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Clock(trial)

絹旗「B級映画で世相を超切ります……ッ!」

 
――いつものファミレス

カランコロンッ

店員「いらっしゃいませーお客様。何名様でございますかー?」

フレンダ「麦野たちはまだ来て……ない訳ね。うん、それじゃー四名の禁煙席でヨロー」

店員「かしこまりましたー。一名様とエア友達三名様っ禁煙席へご案内いたしまーす!」

フレンダ「待てコラ!?あんた態度悪くない!?」

店員「いいえ?毎日毎日席を占拠してドリンクバーしか頼まないお客様に比べれば、全然?」

フレンダ「あ、これあたし達が悪いヤツだ!確かに風当りが強くなる訳だけど!」

店員「せめて通りから一番見える席へ座ってくれれば、まだリピーターも増えるというのに……!」

フレンダ「怖くない?それファミレスにあたしら目当てで通うアホが出るって訳よね?」

店員「いいから座れよ。俺だって暇じゃないんだから」

フレンダ「なんだその別れる直前のカノジョが来た的な反応」



――いつのも席

店員「ではお客様、ご注文がお決まりになりましたら、こちらのボタ――」

フレンダ「ドリンクバー一つ」

店員「かしこまりました。他には何か?」

フレンダ「取り敢えずそれでいっかなー」

店員「それではご注文の方繰り返させていただきます。ドリンクバー一つ、ドリンクバーが一つ、ドリンクバーが一つとなりますっ!」

フレンダ「へーもう悪意を隠そうともしない訳だ?よっし戦争よね!」

店員「それではごゆっくり、ちっ」

フレンダ「態度悪い訳!マネージャー呼びなさいよ!クレーム入れるんだから!」

店員「『あいつらいい加減にしてくんねぇかな』が、店側の総意でございます。お客様?」

フレンダ「見てなさいよ!直接的な破壊力はない訳だけど、あたしの友達1000人でSNSに悪口拡散すれば……!」

店員「あぁこちらに1人いますし、残り999人ですね()」

フレンダ「ぶん殴るわよ?今日もまだ来てないだけでいつも3人いる訳だし」

フレンダ「――え、つーか1人?あたしの他には誰もいないし、先帰った訳?」

店員「いえ、先程からこちらに――」

謎の声『――ちゃん、ちゃらーらちゃんちゃんちゃん、ちゃん、ちゃーららちゃん』

フレンダ「どこからともなく物悲しい歌がっ!?」

店員「ナウシ○のアレですよね。オウ○飼ってるのを取り上げられたときと、金色の触手床を歩くシーンで流れるやつ」

フレンダ「触手言うな。まぁその、うんっ、一部の人達には根強い需要がある訳だけども!」

謎の声『ちゃんらんらんらん、ちゃらららん、ちゃんらんらんらん、ちゃらららん」

謎の声『ちゃんらんらんらん、ちゃらっらっらん、ちゃららー』

フレンダ「つーかどっから響いてんの?絹旗よね?こんなしょーもないことするのって絹旗しかいない訳よね?」

店員「金髪ー、下下ー、テーブルの下見ろー」

フレンダ「金髪言うな。した?」 ヒョイッ

絹旗(テーブルの下)「『――その者、青き衣をまといて金色の野に降り立つ』」

絹旗(テーブルの下)「『失われし大地との絆を結び、遂に人々を青き清浄の地に導かん……ッ!!!』」

フレンダ「ユ○さま!?テーブルの下からスタンバってるって世界観おかしくない?」

絹旗(テーブルの下)「夏休みが終わる頃になると超聞こえてくる物悲しい曲……」

絹旗(テーブルの下)「楽しくなかったキャンプ、一人で行った海水浴、休み前と超変ったのは朝から晩まで時間を費やしたソシャゲー……」

フレンダ「出てきなさいよ。テーブルの下にいるとネガティブになるみたいだから、超すみやかに出てくる訳」

絹旗「すいません。超引っ張ってください」

フレンダ「店員、手伝う訳」

店員「店内でかくれんぼはやめてほしいんですが……」

絹旗「いえ、超なんか変な所にハマってしまいまして。ほら早く引っ張り出してください」

フレンダ「なんで超威張ってんる訳?あ、うつった――はい、いち、にーの」

店員「さんっ」 グイッ

絹旗「はい、どうも。あー、超ホコリついちゃってるじゃないですかー。この店ってキチンと掃除してます?」

店員「サーセンねっお客様っ!当店では机の下でナウシ○のテーマ歌う人は想定しておりませんので!」

絹旗「取り敢えずドリンクバーとタオル二つお願いします。片方は軽く湿らせて、もう片方は乾いたままで」

絹旗「超早くしてくださいね−。超ダッシュで取りに行ってください、超ダッシュで」

店員「喜んでこのアマお客様っ!」

フレンダ「や、その……ファイッ!応援してる訳よ!」

絹旗「こんな可愛らしい子の世話をさせてあげるだなんて、超役得ですよね」

フレンダ「うん、引く訳。ちょぉぉっとあんた麦野の悪い影響受けないかなー?よーく考えてみてー?」

フレンダ「というか絹旗さん何やってる訳ですか」

絹旗「いえ、当初の予定ではフードをすっぽり被って、オウ○の怒りを超表現するつもりだったんですが」

フレンダ「ごめん。説明聞かせられても全然分からないわ」

絹旗「夏休みが超終わりますよ。分かるでしょう?」

フレンダ「えっと……うん、ジブ○をテレビで流れるのはオヤクソクな訳だけど……」

絹旗「映画……つまり!超B級映画の季節だと!」

フレンダ「ホンッッッッッッッッッッットに大丈夫?暑さで頭茹だってる訳か?あ?」

絹旗「超何言ってんですかっ!?夏休みと言えばジブ○!ジブ○といえば映画!」

絹旗「映画といえばゲド戦○(監督;宮崎吾朗)!ゲド戦○(監督;宮崎吾朗)といえばB級映画に決まってるでしょうっ!?」

フレンダ「悪意がある訳。ピー入れてるのになんで監督の名前は言い切ったの?絹旗的にもダメな案件だったの?」

絹旗「あぁフレンダ、いけませんよ、超いけませんね。もっと人を信じる心も大切ですってば」 ポン

フレンダ「肩に手を置かないで。てかあたしのスタイル的に良心をへし折るのがお仕事であってね」

絹旗「いえいえ、あのですね。私たちは期待しているのですよ。映画に携わる者として、今後とも活躍していってほしいと!」

フレンダ「へー、そうなんだー」

絹旗「超疑ってますね」

フレンダ「やー……まぁ百歩譲って信じる訳だけどさ。その”期待”してる人ら、つーかあんたが私”たち”って呼んでるのはどういう人ら?」

絹旗「B級映画ファン友ですけど?」

フレンダ「やっぱりじゃない!B級映画マニアとして期待するってのは、作品としては失敗するって意味な訳でしょーが!」

絹旗「素材、スタッフ、制作期間に資金とスポンサー……全ての条件が揃っているのに生まれ落ちる超クソ映画!それを楽しまずにして何を楽しめっていうんですかっ!?」

フレンダ「アレよね。気持ち悪い爬虫類飼ってるOL的な生き方な訳よね」

絹旗「原作者ご本人から『私の本じゃない。ゴローの映画だ』って超批判される逸材ですよっ!?ここで捨ててしまうだなんて勿体ない!」

フレンダ「キヌハター、あなた疲れてる訳よ。麦野にはあたしからお願いするから、一週間ぐらい夏休み取ったらよくない?」

絹旗「――はい、って訳でですね!珠玉のB級映画をお届けする訳ですがっ!」

フレンダ「あたしの意志は?もうあんたの映画四方山聞くと時間が勿体ない訳よ!どうせしょーもない話なんだろうし!」

絹旗「今日は超大丈夫です!世相的に切るのが目的なので一本だけです!」

フレンダ「世相ってあんたまた誰に喧嘩売る訳?」

絹旗「2ヘッドシャークシリーズ超最新作の5ヘッドシャークの話は後日に回しますから!今が旬なんで!」

フレンダ「うわぁそっちの方が断然興味ある!シリーズ作なんだから間にも何本かあるって訳でしょ!?」

絹旗「えぇそっちは近日中に超上映会をするとしまして、今回はビッグウェーブに乗っとけみたいな感じなんで、ちゃっちゃとしたいと思います」

フレンダ「いや別に見たくはない訳なのね?あたしの90分をドブへ捨てる気もないし、時間、大切な訳よ」

絹旗「あー、じゃあこうましょう?5ヘッドシャークのオチは今から超言いますんで、後から鑑賞会をするってことで」

フレンダ「悪魔っ!?ただでさえ大して興味無かった映画なのにオチバラされたら存在価値が無い訳よ!」

絹旗「オチを言われたくなかったら……分かってますよ、ねっ?」

フレンダ「くっ!卑怯よ!都合が悪くなったら暴力か暴挙に訴えるなんて!」

絹旗「やったもん価値なので、割と今が超旬のネタなんですよ。何度も言いますけど、今を逃したらちょっとアレな感じで」

フレンダ「……B級映画に旬ってあんの?」

絹旗「大体三回の旬があるとファンの間では超言われてますね」

フレンダ「へー。また特定なアレのファンだけと思う訳」

絹旗「まずは公開直後。アレな映画で口コミやネットで超炎上する!これが旬です!」

絹旗「次に炎上後!ちょっとカルトな人気が出始めたのに、新しい話題に埋没して超忘れられる!これが二度目の旬ですよ!」

フレンダ「そのファンの人たちと付き合うのやめる訳。教育に悪いったらありゃしない」

絹旗「そして最後の旬は何年も過ぎた後ですよ!『今でこそこの俳優○○で活躍してるけどさぁ、実はこんな映画に〜』ってリバイバル炎上!超オイシイですよ!」

フレンダ「『暗部』の闇を見過ぎるとこうなる訳かー。あたしも気をつけないとなー」

絹旗「今回の炎上はレアケースの三番目なんですよっ!?今見ないと超後悔しますからっ!」

フレンダ「ちょっと意味が分からない訳ですよね。屍体蹴りしようとしてんのだけは分かる」

絹旗「――さて!今回超ご紹介するのは『サラ、いつわりの祈り』です!」

フレンダ「なんかフワッとしたタイトルよね。フランス映画?」

絹旗「いいえ、2004年のアメリカ映画で原題は『The Heart Is Deceitful Above All Things』」

フレンダ「『心は何よりもうそつきです』?サラ関係ないな!」

絹旗「いえ、これはシリーズものになっていまして。同作者の随筆第一作が『Sarah』で、映画化されたのが二作目ですね」

フレンダ「なんかまた、あんた好みの不思議な構成よね。普通は一作目からって訳だし」

絹旗「まぁ私も流石に原作を読んではいないので、どちらがどうとは超批評できないのですが」

絹旗「原作一・二巻の発売年が1999年だったので、内容は一作を多少手直ししたんじゃないかなと」

フレンダ「……で、これがヒッドい映画だった訳?」

絹旗「内容は麻薬中毒の娼婦サラが主役で、そしてその客に虐待されているジェルマイア少年の物語ですね」

フレンダ「うっわ欝っぽい」

絹旗「実際の中身も超欝です。母親のたどり着いた境地が『息子に客取らせればよくね!?』ですからね」

フレンダ「超ムカツク訳だなそのババア――ってそれだけじゃタダの欝映画じゃないの?演技が超ヘタとか?」

絹旗「監督・脚本・主演をアーシア・アルジェントさんという方がされまして、映画としてのクオリティは超そこそこです」

フレンダ「いやだから、あんたも”超”と”そこそこ”を連結させるのやめなさいって……」

フレンダ「今までの話を総合しても、なんか社会派のドキュメント映画ってぽくない?啓発系のアレな団体が好きそうな?」

絹旗「ドキュメント映画っ”ぽい”というのは間違いですね。これ一応ノンフィクションですので」

フレンダ「更に後味悪っ!?サラさんが書いたって訳かこれ!?」

絹旗「ではなく息子さんの方ですね。めでたく男娼デビューしたジェルマイア君が大きくなって作家デビュー……!」

フレンダ「やめなさい。超やめなさいよ、茶化していい話と悪い話があるって訳だから!」

絹旗「えぇまぁ私も流石にこれがガチだったら超同意なんですが、違うんですよ」

フレンダ「違うって、何がよ?」

絹旗「おかしいと思いませんでしたか、フレンダ?お話的には超よくある悲劇で流行りそうな感じなのに、日本では誰も知らないって」

フレンダ「今から13年以上の前の映画でしょ?あたしらリアルで知らない訳だし」

絹旗「同年公開の映画はポッターのアズカバン、ラストサムライ、日本じゃ今会いに行きます、ですかね」

フレンダ「その面子だったら話題にならないのも分かる、かも?」

絹旗「まぁ原作が超嘘でしたからね。映画も批評するとかしないとか、以前の問題でしたから」

フレンダ「そっかー、嘘だったのかー、じゃーしょうがない訳よねー――」

フレンダ「――ってえぇ”嘘”っ!?どっから!?」

絹旗「同映画の原作者はJ.T.リロイさんという超男性です」

フレンダ「超男性って……」

絹旗「作中、サラという母親に虐待されていた少年が成長し、その体験を基にノンフィクションを超書いたんですよ」

絹旗「それを映画にしたのが『サラ、いつわりの祈り』ですよね?」

フレンダ「い、嫌な予感しかしない訳よっ!」

絹旗「リロイさんはですね、麻薬中毒で同性愛者でHIVキャリアでホームレスの男娼というですね、非常に属性超マシマシな方でした」

フレンダ「ごめん。その過剰すぎる属性盛りでオチが読めた訳」

絹旗「一躍本が売れた後も、彼は超ひっじょーにシャイな方らしく、公式な場にはウィッグにグラサン装備とアレな格好で登場してたんですが」

絹旗「それはそれで”受け”てしまい、マドンナ、ウイノナ・ライダーや前述の女優兼監督のアーシアさん達と超仲良くなりました」

フレンダ「キッツイ訳よね!オチが分かってる分だけ!」

絹旗「まあフレンダのご想像のとーり、”全部”嘘でした、ちゃんちゃん」

フレンダ「サラ、さんは……?」

絹旗「いませんよ。超フィクションです」

フレンダ「虐待されてた子はっ?」

絹旗「いませんいません。そんな子は作者の想像の産物でした」

フレンダ「それは個人的には救いな訳だけど……なんか、うーん?引っかかる訳よね」

絹旗「ほう。何がですか?」

フレンダ「『これはフィクションですが何か!?』って、リロイさん?作者の人もさぁ、売れるだけの文章力あるんだったら」

絹旗「あぁその人も超フィクションですね。リロイなんて人はいませんでした」

フレンダ「――へ?」

絹旗「ですから”リロイという人物そのものがいなかった”んですよ」

フレンダ「なんそれ超怖い!オカルト的な話な訳っ!?」

絹旗「ではないですね。架空のキャラを別の作家さんが演じてただけです」

フレンダ「あ、あぁそういうのね!それだったらまぁ、ある、かな?」

絹旗「なお同原作はリロイさんが18歳(当時)のときに書いた、という触れ込みだったんですが――」

絹旗「――身バレするとローラ=アルバートさん34歳(当時)が超書かれたって」

フレンダ「ちがっっっっっっっっっっっ!?年齢は今更だけど性別すら違う訳かっ!?」

フレンダ「てかいい歳な訳だな35歳!小説家としちゃそこそこのキャリアだと思う訳だけど!」

絹旗「いえ、ローラさんはその時が初の単行本らしく、それまでは男性のゲイ小説を専門にされていた方だそうです」

フレンダ「プロかっ!ある意味、なんかこうお姉様的な人が拗らせた方な訳よねっ!」

フレンダ「っていうかローラさんもアレだけど!それ以上に出版社がおかしい訳よ!そんな設定持ってんだったら疑えよ!」

絹旗「どこかの国では『イギリスならジンだな。イギリスジン』という、顔やイデオロギーで賞取るらしいですからね。何ともそれは」

フレンダ「いやぁ、流石に重いわよ!B級映画かと思ってたら、スッゴイフックがとんできた訳!」

絹旗「ちなみに『リロイさんおかしくね?』の報道が始まったのが2005年で、超身バレしたのが2006年の一月ですね」

フレンダ「転落の仕方が切ない訳よね……」

絹旗「ですので!この映画の面白いところは!監督兼主演女優が原作と原作者に惚れ込み!映画の権利を勝ち取って超演じ!」

絹旗「その僅か一年後には『嘘でしたテテペロ』と急展開を見せた所にあると言っても超過言ではないでしょうっ!」

絹旗「サラが息子を虐待する鬼気迫るシーンも!年老いて醜くなりこの先真っ暗だと絶望するシーンも!」

絹旗「その全てが『いやあなた騙されてんですよ、サラさんもマイアくんもいないんですよ?』って思いながら見ると楽しさ倍増!悲しさ激減!」

フレンダ「ねぇ絹旗。やっぱあんた疲れてると思う訳よ、うん、一回その、カウンセリング受け……」

フレンダ「……あれ?この映画って2004年のよね?今から13年ぐらいの話な訳でしょ?」

絹旗「超ですね」

フレンダ「だから”そうですね”みたいなのは……いやいや、なんで今?今になってわざわざあたし捕まえて力説すんの?」

絹旗「ここ二年ばかり、政治ニュースを騒がせてる『#metoo』運動は知ってます?流石に知らないなんてないですよね?」

フレンダ「あーうん。『今更かよ』ってあたしは思う訳だけど、そんときに豚ボコっとけよって」

絹旗「まぁそこはそれ狭い世界ですからね。是非は超横へ置くとしまして、ハリウッドで同運動の先鋒に立っていた方がいるんですよ」

絹旗「二度目ですが、アーシア・アルジェントさんですね」

フレンダ「あ、アホノンフィクションを撮った人!」

絹旗「本業は女優ですがね」

フレンダ「そっかー、13年前に監督やれるんだから、今じゃハリウッドに影響力のある女優さんって訳かー」

フレンダ「だからセクハラ・パワハラ問題も率先して……」

絹旗「どうました?」

フレンダ「やー、あのね?あたしってあんま映画詳しくない訳よ。あんたに比べればね」

絹旗「そりゃそうでしょう」

フレンダ「でもね。付き合いや遊びに言ったりしたときなんかや、オンラインのアーカイブでそこそこ見る訳。まぁあんたの影響な訳だけど」

絹旗「それもどうも。B級映画を超普及させてきた甲斐があるってもんです」

フレンダ「違う違う。怖いもの見たさのB級映画違う――って、だから、その、結局の話」

フレンダ「あたし、アーシアさんなんて女優知らない……うん、知らない訳よ。悪いけど」

フレンダ「だから、ね?代表作は?アーシアさん主演したのとか、あたしでも知ってるような、のは?」

絹旗「……」

フレンダ「き、絹旗?」

絹旗「トリプルXのイレーナ、ヒロイン役ですね。分かります?」

フレンダ「いやぁ……見た、けど、憶えては。ちょっとない、訳」

フレンダ「あの映画、『全体的にアクション凄いけど特にこれといった内容はない』って感想がね、うん

絹旗「アーシアさん主演じゃ『トラウマ/鮮血の叫び』、『オペラ座の怪人』、『サスペリア・テルザ 最後の魔女』なんかがありますね」

フレンダ「あ、やってる訳じゃない!あー、ビックリした。てっきりあたしも微妙な女優なのかと」

絹旗「以上、主演四作品の監督が”ダリオ=アルジェント”さんです」

フレンダ「ダリオさん?有名な人な訳?」

絹旗「はい、イタリア映画界の超巨匠であり、ジョージ=A=ロメロ監督と並び立つほどに」

絹旗「代表作は『サスペリア』って、知ってます?」

フレンダ「あー、なんか有名よね!寄宿舎で起きるホラー映画だっけ?」

絹旗「えぇまぁあと、映画ファンでは知られているんですが、娘さんを溺愛するダメ監督でも超有名ですよ」

フレンダ「あ、いいじゃない。そういう通っぽい裏話、人間の癖が出るって言うかさ」

フレンダ「でも娘さんって娘さんよね?溺愛するって、どんな風に?『お嫁になんかやらないぞー!』的な?」

絹旗「あー……監督の娘さん、ご結婚なさっていますし、まぁそっちじゃないんですよ。それだったらまだマシで」

フレンダ「んじゃ何よ」

絹旗「……自分の監督する作品で、娘さんをキャストで使ってみたり、ですね……」

フレンダ「へー、そりゃ確かに親バカよねー……へー……?」

絹旗「あぁやっと気づきましたか」

フレンダ「えっと、娘さんのお名前は?なんていう、人?」

絹旗「アーシア=アルジェントさんです。女優をしたり監督したりしてますね」

フレンダ「同一人物かっ!?アホに騙されて映画作った人と!父親の作品の主演四本やってる人がっ!?てか公私混同も甚だしい訳よっ!」

絹旗「なお彼女と父親の名誉のために超断っておきますが、演技自体はかなりまともです。えぇ発音知らないので、まぁ多分ですが」

絹旗「決して、日本で例えるならば、お父様そっくりの愛嬌のある顔立ちと富士の風穴を彷彿とさせる個性的な鼻筋で一躍人気になり」

絹旗「フリーアナウンサーになってからは親の資産を食い潰しつつお父様と一緒にバーターで出演されることで好感度を下げるお仕事をされているあの女性とは格が違います」

フレンダ「誰?桃太郎?」

絹旗「ただ美人……と言っても差し支えないですけど、ハリウッドの常軌を逸したレベルでもなく、演技自体もまぁはいそれなりに」

絹旗「イタリアを代表する一人の役者、ではあるんですが、ハリウッドとしては少し……なんですよ」

フレンダ「そのクソ親父の過干渉がアーシアさんのキャリアを駄目にしてるような気がする訳」

絹旗「ちなみに主演以外でも超出ています。死霊に立ち向かう神父さんが主役だったら、一緒に行動する子供とか」

フレンダ「何よその嫌なバーターは。つーかそんな人がセクハラされてた訳?親から溺愛されて、映画にも出してもらえんのに?」

絹旗「っていう意見が実際に多かったんですよ。ダリオ監督も老いては微妙な作品ばっか撮ってますけど、巨匠なのは間違いないですからね」

絹旗「その娘にってのも考えにくいですし、言い方は超悪いですけどカネもコネもない女の子は他にもたくさん居ますから」

フレンダ「まぁ……セクハラってのはそこら辺の正気が残ってないのかも、よね」

絹旗「誰が被害者でも等しく加害者は超クソですからね――さて、今までのが前置きなんですが」

フレンダ「が?」

絹旗「つい先週、超新たな#metooの告発がされたんですよ。嘆かわしいことですが」

フレンダ「そうよね。社会的に抹殺する訳」

絹旗「被害者の名前は伏せますが、仮にマイア君としましょうか」

フレンダ「やめなさいよ。それって例の映画の少年、よ、ね……」

絹旗「言ったでしょう、フレンダ。これがB級映画の話だって」

フレンダ「い、いや待ってよ!映画の話は身バレで一回オチてる訳!終わりじゃないのっ!?」

絹旗「ですから三番目の旬、リバイバル炎上だと言いましたよね?」

フレンダ「って、ことは……?」

絹旗「加害者はアーシア=アルジェントさん37歳(当時)、彼女が少年17歳(当時)を#metooしちゃいましたテヘペロ」

フレンダ「何やってんのおぉぉぉぉぉぉぉっ!?何やってんのよアーシアっ!?37歳(当時)が17歳って色々おかしいでしょうっ!?」

絹旗「『#metooをエロい意味で使うな!』ってツッコミが来ないので超寂しいですが、まぁ確定だそうですよ。数千万円払って口止めしてましたから」

フレンダ「20歳……あぁいや年の差は関係無い訳か。まず同意じゃないんだから」

絹旗「なおマイア君が告発に至った経緯が『お前加害者なのになに#metooとかしてんの?バカなの?』です」

フレンダ「あっちゃー……アイタタタ……」

絹旗「超繰り返しますけど、私は”映画”の話をしていますよね。従ってオチもまた映画へ持っていくのが自然でしょうか」

絹旗「このマイア君、昔から子役としても有名な方でデビュー作がエディ=マーフィの作品てでした」

フレンダ「それは、うん。良かった、の、かな?」

絹旗「その演技は素晴らしく、なんと映画二作目ではほぼ主演に近い大事な役を超与えられたんですねー」

絹旗「――そう、麻薬中毒の母親に虐待され、男娼になる少年役、ですか」

フレンダ「あー……『サラ、いつわりの祈り』の少年の役って訳か……」

絹旗「アーシアさん、8歳の頃から付き合いのある子供を、ってことですね。流石監督・脚本・主演をこなす方ですね?」

フレンダ「えぇと、冤罪って可能性はない訳?アーシアさんからしてもなんかの言い分はあると思うし」

絹旗「#metoo運動自体、『疑惑や告発だけで何十年前のセクハラ・パラハラの罪を問われ問答無用で公職追放』でしたんで」

絹旗「魔女裁判と称して火を付けていたら、今度は自分の足下に超着火してたってだけですよね」

フレンダ「他人を一方的に裁いてきたんだから、自分も同じようにされるって訳か。切ない訳よ」

絹旗「――さて、そろそろシメに入りたいと思うんですが、同映画でサラを演じていたアーシアさんは実生活だと”模範的”な方でした」

絹旗「#metoo運動を率先し、かつ他人の嫌がることをしない――というのは、大嘘で。実際には彼女の嫌うセクハラ野郎と超変らない訳でしたよ」

フレンダ「なんか……邦題の『いつわりの祈り』ってタイトルもそうだけど、原題の『心は何よりもうそつきです』ってのが、今にしてみれば意味深な訳よね」

絹旗「”heart”は心って意味だけではなく、滝壺さんに聞いたら『熱意・関心』って意味もあるそうです」

フレンダ「……なんだろ、この映画。役の被害者と加害者がそのままリアルに持ち込むって、どうなの?」

絹旗「これから地上波でも劇場でも放送されなくなりますからね。超カルト映画になってしまいますか」

フレンダ「もうB級と違う訳よねっ!ただの放送事故的な!」

絹旗「――と、世相的な意味でも世界を先取りしているB級映画の世界は奥が深いと言わざるを得ません!」

フレンダ「偶然偶然。てかアーシアさんがアフォだった訳だし」

絹旗「そんな方が監督・脚本・主演をしている映画、『サラ、いつわりの祈り』も多分見られなくなりますよ!ファンの方は借りてみてくださいねっ!」

フレンダ「そこで『買えよ』って言わないところが、B級映画マニアの優しいところって訳?アピールしてんの?」

フレンダ「違う訳よね?本当に優しかったら最初からまともな映画オススメする訳よね?」

絹旗「――ねぇ、フレンダ」 ポンッ

フレンダ「だから肩に手置かないで」

絹旗「水ばかり飲んでいないで、たまにはお金出してでもカレーや焼肉食べたくなりませんか?」

フレンダ「カレーと焼肉だったらね!誰も知らないようなマニア受けだけのワラスボとか用意されても、その、困る訳なのよっ!」

絹旗「それでは次回、5ヘッドシャーク編で!」

フレンダ「もう帰る訳」



※後日追記

――

絹旗「っていう超ネタ話をフレンダにしたんですよ」

滝壺「うん……」

絹旗「しかしその数日後に『証拠写真』の一部を少年側が公開しまして。その画像見たらヤロー側も『まぁこれはこれで』的な、超まんざらでもねぇかと」

滝壺「むずかしいよね……自由恋愛は自由恋愛だけど」

絹旗「まぁこのお話が仮に男女入れ替えたら『37歳オッサンが元子役17jkにアイタタタ』なので、超問題になると思いますが」

滝壺「せいべつ関わらずにダメはダメ、なのに女性だったら許されるのもだぶすた……」

絹旗「ですよね」

滝壺「教訓としてはおねショタは二次元だけに留めとけ、かな……?」

絹旗「間違ってはいませんが、根本的に超間違っています」


−終−

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