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Clock(trial)

バレンタインの日ver2022


――路上

アレイスター『――迷える子羊よ、ようこそよう○』

上条「誰が知ってんだよ。お前とレッサー以外で誰が昭和マジカル☆アイドルのネタ知ってんだよ」

上条「つーかお前さぁ、一応確認すっけどここ俺の通学路で、お前はロン毛型アレイスターじゃん?サラッサラの」

アレイスター『そうだね。特にこれといった特別な手入れはしてないものの、サラッサラだよね』

上条「んでそのアホが空中にフワッと浮きながら、逆さになってんのってちょっとした怪奇現象だよね?」

アレイスター『まぁ、かもしれないね。きっと投稿すればバズると思うよ』

上条「だよな?でも、でもだ?最大の問題は大騒ぎになんねぇとおかしいのに、他の学生か『あ、VRだ』ってチラ見するぐらいのリアクションしかないってどういうことだよ!?」

アレイスター『ひとえに――私の教育の賜物だね。鍛えられたというか』

上条「ウルッセェなこのネグレクト!?お前が次から次へとしょーもない事件かますから慣れたくもねぇにも慣らされちまってんだよ!俺らがな!」

アレイスター『まぁ、そんな訳でお世話になっている君にもバレンタインをだね』

上条「スルーしてんなや!聞きなさいよ人の話を!どいつもこいつも来る連中自己主張ばっかしやがって!」

アレイスター『あぁいやこれは純粋な厚意なんだよ?悪意は全くなく、君の未来がどんな不幸であるのかというのをシミュレートしてみた的な?』

上条「不幸一択ってどういうこと?俺だって輝かしい未来があるわ!来年の今頃は、えっと…………そう!異世界で健全なハーレム構築してるわ!」

アレイスター『それつまり死んでるって事だよね?あと健全なハーレムは人類の文明史上なかった偉業だね』

上条「ただここまでの牛歩を考えれば一年経過すんのにあと30年ぐらい必要かなっても思うけど!」

アレイスター『流石にその前には完結……うんまぁ、あのアバズレとも決着はつけられるよ。きっとね』

上条「……てか占い?シミュレート?」

アレイスター『後者かな。あくまでも狭い範囲内での未来予知、のようなものだと思ってくれて構わない』

上条「また技術の無駄遣いしやがって!」

アレイスター『勿論不完全だがね?あくまでもボード上の出来事であり、全てを網羅してはいない』

上条「……つまり?」

アレイスター『明日核戦争が起きる可能性はゼロではないけど、そういうのは全部まるっと無視したよ、かな』

上条「俺の手には余るわ。誰だってそうだけど」

アレイスター『まぁ目立って……は、ないね。ないけれども立ち話もなんだし、こっちへ来たまえよ』

上条「やめて離してください!?誰か警備委員に通報して!?」

アレイスター『奇しくも君が言ったようにこなれているようで、「あぁまたツンツン頭とその関係者か」ってスルーされているよね』

上条「お前らが……お前らさえいなければ俺は今頃ジモッティーでカノジョと仲良くしてたはずなのに……!」

……

アレイスター『では改めて仕組みを説明しよう。まず事前に君の不幸な未来を超凄いコンピューターでシミュレートしている』

上条「まず不幸を前提するのやめないか?そりゃ『不幸じゃないのカナ?カナ?』って言われれば、こう強くは否定出来ないんだけども……」

アレイスター『あれのCM、よりにもよって”yo○”使ったのに私は戦慄したがね。まぁ深くは考えなくていい、余興のようなものだ』

上条「……やっぱ精度って高いのか?」

アレイスター『ロト○はまだ当ったことがない』

上条「お前って技術をしょーもないことに使わせたら世界一だな!むしろ逆張りした方が稼げそうだぜ!」

アレイスター『なに気にすることはないとも。神はサイコロを振らないのだから』

上条「あ、そのフレーズってよく聞くけどさ。その神とかサイコロとかってどういう意味があるんだ?誰か有名な人が言ったの?」

アレイスター『なんかほら、格好いいじゃないか?』

上条「超ペッラ!?お前そういうとこだぞ!?」
(※アインシュタインが量子力学の一理論を批評した言葉)

アレイスター『まぁ、誰も彼も少年だということだよ。取り合えずゴーグルをつけたまえ』

上条「アインシュタインさんを中二言うなや。無邪気な人だったらしいが……って痛いなコレ?こんなにゴツゴツしてんの?」

アレイスター『あぁすまない。それはVRゴーグルではなく、私の私物のネオジオポケッ○だった』

上条「間違いようがねぇな!?あぁなんか無骨なデザインしてんなって思ったよ!」

上条「てかこれがあの幻の携帯機初の年齢制限がついたゲーム出しやがったアレか!でも割とソフト群の完成度は中々だって話だが!」

アレイスター『あとで貸してあげるから、とにかく自分の未来を見てくるんだ……気を強く、もつんだよ?』

上条「確定じゃないって話は?ロ○外すレベルの話なんだろ?」

……

小萌『――えーっと、その、まことに申し上げにくいのですけど。上条ちゃんは今のクラスメイトちゃんたちとお別れに……』

上条『待ってくださいよ先生!?俺が何をしたって言うんですか!?』

上条『授業にはまともに出てないしテストの点数も悪く!かといえば真面目な態度でもなく素行が普通に悪い!』

上条『そして何か課外活動してる訳でもなく!まぁやってない訳じゃないんですが、表には決して出せない案件ばかり……ッ!』

小萌『それ全部ですね。あ。ギャグをいう余裕はあるみたいですし、災誤先生に引き継ぎをお願いするのですよ』

上条『俺は嫌ですよ!?一年留年したところで俺はきっとクラスの皆にイジられまくるに決まってますからね!?』

小萌『あぁまぁそればっかりは仕方がないっていいますか、それもまた勉強なんですよ』

上条『きっとあだ名はビッグボ○なんだ……!ずっとギャグがスベってるのに誰もツッコんでくれなかったりするんだ……!』

小萌『あれはもう形を変えたイジメだと思うのです――ただ、阪○ファンとしては「良かった……本当にこっち来ないでくれて良かった!」なのですけど』
(※いやマジで)

上条『大体担任がゴリせ○って人選もおかしいと思う!あの人は俺に暴力を振るうんですからねっ!?』

小萌『いつの間にか大炎上する時代になったのですよねー……あとゴリせ○ではないのです。ただの人なのですよ』

上条『なんで……どうしてこんなことに……!』

小萌『……悲しいのは上条ちゃんだけじゃないのですよ!?何を一人で被害者ぶっているんですかっ!?』

上条『せ、先生……!』

小萌『上条ちゃんが居残るクラスの男子は全員に負けフラグが立つのですよ!?可哀想だとは思わないんですかっ!?』

上条『まだ見ぬ後輩の心配を!?俺じゃなくてですかっ!?』

……

上条「初回から超必殺撃ってくるのってアリなの?ないよね?超重いんだけど」

アレイスター『不幸の度合いはこちらで調整してくれとクライアントが、ね』

上条「だからその不幸前提やめようぜ?クライアントの人も多分見てっかもだが、いつか必ず『ピザ食わねぇか?おいピザ食えよ!』って行ったっかんな!」

アレイスター『どうでしょ○だね。正直今年の大○のキャスティングはおかしいと思う』

上条「もっとこう幻想要素をプラスしてくれよ!厳しい現実ばかりじゃなくて!ファンタジー的なのがいいんだよっ!」

アレイスター『唐突に禁書目録君の微妙なモノマネをぶっ込まれてもね。まぁでは次は考慮してみよう。ゴーグルをつけたまえ』

……

オーク『ついたブヒ。ここが冒険者ギルトブヒ』

上条『思ってたのよりも何か普通の建物だな。今お世話になってる宿ぐらいで、造りも似てる』

オーク『田舎の冒険者ギルトなんて元宿屋を安く買ったとかそんな感じブヒ。結局は業務が出来ればいいブヒし』

上条『うーん……?あ、初心者に絡んで「まぁたぁ俺ぇぇやっちゃいましたくわあぁぁ?(鼻ピクピク)」イベントは!?』

オーク『都市伝説ブヒな。ここには依頼人として一般人も来るんだから、そんなことした日にはギルト職員がカウンター乗りこえてドロップキックするブヒ』

上条『ドロップキックの概念あるんだ?異世界なのに?』

オーク『別の意味で初心者殺しはいるっちゃいるブヒが……まぁそれもいい経験ブヒ。あそこのカウンターに並ぶブヒな』

上条『分かった――ん?結構可愛い子だけど、なんでここ空いてんだ……?』

受付嬢『いらっしゃいませこんにちはー!本日は当ギルドへどのようなご用件でしょうーか!?』

上条『おぉ意外とウェルカムな応対……!えっと、ギルドガートを作ってほしいんですけど』

受付嬢『承りましたー!ではステータスのご開示をお願いしまーす!』

上条『え?ステータス、ですか?』

受付嬢『はい!大変申し訳ないのですが、ご登録者様の資質に応じた初期ランク分け、並びに過去の犯罪履歴なども登録に際しては考慮の対象となりますのでー!』

受付嬢『あ、ご安心を!ご登録者様の個人情報は通常業務以外では使用致しませんからー!』

上条『あぁ、うんステータス、分かる分かる、ステータスな?テンプレっちゃテンプレだよな?――なぁブタ?』 チラッ

オーク『ブヒヒヒヒヒヒッ!どこの素人さんがノコノコとやって来やがったブヒか?家に帰ってママのおっぱいでも飲んでろブヒ!』

上条『このタイミングで絡んでくんの!?つか別にやってほしくて話振った訳じゃねぇしもっとこう事前説明が必要だったんじゃねぇかって確認を求めてんだよ!?』

受付嬢『……あのー?』

上条『あぁいやすいませんステータスねステータス!ちょっとど忘れしちゃってアハハハハハハッ!』

受付嬢『……ステータス・オープンが出来ない体質――あ、すいません!わたしったら忘れてて!』

上条『ステータス・オープン……いやいや大丈夫っすわ!ステータス・オープンって言うんだったよな!』

受付嬢『まーそうなんですけどー。ではどーぞお願いしまーす!』

上条『「ステータス・オープン」!』

受付嬢『……』

上条『……あれ?』

受付嬢『出ないですね−。あー、マナが足りないのかなー?もっと力を入れてもらえませんかー?』

上条『「ステータス・オープン」ッ!!!』

受付嬢『もっと強く大声で!あなたの意志が神様まで届くように!』

上条『「――ステータス・オープン」……ッ!!!』

受付嬢『何やってんですか。ステータスなんてある訳ないじゃないですか、ゲームとアニメとラノベの見すぎなんじゃないですか?』

上条『なんっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっでだよ!?やれっつったのもお前だし散々煽ってただろ!?』

受付嬢『てゆうかなんでそんな機密情報をカウンターでやりとりすると思ったんです?少し考えれば分かりそうなもんですよね?バカなのかな?それともド低脳?』

上条『オイコラブタ!ブタこっち来て説明しやがれ!』

オーク『流石は”初見殺しの受付嬢”ブヒ……!相手が異世界からのドロップアウト組だと見るや、みんなの前で心を折りに来るブヒ……ッ!!!』

上条『なんで?俺たちってこの世界にネタにされるぐらいご迷惑をかけちゃったの?』

オーク『こないだ来たヤツは圧巻だったブヒよ?初見殺しに”翳しただけで内蔵LEDが凄い光る水晶”を使って魔力診断ごっこをして、ギルドを爆笑の渦に叩き込んだブヒし』

上条『なんて陰湿な悪ふざけ!?』

オーク『「ちょ、ちょっと騒がないでぇ!?ただの万能魔力の全属性持ちだからぁ!」とかいせてん組が言い出したときには、笑いすぎて死ぬかと思ったブヒ』

上条『お前ら憶えとけよ!いつか転生組で革命起こして根切りにしてやっかんな!』

……

アレイスター『っていうファンタジー世界へ行く未来も視野へ入れてほしい』

上条「幻想は幻想でも俺の望んでたファンタジー違うわ!なにお前ガッツリ異世界転生させてんだよ!トラックか!」

上条「そして何よりも冒頭でネタにした俺が言うのもアレなんだけど、向こう行くって事は死んでんだよ!そこまで親不孝するつもりはねぇな!」

アレイスター『親孝行したいときには親はなし、だね。大切な親であれば分かるよね?』

上条「お前ドヤ顔で人の親感出してってけど、お前は刺される方だからね?犯した罪の数だけな?」

上条「未来っていってももっと救いがある感じで!最後の最後でみんな幸せになるよ!」

アレイスター『それはもう君の願望に過ぎないのだが、まぁそういう可能性も当然あるようだね。問題は引き寄せられるかどうかだが……あぁ、これが妥当かな』 ピッ

上条「頼むぜ?俺もツッコみたくでツッコんでるんじゃないんだ。強いられてるんだ」

……

面接官『――それで?遅れた理由が、マフィアに狙われる少女を助けたと?』

上条『いえ、魔術結社「ヘタレッサー・ヨゴレッサー・ケガレッサー団」です』

面接官『その情報はいらない。しかし面接の日だよ?数時間遅れるのはどうかと思わないかい?』

上条『目の前に困った人がいたんですよ!』

面接官『そうか。ならば君はウチでは採用できない』

上条『な、なんでなんですかっ!?』

面接官『君の正義感は評価されるべきだし、真偽と規模はともかく人助けをしてきたのもいいとは思う。しかし、しかしだね?社会人として割り切るのもまた大事だ』

面接官『会社の命運がかかった書類を疎かにしたり、重要な相手との取引をすっぽかしたら全体に迷惑がかかる。分かるだろう?』

上条『……はい、そうですね』

面接官『では、そういうこと――』

御坂『待ちなさいよ!』

面接官『御坂会長!?』

上条『ビリビリ?』

御坂『その意気や良し!その男性を本日付で社長秘書へと採用するわ!』

面接官『いけません会長!当社にとってのルールが!』

御坂『――娘さん、来年から小学生なのよねぇ?物入りな時期に職を失うって誰にとっても不幸よね?』

面接官『入社おめでとう上条当麻君!本日から当社のために頑張ろう!』

上条『なんだこの出来レース』

……

アレイスター『企画の趣旨に反するが、君の意向を汲んで数少ない良い未来を引き当ててみた』

上条「残念ながら反してないわー。考えようによっちゃバッドだわー。だって囲い込まれてんだもの、逃げようがないもの」

アレイスター『君が誠実であれば問題はなかろう?』

上条「ナメんな!こちとら記憶失ってから少ししか経ってねぇのに冤罪で刃傷沙汰になる父さんの背中を見て育ってんだぞ!」

アレイスター『血って怖いよね。全く以て罪深い』

上条「あれでもお前の娘さんHAMADURAにフラグ立てられてなかったっけ?」

アレイスター『――ちょっとすまないね、野暮用を思い出したから今日はこの辺で失礼するよ』

上条「ファイっハマー!俺はそんな浜面を応援してる――場合じゃねぇな!何か資格取らないと!」


-終-
(※他人からは不幸に見えても本人は幸運だと思っているのかもしれませんしいないのかもしれません。ご応募ありがとうございました)



――スタジオ

鳴護「収録お疲れさまでしたー」

佐天「しゃっしたー!しゃっせー!」

鳴護「何言ってるのかニュアンスしか分からないコンビニ店員になってる」

闇咲「お疲れさまです。すまないな、こちらから収録を持ちかけておきながら撮影現場に居合わせないで」

鳴護「いえ特には。ただあたしたちがスタジオで、闇咲さんと当麻君が自宅撮りでワイプの副音声が正しいのかな、とたまに思いますけど」

闇咲「お陰で再生回数が1000倍になったのに?」

鳴護「確実に皆さんオカルト話には興味ないかと。コメント欄が『右下のオッサン邪魔』で埋まるので……」

闇咲「君たちにもオカルト話を語って貰えばいいのでは?」

佐天「お任せください!そういうの超得意です!」

鳴護「まず意見の摺り合わせをしません?涙子ちゃんが考えてるのと闇咲さんが考えてるのってかなりすれ違うと思うんですよ?」

闇咲「最近興味のある怪異は?」

佐天「翼の生えた女子生徒を少々!」

鳴護「あ、ダメだコレ。波長が意外に合うヤツだ」

闇咲「次の収録内容のテーマは後日募るとして、今日は差し入れを持ってきた。旅先で見つけたものを」

鳴護「頂きますけど、こちらは一体?」

闇咲「蔵王山の山頂で汲んだ若水(わかみず)だ」

鳴護「持って帰ってもらってもいいですか?得体の知れないものはちょっと……」

佐天「わかみず?」

闇咲「新年、もしくは立春の日に汲んだ縁起の良い水だな。魔除けの効果があるとされている」

佐天「マジっすか!?そんないいものを貰っちまっても!?」

鳴護「涙子ちゃんを騙さないでください。信じるんですからこの子」

闇咲「騙してはいないし、初物を食べる程度の霊的効果はある筈だが……まぁ、こちらが一応念のために言われて買って来た米麹の甘酒缶セットだ」

鳴護「あぁまぁこれでしたら普通に頂きます。ていうか言われた?当麻君がですか?」

闇咲「いや、彼ではなく。まぁその妻というか、婚約者というか」

佐天「――詳しい話をプリーズっ!できれば三行で!」

鳴護「矛盾してない?詳しく話そうとしたら三行は少ないよね?」

闇咲「体が癒えた途端、政略結婚やら元許嫁が現れたので駆け落ち同然で攫わせられた」

鳴護「一行で終わった上に情報量が多いよ!?文庫本一冊ぐらいの展開なのに!?」

佐天「いいじゃないですか!超恋愛の末に結ばれる二人!ロマンチックですよねっ!」

鳴護「結果だけを見ればそうだけど……へー、意外――って言ったら失礼ですけど!もっと何かクールって感じだと思っていました!」

鳴護「……うん?でも今攫わせ”られた”って……?」

闇咲「私は彼女が幸せになってくれるのであれば、それ以上は何も望まなかったのだ。見ての通りカタギとは程遠い生活をしている私に言い寄られても困るだろう?」

佐天「ぶっちゃけ見た目反社ですよね」

鳴護「涙子ちゃんシーっしなさい!中身はもっとタチが悪いって当麻君が言ってたよ!」

闇咲「その通りだ。真っ当な人間でもなければ稼業でもない、よって彼女が人並みの幸せになるのならば、むしろ邪魔だ――が」

佐天「『が』、なんです?やっぱり自分のにとって大切な人だとか……!」

鳴護「あー、そうですよねっ!好きになるってどうしようもないですもんねっ!」

闇咲「彼女の難病が解決した瞬間、掌を返して近寄ってくる有象無象が畜生未満ばかりという有様に」

鳴護・佐天「あー……」

闇咲「詳しくは割愛するが、”腹を割って話し合った”上で、色々あって駆け落ちのような感じに落ち着いた」

佐天「物理的にカチ割ったんですね分かりますっ!」

鳴護「あの……冗談にならないから。この人は基本何にでもマジレスする人だから」

闇咲「詳しくは上条当麻君に聞いてくれたまえ。彼女のお父様をぶん殴って退路を絶ってくれた張本人なのだし」

鳴護「あー、そういうところでもいっちょ噛みしてるんだね。若手芸人かな」

佐天「やらかしますよねぇ。そして確実に後々よーく考えたら『あれ?やっぱあれがベストの選択肢じゃね?』っていうミラクルが」

闇咲「不幸ぐらいで騒ぎすぎだと思うがな」

マネージャー「失礼します。お車を用意しましたので、そろそろ」

闇咲「ではまたいつか」

鳴護「あ、はーい――じゃなかった、えっと闇咲さんにプレゼントです。どうぞ」

佐天「あたしからもです。ハッピーバレンタイン!」

闇咲「ありがとう。話は聞いていたが、貰えると嬉しいものだな」

佐天「モテそうですけどね」

闇咲「怖がられる」

鳴護「確かに初見は『死神かな?』ですけど、毎日の服ローテを見てると確実に寄せに行ってますよね?ダークスーツ着て自己主張する必要あります?」

闇咲「甘い物は苦手なので妻といただくよ」

佐天「すいません。やっぱり麻婆豆腐が好物なんです?」

鳴護「分かるけど確認作業はやめよう?分かるけども!確認したいけど!」

鳴護「『あれこの人って綺麗になったあの人かな?』とか考えちゃダメだからね!例えそうだとしても!」

……

上条「――あれ闇咲帰っちまった?」

鳴護「あ、当麻君お疲れさまです。うん、入れ違いだね。何かご用事?」

佐天「どもでーす。武勇伝聞きましたよー?」

上条「って訳じゃないんだが、インデクッスが貰ったノンアルコール甘酒のお礼――って武勇伝……ッ!?」

上条「あぁいやあれは違うんだ!どれのことかは皆目見当がつかないが、一方通行が俺の体をベクトル操作して愛のない行為を!」

鳴護「とても酷い言い訳を始めて……!?」

佐天「上条さんの微妙に心当たりがありそうななさそうな話ではなく、闇咲さんの奥さんだか婚約者さんとかの馴れ初めを軽く」

上条「あー………………どこまで話した?」

佐天「奥様へのプロホーズを聞く前に逃げられましたっ!『触れるなよ?絶対に触れるなよ?絶対だからな!?』って感じでしたよ!」

鳴護「空気読もうよ?無難な話題にあたしが誘導してるの分かってたってことでしょ?」

上条「あー、今の彼女さんだか婚約者さんがだな、病気になって。んで闇咲が『学園都市の方に解決方法があるかも!』って乗り込んで来てだな」

佐天「『消防署の方から来ましたー』の”方”ですね。分かります」

上条「それで俺が治療法を持って外に行く事になったんだけど」

佐天「あれ今スキップボタン押しましたっけ?急に説明が、あれ?」

鳴護「ふ、フットワークが軽いし!きっとカエル先生に頼まれたか何かしたんだよ!」

上条「そしたらその彼女さんが危篤状態で家族やら親戚やらが集まっててな」

鳴護「あー……だから無理矢理にでも、って事になったんだね。『助けて下さい禁書目論さん、って最初っからいえばやぶさかじゃないのに!』ってプンスコしてたけど」

佐天「その状況で治るって凄いですよねぇ。ご家族もよく治療に同意したっていうか」

上条「んで翌日、俺が彼女さんの親戚一同と乱闘起こして二人で攫ってきた」

鳴護「なんて?そこだけ聞くと誘拐犯だよ?」

上条「……身内がなぁ。なんつーかクズクズしいっつーか、まぁしょーもない連中ばっかでだ」

上条「昨日まで寝たきりで『明日までもつかどうか……』だったのに、急に財産やら昔の婚約の話をしだしたんで、つい。だが反省はしてないぜ!結果的に良かったしな!」

佐天「御坂さんもですけど、ぶち壊しになる前に一回考えませんか?『結果的に良かった』、はいつかどこかで終わりますよ?」

鳴護「(……どこまでホント?)」

上条「(あー……インデックスさん曰く、マソ?オトタチバナヒメ?だかの血統、らしい)」

鳴護「(誰?)」

上条「(どっちも航海の女神で、自己犠牲で船舶を守る神様なんだが、それが現代だと家業や家をオートガードしちまうらしくて)」

上条「(つまり実家で悪い事して恨みを買ったり呪われたりしたら、その人にだけダメージが入る、んだそうだ)」

鳴護「(えー……あ、でも今は)」

上条「(実家と縁切ったからもう何かあって関係ないし、それに俺が暴れてなかったら、その……闇咲、あの場で皆殺しにしてたと思うんだよなぁ)」

鳴護「(あー……淡々と効率よく実行しそう)」

上条「(んでその副作用として闇咲と一緒になる、つーかまぁ家族になると闇咲の分まで”背負う”んだわ)」

上条「(だから結果として闇咲も、今までのような稼業からは足を洗わなきゃって感じになったんだと)」

鳴護「(結果的にはいいんじゃないかな?奥さんも闇咲さんも幸せになるんだったら、まぁ)」

佐天「――それでそれでっ!?プロポーズの台詞はなんと!?」

鳴護「ブレないよね?てかそんな気安い話じゃなかったよね?」

上条「ゴメン。俺が後部座席で寝落ちしてた間に済ませてたらしく聞いてない……ただ、俺の予想では『病弱属性萌えなんです!』かな?」

鳴護「刺されるよ?本人は大真面目なんだからね?」

上条「そんなこんなで今は魔術サイド、もとい実家筋から適度に離れてて影響力の届かない場所に住んでるそうだ。カエル先生の検査も受けにこっちへ泊まるときも挨拶してった」

鳴護「元気になったんだね。良かった−」

佐天「あ、すいません飽きたんでもういいです」

上条「話振っといてそれか!?あぁまぁオッサンのLOVE話なんて需要ねぇかもだけど!」

佐天「それよりバレンタインチョコでーす!どぞーっ!」

鳴護「涙子ちゃん!?事前の予定とは全然違っ!?」

上条「あぁうんありがとう。もっと話を聞いてくれるともっと嬉しい」

佐天「ヘイヘイヘイっ!アーリサ、ビビってるヘイヘイヘイ!」

鳴護「煽り方が露骨!?そして味方だと思ってたのに!?」

上条「『敵に回せば面倒で、味方にしたらもっと面倒』、柵中の白蛇のナー○って呼ばれてる子だよ」

鳴護「ラノベがラノベになった時代のエースと同一視!?」

鳴護「えっと、それでこれ、ねっ?あたしもチョコ作ってみたんだけど、そのもし良かった受け取って欲しい、ですかね?ダメ?どう?」

佐天「録画したら売れそうな感じですっ、サー!」

上条「君はこうレッなんとかさんの悪い影響を受けている。ありがとうアリサ――お?」 ガサッ

鳴護「な、なにかなそのリアクション!?」

上条「いや『作った』のに、市販のラッピングされてるなーって。あぁいや他意はない!どんなんでも貰えるだけ嬉しいし!」

鳴護「え――え゛?」

上条「あ、メッセージカードも入ってる。なになに?」

【いつもありがとうございます。奥様とも末永くご健勝でありますように……】

上条「――俺結婚してたっけ!?」

佐天「違う違う。ツッコむとこそこ違います――あ、これあたしのもよく見たら間違ってますわ!いやー、取り違えちゃいましたねっ!失敗失敗!」

鳴護「待ってよ!?あれだけ『あたしに任せれば……』って言っておきながらこれなのかな!?」

上条「事情がよく掴めないんだが、あー、アレか?闇咲と俺の分を間違えた?」

鳴護「まぁそうなんだけど具体的にそれ以上聞くのはやめてねっ!?乙女の事情的なヤツあるから!」

上条「お、おう。んじゃまぁ闇咲に電話すればいいか?こっちに持って来てもらうか、郵送でもしてもらえばいいし――」 ピッ

鳴護「だ、大丈夫だよね?誤解だって分かるよね?大人だし?」

佐天「まぁ普通に考えれば分かるかと。そこそこ付き合いも長いですからね――あたしたち”は”」

鳴護「……”は”?」

上条「『――あー、もしもし俺です上条です。あぁうんお疲れさまです。うんこっちこそありがとう。んで今どこ?バスか何か?』」

上条「『ホテル?あぁ嫁さんの検査で、あー……そう、カエル先生にか、うん。終わって』」

上条「『んで悪いんだけどチョコ。そうそう、アリサと佐天さんからもらったやつなんだけど、今どこ――』」

上条「『……渡した?誰に?嫁さんに……甘い物が好きだから?喜ぶ?へー……』」

上条「『あのな?今から俺の言うことを落ち着いて、できれば嫁さんと一緒に聞いてほしいんだけど……キッチン?鍋?』」

上条「『――おい?どうした闇咲!?闇咲、闇咲っ!?』」

スピーカー【違う!そうではない!これはきっと――】

スピーカー【――敵の魔術師の攻撃なんだ……ッ!!!】

――プツッ、ツーッツーッツーッツーッツーッツーッ……

鳴護・佐天・上条「……」

上条「――か」

鳴護「か?」

上条「カラオケ行こうぜ!なんかこう歌いたい気分ってあるよな!唐突に全てを忘れたいときっていうか、今日がまさに!」

佐天「ですよね!あたしもそんな気分でした!今なりました!」

鳴護「救急車が先だよ!?下手すればこっちくるからね!あたしと涙子ちゃんを消しに!?」


-終-
(※闇咲逢魔さんのこれからの活躍にご期待ください。ご応募ありがとうございました)



――とある高校

青ピ「こないだ、ドン○でコスプレ巫女セットを買ぉたんよ?『ボクの可愛いカノジョにも似合うんちゃいますのん!?』ってな」

上条「どうした突然?へー……ってお前カノジョいたのかよ!?なんだよ!紹介しろとは言わねぇけどできたならできたって教えてくれよ!」

上条「周辺学区の小中学校の集団下校が解除されるんだからな!大切なことだろ!」

青ピ「あれそれなに?ボクにカノジョいなかったら治安悪くなるもんなん?」

上条「それがなんかさぁ?『青髪ピアスの変質者がジーッと女の子を見てるんです……!』って目撃証言が相次いでんだと」

青ピ「妙やなぁ……?ボクがいつも自主警備しとぉときにはそんなに変質者現れへんけどな……?」

姫神「おまわりさんこの青い人です」

吹寄「待って姫神さん!もっと自供を引き出してから通報しましょう!」

青ピ「保護者の巡回ルートの話は後からするとして、まぁ衝動買いってあるやん?なんや売り場の隅の方にワゴンセールになっとったんよ」

青ピ「あれって罠やんな?付いとぉ値札よりか安いんで『こりゃ買いや!』とか思うし!」

上条「誰だってそうだよ。スーパーの総菜コーナーでバトルするラノベだってあるぐらいだし」

青ピ「ま、そんな中にや?ボクが見つけたんは白地に赤の巫女さん模様、いやまぁお正月も終わっとぉしどぉよ的な?まぁ一瞬はそぉ思ぉたんよ」

青ピ「――やっけっどっも!ズキュウウンッと!ボク的に彼女に着せたら似合うと!」

上条「ここまでずっとシモの話しかしてねぇし、そろそろクラス女子から俺もハブられそうなんだけど。そろそろ終わる?まだ続く?」

青ピ「よぉく見たらお正月を過ぎてるだけでモノはそこそこいいんよ!すぐさま買ぉてボクはダッシュで家帰ぉた――が、しかしや!」

青ピ「いつものアパートに戻っても彼女の姿を探すがないねん!?ケータイで呼び出そうにも番号自体が!」

青ピ「これはどうゆうあぁそうや妖怪さんの仕業なんかなと決めつけそうになった瞬間!ボクは一つの真実に突き当たっとぉ!それは――」

青ピ「『――あぁボクのカノジョは脳内やし、実在せぇへんよね』、ってな……ッ!!!」

上条「アオピー、あなた疲れているのよ。もしくは憑かれているか」

上条「それともアレかテメー?心神喪失で無罪になるためのアリバイ作りか?最近それ適応が厳しくなってんだぞ?ムダだからやめとけ?なっ?」

青ピ「おかしいんよ!具現化系の念能力○やったらとぉに実在化してへんとおかしいやんなぁっ!?」

上条「念能力○じゃないからじゃね?お前の能力って多分死海並にショッパイんだろうけど」

青ピ「アドバイスおおきにカミやん!あ、これお礼なっ!」

上条「要らんわこんな呪われたエピソード付きの巫女コスプレ!?新品未開封なのはまだ良かったけど!」

青ピ「頑張って着てみぃよ?新境地が拡げるでいやマジで」

上条「物に罪はないが……なぁ青ピさん青ピさん、一つ聞いていい?」

青ピ「何やの。なんでも聞いて?」

上条「……これ、『対象年齢;十二歳以下』って書いてあんだけど……?」

青ピ「……」

上条「……」

青ピ「――男にはな、時として戦わなければいけないときがあるんよ?」

上条「そろそろお前を取り締まる法律とか制定されねぇかな!こんなん所持してっとこに職質されたら問答無用で逮捕されても文句言えないよ!?」

上条「しかしこんなんもらってもな……インデックスはもう少し大きいし。ミサカ(小)には大きいし、浜面の隠し子はマズいか」

上条「他に知り合いで十二歳以下って――」

……

上条「――という訳でノコノコとイギリスにまで来たのだった!」

入国審査官『こんにちはー、ユーはなにしにイギリスへ?観光ですかー?』

上条「『イエス・プリキュ○!じゃなかったいえすいえす!サイトシーイング、オーケー!』」

入国審査官『本当に?何か商売じゃないんですか?』

上条「くっ!?何を言っているのか分からないぜ!――だがしかしこんなときには土御門から習った『とっさに使いたい!土御門流英会話!』さえ出せば乗り切れる……!』」

上条「『I am a ninja. I want to enter a country for an important mission.』」
(私は忍者です。重要任務のために入国したいです)

上条「『Nobody collects the corpse even if dying. 』」
(死して屍拾うモノなし)

入国審査官『...Nobody?』

上条「『おー、ノーボディーノーボディー』
(はい、いませんいません)

入国審査官『……どうぞ。強く生きてくださいね』

上条「やったぜ土御門先生!なんかこうニンジャとか不穏な単語入ってた気がすっけど無事入国できた!」

……

上条「バーアーードーウェーーーーイさんっ、あっそびっまっしょーーーーー!」 ドンドンドンドン

上条「……」

上条「『――FBIだ!ここを開けなさい!誘拐された児童を解放するんだこのペ×どもめ!』」

マーク「超ウルセェな!?FBIはアメリカの県警みたいなもんだからイギリスまで来ねえよ!あと居留守使ってんだから帰れ!」

上条「お、マーク、えっと……マークツ○?」

マーク「何年か越しで名前イジリされた思ったら雑だな!マーク=スペースですけどマークって名前の有名人一杯いますよね!?」

上条「俺はゼー○よりもマークツ○派なんだ。不遇な感じと中途半端な感じ、量産機のくせに頑張ってる感がたまらない」

マーク「ケンカ売ってんですか?よーし買いますよ!即金で買いますからね!」

上条「くっくっくっく……!俺に手を出してみろ!ボスが黙ってないんだからな!」

マーク「小悪党過ぎませんか?あとウチの一員でもないのに勝手にボスの名前使うのやめてもらえます?」

上条「ぼ、ボスが黙ってなんかないんだからねっ!?」

マーク「どういう状況でツンデレさんがそれ言いますか?チンピラか何かに絡まれて虚勢張るときぐらいですよね?」

上条「俺がラスボスを倒しに行くとき、バードウェイが言いそう。『怪我しないで帰ってこなきゃ』みたいな?」

マーク「あー……まぁ、アリっちゃアリですな。でもその台詞言うのはメインヒロインのお仕事ですし、ボスが言うのはちょっと……」

上条「あ、もういいわ。スッキリしたから帰るな」

マーク「ユーは何しにイギリスへ?」

上条「――段々マークのツッコミスキルも上達してきたな!アリサもフレなんとかさんの技量も上がってきたし、俺もそろそろ本格的にボケへ移籍してもいいかもしれない!」

マーク「収拾つかなくなりません?公式の流れとして文庫本の3/4がノリツッコミ待ちですよね?」

上条「まぁ冗談はともかく、これどうぞ。こっちのバレンタインって男から女へ送ってもいいんだよな?」

マーク「……えっと、ボスへ、ですよね?」

上条「バッカお前そんな顔すんなよ!マークとパトリシアにもちゃんと持ってきてっからさ!」

マーク「あぁいえそういう意味で動揺しているのではなく、日本の文化を知った上での驚愕なんですが」

上条「パトリシアにはSwitc○、マークには俺が選んだポケモカー○パック」

マーク「落差激しいなオイ!?値段的には100倍ぐらい違いますよね!?」

上条「子供と大人だからそこは……あ、でもマークのは心を込めたぞ!売り場の中で『一番オイシイのが出ろ!』って願いながら引いたんだから!」

マーク「逆に怖いですよね。上条さんのある種の引きの強さを鑑みるに、ポケモ○じゃなくバトス○とか出て来そうですよね」

上条「んじゃー、渡したからなー」 ガチャッ

マーク「あ、はい、お疲れさまでしたー?お礼には後日伺いますのでー」

……

マーク「――っていうことが昼間ありまして」

バードウェイ「誰か!とっおきのアレをマークに持ってきてやれ!」

マーク「初手からパワーハラスメント!?なんで職場だ!」

バードウェイ「何故私を呼ばないんだ!」

マーク「いや、いなかったじゃないですかボス。タイミング悪い事に出張中でしたし」

バードウェイ「そこを何とかするのがお前の役割じゃないのかぁ?あ?うん?あぁ?」

マーク「ブラック過ぎませんか?『ピラミッドの謎が分かった!』とかなんとか言ってエジプトにまで遊びに行ってたでしょ!私を置いて!」

バードウェイ「あ、これお土産の葬送用コーン。なんか安かったから買ってみた」

マーク「あぁご丁寧にどうも――っていりませんよ!?用途不明の霊装モドキなんか怖くて!」
(※葬送用コーン=エジプトのルクソールのみで出土する謎の円錐遺物。用途が一切不明でなんか怖い。多分……カノプス壺を神格化した何か)

バードウェイ「あとでその葬送用コーンで一発ギャグをやったら許してやろう。なんて寛大な雇用主なんだ、私は」

マーク「いつか、いつか必ず下克上を!」

バードウェイ「身の程知らずは捨て置くとして、で、Switc○か?悪いな−、何か気を遣わせたみたいで」

マーク「違いますボス、そっちはパトリシア嬢です。現実逃避したい気持ちは分からないでもないですが」

バードウェイ「……このカードは――プレミアが付いているナイトガンダ○だな!」

マーク「何故かポケモ○カードパックからカードダ○出てきたですよね。あと、それも違います!戦わなきゃ現実と!」

バードウェイ「正直ノーサンキューなんだが……これ、服だよな?」

マーク「服ですよねぇ。サブカルでお馴染みの日本の神官服でしたっけ?こっちでいえばシスターさんが着てるような」

バードウェイ「この服はバイトでも着れるんだぞ?」

マーク「アルバイトで神官の服貸し出すんですか!?……なんかよく分からないですけど、まぁ良かったですよね?」

バードウェイ「そしてサイズもほぼピッタリだが……」

マーク「て、ゆうかですねボス。都市伝説、そう都市伝説だとは思うんですが、噂を聞いたことがあるんですよ。履いてない的な……」

バードウェイ「奇遇だな。私も和服には履いてないのが礼儀だという話を……」

マーク「このミニ衣装で履いてなかったら痴女ですよね?」

バードウェイ「私も若干神経を疑うな」

マーク「……ボス、これは普通におまわりさん案件ではないでしょうか?」

バードウェイ「――ヒロイン確定の時が来たな……ッ!!!」

マーク「ご時世的にヤッベーんすわ?弁えろガキ」

バードウェイ「個別ルート入って二回目ぐらいのとき、とってつけたような展開とコスプレが入るだろ?私の見立てではそれだな」

マーク「ライターの分業制が仇になってますよね!時々設定が矛盾しますし!」

バードウェイ「そしておまわりさんに逮捕されるのであれば、それは私が魅力的すぎて人生を狂わしてしまう罪に決まっているな!」

マーク「ボス、いつも思うんですけど何食ったらそんなに自信満々になれんですか?それとも特製のハッパでもキメてんで?」

バードウェイ「まぁ、私のすることを大人しく見ておけ、なっ?」

マーク「大丈夫かなー……ま、被害を受けるのは上条さんだしいっか!」

……

バードウェイ「――そ、そんな感じで着てやったぞ!ありがたく思うんだぞ!」

上条「……」

バードウェイ「な、なんか言えよ……!」

上条「……や、まぁうん正直にな?正直に言えば似合ってるよ。いやマジで」

上条「俺らが逆立ちしてもどうにもならない顔と体のバランス、特定のジャンルのゲームで一人はいそうな特別枠にピッタリっていうか」

上条「全体的に日本人が着たらギャグになりそうな頭飾りを含めて、なんかこう、なに着ても絵になるのはチートじゃね?ってちょっと思うわ」

バードウェイ「そ、そう、か?いやーまぁ分かってはいたんだがな!まぁなんだその、確認作業というかそんな感じだ!」

上条「芸能界の見てそう思うんだけど、人種が違うってなんかズルいわー。サンドの伊○さんと高橋一○さん並んでるともう違うの分かるもの−」

バードウェイ「誉められて嬉しいは嬉しいが、どっちも日本人じゃなかったっけ?何着ても似合う人と何着ても面白い人」

上条「まぁなんか成り行きで贈った俺としてもいい仕事したなーとか、これ青ピに見つかったら血の雨が降るなーとか」

上条「思うところは色々ある訳だけど、取り敢えず室内を確認して貰えるかな?」

バードウェイ「おぉ客でも居たのか。それは悪かったな」

インデックス「……どうしようまいか……!とうまが、とうまが冥府ペ道へとついに足を踏み入れちゃったんだよ……!」
(※冥府ペ道=地獄の一番深い場所)

舞夏「あー、DTこじらせちゃったんだなー。みさかは育ちすぎてアウトなのかー、あぁアニキに報告しないと」 ピッ

上条「まってつかーさい舞夏つぁん!?これには深い理由があるんですよ!?」

バードウェイ「諦めろ禁書目録。16年同棲しててなにもなかったんだから、これから先もずっとそうに決まってる」

上条「生々しいことを言うのもやめてあげて!?俺だって『インデックスはスフィンクス枠』だとか思ってないんだからね!?」

バードウェイ「あぁまぁ戦力増強にもなるし、まとめて面倒みてやるから連れて来い。猫に罪はないしな」

インデックス「くっ!やみさかがいればわたしの価値を正しく理解してくれるんだよ!」

上条「まぁでもインデックスさんが部屋に出入りしてるだけで、ご近所からは『あらまぁ……』みたいな視線は感じるがな!幸い『ザシキワラシです』って言い張って事なきを得ているが!」

バードウェイ「江戸時代でも騙されないぞ。『旦那さんの隠し子さんだわー』って後ろ指されるだけだよ、お前と一緒で」


-終-
(※上条当麻さんのこれからの人生にご期待ください。ご応募ありがとうございました)



――学園都市 バレンタインの夜

おじさん「『――はい、黄泉川さんがもう今日は……はい、それじゃ今から直帰しますねー、はいー』」 ピッ

おじさん「あぁしんどい。外回りって何の嫌がらせですか。楽できるからって折角公務員になったのに、あぁもうこんな時間」

少年 フラッ

おじさん「――っ!?」 キキィーーーーーーーーーーーーッ

おじさん「……何やってんですか!?当たり屋だったらもっとお高い車を狙わなきゃダメですよ!?こんな普通の無改造型落ちフロントガラスに傷あり軽自動をターゲットにするだなんて!」

少年「う、うぅ……」

おじさん「ってケガしてるじゃないですか少年!?そんなになって、何があったんです!?大丈夫ですか!?」

少年「た、助けてくれ……こ、このままだと、俺は、殺されちまう……」

おじさん「分かりましたっ!さぁでは私の後部座席に隠れて!安心してくださいこう見えましても私はね」 バタンッ

上条(少年)「助けてくれ……バレンタインに殺される……ッ!!!」

おじさん「なんだちょっとアレな子かぁ。あぁ分かる分かる、オジサンもね若い頃はそうだったんですよ?取り敢えず車から降りてもらえません?私今から家帰るんで」

上条「き、来たっ!?頼むっ!」 ガバッ

おじさん「いやあのですね?逃亡犯ゴッコしたいんだったらお友達とやりなさ」

妹達A「――こんばんは、ちょっとお時間宜しいですか、とミサカは職質を求めます」

おじさん「あ、はい。でも君は風紀委員の子じゃないよね?」

妹達B「風紀委員の方から来ました、とミサカはしれっと嘘を吐きます」 ニュッ

おじさん「古典的怪談!?ムジナとかソバ屋のアレだ!?」

妹達A「それで質問なのですが、あなたはツンツン頭の学生を見ませんでしたか、とミサカはオッサンの頭頂部、つまりバーコードを失礼の無いようにガン見しないで訊ねます」

おじさん「もう失礼だよね?口に出しちゃってるのがまず失礼だって話じゃないですか?」

妹達B「そうでどうですか、とミサカは車内を確認しながら問いかけます」

おじさん「い、いやそんな子知らないけど、な、なにかしたんですかその人?」

妹達A「あの人は大切なものを盗みました、とミサカがネタを振り――」

妹達B「――それは私たちの心なのです、と用意していたネタを披露しました」

おじさん「なんだこの子達も中二か」

妹達A「それで後部座席の膨らんだ毛布なのですが、何がくるまっているか確認しても?とミサカは話し合いを求めます」

妹達B「まさかとは思いますがあの人はいませんよね、とミサカは火器使用のボーダーを一段階下げます」

おじさん「ちょ、ちょっと待って!?そこには個人的な!」

妹達A「問答無用なのです、とミサカは無理矢理ハゲの毛布を引っぺがします」 ガバッ

おじさん「ハゲてはないよ!?ただこれはウスラってるだけでハゲてはいないんだよ!?」

妹達B「こ、これは、ミサカは驚愕を露わにしつつ、オッサンから距離を取ります」

妹達A「同じくこのミサカもドン引きします」

おじさん「え、なに?何が出てきて――」

L.○『……』

おじさん「誰だっ俺の車に爆弾置いてったヤツは!?」

妹達A「無罪の証にオッサンの秘密を曝いてしまいました、とミサカは強く反省します」 ダッ

妹達B「冥府ペ道に落ちても強く生きてくださいね、とミサカは見なかったフリをして立ち去ります」 ダッ
(※冥府ペ道=最も深い地獄の一つ。他にも腐道・ケモ道・二次道などが確認されている)

おじさん「いや違うんですよ君たち!私はロ×じゃなくって!あぁダッシュで逃げないで!?」

上条「……ふー、助かったぜおじさん!」

おじさん「き、君は!?どうやって隠れてたんだい!?」

上条「軽自動車はトランクが一体型になってる場合が多いから、後ろの座席を乗り越えて狭いスペースに入ってたんだ。L.○を身代わりにしてな!」

上条「追っ手の注目はL.○に集まる分だけ他は散漫になる!俺の狙い通りだ……ッ!!!」

おじさん「私は?ロ×という十字架を背負わされた私の社会的立場は?」

上条「そんなことよりも悪かったな、巻き込んじまって!」

おじさん「あぁうん、謝るんだったら私の冤罪についてだけど……なんか大変なんだね。ファンっていうかストーカーっていうか、そんな感じなんでしょ?」

上条「良い子なんだよ?良い子なんだけど、俺は1万弱のチョコレートケーキなんて食べられないよ……!」

おじさん「そういう地獄ありそうだよね。それよりも家どこ?なんだったら送っていくよ?」

上条「ありがとう……でも俺、今日は外行って両親のトコへ逃げ込もうかなって」

おじさん「今からですか?まぁこっちよりは安全だけど……分かったよ、住所を言いなさい。近くまでは送っていってあげるから」

上条「バーコード……!」

おじさん「そんな名前ありますかね?ないですよね?DQNネーム最盛期の現代ですらバーコードってつける親います?見た目でしょ?」

……

上条「――で、そんな感じで最終的に争奪戦が!俺の胃の容量は2リットルだって言ってんのに!」

おじさん「おじさん、その話を最初に聞いたら『冥土帰し』先生の所に直行してたんだけど、実例見ちゃうとねぇ……あ、ついたよ。ここかな?」

上条「ありがとうコードさん。この恩はあっち戻ったら必ず返す!」

おじさん「まず敬意を払おう?てかコードさんってなに?私名乗ってないよね?コードってハイカラな名前名乗った憶えないよね?」

おじさん「そしてコードって一見格好良さげだけども、なんたかんだでバーコードのコードだよね?バカにしているよね?」

上条「あ、なんだったら少し休んで行ってくれよ。長距離運転して疲れてるだろうし」

おじさん「子供が気を遣うもんじゃないですよー。私にもねぇ、可愛くしょうがない盛りっていいますか」

上条「あ、いいすっわそういうの。つーか車ん中で話しててもしょうがないし、先行って父さんと母さんに話してくるよ」

おじさん「あ、ホントにお構いなく。私も帰る場所があ――」

ガシャアァンッ!!!

上条・おじさん「――お?」

刀夜『やめるんだ君たち!まずは私の話を聞きなさい!』

女性『――刀夜センパイどいて!そいつ殺せない!』

詩菜『あらあらうふふ、刀夜さんにはあとでお話がありますからねぇ?』

刀夜『なんで、なんでこうなってしまったんだ……ッ!?』

女性『センパイ?センパイは優しくしてくれたじゃないですか!あたしがオーク部長にセクハラされていたのも同僚から妬まれていたのも助けてくれた!』

刀夜『そりゃ助けるさ!人間として当然だからね!』

女性『だから今度はあたしがセンパイを助けてあげるんです――知ってるんですよ!?あなたがセンパイを脅して結婚したってことを!』

詩菜『何を言ってるのかしらねぇ、このクサレビッチは?』

刀夜『まぁ正直、そういう要素が皆無だったと断言するのは、その、なんだ、えっと……』

詩菜『――刀夜さぁん?』

刀夜『――そんなことはないよ!私と詩菜さんはラブラブげっち○で結婚したんだからね!死の危険性なんて全くなく!』

女性『せ、センパイ!?でも前に一緒に飲んだとき「性格が穏やかそうに見えてキツい」って言ってた!』

女性『「あとおっぱ――いやごめんなんでもない、女性のシンボリック的なものが足りない」って!」

詩菜『と・う・や、さーん?』

刀夜『いや違うんですよ詩菜さん言ったか言わないとかそういう事じゃないじゃないですか今はそれよりも大切な事があるっていうかあるんですけども!!!』

刀夜『そもそも私が軽ーい愚痴っていう望みは他愛のないものであって決してこう酔った勢いで出ちゃったとかではなくそのホラまぁ相手に合わせて愚痴った的な!!!』

刀夜『まぁでも結局誰が悪いかっていえば、ぶっちゃけますと――」

刀夜『――気をつけるんだ!これは敵の商業スパイの陰謀なんだ……ッ!!! 』

詩菜・女性『……』

刀夜『ど、どうしたのかな?胸倉掴んでの殴り合いをやめてくれたのは嬉しいけど、不穏な空気を感じるよ!私の気のせいだろうけど!』

詩菜『……刀夜さんは、どっちの味方なの?』

女性『そーですよ!センパイの口から聞かせてくださいよ!』

刀夜『え、えっと……何をかな?』

詩菜『決まってるでしょ?あなたがどれだけ私を大事で、このクソビッチがどれだけ迷惑か、刀夜さんの口から、直接、言ってほしいわぁ!』

女性『いいですねーそれ!センパイがこのクソ年増へ言ってやってください!センパイが普段どう思っているかって!』

刀夜『そ、そうだね?そう、すれば、まぁ収まるよ、ねぇ?と、当事者なんだから』

刀夜『――でもよく聞いてほしい!私の口から女性を批判するような言葉は言えないよ!何故ならば君たちは、君たちこそが』

詩菜・女性『早く言え、なっ?』

刀夜『助けて当麻!?二人のイライラが有頂天で「もう元凶を潰すか?やっちゃう?」的な感じになってる!?』 ピッ

詩菜『刀夜さぁぁぁん?当麻に連絡したって助けなんて――』

――ピピピピピピピピピピピピピピピピッ

上条・おっさん「……」

刀夜『聞こえる?幻聴じゃなく聞こえる当麻のケータイが!』

詩菜『――当麻さぁん?出て来なさーい、今日は親子でしっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっかりと話し合いましょうねー?』

女性『当麻さん!あたしが新しいママですよー、甘やかしますからねー?』

刀夜『助けて下さい当麻さん!お前が同席してればきっと最後の一線は越えてこないと思うから!』

おじさん「……ご指名ですよ?」

上条「……いやぁ、この空気の中で『ただいまー、帰って来たよ!』って出て行けるのは渡部○ぐらいしかいない」

おじさん「メンタルが鋼ですよね、彼。あ、私はやっぱりお暇するんで、早く降りてくださいよ」

上条「なんだったら少しだけ休んで行ってくれよ!?頼むからなああっ!疲れてんだろコードさんよぉ!」

おじさん「ま、巻き込まれませんよ!?私には帰る場所があるんだ!こんなところにいられるか!?」

刀夜『――ハッ!?今のは当麻のツッコミ、いるんだね当麻!私を助けに来てくれたんだ!』

刀夜『さっきからずっと停まってる軽自動車の助手席に――』

上条「――あ、すいません運転手さん、学園都市までお願いします。高速使っていいですから」

おじさん「はい、分かりました−。それじゃーシートベルト締めてくださいねー。法改正で高速だと切符切られちゃうんですよー」

上条「へー、そうなんですかー?知らなかったー」 ブルゥッ、ブルブルブルブルブルッ

刀夜『と、当麻……?助け――とう――』

……

上条「……どうしよう、父さんまでもがバレンタインに殺される……ッ!!!」

おじさん「……その台詞、一時間前だったら笑っていられたんだけど。モテる人はそういう悩みがあるんですね、怖いなー……」

上条「血は争えない……!残念な父さんの残念な血が俺の中に入ってる!」

おじさん「親は仕方がないですよ。精々失敗しないように反面教師にすればいいんじゃないですかねぇ」

上条「コードハゲさん……!」

おじさん「あ、やっぱコードでいいですよ?『ハゲ』ってつくとどんな綺麗な修飾語でも罵倒語に変るから。どうせ呼ぶんだったらコードでお願いします」

上条「あぁ疲れた……バレンタインなんかなかったらいいのに」

おじさん「あー、じゃあさっきの場所までついたら起こすから、君は少し眠ったら?その様子じゃ朝からずっと大変だったでしょ?」

上条「……ゴメンなおじさん。全然関係無いのに巻き込んじまって、えっと子供さんがどうって言ってたよな?」

おじさん「あー、いいですいいです。困ってる子供を放って帰ろうものなら、そっちの方が幻滅されますって」

上条「……そっか……いい……家族、なんだな……」

おじさん「えぇとてもね。私には勿体ないぐらいでして。あ、そういえばですね。この間も――って聞いてますか上条さん?」

上条「……ぐー……」

おじさん「……寝顔は年相応ですか――さて!私も怒られないよう、一応連絡入れときますかね」 ピッ

おじさん「『――も、もしもし?私なんですけど、ちょ、ちょっとトラブルがありましてね?』」

ケータイ【――ただいま午後10時22分20秒をお知らせします】

おじさん「『い、いやいやっ!残業です残業!人助けっていいますか、そんな感じですから!』」

ケータイ【ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ】

おじさん「『大丈夫ですよ!ケガなんて全然……はい、うん、どうも』」

ケータイ【ただいま午後10時22分30秒をお知らせします――】

おじさん「『ちょっとだけ遅くなりますけど、預っている子を帰したら、はい。それじゃーまだ後で――』」 ピッ

おじさん「……なんですかね。やっぱり帰れるところがあるのは嬉しいですよね」

上条「……おじ、さん……?」

おじさん「あぁごめんなさい!今ちょっと奥さんに連絡入れてたんでうるさくしちゃいましたか!」

上条「……ん……大丈夫……?」

おじさん「えぇ大丈夫ですよ。世界一の家族ですから、ウチは。心配せずに寝ててください」

上条「そっか……よかっ、た……」

楽丘(おじさん)「――えぇ、ホントに私はいい家族を持っていますからね」


-終-
(※これを書いている最中に「詩菜さんから呪殺されないだろうな?」と少しだけ怖かったです。ご応募ありがとうございました)



――イギリス ウィンザー城

兵士「この部屋で待機していろ!決して出歩くんじゃないぞ!」 ガッ

アックア「ぞんざいな扱いなのであるな。縛られないだけ罪人には過分だとも言えるが」

兵士「(――お気をつけくださいオルウェル卿、高貴な方々がいらしております)」 ボソッ

アックア「……ふむ」

兵士「何かあったら呼び鈴を鳴らせ!ではな!」 バタンッ

アックア「どいつもこいつも一介のゴロツキ相手に過分なのであるな」

ヴィリアン「……ご無沙汰しております?」

アックア「ヴィリアン殿下におかれましては――」

ヴィリアン「やめてくださいませ。あなたに畏まられると、恐縮してしまいそうで……」

アックア「御身は高貴な方なのですから当然かと存じます。口上は略すとしまして、本日はどのようなご用命でしょうか?」

ヴィリアン「まず言葉を崩してください。ではないと口をききません」

アックア「それは……承知したのである。それで一体なにが?」

ヴィリアン「分かりません。お母様から必ず来るように申し伝えられ――」

???「『――上の娘は人間不信のアクティブニート!下の娘は王族にあるまじきオドオド小動物系!』」

???「『そして終いに中のバカ娘はクーデター未遂を起こし、親姉妹の首をスッパリしようする始末!』」

???「『私は思ったわ……!誰か助けて!バカ娘ども三人が三人とも教育失敗したなんてやり直したい!と』」

???「『するとそこへ天の声がこう囁いた――』」

ローラ「『――あぁなんて可哀想なりし魂!良きよ!異世界転生すれば良きよね!?』」

???「『なんと気がついたら異世界転生!女王エリザードは新しい家族とお兄様に囲まれてキャッキャウフフするのであった!』」

???「『新連載・”エリザード陛下が異世界転生するなんて!?”月間コン○エースの速報を待つんだ!』」

アックア・ヴィリアン「……」

???「――よし、死のう」

ヴィリアン「待ってくださいお母様!?不出来な娘なのは重々承知しておりますが、そう安直に異世界転生していたらあっちの人口がパンクしてしまいますよ!?」

エリザード(???)「お、あぁなんだヴィリアンか!息災で何よりだな!」

アックア「そして今イギリス出禁を食らっている悪魔がいたような……」

エリザード「おうオルウェルも居たのか!礼が遅れたが、バカ娘のクーデター鎮圧は大義であった!褒美を取らそう!」

アックア「勿体ないお言葉である。だが臣下としては当然のことをしたまでの話である」

エリザード「なら褒賞はいらないな!」

ヴィリアン「お母様?それはいくらなんでもあんまりではないかと……」

エリザード「お前は知らんのだが、どっかのバカが『くっくっくっく……ヴェントがやられたようだな。しかしヤツは所詮四天王最弱なのである……!』とか遊んでた頃」

エリザード「『あっれー?ローマ正教のあの人っておたくのオルウェルさんですよね?やだーイギリス王室ってやーだー!』って学園都市から散々抗議を受けてたからな!」

アックア「内偵なのであるな!『騎士団長』に聞いて頂ければ分かるのである!」

ローラ「『騎士団長が他の誰かに殺されるぐらいなら、私がするのである……!』」

エリザード「よし許すお前ら今すぐ結婚しろよ。性的な意味で開かれた王室のイメージアップになっから」

アックア「事実無根なのである。あと誰か剣を持ってくるのである!悪魔の首を刎ねるために!」

ローラ「やめたりしよ!エリーは、エリーはまだ心の中まで悪魔にはなってはいなかりし!きっと何か救う方法が……!」

アックア「違う、陛下じゃない。どっちかといえば悪魔よりであるが」

騎士団長「おいたわしや陛下……!せめて介錯は一番の臣である私が!」

アックア「混乱するのであるな?ツッコミ一人にボケ三人ってオーバーキル過ぎるのである」

ヴィリアン「あの……お母様と愉快なお友達のお二人?遊ぶのは結構ですけど、わたくしたちもヒマではないので……」

エリザード「あぁ、それだ!家族っぽいことをしよう!バレンタインだしな!」

ヴィリアン「家族ですよ?ぽいのではなく正真正銘の」

エリザード「いやぁまぁそのだな?私も流石に色々あって己の半生を振り返ってみたのだ。公務にばかりかまけてお前たちを顧みなかったと」

ヴィリアン「そんなことはありませんよ!お母様は忙しいながらもわたくし達によくしてくれたではありませんか!」

エリザード「あ、やっぱりそう思うか?なら反省はなしでいいな!」

アックア「開き直るな陛下。ヴィリアン様ならそう言うのである、例え内心がどうであっても」

エリザード「いや、そうでもないぞオルウェル?マルチバースって知っているか、並行世界というかここではなくよく似たどこかの世界なんだが」

アックア「スパイダーがマッ!する最新作のやつであるな。『ウィレム=デフォ○の歳考えろ』とか思うのである」
(※グリーンゴブリ○の中の人、今年で67歳)

エリザード「この悪魔によるとマルチバースのイギリス王室では、長男が結婚以前から愛人をこさえて離婚、次男がペ×富豪の誘いに乗って少女買春」
(※今年からアメリカで裁判が開かれます)

エリザード「んでそろそろ死にそうだから言うじゃん?『愛人も正妃って呼んであげて!』って?でも言ったらバッシングされ、それに比べれば我が王室はよくやっているなと再確認したんだ!」

ヴィリアン「騙されていますよお母様、その悪魔に。そんな王室あったらギャグです」

ローラ「割と真面目な情報なのに……!」

アックア「まぁマルチバースが正しいかは横に置くとして、家族を大事にするのは素晴らしい事であるな」

エリザード「だろう?……だからまぁ、私も家族と、家族っぽい人間を集めてささやかながら盛り上がろうではないかと。そう思ったのだ」

アックア「話は理解したのであるが、そこの悪魔と私は違うのである」

ローラ「――エリーを悪しき言うのは許容せんわ!昔は絶世の美女と呼ばれていたのに今は悪魔だなんて」!

エリザード「カーテナを持って来い!ちょっとずつでもいいから首を刎ねてやる!」

ヴィリアン「身内だけの集まりと言いながら血なまぐさい……!」

エリザード「まぁ、お前たちはこの悪魔を殺したくて殺したくて殺したくてたまらないと思う。それだけのことをしでかしたからな、コイツは」

ローラ「エリー……!」

アックア「さっきからその愛称……まぁいいのであるか」

エリザード「だがコイツはな、私にとっても不倶戴天の敵であり、腐れ縁とはいえ何度も何度も始末しようとしては思い直してきたんだ!」

エリザード「……」

エリザード「――あ、じゃあいいのか殺っても!よし処刑しよう!」

アックア「自分の言動に責任を持つのである。そしてあの少年が今更ながらに大変だったと尊敬するのである」

騎士団長「陛下、今日は良き日ですそのぐらいで……」

エリザード「命拾いしたな!ともかくパーティをするぞ!今更なからであるが!」

ヴィリアン「良いお考えかと存じます、存じますけれど……あの、お母様?お姉様方の姿が見えないようですが?」

エリザード「うん?お前が長女じゃなかったっけ?」

ヴィリアン「いつのまにか廃嫡しておいでに!?性格上ありそうですけど!」

騎士団長「そこはまぁ、察して頂けると助かるのですが」

アックア「この国の王族はフリーダムなのである。肉親の情が薄いというか、陛下はご息女方を愛しておられるのだが」

エリザード「ただの子離れできない親だよ――さて、では全員グラスは持ったか?」

ローラ「あ、あの私の分は……」

エリザード「――大英帝国にカンパーイ!」

ローラ「イジメ!?まぁ当然っちゃ当然の扱いなりしけど胃に来るわ!」

ヴィリアン「母がこの度は大変な失礼を……」

ローラ「大丈夫?私の後任だって聞き及びしが、『ざまぁwwwww』ぐらい大きな器量を持ってないと勤められぬのよ?構成員が基本アホしかいないのよね?」

アックア「前任者も色々とおかしいだけなのである」

騎士団長「スチュアート殿、ベツレヘムの川の水とオークニー支流の泉の水、どちらがお好みで?」
(※キリスト教の聖地とケルト神話の聖地)

ローラ「正面から正直に暗殺にかかってるな!?そんぐらいじゃビクともしないけど、衛生的にぽんぽん痛くなるわ!」

エリザード「戯れ言はさておき、まずはヴィリアンか。ハッピーバレンタン」 スッ

ヴィリアン「こ、これは?」

エリザード「お前が欲しがっていたガラスペンだよ。きちんとこういうのも使えこなせるようになれ、いいな?」

ヴィリアン「はぁ、分かりました?」

アックア「ん?どういう話なのであるか?」

騎士団長「書類に直筆でサインする際、安い万年筆やポールペンだと格好がつかないよね、という話さ。形式というか重みというか」

ローラ「ガラスペンは明治時代のヤポン発祥だから、そんなものなきこと……まぁいいか」

エリザード「次は騎士団長だ。少し高めのワインを下賜してやろう」

騎士団長「ありがとうございます偉大なる女王陛下!」

アックア「下賜するほどの良い銘柄ではないようであるが……」

ヴィリアン「『騎士団長』のお父様と関連があるとか。私も良く存じませんけど」

アックア「――あぁ母親の実家筋か!フランスから輿入れしたという話を耳にしたのである!」

エリザード「そして、あー、サタナキアだっけ?」

ローラ「コロンゾンなりしな!超マイナーっていうかあのアホ以外に目撃証言の無き悪魔で悪かりしか!」

エリザード「お前にはモズク酢をやろう。三パック組で1ユーロもしないお買い得品だ」

ローラ「言ったか?私が一度でも『実はモズク酢好きなりしねー』なんて言った!?」

エリザード「あぁ違う違う。誤解しないでほしいのだが、これにはブブヅケ的な意味が含まれていてだ」

ローラ「イベントあるからってわざわざ呼ばれたから来たのにこの塩対応……ッ!?」

アックア「イベント、であるか?」

エリザード「そしてオルウェル。お前に報いるにはな、色々考えたんだが――私の娘をやろう」

アックア「………………は?

ヴィリアン「お、お母様っ!?」

エリザード「政治的なしがらみもあり、かつ長女ではないため自由が効くっちゃあ効く……とはいえ、君主としてはどこの馬の骨とも知らぬ相手には托せん」

エリザード「そういった諸条件を鑑みてもお前が適任だと思うが、どうだ?」

アックア「と、言われても、その、ヴィリアン様は……?」

ヴィリアン「わ、わたくしはいいと思います!と、言いますかっ是非にでも!」

アックア「そ、そうであるか。だがしかし」

騎士団長「覚悟を決めろオルウェル!お前以外に誰がいるって言うんだ!それとも他の誰かに任せても構わないとでも思っているのか!?」

アックア「くそ、後で憶えているのである……分かった、のである。この話、謹んで承るのであるな」

ヴィリアン「オルウェル……!」

エリザード「……そうか。ヴィリアンも同意しているし、この話は決まったな――ローラ!」

ローラ「はいはーい、なりしよー。んじゃこっちの祭壇の方へ来たれ」

アックア「これは一体?」

エリザード「このバカも一応イギリス清教の元最大教主だからな。婚約には相応しかろう?」

ヴィリアン「縁起が悪そうな……いや別に何でも」

エリザード「ではオルウェルは前に、ヴィリアンは数歩下がれ」

ヴィリアン「あ、はい。下がるのですか?」

騎士団長「では――よいしょっと」 ドンッ

キャーリサ(※簀巻き)「ンーーーーーーーーーーーーーーツ!ンンンンーーーーーーッ!!!」

アックア「いないと思ったらロッカーの中から登場であるか!?しかも事件性を疑わせるのである!」

ローラ「良き良き、ただの形式なりしから――では、ただ今からウイリアム=オルウェル、並びにキャーリサ=ウィンザーの婚約式をする……ッ!!!」

アックア「断るのである!」

ヴィリアン「なんでですか!?どうしてここで姉上が!?」

エリザード「私は『娘』としか言っていなかったのだが……なぁ、ヴィリアンも婚約に同意したよなぁ?」 ニチャアァッ

騎士団長「えぇ聞きましたとも!オルウェル卿とキャーリサ殿下の婚約に非常に乗り気で」 ニチャアァッ

アックア「貴様あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?自分がキャーリサ殿下を押しつけんがために一芝居打ったのである!?」

ヴィリアン「そんなお母様酷いですよ!?」

エリザード「やかましいわ!いつまで経っても手の一つも握らんわ孫の顔にも見せられん臆病者に四の五の言われる筋合いはない!」

騎士団長「陛下、その二つは天と地ほど離れています。ビフォー・アフターです」

アックア「ではヴィリアン様は……?」

エリザード「バッカお前ヴィリアンは政略結婚用に決まってるだろうが!外見が良くて適度に無能で頭お花畑なんて人材他には中々いないんだからな!」

ヴィリアン「お、お姉様は!?キャーリサお姉様だったら絶対に良しとはしないはず……!」

アックア「そ、そうなのである!さっ、ご乱心の陛下に諫言を!」 プツッ

キャーリサ「――お前たちだけ幸せになるぐらいなら、私がぶち壊すのも悪くないしー」

ヴィリアン「――誰か武器を持て!できれば私愛用のクロスボウを!」

アックア「なんて、なんて悲しいバレンタインであるか……ッ!!!」


-終-
(※どれだけ美人で女性としての魅力に溢れていても、まぁ……ご応募ありがとうございました)



――上条のアパート

上条「――折り入ってレッサーさんに頼みがあるんですが」

レッサー「分かりました任せてつかーさい!やってやりますよ!上条さんからゴーサインが出るとは思いもしませんでしたが、そういうことならば!」

レッサー「では私は先に行っていす○のトラック盗んできますんで、フランス大使館近くのコンビニで落ち合いましょう!」

上条「お前俺を犯罪に加担させようとしてね?なんか超スッゲーテロリストの仲間入りするよね?それをもし実行に移したら?」

レッサー「やだなぁ私が罪もない民間人に危害を加える訳ないじゃないですかぁ」

上条「あれお前、初対面で攻撃?あれ?」

レッサー「一般人に何かする訳ないじゃないですか!基本的には善良なんですからね!」

上条「その評価がシリアルキラーだもの。大抵『普段は温厚で善良な人』って使う場合は反語表現だもの」

レッサー「『えぇ私も少年Kとは仲良くさせていただいたんですが、まさかあんなことをするとは……』」

上条「縁起でもない!一番厳しいところがいつ何時俺にそんな厳しい対応をするか分からない恐怖!」
(※一番厳しいところ=公式)

レッサー「『まさか、まさかチャーハンをおかずにご飯を食べるだなんて……!』」

上条「冷凍食品だったらしない?味濃いし、誰もカミングアウトしてないだけでそこそこの人やってると思うわ」

レッサー「アメリカンピザでピザの上へフライドポテト乗せたのも出て来てますしね。あれが本場から来たのかは不明ですが」

上条「超興味ねぇよ。つーか今日は尺短いんだから話聞けよ」

レッサー「『――そう、あれは私が寄宿舎の魔術師と呼ばれていた頃の話です……!』」

上条「やだ超聞きたいその話!どうせしょーもないノンフィクションただろうが!」

上条「ってウルセぇな!?時間ないんだからダラダラ喋ってないで本題入るぞ!」

レッサー「すぐ怒鳴る男の人って……」

上条「トールいんじゃん?たまーに女子に化けてるやつ」

レッサー「その説明は本人にとって不本意でしょうが、まぁいますね。元グレムリンで『敵多いな……よし!在庫一掃処分しよう!』ってぶん投げたやつ!」

上条「いいんだよ計算なんだよ!神様(※鎌池先生)がやってるんだから全部決まってるだろ何言ってんだ!」

レッサー「へーへーほんでそのトールさんが何かやらかしました?」

上条「いや本人は全く。ただその最近ちょいちょいこっちに来てるんだが……その、ナンパがな」

レッサー「あー、遊んでる系ですか。それで日本一の童×であらせられる上条さんとしては面白くないと?」

上条「そんな日本一謹んでお断りするわ。じゃなくてされまくるんだ、トールの方が。化けてねぇのに」

レッサー「あー……どっちの筋からも好かれそうですもんね−」

上条「こないだなんかな。ビリビリと喋ってるときにナンパされたらしく、危うく超電磁砲で初の死者が出るところだった」

レッサー「『――ただいま入ったニュースによりますと、本日午後二時過ぎ、○○県○○学区で超電磁砲による死傷者が出たもようです!繰り返します』」

上条「匿名報道が意味ねぇよな。ともあれその話を聞いて思ったんだ、『あれこれトールに女装させたら面白いんじゃね?』って」

レッサー「分かります分かります!オ×ガ×にメ×イ×させたいんですよね!」

上条「伏せ字ばっかりで意味が分からん。あとあくまでも仮の話だが、全部分かるんだったらそれはそれで不安になるわ」

レッサー「で、あればこのレッサーちゃんを選んだのはナイスなチョイスですよ柿○!」

上条「柿○ではないが、まぁよろしくお願いしますレッサーちゃんさん」

……

レッサー「くっくっくっく……!あなたには選択肢があります、一つは大人しく女装する。もう一つは上条さんにそげぶされてから嫌々女装するか……ッ!」

上条「なんでだよ。面白いとは思ったが強制するようなもんでもねぇわ」

トール「マジで!?ケンカしてくれんのかっ!?」

上条「ホーラ見なさいこういうことになっから!大体俺の周りはなんかどっか1箇所ずつ壊れてんだよ!」

トール「つーか女装?俺が?マジで?」

上条「したらどんなんだろうなー、って軽い気持ちだから。他意はない」

トール「別に女装しなくても充分可愛いくね?上条ちゃんもそう言ってただろ」

上条「お前それ余所で絶対に言うなよ!?言ったのは言ったが――サモン・魔人レッサー!君に決めた!

レッサー「我が名は魔人レッサー、コンゴトモヨロシク――つーか改めまして初めまして?『明け色の陽射し』のレッサーと申しますです」

トール「元『グレムリン』のトールだ。まぁそこそこよろしくな」

上条「あれ……?『明け色の陽射し』ってボスのとこじゃ……?」

レッサー「お名前は以前から伺っています。戦闘特化の『戦争屋』でしたっけ?フランスで暴れるときには一声かけて下さい」

トール「人を戦争狂みたいに言うなっつーのよ。一般人相手に仕掛けるのはただテロだぜ」

上条「あれ……?お前、俺に向ってケンカ売って……?」

レッサー「そうですか、残念ですが――んでここからは魔術の徒としての質問なんですが、高度な変身技術をお持ちだとか。トール関係の」

トール「あぁそうだ。トールが巨人の女に化けてミョルニルを取り返しに来た逸話が原型になってる。英雄神としてのトールの側面だぁな」

レッサー「私も将来そこまでは行きたいですなぁ。ウチは取り敢えず高速戦闘向けにセットしてしまったんで」

トール「まぁトール自体雷神・英雄神・豊穣神・文化神だもんなー。全体をカバーするよりか特化させた方が尖るし、いいんじゃね?俺だってそうだし」

上条「レッサーがちゃんとした魔術師に見える……!」

レッサー「ほんで前にトールさんは女性に化けた時の話ですが……恐らくですけど、結構見破られたりしません?それもプロじゃなく素人に?」

トール「ほー、よく知ってんな?上条ちゃんには話した憶えはねぇんだけどさ、なんか欠点でもあんの?相性の問題?」

レッサー「ではなくてですね、普段から女装慣れしてないですからよ単純に」

トール「そりゃ男だからな。つーか俺の性癖もノーマルだし、妖精の惑わしを使う関係で童×なんだよ」

上条「え!?そこ関係あんの!?」
(※「髪を結うと妖精が見えなくなる」・「髪を上げると見えなくなる」・「髪を伸ばすと見えなくなる」などかなり厳格。妖精は大人の敵で子供の味方、ただしよく”あっち”へ連れて行く)

レッサー「さっきから外野ウルッセェですよ!世界中様々な魔術があるんですから当然でしょーが!」

上条「――実は俺も妖精の加護を受けているから、必要に迫られて童×を守っているんだ……ッ!」

レッサー「上条さんの場合は妖精っていうか陽性っぽいお友達ですよね。世界のHAMADURA」

トール「あとオティヌスの野郎が実際に妖精になってる以上、割とマジでそうなってんぞ。『右手』がフルキャンセルしてっから効果がないだけで」

上条「なんて勿体ない……!」

レッサー「アホはほっといて話を戻しますが、それであなたに足りないのはズバリ――女装経験です……ッ!」

上条「アホだろ。なんでだよ」

トール「確かに……ッ!?」

上条「あ、ヤベェな今回も!トールも根本的な所はアホだったなそういや!」

レッサー「術式で姿を変えただけのあなたと普段から女装に手慣れている人!どちらがより女性らしく振る舞えるかと言えば言うまでもないでしょう!」

レッサー「この学園都市が誇るパペットマスター、ミツキ=ウナバーラを手本としなさい!彼は日頃から他人へと化けることにより変装の精度を高めているという噂があります!」

上条「趣味だよ?愛に生きる男ではあるが、それって要は癖(へき)に負けて目的見失ったってことだからな?」

レッサー「ですので!上条さんがトールさんへ愛を込めてプレゼントしたコスプレセット一式!私が責任を持って着付けさせて頂きます!」

上条「愛は込めてない。青ピのロ×巫女服シリーズがまだあっかどうか見に行ったら、つい悲しいワゴン商品と目が合っちまったんだ」

レッサー「ではまずはこれ!リクにもあったミニスカメイド服です!」

トール「なんかエ×な。どう見てもこれそっち目的で作られているとしか」

レッサー「少子高齢化対策ですかね。ただでさえ二次元しか愛せない人たち向けとか」

上条「三次元で売ってんのに二次元用なの?それで納得するんだったら最初から三次元でよくね?」

レッサー「では早速脱いでくださいな!こう、嫌そうにしながらでも最後は圧に屈して的な雰囲気を醸し出しながら!」

上条「すいませんこの子頭がちょっとアレなんですよ」

トール「それは何となく知ってた。別に脱いでもいいけど」

レッサー「――色気がない……ッ!やり直し!」

上条「なんでだよ。まだ着てねぇのに」

レッサー「女子を意識しなさいよ女子を!もっとこう前に抑えながら的な感が足りないって言うんですよ!」

トール「演技な。オケオケ、こうか?」

レッサー「そうそう!あと基本的に立った上ではあまり足を拡げないでください!パンツ見えますしそんなんだから一発で性別バレするんですよ!」

トール「……言われてみりゃそうな。所作がおかしかったら全部ぶち壊しだな」

レッサー「光臨天使エンシェルレ○を見習いなさいな!恥ずかしいのを堪え忍ぶ姿に人は萌えるんですからねっ!?」

上条「すいません講師の方、トールさんにあんまりこう変な知識を植え付けるとロンドンが焼け野原になりかねないので」

レッサー「おぉっとつい力が入ってしまいましたね!では引き続いては下着の付け方を!」

……

トール「ちゅー訳で着てみた。どうだい?」

上条「おー、可愛い可愛い。青ピに見せたら即求婚するぐらいにはレベル高いわ」

レッサー「その方は誰であっても戦いを挑むと思われますが、まぁこんなもんでしょうかね。あ、立ちポーズはもっとS字を意識してください!」

上条「萌えキャラかよ」

レッサー「萌えキャラですよ何言ってんですか!?全世界の女子も男子も自己顕示欲にまみれているに決まってるでしょーが!」

レッサー「そもそもモデル出身の人間が格好良いのは体に教え込まれたポージングを無意識の内にしているからです!人は見た目が10割!そこを忘れないように!」

トール「そっか、そうだよな……!あいつらキャットウォークでただ歩いてるだけじゃねぇんだよな!プロとしてやってんだよな!」

上条「大丈夫か?この子根は素直だからレッサーさんの戯れ言を真に受けっちまうんだぞ?責任持てよ?」

レッサー「何か迷ったら大槍葦○先生を思い出して下さい!ただ直立するのではなく、絶妙なポーズを出す事を意識して!」

上条「聞けよ話。あと大○先生は引っ張って来んなよ」

レッサー「マジな話で恐縮ですが、上条さんって女装男子ぶっちゃけリアルな男の娘ってどう思います?」

上条「どうってお前、あぁまぁ着るものぐらいは好きにしたらいいんじゃね、とは思う。勝手に撮られてSNSにあげられるのはないと思うが」

レッサー「あー、そうじゃなくてですね。たまーにこう『あれ?』っていう違和感ありません?女装されている方を見て、勘と言いますか、そこはかとない感じの?」

トール「あー、ヅラと一緒であるよな。スッゲー気合い入れて改造してるゲ○でも、後から聞かされて『やっぱりかー?』って感じのヤツ」

上条「俺もないことはない。その違和感って勘なのか?」

レッサー「ではないです。単純に体型です、体型。女性の方が子を産む関係上、骨盤の位置が男性と違ってやや上にありつつ、上部が細まっていまして」

レッサー「だから全く同じ体型であっても女性側が足が長く見える。そこら辺の差異を”違和感”として脳が受け取ってるんではないかと」

レッサー「詳しくは性的な視点でフィギュアスケーターを見ていれば分かると思います!男子選手と女子選手で大分違いますから!」

上条「そんなはっきり言ったのはお前が人類初だと思うわ。そして最期であってほしい」

レッサー「ともかく!ドヤ顔でトリビアを語るのではなくここからが大切ですよ!知識は基礎と同じぐらいに応用も大事なのです!」

レッサー「よくあるゲ○の方が攻撃力が上がりそうなハイヒール履いてるじゃないですか?あれも涙ぐましい努力の一つで、足を長く見せて女性の体型に近づけたいのです!」

レッサー「よって!全国の男の娘もとい女装男子の皆さんもまずは足元から固めるのをお勧めしますよ!なぁに遺伝子さんとケンカするのではなく、共存を模索するのです!」

上条「なぁこれ必要か?別に全世界の男の娘と予備軍に向けてメッセージ出してる訳じゃないんだよな?」

レッサー「似合わないからってなんだって言うんですか!モデル体型以外でもコスプレしていいんですよ!大体ねぇ!」

トール「上条ちゃん取り敢えず何枚か撮ってくれっかい?アドバイザーさんが怒ってる間に」

上条「アッハイすいません、なんか今日謝ってばっかりだな!でもいいのか?画像残るの嫌じゃね?」

トール「なんで?俺可愛いだろ?」

上条「なんて後ろめたさの欠片もない笑顔……!?」

トール「まー、こういうのは恥ずかしいと思ったら負けだ!むしろ今しか出来ないと思って楽しむぐらいの気持ちでいたいし、マリアンにあとで超煽りまくるぜ!」

上条「お前って友達いんの?まさかとは思うが、知名度だけが先行しているフェンリルとかロキとかもダチ認定なの?」

トール「『ドツキ合う→生きてればダチ』」

上条「コイツ、怪しいとは思っていたがまさかイギリス人か……ッ!?」

トール「いや多分違う。ジーサンはスカンジナビアで拾ったって言ってたぜ」

レッサー「そんなこともよりもさぁさぁ次はこのバニーさん衣装をどうぞ!若干一部が強調されますけども、まぁ一部だけですからね!恥ずかしがらずにデュフフフフフ!」

上条「お前の深いようで浅い話はもういいわー。所詮HENTAIの脳波がたまたまクリーンになっただけだったわー」

レッサー「まさに――タマタマだけにってね……ッ!!!」

上条「やかましいわ!?特に狙ってた訳でもねぇし上手い事言ってやったみたいな顔すんなアホが!?」

トール「よし次はネコミミツインテ・イリ○たんで行くぜ!クロ○にゃんは色的に合わないからな!」

上条「ここは地獄か」

……

佐天「……すいません、あの御坂さん気を強く持って聞いてほしいんですが」

御坂「なに?あ、なんかまたやらかした?」

佐天「”また”ってのが否定出来ないのが個人的にモニョりますけど。ではなく、ついさっきARISAさん経由で送られてきた画像がこれなんですけど……」

御坂「なにこれ――ってあいつと男の娘のツーショットですって……ッ!?」

御坂「……」

御坂「――RAW画像を要求するわ!男同士の友情って温かく見守るべき時もあるとの思うのよねっ!」

佐天「御坂さん趣味が過ぎます。気持ちは分からないでもないですけど、なんでゲ○に大らかなんですか」

御坂「ホ○な嫌いな女子なんていないわ!そしてなんだったら推していけるし!」

佐天「……あぁまぁ別の女子に盗られるよりかはまだいい、のかなぁ……?」


-終-
(※残念ながら海外ではむしろ男子の方が、という層も……文字通りの聖職者っていうかカトリックですが。ご応募ありがとうございました)

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