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Clock(trial)

佐天「『第一回!チキチキ怖い話・素人さんいらっしゃい大会!』」

 
――オーピット・ポータル芸能事務所

鳴護「アイドル辞めます。また路上の弾き語りからリスタートしたいと思います」

マネージャー「おっとARISAさんナイス・ジョークですね。今日がエイプリルフールじゃなければ信じていましたよHAHAHA!!!」

鳴護「四ヶ月前ですよ?せめて一月ぐらいだったらまだしも、一四半期跨いでとぼけるのは無理あるんじゃないですかね?」

マネージャー「そうでしょうか?ではまずエイプリルフールの定義から詰めていきましょうか」

鳴護「しませんよ?だからそうやって人を煙に巻こうとするのはどうか思うんですよ!」

マネージャー「また人聞きの悪い事を。前回は上条さんも合流しましたでしょう?」

鳴護「夜中にモブ役で参加したらレッサーちゃんに頭かち割られそうになったのは、ちょっと笑えないと思うんですよ。いくら当麻君だっていっても」

マネージャー「でも他の皆さんと野外で遊ぶのは楽しかったですよね?」

鳴護「えぇまぁそれはそうなんですけど……ちょっと悩みがありまして」

マネージャー「なんでしょう?事務所でお力になれる話であれば」

鳴護「他の女の子達と遊んでてふと思い出すんですよ――あぁこれ絹旗監督のドッキリじゃないよねって」

マネージャー「あぁ、監督好きそうですよね。『と、超見せかけて!』的なフェイントを」

鳴護「しかも前回のは廃校で合宿というシチュですし、大掛かりなロケが裏で進行してるんじゃないかと少々人間不信になりまして……」

マネージャー「いやいやARISAさん。また監督の付き合いが短いだけであって、彼女をよく理解されていませんよ」

鳴護「ただのマネージャーさんが何を語っているんですか」

マネージャー「事務所が外付け保安部だった頃に何度か接敵しておりまして、ウチの人間が何人か再起不能にされています」

鳴護「ブラックですよね?」

マネージャー「それがそうでもなく、えぇとまだ命を取られなかった分だけマシだという……」

鳴護「もう形容できないぐらい命が安い職場ですよね?」

マネージャー「『絹旗ちゃん最高マシ天使!』という派閥が」

鳴護「方向性変っていません?そんな楽しい人たちばかりでしたっけ?」

マネージャー「そんなこんなありまして、以前から多少面識はあったのですが……もしも監督がドッキリを仕掛けるのであれば」

鳴護「あ、あれば?」

マネージャー「遊園地の園内放送をジャックし、『アクティビティの意味も分からず超使っている皆さんにお知らせがあります!現在この施設は我らがクルーによって行動が記録されています!』」

マネージャー「『今からドッキリを超仕掛けます!皆さん事前にお知らせしているのですから、超ナイスなリアクションお願いします!できて当然ですよね!』と」

鳴護「言いそう」

マネージャー「そして本当はドッキリは一つも仕掛けておらず、お客が疑心暗鬼になっている姿を見て楽しむ監督……ッ!」

鳴護「やりそうだよねっ!でもあたしもちょっと見たいけど!」

マネージャー「と、それはさておき今回のお仕事なんですが」

鳴護「待ってください。流されませんよ?さておくような状況じゃないですからね?まずあたしのPTSDをなんとかしてもらえませんか?」

マネージャー「そんなARISAさんに朗報です――今度は絹旗監督関係ありません!」

鳴護「フェイクですよね?なんだかんだ言って呼ばれません?」

マネージャー「タレントさんの信頼度の低さに正直驚いているのですが……えぇと今回は持ち込みの企画らしいです。学園内ケーブルテレビ666の」

鳴護「獣の数字!?……あぁでもチャンネル数はたくさんありますよね。インディースのときに音楽番組に出させて貰いましたけど」

鳴護「あ!じゃあそちらの方からオファーを?」

マネージャー「いえ、ティーン向け情報?オカルト専門チャンネルです」

鳴護「急ですよね!?そっち系のお仕事が皆無なのに!?」

マネージャー「ダメホラー映画を撮ったのでその影響かな、とは思ったんですが。先様のお話を伺いましたら縁故枠だそうです」

鳴護「……はい?誰とですか?」

マネージャー「ご存じでない?佐天涙子さんと仰る中学生の方がパーソナリティをやってる情報番組だそうです」

鳴護「あー……なんかオカルトの体裁なのにオカルト要素が皆無っていう、あの」

マネージャー「初回放送が『これといって大した謂れもない自販機相手に30分絡むだけ』という激しくリーズナブルなあれです」

鳴護「今にして思えば迷惑系チューバ○の走りといえなくもないかなー……」

マネージャー「どうされますか?お断りしましょうか?」

鳴護「ってうのも嫌ですよねぇ。分かりました、お受けしたいと思います」

マネージャー「承りました。では先様と連絡を取り次第、収録の段取りを付けたいと思います」

鳴護「いや違いますよね?まずどんな収録かを説明してもらいませんと」

マネージャー「『誰にも出来る簡単なお仕事です』と仰っていましたよ?」

鳴護「それ誰にも出来ないやつですよね?もしくは”理論上は”ってつくやつです」

マネージャー「……いいですか、ARISAさん。この季節にあの方がメンバーで、と来たらもう何をするか分かってますよね?」

鳴護「ま、まぁ」

マネージャー「8割で水着回、残りの2割が都市伝説です」

鳴護「ペース配分間違えてません?そこまで肌色の比率って高くて大丈夫なんですか?コンプラ的にもどうかなー」

マネージャー「ではお伺いしますが、肌色の円盤と心霊の円盤のどちらの売り上げが大きいのかお分かりで?」

鳴護「それどっちが上でもダメなやつですよね?肌色だったら『まぁ癖(へき)に忠実でいいよね』となりますし、心霊でも『それはそれで病んでるよね』ってなりますし」

マネージャー「……いえ、これでも何回かダメ出しをしたんですよ?ARISAさんにこれ以上ドブさらいのようなお仕事をさせたくないので」

鳴護「自覚はあったんですね?シンガーソングライターで入社した人間をアイドルからグラドルまで属性てんこ盛りで売ってた自覚が?」

マネージャー「最初のタイトルが『どうせだったら水着で怪談語れば一石二鳥やばくない!?』ですから」

鳴護「主旨がズレるよ!?怖いのが見たい人と欲望に忠実な人のどっちへ対しても不誠実かな!」

マネージャー「ですので、まぁ怪談っぽい企画だけであればと」

鳴護「一応仕事は選んでるんですね……え!?ってゆうことは絹旗監督の持ち込み企画はもっとヤバいんですか!?」

マネージャー「『エイリア○映画マラソン』と『原作××プ映画マラソン』はこちらで食い止めています!ただいつまでもつか!」

鳴護「どっちも嫌です。そして映画は好きですけどカルト映画は別に好きでも何でもないんですよ!?ただ関わった時間が勿体なく思えますし!」

PiPiPiPi、PiPiPiPi……

マネージャー「ちょっと失礼しますね。仕事のメールが、えぇと――『その人生の無駄な時間を少しでも取り戻すのも超必要です』」

鳴護「監視されてる!?あたしの被害妄想じゃなく最愛ちゃんスタンバってるの!?」

マネージャー「『あえて!そう超あえて他人を巻き込むことで無駄時間をシェアしようと!』」

鳴護「発想が邪悪。自分の身に起ったヘイトを他人へバラまこうとしてるなんて……!」

マネージャー「『次は珠玉のピラニア映画マラソン!超意外とそこそこあるピラニアがあなたを襲います!』」

マネージャー「『最近のオススメは戦艦サイズになったピラニアが特に意味もなく暴れ――』」
(※実在します)

鳴護 ピッ

マネージャー「――と、いう訳ですので絹旗監督は今回もノータッチです」

鳴護「今の謎通話が怖いです。仮に100歩譲ったとしても恐怖新○」

マネージャー「このお仕事は友情出演みたいなものですし、それほど難しく考えなくてもいいと思いますが」

鳴護「えー……でもお呼ばれするってことは怪談話を話さなきゃ、ですよね?」

マネージャー「いえ、ARISAさんはバラエティにありがちな、いてもいなくてもいい審査的なリアクション要員ですから」

鳴護「言い方悪いよ!?まぁたまに『芸歴10数年の人をジャンル違いのアイドルが批評してるんだろう?』って思うけども!」

マネージャー「では『99人の○』で見切れるサービスカット要員の方?」

鳴護「あの人も気になるけど!『なんで最前列は見た目が良い人ばっかり揃えてるんだろ?』って思うけどね!」

マネージャー「まぁそんなわけですからお気軽にどうぞ」

鳴護「あの……せめて話を振られたときのために、話のストックの一つでもあった方が」

マネージャー「ご実家でそういうお話はなかったのですか?」

鳴護「あー……院長先生があまりお好きじゃなかったんで、そういうのはなかったですね」

マネージャー「あぁでは自分が以前いたユーゴスラビアでのお話でも」

鳴護「放送できませんよそれ!?どうせまた少年兵がってブラック過ぎる話なんですよね!?」



――とある撮影スタジオ

佐天「『第一回!チキチキ怖い話・素人さんいらっしゃい大会!』」

鳴護「タイトルがまず分からない。怖い話に素人もプロもあるの?」

佐天「え!?打ち合わせのときに言ってよ!?」

鳴護「いや打ち合わせしなかったでしょ!?スタジオ入った瞬間にピンマイ付けられて、『じゃあ3・2・1……』って始まったんだし!?」

鳴護「もっとはっきり言えば控え室に入ったのも5分ぐらいしか経ってない!展開が急すぎるんじゃないかなっ!」

佐天「まぁ時短ですね。スタジオは局のとはいえ、押したらこのあとの収録で『おはよう学園都市』さんへ迷惑をかけることに」

鳴護「怪談番組の後がそれ!?爽やかすぎるよぉ!」

佐天「『――はい、っていう訳で柵中のリナ=インバー○と呼ばれた佐天涙子がメイン進行をさせて頂きますが!』」

鳴護「あ、はい。復活おめでとう?アメリ○さんファンには辛い展開だけど」

鳴護「いや違うよ!突然連れて来られても!ツッコミ力の低いあたしはどうしたらいいかって戸惑うんだよ!」

佐天「『なんかちょっとインデックスさんみたいですが――まぁ怖い話をしようと!夏なのでね!』」

鳴護「涙子ちゃんに限ってはライフワークでフルシーズンだと思うんだけど……」

佐天「『まぁぶっちゃけプロの方ではなく、素人を呼んで安く済ませようとする邪悪な企画です。自粛自粛で予算もないですし』」

鳴護「ついでも夢もないかなっ!ケーブルテレビにしては立派なスタジオだし!」

佐天「『まぁそんな訳で友情割引で今日のゲストはARIASさんです!どうもありがとうございます!』」

鳴護「こんにちは。裏事情をぶっちゃけられてギャラを請求しにくくなりましたがARISAです!」

佐天「『ARISAさんはどうです?幽霊や妖怪、デーモンに超能力者とかって信じますか?』」

鳴護「弁えよう?超能力の研究している街でUMAと一緒くたに扱うのってどうかと思うよ?スポンサーさんにまた怒られるよ?」

佐天「『てかシンガーさんって霊感強い人多いじゃないですか?えーっと一発屋の仕事が減ったら大抵そっちでデビューしません?』」

鳴護「分かってるよね?タレントさんのリサイクルだって分かってて聞いてきてるよね?」

佐天「『あー、これ聞いてちゃっていいのかなー?ちょっと迷うんですけど』」

鳴護「うん?あぁいいよいいよ!なんでも聞いて!」

佐天「『一般人の方に片思いしてるってマジですか?』」

鳴護「聞くってそういうコト!?たった今まで非現実の話してたのに急に生々しくなったよ!?」

佐天「『つーかはっきり言いますけど、多分これ見てる人も”別に怪談とかどうでもいいからARISA可愛いな”ってしか思ってないですよ?』」

鳴護「ウチの子たちはそんなんじゃないよ!ただ一部の過激派を除けばみんな良い子だもん!」

佐天「『それで心霊的な体験はあるのかと!』」

鳴護「あー……お人形っぽい子に?ちょっと因縁があったりなかったり?」

佐天「『お、いいですねー!それは円盤の特典映像にしましょうか!』」

鳴護「何度も言うけど邪悪だよね?本放送で宣伝して円盤でガッツリ稼ぐ気満々だよね?」

鳴護「てか涙子ちゃんは?地雷を常に踏み抜きながら歩いてるイメージがあるけど、オバケとかは見ちゃったり?」

佐天「『あー、それが今んトコないんですよねー。来たら全力で煽ろうと思ってんですが』」

鳴護「だからだと思うよ?オバケさんも出るテンションってのがあるんだから、少しは配慮してあげないと」

佐天「『まぁその代わりっちゃあなんですが、人から聞いた怖い話は豊富です。時間……あ、大丈夫?ではオープニングで一つばかり』」

佐天「『これは知り合いのMさんから聞いたお話なんですけど』」

鳴護「御坂さんかな?それとも美琴ちゃんかな?」

佐天「『ある夏の夕方のことです。体育の時間中に先生に目をつけられ、罰としてプール清掃をさせられたそうです』」

鳴護「美琴ちゃんってガキ大将かな?昭和の主人公並にワンパクなんだけど」

佐天「『あんまそこは本人も気にしてるんでツッコんであげないでください。でまーシャワーで汗を流してから寮へ帰ろうと思ったらしいんですよ』」

佐天「『そこの学校は大勢が一度に10人以上がシャワーを浴びれる感じで。横に少しの間仕切りがあって』」

鳴護「へー。大きい学校は違うのかなー」

佐天「『普段は先輩や後輩と騒ぎながら浴びるんですが、その日は一人です』」

鳴護「うん、だから個人を特定できるような情報は隠しておこう?例え同級生にお友達がいなくっても、そこは嘘でもいいじゃない」

佐天「『がらん、としたシャワー室はもう静かなもんでした。ぴちゃん、ぴちゃん、と水滴の音がかすかにするぐらい』」

佐天「『まぁでもMさんは?異性関係以外はほぼ無敵の人なので?怖いとか寂しいとか一切考えずにシャワーのコックを捻りました』」

鳴護「だから、そのね?美琴ちゃんの尊厳を傷つけるようなことは……」

佐天「『ですが――ふと。そう、シャワーを浴びいてる最中、うなじの辺りにジットリとした熱の塊を押しつけられたような気分になったそうです』」

佐天「『何か、誰かにじいっと見られているような』」

鳴護「……」

佐天「『その学校は男子禁制、かつ学園都市最高のセキュリティです。よって誰か第三者がエロ目的で侵入するのは不可能――』」

佐天「『――しかし!誰とは言いませんが数度侵入を成し遂げたツンツン頭を思い出し、どうアピールすべきか迷いました!』」

鳴護「うん、だからそういうとこが」

佐天「『とはいえ、本当に変質者がいたら怖いですし、裸を見られたら正当防衛で消し炭にしなければいけないとゆっくり後ろを振り返りました』」

鳴護「怖さの焦点が……」

佐天「『当然いませんよね?後ろ、斜め後ろに横にキョロキョロと見ても視線の主なんていません』」

佐天「『”気のせいよね”とMさんは再びシャワーを――ですが視線はいつまで経っても消えません』」

鳴護「……」

佐天「『ベトッと。40過ぎの汚っさんのような嫌らしい気配が。Mさんの直ぐ側、しかも息づかいさえ聞こえそうなほど近く!』」

佐天「『”気のせい、でも確認だけ”とMさんは再度後ろを振り返り……いません。後ろには、誰も』」

佐天「『次に横を向いて、左右を確認しても――いませんね。左右には誰も』」

佐天「『”何か神経質になってんのかしら”と、Mさんは正面の鏡を見ました。言い忘れていましたが、シャワー室全ての個室には鏡があります』」

佐天「『水滴がベットリついて、自分の体も見えないぐらいだったその鏡が。Mさんのシャワーの水滴を受け、クリアになっていたのです』」

佐天「『Mさんは鏡を覗き込みました。後ろ、横には当然何も』」

佐天「『しかし……あったんですよ。”上”にはシャワーの仕切り板の上からジーッとMさんを見つめていたものが……ッ!!!』」

鳴護「っ!」

佐天「『――そこには、全裸の白井さんが間仕切りの上でスタンバっていたのです……!』」

鳴護「うん、知ってた。美琴ちゃんの話だから『そうかな』って確信はあった」

鳴護「そして怖いは怖いけど怖いの方向性が違うよ!?涙子ちゃんはそれでいいの?」

佐天「『――と、いうような感じで!フワッとした怖い話の鉄人達よ、今集わん……ッ!』」

鳴護「それ料理の鉄○」



――スタジオ

佐天「――はい、っていう訳で初っ端から怖い話でしたけども!」

鳴護「今も言ったけど方向性に問題があるよね?カントリーミュージックの大会にJpop来ちゃった!?的な場違い感があるよね?」

佐天「カントリー出身なのにビルボード、更には意識高い系へクラスチェンジを果たしたテイラー=スウィフ○さんという例もあるんですが」

鳴護「曲が……歌が上手ければいいんじゃないかな。ファンがいるってことだし」

佐天「――はっ!?例だけに霊……!?」

鳴護「上手くないよ?解説されても気づかないぐらいのボケはやめてほしいかな」

佐天「まぁそんな訳で立っているのも疲れるので、以降は座ってお話を聞きたいと思います」

鳴護「あ、うんそれはいいんだけど。その、セットがね」

佐天「何か問題でも?」

鳴護「『おはよう学園都市』ってオフィス風のセット丸出しなのは、こうせめて布でもかけたらいいんじゃないかなって」

佐天「えぇ流石のあたしもこの雰囲気はどうなの?と打診したんですけど、向こうのスタッフに断られました」

鳴護「えー、酷いよね」

佐天「『血糊を全面散布するのはカンベンしてください』って」

鳴護「酷いのはこっちだった!?常識で分かりそうなもんだけど!」

佐天「『あと”おはよう寺ちゃ○放送中”って看板出すのもやめてください』って」

鳴護「それラジオだよね?文化放送の早朝番組ネタなんて誰が分かるのかな?」

佐天「さて奇妙なスタジオの謎が一つ解明されたところで、次へ行きたいと思います」

鳴護「スタッフの人が涙子ちゃんを止めてあげて!……え、ムリ?普段はもう一人のツッコミ担当が止めてる?」

佐天「本日の企画の意図は至ってシンプル!選ばれし素人さんがスタジオへ入って怖い話を披露して頂き、あたし達が審査をします!」

佐天「優勝者にはなんと素敵な『次回大会へのシード権』が与えられるのです……!」

鳴護「商売を舐めているのかな?それ多分本とか円盤にして稼ごうってハラなんだよね?」

佐天「あぁARISAさんはご心配なく!次の大会でもエントリーもしくは審査員としてお呼びしますので!」

鳴護「多分それまでには事務所を退所していますので、別の人にアポ取ってください。どっちにしろ嫌です」

佐天「あぁ公録もいいですよね。収録中に狙ったよう入る謎の声とかロマンがあって!」

鳴護「だから恐怖しかないよ?前にも喜んでくれた人いるみたいだけど、『ひょーい!ひょーい!ひょーい!』って霊へ追い込みかけるのって涙子ちゃんだけ」

???『………………戦……争』 ジジッ

鳴護「だから、ね?……今何かマイクに入って……?」

佐天「ます、ね。えっとすいませんスタッフさん、ピンマイってどれだけ――あぁ演者さんの数だけしか用意してない?」

鳴護「ってことはあたしか涙子ちゃんだけど」

佐天「あたしは何も言ってませんよ」

???『負……けて……』

鳴護「……だね。てか負けた?戦争とか言ってるように聞こえる……?」

佐天「あー、今の季節だったら兵隊さんかもしれませんね。ウォボォンなので帰ってきたのかも」

鳴護「お盆ね?そんな滑舌良く言われても……」

???『ガリア……戦争で……負けて……』

鳴護「……がりあ?」

佐天「ググってみたら今のフランスの辺りですね。外国人さんの幽霊さんなんでしょうか」

鳴護「てかなんだってまたここに

???『百年戦争……どうにか……引き分け……』

鳴護「世界史で聞いたことある。イギリスとフランスの戦争だっけ?」

佐天「なんなんですかねぇ。昔の戦争?」

チャラランチャラランチャララン♪

鳴護「一週間の○のテーマ?」

???『――ガリア戦争で負っけって♪百年戦争でどうにか引き分けーて♪イタリア戦争で負っけて♪ユグノー戦争で負ける♪』

???『三十年戦争で同盟国に潜り込っんで♪ネーデルラント継承戦争で引き分けっ♪オランダ侵略戦争で引き分け♪アウクスブルク同盟戦争で負けて♪』

???『スペイン継承戦争で負っけて♪ナポレオン戦争で負っけて♪普仏戦争で負っけて♪第一次・二次世界大戦で同盟国に潜り込っんっで♪第一次インドシナ戦争で負けた』

???『フロッグバっイっター♪フロッグバっイっター♪フロッグバっイっター♪』
(※三年ぶり三回目のネタ)

鳴護「何やってんのレッサーちゃん?これで違うんだったらそっちの方が怖いよ」

???『くっくっくっく……!私は名も無き英霊が一柱!FateがGoするのに是非とも出たいぐらいですが!』

鳴護「それ違う。GOだけど別にGOって意味じゃなくてね」

佐天「歓談中すみません名もなき英霊の魂さん。あまりのボンクラっぷりでさっき言ってたギャラはなかったことに」

???『待ってつかーさいよ!?確かにフランス負けの歴史は『ちょっと悪ノリしてるかな』って思いましたけど!』

鳴護『ちょっと?これでちょっとって認識なの?』

???『お二人はドン引きのようですが、我々の文化圏での幽霊は基本的に陽気かつ超ウルセーです!文化的に!』
(※地域によります)

???『ですが!ここ30年ばかりのグローバルがスタンダードしてしまい、リン○と呪○の影響で『白いワンピ黒髪』が幽霊のアイコンになったようにね!』

佐天「あー、確かにそういう話も聞いたことあるような?」

鳴護「騙されないで!30年以上前の定番って今は定番じゃないのにあえて持って来たってことだよ!」



――スタジオ

佐天「――と、いう訳で最初のお客様はイギリスからお越しになったこの方です!」

レッサー「ごきげんよう顔の平たい民族よ!イギリスが生んだ震電ことレッサーちゃんとお呼びください!」

鳴護「うん、これといって驚きはないかな。ある意味自己紹介は少し前に済ませたばかりとも言えるしね」

レッサー「補足しておきますが、前の話の歌う幽霊や古戦場を徘徊する騎士や兵士の幽霊はマジです。スコットランドにやったら多いんですけど」
(※30年ぐらい前まではデフォでした)

鳴護「うん、個人的には信じてあげたいんだけどね。まずね、幽霊さん達もフランスの負け戦数え歌を楽しそーに歌ったりはしないと思うな」

レッサー「ならば私がヴェルサイユで自決して『フランス王族・暗部数え歌』を……ッ!」

佐天「超楽しそうで観光客増えそうですよね」

鳴護「待って?なんでそんなに死へ対してポジティブに語れるのかな?」

レッサー「それは勿論死ぬ気なんかサラサラないですからね!なんだったらガチでやりますけど!ランシスが!」

鳴護「涙子ちゃんは、どういう接点かは分からないけけど、もっとお友達は選んだ方がいいと思うんだ。かなり本気で」

佐天「選んでますよ?だからARISAさんもここにいるんじゃないですか?」

鳴護「……くっ!嬉しいのか類友なのか判断に困るっ!」

レッサー「やーい、昨日今日出会った私と同レーベールー!」

鳴護「いや別にそれはこれといって。お友達枠では一緒だし」

レッサー「むしろ学芸都市でニアミスした私たちの方が絆が深いんですよっ!?」

鳴護「ミスってるから出会ってはないかなー。ただ同じ街にいたってだけで」

佐天「すいませんレッサーさん、そろそろ尺が足りなくなってきたので怖いお話を始めてくれませんか?」

レッサー「ザアァァオッライッ!私のとっておきの話をお見舞いしてやりましょう!」
(※That's all right・どういたしまして――しかし用法は間違い)

鳴護「ちょっとは興味あったりするかも。イギリスってゴーストの本場だよね」

レッサー「あれはですね……そう、私が前に日本のトーキョー観光をしていたときの作り話です……!」

鳴護「裏切られたよ!?別に東京だったらレッサーちゃんじゃなくて――」

鳴護「……」

鳴護「あれ……?今”作り話”って言わなかった?」

レッサー「いやいや、そこはホラ?フィクションじゃないとマズいっていいますか、分かるでしょう?」

佐天「『この物語はフィクションであり、実在の人物・団体等には一切関係はございません』ってやつですね」

鳴護「……業界人じゃない二人に言われるのは複雑だけど……ごめんね、続けて?あとでまとめてツッコむと思うし」

レッサー「私は慣れない日本で孤独に戦いました!狭い道に誰が見ても同じメイクのギャル!そして思い出したようにエンカウントするナンパヤロー!」

鳴護「別に良くない?三つの不満のうち二つは地元民ですら鬱陶しくは思ってるよ?」

レッサー「やっとの思いで私はとらのあ○で通販空輸不可能なブツを買い込んだら、いつのまにか日はどっぷりと暮れていたのです……!」
(※「ぷにぷに☆ぽえみ○」。所持も違法な国がある)

鳴護「『なにやってんだ未成年』ってツッコミもあるんだけどね、まずその前に怪談なんだから台詞の一つ一つに力を入れるのやめようか?力抜かないと」

佐天「あぁたまに若手の怪談士の方にいますね。マイク意識過ぎてて気合いが入りすぎる人」

レッサー「で、まぁぶっちゃけお金が少し心許なくなったんで、一駅二駅歩くことになったんですよ。地図見てもビジネスホテルまで大した距離じゃないですしね」

鳴護「それ大体失敗するフラグ」

レッサー「時間はそうですなぁ。日は落ちてて街灯は点いてました。てか東京の明るさにビックリしましたもん、今日はクリスマスかって」

佐天「あぁあたしも思いました思いました!地元じゃ真っ暗なのにって!」

レッサー「なのでちょいビビりながらも、グーマの指示通りに最短距離を突っ切ってったんですが……」

レッサー「今思えばそれが良くなかったんですかねぇ、と」

鳴護「あ、それっぽい伏線」

レッサー「なんかですねぇ。街の光が明るいっちゃ明るいんですけど、妙に商店とかがない地域へ入ったらしくて。道の左右には住宅がびしーっと」

レッサー「ちょい古めの新興住宅?窓の明りが半分ぐらい点いたマンションが立ち並ぶような場所を、一人でトボトボと歩く羽目になったんですな」

レッサー「最初は『スゲー人がいっぱいいますね!』なんてテンション上がってたんですが、ぶっちゃけ飽きます。だって朝から晩まで同じ景色ですからね」

レッサー「これがまだ昼間だったらなー、的な事を考えておりましたら――こつ、こつ、こつ、と。聞こえるんですよね、足音が」

鳴護「……住宅街だったら、まぁ」

レッサー「そりゃ私だって思いましたとも。人ばっかの東京だったら道ぐらいいくらでも歩いてんじゃ、とは!」

レッサー「しかし私は黙っていれば外人美少女!異世界転生ハーレムのトリックスター枠ジョバン○役でいそうですが、ついストーキングしてしまうのも仕方がない!」

鳴護「シリアスさんに怒られるからいい加減にした方がいい、かな。あたしもあんま強くは言えないけど」

レッサー「いやそれがですね。その足音の人、私が早歩きすれば向こうさんも早く、ペースをスローにすればあっちもスローと。どう考えてもストークしてやがるんです」

レッサー「本国だったら軽くドツキまわしてから放置するんですが、まぁこっちは色々と面倒臭いですし。どうしたもんかなーと悩んでいたら」

レッサー「ストーカーさんは意を決したのか、その足音が私へ迫ってきたのでした……ッ!!!」

鳴護・佐天「……」

レッサー「でした……ッ!!!」

鳴護「いや別にタメを待ってるわけじゃなくて。どうせ人違いだってオチなんだろうなって」

レッサー「違いますよ失敬な!?そりゃ最初に作り話とは言いましたが、本当に作り話なんですから!」

鳴護「じゃあいいじゃん別に。解決しなくてもフィクションなんだから」

レッサー「が、しかし!怖くなった私はついに!こんなときにはとある呪文を唱えればいいと思い出しました!」

鳴護「って言ってるけど?」

佐天「ありますあります。口裂け女だったら『べっこう飴』か『ポマード』を二回。妖怪ベトベトさんだったら『ベトベトさんベトベトさん、先へお行き』です」

レッサー「なので!私は迫り来る怪異へ対し!毅然とこう言い放ったのです――」

レッサー「――「『マツキタツ○マツキタツ○』ってね……ッ!!!」
(※よりにもよって本名)

鳴護「カメラ止めてもらえるかな?フィクションだって断ればどんな悪口言っていいってもんじゃないんだよ?分かるかな?」

レッサー「私がそう唱えると足音はまるで逃げるかとのように遠ざかっていったのです……!」

鳴護「相変わらず戦い方が総合格闘技だよね?ほんのちょっとの笑いを取りに行くのに、関係各位を敵に回すよね?」

佐天「まぁ怖いは怖いけど別の意味でね!でもググっちゃダメだよ!」
(※”アクタージ○ マツキタツ○ 痴漢 打ち切り”で検索)

鳴護「だからその台詞外で笑い取りに来るのどうなのかな!?全部言っちゃってるに等しいからね!?」



――

佐天「はい!という訳でね、いやー初っ端から怖い話でしたねー!」

鳴護「そうですね。100%作り話だし、その上被害者女性は現在分かっているだけで三人ほどおられるみたいですし、その点は怖いよね」
(※余罪あり)

佐天「いやでもまさかの大河ドラマ編からのこの果てしない男坂(打ち切り)編へ投入するとは!この展開は誰も予測すらできなかったでしょう!」

鳴護「ねぇこの話やめない?これ以上膨らませても誰も得をしないと思うんだ」

佐天「いえいえあくまでも予定ですが、今回の企画の代わりに『アクタージ○〜黒○さんが逮捕された日〜』SSをするか迷ったそうです」

鳴護「運営も暑さでどうかしてるのかな。でもまぁそういうことだよね、投影的にももっと考えるだろと」

佐天「とある筋からの情報に寄れば『ロボ○にイジられたから』って説も……!」

鳴護「そうだね。単行本版ではあの台詞が差し替えになるんだろうけどね」

佐天「まぁ○ちゃんの将来はどうだっていいんですよ!事務所社長がダメになってもスターズが引き取ってくれるでしょうし!」

鳴護「数年後にはきっと『原作が足引っ張ってたんだね』って漫画家さんだけは評価されると思う……」

佐天「そんな感じで波乱の一人目でしたが!さて続きましては本格派!あたしも夜道で会ったらちょっと怖い!」

鳴護「あ、あれ?レッサーちゃんのときにそんな呼び込みしてたっけ?」

佐天「上条さんご推薦!『取り敢えずコイツ呼んどけば問題ない』の――」

鳴護「――闇咲逢魔さんのご登場です!」

闇咲「……」

鳴護「呪い殺しそうな人来ちゃったよ!?どう見てヤク×か呪術高○の先生だよ!」

闇咲「いや、そういうのはやっていない。借りがあるので」

鳴護「マジレスされるとそれはそれで困ります……てゆうか、あのご職業を伺っても?」

闇咲「祓い屋だ。呪術全般、特に呪いを解除する仕事をしている」

鳴護「えっと……涙子ちゃん、どうしよっか?」

佐天「で、何人ぐらい殺ってんですか?」

鳴護「いや違う違う!?あたしが求めたアシスト違うよ!?今の『どうしよっか』は『質問打ちきって話だけ聞いてお帰り願おう』って意味だよ!?」

闇咲「守秘義務があるので言えない」

鳴護「――はいっ!って言うわけで闇咲さんですけど!今日はどんな怖い話を聞かせてもらえるかなっ!?楽しみだなーっ!」

闇咲「うむ、君たちの参考になればいいと思う」

鳴護「もうなんか心配しかないよ……!怖い話って悪霊の王とかそういうレベルの人とバトルしてそうで!」

佐天「ジャンル変りますよね、怪談話のはずなのに妖怪バトルぬーべ○的な。あたしはどっちも同じぐらい好きですけど」

闇咲「いや、君たちが心配するのも分からないでもないが、荒唐無稽な話をしたところで信じてもらえないだろう」

闇咲「例えば長年死の呪いをかけられていた女が、少年が握手した途端に治ったとか」

佐天「あー、ダメダメですね−。そういうのは呪いが解けるまでどれだけ苦労したかが盛り上がるんであって、そこを端折ったら感動も端折ることになります」

鳴護「よく分からないけど口を慎んだ方がいいと思うな?よく分からないし特定の当麻君のお話じゃないって分かっていても」

闇咲「従って今から話すのはただの実話なのだが……今から10年以上前の話だ」

鳴護「あ、そういうのいいかもです。実話系のって流行りですよね」

闇咲「私はとある依頼を受けて○○県の○○集落へ○○○○○を調査しにいったのだが」
(※実話です)

闇咲「所謂○○○○、○○○きの○○だという太○の○喰○○○○○という場所に出る」
(※実話です)

レッサー「――タイム」

鳴護「タイム!?怖い話でタイムって申請できるの!?」

レッサー「えーと、すいません闇咲さんとやら。ちょっとこちらへ、ジャッジも交えてそのお話の詳細を先に伺えませんか?」

鳴護「ジャッジって誰かな?審判らしき人はいないと思うし、普通は止めるよ」

レッサー「いやすいません冗談ではなく、現場責任者の方、ディレクターさん集合!ほらダッシュで早く!ハリーハリー!」

佐天「あの、勝手に進行されても困るんですけど」

レッサー「ちょっと待ってください!直ぐに終わりますから!」

佐天「えー」

鳴護「ま、まぁまぁ!レッサーちゃんは意味のないボケは――するけど!悪意のあるイタズラも――するけども!」

鳴護「なんだったら国家を敵に回してアンタッチャブルな事も――前科があるけど!基本的には良い人だから!」

佐天「『もしかして;嫌い』」

鳴護「そ、そんなことはないよ!?ただお仕事で一緒になると碌な目に遭わないってだけで!」

レッサー「『えーマイクテストーマイクテストー。ただいま物言いがつきまして、親方の間で審議致しましたところー』」

鳴護「親方制なの?」

レッサー「『その結果、”本当に無理”という残念な判断になったことを深くお詫びいたします』」
(※本当に無理です。多分FC2の運営にBANされる)

佐天「えっと……理由を聞いても?」

レッサー「『それも含めて言えません!多分この程度で特定はされないでしょうが、念のため余所で言いふらしたりしないように!』」

鳴護「フワッとし過ぎてて分からないよ!」

レッサー「あーっとですねな。これはあくまでも私の感想であって、特定の何かを意図したものではないのですがー」

レッサー「毎年、沢歩きで水難事故が起きていますよね?ニュースとかでも悪い意味で夏の風物詩になってますが」

鳴護「は、はい?」

レッサー「まぁ大抵『不注意やアルコール入って水遊びするから……』と皆さんは思われるのでしょう。それは正しい判断ですよ?」

レッサー「ただ本当に”事故”なのか、というの点につきましては疑問の余地が無い訳ではないと……」

鳴護「そういう怖さは望んでないからね!?『本当に怖い話かと思った』ってコメントもらってやる気を出すにしても方向性を考えて!」



――

佐天「――はい、っていうわけでね!折角素人さん呼んだのに二人がギリアウトか余裕でNGだという波乱の展開ですが!」

鳴護「事前に聞いてなかったのかな?足切りってときには必要だと思うんだよね。事故を起こさないためにも」

佐天「『都市伝説――アクタージ○』」

鳴護「雰囲気をギャグ寄りにしようっても無理だよね?今カメラ止めてもらってる間に説明受けたけど、あぁこれ面倒だから無理だなって分かったもん」

佐天「というかラスいちになってしまったのにこれでいいのかと思わなくもないですが!最後の刺客はこの人だ!」

佐天「レベル5討伐の実績からチンピラに絡まれる機会もめっきり増えた!学園都市在住の最強無職こと、魍魎戦記HAMADURAさんでーすっ!」

浜面「浜面です。よく分からないけどスッゲー素敵な響きだぜ!」

佐天「一行で説明しますと主人公のマダ○さんがチャクラを奪われておっぱ○です」

浜面「できてなくね?それだけ聞くとおっぱ○好きな人に聞こえる!」

鳴護「あ、どうも。ARISAです」

浜面「ちわっすスッゲーアイドルだおっぱい大きいなよろしく浜面です」

佐天「ゲスすぎて台詞の中に本音が混ざっていますよ」

浜面「いや違うファンなんですサインください!」

鳴護「しますけど、できれば本番中じゃなく控え室で」

浜面「『最愛の最愛ちゃんへ』って書いてください!」

鳴護「明らかに要望が別の人からだ!?てゆうかあの子の仕込みなの!?」

佐天「まぁそんな訳で浜面さんですが、お話自体はあなたが体験されたことでしょうか?」

浜面「あっはいそうっすわ。今から何年か前にも一回したんですけど再掲ってことで」
(※以下ほぼ実話です)

鳴護「再掲……?」

浜面「昔、俺がアルバイトで警備員をしていた時の話」

浜面「施設警備はデパートやオフィスピルなんかを警備する仕事。営業中の施設の駐車場誘導、後は深夜の巡回がメイン」

浜面「商業施設だと炎天下、しかもコンクリの駐車場誘導はキツくて、割と敬遠されてんすわ」

浜面「工事現場の誘導に比べればまだ楽だし、施設内の警備へ回されると、空調が効いた部屋にいられっからマシ」

浜面「……でも、意外になり手が少なく、求人誌にはよく載ってる職種でもある。何でだと思う?」

佐天「あー……そういえば施設警備一本って人聞かないよね。いるのはいるんだろうけど」

鳴護「やっぱり勤務時間が昼夜逆転してるから、ですか?」

浜面「だなぁ。『病む』んだわ。気を病むっつーか」

浜面「どうやっても施設警備には『夜勤』――夜、一人で建物の中を巡回しなっきゃならない。それが結構またクるんだそうで」

浜面「別に幽霊がー、とかおばけがー、とか言ってるんじゃなく、環境がキツい。昼夜逆転の生活、しかも一人で誰も居ない建物を延々歩く」

浜面「まぁ複数人ですりゃ多少はマシなんだろうが……大抵人員削減する所ばっかでさ。普通は一人で勤務するんだわ」

浜面「俺は見たこと無ぇけど、幽霊とか見るのってアレだろ?絶対どっか病んでるだけだって」

浜面「勤務時間中は監視カメラのモニタを見るフリをしながら、何時間に一回セキュリティ外してタイムカード押して巡回する」

浜面「仕事が終ったかと思えば、シフト無視して日勤に駆り出されるときもあるしなー。そんな不規則なルーチンワークを一年中繰り返してたら、どっかおかしくなるって」

浜面「で、今日はそんな警備員やってた時の話だ。つっても『こんな怖い幽霊見ましたー』みたいな話じゃない」

浜面「だって俺は見た訳じゃないから。知らないもんは話しようがない。噂話ならよく聞かせられるけど」

浜面「だから俺が話せる事と言や、まぁトチ狂って居なくなった奴ぐらいだよ。本当にな」

鳴護「あれ……?これもしかして……?」

浜面「同僚――名前は佐藤だか鈴木だか、有り触れた名前だった。歳も俺よりは大きくて、バツイチだって子供の写真を見せて貰った……まぁ、見せられてもリアクションに困るんだが

浜面「こう、あるよな。勘違いしたオッサンが娘の七五三写真をサイフへ入れとく、みたいなの。まさにそれ」

浜面「深くは聞かなかったし、つーか興味も無いし?オッサンの身の上話に興味ある奴なんていねーだろ。余程の物好きでも無い限りは」

浜面「んで、ある日の事。いつものように夜勤明け、昼間の当番の奴へ代わろうと待ってたんだよ。あぁ今日もあちーなー、とか思ってたから夏っぽい日の話か」

浜面「その日は何にも無かったんだよ。頭のおかしい奴のイタ電や、酔っ払いが門叩く事もなく、業務日誌に何書いていいのか迷うぐらいの平穏な日。まぁ長い事やってると別に珍しくもねぇんだけどな」

浜面「いつものよーに勤務時間終りが誓い――あぁ、今日はどうすっかなぁ。洗濯モン溜まってたよなー、なんて考えていたら。ふと気づいたんだよ」

浜面「10分、20分……交代の時間を過ぎても来ねぇのよ。その同僚がだ」

浜面「元々その日の夜勤も、そいつが『シフト交代してくれないか!』って頼むもんだから、仕方がなく代わったんだけどさ。体調でも悪ぃのかなーと」

浜面「まぁ来ないもんは仕方がねーし、だからって労働法?かなんかで、連続して働ける時間も決まってて、俺がこのまま続けるのも出来ない。出来ない事は無いが、ぶっちゃけ規則違反だから金にならない」

浜面「常識的に考えて会社へ連絡。暫くしてから折り返しの電話があって、『交代用意してるからそのまま待ってて』と。あれ?同僚はどうした?」

浜面「一時間ほど経ってから、別の同僚が来たんだが。まぁ聞くよな?同僚どうしたんだって?風邪でも引いたとか、事故に巻き込まれたとか」

浜面「でも別の同僚から大した話は聞けなかった。曰く、会社がどれだけ呼び出そうとしても連絡着かなかったんだって」

浜面「ふーん減給されんのかなぁ?オッサン運が悪かったな――って、軽く思ってんだわ。興味も無かったしね、ぶっちゃけ」

浜面「その後は別にどうって事も無かったよ。フツーに仕事をずっとするだけ。細かいトラブルはあったけど、まぁそういう仕事だからな」

浜面「夜の施設内でクソガキが花火――それも深夜に――して警察が出てくるわ。駐車場でギア間違えて壁に激突するわ。楽しくはなかったよ、普通かな」

浜面「その後……お盆ぐらいかな、確か。今年みたいにクソ暑い夏が続いてたから、よく憶えてる」

浜面「夜勤明けの俺へ会社がこう言ってきたんだよ――『同僚の家へ行ってきてくれないか?』って」

浜面「……薄情だな、と俺も思わないでもないがね。つーか言われるまであんま気にしてなかったんだが、来てなかったんだよ。一週間ぐらい」

浜面「誰も何の話もしないし、てっきり辞めて実家に帰ったんだと思ってたぐらいで。不幸があったりとかしてな」

浜面「とはいえ俺には言わなくても会社まで把握してないのは意外だったし、こんなにユルいのかと驚いたのも確かなんだが」

浜面「会社側が言うにはだな……何度も何度も携帯にかけたらしいんだわ。でも一回も出なかったし、仕方がないんで誰かが様子を見てこいって事になった」

浜面「……何で俺よ?とか思ったんだけど、何か一番近い所に住んでるのが俺だったとかで。いや会社で行けよ。俺関係無いだろ」

浜面「……まぁ面倒だからってんで俺に押しつけたって感じなんだろうが。気になってた――のは、大嘘だけど、言われたからには行かなくちゃならない」

浜面「つーかシフト一人欠けてるせいで、俺含めた他の連中が休み取れなくなってたからな。そっちの方が問題っちゃ問題でもある」

浜面「会社は『同僚の家族へ連絡取りたいんだけど、住所も電話も分からないから調べてきて欲しい』って話だった。大家さんは知らないの?って最初に聞いたんだが、別の人が保証人?になってるらしく、そっちの方はムリだったと」

浜面「数日後、指定されたアパートへ行って、大家さんと一緒に同僚の借りてる部屋へ入った。会社側が前に連絡してたそうで」

浜面「ここで中には同僚の腐乱遺体が!……あ、ごめん。ウソウソ、普通の部屋だったよ。同僚の姿もなし」

浜面「風呂付きトイレ付き、独り暮らしらしく適度にゴミが散らかってて、暖房器具が部屋の隅に転がってるような」

浜面「ちょっと気になったのはフローリングの上に埃が溜まってた事ぐらいだが……ま、俺は気にしなかったよ。その時は」

浜面「けれど別に幽霊が出たとか、おかしな話が起きた訳じゃない。つーか居ないもんは起きようが無いって言うか。

浜面「幸い、本格的な家捜しをする前に印鑑と携帯電話、サイフと免許証が見つかったんだわ」

浜面「ちゃぶ台の上にまとまって置いてあったんで、あぁこれだわって」

浜面「大家さんが同僚のサイフの中から溜まりに溜まった――あれ、捨てるタイミング迷うよな?――レシートの束を引っ張り出し、中から実家らしい住所が書かれた紙を見つけた」

浜面「こうして俺達はそう苦労せずに連絡先を得られたんだが……大分経ってから、あれ?って。これおかしくねぇか?って」

浜面「だってさ、奴が失踪するなり、事故に巻き込まれるなりあったとすんじゃん?あんま良い想像じゃないが、実際に居ないんだし、そういう事件にあったんじゃ、と俺は思ってる」

浜面「でもさ、普通『自分のサイフは持って出る』よな?まして現金入れたまま放置するのって、どういう状況だ?」

浜面「……」

浜面「あと奴のサイフへレシート戻す時に気づいたんだが、日付がな。おかしいんだよ」

浜面「同僚が失踪する”二週間前”が一番新しい日付。つまりその時からサイフはこの部屋に置きっ放しだった、と思うんだが」

浜面「でもな。俺は、つーか俺達は失踪前日ぐらいまで同僚と会ってたんだわ。勿論職場でだけど」

浜面「だったら奴は、どっから職場へ通ってたんだ?サイフをアパートに置きっ放しにして」

浜面「理由は?なんでまたそんな回りくどい事する意味は何だ?」

浜面「同僚が俺に『夜勤代って欲しい』」って言った時、奴は何を考えてたんだろう……?」

浜面「……ん、あぁ話は終りだな。後はどうした?……別に何も?会社が家族へ連絡入れて、家族が失踪届出して、それだけ」

浜面「警察から同僚の事聞かれて、それでオシマイ」

浜面「俺はバイトを辞めちまったんで、同僚がどうなったのかは分からないし、知りようもない」

浜面「帰ってくれば良い、とは思うけどな。まぁ無理なんだろ。何となく分かってるし」

浜面「……」

浜面「……あぁ、まぁ、その、なんだ」

浜面「……今更っつーか、話してて思い出したんだけどな。いや大したこっちゃないんだが」

浜面「俺、実は同僚――元同僚の嫁さんと子供さんに会ってんだよ。向こうは藁をも掴む気持ちで旦那探してるっつーからさ、話だけでも聞きたいみたいな?

浜面「正直、プライベートで付き合いがあった訳じゃないし、飲み会で世間話するぐらいだから、まぁ大した事は話せなかったんだけどさ。パチンコで幾ら幾ら負けただの、そんな話しかしなかったんだが」

浜面「その、まぁ『いつも家族を気にかけてましたよ』的な嘘……リップサービス?みたいなのは言うだけ言っといたんだよ。嘘なんだけどさ。ま、そんぐらいはな?」

浜面「……話し終わった後、俺は会社から自宅へ戻る最中、ふとある事に気づいちまったんだよ」

浜面「その、同僚がガキの写真見せてきたっつったじゃん?」

鳴護「……七五三の女の子ですよね」

浜面「そうなんだけどよ。同僚の嫁が連れてきた子供は”高校生の男”だったんだわ」

鳴護「――え」

浜面「――同僚が持ってた写真は”振り袖着た女の子”……うん、まぁ似ても似つかぬって話なんだけど」

浜面「……なぁ、奴は――同僚は誰の写真を持ってたんだろうな……?」

浜面「……しかもその写真、確か野郎のサイフの中には入ってなかったんだぜ……」

佐天「――ありがとうございましたー!いやー読後の不快感が中々のモンでしたねっ!」

鳴護「いやいやいやいやいやっ!本当に怖い話じゃないですかっ!?」

浜面「うん?そういう主旨だって聞いたんだけどよ?」
(※ほぼ実話です)

鳴護「ど、どうせ途中でヘタレると思ったのに!なんか裏切られた気分だよ!」

佐天「このあとは『おはよう学園都市』!チャンネルはそのままだぞ☆」

鳴護「いないよ!?この番組のニッチなファン層と朝の情報番組の視聴者層はカスリもしてないよ!?」


-終-



※ちょっとシュール過ぎて削ったシーン

闇咲「……」

鳴護「ガチ過ぎる人がまた来てるよ!?放送に耐えられる重さじゃないよ!?」

佐天「あ、モザイクかけてボイチェンさせますんで大丈夫です」

鳴護「いやムリムリムリムリ!何をどう繕ってもにじみ出る邪悪さが隠せてないし!」

闇咲(※アニェーゼの声で)『萌え萌えきゅん☆』

鳴護「異議あり!被害者は違法な薬物を投与されている疑いがあります!もしくは敵の魔術師の攻撃を受けている可能性が!」

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