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Clock(trial)

姫神秋沙と学校怪談の夜

 
――とある高校 放課後

姫神「――ようこそ同志諸君。世界を応援する姫神秋沙の団。略してSOH団へ」

上条「語呂がまず悪い。てかそんなネトゲーなかったっけ?」

姫神「事前に調べてみた。SOHとはヘッダ開始だと書いてあった。意味は分からないけど略してソー団と呼んでくれると嬉しい」

吹寄「抑揚が皆無の発音で言われると、ただの”相談”にしか聞こえないわ」

姫神「ちなみにこの中に宇宙人や超能力者。未来人がいたら事前にコッソリ教えてほしい。コッソリ驚くから」

青ピ「……団員として活動するんやったら遅かれ早かれバレるんとちゃいますのん?」

姫神「じゃあ青ピ君は宇宙人役で」

土御門「異議あり!青いだけでこのアホにやらせるのは間違いだと思いますたい!」

青ピ「ボクもや!ボクは古○君役ちゃいますのん!?」

姫神「あの……その配役だと、私はこう、えっと……未来人のお姉さんってこと?」

上条「言葉を選ぶなよ。朝比○さんはただちょっと、なんていったら良いのか、まず特徴をネガティブじゃない単語で表現するのが難しいだけだろ!」

姫神「(大)は活躍するけど。(小)はちょっとこう。うん。パーティの良心的な?」

土御門「てか人数的にヤロー三人と女子二人じゃ役が余るんだにゃー。バランスが逆っていうか」

姫神「いや。特には考えてない。ロールプレイをするために集まったのではないと言っておく」

上条「最初にネタ振ったのは姫神じゃんか」

姫神「なんかこう。一時期流行ったヲタの挨拶みたいなもの。今を逃したらいけないような気がしただけ――ともあれ」

姫神「みんなに集まってもらったのは他でもない。世界をもっと楽しむべきだと私は思う。ソー団で」

上条「……なんだろうな。その響きは空気が抜けちまった風船のように、うん、緊張感が減る響きっつーか」

吹寄「楽しむ、の具体的には?」

姫神「悲しいことは起きる。それは仕方がない。生きていれば誰だって辛いことがある」

姫神「でもそれだけではない。辛いだけの世界じゃなくて。私にも味方がいる」

青ピ「エエ話やね……!」

姫神「クラスの中で話せるのはたった四人。そんな私でも生きていける」

上条「途端に切なくなったな!もっと頑張れよ!」

吹寄「いやあのね?『話したい』って子はそこそこ居るんだけど……」

姫神「沈黙。怖いよね。話してる最中にできたら卒倒するかも」

吹寄「って言い張って。中々ね」

上条「クラス分かれたらどうすんだよ。せめて少しぐらいは俺たち以外と喋った方が」

姫神「――そんな辛いとき。きっと私は思い出す。そのための良い思い出がほしい」

土御門「姫神って悟りすぎじゃね?ミクロな話にマクロな例えを出しても誤魔化されないにゃー」

姫神「なので今日は。放課後に集まって七不思議を探す企画を建ててみました。わー。ぱちぱちぱちぱち」

吹寄「超ローテンションで口だけぱちぱち言われても……」

上条「つーか七不思議?そんなんあったのか、初耳だわー」

吹寄「私も初めて聞いたわ。知ってた?」

青ピ「余所の学校なら、まぁ。この学校のは聞かへんわ。てかオカ研とかあったんかな?」

土御門「同好会だったらあるはずだにゃー。あ、ちなみに俺も知らんですたい」

姫神「それは仕方がない。私が作ったから」

上条・吹寄・土御門・青ピ「なにやってんだオイ」

姫神「『ないなら作ればいい』と。偉い人も言っているような気がしないでもない」

上条「作っても自慢はできないだろ。特に何か役に立つわけじゃないし」

姫神「と。いうわけで姫神怪奇クラブへようこそ。歓迎しなくもない」

上条「姫神さん姫神さん、タイトル変ってる。平成から昭和に巻き戻ってるネーミングセンス。あと人の話を聞けや」

姫神「なので皆さんには今から怪談を体験してほしい。そしてダメ出しを求む」

吹寄「ダメ出し?という体験できるようなものなの?」

姫神「うん」 コクコク

上条「……って言ってんだけど、どうする?」

青ピ「楽しそう、ちゃあまぁ楽しそう……ですやん?」

吹寄「果てしなく疑問系よね。私は心配だから参加するけど」

土御門「吹寄って怖いの大丈夫だったかにゃー?」

吹寄「得意じゃないわね。でも流石にこう、トラウマが残るようなキッツイのは来ないと思うし」

上条「いや意外と”闇”を溜め込んでそうな感じだし、洒落になんないような超おっかないの来たりしてな」

姫神「ふっふっふっふ」

上条「見ろ吹寄。本人は不適に笑ってるつもりなんだろうけど、中身がちょっとアレなのを知ってる俺たちにとっちゃ怖くもなんともない」

姫神「上条君はさっきから失礼だね。この私は昨日まで姫神とは違う。エンブリオ姫神」

上条「それだけで昨日どんなラノベ読んできたか分かったわ!ブギーがポップする名作だろ!」

青ピ「あれも息長い上に人気やんな。つーか、あれの結論って『癖(へき)は人であろうがなかろうが関係ない』っちゅー」

上条「言い方に注意しろコノヤロー?全シリーズ通して悪役貫いているポチョムキ○さん(ついてない)に謝れ!」

姫神「上条君その人スプーキ○さん違う。ギルティなギアのよく動く投げキャラ」

姫神「まぁ。不安になるのは分からないでもない。でも安心してほしい。全くのゼロから造り上げたんじゃない。元ネタがある」

吹寄「……まぁ付き合うのは良いんだけど。具体的にはどうすれば?」

姫神「私が配役と設定を決めてきたから。まぁ試しに一回やってみれば分かる」

上条「あんま怖いのは俺も嫌なんだけど……まぁいいや」



――『四人目』

姫神「『――これは。私たちが放課後に残って遊びをしていたときのお話です』」

上条「急にトーン変っ――ては、ないな。相変わらず淡々とした喋りだな」

吹寄「モノローグにツッコむな。無粋じゃない」

土御門「カミやんの場合、ツッコミ一つ間違えると死に直結する場面もそこそこあるんだにゃー」

姫神「『誰が言い出したのかは憶えていません。しかし特に誰も反対をせず。私たちはこっくりさんをすることになったのです』」

上条・土御門・吹寄「……」

姫神「『なったのです……!』」

上条「いや事前に教えとけよ!行き当たりばったりで進むのかこれ!?」

吹寄「やるけど……本当にするの?」

土御門「個人的にはやめといた方が良いと思うだにゃー。誰か呼ばれちまったら面倒だし」

上条「誰か?」

姫神「やっている体裁でいい。大切なのは感想だから」

土御門「じゃあ『こっくりさんこっくりさん』ってやったとして」

姫神「『すると。そう。するとです。教室にいたのは私を含めて三人。昔からの仲の良い友達です』」

姫神「『しかしいつのまにか――いえ。こっくりさんを始めた頃から。”四人目”がいたのです……!』

吹寄「ちょっ……!?これ本格的に怖――」

青ピ「『――へーいお嬢さん方!君らなにやっとんの?こっくりさん?あぁボクもやるわー!超得意やわー!』」

青ピ「『取り合えず一回帰してからボクも入れてぇよ!いや別に何も思惑なんかないって!女子と接触したいとは全然!』」

姫神「『あなたも気をつけた方がいい。こっくりさんをしていると現れる。”四人目”を……』」

上条・土御門・吹寄「……」

姫神「――っていう話なんだけど」

上条「うん、まず怪談じゃねぇよ。『放課後に残ってたらナンパされた気持ち悪い話』だよ」

吹寄「や、でも怖いといえば怖い……かな?うん!」

上条「あんま姫神を甘やかせるなよ!『ウチのガッコの能登麻美○』って陰で呼ばれるからって!」

土御門「それちょっとアレじゃないかにゃー」

姫神「私はいいとして。ツッコまれるのは心外かもしれない。何故ならばこのお話はノンフィクションが元になっているのだから」

上条「あぁそんな事言ってたけども、流石にこれは――ってどうした青ピ?」

青ピ「――あぁ!これやったのボクやったわ!」

上条「やっぱりお前かよ!?そんな気は薄々してたけどもう少し期待を裏切ってほしかったわ!」

青ピ「放課後に現れる夕○さんを探してブラブラしとったら、女子三人がなんややってたたんで、声かけるのは自然かなぁって」

上条「お前いい加減にしとけよ!姫神がキャッチできるぐらいに広まってるんだったら、また俺たちの評判が落ちるだろ!?」

土御門「そうだぜぃ!姫神が分かるぐらい広まってるんだったら相当広まってるっつーことだにゃー!」

姫神「これは遠回しにイジメなのかな?いやまぁ。人見知りだって自覚はあるけど」

吹寄「姫神さんの場合外見が厳しそうなのに、中身はフワっとしてるからキャラがこう。うん」

土御門「あー、でもナイスプレーかもだぜぃ。乱入して止めるのが正解」

上条「そうなのか?」

土御門「素人がやっていいもんじゃない。集団ノイローゼやパニックになったり、精神がまだ不安定な子供はしない方が賢明――の、上に」

土御門「まかり間違って”来ちまった”場合、素人じゃ手のつけられない事件に発展する。そんなのはごめんだにゃ−」

青ピ「よっ!流石は土御門!ゲームで多いオンミョージと同じ苗字の一般人!」

土御門「そんなに大したもんじゃないぜぃ。昔はブイブイ言わせてたけど本家はもうダメダメだにゃー」

上条「そうたぜ。土御門が本気出せば探してる相手がどこにいるのか分かるんだからな!死にそうになるけど!」

吹寄「メールで待ち合わせすればいいじゃない」

土御門「カミやんってもしかして俺のこと嫌いか?それとも海で殴り返したことまだ怒ってるの?」



――『音楽室の怪』

姫神「『――これは。私が図書室から帰り道の話。その日は蒸し暑い梅雨の日だったような気がする』」

姫神「『髪が跳ねて嫌だな。とか。今日も特別な出会いはなかったな。とか。まぁまぁやくたいもないことを考えながら帰り道を急いでいた』

姫神「『その日はちょっと気分を変えたかった。毎日梅雨空だったし。何か目先を変えたいな。という気持ちで音楽室の方を通ることにした』」

吹寄「あー、あっち通るよりも階段で下へ降りた方が近道なのよね。部活が終わっちゃうと人気も無くて怖い――」

吹寄「――っていう意見もあるけど!人によってはね!」

上条「いや、無理して付き合わなくても……どうせネタ企画なんだから本当に怖いわけはないんだからさ」

姫神「『私が廊下をテクテク歩いていると。ポロロンポロロンと物悲しいピアノが聞こえてきた』」

青ピ「てかまた何か独特の擬音表現……」

姫神「『SOMEONE ELS○だった』」

上条「アニソン!?どうせアニ研か誰かが練習してたってオチだろ!?」

土御門「最近はアニメ見るからってアニヲタだとは限らないぜぃ」

姫神「『私も好きな曲。テンションが少し上がってどんな人が弾いているのか興味が出て来た』」

姫神「『もしかしたら新しい友達ができるかもと。音楽室の前まで来てもピアノは続いていた』」

姫神「『でも。いきなり入るのは失礼かも知れない。そう思った私はノックする事にした。コンコン。コンコンと』」

姫神「『すると今まで軽快に流れていた曲がピタッと止まった』」

上条「……あれ?この展開、もしかして……」

姫神「『おや?と思って私はドアを開けようとした。ガチャンと鍵が閉っていて開かない』」

姫神「『もう一つの出入口へ回っても同じ。ガチャガチャと鍵は閉ったままだった』」

姫神「『流石におかしいと考えて。中をそっと覗いてみたら――』」

姫神「『――誰も。いなかった』」

吹寄「ちょっと待って!?これって本当に怖い話じゃないの!?」

姫神「最初に怖いと断った。よね?」

青ピ「ま、まぁそうやけども!出だしがダラッダラやったから全部身内オチかなーって考えてたら急に怖いわ!」

上条「(おい)」

土御門「(俺の専門じゃない。少なくともここ、音楽室からは何も感じない)」

吹寄「こ、これも姫神さんが体験した話なの?ジョークじゃなくて?」

姫神「うん。完全なるノンフィクション」

上条「つってもトリック、つーか誤解があるとか?実は中に生徒が居たんだけど、勝手に弾いてて怒られると思ったから隠れた、みたいな?」

土御門「いや、無理なんだカミやん。特別教室の鍵は外側からしかかけられない」

上条「なんでだよ」

土御門「アホが勝手に忍び込んだりイタズラしないように、教師の許可がない場合は原則入れないんだ」

上条「あぁ確かに。実際に誰かが弾いてたしなピアノ」

姫神「――さて。この謎を少年所持探偵団はどう解く?」

上条「もっとこう、アレだ。企画と主旨を一本化しようぜ?もう着地点がどこに設定しているのかも分からない」

吹寄「……っていうことは。幽霊的じゃない何か、というか誰かがやったってことよね?」

青ピ゜常識的に考えれば同じ棟の特別教室開けて、ベランダ伝って移動したんちゃいますの?それやったら鍵が閉ったまんまやって話もあり得ますやんか」

姫神「中間考査直前。だから部活動は禁止されていた」

上条「んー……分かんないな。もっと手の込んだトリックがあるって事?」

姫神「でもない。捕まえてみた」

上条「捕まえる?誰を?」

風斬「ど、どうも」

上条「ルール決めろよオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!?何お前アリとナシの境軽々踏み越えてんの!?」

上条「タイム!審判にタイムを要求する!」

姫神「上条君それはマズい。その子はまだ自分が死んだことも把握してない地縛霊。些細なことで悪霊かする可能性が」

上条「じゃあ本人の目の前で言うなよ!」

姫神「何回も言ってる。この子が幽霊で消えたり現れたりできる。解決」

土御門「あー……姫神?よく考えるんだにゃー」

姫神「はい?」

土御門「考えてみろ。オバケなんている訳ないだにゃー?」

姫神「いやでもここに」

風斬「だから違いますって!」

姫神「心配ない。上条君がボディに一発くれればスッキリ成仏する。と思う」

風斬「ホントに消えちゃいますよ!?しかも冤罪なのに除霊方法が妥当すぎて!?」

土御門「だから人の話を聞くんだにゃー。その子はきっとアレだぜぃ、能力者だぜぃ。だろ?」

風斬「え、えぇまぁ。はい、そんな感じです、よ?」

土御門「だから自由に出入りもできるし。あ、ほら!手に荷物だって持てるぜぃ!だからピアノだって弾ける!」

姫神「……」

土御門「っては、どう?」

姫神「……なんという説得力。ごめんなさい風斬さん。私の勘違いだったみたい」

風斬「い、いえそれは別にいいですよ。気にしてはいませんから」

姫神「仲直りの印に握手。あ。上条君とも一緒に」

風斬「反省してませんよねっ!?それってまだ疑ったままってことですもんね!?」

青ピ「それはそれとお嬢さん、よかったらボクと一緒に朝までWorkin○について語り明かしませんか?」

風斬「ちょ、ちょっと今日は用事があるので……」

上条「どうしよう……幽霊的なものが揃っちまった……しかもこれ続くのか」



――うしろに立つ少女

姫神「ファミコン探偵倶楽○ようこそ。鏡の中を調べるといい」

上条「女の子の死体隠されてる場所だろ。つーか誰が知ってんだ超オールドゲームのアドベンチャーだなんて」

姫神「ホラーゲームのはしり。そういえば上条君も許嫁を殴る役がハマっていた。かもしれない」

上条「俺であって俺じゃないけどな!つーか俺じゃなくてもオールウェイズ日本人形抱いた許嫁はちょっと引くわ!」

土御門「気になる子は”祝姫 阿部敦 童貞”でググってみるんだぜぃ!」

上条「最後のワード関係なくね?ホラーゲームにその属性関係あるって話あったか?」

青ピ「非処×ヒロイン、興奮するやん?」

上条「違うからな!昔の話であって現代とは!」

吹寄「さっきから一体何の話を……?」

姫神「ここではないどこかの話をしている。きっと転生する可能性はゼロではないかもしれない」

上条「あっちとブッキングしたらヤベーよ。青ピ辺りの内面世界は放送禁止だろ」

青ピ「男やったら腹に一つや二つ、隠してるモンあるとちゃいますかねぇ!?」

土御門「そうですにゃー。現にカミやんも風呂場の取り外しできる屋根裏に」

上条「余計な事は言うな。言うなったら言うな」

姫神「気になる。業の深いものが隠してありそう」

土御門「最初に数枚入れたっきり貯金ができなくなった貯金箱だにゃー」

上条「だって仕方がないだろ!?基本的にお金下ろしたらその日の内に全部使うんだからさ!」

吹寄「別に使う必要は。そして金融機関にあるのも貯金箱にあるのも、ある意味同じは同じよね」

姫神「経済的には全く違う。グローバルなアクティビティでセンシティブな。こうクリエイターな感じ」

吹寄「ちょっと何言ってるのか分からないわよね」

土御門「補足しておくと、タンス預金は死に金だけど金融機関に預けておけば運用しなきゃいけない訳で」

土御門「金利が低いとか言われてるが、逆に銀行は100万円預けられたら100万円プラス金利分を強制的にいつでも引き出せる準備をしなきゃいけない……!」

青ピ「そこだけ聞くとエラ無理ゲーっぽいけども、それって銀行の通常業務であって個人とはちゃうような……」

姫神「お年玉を預けると返ってこないお母さん銀行よりは良心的」

上条「姫神……お前」

姫神「うん?――――――あぁ。忘れていた」

上条「天国のお母さん、あなたの娘は不思議キャラをこじらせてアホになってきます。どうすればいいでしょうか?」

姫神「上条君。それは違うよ。村の皆もだって私がいつまでも悲しむのはよくないと思っている。きっと」

上条「天然なんだか気を遣って言ってくれるのか、淡々と無表情で話すから分かんねぇよ……!」

姫神「最近は吹寄さんからもらったパストアップエクササイ――もごもごもごもご」

吹寄「えーっとなんでもないのよ!別に通販が間違って届いちゃったらしくて!」

青ピ「それ以上大きくしても揉」

バスッ!!!

青ピ「……」 パタンッ

吹寄「……ふうっ、疲れてたのね。よく眠っているわ」

上条「それなんて殺人ボディブロー!つーか俺たちはいつもあんなのを喰らっていたっていうのか!」

姫神「それは仕方がない。『ラッキースケベ等価交換の法則』というものがある」

上条「その呪いどうやったら解けるんですかコノヤロー」

土御門「おおっと姫神!その法則は時代後れ、今じゃ『ヤレヤレまたやっちゃいましたかテンプレ』が流行りなんだぜぃ!」

上条「やめろ。俺の個性を周回遅れみたいに言うな」

姫神「そうだよ。上条君はシリカゲルの無味無臭の消臭剤みたいな個性じゃない。例えるならば保冷剤?地球に優しく。氷らせたペットボトルで代用可能」

上条「なぁ知ってるか姫神。その二つって実は中身一緒なんだぜ?てか知ってて言ってんだろ?」

土御門「てかカミやんがクール()て。対極にあるポジじゃないかにゃー」

上条「最近は、うん。最近はね、ツッコミの量ばっか増えてきててね。俺も冷静になんなきゃノリツッコミでヤられる可能性もだな」

土御門「あぁだからパチモン出したん?」

上条「言葉を慎め、なっ?あれ『脅迫と人質とって強制してる時点でガワだけのニセモンだろ』って思ってたとしてもだ!」

姫神「ウサギとカメが駆けっこをして。カメが勝ったら別のカメが出て来て『勝ったのは俺だぜ!俺ならもっとスマートに勝てたんだぜ!』って。ちょっと意味が分からない」

土御門「……あれ?ってことは誰もカミやんの活躍なんか見てなくて、ガワだけ同じ人の上位互換が出ればそっちに乗り換えるってこと?」

上条「俺の苦労は全否定か。つーかアレ俺が負けて入れ替わったとしても、別に過去が変る訳じゃないんだから意味なくね?」

土御門「カミやん’(ダッシュ)がマジモンのカミやんだったとしても、全てのトラブルには姿を見せず終わってからノコノコ現れてどーすんだっちゅー話だゃー」

土御門「『心理掌握』が出張ったとして、仮に解除しちまったらイギリス清教からは暗殺者の嵐。ついでに”首輪”がなくなったらより強固な鎖が用意されるに決まってる」

姫神「というか上条君はさ。あなたと同じ別の人が居たとして。殺してまで入れ替わろうって思うのかな?大勢の人を巻き込んでまで?」

上条「俺はどっかの蛮族か。まず原因探って落とし所見つけて話し合うのが先だろ。まともな状況じゃねぇんだから」

上条「スワンプマンだっけ?そもそも俺が本物じゃないんだったら、髪切って名前変えて生きるのも仕方がねーと思うんだ」

土御門「そういった意味で第五位もねーちんもオモックソ株下げたにゃー。『本気出してないんだからいいんだもん☆』はカミやん相手にテンドンしまくって価値落してるぜぃ」

上条「よく分かんないんだけど、おっぱい大きいからいいんじゃね?」

姫神「大丈夫。上条君の右手には謎の八大竜王()が宿っている……ッ!」

上条「それもう暴力だよね?こう、『右手に封じられた邪神が!』的なノリだよね?」

土御門「でも一匹足りてないんでしょ?ツンツン頭よりおっぱい大きい子の方がいいって」

上条「そりゃ俺だってそうだよ!俺だって生まれ変われるんだったら女の子の右腕に宿りたいよ!」

姫神「発想が猟奇的かな。むしろ右手に自我が宿ったら迷惑極まりない」

吹寄「話が進まないわ。いい加減になさい」

上条・土御門・姫神「ごめんなさい」

姫神「それでまぁ話を戻す。ここから校門が見えるよね」

上条「まぁ昇降口だしな」

姫神「あの校門には実は悲恋がある。これは本当にあったかもしれない話」

吹寄「姫神さん?作ったって言ってなかったかしら、作ったって?」

姫神「『ある女の子が恋をした。それはとてもありふれたものだったと言える』」

姫神「『そして勇気を振り絞って告白して。恋人同士になるまではとても幸せだった――そう。”だった”』」

上条「過去系、だよな」

姫神「『運命の悪戯か。神様が嫉妬したのかは分からない。ほどなくして男の子は亡くなってしまった』」

姫神「『するとその日から彼が通っていた学校の校門では不思議な現象が起きるようになった』」

姫神「『朝でもなく。昼でもなく。夜でもなく。放課後の下校時間に”それ”が聞こえる』」

吹寄「そ、それ?」

姫神「『生徒が校門から出ると後ろからこんな声がする――”A君?ううん。今来たところ。全然待ってないよ”』」

姫神「『”それより聞いてよ。今日ね。授業中にこんなことがね”――と。普通の会話が』」

姫神「『どんなカップルなのだろう?そう考えても振り向かない方がいい。何故ならば』」

姫神「『振り返っても。誰の姿も見えないのだから』」

吹寄「ちょ、ちょっと怖いわね!ちょっとだけだね!」 ギュッ

土御門「異議あり吹寄!腕を抱えるにも俺・姫神・カミやんって選択肢の中からどうしてカミやんを選んだんですかっ!?」

上条「はいそこやかましい金髪グラサン。どうせ俺はこの後、正気に戻った吹寄から『な、何してるんだ貴様!』ってビンタ受けるんだからな!」

姫神「――という感じ。では検証してみよう」

上条「オイ待てこれ全部作りだろ!?なんでだよ!?」

姫神「いや。そうでもなくて。これは本当に私が体験した」

上条「一気に出オチ感が酷くなったな。そして芽生える自作自演疑惑」

姫神「そういうと思ったので今回は男子だけで検証してみてほしい。私はノータッチ」」

上条「姫神が引っ込んでもレアモンとエンカウントする率は変んないと思うんだ。だってこの街ヘンタイばかりだもの」

吹寄「早く行ってきなさいよ!待っててあげるから!」

土御門「カミやん」

上条「あぁ分かってる。トイレだろ?」

土御門「分かってねぇよ。つーかまぁいいけども。青ピがまだ伸びてるけど。ま、いっか!青ピだし!」



――校門の中

土御門「――って来たけども。本当に聞こえると思うか?」

上条「姫神は嘘は吐かないだろ。ジョークは別にしても」

土御門「……いやあの、淡々としてるからあんまり見分けは……」

上条「そうか?最近は『あ、爆笑してるな』ってのは何となく分かって来たけど」

土御門「それ分かるのカミやんだけど思うぜぃ……ってまぁ嘘はともかくとして、何かと聞き間違えたとか」

上条「何かってなんだよ、何かって」

土御門「話のキモとしちゃ彼氏の方の声が聞こえないって事だろ?だとすれば」

上条「正直的に考えればケータイで喋ってた、か。でもそれで隠れる意味ってあるか?」

土御門「それこそ見間違えじゃね?表で堂々と会話してんのに、姿を消すだなんて」

上条「まぁ、確か」

土御門「――しっ!カミやん!」

少女の声『…………!……――!』

上条「(マジか……校門の向こう側で、誰か喋ってんな)」

土御門「(会話してっけど……一人だな。ケータイ使ってんのかもだぜぃ)」

上条「(――いや、違う!そうじゃないぜ土御門!)」

土御門「(カミやん……?)」

上条「(この声は確か――)」

御坂(少女の声)『――あれ?偶然よね!こんな所で出くわすだなんて!』

御坂『偶然と言えば丁度いま総合スパリゾートのペアチケット持ってるんだけど、どうかな……ッ!?』

上条・土御門「……」

御坂『……いや、これはちょっとアレかー?偶然にしてもおかしいかな……?もう少し、こうランダム的な要素を重視すべきよね……』

御坂『――ちょっと探しちゃったじゃない!ほら行くわよ!期限ギリギリのチケットなんだからね!』

御坂『あー……アリね。約束なんてないんだけど、あいつの善意につけ込む形で実は約束してましたー、的な?』

御坂『でも待って?そういうのは良くない、わよね?嘘は嘘だし……』

御坂『――手を貸してほしいの!あたしの未来が(※人生設計的な意味で)かかってるのよ……ッ!』

御坂『……いいわ……!カンペキよね!』

土御門「(あの……上条さん?上条当麻さん?)」

上条「(言わないでお願い)」

土御門「(これ、つーかこの子カミやんのオプション(ストーカー)じゃね?)」

上条「(言わないでって言ってるのに!メ○のバカ!)」

土御門「(ジブ○アニメでボケられても。俺は薄い胸が大好きだけど)」

上条「(なにそれコワイ)」

土御門「(てか姫神の怪談は一応真実部分があったんだが……これはこれでコワイんですけど)」

上条「(……俺たちは何も見なかった。見なかったったら見なかった、いいな?)」

土御門「(それよりどっちみち後で校門通るんだけど、どうすんの?)」

上条「(なぁ、土御門知ってるか?――この学校には裏口があるって事、な)」

土御門「(気をつけるんだにゃー。そっちの方が変なの出るんだぜぃ)」

上条「(フラグ立てんじゃねぇよコラ)」



――放課後の傀儡師

青ピ「金田○やん。じっちゃんの名にかけるやつですやん」

姫神「あれは『放課後の魔術師』。キャラは怖い感じなのに犯人がちょっとガッカリサラリーマン」

土御門「『犯人たちの事件○』を読むとウザいワカメが間接的に何人か殺ってるっちゅー話だぜぃ」

姫神「天パとメガネは大抵悪キャラor嫌味キャラ。でもアクが濃いのはいいこと。何より普通じゃない」

吹寄「メガネも天パもただの個性だと思うわ。別に呪いでも何でもなくて」

青ピ「てか放課後の傀儡師?魔術師違くて?」

姫神「お帰りなさい青ピ君。うんまぁ。魔術ではなく傀儡」

吹寄「傀儡、っていうと人形の方よね。サブカルの影響で書けはしないけど読める単語」

土御門「一応歴史的には人形芸をして漂泊する集団のことを示すにゃー。まぁ他にも春売ったりしてんだけど」

青ピ「その話、詳しく!」

吹寄「アホはほっといて人形浄瑠璃とかの原型になった人たちよね」

土御門「原型っていうかルーツっていうか、まぁその子孫だ。えびす講やえびす舞、そもそも”えびす”って来訪神の概念を作ったのも連中だって説がある」

土御門「反面特定の集団とは仲が悪くて現代でも――おっとこれ以上は俺の口からは言えないんだぜぃ。だって面倒だもん」

吹寄「本当に意味が分からない。まぁでもそんな感じの怪談」

青ピ「さっきのはボク寝てましたから分からなかったんやけどね、また姫神センセの勘違いちゃいますんのん?あ、聞き間違いか」

土御門「あぁ一個前のは完全なまでに錯覚だったけどな!疑問を挟む余地かないぐらいに!」

姫神「土御門君がそういうんだったらそうなんだろう。賢い私は空気を読んで何も言わない――例えそれが」

姫神「可哀想な地縛霊(その二)を。そっと成仏させてあげた優しい男子二人がいたことを。決して忘れない」

土御門「超勘違いしているですたい。てかその一も実在性存在だって話がついたろ」

姫神「まぁそんな感じで私が体験した怪談です。ガチシリーズです」

吹寄「……私の知らないところで謎の冒険してるのね。というか明らかに一人足りないんだけど、それはいいの?」

土御門「しっ、吹寄。多分ネタのためにスタンバってるカミやんはいないものとして扱うんたぜぃ?」

吹寄「バラしてるわよ。誰かとは言わないけど」

姫神「『あれは……私が放課後。教室へ来た時の話』」

青ピ「てか姫神はん放課後徘徊率高くありしまへん?それが逆に新しい怪談生んでるんちゃいます?」

土御門「本人目の前にしても言うけど、薄暗い校舎を歩いているだけで人によっては『夕○さぁんっ!?』とビビる可能性も」

吹寄「やめなさい。姫神さんを黄昏の乙女にしないで」

姫神「『教室の入り口まで来たら話し声が聞こえた。これはよくない』

土御門「よくない?」

姫神「『クラスにいるのが話したことない人だったらどうしよう。そう考えるだけでパニック』」

青ピ「なんて悲しい引きこもり思想……!」

姫神「『時間を潰すべくいつものにように校内を徘徊しようと思った。けれど。しかし。私は気づいてしまった』」

吹寄「ねぇいつもって言った?いつもって?」

土御門「……もう流れてるかもしんないにゃー――『放課後に彷徨う地獄少○』」

青ピ「他人事やったら盛り上がれるんやけど、実体知っとぉから乗っかれへんな!」

姫神「『私がこっそり覗いた教室には一人。しかし声は二人分』」

吹寄「……さっきと逆よね」

土御門「ケータイをスピーカー……に、する意味は無いか。しないことはないだろうけど、サシで話すのにバッテリーの無駄遣いだにゃー」

青ピ「待ってぇな?これってアレやん?つーかいま居ない人が新しく開発した癖(へき)を考えたら」

姫神「――さ。そんな訳で現場に着いた。真実を確かめる勇気は――あるかな?」

青ピ「いやそんな。アドベンチャーゲームでネタバラシ前に出てくるヒロインみたいな台詞言われても」

吹寄「そして大抵『うん、伏線張ってあったし知ってた』扱いよね」

少年の声?『――――!』

少女の声?『…………』

青ピ「(まぁ……おるわな。そりゃあな)」

吹寄「(まぁいるわよ。今更って言うか、消去法でいったら一人しか)」

上条(少年の声?)「――だからおかしいと思ったんだよ俺は!だってオティヌスが居なかったんだから『あれ?』って!」

上条「他にも薄い本的なアレや暇人が書いてるSSじゃないんだから!まさかここで安易に名前呼んだりはしないだろうって!」

オティヌス(少女の声?)「だから言っただろう。乱入するにしてももっとタイミングを遅らせれば、メインヒロイン全員が非処×という大惨事になるって」

上条「ウルッセェよ!?誰が得するんだよそれ!てか手を出すのが早い俺なんて俺じゃねぇよ!DTなめんな!」

オティヌス「物理的に舐める機会がなかったからDTなんだろ」

上条「女の子が下ネタ言うんじゃありませんよ!てか俺も……あぁないわ!そういえこの業界長いのにな!」

姫神「なんと怖ろしい。放課後の傀儡師……!」

吹寄「いつもじゃない。朝のホームルームから夕方のホームルームまで普通に見られる光景じゃない」

上条「というかパチモンが変化した俺と入れ替わってるっていうシーンをやりたかっただけじゃね?」

土御門「おいカミやん。全体的にギャグだからって偉い人を批判するのはやめるんだ!誰が見てるか分かんないんだぞ!」

吹寄「ちょっと何言ってるのか分からないけど、慎んだ方がいいと思うのよ。誰も彼も心の広い人ばかりじゃないって」

青ピ「――ふっ、そこまでやでカミやん!そのスキルがカミやんの専売特許やと思うなっちゅー訳ですわ!」 ドンッ

上条「おいまさかお前――それはっ!?」

青ピ「1/6スケールのノー○ですわ!」
(※超可動ガール1/○)

ノー○『……』

青ピ「……あれ?喋らへんな……?」

吹寄「バカなのかな」

姫神「上条君のネタに対抗して持参するのは評価してあげよう」

ノー○(※土御門裏声)『そんなことないですよ、青ピさん!』

青ピ「の、ノォォォォォォォォォォォラーーーーーーーーーーー○っ!!!奇跡が、奇跡が舞い降りたでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

上条「納得すんなよ。ノー○さんそんな図太い声で喋んないだろ」

姫神「まるでアヌビ○神のスタン○使いのよう。それはそれで凄い事」

吹寄「それもやめなさい。なんていうかこう、ホンモノとうり二つだから!」

ノー○(※土御門裏声)『青ピさん、あの人を倒せば超可動フィギュアが増えますよ!』

上条「ノー○はそんな事言わない!」

青ピ「――カミやん、ボクたちもそろそろ決着をつける時が来たようやね。覚悟!」

上条「おーうやったらぁ!お前の墓には『フィギュアに殉死した男』って油性ペンで書いてやるよ!」

姫神「まぁまぁ二人とも。ケンカは良くない。男の人同士のケンカ(※性的な意味での)は好きだけど」

上条「それケンカ違う。ただイチャついてると脳内補完されているだけ」

姫神「上条君だってあると思う。女の子同士が仲良くしていたらって」

上条「バッカ言うなよ。それは脳内じゃなくて現実に仲が良いんだよ!」

吹寄「現実に戻って来いこのバカ」

姫神「まぁ騒ぐのは良くないよ。だって来ちゃうから」

上条「来ちゃう?誰が?」

姫神「……ううん。学校七不思議の一つ――」

姫神「――『場違いな女の子』が」



――場違いな女の子

姫神「『ぱたぱたぱたぱた。ぱたぱたぱたぱた』」

姫神「『放課後。遅くまで残っているとそういう足音が聞こえる。ここは高校なのに。明らかに歩幅が短い子供が駆けっこするような音が』」

………………

姫神「『でも。聞こえたら注意しなければいけない。帰り支度を早く済ませて足早に下校した方がいい。じゃないと』」

姫神「『――捕まられちゃうから』」

上条・土御門・青ピ・吹寄「……」

姫神「……なに?」

吹寄「捕まったら、ど、どうなるの……?」

姫神「さぁ分からない。誰も捕まった人がいないから」

…………

上条「……分かってるか?」

土御門「当然。近づいて来てる」

吹寄「ちょ、ちょっとやめてよ!?そんな冗談は!」

青ピ「そ、そうやって!驚かすにしても不謹慎やよ!」

姫神「まぁまぁ気にしない。仮に怪談が本当だったとしても怖れることはない」

吹寄「そうよね!早く帰ればいい――」

……ぱたぱたぱたぱたっ……

青ピ「――ってホンマに聞こえてますやん!?これって――」

姫神「あ。もしかして手遅れ?なら仕方がない。私たちが怪談の一員となってずっと放課後遊んでいられる」

吹寄「そういう問題じゃないわ!?」

ガラッ

小萌「――はーい放課後まで残っている悪い子のみなさーん!早く帰るのですよー!」

青ピ・吹寄「……ハイ?」

上条「だと思った」

小萌「なんですかー、先生をオバケみたいな顔で見ても内申点を下げるぐらいしかしませんよー?……あ、一人は下げようがないですけど」

上条「待ってくれ先生!その一人は誰かはっきりさせてほしいです!?」

吹寄「姫神、さん……?さっきのは……?」

姫神「冗談に決まっている。あ。でも噂があるのは本当。女の子の幽霊が出るんだって」

吹寄「いや、あの、普通に超怖いんだけど……」

姫神「まぁそんな感じで姫神放課後探検隊は終わりとなります。お付き合いありがとうございました」

上条「だからタイトルが……うん、まぁいいけど」

土御門「よっし帰ろうぜぃ。小萌先生に迷惑だしな」

青ピ「あコラ土御門!お前また一人でエエカッコしやがって!」

吹寄「……なーんかドッと疲れたわ。ほら、帰るわよ貴様も」

上条「あ、ごめん。俺はホラ、えっと……ストーカー的なアレを避けるために裏口から帰るわ」

姫神「そう?それじゃお疲れ様でした。さよなら」

上条「うん。また明日なー」



――anonymous

上条「……しっかしなんか疲れたよな。ネタ仕込みに付き合ったり、てか例外なく身内じゃねぇか!あぁいや最初っからそんな気はしてたけどもだ!」

上条「まぁ残暑厳しい中では楽しかったけど。できれば背筋が氷る系の、本格的なJホラーが聞きかった」

オティヌス「……」

上条「って、今日殆ど喋ってないけどどうした?腹でも壊した?」

少女の声『――君はあれだね。もう少しデリカシーを持ちたまえよ』

上条「って余計なお世話だよ。俺はいつも同居人に『とうまはでりかしーあるよね!』って言われ続けてんだからな!」

少女の声『確実に皮肉の類だと思うんだが、まあ君がそう思うんだったらそうかもしれないね』

上条「てかお前誰――あぁ!クラスメイトの」

上条(階段の踊り場からこっちを見ていたのは同じクラス……名前なんだっけ?カチューシャを付けた女子だ)

上条(部活終わりなのかSPALDINGの大きなバッグを持ってる。何の部活だろ)

上条「おー、お疲れ。今帰りか?」

カチューシャの少女(少女の声)『帰りか、と問われれば今出たばかりだよ、かな』

上条「まぁなんだっていいけど。校門から帰ればいいのに」

カチューシャの少女『それは君も同じだろう。いつものお友達とはいいのかい』

上条「いや俺は一身上の都合っていうか。何か急に始まった姫神・ザ・ワールドに巻き込まれて」

カチューシャの少女『それで怪談廻りをしていた、と』

上条「あぁ。てか見てたんだったら一緒に来ればよかったのに。あ、でももしかして部活中だったか?だったら騒いで迷惑かけちまったかな」

カチューシャの少女『ああ、それは心配いらないぜ。君たちが騒いでいたのは”ここ”じゃなかったから』

上条「……うん?」

カチューシャの少女『なんだい。気づいていなかったのかい。他の生徒達と一度もすれ違ったりしなかっただろ?』

カチューシャの少女『あれは君たちがどこかへ行ってしまったのか、ぼくらがここには居なかったのか。はたまたその両方か』

上条「それって」

カチューシャの少女『――なんて、ね。たまには冗談も悪くないかもしれない』

上条「……勘弁してくれよ。異世界とか別の世界軸とか、そういうのはもうウンザリなんだ」

カチューシャの少女『そうかな。世界の終わりなんてのはありふれたものなのかもしれないぜ?』

上条「ご当地キャラみたいに言うなや」

カチューシャの少女『でもない。この街で研究している”能力”なんかがまさにそうだろう』

カチューシャの少女『考えてみたことはないかい?スイッチをオンオフするように世界を滅ぼせるような能力者が登場する、とかね』

上条「ベクトルなんて概念を操作するやつが居るんだから……絶対、ってことはないのか。それ」

カチューシャの少女『240――いや230万人の分母の中ですらそれだ。これ以上増えたら危ないんじゃないのか、と』

上条「……誰でも世界の敵になる可能性がある?」

カチューシャの少女『今更だけどね。学園都市ができる前からずっと脅威はあったし、いまもだね』

上条「いや――考えすぎだろ、それ」

カチューシャの少女『君にとっては違うのかな』

上条「”全員が例外なく世界の敵になる可能性を持っている”んだったら」

上条「”全員が例外なく世界の味方になる可能性もまたある”ってことだな」

カチューシャの少女『……なんだって?』

上条「もし、もしもだ。何か変な能力や能力じゃない力なんか持っちまってだぜ?持たせられたのかもだけど」

上条「クラスで隣に座ってる野郎がさ?授業中にたまたま世界を滅ぼすような能力に目覚めたとする」

上条「でも、なんかの拍子で使おうとしたら『何やってんだボケ』ってツッコめばいいと思うんだ」

カチューシャの少女『……』

上条「そもそも別に世界を救おうだなんてご大層なことは誰も考えてないと思うんだよ」

上条「あぁいやバカにするつもりはない。そういう人たちを否定はしないし、知り合いにも何人か居るしな」

上条「ただ俺たちの日常、友達や家族を守ろうっていうだけで、そんな単純な理由だけで人は戦える――」

上条「――お前が見てきた中にはそんな連中はいなかったか?」

カチューシャの少女『居たね。けれど全てではないし、真逆もあった。身内を助けたり愛しいもののために敵になろうとしたりね』

上条「でも」

カチューシャの少女『うん』

上条「俺たちの世界が滅びてないって事はだ。世界のどこかで敵がいて、そいつらと戦うなりツッコミ入れるなりしてきた連中が勝ち越して来た、って証明じゃないのか?」

上条「一度でも負けてたら、って意味でさ」

カチューシャの少女『夜空で輝くシリウスとこの星の距離は約8.7光年。つまり君たちは8年と少し前の光を見ているわけだが』

カチューシャの少女『本当にいまこの時間も、シリウスは宇宙に浮いているのかな?』

上条「実は大爆発して無くなってる、って可能性もあるのか」

カチューシャの少女『さて。ぼくは知らないけれど、もしかしたらもう何度か負けているのもしれない――』

カチューシャの少女『――誰かが恣意的に”やり直した”のかも?』

上条「……」

カチューシャの少女『……』

上条「だとしたら、ソイツは世界の敵か?」

カチューシャの少女『さて。それを考えるのは僕の役目ではないからね。どうしても自動的で受動的なのさ』

上条「おい、上手いことは言えてねぇからな」

カチューシャの少女『ただ少しばかり慈悲と大いなる傲慢を承知で、世界の敵となり得る相手へ対して投げかける言葉があるとすればだ』

カチューシャの少女『気をつけたまえよ。”槍(そう)”と”櫃(ひつ)”が出てしまえば、次は”杯(はい)”の出番に決まっている』

上条「はい?」

カチューシャの少女『”胚(はい)”かもしれないがね。ともあれ、もうぼくとは交差しないよう君は祈るべきか』

上条「おーい、そっちは下駄箱の方――って行っちまったな。なんだったんだ、あれ。口笛まで吹いて中二拗らせてんのか」

オティヌス「……全く、度し難い”モノ”だよ。あれは」

上条「てか今日はどうしたんだ。なんか無口だし、いないようないるような……」

オティヌス「……学校の怪談にでも当てられたのだろう。そういうことにしておけ」

上条「怪談って。あんなしょーもないのにか?」

オティヌス「……どんなに下らなくてもだ。踏み込んではいけないものがある。それを知ってるから、あの女とあの男も六つで止めたのだろうさ」

上条「六つ?……あ、言われてみれば七不思議には一つ足りてない!」

オティヌス「そして残る一つもよくある話。『七番目を知ってしまったら死神に殺される』、だな」


−終−

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