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Clock(trial)

海原「――すいません、少しご相談がありまして」

 
――とあるファミレス

ファファファフファ、フファファファ

上条「客検知のブザー音おかしくね?これ確かファミ○のだろ?」

店員「いらっしゃいませーこんにちは。お一人様ですかー?」

上条「いえ、連れが先に来てる筈なんですが」

店員「そんな見栄を張らなくても……」

上条「無理だよ。ここで知らない人へ『ごめん、待った?』とか行けるんだったら、それはそれで勇者だわ」

店員「いらっしゃいませーこんにちはー!お一人様ですかー?」 クルッ

上条「待て待て次に行くな!?俺をさばいて行けよ!なぁ!?」

海原「すいません上条さん。あなたの日常はツッコミが多すぎてウルサイです」

上条「強いられてんだよ。アリサがサメマラソンをやらされてるように、俺も右手でアホどもにツッコミをだな」

海原「あ、そのお話長くなります?でしたら先に注文をされた方が宜しいかと」

上条「すいません――水で」

海原「セルフサービスです。ドヤ顔でキメてるところ恐縮ですが」

上条「――ドリンクバーの砂糖ってドリンクバーに入ってんのかな?あれがオプションで実は入れ放題ってことは」

海原「――すいません店員さん!こちらの方の本日のオススメを!あとドリンクバーもお願いしますね!」

上条「ありがとう海原さん……!今日は最悪サイフを忘れたフリをしようかと迷ってたんだ!」

海原「極限状態ですよね。炊き出しとか行けば相談に乗ってもらえますよ?」

上条「なぁ知ってるか海原?世の中にはコン」

海原「ハイッそれ以上はやめてくださいね!燎原のように広がって炎上しているんですから我々が取り上げなくても!」

上条「いや俺も真面目にバイトとかしてんだけど、給料日には何故か『あと○○円あれば妹の手術代に!』とかって子とエンカウントしてだな……」

海原「確実に詐欺ですよね?上条さんの懐具合を狙ってませんか?」

上条「そっか――病気の子はいなかったんだな……!」

海原「以前から薄々気づいてはいたのですが、あなたも程々にクレイジーですよね。BIOSにバグがある」

上条「や、でもその後は『募金が集まった』とか言って返してくれるぞ?そういう意味でトータルはトントンなんだよな」

海原「で、あれば詐欺ではないような……どこかの保護者さんが炎のナイフを突きつけている可能性がなきにしも非ず、ですが」

上条「そこまで暇じゃねぇだろあいつら。神裂とセットでちょいちょい見かけっけども」

海原「お互いトップが代りましたからねぇ。前に進んでいるのか後ろへ下がっているのか、悩ましい話ですよ」

上条「前よりはマシになればどっちだって構わないだろ……大丈夫大丈夫、確信はないけどそう信じてる!」

海原「前が酷すぎましたからね」

店員「お待たせしましたー。どうぞー」 ドンッ

上条「態度悪すぎないか?」

海原「いえ、上条さん。そういうコンセプトのお店ですので」

上条「そういう?」

海原「前に我々が立ち上げた『常盤台カフェ』――しかし心ないジャッジメントのタレコミにより潰されてしまいました……!」

上条「ナイスだよな初春さん。あと創立メンバーに俺を入れんなや」

海原「ですが!我々は地下に潜って反撃の時を待ちわびていたのです――決して!そう決して今までお声がかからなかったのは忘れてられていた訳ではなく!」

上条「唐突か」

海原「そして辿り着いた境地が――『雑カフェ』なんですよ……ッ!!!」

上条「ごめん、なんて?」

海原「雑なカフェです」

上条「名称じゃねぇよ。お前の頭ん中を疑ってる」

海原「いいですか上条さん、対人関係には様々な距離感がありますよね?パーソナルスペースというやつです」

上条「意味合いが……いやまぁ、仲良くなればなるほど物理的に近くなるかもだけどさ」

海原「まぁ我々の場合、共に死線を潜り抜いたわけですし、なんでしたら横に並んでもいいぐらいでしょう?」

上条「その死線を用意したのもお前だよ。自作自演じゃねぇか」

上条「あと四人掛けテーブルで横に来られたら『えっ怖!?』ってなるわ!例え相手がカノジョだとしてもだ!」

海原「え、たまにいません?ファミレスで百合繋ぎしてるカップル」

上条「――詳しく頼む!俺達は邪魔はしないから!ただ見てるだけでいいから!」

海原「食いつきが怖いです。で、まぁ人によって距離感というのは色々ですね。クラスメイトや友達、家族に恋人と」

海原「そんな中、『雑』っていうのはある種のシュレディンガーの猫じゃないですか?」

上条「だからなんて?お前今更中二病発症してんの?」

海原「シュレディンガーの猫は『観察行為をするまでは状態が確定していない』と、いうのを例示したものです。それと雑対応は同じだと言えましょう!」

上条「シュレディンガーさん、あの世できっと『えっ?』って言ってっと思うぞ。『こんなしょーもない使われ方するんだったらもっと適当な名前にすれば良かった』って」

海原「雑っていうのはある意味フランクな相手にする事です!態度が悪いというのは裏を返せばそれだけ相手の距離感が近く、多少雑でも許されるという甘え!」

海原「接客業では絶許な態度にも関わらずしてくれる――つまりご褒美なんですよ……ッ!!!」

上条「なぁそれ逆に考えてみ?お前が好きな人がいて、雑な対応すっか?」

海原「――た、確かに……ッ!?」

上条「お前はもう故郷へ帰れよ、なっ?家族がきっといるんだろうから」

海原「自分達は『結社』に売られた身ですので……」

上条「そこはボケろや!?『自分、義妹だけいればいいんで!』的な!?」

海原「――いいですか上条さん?この世界は多様性に満ち溢れていましてね」

上条「癖(へき)の話だろ。いやお前を否定しない、しないけども」

海原「まぁ前置きはこのぐらいにしまして。実は上条さんに相談がありまして、今日はお越し頂いた訳です」

上条「微妙にもう厄介事フラグとしか思えねぇけど、まぁいいわ!かかって来いや!」

海原「ありがとうございます。内容が内容でして上条さんしかお話できる方がいないもので……」

上条「あぁ、っていうことは魔術サイドの話か。イギリスに亡命だったら、まぁなんとか紹介は出来ると思う」

上条「あっちもトップが代って『悪・即・滅』ではなくなったって。その代わりにお菓子くれる頻度が下がったってアンジェレネ師匠が」

海原「いえ、違います。気遣ってくださるのは嬉しいのですし、場合によってはお願いするかもですが」

上条「カネに関しては俺も厳しいが……身分証明だったら雲川先輩に頼み倒せば何とかなる、か?いやだったら一方通行の方か。知り合いなんだよな?」

海原「あぁそちらも苦労してないとは言いませんけど大丈夫です。それよりも自分はもっと喫緊かつ緊急の課題が」

上条「ほう、つまり?」

海原「そろそろ自分も異世界転生をしたいな、と」

上条「――なぁ、海原。俺は思うんだよ、この世界は平等じゃないって」

上条「生まれや環境、年代とか人種に民族に癖(へき)。それらは全部違っていて、全員がよーいドン!で競争するんじゃない」

上条「けど、だけどさ!?誰だって幸せになれる権利はあるんだ!例え今がどんだけ辛かろうとも!いつかきっと幸せだな、生きてて良かったって思う日が!」

海原「熱弁中に恐縮ですが、多分誤解をされているのでは?」

上条「え?お前がトラック自殺したいって話だろ?」

海原「いや違いますよ!?自分はただ真面目に話をですね!」

上条「転生の話してる時点で不真面目だよ。もしくは自殺幇助」

海原「乗らないと!このムーブメントに!」

上条「周回遅れにも程がある。某スライムさんが10周年って『スゲー』って思ったばっかだわ」

海原「まぁまぁ落ち着いてください。最近はクラフトものが定番になりましたでしょう?」

上条「むしろ定番になっちまったら逆にヤバくね?同業他社がいっぱい居る中で戦うんだぞ?」

海原「分かってないですねぇ。自分を誰だと思っているのですか」

上条「JC好き好きシリアルキラー」

海原「ではないですね。前半は否定する要素がありませんが」

上条「50%でも正解してるって事だろ」

海原「いやまぁそれはそうなんですが、視点が違うのですよ。自分はまず異世界行ったら石鹸を作り始める有象無象とはね」

上条「一応、一応まぁプランは聞いておこうか。海外の人がどんな感じになるのかは興味がある」

海原「でしたら禁書目録さんに伺ってくださいよ。自分も興味があります」

上条「曰く、『魔術体系が違ってたらそれで終わり』」

海原「あーまぁ色々な世界観がありますよね。自分も手持ちのネタが使えなくなったら絶望どころの話じゃないですから」

上条「で、仮に使えるとして」

海原「そうですね、こんな感じでしょうか」

……

冒険者A『――ここが新しく発見されたゴブリンの巣穴だ!全員気をつけろ!』

冒険者B『おう!罠は……ないな。斥候もいないっぽい』

冒険者C『え、いないの?ゴブリンって確か狡猾な種属なんでしょ?』

冒険者B『俺に言うなや。技量が足りねえのか、ゴブリン・ハイスカウトでもいんじゃねーの?』

冒険者A『だとすれば襲撃されていてもおかしくない。そもそも巣穴より前で撃退されているはずだが……』

冒険者B『だよなあ?よっぽどのアホでもねえ限り、自分らのヤサ見つかるってのはない』

冒険者C『なんで?自分達のテリトリーで襲った方がいいんじゃないの?』

冒険者B『防衛戦の方が圧倒的に強いのはそうだ。ただ巣穴には子供もいるから、逆に逃げ場がねえんだわ』

冒険者A『ランクの高い冒険者であれば単独で壊滅も出来るだろうし――と、骨か』

冒険者C『……犠牲者の骨ね。酷い!こんなトーテムみたいな飾り方をしなくっても!』

冒険者A『大きさからするとどれも子供か。クソが!』

冒険者B『――いや、違う。これは子供の骨じゃねえ』

冒険者A『なんだって?草原妖精か?』

冒険者B『見ろよ頭のとこ。角が生えてる』

冒険者C『まさか――ゴブリン?ゴブリン式の弔い方だって言うの!?』

冒険者B『や、それも多分違うんじゃねえかな。ここ見ろよ、骨の部分』

冒険者A『私には分からないが……』

冒険者B『どれもこれも肉と皮が綺麗に剥がされてんだよ。ギルトの解体所の仕事に似てる』

冒険者C『……誰が?オーガとか?』

冒険者B『連中の力だったら引き千切る。加工もしねえしする頭がねえ――おい、どうすんだこれ?超やべえ案件だぞ?』

冒険者A『……”ユニーク”個体か』

冒険者B『と、俺は思う。ケツまくって逃げようぜ。端金で請け負うようなクエストじゃねえ』

冒険者C『……信じてくれるかしら?』

冒険者B『事実だからな。ゴブリン総数が減少してんのは事実だし、ゴブリン喰ってる個体がいるとでも報告すればいい』

冒険者C『そう、ね。それがいいかもしれないわ』

冒険者A『分かった。では撤退を――散会!後ろを取られ』

海原(※ゴブリン革装備)『あ、どうもお疲れさまです』

冒険者A・B・C『……』

海原(※ゴブリン革装備)『あぁすいませんね、こんな格好で。こちらには着の身着のまま送られたもので。装備らしい装備もなく、適当な素材で作るしかなくて』

海原(※ゴブリン革装備)『で、大変不躾なんですが、ここら辺に黒曜石の鉱山とかってありません?なんでしたら市場でも構わないんですが』

海原(※ゴブリン革装備)『勿論タダでとは言いません。こちらが巣に溜めてあった宝石の一部で』

冒険者A『――ユニークモンスターだ!全力でいけえぇっ!』

海原(※ゴブリン革装備)『なんでですか』

……

海原「――という感じに」

上条「ご立派なランプシェードでも作ったの?つーかお前わざとやってね?」

海原「人類には手を出してないじゃないですか!?有害な敵性生命体も駆逐しますし、誰にとってもwin-winですよ!?」

上条「モンハ○じゃねえんだよ!?あれはあれでモンスター達に取っては『地獄かな』って感じだろうけど、亜人でやっちゃダメ!」

上条「あともし、もしもの話なんだけどさ?本当に異世界転生事案が多発してるとして、向こうの世界へ行ってユニークモンスター扱いで討伐されてる勇者・聖女が結構いるような……」

海原「成功した少数例も、まぁ外見がシュッとしたオークですもんね。やってることがトロフィー集めと承認欲求」

上条「――ハッ!?最近ゴブリンさんが薄い本の主役数が増えて、オークさんの出番が少なくっているのはもしかして!?」

海原「『実は異世界行ってるのは人類だと思い込んでいるオーク説』ですか。ワンチャンありそうですね、ブタですが」

海原「という訳でそろそろ自分のスピンオフを……!」

上条「何様だテメー。俺だって順番待ちしてんのに、おっぱ×大きい金髪さんにまた抜かれて戦慄を隠し得ないんだぞ」

海原「くっ!やはり自分達にはおっぱ×がないからダメなんですかね!」

上条「答えは保留だわコノヤロー。『そうだね!』って言ってもカドが立つし、『そんなことないよ!』って言ったら嘘になるからな」

海原「マガジ○ではオスガ×が大人気のマンガもあるっていうのに……!
(※生徒会の○)

上条「あれは特殊な例だよ。ただのギャグだからな」

海原「まぁまぁ、とはいえ、ですよ?自分も勝算がない訳ではないのですよ!」

上条「勝算ないから死んでワンチャンって話じゃねぇの?『親のカネ突っ込んでFXが当れば!』ってぐらいの話で」
(※現代に生きる冒険者)

海原「それは対象が素人さんの場合でしょう?自分はほら、なんといっても魔法使いですから!」

上条「海原君海原君、そのパワーワード言うときは音量抑えてくれませんか?男子二人でその話題はちっとキツい」

海原「いやホントに勝算があるんですよ?アステカ神話の親戚のマヤ神話にはイシュタムという自殺の神がいるぐらいで」

上条「その話を出すってことはガッツリスーサイドだって認識してるってことじゃないですかやーだー」

海原「いいじゃないですか!邪神ではなく聖職者やお産で亡くなった妊婦の神でもあるんですよ!」

上条「ホントに不思議な価値観だよな。怪談おじさん二号がいたら嬉々として解説しだしそうだけど」

海原「ちなみに現代ではどういう経緯でイシュタムが成立したのかは分かっていません。出産系なので大地母神なのは確定ですが、何をどうすれば自殺の神になるのかは解明できていません」

海原「古代マヤでは自殺自体が『名誉ある死』とされていたので、おそらく口減らしの死を尊厳あるものにしたのではないかと推測されます」

上条「南アメリカってそんなに厳しいっけ?」

海原「広いので地方によりますね。マヤやアステカはピラミッドや天文台遺跡を建設できる程度には進んだ文明を持っていました」

海原「逆説的には文化を進めるだけの生産的な余裕があったので、決して食うや食わずでカツカツ、なんてことはまずなかったでしょう」

海原「となると余剰人口の自然淘汰説?余剰人口の調節、もしくは何かの伝染病などでしょうか?」

上条「大丈夫か魔術師?そこら辺の黒歴史とか伝わってないの?」

海原「魔術に関係ないことはあまり教えられなかったので……」

上条「『魔術師もアホしかいねぇ説』がまた信憑性が高まったぜ!」

上条「……つーか待て待て、落ち着こうぜ海原、えっと……海原(皮)」

海原「悪意がありますよね?その”皮”部分が何かこう余剰レザー的な意味を含んでいますよね?」

海原「加工前が『皮』で加工後が『革』でありますから、真皮を引っぺがして使っている以上、どうせだったら後者でお願いします」

上条「お前もお前でどっかは壊れてんだよなぁ。まぁいいわ海原レザー、異世界に転生する前に幾つか聞いておきたい」

海原「なんでもどうぞ?あ、どうせだったらご一緒に?」

上条「心中したらより事件になるわ!?『あぁカミやん女子にあれだけモーションかけられても……やっぱりそうだったんだにゃー』って死後もイジられるわ!」

海原「口ぶりからすると土御門のヤローですね。野郎は一回泣かせる」

上条「つーかなんで転生の話になってんの?何か嫌なことでもあったのか?」

海原「……まぁ、正直ない訳ではないです。対人関係で疲れた感が」

上条「お前らからすれば外国の変な街だからな。馴染むのも大変なのは分かるけどもだ」

海原「こう、なんでしょうね?自分も生活費が必要ですし、かといって身元がアレですのであまりいい仕事にも就けず」

海原「ですのでグレイっぽいところをウロウロしながら日銭を稼いでいるのですが……お水の女性がですね」

上条「女の人がどうした?」

海原「ぶっちゃけ超モテるんです」

上条「――よーし分かった戦争がしたいんだなテメー!そのケンカ言い値で買ってるわ!なんだっらたプライスレスでな!」

海原「待ってください!?そういう意味ではないんですよ、何かこう妙に好かれるのも環境が酷いからです!」

上条「環境?」

海原「問題児ばかりのクラスに一人、まともそうなのがいたら頼られますよね?そんな感じです!」

上条「あー……それは良い事だよな」

海原「で、まぁ自分も正直言えば悪い気はしないので、可能な限り手助けなり相談を受けていたのです――が、ある日。気づいてしまったんです」

上条「ほう」

海原「誰も、そう誰も本当の自分を見てくれてないって……ッ!!!」

上条「だったらまずその海原(革)装備外せや。物理的にカブってたんだから」

海原「素のままの自分をほしいんです!演技をしない自分を!」

 上条「むしろ何かこう上手く付き合えたとして、革ベリベリ剥がして『ほら、これが本当の自分ですよ☆』とか言い出したらホラーだろ。そんな映画あったら見に行くわ、だって面白そうだし」

上条「あとお前善人ぶってっけど、値段シール剥がす感覚で人の皮を剥がすレベルのサイコパスだからな?」

上条「問題児だらけのクラスの中にいるのは虎なんだよ。人じゃなくて」

海原「違いますよ!自分は必要以外はあまりしません!」

上条「だったらそこそこヤってるってことだろ……あー、じゃあ問題ですエツァリさん。今から常識的なテストを幾つか出します」

海原「構いません!ドンと来てください!」

上条「『問題一、朝起きたらあなたの部屋にご遺体がありました。さて、どうしますか?』」

海原「使えそうな部分を選別して、それ以外はちゃんと弔ってから処理します」

上条「『問題二、何かこうヤンキーとトラブルが起きました。どうしますか?』」

海原「謝って済むのでしたらどんな謝り方でもします。済まないんだったら……まぁ、謝っても許さないと思います」

上条「『問題その三、あなたが嫌う悪とは?』」

海原「可燃ゴミにガス缶を入れて出すアホです」

上条「……はい、ありがとうございました。あなたに社会生活は難しいと思います」

海原「なんでですかっ!?一般の方へ迷惑を掛ける真似はしてないでしょう!?」

上条「中古PC感覚でご遺体を弄ぶなよ。それが文化の違いだとしてもだ」

海原「失敬な!別にそれ結社の方針であってアステカの流儀じゃないですからね!」

上条「より悪りぃよ。趣味で分別してんるって事になんだろ」

上条「残念ながら海原レザーさん。あなたは『木原』レベルの社会不適合者ですので、どうか地方に潜んでそっくり暮してください」

海原「自分よりもより強度の高い一方通行とかいるでしょう!?」

上条「絶賛檻の中なんだよ。俺が証人として喚ばれたら、『そんな状況を作り出したアホな大人どもがまず責任取れや』って言うつもりだが」

海原「自分も喚ばれないですかね。『なんか結構ノリノリでやってましたよ』って言うんですが」

上条「そういう時期なんだよ。遅れてきた中二なんだから放っておいてあげて」

海原「しかしなんて『アクセラレータ』なんですかね?自分だったら『ギリメカ○』って名前にしますが」

上条「ノリでメガテ○の悪魔名乗られたら面白いからだよ。学園都市にいるんだったら一生『あ、ギリメカ○ちーっす!』とか言われるんだぜ?」

海原「意外と一方通行は怒りの閾値が低いんで、その程度では怒らないと思います。手を出したら引くぐらいボッコボコにしますけど」

上条「てか前から思ってたんだけど、お前ってどんだけの強いの?魔術師の中では平均より上?それとももっと?」

海原「おそらく自分以外も言っているとは思いますが、『平均的な魔術師』というものが存在しません」

海原「LVがある訳ではなく、『ベギラ○を使えれば一人前!』という慣例があるのでもないですから」

上条「魔術師は『才能の無い人間が最終的に行き着くところ』だっけか」

海原「はい、なので大体の方は目的のために一芸特化型が普通ですね……まぁ、それ次第ではマルチな才能も必要とされるでしょうが」

上条「マルチな?」

海原「ぶっちゃけた話、大抵は復讐か犯罪が多いのでその手段ですね。相手へどう怨恨を晴らすのか、で難易度も方法も変りますしね」

海原「対象の財産を毀損するのか、直接身体を害するのか、それとも社会的立場を失わせるのか、とか」

上条「俺には共感できないけど、そういう生き方もあるだろうしな」

海原「ちなみに上条さんが言う一流の魔術師とは?」

上条「『あ、これヤベぇな』って思ったのはアックア、フィアンマ、トールか」

海原「業界の上から数えた方が早い方々と比べられても……特にトールは凄かったですね。お二人のケンカの跡、見に行きましたよ。よく勝てましたよね」

上条「勝ってはない。ほぼ引き分けであっちが引いてくれた感じ」

海原「彼の力があれば現代戦闘でも勝てるでしょう。歩兵や戦車、なんだったら爆撃も化学兵器も無効化するかもしれません」

上条「海原だって行けるだろ。あぁまぁ戦う価値があるかどうかは別にして」

海原「無理ですよ。攻撃面は『ナイフ』が使えればそこそこは行けると思いますが、なんといっても紙装甲です。誰かさんのワンパンで沈んだじゃないですか?」

上条「勝つ気なかったじゃねぇかアレ」

海原「心外ですねぇ。自分は自分の思うままにした結果ですが――ともあれ。誰にでも何にでも向き不向きがあります」

海原「自分の魔術は戦争や抗争はちょっと、ですね。義妹二人はアタッカーですので、得意の方です――が、しかし」

海原「逆に後方攪乱は特効ですね。要人暗殺も含めてですが」

上条「あー、そりゃ強いの方向性がバラバラだよな。アスリートと役者が同じ土俵で勝負になる訳がねぇ」

海原「そもそもがスモーレスラーですらないですからね。ある意味エンジニア、あぁまぁ戦士として鍛えられている者もいるにはいますけど」

上条「海原ってあんまそういう『暗さ』ってないよな?魔術師連中の悲壮な覚悟っていうか

海原「自分は、と言いますか自分達は『結社』に創られたような感じですし。むしろ結社へ対する恨みも結構ありましたので」

海原「他に生き方が知らなかったので、というパターンですね。大抵悟る前に使い潰されるんですが」

上条「鉄砲玉だろやってることは」

海原「あー、自分結社の中ではそこそこの使い手だったんですよ?ほぼほぼ汚れ仕事でしたが、潜入系ミッションでは達成率が物凄いことになっていました」

海原「――が、学園都市ですね。ここへサポートもなく大したバックアップもなく、放り込まれた時点で見限られていたんではないかと思います」

海原「まぁ実際?後輩が『結社』を潰した際にも『あぁいつか自分がやろうと思っていたのに』、ぐらいの感慨しか湧きませんでした。なので正しい判断だと思います」

上条「俺が言うのもなんなんだけど、つーか異世界転生はギャグだからスルーするとしてだ。常盤台JCに拘らずもっと自由に生きろよ」

海原「あぁそうそう。最近年齢詐称されている方が紛れていますよね?警備の方でしょうか?」

上条「お前が誰のことを言ってるのかサッパリ分からないし記憶にもないが、警備だったら明らかに悪目立ちするのはダメだろ」

海原「――分かりました!ここは一つ自分が悪役になって真相を……!」

上条「純粋に悪だよね?ただ自分の自分の好奇心を満たすためだけにやろうとしてるもんな?」

海原「愛に生きる男ですから」 キリッ

上条「やかましいわ!妹さんに刺されっちまえ――待て海原!ナイスな解決案が思いついた!」

海原「へぇ?言うだけ言ってみては如何です?自分のこの堅い信念を変えられるものであればですが!」

上条「妹さん二人を常盤台に入学させればいいんだよ!そうすればお前のちょっとアレな癖(へき)も満たされるし!」

海原「――あなたが神か……ッ!?」

-終-
(※ご相談お待ちしております)

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