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Clock(trial)

佐天「『第一回!チキチキ怖い話をぶった切れ・玄人さん呼んじゃいました大会!』」

 
(※ほぼ真面目に検証しています)



――統括理事長特別収監施設

黄泉川「一方通行に会わせるじゃんよ、ってあんた達メンツ変ったじゃん?」

看守A「あぁ、前任者は一身上の都合で転属を希望したんだにゃー。なんでも両手両足をベクトル操作でぶち折られるって奇病に罹ったとかで」

黄泉川「何やってんじゃん一方通行。監獄でカウント増やしてどうす――」

黄泉川「――『にゃー』?」

看守B「おぉっと萌えキャラに転向しようとしても無理ですやん!まぁBBA萌えっちゅージャンルもニッチながらあるんやけど!」

看守C「あ、すいません。録画するんでもう一回『にゃー』もらえますか?」

黄泉川「……」

看守A「どうした面会者!こっちの無茶振りに応じなければ反意ありと見なすんだぜぃ!」

看守B「そうやそうや!カミや――もとい看守Cにお願い聞いてやりぃよ!」

看守C「えーと、シチュエーションは二人で部屋飲みして、そんで黄泉川先生が先に酔っちゃったって感じで。甘え4、奔放4、小悪魔2でお願いします」

黄泉川「それ全部同じじゃん?素人がガンダ○とガンダ○Oの見分けがつかないとのと一緒じゃんね?」

看守C「ま、まだまだお楽しみはこれからなんだからねっ!勘違いしないでよねっ!」

黄泉川「つーか何やってんじゃん上条。つーか小萌センセのクラスのデルタフォースども」

看守B「そ、そないな名前は知らへんなぁ!ボクらにはとんと関係ないコトでっしゃろ!」

黄泉川「せめて騙そうとするんだったら口調ぐらいは変えるじゃんよ。下手でもいいから挑戦する気持ちが大事じゃん?」

看守A「そういっていられるのも今のうちだぜぃ!これから黄泉川先生は身も心も俺たちによって支配されるじゃん!……あ、伝染っちまったにゃー」

看守C「そうだそうだ!いつも学校では薄着しやがって!俺たちの純情を弄ぶなー!」

黄泉川「冤罪じゃん」

看守B「何を仰いますやら!小萌センセが黄泉川センセと同じ格好したら『涼しそうですエエね』ってみんなほっこりした気持ちになるんやよ!」

黄泉川「だから私には関係ないじゃんよ。同じ格好でリアクションが分かれるんだったら」

看守B「でもボクは『これはこれでイケますのん!』って思うけども!」

黄泉川「犯罪……いや、小萌先生は私よりも年上だし、犯罪でないではないじゃんが……」

看守C「俺たちは今!学校男子の総意(※ただしロ×専は除く)を受けて立っている!日頃の報いを受けるときが来たぜ!」

黄泉川「じゃあ今度から厚着するじゃん」

看守C「何言ってんすか先生!?それだと男子生徒が悲しいだろ!?」

黄泉川「状況的に詰んでるじゃんが……ふう、面倒じゃん。一方通行にトコに遊び来たのは分かるじゃんから、さっさと身体検査でもエロいことでもするじゃんよ」

看守A「いや俺はロ×にしか、ぶっちゃけ妹に操を立ててる身なんだにゃー」

黄泉川「一見いい話だけどモラル的にハザードしてないじゃん?肉親愛は大切じゃんけども」

看守B「実はボク最近勇者様シリーズにハマってるさかい」

黄泉川「小萌先生大丈夫じゃん?犯罪者予備軍っていう州兵ぐらいのほぼ現役が待機してるじゃん

看守C「俺も一身上の都合でちょっと」

黄泉川「全員スルーされるのもそれはそれでショックじゃんよ」

看守B「うん?カミやんの一身上の都合って何よ?」

看守C「アナフィラキシーショックの一種だと思うんだよ。ちゅーしたらな、全身の穴という穴から出血が」

黄泉川「病院行くじゃん?何か確実に伝染病的な、あの悪名高い出血熱ウイルスもらってるから入院するじゃん?」

看守B「あとアナフィーやったら以前にちゅーしてへんと成立せぇへんよ。なんで一回見栄張ろうと思ったん?」

看守A「カミやんが尻込みするのなら仕方がないぜぃ!ここは俺が汚っさん顔負けのセクハラをみせてやるぜぃ!」

看守B「つちみーだけにはさせへんで!第六位が確定しそうなボクの謎パワー見せたるわ!」

看守C「……」

看守A・B ジーッ

看守C「じゃ、じゃあ俺も?」

看守A・B「どうぞどうぞどうぞ」

看守C「ウルセェわコノヤロー!?『あれ?こんなネタ合わせしてなかったよな?』って思ったらご覧の有様か!?」

黄泉川「『案の定』じゃんよ。つーかあんたら、私も暇で一方通行に会いに来た訳じゃないじゃんし、さっさと通すじゃんよ」

看守C「じゃあお前ら見とけゴラ!俺の実力を見せてやるぜ!記憶はないけどプレイボーイとして名を馳せた俺の実力をな!」

看守A「記憶だけじゃなくそんな事実はなかったぜぃ」

看守B「ボクらとケンカに明け暮れてましたやん。女の子ドン引きで」

看守C「シャーラァァァッ!黄泉川先生――ずっと前から性的な目で見ていました!」

黄泉川「知ってたじゃん。まぁ思春期だしそんなもんじゃんよ」

看守C「よかったらあの、ライ○の交換を……」

黄泉川「なんて立派な童貞×じゃん!紳士とも言えるけども!」

看守A「相変わらず童×力には定評があるにゃー」

看守B「流石カミやん!童×力に憧れないし痺れもせぇへんわ!」

黄泉川「あんたら上条嫌いじゃん?もしかして?」



――

一方通行「うンまァ予想の範囲内だったわ。ヘタレ虫が何匹集まろうともヘタレはヘタレのままだったわ」

黄泉川「看守変えた方がいいじゃんね。前にも言ったけど今度は別の意味で」

一方通行「いンだよ。たまに来る冷やかし追っ払うにはバカに相手させりゃァ」

黄泉川「私は冷やかしじゃないじゃんけど……」

一方通行「そォかよ。そンで?冷やかしじゃねェ黄泉川せんせェはなンでこちらへ?」

黄泉川「『学園探訪』ってオカルト番組見てるじゃん?」

一方通行「帰れよオマエ。同好の士がほしいンだったら掲示板にでも書き込めば?」

黄泉川「いや――そうじゃないじゃんよ。ちょっと空気が違うじゃん」

一方通行「はァい?空気?」

黄泉川「元々は女子中学生がワチャワチャするのを見て楽しむ健全な番組だったじゃん……」

一方通行「健全の意味履き違えてねェか?」

黄泉川「それが何か、ガチのをやっちまったらしいじゃん」

一方通行「……はァ?心霊番組でガチっつったら、生放送中にユーレイでも映ったンか?」

黄泉川「そういうガチ系ヤラセだったらまぁいいじゃんけど。てかそんなことで一々報告に来るほど暇じゃないじゃんよ」

一方通行「――オイ」

クリファパズル545『――あいあーい!呼ばれて呼び出てジャジャジャのジャーン!デビルがサマナーする感じ、で……」

黄泉川「……ん?」

クリファパズル545「――この年増好きがっ!!!」

一方通行「人様の人間関係を性的なもンと直結させンな鬱陶しい」

クリファパズル545「そうはいいますがねぇ!?ご主人様の歳だったら頭の中なんかエロいことエロいこと、あとエロいことぐらいしか考えてないんでしょーが!」

黄泉川「まぁ合ってるじゃん」

一方通行「合ってねェよ。学生でも癖(へき)以外のこと考えてるやつだっているわ。多分」

一方通行「それよりまァ……一応こいつはそっちの専門家――」

一方通行「……」

一方通行「いやごめン間違ったわ。待機状態に戻ってくれねェかな?」

クリファパズル545「合ってますよ!?これ以上ないっちゅーぐらいに専門家で合ってますからチェンジだけはどうかご勘弁を!」

一方通行「いやでもオマエ、魔術関係で役に立った実績がそンなにねェっていうか」

クリファパズル545「相手が悪いんですよドチクショーめ!どいつもこいつもラスボス感出した相手に人工悪魔じゃ荷が重いってもんです!」

一方通行「……まァこいつでも、見せればわかる、かもしれねェ」

クリファパズル545「なんでぞんざいな扱い……!でもそういうとこが好き!抱いて!結婚して!」

黄泉川「あー……なんであんたの周りって地雷女ばっか集まるじゃん?」

一方通行「日頃の行いが悪ィせいだよ」



――とあるケーブルテレビ・スタジオ

チャーチャーチャチャチャッチャー、チャッチャッチャ、チャチャー

佐天「――はい、という訳で残暑も厳しい中!暑いけど頑張って乗り切ろうぜ!」

佐天「今週も懲りずに身も凍る心霊現象スペッシャルをお送りしようという魂胆です!まぁ暑いんですね!少しは涼しくなってほしい感じで!」

佐天「でもですね、本題へ入る前に先々週の放送のお詫びからお伝えします。えっとアクタージ○は面白かったです、○ちゃんファイッ!」

鳴護「お詫びになってないよ!?KOされたあとに攻撃してるようなもんだからね!?」

佐天「でもボーンコレクショ○みたいにひっそりと終わってネタにされないよりは!うんまだ人生の最期で一笑い取れたってところで納得しよう!」

鳴護「アレなのかな?涙子ちゃんはクレームへ対して煽りへ行っているのかな?」

佐天「先生の次回作にご期待ください()」

鳴護「巻き込まれた人もいる話だから!もっと穏便に!イジらない方向で!」

佐天「しかし見方を変えれば疫病神とバイバイできた、と?」

鳴護「いや会うんだよ!?涙子ちゃん知らないかもだけど中の人とかは現場で会うんだからねあたしは!?」

佐天「――あ、じゃあサインください!ゲスト枠でのご出演もお待ちしておりますよー!」

鳴護「怖いものがないよね?大抵人生ナメプしてるよね?」

佐天「今回のゲストは前回に引き続きさっきからツッコんでるARISAさんです!いやー元気ですね!」

鳴護「お陰様で今日も元気に喉を痛めて帰ることになりそうです!最近当麻君がお仕事放棄しているから!」

佐天「頑張ってください!スタジオの空気はあなたにかかっています!」

鳴護「なにそれこわい。空気ってどういうこと?」

佐天「えーっと、心霊現象が起きたとするじゃないですか?例えばあたし達には見えない人がモニタに映っていたり」

鳴護「事故だよね?ツッコミがどうとかじゃなくて、カメラ止めて演者さんとスタッフ総出でお祓いに行く展開だよね?」

佐天「そこでツッコミのARISAさんが一言!」

鳴護「『な、なんでやねーん』……?」

佐天「『ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』」

鳴護「こっちがなんでだよ!?なんで幽霊さんが寺育ちのC君でもないツッコミで退散できるのかな!?」

佐天「『あれは打ち切りじゃねェンだよ……!』」

鳴護「今一番偉い人にケンカ売った!?『あれ?ここで終わり?』ってファン全員でツッコんだけども!」

佐天「見事成仏させましたね!ARISAさんのツッコミ能力は恐れ知らずです!」

鳴護「涙子ちゃんはもっと怖さを知った方がいいよ?いつか痛い目に遭うからね?」

佐天「そしてスペシャルなARISAさんに加え!本日のタイトルとなったガチな方をお呼びしております!」

闇咲「闇咲だ。祓い屋のような仕事をしている」

鳴護「葬儀○さんだよね?葬列を一人に押し込んだような存在感の人だよね?」

佐天「では配役交代!本職のツッコミ要員としてARISAさんが幽霊役で!」

鳴護「あ、あたし!?えっと……『ぱ、ばけばけー?』」

佐天「おいなんだこの可愛い生物あざといな」

鳴護「じゃあ事前に台本頂戴!?全部本番まで打ち合わせなしって普通じゃないから!」

佐天「対して闇咲さんの本職のツッコミをプリーズ!」

闇咲「――これは原始仏教の話なのだが」

鳴護「は、はぁ?」

闇咲「我々いる場所は人間道(にんげんどう)、つまり人界(にんがい)とも呼ぶ。そして一般的には死して地獄へ向うとされている」

鳴護「あ、知ってます。エンマ様に裁判を受けるんですよね」

闇咲「だが実際の原始仏教では地獄もまた地獄道の一つであり、人の行い如何では餓鬼道、畜生道、修羅道、人界道、天上道と行く場所が変る。これを六道輪廻と呼ぶ」

闇咲「そして何度も何度も生まれ変わり、迷いを捨て去ることにより悟りを広く。そして”仏”になるのが最終目的なのだが」

鳴護「つまり?」

闇咲「釈迦が説いた仏教でいえば、基本的に死した後、即座に生まれ変わらされる。よって幽霊になってる暇が無いんだ」

闇咲「ということは君は一体どういった立場の幽霊なのだろうか?斉天大聖孫行者すら成し得なかった、シャカの掌からこぼれ落ちるという偉業」

闇咲「どうやったのか詳しく教えてもらっても構わないだろうか?」

鳴護「幽霊さんが可哀想だよ!?そんなに理詰めで難しい事言われても!」

闇咲「あくまでも原始仏教においては、という話だ。日本で幽霊の存在は室町時代辺りには確認されているいる、『亡者(もうじゃ)』として確立されているから、まぁ存在自体は問題ない」

鳴護「立場を考えてあげて!『こわいぞー!』って脅かしに来てくれてるんだから、乗っかってあげるのが優しさだよぉ!」

佐天「と、言われましても。今回の企画の主旨がそこなんで」

鳴護「ど、どこ?」

佐天「ガチな視点から都市伝説をぶった切るっていう」

鳴護「前に言ったかもしれないけど大人げないよ!?みんな楽しんでるんだから野暮なツッコミはナシにしよう!?ねっ?」

佐天「ふっ、それ言うんだったら一度たりとも大人げがあった企画があったのかと逆に問いたいですね!」

鳴護「今は胸を張るところじゃないよ?そしてカメラマンさんも不自然にズームしなくていいからね?涙子ちゃんも恥じらいを持って?」



――

佐天「――はい、という訳で始まりましたけど怪談粉砕企画!夢も希望もなく大人の知識で潰そうっていう感じで!」

鳴護「やめない?今からでもいいから、あたし涙子ちゃんがダベって適当にお話しすればそこそこ数字取れると思うし、そっちにしない?」

佐天「では次回はそれで!本日はゲストの方も呼んでしまいましたしから!」

闇咲「私は別件で来ているだけであり、このまま解散でも構わないが」

佐天「あたしが構います!折角プロの方がいらしてるんですから無双プ見たいじゃないですか!」

鳴護「無双って概念が通用するのかな?要は人様のお話にケチをつけようってことだよね?」

闇咲「そのケチというのもだな、元々は病魔や不幸がついた、つまり”ケチが憑いた”という概念だった」

闇咲「”ケチ”は”結(けち)”。良くない何かと縁を結んでしまった結果、悪い物を呼び込んでしまうのが原義だという説がある」

闇咲「よってケチを”つける”というだろう?悪意をもって貶めようとする際、他人の不幸を呼び込もうとする力が働いていると考えた結果だ」

闇咲「だが次第に最初の意味が失われ、今ではただ難癖を付ける程度の言葉になってしまっているが」

闇咲「また書物の中にはケチは”怪事(けじ)”と当て字をするものも散見され、つまり人の意志とは別であるという認識を持っていたのは間違いない」

鳴護「すいません。予想以上にガチすぎてリアクションに困っています」

佐天「実はあたしも困ってます。『あれ?もう一人でいいんじゃないかな?』って」

闇咲「では先々週ボツになった××××××とモメた話を」

佐天「またボツになりますよ!だからFC2から出禁食らうっていいますか!」

鳴護「よく分からないけど……うんっ空気を読んで進めたいと思います!ではまず最初のお題はこちら!どん!」

【寺生まれのC君】

鳴護「って最初がこれ!?普通怪談から行かないかなぁ!?」

佐天「あぁそれはスタッフさんの要望です。『候補どれにしましょう?』って会議してたとき、 『寺生まれのC君がパパっと解決オチは冷めるよな』と複数人から声が上がりまして」

鳴護「いやでも……怪談じゃないよね?登場人物だよね?」

佐天「アルファベットともかくとして、複数の怪談に出現が確認されていますし――もしかしたら新しい怪談の主人公となるかも……!」

鳴護「なったら怖いよ。まさに怪談ではあるけど」

佐天「さぁどうですか闇咲さん!初っ端からデッドボール狙いのこの配球を打てるもんなら打ってみてくださいよ!」

闇咲「シャカは自身の息子にラーフラ(煩悩)と名付けた。ラーフラは最後に入滅した弟子ではあるが、血の繋がりで特別視はされていない」

佐天「対応するんかい」

鳴護「呼んでおいてなんだけど、無茶振りに即対応出来るのもそれはそれでどうかと思うんだよね」

闇咲「ついでに言えば明治時代になるまで、仏教の大抵の宗派では女性との婚姻は戒律で禁じられていた。私が持っているとある郷土史の本では」

闇咲「『政府が神仏分離を決め還俗化を決めたちゃったよー、いやーこれで女人との婚姻できちゃうなーやったぜ!』という記述もある」
(※還俗(げんぞく)・僧が僧籍から離れること。しかしここでの意味は別)

鳴護「気持ちは分かりますけど、そこまではっちゃけた書き残しがあるんですね」
(※盛っていますが、本当にあります)

闇咲「よって『寺の息子』と言っても精々150年ほどか。三代か四代、たったそれだけの年月で子孫へ行き渡るほど徳を積んだのは特筆に値するだろうな」

鳴護「あの……ケンカ売っていませんか?」

闇咲「しかし親の因果が子に、という話は一概に否定出来ない。例えば親よりも早く亡くなった子は賽の河原で石を積む訳だが、鬼が積む側から崩してしまう」

闇咲「だが親が句の供養のために石塔や石仏を建てれば、その分だけ石積みが崩されない――という”俗信”もあるにはある」

闇咲「あまり同意はしないのだが、子を亡くした苦しみを和らげるため、その両親が無理をしない程度で供養するのは悪いことではないだろうな」

闇咲「まぁ何にせよ血縁”だけ”で悪霊を退ける考えは、仏教ではあまり馴染みがない。もし本当にC君が対魔の力を有していれば、それはもっと別の何かだ」

闇咲「因果応報自体は、それこそ先に挙げた六道輪廻自体がそのものであるしない話ではないのだが」

闇咲「しかしながら輪廻の輪から逃げ出すような存在へ対し、修行も行わず徳を積まず、精々経文を唱えられる程度の人間が”成仏”させられるのは……」

闇咲「……まぁ、夢がある話だ、ともいえる」

鳴護「ないです夢。ここまで粉砕しに来るとは思っていませんでした」

佐天「言葉を選んだつもりでもドストレートで全否定ですからね」

闇咲「ちなみに補足しておくが、『家業が大体寺です』というのも珍しくはない。一々本山から僧を無もなき村ら町へ派遣してはいられず、普通の家庭が僧職を続けている場所もある」

闇咲「特にどことは言わないが、採算の取れない場所ヘ赴任するのは嫌だという例を幾つも聞いている」

鳴護「えっと、昔のお話なんですよね?」

闇咲「今も同じだ。後継者不足で地方の寺院が閉じている一方、観光地と化した寺院は大盛況だからな――加えて」

闇咲「あとこれは知り合いの話だが、あるそこそこ大きくて他からの持ち込みの案件も捌いている僧曰く」

闇咲「『お祓いを頼まれたら、取り敢えず”成功した”と言っておけば客は納得する』と」
(※実話です)

佐天「すいません、あの、本題とブレてきているので、仏教批判はそのぐらいにしておいて」

闇咲「ではバランスとるためとある作家の話をしておこう。彼はある日呪いの人形を手に入れた」

鳴護「展開が急すぎません?そしてそれバランス取ったことになるでしょうか?」

闇咲「最初は面白がっていたが、段々持て余すようになり処分したくなったそうだ。それで東京である有名な人形供養をする寺へ連絡した」

闇咲「だが供養にはそこそこの費用がかかる。困っている人間を助けてくれるのがお寺じゃないのか、と」

佐天「あー、まぁ気持ちは分かりますけどね」

闇咲「なのでその寺の賽銭箱の上へ人形を置いて帰ってきた、だそうだ」
(※と、トークショーで仰っていました。by平山夢○先生)

佐天「すいません、やっぱり分からないです」

鳴護「闇咲さん謝って!涙子ちゃんですらツッコミしなきゃいけない非常事態に謝ってください!」

闇咲「と、いうように、ちょっとアレな人間がいるのだから寺も大変なんだ、と。あまりこう責めないでほしい」

鳴護「聞けば聞くほどドツボに填まっていくような……より深い人間の闇を覗き込む感じで」

佐天「つまり、えっと……お寺育ちのC君は信用しちゃダメだってことですかね?」

闇咲「信じるのは自由だ。救われるもまた同様に――が、幽霊の話ではないが、シャカの高弟の一人が瞑想をしていたら餓鬼が現れた」

闇咲「『お前は三日後に死んで餓鬼道へ落ち、私のようになるだろう』と。高弟はシャカへ相談すると念仏を唱え、食物を供えればお前もその者も助かるだろう』と」

鳴護「あ、知ってます」

闇咲「正しくはその偽経へ影響を与えた逸話なのだが、まぁとにもかくにも『別の六道へ落ちた死者が出る』という考え自体は古くから存在する」

闇咲「しかし極端な話をしてしまえば君たちも私も、元はどこかの六道で生きていた死人であり、それだけを理由に祓ったり祓われたり、という思考は乱暴だといえる」

佐天「あの、ちょっと質問なんですけどお釈迦様ってかなーり昔の人ですよね?」

闇咲「紀元前5世紀ほど前の人物だな」

佐天「だったら今まで亡くなったサムライとか出てこないんですか?」

闇咲「一言で言えば流行りではなくなったんだろう」

鳴護「そんなぶっちゃけ方ってあります?もっとこう、オブラートに包んでください!」

闇咲「……いや、私がやっているのではなく……そうだな。今では文化の途絶というか、語り手側の問題というか」

闇咲「能ではよく亡霊が現れる。琵琶法師や老人が『実は昔これこれこういうような悲劇が……』と、実は平家なり落ち武者の亡霊だったというオチの」

闇咲「同時に民間で語られる幽霊憚も似たような話が頻出し、大抵は似たような話に落ち着く訳だが」

闇咲「これが事実なのか創作なのかはさておくとして、問題なのは現代だ。仮の話だが、落ち武者の霊が出で来て古語口調、かつ当時の言い回しで語られても現代人は理解できない」

鳴護「あー……はい、なんていいますか、確かに急に話しかけられても困ります、よね?」

佐天「言われてみれば、ですね。現代でもサムライの幽霊話ありますけど、グワッ!と睨んだり、大抵一言も喋られずに消えますもん」

佐天「一応……はい、オカルト好きとして反論しておきますけど、戦国時代よりも前だったらそれこそ成仏してんじゃねぇかなって」

闇咲「最近妙に多い怪談で七人ミサキか。あれの時代背景は戦国時代よりも古いのだが」

佐天「こ、交代制だからきっと!現代にまで残っているんですよ!」

闇咲「私が調べた限りでは、少なくとも10年ぐらい前に再ブームになる前は海上の怪異だった。、陸上での目撃憚はあまり聞かない」

闇咲「と、いうよりもだ。七人ミサキと別の怪異と同一視されている可能性もある。巡礼者が旅先で亡くなった後も巡礼を続ける、という怪異は珍しくない」

闇咲「恨み言を述べる落ち武者の霊が絶命寸前で、よりマイナーな七人ミサキの方が目撃例も多いのは解せないな、という話だ」

佐天「なんか変な風に変な方へ飛び火していちゃいましたけど……ともかく、闇咲さん的に『寺育ちのC君』の信憑性は☆何個で?」

鳴護「そういうシステムなの?もう不謹慎とか考えてないよね?」

闇咲「☆1だ。可能性は極めて低い、怪談を作り込むのであれば背景を踏んだ方がいい」

鳴護「論点違いません?怪談にダメ出ししようって主旨でしたっけ?」

佐天「さて、ARISAさんは真面目に審議してほしい怪談ってありますか?お気に入りとかあったら是非どうぞ」

鳴護「怪談にお気に入りとか……あ、じゃあ八尺様は?あれ怖かったです」

闇咲「☆3。なくはない、と言える」

鳴護「あれ実話だったんですか!?」

闇咲「とは言っていないし断言もしていない。ただ過去の伝承の記憶と突き詰め合わせて、アレに似た存在に心当たりがない訳ではない、と」

佐天「意外です。観世か否定されるもんかと」

闇咲「山姥(やまうば)だ」

佐天「あたしが生まれる前に流行ったギャル系ファッション?」

闇咲「その元になっている」

佐天「ネタにマジレスされると辛い……!」

鳴護「必要ないのにボケるからだね」

闇咲「山中に棲む女の怪異、外見は美しい姿から老婆まで様々。共通する特徴としては好色の上に人を喰う」

闇咲「適当に出会っただけの男を籠へ入れて誘拐しようとしたり、騙して連れて行ったりもする」

鳴護「あー、八尺様も殺される、って感じよりはそっち寄りですよね」

佐天「でも大きさは?バーバリアン的ですけど、大きくないと」

闇咲「ある炭火焼きの男が山中で炭を焼いていると、息子がどこか遠くを向いているのを見た」

闇咲「『おい何を見ているんだ』と小突くと、息子は『おっとう、あそこに綺麗な女の人がおるよ。ずっとこっちを見ているんだ』と山奥を指さした」

闇咲「男は息子をもう一度殴りつけると、こう言った――」

闇咲「『――バカ言うな。山の木よりもデカい女なんて山姥に決まっとる』と」

佐天「あー……大きいんですね」

闇咲「他にも『瓜子姫と天邪鬼(うりこひめとあまのじゃく)』では、瓜子姫を殺した天邪鬼が彼女の声を模して彼女の育ての親を騙す場面もある」

鳴護「一番怖いところですよねっ!」

闇咲「まぁ『三枚のお札』では、お札が護送に成り代わって山姥を騙すのだが……ともあれ、八尺様が山姥の一つである、という推測は立てられる」

佐天「でもですね。あの話って田舎ですけど、街中じゃないでしたっけ?帰省したかなんかで、縁側に座ってたらなんか怖い女の人が外に居るわー、って」

闇咲「海を埋め立てれば街になり、山を切り拓けば街になる。以前からの住人もそのままで」

鳴護「……あの、涙子ちゃん?この企画って『なんだー、実話じゃないんだから怖くないよー!』って話じゃなかったの!?補強してどうするのかなっ!?」

佐天「あたしも想定外です。むしろビックリしています」

闇咲「”もしも怪異が存在すれば”という前提の上、”類似の存在を思い当たる範囲で調べてみれば”というだけの話」

闇咲「ただし誇張もしていないし、結論ありきな強引な結びつけ方もしていない。研究者として真面目な意見を述べさせてもらっている」

佐天「どうしましょうARISAさん!ガチ過ぎて引きます!」

鳴護「失礼だよ?誰かこの展開を予想してなかったとは言え、本人の前で失礼な事を言うのはマナー違反だよ?」

佐天「と、じゃ、じゃカンカンダラはどうですか!蛇っぽい巫女さんなんて昨今のブームでヒロイン昇格あると思います!」

闇咲「☆1。もう少し話を作り込んだ方がいい」

佐天「まぁ終盤のネタバラシで部外者へペラペラ真相を語るのは逆に笑いが来ますけど……」

闇咲「問題はそこではなく、蛇神、つまり蛇の神信仰は有史以来ずっと存在する。日本も例外ではない」

闇咲「まず蛇が死と再生のシンボルである上、ネズミを獲って食うため穀物の神としても知られる」

闇咲「その上、水神のとしての役割を与えられて沼や湖、川など命の源である象徴でもあり、時代が移ろっても神の使いとしての地位を築いている」

闇咲「八岐大蛇は言うに及ばず、人を喰う存在としても神話時代から名を残している」

闇咲「また反面民話でも蛇贅(へびむこ)、蛇女房(へびにょうぼう)など異類婚姻譚、つまり寄り添う物語にも事欠かない――の、だが」

闇咲「この怪談が成立しない理由はとても単純かつ明快だ。祟り神としての格が違いすぎる」

鳴護「また不穏な単語が出て来ちゃったよ……!当麻君助けて!」

佐天「多分呼べば来ますよ?ピザかなんかの出前のバイトをしていて、って」

闇咲「確かに女が鬼や蛇に身を変えて怨霊になる、というのはよくある。少なくともその類の逸話は全国各地に伝わる。安珍と清姫が一番有名か」

闇咲「そして人身御供の話も多い。どこまでか、いつまでしていたのは当事者しか分からないが、巫女や旅人、旅の六部(りくぶ)が捧げられたという話も、まぁある」

闇咲「しかしながら女が蛇神と一体化して祟りを為す、というのはない。なぜならば優先順位があり、格がある。人が蛇神よりも上である事は有り得ないからだ」

闇咲「非業の死を遂げた人間が祟り神になって不特定多数に禍を為す、という事例はある」

闇咲「落人狩りで殺された斎藤実盛が、死後虫に転じて稲を食い荒らす。珍しくはない」

闇咲「政敵に敗れて地方へ流された貴人が都に飢饉を、というのもある。これもまた珍しくはない」

闇咲「だが、人が怨霊を乗っ取ったという話はない。祟りのスケールというか、怨霊としての等級が違いすぎる故に」

佐天「伝奇モノラノベじゃありそうな展開じゃないですかね?元々は別のものだったのに、人間の意志が入ってより悪化みたいな?」

闇咲「これは卵が先か、鶏が先か、という話に繋がるのだがな。元々ある村では荒魂がおり、数年に一度人身御供を立てていたとしよう。仮に」

闇咲「しかしあるとき、その供物が特別な存在で、自分達が拝み奉っていた存在を乗っ取ってしまった――」

闇咲「と、いうようなことは、ない。これは”その程度”でどうにかできる存在であるならば、ずっと昔にどうにかできた筈だからな」

佐天「ちょっと意味が分からないんですが」

闇咲「欲しいバイオリンがあったとしよう。値段は数千円、あまり無理をしなくても手は届く」

闇咲「しかし”だから”そのバイオリンの演奏は奮わない。そんな安物が現代の名器である筈がないからだ」

闇咲「支払う対価が安い、そして安いからこそ効果も見込めない――命も同じだ。現代の価値観を過去の伝承へ当て嵌めようとしたのは失敗だった」

佐天「すいません。終盤の『部外者に村の暗部をペラペラ喋る』についても評価してほしいんですが」

闇咲「途中で飽きた、もしくは『自分の考えた裏設定』を開示するために必要だったのだろう」

闇咲「コトリバコもその類だ。現代では子供の命が重視される、だから怖ろしい呪物の材料となり得る”と、思ってしまう”」

闇咲「だが昔は違う。七つを越えるまで生きるのが半々だった時代、嬰児の遺体が当り前のようにあった時代では軽い」

闇咲「……まぁ親が子を思うのは当然であるし、葬式はあげられずとも色々な方法で冥福を祈ったのも事実であるが」

鳴護「なんか……思ったよりもディープに切っていきますね」

佐天「割とネタ気分でやったんですが――あ、あれはどうです?『くねくね』!」

鳴護「いや涙子ちゃんそれはちょっと……あれはネタ担当っていうか」

闇咲「☆5だ」

鳴護「ですよね、そのぐらいの評価――って最高得点ですか!?」

佐天「軽い気持ちで振ったあたしも驚いています。どちらかといえばネタ枠なのがどうして?」

闇咲「あれは零落した行き逢い(ゆきあい)神だと推測できるが……その前に、君たちが知ってる範囲でくねくねの特徴を挙げて欲しい」

佐天「あー、あたしはですね。洒落○のまとめサイトでSS見ましたよ。怖いのは怖いですけど、なんなんだこれ?って疑問符の方がおっきかったかもで」

佐天「まずくねくね、ですよね。横になってウネウネしてるんだったら『蛇かな?』ですけど、立ったままなんでと」

鳴護「あたしは流れている動画で。同じく怖さよりも『ナニコレ?』だったかなー……同じく白い?幽霊さん?と」

闇咲「付け加えるならば夏場、水田や川の側で目撃例があることか。ならば山の神で間違いないだろう」

佐天「あれ今行き逢い神って言いませんでしたっけ?」

闇咲「一柱の神でも複数の属性を有することがある。というか殆どがそうだ」

闇咲「例えば蛇神は水の神、治水の神として崇められているところもあれば、農耕神とされているところもある」

闇咲「他にも冶金と製鉄に通じていたり、当然生と死の象徴にもなっている」

闇咲「その中でも山の神は扱いが難しい。大概の場合、固有名詞が存在しない」

鳴護「ない、んですか?」

闇咲「ない。ただ『山の神』と呼ばれており、石碑や石塔にもそう記されていることが殆どだ」

佐天「なんかこう、風情が無いっていいいいますか、あたしの中の中二スピリットが『オヤシ○様でいいじゃんよ!』って叫んでいます」

闇咲「勿論正式な名称がその集落ごとにあった可能性は否定出来ない。しかし本題とは違うので割愛する」

闇咲「それで山の神なのだがな、本質の一つは豊穣神だ。山の神が山から里へ降りてくると春になり、里から山へ帰ると冬になる」

鳴護「シンプルな世界観ですね」

闇咲「気候の善し悪しで死人が出る世界観だからな。あまり余計な属性を付加させる余裕がなかったのだろう」

闇咲「そしてまぁ山の神が里へ降りたあと、神が宿る先、逗留する場所がある。それは村人が拵えた石の祠であったり、社である場合もある」

闇咲「見たことはないだろうか?水田のすぐ近く、水路の脇辺りに小さな祠が――都会の人間に言うのは理不尽か」

佐天「アーカイブでなら見た気がします。里山の原風景か何かで」

闇咲「あとあぁ桜か。里の桜が咲くと『山の神様が降りてきた』として田植えをする習慣もある」

鳴護「あ、それあたし見たことあります!春になると全国の有名な桜が開花するの追いかける番組で、『なんで田んぼの近くに桜?』って思いました」

闇咲「付け加えるのならば案山子(かかし)もそうだ。稲を収穫するまでは丁寧に扱い、秋になると然るべき手段で炊き上げて”帰す”という地方もある」

鳴護「あれ……?なんかこう、いやーな繋がりが」

佐天「奇遇ですね。あたしも思い当たる感じです、あれ似てるよなと」

闇咲「よって山の神は田の神を兼任し、同時に水田を守る水神でもある。気象であったり稲の神もそう」

闇咲「……そして最初に述べた行き逢い神も」

佐天「わざわざカテゴリー別にするって事は、あんまり良くない感じですかそれ?」

闇咲「悪い。良くて発狂、悪くて即死、最悪なのが一家そろって疫病に罹患させられる場合もある」

佐天「タチ悪っ!?」

鳴護「ていいますか、七人ミサキも……?」

闇咲「分類からすれば行き逢い神、来訪する神の一柱になるな。山の神も……まぁ、行き逢うと祟ると言われている」

佐天「正体確定しちゃったような感じじゃないですか」

闇咲「ただ山の神と言っても幾つか種類がある。女神であり嫉妬深くかつ醜い金屋子(かなやご)神、単眼鍛冶神の天目一箇(あめのまひとつ)神」

闇咲「ローカルな信仰になると山精(さんせい)、河童が転じた山童(やまわろ)、そして単眼一本足の鬼である一本ダタラ……と、様々だ」

鳴護「地域によって色々な山の神様が崇められていた、ってことでしょうか?」

闇咲「そうなるな。そしてその中のどれか、行き逢い神と祟り神の性質が強い一本タダラが、くねくねに一番近いのではないかと私は思う」

鳴護「その一本ダタラ?さんはどういう人なんですか?」

佐天「目が一つで足が一本、ピョンピョン撥ねるようにして移動する鬼かなぁ。昔話でよく人を攫ったりするんだよ、大抵失敗するんだけど」

鳴護「あー、体型的にも似てるね」

闇咲「ただし、私の論には穴がある。それは山の神が山へ帰る日が決まっている”場合”がある」

佐天「冬になったら帰るんじゃないんですか?」

闇咲「そうだ。果ての二十日(はてのはつか)といって12月8日がその移動日だとされている。その日は”行き逢わない”ように、村人は物忌みをして家へ籠る」

鳴護「物忌み?」

闇咲「節分の日に鰯の頭や柊の小枝を玄関に刺す風習があるだろう?あれは本来、徘徊する良くないものを家から遠ざける呪いだった」

闇咲「山の神に関してはそこまで悪質な存在とは思われていなかったようで、出くわさない限り無害かつ有益だとされていたようだが」

闇咲「逆に言えば”その日”さえきちんと把握した上、避けるように心がけていれば災難はやってこない……問題なのはその移動日が本来真冬だということだ」

佐天「あー、真逆ですかね……くねくねの目撃例ってほぼ真夏ですし」

闇咲「場所が水田であるし、水神が田の神関係であると絞り込むとそれ以外の存在とは思えないが」

鳴護「でも目撃例は川の方でもありませんでしたっけ?」

闇咲「川はどこへ繋がっている?」

佐天「海?」

闇咲「ではなく、もっと手前だ。人里のどこへ引き込んでいる?」

鳴護「――水田……!」

闇咲「都市部でも散見されているようだが、そこまで行くと候補が多すぎて絞りきれない――というか」

闇咲「仮にくねくねが人里へ降りた山の神だとして、かつ怪異が現実に存在するとして、という二つの仮定の上で話を進めるが」

闇咲「現代には伝わっていないだけで、タブーになっている要件があるのかもしれない」

佐天「特定の日には外出しない、みたいな?」

闇咲「何度も言うが山の神というのは非常に大雑把な分類の上、正体も多岐に渡る存在だ」

闇咲「ある地方では人を神隠して妣(はは)ヶ国へ引き入れる冥府の神として。またある地方では豊かな産物をもたらす豊穣神として」

闇咲「なので我々の知らないだけでローカルルールが存在し、それに抵触した人間が触りを受けた、という可能性もない訳ではない」

闇咲「なんと言うか文化の途絶とでもいうのか。最初にくねくねの話を聞いたとき、厠(かわや)神か?と思った」

佐天「かわや……あぁお手洗いの神様ですね」

闇咲「厠神は祟り神としての性質が弱いことから、すぐに否定したのだが、見た目はよく似ている」

鳴護「あんな感じなんですか?」

闇咲「あぁ。厠神は両腕のない神だからな」

佐天・鳴護「……はい?」

闇咲「君たちは『どうして?』と思っているのだろうが、私にも分からない。何らかの謂れや由来は確実にある筈なのだが、現代には伝わっていない」

闇咲「現代では非常にセンシティブな問題であり、ともすれば蔑視にも繋がるため研究者はいないか、外に漏らさない。そういう事例が少なからずある」

闇咲「知らなくていいことは残っていないのか、知らなくていいこと”だから”残さなかったのか。微妙なところだが」

佐天「いやいやいやいや。もうそうなったらお手上げですし、人類滅びますよ」

闇咲「心配ない。直感で大抵は防げる」

鳴護「また理屈詰めでやってきたのにアナログな方法ですか!?」

闇咲「前に知人が山の方へ旅行したときの話だ。とある村で背景素材用の写真を撮影していたら、村外れに来てしまった」

闇咲「子供の声がするのでここも観光名所だな、と思った。思ったのだが……写真は撮らずに帰ってきて、その話をした」

闇咲「恐らくそれが正解だったろう。恐らく写真を撮っても何が起きた訳でもないが、本能的に”怖い”と思うのには大抵理由がある」

佐天「それ、どんな風景だったんですか?」

闇咲「大量の風車と地蔵、寂れた街道筋”なら”珍しくもない風景だ」

佐天「なんかあるんですねー、きっと」

闇咲「賽の河原で石積みをする子供を救うのは地蔵菩薩。そして農地以外で立てられている風車は供物」

闇咲「住民に比例せず数が多いのは、旧い街道では旅籠ごとに春を売る商売の人間が」

鳴護「だからその聞かれれば何でもレスしてくるのやめませんか!?謎は謎のままボカして置いた方がいいって事もあるんですよ!?」

佐天「えっと……あの、あたし気づいちゃったんですけども」

鳴護「な、なにかな!?実は当麻君が見切れてましたって言われても対応出来ないよ!?」

佐天「闇咲さんの話は実にガチだったのは認めますけど、これどれだけ放送に使えるのかな……?」

鳴護「トイレの神様はマルッと削除だし、人身御供の話もギリギリだからできないよね!人選を間違ったな」

佐天「あー……さ、ARISAさん!今から30分ばかりガールズトークでもしましょうか!」

鳴護「言ったじゃん!だからあたし最初に言ったじゃんよ!『あたし達がダベってるだけの方がいいよね!』って!」

闇咲「本当に危険なものは電波には乗せられない。そして”当り”の話は良識ある人間がどこかで止めるか、止めさせられる。だから広がらない」

闇咲「……まぁ、程々にな」



――統括理事長特別収監施設

一方通行「なにこれ怖ェよ。オッサンが何マジで語ってンの?」

黄泉川「大体合ってんのかまたタチ悪いじゃんよ」

一方通行「妄想喋ってるよォにしか聞こえねェけど。便所神の下りなんか特によォ」

黄泉川「一応担当の先生にも確認したじゃんが、まぁそういう説もあるにはあるじゃん。謂れが全く分からないのも含めてじゃん」

一方通行「まァ……これ流すのは問題かもなァ。ただでさえ魔術がどォだで浮き足だってンのに」

黄泉川「前統括理事長が失踪したのも、面倒事全部アンタに押しつけるため、とかいうんじゃないじゃんね?」

一方通行「あのカスならやりかねェが多分別件だ。そのウチ【ドッキリ大成功】ってプラカード持って復活するに決まってる」

黄泉川「まぁ悪影響じゃんし、これからもこのケーブルテレビどうするじゃん?って聞きに来たじゃん」

一方通行「歴史から学ぶのは悪ィことじゃねェけども……トガリ過ぎた知識持っても持て余すしなァ。で、どォすか専門家?」

クリファパズル545「全然分かんないです。西洋魔術は網羅していますけど、極東の島国までは知りません」

一方通行「オマエマジで何の専門家?なンだったら役に立ってくれンの?」

クリファパズル545「ジャンルでいえば――愛、ですかねぇっ!性愛的な意味で!」

一方通行「ウルセェわ。まずオマエは構造が人類なのかどうかからスタートしろ」

ガチャッ

一方通行「ア?」

レッサー「――このっ、キャラ泥棒が!!!」

一方通行「話の流れ無視して入って来ンなよ」

レッサー「誰に断ってそのキャラやってんですか!?私がちょっとメインヒロインルートから外れた隙に!油断もなにもあったもんじゃないですね!」

黄泉川「メインヒロインならルート外れないじゃん?」

レッサー「だまらっしゃいマニア向け!折角『ニャルなんとかさんのパクりwww』って最近言われなくなったと思ったらこの扱いですか!?」

一方通行「涙拭けよ下請け。そして下請けは下請けらしく仲間との絆もうっちゃって下請けしてりゃいいじゃねェか」


-終-

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