ちょっとだけ帰って来たMMR 「菜の花」
――学園都市 郊外
御坂「――いよぉぉぉぉぉぉしッゲェェェェェェェト!出たわレアゲコ太!『ゲコ太inグレイトなシャワーシーン』」 ビロリーン
御坂「長かった……電撃で発表してから大分経ってやっとゲット……!」
御坂「しかっかんしこんな郊外に置いてあると盲点だったわ−。全部どっかの店とタイアップしてるかと思ったら、意外とそうでもないのねー」
御坂「さってと。どこかでバスでも拾って――あれ?」
鳴護『……』 コソッ
御坂「今のってARISAよね……?なんでこんな所に?」
御坂「格好も地味だし、農作業っぽい感じで――まさかっ!?」
――畑
鳴護「えーっと、こっちはもう食べられるかな。うん、ちょっと小さいけど、いっか」
御坂「――待ちなさい!」
鳴護「は、はい?」
御坂「……大丈夫、あたしは味方だから」
鳴護「なんかスッゴイ面倒臭いそうな前置きから入るの?なんか久々に美琴ちゃんと会ったと思ったら、それ?」
御坂「そりゃ、ね。誰だって才能の壁や年齢の壁、そして事務所の壁や映画配給会社の壁、へうげも○はダメでシャンゴリ○はオーケーだってダブスタであってもね!」
鳴護「いや違う、それ違うかな。もう字面だけで面倒だなって分かるもん」
鳴護「というかシャンゴリ○じゃなくてシャングリ○ね?ゴリラさんとばっちりだから」
御坂「お医者様に行こう、ねっ?」
鳴護「だからどうして流行りの結論に行き着くのかなぁっ!?ご当地アイドルがマルチタレントと一緒にされても!」
御坂「いやでも、違法なアレを畑で栽培している、的な?」
鳴護「ちょっと意味が分からないかな。立地的には郊外だけど、ほぼ住宅地のすぐ側でできるほど日本はアンチェインじゃないと思うよ」
御坂「い、いやでも!ヒラヒラのドレス着てないってことは、疚しいっていう証拠じゃない!?」
鳴護「美琴ちゃんの中の私ってそういうイメージなの?アイドルだからってコミ○会場ですら『これ、気合い入ってるね!』ってぐらいのアレを着用してないよ?」
鳴護「というかもう嫌になるぐらい言ってきたけどアイドル違うからねっ!?シンガーソングライター枠に応募したのにいつのまにか運営が!」
御坂「じゃあどうしたのよ。こんな所、って言っちゃ失礼だけど、なんで農作業なんか」
鳴護「えーっと、私がお世話になった施設がこのすぐ近くでね。ここはそこの自家菜園なんだよ」
御坂「……あぁ、それで」
鳴護「うんまぁ、今は住んでないんだけど、みんな私の弟や妹みたいなもんだし、ね」
御坂「ふーん……これ、雑草抜けばいいのよね?」
鳴護「うん、そうだけど。美琴ちゃん?」
御坂「あ、別に野菜まで引っこ抜きゃしないわよ。カゴに集めて畑の隅のゴミ入れへ積んどけばいいんでしょ?」
鳴護「いや、流石にそこまで失礼な心配してないけど、そうじゃなくて」
御坂「何よ」 ブチッ
鳴護「なんでもない……似てるよねぇって思ってさ」
御坂「何言ってるのか分からないわ」
――
御坂「――さて、このぐらいでいいかしらね」
鳴護「ありがとうございます。てか手際よかったね−」
御坂「雑草抜くのに手際は関係ないと思うけど。今日はこれで終わり?」
鳴護「ううん。お野菜を摘むだけかな――って、美琴ちゃんはこれから用事とかってあるかな?良かったらご飯食べていかない?」
御坂「用事なんかないけど急なお客は邪魔になるんじゃない?」
鳴護「いえっそんなこは全然っ!むしろここで帰したら院長先生に叱られるぐらいでねっ!」
御坂「んー……じゃ、近くにスーパーかなんかある?タダでご相伴に与るのも気が引けるし、そこで何か差し入れ的なの買ってっていいんだったら」
鳴護「そこまで気を遣わせるのもどうか思うんだけど……」
御坂「いいのよ、別に。あたしの自己満足みたいなもん、だ……」
御坂「……」
鳴護「どしたの?」
御坂「もしかして、なんだけど――あなたってお料理上手い?」
鳴護「本当にどうしたの?何か脈絡ないよ」
御坂「グルメレポーターで食べ歩きしているとき、『ここはこうした方がいい』とか『こっちの方が美味しい』とか言ってたから」
御坂「あれは料理が上手い人じゃない言えない感想……っ!?」
鳴護「その後、お姉――事務所の社長さんから『思ってても言うなあぁでもアリサ可愛い!』ってメッチャ叱られた回だね!」
御坂「社長さんが病んでるわね」
鳴護「お姉ちゃんはややシスコン気味で適齢期を逃しそうな……それはそれで不安なような……」
御坂「そんなことはどうでもいいのよ!そこのところを詳しくっ!?」
鳴護「美味しいかは別にして、まぁ作る方かな?」
御坂「……ちなみに今日の献立は?」
鳴護「そだねー。鶏肉は味付けして寝かせてあるのを焼くだけだけど、あとは菜の花の芥子和え、かな?」
御坂「な、菜の花って……こ、この、目の前で咲いてる……ッ!?」
鳴護「ちょっとリアクションが間違っちゃってるけど、まぁはい。これですね」
御坂「春……!春にお総菜コーナーでよく目にするわよね!」
鳴護「なんでテンションが上がってるのか分からないけど、うん、そうだね」
御坂「へー、これが菜の花かー、初めて見たわー」
御坂「でもなんか白菜に似てるのね。匂いもそれっぽいし」
鳴護「えっ?」
御坂「えっ?」
鳴護「……あぁ!常盤台ギャグね!」
御坂「ないわよそんなの。多分あたしの知ってる限りではない」
鳴護「いやでもボケてツッコミ待ちだとしか」
御坂「シンガーソングライターが随分俗っぽくなったじゃない。いや、活躍は歌番組から食べ歩きまで全部チェックしてるけど」
鳴護「あ、ありがとう?……いやそうじゃなくて、これ、白菜だよ?」
御坂「あ、そうなの?白菜ってこんな巨大になるんだっ!?丸まってるんじゃなくて?そういう品種でもないのよね?」
鳴護「えっとねー。冬の間は丸まってるんだ。ほら、寒いし陽射しが弱いから霜が降りてもいいようにって」
鳴護「でも温かくなってくるとね。こう葉っぱと葉っぱの間からツボミが出てきてね。ここ見て、ここ」
御坂「あ、ホントだ。なんか菜の花っぽい色と形してるわね」
鳴護「えっ?」
御坂「だからその『えっ?』はなによ。可愛いけど、写メしろってこと?」
鳴護「いやそこまで自信過剰じゃ……えーっと、美琴ちゃん、分かって、ないんだよね?」
御坂「何が驚かれているのかがまず分からないわ」
鳴護「じゃあどうしよっかなー……あ、じゃあまずご紹介します。こちらが改めまして白菜さんです」
御坂「どうも」
鳴護「ここに花とツボミが着いてるでしょ?これが”白菜の菜の花”です」
御坂「へー……え?」
鳴護「続きましてこちらが小松菜さんです。冬に間に育ちすぎて葉っぱが堅くて食べられません」
御坂「勿体ないけど。小松菜って呼べないぐらい巨大になってるわ」
鳴護「こっちにも花とツボミ着いてるよね?伸びてるっていうか」
御坂「あるわね。黄色で形も菜の花によく似た」
鳴護「はい。これが”小松菜の菜の花”になります」
御坂「……はい?」
鳴護「そしてちょっと移動します。畑の隅っこに雑草とか痛んだ野菜を捨てるゴミ捨て場兼腐葉土製造器があります」
御坂「”器”ってのもどうかと思うけど。あ、こっちにも花が咲いてるわね、きれいー」
鳴護「こちらが大根さんですね。カラスに実を食べられちゃって、こちらへ捨てました」
御坂「あ、そうなの?へー、聞いてはいたけど本当に綺麗な花ね−」
鳴護「はい、これが”大根の菜の花”になります」
御坂「……にゃ?」
鳴護「いやそんなあたしよりも可愛らしくポーズ決められても」
御坂「……菜の花、なの?今の全部?」
鳴護「この畑にはないけどキャベツやカラシナ、ブロッコリーからも出るよ。で、それが全部”菜の花”に分類されます」
御坂「お、お店で売ってるのは?」
鳴護「多分どれか?大根は味で分かるんだけど、他は全部同じだから」
御坂「待って。”菜の花”って咲くじゃない?観光地とか、お花見のスポットとかで『わぁ、一面の菜の花畑のコントラストがステキですね!』みたい」
御坂「コントラストが何たるか分かってないような感じで、レポートするわよねっ!?」
鳴護「あたしもまぁする側だから、今後の展開を考えると『そうだねっ』っては言い辛いよ!」
御坂「その、菜の花も?」
鳴護「あれは観賞用か菜種油用のアブラナだと思う。まぁ食べようと思えば食べられるし、味もそんなに変んないんじゃないかな」
御坂「菜の花ってのは何種類もあんの!?」
鳴護「あるっていうか、日本じゃアブラナ科が春先につける花を全部まとめて『菜の花』ってひとまとめにしてる、的な?」
御坂「へー……っ!知らなかったわ!てっきりそれ専用の植物があって育ててるのかと!」
鳴護「そういう農家さんもいるけどね。中には余ったり食べられなかった冬野菜をそのまま植えてて、春になったら菜の花として食べる人も多いよ」
御坂「あーじゃ菜の花畑って実はコスパ悪いの?菜の花って少し咲きかけぐらいで採っちゃわないと食べられないんでしょ?」
鳴護「あれは単純に油を採るんだと思うよ。種ができたら搾るんだって」
御坂「じゃ、じゃあさ?例えばの話、コンビニで売ってる”菜の花の芥子和え”的なも実は……?」
鳴護「中には白菜だったりキャベツだったりの菜の花もあると思う。効率的にはどうか思うから、スーパーぐらいになっちゃうけど」
御坂「――ありがとうARISA!これまで離婚の危機が一歩遠ざかったわ!」
鳴護「ど、どういたしまして?怖いから深くはツッコまないけど、中二って結婚できたっけ?」
御坂「まぁ分かったわ!これで菜の花料理も完璧ねっ!」
鳴護「まだ収穫の時点で盛り上がってるだけなんだけど、ど、どうかな?」
御坂「難しいの?」
鳴護「いや全然。沸騰したお湯に洗った菜の花を入れて灰汁を取るだけだから」
御坂「あ、知ってる。お塩を入れると色が鮮やかなままで」
鳴護「なん、だけど。減塩を考えるんだったら入れずに、こう、辛みでフォローする的な?」
御坂「ありがとうっ!伊達にアイドルやってないわねっ!」
鳴護「ど、どっちかって言えばそんなに苦労してなった訳じゃなくて。なれたのも能力込みだっていう、ある種のバーターだったし」
御坂「あ、そういえば押○って芸能界のパイセンがね」
鳴護「いや違う違う。寄せていかないでね?私、ってかあたしにはそういうスキャンダルはないよ」
御坂「あと他に気をつけることはっ!?」
鳴護「近い近い、離れて……んーと、そうだねぇ。シュウ酸って知ってるかな?」
御坂「知ってるわ!結石になったり、とろろが肌につくとかゆくなったりするヤツよねっ!」 ピッ
鳴護「何か電子的なチートを使われた気がするけど……まぁ、菜の花にも入ってるんだって」
御坂「そう?でもwikiにはホウレンソウの1/20だからそこまで心配はないって書いてあるわよ?」
鳴護「隠そうとしてもしない美琴ちゃんは格好良いけど……じゃなくて。これは近所の農家さんのお話なんだけど」
御坂「うん」
鳴護「農家の人って出荷できないお野菜を頂くんだって。まあ当然なんだし、ウチでも時々もらったりするんだけどね」
鳴護「こう、春先になったら野菜も少なくなって、食べる野菜も限られてくるんだって」
御坂「大根も白菜も小松菜も、てか冬の葉物野菜は全滅よね」
鳴護「うん。でもその代わりにその野菜からは全部菜の花が伸びるから、それを食べてたと」
鳴護「……そうしたら、体の調子が悪くて。あるとき顔に吹き出物が……ッ!」
御坂「い、イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!?」
鳴護「お医者さんに看てもらったところ、『生で菜の花を食べすぎ、つーかシュウ酸の過剰摂取』と診断されました……!」
(※実話です)
御坂「――よっし茹でるわよ!シュウ酸が完全に消えるまでしっかりとねっ!」
鳴護「だからその極端から極端に振れるのはどうかと……」
御坂「まぁいいわ!今日は何だったらお泊まりも辞さない覚悟で料理を習うわよ!」
鳴護「断らないけどね!でも、こう、もうちょっと遠慮とかもした方がいいと思うよ!いや嬉しいけど距離感が唐突すぎて!」
御坂「あ、そうだARISA」
鳴護「はい、なに?」
御坂「おかえりなさい」
鳴護「……うん、ただいまっ!」
−終−
御坂「――いよぉぉぉぉぉぉしッゲェェェェェェェト!出たわレアゲコ太!『ゲコ太inグレイトなシャワーシーン』」 ビロリーン
御坂「長かった……電撃で発表してから大分経ってやっとゲット……!」
御坂「しかっかんしこんな郊外に置いてあると盲点だったわ−。全部どっかの店とタイアップしてるかと思ったら、意外とそうでもないのねー」
御坂「さってと。どこかでバスでも拾って――あれ?」
鳴護『……』 コソッ
御坂「今のってARISAよね……?なんでこんな所に?」
御坂「格好も地味だし、農作業っぽい感じで――まさかっ!?」
――畑
鳴護「えーっと、こっちはもう食べられるかな。うん、ちょっと小さいけど、いっか」
御坂「――待ちなさい!」
鳴護「は、はい?」
御坂「……大丈夫、あたしは味方だから」
鳴護「なんかスッゴイ面倒臭いそうな前置きから入るの?なんか久々に美琴ちゃんと会ったと思ったら、それ?」
御坂「そりゃ、ね。誰だって才能の壁や年齢の壁、そして事務所の壁や映画配給会社の壁、へうげも○はダメでシャンゴリ○はオーケーだってダブスタであってもね!」
鳴護「いや違う、それ違うかな。もう字面だけで面倒だなって分かるもん」
鳴護「というかシャンゴリ○じゃなくてシャングリ○ね?ゴリラさんとばっちりだから」
御坂「お医者様に行こう、ねっ?」
鳴護「だからどうして流行りの結論に行き着くのかなぁっ!?ご当地アイドルがマルチタレントと一緒にされても!」
御坂「いやでも、違法なアレを畑で栽培している、的な?」
鳴護「ちょっと意味が分からないかな。立地的には郊外だけど、ほぼ住宅地のすぐ側でできるほど日本はアンチェインじゃないと思うよ」
御坂「い、いやでも!ヒラヒラのドレス着てないってことは、疚しいっていう証拠じゃない!?」
鳴護「美琴ちゃんの中の私ってそういうイメージなの?アイドルだからってコミ○会場ですら『これ、気合い入ってるね!』ってぐらいのアレを着用してないよ?」
鳴護「というかもう嫌になるぐらい言ってきたけどアイドル違うからねっ!?シンガーソングライター枠に応募したのにいつのまにか運営が!」
御坂「じゃあどうしたのよ。こんな所、って言っちゃ失礼だけど、なんで農作業なんか」
鳴護「えーっと、私がお世話になった施設がこのすぐ近くでね。ここはそこの自家菜園なんだよ」
御坂「……あぁ、それで」
鳴護「うんまぁ、今は住んでないんだけど、みんな私の弟や妹みたいなもんだし、ね」
御坂「ふーん……これ、雑草抜けばいいのよね?」
鳴護「うん、そうだけど。美琴ちゃん?」
御坂「あ、別に野菜まで引っこ抜きゃしないわよ。カゴに集めて畑の隅のゴミ入れへ積んどけばいいんでしょ?」
鳴護「いや、流石にそこまで失礼な心配してないけど、そうじゃなくて」
御坂「何よ」 ブチッ
鳴護「なんでもない……似てるよねぇって思ってさ」
御坂「何言ってるのか分からないわ」
――
御坂「――さて、このぐらいでいいかしらね」
鳴護「ありがとうございます。てか手際よかったね−」
御坂「雑草抜くのに手際は関係ないと思うけど。今日はこれで終わり?」
鳴護「ううん。お野菜を摘むだけかな――って、美琴ちゃんはこれから用事とかってあるかな?良かったらご飯食べていかない?」
御坂「用事なんかないけど急なお客は邪魔になるんじゃない?」
鳴護「いえっそんなこは全然っ!むしろここで帰したら院長先生に叱られるぐらいでねっ!」
御坂「んー……じゃ、近くにスーパーかなんかある?タダでご相伴に与るのも気が引けるし、そこで何か差し入れ的なの買ってっていいんだったら」
鳴護「そこまで気を遣わせるのもどうか思うんだけど……」
御坂「いいのよ、別に。あたしの自己満足みたいなもん、だ……」
御坂「……」
鳴護「どしたの?」
御坂「もしかして、なんだけど――あなたってお料理上手い?」
鳴護「本当にどうしたの?何か脈絡ないよ」
御坂「グルメレポーターで食べ歩きしているとき、『ここはこうした方がいい』とか『こっちの方が美味しい』とか言ってたから」
御坂「あれは料理が上手い人じゃない言えない感想……っ!?」
鳴護「その後、お姉――事務所の社長さんから『思ってても言うなあぁでもアリサ可愛い!』ってメッチャ叱られた回だね!」
御坂「社長さんが病んでるわね」
鳴護「お姉ちゃんはややシスコン気味で適齢期を逃しそうな……それはそれで不安なような……」
御坂「そんなことはどうでもいいのよ!そこのところを詳しくっ!?」
鳴護「美味しいかは別にして、まぁ作る方かな?」
御坂「……ちなみに今日の献立は?」
鳴護「そだねー。鶏肉は味付けして寝かせてあるのを焼くだけだけど、あとは菜の花の芥子和え、かな?」
御坂「な、菜の花って……こ、この、目の前で咲いてる……ッ!?」
鳴護「ちょっとリアクションが間違っちゃってるけど、まぁはい。これですね」
御坂「春……!春にお総菜コーナーでよく目にするわよね!」
鳴護「なんでテンションが上がってるのか分からないけど、うん、そうだね」
御坂「へー、これが菜の花かー、初めて見たわー」
御坂「でもなんか白菜に似てるのね。匂いもそれっぽいし」
鳴護「えっ?」
御坂「えっ?」
鳴護「……あぁ!常盤台ギャグね!」
御坂「ないわよそんなの。多分あたしの知ってる限りではない」
鳴護「いやでもボケてツッコミ待ちだとしか」
御坂「シンガーソングライターが随分俗っぽくなったじゃない。いや、活躍は歌番組から食べ歩きまで全部チェックしてるけど」
鳴護「あ、ありがとう?……いやそうじゃなくて、これ、白菜だよ?」
御坂「あ、そうなの?白菜ってこんな巨大になるんだっ!?丸まってるんじゃなくて?そういう品種でもないのよね?」
鳴護「えっとねー。冬の間は丸まってるんだ。ほら、寒いし陽射しが弱いから霜が降りてもいいようにって」
鳴護「でも温かくなってくるとね。こう葉っぱと葉っぱの間からツボミが出てきてね。ここ見て、ここ」
御坂「あ、ホントだ。なんか菜の花っぽい色と形してるわね」
鳴護「えっ?」
御坂「だからその『えっ?』はなによ。可愛いけど、写メしろってこと?」
鳴護「いやそこまで自信過剰じゃ……えーっと、美琴ちゃん、分かって、ないんだよね?」
御坂「何が驚かれているのかがまず分からないわ」
鳴護「じゃあどうしよっかなー……あ、じゃあまずご紹介します。こちらが改めまして白菜さんです」
御坂「どうも」
鳴護「ここに花とツボミが着いてるでしょ?これが”白菜の菜の花”です」
御坂「へー……え?」
鳴護「続きましてこちらが小松菜さんです。冬に間に育ちすぎて葉っぱが堅くて食べられません」
御坂「勿体ないけど。小松菜って呼べないぐらい巨大になってるわ」
鳴護「こっちにも花とツボミ着いてるよね?伸びてるっていうか」
御坂「あるわね。黄色で形も菜の花によく似た」
鳴護「はい。これが”小松菜の菜の花”になります」
御坂「……はい?」
鳴護「そしてちょっと移動します。畑の隅っこに雑草とか痛んだ野菜を捨てるゴミ捨て場兼腐葉土製造器があります」
御坂「”器”ってのもどうかと思うけど。あ、こっちにも花が咲いてるわね、きれいー」
鳴護「こちらが大根さんですね。カラスに実を食べられちゃって、こちらへ捨てました」
御坂「あ、そうなの?へー、聞いてはいたけど本当に綺麗な花ね−」
鳴護「はい、これが”大根の菜の花”になります」
御坂「……にゃ?」
鳴護「いやそんなあたしよりも可愛らしくポーズ決められても」
御坂「……菜の花、なの?今の全部?」
鳴護「この畑にはないけどキャベツやカラシナ、ブロッコリーからも出るよ。で、それが全部”菜の花”に分類されます」
御坂「お、お店で売ってるのは?」
鳴護「多分どれか?大根は味で分かるんだけど、他は全部同じだから」
御坂「待って。”菜の花”って咲くじゃない?観光地とか、お花見のスポットとかで『わぁ、一面の菜の花畑のコントラストがステキですね!』みたい」
御坂「コントラストが何たるか分かってないような感じで、レポートするわよねっ!?」
鳴護「あたしもまぁする側だから、今後の展開を考えると『そうだねっ』っては言い辛いよ!」
御坂「その、菜の花も?」
鳴護「あれは観賞用か菜種油用のアブラナだと思う。まぁ食べようと思えば食べられるし、味もそんなに変んないんじゃないかな」
御坂「菜の花ってのは何種類もあんの!?」
鳴護「あるっていうか、日本じゃアブラナ科が春先につける花を全部まとめて『菜の花』ってひとまとめにしてる、的な?」
御坂「へー……っ!知らなかったわ!てっきりそれ専用の植物があって育ててるのかと!」
鳴護「そういう農家さんもいるけどね。中には余ったり食べられなかった冬野菜をそのまま植えてて、春になったら菜の花として食べる人も多いよ」
御坂「あーじゃ菜の花畑って実はコスパ悪いの?菜の花って少し咲きかけぐらいで採っちゃわないと食べられないんでしょ?」
鳴護「あれは単純に油を採るんだと思うよ。種ができたら搾るんだって」
御坂「じゃ、じゃあさ?例えばの話、コンビニで売ってる”菜の花の芥子和え”的なも実は……?」
鳴護「中には白菜だったりキャベツだったりの菜の花もあると思う。効率的にはどうか思うから、スーパーぐらいになっちゃうけど」
御坂「――ありがとうARISA!これまで離婚の危機が一歩遠ざかったわ!」
鳴護「ど、どういたしまして?怖いから深くはツッコまないけど、中二って結婚できたっけ?」
御坂「まぁ分かったわ!これで菜の花料理も完璧ねっ!」
鳴護「まだ収穫の時点で盛り上がってるだけなんだけど、ど、どうかな?」
御坂「難しいの?」
鳴護「いや全然。沸騰したお湯に洗った菜の花を入れて灰汁を取るだけだから」
御坂「あ、知ってる。お塩を入れると色が鮮やかなままで」
鳴護「なん、だけど。減塩を考えるんだったら入れずに、こう、辛みでフォローする的な?」
御坂「ありがとうっ!伊達にアイドルやってないわねっ!」
鳴護「ど、どっちかって言えばそんなに苦労してなった訳じゃなくて。なれたのも能力込みだっていう、ある種のバーターだったし」
御坂「あ、そういえば押○って芸能界のパイセンがね」
鳴護「いや違う違う。寄せていかないでね?私、ってかあたしにはそういうスキャンダルはないよ」
御坂「あと他に気をつけることはっ!?」
鳴護「近い近い、離れて……んーと、そうだねぇ。シュウ酸って知ってるかな?」
御坂「知ってるわ!結石になったり、とろろが肌につくとかゆくなったりするヤツよねっ!」 ピッ
鳴護「何か電子的なチートを使われた気がするけど……まぁ、菜の花にも入ってるんだって」
御坂「そう?でもwikiにはホウレンソウの1/20だからそこまで心配はないって書いてあるわよ?」
鳴護「隠そうとしてもしない美琴ちゃんは格好良いけど……じゃなくて。これは近所の農家さんのお話なんだけど」
御坂「うん」
鳴護「農家の人って出荷できないお野菜を頂くんだって。まあ当然なんだし、ウチでも時々もらったりするんだけどね」
鳴護「こう、春先になったら野菜も少なくなって、食べる野菜も限られてくるんだって」
御坂「大根も白菜も小松菜も、てか冬の葉物野菜は全滅よね」
鳴護「うん。でもその代わりにその野菜からは全部菜の花が伸びるから、それを食べてたと」
鳴護「……そうしたら、体の調子が悪くて。あるとき顔に吹き出物が……ッ!」
御坂「い、イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!?」
鳴護「お医者さんに看てもらったところ、『生で菜の花を食べすぎ、つーかシュウ酸の過剰摂取』と診断されました……!」
(※実話です)
御坂「――よっし茹でるわよ!シュウ酸が完全に消えるまでしっかりとねっ!」
鳴護「だからその極端から極端に振れるのはどうかと……」
御坂「まぁいいわ!今日は何だったらお泊まりも辞さない覚悟で料理を習うわよ!」
鳴護「断らないけどね!でも、こう、もうちょっと遠慮とかもした方がいいと思うよ!いや嬉しいけど距離感が唐突すぎて!」
御坂「あ、そうだARISA」
鳴護「はい、なに?」
御坂「おかえりなさい」
鳴護「……うん、ただいまっ!」
−終−