MMR(御坂美琴の料理教室) もっかい基礎編 「揚げ物」
――柵中 放課後
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
佐天「おつかれー初春ー」
初春「あ、お疲れ様ですよー。てか佐天さんは特にだと思いますが」
佐天「まぁねー。数学のハゲに目の敵にされてるしさ」
初春「授業中に寝てればそりゃ怒られますって。課題も出され――」
佐天「お願いしますっ初春さん!あなただけが頼りなんですっ!」
初春「あーもう抱きつかないで下さい!制服が寒いんですから!」
佐天「いいって言ってくれるまで、離さないぜ?」
初春「だからそういうの禁止で!一部の女子とヘンタイからただでさえ疑われてんですよっ!?」
佐天「ういはるー、白井さんをヘンタイ呼ばわりは……まぁ事実だけど」
男子A パシャッ、ピロリロリーン
佐天・初春「「……」」
男子A グッ
初春「クラスメイトのA君が、これ以上ないってほどいい笑顔で親指立てて写メしていきましたね……」
佐天「……一部の男子にも需要あるんだね。百合厨的な」
初春「本当にこの国の少子高齢化は、えぇ人ごとではなく」
佐天「って訳で自重します、はい。だから課題プリーズ?」
初春「ホントにもう佐天さんはしょうがないなぁ(※デス声)」
初春「今日は非番ですし、手伝うんでしたら少しだけ」
佐天「ありがと初春っ!友達って意味で愛してる!」
初春「自重は?ねぇ30秒前に自重するって言ったの憶えてますか?」
佐天「いやー……女の子同士だったら、言わない?別に好きだよー、とか、愛してるぜ−、ぐらいは?」
男子A「言うな、メッチャ言うな!先輩も言ってたわ女子校では日常茶飯事だって!」
初春「会話に入って来ないで下さい男子Aさん。それ多分(※ただし二元に限る)って注釈つきですから」
佐天「あたしの知り合いの人でね」
初春「あ、オチ読めたんでそれ以上いいです。KMJさん(仮名)のロングレンジ狙撃はちょっと」
佐天「それじゃ帰ろうか!昨日見つけたファーストフードのお店へ!」
初春「課題、あの、課題は……?」
――下駄箱
佐天「うっひゃー!まだ寒いな−、学校の中も寒かったけどより寒いよ!」
初春「大寒ちょい過ぎですからねぇ。これ以上はないかと思いますよ」
佐天「雪もさっさと溶けちゃったしなー。実はあたし結構積もってほしかった派なのですよ」
初春「私はごめんです。事故増えてトラブル増えてテンション上がって事件増えるんで」
佐天「はっちゃけ方が尋常じゃないもんね。ウチの学校に限らず」
初春「その中には私の目の前にいる方も入ってますよ?今年の目標は『なるべく風紀委員のお世話にならない』ですからね?」
佐天「えー、それより『ガンガン行こうぜ!』の方が好きだなー」
初春「ガンガン突っ走った挙げ句、未遂含めて誘拐三回の人は自重しましょう」
佐天「いやさぁ、それはこう運命に導かれて後付け設定が増える的な?」
初春「そういうのも自重しましょうか!佐天さん、今年は自重Yearでお願いしますよ!」
佐天「現時点においての後付け設定はジオ○の総戦力はネオジオ○に匹敵する……!」
初春「運用がダメだったんでしょうね。主に総帥が人徳皆無だったり、まず戦争する前に家庭内でのgdgdをですね」
佐天「まずキマイ○隊を木馬にぶつけただけで、その後の歴史は大幅に変わったと思うよね」
……ザワザワ……
佐天「って校門のとこ、なんか騒いでんだけど。なんかイベントあったっけ?」
初春「移動販売の生メロンパン屋さんは先週来たし、鈴カステラ屋さん――」
佐天「――の、ローテーションは来週のはずだったけど」
初春「……そういところはきちんと把握してるんですよねぇ、佐天さんは」
佐天「さ、さぁ見に行こうかウイハルン!新しい冒険の始まりだ!」
初春「ドイツ人っぽく言うの禁止で。響きがちょっとバイエルンに似てるじゃないですか」
――柵中 校門前
御坂「……」
男子生徒D「――100年前から愛してましたっ!」
御坂「……」
男子生徒D「……」
御坂「……ん?あたし?ごめん聞いてなかった」
男子生徒D「おつかれっしたー!」 ダッ
男子生徒E「よーしここは噂に聞く”Kabe-Dong!”であばばばばばばばばばっ!?」
御坂「あ、ごめんね。痴漢かと思って」
男子生徒F「お前が好きなのは俺が一番分かってる!」
御坂「ラノベのタイトルみたい。告白するときですら自分の言葉を使えないのって論外よね」
男子生徒F「さようなら、僕の初恋……」
女子生徒G「あたしのお姉様になって下さい!」
御坂「もういる。厄介なのが既に一人」
佐天・初春「「……」」
初春「……佐天さん?最初のモンスターが現われましたよ、退治してくださいな」
佐天「大魔王がよりにもよって私たちの校門でスタンバってたよ!イベント戦闘確定だよね!」
初春「私たちの冒険は早々に終わってしまいました。物理的に倒せません。政治的にも無理です」
佐天「……逃げるって選択肢は……?」
初春「できなくはないでしょうが、後から壮絶に拗ねられそうで」
佐天「魔王からは逃げられない……!」
初春「ホイミスライ○Lv2とはぐれメタ○Lv1にアスラゾー○は荷が重すぎますよね」
佐天「あれ?あたし遊び人扱いされてないかな?」
初春「かといって素直に出ていっても、明日の登校から下校までずっと質問攻めに遭いそうな気配ですよ」
佐天「てかなんで告白大会になってんの……?」
初春「『知名度高くて外見もよし、なんかもう流れで一生の記念にダメ元で行っとけ!』的な流れかと」
佐天「御坂さんに超失礼だなソレ!」
初春「――と、いう訳で佐天さん!」
佐天「な、なに初春?目がマジなんだけど」
初春「私はちょっと用事を思い出したので、佐天さんに御坂さんをですね」
御坂「あ!ふ、二人とも!」
佐天「ういはる、は、まわりこまれた!」
初春「魔王からは逃げられない運命なんですよねぇ、えぇえぇ分かっていましたとも」
御坂「奇遇よねっ!たまたま会うだなんて!」
佐天「ストーカーかな?」
初春「御坂さん御坂さん。一部の男子にとっては『そんな拙い言い訳してまで待ってくれたんだ!』と、胸キュンポイントかもしれませんが」
初春「生憎私たちが出てくるまで結構経過してるため、『時間余ってたのにその言い訳でいいの?』っていうね。現実的な観点から」
御坂「いやぁ偶然ってのは怖いわー。ちょっと悩んでたらバッタリだわー!」
初春「偶然じゃないですよね?作為がK点越えするぐらいあからさまですよね?」
佐天「どうして御坂さんは周囲から良くも悪くも目立ってるのが分からないんだろう……?」
初春「マジレスすると、周囲からの期待と羨望とヘンタイが壁になって対人コミュ力を低下させていたり」
御坂「立ち話もなんだしよかったらお茶でもどうっ!?」
佐天「このまま解散って選択肢はクローズされてるんですよね。分かってました」
御坂「オゴらせてもらうわ!」
佐天「――さぁ行きましょう御坂さんっ!青い春と書いて青春と読む時間は待っちゃくれませんので!」
初春「大概です。佐天さんも大概ですよね」
――公園
佐天「いやでもやっぱり御坂さんお金や物で釣るのは良くないと思うんですよ」 モグモグ
初春「しっかりクレープを食べながら言うのは、ちょっと仁義に反しますねー」
佐天「あたし達友達じゃないですか!もっとこう気軽に声をかけてくれれば!」 モグモグ
初春「ダブルクレープ装備している時点で台無しな……あ、口ついてますよー。今拭きますからねー」 フキフキ
御坂「え?そこはキスしてとるところじゃ……?」
初春「気をしっかり御坂さん!どこかのヘンタイの汚染が着実に進行してますよ!」
佐天「なんだかんだで常盤台恐るべし……!素でボケてくるとはやりますなっ!」
初春「ま、まぁ御坂さんのSAN値チェックは後程しっかりするとして――で?」
御坂「で?」
佐天「わざわざあたしらのガッコまでいらしてなんのご用です――ハッ!?まさか例の御坂さんの思い人に進展が!?」
御坂「と、友達ねっ!あたしの友達の友達であってあたしの話ではないわよっ!」
佐天「まっかしてください!自分に累が及ばない範囲でのドロドロとした話大好物です!」
初春「佐天さんなんでも正直に言えばいいってもんじゃないですからね?まぁある意味本音は本音ですけど」
御坂「あーでもごめんね、そっちは相変わらずで」
初春「御坂さんも恋愛敬虔ゼロな恋愛マスター()に相談してる時点で負け戦決定ですよ」
御坂「あ、それよりお土産があるの。これ、よかったらどうぞ」
佐天「ありがとうございま、すっ?」
初春「なんで疑問系ですか。失礼ですよ」
佐天「靴下のキーボルダーですか?なんでまた」
御坂「うん、ちょっとグリーンランドにね」
初春「あ、成程。サンタさんの本場ですよね」
御坂「サンタさんを探しに」
初春「いませんよ!てかちょい旅して見つかる訳ないじゃないですか!?」
佐天「そうですよ!いたとしてもサスカッチですって!」
初春「そっちもいません。てかサスカッチは北米在住設定じゃなかったですかね」
御坂「それがいたのよ!サンタっぽい服を着てトナカイを移動手段に使ってるお年寄りが!」
初春「ただ単にサンタ好きのお年寄りです。色々な意味でそっとしてあげてください」
佐天「観光地にいるよね。有名人にコスプレしてお土産物売る人」
御坂「適切なアドバイスを貰ったけど……騙されたのかしら?」
佐天「ま、まぁお土産ありがとうございますね!クリスマスシーズンにつけたらお洒落ですよねっ!」
初春「ありがとうございますー」
御坂「なんかレーソウ?で、危なくなったら千切って投げると効果があるって話」
初春「へー、そんなジンクスあったんですか」
佐天「日本昔話でもあるよ。『三枚の御札』みたいな」
御坂「ローカルルールみたいなのかもね。あたしも始めて聞いたし」
佐天「んではクレープもゴチになりましたし、これからどうします?定番でブラって行きますか?」
初春「佐天さん佐天さん、空気読めるようになった方がいいですよ?今本題切り出す前にワンクッション置いてるんですから」
佐天「空気能力者だけに、みたいな!」
初春「だから、そーゆートコが」
佐天「えー、そうなんですか御坂さん?」
御坂「――問題っ!デーデン!」
御坂「外はサクサク、中はシットリ、これなーんだ……ッ!!!?」
初春「台詞の軽さの割には力みすぎてますね。気合いが入りすぎて空回り」
佐天「セブ○のダブルシュークリーム?」
初春「あーあれ美味しいですよね。学生にはちょっとお高めですけど、プチ贅沢で買いたくなりますし」
御坂「そうなの?何年か前にロールケーキ流行ったけどその系列?」
佐天「専門店にはボリュームとさくさく感で劣りますけど、コスパ的には中々侮れませんよ。あたし的にはファミ○のチョコバナナクレープ推しですが」
初春「っていう特集やってましたもんね」
佐天「いやぁアレがね。こうお店のクレープだと皮焼いて具材乗せて巻くじゃん?その時にチョコソースやチョコチップ盛るんだけどさ」
佐天「皮の温度や直ぐ食べることを想定してチョコ量入れないor流体のままってのが多いんだよ」
初春「あ、確かに言われてみれば」
佐天「対して!コンビニクレープは最初から要冷蔵を想定しているため固形チョコがトッピングされているんだよ……!」
佐天「皮の熱で溶けることもなく、こう一口噛むごとにザクザクした食感がハーモニー!ただちょっと量が少ないけど300円未満(税別)としちゃ破格ですな!」
御坂「ちょっとコンビニ行ってスイーツ買い占めてくるわ!」
初春「待って下さい御坂さん!佐天さんのテンションに巻き込まれて自分を見失わないで!何かご用があったんでしょう!?」
御坂「あ、危ないところだったわ!流石柵中のエンジェル・ハイロ○と呼ばれるだけのことはあるわよね!」
佐天「超初耳なんですけど。てか洗脳装置と一緒って」
初春「中の人的には道を(こっちに)踏み外させた原因を作ってるかと。いやこれ独り言ですけど」
御坂「お料理の特訓してるって言ったでしょ?あれがちょい行き詰まっててねー」
佐天「常盤台の寮にキッチンってない――訳、ないですよね。あ、そっちで作ったらメンドイんでしたか」
御坂「ううん、それは別に。てか調べてみたらお料理やお菓子作るのが趣味の子もいてね、別に悪目立ちはしないのよ」
初春「御坂さんの『目立ってない』のレベルがどんなものか怪しいんですが……では何か問題が?」
御坂「お料理するじゃない。で、一人で食べても仕方がないから誰かに食べて貰って感想聞くわよね」
初春「ですねぇ。一番の上達の道かと」
佐天「あー……これアレだよ。きっとアレ案件だ」
初春「シッ佐天さん!確かに私もアレだってオチ分かっちゃいましたが、もっと様子を見てみましょう」
御坂「ま、自分で言うのもなんなんだけど、食べられるものは出来るようになったのよ?ちゃんと火が通ってるし、味付けが濃すぎるとか薄すぎるとかなくね」
佐天「基本スペック高いですし、努力を惜しみませんし――動機も動機ですしねぇ?」
御坂「べ、別にいいじゃない!お料理できて損はしないでしょ!?」
佐天「『オッサン一人暮らしでも家事炊事洗濯で全く困らず、そのまま結婚する必要性を見出せずに気がつけばアラフォー』」
(※あと二年でそれも終わります)
御坂「やっぱり人間は助け合いって必要だと思うの!何でもかんでも一人でできればいいって話じゃないわよね!」
初春「例が特殊すぎます。そしてただただ悲しい」
御坂「ま!それでねっ!食べて貰うとなると死んでもいいって人に食べて貰うじゃない!?」
初春「そっちも極端すぎます。てか御坂さんの中で白井さんは『死んでもいい』カテゴリーへ入れてるんですか」
御坂「信頼してるから。簡単には死なないって」
佐天「まぁ……白井さん的には御坂さんの手料理はご褒美ですし、Win-Winの関係っちゃ関係ですよね。誰も損してない」
御坂「あたしもあからさまに失敗したのとか、炭化したヤツ食べさせる訳じゃないし。そこはまぁ普通な訳。でもねー、問題がさー」
御坂「黒子って何食べても『お姉様の作った愛情たっぷりのお料理は美味しいですのっ!!!』って」
佐天「あ、今脳内白井さんの声で再生されました」
初春「言いますよね、白井さんだったら」
御坂「ありがたいはありがたいんだけどさ。いやこれいくらなんでも、と思って試してみたのよ」
佐天「試す?何をですか?」
御坂「お総菜を混ぜてみたんだけど……うん、『お姉様の肌の匂いがしませんですわ!』って見抜いてさ」
佐天「本日二度目のストーカーかな。あ、二人目か」
初春「多分見た目と味付けで分かったんでしょうが、ヘンタイの場合本当に御坂さんの匂いで判別してる怖れも」
御坂「という訳でね。二人にはお料理の相談やら試食やらに付き合ってほしいなと」
佐天「あたしはオッケーですね。てか今からあたしんちの寮でしましょう」
初春「私もお付き合いしますよ。緊急出動がない限りは、ですが」
御坂「あ、そのときはあたしも出張ってパパっと解決」
初春「しなくていいです。力は力を呼ぶ結果にしかならないんで」
佐天「あ、知ってるそれ!自分が勝ち逃げするときに使う台詞だよねっ!」
初春「間違ってはないんですが、はい、えぇっと情緒ってのがですね」
――スーパー
佐天「それじゃ適当に食材見繕ってきますんで、手分けして!」
御坂「まず意味が分からないわ。一緒に見るって選択肢はないわけ?」
初春「えーっと、佐天さんの視線が駄菓子コーナーに向いてますので察して頂ければ幸いなんですが……」
御坂「あたしも行きたい、っつーか駄菓子ぐらい食べるわよ!そこまでお嬢じゃないわよ!」
佐天「マジですか。意外――でも、ないですね」
初春「ちなみに御坂さん的フェイバリットは何が?」
御坂「最新巻の『サヤちゃんとずっとに一緒にいたい』、かな?」
佐天「だかしか○ですよね?惜しいっちゃ惜しいですしテーマ的にもニアピンでありますが、それ中の人目当てでチェキってるだけですよね?」
御坂「た、食べるし!ダッ○ぐらいだったら!」
佐天「はーい御坂さんボッシュート!お菓子はあたしが見繕うっていうか、いい機会だから駄菓子の真髄お見せしましょう!」
初春「”ご覧に入れましょう”」
佐天「ご、ご覧に入れるんだよっ!」
御坂「たまに出没するシスターさんみたいになった」
初春「と、いうことですので御坂さんは時間でも潰してて下さい」
御坂「あっはい。分かりまし、た?」
――精肉コーナー
試食販売員「あーっと……衛生用帽子よーし、マスクよーし、試供品の肉一式よーし、ホットプレートよーし」
試食販売員「サラダ油にキッチンペーパーにアルミホイルにつまようじよーし……と、あぁ忘れるところだった」
試食販売員「チラシの裏にーっと」 キュッキュッ
試食販売員「……完璧だ!」 ペタッ
チラシの裏【腹ぺこシスターさん、神様はあなたを見ています】
試食販売員「オールグリーン……さて」
試食販売員 カチッ、ジジジ……
試食販売員「こんにちはー、試食いかがですかー?よかったら一口どうでしょうかー?」
試食販売員「○○のハムー!○○製品のハムは簡単に焼いただけでこの香ばしさ!朝食昼食夕食にもってこい!」
試食販売員「疲れて帰って来ても封を切っただけでハイご馳走!モノは試しに○○のハムを食べていって下さい!」
御坂「……」 ジーッ
試食販売員「あー、そこの奥さんどうですか一つ?美味しいですよー、買えって言いませんから軽く食べるだけで、はい」
御坂「……」 ジーッ
試食販売員「あ、そっちのお父さん!よかったらこれ一口だけでもどうぞ!気に入ったら買ってってくれると嬉しいですが!」
御坂「……」 ジーッ
試食販売員「えっと、その……」
御坂「……」 ワクワク
試食販売員「お前もう帰れよ」
御坂「それが客に対して言うことかっ!?てか第一声それかっ!?」
試食販売員「あ、あぁすいません。ついなんか反射的に」
御坂「なんか珍しいことやってるなー、と思って見てただけで帰れって!てかあんた、あたしの知り合いじゃないわよね!?」
試食販売員「き、気のせいじゃないですかー?こんな顔どこにでもいますって」
御坂「紙の帽子にマスクしてて誰が誰だか分からないんだけど……」
試食販売員「すいません仕事中なので外す訳にはいかないパヨ」
御坂「急に語尾にパヨつけ始めた!?多分あたしよりか上ぐらいの歳なのに!?」
試食販売員「いや大魔法○のパヨた○がだな」
御坂「黙りなさい!あたしキャリア的にはなかったことにしたい黒歴史その一!」
試食販売員「いやァでもオマエラジオでもそンなンだったろォが」
御坂「……ぶち殺したくなる口調よね。人生の厳しさ教えようかしら」
試食販売員「引き出しの狭さが悔やまれるよなっ!」
御坂「まぁいいんだけどさ。ちょっと聞いていい?」
試食販売員「はぁ」
御坂「これってアレよね?アニメとかマンガに出てくるデパ地下の試食ってやつなのよね?」
試食販売員「スーパーですけどね」
御坂「ってことは食べ散らかして店員さんの怒られるフラグを回収するって、あの?」
試食販売員「フラグ言うなや、まぁ合ってますが」
御坂「へー、ふーん、あーそっかー、これが実物なのねー。初めて見たー」
試食販売員「あ、すいませんお客様。少し宜しいでしょうか?」
御坂「はい?」
試食販売員「まず右手に見えますのがパンのコーナー、その奥にサービスカウンターがございますです」
御坂「なんか日本語変だけど、それが何よ」
試食販売員「で、その更に先、見えますでしょうか?非常出口のマークがぶら下がってる標識」
御坂「あ、うん。入り口の所よね」
試食販売員「お帰りはそちらとなっておりますので、またのご来店をお待ちしております」
御坂「またえらく迂回してぶぶ漬け出してきたわね!?京都人でももっとはっきり言うわよ!多分だけど!」
御坂「……つーかほんっっっっっっっとにあたしの知り合いじゃないの?その芸風が知り合いのツンツン頭と酷似してんだけど!」
試食販売員「気のせいパヨ!世の中には似ている芸風の人が三人いるって聞くパヨ!」
御坂「パヨ推し止めなさいよ!黒歴史がまた晒されるじゃない!」
試食販売員「ほら、もうこれやるからあっち行けよ」
御坂「ぞんざいだな!主旨もっとフレンドリーにするところじゃないの!?」
試食販売員「新しいなんかハムだってベーコンかもしれないけど」
御坂「どっちよ。あ、でも初めてでなんか新鮮――ってお値段。あー……」
試食販売員「なに?何か文句あんの?」
御坂「なんか安すぎて心配っていうか」
試食販売員「メーカー出してる肉なんだから問題ないだろ。つーかこれダメだったら加工肉全般ダメってことになんぞ」
御坂「いいのかな……まぁ食べるわ!頑張って!」 パクッ
試食販売員「どーすか。ソレ食ったら向こう行けよ」
御坂「……ねぇ、これ本当にこのお値段?嘘よね?嘘って言ってよ!?」
試食販売員「お、なんだビリビリ正月早々やんのか?○○製品のハムはお財布にも優しい全国の学生さんと主婦の味方なんだからな!」
御坂「そうじゃなくって!これ、パッケージのよりもっと高い肉使ってないのって聞いてんのよ!?」
試食販売員「はぁ?同じの使わなかったら試食販売になんねぇだろうが」
御坂「いやでも、これ!外がカリカリで中がジワって美味しいのよ!この値段じゃ買えなくない!?」
試食販売員「フツーに焼いただけなんだが……あー、んじゃ見てろパヨ。新しいの焼いてやるパヨよ」
御坂「ごめん。あなたの個人情報これ以上ツッコまないから、思い出したようにパヨやめて」
試食販売員「ホットプレートに油引いて、軽く温めてハム乗せて」 ジュゥゥゥゥゥゥッ
試食販売員「……」
御坂「……」
試食販売員「中まで火が通ったら、移動させて」 ジュゥゥゥゥッ!
試食販売員「軽く焼き色がついたら、はい出来あがりと」
御坂「……能力は使ってなかったわね」
試食販売員「そんな能力あったら欲しいわ!なんかこう相手がアレな人間ばっかりにしか使えない能力より有意義だわ!」
御坂「いただきます……」 パクッ
試食販売員「どう?」
御坂「あれ?あっれー?」
試食販売員「別になんもやってないって。普通に焼いただけだって」
御坂「そんなはず……あたしが家で炒めるときは!もっとこうなんか硬くなるのよ!」
試食販売員「硬く?」
御坂「焼き色ついたんで食べてみたら中にまで良く火が通ってなかったり!逆に長めに火を通したら炭っぽくなるの!」
試食販売員「あー……そりゃアレだわ。お前コンロ”強火”でやってないか?」
御坂「してるけど」
試食販売員「それがダメ。つーか自分で調べろよ。俺今バイト中なんだから」
御坂「このブース全部買えばいいのよね?」
試食販売員「お嬢様、私に全てお任せくださいませ!料理の基本なんてあっという間にご教授致しましょう!」
御坂「急に態度変わったわね」
試食販売員「という冗談はともかく。あ、買ってくれるのは食べる分だけでいい、捨てたり余らしたら食材に失礼だからな」
試食販売員「まぁやってみた方が早いか。ここにハムがある。一袋に四枚ぐらい入ったフレッシュなアレだ」
御坂「一枚厚さ1mmぐらいのね」
試食販売員「これをあえて”強火”にして焼いてみる。まず片面ジューッと」 ジュゥゥゥゥゥ
試食販売員「次に裏返して同じく焼いて、香ばしくなってきたら完成。食べてみ?」
御坂「美味しい。両面均一に焼いてる、わよね」
試食販売員「次。俺が売ってるハム、つーか面倒だからベーコンって呼ぶけど、今度はこっちを焼いてみる」 ジュゥゥゥゥゥッ
御坂「大きさは消しゴムぐらい。厚さも同じぐらいか」
試食販売員「1cm前後。試食用に小さくカットしてある」
御坂「そろそろいいんじゃない?焦げ臭いわよ」
試食販売員「だな。もう一面も同じようにして……終わりっと。どうぞ」
御坂「……」 モグモグ
試食販売員「感想は?」
御坂「表面が軽く焦げてるのに中は硬い。てか油がとけてなくてジューシーさ皆無。生焼け」
御坂「……あたしの失敗と同じだ……!」
試食販売員「結論は簡単。きちんと火が通ってねぇんだよ」
御坂「強火で炙ったのに!?これ以上やったら表面が炭化しちゃうでしょ!」
試食販売員「でも食ってみて分かったろ?中によく火が通ってないって」
御坂「そ、そうだけど!」
試食販売員「あれじゃね?テレビとかでステーキ焼くとき、強火力でブワッ!と焼くから、同じようにやれば!みたいな感じか?」
御坂「アレ……ダメだったの?料理は火力とか聞いたことあるんだけど!」
試食販売員「中華はな、きっちり火ぃ通さないとヤバい環境だったからだ」
試食販売員「あんだけ広い大陸でかつ気候もロシアみたいに寒冷でもない。だから保存方法をきっちりするかよく火を通す」
御坂「香辛料たっぷりだったり、やたら塩辛い料理が多いのも」
試食販売員「イタ飯やフレンチでフランベ以外に強火力なんて使ってんの見たことないだろ」
御坂「待ってよ!ステーキ焼くときなんかは!」
試食販売員「大抵その後、牛のステーキを焼いて切ったら『あーら中は赤身が!美味しそう!』って展開になるよな?」
御坂「あ、通ってないのか!火!」
試食販売員「牛かたまり肉だからなー。まぁそういう料理法もあるが、中までしっかり火を通すときにはあんな真似はしないんだよ」
御坂「牛の肉はきちんとトリミングしてあれば、生でも食べられる、だっけ」
試食販売員「そうそう。だからタタキを出してる店もある」
試食販売員「てかそうだなー……何年か前に『バターのテンプラ』みたいなキワモノ料理が流行ったって知ってるか?イギリスの話なんだが」
御坂「あったわよねー。油に油のツープラトンよねって思ったわ」
試食販売員「一応白人は俺たちより遺伝子の面で太っても成人病に”なりにくい”傾向がある。程度問題なんだが」
試食販売員「でもおかしいと思わなかったか?バターって温めたら固形じゃなくなるだろ」
御坂「特殊な銘柄じゃないの?テンプラ揚げられるぐらいの油へつけたら即・溶けるでしょ?」
試食販売員「いや市販の普通のバターだ。やろうと思えば日本のご家庭でもできる」
御坂「溶けないの……?」
試食販売員「溶けない――あぁいや正確には少しぐらいは溶けるだろうが、まぁバターテンプラは作れる」
試食販売員「その方法は今やってみせたのをそのままやるだけでいい」
御坂「今やってって、ベーコン生焼け作っ――あ!」
試食販売員「分かった?」
御坂「油の温度を高温にして外側だけさっと揚げる!中に火が通らないうちに!」
御坂「そうすれば中のバターを焦がすことなくバターテンプラができる……!」
試食販売員「正解。補足するとアイスのテンプラも同じ作り方をしてる」
(※実在します)
御坂「へー。そんなのもあるのねー――って違う違う。あたしはキワモノじゃない料理の仕方を聞いてんのよ」
試食販売員「だから強火でやったことの反対。弱火と中火でやればいいだけだって」
御坂「……それだけ?」
試食販売員「そもそも強火はそんなに使うもんじゃないんだわ。初心者相手にドヤ顔でいうようなことでもないんだが」
御坂「中までしっかり火を通すには、じっくり中火か弱火で火を通す……と」
試食販売員「そうそう。から揚とかも同じ、慌てずじっくり焦がさずに」
御坂「あの、質問です!」
試食販売員「はいどうそビリビリさん」
御坂「強火でブワッ!と焼いたお肉、反対に弱火でじっくり焼いたお肉があります」
試食販売員「ありますねー」
御坂「あくまでもイメージなんだけど、前者の方が焼いてる時間も少ないし、油っぽさも少なくならない?」
試食販売員「ならない」
御坂「なんで?長時間プレートの上で炙ってる訳でしょ?だったら最初に曳いた油吸っちゃってー、みたいななるんじゃないの?」
試食販売員「炒める油が牛脂で鶏肉炒めるって言うんだったら話は別だけど、まぁ普通にやる分には長く焼いた方が油は落ちる」
試食販売員「そうだな。この牛肉あるじゃん、霜降りっぽいの」 プルプルプルプル
御坂「高すぎて手が震えるほどにっ!?」
試食販売員「この霜降り、つーか油の部分だな。当然火を通せば柔らかくなるわな」
御坂「そうね。だから霜降り肉は『食感が柔らかくて美味しい!』って人気だし」
試食販売員「勿論肉の中にも残る”のも”ある。ただ熱で溶けて液状になる”のも”ある」
御坂「そう、なの?」
試食販売員「すき焼き作るとき、最初に鍋の底へ牛脂押しつけて油曳くだろ?それと一緒だ」
試食販売員「あー、ほら。土用の日にうなぎの蒲焼き作るときさ、串刺して炭火で炙るだろ?」
試食販売員「あんとき、下に落ちる油は魚の中にあった脂肪っつーか油が個体から液状になって滴ったもんだ」
御坂「あ、そっか!そういうことか!」
試食販売員「だから長く火を通せば中まで火が通る。結果として肉の中に含まれている脂肪が温まれば溶けて肉の外へ行くと」
御坂「反対によく火を通さないと油は固形のまま体内へ……!」
試食販売員「わざとそうする料理もあるから、てか脂(あぶら)は旨味でもあっから完全に排除すんのもよくはない」
御坂「……そっかー……何となく理屈は分かったわ」
試食販売員「そりゃよかった」
御坂「けどさ、その『中はフワフワ、外はカリっと』みたいなのあるわね」
御坂「つーかアンタが最初に作ってみせたベーコンだけどさ!そっちも教えなさいよ!キリキリ吐きなさい!」
試食販売員「もう話すようなことないんだが……まぁ焼くじゃん?普通に中火で火を通しましたー、と」
御坂「色が変わればいいのよね?」
試食販売員「初心者だったら何枚か同時に焼いて、切って確かめるのもあり。最初から全部完璧できるやつなんていねーって」
試食販売員「んで火が通ったら最後に強火にする」
御坂「ダメって言ってたでしょうが!中まで火が通らないって!」
試食販売員「だから”火が通ったら”の話だよ。表面炙って香ばしくして焦げ色つけて完成」
御坂「あー……今度は逆に強火が中まで染み渡る前に、てか中が硬く締まる前に終わらせるってことか……!」
試食販売員「難しくもなんともない。丁寧にやればまず失敗はしない」
試食販売員「極端な話、少しぐらい硬くなったっていいんだ。火を通さなくてヤバいケースはそこそこあるけど、火を通しすぎてヤバいのはまずないから」
御坂「にゃるほど。今までの失敗はそういうことだったのね、感謝するわ」
試食販売員「どういたしまして。あとできれば少し大目に買っていってもらえると、うん。店長がこっち見てっから」
御坂「――けど、言わせて貰うわ!あなたは一つミスを犯した……っ!!!」
試食販売員「な、なんだってー!?」
御坂「最初に焼いていたベーコン!あなたは強火にしていなかった!あたしに教えた手順じゃなかったのよ!」
試食販売員「……」
御坂「つまり、あなたはやっぱり『美味しく肉を焼ける能力』の持ち主だったんだわ……!」
試食販売員「バッカお前なめんじゃねぇよ。俺何年主夫やってっと思うんだよ。14年だぜ、14年」
試食販売員「もう俺の半生はずっと主夫だって言っても過言じゃないさ!そしてきっとこれからもだな!」
御坂「ごめんなさい。変なテンションで聞いたのは謝るから、こう、普通に戻ってくれると嬉しいかなって」
試食販売員「あんま手料理とは関係ないんだけどもだ。ホットプレート、つーかフライパンって全部温度同じじゃないんだよ」
御坂「ち、違うの?中火にしてあるのに強火とかなってる訳!?」
試食販売員「そこまで極端じゃないんだが、まぁウインナー焼くから見てろ」
御坂「う、うん」
試食販売員「まず油をひいて、点火して」 パチチチチ
試食販売員「ウインナーを真ん中辺りに置きます」 ジュゥゥゥゥゥゥゥッ
御坂「まぁ、こんなもんよね」
試食販売員「次に端の方へ寄せます」 ジュー……」
御坂「あ!弱くなった!?」
試食販売員「このホットプレートはガスコンロと同じで、真ん中に火が当たるタイプなのな。用は家庭のコンロと同じ」
試食販売員「火の当たる部分によって温度は違う。真ん中は強くて端は弱い、だから具材の置き方で焼き加減を調節してんだよ」
御坂「……そっかー!」
試食販売員「つってもだな。大量に焼くじゃん?だから家庭料理みたいに最初中火で、最後の仕上げに強火で!みたいなのはできないんだわ」
試食販売員「だからまずこう、円になってるプレートの中央・右半分でジワーッと焼くんだ」 ジューーーッ
御坂「さっきと音、違くない?」
試食販売員「そりゃ常温か冷蔵にしてあった具材乗せればプレートの温度は下がる。で、くっつかないように炒めると」 カッカッカッカ
御坂「左半分使ってないのは、なんで?」
試食販売員「少し待って……右側に乗せた具材によく火を通ったらば――」
試食販売員「――今まで空けてた中央・左半分へ乗せる」 ジュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
御坂「あ、強火っぽい!中火なのに!」
試食販売員「なんつーかな。最初のプレートの温度は10とする、あくまでも例えとしてだが」
試食販売員「そこの右側へ温度の低い具材を乗せた。このとき右側の温度は5に下がるが、左側は10のまま」
試食販売員「……まぁ実際には8ぐらいにまで下がってるんだけどな。同じプレートなんだから」
試食販売員「そのまま炒めていれば右側の温度は10まで上がる。この時左側はどうだろ?」
御坂「15ぐらいになる、かな?」
試食販売員「何も乗せないで炙ってた分だけ熱が溜ってる。そこへ具材を移せば強火で炙るのと同じ効果があると」
試食販売員「んで右側にはまだ具材を乗せて炙り、左側の具材は焦げ目がついたらさっさとプレートから降ろして完成」
試食販売員「何も乗せてないからまた温度が上がって――ってのを、延々俺たちは繰り返してる訳だな、うん」
御坂「負けました」
試食販売員「まぁ業務用か飲食店の仕事でもしない限り必要のないスキルですけどねっ!人生で有効に使えるって訳じゃないしさ!」
御坂「……ありがとう。なんか怒濤の展開って言うか、このまま佐天さんち行くかと思ったらまさかここで終わらせるとは思わなかったけど!」
試食販売員「あぁそうだな!『導入部分関係ねぇじゃん!JC出したかっただけじゃん!』とは思わないでもないけどな!」
試食販売員「あとよかったらでいいんだけど、さっきからいってる通り店長さんがこっちを監視してるから!できれば大目にハム買ってってくれよなっ!よかったらだけども!」
――スーパー
佐天「ねぇ初春。これってツッコんだら負けなのかな?」
初春「そうですね。『お前なにやってんの?』って言えたら楽でしょうね」
佐天「てゆうか気づいて……いやごめん、気づいてない体ですよね。分かります」
初春「まぁご本人も、だとは思いますので何も言わないのが吉かと」
佐天「てかこれでハム・ペーコンづくし決定だね!」
初春「嫌いじゃないですけど、ドイツ人でもあるまいし加工肉メインって一体」
佐天「頑張れウイハルン!」
初春「ドイツ人っぽく言っても、ノルマの肩代わりはしませんからね?」
佐天「あと補足するけど、今のはから揚にも使えたりするんだよ。二度揚げって言ってだね」
初春「一度油から上げてもう一回揚げる、でしたっけ」
佐天「うんそう。原理っていう理屈は同じで『中は柔らかく外カリカリ』に仕上げるの」
佐天「一度具材を引き上げつつ、フライヤーの火を維持することで油の温度は上がり続ける訳でさ」
佐天「ちょっと待って具材を入れれば最後に強火で炙るのと同じ効果が!みたいな」
初春「へー、流石ですねぇ」
佐天「ただこのやり方だとね。揚げたては美味しいんだけど、冷めたら外も中も乾燥して硬くなっちゃうからお弁当にはあんまり向かない」
佐天「その場合はあんかけか粘度の高いソース系を使って、外側の水分を保てばいい感じになるかなー」
初春「たまーに思うんですが、佐天さんの妙に高い料理スキルは一体どこから……?」
佐天「いえもう家が老舗の――すいません何でもないです」
初春「なんか設定増えそうですよねぇ。今年の間に因縁も一つ二つ」
佐天「目指せ友達100人!気がつけば(ある意味)学園都市最強派閥!」
−終−
キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン
佐天「おつかれー初春ー」
初春「あ、お疲れ様ですよー。てか佐天さんは特にだと思いますが」
佐天「まぁねー。数学のハゲに目の敵にされてるしさ」
初春「授業中に寝てればそりゃ怒られますって。課題も出され――」
佐天「お願いしますっ初春さん!あなただけが頼りなんですっ!」
初春「あーもう抱きつかないで下さい!制服が寒いんですから!」
佐天「いいって言ってくれるまで、離さないぜ?」
初春「だからそういうの禁止で!一部の女子とヘンタイからただでさえ疑われてんですよっ!?」
佐天「ういはるー、白井さんをヘンタイ呼ばわりは……まぁ事実だけど」
男子A パシャッ、ピロリロリーン
佐天・初春「「……」」
男子A グッ
初春「クラスメイトのA君が、これ以上ないってほどいい笑顔で親指立てて写メしていきましたね……」
佐天「……一部の男子にも需要あるんだね。百合厨的な」
初春「本当にこの国の少子高齢化は、えぇ人ごとではなく」
佐天「って訳で自重します、はい。だから課題プリーズ?」
初春「ホントにもう佐天さんはしょうがないなぁ(※デス声)」
初春「今日は非番ですし、手伝うんでしたら少しだけ」
佐天「ありがと初春っ!友達って意味で愛してる!」
初春「自重は?ねぇ30秒前に自重するって言ったの憶えてますか?」
佐天「いやー……女の子同士だったら、言わない?別に好きだよー、とか、愛してるぜ−、ぐらいは?」
男子A「言うな、メッチャ言うな!先輩も言ってたわ女子校では日常茶飯事だって!」
初春「会話に入って来ないで下さい男子Aさん。それ多分(※ただし二元に限る)って注釈つきですから」
佐天「あたしの知り合いの人でね」
初春「あ、オチ読めたんでそれ以上いいです。KMJさん(仮名)のロングレンジ狙撃はちょっと」
佐天「それじゃ帰ろうか!昨日見つけたファーストフードのお店へ!」
初春「課題、あの、課題は……?」
――下駄箱
佐天「うっひゃー!まだ寒いな−、学校の中も寒かったけどより寒いよ!」
初春「大寒ちょい過ぎですからねぇ。これ以上はないかと思いますよ」
佐天「雪もさっさと溶けちゃったしなー。実はあたし結構積もってほしかった派なのですよ」
初春「私はごめんです。事故増えてトラブル増えてテンション上がって事件増えるんで」
佐天「はっちゃけ方が尋常じゃないもんね。ウチの学校に限らず」
初春「その中には私の目の前にいる方も入ってますよ?今年の目標は『なるべく風紀委員のお世話にならない』ですからね?」
佐天「えー、それより『ガンガン行こうぜ!』の方が好きだなー」
初春「ガンガン突っ走った挙げ句、未遂含めて誘拐三回の人は自重しましょう」
佐天「いやさぁ、それはこう運命に導かれて後付け設定が増える的な?」
初春「そういうのも自重しましょうか!佐天さん、今年は自重Yearでお願いしますよ!」
佐天「現時点においての後付け設定はジオ○の総戦力はネオジオ○に匹敵する……!」
初春「運用がダメだったんでしょうね。主に総帥が人徳皆無だったり、まず戦争する前に家庭内でのgdgdをですね」
佐天「まずキマイ○隊を木馬にぶつけただけで、その後の歴史は大幅に変わったと思うよね」
……ザワザワ……
佐天「って校門のとこ、なんか騒いでんだけど。なんかイベントあったっけ?」
初春「移動販売の生メロンパン屋さんは先週来たし、鈴カステラ屋さん――」
佐天「――の、ローテーションは来週のはずだったけど」
初春「……そういところはきちんと把握してるんですよねぇ、佐天さんは」
佐天「さ、さぁ見に行こうかウイハルン!新しい冒険の始まりだ!」
初春「ドイツ人っぽく言うの禁止で。響きがちょっとバイエルンに似てるじゃないですか」
――柵中 校門前
御坂「……」
男子生徒D「――100年前から愛してましたっ!」
御坂「……」
男子生徒D「……」
御坂「……ん?あたし?ごめん聞いてなかった」
男子生徒D「おつかれっしたー!」 ダッ
男子生徒E「よーしここは噂に聞く”Kabe-Dong!”であばばばばばばばばばっ!?」
御坂「あ、ごめんね。痴漢かと思って」
男子生徒F「お前が好きなのは俺が一番分かってる!」
御坂「ラノベのタイトルみたい。告白するときですら自分の言葉を使えないのって論外よね」
男子生徒F「さようなら、僕の初恋……」
女子生徒G「あたしのお姉様になって下さい!」
御坂「もういる。厄介なのが既に一人」
佐天・初春「「……」」
初春「……佐天さん?最初のモンスターが現われましたよ、退治してくださいな」
佐天「大魔王がよりにもよって私たちの校門でスタンバってたよ!イベント戦闘確定だよね!」
初春「私たちの冒険は早々に終わってしまいました。物理的に倒せません。政治的にも無理です」
佐天「……逃げるって選択肢は……?」
初春「できなくはないでしょうが、後から壮絶に拗ねられそうで」
佐天「魔王からは逃げられない……!」
初春「ホイミスライ○Lv2とはぐれメタ○Lv1にアスラゾー○は荷が重すぎますよね」
佐天「あれ?あたし遊び人扱いされてないかな?」
初春「かといって素直に出ていっても、明日の登校から下校までずっと質問攻めに遭いそうな気配ですよ」
佐天「てかなんで告白大会になってんの……?」
初春「『知名度高くて外見もよし、なんかもう流れで一生の記念にダメ元で行っとけ!』的な流れかと」
佐天「御坂さんに超失礼だなソレ!」
初春「――と、いう訳で佐天さん!」
佐天「な、なに初春?目がマジなんだけど」
初春「私はちょっと用事を思い出したので、佐天さんに御坂さんをですね」
御坂「あ!ふ、二人とも!」
佐天「ういはる、は、まわりこまれた!」
初春「魔王からは逃げられない運命なんですよねぇ、えぇえぇ分かっていましたとも」
御坂「奇遇よねっ!たまたま会うだなんて!」
佐天「ストーカーかな?」
初春「御坂さん御坂さん。一部の男子にとっては『そんな拙い言い訳してまで待ってくれたんだ!』と、胸キュンポイントかもしれませんが」
初春「生憎私たちが出てくるまで結構経過してるため、『時間余ってたのにその言い訳でいいの?』っていうね。現実的な観点から」
御坂「いやぁ偶然ってのは怖いわー。ちょっと悩んでたらバッタリだわー!」
初春「偶然じゃないですよね?作為がK点越えするぐらいあからさまですよね?」
佐天「どうして御坂さんは周囲から良くも悪くも目立ってるのが分からないんだろう……?」
初春「マジレスすると、周囲からの期待と羨望とヘンタイが壁になって対人コミュ力を低下させていたり」
御坂「立ち話もなんだしよかったらお茶でもどうっ!?」
佐天「このまま解散って選択肢はクローズされてるんですよね。分かってました」
御坂「オゴらせてもらうわ!」
佐天「――さぁ行きましょう御坂さんっ!青い春と書いて青春と読む時間は待っちゃくれませんので!」
初春「大概です。佐天さんも大概ですよね」
――公園
佐天「いやでもやっぱり御坂さんお金や物で釣るのは良くないと思うんですよ」 モグモグ
初春「しっかりクレープを食べながら言うのは、ちょっと仁義に反しますねー」
佐天「あたし達友達じゃないですか!もっとこう気軽に声をかけてくれれば!」 モグモグ
初春「ダブルクレープ装備している時点で台無しな……あ、口ついてますよー。今拭きますからねー」 フキフキ
御坂「え?そこはキスしてとるところじゃ……?」
初春「気をしっかり御坂さん!どこかのヘンタイの汚染が着実に進行してますよ!」
佐天「なんだかんだで常盤台恐るべし……!素でボケてくるとはやりますなっ!」
初春「ま、まぁ御坂さんのSAN値チェックは後程しっかりするとして――で?」
御坂「で?」
佐天「わざわざあたしらのガッコまでいらしてなんのご用です――ハッ!?まさか例の御坂さんの思い人に進展が!?」
御坂「と、友達ねっ!あたしの友達の友達であってあたしの話ではないわよっ!」
佐天「まっかしてください!自分に累が及ばない範囲でのドロドロとした話大好物です!」
初春「佐天さんなんでも正直に言えばいいってもんじゃないですからね?まぁある意味本音は本音ですけど」
御坂「あーでもごめんね、そっちは相変わらずで」
初春「御坂さんも恋愛敬虔ゼロな恋愛マスター()に相談してる時点で負け戦決定ですよ」
御坂「あ、それよりお土産があるの。これ、よかったらどうぞ」
佐天「ありがとうございま、すっ?」
初春「なんで疑問系ですか。失礼ですよ」
佐天「靴下のキーボルダーですか?なんでまた」
御坂「うん、ちょっとグリーンランドにね」
初春「あ、成程。サンタさんの本場ですよね」
御坂「サンタさんを探しに」
初春「いませんよ!てかちょい旅して見つかる訳ないじゃないですか!?」
佐天「そうですよ!いたとしてもサスカッチですって!」
初春「そっちもいません。てかサスカッチは北米在住設定じゃなかったですかね」
御坂「それがいたのよ!サンタっぽい服を着てトナカイを移動手段に使ってるお年寄りが!」
初春「ただ単にサンタ好きのお年寄りです。色々な意味でそっとしてあげてください」
佐天「観光地にいるよね。有名人にコスプレしてお土産物売る人」
御坂「適切なアドバイスを貰ったけど……騙されたのかしら?」
佐天「ま、まぁお土産ありがとうございますね!クリスマスシーズンにつけたらお洒落ですよねっ!」
初春「ありがとうございますー」
御坂「なんかレーソウ?で、危なくなったら千切って投げると効果があるって話」
初春「へー、そんなジンクスあったんですか」
佐天「日本昔話でもあるよ。『三枚の御札』みたいな」
御坂「ローカルルールみたいなのかもね。あたしも始めて聞いたし」
佐天「んではクレープもゴチになりましたし、これからどうします?定番でブラって行きますか?」
初春「佐天さん佐天さん、空気読めるようになった方がいいですよ?今本題切り出す前にワンクッション置いてるんですから」
佐天「空気能力者だけに、みたいな!」
初春「だから、そーゆートコが」
佐天「えー、そうなんですか御坂さん?」
御坂「――問題っ!デーデン!」
御坂「外はサクサク、中はシットリ、これなーんだ……ッ!!!?」
初春「台詞の軽さの割には力みすぎてますね。気合いが入りすぎて空回り」
佐天「セブ○のダブルシュークリーム?」
初春「あーあれ美味しいですよね。学生にはちょっとお高めですけど、プチ贅沢で買いたくなりますし」
御坂「そうなの?何年か前にロールケーキ流行ったけどその系列?」
佐天「専門店にはボリュームとさくさく感で劣りますけど、コスパ的には中々侮れませんよ。あたし的にはファミ○のチョコバナナクレープ推しですが」
初春「っていう特集やってましたもんね」
佐天「いやぁアレがね。こうお店のクレープだと皮焼いて具材乗せて巻くじゃん?その時にチョコソースやチョコチップ盛るんだけどさ」
佐天「皮の温度や直ぐ食べることを想定してチョコ量入れないor流体のままってのが多いんだよ」
初春「あ、確かに言われてみれば」
佐天「対して!コンビニクレープは最初から要冷蔵を想定しているため固形チョコがトッピングされているんだよ……!」
佐天「皮の熱で溶けることもなく、こう一口噛むごとにザクザクした食感がハーモニー!ただちょっと量が少ないけど300円未満(税別)としちゃ破格ですな!」
御坂「ちょっとコンビニ行ってスイーツ買い占めてくるわ!」
初春「待って下さい御坂さん!佐天さんのテンションに巻き込まれて自分を見失わないで!何かご用があったんでしょう!?」
御坂「あ、危ないところだったわ!流石柵中のエンジェル・ハイロ○と呼ばれるだけのことはあるわよね!」
佐天「超初耳なんですけど。てか洗脳装置と一緒って」
初春「中の人的には道を(こっちに)踏み外させた原因を作ってるかと。いやこれ独り言ですけど」
御坂「お料理の特訓してるって言ったでしょ?あれがちょい行き詰まっててねー」
佐天「常盤台の寮にキッチンってない――訳、ないですよね。あ、そっちで作ったらメンドイんでしたか」
御坂「ううん、それは別に。てか調べてみたらお料理やお菓子作るのが趣味の子もいてね、別に悪目立ちはしないのよ」
初春「御坂さんの『目立ってない』のレベルがどんなものか怪しいんですが……では何か問題が?」
御坂「お料理するじゃない。で、一人で食べても仕方がないから誰かに食べて貰って感想聞くわよね」
初春「ですねぇ。一番の上達の道かと」
佐天「あー……これアレだよ。きっとアレ案件だ」
初春「シッ佐天さん!確かに私もアレだってオチ分かっちゃいましたが、もっと様子を見てみましょう」
御坂「ま、自分で言うのもなんなんだけど、食べられるものは出来るようになったのよ?ちゃんと火が通ってるし、味付けが濃すぎるとか薄すぎるとかなくね」
佐天「基本スペック高いですし、努力を惜しみませんし――動機も動機ですしねぇ?」
御坂「べ、別にいいじゃない!お料理できて損はしないでしょ!?」
佐天「『オッサン一人暮らしでも家事炊事洗濯で全く困らず、そのまま結婚する必要性を見出せずに気がつけばアラフォー』」
(※あと二年でそれも終わります)
御坂「やっぱり人間は助け合いって必要だと思うの!何でもかんでも一人でできればいいって話じゃないわよね!」
初春「例が特殊すぎます。そしてただただ悲しい」
御坂「ま!それでねっ!食べて貰うとなると死んでもいいって人に食べて貰うじゃない!?」
初春「そっちも極端すぎます。てか御坂さんの中で白井さんは『死んでもいい』カテゴリーへ入れてるんですか」
御坂「信頼してるから。簡単には死なないって」
佐天「まぁ……白井さん的には御坂さんの手料理はご褒美ですし、Win-Winの関係っちゃ関係ですよね。誰も損してない」
御坂「あたしもあからさまに失敗したのとか、炭化したヤツ食べさせる訳じゃないし。そこはまぁ普通な訳。でもねー、問題がさー」
御坂「黒子って何食べても『お姉様の作った愛情たっぷりのお料理は美味しいですのっ!!!』って」
佐天「あ、今脳内白井さんの声で再生されました」
初春「言いますよね、白井さんだったら」
御坂「ありがたいはありがたいんだけどさ。いやこれいくらなんでも、と思って試してみたのよ」
佐天「試す?何をですか?」
御坂「お総菜を混ぜてみたんだけど……うん、『お姉様の肌の匂いがしませんですわ!』って見抜いてさ」
佐天「本日二度目のストーカーかな。あ、二人目か」
初春「多分見た目と味付けで分かったんでしょうが、ヘンタイの場合本当に御坂さんの匂いで判別してる怖れも」
御坂「という訳でね。二人にはお料理の相談やら試食やらに付き合ってほしいなと」
佐天「あたしはオッケーですね。てか今からあたしんちの寮でしましょう」
初春「私もお付き合いしますよ。緊急出動がない限りは、ですが」
御坂「あ、そのときはあたしも出張ってパパっと解決」
初春「しなくていいです。力は力を呼ぶ結果にしかならないんで」
佐天「あ、知ってるそれ!自分が勝ち逃げするときに使う台詞だよねっ!」
初春「間違ってはないんですが、はい、えぇっと情緒ってのがですね」
――スーパー
佐天「それじゃ適当に食材見繕ってきますんで、手分けして!」
御坂「まず意味が分からないわ。一緒に見るって選択肢はないわけ?」
初春「えーっと、佐天さんの視線が駄菓子コーナーに向いてますので察して頂ければ幸いなんですが……」
御坂「あたしも行きたい、っつーか駄菓子ぐらい食べるわよ!そこまでお嬢じゃないわよ!」
佐天「マジですか。意外――でも、ないですね」
初春「ちなみに御坂さん的フェイバリットは何が?」
御坂「最新巻の『サヤちゃんとずっとに一緒にいたい』、かな?」
佐天「だかしか○ですよね?惜しいっちゃ惜しいですしテーマ的にもニアピンでありますが、それ中の人目当てでチェキってるだけですよね?」
御坂「た、食べるし!ダッ○ぐらいだったら!」
佐天「はーい御坂さんボッシュート!お菓子はあたしが見繕うっていうか、いい機会だから駄菓子の真髄お見せしましょう!」
初春「”ご覧に入れましょう”」
佐天「ご、ご覧に入れるんだよっ!」
御坂「たまに出没するシスターさんみたいになった」
初春「と、いうことですので御坂さんは時間でも潰してて下さい」
御坂「あっはい。分かりまし、た?」
――精肉コーナー
試食販売員「あーっと……衛生用帽子よーし、マスクよーし、試供品の肉一式よーし、ホットプレートよーし」
試食販売員「サラダ油にキッチンペーパーにアルミホイルにつまようじよーし……と、あぁ忘れるところだった」
試食販売員「チラシの裏にーっと」 キュッキュッ
試食販売員「……完璧だ!」 ペタッ
チラシの裏【腹ぺこシスターさん、神様はあなたを見ています】
試食販売員「オールグリーン……さて」
試食販売員 カチッ、ジジジ……
試食販売員「こんにちはー、試食いかがですかー?よかったら一口どうでしょうかー?」
試食販売員「○○のハムー!○○製品のハムは簡単に焼いただけでこの香ばしさ!朝食昼食夕食にもってこい!」
試食販売員「疲れて帰って来ても封を切っただけでハイご馳走!モノは試しに○○のハムを食べていって下さい!」
御坂「……」 ジーッ
試食販売員「あー、そこの奥さんどうですか一つ?美味しいですよー、買えって言いませんから軽く食べるだけで、はい」
御坂「……」 ジーッ
試食販売員「あ、そっちのお父さん!よかったらこれ一口だけでもどうぞ!気に入ったら買ってってくれると嬉しいですが!」
御坂「……」 ジーッ
試食販売員「えっと、その……」
御坂「……」 ワクワク
試食販売員「お前もう帰れよ」
御坂「それが客に対して言うことかっ!?てか第一声それかっ!?」
試食販売員「あ、あぁすいません。ついなんか反射的に」
御坂「なんか珍しいことやってるなー、と思って見てただけで帰れって!てかあんた、あたしの知り合いじゃないわよね!?」
試食販売員「き、気のせいじゃないですかー?こんな顔どこにでもいますって」
御坂「紙の帽子にマスクしてて誰が誰だか分からないんだけど……」
試食販売員「すいません仕事中なので外す訳にはいかないパヨ」
御坂「急に語尾にパヨつけ始めた!?多分あたしよりか上ぐらいの歳なのに!?」
試食販売員「いや大魔法○のパヨた○がだな」
御坂「黙りなさい!あたしキャリア的にはなかったことにしたい黒歴史その一!」
試食販売員「いやァでもオマエラジオでもそンなンだったろォが」
御坂「……ぶち殺したくなる口調よね。人生の厳しさ教えようかしら」
試食販売員「引き出しの狭さが悔やまれるよなっ!」
御坂「まぁいいんだけどさ。ちょっと聞いていい?」
試食販売員「はぁ」
御坂「これってアレよね?アニメとかマンガに出てくるデパ地下の試食ってやつなのよね?」
試食販売員「スーパーですけどね」
御坂「ってことは食べ散らかして店員さんの怒られるフラグを回収するって、あの?」
試食販売員「フラグ言うなや、まぁ合ってますが」
御坂「へー、ふーん、あーそっかー、これが実物なのねー。初めて見たー」
試食販売員「あ、すいませんお客様。少し宜しいでしょうか?」
御坂「はい?」
試食販売員「まず右手に見えますのがパンのコーナー、その奥にサービスカウンターがございますです」
御坂「なんか日本語変だけど、それが何よ」
試食販売員「で、その更に先、見えますでしょうか?非常出口のマークがぶら下がってる標識」
御坂「あ、うん。入り口の所よね」
試食販売員「お帰りはそちらとなっておりますので、またのご来店をお待ちしております」
御坂「またえらく迂回してぶぶ漬け出してきたわね!?京都人でももっとはっきり言うわよ!多分だけど!」
御坂「……つーかほんっっっっっっっとにあたしの知り合いじゃないの?その芸風が知り合いのツンツン頭と酷似してんだけど!」
試食販売員「気のせいパヨ!世の中には似ている芸風の人が三人いるって聞くパヨ!」
御坂「パヨ推し止めなさいよ!黒歴史がまた晒されるじゃない!」
試食販売員「ほら、もうこれやるからあっち行けよ」
御坂「ぞんざいだな!主旨もっとフレンドリーにするところじゃないの!?」
試食販売員「新しいなんかハムだってベーコンかもしれないけど」
御坂「どっちよ。あ、でも初めてでなんか新鮮――ってお値段。あー……」
試食販売員「なに?何か文句あんの?」
御坂「なんか安すぎて心配っていうか」
試食販売員「メーカー出してる肉なんだから問題ないだろ。つーかこれダメだったら加工肉全般ダメってことになんぞ」
御坂「いいのかな……まぁ食べるわ!頑張って!」 パクッ
試食販売員「どーすか。ソレ食ったら向こう行けよ」
御坂「……ねぇ、これ本当にこのお値段?嘘よね?嘘って言ってよ!?」
試食販売員「お、なんだビリビリ正月早々やんのか?○○製品のハムはお財布にも優しい全国の学生さんと主婦の味方なんだからな!」
御坂「そうじゃなくって!これ、パッケージのよりもっと高い肉使ってないのって聞いてんのよ!?」
試食販売員「はぁ?同じの使わなかったら試食販売になんねぇだろうが」
御坂「いやでも、これ!外がカリカリで中がジワって美味しいのよ!この値段じゃ買えなくない!?」
試食販売員「フツーに焼いただけなんだが……あー、んじゃ見てろパヨ。新しいの焼いてやるパヨよ」
御坂「ごめん。あなたの個人情報これ以上ツッコまないから、思い出したようにパヨやめて」
試食販売員「ホットプレートに油引いて、軽く温めてハム乗せて」 ジュゥゥゥゥゥゥッ
試食販売員「……」
御坂「……」
試食販売員「中まで火が通ったら、移動させて」 ジュゥゥゥゥッ!
試食販売員「軽く焼き色がついたら、はい出来あがりと」
御坂「……能力は使ってなかったわね」
試食販売員「そんな能力あったら欲しいわ!なんかこう相手がアレな人間ばっかりにしか使えない能力より有意義だわ!」
御坂「いただきます……」 パクッ
試食販売員「どう?」
御坂「あれ?あっれー?」
試食販売員「別になんもやってないって。普通に焼いただけだって」
御坂「そんなはず……あたしが家で炒めるときは!もっとこうなんか硬くなるのよ!」
試食販売員「硬く?」
御坂「焼き色ついたんで食べてみたら中にまで良く火が通ってなかったり!逆に長めに火を通したら炭っぽくなるの!」
試食販売員「あー……そりゃアレだわ。お前コンロ”強火”でやってないか?」
御坂「してるけど」
試食販売員「それがダメ。つーか自分で調べろよ。俺今バイト中なんだから」
御坂「このブース全部買えばいいのよね?」
試食販売員「お嬢様、私に全てお任せくださいませ!料理の基本なんてあっという間にご教授致しましょう!」
御坂「急に態度変わったわね」
試食販売員「という冗談はともかく。あ、買ってくれるのは食べる分だけでいい、捨てたり余らしたら食材に失礼だからな」
試食販売員「まぁやってみた方が早いか。ここにハムがある。一袋に四枚ぐらい入ったフレッシュなアレだ」
御坂「一枚厚さ1mmぐらいのね」
試食販売員「これをあえて”強火”にして焼いてみる。まず片面ジューッと」 ジュゥゥゥゥゥ
試食販売員「次に裏返して同じく焼いて、香ばしくなってきたら完成。食べてみ?」
御坂「美味しい。両面均一に焼いてる、わよね」
試食販売員「次。俺が売ってるハム、つーか面倒だからベーコンって呼ぶけど、今度はこっちを焼いてみる」 ジュゥゥゥゥゥッ
御坂「大きさは消しゴムぐらい。厚さも同じぐらいか」
試食販売員「1cm前後。試食用に小さくカットしてある」
御坂「そろそろいいんじゃない?焦げ臭いわよ」
試食販売員「だな。もう一面も同じようにして……終わりっと。どうぞ」
御坂「……」 モグモグ
試食販売員「感想は?」
御坂「表面が軽く焦げてるのに中は硬い。てか油がとけてなくてジューシーさ皆無。生焼け」
御坂「……あたしの失敗と同じだ……!」
試食販売員「結論は簡単。きちんと火が通ってねぇんだよ」
御坂「強火で炙ったのに!?これ以上やったら表面が炭化しちゃうでしょ!」
試食販売員「でも食ってみて分かったろ?中によく火が通ってないって」
御坂「そ、そうだけど!」
試食販売員「あれじゃね?テレビとかでステーキ焼くとき、強火力でブワッ!と焼くから、同じようにやれば!みたいな感じか?」
御坂「アレ……ダメだったの?料理は火力とか聞いたことあるんだけど!」
試食販売員「中華はな、きっちり火ぃ通さないとヤバい環境だったからだ」
試食販売員「あんだけ広い大陸でかつ気候もロシアみたいに寒冷でもない。だから保存方法をきっちりするかよく火を通す」
御坂「香辛料たっぷりだったり、やたら塩辛い料理が多いのも」
試食販売員「イタ飯やフレンチでフランベ以外に強火力なんて使ってんの見たことないだろ」
御坂「待ってよ!ステーキ焼くときなんかは!」
試食販売員「大抵その後、牛のステーキを焼いて切ったら『あーら中は赤身が!美味しそう!』って展開になるよな?」
御坂「あ、通ってないのか!火!」
試食販売員「牛かたまり肉だからなー。まぁそういう料理法もあるが、中までしっかり火を通すときにはあんな真似はしないんだよ」
御坂「牛の肉はきちんとトリミングしてあれば、生でも食べられる、だっけ」
試食販売員「そうそう。だからタタキを出してる店もある」
試食販売員「てかそうだなー……何年か前に『バターのテンプラ』みたいなキワモノ料理が流行ったって知ってるか?イギリスの話なんだが」
御坂「あったわよねー。油に油のツープラトンよねって思ったわ」
試食販売員「一応白人は俺たちより遺伝子の面で太っても成人病に”なりにくい”傾向がある。程度問題なんだが」
試食販売員「でもおかしいと思わなかったか?バターって温めたら固形じゃなくなるだろ」
御坂「特殊な銘柄じゃないの?テンプラ揚げられるぐらいの油へつけたら即・溶けるでしょ?」
試食販売員「いや市販の普通のバターだ。やろうと思えば日本のご家庭でもできる」
御坂「溶けないの……?」
試食販売員「溶けない――あぁいや正確には少しぐらいは溶けるだろうが、まぁバターテンプラは作れる」
試食販売員「その方法は今やってみせたのをそのままやるだけでいい」
御坂「今やってって、ベーコン生焼け作っ――あ!」
試食販売員「分かった?」
御坂「油の温度を高温にして外側だけさっと揚げる!中に火が通らないうちに!」
御坂「そうすれば中のバターを焦がすことなくバターテンプラができる……!」
試食販売員「正解。補足するとアイスのテンプラも同じ作り方をしてる」
(※実在します)
御坂「へー。そんなのもあるのねー――って違う違う。あたしはキワモノじゃない料理の仕方を聞いてんのよ」
試食販売員「だから強火でやったことの反対。弱火と中火でやればいいだけだって」
御坂「……それだけ?」
試食販売員「そもそも強火はそんなに使うもんじゃないんだわ。初心者相手にドヤ顔でいうようなことでもないんだが」
御坂「中までしっかり火を通すには、じっくり中火か弱火で火を通す……と」
試食販売員「そうそう。から揚とかも同じ、慌てずじっくり焦がさずに」
御坂「あの、質問です!」
試食販売員「はいどうそビリビリさん」
御坂「強火でブワッ!と焼いたお肉、反対に弱火でじっくり焼いたお肉があります」
試食販売員「ありますねー」
御坂「あくまでもイメージなんだけど、前者の方が焼いてる時間も少ないし、油っぽさも少なくならない?」
試食販売員「ならない」
御坂「なんで?長時間プレートの上で炙ってる訳でしょ?だったら最初に曳いた油吸っちゃってー、みたいななるんじゃないの?」
試食販売員「炒める油が牛脂で鶏肉炒めるって言うんだったら話は別だけど、まぁ普通にやる分には長く焼いた方が油は落ちる」
試食販売員「そうだな。この牛肉あるじゃん、霜降りっぽいの」 プルプルプルプル
御坂「高すぎて手が震えるほどにっ!?」
試食販売員「この霜降り、つーか油の部分だな。当然火を通せば柔らかくなるわな」
御坂「そうね。だから霜降り肉は『食感が柔らかくて美味しい!』って人気だし」
試食販売員「勿論肉の中にも残る”のも”ある。ただ熱で溶けて液状になる”のも”ある」
御坂「そう、なの?」
試食販売員「すき焼き作るとき、最初に鍋の底へ牛脂押しつけて油曳くだろ?それと一緒だ」
試食販売員「あー、ほら。土用の日にうなぎの蒲焼き作るときさ、串刺して炭火で炙るだろ?」
試食販売員「あんとき、下に落ちる油は魚の中にあった脂肪っつーか油が個体から液状になって滴ったもんだ」
御坂「あ、そっか!そういうことか!」
試食販売員「だから長く火を通せば中まで火が通る。結果として肉の中に含まれている脂肪が温まれば溶けて肉の外へ行くと」
御坂「反対によく火を通さないと油は固形のまま体内へ……!」
試食販売員「わざとそうする料理もあるから、てか脂(あぶら)は旨味でもあっから完全に排除すんのもよくはない」
御坂「……そっかー……何となく理屈は分かったわ」
試食販売員「そりゃよかった」
御坂「けどさ、その『中はフワフワ、外はカリっと』みたいなのあるわね」
御坂「つーかアンタが最初に作ってみせたベーコンだけどさ!そっちも教えなさいよ!キリキリ吐きなさい!」
試食販売員「もう話すようなことないんだが……まぁ焼くじゃん?普通に中火で火を通しましたー、と」
御坂「色が変わればいいのよね?」
試食販売員「初心者だったら何枚か同時に焼いて、切って確かめるのもあり。最初から全部完璧できるやつなんていねーって」
試食販売員「んで火が通ったら最後に強火にする」
御坂「ダメって言ってたでしょうが!中まで火が通らないって!」
試食販売員「だから”火が通ったら”の話だよ。表面炙って香ばしくして焦げ色つけて完成」
御坂「あー……今度は逆に強火が中まで染み渡る前に、てか中が硬く締まる前に終わらせるってことか……!」
試食販売員「難しくもなんともない。丁寧にやればまず失敗はしない」
試食販売員「極端な話、少しぐらい硬くなったっていいんだ。火を通さなくてヤバいケースはそこそこあるけど、火を通しすぎてヤバいのはまずないから」
御坂「にゃるほど。今までの失敗はそういうことだったのね、感謝するわ」
試食販売員「どういたしまして。あとできれば少し大目に買っていってもらえると、うん。店長がこっち見てっから」
御坂「――けど、言わせて貰うわ!あなたは一つミスを犯した……っ!!!」
試食販売員「な、なんだってー!?」
御坂「最初に焼いていたベーコン!あなたは強火にしていなかった!あたしに教えた手順じゃなかったのよ!」
試食販売員「……」
御坂「つまり、あなたはやっぱり『美味しく肉を焼ける能力』の持ち主だったんだわ……!」
試食販売員「バッカお前なめんじゃねぇよ。俺何年主夫やってっと思うんだよ。14年だぜ、14年」
試食販売員「もう俺の半生はずっと主夫だって言っても過言じゃないさ!そしてきっとこれからもだな!」
御坂「ごめんなさい。変なテンションで聞いたのは謝るから、こう、普通に戻ってくれると嬉しいかなって」
試食販売員「あんま手料理とは関係ないんだけどもだ。ホットプレート、つーかフライパンって全部温度同じじゃないんだよ」
御坂「ち、違うの?中火にしてあるのに強火とかなってる訳!?」
試食販売員「そこまで極端じゃないんだが、まぁウインナー焼くから見てろ」
御坂「う、うん」
試食販売員「まず油をひいて、点火して」 パチチチチ
試食販売員「ウインナーを真ん中辺りに置きます」 ジュゥゥゥゥゥゥゥッ
御坂「まぁ、こんなもんよね」
試食販売員「次に端の方へ寄せます」 ジュー……」
御坂「あ!弱くなった!?」
試食販売員「このホットプレートはガスコンロと同じで、真ん中に火が当たるタイプなのな。用は家庭のコンロと同じ」
試食販売員「火の当たる部分によって温度は違う。真ん中は強くて端は弱い、だから具材の置き方で焼き加減を調節してんだよ」
御坂「……そっかー!」
試食販売員「つってもだな。大量に焼くじゃん?だから家庭料理みたいに最初中火で、最後の仕上げに強火で!みたいなのはできないんだわ」
試食販売員「だからまずこう、円になってるプレートの中央・右半分でジワーッと焼くんだ」 ジューーーッ
御坂「さっきと音、違くない?」
試食販売員「そりゃ常温か冷蔵にしてあった具材乗せればプレートの温度は下がる。で、くっつかないように炒めると」 カッカッカッカ
御坂「左半分使ってないのは、なんで?」
試食販売員「少し待って……右側に乗せた具材によく火を通ったらば――」
試食販売員「――今まで空けてた中央・左半分へ乗せる」 ジュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
御坂「あ、強火っぽい!中火なのに!」
試食販売員「なんつーかな。最初のプレートの温度は10とする、あくまでも例えとしてだが」
試食販売員「そこの右側へ温度の低い具材を乗せた。このとき右側の温度は5に下がるが、左側は10のまま」
試食販売員「……まぁ実際には8ぐらいにまで下がってるんだけどな。同じプレートなんだから」
試食販売員「そのまま炒めていれば右側の温度は10まで上がる。この時左側はどうだろ?」
御坂「15ぐらいになる、かな?」
試食販売員「何も乗せないで炙ってた分だけ熱が溜ってる。そこへ具材を移せば強火で炙るのと同じ効果があると」
試食販売員「んで右側にはまだ具材を乗せて炙り、左側の具材は焦げ目がついたらさっさとプレートから降ろして完成」
試食販売員「何も乗せてないからまた温度が上がって――ってのを、延々俺たちは繰り返してる訳だな、うん」
御坂「負けました」
試食販売員「まぁ業務用か飲食店の仕事でもしない限り必要のないスキルですけどねっ!人生で有効に使えるって訳じゃないしさ!」
御坂「……ありがとう。なんか怒濤の展開って言うか、このまま佐天さんち行くかと思ったらまさかここで終わらせるとは思わなかったけど!」
試食販売員「あぁそうだな!『導入部分関係ねぇじゃん!JC出したかっただけじゃん!』とは思わないでもないけどな!」
試食販売員「あとよかったらでいいんだけど、さっきからいってる通り店長さんがこっちを監視してるから!できれば大目にハム買ってってくれよなっ!よかったらだけども!」
――スーパー
佐天「ねぇ初春。これってツッコんだら負けなのかな?」
初春「そうですね。『お前なにやってんの?』って言えたら楽でしょうね」
佐天「てゆうか気づいて……いやごめん、気づいてない体ですよね。分かります」
初春「まぁご本人も、だとは思いますので何も言わないのが吉かと」
佐天「てかこれでハム・ペーコンづくし決定だね!」
初春「嫌いじゃないですけど、ドイツ人でもあるまいし加工肉メインって一体」
佐天「頑張れウイハルン!」
初春「ドイツ人っぽく言っても、ノルマの肩代わりはしませんからね?」
佐天「あと補足するけど、今のはから揚にも使えたりするんだよ。二度揚げって言ってだね」
初春「一度油から上げてもう一回揚げる、でしたっけ」
佐天「うんそう。原理っていう理屈は同じで『中は柔らかく外カリカリ』に仕上げるの」
佐天「一度具材を引き上げつつ、フライヤーの火を維持することで油の温度は上がり続ける訳でさ」
佐天「ちょっと待って具材を入れれば最後に強火で炙るのと同じ効果が!みたいな」
初春「へー、流石ですねぇ」
佐天「ただこのやり方だとね。揚げたては美味しいんだけど、冷めたら外も中も乾燥して硬くなっちゃうからお弁当にはあんまり向かない」
佐天「その場合はあんかけか粘度の高いソース系を使って、外側の水分を保てばいい感じになるかなー」
初春「たまーに思うんですが、佐天さんの妙に高い料理スキルは一体どこから……?」
佐天「いえもう家が老舗の――すいません何でもないです」
初春「なんか設定増えそうですよねぇ。今年の間に因縁も一つ二つ」
佐天「目指せ友達100人!気がつけば(ある意味)学園都市最強派閥!」
−終−