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Clock(trial)

とあるツッコんではいけない映画劇場 〜犬鳴○〜

 
――オービット・ポータル芸能事務所

マネージャー「アイドルユニットを作ろうと思うんですよ」

鳴護「あ、こんなところにクリスタルの灰皿が。これでスマッシュすればツッコミとして正当防衛が認められるかな?」

マネージャー「申し訳ないのですが、自分は人体急所にチタンを埋め込んでいるため致命傷はまず負わないかと」

鳴護「アイドル、なう、おーけー?」

マネージャー「もうシンガーと言い張るのもやめたのか、と思わなくもないですが。まぁ存じていますよ、ARISAさんはアイドルですよね」

鳴護「……あたしもまぁ、最近マルチな活動をさせている方々が多いですし、肩書きには拘らないようになるべく心がけてるつもりですけども……」

マネージャー「あぁ今はジャンルの垣根は低くなっていますしね。演歌で活躍されている方がカジュアルなお召し物でトーク番組に出ていることもあれば」

マネージャー「原作どころかアニメ業界にも興味がないのに、タイアップ曲を歌っただけでさも時代の寵児的な扱いをされることもありますから」

鳴護「フィクションですよね?そんな人居ませんし、仮に100歩譲って居たとしてねみんななぁなぁで済ませてるんですからね?」

マネージャー「そういえば話は変りますが、100日後に死ぬワ○ってどうなりましたっけ?」

鳴護「爆死しましたよ?自然死ではなく『これ飲食店登録やらタイアップ商品やら、100日以上前から仕込んでないと無理じゃねぇか』ってツッコまれて」

マネージャー「……ARISAさん、ツッコミ合宿の成果が出て……!」

鳴護「あたしの望んだ成果じゃないですけどね!?こう公式で出番が全くないのになんかこうフリークスの間では活躍してる的な!」

鳴護「ていうかなんですか今年の騒動は!?どうしてあたしがツッコミを強いてられているのでしょうか!?」

マネージャー「なんだかんだで怖ろしいところですよね、芸能界って」

鳴護「いや違う。全面的に事務所のせいですよ?」

マネージャー「正しくは某監督の一連のダメ映画企画から始まったことですが、やはりきっかけは必要だと思うんですよ」

鳴護「被害者みたいに言わないでください。あなた方は加害者の方です」

マネージャー「なんと人聞きの悪い。自分達は、という事務所の方針と致しましてはやや厳しい方へ行かざるを得ないのでして」

鳴護「厳しいって言ってもギャグですよね?」

マネージャー「えぇですからね、ARISAさんも仰ったように様々なジャンルの方々が垣根を越えるようになったじゃないですか?」

マネージャー「朝ドラのオイシイ役に演技経験ほぼゼロの顔芸芸人が押し込まれたり、大河にクソ素人を動員したりと厳しいのです」

鳴護「割を食っているのは回り回って俳優の人だと思うんですが……出番が少なくなったり、率が低下したり」

マネージャー「ですからこう、ARISAさんもマルチな才能を発揮できるように、少しでも手持ちのカードを増やすべきだ思うんです」

鳴護「マネージャーさん……でも、この間『現役時代に絹旗さんから多大な借りがある』みたいな事言ってませんでしたっけ?」

マネージャー「――さっ、ではアイドルユニットプロジェトなのですが!」

鳴護「話を変えないでください!次から次へと新情報が出て来て戸惑ってます!」

マネージャー「いえ大した計画ではないんですよ。ARISAさんピンだと目新しくないため、ちょっとパッケージを変えて売ろうって話です」

鳴護「ぶっちゃけるにも程がありません?もっとこうタレントにも気を遣いましょうよ?」

鳴護「てゆうか今日こそ!今日こそはあたしが歌手枠ではなくアイドル業を強いられているのか説明してもらいましょうか!」

マネージャー「いえ、あのですね?現在のシンガーとしてのARISAの活動について素直にどうお考えですか?感想をどうぞ?」

鳴護「まぁ、そこそこかなと。学園都市だけですが知名度もそこそこですよ」

マネージャー「はい、そこなんですよ。学園都市限定というのがネックでして。まぁ売りでもありますが」

鳴護「なんでですか?曲も買って頂いてますよ?」

マネージャー「余所でですね、アンケートを取ったんですよ。信用できる調査会社へお願いしまして、『ARISAをご存じですか?』というような設問を数千人に」

鳴護「なにその自意識過剰な設問。ネット広告の一発屋にありましたよねそのフレーズ」

マネージャー「そうしたら一番多い回答が『あぁ知ってる、フードファイターの子』と」

鳴護「事務所でしょう!?頂いたお仕事をコツコツやってきたらKONO-ZAMAなんですよ!?」

マネージャー「次が『グラビアに載ってた子』でした」

鳴護「事務所ですよね!?あたしの自由意志ではなく強いられた結果であって!」

マネージャー「……お言葉ですがね!声優としての知名度よりもアイドルとしての認知度の方が高い三○さんだっているんですよ!?」

鳴護「えっと、その、関係なくはないんですけど。それは中の人って言いますか」

マネージャー「と、いった具合に会社の望んでいる方向とは絶妙にズレてきまして。そろそろ軌道修正を図ろうかなと」

鳴護「あたしの望んでいる向きとも違いますよ?前の会長さんにも直で言いましたけど、歌手なのになんでアイドルさせられているんですか!?」

マネージャー「可愛いお衣装、お嫌でしたか?」

鳴護「あぁいえそんなことは。正直着られてる感が凄かったですけど、とても可愛いですよね」

マネージャー「ファンの方からもそうじゃない方からも大好評でしたが――さて、問題です。『エンデュミオンの奇跡』で取り上げられた女性が居ます」

鳴護「あたしですけど」

マネージャー「その際は大変だったですよね。学園都市の内外から取材が殺到――……?」

鳴護「えっと」

マネージャー「……あぁいえ失礼、何か忙しかったのでARISAさんが消失した記憶がなぜか」

鳴護「誰がハル○ちゃんですか」

マネージャー「記憶が少しアレなようでして。ともあれ殺到しました」

マネージャー「しかし学園側は記者の入場を制限し、結果としてライブ映像と事務所のコメントだけが大きく取り上げられたのですが」

鳴護「ありましたねぇ。あたしが前に出て一言言えば収まったんですけど」

マネージャー「その際に使われていた動画が例のライブ映像でして、そのど派手なお召し物を着たARISAさんの」

鳴護「全国デビューがそれでしたっけ」

マネージャー「よって『あぁこの子はアイドルなんだな』と、日本のみならず世界中がそうすり込まれてしまった、と」

鳴護「やっぱ事務所じゃないですか!?あぁいえ今のスタッフさんは関係ないですけど、主にレディリーさんの仕業ですよね!?」

マネージャー「……なのでこちら側としても『本格的に歌の上手いアイドル』という路線からは中々。『え!?あんなヒラヒラした服着てたのに!?』って認識がいまだに強い訳でして」

鳴護「ちょっと納得しました。だからずっとアイドルで売ってたんですね」

マネージャー「まぁそれとは別にリーダーの『夢がアイドルになりたい』だったというのもあるんですが」

鳴護「おい」

マネージャー「まぁそこら辺を踏まえてどうか一つ。ご要望があればどうぞ?」

鳴護「……まぁ路線変更をするというのは同意しますけど。こっちの要望は聞き入れて貰えないんでしょう?」

マネージャー「いえそんなことはありませんよ。むしろ事務所はARISAさんの意向を全面的に尊重したいと思います」

鳴護「そう、ですね。音楽関係や食べる系お仕事も好きは好きなんですけど、もっと別ジャンルへ挑戦したいっていいますか」

マネージャー「いいですね。チャレンジする精神は大切ですよ」

鳴護「ありがとうございます。ならもしできるのであれば、お芝居関係の」

マネージャー「『――はいもしもし柴崎でございます、いつもお世話になっております。お疲れさまでございます』」

鳴護「あ、あれ?断りもなく電話?」

マネージャー「『――はい、はい、えぇARISAが演技をしたいと――はい、どうかその線でお願いします――』」

マネージャー「『――ではどうかお手柔らかにどうぞ――絹旗監督』」

鳴護「なんて長い前フリ!?本題へ入るまでに使う尺が異常だよ!?」

鳴護「てか待って!?その監督のところだけは倫理的に問題がありませんかねっ!?」

マネージャー「いえでもお芝居をされたい、というのはARISAさんのご意向ですし?」

鳴護「言いましたけど!ダメ映画に出たいとは一っっっっっっっっっ言も言ってないですからね!?

マネージャー「いえいえ、いきなり主演するような演技力はお持ちではないでしょう?なので下積みからコツコツと重ねていくのが寛容かと」

鳴護「キャリアになんないです。ダメ映画の再現ビデオに出たところでカルトな人気が出るのが精々ですよ!?」

マネージャー「いいじゃないですか。出ない人気よりも出る人気」

鳴護「だから質によるって言ってますよね?!もっとこう、あたしは同年代のファンを大事にしたいんですよ!同じぐらいの世代の女子を!」

マネージャー「あぁファンレターの子たちでしたら、大抵あれ成り済ましで中身はオッサンですよ?」

鳴護「言わないでください!薄々そうなんじゃないかとは思っていましたけど!やたら個人的な付き合いを要求してきたんで!」

マネージャー「まぁ誰とは言いませんが交友関係考えてくださいね?スキャンダルになりますからね?」

鳴護「あの、特定のお仕事だからって友人関係に縛りがあるのは良くないと思います!」

マネージャー「同意したい所なんですが、”偶像”の名の通り夢を売って課金して頂く商売ですので。はい」

鳴護「ていいますか、一連の流れに疑問が……まさかとは思いますが誘導尋問じゃ……?最初に提案したアイドルユニットはハッタリとか?」

マネージャー「いえいえ、それこそ穿ちすぎですよ。その証拠に新メンバー候補の方はずっと隣でスタンバッてもらっていますし」

鳴護「ちょっ!?失礼じゃないですかそれ!?せめてお話だけでも聞かないと!」

マネージャー「あぁじゃどうぞ。お入りください」

パタン

上条「……」

鳴護「あ、あれ?」

上条「初めまして!アイドルユニット候補生のToh-M@です!」

鳴護「ウルサイよ!?なにこの茶番!?」

上条「マクラだってやります!薄い本に描かれても気にしません!なんだったら結婚もしません!人気が出るまでは大人しくしてます!」

鳴護「人聞き悪いな!?そういう人たちもいるけどウチの周りにはいないよ!?」

上条「くっ!殺せ!」

鳴護「――あ、こんなところにクリスタルの灰皿が……ッ!」

マネージャー「待ってくださいARISAさん!上条さんは生身ですから多分死にます!やってみないと分かりませんが!」

マネージャー「もしも死んでしまったら最期に見たのはARISAさんということになりますが!ある意味独占できると言えなくもないですけど!」

上条「おいテメー人を撲殺させる方向で煽ってんじゃねぇよ」



――学園都市 学園風スタジオ

絹旗「『――第一回!チキチキ不祥事起こしたタレントが警察署から出てきた第一声大喜利!』」

鳴護「待って?タイムリーだからって思いついた企画を即実行に移すのは良くないよ?」

上条「『年間数億円のギャラがダメになると思ってやった。反省はしていない』」

鳴護「コメントしづらいけど……民間の人が上級国民扱いされるのに、同じかそれ以上の人たちが『可哀想』って報道はおかしいよね」

上条「『だから言ったろ?ゲイが一番だって俺は常々な!』」

鳴護「当麻君それアウト!全然似てないから誰のモノマネしたかまでは分からないけど癖(へき)は人それぞれだよ!」

絹旗「昔のエライ人は超言いました――『ねぇ浜面、私がなんで怒っているか分かるかしらぁ?』と」

上条「あ、ダメだ浜面死んだわ。その台詞が出てる時点で何らかの沸点に届いてるって話だわ」

絹旗「そしてまた別の人は超言いました――『映画だけで食っていけねぇってのは、お前がクソみたいな映画しか撮れないからだよ』と」

上条「関係各位に喧嘩売ってますよね?まぁある意味真理っちゃ真理ですけど」

絹旗・上条「……」

鳴護「はい?」

絹旗「昔のエライ人は」

鳴護「なんでですか!?そんなツッコミの見本見せられてから『やってみて!』みたいな振り方されても!」

絹旗「では補助金がペイしないと超食っていけない映画監督()について」

鳴護「そこ大事ですかね?えっと、その政治的に非難されそうなことはやめてくださいね、って言われたよね?撮影前に?」

絹旗「という訳でARISAさん、オファーを受けて頂き超ありがとうこざいます。いやもう本当にノコノコとようこそ」

鳴護「帰ってもらえませんか?人を呼びますよ?」

絹旗「不審者ですか?ならば私が超守りましょう!さぁ私の前へそいつを突きだして下さい!」

鳴護「一休さんかな?屏風が虎の追い出しにアップを始めた的な」

絹旗「あれ私だったらもっと超スマートに解決しますけど」

鳴護「……怖いもの見たさで聞くけど、どんな感じで?」

絹旗「まず被害が出たかを調べます。被害が出ていない場合には『義満公ともあろう御方が被害も出ていないと〜』と超ネチネチ責めます」

絹旗「逆に適当に証拠を持ってきた場合、『危ない義満公!』と庇うフリをしつつその場でビリッビリに超破きます」

鳴護「だから発想がちょっとしたオーガだよね?霊長類だって自覚を持とう?」

絹旗「ふっ、一休も超まだまだですね」

鳴護「歴史上の人物を”まだまだ”!?そしてある意味あたし達の大先輩だよ!?」
(※一休さん・テレビアニメ1975年〜1982年・全296話。タイで超人気あるらしい)

鳴護「あと最愛ちゃん大丈夫?あたしのお友達(のテロリスト)に最近芸風が似てきたよ?」

絹旗「――素晴らしい!半年かけたツッコミ強化の成果が出ていますよね!」

上条「だろ?これで俺もツッコミの呪縛から逃れて、普通の男の子に戻れる……!」

鳴護「当麻君は一生そのままだと思うよ?『右手』もツッコミ入れ続けた結果、そうなっちゃったんでしょ?」

上条「俺の個性はツッコミだけみたいに言うなよ!もっとホラ!料理してるシーンが皆無なのに得意だとかあるだろ!?」

絹旗「家事やってる割には原作では超見向きもされてませんよね。まぁ自炊の範囲内なのでしょうが」

上条「いいかい?家事ってのは”できる”んじゃないんだよ。”やってる”ものなんだよ?どんなに美味かろうが、毎日毎日ルーチンワークを続けてきた人が一番偉いんだからな?」

絹旗「その価値観には基本超同意しますけど、それだと”普通”の範疇であって昨今の女子力高め系主人公では決してないという」

上条「あいつらおかしいぞ!?スペック高いんじゃなくてチートしてるって絶対!だって料理に打ち込む時間あったら普通遊ぶだろマジで!」

鳴護「まぁ中々毎日自炊ってのは厳しいかもだけどね」

絹旗「まぁカメラマンさんの自嘲は横へ置くとしまして、今回もすいませんねARISAさん。超ダメ映画を再現してイジって遊ぼうという企画なんですが」

鳴護「他に誰か居ませんか?あたし以外にこう、ダメ映画に多少の耐性を持ちつつ、かつ暇人って他にどなたかいらっしゃいませんかね?」

絹旗「イメージってあるじゃないですか?『あ、私の作品に合うのはこの子しかいない!』っていう」

鳴護「ダメ映画ですよね?ダメ映画にピッタリって侮辱罪で訴えたら勝てそうですよね?」

絹旗「まぁその時は法廷で超ネタ合戦と行きましょうか。ではスタッフ紹介ですが、大体はいつもの少数精鋭でいきます」

鳴護「五人ですよね?監督・あたし・カメラマンの当麻君に、裏で衣装持ってきてくれるマネージャーさんともう一人」

闇咲「いつのまにかレギュラーになったいた闇咲だ」

鳴護「てか最近ちょくちょく別のお仕事でもご一緒してますよ!ただ放送に耐えられなくて基本お蔵入りするっていう!」

上条「いやそれがまだ甘いんだよ。実は闇咲ちゃんねる幻の第三回目があったんだ」

鳴護「あれ?涙子ちゃんのとこだと二回しかやってなかったような?」

上条「テーマが『シヴァ・リンガと道祖神』だったんだが、100%シモの話で『放送に乗せられない放送という体』ですらお出しできないことに……!」

闇咲「全編通じて男××と女××、近×××に加えて間××の話がいけなかったらしい。フォークロア的には何一つ間違っていないのだが」
(※ライトなノベル系の話ではできません)

鳴護「なぜそんなダークなものをしようと思ったのでしょうか……」

絹旗「あぁちょっとすいません闇咲さん。こっちの壁見てくれません?何か人の壁っぽいのが」

壁の顔【……オォオォォ……!】

鳴護「すいません監督!?事故ですよねこれ!?セットに映っちゃいけないのがモロに設置されてるんですが!」

上条「あー、あるな。しかもちょっと喋ってるな。どうする?」

闇咲「この程度なら無害だろうが、一応祓っておくか――『臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前』」

闇咲「『オンキリキリタタギャトゥソワカ!オンキリキリタタギャトゥソワカ!』」

闇咲「『ナウマクサンマンダ、オンバサラダンカン……ッ!!!』」

壁の顔【オノレエェェェェェェェェェェッ……!!!】

鳴護「……あ、消えた」

闇咲「――うむ、ただの気のせいだな」

鳴護「嘘が致命的に下手!?隠す気がないかボケてるのかの二択!」

闇咲「これはシミュラクラ現象といって、ただの丸が配置されているだけで人の顔に見えてしまうことがある」

鳴護「喋ってましたよね?恨み言言ってましたよね?」

闇咲「『幻○!超常ファイ○!』」

鳴護「なんて説得力!?その声で断言されたら『この説明厳しいんじゃ?』って思っても納得せざるを得ない……!」

上条「実は嫁さんに惚れてたのが公然の秘密だった説。そして一応俺も触っておこう」 ペタッ

絹旗「……もう、超えっちなんですから」

上条「誤解されんだろ監督!?ここで霊壁じゃなくて女の子にタッチしたら正気を疑われるわ!?」



――休憩室

絹旗「ではまず撮影へ入る前に超簡単にレクチャーをしたいと思います。ぶっちゃけ予備知識でなくてもあってもいいんですが、あった方がより楽しめます」

鳴護「あー、まぁ大事ですよね。声優さんでも役作りのために原作読む方だって多いですし」

上条「ちょっと読んだぐらいでは物語の良さが理解できない説……ッ!」

鳴護「当麻君、シーってしてもらっていいかな?あたしも薄々そうなんじゃないかなって思ってるけど」

絹旗「まぁまぁ。今回は基本都市伝説をベースにした闇鍋ですんで。あまり超悩まなくても良いかと」
(※by映画批評サイトのレビューさん曰く、「素材は一流の闇鍋」)

鳴護「それでもやるんですよね。ダメ映画を扱き下ろすためだけに」

絹旗「まぁ都市伝説系では地元の人間が不当な扱いや偏見を受けることが多々ありますので。なので超ダメ映画が広がれば笑いと共に蔑視されなくなると思います」

鳴護「どういうこと?そういうのって認知度が広がるとマズいんじゃ?」

絹旗「映画を撮り終われば分かります。さてではアシスタントの方、超説明をプリーズです」

闇咲「『犬鳴村伝説は九州にかつて存在した村である……!』」

鳴護「だからその超常ファイ○風の止めません?どこからかコスプレした栗山千○さんが出て来そうで」

上条「あの番組、正直ナレーションだけで成立するような……いや俺は栗○さんのコス好きだけども」

闇咲「『村民は激しい差別を受けていたため、外界との交流を断ち、その村の入り口には”ここから先、日本国憲法は通用しない”と書かれている』」

鳴護「外界との接触がない割には自己主張が強いかな。だって隠れる気が皆無っていうか」

上条「今だと『この先は私有地です。不法侵入には警察呼びます』が一番怖いよな」

闇咲「『そして不用意に村へ入ると斧を持った村人が異常な速度で襲ってくるといわれている……!』」

鳴護「いや怖いけど!?なんかこうもっとフワッとした怖さじゃないんですね!?物理的に怖いって意味で!」

闇咲「『村内で助けを呼ぼうにも携帯電話は通じず、近くのコンビニエンスストアの公衆電話も警察には繋がらない……!』」

鳴護「だからアクティブすぎません?何かこうジャミングとコンビニまで工作してるってことですよね?」

闇咲「『この話は本当で若いカップルが面白半分で入っていったが、惨殺されたという……!』」

鳴護「犯人分かってるんだったら警察動きますよね?確か福岡の警察ってヤク×と真っ正面からドンパチしてる日本屈指の武闘派ですよね?」

絹旗「以上が犬鳴村伝説と呼ばれる都市伝説なのだが、まぁ事実部分は超ないんですよね」

鳴護「あぁまぁそんなこったろうと思いましたけど」

絹旗「まず犬鳴村は存在しましたし、同地方の犬鳴トンネルというのもありますが、それぞれ普通の村とトンネルです」

絹旗「前者は過疎化と合併、後者は新しいトンネルの建設で封鎖と超普通に廃れていますしね」

鳴護「何かこう、怖い村だったりするんじゃ?」

闇咲「『犬鳴御別館』という福岡藩が幕末にちょっとした城を建てた。もし本当に排他的かつ差別されているような村へわざわざ作る意味が無い」

鳴護「あー、じゃオカルトスポットじゃないんですね」

絹旗「そうですね。30年ぐらい前に犬鳴トンネルで焼殺死体が超見つかったのと犬鳴ダムに死体遺棄されたぐらいですね」

鳴護「ダメだよぅ!それもう充分にオカルトスポットとしての条件満たしてるよぉ!」

上条「はい監督。犬鳴村って杉沢村と同じなんですか?入り口に『ここから先は〜』みたいななの書いてませんでしたっけ?」

闇咲「『――ここから先へ立ち入る者、命の保証はない』……ッ!」

上条「ノリノリだなナレーションの人。監督に紹介した俺もちょっと後悔しているぐらいだ」

絹旗「えぇ全く別物です、と言われてます。場所が東北なのでほぼ反対というのもありますけど、杉沢村の住人は全員亡くなっている、という超設定ですので」

絹旗「『村の入り口に怖いスローガン』ということで超混同されているのかと」

闇咲「一応フォローをするのであれば」

鳴護「すいません、あの闇咲さんのお話はためになるっていいますか、お腹一杯って言いますか」

闇咲「東北某所では山菜採りへ行った人間が数人、数年間に渡って行方不明になった事件が起きている。熊が原因だとされているが」

闇咲「その手の命知らずな山菜ゲッターへ対して出した警告を、都市伝説のアレと間違えるという可能性もある」

上条「怖えぇなクマ!そりゃピンポイントで刺激しなければセーフな都市伝説よりも、山中にそこそこの数ブラってるクマの方が脅威だよな!」

鳴護「いまそこにずっといる危機だよね」

闇咲「そして何よりもタチが悪いのが、地元の人間には『クマが多くて近寄れない危険地帯』なのに、余所からは『山菜が採れる穴場』だということかな」

上条「クマが人で釣りしてんのかな」

絹旗「超いいですねー、そしてまた超生まれる都市伝説!」

鳴護「監督、不謹慎です。それ言ったら全般そうですけど」



――シーン1 犬鳴村

絹旗「『あ、超見つけちゃいました!”この先、日本国憲法適応セズ”ですって!』」

上条「『いいって!帰ろうぜ!ここなんかヤバイって!』」

絹旗「『見てください!ここに廃屋が!』」

上条「『いや暗くて……ビデオカメラのライトだけじゃちょっと厳しい』」

絹旗「『あ、すいません。お花摘みをしたいので離れてて貰えますか?』」

鳴護「この状況でですか!?誰がどう考えても個別撃破されるシーンなのに!?」

絹旗「はいそこメタ的なことを超言わない!私も初見で『壊れた蛇口か』とチューバー女へツッコみましたが!」

上条「『よし分かった!それも含めて撮ればいいんだな!』」

鳴護「闇咲さん助けてください!上条君がHENATAIの悪霊に取り憑かれて!」

闇咲「その言い方だとこの世界には悪霊憑きがそこそこ多い計算になる。事実その通りだと思った方が楽しいが」

絹旗「そして私も彼氏が心霊スポットで言い出したら、逆にそのメンタルの強さに敬服します。あ、超殴った後でですが」

上条「あぁんじゃ俺別行動すんの?どう考えても死にフラグだが……」

絹旗「はい、そのまま、別の廃屋の中を撮ってください」

上条「了解――『うわ……スッゲー廃墟だ。埃も……もう何年も住んでないし、人も入ってない――ん?なんだこれ、柵?檻?座敷牢?』」

上条「『つーかこれ……血と、骨――?』」

絹旗「視点は変りまして女子の方へ、『――ふう。では彼氏と合流してと……あれ?超開かない?』」 ガタガタッ

絹旗「『ちょ、やめてくださいよ!超冗談は!』」

ガタンッ!!!

絹旗「『え』」

浜面(声だけ)『がるるるるるるるるるるるるるるるっ!ぎゃあぎゃあっ!』

闇咲(声だけ)『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん……ッ!!!』

上条「キャストが贅沢すぎる。そして使い方を間違ってんだよ!」

鳴護「二人とも迫真の演技で超怖いんだけど、マイク持って吠えてる姿だから逆に面白い……!」

絹旗「『に、逃げましょう!』」

上条「『おう!こっちだ!』」

フレンダ(トンネル内から聞こえる遠吠え)『ウオォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!』

上条「だからキャストが面白いんだよ!」



――休憩

絹旗「はい、という訳でオープニングなんですが」

上条「もうダメかな。だってもうこの時点でツッコミどころしかないもの」

上条「だって俺が幽霊さんだったら、自分んチへ入って来てションベ×するカップルだったら間違いなく呪うもの。仮に幽霊じゃなくてもそうするわ」

鳴護「彼氏さんと彼女さんを引き離す口実がね……もっとこう、自然にね?なかったのかなって」

絹旗「――そしてキャストとご覧の方に超残念なお知らせがあります……ッ!!!」

上条「えいヤベーぞ!監督のテンションがだだ上がりしてるってことはそうとうヤバいんだ!」

鳴護「うんもうなんか想像つくけど、なに?」

絹旗「ここがこの映画で超一番怖いところです……ッ!!!」
(※ホラー映画的な意味で)

上条「クライマックス早っ!?まだオープニングで導入中だっつーのにか!?」

鳴護「すいません監督。一応主役のあたしがまだスクリーンに出ていません。なのにですか?これ以上ないんですか?」

絹旗「えぇまぁ詳しくはその都度ツッコみますけど、もう一つある見せ場も超アレなんでまぁはい」

絹旗「端折ってしまったので、一応解説を超加えますと。DQNカップルの進路は”犬鳴村近くの電話ボックス”→”犬鳴トンネルを通過”→”犬鳴村で謎の心霊現象で出くわして逃走”という流れです」

上条「定番……まぁ定番だよな。視聴者が『危ないからもう帰りなよぉ!』って思うところまでがテンプレ」

鳴護「あたしだったら『電話ボックス怖っ!?帰ろう!』ってなるけど」

絹旗「まぁここから次第にARISAさん演じる主人公が超巻き込まれていくのですが、多分『なんでだよ』ととツッコむと思います」

上条「じゃあ話持ってくんなよ!ARISAが可哀想だろ!?」

鳴護「当麻君?当麻君はむしろ巻き込んだ方だよね?」

上条「俺一人だったら俺が可哀想だろ!?」

鳴護「友情とは一体」



――シーン2 病院

絹旗(母親役)「『先生……この子がですね、どうも独り言が超多いようでして』」

鳴護「人材不足すぎないかな?まぁいいけど……『そうなんですか?』」

絹旗「『はい、まるで誰かと超喋っているかのような……』」

上条「心霊案件じゃね?ホラー映画だしさ」

鳴護「いやそうだけど!多分あたしも含めて見てる人はそう思っただろうけども!」

絹旗「”なんだこの強引な導入”と私ですら超思いました」

鳴護「『えっと……じゃ、先生とお二人でお話ししよっか?』」

浜面(子役)「『うん』」

鳴護「無理があるよ!?せめて年下に見えるぐらいのキャストさん連れてきてくれないと!?」

浜面「俺だってこんな腐れ仕事はしたくねーよ!ただ予算がないっていうから!」

上条「セット代に全振りしてるからかな」

絹旗「ほぼ弁当代だけですからね。学生映画と超言えなくもないですが」

鳴護「それはなんか青春ぽくていいけど……『それで?だれとお話ししているの?』」

浜面(子役)「『……ううん、ママがかなしむから。言っちゃダメだよって』」

鳴護「『ママが?』」

浜面(子役)「『うん、ほら。そこに』」

鳴護「『どこに?』」

フレンダ(幽霊役)『……』

鳴護「『きゃあぁっ!?』」

上条(看護婦)「『……先生?』」 ガラッ

鳴護「『え、いや、あの、今……?』」

上条(看護婦)「『大丈夫ですか?お顔の色が悪いようですけど……』」

鳴護「『あ、はい……多分気のせいかな、と思うんで』」

浜面(子役)「『先生……』」



――実家

上条「『――なぁ彼女が!彼女の様子がおかしいんだよ!』」

上条「――ってこれ場面転換おかしくねぇか!?主人公登場→霊感あり→相談って流れ作業過ぎんだろ!?」

絹旗「この業界は得てして超そんなもんですよ。ターゲット層が低いと全てが雑になりますし、反対に高い層を狙うと俳優のギャラが高くて脚本が雑になります」

鳴護「詰んでるよねそれ」

絹旗「なのでネットフィリック○に人材引き抜かれて業界超ボロボロになる――かと思いきや、そもそも引き抜く人材が本業でもゴミしかおらず、全然脅威にはなりませんでしたし」

絹旗「とはいえミルドレッ○など一部の超特殊な層に人気のは、まぁ、はい、コメントを差し控えたいと思います」

上条「俺もあんま他人様の癖については言いたくないんだが、あれを”実写”でできる国ってスゲーって思う」

鳴護「残念だけど人種ってジャンル分けはあるよね。西洋ファンタジーにあたし達が出てもなぁ、みたいな。できるはできるだろうけど、イメージがあるし」

絹旗「あとこれは都市伝説なんですが、某魔法少年先生の実写化って噂が」
(※ねぎ○)

上条「俺は知らない。知らないったら絶対に知らない。そんなものなかった」

鳴護「原作から演者まで全員が大ケガするパターンだよね。誰一人として徳をしない」

上条「『って訳で助けてくれよ!今朝帰ってきてから様子がおかしいんだ!』」

鳴護「『具体的には?』」

上条「『ショ×××垂れ流してニコニコ笑顔で謎のわらべ唄を歌いながら気持ち悪い絵をクレヨンで描いているんだ……ッ!!!』」
(※盛っていません)

鳴護「ねぇもうそれ逆に聞くけど絶対に心当たりあるよね?症状がこれ以上ないぐらいに自己主張してる感じだもんね?」

上条「『心霊スポットでタチショ×したのが悪かったんだ……ッ!』」

鳴護「まぁそうだろうけど!何割かは確実にそうだろうけども!」

絹旗「ちなみにパリピー彼女さん、というか私の役の方はこの直後にお亡くなりになります」

上条「『なんでだよ!なんでアイツが死ななきゃいけねぇんだよ!?俺は何ともないっていうのに!?』」

上条「『なら――復讐してやるよ……ッ!!!』」

鳴護「なんでだよ――って監督の言ったとおりにツッコミが……ッ!?」

絹旗「まぁどう考えてもあっち関係の呪い的な感じですし、超間違ってはいないのですが」

絹旗「しかしなぜ彼女”だけ”なのか、彼氏さんという主人公のお兄さんだけが呪われなかった理由とは――!?」

鳴護・上条「とは?」

絹旗「特に――無かったんですよ……ッ!!!」
(※超マジです)

鳴護「もう意味が分からないよ。もう気まぐれで色々やってるのかな」



――シーン3 犬鳴村入口のトンネル

浜面(後輩役)「『センパーイ、ここっすか?ここ本当に入っていったんすか?』」

フレンダ(後輩役)「『ねぇ?結局場所違ってたってオチじゃない訳?』」

上条「『なんだこれ……!?前来た時にはこんな大きなコンクリ壁なんてなかったぞ……!?』」

フレンダ「『だからさ』」

上条「『待ってろ!俺が敵を取ってやるぜ!』」

浜面「『センパイ!?マジやめましょうよ!?こんなトコ入っていったって――あー……行っちまった』」

フレンダ「『凄いっちゃ凄いわけだけど、もう少し使い道あるって訳よ』」

上条「『……』」

浜面「『……どうしたんすか?ね、帰りましょうって、ほら。俺らが何したって彼女さんは帰って来ないん――』」

上条「『――逃げろ!』」

フレンダ「『はい?なんて?』」

上条「『お前は来ちゃダメだ!逃げろ!ここにはたくさ――』」

……

浜面「『せ、センパーイ?や、やめましょうぜ、そういうのって!ほら、壁の向こう側で見えないからってボケは!』」

フレンダ「『ね、ねぇ?そうよね?』」

浜面「『ど、どうせ俺が覗き込んだら”わあっ!”みたいなアレでしょ?分かってるんですからね!センパイ!』」

浜面 ジーッ

浜面「『あ、ああ、アレ?いないじゃないっすか?センパイどこに?うわマジやばいってこれ!』」

浜面「『センパイ!センパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!!?』」



――シーン4 病院

鳴護「『養子縁組、ですか?』」

闇咲(医師役)「『あぁ、あの子のお母さんは出産で亡くなられている。その子を引き取った形だな』」

鳴護「『じゃああの子の本当の”お母さん”は別に居るんですね?』」

闇咲「『ではあるが。授乳もしないまま亡くなったんだぞ?子供が覚えている可能性はほぼない』」

闇咲「『とはいえ子供はよく親を観察している。少しの違和感があったのを感じ取ったのだろう。まぁそれ以上は家庭の問題だ』」

鳴護「『そう、ですか。ありがとうございます』」

上条(看護婦)「『大変です先生!院長先生がたった今急患で運ばれてきました!』」

闇咲「『なんだって?症状は?』」

上条「『それが……ご自宅で”溺れた”そうです』」

鳴護「『溺れた……?』」



――シーン5 喫茶店

浜面「『――はいもしもし俺?』」

フレンダ(電話)『――あ、浜面?あたしなんだけど』」

浜面「『え、フレンダ?何やってんのお前?俺もう店ついちゃってんだけど』」

フレンダ(電話)『いやゴメンって訳よ。バイクが停まっちゃってさ、今ちょっと動けない訳だから迎えに来てくれる訳?』

浜面「『いいけどさ。お前今どこよ?結構遠い?』」

フレンダ(電話)『――うん、犬鳴村トンネル前の電話ボックス』



――シーン6 病院

浜面(子役)「『……』」

鳴護「『あれ、浜面君どうしたの?お母さんとは一緒じゃないの?』」

浜面(子役)「『……ううん。ママはいまいないけど、ここって』」

鳴護「『この病室がどうかしたのかな?』」

浜面(子役)「『……なんでもない。もう行くね』」

鳴護「『ちょっと……どうしたのかなぁ。やっぱり不安定に――』」

……

鳴護「『……うん?なん、だろう?歌……わらべ唄みたいなのが、聞こえて……?』」

鳴護「『……』」

鳴護「『――ちょっと待って!?この歌って、弟の彼女が死ぬ前に口ずさんでいた歌だよ……ッ!?』」

鳴護「『そしてこの病室は――院長先生!?』」



――シーン7 犬鳴トンネル前の電話ボックス

浜面「『おいっす――って来てみたけども。フレンダいねーなー?あ、でもバイクはあった。これか』」 ブウンッ

浜面「『あ?つーかエンジンかかるんじゃねぇかよ。だったらなんで電話なんかかけてきやがったん」 ジリリリリリィンッ

浜面「『おわビックリした!?電話ボックスにも電話ってかかるんだな、てかこれフレンダ?よし、取ってみよう!』」

上条「なんでだよ。死亡フラグキレーに立ってんの分かるだろ」

鳴護「当麻君静かに!みんな思っているけど口には出さないだけだよ!」

浜面「正直俺もそう思う――『もしもーし?フレンダ?俺来たんだけど?』」

電話【あーあー、あーああー……】

浜面「『なんだこの……わらべ唄……?』」 ガチャンッ

浜面「『っんだよこれ!?勝手にドアが閉って!下から水が、水が――』」



――シーン8 病院

鳴護「『院長先生!?大丈夫ですかっ!?』」

上条(三役)「『……』」

鳴護「『酷い……亡くなって――』」

上条 ガバッ

鳴護「『きゃあっ!?』」

上条「『おぉぉ……お前が……!お前の、血が……殺した……ッ!!!』」

鳴護「『あたしの……!?』」

上条 バタッ

鳴護「『院長先生?』」

絹旗(看護婦)「『――先生?』」

鳴護「『誰か先生を呼んでください!院長先生が今!』」

絹旗「『……あぁ、院長先生でしたらお亡くなりになりましたよ。溺死だそうです』」

鳴護「『……え、じゃあ今のは一体……?』」



――休憩室

絹旗「はい、という訳なんですが。何か超意見があればどうぞ?」

鳴護「はい、監督!多分ここに居るスタッフの総意だと思うんですが!」

絹旗「おぉっと総意とはまた超大きく出ましたね。お伺いしても?」

鳴護「『これもう犬鳴村関係なくね?』、です」

絹旗「いえ犬鳴村ですよ?タイトルにも超書いてるじゃないですか?」

上条「いや待とうぜ監督!まぁ百歩譲ってDQNの後輩仲間が死ぬのはいいとしようぜ?中に入ってないとはいえ、近くまで行ったんだしさ?」

上条「だけどなんで院長先生死ぬんだよ!?今まで登場してねぇキャラをいきなり殺すなや!?」

絹旗「あぁそれは省略していますが、DQN彼女が亡くなった際に『君のお父さんもこんな死に方だったよねぇ』みたいなのを、主人公の兄貴に言う役です」

上条「だからほぼ接点ねぇだろ!?なんかこう悪い地雷踏み抜いたとかそうことでもねぇし!呪○だってもう少しソフトな呪い殺し方すんぞ!?最新作では生き残り組がいるし!」

鳴護「まぁまぁ。で、でもそれ以外はよかったよ!かもしれないよ!謎のわらべ唄や主人公の血がどうって伏線が!」

上条「それはそれでちょっと不満があんだよ!不特定多数が巻き込まれるって設定ならそれを貫かないと!」

絹旗「まぁ気持ちもテンションも超理解できます。同じダメ映画ファンとしては、そこ重要ですよね」

上条「だよな!中盤辺りで『実は主人公の血縁が〜』みたいなのは食傷気味なんだよ!」

絹旗「夢オチと同じで『えぇまたそれ……?』みたいなのが、えぇはい」

鳴護「よく分からないけど、次からは映画マニア同士で完結してほしい……!第三者を巻き込まないように……!」

絹旗「まぁあとは半分切ったので超行きましょうか!実は前後編SSにするつもりだったんですが、その価値すらないです!」

鳴護「最愛ちゃんが映画を愛しているのかバカにしているのか分からない」



――シーン10 祖父の家

鳴護「『――おじいちゃん!聞かせてほしいの!』」

闇咲「『急に来ていきなりなんだ……まぁいい、上がりなさい』」

上条「闇咲さんが予想外にいい芝居をする件について」

絹旗「まぁ超プロですからね」

鳴護「『これこれこういう事があってね、何か良くは分からないんだけど……お母さんも変になっちゃって』」

鳴護「『どういう事なのか分かるかな?』

上条「あれ俺思ったんだけどさ?主人公の女医先生が”怪異の中心には私の血が!”みたいなのって、これはこれでどうかしてね?」

絹旗「それも含めて超笑うところです。『オイオイそのトンデモ結論に行くのかよ心療内科の医師が』的な」

鳴護「『外野はうるさいけど、おじいちゃん!お願い教えて!』」

闇咲「『……私には何を言っているのか分からないが……まぁ、君の祖母さん、私の妻のことだったら話してやれる』」

闇咲「『彼女はな、私が見つけたんだ』」

鳴護「『見つけた……?』」

闇咲「『ほら、そこの玄関先に。布にくるまれて置かれていたんだ』」

鳴護「『それって……捨てられていた、ってこと?』」

闇咲「『……分からない。村の人間の家族ではいなかったし、余所から誰かが置いていったのだろうと』」

闇咲「『まぁ父と母が育てて、その内に私と所帯を持つことになった。それ以上でもなければ以下でもない』」

鳴護「『……そう』」

闇咲「『ただ一度だけ……妻はどこから来たんだろう、と聞いた事があった。赤子の人間が知るわけでもないのに。つまらない質問だったのだが』」

鳴護「『まさかそれが――犬鳴村……?』」

闇咲「『どこでその名前を!?』」

鳴護「『まぁ色々あって――それで!?犬鳴村はどこに!?』」

闇咲「『もうない』」

鳴護「『えっ?』」

闇咲「『今ではもうダムの下さ』」

鳴護「『……そう』」

上条「なぁこの一家ってアホなの?『心霊スポットが実家のすぐ近く』って時点で接点分かりそうなもんじゃね?」

絹旗「まぁ田舎なんて超狭いですし。たまたま実家に近くに心霊スポットがあるかも?」

上条「いやだから東北のクマの話と一緒だろ!?地元の人間は危険度分かってるかに行かない的な!」



――シーン11

鳴護「『ここに犬鳴村があったんだ……』」

浜面(イケメン役)『――』

鳴護「『あれ、あなたは?確か実家のおばあちゃんのお墓に居ました、よね?』」

浜面(イケメン役)『そうか、君には分かるのか』 キリッ

鳴護「『はい?』」

浜面(イケメン役)『君、見せたいものがある……ッ!』 キリリッ

上条「すいません監督、雲行きが怪しくなってきました」

絹旗「総員嵐に備えてください!多分『なんでだよ!!!』とクルー全員で超ツッコむことでしょうから!」



――シーン12 どっかの会議室?

鳴護「『ここは……?てそれは映画のフィルム』」

浜面(イケメン役)『これは唯一残された犬鳴村の記録だ。僕だけしか知らない』 キリッ

鳴護「『あー……村人が犬を、狩ってる?』」

浜面(イケメン役)『山犬を捌いて生活していた彼らは、犬殺しと呼ばれて誰も近づこうとしなかった』

上条「すいません、えっと……闇咲先生解説お願いできませんか?」

闇咲「犬は生類憐れみの令が出るまでは公に普通に殺していたし、その後もこっそり駆除していた。野犬は普通に人や家畜を襲う農家と旅人の敵だからな」

闇咲「そしてそこそこ食べてもいた。赤犬は美味いという話もあるし、確か『えのころ飯』か。薩摩の郷土料理の一つでもある」

上条「ならこう、『犬を食べたからといって』……?」

闇咲「猟師扱いはされるので、信仰心の深い人間からはちょっとなぁ、的な扱いをされる。が、それも都市部か本山などの聖地だけだな」

浜面(イケメン役)『そんな彼らを手助けする連中が現れた』

鳴護「『あなたは……村の人じゃないんですか?映写機の中の、昔の映像の中に、よく似た人が……?』」

浜面(イケメン役)『……』

鳴護「『スーツを着た人たちが、”この先、日本国憲法通じず”の看板を立てている……?どうして』」

浜面(イケメン役)『――でも、連中が村人に近づいたのに狙いがあった』 

浜面(映写機)【――】←犬鳴村の村民へ焼き印を押すスーツの男たち
(※盛っていません)

浜面(映写機)【――】←犬鳴村の村の民家を破壊するスーツの男たち
(※盛っていません)

浜面(映写機)【――】←犬鳴村の村民を縄で縛り上げるスーツの男たち
(※盛っていません)

浜面(イケメン役)『連中は……電力会社の回し者で!この場所へダムを造るために村人を”力”でねじ伏せていった……ッ!!!』

スタッフ一同『――なんっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっでだよ!!!?』

鳴護「ちょ……腹筋が!?笑いたいのに笑えなくて悲鳴を上げて……!」

上条「監督!ウチの子に霊障が!」

絹旗「超大丈夫です!誰しもが一度も通る道ですら!」

鳴護「もう無理だよ!?前のサイレンやサメ映画も大概だったけど、後半になって怒濤の『それいらねぇたろ!?』はオーバーフローするよ!」

上条「バッファが足りてないんだ!何言ってるのか俺も分からないが!」

絹旗「繰り返しますが大丈夫ですよ。それよりもほら、ここを乗り切らないと超終わりませんけど?」

上条「くっ……!なんて卑怯な!」

鳴護「『――待って!?今動画に映ったのって――』」

浜面(イケメン役)『村をメチャメチャにした、こいつの娘や息子は今もノウノウと生きてる!』

浜面(イケメン役)『ヤツは村の娘達を無理矢理犬と閉じ込めて、犬とエロいことしていると言いふらした……!』
(※若干フワッとした言い方だと)

鳴護「『やめて!もうやめてよ!』」

上条「すいません監督。ウチのタレントの腹筋が崩壊しそうなので、そろそろこのトンデモ映画見なかったことにしませんか?それが一番誰にとっても幸せだと思うんですよ」

絹旗「超安心してください。まだです」

上条「まだって何がだよ」

絹旗「このあと更に、こう我々の勇気を踏みにじるような超トンデモ展開が控えていますから……!」

浜面(イケメン役)『そうやって――そうやってすぐフタをしようとする!』

浜面(イケメン役)『ダメだ!君は見なければいけない!』

浜面(CG)『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』←浮かび上がる幽霊たち



――シーン13

鳴護「『なんで……なんで私たちの血が……!?』」

絹旗「しかし主人公は気づくのです!真の犬鳴村へ入るには時間が需要な超要素でした!」

上条「お兄さん現状で行方不明なんだから、別に時間関係ないじゃない」

絹旗「パリピー彼女の残した動画には犬鳴村へ入った時間が残されていました!それを頼りに超入るとそこで見たものとは――」

浜面(イケメン役)『やっぱり、来てくれたんだね』

鳴護「『え?』」

浜面(イケメン役)『君に、託したいものがある』

鳴護「『ここは……死んだ人がいっぱい』」

浜面(イケメン役)『ここはもうダムの底へ沈む。地図から消えてしまうんだ』

浜面(イケメン役)『あの小屋の中だ』

鳴護「『あそこ――お兄ちゃん?』

上条「『ここだ!』――って生きてんのかい俺!」

鳴護「なんかね。グダグダだよね」

浜面(イケメン役)『君にはこの赤ちゃんを連れて行ってほしいんだ!この子だけでも、助かってほしい……!』

鳴護「『この子は……?』」

フレンダ(怨霊役)『あたしの、あたしの赤ちゃん……!?返して!?』

鳴護「『で、でもっ!』

浜面(イケメン役)『いいから!早く!』

上条「『行こう!』」

鳴護「『わ、分かった!』」

フレンダ(怨霊役)『返して!』

浜面(イケメン役)『俺たちの子を頼む!』

浜面(イケメン役)『その子は村人達の望みなんだ!村の血を絶やさないでくれ!』

フレンダ(怨霊役)『……』

浜面(イケメン役)『おい、どうし――グフッ!?』

フレンダ(獣化)『ぐるああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 』

上条「『――させるか!』」

鳴護「『お兄ちゃん!?』

上条「『いいから行け!俺が食い止めてる間に!早くしろ!』」

鳴護「『わ、わかった!』」

フレンダ(獣化)『アアッあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』」

上条「『させねぇよ!』 ガシッ



――シーン14 病院

鳴護「『――あれ、ここは……?助かった、の?』」

鳴護「『そうだ……お兄ちゃんは……?』」

警察官「その、ダム湖から発見されたのですが、見ない方が――ってやめなさい!」

鳴護「『下半身に……他の遺体がしがみついて……助けてくれたんだ、お兄ちゃん』」



――エンディング

鳴護「『退院おめでとう』」

浜面(子役)「『ママが、おともだちによろしくねって』」

鳴護「『ママが……あぁ、うん、そうだね』」

浜面(子役)「『またね、先生』」

闇咲(祖父の声)『――犬鳴村には潰れる前に出た人たちが居たとか』

闇咲(医師の声)『あの子はね、養子なんですよ』

浜面(子役)『――』 ギョロッ
(※瞳が獣のように黒目が大きくなる)

鳴護「『――ふぅ』」 ギョロッ
(※瞳が獣のように黒目が多くなり、犬歯が伸びるシーンで終わり)


-終-



――打ち上げ

絹旗「――はい、超ありがとうございました!いやー今回もよかったですねダメ映画!数年なかったレベルの高い(低い)感じです!」

鳴護「えっとねー……散らばってて何とも言いがたいんだけど、まず整理しようか?全員が”うん?”って感じだと思うし?」

鳴護「私、っていうか主人公の女医さんは犬鳴村をダムへ沈めた電力会社の手先さんの子孫なんだよね?父方が?」

絹旗「ですね」

鳴護「でもっておばあちゃんがその犬鳴村最後の赤ちゃんで、お兄ちゃん(当麻君)が犠牲になって連れ出したのもあたしっていう認識で?」

絹旗「かと思います」

鳴護「うん、いつのまにかタイムスリップしてるってどういうことかな?そんな伏線一秒でも描写してたかな?」

絹旗「超ありませんけど何か?」

鳴護「だからなんで!?そこ大事じゃない!てか時間巻き戻せるんだったらもっと助けてあげなよ!色々と!」

鳴護「そしてそもそも生き残りを預ったんだからお母さん、てゆうか血縁的にはおばあちゃんのお母さんがなんで変形してまで邪魔するの!?分かってなかったの!?」

上条「もっと言ってやれ!つまりあの人は自分のひ孫を殺したんだからな!特に意味もなく!」

鳴護「わらべ唄は特に解明もしないまま終わるし!なんだったらあの男の子のシーン居るかな!?『犬鳴村の子孫は他にもいるよ』って意味なんだろうけども!」

鳴護「でもそれだと前提からお話が崩れるよねぇ!?だって生き残りが他にもいるんだから!あたし以外に!」

上条「女医さんが生きてるってことは結果的に子孫が生き残ってるんだから、嫌がらせで霊障起こす意味がねぇわ!だって死んだら自分達で途絶えさせてんのと同じだし!」

鳴護「院長先生とお兄ちゃんのヤンキー友達、そしてパリピー彼女が被害者になった理由は何?特にその村と因果関係自体はないし、直で入ったのはパリピーさんだけだし!」

上条「主人公とその兄弟が呪殺されなかったのも『あ、血縁だからか!』と途中まで思ってたけど、しっかり俺最後に犠牲者になってんじゃねぇか!監督の言う通り特に大した意味はなかったよ!」

鳴護「焼きごてシーンの意味は?あからさまに証拠が残るんだけど、誰かも企画会議で『おかしいよ!』って言わなかったのかな?」

上条「『日本国憲法ここから適応されません』の看板もだよ!なんであれ手先の方が設置してんだよ!『今から悪い事します、よーし看板立てようぜ!』ってでも思ったのかアァンッ!?」

上条「ついでに女性と犬が、ってのもあるけどほぼ事実だろ!そこは『可哀想な迫害を受けた』ってスタンス死守しろよ!獣化できるんだったら『じゃあ仕方がないね』って思われるんだからな!」

鳴護「そして結構大御所さんの俳優使ってる分、多分その他の経費が圧迫されたんだろうけど……」

鳴護「ことごとく!幽霊さんのことごとくが”ただ血色悪い人が立っているわー”って感じだよ!?いいのっ!?」

上条「終盤のイケメン幽霊もなんなんだよ!?映写機使って昔の犬鳴村見せたり、タイムスリップ起こしたりやりたい放題だな!」

鳴護「そして主人公が『幽霊見える』んだったら、もっと早く遭遇してたよね?だって実家のお墓をウロウロしてたもんね?」

上条「あとこれ電力会社から訴えられないか?実名じゃないけど、微妙にあそこに似たような名前の会社あったし、実際にダムも造られているし……」

絹旗「――はい、という訳で今回もお二人には超ご好評を頂いたようで!」

上条「おいテメー今日は言うかんな!俺たちの時間を返せよ!これ見てる人達だって!」

絹旗「次回は『こっくりさんマラソン』で超お目にかかりましょう!さよなら、さよなら、さよならー!」

鳴護「待って当麻君!?この人サメ映画マラソンのノリでこっくり映画さんをやろうとしているよ!危険だよ!」
(※私が知る限り、邦画だけで90年代〜現在まで4・5本映画になっています)

上条「――次回は、『上条当麻・アイドル篇』で会おうぜ☆」

鳴護「需要が……うん。それだったら涙子ちゃんがやった方がノリも数字も取れるよね」


-終-
(※半年前に紹介したサンレ○の方がまだ面白いっていう。地獄ですよね)

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