とあるツッコんではいけない映画劇場 〜サイレ○〜
――
絹旗「えーと、まずこの物語は超フィクションであり現実の映画とは関係ありません。そこそこ手を加えています」
絹旗「仮になにかしらカブっていたとしても、それは”批評のための引用”であり引用法の範囲内であると超予め明言しておきます」
絹旗「と、言いますか気になった方は是非つべや円盤を買って確かめましょう!超確実に『あぁ……大切な87分が失われた』と思うでしょうから!」
絹旗「――では物語を始めましょうか」
――とある島
鳴護「……えっと、謎のプレゼン終わったと思ったら、こんなところにまで連れて来られたんだけど……?」
上条「まぁ気にするな!折角南の島に来たんだから、バカンス気分で行こうじゃないか!」
鳴護「いやそうなんだけど。てかついたばっかりでちょっとアレなんだけどさ、あのジモッティーの人らが」
上条「何?あぁ閉鎖的な感じのアレ?」
垣根A「……余所者だ……」
垣根B「……あぁ誰だろ……」
垣根C「……帰れよ……」
上条「人件費ケチってんじゃねぇよ!?つーか垣根だったら元価格が異常に高いだろうし節約ですらないな!」
鳴護「現地の人をキャストさんで雇えばいいだけだよね?なんでこんなしょーもない無駄遣いを……!」
絹旗「全員浜面にしようか迷ったのですが、ここまで出さなかったんだから、切り札は最期まで超温存しようかと」
上条「おい!俺はいるの知ってんだからな!撮影の合間合間に見切れしたりしてるし!」
鳴護「ただちょっと外見が……うん、繁華街とかにいそうではあるけど、離島にはどうかなー?」
絹旗「では撮影を始めたいと思いますが、お二人は姉弟ですので設定をお忘れずに」
上条「『ARISAが俺の妹』」
鳴護「やらしい円盤にありそうだよね。ていうか絶対にある、聞いたことあるよ」
絹旗「私もありますが超逆です、逆ARISAさんがお姉さんで上条さんが弟役です」
上条「あぁなんか新鮮。『アリサおねーちゃん?』」
鳴護「――監督!あたし監督に一生ついていきます!」
絹旗「あぁすいません上条さん。弟さんは一言も台詞がないんで、超不要です」
(※本当の設定です)
鳴護「やっぱやめます。悪魔なのかな」
上条「俺だってぶっちゃけ恥ずかしいわ。あー、んでこれからの予定は?」
絹旗「島を一通り見て回りつつ、排他的で超気持ち悪い島民を演出するターンですね。まぁそこはお約束で」
上条「気持ち悪い言うなよ」
絹旗「まぁそこは軽く流すとしまして、超右手をご覧ください。あちらにありますのがとある島名物、超鉄塔です」
鳴護「あからさまに不釣り合いで立派な鉄塔なんですけど……」
上条「そうだね!21世紀の建築技術で用意された感じだよね!」
絹旗「あとは近所のガキんちょがこんな歌を歌っていました、こほん――『敬い奉る、尊き鏡の中にこそ真の理現れん』」
絹旗「『鏡を覗きたる狗は神へと転じたり、生者は悪へと転じたり。変わらぬ者こそは果て無き命を授かりし、この世の理越ゆる者』」
鳴護「歌じゃないですよね?なんでそんな超縁起悪いわらべ唄が流行ってんですか?」
上条「なんだろうな……なんかこう違和感があるっていうか」
刀夜「こういうのはね、普通の古語で残ってるんじゃなくて、地方の方言でローカライズされてる場合が多いんだよ」
刀夜「例えば”コトワリ”なんかは場所によって”コターリ”みたいに訛りが入る訳で。それがないから教科書を棒読みしてる感じに聞こえるのかな?」
上条「微妙に最近会ったような気がしないでもないが、なにやってんですかクソ親父」
鳴護「どうも初めましてっ!当麻君にはいっつもお世話になっています鳴護アリサです!」
上条「なんでそんなに緊張してんの?そして親子役なんだからアリサも上条じゃないの?あ、俺が鳴護か」
鳴護「みょ、苗字は院長先生には悪いけどいつか変わるものだと思っています!同じ籍に入るって憧れだよね!」
絹旗「――はいそこ!超ホラー映画撮ってんですからラブコメに超脱線しないでください!真面目にやる気はないんですかっ!?」
上条「二択で言ったらない方だ。二択じゃなくってもないわ」
刀夜「いや元気なお嬢さんで結構だ、ただこれだけは言わせてほしい――」
刀夜「――当麻が欲しいんだったら私の目の黒いうちは許さないからね!?」
上条「父さん気持ち悪い、すっごい気持ち悪いよ父さん」
刀夜「まぁ立ち話もなんだから家へ行こうか?」
鳴護「はいっ!お願いしますっ!」
上条「いいのかな、これ。てか監督、俺らはなんでこの島来たんですか?」
絹旗「病気療養ですね。弟さんの体が超弱い、とお姉さん”は”思っているようですから」
上条「ふーん?」
――家
レッサー「やぁやぁようこそいらっしゃいました!さすらいのモブ隣人ことレッサーちゃんですな!」
刀夜「紹介します。お隣りのレッサー=チャンさんです」
上条「誰も憶えてないだろうけどそのボケは二度目だ。てか隣人?」
鳴護「ま、まぁまぁ!島民初の友好的な人だから!」
レッサー「まぁお座りくださいな。茶でも入れますんで」
鳴護「あぁ大丈夫ですよ!あたじかやりますから!」
レッサー「つっても場所とか分からないでしょう?私が用意しますんで」
刀夜「じゃあ私は何かお茶請けを探してくるかな。確か倉庫にあったような」
上条「俺も手伝うよ」
鳴護「だからあたしも……」
レッサー「――あー、そうそうアリサさん。この島に着いてから随分と驚かれたでしょう?辺鄙と言いますか、風変わりと言ったものか」
鳴護「まぁ余所者ですから、しょうがないんじゃないかと」
レッサー「一応先人からのアドバイスとして『夜は出歩かない』、『近所付き合いはしっかり』、『銛の鉄塔には近づかない』、『サイレンが鳴ったら外に出てはならない』ってのだけは絶対に守ってくださいね?」
鳴護「タイムです、監督。サラッと超ぶっこんできましたよね。ヘビィーな一撃入れてきましたよね」
絹旗「えぇまぁ私も『超スゲーなイギリス人、もっとスムーズな会話できねぇのかよ』と驚きました」
レッサー「いいじゃないですか話が早い方が!?どうせ主旨は一緒でしょう!?」
鳴護「そうかもだけど……夜歩き禁止とご近所大事に、は分かるけど。鉄塔とサイレンはどういう曰くが?」
レッサー「曰くも何も。使ってない鉄塔でいつ崩れるか分かったもんじゃないからですよ。あと防災無線が鳴ったら大人しくしろやと」
鳴護「あ、それなら納得です」
レッサー「あとですね……この島唯一のお医者様がもうすぐいらっしゃ――」
青ピ「――これは大変や!すぐにでも手術せぇへんと!」
青ピ「ボクのハートがARISAで染まってしまう前に……ッ!!!」
鳴護「――ごめんなさい。生理的に吐き気がします」
レッサー「あのアリサさんが毒舌を!?口の悪いウチのメンバーに囲まれながらも最後の良心だったのに!?」
青ピ「ってのはまあ冗談やけど、医師やってますねん。どっか具合悪ぉトコあったらいつでも相談してな?」
鳴護「えっと、あたしじゃなくて当麻君――もとい、弟がですね。ちょっと体が弱くて」
青ピ「……あぁ聞いとぉよ、大変やってんな。都会じゃあ心ないアホもおるよってに、お姉さんとしちゃ苦労してやろ?」
鳴護「あぁいえあたしは全然!大変なのは弟ですから、少しでも良くなればって」
青ピ「……まぁ、大丈夫やと思うよ?この島は辺鄙で偏屈な人間も多いけど、気候だけは悪くないよって」
青ピ「何も今日明日治るなんて考えず、長い目でゆっくり治療しよう、な?」
鳴護「……はい、ありがとうございます」
――数日後
鳴護「あれ――当麻君?当麻君どこー?」
刀夜「どうしたのかなアリサさん?」
鳴護「えっと当麻君がいないんですけど、知りませんか?」
刀夜「……私は見てないね。お腹が空けば戻ってくるんじゃないかな?」
鳴護「そんな無責任な!あたし探してきます!」
刀夜「いや心配要らないよ!」
――廃墟
鳴護「これは――『サイレン』について書かれた手記……ッ!?」
鳴護「……」
鳴護「――すいません監督、タイム二回目の申請をお願いします」
絹旗「認めましょう。私も『超展開が早い上にトンデモじゃねぇか』って思っていたところですから」
(※盛っていません)
鳴護「ありがとう監督。やっぱり監督ですらおかしいって思うんなら、かなりどうかしてるってことですよね」
絹旗「中々超言いますねー。一応これには超伏線がありまして、シーンを削った映画序盤、阿部○が保護されたのがこの廃墟なんですよ」
鳴護「そんな展開が?」
絹旗「今から約30年ほど前、島民全員が失踪した事件がありましてね。その唯一の超生き残りが彼であり――」
絹旗「――保護されたときには『サイレンが鳴ったら外に出てはならない……!』何度も何度も超唱えていた、と」
鳴護「へー、じゃあこれが需要なキーアイテムってことですね!」
絹旗「『残ってるわけねぇよ』と超思わなくもないですが。あと弟さんはあっちにいます」
鳴護「あぁご親切にどうも――当麻君!」
上条「……」
赤い衣を羽織った絹旗「……」
鳴護「当麻君そこどいて!その人が犯人だよ!なんの犯人かは分からないけど!」
赤い衣を羽織った絹旗「すいません。超人手不足で私がやっていますが、『近隣住民の子だな』ぐらいの認識でお願いします」
鳴護「無理だよぉ!?だって上から下まで自己主張が強すぎるんだもん!ラスボスが序盤で勇者の顔見に来たぐらいに存在感があるし!」
――家
鳴護「たっだいまー」
上条「……」
鳴護「ほら、当麻君もただいまって言わないと」
刀夜「あぁお帰りなさいアリサさん。当麻も……一緒、なんだよね」
鳴護「はい、そうなんですよ。当麻君ったらまだ余所で女の子と遊んでて」
刀夜「そう、元気そうならいいんだけど……じゃあちょっと私は出てくるから」
鳴護「出るって……もう夜だけど?」
刀夜「うんちょっと夜景を撮りにね。そんなに遠くまでは行かないから大丈夫だよ」
鳴護「分かりました。上条家の嫁として家は守ります!」
絹旗「はいそこ!余計な台詞を超入れない!私が楽しくなってくるでしょうが!」
……アーーーーーーーーーーーーーァァァァァァ……
刀夜「なんだ……?サイレンが鳴っ――」
――家 翌朝
鳴護「……帰ってこないなぁ」
青ピ「まいど!おはようさん!」
鳴護「先生、おはようございます!あの、刀夜さんが帰ってこないんです!」
青ピ「刀夜さんが?いつから?」
鳴護「昨日の夜からです!そんなに遠くまでは行かないって言ってのに!」
青ピ「そっか……じやあボクは探してくるわ。ARISAはんは家で待っとぉて」
鳴護「そういう訳にも行きません!あたしも一緒に!」
青ピ「いやでもなぁ」
鳴護「家には当麻君もいますし、帰ってくれば分かるでしょうから!」
青ピ「まぁ……しゃーないか。わかった、それじゃ離れたらあかんよ?」
鳴護「はいっ!」
――森
鳴護「って言ってる側から先生がいなくなったよ!?なに!?フリだったのあれ!?」
絹旗「ARISAさん言葉遣いが荒くなってます。超分かりますが」
鳴護「いや人間性が段々荒んでくるっていうか……まぁいいや。一人でも捜せるし」
鳴護「て、ゆうか……建物?コンクリ打ちっ放しの……?なんだろ、初めて見るよね……?」
鳴護「中には謎の祭壇……ッ!?待って!まさかその中央に横たわっているのは――」
刀夜「……」
鳴護「――刀夜さんの、死体……ッ!!!」
鳴護「……」
鳴護「――監督!あたしもう耐えられません!なんなんですかっこの演者の心を丁寧に折りに来る展開の数々は!?」
絹旗「中々のもんでしょう?オチは超もっと酷いんですよ?」 ニヤッ
鳴護「そりゃこれを最期まで演じきればツッコミ力もつこうってもんだけども!その前にあたしの心が折れそうです!」
絹旗「なおこのクソ映画のマジ監督はTric○でお馴染みの○監督です。ファンには是非見て(膝をついて)ほしいですねっ☆」
鳴護「邪悪すぎる……!」
――森
鳴護「こっちです!早く!」
青ピ「ちょ、ちょっと待ちぃな!そんなに速く走ったら体にも障るで!」
鳴護「いやあたしは健康ですよ何言ってんですか!」
青ピ「いやそうやなくって――」
鳴護「ここです!この建物の中に刀夜さんが!」
青ピ「……はぁ。使われてる感じはせえへんけど」
鳴護「……うん?刀夜さんの死体がどこにもない……!?」
青ピ「つーかその祭壇の跡もないでんな。数年分の埃も溜まっとるし」
鳴護「あ、あの!あたし見たんです!」
青ピ「……ARISAはん、あんた疲れてんとちゃうのん?色々あったようだし、島の生活もそんなに早くは慣れへんやろし」
青ピ「それに刀夜はんが大丈夫やったらそっちの方がエエに決まっとぉ。一回戻ってみよ、な?」
鳴護「………………はい」
――家
刀夜「……」
鳴護「刀夜、さん……?良かった!大丈夫だっんたで――」
刀夜「私に近寄らないでくれ!」
鳴護「刀夜さん……?どうしたんですか?怪我してるのに……!」
刀夜「……あぁごめんねアリサさん。これはちょっと転んだだけだから、大したことはないんだよ」
鳴護「……そんな風には見えませんが……」
刀夜「とにかく!私は大丈夫だから、君は自分の心配をしなさい!いいね!?」
鳴護「は、はい……」
――家
鳴護「あれ今度は犬がいない……?探さないと!森へ入ろう!」
鳴護「……」
鳴護「監督ちょっといいですか?この主人公、『森へ入んな』って言われてんのにガンガン入るのって学習能力がないんですか?」
絹旗「えぇまぁ私も超どうかと思うんですが、この映画の(アホ映画として)面白いところですから」
鳴護「てかあたしもそろそろ演じるのが苦痛になってました!薄々オチも読めてきましたし犯人も誰か見当がついてきました!」
絹旗「流石ARISAさん、賢いですね。ちなみに私も劇場で『このまま最期まで見ずに筋トレしようかな?』と超本気で悩み出した時間帯です」
鳴護「や、まぁ探せっていうんだったら探しますけど」
絹旗「で、これが森であなたが超見つける予定のビデオカメラです。お父様の私物ですね」
鳴護「これは……刀夜さんのカメラっ!?」
鳴護「……」
鳴護「……監督?純粋な疑問なんだけど、実の父親が夜中にビデオカメラ持って撮影するっていったら何を撮りに行ったと思います?」
絹旗「十中八九エロ目的でしょうね。というか島に住んでる人間が今更なにを動画に撮るのかと」
鳴護「一応中身確認しますけど……ぴっと」 ピッ
刀夜(動画)『う、うわー!やめろ!何をするんだー!?』
人影(動画)『……』
鳴護「なんて分かりやすい証拠をゲットしました!」
絹旗「えっと……まぁ、ご愁傷さまですと言いますか、なんでやねんと超言いますか」
鳴護「刀夜さんに見せた方がいいですよね、これ?」
絹旗「ですよ。ここは超帰宅するターンです」
――家
鳴護「ただいま帰りましたー!刀夜さんはいますかー?」
上条「……」
鳴護「あ、ただいま当麻君。刀夜さんはいるかな?」
上条「……」 ブンブン
鳴護「いないの?部屋に戻っちゃったのかな……怪我してるのに心配」
鳴護「じゃあ知らない内にかえって来るかもしれないし、カメラを返しておこうか」
――刀夜の自室
鳴護「……失礼しまーす……っていないね当麻君。ホントどこいっちっゃたんだろう。カメラはここに置いてっと」
鳴護「あれ……?これって刀夜さんが調べた資料?」
鳴護「ロアノーク島、マリー・セレスト号に……『サイレン』?――ってこれ!?」
鳴護「赤い衣を纏った人魚セイレーン……ッ!!!?」
鳴護「……」
鳴護「監督、ギブアップするにはどんな手続きを踏めば可能でしょうか?」
絹旗「残念ですがあなたにその権利は超ないんですよ。最期までやりきらないとこの途中下車できませんので!」
鳴護「そんな映画もありませんでしたっけ?暴走する列車止める的な」
絹旗「名作から駄作まで超多いですよ−。それで今度はどんな展開がお気に召しませんでしたか?」
鳴護「さっきの赤い衣を羽織った女の子、というか最愛ちゃんもそうですけど。『そもそも人魚、服着るんかい』ってツッコミが」
絹旗「ここら辺であなた、というか主人公はこの島の人魚伝説を知るわけですが、要点は超簡潔」
・島には人魚伝説があった。元々は病人や年寄りが捨てられる島だったが、人魚は人間を超哀れんだ
・人魚は病人たちへ己の血を分け与え、人間達の病は完治し彼らは人魚を神として崇めた
・しかしその力は人間にとって魅力的であり、人間はこう考えた――『それじゃあ人魚喰えば不老不死になんじゃね?』
・人魚は助けた人間に捕らわれ、食べられたが……大いに人間を憎み、嘆き、絶望を
・するとその呪いは人間達へ超降りかかり、島全ての人間は命を奪われた
・今でもその人魚の呪いは島に残り、赤い服の女性となって彷徨っている?
鳴護「罰当たりと恩知らずのツープラトンがキッツイです」
絹旗「まぁそれは原作というゲームの設定ですから超悪しからず」
……アーーーーーーーーーーーーーァァァァァァ……
鳴護「また――サイレンが!?」
絹旗「……超鳴りましたかね。であれば外へ出てはいけませんよ」
鳴護「はい――でも当麻君が居ない!探しに行かないとっていうかこの主人公さんもうヤダよぉ!なんで学習しないの!?」
鳴護「当麻君も当麻君だし!病気療養って設定なのになんでよく目を離すといなくなるのかな!?アクティブ!」
絹旗「流石に子供を見捨てるのはちょっと……では場面転換で」
――森
赤い布を羽織った絹旗「……」
上条「……」
鳴護「当麻君……?当麻君っ!?どうしたの!?意識がない……っ!」
鳴護「てゆうかあなたは一体なんなの……っ?」
垣根A(ゾンビ風)『おぉおおおおお……』 ヌッ
垣根B(ゾンビ風)『ううぅぅぅぅうう……』 ヌッ
浜面(ゾンビ風)『うおぉぉぉぉぉぉぉ……』 ヌッ
鳴護「なんて、なんて酷い!温存していたスタッフさんをその他大勢で使うだなんて!」
浜面(ゾンビ風)「俺だって驚いたよ!映画の再現V話来たから『あ、俺出られる!』って楽しみにしてたのに、仕事は裏方だけだぜ!」
浜面(ゾンビ風)「でもいざ終わってみれば絹旗なりの優しさだって気づいたよポイズン」
鳴護「ポイズン……?毒?ま、まぁいいや!当麻君逃げよう!」
――家
鳴護「……ふぅ、子供を連れて大の大人数人に囲まれたけど逃げられたね!トップアスリートでも不可能な奇跡を起こしたよ!」
鳴護「刀夜さんは……いないか。なんなんだろ、あのゾンビ風の人たちは……?」
鳴護「顔が真っ白になって、血の涙を流してた……?悲しいのかな?」
鳴護「……?」
鳴護「――この壁は不自然だ!あぁ不自然だね前から思ってたけど!」
鳴護「てゆうか監督この再現Vの脚本が雑すぎますって!もっとこう忠実にやった方がいいんじゃないかな!?」
絹旗「一言一句違えず、かつ正確に超やり過ぎると著作権法違反になりますので。細部やいらんモブは出していません」
絹旗「しかしながら大筋においては超残念なことにほぼ忠実に再現しているという……!」
(※盛っていません)
鳴護「別の意味でホラーです。とてもこわいです」
絹旗「さぁ早く壁を超剥がしてください!ここが真相へ繋がる鍵ですから!」
鳴護「『うん知ってた』ってツッコミが多数入るだけだと思いますが……まぁ、やります」 ベリベリベリベリッ
鳴護「奥には……隠し部屋?数週間住んでのに全然気づかなかったよ!ただの民家にしか見えないのに!」
鳴護「刀夜さんの資料、にして古い感じだけど……なんだろうこれ。あ、写真もある」
レッサー(写真)『……』
青ピ(写真)『……』
浜面(変顔)『……』
鳴護「監督!笑いを入れて来るのやめてくれませんかねぇ!?有吉の○じゃないんですから!気を抜いた瞬間になんて罠仕掛けるんですか!?」
絹旗「たまたま手元の浜面変顔フォルダに超あったもので」
鳴護「監督の愛が重いです。でも全部モノクロ写真なんですね、てかかなーり古い感じで……あれ?」
鳴護「この写真の日付、今から30年ぐらい前の……ッ!?」
鳴護「どうして!?どうしてみんな歳をとってないの!?若い姿のままで!先生やレッサーちゃんも!」
……アーーーーーーーーーーーーーァァァァァァ……
鳴護「――っ!また、サイレンが鳴った……!」
刀夜「……」
鳴護「刀夜さん!あ、あのっこれ!どういうことなんですか!?この写真は!?外に居たゾンビっぽい人たちは!?」
刀夜「……」
鳴護「……刀夜さん――きゃっ!?」 ブウンッ
刀夜「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
鳴護「あ、危ないですよ刀夜さん!?いや違う、もしかしてサイレンのせい……!?」
刀夜「あ、ぁああぁぁっ!」
鳴護「止めないと!サイレンさえ止めれば、みんなっ元に戻る……!鳴らしているのは――」
鳴護「――森の、鉄塔……ッ!!!」
――森 鉄塔
鳴護「ここか……!このハシゴを登って……!」
レッサー(ゾンビ風)『チチ……!少しえぐる……!』
鳴護「だからアドリブで笑わせに来ないで!主旨が最初っからフワッとしてるけど、これ以上ネタに走ったらギャグ映画になるから!」
絹旗「本物も大量の半屍人モドキが登場するこのシーンは、超爆笑必至でしたけど何か?」
鳴護「感性が特殊な人と一緒にしないで下さい!みんな真っ当に生きてるんですよ!?」
絹旗「超お言葉ですがこの映画並びに先日までやってたサメマラソン、あれら全てはゴミです。えぇそこは超否定出来ませんとも」
絹旗「ですが!こうやって面白おかしく取り上げ、超ネタにすることで興味を持ってくれる人がいると私は確信しています!」
絹旗「このまま映画史の闇に葬り去れるよりは!例えネタ映画だとの烙印を押されても見てくれるお客様がいた方が映画にとって超幸せじゃないですかねっ!?」
鳴護「そ、それを言われると!」
レッサー「で、本音は?」
絹旗「こう言っとけば意識高い系バ×が勝手に意を汲み取って納得してくれるかと」
レッサー「オーケー、極東の島国に住む我が同胞よ!あなたとはいい友人関係を築けそうです!」
絹旗「えぇこちらこそ。スカしたイギリス人は大好きですよ。あ、映画と同じ意味でですが」
鳴護「仲が悪いよね?互いに罵ってるだけだよね?」
絹旗「それよりもサイレンを止めないと!スピーカーを早く破壊しないと下からゾンビが超やってきて×××されますよ!」
鳴護「ジャンル違う。そしてこんなシチュエーションゲームでありそう」
鳴護「まぁいいや。鉄塔のスピーカーを破壊、っていうか下に落せば壊れ」
垣根(スピーカー役)「……」
鳴護「監督の世界観が理解できません!どんな神経してたら人を突き落とせると思ってんですか!?」
絹旗「まぁそれは流石の私でも超ジョークです。隣の箱を落してください」
鳴護「これかな、えいっと」 ガシャーン
鳴護「………………壊した、のにサイレンはまだ鳴ってる!?どうしよう!壊す前に気づきそうなもんだけどどうしよう!?」
絹旗「もう色々と嫌になって台詞改変してきましたね。気持ちは超分かります」
青ピ「――待ぃな!ARISAはん、そこまでや!降りて来ぃ!」
鳴護「先生!?先生は……あぁ良かった!ゾンビみたいになってないんですね!」
青ピ「ゾンビ?君なに言うとるんよ!?」
鳴護「聞いてください先生!サイレンが!サイレンが鳴る度にみんなおかしくなっちゃうんですよ!」
青ピ「…………ARISAはん」
鳴護「刀夜さんやレッサーちゃん!浜なんとかさんとか島の人だって!下にいっぱいいるでしょう!?」
青ピ「……ARISAはん」
鳴護「あの写真はなんだったんですか!?みんな歳をとってない――人魚の血を飲んだからじゃないんですか!?」
青ピ「ARISAはん!」
鳴護「とにかく先生も逃げ」
青ピ「――サイレンは君にしか聞こえてへんのや!」
鳴護「――て……えっ?」
青ピ「この島にある鉄塔は一つ!やけど随分前から壊れて使ってへんのや!」
青ピ「防災用のスピーカーもあるけど、サイレンの音ちゃう!ジリリリ言うベルっぽい音でサイレンやないよ!」
鳴護「え、でも、あたし、えっ?」
上条「……」
鳴護「と、当麻君は?当麻君はずっとあたしと一緒で、一緒に逃げて、サイレンも聞いてる、よ、ね……?」
上条「……」 フッ
鳴護「当麻君!?当麻君が消え、消えて――」
鳴護「……」
鳴護「………………あぁ、そっか。そうだよね、あたしなんで忘れてたんだろ――」
鳴護「――当麻君なんて、最初っからいなかったんだよね」
青ピ「………………そうやでARISAはん。君は事故で亡くなったカミやんのことが大切で……大切すぎて心を壊してしもぉた」
青ピ「やから、刀夜はんと一緒にこの島で療養を」
鳴護「……」
青ピ(ゾンビ風)「――なっ?降りて来ぃや?下にいる人間は、君のこと心配して集まっとぉよ?」
青ピ(ゾンビ風)「だから」
鳴護「……」 スッ
青ピ(ゾンビ風)「ARISAはん……?――あかん!身を乗り出しとぉたら落ち」
鳴護
青ピ(ゾンビ風)「ARISAはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!?」
――島の診療所
鳴護「……」
刀夜「よく、眠ってるね」
青ピ「そうでんなぁ。暴れてたのがウソのような感じで」
刀夜「なにか、異常はないんですよね?」
青ピ「やんなぁ。奇跡的にも大きい怪我はなし……まぁ心配すんのはARISAはんだけやないけど、刀夜さんもやで?」
刀夜「私は……転んですりむいただけだよ。自分で怪我したんだ」
青ピ「……そうでっか……まぁ、他の人間には直接手ぇ出した訳やなし、罪に問われるっちゅーことは避けられるとは思いますけど」
刀夜「……目が覚めたら、どうなるんですか?」
青ピ「カミやんが亡くなった、っちゅーことは理解してたようやし、快方に向う可能性もある、かもしれへん」
青ピ「自覚症状があれば御の字、最悪全部忘れとる可能性もない訳やない」
刀夜「……つまり全然分からないってことですか?」
青ピ「まぁ、こればっかりは」
刀夜「その……アリサさんが言ってた、写真とか手記の話は一体?」
青ピ「あぁ……あんま言う事でも無いけど、この島で神隠しがあったんよ。一人だけを残して、30年ぐらい前やったかな」
青ピ「そいつが『サイレンが鳴ったら外へ出るな』って言ってたんやけども……まぁ調べてみたら、虐殺しよったのがそのアホだった、っちゅーオチですわ」
刀夜「彼も、サイレンを?」
青ピ「今となっては分からんけどな。まぁ終わった話ですわ。関係もないでっしゃろ」
刀夜「ですな……ちょっと顔洗ってきます」
青ピ「あぁ看てますんでご心配なく……しっかしのこのクソ手帳か。これさえなかったら、ARISAはんがおかしくならずに済んだんやろか」
青ピ「『サイレンが鳴ったら外に出るな』、か。まぁ、外に出なきゃ被害は抑えられるけども……うん?」
青ピ「なんやこれ?血でくっついとぉけど、続きがある……?」 ベリベリッ
青ピ「――――――『四回目のサイレンで皆殺し』……?」
……アーーーーーーーーーーーーーァァァァァァ……
鳴護「……」
青ピ「うわビックリした!ARI」
グサッ
――島の高台
赤い服を羽織った鳴護『……敬い奉る、尊き鏡の中にこそ真の理現れん』
赤い服を羽織った鳴護『――鏡を覗きたる狗は神へと転じたり、生者は悪へと転じたり――』
赤い服を羽織った鳴護『――変わらぬ者こそは果て無き命を授かりし、この世の理越ゆる者……』
-完-
――打ち上げ会場
絹旗「――いやー超素晴らしい演技でしたね!流石ですARISAさん、から回りっぷりが板についていました!」
鳴護「監督、何回だって言いますけど悪意があります。てか確認したいんですけど、この映画ってホラーなんですよね?」
絹旗「私としてはサスペンスだと思うんですが、制作側はホラーだと超言い張っています。半屍人モドキも出ていますし」
鳴護「それで、オチとしては頭がちょっとアレだったのは主人公の女の子だけで、事故で死んじゃった弟さんの幻覚を見ていたんですよね?」
絹旗「はい、そうですね。そのご理解が正しいかと」
鳴護「サイレンが聞こえていたのも幻聴で、ゾンビってぽい人になっていたのも幻覚で。てか義父さんを襲撃したのも主人公だと?」
絹旗「あなのた義父かどうかは超知りませんが、そうですよ」
鳴護「――人魚の伏線ってどこいったんですか?あと赤い着物を羽織った女の子、及びあたしがラストで着せられた意味は?」
絹旗「超知りませんが何かっ!」
鳴護「やっぱそうじゃない!?お話の途中から『あれこれ、伏線回収するんだったらそろそろしないと……あれ?』って不安になってんだよ!?」
鳴護「てか主人公どうかしてたのは最初のリアクションで分かってたし!島の人が『うわなんだこいつ誰もいねぇのに会話してるぜ』ってとこで!」
鳴護「あとサイレンの意味ってなんだったんですか!?登場人物もちょくちょく『サイレンが鳴ったら〜』って現代でレッサーちゃんも言ったましたよねぇ!?」
絹旗「あれはあえて描写しなかったんですが、レッサーさんが主人公へ背を向けて話している、という演出がなされており、実は主人公の幻聴だった、と」
鳴護「というか幻聴の割には具体的すぎて引きます」
絹旗「まぁオチとしては『人魚伝説及び原作ゲームの設定ガン無視のクソ映画』でしたね!いやー超いい時間でした!実に無意義な!」
上条「監督、俺の出番がただただ見切れるってだけで辛かったです」
鳴護「当麻君が喋ったら台無しだからね、うんそこは仕方がないんじゃないかな」
上条「でもさ?トータルで見たらそんなに悪くないんじゃないか?俺が再現ビデオ撮った範囲でいえばだけど」
上条「アリサの演技も『後から見れば……』って。原作を無視したのはダメだけど、サスペンス映画としての出来は……サメ映画に比べれば、まだ救いがあるっていうか」
鳴護「当麻君しっかり!あのサメダメ映画を基準にしてる時点でどうかしてるんだよ!一般人とは違うって気づいて!」
絹旗「そうですね、私も同意しなくはないんです。超早足でやってきましたが、シナリオ自体”は”普通ぐらいの出来なんですよ」
絹旗「ついでにいえばオリジナルのカメラワークや絵も、『これTric○じゃね?』って錯覚しそうになるぐらい、超安定しています」
上条「微妙に毒吐いてるが、そうだよな」
絹旗「ただですねー、青ピさんいたでしょう?あの方の演技が超上手い」
上条「……そうか?下手ではなかったけど、そんなにか?」
絹旗「クライマックスのシーン、鉄塔登る主人公と追いかける医者先生がネタバレするところです。そこは超異論は無いと思います」
鳴護「だね。緊迫してたもん」
絹旗「ARISAさんの演技も良かったのですが、青ピさんもネタへ超走る事無く演じきったのが超良かったです。失敗した方が面白くはあったんですが」
上条「だから病んでんだよ君」
絹旗「で、この物語を通して頑張ってる医師の役者、オリジナルでは『田中直○(お笑い芸人)』なんですよねー」
上条「なんっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっでだよ!?ダメだろそれ!そこはお笑い芸人引っ張って来てどうすんだよ!?」
鳴護「あれ……?阿部○さん、出てたよね?普通逆じゃないのかな?」
絹旗「冒頭の数分以後は超出て来ませんが何か?」
上条「だから逆だろ!?普通仕事畑の違うお笑い芸人をピンポイントで使っておいて!阿部○メインで起用しないで何やってんだよ!?」
絹旗「ですから私に言われても超困ります。そのおかけで鉄塔のシーンも『コントか?』と思うぐらいの棒読みと変わらない表情でしたし」
絹旗「しかも主人公が真相に気づいた後、下を振り返ると異形化、というか半屍人化した医者が超見えるのですが……想像してみてください」
絹旗「ココリコ田○が顔を真っ白に塗って、超血の涙を流しながら迫ってくる様を……!!!」
上条「ギャグだもの。だってもう笑うしかないもの、コントのワンシーンでありそうな流れだもの」
絹旗「あと1000%の自信を持って言いますが、『普通にオリジナル映画を見るよりはこっちのSSの方がまだ緊迫感あった』と思います」
絹旗「クラスマックスのシーンで大分台詞追加してますし、本物はタルいは要らん描写超多いわで地獄です」
絹旗「何度も超いいますが、なんの解説も説明も後出しジャンケンですらもなく、人魚や赤い少女の設定をぶん投げて『完!』となるため、見た人は呆然とする映画です」
鳴護「あ、あの監督?あたしの推測なんですけど、30年前の事件といい、今回の錯乱事件といい、人魚さんの呪いがあったんじゃないですかね?」
鳴護「一応サイレンという共通項もありますし、赤い女の子が見えたのは呪いがかかってる証拠的な?」
絹旗「阿部○のターンでは全く無かったですけどね、それ。そしてサイレンが何度も鳴るのがどうしてキラータイムの超始まりだと。甲子園かよ」
上条「てかサイレン鳴るのが人魚の呪いだとしたら、サイレンが設置された以降に人魚さんの怒りを買ってないと成立しない。時系列的に」
絹旗「そこは原作では震えが来るぐらいの裏設定があり、上手くカバーしています。しかし映画では超無視しているので整合性が全く取れていません」
絹旗「まぁ人魚か呪いだと解釈するとしても、主人公しか見えない筈の弟さんの幻覚と一緒に超遊んだり、『何がしたいの?』以上の感想はないでしょうかね」
絹旗「あと超削っていますが、島の頭オカシイ老人に主人公が何度か絡まれるんですよ。『はよ帰れ』とか『サイレンが鳴ったら〜』とかいう感じの」
上条「金田一でありそうな第一村人だよな」
絹旗「なんでそいつは呪いを知ってるのかとか、てかなんでそいつがまず呪われてねぇんだよ、と。本当に超謎ですね――さて!」
絹旗「原作に忠実なホラー映画としては超完全に失敗し、かといってサスペンス映画としても役者選択で超スベったこの映画!」
絹旗「内容が序盤で大体分かる上に、謎は謎のまま消化しきれずに終わるという超不親切設定!心が震えますよねっ!」
鳴護「監督のテンションの上がり方に震えが来ます」
絹旗「『怖いシーンなのに怖くない』、『恐怖よりも笑いが来る』、『てゆうか見ると人生の大事な時間を損する』と超素敵な感想が届いております!」
(※個人の意見です)
上条「監督監督、最後の一つはいつも言ってるよね?自覚はあるんだ?」
絹旗「なおこのサイトの超存在意義も同レベルですが」
上条「ウルセェよ!即座に否定は出来ないし、とっさに擁護もできないけどもウルセェよ!」
-終-
絹旗「えーと、まずこの物語は超フィクションであり現実の映画とは関係ありません。そこそこ手を加えています」
絹旗「仮になにかしらカブっていたとしても、それは”批評のための引用”であり引用法の範囲内であると超予め明言しておきます」
絹旗「と、言いますか気になった方は是非つべや円盤を買って確かめましょう!超確実に『あぁ……大切な87分が失われた』と思うでしょうから!」
絹旗「――では物語を始めましょうか」
――とある島
鳴護「……えっと、謎のプレゼン終わったと思ったら、こんなところにまで連れて来られたんだけど……?」
上条「まぁ気にするな!折角南の島に来たんだから、バカンス気分で行こうじゃないか!」
鳴護「いやそうなんだけど。てかついたばっかりでちょっとアレなんだけどさ、あのジモッティーの人らが」
上条「何?あぁ閉鎖的な感じのアレ?」
垣根A「……余所者だ……」
垣根B「……あぁ誰だろ……」
垣根C「……帰れよ……」
上条「人件費ケチってんじゃねぇよ!?つーか垣根だったら元価格が異常に高いだろうし節約ですらないな!」
鳴護「現地の人をキャストさんで雇えばいいだけだよね?なんでこんなしょーもない無駄遣いを……!」
絹旗「全員浜面にしようか迷ったのですが、ここまで出さなかったんだから、切り札は最期まで超温存しようかと」
上条「おい!俺はいるの知ってんだからな!撮影の合間合間に見切れしたりしてるし!」
鳴護「ただちょっと外見が……うん、繁華街とかにいそうではあるけど、離島にはどうかなー?」
絹旗「では撮影を始めたいと思いますが、お二人は姉弟ですので設定をお忘れずに」
上条「『ARISAが俺の妹』」
鳴護「やらしい円盤にありそうだよね。ていうか絶対にある、聞いたことあるよ」
絹旗「私もありますが超逆です、逆ARISAさんがお姉さんで上条さんが弟役です」
上条「あぁなんか新鮮。『アリサおねーちゃん?』」
鳴護「――監督!あたし監督に一生ついていきます!」
絹旗「あぁすいません上条さん。弟さんは一言も台詞がないんで、超不要です」
(※本当の設定です)
鳴護「やっぱやめます。悪魔なのかな」
上条「俺だってぶっちゃけ恥ずかしいわ。あー、んでこれからの予定は?」
絹旗「島を一通り見て回りつつ、排他的で超気持ち悪い島民を演出するターンですね。まぁそこはお約束で」
上条「気持ち悪い言うなよ」
絹旗「まぁそこは軽く流すとしまして、超右手をご覧ください。あちらにありますのがとある島名物、超鉄塔です」
鳴護「あからさまに不釣り合いで立派な鉄塔なんですけど……」
上条「そうだね!21世紀の建築技術で用意された感じだよね!」
絹旗「あとは近所のガキんちょがこんな歌を歌っていました、こほん――『敬い奉る、尊き鏡の中にこそ真の理現れん』」
絹旗「『鏡を覗きたる狗は神へと転じたり、生者は悪へと転じたり。変わらぬ者こそは果て無き命を授かりし、この世の理越ゆる者』」
鳴護「歌じゃないですよね?なんでそんな超縁起悪いわらべ唄が流行ってんですか?」
上条「なんだろうな……なんかこう違和感があるっていうか」
刀夜「こういうのはね、普通の古語で残ってるんじゃなくて、地方の方言でローカライズされてる場合が多いんだよ」
刀夜「例えば”コトワリ”なんかは場所によって”コターリ”みたいに訛りが入る訳で。それがないから教科書を棒読みしてる感じに聞こえるのかな?」
上条「微妙に最近会ったような気がしないでもないが、なにやってんですかクソ親父」
鳴護「どうも初めましてっ!当麻君にはいっつもお世話になっています鳴護アリサです!」
上条「なんでそんなに緊張してんの?そして親子役なんだからアリサも上条じゃないの?あ、俺が鳴護か」
鳴護「みょ、苗字は院長先生には悪いけどいつか変わるものだと思っています!同じ籍に入るって憧れだよね!」
絹旗「――はいそこ!超ホラー映画撮ってんですからラブコメに超脱線しないでください!真面目にやる気はないんですかっ!?」
上条「二択で言ったらない方だ。二択じゃなくってもないわ」
刀夜「いや元気なお嬢さんで結構だ、ただこれだけは言わせてほしい――」
刀夜「――当麻が欲しいんだったら私の目の黒いうちは許さないからね!?」
上条「父さん気持ち悪い、すっごい気持ち悪いよ父さん」
刀夜「まぁ立ち話もなんだから家へ行こうか?」
鳴護「はいっ!お願いしますっ!」
上条「いいのかな、これ。てか監督、俺らはなんでこの島来たんですか?」
絹旗「病気療養ですね。弟さんの体が超弱い、とお姉さん”は”思っているようですから」
上条「ふーん?」
――家
レッサー「やぁやぁようこそいらっしゃいました!さすらいのモブ隣人ことレッサーちゃんですな!」
刀夜「紹介します。お隣りのレッサー=チャンさんです」
上条「誰も憶えてないだろうけどそのボケは二度目だ。てか隣人?」
鳴護「ま、まぁまぁ!島民初の友好的な人だから!」
レッサー「まぁお座りくださいな。茶でも入れますんで」
鳴護「あぁ大丈夫ですよ!あたじかやりますから!」
レッサー「つっても場所とか分からないでしょう?私が用意しますんで」
刀夜「じゃあ私は何かお茶請けを探してくるかな。確か倉庫にあったような」
上条「俺も手伝うよ」
鳴護「だからあたしも……」
レッサー「――あー、そうそうアリサさん。この島に着いてから随分と驚かれたでしょう?辺鄙と言いますか、風変わりと言ったものか」
鳴護「まぁ余所者ですから、しょうがないんじゃないかと」
レッサー「一応先人からのアドバイスとして『夜は出歩かない』、『近所付き合いはしっかり』、『銛の鉄塔には近づかない』、『サイレンが鳴ったら外に出てはならない』ってのだけは絶対に守ってくださいね?」
鳴護「タイムです、監督。サラッと超ぶっこんできましたよね。ヘビィーな一撃入れてきましたよね」
絹旗「えぇまぁ私も『超スゲーなイギリス人、もっとスムーズな会話できねぇのかよ』と驚きました」
レッサー「いいじゃないですか話が早い方が!?どうせ主旨は一緒でしょう!?」
鳴護「そうかもだけど……夜歩き禁止とご近所大事に、は分かるけど。鉄塔とサイレンはどういう曰くが?」
レッサー「曰くも何も。使ってない鉄塔でいつ崩れるか分かったもんじゃないからですよ。あと防災無線が鳴ったら大人しくしろやと」
鳴護「あ、それなら納得です」
レッサー「あとですね……この島唯一のお医者様がもうすぐいらっしゃ――」
青ピ「――これは大変や!すぐにでも手術せぇへんと!」
青ピ「ボクのハートがARISAで染まってしまう前に……ッ!!!」
鳴護「――ごめんなさい。生理的に吐き気がします」
レッサー「あのアリサさんが毒舌を!?口の悪いウチのメンバーに囲まれながらも最後の良心だったのに!?」
青ピ「ってのはまあ冗談やけど、医師やってますねん。どっか具合悪ぉトコあったらいつでも相談してな?」
鳴護「えっと、あたしじゃなくて当麻君――もとい、弟がですね。ちょっと体が弱くて」
青ピ「……あぁ聞いとぉよ、大変やってんな。都会じゃあ心ないアホもおるよってに、お姉さんとしちゃ苦労してやろ?」
鳴護「あぁいえあたしは全然!大変なのは弟ですから、少しでも良くなればって」
青ピ「……まぁ、大丈夫やと思うよ?この島は辺鄙で偏屈な人間も多いけど、気候だけは悪くないよって」
青ピ「何も今日明日治るなんて考えず、長い目でゆっくり治療しよう、な?」
鳴護「……はい、ありがとうございます」
――数日後
鳴護「あれ――当麻君?当麻君どこー?」
刀夜「どうしたのかなアリサさん?」
鳴護「えっと当麻君がいないんですけど、知りませんか?」
刀夜「……私は見てないね。お腹が空けば戻ってくるんじゃないかな?」
鳴護「そんな無責任な!あたし探してきます!」
刀夜「いや心配要らないよ!」
――廃墟
鳴護「これは――『サイレン』について書かれた手記……ッ!?」
鳴護「……」
鳴護「――すいません監督、タイム二回目の申請をお願いします」
絹旗「認めましょう。私も『超展開が早い上にトンデモじゃねぇか』って思っていたところですから」
(※盛っていません)
鳴護「ありがとう監督。やっぱり監督ですらおかしいって思うんなら、かなりどうかしてるってことですよね」
絹旗「中々超言いますねー。一応これには超伏線がありまして、シーンを削った映画序盤、阿部○が保護されたのがこの廃墟なんですよ」
鳴護「そんな展開が?」
絹旗「今から約30年ほど前、島民全員が失踪した事件がありましてね。その唯一の超生き残りが彼であり――」
絹旗「――保護されたときには『サイレンが鳴ったら外に出てはならない……!』何度も何度も超唱えていた、と」
鳴護「へー、じゃあこれが需要なキーアイテムってことですね!」
絹旗「『残ってるわけねぇよ』と超思わなくもないですが。あと弟さんはあっちにいます」
鳴護「あぁご親切にどうも――当麻君!」
上条「……」
赤い衣を羽織った絹旗「……」
鳴護「当麻君そこどいて!その人が犯人だよ!なんの犯人かは分からないけど!」
赤い衣を羽織った絹旗「すいません。超人手不足で私がやっていますが、『近隣住民の子だな』ぐらいの認識でお願いします」
鳴護「無理だよぉ!?だって上から下まで自己主張が強すぎるんだもん!ラスボスが序盤で勇者の顔見に来たぐらいに存在感があるし!」
――家
鳴護「たっだいまー」
上条「……」
鳴護「ほら、当麻君もただいまって言わないと」
刀夜「あぁお帰りなさいアリサさん。当麻も……一緒、なんだよね」
鳴護「はい、そうなんですよ。当麻君ったらまだ余所で女の子と遊んでて」
刀夜「そう、元気そうならいいんだけど……じゃあちょっと私は出てくるから」
鳴護「出るって……もう夜だけど?」
刀夜「うんちょっと夜景を撮りにね。そんなに遠くまでは行かないから大丈夫だよ」
鳴護「分かりました。上条家の嫁として家は守ります!」
絹旗「はいそこ!余計な台詞を超入れない!私が楽しくなってくるでしょうが!」
……アーーーーーーーーーーーーーァァァァァァ……
刀夜「なんだ……?サイレンが鳴っ――」
――家 翌朝
鳴護「……帰ってこないなぁ」
青ピ「まいど!おはようさん!」
鳴護「先生、おはようございます!あの、刀夜さんが帰ってこないんです!」
青ピ「刀夜さんが?いつから?」
鳴護「昨日の夜からです!そんなに遠くまでは行かないって言ってのに!」
青ピ「そっか……じやあボクは探してくるわ。ARISAはんは家で待っとぉて」
鳴護「そういう訳にも行きません!あたしも一緒に!」
青ピ「いやでもなぁ」
鳴護「家には当麻君もいますし、帰ってくれば分かるでしょうから!」
青ピ「まぁ……しゃーないか。わかった、それじゃ離れたらあかんよ?」
鳴護「はいっ!」
――森
鳴護「って言ってる側から先生がいなくなったよ!?なに!?フリだったのあれ!?」
絹旗「ARISAさん言葉遣いが荒くなってます。超分かりますが」
鳴護「いや人間性が段々荒んでくるっていうか……まぁいいや。一人でも捜せるし」
鳴護「て、ゆうか……建物?コンクリ打ちっ放しの……?なんだろ、初めて見るよね……?」
鳴護「中には謎の祭壇……ッ!?待って!まさかその中央に横たわっているのは――」
刀夜「……」
鳴護「――刀夜さんの、死体……ッ!!!」
鳴護「……」
鳴護「――監督!あたしもう耐えられません!なんなんですかっこの演者の心を丁寧に折りに来る展開の数々は!?」
絹旗「中々のもんでしょう?オチは超もっと酷いんですよ?」 ニヤッ
鳴護「そりゃこれを最期まで演じきればツッコミ力もつこうってもんだけども!その前にあたしの心が折れそうです!」
絹旗「なおこのクソ映画のマジ監督はTric○でお馴染みの○監督です。ファンには是非見て(膝をついて)ほしいですねっ☆」
鳴護「邪悪すぎる……!」
――森
鳴護「こっちです!早く!」
青ピ「ちょ、ちょっと待ちぃな!そんなに速く走ったら体にも障るで!」
鳴護「いやあたしは健康ですよ何言ってんですか!」
青ピ「いやそうやなくって――」
鳴護「ここです!この建物の中に刀夜さんが!」
青ピ「……はぁ。使われてる感じはせえへんけど」
鳴護「……うん?刀夜さんの死体がどこにもない……!?」
青ピ「つーかその祭壇の跡もないでんな。数年分の埃も溜まっとるし」
鳴護「あ、あの!あたし見たんです!」
青ピ「……ARISAはん、あんた疲れてんとちゃうのん?色々あったようだし、島の生活もそんなに早くは慣れへんやろし」
青ピ「それに刀夜はんが大丈夫やったらそっちの方がエエに決まっとぉ。一回戻ってみよ、な?」
鳴護「………………はい」
――家
刀夜「……」
鳴護「刀夜、さん……?良かった!大丈夫だっんたで――」
刀夜「私に近寄らないでくれ!」
鳴護「刀夜さん……?どうしたんですか?怪我してるのに……!」
刀夜「……あぁごめんねアリサさん。これはちょっと転んだだけだから、大したことはないんだよ」
鳴護「……そんな風には見えませんが……」
刀夜「とにかく!私は大丈夫だから、君は自分の心配をしなさい!いいね!?」
鳴護「は、はい……」
――家
鳴護「あれ今度は犬がいない……?探さないと!森へ入ろう!」
鳴護「……」
鳴護「監督ちょっといいですか?この主人公、『森へ入んな』って言われてんのにガンガン入るのって学習能力がないんですか?」
絹旗「えぇまぁ私も超どうかと思うんですが、この映画の(アホ映画として)面白いところですから」
鳴護「てかあたしもそろそろ演じるのが苦痛になってました!薄々オチも読めてきましたし犯人も誰か見当がついてきました!」
絹旗「流石ARISAさん、賢いですね。ちなみに私も劇場で『このまま最期まで見ずに筋トレしようかな?』と超本気で悩み出した時間帯です」
鳴護「や、まぁ探せっていうんだったら探しますけど」
絹旗「で、これが森であなたが超見つける予定のビデオカメラです。お父様の私物ですね」
鳴護「これは……刀夜さんのカメラっ!?」
鳴護「……」
鳴護「……監督?純粋な疑問なんだけど、実の父親が夜中にビデオカメラ持って撮影するっていったら何を撮りに行ったと思います?」
絹旗「十中八九エロ目的でしょうね。というか島に住んでる人間が今更なにを動画に撮るのかと」
鳴護「一応中身確認しますけど……ぴっと」 ピッ
刀夜(動画)『う、うわー!やめろ!何をするんだー!?』
人影(動画)『……』
鳴護「なんて分かりやすい証拠をゲットしました!」
絹旗「えっと……まぁ、ご愁傷さまですと言いますか、なんでやねんと超言いますか」
鳴護「刀夜さんに見せた方がいいですよね、これ?」
絹旗「ですよ。ここは超帰宅するターンです」
――家
鳴護「ただいま帰りましたー!刀夜さんはいますかー?」
上条「……」
鳴護「あ、ただいま当麻君。刀夜さんはいるかな?」
上条「……」 ブンブン
鳴護「いないの?部屋に戻っちゃったのかな……怪我してるのに心配」
鳴護「じゃあ知らない内にかえって来るかもしれないし、カメラを返しておこうか」
――刀夜の自室
鳴護「……失礼しまーす……っていないね当麻君。ホントどこいっちっゃたんだろう。カメラはここに置いてっと」
鳴護「あれ……?これって刀夜さんが調べた資料?」
鳴護「ロアノーク島、マリー・セレスト号に……『サイレン』?――ってこれ!?」
鳴護「赤い衣を纏った人魚セイレーン……ッ!!!?」
鳴護「……」
鳴護「監督、ギブアップするにはどんな手続きを踏めば可能でしょうか?」
絹旗「残念ですがあなたにその権利は超ないんですよ。最期までやりきらないとこの途中下車できませんので!」
鳴護「そんな映画もありませんでしたっけ?暴走する列車止める的な」
絹旗「名作から駄作まで超多いですよ−。それで今度はどんな展開がお気に召しませんでしたか?」
鳴護「さっきの赤い衣を羽織った女の子、というか最愛ちゃんもそうですけど。『そもそも人魚、服着るんかい』ってツッコミが」
絹旗「ここら辺であなた、というか主人公はこの島の人魚伝説を知るわけですが、要点は超簡潔」
・島には人魚伝説があった。元々は病人や年寄りが捨てられる島だったが、人魚は人間を超哀れんだ
・人魚は病人たちへ己の血を分け与え、人間達の病は完治し彼らは人魚を神として崇めた
・しかしその力は人間にとって魅力的であり、人間はこう考えた――『それじゃあ人魚喰えば不老不死になんじゃね?』
・人魚は助けた人間に捕らわれ、食べられたが……大いに人間を憎み、嘆き、絶望を
・するとその呪いは人間達へ超降りかかり、島全ての人間は命を奪われた
・今でもその人魚の呪いは島に残り、赤い服の女性となって彷徨っている?
鳴護「罰当たりと恩知らずのツープラトンがキッツイです」
絹旗「まぁそれは原作というゲームの設定ですから超悪しからず」
……アーーーーーーーーーーーーーァァァァァァ……
鳴護「また――サイレンが!?」
絹旗「……超鳴りましたかね。であれば外へ出てはいけませんよ」
鳴護「はい――でも当麻君が居ない!探しに行かないとっていうかこの主人公さんもうヤダよぉ!なんで学習しないの!?」
鳴護「当麻君も当麻君だし!病気療養って設定なのになんでよく目を離すといなくなるのかな!?アクティブ!」
絹旗「流石に子供を見捨てるのはちょっと……では場面転換で」
――森
赤い布を羽織った絹旗「……」
上条「……」
鳴護「当麻君……?当麻君っ!?どうしたの!?意識がない……っ!」
鳴護「てゆうかあなたは一体なんなの……っ?」
垣根A(ゾンビ風)『おぉおおおおお……』 ヌッ
垣根B(ゾンビ風)『ううぅぅぅぅうう……』 ヌッ
浜面(ゾンビ風)『うおぉぉぉぉぉぉぉ……』 ヌッ
鳴護「なんて、なんて酷い!温存していたスタッフさんをその他大勢で使うだなんて!」
浜面(ゾンビ風)「俺だって驚いたよ!映画の再現V話来たから『あ、俺出られる!』って楽しみにしてたのに、仕事は裏方だけだぜ!」
浜面(ゾンビ風)「でもいざ終わってみれば絹旗なりの優しさだって気づいたよポイズン」
鳴護「ポイズン……?毒?ま、まぁいいや!当麻君逃げよう!」
――家
鳴護「……ふぅ、子供を連れて大の大人数人に囲まれたけど逃げられたね!トップアスリートでも不可能な奇跡を起こしたよ!」
鳴護「刀夜さんは……いないか。なんなんだろ、あのゾンビ風の人たちは……?」
鳴護「顔が真っ白になって、血の涙を流してた……?悲しいのかな?」
鳴護「……?」
鳴護「――この壁は不自然だ!あぁ不自然だね前から思ってたけど!」
鳴護「てゆうか監督この再現Vの脚本が雑すぎますって!もっとこう忠実にやった方がいいんじゃないかな!?」
絹旗「一言一句違えず、かつ正確に超やり過ぎると著作権法違反になりますので。細部やいらんモブは出していません」
絹旗「しかしながら大筋においては超残念なことにほぼ忠実に再現しているという……!」
(※盛っていません)
鳴護「別の意味でホラーです。とてもこわいです」
絹旗「さぁ早く壁を超剥がしてください!ここが真相へ繋がる鍵ですから!」
鳴護「『うん知ってた』ってツッコミが多数入るだけだと思いますが……まぁ、やります」 ベリベリベリベリッ
鳴護「奥には……隠し部屋?数週間住んでのに全然気づかなかったよ!ただの民家にしか見えないのに!」
鳴護「刀夜さんの資料、にして古い感じだけど……なんだろうこれ。あ、写真もある」
レッサー(写真)『……』
青ピ(写真)『……』
浜面(変顔)『……』
鳴護「監督!笑いを入れて来るのやめてくれませんかねぇ!?有吉の○じゃないんですから!気を抜いた瞬間になんて罠仕掛けるんですか!?」
絹旗「たまたま手元の浜面変顔フォルダに超あったもので」
鳴護「監督の愛が重いです。でも全部モノクロ写真なんですね、てかかなーり古い感じで……あれ?」
鳴護「この写真の日付、今から30年ぐらい前の……ッ!?」
鳴護「どうして!?どうしてみんな歳をとってないの!?若い姿のままで!先生やレッサーちゃんも!」
……アーーーーーーーーーーーーーァァァァァァ……
鳴護「――っ!また、サイレンが鳴った……!」
刀夜「……」
鳴護「刀夜さん!あ、あのっこれ!どういうことなんですか!?この写真は!?外に居たゾンビっぽい人たちは!?」
刀夜「……」
鳴護「……刀夜さん――きゃっ!?」 ブウンッ
刀夜「あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
鳴護「あ、危ないですよ刀夜さん!?いや違う、もしかしてサイレンのせい……!?」
刀夜「あ、ぁああぁぁっ!」
鳴護「止めないと!サイレンさえ止めれば、みんなっ元に戻る……!鳴らしているのは――」
鳴護「――森の、鉄塔……ッ!!!」
――森 鉄塔
鳴護「ここか……!このハシゴを登って……!」
レッサー(ゾンビ風)『チチ……!少しえぐる……!』
鳴護「だからアドリブで笑わせに来ないで!主旨が最初っからフワッとしてるけど、これ以上ネタに走ったらギャグ映画になるから!」
絹旗「本物も大量の半屍人モドキが登場するこのシーンは、超爆笑必至でしたけど何か?」
鳴護「感性が特殊な人と一緒にしないで下さい!みんな真っ当に生きてるんですよ!?」
絹旗「超お言葉ですがこの映画並びに先日までやってたサメマラソン、あれら全てはゴミです。えぇそこは超否定出来ませんとも」
絹旗「ですが!こうやって面白おかしく取り上げ、超ネタにすることで興味を持ってくれる人がいると私は確信しています!」
絹旗「このまま映画史の闇に葬り去れるよりは!例えネタ映画だとの烙印を押されても見てくれるお客様がいた方が映画にとって超幸せじゃないですかねっ!?」
鳴護「そ、それを言われると!」
レッサー「で、本音は?」
絹旗「こう言っとけば意識高い系バ×が勝手に意を汲み取って納得してくれるかと」
レッサー「オーケー、極東の島国に住む我が同胞よ!あなたとはいい友人関係を築けそうです!」
絹旗「えぇこちらこそ。スカしたイギリス人は大好きですよ。あ、映画と同じ意味でですが」
鳴護「仲が悪いよね?互いに罵ってるだけだよね?」
絹旗「それよりもサイレンを止めないと!スピーカーを早く破壊しないと下からゾンビが超やってきて×××されますよ!」
鳴護「ジャンル違う。そしてこんなシチュエーションゲームでありそう」
鳴護「まぁいいや。鉄塔のスピーカーを破壊、っていうか下に落せば壊れ」
垣根(スピーカー役)「……」
鳴護「監督の世界観が理解できません!どんな神経してたら人を突き落とせると思ってんですか!?」
絹旗「まぁそれは流石の私でも超ジョークです。隣の箱を落してください」
鳴護「これかな、えいっと」 ガシャーン
鳴護「………………壊した、のにサイレンはまだ鳴ってる!?どうしよう!壊す前に気づきそうなもんだけどどうしよう!?」
絹旗「もう色々と嫌になって台詞改変してきましたね。気持ちは超分かります」
青ピ「――待ぃな!ARISAはん、そこまでや!降りて来ぃ!」
鳴護「先生!?先生は……あぁ良かった!ゾンビみたいになってないんですね!」
青ピ「ゾンビ?君なに言うとるんよ!?」
鳴護「聞いてください先生!サイレンが!サイレンが鳴る度にみんなおかしくなっちゃうんですよ!」
青ピ「…………ARISAはん」
鳴護「刀夜さんやレッサーちゃん!浜なんとかさんとか島の人だって!下にいっぱいいるでしょう!?」
青ピ「……ARISAはん」
鳴護「あの写真はなんだったんですか!?みんな歳をとってない――人魚の血を飲んだからじゃないんですか!?」
青ピ「ARISAはん!」
鳴護「とにかく先生も逃げ」
青ピ「――サイレンは君にしか聞こえてへんのや!」
鳴護「――て……えっ?」
青ピ「この島にある鉄塔は一つ!やけど随分前から壊れて使ってへんのや!」
青ピ「防災用のスピーカーもあるけど、サイレンの音ちゃう!ジリリリ言うベルっぽい音でサイレンやないよ!」
鳴護「え、でも、あたし、えっ?」
上条「……」
鳴護「と、当麻君は?当麻君はずっとあたしと一緒で、一緒に逃げて、サイレンも聞いてる、よ、ね……?」
上条「……」 フッ
鳴護「当麻君!?当麻君が消え、消えて――」
鳴護「……」
鳴護「………………あぁ、そっか。そうだよね、あたしなんで忘れてたんだろ――」
鳴護「――当麻君なんて、最初っからいなかったんだよね」
青ピ「………………そうやでARISAはん。君は事故で亡くなったカミやんのことが大切で……大切すぎて心を壊してしもぉた」
青ピ「やから、刀夜はんと一緒にこの島で療養を」
鳴護「……」
青ピ(ゾンビ風)「――なっ?降りて来ぃや?下にいる人間は、君のこと心配して集まっとぉよ?」
青ピ(ゾンビ風)「だから」
鳴護「……」 スッ
青ピ(ゾンビ風)「ARISAはん……?――あかん!身を乗り出しとぉたら落ち」
鳴護
青ピ(ゾンビ風)「ARISAはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!?」
――島の診療所
鳴護「……」
刀夜「よく、眠ってるね」
青ピ「そうでんなぁ。暴れてたのがウソのような感じで」
刀夜「なにか、異常はないんですよね?」
青ピ「やんなぁ。奇跡的にも大きい怪我はなし……まぁ心配すんのはARISAはんだけやないけど、刀夜さんもやで?」
刀夜「私は……転んですりむいただけだよ。自分で怪我したんだ」
青ピ「……そうでっか……まぁ、他の人間には直接手ぇ出した訳やなし、罪に問われるっちゅーことは避けられるとは思いますけど」
刀夜「……目が覚めたら、どうなるんですか?」
青ピ「カミやんが亡くなった、っちゅーことは理解してたようやし、快方に向う可能性もある、かもしれへん」
青ピ「自覚症状があれば御の字、最悪全部忘れとる可能性もない訳やない」
刀夜「……つまり全然分からないってことですか?」
青ピ「まぁ、こればっかりは」
刀夜「その……アリサさんが言ってた、写真とか手記の話は一体?」
青ピ「あぁ……あんま言う事でも無いけど、この島で神隠しがあったんよ。一人だけを残して、30年ぐらい前やったかな」
青ピ「そいつが『サイレンが鳴ったら外へ出るな』って言ってたんやけども……まぁ調べてみたら、虐殺しよったのがそのアホだった、っちゅーオチですわ」
刀夜「彼も、サイレンを?」
青ピ「今となっては分からんけどな。まぁ終わった話ですわ。関係もないでっしゃろ」
刀夜「ですな……ちょっと顔洗ってきます」
青ピ「あぁ看てますんでご心配なく……しっかしのこのクソ手帳か。これさえなかったら、ARISAはんがおかしくならずに済んだんやろか」
青ピ「『サイレンが鳴ったら外に出るな』、か。まぁ、外に出なきゃ被害は抑えられるけども……うん?」
青ピ「なんやこれ?血でくっついとぉけど、続きがある……?」 ベリベリッ
青ピ「――――――『四回目のサイレンで皆殺し』……?」
……アーーーーーーーーーーーーーァァァァァァ……
鳴護「……」
青ピ「うわビックリした!ARI」
グサッ
――島の高台
赤い服を羽織った鳴護『……敬い奉る、尊き鏡の中にこそ真の理現れん』
赤い服を羽織った鳴護『――鏡を覗きたる狗は神へと転じたり、生者は悪へと転じたり――』
赤い服を羽織った鳴護『――変わらぬ者こそは果て無き命を授かりし、この世の理越ゆる者……』
-完-
――打ち上げ会場
絹旗「――いやー超素晴らしい演技でしたね!流石ですARISAさん、から回りっぷりが板についていました!」
鳴護「監督、何回だって言いますけど悪意があります。てか確認したいんですけど、この映画ってホラーなんですよね?」
絹旗「私としてはサスペンスだと思うんですが、制作側はホラーだと超言い張っています。半屍人モドキも出ていますし」
鳴護「それで、オチとしては頭がちょっとアレだったのは主人公の女の子だけで、事故で死んじゃった弟さんの幻覚を見ていたんですよね?」
絹旗「はい、そうですね。そのご理解が正しいかと」
鳴護「サイレンが聞こえていたのも幻聴で、ゾンビってぽい人になっていたのも幻覚で。てか義父さんを襲撃したのも主人公だと?」
絹旗「あなのた義父かどうかは超知りませんが、そうですよ」
鳴護「――人魚の伏線ってどこいったんですか?あと赤い着物を羽織った女の子、及びあたしがラストで着せられた意味は?」
絹旗「超知りませんが何かっ!」
鳴護「やっぱそうじゃない!?お話の途中から『あれこれ、伏線回収するんだったらそろそろしないと……あれ?』って不安になってんだよ!?」
鳴護「てか主人公どうかしてたのは最初のリアクションで分かってたし!島の人が『うわなんだこいつ誰もいねぇのに会話してるぜ』ってとこで!」
鳴護「あとサイレンの意味ってなんだったんですか!?登場人物もちょくちょく『サイレンが鳴ったら〜』って現代でレッサーちゃんも言ったましたよねぇ!?」
絹旗「あれはあえて描写しなかったんですが、レッサーさんが主人公へ背を向けて話している、という演出がなされており、実は主人公の幻聴だった、と」
鳴護「というか幻聴の割には具体的すぎて引きます」
絹旗「まぁオチとしては『人魚伝説及び原作ゲームの設定ガン無視のクソ映画』でしたね!いやー超いい時間でした!実に無意義な!」
上条「監督、俺の出番がただただ見切れるってだけで辛かったです」
鳴護「当麻君が喋ったら台無しだからね、うんそこは仕方がないんじゃないかな」
上条「でもさ?トータルで見たらそんなに悪くないんじゃないか?俺が再現ビデオ撮った範囲でいえばだけど」
上条「アリサの演技も『後から見れば……』って。原作を無視したのはダメだけど、サスペンス映画としての出来は……サメ映画に比べれば、まだ救いがあるっていうか」
鳴護「当麻君しっかり!あのサメダメ映画を基準にしてる時点でどうかしてるんだよ!一般人とは違うって気づいて!」
絹旗「そうですね、私も同意しなくはないんです。超早足でやってきましたが、シナリオ自体”は”普通ぐらいの出来なんですよ」
絹旗「ついでにいえばオリジナルのカメラワークや絵も、『これTric○じゃね?』って錯覚しそうになるぐらい、超安定しています」
上条「微妙に毒吐いてるが、そうだよな」
絹旗「ただですねー、青ピさんいたでしょう?あの方の演技が超上手い」
上条「……そうか?下手ではなかったけど、そんなにか?」
絹旗「クライマックスのシーン、鉄塔登る主人公と追いかける医者先生がネタバレするところです。そこは超異論は無いと思います」
鳴護「だね。緊迫してたもん」
絹旗「ARISAさんの演技も良かったのですが、青ピさんもネタへ超走る事無く演じきったのが超良かったです。失敗した方が面白くはあったんですが」
上条「だから病んでんだよ君」
絹旗「で、この物語を通して頑張ってる医師の役者、オリジナルでは『田中直○(お笑い芸人)』なんですよねー」
上条「なんっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっでだよ!?ダメだろそれ!そこはお笑い芸人引っ張って来てどうすんだよ!?」
鳴護「あれ……?阿部○さん、出てたよね?普通逆じゃないのかな?」
絹旗「冒頭の数分以後は超出て来ませんが何か?」
上条「だから逆だろ!?普通仕事畑の違うお笑い芸人をピンポイントで使っておいて!阿部○メインで起用しないで何やってんだよ!?」
絹旗「ですから私に言われても超困ります。そのおかけで鉄塔のシーンも『コントか?』と思うぐらいの棒読みと変わらない表情でしたし」
絹旗「しかも主人公が真相に気づいた後、下を振り返ると異形化、というか半屍人化した医者が超見えるのですが……想像してみてください」
絹旗「ココリコ田○が顔を真っ白に塗って、超血の涙を流しながら迫ってくる様を……!!!」
(※イメージ画像)
上条「ギャグだもの。だってもう笑うしかないもの、コントのワンシーンでありそうな流れだもの」
絹旗「あと1000%の自信を持って言いますが、『普通にオリジナル映画を見るよりはこっちのSSの方がまだ緊迫感あった』と思います」
絹旗「クラスマックスのシーンで大分台詞追加してますし、本物はタルいは要らん描写超多いわで地獄です」
絹旗「何度も超いいますが、なんの解説も説明も後出しジャンケンですらもなく、人魚や赤い少女の設定をぶん投げて『完!』となるため、見た人は呆然とする映画です」
鳴護「あ、あの監督?あたしの推測なんですけど、30年前の事件といい、今回の錯乱事件といい、人魚さんの呪いがあったんじゃないですかね?」
鳴護「一応サイレンという共通項もありますし、赤い女の子が見えたのは呪いがかかってる証拠的な?」
絹旗「阿部○のターンでは全く無かったですけどね、それ。そしてサイレンが何度も鳴るのがどうしてキラータイムの超始まりだと。甲子園かよ」
上条「てかサイレン鳴るのが人魚の呪いだとしたら、サイレンが設置された以降に人魚さんの怒りを買ってないと成立しない。時系列的に」
絹旗「そこは原作では震えが来るぐらいの裏設定があり、上手くカバーしています。しかし映画では超無視しているので整合性が全く取れていません」
絹旗「まぁ人魚か呪いだと解釈するとしても、主人公しか見えない筈の弟さんの幻覚と一緒に超遊んだり、『何がしたいの?』以上の感想はないでしょうかね」
絹旗「あと超削っていますが、島の頭オカシイ老人に主人公が何度か絡まれるんですよ。『はよ帰れ』とか『サイレンが鳴ったら〜』とかいう感じの」
上条「金田一でありそうな第一村人だよな」
絹旗「なんでそいつは呪いを知ってるのかとか、てかなんでそいつがまず呪われてねぇんだよ、と。本当に超謎ですね――さて!」
絹旗「原作に忠実なホラー映画としては超完全に失敗し、かといってサスペンス映画としても役者選択で超スベったこの映画!」
絹旗「内容が序盤で大体分かる上に、謎は謎のまま消化しきれずに終わるという超不親切設定!心が震えますよねっ!」
鳴護「監督のテンションの上がり方に震えが来ます」
絹旗「『怖いシーンなのに怖くない』、『恐怖よりも笑いが来る』、『てゆうか見ると人生の大事な時間を損する』と超素敵な感想が届いております!」
(※個人の意見です)
上条「監督監督、最後の一つはいつも言ってるよね?自覚はあるんだ?」
絹旗「なおこのサイトの超存在意義も同レベルですが」
上条「ウルセェよ!即座に否定は出来ないし、とっさに擁護もできないけどもウルセェよ!」
-終-