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Clock(trial)

レディリーと『アイテム』

――『アイテム』のアジト

浜面「……寝た?」

絹旗「滝壺さんが超寝かしつけている所です……っていうか、何なんですか?あの超ハピレスプリキュア?」

浜面「いやー……うん、なんかなー学校で流行ってるとかで」

絹旗「変身しないでダラダラッとしている、超B級映画みたいに超素敵でしたが!」

浜面「絹旗にはご褒美ですもんねー」

絹旗「超言いたい事があるんだったら超言えよ、あぁ?」

浜面「そ、そうやって直ぐ暴力振るおうとするのよくないっ!よくないよっ!女の子なんだからねっ!」

絹旗「浜面に女の子認定されても、それはそれで貞操の危機を超感じる訳ですけども」

浜面「あのさぁ絹旗さん?いい機会だから言わせて貰うけど、お前滝壺に変な事吹き込むの止めてくれねぇか?」

浜面「『男の半数は常にエロい事を考えてる』とか、微妙に否定しづらくて困るんだけど」

浜面「多分変な女性誌の受け売りだろうが、ありゃ事実に基づいてなんてないからね?ノリでデタラメ書いてるだけだぜ」

絹旗「ほぅ。では超違うんですか?」

浜面「半数じゃなくてほぼ全てだな」

絹旗「ダメじゃないですか超ダメじゃないですか」

浜面「わ、分かってないな!こないだタクシーの運ちゃんに聞いたけど、政治とスポーツの話は荒れるから、取り敢えず男の客はエロ振っとけば鉄板だって!」

絹旗「あぁそれ多分浜面が超エロそうな顔してたからだと思いますよ」

浜面「どういう顔?俺いつもエロそうなの?」

絹旗「具体的にはお風呂上がりで超薄着になった麦野を見る目ですね」

浜面「おっとそれ以上は言うなよっ!場合によっては侮辱罪で法廷で倍返しだからなっ!?」

絹旗「……侮辱罪というのはですね、こう、『本当の事を超言われてバカにされた』って事であって」

絹旗「って麦野からも超言ってやって下さいな、この浜面に」

麦野「……んー……」 ピッ

絹旗「麦野?超何やってんです?」

麦野「あーうん、今ちょっと浜面の携帯見てたんだけどね」

浜面「オマっ!?勝手に!?」

麦野「基本的にはエロサイトとエロサイトとエロサイトとパチスロ攻略サイトしか行ってないんだけど」

浜面「だって仕方がないじゃんかよ!マジハ○の新台が出るんだからねっ!」

浜面「しかも今回は恒例の『ハロウィンなんてクソ程も関係ない季節』を破って、ハロウィン終了から一ヶ月で発表したんだからさっ!」

絹旗「ちょっと意味が超分からないですね」

麦野「まぁ浜面のアレなのは今更だとして――」

麦野「――着信履歴の、この『大将』って人、アレよね?いつも面倒臭い事に首突っ込んでる人よね?」

麦野「そんな人とどーして長々と話してるのかにゃー?ねぇ、はーまづらぁ?」

浜面「そ、その年で『にゃー』とかキツ――」

麦野「顔面割られて泣く泣く話すのと、話してから顔面割られるとどっちが良い?」

浜面「そ、それじゃ話してから割られる方で!……ありゃ?トラップじゃん!どっちも割られるの確定じゃんっ!?」

絹旗「浜面が超不自然にネタに走るのは何かある証拠ですね」

浜面「や、やだなー君達!仲間を疑うもんじゃないアルよ?」

麦野「あるのかないのかビンタされてぇのか?あぁ!?」

浜面「ふっ!やるならやってみやがれ!俺はこう見えてもバニーさんの格好してビンタされるのが苦手だけどな!」

絹旗「超特殊すぎるプレイじゃないですかー」

麦野「『――もしもし?浜面仕上がいつもお世話になっております。あ、はい。その節はどうもありがとうございました』」

麦野「『それでですね、先程の件――えぇはい、浜面から少し聞いたんですけど、もっと詳しいお話を――』」

浜面「お前フザけんじゃねぇぞ!?ていうかそんなキャラじゃなかったじゃねぇかよ!?」

浜面「お前いつもいつも上条の前では猫被ってやがるから、最近お前の事『綺麗なお姉さん』だと勘違いしてやがるからなっ!」

麦野「『――え、本当に!?』」

浜面「言いやがった……くそ、何考えてんだ!」

麦野「『エロい店に二人で行く計画……?』」

浜面「そんな話してねぇよ!フレンダの話だ!」

絹旗「……はぁ、浜面は少し賢くなっても浜面は超浜面でしたか」

麦野「――と、いうよりも携帯から向こうの台詞が聞こえてこない時点で、ブラフだと気づかないかしらね」

絹旗「ていうか、どうせ超下らないエロネタだと思っていましたが、よりにもよって超々のネタだったとは」

麦野「ごめん。滝壺呼んできてくれない?あと」

絹旗「超寝てるかどうかも確認、ですね」

麦野「ん」

浜面「……え、な、何?」

麦野「ブラフ――ハッタリよ、ハッタリ。電話をかけた”フリ”をしただけ」

浜面「……あーっと、ね?麦野さん?」

麦野「事情はよく知らないし、まぁあんたが隠すんだから、私にはきっと面白くもないネタなんでしょうけど」

麦野「いっちょ前に女の子扱いされて嬉しいは嬉しい――でも」

麦野「あの子に関しての話で――『アイテム』の関する話で。あんた一人だけで独断で話を決めちまおう、ってのは認められない話よ」

麦野「都合の悪い事実は伏せて、自分一人でナントカしよう?――それが『仲間』って言うんだったら、あんたがもう一回やり直せるって言ったモンだったら」

麦野「今日で『アイテム』は解散した方がいいわ」

浜面「……麦野」

麦野「男を見せるんだったら滝壺にしなさいよ。使い所を間違ってる」

???「――いいじゃない。それでも貴女は喜んでいるのだから」

浜面「そ、そうなの?」

麦野「何言ってん――誰よっ!?」

???「私は――」

麦野「――よっと」 ガッ!!!

浜面「あぁバカっお前そんなデカい香水の瓶で殴りつけたら!」

麦野「どう考えてもまともな相手じゃないでしょうよ。絹旗にやられるよりはマシ……?」

浜面「……どーすんだよ、どう見てもガキ相手に、しかも顔面グッシャグシャじゃ……あ、あれ?」

???「――良いわ。女の子の顔を全力で潰してに来るなんて、素敵な性格なのね、貴女」

麦野「最低でも鼻は折った筈なのに……再生したっ!?」

???「顔面を砕かれたのは……いつ以来だったか忘れたけれど、相手の外見に惑わされず、何の躊躇も見せずに殴りつけるなんて。中々刺激的よね?」

麦野「――んだぁ?」

???「あら、怖いわ。そんなお顔だと、好きな男の子からも嫌われちゃうわよ?ね?」

麦野「この……ッ!」

浜面「わー、待て待て!多分この子も関係者だから!」

???「直接的ではないし、暇潰しに付き合ってあげているだけだけれどね」

絹旗「超何やってんですか?なんかドタバタと、鈍器のようなもので超殺人したような音がしましたよ?」

滝壺「……あ、また女の子」

???「さて、早くの皆さんが揃ったようだし、改めて自己紹介――私は、レディリー。レディリー=タングルロードよ」

レディリー(???)「『神託巫女(シビル)』としては物語を紡ぐよりも、未来を語る方が正しいのでしょうけど、今日はお話をしましょう」

レディリー「皆さんには数奇な運命を辿った、『死者』の話なんて如何かしら?」




――『アイテム』のアジト

レディリー「――のが、今までの動きね。何か分からない所はあったかしら?」

浜面「あぁーっと、はい!先生!」

レディリー「どうぞ」

浜面「分からない所が分かりません!」

レディリー「あなたのお友達とそっくりそのままの姿と記憶を持っている――”かも、しれない”スワンプマンが現れた」

レディリー「このままでは『死者』として処分されそうになってる、だと思うわ」

絹旗「超ツッコミたい所は多々あるんですが……まず、一つ」

絹旗「その『死者』のフレンダというのは、生前――以前の、わたし達が知っているフレンダと超違うんですか?」

レディリー「肉体は別の物から構成されているわね。存在自体はこれからの展開でどうとでも変わるでしょうけれど」

絹旗「じゃ、じゃあ!アレですよ!魂とか、そういうのがあって!フレンダを超再現しているとか、そういうのは!」

レディリー「えぇそうね。彼女の魂はしっかりと再現されているわ」

滝壺「……だったら!」

レディリー「――と、言えば満足かしら?それともご不満?」

絹旗「やっぱり顔面超割りましょうこのクソビッチが」

レディリー「あらご不満だったようね?でも、それは確かめようがないのよ」

レディリー「魂のあるなしなんて定義がある訳じゃないし、仮に記憶が以前とどこが違うだなんて、本人ですらも分かってないわ」

浜面「いや……それは、分かるんじゃねーのか?友達や家族だったらさ」

レディリー「昨日の夜と今朝のあなた。どちらも同じ人物だけれど、その記憶が寸分違わぬものであると言えるのかしら?」

レディリー「こうやって話している間にも、古い記憶から少しずつ消えていくのに、あなたはその全てを憶えていると?」

浜面「それは……あー」

レディリー「それとも記憶が100の内99保たれていれば”本人”であって、50を切れば別人なの?」

レディリー「ある日突然、事故で記憶がなくなってしまったら?そう、割り切れるものじゃないでしょう?」

麦野「……お前の言いたい事は分かったわ。クソムカツクけど、どっかのクソヤローがフレンダ使ってなんかしようって事はね」

麦野「それで?お前は私達に何させたいのよ?まさかボランティアで人の感情引っかき回して来やがった、とかそう言うんじゃないのよね?」

レディリー「あら怖い。そんなに目をつり上げると赤ずきんを食べちゃうオオカミさんみたいよ?」

麦野「真面目に答えろクソガキが!」

レディリー「私がやって欲しいのは露払いよね」

絹旗「……フレンダの?」

レディリー「えぇ。さっきも言ったけれど彼女には敵が多くてね。その一つ――狂信者達を、こう、殺さない程度に、ね」

滝壺「……なんでそんな人達が……?」

レディリー「内緒。ただ、科学の街で魔術師が能力者のチンピラに倒されるのは、まぁよくある事よね、と言っておくわ」

浜面「チンピラて……!」

レディリー「あぁ返事はしなくて結構よ。場所と時間は伝えたから、その気になったら来て頂――」

麦野「――最後に聞かせて」

レディリー「信じたくなければ構わないのよ?それもあなた達の決断だし、私は尊重するわ」

レディリー「気に食わなければ逆に邪魔するのも素敵よね、くす、くすくすくすくすっ」

絹旗「……超イカレてますね、この子」

レディリー「そうね、おかしいわよね、私――でも、ね?」

レディリー「あなた、そうあなた達は正気なのかしら?本当に?言い切れる?」

絹旗「超言い切れますよ、当たり前じゃないで――」

レディリー「――だってあなた達、本当はフレンダさんなんてどうだっていいんでしょう?」

絹旗「そんな訳ないじゃないですか、超何言って――」

レディリー「だったらどうしてあなた達、フレンダさんを殺した相手に復讐しないのかしら?」

レディリー「『本当』に仲の良い関係だったら、仇の一つでも取ってあげればいいのに、ねぇ?」

絹旗「――っ!」

浜面「――お前っ!」

レディリー「あら気に障ったのかしら?だとしたらゴメンナサイね、私は何も知らないのだから」

レディリー「……そうよね。お友達が死んだんですもの、感情の整理が追い付かなくなる事もあるかも知れないわ。ううん、きっとそう」

レディリー「――けれど、そういうフレンダさんは被害者だったのかしら?」

滝壺「何が……言いたいの?」

レディリー「私が聞いた限りだと、彼女は『暗部』とか言う組織に居たらしいの。そこで非合法な活動をしていたとか」

レディリー「だとすれば、当然色々な恨みを買っているわよね。フレンダさん”は”」

レディリー「それが正当なもの――か、は別にしても、それこそ他人の人生を狂わせたり、終らせたりしてるかも知れない」

レディリー「と、なれば当然復讐の対象になるかも。ここに居る全員が」

レディリー「そういう人に殺されたら、あなた達はどうしていたの?どうすべきだったの?」

絹旗「それはっ!――他に仕様がなかったんであって!」

レディリー「『あなた達は被害者であって加害者ではない。騙されたのだから仕方がない』」

レディリー「――と、言って素直に納得してくれる相手だと良いわよね?くすくすっ」

麦野「……」

浜面「おいテメー、いい加減にしとけよ!」

滝壺「……」

浜面「俺達がどんな思いでやり直したのか、また『アイテム』を始めたのか!お前になんて分かる訳がな――」

レディリー「――『心の中で姦淫するものは、それ即ち現実にしたのと等しい』――」

浜面「あぁ?」

レディリー「聖書のどこに書いてあったのは忘れたけど、姦淫の罪についてあのボウヤがそう語った言葉があるわね」

レディリー「内心であっても悪い事を考えてしまえば、それは実際に罪を働くのと同義である、という強烈な罪の意識を植え付ける手法」

レディリー「……でも誘惑に駆られてはしても、実際に行動へ起こすのは極めて稀。空想家と犯罪者を一緒くたにしてしまうのは、まぁ相応しくはないわね」

浜面「だから、何の話を――」

レディリー「けれど、けれどね?実際に計画を立て、武器を用意して、ある人を殺そうとしたとしましょう。”ある人”が」

レディリー「”ある人”は幸い、不幸な人によって計画を邪魔され、人殺しにはならずに済んだのだけれど、あなたはどう思うのかしら?」

浜面「ど、どうって」

レディリー「彼女には留守になりがちでも優しい夫と、そしてどこへ出しても恥ずかしくない娘が居るのよ」

レディリー「中学二年生、そうフレンダさんと同じぐらいの年頃の、ね」

浜面「……そ、それが何だって!」

レディリー「その子は『暗部』になんて関わり合いはないし、善悪で言えば特定人物への通り魔と自販機キックを除けば、まぁ善だけの道を歩いた来たの」

レディリー「お父様も素敵な方よ。途上国でよくある悲劇を食い止めるため、可愛い奥様に拗ねられながらも飛び回っているわ」

レディリー「そんな二人の、良き妻であり、良き母親である彼女を”その人”は殺そうとしたのよ。酷い話よね?」

浜面「あ、ぁ、ああっ……!」

レディリー「考えた事はなかった?それともあなたには想像力がなかった?」

レディリー「他人を容易く踏みにじっておいて、いざ自分達へ累が及びそうになると『他に方法が無かった』のかしら?」

麦野「仲間、を」

レディリー「そうね。お仲間を大切にするのはとてもとても素晴らしい事よ、心の底からそう思うわ」

レディリー「でもそう思うのだったら、どこかで、いつか必ず自身の行為の報いを受ける前に、悪意の連鎖から抜けだそうとはしなかったの?」

レディリー「それとも『自分達は特別でいつまでもこの生活が続く』なんて思っちゃったの?」

麦野「……」

レディリー「あなた達が生き方を変えたのは良い事よ、それはね」

レディリー「でも、年長者から言わせて貰えれば、いつか、誰かから身に覚えのない『負債』の精算を求められるかも知れないから、覚悟しておくと良いわ」

浜面「――お前は」

レディリー「何?」

浜面「お前はそんな事言え――」

レディリー「私はつい少し前――あぁ一年前か、この世界軸では――に、10万人規模の無差別虐殺を起こそうとした女よ?それがどうかしたの?」

浜面「……っ」

絹旗「……ここまで喧嘩を超売られて、わたし達が手を貸すとでも?」

レディリー「結果はもう識っているもの。あなた達に覆らせるのであれば、とても素敵なのだけれど」

レディリー「それじゃあまた会いましょう」  パタンッ



――『アイテム』のアジト

浜面「……なんちゅーか、変なガキだったな」

絹旗「超同意です。わたしが言うのも超なんなんですけど」

浜面「だっよなー」

絹旗「あ、すいません滝壺さん。浜面の顔面超割っても構わないですか?」

浜面「構うよ!?それ割ったら取り返しがつかなくなっちゃうから!?」

滝壺「……わたしたちに隠し事をするんだったら、オシオキ、必要かも?」

浜面「そりゃ内緒にしてたのは悪かったけどさ!」

麦野「……」

絹旗「麦野?超大丈夫ですか?」

麦野「……あぁ、うん、大丈夫、よ?少し驚いただけだから」

浜面「まぁ――アレだ、真面目な話、『アイテム』はこれ以上関わらない方がいいと俺は思う」

滝壺「……ふれんだの話、なのに」

浜面「酷な言い方……か、どうか分からねぇが、フレンダは『終った』話なんだよ。当事者が居なくなっちまって」

浜面「その、なんつーか、フレンダのそっくりな子には悪いとは思うが、俺達は動くべきじゃないと思う」

絹旗「俺達は、ですか?」

浜面「あぁ、俺は行くよ。大将――最初に連絡くれた奴は、なんだかんだ世話になってるし、バレちまった以上、隠す意味も無いし」

浜面「フレンダの件がないにしても、それはそれ、これはこれでさ」

滝壺「わたしも」

浜面「滝壺とフレメアと待っててくれよ、な?フレンダ関係だし、勘違いしたバカが出て来やがる可能性もあるし」

絹旗「だったらわたしは浜面を超お手伝いしましょうか。どうせ一人じゃ何も出来ないんですから」

浜面「ヒデぇな!?その通りだけどよ!」

絹旗「あのロ×に超一発お見舞いしたいですし、まぁ――」

麦野「――ちょっと待って」

絹旗「はい?」

麦野「私は――うん、私は『アイテム』として動くべきだと思うわ……いや、『アイテム』だからこそ、動かなきゃいけない」

浜面「やー、あのな?あぁっと」

麦野「その――子、が、フレンダかどうか。それは関係ない」

麦野「魂が同じかも知れない。記憶が同じかも知れない。本来死んでいたフレンダを”継ぐ”存在かも知れない」

麦野「そういうのも、全部関係なくてだ」

浜面「……じゃ、何だって言うんだよ?」

麦野「私はクソッタレだ。仲間をぶっ殺し、その死骸に縋り付いているような最低の女よ」

麦野「筋は通っていないし、自分達の事を棚に上げている。そう、思うわ」

絹旗「それは、超仕方がないんじゃないかと」

麦野「……けど、けれどね?ここであのロ×ババアが言っていたように、開き直ってのは違う」

麦野「また『暗部』へ戻りましたー、なんて言ったらそれはもう最悪よ」

滝壺「……」

麦野「気に入らないバカはぶっ飛ばすし、そうじゃないバカもぶっ飛ばす。それは変わらないわ、ただ、その」

麦野「筋は通さないと。隣で眠っている子も含めて、そういう……なんて言うかな、最後の最後で惨めったらしく縋り付いているもの?」

麦野「それを全て投げ出して、逃げ出してしまったら……多分、私は」

麦野「……もう二度と、胸を張れないような気がする。何に対しても、誰に対しても」

滝壺「……うん」

絹旗「そう、ですね。はい」

浜面「俺としちゃ、ニアミスするような可能性も減らして欲し――」

麦野「――っていうのが、建前ね?」

浜面「建前かよ!?結構しんみりとしてたのに!」

麦野「フレンダのニセモンだか、ホンモノだかは別にどうでもいい。一度会ってみたい気はするけど」

麦野「……それよりも何よりも、『アイテム』のメンバーの姿を勝手に造りやがって、しかも他の連中を振り回してるのよね?」

麦野「これ、ちょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっと!頭に来るわよ、ねぇ?」

絹旗「おっ、麦野超悪い顔になってますよー

麦野「フレンダモドキを造りやがった野郎の思惑はさておき、『アイテム』に喧嘩売ったんだ。然るべき落とし前はつけてあげないといけないわねぇ」

浜面「(あ、あのさ?)」

滝壺「(なに?)」

浜面「(い、いいのかな?麦野さんがキリングなマッスィーン風になってんだけど!超怖いんですけど!)」

滝壺「(元気があって……まぁいいんじゃ?)」

浜面「(ていうか今までそれっぽい事言ったのは建前で、要は『喧嘩売られてテッペン来てる!』って結論はどうかな!)」

浜面「(具体的にはフレンダ殺った時とメンタル一個も成長してない気がするしな!)」

滝壺「(……べつに、そのふれんだモドキがふれんだだってた証拠はない訳だし、今はこれで良いと思う)」

浜面「(でもさ?真っ当な人間じゃないかもって)」

滝壺「(もし、以前のよう感じに少しでも戻れる可能性があるんだったら、わたしたちに取っては些細な事、かな)」

浜面「(滝壺……)」

麦野「――まぁ、それはそれとして、浜面があたし達に黙ってた件についてなんだけど」

浜面「あ、ごめんボク塾の時間があるからこれで失礼――げふっ!?」

麦野「ナイス絹旗」

絹旗「いえいえ、超お構いなく」

浜面「待ってよ!?俺は善意で隠してたんであって!決して、そう!決してお前らに対する裏切り的な気持ちは無いさ!」

麦野「滝壺に誓って?」

浜面「イエスッあいあむっ!俺の愛はインフニィットさ!」 キリッ

絹旗「――では、こちらにある。『バニーさんランド優待券』とは超なんでしょうね?」

浜面「いやあの、これはだな。夜の繁華街で会った謎のナイスミドルさんから頂いたドォリィムランドゥ(巻き舌)へのチケットなんだよ!」

浜面「これを使えば遙かなるカダスへ行けるって!ボクが子供の頃の夢なんだよ!純粋なね!」

浜面「オイ知ってるか?バニーさんは、外国の方にあるドリームランドにしか自生してないらしいぜ?」

絹旗「それはただの出稼ぎと超違わないんじゃ……?」

浜面「そんな訳ないよ!だって本人がそう言っ――――――あ」

麦野「――はいっと言う訳で罰ゲーム確定した訳ですが絹旗さん。今日の罰ゲームはなんでしょうか?」

絹旗「そうですねぇ。あまり強烈なものだと鼻面の友人関係に超支障を来しかねないので」

浜面「絹旗さん、俺浜面。鼻面じゃないです」

浜面「あと人間関係に支障を来すような罰ゲームつて何よ!?それもう拷問って言わねぇか!?」

絹旗「――じゃーじゃん」 コトン

浜面「ビン……?調味料の、だよな」

麦野「タバスコね」

浜面「凄く……赤いです……ッ!!!」

絹旗「はっまっづっらの、超いいとっこ見ってみたいっ。あ、それっ、いっき、いっき、いっき……」

浜面「ヤバいって!これ地味に内蔵がおかしくなるヤツじゃんか!?ノリでやっちゃいけないの!」

浜面「ていうか『アイテム』のドS担当はやっぱり絹旗じゃねぇのか!?麦野の影に隠れてやがるけども!」

麦野「――ねぇ、浜面」

浜面「な、なんだよ!怖い顔したってやらないからな!」

麦野「フレンダモドキを黙ってた件は――」

浜面「――飲んでやるよ!よっしゃ!男の生き様見とけやゴラァ!!!」

滝壺「がんばれー、わたしはそんなはまづらを応援している……」

浜面「どうせ応援してるんだったらねっと早く止めて欲しかったが!……うし!」

ゴキュゴキュゴキュゴキュッ

絹旗「うわ、マジで超飲みやがりましたね」

麦野「ていうか、これ本物なの?水で薄めてあるとか、着色料ついてるとか、テレビ的なヤラセはないのね?」

絹旗「冷蔵庫にあったのですね。最後にピザ食べたの忘れるぐらいに前ですし、そろそろ超処分しようと思っていたんで、まぁ?」

浜面「……」

滝壺「……はまづら?」

浜面「ぶほおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!?」

三人「「「」ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」」」



――決行当日 深夜の路地裏

レディリー「――なんだかんだ言って予定通りの時間ね」

麦野「気に食わねぇが、それはそれ、これはこれ、よ」

レディリー「まぁ良いのだけれど……そっちのボウヤが、顔面腫れ上がらせているのは」

浜面「……」

絹旗「超ご褒美ですね」

レディリー「あら素敵。愛の形は様々よね」

浜面「……扱いが……!」

麦野「んーで、私達はどいつをぶっ殺せば良いの?狂信者、だっけ?」

レディリー「聖堂騎士は一人を除いて帰還した後で、残ったのは改宗組のクルセイド達ね」

レディリー「元々は信仰や宗教にも関わり合いがなかった人達が、シスター・リドヴィアに感化――いいえ”感染”した狂信者ども」

レディリー「聖堂騎士よりは格段に弱いけれど、”神のため”と言えば喜んで死に急ぐ、厄介と言えば厄介よね」

絹旗「なんでそんなキチガ×がフレンダモドキを超狙ってんですか?ロ×?ペ×?」

レディリー「本人達は十字教の教えを敬虔に護っている”つもり”。特に最初から組織の一部じゃなかったのだし、活躍を見せたいんでしょうね」

レディリー「ヨーゼフとしては、『木原』とぶつかった時の捨て駒として持ってきていたんでしょうけど、ここへ来て自らを縛る枷になると」

麦野「ソイツらを半殺しにすりゃいい訳か」

レディリー「殺しちゃうと第四次世界大戦になりかねないから、気をつけると良いわ――あぁそうそう」

レディリー「もしも”彼女”が。あなた達の知っている誰によく似た”彼女”が」

レディリー「その手で運命を変えられれば、今回の事件の主犯はこちらへ逃げてくる事になるわ」

麦野「ふーん?」

絹旗「……それは、超良い事を聞きましたね」

滝壺「……ん」

レディリー「それじゃ行きましょうか」

浜面「――そうだな、『アイテム』しゅっぱ――」

絹旗「浜面、超置いていきますよ」

浜面「あっはい今行きます――っておかしくねぇか!?俺がキメ台詞言ってんのに!?」

麦野「何遊んでんのよ」

浜面「いや決めたじゃん!ジャンケンで決めたじゃんか!こう、なんかビシッと決める時には俺も一枚噛むって!」

浜面「じゃないと俺の役割が!俺のポジ的に『あの子、必要かな?』って思われちゃうでしょーが!」

麦野「あーうん、何か主犯ぶっ殺す時には言わせてあげるから。それで我慢しなさい」

浜面「絶対だからな!?俺は信じてるからな!?」

浜面「も、もし破られたら全員でバニーさん――って聞いてよぉ!?ボケを誰も聞いてないってどういう事!?」

浜面「だからぁ何度も言ってるけどぉ、俺の存在意義を――」


−終−

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