インデックス「――激闘!きょうかいまうんと合戦、なんだよ……!」
――とあるアパート 夕方
インデックス「……ただいまー、なんだよ……」
上条「あぁおかえりインデックス。珍しいな、俺より遅いだなんて」
インデックス「それがね、わたしも昼間はぼらんてぃあしてるのって言ったよね?」
上条「あぁ河川敷に軍手と長靴を撒く仕事だっけ?」
インデックス「あれ誰かが意図的にやってたの!?酷いときだと10分ぐらいに一回は必ず落ちてるよね!?」
上条「てかボランティアの話は初めて聞いたわ。悪いけど遊びに行ってるもんだとばかり」
インデックス「いやあの、わたしはこれ以上ないってぐらいの正統なしすたーなんだけど……」
上条「あぁまぁアンジェレネ師匠よりはそれっぽいよな」
インデックス「あの子と同じ評価は傷つくんだよ!?向こうはどう見ても見習いだしね!?」
上条「そういう意味じゃなくて年齢的な制限があるもんだと思ってた」
インデックス「うんそれもない訳じゃないんだけど……まぁとにかく、わたしはしすたーである以上、きょうどう的な使命があるんだよ」
上条「きょうどう?」
インデックス「教え導くって意味での教導なんだよ。だからがくえんとしにある教会でぼらんてぃあしてる感じで」
上条「あー、そういやそれっぽいのあったな」
インデックス「うん、あほの前理事長がうちと契約したとき、『だったらきょうかい建ててもいいよね?』って」
上条「どう考えてもスパイだろうが。ステイルとか任命されて常駐しそうだよな」
インデックス「実際にこっちに来たら住んでるんじゃないかな。お弟子さんとかも――」
インデックス「……」
インデックス「……あれ?あの神父さんに三人ぐらいお弟子さん居なかったっけ?」
上条「ノーだ、インデックス!俺もなんか顔見せ的なことをしたが、いつのまにか消えてた三人組にツッコむのはノーだ!」
インデックス「まぁありさが何故かここで一番出張ってるし、けっかてきにはいいんだろうけど……まぁ、そんな訳で昼間はきょうかいのお手伝いをしてるんだよ」
上条「それは良い事だな。俺も保護者として挨拶した方がいいかな?」
インデックス「……した方がいいんだけど、別にしなくても構わないんだよ。だってその神父さまはとうも知ってる人だから」
上条「あぁステイルか」
インデックス「ううん、そうじゃなくてまたいさん……!」
上条「レベル間違ってね?RPGで最初の街に魔王が住んでるようなもんじゃねぇか」
インデックス「……あつがハンパ無いんだよ、あつが……!」
上条「てかここにいるのが身バレしたら人が全世界から押しかけるだろ」
インデックス「まぁ魔術で認識も変えてるし、ぷろじゃなきゃまず平気なんだよ」
上条「平気っていうよりも兵器っていうか……てかあの人ってどんだけ強いの?魔術師としてのヤッベェの?」
インデックス「んー……ちまたにあふれる『教皇級魔術師』だったら、一蹴できる程度、かな?」
上条「おいおいステイルさんの悪口はやめろよいいぞもっと言え!」
インデックス「とうまのわるいところが出てる。てかどこの『教皇級』もあくまでも自称であって、多分たいまんやったら話にならないぐらいじゃないかぁって」
インデックス「そもそも若いときから異端狩りの部署で第一線にいて、しかも生き残った魔術師が弱いわけもなく……」
上条「ゴールデンカム○に出てきそう」
インデックス「あと魔術の腕とは関係なく、内に『神の右席』、外にも『悪魔的な女』って内外に敵を抱えながら、数十年均衡させる人ってせいじりょくが怖いんだよ……!」
上条「あー、肩こりそう」
インデックス「せっかく、そうわたしがせっかく正式なしすたーとして幅を効かせてたのに!」
上条「承認欲求か。そしてあの人より上って数人もいないような……」
インデックス「……ねぇ、とうま。ぱぱさんが言ってたんだよ――『男には戦わなければいけないときがある』って」
上条「俺がここでそげぶしたらただの傷害だよな?ただでさえローマ正教からはヘイト溜まってたのをなぁなぁにしてんのに危ないよな?」
インデックス「……あのね、とうま。とうまが学校行くじゃない?7時すぎぐらいに」
上条「まぁそんなもんだよな。それが?」
インデックス「わたしもそこからすふぃんくす連れて、まいかに挨拶して教会に行くじゃない?毎日ではないかもだけど」
上条「良い事じゃね。できればもっと早く教えて欲しかったような気がしないでもないが」
インデックス「どうしてしすたーが教会行くのに許可を取らなければ……」
上条「大概トラブルに巻き込まれるからだよ。まるで神様が俺たちをオモチャにしてんのかな?と疑うレベルで」
インデックス「てつがくてきな話はさておくとして――で、いざ教会についたら、あの人が笑顔で拭き掃除してるんだよ?とうまだったら耐えられる?」
上条「爆笑したらいいのか、跪いて祈りを捧げればいいのか困惑するよな」
インデックス「たちばてきに!たちばてきにあるんだからね、って何回も何回も言ったんだよ!?言ったんだけどね!」
上条「『神の前に立場も何も。手透きの者が居ればしても佳いだろう?』」
インデックス「うん、それがそこら辺の人が言うんだったら『そんなことないんだよ!』ってイッシューできるんだけど!」
上条「ちょと楽しそうだな。明日行ってみようか?インデックスが何やってんのかも知りたいし」
インデックス「……くっ!よそうがいのじゅぎょうさんかんなんだよ……!」
――とある教会っぽい建物
マタイ「――やぁおはよう。佳い天気だね」
上条「パイプオルガン流して『神と悪魔が集いし邪教の館へようこそ』って言ってくれませんか?」
マタイ「そのネタはもう何人かに言われておる」
インデックス「とうまも他の学園生も失礼だからね?」
マタイ「そして意外と好評なのだよ」
インデックス「あの、げいかさん?あんまり俗にそまるのもどうか思うんだよ?」
(※教皇”猊下”)
マタイ「もう既に辞した身だ。マタイで構わんよ」
インデックス「むりだもん!?畏れおおいんだよ!?」
上条「あ、それでウチの子がマタイさんがいたら邪魔だって言うんですよ」
インデックス「とうま、めっ、なんだよ!ボケていいのにも限度があるんだからねっ!?」
マタイ「ふむ?私が?」
インデックス「いえあの、邪魔って訳じゃないんだよ!ただいろいろと畏れ多いかなぁって説がないとは言い切れないのかも!」
マタイ「清掃のことを言ってるのであれば是非もないだろう?万人の家を使徒が清めるのに何か不都合が?」
インデックス「格っていうのがあってね、そういうのはわたしたちのお仕事なんだから、です!」
マタイ「そんなものはないよ。私も君も、万人が等しく愛されるのだ」
上条「おぉ……!何かいつも小難しい事言ってるインデックスが一方的に言い負かされて……!」
インデックス「だから無理なんだってば!この人の発言はほぼ20億人の公式見解にひとしいんだからねっ!?」
上条「てかお前らって仲悪かったっけ?接点そのものがあんまりないような……」
インデックス「前にローマ正教の禁書・魔道書を見せてもらったとき、おかしいっぱいくれたんだよ!しょじじょーにより覚えてないんだけど!」
上条「あー、マタイさん?インデックスも決してこうイジワルしてるんじゃないんです。ただ年齢的にあまり率先して働かれるのもどうかな据わりが悪いな、ってことであって」
マタイ「まぁ、そうだね。年若き子らの仕事を奪ってしまうのも佳くはないかな」
インデックス「なんでとうまの言うことは素直に聞くのかなぁ!?」
上条「それはお前が遊ばれてっからだよ。まるで孫娘をからかうお年寄りだもの」
マタイ「そんなつもりは毛頭ないのだが……」
インデックス「だから今日は大人しくしてるんだよ!あとはわたしがするんだからね!」
上条「あ、すいません。シスターさんの様子を見に来た保護者です。ウチの子が大変ご迷惑を、あぁこれつまらないものですが」
マタイ「これはご丁寧にどうも。迷惑はあまり……なくはないが、まぁ年相応だね」
インデックス「そこは否定してほしいんだよ?げいかも、こう、分かるよね?」
マタイ「ただ流石にネコを聖堂へ放し飼いにするのは……」
上条「って言われてるぞ!遊びじゃないんだからな!」
インデックス「す、スフィンクスはいいんだもん!知識の守護者なんだからね!」
マタイ「そしてその様子を誰かがSNSへ取り上げた結果、『ネコの住んでいる教会』と少し話題になった」
上条「あぁあれお前らだったのか!?『スフィンクスと毛並み似てんな』って思ったヤツ!?」
インデックス「その時点で分かるんじゃないかな?一応家族なんだよ?」
マタイ「幸い私が対応することで事なきを得たが」
上条「可哀想に。ネコ見たさで集まって来た子ら、さぞ怖かったろうな。子ヨー○見に来たらシ○が出張ってくるんだから」
インデックス「あと子よー○さんは可愛くはないと思うんだよ。ばずらせようとして大スベりしてる感じ」
マタイ「きちんと話をしただけなのだがな。解せぬものだ」
インデックス「て、ゆうかね!今日はいい機会だから言うんだけど、ここの教会はイギリス清教なんだからね!?」
上条「おぉ……!ついに恥も外聞もなくマウント取りに!」
インデックス「げすととしてはお迎えするんだよ!ほすと側じゃなくて!」
上条「って言ってんですけど」
マタイ「とはいうがね。正しき意味ではここは教会でもなんでもないだろう?君が知らぬ筈もなし、ただの確認なのだが」
インデックス「そ、それは、そうなんだよ!」
上条「あれここ教会じゃないんですか?」
マタイ「”っぽい”建物だね。十字架はあってもどこの形式でもなく、神の子の像の造りも魔術的な記号はなし――と、いうのもだ」
マタイ「これは私が直接あの悪魔から聞き出した話だ。『学園都市と君たちは結託するのかね』と、大分昔の話のように思えるが」
上条「ま、まだだよ!たった8ヶ月ぐらいしか経ってないぜ!」
(※原作の時間経過では)
マタイ「その際に彼女は『特定の宗教施設はなかりしよ?ただ”それっぽい”ものは体裁上できるやもだか、ハロウィンのコスプレは一々取り締まってられぬよな?』と」
上条「要は『教会っぽい建物は作るけど、特定の宗教には加担していませんよー』ってスタンス?」
マタイ「内心どうあれ、実質もどうあれ、建前上はそうなっておる。今もな」
インデックス「異議があるんだよ!だったらわたしたちが先に来てるんだし、せんゆーしてるってことになるんじゃ!」
マタイ「まぁそれも否定はしない、しないが――なぁインデックス君、そして上条当麻君。我々の間には深くて厄介な壁があったね」
上条「拙いぞインデックス!この話の流れからは壮大なお説教が始まる予感しかしねぇ!」
インデックス「もう嫌な予感しかしないんだよ……!」
マタイ「あぁそんなに大した話ではないとも。というか殆どがこちらの過失によるものだね、『科学サイドと手を結んだ不心得者を討て』というような。君たちにとっては理不尽極まりないものだが」
上条「何度か死にかけてんですけどコノヤロー。テなんとかさんとかヴェントとかアックアとかフィアンマとか」
インデックス「わたしも少なからず被害を……」
マタイ「そうだね。君たちは『右席』の四人を、まぁローマ正教四天王を4タテしたわけだ」
インデックス「よんたて……いやまぁ、それはそうなんだけど」
マタイ「で、まぁ色々あってフィアンマ暴走で第三次世界大戦、引いて遠因ではあるもののグレムリンの勃発など、世界や秩序の守護者として極めて遺憾ではあった」
上条「いやでもマタイさんの立場だと仕方がないんじゃ?フィアンマのアホが市街地でぶっぱしやがった、市民守るために死にかけたんですよね?」
インデックス「普通の魔術師がふぃあんまの『右腕』を受けて生きてる方がおかしいんだけど……」
マタイ「それは恥であって美徳ではないよ。いくら名前ばかりとはいえ、私の不徳とすると所であると思っているとも。今も他に道はあったのではないかと」
マタイ「まぁ私個人の感傷はさておこうか。我々とイギリス清教とは不幸な諍いがあり、全責任を死んだ連中へ押しつけて仲直りをしようという運びになった」
上条「言い方もっとあったんじゃないですかね?てか悪いのもフィアンマだけども!」
インデックス「いちおう……世界を敵に回してたもんね。たった一瞬とはいえ」
マタイ「規模的にはあと数週間調子に乗っていたら、オティヌスに叩き落とされて終わっていたとは思う――が、まぁそれはそれとして、友好的な関係を築こうと至った訳だ」
マタイ「――が、しかしだ。先だって君たちのトップは悪魔だったじゃないか?」
インデックス「……」
上条「あー……っすよねー」
マタイ「前提が変るのだよ。魔術師サイドの抗争から人類とそれ以外との戦いという構図にね」
マタイ「アレイスターという異端、そして悪魔という人類種に率いられた集団。正義は我らローマ正教にあり、邪悪な力によって攻撃された、と言えなくもないわけだ?」
マタイ「大義名分は手にある限り、大々的に公表してイギリス清教を討つべし、レコンキスタ西進せよ――」
マタイ「――などと、考える俗物、もとい現法王猊下がいてね」
マタイ「あぁいやいや勿論?私は君たちと友誼を結んでいるし、君たちを疑いなどしないとも。善良であるのは保証しても佳いぐらいだ」
マタイ「だがしかし、そういう考えを持たぬ者たちのためにも、お互い仲良くしておいた方が佳いのでは、というのが持論だね」
上条「すいません、インデックスさん。通訳の方お願いします」
インデックス「『私がここに居れば過激派も手を出せないから分かるよね?ねっ?』なのかもなんだよ!」
上条「超黒いわー。暗○卿の二つ名持ってんじゃねぇかってぐらい腹黒いわー」
マタイ「文字通り私の目の黒い内は、だね。というかインデックス君に一つ訊ねたいのだが」
インデックス「まじなとーんだと警戒しかないんだけど……」
マタイ「表のヴィリアン王女殿下は佳しとしても、『最大教主』がよりにもよって『黄金』系の不死人というのはあまり関心できないよね?」
インデックス「うん、無理かな?こうせいいんではあるんだよ、ただほぼてっぽーだま扱いに近いんだけど」
上条「分かる分かる!体一つでフランスとかイギリスとかロシアとかアメリカに特攻させられるんだよな!」
上条「――ってオイオイ、なんだこの教会?室内なのに雨漏りしてんじゃねぇか。ちょっとブルーシート買ってくる!」
インデックス「流れるように見事なじぎゃくネタなんだよね。そして泣いているのはとうまなんだよ」
マタイ「正直、君たちを敵に回していたあの頃、何が悲しかったと言えば『この日程で未成年の、しかもただの学生をこき使うのか』という現実がだね」
インデックス「ほぼゆうしゃ扱いだよね。てきがいるとおぼしきところへ突っ込んで、大ケガしたから自動的にリポップするんだよ」
マタイ「こちらでは『上条当麻とはクローン兵器の符丁ではないのか?』という説すらあってね。実体はただのブラックな職場だったのだが」
マタイ「まぁ、とにもかくにもそういう扱いで頼む。私個人は君たちに借りがあってそれを返していると思ってくれたまえよ」
インデックス「くっ……!このせいじりょくにやられたんだね!」
上条「ただ事実を淡々と述べてだけだと思うが。ケンカしないで仲良くしろよ、お前ら同じ神様崇めてんだろ?」
インデックス「おや?君たちの民族はほぼブディズムかその亜流だと思うのだが、長年戦争をしていなかったかな?」
上条「むしろ率先して煽ってた坊さんとかいるしな!どこも同じだわ!」
上条「という訳で仲良くしなさいインデックス!仮にも大先輩なんだから敬意を持ってね!」
インデックス「……やりづらいんだよ。そんけーはしてるしけいいも払ってるつもりなんだけど……」
――教会っぽい建物
マタイ「では歳の順で私が仕切らせてもらうが、少年もまた体験入信的なもので構わないのかな?」
上条「俺はそうだがインデックスは違うわ。格好見て分かんだろ、ガチなコスプレイヤーだと思ったか」
インデックス「いないことはないんだよね。『あれ、あなた新人さんなんだよ?』って見慣れない子へ声をかけたら、しろうとさんが教会内で撮影してただけだったり」
上条「罪深いなこの業界。だが一介のシスターさん好きとしては大局的な観点でみて頂きたいものだが!」
マタイ「で、あれば余計に取り締まった方が佳いと思うがね。ともあれ神の家へようこそ、もし佳かったら私が洗礼までしよう」
上条「だから畏れ多いんだよ。ほぼ神様扱いの人にさせられるか」
インデックス「そういう人に平気でツッコむのもどうかと思うんだよ。とくにとうまは」
マタイ「ではここから教会の通常業務に移りたいと思うのだが――そも、通常業務とはなんぞや、と」
上条「なんでだよ!?よく仕切るとか言い出したなそれで!?あとお前トップだったろ!?」
インデックス「とうま、口調口調。ツッコんでるからってそんけーを忘れないで」
マタイ「お恥ずかしい話だが、教会一つを担当した経験はこれが初めてなんだ」
上条「だからどうしてだよ。そんなんで勤まんのか」
マタイ「ローマ正教の中での立ち位置が広報官のようなものでね。官僚のような仕事ばかりしていたものだから」
上条「ふーん?で、本当は?」
マタイ「いや本当に教理省一本だよ?含むところなど何もないよ?」
(※教理省=昔の名前が『検邪聖省』で異端審問が職務だった人たち。つーかベネディクトさんは神学校教師→そこの長官)
(※そしてそこで異端審問やってたとき、書物の発行の可不可を判断した一覧が『禁書目録』でした)
マタイ「なので実務経験がゼロなのだ。もっと広い教区を束ねる、となければ話は別なのだが」
上条「だっらた仕方がないか。おい、出番だぞインデックスさん!数少ないマウント取れるチャンスだ!」
インデックス「あー……まぁ、アレなんだけど。わたしもあんまり……」
上条「オイコラなんちゃってシスター。薄々感づいてはいたけど、お前のシスター成分はガワだけかコラ?」
インデックス「し、仕方がないんだよ!わたしだってしすたーのお仕事よりも魔導図書館としてしゅっこうする方が多かったんだから!」
上条「あー……まぁ、そうか?だったらなんでシスターにしたんだよってツッコミがあるにはあるが」
マタイ「管轄的な問題だろうな。ただの魔術師であれば『王室派』と『騎士派』に取り込まれかねんが、シスターであればそう簡単に引き抜きもできん」
インデックス「たまに教会でお仕事しても、他の子が気を遣ってくれて、ねっ?あんまり、ねっ?」
上条「あぁんじゃそっちも仕方がないな、って詰むのはえーよ!元トップと現職のシスターがいんのに!」
マタイ「そこはそれ心配ご無用という話だね。我々には切り札がある」
上条「ほう、出オチだと思うが言ってみろよ」
マタイ「『シスター好きが高じてローマ正教を敵に回した男』がここに。彼に聞くのが最適解では?」
上条「やかましいわ!そんな事実ねぇよ!あぁまぁ百歩譲ってシスター好きは認めっけど!」
インデックス「とうま口調口調。あと好きなのはみとめるんだ……?」
上条「あと別に俺じゃなくても女の子がボコられてたら誰だって止めに入るわ!ローマ正教どうって話ですらねぇしな!」
マタイ「その不屈のメンタルは佳き事だが」
上条「つーかテメー思い出したわこのヤロー!一体何がどうすりゃアニェーゼたちにオルソラ殴らせてんだよゴラアァッ!?」
インデックス「あー、なぞだったんだよねあれ。『法の書』の解読、結果的には失敗だったけど」
マタイ「あれはまぁある日報告が上がってきてね。といっても非公式で古参のシスターからなのだが、『ウチのシスターが魔道書の解読に成功したんで逃げた』というような」
マタイ「なので『シスター・オルソラを保護しなさい、有能な学士は狙われる』と伝達したはずなのに、戻って来た報告書が」
マタイ「『神を畏れぬツンツン頭が邪魔してきました。あぁでもオルソラはかなり殴っておきましたんでイーブンです!』で、目まいがね……」
上条「そっちには中間管理職アホしかいねぇのか」
マタイ「後に、大分経ってから君たちが、ただ私刑にあっているご婦人を助けるために、という話を聞いたときには辞職しようと本気で悩んだものだよ」
マタイ「まぁそうしたとすれば余計に迷惑が掛かるため控えたがね」
上条「オルソラの亡命事件も謎だったんだよな。身内から狙われるってのがさ」
インデックス「わたしはそう言ったけど、じじつのあとおいなんだよ?『可能性としては』って意味で」
マタイ「うむ。元々シスター・アニェーゼとシスター・オルソラは多少の顔なじみでね。彼女たちを保護し、面倒を看ていたのがオルソラ君だったのだよ」
マタイ「なので知己を向わせれば穏便に、まぁ決裂しても棄教ぐらいで済むだろうな、と思っていたらあの騒ぎだ」
上条「お前らがアニェーゼ追い込んでたのも原因だろ」
マタイ「返す言葉もないね。どこぞの俗物めが、例えばシスターに手柄を取られるのを佳しとしない愚か者が関わっていたのだろう」
インデックス「くろうしてたんだよ……『なんでこんな非効率的なこと』ってあんけんが多々あったし」
マタイ「賢者が仮にもしローマ正教にいたとして、まず最初にすることは組織を辞めることだろうとも」
上条「お互いに傷を突きあうのはやめようぜ!問題はここからどうするかだ!」
マタイ「とはいえな。教会自体の掃除は終わっているのだし、後は祈りを捧げるぐらいしか」
インデックス「だよねぇ」
上条「……えーっと、インデックスさん?あなたボランティアって来てるって言ってたが、いつもは何を……?」
インデックス「まずね、とうまがお出かけしたらすふぃんくすと一緒に来るでしょー?そしたらおそうじはおじいちゃんが終わっててねー」
インデックス「軽くお腹がすくじゃない?だから『おやつないですか?』って言うと用意してくれるんだよね」
インデックス「そうしたら軽く食べたら、お昼に時間になるじゃない?だからおじいちゃんに『ごはんありますか?』っていうとでりばりーがねー」
上条「教会は?どうせこのまま聞いてたら三時のおやつと軽食食べて帰ってくる展開だろ」
上条「てゆうか最近血色良くなってきたと思ったら外でたらふく食ってたのかよ!?それだけ食べてよく俺のメシが入るな!?」
マタイ「もっとこう他に言うことはないのかね」
上条「しょ、食費はどうかちょっと待っててください!次のバイト代が入り次第払いますんで!」
マタイ「それは結構だ。私の蓄えから出している故に」
上条「金持ってそう、ですよね」
マタイ「公式には亡くなっている以上、個人資産や霊装の類は持ち出せなかった。だがまぁ魔術師としてはそこそこの腕なのでね」
上条「着々とローマ正教の地盤作ってね?不安しかないわ−」
インデックス「と、いうわけでおやつください!お昼の前にうぉーみんぐあっぷするんだよ!」
上条「明日からオヤツはいいですから。態度が悪かったらご飯の量も減らしてください」
インデックス「なんて、なんて残酷な事言うんだよ!?ここでだったら誰にも叱られることなくお腹いっぱい食べられたのに!?」
上条「お黙りなさいインデックス!せめて分からないんだったら調べる姿勢を見せなさいよ!」
マタイ「私も現役のシスターが暴食に浸るのを見て、『イギリス清教は変ったやり方をしているな』という感想だったのだが」
上条「マタイさんは?いつも何やって時間すごしてんだ?」
マタイ「日が昇ったら起きて祈りをし清掃をして、たまに来る学生の悩みを聞いて、余暇に護符や聖印を描いて、日が暮れたら寝る、かな?」
上条「おじいちゃんかな?」
マタイ「まさにそうだとも。普通に生きているだけだ」
上条「しかし教会っぽいこと……あぁ何か説教とか洗礼とかしないの?」
マタイ「需要がないのだ。立会人として保護者か名目上の親が必要なのだが、学園都市の多くが学生であるし」
インデックス「まぁ大抵はもっと小さい頃にじもとの教会で、が普通なんだよ」
上条「んじゃ説教とか……は、してるんだっけ?」
マタイ「主に相談だな。しかしこれもまた少ないは少ない。対話型AIに取って替られる日も近いだろう」
インデックス「あれ絶対おかしいんだよ……!血も涙も、魂すらない相手の何が信用できるんだよ……?」
上条「お前らのボーダー外の友達が何人かいる俺はノーコメントだ。意思疎通ができて友好的な相手だったら人かどうかは関係ない」
マタイ「まぁそれも時代だからね。あと一世紀先では教会がAIを洗礼しているかもしれないが――」
マタイ「――よし、では今日は商店街へ食べ歩きに出かけようか。普段はスルーする店へ挑む主旨で」
インデックス「いっしょうついてくんだよ!なんでこんな良い人がローマ正教なのかと!」
上条「諦めんなよ教会関係者二人!もっと他に教会っぽいことある筈だ!頑張ろうぜ!」
インデックス「とはいっても、他には……あぁ懺悔室があるっちゃあるんだよ」
マタイ「あそこだけやたら凝っているんだよ、造りが」
上条「いいね、そういうの教会っぽい!」
インデックス「そうなんだけど……ここにいる、悩める子羊たちの話を聞ける資格を持つ人はひとりしかいなくて……」
マタイ「私だね」
上条「インデックスさんの存在意義が……!」
インデックス「ま、魔術に詳しいんだもん!世界一じゃないけど近いぐらいには!」
上条「あれマタイさんって戦歴何年でしたっけ?」
マタイ「たった75年弱だな。『黄金』系から極東の魔術結社まで、馬が草を食むような丁寧さで神の慈悲を叩き込んだとも」
インデックス「比較対象がおかしいんだよ!ただひとでありながら聖人級にあしをふみいれたじんがいまきょうの魔術師とはね!」
マタイ「救えたものもあれば、救えなかったものも多い。後悔ばかりの人生であったが、まぁそれもまた佳きものであろう」
上条「どうしてこうウチの子には余裕がないんだろうか。まだ若いのに」
上条「あーまぁとにかくだ。ここは教会っぽい建物だが決して教会じゃない――つまり、あそこにあるのは懺悔室っぽいただの部屋だ!」
上条「よって俺たちがたまたまかくれんぼしてる間に誰かがやってきて、偶然相談にのったっていいとも言えるかもしれない……ッ!!!」
インデックス「いいね!それでべすとな意見を出したひとがかちってことで!」
マタイ「人はどうして争うのだろうか。きっと暇だからだね」
インデックス「よーし、じゃわたしのお手本を見るといいんだよ!なんだかんだでシスターだからね!年齢的にも近いし!」
上条「おぉぶち上げるじゃねぇか!よーし、誰か来たみたいだスタンバッて!」
インデックス「かまーん、なんだよ!ばっちこーい、だもん!」
……
インデックス「ようこそ、なやみをかかえる子羊よ。かみの家の門戸は常にひらかれています、なんだよ」
アンジェレネ『あ、あのですね。ざ、懺悔したいんですけど……』
インデックス「また何か来たね!?『なんでここに?』とか言っちゃダメなんだろうけど、しりあいがぴんぽいんとで!」
アンジェレネ『し、シスターさん?』
インデックス「あぁいやいやなんでもないんだよ。ただちょっと汝がここにいる理由を教えてくれたらすっきりするかも」
アンジェレネ『え、えぇっと……なんだか神父様のいない教会がここにあるらしくって、そ、その管理とかで派遣されてきたっていいますか……』
インデックス「大丈夫なの?おじーちゃんにえんかうんとしたら心臓止るんじゃないかな?」
アンジェレネ『ちょ、ちょっと何言ってるのか分からないですけど……相談、いいんですかねぇ?』
インデックス「あぁうんどうぞなんだよ。遠慮せずに話すといいんだよ」
アンジェレネ『え、えぇとですね、実は今わたしたちはよその家っていうか、他の人の家に居候してるって感じなんです』
インデックス「あー、うん、そうだね。大変なんだよ」
アンジェレネ『そ、そうでもないんですよ?ご、ご飯はくれますし、ぶ、ぶるぁぁぁ、とか言い出す気持ち悪い司教様はいませんし、わ、悪くはないんです』
インデックス「あのひと、濃かったよね。ほぼ使い捨てのきゃらなのに」
アンジェレネ『で、でも最近、悩みができたっていうか、その……』
インデックス「うん、言ってみるといいんだよ。あなたがここで口にしたことは神様以外だれもしらないんだからね」
アンジェレネ『で、でしたら……その、新しい職場を用意してくれた人がですね、じ、実はとても裏では悪いことをしてたっていうか』
インデックス「あー……うん」
アンジェレネ『わ、わたしたちとはほとんど接点がなかったですし、お、お話しをしたのも「まぁ頑張って、あ、お菓子食べたる?」ぐらいなんですけど』
アンジェレネ『す、少なくとも悪いことをされなかったいうか、悪いことをしてるって感じの人じゃなくて……ま、まぁ人じゃなかったんですがね!』
インデックス「その『ちょっといい事言った』的なのはいらないかな」
アンジェレネ『で、でもやっぱり悪い人だったみたいで……そ、その』
インデックス「あー、つまりあなたは感情の行き場が分からない、ってことなのかな?」
アンジェレネ『ど、どういういみですか?』
インデックス「善人だけの人もいないし、悪人だけの人もいない――まぁ、その人は悪い人だったのかもしれないけど、あなたにとっては違うかも、って話なんだよね?」
インデックス「だったら別に他のひとにあわせて嫌わなくたっていいんだよ。あなたが知ってる事実が全てとは限らないんだし」
アンジェレネ『し、知ってる、ですか?』
インデックス「本当に悪人かどうかだったのかも分からないんだよ。例えばいすとりげーむで負けたとか、そんなしょーもない理由だったり」
アンジェレネ『そ、それは多分ないと思うんですけど……そ、そうですね!か、かるく考えておきます!』
インデックス「それはそれでかこんを残しそうだけど……まぁいいんだよ、子羊よ!」
アンジェレネ『き、禁書目録さんも正体分かんなかったみたいですし、わ、わたしが分かんなくても当然ですよね!』
インデックス「――なんて?」
アンジェレネ『え、えぇと?』
インデックス「よく分からないんだけど、今、なんていったのかな?」
アンジェレネ『ど、同僚の子の話なんですけどぉ、な、なんか凄い能力だかがあるんです、ぽいです』
インデックス「ぽいじゃないんだよ?あるんだよじっさいに?」
アンジェレネ『え、えぇはいそうなんですけど。な、なんかそのシスターが悪い人に捕まって、せ、世界が大変になったりしてますし……』
インデックス「そ、そうなんだー?で、でもそれはじしょうがあるかもなんだよ?」
アンジェレネ『で、でしょうけど……ま、まぁ仕方がないですよねっ!そ、その子も所詮はただのシスターなんですしね!』
インデックス「ただの……」
アンジェレネ『だ、第一、ローラさんだってその子は正体見破れなかったんですからねっ!な、なんとかって名前もハッタリじゃないですかねっ!』
アンジェレネ『あ、ありがとうございますシスターさんっ!む、胸のモヤモヤが取れた気がしますっ!』
……
インデックス「……」 パタン
上条「流石アンジェレネ師匠……!無邪気さを装った悪辣な煽り方だぜ……!」
マタイ「いくらなんでもあれを責めるのは……まぁ、その、なんだ。私を含めた関係者一同は『どうしてあの女死なないの?』と噂してはいたが」
上条「基本何でもありの魔術師だからな。不老とかもあんだろ?」
マタイ「概念としては一応は。ただし成功例はないとされている」
上条「ないの?」
マタイ「ないな――『不死を極めた先に行き着くのが牙有りどもだ』なんて、ジョークでも言えないだろう?」
上条「あぁそいつらも狩猟対象なのな。そう考えると人類の庇護者ってのも間違いではない、か?」
マタイ「牙有りども以外にも少々。まぁそこら辺は君に深淵を覗く覚悟ができれば、いつでも声をかけたまえよ」
上条「超嫌です。俺はもうお前らの抗争だけで精一杯なんだ……ッ!」
インデックス「――で、つぎは誰が行くんだよぉぉぉ……?」 ニチャアァッ
上条「ヤケになってますけど、今のは不可抗力じゃねぇかな。師匠が悪い訳でも、インデックスさんが悪い訳でもないってことで」
マタイ「そうだね。いっそこのまま出かけた方が佳くはないかな?幸い懇親会的なイベントだと思えば」
インデックス「やってもらうんだよぉ……!わたしの受けた屈辱をふたりも味わうといいんだよぉ……!」
上条「瞳が警戒色。○蟲だな」
マタイ「少年はさておき、私は酷い事にはならないと思うがね。人生経験もそれなりに積んでいるのだし」
上条「お、言うじゃねぇか。なら人生のパイセンに二番手を譲るぜ!」
マタイ「たかが、とは言わんがそこまでムキになるほどの事でもあるまいに」
……
レッサー『――ヘーイ、GG!”キリスト教 黒歴史”で検索プリーズ!』
マタイ「仕込みかね?まさかとは思うが」
レッサー『くっくっくっく……!ではないですな!先週と先々週のエリンギ様祭りでたまたま学園都市にいたんです――たまたま、だけにね……ッ!!!』
マタイ「君が登場してから急速に品位が低下しているよね?もう才能と言って差し支えがないぐらいに」
レッサー『こんな事もあろうかと上条さんをストーキングして正解でした!まさかこの手でジジイにとどめを刺せる日が来るとは!』
マタイ「懺悔だよね?流石に武力行為に出ようとするのであれば私もそれなり手段を行使させてもらうが」
レッサー『いいでしょうやりましょうさぁ早く!……って言ったらどうします?』
マタイ「君の顔面を掴んでコンクリートで摺り下ろす」
レッサー『聖戦○(セイント)の戦い方!?ジジイもう少し落ち着きなさいよ!?』
マタイ「私は大概落ち着いているがね。えぇと、彷徨えるイギリス人よ、汝はどうしてここへ?」
レッサー『いや何か楽しそうだったんで来ました!他意はありません!』
マタイ「お帰りは後ろだが」
レッサー『や、お待ちを!私にだって矜持ってもんがありますからな!ここで一発あなたもギャフン言わせたいです!』
マタイ「そういう主旨の部屋ではない。速やかに立ち去りたまえ邪悪なイギリス人め」
レッサー『その言い方ですとヘイトっぺぇんですが……ではお訊ねしましょうか!そもさん!』
マタイ「だから主旨が違う。質問があるんだったらさっさとして帰りたまえ」
レッサー『――で、結局十字教のルーツになってる神様ってなんなんです?』
マタイ「……」
レッサー『まぁあなた方の各部分は分かっているんですよ。原罪・死・復活の三現象ですな』
レッサー『特に死と復活は精霊信仰や多神教ではよくある話です。特に蛇の脱皮が死と再生のシンボルとして崇められて久しいですし』
レッサー『ただ問題になってくるのは「原罪」ですよねぇ。人が生まれながら背負う罪であり、同時に神様以外には払拭できない致命的な罪業』
レッサー『これは罪の実、と言いますか知恵の実を食べさせた蛇に起因することですが……やっぱり蛇神関係でしょうか?しかも男神の方』」
レッサー『妙に貞節を重んじたり、時には聖女を神の嫁として所望したり、どう考えてもその立ち居振る舞いが極東の蛇神に酷似してんですな』
(※異類婚姻譚、日本では『蛇女房』・『猿贅(むこ)入り』など)
レッサー『他にも加護を与えたはずの英雄、言い換えれば聖人たちもバッタバタ死んでますし。生贄がほしい神なんですかねぇ?ねぇどう思います?』
レッサー『私が考えているのはニカイア公会議で神・聖霊・神の子が三位一体とし、それ以外の信仰は全て異端だと切って捨てたってトコです』
レッサー『今まで聖書に明確な記述がなかったトリニティって概念を取り入れるのはどうして?また誰が何のために入れたんですか?』
レッサー『そしてそもそものお話――「本当に十字教は正当な後継者が後を継いでいる」んですか?聖書に記述のない項目までわざわざ入れて、しかも核にしてまで?』
レッサー『まぁまぁこういうお話しも中々あっちではできませんからね、さぁ時間はたぁっっっっふりありますからお話ししまょうか!』
マタイ「……レッサー君、悪いのだが懺悔室の壁へ背中を付けてくれないかな」
レッサー『背中?なんでですか、どっかのボスのように「背中と前が大差無い」ってロ×でイジるんですか!?』
マタイ「そういう話ではないが……くっつけてくれたかね」
レッサー『えぇまぁしろっちゅーんでしたらしますけど、つーかそもそもこの部屋クッソ狭いんで選択肢はないんですが』
マタイ「そうかね――で、君は浸透経(しんとうけい)というものをご存じかな?」
レッサー『あ、知ってます知ってます!別名ワンインチ・パンチで相手の体内へ気を送り込んでダメージを与えるっていう――ぶきゃばあぁぁぁぁぁぁっ!?』 ゴフッ
マタイ「うん、つまり――”これ”だね」
……
マタイ「……」 パタンッ
上条「あの、今殺人が」
マタイ「いや、大丈夫だよ?本気では撃ってないから、精々数日間固形物が消化できなくなるぐらいだ」
上条「正直『いいぞもっとやれ!』が7割で『なんだよもっとやれ!』が3割ぐらいなんだけど……」
インデックス「それだと10わりが『もっとやれ』ってことになるんだよ」
上条「てゆうか今の話って――」
インデックス「……」 フルフルッ
上条「えっと」
マタイ「次は君の番だね。健闘を期待しているよ?」
上条「い、いや待てよ!レッサーの下りはなかったことにするとして、俺が行く必要ねぇって!どうせこのままイタイことになって終わるんだからな!?」
インデックス「分かってるんだったらさっさと行くんだよぉ……?まさかこのままむきずでいられるだなんて思ってない、かも……?」
上条「本当に主旨忘れてんぞお前ら!?マウント合戦が逆マウントになっちまってんじゃねぇか!?」
……
上条「あー、なんだ?何かこう迷ってる人よ、悩みがあるんだったら言ってみてください」
刀夜『――女性関係で相談があります神父さん』
上条「聞きたくねぇよ!?親のそういうのって一番聞きたくない話だよ!?」
刀夜『当麻……?一体こんな所で何を……?』
上条「あー、ボランティアで少々?」
刀夜『……そっか。当麻も人のことを考えられる余裕が出てきたんだね、良かった……』
上条「しょーもないマウント合戦の最中だけどな」
刀夜『それでね、覚えているかい?ほら、当麻も知ってるあの子だよ。当麻が小さい頃に「ママ」って私達の知らないところで呼ばせてた彼女』
上条「いや続けんなや!?息子に女関係のトラブル聞かせてどうすんだよ!?」
上条「あと覚えてねぇけどそんな知り合いいんの!?人んちの息子にママとか呼ばせるって超ヤベーやつじゃん!?」
刀夜『何を言ってるんだい当麻!ヤベーんだったら母さんの方が上なんだからな!』
上条「なんで今俺怒られたの?そして母さんは父さんに一体何をしたっていうの?」
刀夜『それでその彼女がその、刑期を終えてだね』
上条「ねぇそれって人に話していい話か?俺居なかったら見ず知らずの神父さんの胃壁を破壊してたってことだよね?違う?」
刀夜『だから当麻も気をつけてほしい!まぁでも父さんの息子なんだから大丈夫だろう!』
上条「その血が最大の不安要因なんだよ。多分呪われたその血が」
刀夜『当麻――お前のその手は何のためにあるのか、よく考えてほしい』
上条「何のためにって……」
刀夜『力が欲しくて欲しくてたまらなくて。何年も何年も、それこそ生涯かけて鍛錬した力や努力の結晶』
刀夜『家族や友達、愛するもの全て犠牲にして築き上げた砂上の楼閣。とてもデリケートで脆いのだけれど、それでも必死に築き上げた結晶をだ!』
刀夜『そんな、血と涙でできた存在を!たったワンパンで台無しにする!』
刀夜『そのために当麻はそんな力を持っているんだよ……ッ!!!』
上条「なぁ父さんもしかして俺嫌いか?それとも誰か俺にそげぶされた知り合いとか居るの?人生台無しにしたとかだったら流石に謝るよ?」
刀夜『私にそんな力があれば……!』
上条「無理じゃねぇかなぁ。仮に異世界転生しても母さんは憑いてくるだろうし」
上条「あとオッサンが若返って活躍すんのはまぁそこそこあっけど、脳のシワまでフォーマットしたってパターン多いわ」
刀夜『当麻、覚えておきなさい――男は幾つになってもハーレムルートを探す旅人だってね……っ!!!』
上条「芸風レッサーに似てきたよな?まさかとは思うがあのアホに遺伝子入ってるってオチはないよな?」
刀夜『こんな経験はあるかな――いっぱいいっぱいをおっぱ×おっぱ×って言い間違える』
上条「なぁ父さん、父さんはいつになった中二の呪いから逃れられるの?あと俺の話聞いてくんね?」
刀夜『あぁまぁそういう訳で告知義務は果たしたから後は……自分の身は、ねっ?』
上条「父さんの方こそ気をつけてな?差し当たっては今から母さんにチクるから、今晩生き残れるか頑張って?」
……
上条「……」 パタンッ
インデックス「えーっと、なんて言ったらいいのかなんだけど……」
マタイ「まぁ、愉快なお父様だね。で、合っているかな?」
上条「……喫茶店」
インデックス「な、なにかな?」
上条「俺実は――商店街の隅っこにある、あんま人が入ってない喫茶店に興味あったんだよな」
インデックス「あー、あるんだよ。あのやってるのかやってないのか、びみょうなお店」
上条「やってんのは確実なんだよ。定期的に新メニューらしきチラシが貼ってあるし、夕方通るとコーヒーのいい香りがすっから」
上条「ただまぁ値段設定とか分からないし、一人で入るのも何か悪いし、かといってインデックス連れて破産覚悟で行くのも、だしなぁ」
インデックス「その言い方はどうかと思わなくもないんだよ。まぁそうだけど」
上条「だから宝くじでも当ったら、いつかあのお店へ行こう!チラシにあったハンバーグナポリタン食べよう!ってずっと思って――」
インデックス「とうま……」
マタイ「――うむ、では行こうか。今からランチタイムが丁度であろうし」
上条「で、でも先立つものが……!」
マタイ「折角だしついでに商店街でも案内してくれたまえよ。ランチぐらいはご馳走するから」
インデックス「――さっとうま!ぐずぐずしてないでハリーハリーなんだよ!ふこうなできごとはなかったんだから!」
上条「そう、だな……!俺たちは仲良くなった!それ以上は何もなかったんだからな!」
インデックス「そうなんだよ!またいさんのかんげいかいもしないといけないしね!」
-終-
(※以後、確率でマタイさんとエンカウントするようになりました)
○ボツになったシーン・懺悔室
レッサー『あぁ神様!私は罪深い人間です!どうかこんな私をお救いください!』
インデックス「おぉ汝は懺悔するんだよ。いと尊き方はきっと汝をお許しになるのかも」
レッサー『サンキューフォーエーバー!』
インデックス「単語のちょいすがおかしい。で、何やったんだよ?」
レッサー『みんな大好きゴブリンがスレイヤーする作品あるじゃないですか?ウクライナとヤクサと東欧で人身売買しているマフィアには何も言わないフェミニスト団体から目の敵にされている』
インデックス「余計な情報はいらないんだよ。で、あれがどうしたのかな?」
レッサー『あれの主人公が少年時代のやつがあるんですが――「あ、これゴブリンに少年が性的な意味で襲われねぇかな」と!』
インデックス「無理だよ、助からないよ?あなたはブッディズムのゴブリン界をずっと永遠に彷徨うんだからね?」
レッサー『あまつさえ今ではショ×陵辱モノばかり選んでる私が!なんて私は卑しいんでしょうか!?』
インデックス「新しい性癖を拡張したんだね。死ねばいいんじゃないかな?」
レッサー『助けて下さいシスターさん!私はこのままだったら次の夏コミに「ゴブスレさんゴブリンに負ける」ってタイトルで一本描かねばならないのです!』
インデックス「あなたは死んでも神の御許へたどり着くことはないんだよ。次に生まれ変わるのはフランス、次はイギリス、そしてまたフランスと」
インデックス「永遠にドーバー海峡を挟んで永遠に煽り合う運命なのです」
レッサー『そんなっ!?なんて楽しそうな未来じゃないですかっ!?』
インデックス「めんたるが強すぎるんだよ。ゴブリン並に強靱だから」
インデックス「……ただいまー、なんだよ……」
上条「あぁおかえりインデックス。珍しいな、俺より遅いだなんて」
インデックス「それがね、わたしも昼間はぼらんてぃあしてるのって言ったよね?」
上条「あぁ河川敷に軍手と長靴を撒く仕事だっけ?」
インデックス「あれ誰かが意図的にやってたの!?酷いときだと10分ぐらいに一回は必ず落ちてるよね!?」
上条「てかボランティアの話は初めて聞いたわ。悪いけど遊びに行ってるもんだとばかり」
インデックス「いやあの、わたしはこれ以上ないってぐらいの正統なしすたーなんだけど……」
上条「あぁまぁアンジェレネ師匠よりはそれっぽいよな」
インデックス「あの子と同じ評価は傷つくんだよ!?向こうはどう見ても見習いだしね!?」
上条「そういう意味じゃなくて年齢的な制限があるもんだと思ってた」
インデックス「うんそれもない訳じゃないんだけど……まぁとにかく、わたしはしすたーである以上、きょうどう的な使命があるんだよ」
上条「きょうどう?」
インデックス「教え導くって意味での教導なんだよ。だからがくえんとしにある教会でぼらんてぃあしてる感じで」
上条「あー、そういやそれっぽいのあったな」
インデックス「うん、あほの前理事長がうちと契約したとき、『だったらきょうかい建ててもいいよね?』って」
上条「どう考えてもスパイだろうが。ステイルとか任命されて常駐しそうだよな」
インデックス「実際にこっちに来たら住んでるんじゃないかな。お弟子さんとかも――」
インデックス「……」
インデックス「……あれ?あの神父さんに三人ぐらいお弟子さん居なかったっけ?」
上条「ノーだ、インデックス!俺もなんか顔見せ的なことをしたが、いつのまにか消えてた三人組にツッコむのはノーだ!」
インデックス「まぁありさが何故かここで一番出張ってるし、けっかてきにはいいんだろうけど……まぁ、そんな訳で昼間はきょうかいのお手伝いをしてるんだよ」
上条「それは良い事だな。俺も保護者として挨拶した方がいいかな?」
インデックス「……した方がいいんだけど、別にしなくても構わないんだよ。だってその神父さまはとうも知ってる人だから」
上条「あぁステイルか」
インデックス「ううん、そうじゃなくてまたいさん……!」
上条「レベル間違ってね?RPGで最初の街に魔王が住んでるようなもんじゃねぇか」
インデックス「……あつがハンパ無いんだよ、あつが……!」
上条「てかここにいるのが身バレしたら人が全世界から押しかけるだろ」
インデックス「まぁ魔術で認識も変えてるし、ぷろじゃなきゃまず平気なんだよ」
上条「平気っていうよりも兵器っていうか……てかあの人ってどんだけ強いの?魔術師としてのヤッベェの?」
インデックス「んー……ちまたにあふれる『教皇級魔術師』だったら、一蹴できる程度、かな?」
上条「おいおいステイルさんの悪口はやめろよいいぞもっと言え!」
インデックス「とうまのわるいところが出てる。てかどこの『教皇級』もあくまでも自称であって、多分たいまんやったら話にならないぐらいじゃないかぁって」
インデックス「そもそも若いときから異端狩りの部署で第一線にいて、しかも生き残った魔術師が弱いわけもなく……」
上条「ゴールデンカム○に出てきそう」
インデックス「あと魔術の腕とは関係なく、内に『神の右席』、外にも『悪魔的な女』って内外に敵を抱えながら、数十年均衡させる人ってせいじりょくが怖いんだよ……!」
上条「あー、肩こりそう」
インデックス「せっかく、そうわたしがせっかく正式なしすたーとして幅を効かせてたのに!」
上条「承認欲求か。そしてあの人より上って数人もいないような……」
インデックス「……ねぇ、とうま。ぱぱさんが言ってたんだよ――『男には戦わなければいけないときがある』って」
上条「俺がここでそげぶしたらただの傷害だよな?ただでさえローマ正教からはヘイト溜まってたのをなぁなぁにしてんのに危ないよな?」
インデックス「……あのね、とうま。とうまが学校行くじゃない?7時すぎぐらいに」
上条「まぁそんなもんだよな。それが?」
インデックス「わたしもそこからすふぃんくす連れて、まいかに挨拶して教会に行くじゃない?毎日ではないかもだけど」
上条「良い事じゃね。できればもっと早く教えて欲しかったような気がしないでもないが」
インデックス「どうしてしすたーが教会行くのに許可を取らなければ……」
上条「大概トラブルに巻き込まれるからだよ。まるで神様が俺たちをオモチャにしてんのかな?と疑うレベルで」
インデックス「てつがくてきな話はさておくとして――で、いざ教会についたら、あの人が笑顔で拭き掃除してるんだよ?とうまだったら耐えられる?」
上条「爆笑したらいいのか、跪いて祈りを捧げればいいのか困惑するよな」
インデックス「たちばてきに!たちばてきにあるんだからね、って何回も何回も言ったんだよ!?言ったんだけどね!」
上条「『神の前に立場も何も。手透きの者が居ればしても佳いだろう?』」
インデックス「うん、それがそこら辺の人が言うんだったら『そんなことないんだよ!』ってイッシューできるんだけど!」
上条「ちょと楽しそうだな。明日行ってみようか?インデックスが何やってんのかも知りたいし」
インデックス「……くっ!よそうがいのじゅぎょうさんかんなんだよ……!」
――とある教会っぽい建物
マタイ「――やぁおはよう。佳い天気だね」
上条「パイプオルガン流して『神と悪魔が集いし邪教の館へようこそ』って言ってくれませんか?」
マタイ「そのネタはもう何人かに言われておる」
インデックス「とうまも他の学園生も失礼だからね?」
マタイ「そして意外と好評なのだよ」
インデックス「あの、げいかさん?あんまり俗にそまるのもどうか思うんだよ?」
(※教皇”猊下”)
マタイ「もう既に辞した身だ。マタイで構わんよ」
インデックス「むりだもん!?畏れおおいんだよ!?」
上条「あ、それでウチの子がマタイさんがいたら邪魔だって言うんですよ」
インデックス「とうま、めっ、なんだよ!ボケていいのにも限度があるんだからねっ!?」
マタイ「ふむ?私が?」
インデックス「いえあの、邪魔って訳じゃないんだよ!ただいろいろと畏れ多いかなぁって説がないとは言い切れないのかも!」
マタイ「清掃のことを言ってるのであれば是非もないだろう?万人の家を使徒が清めるのに何か不都合が?」
インデックス「格っていうのがあってね、そういうのはわたしたちのお仕事なんだから、です!」
マタイ「そんなものはないよ。私も君も、万人が等しく愛されるのだ」
上条「おぉ……!何かいつも小難しい事言ってるインデックスが一方的に言い負かされて……!」
インデックス「だから無理なんだってば!この人の発言はほぼ20億人の公式見解にひとしいんだからねっ!?」
上条「てかお前らって仲悪かったっけ?接点そのものがあんまりないような……」
インデックス「前にローマ正教の禁書・魔道書を見せてもらったとき、おかしいっぱいくれたんだよ!しょじじょーにより覚えてないんだけど!」
上条「あー、マタイさん?インデックスも決してこうイジワルしてるんじゃないんです。ただ年齢的にあまり率先して働かれるのもどうかな据わりが悪いな、ってことであって」
マタイ「まぁ、そうだね。年若き子らの仕事を奪ってしまうのも佳くはないかな」
インデックス「なんでとうまの言うことは素直に聞くのかなぁ!?」
上条「それはお前が遊ばれてっからだよ。まるで孫娘をからかうお年寄りだもの」
マタイ「そんなつもりは毛頭ないのだが……」
インデックス「だから今日は大人しくしてるんだよ!あとはわたしがするんだからね!」
上条「あ、すいません。シスターさんの様子を見に来た保護者です。ウチの子が大変ご迷惑を、あぁこれつまらないものですが」
マタイ「これはご丁寧にどうも。迷惑はあまり……なくはないが、まぁ年相応だね」
インデックス「そこは否定してほしいんだよ?げいかも、こう、分かるよね?」
マタイ「ただ流石にネコを聖堂へ放し飼いにするのは……」
上条「って言われてるぞ!遊びじゃないんだからな!」
インデックス「す、スフィンクスはいいんだもん!知識の守護者なんだからね!」
マタイ「そしてその様子を誰かがSNSへ取り上げた結果、『ネコの住んでいる教会』と少し話題になった」
上条「あぁあれお前らだったのか!?『スフィンクスと毛並み似てんな』って思ったヤツ!?」
インデックス「その時点で分かるんじゃないかな?一応家族なんだよ?」
マタイ「幸い私が対応することで事なきを得たが」
上条「可哀想に。ネコ見たさで集まって来た子ら、さぞ怖かったろうな。子ヨー○見に来たらシ○が出張ってくるんだから」
インデックス「あと子よー○さんは可愛くはないと思うんだよ。ばずらせようとして大スベりしてる感じ」
マタイ「きちんと話をしただけなのだがな。解せぬものだ」
インデックス「て、ゆうかね!今日はいい機会だから言うんだけど、ここの教会はイギリス清教なんだからね!?」
上条「おぉ……!ついに恥も外聞もなくマウント取りに!」
インデックス「げすととしてはお迎えするんだよ!ほすと側じゃなくて!」
上条「って言ってんですけど」
マタイ「とはいうがね。正しき意味ではここは教会でもなんでもないだろう?君が知らぬ筈もなし、ただの確認なのだが」
インデックス「そ、それは、そうなんだよ!」
上条「あれここ教会じゃないんですか?」
マタイ「”っぽい”建物だね。十字架はあってもどこの形式でもなく、神の子の像の造りも魔術的な記号はなし――と、いうのもだ」
マタイ「これは私が直接あの悪魔から聞き出した話だ。『学園都市と君たちは結託するのかね』と、大分昔の話のように思えるが」
上条「ま、まだだよ!たった8ヶ月ぐらいしか経ってないぜ!」
(※原作の時間経過では)
マタイ「その際に彼女は『特定の宗教施設はなかりしよ?ただ”それっぽい”ものは体裁上できるやもだか、ハロウィンのコスプレは一々取り締まってられぬよな?』と」
上条「要は『教会っぽい建物は作るけど、特定の宗教には加担していませんよー』ってスタンス?」
マタイ「内心どうあれ、実質もどうあれ、建前上はそうなっておる。今もな」
インデックス「異議があるんだよ!だったらわたしたちが先に来てるんだし、せんゆーしてるってことになるんじゃ!」
マタイ「まぁそれも否定はしない、しないが――なぁインデックス君、そして上条当麻君。我々の間には深くて厄介な壁があったね」
上条「拙いぞインデックス!この話の流れからは壮大なお説教が始まる予感しかしねぇ!」
インデックス「もう嫌な予感しかしないんだよ……!」
マタイ「あぁそんなに大した話ではないとも。というか殆どがこちらの過失によるものだね、『科学サイドと手を結んだ不心得者を討て』というような。君たちにとっては理不尽極まりないものだが」
上条「何度か死にかけてんですけどコノヤロー。テなんとかさんとかヴェントとかアックアとかフィアンマとか」
インデックス「わたしも少なからず被害を……」
マタイ「そうだね。君たちは『右席』の四人を、まぁローマ正教四天王を4タテしたわけだ」
インデックス「よんたて……いやまぁ、それはそうなんだけど」
マタイ「で、まぁ色々あってフィアンマ暴走で第三次世界大戦、引いて遠因ではあるもののグレムリンの勃発など、世界や秩序の守護者として極めて遺憾ではあった」
上条「いやでもマタイさんの立場だと仕方がないんじゃ?フィアンマのアホが市街地でぶっぱしやがった、市民守るために死にかけたんですよね?」
インデックス「普通の魔術師がふぃあんまの『右腕』を受けて生きてる方がおかしいんだけど……」
マタイ「それは恥であって美徳ではないよ。いくら名前ばかりとはいえ、私の不徳とすると所であると思っているとも。今も他に道はあったのではないかと」
マタイ「まぁ私個人の感傷はさておこうか。我々とイギリス清教とは不幸な諍いがあり、全責任を死んだ連中へ押しつけて仲直りをしようという運びになった」
上条「言い方もっとあったんじゃないですかね?てか悪いのもフィアンマだけども!」
インデックス「いちおう……世界を敵に回してたもんね。たった一瞬とはいえ」
マタイ「規模的にはあと数週間調子に乗っていたら、オティヌスに叩き落とされて終わっていたとは思う――が、まぁそれはそれとして、友好的な関係を築こうと至った訳だ」
マタイ「――が、しかしだ。先だって君たちのトップは悪魔だったじゃないか?」
インデックス「……」
上条「あー……っすよねー」
マタイ「前提が変るのだよ。魔術師サイドの抗争から人類とそれ以外との戦いという構図にね」
マタイ「アレイスターという異端、そして悪魔という人類種に率いられた集団。正義は我らローマ正教にあり、邪悪な力によって攻撃された、と言えなくもないわけだ?」
マタイ「大義名分は手にある限り、大々的に公表してイギリス清教を討つべし、レコンキスタ西進せよ――」
マタイ「――などと、考える俗物、もとい現法王猊下がいてね」
マタイ「あぁいやいや勿論?私は君たちと友誼を結んでいるし、君たちを疑いなどしないとも。善良であるのは保証しても佳いぐらいだ」
マタイ「だがしかし、そういう考えを持たぬ者たちのためにも、お互い仲良くしておいた方が佳いのでは、というのが持論だね」
上条「すいません、インデックスさん。通訳の方お願いします」
インデックス「『私がここに居れば過激派も手を出せないから分かるよね?ねっ?』なのかもなんだよ!」
上条「超黒いわー。暗○卿の二つ名持ってんじゃねぇかってぐらい腹黒いわー」
マタイ「文字通り私の目の黒い内は、だね。というかインデックス君に一つ訊ねたいのだが」
インデックス「まじなとーんだと警戒しかないんだけど……」
マタイ「表のヴィリアン王女殿下は佳しとしても、『最大教主』がよりにもよって『黄金』系の不死人というのはあまり関心できないよね?」
インデックス「うん、無理かな?こうせいいんではあるんだよ、ただほぼてっぽーだま扱いに近いんだけど」
上条「分かる分かる!体一つでフランスとかイギリスとかロシアとかアメリカに特攻させられるんだよな!」
上条「――ってオイオイ、なんだこの教会?室内なのに雨漏りしてんじゃねぇか。ちょっとブルーシート買ってくる!」
インデックス「流れるように見事なじぎゃくネタなんだよね。そして泣いているのはとうまなんだよ」
マタイ「正直、君たちを敵に回していたあの頃、何が悲しかったと言えば『この日程で未成年の、しかもただの学生をこき使うのか』という現実がだね」
インデックス「ほぼゆうしゃ扱いだよね。てきがいるとおぼしきところへ突っ込んで、大ケガしたから自動的にリポップするんだよ」
マタイ「こちらでは『上条当麻とはクローン兵器の符丁ではないのか?』という説すらあってね。実体はただのブラックな職場だったのだが」
マタイ「まぁ、とにもかくにもそういう扱いで頼む。私個人は君たちに借りがあってそれを返していると思ってくれたまえよ」
インデックス「くっ……!このせいじりょくにやられたんだね!」
上条「ただ事実を淡々と述べてだけだと思うが。ケンカしないで仲良くしろよ、お前ら同じ神様崇めてんだろ?」
インデックス「おや?君たちの民族はほぼブディズムかその亜流だと思うのだが、長年戦争をしていなかったかな?」
上条「むしろ率先して煽ってた坊さんとかいるしな!どこも同じだわ!」
上条「という訳で仲良くしなさいインデックス!仮にも大先輩なんだから敬意を持ってね!」
インデックス「……やりづらいんだよ。そんけーはしてるしけいいも払ってるつもりなんだけど……」
――教会っぽい建物
マタイ「では歳の順で私が仕切らせてもらうが、少年もまた体験入信的なもので構わないのかな?」
上条「俺はそうだがインデックスは違うわ。格好見て分かんだろ、ガチなコスプレイヤーだと思ったか」
インデックス「いないことはないんだよね。『あれ、あなた新人さんなんだよ?』って見慣れない子へ声をかけたら、しろうとさんが教会内で撮影してただけだったり」
上条「罪深いなこの業界。だが一介のシスターさん好きとしては大局的な観点でみて頂きたいものだが!」
マタイ「で、あれば余計に取り締まった方が佳いと思うがね。ともあれ神の家へようこそ、もし佳かったら私が洗礼までしよう」
上条「だから畏れ多いんだよ。ほぼ神様扱いの人にさせられるか」
インデックス「そういう人に平気でツッコむのもどうかと思うんだよ。とくにとうまは」
マタイ「ではここから教会の通常業務に移りたいと思うのだが――そも、通常業務とはなんぞや、と」
上条「なんでだよ!?よく仕切るとか言い出したなそれで!?あとお前トップだったろ!?」
インデックス「とうま、口調口調。ツッコんでるからってそんけーを忘れないで」
マタイ「お恥ずかしい話だが、教会一つを担当した経験はこれが初めてなんだ」
上条「だからどうしてだよ。そんなんで勤まんのか」
マタイ「ローマ正教の中での立ち位置が広報官のようなものでね。官僚のような仕事ばかりしていたものだから」
上条「ふーん?で、本当は?」
マタイ「いや本当に教理省一本だよ?含むところなど何もないよ?」
(※教理省=昔の名前が『検邪聖省』で異端審問が職務だった人たち。つーかベネディクトさんは神学校教師→そこの長官)
(※そしてそこで異端審問やってたとき、書物の発行の可不可を判断した一覧が『禁書目録』でした)
マタイ「なので実務経験がゼロなのだ。もっと広い教区を束ねる、となければ話は別なのだが」
上条「だっらた仕方がないか。おい、出番だぞインデックスさん!数少ないマウント取れるチャンスだ!」
インデックス「あー……まぁ、アレなんだけど。わたしもあんまり……」
上条「オイコラなんちゃってシスター。薄々感づいてはいたけど、お前のシスター成分はガワだけかコラ?」
インデックス「し、仕方がないんだよ!わたしだってしすたーのお仕事よりも魔導図書館としてしゅっこうする方が多かったんだから!」
上条「あー……まぁ、そうか?だったらなんでシスターにしたんだよってツッコミがあるにはあるが」
マタイ「管轄的な問題だろうな。ただの魔術師であれば『王室派』と『騎士派』に取り込まれかねんが、シスターであればそう簡単に引き抜きもできん」
インデックス「たまに教会でお仕事しても、他の子が気を遣ってくれて、ねっ?あんまり、ねっ?」
上条「あぁんじゃそっちも仕方がないな、って詰むのはえーよ!元トップと現職のシスターがいんのに!」
マタイ「そこはそれ心配ご無用という話だね。我々には切り札がある」
上条「ほう、出オチだと思うが言ってみろよ」
マタイ「『シスター好きが高じてローマ正教を敵に回した男』がここに。彼に聞くのが最適解では?」
上条「やかましいわ!そんな事実ねぇよ!あぁまぁ百歩譲ってシスター好きは認めっけど!」
インデックス「とうま口調口調。あと好きなのはみとめるんだ……?」
上条「あと別に俺じゃなくても女の子がボコられてたら誰だって止めに入るわ!ローマ正教どうって話ですらねぇしな!」
マタイ「その不屈のメンタルは佳き事だが」
上条「つーかテメー思い出したわこのヤロー!一体何がどうすりゃアニェーゼたちにオルソラ殴らせてんだよゴラアァッ!?」
インデックス「あー、なぞだったんだよねあれ。『法の書』の解読、結果的には失敗だったけど」
マタイ「あれはまぁある日報告が上がってきてね。といっても非公式で古参のシスターからなのだが、『ウチのシスターが魔道書の解読に成功したんで逃げた』というような」
マタイ「なので『シスター・オルソラを保護しなさい、有能な学士は狙われる』と伝達したはずなのに、戻って来た報告書が」
マタイ「『神を畏れぬツンツン頭が邪魔してきました。あぁでもオルソラはかなり殴っておきましたんでイーブンです!』で、目まいがね……」
上条「そっちには中間管理職アホしかいねぇのか」
マタイ「後に、大分経ってから君たちが、ただ私刑にあっているご婦人を助けるために、という話を聞いたときには辞職しようと本気で悩んだものだよ」
マタイ「まぁそうしたとすれば余計に迷惑が掛かるため控えたがね」
上条「オルソラの亡命事件も謎だったんだよな。身内から狙われるってのがさ」
インデックス「わたしはそう言ったけど、じじつのあとおいなんだよ?『可能性としては』って意味で」
マタイ「うむ。元々シスター・アニェーゼとシスター・オルソラは多少の顔なじみでね。彼女たちを保護し、面倒を看ていたのがオルソラ君だったのだよ」
マタイ「なので知己を向わせれば穏便に、まぁ決裂しても棄教ぐらいで済むだろうな、と思っていたらあの騒ぎだ」
上条「お前らがアニェーゼ追い込んでたのも原因だろ」
マタイ「返す言葉もないね。どこぞの俗物めが、例えばシスターに手柄を取られるのを佳しとしない愚か者が関わっていたのだろう」
インデックス「くろうしてたんだよ……『なんでこんな非効率的なこと』ってあんけんが多々あったし」
マタイ「賢者が仮にもしローマ正教にいたとして、まず最初にすることは組織を辞めることだろうとも」
上条「お互いに傷を突きあうのはやめようぜ!問題はここからどうするかだ!」
マタイ「とはいえな。教会自体の掃除は終わっているのだし、後は祈りを捧げるぐらいしか」
インデックス「だよねぇ」
上条「……えーっと、インデックスさん?あなたボランティアって来てるって言ってたが、いつもは何を……?」
インデックス「まずね、とうまがお出かけしたらすふぃんくすと一緒に来るでしょー?そしたらおそうじはおじいちゃんが終わっててねー」
インデックス「軽くお腹がすくじゃない?だから『おやつないですか?』って言うと用意してくれるんだよね」
インデックス「そうしたら軽く食べたら、お昼に時間になるじゃない?だからおじいちゃんに『ごはんありますか?』っていうとでりばりーがねー」
上条「教会は?どうせこのまま聞いてたら三時のおやつと軽食食べて帰ってくる展開だろ」
上条「てゆうか最近血色良くなってきたと思ったら外でたらふく食ってたのかよ!?それだけ食べてよく俺のメシが入るな!?」
マタイ「もっとこう他に言うことはないのかね」
上条「しょ、食費はどうかちょっと待っててください!次のバイト代が入り次第払いますんで!」
マタイ「それは結構だ。私の蓄えから出している故に」
上条「金持ってそう、ですよね」
マタイ「公式には亡くなっている以上、個人資産や霊装の類は持ち出せなかった。だがまぁ魔術師としてはそこそこの腕なのでね」
上条「着々とローマ正教の地盤作ってね?不安しかないわ−」
インデックス「と、いうわけでおやつください!お昼の前にうぉーみんぐあっぷするんだよ!」
上条「明日からオヤツはいいですから。態度が悪かったらご飯の量も減らしてください」
インデックス「なんて、なんて残酷な事言うんだよ!?ここでだったら誰にも叱られることなくお腹いっぱい食べられたのに!?」
上条「お黙りなさいインデックス!せめて分からないんだったら調べる姿勢を見せなさいよ!」
マタイ「私も現役のシスターが暴食に浸るのを見て、『イギリス清教は変ったやり方をしているな』という感想だったのだが」
上条「マタイさんは?いつも何やって時間すごしてんだ?」
マタイ「日が昇ったら起きて祈りをし清掃をして、たまに来る学生の悩みを聞いて、余暇に護符や聖印を描いて、日が暮れたら寝る、かな?」
上条「おじいちゃんかな?」
マタイ「まさにそうだとも。普通に生きているだけだ」
上条「しかし教会っぽいこと……あぁ何か説教とか洗礼とかしないの?」
マタイ「需要がないのだ。立会人として保護者か名目上の親が必要なのだが、学園都市の多くが学生であるし」
インデックス「まぁ大抵はもっと小さい頃にじもとの教会で、が普通なんだよ」
上条「んじゃ説教とか……は、してるんだっけ?」
マタイ「主に相談だな。しかしこれもまた少ないは少ない。対話型AIに取って替られる日も近いだろう」
インデックス「あれ絶対おかしいんだよ……!血も涙も、魂すらない相手の何が信用できるんだよ……?」
上条「お前らのボーダー外の友達が何人かいる俺はノーコメントだ。意思疎通ができて友好的な相手だったら人かどうかは関係ない」
マタイ「まぁそれも時代だからね。あと一世紀先では教会がAIを洗礼しているかもしれないが――」
マタイ「――よし、では今日は商店街へ食べ歩きに出かけようか。普段はスルーする店へ挑む主旨で」
インデックス「いっしょうついてくんだよ!なんでこんな良い人がローマ正教なのかと!」
上条「諦めんなよ教会関係者二人!もっと他に教会っぽいことある筈だ!頑張ろうぜ!」
インデックス「とはいっても、他には……あぁ懺悔室があるっちゃあるんだよ」
マタイ「あそこだけやたら凝っているんだよ、造りが」
上条「いいね、そういうの教会っぽい!」
インデックス「そうなんだけど……ここにいる、悩める子羊たちの話を聞ける資格を持つ人はひとりしかいなくて……」
マタイ「私だね」
上条「インデックスさんの存在意義が……!」
インデックス「ま、魔術に詳しいんだもん!世界一じゃないけど近いぐらいには!」
上条「あれマタイさんって戦歴何年でしたっけ?」
マタイ「たった75年弱だな。『黄金』系から極東の魔術結社まで、馬が草を食むような丁寧さで神の慈悲を叩き込んだとも」
インデックス「比較対象がおかしいんだよ!ただひとでありながら聖人級にあしをふみいれたじんがいまきょうの魔術師とはね!」
マタイ「救えたものもあれば、救えなかったものも多い。後悔ばかりの人生であったが、まぁそれもまた佳きものであろう」
上条「どうしてこうウチの子には余裕がないんだろうか。まだ若いのに」
上条「あーまぁとにかくだ。ここは教会っぽい建物だが決して教会じゃない――つまり、あそこにあるのは懺悔室っぽいただの部屋だ!」
上条「よって俺たちがたまたまかくれんぼしてる間に誰かがやってきて、偶然相談にのったっていいとも言えるかもしれない……ッ!!!」
インデックス「いいね!それでべすとな意見を出したひとがかちってことで!」
マタイ「人はどうして争うのだろうか。きっと暇だからだね」
インデックス「よーし、じゃわたしのお手本を見るといいんだよ!なんだかんだでシスターだからね!年齢的にも近いし!」
上条「おぉぶち上げるじゃねぇか!よーし、誰か来たみたいだスタンバッて!」
インデックス「かまーん、なんだよ!ばっちこーい、だもん!」
……
インデックス「ようこそ、なやみをかかえる子羊よ。かみの家の門戸は常にひらかれています、なんだよ」
アンジェレネ『あ、あのですね。ざ、懺悔したいんですけど……』
インデックス「また何か来たね!?『なんでここに?』とか言っちゃダメなんだろうけど、しりあいがぴんぽいんとで!」
アンジェレネ『し、シスターさん?』
インデックス「あぁいやいやなんでもないんだよ。ただちょっと汝がここにいる理由を教えてくれたらすっきりするかも」
アンジェレネ『え、えぇっと……なんだか神父様のいない教会がここにあるらしくって、そ、その管理とかで派遣されてきたっていいますか……』
インデックス「大丈夫なの?おじーちゃんにえんかうんとしたら心臓止るんじゃないかな?」
アンジェレネ『ちょ、ちょっと何言ってるのか分からないですけど……相談、いいんですかねぇ?』
インデックス「あぁうんどうぞなんだよ。遠慮せずに話すといいんだよ」
アンジェレネ『え、えぇとですね、実は今わたしたちはよその家っていうか、他の人の家に居候してるって感じなんです』
インデックス「あー、うん、そうだね。大変なんだよ」
アンジェレネ『そ、そうでもないんですよ?ご、ご飯はくれますし、ぶ、ぶるぁぁぁ、とか言い出す気持ち悪い司教様はいませんし、わ、悪くはないんです』
インデックス「あのひと、濃かったよね。ほぼ使い捨てのきゃらなのに」
アンジェレネ『で、でも最近、悩みができたっていうか、その……』
インデックス「うん、言ってみるといいんだよ。あなたがここで口にしたことは神様以外だれもしらないんだからね」
アンジェレネ『で、でしたら……その、新しい職場を用意してくれた人がですね、じ、実はとても裏では悪いことをしてたっていうか』
インデックス「あー……うん」
アンジェレネ『わ、わたしたちとはほとんど接点がなかったですし、お、お話しをしたのも「まぁ頑張って、あ、お菓子食べたる?」ぐらいなんですけど』
アンジェレネ『す、少なくとも悪いことをされなかったいうか、悪いことをしてるって感じの人じゃなくて……ま、まぁ人じゃなかったんですがね!』
インデックス「その『ちょっといい事言った』的なのはいらないかな」
アンジェレネ『で、でもやっぱり悪い人だったみたいで……そ、その』
インデックス「あー、つまりあなたは感情の行き場が分からない、ってことなのかな?」
アンジェレネ『ど、どういういみですか?』
インデックス「善人だけの人もいないし、悪人だけの人もいない――まぁ、その人は悪い人だったのかもしれないけど、あなたにとっては違うかも、って話なんだよね?」
インデックス「だったら別に他のひとにあわせて嫌わなくたっていいんだよ。あなたが知ってる事実が全てとは限らないんだし」
アンジェレネ『し、知ってる、ですか?』
インデックス「本当に悪人かどうかだったのかも分からないんだよ。例えばいすとりげーむで負けたとか、そんなしょーもない理由だったり」
アンジェレネ『そ、それは多分ないと思うんですけど……そ、そうですね!か、かるく考えておきます!』
インデックス「それはそれでかこんを残しそうだけど……まぁいいんだよ、子羊よ!」
アンジェレネ『き、禁書目録さんも正体分かんなかったみたいですし、わ、わたしが分かんなくても当然ですよね!』
インデックス「――なんて?」
アンジェレネ『え、えぇと?』
インデックス「よく分からないんだけど、今、なんていったのかな?」
アンジェレネ『ど、同僚の子の話なんですけどぉ、な、なんか凄い能力だかがあるんです、ぽいです』
インデックス「ぽいじゃないんだよ?あるんだよじっさいに?」
アンジェレネ『え、えぇはいそうなんですけど。な、なんかそのシスターが悪い人に捕まって、せ、世界が大変になったりしてますし……』
インデックス「そ、そうなんだー?で、でもそれはじしょうがあるかもなんだよ?」
アンジェレネ『で、でしょうけど……ま、まぁ仕方がないですよねっ!そ、その子も所詮はただのシスターなんですしね!』
インデックス「ただの……」
アンジェレネ『だ、第一、ローラさんだってその子は正体見破れなかったんですからねっ!な、なんとかって名前もハッタリじゃないですかねっ!』
アンジェレネ『あ、ありがとうございますシスターさんっ!む、胸のモヤモヤが取れた気がしますっ!』
……
インデックス「……」 パタン
上条「流石アンジェレネ師匠……!無邪気さを装った悪辣な煽り方だぜ……!」
マタイ「いくらなんでもあれを責めるのは……まぁ、その、なんだ。私を含めた関係者一同は『どうしてあの女死なないの?』と噂してはいたが」
上条「基本何でもありの魔術師だからな。不老とかもあんだろ?」
マタイ「概念としては一応は。ただし成功例はないとされている」
上条「ないの?」
マタイ「ないな――『不死を極めた先に行き着くのが牙有りどもだ』なんて、ジョークでも言えないだろう?」
上条「あぁそいつらも狩猟対象なのな。そう考えると人類の庇護者ってのも間違いではない、か?」
マタイ「牙有りども以外にも少々。まぁそこら辺は君に深淵を覗く覚悟ができれば、いつでも声をかけたまえよ」
上条「超嫌です。俺はもうお前らの抗争だけで精一杯なんだ……ッ!」
インデックス「――で、つぎは誰が行くんだよぉぉぉ……?」 ニチャアァッ
上条「ヤケになってますけど、今のは不可抗力じゃねぇかな。師匠が悪い訳でも、インデックスさんが悪い訳でもないってことで」
マタイ「そうだね。いっそこのまま出かけた方が佳くはないかな?幸い懇親会的なイベントだと思えば」
インデックス「やってもらうんだよぉ……!わたしの受けた屈辱をふたりも味わうといいんだよぉ……!」
上条「瞳が警戒色。○蟲だな」
マタイ「少年はさておき、私は酷い事にはならないと思うがね。人生経験もそれなりに積んでいるのだし」
上条「お、言うじゃねぇか。なら人生のパイセンに二番手を譲るぜ!」
マタイ「たかが、とは言わんがそこまでムキになるほどの事でもあるまいに」
……
レッサー『――ヘーイ、GG!”キリスト教 黒歴史”で検索プリーズ!』
マタイ「仕込みかね?まさかとは思うが」
レッサー『くっくっくっく……!ではないですな!先週と先々週のエリンギ様祭りでたまたま学園都市にいたんです――たまたま、だけにね……ッ!!!』
マタイ「君が登場してから急速に品位が低下しているよね?もう才能と言って差し支えがないぐらいに」
レッサー『こんな事もあろうかと上条さんをストーキングして正解でした!まさかこの手でジジイにとどめを刺せる日が来るとは!』
マタイ「懺悔だよね?流石に武力行為に出ようとするのであれば私もそれなり手段を行使させてもらうが」
レッサー『いいでしょうやりましょうさぁ早く!……って言ったらどうします?』
マタイ「君の顔面を掴んでコンクリートで摺り下ろす」
レッサー『聖戦○(セイント)の戦い方!?ジジイもう少し落ち着きなさいよ!?』
マタイ「私は大概落ち着いているがね。えぇと、彷徨えるイギリス人よ、汝はどうしてここへ?」
レッサー『いや何か楽しそうだったんで来ました!他意はありません!』
マタイ「お帰りは後ろだが」
レッサー『や、お待ちを!私にだって矜持ってもんがありますからな!ここで一発あなたもギャフン言わせたいです!』
マタイ「そういう主旨の部屋ではない。速やかに立ち去りたまえ邪悪なイギリス人め」
レッサー『その言い方ですとヘイトっぺぇんですが……ではお訊ねしましょうか!そもさん!』
マタイ「だから主旨が違う。質問があるんだったらさっさとして帰りたまえ」
レッサー『――で、結局十字教のルーツになってる神様ってなんなんです?』
マタイ「……」
レッサー『まぁあなた方の各部分は分かっているんですよ。原罪・死・復活の三現象ですな』
レッサー『特に死と復活は精霊信仰や多神教ではよくある話です。特に蛇の脱皮が死と再生のシンボルとして崇められて久しいですし』
レッサー『ただ問題になってくるのは「原罪」ですよねぇ。人が生まれながら背負う罪であり、同時に神様以外には払拭できない致命的な罪業』
レッサー『これは罪の実、と言いますか知恵の実を食べさせた蛇に起因することですが……やっぱり蛇神関係でしょうか?しかも男神の方』」
レッサー『妙に貞節を重んじたり、時には聖女を神の嫁として所望したり、どう考えてもその立ち居振る舞いが極東の蛇神に酷似してんですな』
(※異類婚姻譚、日本では『蛇女房』・『猿贅(むこ)入り』など)
レッサー『他にも加護を与えたはずの英雄、言い換えれば聖人たちもバッタバタ死んでますし。生贄がほしい神なんですかねぇ?ねぇどう思います?』
レッサー『私が考えているのはニカイア公会議で神・聖霊・神の子が三位一体とし、それ以外の信仰は全て異端だと切って捨てたってトコです』
レッサー『今まで聖書に明確な記述がなかったトリニティって概念を取り入れるのはどうして?また誰が何のために入れたんですか?』
レッサー『そしてそもそものお話――「本当に十字教は正当な後継者が後を継いでいる」んですか?聖書に記述のない項目までわざわざ入れて、しかも核にしてまで?』
レッサー『まぁまぁこういうお話しも中々あっちではできませんからね、さぁ時間はたぁっっっっふりありますからお話ししまょうか!』
マタイ「……レッサー君、悪いのだが懺悔室の壁へ背中を付けてくれないかな」
レッサー『背中?なんでですか、どっかのボスのように「背中と前が大差無い」ってロ×でイジるんですか!?』
マタイ「そういう話ではないが……くっつけてくれたかね」
レッサー『えぇまぁしろっちゅーんでしたらしますけど、つーかそもそもこの部屋クッソ狭いんで選択肢はないんですが』
マタイ「そうかね――で、君は浸透経(しんとうけい)というものをご存じかな?」
レッサー『あ、知ってます知ってます!別名ワンインチ・パンチで相手の体内へ気を送り込んでダメージを与えるっていう――ぶきゃばあぁぁぁぁぁぁっ!?』 ゴフッ
マタイ「うん、つまり――”これ”だね」
……
マタイ「……」 パタンッ
上条「あの、今殺人が」
マタイ「いや、大丈夫だよ?本気では撃ってないから、精々数日間固形物が消化できなくなるぐらいだ」
上条「正直『いいぞもっとやれ!』が7割で『なんだよもっとやれ!』が3割ぐらいなんだけど……」
インデックス「それだと10わりが『もっとやれ』ってことになるんだよ」
上条「てゆうか今の話って――」
インデックス「……」 フルフルッ
上条「えっと」
マタイ「次は君の番だね。健闘を期待しているよ?」
上条「い、いや待てよ!レッサーの下りはなかったことにするとして、俺が行く必要ねぇって!どうせこのままイタイことになって終わるんだからな!?」
インデックス「分かってるんだったらさっさと行くんだよぉ……?まさかこのままむきずでいられるだなんて思ってない、かも……?」
上条「本当に主旨忘れてんぞお前ら!?マウント合戦が逆マウントになっちまってんじゃねぇか!?」
……
上条「あー、なんだ?何かこう迷ってる人よ、悩みがあるんだったら言ってみてください」
刀夜『――女性関係で相談があります神父さん』
上条「聞きたくねぇよ!?親のそういうのって一番聞きたくない話だよ!?」
刀夜『当麻……?一体こんな所で何を……?』
上条「あー、ボランティアで少々?」
刀夜『……そっか。当麻も人のことを考えられる余裕が出てきたんだね、良かった……』
上条「しょーもないマウント合戦の最中だけどな」
刀夜『それでね、覚えているかい?ほら、当麻も知ってるあの子だよ。当麻が小さい頃に「ママ」って私達の知らないところで呼ばせてた彼女』
上条「いや続けんなや!?息子に女関係のトラブル聞かせてどうすんだよ!?」
上条「あと覚えてねぇけどそんな知り合いいんの!?人んちの息子にママとか呼ばせるって超ヤベーやつじゃん!?」
刀夜『何を言ってるんだい当麻!ヤベーんだったら母さんの方が上なんだからな!』
上条「なんで今俺怒られたの?そして母さんは父さんに一体何をしたっていうの?」
刀夜『それでその彼女がその、刑期を終えてだね』
上条「ねぇそれって人に話していい話か?俺居なかったら見ず知らずの神父さんの胃壁を破壊してたってことだよね?違う?」
刀夜『だから当麻も気をつけてほしい!まぁでも父さんの息子なんだから大丈夫だろう!』
上条「その血が最大の不安要因なんだよ。多分呪われたその血が」
刀夜『当麻――お前のその手は何のためにあるのか、よく考えてほしい』
上条「何のためにって……」
刀夜『力が欲しくて欲しくてたまらなくて。何年も何年も、それこそ生涯かけて鍛錬した力や努力の結晶』
刀夜『家族や友達、愛するもの全て犠牲にして築き上げた砂上の楼閣。とてもデリケートで脆いのだけれど、それでも必死に築き上げた結晶をだ!』
刀夜『そんな、血と涙でできた存在を!たったワンパンで台無しにする!』
刀夜『そのために当麻はそんな力を持っているんだよ……ッ!!!』
上条「なぁ父さんもしかして俺嫌いか?それとも誰か俺にそげぶされた知り合いとか居るの?人生台無しにしたとかだったら流石に謝るよ?」
刀夜『私にそんな力があれば……!』
上条「無理じゃねぇかなぁ。仮に異世界転生しても母さんは憑いてくるだろうし」
上条「あとオッサンが若返って活躍すんのはまぁそこそこあっけど、脳のシワまでフォーマットしたってパターン多いわ」
刀夜『当麻、覚えておきなさい――男は幾つになってもハーレムルートを探す旅人だってね……っ!!!』
上条「芸風レッサーに似てきたよな?まさかとは思うがあのアホに遺伝子入ってるってオチはないよな?」
刀夜『こんな経験はあるかな――いっぱいいっぱいをおっぱ×おっぱ×って言い間違える』
上条「なぁ父さん、父さんはいつになった中二の呪いから逃れられるの?あと俺の話聞いてくんね?」
刀夜『あぁまぁそういう訳で告知義務は果たしたから後は……自分の身は、ねっ?』
上条「父さんの方こそ気をつけてな?差し当たっては今から母さんにチクるから、今晩生き残れるか頑張って?」
……
上条「……」 パタンッ
インデックス「えーっと、なんて言ったらいいのかなんだけど……」
マタイ「まぁ、愉快なお父様だね。で、合っているかな?」
上条「……喫茶店」
インデックス「な、なにかな?」
上条「俺実は――商店街の隅っこにある、あんま人が入ってない喫茶店に興味あったんだよな」
インデックス「あー、あるんだよ。あのやってるのかやってないのか、びみょうなお店」
上条「やってんのは確実なんだよ。定期的に新メニューらしきチラシが貼ってあるし、夕方通るとコーヒーのいい香りがすっから」
上条「ただまぁ値段設定とか分からないし、一人で入るのも何か悪いし、かといってインデックス連れて破産覚悟で行くのも、だしなぁ」
インデックス「その言い方はどうかと思わなくもないんだよ。まぁそうだけど」
上条「だから宝くじでも当ったら、いつかあのお店へ行こう!チラシにあったハンバーグナポリタン食べよう!ってずっと思って――」
インデックス「とうま……」
マタイ「――うむ、では行こうか。今からランチタイムが丁度であろうし」
上条「で、でも先立つものが……!」
マタイ「折角だしついでに商店街でも案内してくれたまえよ。ランチぐらいはご馳走するから」
インデックス「――さっとうま!ぐずぐずしてないでハリーハリーなんだよ!ふこうなできごとはなかったんだから!」
上条「そう、だな……!俺たちは仲良くなった!それ以上は何もなかったんだからな!」
インデックス「そうなんだよ!またいさんのかんげいかいもしないといけないしね!」
-終-
(※以後、確率でマタイさんとエンカウントするようになりました)
○ボツになったシーン・懺悔室
レッサー『あぁ神様!私は罪深い人間です!どうかこんな私をお救いください!』
インデックス「おぉ汝は懺悔するんだよ。いと尊き方はきっと汝をお許しになるのかも」
レッサー『サンキューフォーエーバー!』
インデックス「単語のちょいすがおかしい。で、何やったんだよ?」
レッサー『みんな大好きゴブリンがスレイヤーする作品あるじゃないですか?ウクライナとヤクサと東欧で人身売買しているマフィアには何も言わないフェミニスト団体から目の敵にされている』
インデックス「余計な情報はいらないんだよ。で、あれがどうしたのかな?」
レッサー『あれの主人公が少年時代のやつがあるんですが――「あ、これゴブリンに少年が性的な意味で襲われねぇかな」と!』
インデックス「無理だよ、助からないよ?あなたはブッディズムのゴブリン界をずっと永遠に彷徨うんだからね?」
レッサー『あまつさえ今ではショ×陵辱モノばかり選んでる私が!なんて私は卑しいんでしょうか!?』
インデックス「新しい性癖を拡張したんだね。死ねばいいんじゃないかな?」
レッサー『助けて下さいシスターさん!私はこのままだったら次の夏コミに「ゴブスレさんゴブリンに負ける」ってタイトルで一本描かねばならないのです!』
インデックス「あなたは死んでも神の御許へたどり着くことはないんだよ。次に生まれ変わるのはフランス、次はイギリス、そしてまたフランスと」
インデックス「永遠にドーバー海峡を挟んで永遠に煽り合う運命なのです」
レッサー『そんなっ!?なんて楽しそうな未来じゃないですかっ!?』
インデックス「めんたるが強すぎるんだよ。ゴブリン並に強靱だから」