました」
 
乱数「灰色通り越して真っ黒じゃねぇか。よくまぁそんな札付きが政治家になれたもんだ」
 
病理「後に地域党と呼ばれる親ロシア政党に所属、一度は大統領選挙で勝利したんですが――オレンジ革命って知ってます?」
 
病理「2004年に親ロシアと親EUの候補が大統領選挙に出馬し、親ロシア側が勝利」
 
病理「けれど親EUは選挙が不正だと抗議し、なんやかんやで再選挙したら親EU側が勝利!いやーめでたい!民主主義スパシーボ!」
 
乱数「何か違くね?つーかどうしてテンション上げた?」
 
円周「そりゃまぁ病理おばさんが持ち上げたら、後は嬉々として落とすだけだよねぇ」
 
病理「でも2010年にヤヌコーヴィチ前大統領が返り咲き、同時期に憲法裁判所ではオレンジ革命の際に作られた憲法が無効であるとの判決が」
 
病理「もう『諦めれば?』ってぐらいにどーしようもない展開に」
 
円周「んー……質問?いいーでっすーかー?」
 
病理「あい円周ちゃん」
 
円周「ヤヌコーヴィチさんって親ロシアなんだよねぇ?ってか現与党もそうだけど」
 
病理「あいあい。でーすねー」
 
円周「だったらその時に独立取り消して、ロシアに再併合とかしちゃえば良かったんじゃないの?」
 
乱数「いやいや、そいつぁ有り得ない。お前『六韜』って知ってるか?」
 
病理「中国の兵法書ですねー」
 
乱数「曰く『交渉の為に隣国から使者が来て、もしその者が有能ならば何一つ与えず返せ』」
 
乱数「『交渉の為に隣国から使者が来て、もしその者が無能ならば大いに与え、歓待せよ』」
 
乱数「『そうすれば、隣国では無能な者が重用され、有能な者が失脚する』」
 
乱数「『そしてやがては滅ぶ』」
 
円周「あー……『無能すぎて売国すらロクに出来なかった』?……あれ?デジャブかな?」
 
病理「加えて前大統領さんは『ロシアに併合されて地方役人になった自分』と、『ロシアに併合されず最高権力者のままの自分』を見比べたんだと思いまーす」
 
乱数「俺がロシア側だったら『金のために祖国を裏切るような奴』は絶対に処刑するしなぁ」
 
円周「裏切るのは癖になるって言うよねー」
 
病理「まぁ後は六韜そのままですよー。外国から持て囃される程の無能が政権に着けば、国民は然るべき報いを受ける、と」
 
円周「何が凄いかって、ロシアではパラリンピック直前じゃない?こんだけ早く軍事展開出来るって事はぁ……」
 
病理「NATOやアメリカよりも早く、『万が一』の事態を想定していたんでしょーね」
 
乱数「むしろ狙ってんたんじゃね?手際過ぎるんだろ」
 
病理「まぁそうかも知れませんねー。実はオリンピックの最中にもウクライナの選手がボイコットして帰国する騒ぎが問題になっていました」
 
円周「テレビじゃやってなかったもんねぇ、『日本の』テレビじゃねー」
 
乱数「あー、寄せ寄せ。テレビのスポーツ解説者が選手に詳しいってだけで話題になんだぞ?連中終わってるにも程がある」
 
病理「円周ちゃんも見習わないといけませんよ?『有り得ない、というのは有り得ない』んですからねー」
 
病理「『オリンピック開催中だから有り得ない』とか、『平和の祭典中に有り得ない』ってのは基本ですからねー」
 
病理「実際に東京オリンピックが開催されている裏で、選手のドタキャンと核実験強行かましたアカい国もありますし」
 
乱数「『常識』から一歩踏み越えんのが『木原』だからな」
 
円周「はーいっ!」
 
乱数「しかしウクライナなぁ……そーいや俺の知り合いのメル友がな」
 
病理「またなんかピンポイントな繋がりですよねぇ」
 
乱数「Naked & Funny(Голые и смешные)ってエロドッキリ番組があってだ、ウクライナの制作局がやってんの」
 
乱数「そいつが動画サイトにアップロードされるのを楽しみにしてんだと」
 
円周「それって、ホニャララだよね?」
 
乱数「だから直ぐ消えるんだけどな。んで去年の末ぐらいから動きがおかしかったんだよ」
 
乱数「やったら高画質のが、しかも大量にアップされ始めて消えないんだって」
 
円周「マニアさんのお仕事じゃないの?ネットで見た神様的な」
 
乱数「いやいや、それだけならどっかのバカの仕業かな?って思うだろうけど、それが先月か。二月末ぐらい」
 
乱数「それらに加えてほぼ最新版(今年の二月上旬放送分)とかも上がるようになった、ってのが先週頃」
 
乱数「しかも画質はHDの1920×1080に上昇」
 
病理「それはもうマスターテープが流出していると疑いたくなりますねー」
 
円周「日本の割れアニメじゃないんだし、そんなには……おかしいよねぇ」
 
乱数「その番組撮ってる街が、オデッサってウクライナ南部の黒海に面した港湾都市で」
 
病理「クリミア半島が戦場になれば、最前線になりますか」
 
乱数「だからこう、ヤケになったスタッフか誰かが流したとか?現地の人間は何となく雰囲気読んでんじゃねぇかなって」
 
病理「同じく乱数クンの好きなエロ関係の話ですがー」
 
乱数「俺じゃねーし!俺の知り合いのメル友だし!」
 
病理「――の、メル友さんの好きそうなお話ですが、ウクライナを拠点に活動している『FEMEN』という女性団体があります」
 
円周「知ってる!恥女の人でしょ?」
 
病理「本人達は大真面目でそこそこ有名なんですけど、彼女たちの主張はおっぱい程には知られていないと」
 
病理「けっこう仮――げふんげふん、いや私は20代ですよ?」
 
乱数「病理姉は無理がありすぎる。つかボケるんだったら最後までボケろ」
 
乱数「一応、連中はウクライナの売春ツアーや国際結婚――って名前の人身売買に抗議してんだと」
 
円周「あー、言ってたような?『現地のマフィアが積極的に売り買いしてるから、商売にならない』って誰かが」

円周「そっかぁ、棄民政策ってこういう事を言うんだねぇ」

病理「『PussyRiot』という名前のバンド――モスクワの大聖堂でゲリラバンドを開いて捕まった活動家もいたでしょう?」
 
乱数「今まで『何やってんのコイツ?バカじゃねぇの?』的な、抗議活動していた連中が、結局はある程度の核心を突いていた、って構図だな」
 
円周「いやいや、抗議活動の内容おかしくない?『じゃ、わたしも』ってはなりにくいよね、どう考えても」
 
病理「今となってはウクライナも完全分裂状態、しかもロシア軍がクリミア半島に駐留している状態でーす」
 
乱数「どうなんだろうな?ネタだと思われていたのが、実はって見直され――は、しないよな。やっぱり」
 
病理「目的のために手段を選ばないのであれば、それはタダのテロリズムですからねー」
 
円周「あー、いるよねぇ。なんかこう『手段のためには目的選ばない俺超カッコ良い』みたいなの」
 
円周「それは別に勝手にすればいいじゃんって感じなんだけど、『そう考えている人が正しいかどうか』を判断する人や基準は無いってオチ」
 
円周「自分が正しい→だから話を聞けば誰でも共感しない訳がない→それじゃ意に反する○○は××しちゃえって」
 
病理「さてさて、緊迫の度合いを深めていくウクライナですけど――お二人はどう思います?」
 
円周「どんな決着するか、って話かなぁ?」
 
病理「それは後年になってみないと何とも言えませんしねー。大体一年スパンで考えましょーか」
 
乱数「そうなぁ、今は『ウクライナの自治区』なんだろ?だったらタダの独立国になってお終いじゃねーの?」
 
病理「シリア・イラン・北朝鮮に中国。オバマ政権での外交戦は例外なく負けっぱなしですからねぇ」
 
病理「エジプトの政権崩壊を援助して、“アラブの春()”とか言ってみたはいいもの、実際に台頭したのは原理主義者」
 
病理「それがトラウマになってるだけなのかも知れませんけど」
 
乱数「つーか俺いつも思うんだけど、アラブに春ってあんの?なんか向こうはいっつも暑いイメージあんだけどさ」

乱数「『冬が嫌いで春を喜ぶ』って概念が、中東辺りで通用すんのかね?むしろ冬の方が過ごしやすくでいいんじゃねーの?」
 
病理「特に二期に入ってからは色々とはっちゃけたらしくて、各国の外交官に『一度もその国へ行った事が無い人間』を選んで問題になってまーす」
 
乱数「あっちゃー。天下のアメリカ様もいよいよ終りかねぇ」
 
病理「フィクションだったら面白いんですけどねー。そんなお馬鹿な国から『失望した』って言われても――」
 
病理「――では、なく。ウクライナの話ですよ」
 
円周「今ちょっと調べてみたんだけどぉ、ウクライナはクリミア半島に海軍の司令部と本隊を置いてるみたいなんだよ、うんっ」 ジジッ
 
円周「んで最後に軍隊を動員したのって2008年のセヴァストーポリ――半島最南端の港へ、南オセチア紛争を終えて帰ってきたロシア艦隊を」
 
円周「戦闘準備したミサイル艦が『お帰りなさい』ってしたんだって」
 
乱数「要は『いつでもやったんぞ?』か」
 
病理「そうするとロシアのクリミア奪取は別の意味も持ちますねー」
 
乱数「えっと黒海に面してる国は――」
 
円周「ブルガリア・ルーマニア・ウクライナ・グルジア・ロシア」
 
乱数「――だからロシアにどうこう出来る国はなくなっちまうなぁ。あーぁ、クリミア盗られれば海上封鎖と海軍が使えなくなんのね」
 
病理「文字通りロシアの内海になる訳でしょーね……あぁちなみに」
 
病理「2010年段階で既に『ロシアは“右派急進主義排斥”を掲げ、国内のウクライナの市民団体を解散、唯一のウクライナ文学図書館を閉鎖』しています」
 
円周「あれあれー?おっかっしーなー?明らかに人権と公民権の弾圧だけど、どうして国連の人権委員会では取り上げないのー?」
 
乱数「いい加減鼻につくようになってきたコナンの真似は止めろ。つーかおっちゃん帰って来い」
 
病理「『ゲイの権利を守る(キリッ)』とソチ開会式に欠席した首脳を絶賛しつつ、北京五輪では無反応でーす」
 
乱数「そりゃ自分達の選挙区にゲイと中国人は居るかも知れないけど、チベットとウイグル人はいないからじゃね?」
 
円周「乱数おじちゃんも結構エグいよねっ」

病理「そもそもマスコミが本当にロシアへ抗議するんだったら、開会式以下全ての競技を放送中止にするのが筋なんですがねー」

円周「っていうか『首相が開会式に出ない』だげで、抗議を意味するなんてバカだっよっねっ?」

病理「それはしゃーないでーす。賢明な有権者がお馬鹿な為政者を選ぶ事はあるかも知れませんが、お馬鹿な有権者が賢明な為政者を出す事はナイナイですから」
 
乱数「つーかよぉ、南オセチア紛争って確か『北京五輪の真っ最中に起きた』んだよな?08年の」
 
乱数「プーチン大統領が開会式に出席していたって、数多兄と見た記憶があんだよ」
 
円周「みたいだねぇ。あ、当時は首相だったみたいだけど」
 
乱数「グルジア軍が南オセチア――当時、グルジアの一部だったんだけど、支配地域じゃなかったトコに進軍した、と」
 
病理「そこへロシアが首を突っ込んでグルジアの沿岸を包囲したり、爆撃かましたりしたんでーす」
 
円周「最終的にはグルジア領である南オセチアとアブハジアの独立を承認、でもって軍もグルジアから撤退したんだけどー」
 
円周「戦争後にグルジアの支配地域だったアブハジアと南オセチア領内へ、両自治政府の承認を貰ってロシア軍が駐留している、と」
 
病理「どう見てもグルジア侵攻の橋頭堡ですありがとうございました」
 
乱数「なんかさぁ、『五輪最中の侵攻』とか明らかにグルジアの意趣返しって感じなんだけど」
 
病理「と、まぁ以上が判断材料としては適当でしょうかねー」
 
円周「じゃあじゃあ今回もロシア勝っちゃうの?」
 
乱数「軍を動員してんだぜ?最低でもクリミア半島はぶんどるに決まってんよ」
 
円周「んー、それだけで済むかなぁ?」
 
乱数「あん?」
 
円周「今回のロシアの軍事行動って、言ってみれば色々と波及しかねないと思うんだよねー」
 
円周「クリミア共和国って、230万人だっけ?それでウクライナが――」
 
円周「約4600万人か、成程成程」 ジジッ
 
円周「って事は『人口のたった5%の賛成があれば、国から独立できる先例』が出来るかも、って事だよねぇ?」
 
乱数「そりゃ……キツいな」
 
病理「スコットランドやイベリア半島、後はインド東部にも火種を抱えていますからねー」
 
円周「中には独立をチラつかせながら、中央政府に無茶な条件の地域振興予算を脅し取る所も出てくるかも知れないよねぇ」
 
乱数「あー、あるある。独裁国家からは絶対に運動を許さないのに、何故か平和な国家で起こってマスコミがバックアップしてる、的な」
 
病理「チベットと東トルキスタンを黙殺して、どーゆー訳が先進国からの離脱が成されるんでーす、っと」
 
乱数「つーか世界ってこんなに頭悪かったっけか?普通こうなるのは――ロシアがクリミア盗る気満々だっつーのは分かってた事じゃねぇの?」
 
乱数「NATOにしろアメリカ軍にしろ、何やってんの?お前らが大好きな『自由と平和』を守るために血を流すつもりはねぇのかよ?」
 
病理「いやいやぶっちゃけますけど、所詮こんなもんですよ?世界ってぇのは、ネタ抜きで小学校の学級会レベルでーす」
 
病理「この間ソチ五輪開催中にね、エチオピア航空機が副機長にハイジャックされた事件がありました」
 
円周「開会式の日に聞いたような?またテロかー、って思った気がするけど」
 
病理「で、まぁハイジャックしたものの、結局イタリアのユーロファイター、フランスのミラージュに『誘導』されてジュネーブまでお帰り頂いたのですがー」
 
病理「その時に戦闘機を出すように要請されたスイスが、『時間外だから出さない』って」
 
円周「……はい?」
 
乱数「マジっすか!?終わってんなースイス!」
 
病理「ネタではなく事実です。普通ならばこういう時、『よっしゃ実践経験積める!』って喜んで出すのが普通なんですけどねー」
 
乱数「バカじゃねぇの?スイスって確か、昔は傭兵売って外貨稼いでたよな?」
 
病理「ハイジのおじいさんは元傭兵、お父さんも同じく傭兵で戦死した扱いになっていまーす」
 
病理「他にも現在、日本のマスコミさんは必死に『日本の烏骨鶏』のネガキャンしてますけど」
 
円周「『右傾化』じゃないかな」
 
病理「はっきり言いますけど、日本の右傾化云々なんてロシアの軍事侵攻に比べれば、それこそ微々たるものでしょう?違いますか?」
 
病理「それこそウクライナやらグルジア、チェチェンに至るまでありとあらゆる軍事行動を起こしてきたプーチン大統領ですが――」
 
病理「日本のマスコミさんに言わせれば、これは『“超”右翼』ですよね?」
 
円周「ねぇねぇ?どうして国が軍を動かすと右翼とか右傾化って呼ばれるのー?」
 
円周「数百万ぶっ殺したヨシフ・スターリンやポル・ポト、更に上を行く毛沢東は“左”なんだよねー?」
 
円周「ナチスのユダヤ人虐殺は大問題だけど、左翼政権がやらかした虐殺の方が圧倒的に量も質も悪いんじゃないの?」
 
乱数「連中にとっては『右翼=犯罪者』って図式があって、それを覆すと都合が悪ぃんだよ」
 
乱数「戦前の新聞では『腰抜け東条!勝てる戦争何故やらぬ!(by朝日新聞)』とか、散々日本人煽っておきながら」
 
乱数「戦争が終わったら『ボク達強制されていたんですぅ、何も悪くないんですぅ』つって逃げ出した真性のクズだぜ?」
 
病理「元々欧米では反シオニズム――ユダヤ人の排斥運動というのが、極々自然に行われていたんですよね」
 
病理「ですからナチスが行ったジェノサイドに、現地の人間が喜んで荷担していた、という記録も多々残っています」
 
乱数「『アンネの日記』だとナチスに突きだしたのはオランダ人の警察なんだよなー。しかもアレ『部屋の隠し扉』を警察が何故か知っていた。つ・ま・り」
 
病理「あの建物の誰かが密告していたんですねー、記録が正しければ、ですが」
 
乱数「欧米がヒットラーに押しつけたように、連中は『右翼』に押しつけたんだよ」
 
乱数「だから連中が引き合いに出すのはヒットラーしか居ないって訳だ――『今現在も行われている非人道行為』を無視してな?」
 
病理「日本のマスコミも大概ですけど、余所様もアバウトなんですから、誤解しちゃダメですよ?」
 
病理「ここまでやって、ロシア人や国家が排斥されたりハブられたりしたって話は聞きませんよね?それだけの話なんでーす」
 
病理「そもそもEUそのものが大がかりなコントじゃないですか?アレを構想した人達は世界屈指の、しかも国レベルのトップ達なんですよ?」
 
病理「それこそ数百万人、下手をすれば数千万人の人間達がアレコレ考えて出た結果がギリシャのデフォルト」
 
病理「しかも『貧しい国から富める国への大規模移動』――その結果待っているのは、『貧国はますます貧し、富める国はますます富む』と」
 
病理「っつーかバカじゃねぇのか?分かってたよなぁ?」
 
乱数「病理姉、テレス姉みたいになってる」
 
病理「おぉっと失礼。これでは婚期がまた遠くなってしまいますねー」
 
円周「病理おばちゃんまだ諦めてないんだー」
 
病理「ぶっちゃけ99%諦めてますけどー、そこはそれどっかの暇人が何となく勢いで書いてくれるかも?」
 
円周「頑張れっ!わたしみたいなマニア向けですら需要はあったんだし!」
 
乱数「……いやぁロリコ×は結構に多いかもだが、病理姉は色々特殊な属性じゃね?」
 
乱数「年上・超ヤンデレ・変態――あぁ生物用語の方のだけど、需要的なもんがあるっつーのか、なぁ?」
 
病理「あぁ乱数クンなんて酷いことを。昔は『病理姉のお嫁さんになる!』って言ってくれましたのに」
 
円周「結婚しちゃいなよユーたち」
 
乱数「言ってねぇよ!俺の人生まで諦めさせようとするんじゃねぇっ!」
 
円周「うん、うんッ!そうだよね、きっとこんな時、『上条当麻』ならこう言うんだよね……ッ!」
 
円周「『俺は――諦めない!目の前で泣いてる奴が居て、はいそうですかって見捨てられる訳ねぇだろうが!』」
 
円周「『だからアンタも諦めろ――“諦めるのを、諦めろ”!』」
 
円周「『そうすりゃ幾らでも――アンタの前に無限の可能性が広がって居るんだよ……ッ!!!』」
 
病理「やっべ超格好良い」
 
病理「あぁ私も白馬に乗った王子様が現れて欲しいですねー」
 
病理「つーか諦めている私を諦めるよう……ってなんかゲシュタルト崩壊しそうな感じですね。いやいや」
 
病理「円周ちゃんみたいな木原未満ですらヒロインになれたんだから、私もこう、オトナのミリキでどーにか……人気が、うん?」
 
乱数「いい加減にしとけお前ら。作中作のネタで書いたのに、気がついたら長編でヒロイン張ってるハメになんぞ」
 
乱数「予期せぬハードワークになってて、胃壁がガリガリ削られて入院するんだからな?」
 
円周「そしてコッソリ別名義で薄い本を刷って、地方の会場で売ったりするかも?」
 
病理「在庫と頭を抱えれば、色々と諦められそうな気もしますけどねー」
 
円周「まぁでも結局さーぁ、これが現実なんだよねぇ。どれだけ理想を掲げた所で暴力に膝を折るのが世の常だしぃ」
 
円周「暴力を止めるのはまた暴力以外にあった事はない、ってね」

乱数「どっかのクソ新聞には『ロシアも自制を!』とか書いてあんだけど、それ具体的には『誰かが何とかしてくれるのを期待しましょう』ってハラだよなぁ?」

乱数「具体的なプランは何もねーし、かといって声明を出すって話でもねぇ。つか自制するもしないも極東の新聞の社説なんか相手にする訳ゃねーだろバーカ」

円周「目の前で強×されそうになっている時に必要なのは、憲法九条でも平和主義でもなくってぇ、ほんの少しの勇気と暴力だもんねぇ」

円周「経済制裁のような”目に見えない暴力”、もしくは軍事行動のような”物理的な暴力”のどちらかでのみ無法者から身を守る事が出来る――」

乱数「――だけじゃなくってだな。常日頃自称『平和主義者』がぬくぬくと享受してる平和だって、血と暴力と先人の命によって築かれてる代物だし」

乱数「この期に及んで『軍隊を無くせば戦争は無くなる』なんて言ってる奴は、生きてる価値すらねぇぜ」

円周「無知なのは罪じゃないよ?誰だって全知全能なんてのは有り得ないんだから、それはねー」

円周「同様に『勉強しろ』とか、『知っておけ』とかも強制するつもりもないんだよねぇ。それも個人の自由だから」

円周「けどね?この世界には確実に誰かを騙して稼ごうって詐欺師が居て――」

円周「――ううん、それだけじゃないよね?本人達は善意のつもりでも、結果的に被害を量産する――『正気に見える狂人』が幾らでもいるんだよねぇ、これが」

円周「そういう人達の栄養になりたくなければ、知っておいた方がと思うよ。この、私達が住む世界の話を」

円周「騙されて損をするのは自分だからねっ!……まぁでも、そう言ってる当人が『正気に見える狂人』である可能性も否定出来ないのも確かなんだよねー」

病理「さてさて、そろそろ時間も良いでしょうし、『世間話』はこのぐらいで」
 
病理「円周ちゃんもロシアのえげつなさを見習わなくてはいけませんよ?乱数クンもですけど」
 
円周「はーいっ!」
 
乱数「うーっす」
  
病理「――あぁ、そういえば。さっきから気になっていたんですけど」
 
病理「――ロッカーの中にいる“あなた”。そうそう、そこの人」
 
病理「そろそろ諦めて出て来て貰えませんかねぇ?」
 
病理「私達の会話を聴いている時点でもう手遅れですから、諦めてくださいな」
 
病理「きっとお友達を脅かそうとしてたんでしょうけど、もう彼らがここへ来る事は出来なくなってしまいましたねー」
 
病理「……」
 
病理「うーん。あまり痛くはしたく無かったんですけど――円周ちゃん?」
 
円周「はーいっ!」
 
病理「バッグに入れてる硫酸を取って貰えませんか、ほら早――」
 
 
 
「うぅわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっ!?」
 
 情けない言葉と一緒に狭く苦しい鉄の棺桶から飛び出す。
 何が待っていようとも一目散に逃げ出す試みは見事に失敗し、無様に床の上を転がってしまった。
 
「――っ!?―――――――っ!」
 
 声にならない悲鳴を上げ、出来れば誰が聞きつけてくれるように声を。
 
「――?……?」
 
 声を。
 
「……」
 
 だか、そこには。
 逃げるべき敵の姿はなく。
 
「……っ!?」
 
 そう、最初から誰も居なかった。
 自分を除いて。
 人間は。
 
「――あ、う」
 
 誰も居ない廃校舎でなされた会話。
 ”誰”が喋っていたのか?


−終−

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