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Clock(trial)

『ハロウィンの日 ver2017』

 
――海原暗躍編
――ミサワ死闘編
――ミサカ下克上編
――レディリー危機一髪編
――ソーズティ潜入編
――御坂対決編


――ある焼け焦げた清掃室

結標「……」 ガチャッ

土御門「……」 ジーッ

結標「何よ、今日はちゃんと時間通りに来たでしょ。そんな目で見られる筋合いはないんだけど?」

土御門「……まさか」

結標「うん?」

土御門「まさか二ヶ月連続でお呼ばれするとは思ってなかったから!ネタを用意してなかったんだぜ……ッ!」

結標「どうして男は12歳児を通り過ぎるとバカになるのかしら?」

土御門「これはもう学園都市を飛び出して実家へ泣きつくしかないぜぃ!」

結標「ポシャるわね。それ壁乗りこえる前にポシャってイギリス乗り込む案件だと思うわ」

結標「てか白モヤシと青セロリはどこよ?時間通りに来たってのに、今度はあいつらが遅刻してるわけ?」

土御門「一方通行……まぁ、少し前まで居た」

結標「海原は?」

土御門「ソファの方だにゃー」

海原「――やぁ結標さん。お元気そうで、良かった、です」

結標「ぶた、バラ……?」

海原「UNA-BARですね。豚バラだと豚野郎が超進化したパターンかと」

結標「ど、どうしたのよっ!?そんなっ全身傷だらけでボロゾーキンにみたいになって!?」

海原「一方通行さんにね、少しばかり意見の相違というヤツでしょうか」

結標「何の話よ……」

海原「音楽性の違い?」

結標「言い換えろっつってんじゃないわよ。どうして急に解散決まったバンドの定型文になったの?む

土御門「……ま、俺たち『グループ』もな。そろそろ潮時ってヤツが来ただけだ」

結標「超嬉しい……っ!」

土御門「待って?なぁここは『そんなっ!?』ってするシーンじゃないの?」

海原「どう見ても素のリアクションですよね」

結標「このチームに入って一個も得した憶えないんだけど?」

土御門「俺たちの固い絆!……は、なかったな。基本スタンドプレー×4で全員野球から一番遠い試合してたっけ!」

海原「どっかの豆腐メンタル第二号がトチ狂ったときも、自分達には一切連絡せずに乗り切りましたもんね。流石です」

結標「てゆうか何やったのよ。ケンカ?依頼に関係してるってこと?」

結標「……アンタ達が一方通行の逆鱗に触れた――ん、だったらケガじゃ済まないわよね」

土御門「ンー時は勝てないかもだけど、負けるつもりもない」

結標「それは私もだけど。じゃなんなのよこの惨状は」

海原「実はですね、次の依頼がJCにドッキリを仕掛けるという」

結標「自業自得じゃない。私の人生で恐らく最初で最後だと思うけど、あのアホに『トドメさせよ!』って同意したと思うわ」

海原「……えぇ、自分も流石に川の向こうで上条さんが手を振っているのが見えました……」

結標「生きてる、と思うわ。その人はここ数ヶ月であっちとこっちを行ったり来たりしてる数の世界ランカーだけど、今は多分あっちにはいない」

海原「――奇跡の二ヶ月連続登場……ッ!」

結標「帰っていい?今ちょっと近所の小学校を監視するお仕事で手一杯なのよ」

土御門「あっズッル!俺こないだ海原係やったばっかじゃん!」

海原「おやおやー?自分がバイキ○扱いされてませんかー?地味に傷つくんですけどー?」

結標「ハッ!アンタがそんな繊細な神経持ってる訳ないでしょうが!」

海原「まぁ、確かに。自分は神経をイジる方ですしね」

土御門「気をつけろー。コイツらの国じゃ屍体加工するっつって、生きた人間も×してから加工するかんなー」

結標「まぁイメージ通りよね。ガチなサイコパス」

海原「いえ、そこのグラサン野郎の言うことも否定は出来ません。国に居ても、ここよりは多少マシかな、程度の仕事ばかりさせられていましたし、ね」

海原「ですから、まぁまぁ、この街でのぬるま湯のような生活は悪くない。悪くないんですよ」

結標「って言ってるけど?」

土御門「生まれ育った不幸自慢させれば『グループ』の中だと、コイツがトップだと思う。一方通行とタメ張れるレベル」

海原「こう、小さな幸せってあるじゃないですか?後ろを振り返っても誰にも尾けられてなかったり、生死に関わらない日があったり」

結標「……否定はしないわ。感謝もしてやらなくもないけどね、どっかのクソお節介なモヤシ野郎に」

土御門「……俺は別に、だな。職場がちょい変わっただけで」

海原「自分はかなり、ですよ。いくつかありますけど、例えば、そうですね」

海原「――『プレシャスメモリー○の御坂さん、水着比率が多すぎやしないか』って、ね」

結標「よしグラサンそいつ抑えてといて。今から2tのペットボトルテレポートさせてぶち込むから」

土御門「いや待て。こっちの冷蔵庫にあるウイスキー(角瓶)の方がダメージ大きい」

海原「待って下さいっ!?自分が何か悪い事でもしましたかっ!?」

結標「話の流れで『あ、これボケる前フリだな』ってのは分かったけど、そこ!?なんで持ってくるのが数年前に終わったカードゲームの話なのよ!?」

海原「別件でレイアウトやら仕様やらを調べていたら、つい?」

土御門「言うだけ言ってみろ?」

海原「まぁまぁ言わせて貰えるのでしたら!同シリーズTKR全132枚中御坂さんは40枚!これはもう御坂さんだから当然なのですが!」

土御門「海原、気持ち悪い」

海原「他キャラと一緒に映っているのもカウントしましたが、まぁ御坂さんなので話を進めさせて貰います!」

結標「……どういう文脈……?」

海原「ですがその中の9枚が水着ってどういうことですかっ!?比率多すぎじゃないですかねっ!?」

結標「やだ気持ち悪い」

土御門「いやまぁ、そういうもんだし?商売的な意味で」

海原「ちなみに次に多いのがツインテの子で30枚、お花の子と黒髪ロングJCが28で同率三位に!」

土御門「一般人設定が、なんで?どうしてその子がいっちょ噛みしまくってんの?」

海原「余談ですがKMJ(仮名)はコモン2枚とアンコモン1枚。『これもういっそのこと出ない方がネタになっておいしかったんじゃね?』と」

結標「レアリティの低さと一部から恨みを買いまくってるせいで、カード売り場のゴミ箱に捨てられてそうよね」

海原「――とにかく!そんな我々であっても上からの仕事をこなさねばならないのですよっ!」

土御門「もう時系列がシッチャカメッチャカだぜぃ。何言ってるのかも分からないにゃー」

結標「今更仕事って言われてもねぇ。非合法なのは飽きたっていうか、ウンザリっていうか」

海原「あーいえいえ、非合法ではないですよ。犯罪の類ではないですし、間接的には人助け?」

結標「具体的には?」

海原「別の『暗部』組織へ仕掛けます」

結標「抗争よねそれっ!?もう血で血を洗う最悪の展開になるに決まってるじゃない!」

土御門「それがにゃー、そういうわけでもないらしくてだ」

土御門「少し前に『暗部』で有名どころ、あらかた潰れっちまったよな?

結標「半分ぐらいは、あたしらが潰したと思うんだけど……?」

土御門「で、今度は下の方でコツコツやってた連中がコードネームもらって上がってくる訳だ」

土御門「……ただこれが、そーとー調子ぶっこいてるらしくて、上の方でも困ってんだとよ」

結標「ねぇそれ、あたし達がする仕事?てか本当に何させられるのよ?」

海原「いえ、ですからドッキリをして少し鼻っ柱折ってこいと」

結標「あ、ごめん。塾の時間だから帰るわね。あとよろしくー」 ガチャッ

パタン

海原「……」

土御門「……この、仕事。俺らが引き受けなくたって――」

海原「――任せて下さい!自分が、自分一人で立派にやり遂げて見せますとも!」

土御門「……あぁそう?じゃお前一人で頑張」

海原「取り敢えず常盤台の制服を四着用意したんですが、足りますかねっ!?」

土御門「うん、やっぱついてくわ!なんか不安だし、つーか18禁の展開になったら運営から叱られるから!」



――とある会議室

ナル「マジかよマジだぜマジじゃんよ!やっとボクらにお呼びがかかってきた訳さ!」

ナル「ボクらにもいよいよチームネームもらって昇格のチャンスかもしれないじゃんか!」

ヤっくん「落ち着けよナァルー。また『新入生』退治かもしんないだろー?」

清ヶ「新人イビリもアレはアレで悪かないが、そこら辺どうだリーダー?」

リーダー「どうも何も。可能性はゼロじゃない、って言い続けて半年。前の失敗はチャラになったぐらいは働いてる」

リーダー「名前のある『暗部』も掃討されたし、僕らがいつ第一級の『暗部』になってもおかしくはない、かな」

ナル「だーよーねー。気がつきゃ僕たちも優等生っぽいよねー。あぁまぁガラじゃないってぇ思うけどぉ」

ヤっくん「(てかもう僕らがチームコードもらっても、今更感が強くて)」

リーダー「ただね、やはり僕は消去法で残っている、と言えなくもない」

清ヶ「あ?っだよそれ、俺らナメられてんのか?」

リーダー「とは言い切れない。残念ながら、そう残念ながらね」

リーダー「『スクール』の第二位、『アイテム』の第四位と正面からやり合ったら敗北は必至」

リーダー「『グループ』だって僕らは第一位一人に負けた……に、加えて学園最悪のテレポーターが入ってるって情報もあった」

ナル「うー、ぶるぶるっ!もうあいつの話はいいよぉ!」

リーダー「『アイテム』以外の『暗部』があらかた居なくなってお陰で、僕らの評価や重要度が上がっていることを忘れてないで」

ヤっくん「今戦ったら、どう?僕らだって前よりかは強くなってるよ」

リーダー「『スクール』と『アイテム』ぐらいだったら、こっちが先手を取れればなんとか勝てる、かもだけど『グループ』は別」

リーダー「あれはもう天災とかそういうレベル。誰だよ『一方通行がケンカに負けて弱くなった』って言った奴は!」

ヤっくん「うん、そういうヒトを初対面でリクルートしようとするリーダーもどうかなー?見る目はあったってことだけど」

清ヶ「俺たちだけじゃ枚数が足りない?」

リーダー「ポーカーのルールで相手の手札には必ずジョーカーが混ざる、かな。勝負以前の問題」

ナル「うへぇ、厳しいよねぇ」

リーダー「『アイテム』以外は解散した――けど、第一位から第四位までは健在。しかも潰し合いどころかエレメント事件で共闘までしてる」

リーダー「『暗部』としてやり合う機会はなくなった分、気が楽ではあるが……」

清ヶ「勝手だよなぁ。クソ偉大な先輩どもを持つ後輩の身になれっつーの」

ヤっくん「で、でもリーダーがさ!地道に勧誘活動を続けていればきっと!」

ヤっくん「相手にジョーカーがいても、こっちの手札10枚だったらスッゴイ役ができるって!」

ナル「あ、はいはいはーい!僕いいこと考えた!これ上手く行けば『グループ』も目じゃないってぇ!」

ヤっくん「マジか!?言ってみろナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁル!」

ナル「うんっ、まずは一方通行を仲間にすれば」

ヤっくん「……ねぇ、リーダー。ナルに効くお薬って何かあるかな?僕は知らない」

リーダー「ボクも……ないんじゃないかなー」

清ヶ「……お前が、もっとバカじゃなきゃ!バカなきゃホントに使えるヤツなのに……!」

ヤっくん「てゆうかリーダーの勧誘癖の割に、僕らの新メンバーがゼロって時点でね、もうね」

清ヶ「野良でかつ強力な能力者なんていないもんなぁ。『暗部』に入ってるか、『新入生』だったり」

リーダー「……だがまぁナルの言ってることは、大外れでもない。小外れぐらいだ」

ヤっくん「外れじゃんか」

リーダー「『グループ』の第一位は鬼門――だけどね、そのチームメイトならどうかな?」

清ヶ「引き抜きをかける、か?」

リーダー「解散しているから逆恨みされる心配もないしね」

ナル「あー、悪かないんだけどさー、リーダー。『グループ』って第一位のワンマンチームじゃないの?」

リーダー「不明だ。今も言ったが強度の高いテレポーターがいる”らしい”の、四人組だそうだ」

清ヶ「他二人はザコいんじゃね?サポート専門で下っ端と一緒的な感じで」

リーダー「かもしれない。サポート要員だろうというのは、ボクも同じ意見だよ」

リーダー「が、しかし強者ほど、強い能力に恵まれた連中ほどツメが甘くなる。それはボクらが『暗部』で学んだことだ」

リーダー「彼は強い。当たり前だよ、曲者ばかりの学園都市で相変わらず最強なんだから」

リーダー「――だが裏を返せばただそれだけだ。殴り合って最強、個人として最強、集団線で最強。大いに驚異だ、そして厄介極まりない」

リーダー「でも”それだけ”だ。第三次世界大戦で学園都市はロシアと戦ったが、彼はなにかしたか?」

ナル「……そーいやぁ、聞かないよね。活躍したって話は」

リーダー「巡航ミサイルなり敵の戦闘機を”優しく”エスコートしたのは、音速戦闘機に乗ったセンセー達。被害らしい被害もなく」

リーダー「個人の”武”はその程度のものさ。やりようなんていくらでもある」

ナル「リーダー変わった?」

リーダー「ボクだって二度と遭遇したくないがね。何も真っ正面から当たって砕けてやる必要はない。あっちの土俵に上がってやるつもりもない」

清ヶ「いいね。そういうの好きだ」

リーダー「――と、いうような考えは誰だってする。『アイテム』に『スクール』、そして学園屈指の能力者が居ない有象無象だったら特に」

リーダー「そんな搦め手専門の連中に付け狙われても、『グループ』は誰一人欠けることなく解散した訳さ。これが意味するところと言えば?」

ヤっくん「第一位をフォローでてきる、優秀なバックアップが要員が居る、だねっ!」

リーダー「そして大事なのはここからだ。件の学園最強さんは時折正義のヒーローごっこで『暗部』にちょっかいかけてくるんだが」

ナル「うっわクソ迷惑だよそれぇ」

リーダー「そこに『グループ』の同僚らしき影はない、と」

清ヶ「仲が悪い?」

リーダー「分からない。少なくともプライベートで親交はなかった、そこがポイントかな」

リーダー「金銭的な条件で仲間に引き入れられるかも知れない。可能性はある」

清ヶ「個人的に第一位を恨んでて、でも復讐するだけの力がなくて泣き寝入りしてんだったら最高だ」

ヤッくん「そこは今日会う『暗部』のヒトに聞けばいいんじゃない?何か教えてくれるかも」

リーダー「だといいが、望み薄だな」

ナル「なんでぇ?僕らが強くなったら上も嬉しいんじゃないの?」

リーダー「これは前に、大阪のスポーツチームで指揮を執っていた”センセー”の話だが」

リーダー「あまりにも弱いチームを補強するため、運営側へ外部選手の招聘を頼んだのだが、にべもなく断られたそうだ」

清ヶ「チームを強くしたいんだろ?金がなかったのか?」

リーダー「『弱いチームでも集客力はある、最低限チームの体裁だけ整っていればそれでいい』と遠回しに言われたそうだ」

リーダー「まぁそうだね。スポーツチームが優勝しようがしまいが、運営側としては儲かっていればいいのだから」

清ヶ「……なーる。俺らもコスパ最高でいた方が都合がいいって訳か」

リーダー「ま、向こうの考えにいつまでも乗ってやってる筋合いもないけどね。いざとなれば切ればいいしさ」

リーダー「ただ、そろそろ上も考えてるんじゃないかな、とも思うけどね。手を噛まれない程度のエサをさ」

ナル「マッジで!?これはもう昇格間違いなしでしょ!やらなきゃでしょ!」

ヤっくん「ナールー、うっさいよー。そろそろメッセンジャーの人が来るって」

ガチャッ

海原「――失礼します。こちらが……で、合ってますね」

ナル「おっ、イケメンだ」

清ヶ「胡散くっさ」

ヤっくん「そ、そっかな。ね、リーダー」

リーダー「……いいね」

ヤっくん「あ、スイッチ入った」

リーダー「いい顔をしているね。能面を張り付かせたような、作り笑いにも程があるような薄っぺらくも誠意ある表情」

リーダー「その奥で肉食獣が隠れているような、うん、適度にクレイジー、重度に狂気が滲んでいてクールだよ」

リーダー「っていうかそれ、作り物だよね?どうやって顔を変えているのかは分からないけど」

海原「それはどうも。初対面で見破られたのは、この街で二人目です」

リーダー「どう?君も一緒にセンセー退治の旅に出ない?」

海原「分かりましたっ喜んでっ!このエツァリ粉骨砕身の覚悟で頑張りましょう!」

土御門「オイ名前、誰の皮被ってんだか思い出せよ」

海原「では取り敢えず有効の証として、たまたま持っていた常盤台の制服をプレゼントしましょう!有効の証にね!」

ナル「ただ者じゃねぇ!?」

ヤっくん「別の意味でだけどねっ!」

海原「お嫌でしたら棚川中学校のセーラーと枝垂桜学園のブレザーも用意してありますが?」

清ヶ「たまたま?オマ今たまたまっつってたよなぁ?」

海原「紳士のたしなみ、ですかね」

土御門「誉められてないからな?なんかこうハンカチ出してフラグ立てたなろ○系主人公っぽい台詞キメてっけど、立ってないからな?へし折ってるよ?」

海原「だって妹一筋のあなたには分からないでしょう!?白モヤシと露出狂テレポーターに囲まれて仕事をするのが、どれだけストレスなのかは!」

海原「それに比べてJC×4なんて……こっちがお金を払いたいぐらいですよっ!なんだったら払いますけど!お幾らですかっ!?」

土御門「落ち着け!お前の株がもう下がらないところにまで下がってるから!」

ヤっくん「……なに、これ」

清ヶ「潰すか?」

ナル「キモいっていうかキモしぃ。いいんじゃないかなぁ?ね、リーダー?」

リーダー「……」

ナル「うーい、もしもーし?」

リーダー「――海原光喜」

ナル「え、知り合い!?」

リーダー「いや、知り合いではないが……噂で聞いたことがある。常盤台の理事長の孫が『暗部』に所属していると」

リーダー「リスクも大きいし、何よりもまずいいところのボンボンが入る意味がない。どうせガセネタだろうと放置していたのだが」

清ヶ「噂は真実だった、と。へー、ロックな生き方してんな」

ヤっくん「ってゆうことは、この言動も僕らを油断させるために?」

海原「あ、すいません。良かったら『エツァリ先輩』って呼んでくれませんか?」

ヤっくん「違うよねっ!何故かは分からないけど絶対に違うような気がするよっ!」

ナル「で、その組織は?聞いたことあるかなぁ?」

リーダー「……『グループ』だ」

清ヶ「マジ!?これが?」

海原「元、ですが」

ヤっくん「……本当に?」

土御門「間違ってはいない。事実全てでもないが」

リーダー「まさか……ボクたちの補充要員っ!?」

海原「そうですねっ!今日からヨロシクっ!」

土御門「じゃ、ねぇよ。海原ー、主旨思い出せー?俺はいい加減帰りたくなってきたからなー」

海原「主旨……?あぁ!憶えてます憶えてます」

土御門「なら、いいんだが」

海原「そうですね、では皆さん座って――は、折られるようですので、心構えを一つ」

海原「この学園都市において、絶対にしてはいけないことがあります。それをお教えしましょう」

土御門「なんで先輩からのアドバイスになってんだ!?」

海原「まぁまぁ自分達が何を言っても聞かないでしょうし、どうせならば生存率を上げる生き方をレクチャーしようかと」

土御門「主旨……あぁうんもういいや」

海原「学園生最強、序列一位と言われている一方通行さんですが――実は過去に一敗を喫しているのは、有名と有名ですよね」

清ヶ「こっちの業界じゃそれなりに」

海原「ではそれが”誰が”ってのは、分かりますか?具体的な名前とか、能力でも良いですよ」

土御門「――お前」

海原「(いや違います、違いますからそれは降ろしておいて下さい。自分も約束の都合上、彼に関しては寝首を掻くつもりは毛頭ありません)」

海原「(ここは注意しておくことによって、彼女らのような危険分子が暴走しないために保険をかけておくのがいいかと)」

ナル「あっれぇ?そういや聞いたことないよねぇ、どんなバケモンなんだ!とは思ったけど」

リーダー「意図的に隠されている、か?」

海原「できれば出会わないことに越したことはないのですが、万が一、不幸に事故によって出会ってしまったら、自分の言葉を思い出して下さい」

海原「――『あ、こりゃ諦めよう』と」

ヤっくん「最初のアドバイスが丸投げから始まるのっ!?」

海原「あ、いえこれは比喩でもなんでもなくてマジです。遭遇イコール『暗部』としての死だと思って下さい」

ナル「なんて恐ろしい……!」

清ヶ「……嘘くさっ」

リーダー「証拠が、あれば納得できるんだが」

海原「黒海なんとかさんという、少しばかりストライクゾーンやや下目の方、ご存じですか?」

リーダー「ストライクゾーン以外は知っている。何度か仲良くケンカした仲だ」

海原「最近は何をしていますか?」

ヤっくん「そういえば……あんま姿見なくなったよ、ね?居なくなった訳じゃないのに」

リーダー「前にスカウトした手前、調べてはみたんだが――『暗部』がどうか、そのスレスレの仕事ばかりこなしている、らしい」

海原「そうなったのも、ただ一人の男に負けたせいです」

清ヶ「あの……バトルジャンキーが、かっ!?」

海原「……えぇ、ですからあなた方も覚悟を決めた方がいい。それに彼は独自のコネクションを有してるらしく」

海原「第一位、第二位、第三位、第五位、第七位とはメール交換するという噂が……!」

ナル「もう敵いなくね!?どんだけ顔広いんだよぉ!?」

土御門「友達の友達、も含めるなら第四位も知らない訳じゃない。第六位はびっみょーだが」

リーダー「その情報が正しいという証拠は?」

海原「そればかりは体験して貰いませんとね、忠告はしましたよ――さて、ではここから本題と言っても過言ではないのですが」

海原「自分もこのチームになったからには、全員のメアドなどを教えて頂ければ嬉し――」

土御門「はいストップ!条例的にそれ以上は厳しいっ!」

土御門「今日来たのは……あー、お前さん達の『上』の方からな。そろそろ天狗になってるんで、鼻っ柱折ってきてくれ、って頼まれたからなんだよ」

清ヶ「引退した『グループ』が説教すんのかよ」

土御門「あぁいやお前さんらは強い。そこは認めるし、俺だって戦闘になったら後ろ向いて全力ダッシュで逃げる」

土御門「お前らよりか弱い相手には正面からのゴリ押しで済むだろうし、それでどうにかならない相手の方が少ないのも事実ではある」

土御門「……問題なのは『どうにかならない相手』に対峙したときには、アドリブが効かずに負けるんじゃねぇのか、ってところだな」

ナル「自分より強い相手に負けんのは当然じゃねぇ?」

土御門「いつだったか一方通行にかち合って、病院送り程度で済んだのは運が良かったからだ」

土御門「もうちっとヤツの機嫌が悪かったら、どうなってたか――分かるよな?」

ヤっくん「う!そ、それは、ねぇ?」

土御門「多分『上』もそこら辺心配して俺らに声かかったんだと思うが、そこら辺はもちっと気にした方がいいぜぃ?」

リーダー「それはどうもご丁寧に」

海原「分かりました。まぁ自分がいれば多少の余裕はできるでしょうし」

土御門「お前は俺と帰るんだよ!ほら来いっ!」

海原「自分にだって出会いを!釣った魚にエサをやらない人間よりも、こまめに真摯なジェントルの方がモテるんですよ!」

土御門「はいはい。お前も俺も義妹連盟として頑張って行くにゃー」

海原「そんな奇妙な同盟に入った覚えは――」

パタン……

ナル「なんだったんだ、あれ……」

ヤっくん「『グループ』の残り二人の面子は分かったけど……分からなかったよね、キャラが。実はガチンコ強かったりするのかな?」

清ヶ「金髪じゃない方はレベル4で戦闘特化じゃない、と思う」

清ヶ「でもヤれなくはないな。何回か仕掛けようとしたらそれとなく体動かしてた」

ヤっくん「金髪さんは?」

清ヶ「……分からない」

リーダー「ボクも同意見だね。強いようで強くないような……強か、って意味では強いんだろうけど」

ナル「まぁまぁ今の人らが『グループ』かどうかは置いておくとしてさ、今っからフリーじゃん!遊び行こーじゃんか!」

ヤっくん「ナルは楽観的すぎるよぉ……」

ナル「難しく考えたって仕方がないしぃ、なんつーかアイツら『優等生』のニオイがしたんだよねぇ」

ナル「正論ばっかでつまんなくね?僕、あーゆーの嫌い」

ヤっくん「あ、僕も僕も」

清ヶ「俺もだわ」

リーダー「そういう話をしてたんじゃないんだが……まぁいい、取り敢えずコンビニでアイスでも買ってブラつこうか」



――コンビニ前

ナル「てかさ、リーダーが入れる入れる新人はどーよぉ?」

ヤっくん「ダメ人間から選抜したい気持ちは分かるけど、使えるダメ人間って少ないよね」

清ヶ「使える時点でまずダメ人間にはならないからな」

リーダー「とも、言い切れないかな。センセー次第で人は変わるし、変わってしまう訳であり」

リーダー「中にはそこそこ能力があってもダメな人材はきっとあるに違いな――」

高校生「……単位、どうしよう……!進級できるかギリギリ……っだよ、俺が悪いのかよ!まぁ悪いけど!」

高校生「バイトしないと食費が……ッ!まぁバイトしている暇もないんですけどね!いつまてイギリスへKAMIKAZEさせられるか分かんないから!」

高校生「最近は先生も視線合わせずに『が、頑張るのですよ!きっとワンチャン!気合い入れればワンチャンあると思うのです!』って根性論しか言ってくんないし!」

高校生「俺がこの先生きのこるにはどうすれば……!」

ナル・ヤっくん・清ヶ・リーダー「「「「――あ、いた」」」」



――黄泉川家マンション

打ち止め「――でね、やっぱりこれは高度な情報戦じゃないのか、ってミサカはミサカはそう思うの!」

番外個体「いやぁ違うんじゃないかなぁ。前職に未練アリアリで堂々凱旋す!……つもりだったのに、ケチつきまくったから今更だしさぁ」

番外個体「ムリっしょ?前のグループですら実務能力なくて干されてたのに、65の手習いで今更感があるしgdgdじゃね?」

打ち止め「まだだ!試合が終わってなければ逆転のチャンスはあるのだよ!とミサカはミサカは心にも無い事を言ってみる!」

番外個体「観測気球バンバン打ち上げて、勝ち目がなくなったら尻尾巻いて逃げるチキンスタイルはこのミサカも嫌いじゃないぜ☆」

番外個体「ただどっこまで通じるかにゃー。最初の一回は通じても、実績出せなけりゃ空手形切りまくってたってバカがバカにされたって気づくじゃんか」

番外個体「そうなったら後は下がる一方で上がる目はない、つーか難しい訳だわな」

打ち止め「そこをあえて、まぁウグイスダニ?式吶喊センポーで乗り切るとしたら何があるかな、とミサカはミサカは奇跡を信じるのだ!」

番外個体「いやあれボケっしょ?『なんでやねん!お前ここから下ったら死ぬわ!』っツッコミ待ちっつーだけの」

打ち止め「ふはははははは!地道な地上戦ができない以上、全ては空中戦に頼って全てを風任せにするのもロマンなのだよ、とミサカはミサカは煽ってみる」

番外個体「そーねー、これ以上のサプライズ()企むんだったら補選狙うしかないんじゃねー?」

番外個体「フロントに出してあった当選クリーチャーをモルグへ送って、マスターカードをドロー!」

番外個体「『都政を変えるには国政から!』で都議補選と知事選のダブルへ持ち込んで華々しく勝つ!……んだったら、まぁいいんだけど」

打ち止め「勢いしかないよねそれって、とミサカはミサカは欠点を指摘してみるのだ」

番外個体「能力者でもそうだけど『このパターンに入ったら勝つる!』は、裏を返せばそれ以外のアドリブに弱いわ応用が利かないわってロクなもんじゃねーぞ」

番外個体「一点集中型、特化型は強度以上のポテンシャルを見せるけど、まぁ手口が見切られたら終わりだぜ」

一方通行「おイ、クソニートども。お前ら何やってンの?」

一方通行「選挙権もねェガキどもが選挙の話したって意味ねェだろ。まずは18歳になンまで待ってやがれ」

番外個体「選挙権ほーしーいー!私も選挙カーの前でアジって自己顕示欲を満たしてみたいの!」

一方通行「普通に選挙妨害だな?公示前だったらともかく、公示後はフツーに警察に連れて行かれっかンな?」

一方通行「もうオマエそのまま逮捕されて来いよ。帰って来なくても一人で充分生きていけンだろ」

打ち止め「ミサカ達にも愛を!ご当地キャラやアザラシが住民票貰えるんだったら、愛らしいミサカ達もってミサカはミサカは思うんだよ!」

一方通行「あァっと……冷蔵庫にレアチーズケーキ入ってたな。そういや」

打ち止め「チーズケーキ!?大人なミサカはショートケーキの方が好みだけど、レアに悪気はないのだ!とミサカはミサカはダッシュで奪取を試みたり!」 シュッ

一方通行「あンまはしゃぐなよ。すっ転ンでびーびー泣くンだから」

打ち止め「はーいっ!あ、でも勝手に食べるな桔梗のじゃなかったのかな、って疑問をミサカは気づかないフリをするのだっ!」

一方通行「おい昭和のヤンキー。オマエの影響出まくってンぞ、あ?」

番外個体「おっと親御さん!子供の情操教育を妹の責任にするのはよくないと思うんだぜ!」

一方通行「保護者が不良と付き合うな、つーのは当たり前の話だと思うンだけどなァ?」

番外個体「いやいや、ミサカ達は高度に政治的な話をしているだけであって、むしろ若者の政治離れが進んでいる昨今、誉めて欲しいぐらいですよ?」

一方通行「政治の話一個もしてなかったろォが。政策皆無で顔だけで選んでンだったら、花屋と何が違うンだか」

番外個体「高度に発達した政治はオカルトと見分けがつかない……!」

一方通行「うるせェ、超うるせェわ」

番外個体「つーかさ、つーかね、私思ったんだけどどうやったらあなたに最大限の嫌がらせできるかって」

一方通行「犯行予告すンなよ」

番外個体「まぁいくつかプランはあって、どれか実行したりするじゃない?近所のスーパーの万引きからテロまで色々と」

一方通行「オマエ、ほンっっっっっと殺すぞ?」

番外個体「オーケーお兄さん!落ち着いてチョーカーから手を離せ、なっ?!あくまで(仮)であって実行に移すとかはしないから!」

一方通行「オマエが他の連中に迷惑かかるっつってンだ、あ?自爆テロは始末が悪りィンだよ」

番外個体「どうせ死ぬんだったら道連れは多い方がいい」 キリッ

一方通行「誰か法で規制してくンねェかな」

番外個体「まぁそんな感じで法に触れるのはミサカもイクナイと思うのよ。あぁ道徳の問題じゃなくて、その後に待ってるオシオキが」

一方通行「当たり前だ。警備委員ンちに世話ンなっといて、泥塗るバカは死ンでもいいと俺は思うわ」

番外個体「だからこう、法律に触れない範囲で嫌がらせをすれば強くは言えないとも思う訳!どうだろっ!?」

一方通行「オマエそれなンで俺に先に言ってンの犯行予告してンのと同じだからな?」

番外個体「え?『こいつ今度何してくれやがんの?』って事前に言った方がダメージでかくない?」

番外個体「予防注射だってある日突然来られるよりは、何日も前から『イタイよ−イタイよー』っつってる方が痛さも増す、的なアレで」

一方通行「賢いバカで良かったわー。だって小学生のガキと変わんねェしよ」

一方通行「ンで?それでオマエ何助走つけて悪いことしてくれンの?試食コーナーでも制覇すンの?」

番外個体「いやほらら、そこはそれ時流に乗らないと。世間じゃハロウィンって言うしさ」

一方通行「日本のハロウィンは嫌がらせする日じゃねェ。いつもと違ったパッケージの菓子食って終わる日だ」

番外個体「ぷぷっ!海外では流行ってるのに!」

一方通行「基本カトリックじゃやらねェ。しかも最近は禁止される傾向がある」

番外個体「だからっ日本でも!ハロウィンドッキリに被せてやればそれほど怒られない!筈だわっ!」

一方通行「てかさっきから何度も言ってっけどよ、それ俺に予告してたらドッキリでもなンでもなくね?ただの犯罪予告だな?」

一方通行「てかあれ、俺も詳しくは知ンねェけどよ。子供が悪戯すっから大目に見られるンであって、大人がやったら普通に叱られンじゃね?」

番外個体「そこはそれ、『こ、これ怒るほどのもんじゃないよな……?』ってラインギリギリを狙って落とす!匠の技だぜ!」

一方通行「ンな匠はしねェ。いたとしたも滅ンじまえ」

番外個体「で、ミサカはね、あの人にドッキリを」

一方通行「――やめろ。それだけはやめろ」

番外個体「おぉっ?いーねー、私そういうの好き!何がー?何がマズいん、言ってみ?」

一方通行「一応オマエのために言ってンだよ。相性が最悪なンだ!」

番外個体「相性っつったら電気系だけじゃなくない?あの人のは全部キャンセルしちゃうんでしょ?」

一方通行「……あァそういうンレベルじゃねェ。なンつったか、そうな……」

一方通行「例えばバトルスピリッ○にプレシャスメモリー○のカードが乗り込むようなもンだ、分かるか?」

番外個体「お兄さん、たまーに独創的すぎる例え話するよね?好きなの?」

一方通行「ジャンルが違うンだよ!格闘ゲームやってたやシューティングになってるような!」

番外個体「それ確かあったわー、クソゲーとまでは言えない微妙な完成度で他のミサカがプレイしてたわー」

一方通行「……てか何するつもりなンだよ」

番外個体「ミサカネットワークのさー、大体情報量の半分近くが”あの人”なんだよね」

一方通行「俺が言うのもなンなンだが、まァ分かるは分かるわな」

番外個体「で、そろそろ共有フォルダ画像がパンパンになってきて」

一方通行「なァ?俺はその気持ち悪いネットワークで生かされてンの?」

番外個体「”一方&上”で検索かけると10万ヒットするよ?」

一方通行「オマエら悪い方向に進化してねェか?10万つったらそれ一人10以上だっつーことだろ?」

番外個体「ミサカもね、なんでこいつこんなにモテるんだろ?って興味があったんだ」

一方通行「意外とまとも、か」

番外個体「まぁねー」

一方通行「ンで、本音は?」

番外個体「このミサカが他のミサカを出し抜いたら超気持ちよさそうじゃん?」

一方通行「良かったわー、やっぱこいつ最悪だったわー」

番外個体「だからドッキリを仕掛けてくるから、電車賃くださいっ!」

一方通行……あァうン。メシ代も持たせっけど、遅くなるようだったら連絡入れろな」

番外個体「これでメシを奢らせれば一食分をトレカに回るわっ!」

一方通行「オマエの悪意は小学生レベルなンだよ。助かるっちゃ助かるが」



――上条家(の、アパートというか学生寮) 玄関口

番外個体「――記憶喪失なのよ、私はねっ!」

上条「帰れよ、もしくはアポ入れてから一昨日来やがって下さいませんか?」

番外個体「べ、別にあんたを頼ってきた訳じゃないんだからねっ!」

上条「雑だな?ビリビリの演技してる割には設定がアバウトすぎやしないか?」

上条「まず記憶喪失設定なのにこの家へ迷わず来た所から始まって、俺頼ってっつーことは俺知ってるじゃねぇかアァもうツッコミ面倒っ!そして長いっ!」

番外個体「そ、それはっスマフォの中にこの家のデータとあなたのデータとどんな関係だったのかって書いてあったから!」

上条「そこまで詳しく書いてあんだったら、他のデータ見れば日常生活に支障ねーだろ。俺は結構大変だけど」

上条「てゆうか誰一人、俺がゲロった以外で気づかなかった俺に謝れ!どんだけ他人から興味持たれてねーんだってなアハハンっ!」

番外個体「それはちょっと可哀想かも、ってミサカは思うわー」

上条「つーかな、そもそも初対面だったら『未来人ルートのビリビリ来たっ!?』ってビビるかもだが、俺お前に会ってるからな。ハワイんときに」

番外個体「機密事項です☆」

上条「”禁則”な?テメー万単位で余所様にケンカ売ってるっていい加減理解しろよコノヤロー!」

番外個体「いやぁそれがさぁ、あのー……あぁアレ!アレだから!」

上条「本当に杜撰なプランで乗り込んで来やがったな!可愛いけど残念な子のナイトスクー○もど番組だって、もっと事前に下調べするよ!」

番外個体「あー、多分お姉様が重度のストーカー拗らせててさ?」

上条「あっはっはっはっは、何言ってんだよ。ビリビリが俺なんかストーカーして訳ねーだろ」

上条「ビリビリ馬鹿にすんなよ!あいつは真っ直ぐなんだよ!影でコソコソするような性格じゃないんだからなっ!」

番外個体「追い詰めてる追い詰めてる。オリジナル聞いてたら冷や汗ガッツリかいてる」

番外個体「まぁそんな訳で記憶喪失になっちゃって未来から来たらしい!どーよ!?」

上条「脳内バッファが足りてないか使った変数の解放忘れってからな!ちょいちょい軌道修正したってもう高速逆走してる状況は覆らないから!」

番外個体「べ、別にアンタのためじゃないんだからねっ!」

上条「お前の脳内ビリビリって、なに?ツンデレも人気は人気だけど、そこまであからさまだとただの態度悪い人だよ?」

番外個体「あ、取り敢えず、これどうぞ」

上条「あ、はい、どうも?コンビニの袋?」

番外個体「つまらないモノですが」

上条「こりゃどうも」

番外個体「ホームがレスのおっちゃん達に競り勝ってきたお弁当!(賞味期限切れ)」

上条「帰してきなさい!その人たちは常にアウェイで世間様の荒波乗りこえてんだから!食事ぐらいは取らせてあげて!?」

番外個体「いやむしろ『お嬢ちゃん若いのに苦労してんだねぇ』って」

上条「風評被害も甚だしいな!妹達に謝って!」

番外個体「お姉様は?」

上条「ビリビリが白井さんと空跳んでるのを見ると、『あぁ、夏だなぁ』って思うよな」

番外個体「サザ○さんは一体何人死んだの……?」

上条「……まぁいいや。遊びに来たんだったら、上がってく?」

番外個体「ミ、ミサカはそんなに軽い女じゃないんだからねっ!」

上条「あっそう、それじゃお疲れー」 パタン

番外個体「……」

番外個体「――昔々、あるところにおじいさんとおばあさんと桃太郎が住んでいました」

番外個体「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんと桃太郎は川へ洗濯に行きました」

番外個体「おばさんが洗濯をしていると、上流から大きな桃太郎が流れてきたのです……ッ!」

カチャンッ

上条「水難事故っ!?桃太郎ダイレクトに流れてきちゃったらそれ事故だから!」

上条「てゆうか最初の桃太郎いるし!もうただの実子じゃねぇか!一緒に住んでんだからな!」

上条「てか壁越しにボケてツッコミ要求すんなや!ドア閉めたんだからこの話は終わりですよって合図してんのに!?」

番外個体「いえーい☆」

上条「こいつ……佐天さんばりにタチ悪いな!向こうは悪意があったけど、こっちにも悪意がある!」

番外個体「同じだね。私もその子も悪意あるよね?」

番外個体「てかまだ話は終わってなくてさーぁ。あ、ごめ、ちっと屈――まなくていいや。大体身長同じくらいだし」

上条「お前タッパそこそこあるもんな。実はちょっとその成長剤欲し――」

チュッ

上条「――いぃっ!?」

番外個体「どうよ!ドッキリ大成功!」

上条「いやあの、ドッキリっていうか、その」

番外個体「それじゃこのミサカは帰るぜっつーかうわなんだ顔スッゲー暑いけどそれじゃーな!」

上条「お、おぅ!車に気をつけて帰れよ!」



――黄泉川家

一方通行「おゥ早かったな。マジでメシの時間前に帰って来たか」

番外個体「……」

一方通行「あン?」

番外個体「……くっくっく!この私が大分リードしたってこのミサカは勝ち誇ってみたり!」

一方通行「ちょくちょく別のミサカ混じってンぞ。一人称『私』っつってなかったか?」

番外個体「ヘイ!細かいことはいいんだってば!聞いてよ!」

一方通行「へーそりゃすげェ具体的に何やって来たンですかァ?」

番外個体「……デキちゃったと思う」

一方通行「――ちょっと節操の無ェバカ半殺しにしてくる。黄泉川には『やっぱムリだった』つっててくンねェか」

番外個体「いやでも簡単だったぜ?玄関先でちょちょいと、みたいな?」

一方通行「ンな生々しいこと聞きたくねェよ!……え、まじかやっぱあいつ勇者かよ」

番外個体「相手の一種の隙を突いてチュッとね!まぁ隙だらけだったけど!」

一方通行「コウイカか!……いや待て。あれだ、あー……」

一方通行「一応参考まで聞きてェンだが、オマエ、ガキっとどう作るのか知ってンのか?」

番外個体「あ、あれ?ほっぺにちゅーすると子供ができるってミサカはミサカが言ってたの聞いたぞっ!?」

一方通行「――はーい終ゥ了ォォォ。夕飯温めっから手ェ洗って来ォい」

番外個体「な、なんか間違ってた……?」

打ち止め「まぁ所詮、お姉様(ヘタレ)のクローンだしねぇ、とミサカはミサカは自虐ネタを言ってみたり!」



――上条家(の、アパート)

御坂妹「どちら様でしたか、とミサカはこの甘い一時を邪魔する無粋な訪問者にぶぶ漬けを出すよう要求します」

上条「あぁごめんな。今お前のねーちゃん……に、一見見える妹さん?が」

御坂妹「ふっ、白モヤシと絡んでいるから出遅れるのですよ、とミサカは心の中でガッツポーズをします」 グッ

上条「してるしてる。脳内だけじゃなく口にも出してるわ腕もやっちゃってるわ、表現が過剰だ」

御坂妹「姉より優れた妹などいないのですよ、とミサカは定番のネタを振ります」

上条「その言い方だとお前らは一生ビリビリに頭が上がらない訳だが……」

御坂妹「このミサカは10032号ですが何か?とミサカは驚愕の事実を披露します」

上条「あ、そうか!お前は番号一番早いんだった!」

御坂妹「あのドロンジ○女、大人しくトンズラ○と八奈見乗○だけで楽しくやってろってんですよ、とミサカは毒舌を吐きます」

上条「最後の人ドロンボ○一味違うわ。主役二人のフルネーム言える人は少ないけど、ドロン○ーは誰でも知ってるけどな!」

御坂妹「主役を誰も知らない……自虐ネタですか、とミサカはマジで心配します」

上条「おっとそれ以上俺へのヘイトはやめて貰おうか!影が薄いとか薄い本でしか活躍してないとか俺へ対するヘイトはなっ!」

上条「某白い人スピンオフ、屍人遊戯編が終わってさぁ終わりだ!と、思ってたら胸の平らな一族が出てきたり!」

上条「考えてあげて!『よっしゃ次は俺のスピンオフだぜ!』ってLIN×もらって以来、音沙汰のないHAMADURAのことも考えてあげてよぉ!」

上条「『三人目の主人公(キリッ』とか言われてんのに、バーチャロンで影も形もなかった人(10月18日時点)をなっ!」

御坂妹「棚中二人と風紀委員はいいとして、どうして聖人傭兵やアニメでちょろっとしか出ていない第五位が出るのでしょうか、とミサカは驚愕を隠せません」

御坂妹「やはり量産機は量産機であって主人公機には勝てないのですね、とミサカはジ○に乗せられたパイロットのようにションボリします」

上条「……出るのは出るのでまた問題があってだな。ディレクターさんに『これ台本ですんで』って渡されて現場へ行ってみればだ」

上条「仮面ライダ○の変身ポーズのように!キメ顔でキメ台詞言わせられて、何やるかと思えばVIT○起動させるだけ、って面白格好いいよな!」

御坂妹「最後作品批判をしようとしてヘタレましたね、とミサカは妥当な判断に拍手を送ります。ぱちぱちー」

上条「……いいんだ。あれはきっと某ユニットの四人セットフィギュアの壮大な販促だと思えば……」

御坂妹「採算が取れなさすぎます、とミサカはツッコみます。ガレキ出るでしょうが」

御坂妹「まぁミサカはお姉様との絡みと2Pキャラ的な立ち位置で、とは思うので、とミサカは当然のように肯定も否定もしません」

上条「割と余裕だな!浜面は……アックアとの絡みでまだワンチャンあるかも……!」

御坂妹「PVでもその他で最初に紹介されているのはお姉様とその機体でしたね、とミサカは冷酷な事実を突きつけます」

上条「まぁ……そこは譲ろう!どうしてもキャラ的な差で逆立ちしても叶わないからねっ!」

上条「ただ、うん……二番目に一方通行ってのは……」

御坂妹「まぁ人気ですしね、とミサカは肩を叩きます」

上条「アイツは年上お姉さんや陰のある管理人さんお姉さんタイプを侍らせておきながら!どうしてこの世界は不平等なのか……ッ!」

御坂妹「というか巨乳お姉さんから未就学児童まで幅の広いチョイスには戦慄を覚えますよね、とミサカは誰かをスルーしてあげる優しさを見せます」

上条「あれ?それ遠回しに『お前のほうがヒドいよな?』って言われてないか?」

御坂妹「まぁ科学さんの出番がやってこない日が多いですし、もう一周回って魔術と見分けがつかなくなった時点で、とミサカは諦念を露わにします」

上条「高度に発達した魔術は科学と見分けがつかない、か。昔の人は良いこと言ってんな!」

御坂妹「超逆です、とミサカはツッコミます。それと科学の概念ができたのはここ数世紀なので、言うほど古い訳では」

上条「そんなことよりも、管理人さんが如何に有用な存在であるかをだな」

御坂妹「個人的には非常に興味深い会話ですが、全部もれなくミサカネットワークに流れますがそれでもよろしいので?と、ミサカは思い留まるように注意します」

上条「いや別に俺は管理人さんの素晴らしさを説いて回るだけであって、特に誰かに恥じるようなもんじゃ決して」

御坂妹「チャロンから何故管理人さんの話へ移ったのか、恐らく現実逃避の一環であるミサカは看過しましたが、このミサカは有能なのでスルーして話を合わせます」

御坂妹「仮に男子学生の集う男子寮があるとして、奇跡的な確率で誰かがタイプな未亡人系管理人さんが居たとして」

御坂妹「基本的に業務の一環であり、管理人さん的には表面上愛想良くしていても、裏では『アイツらウゼー、下心丸出しでキメー』と愚痴っているに違いないでしょう、とミサカは核心を突きます」

上条「鬼っ!悪魔っ!高千穂っ!言わないで!?お前、言って良い事と悪い事があるだろっ!?」

御坂妹「スタ○の女性店員はあなたに好意を持っているのではなく、財布の中身と回転率にしか興味がないように、とミサカは某コーヒーショップをdisってみます」

上条「良くないな!確かに問題があると思わないでもないけど、ス○バ叩けばいい的な風潮はねっ!」

御坂妹「ですので、あなたはまずあなただけを見ている女の子に気づくべきだ、とミサカは切り込みます」

上条「え?どこどこ?」

御坂妹「一万人弱、ですかねとミサカは」

上条「怖っ!?それちょっとした国家権力に監視されてるよりも多っ!?」

御坂妹「とまぁ馬鹿話はさておくとして、ミサカが下克上を果たすときが来たのですよ、とミサカは宣言します」

上条「……あぁはい。なんか用事あって来たんだったよな。ダベっててもいいけどさ」

御坂妹「あなたはハロウィンをご存じですか、とミサカは首を横に傾けます」

上条「あぁ結構詳しいぜ。本場のは知り合いからウンチク教わったんだ」

御坂妹「ミサカも、というかミサカたちもカエル先生からイベントに参加するよう勧められ、色々と調べてみましたよ、とミサカはミサカシリーズの有能さをアピールします」

上条「ならないと思うな。だってこの後オチが待ってるもの」

御坂妹「様々な情報を取捨選択した結果ハロウインとはカボチャの仮面を被ってお菓子を簒奪する風習ですね、とミサカは胸を張りました」

上条「誰か一人ホラー映画の知識を混入しやがったミサカがいるな!個性出てきたようで良かったけども!」

御坂妹「ですからミサカも日頃ご迷惑をかけているお姉様に斬新なドッキリをしたいかと、とミサカはようやく主旨を説明しました」

上条「トリック・オア・トリートのイタズラ部分だな。問題無用で仕掛けるのもどうかと思うが」

御坂妹「いえ、ミサカはお姉様に笑って欲しいという純粋な気持ちであって邪なものは全く、と内心ビリビリしながら嘘を吐きます」

上条「ウソかよ!……いや知ってたしオノマトペはビクビクだしなっ!」

御坂妹「では上条さんにお伺いしたいのですが、お姉様が好きそうな企画は」

上条「ゲコ太」

御坂妹「――は、下手に茶化したら竜の逆鱗を踏み抜きかねないので、もっと別に穏当なのをミサカは希望します」

上条「や、でも『ゲコ太、アニメ化記念オリジナルキャラクター募集致します!』つったら、あいつ億単位を払ってでも通そうじゃね?」

御坂妹「当然ですね、何言ってるんですかゲコ太にはそれだけの価値がありますよ、とミサカは諭します」

上条「……あぁ、お前もビリビリの姉妹なのな。納得」

上条「仮装して押しかけるにしても相手は常盤台の寮だしなぁ。一回だけ行ったことあるが、ノリでツッコめるような軽い場所じゃなかったわ」

御坂妹「むしろその日は羽目を外そうとする学生相手により締め付けが厳しくなる、とミサカは予想しています」

上条「常盤台に限って、ン俗な連中はいないと思うが……あぁ訪問する連中か」

上条「ってことはビリビリを外へ呼び出すのが大前提で、かつゲコ太に関係無い範囲で、だな」

御坂妹「ふう、やれやれですね、とミサカは呆れたフリをしながら前もって温めていたネタを披露します」

上条「決まってんじゃん。俺に聞くどうこう以前に結論出てんじゃん」

御坂妹「ですのであなたにはミサカの彼氏役をお願いしたいのです、とミサカは頭を下げます」

上条「いやぁ照れるなぁ。例えそれが頭を1ミリも下げないわ表情筋さんは仕事してないわで、これっぽっちも新鮮味はないとしてもだ!」

御坂妹「やはりドッキリの定番と言えば『知り合いにダメ彼氏を紹介する』が定番だ、とミサカは思います」

上条「ダメって言った?頼んでる方がダメって言ったか?なぁ?」

御坂妹「他意は無いのですが、お姉様は多少のことでは驚かないかと、とミサカは話題をズラします」

上条「それ人に頼む態度……あぁいや面倒臭い。彼氏役、俺がやれば良いのな」

御坂妹「御協力頂けましたら、このミサカのダブったゲコ太カードを差し上げます、とミサカは虎の子を引っ張り出して来ます」

上条「ダブったカードにも愛情を捧げるのは良いことだよねっ!だから俺は怖いから受け取らなくても引き受けるよっ!」

御坂妹「では作戦の概要を説明します、とミサカはどこからともなくホワイトボードを取り出します」

上条「……俺も一つ買っとこうかなー。この部屋来るヤツ、結構な高確率で説明始めっからさ」

御坂妹「まずミサカとあなたがアーケード街でカップルらしくイチャイチャします、とミサカは書き出します」

上条「まぁ基本だな」

御坂妹「以上で説明は終わりとなります、ご清聴ありがとうございました、とミサカは書き出した文字を消します」

上条「一瞬でオチにっ!?つーか作戦はおろか説明にすらなってねぇなっ!ホワイトボード用意した意味もないしっ!」

上条「てゆうか繁華街ブラつくだけだったらそれただのデートだよ!あぁ俺したことねぇからわっかんないけどさ、それデートであってドッキリじゃないな!」

上条「せめて!せめてビリビリは呼び出そうぜ?別に遊びに行くのがイヤだっつってんじゃないが、企画の主旨外れすぎだろーが!」

御坂妹「あ、いえこれは完璧な計算なのですよ、ミサカは決してネタでないと否定します」

上条「超ノープランじゃん。ドッキリの体すら整ってない!」

御坂妹「これはですね、妹達の中で完璧なまでに練られかつ最も支持を受けた作戦であり、穴など存在しないのですよ、とミサカはドヤ顔で宣います」

上条「オーディエンスのムダな支持を受けている時点で、もう心配極まりないが……まぁ、言ってみ?」

御坂妹「量子力学をご存じですか、とミサカは用意してあったカンペを取り出します」

上条「シュレディンガーさんのネコは知ってる。ただ名前しか知らないレベルだが」

御坂妹「同学問には二重スリット実験というものがあります、とミサカは切り込みを入れたコピー用紙も取り出します」

上条「あーちょっと知ってるかも。そこに光当てると不思議な現象が起きるんだっけか」

御坂妹「はい、縞模様ができますね、とミサカは折角出したコピー用紙をしまいます」

上条「……」

御坂妹「……」

上条「邪魔して悪かったよ!話の途中でオチ言ったのは謝るからさ!話を続きをプリーズ!?」

御坂妹「と、言われましてもここで終わりですけど、とミサカは非情な事実を突きつけます」

上条「プランがさぁ!さっきずっとフワッフワしてんな!採点するどころの話じゃねぇし!量子力学の話持ち出して何が言いたかったんだよ!?」

御坂妹「……あくまでも、そうこれは、ミサカ達での共通認識なのですが――」

上条「お、おぅ!」

御坂妹「――あなたと誰かがイチャコラしてたら、お姉様に発見される可能性は100%を超えるのでは?とミサカは新理論を発表しました」

上条「確かに……っ!ある!心当たりすっげーあるよ!」

御坂妹「ですのでこのミサカとあなたがアーケードでヨロシクやっていれば、お姉様に通報するまでもなく発見されますよ、とミサカは太鼓判を押します」

上条「そうだな!なんか上手く言い込められている気がしないでもないけど、この仮説は真理を突いてるような核心すらあるなっ!」

御坂妹「では行きましょう、さぁ行きましょうとミサカは急かします」

上条「あぁ!……あれ?俺なんか騙されてないか?大丈夫かな?」



――アーケード街

御坂「――事情の説明を要求するわ……ッ!!!」 ビリビリッ

上条「うん、知ってた。こうなるって展開分かってたもの」

御坂妹「(……ちぃっ、本当に来やがったなお邪魔虫、とミサカは悪態を吐きます)」

上条「え、なんだって?」

御坂妹「ミサカは何も言っていませんが――お姉様は任せて下さい、とミサカは前に出ます」

上条「いやダメだろ。お前行ったら」

御坂「……何よ」

御坂妹「お姉様、ミサカとこの人は付き合っているっていうか、ぶっちゃけ男女の関係なのですよ、とドッキリを敢行します」

上条「ゲロってるもの。一行内でドッキリだってバラしてるしな!」

御坂「……」

上条「ま、いいか。初手からウッソピョーンってカミングアウトしたし、ビリビリのヘイトもそんなに溜ってはないだろうし」

上条「恒例のアフロオチは避けられたなっ!あれ毛根にダメージが来るんだよっ!」

御坂妹「……お姉様?どうしたのですか、とミサカはマジで心配します」

御坂「……」 フラッ

上条「オイどうしたビリビリっ!?顔色悪いわっフラついてんぞ!?」

御坂「だ、大丈夫大丈夫!うんっ、何でもないわっ!」

上条「そう、か?かなーり調子悪そうに見えんだけど」

御坂「体調は全然全然?――ただちょっとこの世界が滅びないかなー、って思っただけだから」

上条「体調の他にもっと悪いもん拗らせてんな!何破滅願望に囚われてんだよっ!?」

御坂「あー、今だったら世界滅ぼせそうだわー。頑張ればレベル6になって日本も更地にできそうだわー」

上条「帰って来いビリビリ!闇落ちすんのにも程があるから!」

御坂「あ、あぁはい。ビックリしちゃっただけだから、えっと急だったしね?」

上条「ドッキリだからな?いいか?本当に違うからな?

御坂「あー、ちょっとニアミスしちゃったかなー、うん、良い線行ってたのよねー」

上条「ニアミス?」

御坂「うん、次はねっ!生まれ変わったらきっとあたしの番になるってもんよね!順番的には!」

上条「大丈夫かお前!?好きな声優の結婚決まったときのお前ら(※含む俺)の反応になってんぞ!?」

御坂「……今世でも会えたんだから、次、生まれ変わっても、見つけて、ね……っ?」

上条「超重い!?そして失踪寸前のメンヘラさんみたいな事言わないでっ胸が痛いからっ!」

上条「てかお前からもビリビリ止めてやれよぉぉぉぉぉオイ!イイ感じで壊れて来ちゃったから!」

御坂妹「まぁこれはこれでアフロオチよりはマンネリを打破できたのでは?とミサカは素面で返します」

上条「後味が悪すぎるわっ!これでもし明日の朝刊飾るようなニュースに発展したら、俺も一生引き摺るんだからなっ!」

上条「そして何よりもだ!ビリビリになんかあったらコピー用紙でビル崩せる悪魔が、本格的に俺を殺りに来るに決まって……!」

御坂妹「……はぁ、まぁそこまで言うのでしたら貸し一でこのミサカが解決案を出しましょう、とミサカは助け船を出します」

上条「お前の企画だよっ!?火のないところに放火してるスタイル!」

御坂妹「ではお耳を拝借……ゴニョゴニョ、とミサカは今時使わない擬音を使って内緒話風に話を進めます」

上条「要らんことは言わんでいい――ん?」

御坂妹「ではどうぞ、とミサカは復唱を推奨します」

上条「……こんなん、効くの?」

御坂妹「当たって砕けろ、の精神でありますね、とミサカは知らないキャラを演じてみます」

上条「マジ知らないんだが――えーっと、ビリビリ!」

御坂「あ、一緒に逝ってくれるの?」

上条「字面が怖えぇわ!ナニ人を『ちょっと一狩り行く?』みたいな気分で誘ってんだよ!?」

御坂「何言ってんのよ!タイミング合わせないと歳が近くならないでしょうが!」

上条「やだこのヒト本気でリンカーネーション試そうとしてる」

御坂「ベストは幼馴染み!次点で兄妹がいいわねっ!」

上条「ダメだ!早くナントカしないと――ビリビリっ!」 ガシッ

御坂「な、な、な、な、なによっ!離してよっ!」

御坂妹「と言いつつお姉様が能力どころか身じろぎの一つもしない件について、とミサカはツッコミます」

上条「話ややこしくなるから黙ってような?……こほん、あー、あれだ。なんつーか」

御坂「言い訳なんて聞きたくないわっ!だって、だって!」

上条「――”義姉”さん……っ!」

御坂「て――えぇっ!?」

上条「いやだから、これは最初っからドッキリであってそう話では決してないんだが」

上条「もし万が一、そうなった場合にはお前は俺の義姉になる訳で――って聞いてるか?ビリビリ?」

御坂「……」

御坂妹「どうでしょうかお姉様、とミサカは確信犯を気取りつつ訊ねます」

上条「確信犯?つーか故意犯なんだが――」

御坂「ま、まぁっ!これはこれでアリっちゃ、まぁまぁまぁまぁ!うんっ、ないって訳じゃない!にゃくはにゃいわねっ!」

上条「何言ってるのか分かんないですね。超噛んでネコっぽくなってっんのがあざとい」

御坂「あ、ごめん。なんて言ったのか聞こえなかったわー、つーか誰に言ったのか分からないんだけど」

上条「いやビリビリさんに」

御坂「……」

上条「……義姉さんに、言っ――」

御坂「――よし!姉だから、あたしお姉ちゃんだからね!弟を大事にするのは当たり前の話よねっだって姉なのだから!」

上条「帰って来ーい。本格的に何言ってるのか意味不明だぞー」

御坂妹「まぁ戸籍の問題もありますし、ぶっちゃけこんな落ち着き方もいいのではないですか、とミサカはお姉様に提案します」

御坂「つまり?」

御坂妹「――ミサカたちは共闘できるのですよ、とミサカは強調します……っ!!!」

御坂「乗ったわ!」

上条「……もう帰っていいかな?朝からツッコミし続けて喉枯れるんだよ!」



――イギリス某所 アパート

鳴護「――あのね、最近レッサーちゃんが変だと思うの」

上条「いや、前から変だけど?」

鳴護「……や、それはそうっ、っていうか否定出来ないところではあるんだけど!なんって言うかなぁ、こう!流れってあるよね?」

上条「最近っていうか、ずっと変だよ?まともな時間のターンの方が短いと思うよ?」

鳴護「当麻君、今日は開幕から攻撃的だよね?なんかあったの?」

上条「こないださ、フランス大統領来たじゃん?ロンドンに」

鳴護「あー、あたしが学園都市帰ってたとき。マクロ○さんだよね、ちょっとお菓子っぽい名前の」

上条「そん時、あのバカはマカロンの巨大着ぐるみ着てお出迎えに……!」

鳴護「一人ハロウィンだよね?なんでレッサーちゃん張り切っちゃったの?」

上条「『マク○ンに”このマカロン野郎!”って言ってやりまさぁ!』って」

鳴護「……それ、何かの嫌がらせになるの?出オチだよね?」

上条「『どうせ死ぬほど名前でイジらせてるでしょうし、ロンドンっ子の意地を見せてやりますよ!』って」

鳴護「ちょっと日本人には理解出来ない、かな。うんうん、カルチャーギャップだよね」

上条「少なくともベイロープ達には理解されてなかったけどな」

鳴護「てゆうかまぁ、もうそこまで行くとマカロンさん歓迎してるよね?わざわざ着ぐるみ作って乗り込んでる時点で、膨大な労力注ぎ込んでるもんね?」

上条「うん、だからな。レッサーにとってはそれがフツーなんだよ。オーケー?」

上条「IT全盛期、今や電子の網は世界中を覆い尽くしてオカルトや魔術の生き残る余地はないかも知れない。だが!」

鳴護「いやあの、なんか無理矢理壮大な話からシメようるとしているけど、そうじゃなくてね?もっと切実って言うか」

鳴護「レッサーちゃんが、変、なんだよっ!?」

上条「だから前からだよ?」

鳴護「ループ禁止。そしてさも『今更何言ってんの?』みたいに顔されてもな……!」

鳴護「とにかく!いっつもよりもおかしいんだよ!」

上条「いやだから、レッサーはいつも(頭)おかしいよ?」

鳴護「――怒るよ?」

上条「はいっおかしいですよねっレッサーがね!そう言えば俺も違和感を感じてた!おかしいなって思ってた!」

鳴護「卑屈なんだか素直なんだか分からないけど……うんまぁ、ちょっと来て」 グッ



――【れっさぁちゃんの部屋☆(無断で入ったら襲う)】

上条「……相変わらず身の危険しか感じないルームプレートだぜ……!」

鳴護「有言実行のお国柄の人はコワイよねっ!口に出さなくてもヤるときヤるけどねっ!」

上条「で、だ。さっきから現実を直視したくなくて、ぶっちゃけトラブルはもう嫌だから現実逃避してたんだけど、変って何が?」

鳴護「……それがさぁ、レッサーちゃんあたし達にナイショでネコかイヌか飼ってるんじゃないか、って」

上条「んな小学生のガキじゃあるまいし――あるな。小学生に余裕で対抗できるもんな」

鳴護「レッサーちゃんがコソコソ食事をお部屋へ運んでいたり、お出かけしてるの中から物音がしたり」

上条「あぁそりゃ確定っぽいな」

鳴護「他にも『桃○様の一番大事な台詞削られてるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!?』って、夜中に絶叫が」

上条「恋姫無○な?リメイク版で、『オマよりにもよってそこ変えんのか!?』って全作中で二番目に泣けるシーン改変しやがったからだよ!」

上条「余計なキャラ増やすんだったら、まず!あのエピローグ後にどうなったかケリつけなさいよ!何ファンディスクで何事もなかったように帰って来てんだああぁああっ!?」

鳴護「当麻君のツッコミはどこまで拾うのかな?」

上条「さっきだってイギリス人の生態で『虎の子のクイーンエリザベスが太平洋に舵切ってる』とか思ったけど、空気読んで言わなかったよ!」

鳴護「よく分からないけど……ま、まぁいいや!」

上条「いやでも無断で入るのは良くないと思うぜ?一応はプライベートな空間だって必要じゃんか?」

鳴護「あ、うん、そういうと思ってたからここに本人が」

レッサー「ちーすっ☆」

上条「展開が雑だな!?今回尺が短いからってムリしすぎだろコレ!?」

上条「聞けよ!だったらまずその子に聞けばいいだろ!?なんで俺巻き込んでんの!?」

鳴護「やー……それがさぁ、あたしも聞いたんだよ。『レッサーちゃん何が隠し事してるよね?』、そしたら」

レッサー「『隠し事……?まさかそんな私がそんなアリサさんに隠すなんてありませんって!』」

レッサー「『フランスに誓って!フロッグバイターの国旗誓って!えぇ私は何も隠してやいませんともっ!』と」

上条「それ100%ウソ吐いてるってことだよね?いっぺんの曇りもなくウソでフランスさんに泥ベッタベタ塗りまくってるもの」

レッサー「お願いしますっ!誰にもご迷惑かけてませんから!見逃してつかぁさいっ!」

鳴護「――との供述を繰り返しており、なのでここはお母さん(家事全般する人)に相談をと泣きを入れられました!」

上条「やだ俺超迷惑」

レッサー「良い子なんですって!シツケはしっかりしましたし、夜泣きもしませんしトイレも完璧で迷惑かけてませんでしょうっ!?」

上条「まぁそれは確かに。メシの減りが早いっちゃ早いけど、気にするほどじゃないしな」

上条「つーかここ飼っていいのか?事前になんか登録とか必要じゃないの?」

鳴護「って当麻君は言ってるけど、どうかな?」

レッサー「ノープロブレム!きちんとハウスを用意してありますし、法的にも届け出る必要はなかったと思います!」

上条「日本だと狂犬病やフィラリアの予防接種が必要だから、役所に届ける飼い主が多い……まぁ、現地人がいいって言うんだったら、いいけど」

上条「でもお前、他の人らには内緒なんだよな?それはアレルギー的な意味でよくないぞ」

レッサー「そっちも大丈夫かと!証拠として一緒に暮らしてても今日まで問題はありませんでしたし!」

上条「人畜一緒にしてんじゃねぇよ――ん、なに?」

鳴護「それは、まぁまぁ大切だけど、よかったら見せてくれないかな?」

レッサー「あ、はい。ではちょっと用意してきますから」 ガチャッ

上条「アリサも興味ある?」

鳴護「実は。イヌ飼いたいなって思ってた」

上条「俺もまぁ……スフィンクス、今頃どうしてるのかなー」

レッサー「――戻りましたっ!ささ、どうぞ中へっ!」

鳴護「あ、はいお邪魔しまーす」

上条「右に同じ――い?」

レッサー「さぁどうぞっ!遠慮せずに触ってやって下さいな!」

???「……」

鳴護「いやあの、触って、って言われても、その困る、かな?」

上条「えっと……あー、うん、まぁまぁ、アレだ。これ、お前飼ってんの?」

レッサー「そうですとも!(ゴルベー○風)こう見えて意外とシャイなんですよっ!」

上条「いつから?」

レッサー「学園都市からトンズラするとき、ですかね。トランクん中に入ってたんで、あぁこりゃ良かったなと」

上条「……えっと……名前、うん、名前を聞いてもいいのかな?」

鳴護「当麻君っ!?」

上条「まだ!まだ救いはあるかも知れない!これがまだポチとかミケとかみたいな可愛らしい名前かも知れないじゃないか!」

レッサー「ほら、自己紹介しなさい!お母さんにコビ売っとくんですよ!」

レディリー(???)「……レディリー、レディリー=タングルロードよ……」

上条「あ、はい」

鳴護「当麻君?」

上条「ネコ、だな。うん、これはきっとネコ、あぁそうに違いないだってネコだものこれ」

上条「だってほら、一見カチューシャに見えるリボンが耳なんだろ?分かってる分かってる、ネコだもの。ネコ以外にないもの」

鳴護「現実逃避してないで!戦わないと!」

上条「ビリビリだってきっとタチかネコで言えばネコの方だよ!」

鳴護「酷い。現実逃避するにしたってもっとマシなのがあると思うな……」

上条「いやアレじゃん?魔術の国イギリスだし――あ、ほら!よくあるネコを助けたらネコミミ美少女になって帰ってきたんだよ!そういうの!」

鳴護「二昔前に角○でよく流行ったテンプレの話されても、ってゆうか正気に戻って!」

上条「言わないで」

鳴護「……これ、もう警察案件だよね?」

上条「言わないでって言ったじゃない!メ○のバカっ!」

上条「ツッコミが!俺にだって限界はあんだよ!なんだって拾えると思うなやチクショー!」

レッサー「どうですかっ!シツケはバッチリしてありますから!」

上条「人じゃん!幼女じゃん!完全に犯罪じゃねぇかよおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

レッサー「あ、いえ先程から『犬猫を飼っている』なんて一言も言ってませんけど?」

上条「オマエ何やってンの!?この危ないご時世でなんつーチャレンジド精神発揮してくれやかんだアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

レッサー「死ぬときも、前のめり」

上条「よっしゃオッケーだったら今すぐ往生させてやらぁ!墓標には『幼女誘拐して捕まって自死』って刻んでやっからな!」

レッサー「レッサー死すとも、イギリスは死なず……ッ!」

上条「こんなアホに執着されてるイギリスさん……可哀想っ!」



――アパート リビング

上条「――何か、楽しい夢を見ていた気がする……」

鳴護「当麻君戻ってきて。あたし一人じゃ追い付かないから」

レディリー「……」

上条「いやなんか本当にごめんなさい。あ、なんだったら足でも舐めようか?」

鳴護「ナチュラルに、酷い」

上条「ふー、危なかったぜ!ギャグマンガじゃなかったら警察のご厄介になってたところだ!」

鳴護「現実現実、少なくともあたし達にとってはリアルだよ」

上条「――待つんだ!これはもしかして敵の魔術師の攻撃かも知れないっ!」

鳴護「当麻君そのネタ好きだよね?多分別の所だと、その台詞言った瞬間に非現実モードへ入るんだけど、残念!」

上条「と、いうわけで告訴だけは!警察沙汰だけはなんとか勘弁して下さいっ後生です……っ!」

鳴護「後生って言う人始めて聞いたよ……」

レディリー「まぁ……いいわ。この話はここで終わりにしましょう」

上条「てゆうかお前魔術も使えんのになんてレッサーに捕獲されてんの?」

レディリー「終わりにするって言ったでしょう。聞いて楽しい話でもないし」

上条「お前はネコとして飼われていた――つまりっ!?」

鳴護「当麻君自重、ツッコミがあたし一人じゃ追い付かないから」

レディリー「……で、あの子はどこ?」

上条「今三人がかりで説教されてっから、それで勘弁して頂けると幸いなんですが……」

レディリー「ただちょっと死にかけただけだし気にはしていないわ。死ねなかったけどね」

上条「ナイスジョークwwwwww」

鳴護「めっ!不謹慎だから!」

上条「あ、あぁごめんな。なんかショックが大きすぎてレッサーの芸風が乗り移ったかのように」

レディリー「まぁ私も良いジョークではなかったわね――さて、約束を果たして貰いに来たわ」

鳴護「……当麻君?」

上条「『またフラグ?フラグ立てちゃったの?』的な目で見るの、止めて貰えません?まぁ多分俺関係ですけどねっ!」

レディリー「憶えてないとは言わせないわ。あなたを助けるときの対価、まだ支払ってないのよ」

上条「もう俺に使える現金はドコ○のポイントぐらいしか……!」

レディリー「そんな約束はしてなかったわね?てゆうか魔神相手に協力してあげた礼がポイント?逆にあなたはそれで助けるっていうの?」

上条「『誰かを助けるのに、理由はいるかい?』(キリッ」

鳴護「そんな堂々と有名RPG名台詞をパクられても……」

上条「誰かを助けて俺の人生(進学)がワヤになりそうなぐらいですが何かっ!?」

レディリー「あなた基準で物事を考えないで頂戴。狂っているのは仕方がないのどとしても、他人に強制しないで……くっ!」 フラッ

上条「――っと、大丈夫か?」

レディリー「えぇ、死なないのだから平気よ――と、言えれば良かったのでしょうけど、そうでもないのよ」

レディリー「体の痛みとめまいと吐き気、どれも毒物ではないわ。解毒の魔術は効果なし」

上条「不死身なのに?」

レディリー「ボウヤ、ギリシアの巫女は予言者であると共に医学を修めていたの。信徒達へ祝福を授けるのも役目よ」

レディリー「……それに毒物や病気であったとしても、数分もすれば治るのにここ数日症状は変わらない。つまりこれは」

レディリー「――呪いよ」

上条「呪い?なんでまたっ!」

レディリー「神を殺せば業降りかかるべし、カートズブックに索引にも書かれていた脅し文句が形になったのか」

上条「ここで必殺『幻想殺し』!」 ピタッ

レディリー「……」

上条「……どう、かな?」

レディリー「……ダメ、ね。変わらないわ」

レディリー「もう一度、いえ何度でも私は言うわ――」

レディリー「――私を、殺して頂戴……?」

上条「いや、でもっ!」

レディリー「あなたが手を汚す必要はないの。ただ、ずっと、私が息絶えるまで手を握っていてくれれば」

レディリー「……お願い。もうチャンスはないのよ、これを逃したら私は――」

上条「レディリー……」

レディリー「――また、誰かを壊すわ。今度は、あなたの大事な人を、ね?」

上条「お前ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

鳴護「いや、ゴメンゴメン。ちょっと、ちょっといいかな?レディリーちゃん、少しね、お話があるんだけど」

上条「すいませんアリサさん?今ちょっとシリアスシーンだからさ、なんつーか」

鳴護「やー……違うんじゃないかなぁ、ギャグマンガだし?」

上条「さっき言ってたこと全否定!?やっぱ俺らってネタだったの!?」

鳴護「当麻君はちょっと離れてて。できれば部屋の隅っこの方へ」

上条「なんでだよっ!?俺だって」

鳴護「当麻君は、ちょっと、離れてて。ねっ?」

上条「……はい」

レッサー「弱っ!?上条さん弱っ!?」

上条「ウルセェよ。つーかどっから生えてきやがった」

レッサー「今トイレ休憩中ですんでペットの様子を見に」

上条「反省してねぇっ!?ベイロープ達の誠意が全く通じてなかった!?」

鳴護「……で……だから……痛い……?」

レディリー「…………うね。えぇ………………」

レッサー「話は全て聞かせて貰いましたっ!」

上条「おう!」

レッサー「つまりどういう展開で?」

上条「聞いてないじゃん。今来たばっかじゃん」

上条「……事情も何も。俺だってよく分からん。『呪い』がどうってさ」

レッサー「あぁ不死のヤツですね。私だったら欲しいですけどねぇ、ままならないものですなぁ」

上条「いんやそっちじゃなくて、なんか新しく呪われちまったんだと。神殺しがどうって」

レッサー「あー……メジャーかつありがちなお話ですなぁ。分かります――が」

上条「が?」

レッサー「実際に神殺し、つーか半殺しにしたのは我々であってレディリーさんは直接ヤってないじゃないですか」

上条「そういやそうだな。俺らピンピンしてるし」

レッサー「つーか神の呪いっつーのは大抵ロクなもんじゃなく、ギリシャ系は即死or不老or変身の三択が多いんですが」

上条「レディリー曰く、『体の不調』」

レッサー「……」

上条「心当たりは?」

レッサー「ある、っちゃあります。ただ」

鳴護「あ、ごめん当麻君。ちょっとお買い物に行ってきて欲しいんだけど、いいかな?」

上条「構わないけど。レディリー、は?」

鳴護「多分もう、治った、っぽい?」

上条「こんな早くっ!?それとも『幻想殺し』は遅延性になったのっ!?」

レッサー「あー……行きましょう、上条さん。私もお付き合いしますから」

鳴護「うん、近所にできた日本の雑貨屋さん行って小豆買ってきて貰える?」

上条「いやごめん。さっきから何言ってるのか分からな」

鳴護「行ってきて、ねっ?」

上条「い、いや騙されないぞ!ギャグシーンで流されたりはしないんだ!」

レッサー「たまーに面倒臭くなるんですねー。それじゃほら、ガブッと」 カブッ

レディリー「……痛い、んだけど」

レッサー「へーははで?(A型で?)」

レディリー「調べたことがないから、分からないわ」

上条「――って何噛みついてんだよっ!?レッサー菌が伝染ったらどうすんだっ!?」

鳴護「時々意味もなく全裸になるぐらいで済むと思うよ。絵的にはヤバいけど」

レッサー「――はい、うまうま。幼女の血液おいしゅうございましたー」

上条「もう『変態だー!?』のツッコミすら嫌になった。つーかお前何トチ狂ってんの?バイオがハザードする映画でも見た?」

レッサー「まぁまぁよく見てください。私の歯形がレディリーさんの腕にクッキリと」

上条「歯並び異様に良いな……」

レッサー「そりゃどうも――じゃなくて、血、滲んだままでしょ?」

上条「消毒液っ!――うん?」

レッサー「傷が治らないんですよ」

上条「いやだから消毒をだな」

レッサー「――はいはい、上条さんは私と一緒に買い物ですよっと。お赤飯炊きましょーねー」

上条「はい?」

レッサー「いつか上条さんのAFOも治る日が来ると良いですよねっ!少なくとも学園都市じゃムリだったようですが!」

上条「よーし分かった!何言ってるのか分かんなかったが、ケンカ売ってんのだけは分かった!表出ろコラ!グラム36円で買ったらぁ!」

レッサー「くっくっくっく!たかだか風変わりな右手を持っただけの存在が!私に敵うとでもお思いですかっ!?」

レッサー「私にはケンカでフルボコにされても『傷物にされたんで責任取って!』って技がね!」

上条「負けました」

レッサー「速攻でDOGEZAを!?売り言葉をちょっと試し買いしたレベルなのに!?」

パタン

レディリー「……」

鳴護「えっと……ま、あ、なんだろう。なんて言ったら良いのか、分かんないけども」

鳴護「おかえりなさい。こっちへ」

レディリー「……ただいま」



――学園都市

上条「――と、いう訳で二人と結婚したんだ!」

シャットアウラ「すまない。少し、そう少しだけ待って貰っていいか?」

シャットアウラ「『という訳』が端折りすぎだし、そもそもどういう流れだったのか!?」

鳴護「いやあの、ウエディング的なドッキリなんだけど……?」

シャットアウラ「いや勿論それが本当だったら本日中に未亡人になって貰うが、そこは特に問題じゃない」

レディリー「堂々と殺人予告したわよね。しかも私も含めて」

上条「……俺、アリサとくっついたらデスゲームが待ってんのかよ……」

シャットアウラ「そこの元雇用主は『アテが外れてザマァwwwwwww』――と、我慢してやってる分だけ大人のつもりだがな?」

レディリー「まぁ仇が討ちたいのならしてもいいのよ?あなたにはするだけの権利もあるわね」

シャットアウラ「あれお前誰だっけ?私の知り合いじゃないよな?顔見たことないもんな」

シャットアウラ「あ、初めましてこんにちは、シャットアウラです」

上条「シャットアウラが大人になったのか子供っぽいのかよく分からん対応を!」

鳴護「……相手にしない、って意味では成長してるんだよっ!うんきっと!」

シャットアウラ「私は企業の外付け保安部の仕事をしています。いやー毎日毎日大変なんですが、あなたのお仕事は?」

上条「相手が年季の入ったニートだからって更に大人げなくなったぞ!追い込み方汚い!」

鳴護「学園都市豆腐メンタル序列三位ぐらいにはなれそう……」
(※暫定ランキング・第一位=土御門、第二位=一方通行)

上条「途中で仕事ほっぽり出した上に、ほぼ八つ当たりの私怨で特に考えてない行動を突っ走りやがりましたからね」

シャットアウラ「……で、何がどうなったんだ?」

鳴護「止まってた成長がね、今になって始まったらしくて」

シャットアウラ「そっちは別にどうでもいい。魔術的なご都合主義でも働いたのか?」

上条「アリサ迎えに行ったとき、えーっとレディリーの術式で龍脈に介入した――というか橋を架けたんだっけ?」

レディリー「じゃないと帰って来られないでしょう?意識を失った後にも続けていたんだけど……」

鳴護「レディリー……ちゃん?さん?が解除する前にね、うん、そのレッサーちゃん達が」

シャットアウラ「『神殺し』のナントカで龍脈へメスを入れたら、当然”繋がっている”モノにも影響を与えた、ね」

レディリー「……『神殺し』の術式の本質は、まぁ多くは”神性というフォーマットを別のものへ書き換える”効果があるのよ」

レディリー「堕天に堕落に零落に失墜、他にも追放や破門に破壊に禁忌。『人の限界じゃ倒せない相手なら、人でもどうにかできる相手にしましょう』って感じで」

レディリー「あの『剣』は神話時代の遺物を英雄の時代へと堕とす効果がある。学園都市がやっているオカルト殺しの、ごく限定的なものかしらね」

上条「『不老不死』もか?」

レディリー「死なない人間はね、それはもうヒトじゃないのよ……ま、どこかのおバカさんにとっては、大した話じゃないみたいだけどね」

レディリー「……それで私はアリサさんが帰還したら術式を解くつもりだったのだけど、あの子達は『神殺し』を使った」

レディリー「セレーネに接続したままだった私も影響を受け、神代の性質――”不死”ほ剥奪された結果、今になって成長し始めたのよ」

レディリー「見て、一昨日番犬に噛まれた歯形が、今も治らないの……っ!」

シャットアウラ「つまり?」

鳴護「あとでね、うん詳しく説明するから。今は空気読もっ?」

鳴護「ここはね、『そうか……良かったんじゃないか?』的な台詞を言って少し和むシーンだから!」

上条「――みたいな感じで!ドッキリだ!」

シャットアウラ「なんかもう、前置きの話が長いわ衝撃的だわでそっちはどうでもいいしな!」

上条「うん、俺も正直そう思う」

シャットアウラ「繰り返すが、マジだったら殺すから」

上条「俺かどうかは別にして、アリサさんの将来の義姉がオーバーキルな件について」

レディリー「……仲が良いのね」

鳴護「そう見えるんだったら目がおかしいと思うよ?」



――イギリス某所

ウレアパディー「――思ったのだけど」

ソーズティ「……なんでしょうか、急にまた」

ウレアパディー「おねショタというものが流行っていると聞くわ」

ソーズティ「ネタニュースを鵜呑みにしないで下さい!そして媒体を選んで姉さんっ!特定国の特定の性癖を持つ暇人が集うスレッドを信用しないで!」

ウレアパディー「犯罪、じゃないのかしら?」

ソーズティ「フィクションですよ?あくまでも創作物に関しての話題であって、現実にどうこうって話ではないですから」

ウレアパディー「分かったわ。彼らは仮定の話をしているのね」

ソーズティ「そうです。じゃなきゃショ×がプロ顔負けの絵をアップしたりはしないかと」

ウレアパディー「そう――で、話題は全く変わるのだけど」

ウレアパディー「あなたが結婚すれば私も義姉になる、のよね?」

ソーズティ「変わっていませんよ姉さん!なんかドス黒い魂胆が見え隠れっつーか露骨に見えてます!」

ウレアパディー「……私は、あなたのためを思っているのよ。ソーズティ」

ウレアパディー「私は……まぁ色々あって変わってしまったの。それは仕方がないことだし、何よりも終わってしまったことだから」

ソーズティ「姉さん……」

ウレアパディー「けど、けれどよ?変わらないものだってあるし、変わってはならないものはあると思うのよ。私は」

ソーズティ「そう、だね」

ウレアパディー「という訳で、あなたはあの少年に婿入りされるべきなの、わかる?」

ソーズティ「姉さんっ!?誰だ!わたしの姉さんをここまでアホアホに改造しやがった組織は!」

ソーズティ「前からこうフワっとしたキャラだったけど!こんな気がしないでもなかったけど!ここまでアホじゃなかった筈だ!」

ソーズティ「あの少年に『お前のねーちゃん、前からこんなんだったの?』って聞かれて、『た、多分改造されたせいで!』って言葉を濁すしかなかったけどもねっ!」

ウレアパディー「違うのよ。私はあなたのためを思って言っているのよ」

ソーズティ「おねショタのコンボから来たし、もう裏の意図しか窺えないんですが……」

ウレアパディー「少年に、借りがあるの。あなたは」

ソーズティ「返しましたよね?もう何回かバレンタイン送りましたし、アホ企画で餌食になっていますよね?」

ソーズティ「確かに恩人は恩人ですし感謝もしきれないぐらいですが、基本何がしたかったと言えば姉さんを助けるためであって」

ウレアパディー「責任転嫁は良くないわ。私も」

ソーズティ「そもそも姉さんが学園都市を含む広域オウンゴールに拘ったりせず、さっさと逃げてくれば借りは借りじゃなかったんですが……」

ウレアパディー「聞いたのよ。ジャパンの風習を」

ソーズティ「はぁ」

ウレアパディー「命を助けられた女の子(※ただし少女限定)は、助けた男の子に嫁がなければいけない(※ただし主人公限定)、って」

ソーズティ「ジャパンのサブカルチャーに毒されるのはやめてください!それはマイナーの中ではメジャーな展開ですけども!」

ソーズティ「カッコ※限定カッコ閉じと書かれてる時点で!ジャパニーズカルチャーとは一線を画していますから!

ウレアパディー「むしろ助けられてハイサヨウナラ、の方が人情としては共感できないわ」

ソーズティ「個人差です、個人差ですよ姉さん。それだったら警察官と消防士と自衛官と山岳警備隊が一夫多妻でないと成立しません」

ウレアパディー「と、いう訳で、ねっ?」

ソーズティ「投げましたね?説得が面倒になったからってぶん投げてきましたよね?」

ウレアパディー「じゃああの少年でいいわ」

ソーズティ「”じゃあ”?妹の人生の一大事が”じゃあ”?」

ウレアパディー「そうね、じゃあこうしましょう?」

ソーズティ「はい」

ウレアパディー「……」

ソーズティ「……姉さん?」

ウレアパディー「――大変よソーズティ!」

ソーズティ「どうしたんですかっ!?」

ウレアパディー「『こうしましょう』って折衷案を出そうとしたのに、いい案が思いつかないの!」

ソーズティ「くっ魔術結社め!何をどうやったら姉さんをここまでアホに改造したんだ!姉さんをアホにした報いはウケさせてやるぞ!」

ウレアパディー「あ、それは私が壊滅させといたから安心ね」

ソーズティ「知ってる、かな。うん」

ソーズティ「……大体、姉さんはどうなんですか。姉さんだって恩があるんだったら――」

ウレアパディー「ソーズティ」

ソーズティ「な、何よお姉ちゃん!」

ウレアパディー「いいのね、やっても後悔はしないのね?私が」

ソーズティ「それは……」

ウレアパディー「どう思うのかしら。あなたは?」

ソーズティ「……いや、だよ」 

ウレアパディー「なら、どうするか分かるわよね。丁度ハロウィンも差し迫っていることだし」

ソーズティ「あの……去年も言いましたけど、ハロウィンは男女のドロドロが絡むようなイベントじゃいなからねっ!」

ウレアパディー「大丈夫、あなたにはあなたの魅力があって。それを生かせば。きっと」

ソーズティ「魅力、ですか……?」

ウレアパディー「そうね、ええと――学園都市を離れたのに、もうそっち系のお店としか思えないようなセーラー服を着ている、とか?」

ソーズティ「言ってくださいよ!?おかしいんだと思うんだったら!その場でホウ・レン・ソウを!」

ウレアパディー「いい、ソーズティ?虚数の海を舞う蝶の羽ばたきは、キャリーパミュパミ×の断りからは逃れられないわ!」

ソーズティ「またそれだ!都合が悪くなったらフワッとした空気で誤魔化さないでください!」

ソーズティ「てかよく聞いたらヒンドゥーの神じゃなくきゃりーぱみゅぱみ×はシンガーじゃないですか!一瞬『あれ?そんな神様いたっけ?』って悩んだんだよ!」

ウレアパディー「アレは電波ソングの六番煎じを広告代理店がバックアップした結果であってね」

ソーズティ「帰って来て姉さん!?学園都市でチューニングされてからヲタク文化に毒されてます!」

ウレアパディー「えっと……肌の色は、ダメ?」

ソーズティ「ツッコミが難しいです!ナチス野郎が散々っぱらやらかしてくれたお陰で、私たちは語族を名乗るのに超メンドクセェ縛りができましたからねっ!」

ウレアパディー「……」

ソーズティ「姉さん?」

ウレアパディー「隠していたのよ、実は。いつか言わなければと思っていたの」

ソーズティ「どうせネタかボケか出オチでしょうかせ、なんですか?」

ウレアパディー「実はダークエルフだった、的な?」

ソーズティ「今からっ!?インド・アーリア語族の設定見せつけてたのにここから更に属性増やすんですかっ!?」

ウレアパディー「心配しなくていいわ。最近黒エルフ(ロ×)の需要も増えてきたから」

ソーズティ「心配です。身の危険しか感じないっていうかニホン超怖えぇ」

ウレアパディー「そうね。私が言えることがあるわ、一つだけ」

ソーズティ「……もういいですか?ジャパンへ行く支度がですね」

ウレアパディー「妹イジりってどうしてこう楽しいのかしら」

ソーズティ「それが本音かコノヤロー」

ウレアパディー「歯磨きセットはホテルで新品が貰えるのよね?」

ソーズティ「しかもついてくる気満々っ!?」



――上条家 10月30日の深夜

ガチャッ

ソーズティ「(……失礼、する……ぞ?)」

ソーズティ「(ここが――あの少年の部屋か。初めて入る、よな)」

ソーズティ「(意外と綺麗にしてある……いや、物がない?学生の身分では仕方がないことだが――)」

???「……ぐー……?」

ソーズティ「……っ」

???「……違うんだ!」

ソーズティ ビクビクッ

???「これはきっと誤解なんだ!そう――」

上条(???)「――敵の魔術師の……」 ピタッ

上条「………………ぐぅ」

ソーズティ「(なんだバカの寝言か。起きてるときも言ってたが、やっぱり寝言にしか聞こえないな!)」

ソーズティ「(これで演技だったら怖いが……さて)」

上条「……」

ソーズティ「(……どうしよう……!なんで姉さんに乗せられてここまで来てるんだっ私!?)」

ソーズティ「(っていうか男と泊まりなんてはしたな――)」

ソーズティ「……」

ソーズティ「(前、やったよーな気もするが!どことも知れない店で一泊したよーな気もするが!)」

ソーズティ「(予想以上に難易度が高い!脳内シミュレートよりも遙かにっ!)」

ソーズティ「(撤退するか?……いや、アホ企画とはいえここまで来てしまったからには!)」

ソーズティ「(『頑張ったけど駄目でしたー』って、言い訳するんだったら、どのラインが適当だろうか……?)」

ソーズティ「(『写メールが欲しいわ、証拠に』と無茶振りを仕掛けてくる姉さんは、満足するぐらい、だったら)」

ソーズティ「……」 スッ

ソーズティ「(上着を脱いで――うぅ寒い!ロンドンの夏も短かったが、ジャパンの秋も温かくはないな!)」

ソーズティ「(あ、あー寒いなー、どこかに温まれるところはないかなー)」

ソーズティ「(お、丁度ここにベッドがある!良かったー!風邪を引かず済むなー!)」 モゾモゾッ

上条「――お?」

ソーズティ「……にゃ、にゃあ……!」

上条「……なんだスフィンクスか――よっと」

ソーズティ「――っ!?」

上条「なんか柔らかくてすべすべ……ぐー……」

ソーズティ「(……ど、ど、ど、ど、どうすればっ!?いや落ち着け!っていうかなんだこれ!?)」

ソーズティ「(深呼吸、すーはーすーはーすーはー)」

上条「すー……」

ソーズティ「(……はー)」

ソーズティ「(これは、まぁ……うん、感謝的なものもあるし)」

ウレアパディー ジーッ

ソーズティ「(けじめ、というか、そんな感じで、うん)

ウレアパディー「(――妹が姉を抜いて大人の階段を登ろうとしている件について)」

ソーズティ「(姉さんっ!?つーか姉さんってなんでついてきてるんだっ!?)」

ウレアパディー「(アストラルの導きが)」

ソーズティ「(フワッとした言い訳はいいんだ!ムダに尺を稼ぐだけだから!)」

ウレアパディー「(……もう少しよ、勇気を出しなさい)」

ソーズティ「(やっぱりやめる!おうち帰るっ!)」

ウレアパディー「(――甘いわソーズティ。もう既に二つのトラップにかかってているのよ)」

ソーズティ「(罠――うっ!?)」

ウレアパディー「(こんなこともあろうかとあなたがさっき飲んだお茶には睡眠薬を盛っていたの……!)」

ソーズティ「(な、なんてするんだ姉さん!このままだと問答無用で朝チュンを迎えてしまうっ!?)」

ウレアパディー「……」

ソーズティ「……姉さん?いや急に黙って、というか罠はもう一つある、のだろ、う……?」

ウレアパディー「(一緒に飲茶をしたでしょう?)」

ソーズティ「(ドーナツと一緒に飲んだのは始めてでしたが、まぁ飲みましたね)」

ウレアパディー「(私の分に薬が入っていたわ)」

ソーズティ「(返せ!もうちょっとだけ賢かった私の姉さんを返してくれっ!)」

ソーズティ「(なんかもうどんどんアホが止まらない!本当に助けて良かったのか何回か後悔している!)」

ウレアパディー「(だってあなたがティーセットを二種類注文したでしょ?どっちを選ぶか分からなかったもの)」

ソーズティ「(どうしてそういうところだけ、真面目、なんだ……っ!)」

ウレアパディー「(という訳で、ちょっと詰めなさい)」

ソーズティ「(いやあの……睡眠薬……飲んでる、ん、ですよね?その割に、行動が阻害されてなくない、ですか……?)」

ウレアパディー「(眠いわよ。もう倒れそうなほどに)」 ゴソゴソ

ソーズティ「(脱いでますよね?あまつさえユニク○の店員がシャツ畳むみたいに、きちんとセットしてますよね?)」

ウレアパディー「(あぁもうソーズティったら脱ぎ散らかして)」 タタミタタミ

ソーズティ「(余裕すぎ……じゃ、ないですかね……私の分まで――)」

ウレアパディー「(おやすみなさい)」

ソーズティ「……すー……」



――翌日・朝

ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……

上条「ふわぁ――なんかいつもより寝られたような……?」

スフィンクス「なー」

上条「あぁメシな、ちょっと待っ――あれ?お前、昨日潜り込んで来なかったっけか?」

上条「つーか妙に暑」

ソーズティ・ウレアパディー「……すー……」
(※下着)

上条「」

上条「……夢、かな。うん、そうだねっ!最近ちょっとご無沙汰だったし!疲れてたから!」

スフィンクス「にゃ」

上条「うん知ってるよ!どうせこのまま二度寝したって事態は解決しないってな!まぁいつものことっちゃことだしぃ!」

上条「よし、落ち着け俺!クールになるんだ!まずは現状を把握することが大事だ!」

上条「えっと……ベッドの中には下着姿の女の子二人!残念ながらどっちも名前知ってるっつーか知り合いだな!」

上条「妹さんの方はシンプルイズベストな的なアレだが、お姉さんの方はフリルがついてて描写しにくいよ!年齢制限的な意味でねっ!」

上条「あとは……丁寧に畳んで床に置かれた衣服!これも以前着てた服っぽくて見覚えがある!」

上条「以上の証拠から導き出される答えは一つ!真実はいつも一つしかない――」

上条「……」

上条「――幻覚だな。うん、俺には憶えがないし!二人相手にウェーイした記憶もない!」

上条「これはきっと長らく使った俺のベッドが九十九神化したに違いない!いつの間にか女の子を発生させる程度の能力がだな」

ソーズティ「科学の街でオカルト的な非現実に逃げるな」

上条「いやでもそれ以外になくね?もしくは酒飲んでハッスルした、とか……?」

ソーズティ「え?」

上条「うん?」

ソーズティ「そ、そんな感じかな?まぁ大体は?」

上条「なんてこった!あれだけ父さんから『お酒は飲むなよ?その歳で人生決めたくなかったらね!』って言われてたのに!」

ソーズティ「記憶なかったんじゃなかったのか」

上条「海に行ったときな!今の話じゃない!」

ソーズティ「せ、責任取って……!」

上条「……」

ソーズティ「な、なーんちゃっ」

上条「――分かった!俺も心を決めた!」

ソーズティ「へ!?い、いや――」

上条「結婚しよう――」

ソーズティ「ちょっと待っ」

上条「――ウレアパディー!」

ソーズティ「ってそっちかい!私じゃなくて姉さんを選びやがったっコイツ!?」

ウレアパディー「ソーズティ、ダメよ」

ソーズティ「そ、そうですよっ!言ってやってください!」

ウレアパディー「これからは義兄さんって言わないと」

ソーズティ「乗り気じゃないですか!?冒頭のやりとりを完全無視して私欲に引っ張られましたね!?」

ウレアパディー「適齢的な意味で、ね?分かるでしょ?」

ソーズティ「なんで、だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

上条「……あれ?これ俺珍しくハッピーなオチじゃないか?」

ソーズティ「私は違うがなっ!ある意味最悪だっ!」



――ドンキホー○ 学園都市XX学区店 ハロウィン特設コーナー

御坂「あの、すいません」

ドン○店員「はい?何でしょうか」

御坂「ここの、コスプレなんですけど」

ドン○店員「あぁはいはい。揃えましたよー、この街は学生多いんでクラシックタイプのコスプレやアニメからラノベまでズラッと」

御坂「チョイス狭いな!サブカル一択でまぁ店側としては正しいけど!」

ドン○店員「一番人気はですね、こちらの『常盤台学生コス!』ですね!試着してみますか?」

御坂「ねぇお姉さん、あたしの服見えてる?どっからどう見てもそれとうり二つよね?」

ドン○店員「え、再現度の高いレイヤーさんじゃ?」

御坂「暇人かっ!」

ドン○店員「噂ですけど、常盤台を筆頭に『学舎の園』の学生さん達は外出許可がないと出られないんじゃ?」

御坂「都市伝説じゃないかなー?あー、まぁお嬢学校もありそうだけど」

御坂「てかウチの生徒の大量コピーって風紀的にはどうなのよ……?あたしが目立たなくなるのは有り難いやら鬱陶しいやらで」

ドン○店員「でしたら次に売れてるのは、遠坂○ハロウィンネコミミバージョンがですね」

御坂「もう学園都市が信じられなくなってきたわ!てか人気高いわねオカルト畑の人は!」

ドン○店員「お客様が中々踏み出しにくい、コスプレに抵抗があるんでしたらワンポイントなんてどうです?」

御坂「ってのは何?」

ドン○店員「魔女の帽子だけ被るとか、チョーカーつけるとか、一点豪華主義?」

御坂「多分違うと思うわ。まぁ全身コスよりか抵抗感少ないのは分かるけど」

ドン○店員「身につけていないときには棚へ置くとインテリア気分。飽きたら即・捨てられるペラいコスと違ってしまう場所にも困りませんよ」

御坂「あー、バレッタもあるのね。ちょっといいかも。売れ筋は?」

ドン○店員「風紀委員の腕章(※イミテーション)ですね。XX学区店のみのスペシャル」

御坂「『――あ、もしもし黒子?今ね、あんたが探してたヤツ見つかったから。うん、あとでGPS情報送るわ』」

ドン○店員「おや?どうかされました?」

御坂「『――はい、はーいお疲れー』……ごめんね、それで?」

ドン○店員「まーウチはこんな感じで取り揃えていますけど、どうですかお客さんっ!」

御坂「や、あのね?最初は『もうちっと露出少なめなのはないの?』って聞こうとしたんだけど」

ドン○店員「JCがそんなことでどうするってんですか!足なんて露出してなんぼでしょう、ほらこの服なんてご覧なさいよ!」 ヒラッ

御坂「もうそれ服じゃない。蛍光灯が邪魔されずに貫通してくる布きれは、服って呼ばない」

ドン○店員「……いいですかー、御坂さん」 ポンッ

御坂「肩組んでくるなよっ馴れ馴れしいなこの店員は!?」

ドン○店員「我々女子はですね、ネイルやヘアピアスだマスカラだーとあれこれ努力をしますでしょう?洋服以前にも多大な努力を払っている訳ですよ、えぇ」

御坂「あたしは別にしてないけど……」

ドン○店員「そのウチしますよ!若さなんていついつまでもフォーエバー続くはずもなく!賞味期限を伸ばすために必死になる日が来るんですよ!」

御坂「ンなやつばっかじゃないと思う」

ドン○店員「でもね!私らが時間をかけて決めたコーデよりも!ン万円叩いて買ったお高い服よりも!」

ドン○店員「――結局野郎は中身にしか興味無いんですからっ!」

御坂「おい服売り場でぶっちゃけるな!分かってはいるけど同性が言っていいことじゃないわねっ!」

ドン○店員「えぇですから、ぶっちゃけ剥がされますし別にどうだっていいんじゃないですかね?」

御坂「モンハ○のガザ○に謝って!あの子達は狩られるためだけに生きてるんじゃないんだからねっ!」

ドン○店員「あ、ツンデレ風」

御坂「あたしが求めてるのはフツーのよ、フツーの!もっとこう『あ、可愛いな』って言うの!」

ドン○店員「いえ、ですからエロ可愛いのでしたら大量に」

御坂「可愛いとエロ可愛いを一緒にすんな!言葉の響きは似てるけど、可愛いのベクトルをどんだけ走って行ってもエロ可愛いの領域には入らないから!」

御坂「ゲコ太を『可愛い!』っていう人はまぁそこそこいるかもだけど、『エロ可愛い!』って言う人がいないのと同じようにねっ!」

ドン○店員「無理矢理ゲコ太さん貰い事故してる形ですが、大丈夫で?……あー、そう言われましてもねぇ」

御坂「魔女のマントとか!カボチャの仮面とか!そういうのでいいのよ!そこに飾ってあるヤツで!」

ドン○店員「あ、すいません。これ売約済みなんですよ」

御坂「いっぱいあるのに!?どんな物好き――って今更学園生の生態に驚いたりはしないけどねっ!」

ドン○店員「他、ですか、えーっとお嬢さんが着てる常盤台コスセット以外ですよね。ったく面倒だな−」

御坂「あんた今さっきあたしのこと『御坂さん』つったわよね?それつまりコスプレじゃないって知ってるのよね?」

御坂「てか百歩譲って、つーか自分で言うのもなんなんだけど常盤台以外に需要ないでしょ?人気がある学校なんて殆ど集中しているしさ」

ドン○店員「いえいえ、それがそういう訳でもなくて。たまーにこう、来る訳ですよお客様が」

御坂「他校のコスプレなんてする意味無くない?実用品だったら購買行けばいいんだし」

ドン○店員「『店員さんっ!学生服ってないかな!学生服!安いのでいいてからさ!』」

ドン○店員「『今ちょっと家計がピンチでコスプレ用のペラいのでいいから!ぱっと見わからなきゃそれでいいから!学生服!』」

ドン○店員「『あ?元々の制服どうしたって!?そりゃアレだよビリビリにビリビリされたんたよ言わせんな恥ずかしい!』」

ドン○店員「――と、何故か何度も駆け込むお客様がいたので、店長も渋々……と、どうされました?急に顔を隠して?」

御坂「なんでもないのよ?ただちょっといないいないばぁをしたい気分ってだけだから」

ドン○店員「どんな衝動ですか――あ、ありました。これが某底辺高校用の地味ぃなコスプレセットですね」

御坂「ください」

ドン○店員「え?これ男子用」

御坂「それ、ください」

ドン○店員「サイズも、あなた7号ぐらいじゃ」

御坂「あぁあと適当にこの棚からあっちの棚まで全部」

ドン○店員「ありがとうごさいますっお嬢様っ!ただいまお包みしますからお待ち下さいなっ!」

御坂「取り敢えず、その服と……髪留めにカボチャついたの一つだけは持って帰ります」

ドン○店員「ではそのように――ありあっしゃっしゃー!」

御坂「なんでコンビニの店員風……いいけど」

――

御坂『……』

???「――オ?今って確かアレじゃネ」

???「てかディスプレイ用のウィグとエプロンつけて何やってんダヨ」

ドン○店員「店員ごっこ、ですかね」

ドン○店員「レジ開けてプラマイプラスになってればオーケー!バイト代を徴収しない私ってなんて親切なんだろう!」

???「自首しろヨ犯罪者」



――

ウィーン、プシュー

御坂「……買ってしまった」

御坂「露出は、低い、けど!気づいて貰えるかどうかは微妙なレベルの!」

上条「おっ、ビリビリ奇遇だな」

御坂「この街狭いなっ!?伏線張ったらすぐ回収しに来るわよねっ!?」

上条「買い物帰りか?珍しいな、こっちまで来るなんて」

御坂「んー、まぁちょっと一点もの狙いにね。価値は無いけどレアなのよ」

上条「なんだそりゃ」

御坂「あんたは……バイト?学校帰りにしては遅いわよね」

上条「あぁ、道歩いてたら『簡単なアンケートです』って言われてさ」

御坂「待って!それについてったら人生終わるからやっちゃダメなやつよ!」

上条「ついてったら『もう帰って下さい』って白ワンピ着た子とバニーさんがだ」

御坂「ねぇこの話これ以上膨らませなくもよくない?誰も得をしないと思うのよ」

御坂「っていうか、さ?今日は何の日か、わかる?」

上条「ソードーアー○の発売日?」

御坂「フィクションじゃなく!現実的な風習的な意味で!」

上条「あぁお菓子配る日だろ?大丈夫!もう何周かループしてるから対応はばっちりだぜ!」

御坂「ハマってるハマってる。冗談だとは思うがもし本当だったとしたら抜け出ないと!」

上条「……俺、この戦いが終わったらツッコミ要員としての採用試験が待っているんだ……っ!」

御坂「ちょっと楽しそうその職場。でも待って!ツッコミは職に結びつかないわよ!」

上条「つーわけで近所のガキが訊ねて来たらお菓子配る予定なんだけど、お前も来る?」

御坂「い、行かないわよっ!」

上条「かーらーのー?」

御坂「い、行けばいいんでしょっ!行けばっ!」

上条「あ、じゃコンビニで薄力粉買ってだな」

御坂「……あんた本当にあたしの扱い上手くなってきたわね?」

上条「……もっと手に負えない子を相手にしてるから、かな?だって選択肢一つで死にそうになるんだぜっHAHAHAHA!!!」



――上条家(の、アパート)

バードウェイ「――なぁマーク。ハロウィンだよな」

マーク「ですね。ぶっちゃけロンドン帰って寝たいですが、まぁハロウィンです」

バードウェイ「明日にはハロウィン仕様のお菓子がワゴンセールに並ぶ前日、そうだな?」

マーク「開幕から夢もロマンも欠片も見当たりませんが、まぁそうですね。それの前日ですね」

バードウェイ「ということは、た゛。私もここは一つ子供らしくイタズラをしても怒られず、むしろ『あ、ボス可愛いなー』とフラグが立つ訳だ」

マーク「ボスをボスと認識している時点で相手がカタギさんではないですが。ある性癖の人たちには可愛いの前へ『エロ』が付属して立つかも知れませんね」

バードウェイ「ちょっとあのバカに刺激が強ずきるかな?……やれやれ、弱冠十二歳だというのに罪作りなことだ」

マーク「自制しろ、なっ?最近ちょっとヘタレてきてそっち系のネタ削ってんだから空気読みましょう、ねっ?」

マーク「つーか何やろうとしてんですかっボスっ!?上条さんの社会的立場をぶち殺すようのは自重して下さいよっ!」

バードウェイ「エプロンと水着」

マーク「はいアウトー!もっと子供っぽいもので行きましょうっ!そっちの方が上条さんも喜びますって!」

バードウェイ「いやお前、これ以上子供っぽいって……犯罪だろ?」

マーク「誰も上条さんの性癖の話はしてねーよ。もっと年相応なイベントをしなさいよって言ってんだ!」

バードウェイ「まぁ、そうだな。あのバカの性癖は天井裏にあった円盤が饒舌に物語っているものな」

マーク「いえあの、それは見なかったことに……武士の情け的な意味で」

バードウェイ「叩き割ったらダメか?」

マーク「マジギレされる一線を越えると思います。てか俺もキレます」

バードウェイ「じゃあ私の写真をだな」

マーク「残念ですが、ボスのカードは大富豪で言ったらハートの4ぐらいの強さです」

バードウェイ「意外に強い気がするんだが、中途半端に弱くて単独では使いづらいな」

マーク「需要がないとは悲しいことに決して断言はできませんけども、まぁ、上条さんは多分クラブの10ぐらいからじゃないと。流石に」

バードウェイ「よく分からん例えだ」

マーク「なので偉大なる魔術結社のボスにお願いしたいのはですね、節度を持った行動を取って頂ければな、と」

バードウェイ「しかしハロウィンか……イタズラと言われてもな」

マーク「まぁ別に実行へ移さなくても『トリック・オア・トリート!』でいいんじゃないですかね。上条さんもほら、小さな袋にまとめたお菓子を用意されていますし」

バードウェイ「イベントはする気満々。だが、姿が見えないな」

マーク「もう少しで帰ってくるんじゃないですかね。取り敢えず私は円盤元あった場所へ戻してきますから」

バードウェイ「頼む。さて、では私は服を脱いでベッドにでも」

マーク「それをやめろっつってんだよ!ご時勢的な意味で!」

バードウェイ「ジョークだよ、ジョーク。流石に私もそこまで大胆ではないさ」

バードウェイ「だがしかし!このまま無策でOMOTANASHIさせるのはゲストとしても気が引ける!」        

マーク「ねぇボス?さっきから気になってんたんですけど、実はパニクってませんか?」

マーク「キャラ違うし。あ、もしかして久しぶりに上条さんに会うから緊張あばばばばばばばばばばばばっ!?」

バードウェイ「念のために持ってきた良かったなー、ビリビリウサギ」

バードウェイ「――さて、空気読まないバカは適当に置いとくして、私はどこへ隠れようかなと」



――玄関

ガチャッ

上条「ただいまー。あぁ、上がって上がって」

御坂「お邪魔しまーす。あのシスターちゃんはいないの?」

上条「インデックスは以下略」

御坂「ぞんざいな扱いよね。この間一緒レコーディングしたんだけど」

上条「川田さん引退しちゃったんだよなぁ。復帰してくれると嬉しいんだが」

御坂「何となくだけど、こっそり引退→結婚・出産→復帰のコースに入ってる感じがするわ……」

上条「今お茶用意すっから座って待ってて」

御坂「あ、どうも。ちょっと手を洗いたいんだけど」

上条「どうぞどうぞ」



――洗面所兼トイレ兼風呂場

御坂「……なんかなー。合理的なんだけど、ビジネスホテル並に無機質感漂うわよね」

御坂「あ、ヘアピンをハロウィン仕様にして――よっしゃ!これで気づかないとか、ないわよね?いくらなんだってね?」

御坂「……ん?なんでこっちのユニットバスがカーテン引かれたままになってんのよ。湿気こもるわよね」

御坂「一応開けといて」 シャーッ

ボロボロになった男性「……うぅ……」

シャッ

御坂「……錯覚、よね?あれ?」 シャーッ

ボロボロになった男性「……逃げ、て……!」



――台所

上条「どうすっかな。チーズケーキを切ろうとか思ってたんだが……あー、ここで食べるんだったらレアの方が美味しいんだよなー」

上条「五和から貰った紅茶とセットにすれば――」

ドタドタドタドタッ

御坂「ちょっと!」

上条「どうしたっ?」

御坂「お、男の人が!バスタブにボロボロになった男の人がいるのよっ!」

上条「マジでっ!?――ってお前アレだよ、ハロウィンだからかつごうってハラなんだろ?」

御坂「違うのよ!スーツ着た外人の人が!」

上条「……マーク?いや、ボスはいないはず――分かった。見に行こう」



――洗面所兼トイレ兼風呂場

御坂「ほら――え?」

上条「……」

御坂「い、いたのよ!ここに!」

上条「あーいや、分かってる。何となくは理解したし。お前がウソ吐いてないって分かってるから、大丈夫。な?」

御坂「う、うん」

上条「ただちょっとこれは厄介な案件かも知れないし、ボスの怒りを収めるにはレアチーズケーキのレモンシロップかけが必要だ。分かるな?」

御坂「超分かんないです。ボスって誰?」

上条「だから時間を稼いでくれ!俺は今からベスト・オブ・ベストの紅茶を入れなくてはならないんだっ……!」

御坂「分かったわ!何一つ分からないけど!」



――部屋

御坂(ここで待ってろ、言われてもな。どこに座れば……)

御坂(クッションはないし、お座布団もない。じゃベッド――ベッドも違うかなぁ。ベッドはこう、レベルが高めだって話で!)

御坂(だってほら『がばっ!』って来られたら逃げ場ないし!狭い室内だから!)

御坂(てかさっきの男の人事件も曖昧にしちゃったけど、これ相手がアレな人だったら逃げ場がな――)

ガタッ

御坂「にゃっ!?」

御坂「……」

御坂(立て付け、よね放てポルターなガイストじゃなくて)

御坂(ま、まぁいいわ!気にしない方向で――あ、壁に制服掛かってる。ボロボロだけど)

御坂(ふーん、これはつまり――)

ガサゴソ

御坂(これでよし、と。あー、古いのは捨てちゃおう、今度のゴミの日にでも――)

ガタガタッ

御坂「……」

御坂(今……ベッドが軽く浮くぐらい揺れた、わよね?何?地震?)

御坂(そういや猫飼ってるんだったっけ?その子が出られなくなっちやってるかなー?) スッ

御坂「ほーら出ておいでー、怖くな」

金髪の少女「……」

御坂「………………うん?あれ?」

御坂「ベッドの下に、ありえない光景を見たような――」

ガシッ!!!

御坂「手がっ!ベッドの下から手がっ!?」

バードウェイ(金髪の少女)「トリック・オア・トリート……っ!!!」

御坂「都市伝説が今まさにあたしの目の前にっ!?ベッド下の斧男の亜種バージョンが!」

バードウェイ「……」

御坂「……」

バードウェイ「あ、すまない。人違いだった」

御坂「あ、いえ――ってそれで済む訳ないでしょーうが!?何やってんのよ!?つーか人様のベッド下へ潜り込んで何やってんのっ!?」

バードウェイ「ハロウィンのイタズラだが?」

御坂「海外のはレベルが高いわねっ!」

バードウェイ「――というか、御坂美琴だったか?見損なったぞ!」 ズルズルッ

御坂「そんな、貞○チックに這い出てきて埃まみれになってる幼女から見損なった言われても……」

バードウェイ「『美琴だけに見損なった!』とでも言うつもりか!面白くもない!」

御坂「やめて!?あたしがスベったみたいに事故へ巻き込まないで!」

バードウェイ「一人暮らしの男の部屋へノコノコやつてくるとはな!淑女としての恥を知るがいい!」

御坂「あなたは?見たところ女の子に見えるんだけど、そっくりそのまま言葉返しちゃって問題ないわよね?」

バードウェイ「言い訳など聞く耳を持たん!今はそんな話をしているのではない!」

御坂「いやそれ詭弁だし、それ言ったら一番最初に大声出した人の一人勝ちになっちゃうから」

バードウェイ「それとも何かね。言いたい事があるんだったら言って貰おうか!」

御坂「あ、あたしはブラつけてるし!」

バードウェイ「よし、かかってこい。アルカナのフルセットコンボを叩き込んでやろう!」

上条「やめろ。お前らがやり合ったらウチだけじゃなくてご近所も崩壊するから、どっかよそでやれ!」

上条「てか争いが低レベルすぎる……ッ!つーかむしろ低レベルだからこそ不毛な争い過ぎる!」

御坂「最初っから逆ギレ気味で、こっちは被害者なんだけどね!」

バードウェイ「がるるるるるるるるるるるるるっ!」

上条「まぁそういう時は、お茶とケーキを並べると」

バードウェイ「こんなモグッ、では懐柔されないモグモグアグゴフっ!?」

御坂「早くお茶飲んで!?さ以後呼吸困難になるまで詰め込むから!」

上条「イギリス人の習性としてだな。上手い茶とスイーツを並べると取り敢えず黙るんだ!」

御坂「流石メシマズ国の住人よねっ!」

上条「てかお前も食べる前にいただきますしなさい!母さんはそんなお行儀の悪い子に育てた覚えはありませんよっ!」

御坂「言いそう。ウチのママは絶対に言わないけど」

上条「それじゃ――」

御坂・バードウェイ・上条「「「いただきます」」」

御坂「――あ、美味し!」



【本日の勝負】

○御坂美琴×レイヴィニア=バードウェイ
(決まり手・上条さんの制服をパチる)



(※以上、ご応募ありがとうございました。次はクリスマス企画で)

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